JP2885606B2 - 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの製造方法 - Google Patents
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの製造方法Info
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Description
ロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAと
称する)の製造方法の改良に関するものである。さらに
詳しくは、本発明は、フェノールとアセトンとを縮合さ
せて得られた反応混合物の晶析母液から効率よくビスフ
ェノールAを回収することにより、高い得率で製品ビス
フェノールAを製造する方法に関するものである。
脂やポリアリレート樹脂などのエンジニアリングプラス
チック、あるいはエポキシ樹脂などの原料として重要な
化合物であることが知られており、近年その需要はます
ます増大する傾向にある。このビスフェノールAは、酸
性触媒及び場合により用いられる硫黄化合物などの助触
媒の存在下に、過剰のフェノールとアセトンとを縮合さ
せることにより製造される。この反応混合物には、ビス
フェノールAのほかに過剰の未反応フェノール、少量の
未反応アセトン、触媒、反応生成水及び他の反応副生物
を含んでいる。該反応副生物としては、2−(2−ヒド
ロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プ
ロパン(以下、o,p’−体と略称する)が主要成分で
あり、その他イソプロペニルフェノールのダイマー,ト
リスフェノール,ポリフェノール及び好ましくない着色
物質などが挙げられる。特にポリカーボネート樹脂やポ
リアリレート樹脂などの原料としてビスフェノールAを
用いる場合、着色がなく、かつ純度の高い高品質のもの
が要求される。
る方法として種々の方法が検討されており、その一つと
して、例えば過剰のフェノールとアセトンとを縮合させ
て得られる反応混合物から触媒,水及び一部のフェノー
ルを除いたのち、残液を冷却することによってビスフェ
ノールAをフェノールとの付加物として晶析させ、この
結晶を反応副生成物を含む溶液から分離し、該付加物か
らフェノールを除去してビスフェノールAを回収する方
法が知られている。そしてビスフェノールAとフェノー
ルとの付加物からフェノールを除去する方法としては、
例えば分解,蒸留,抽出,水蒸気によるストリッピング
など種々の方法が提案されている。このようなプロセス
において、製品ビスフェノールAの得率を高めるため
に、上記ビスフェノールAとフェノールとの付加物を分
離した母液を晶析系へリサイクルすることが考えられ
る。しかしながら、該母液をそのまま晶析系へリサイク
ルすると母液中の不純物が蓄積されてくるので、当然母
液の一部を系外へ取り出す必要があり、しかも異性体で
あるo,p’−体の濃度が高いために、系外へ取り出す
量が多くなって、ビスフェノールAのロスにつながる。
また、反応系へ該母液をリサイクルすると、o,p’−
体のp,p’−体(ビスフェノールA)への異性化は起
こるものの、触媒劣化が速くなったり、着色成分の増加
をもたらすなど、好ましくない事態を招来する。
事情のもとで、フェノールとアセトンとを縮合させて得
られた反応混合物の晶析母液から効率よくビスフェノー
ルAを回収することにより、高い得率で製品ビスフェノ
ールAを製造する方法を提供することを目的としてなさ
れたものである。
を達成するため鋭意研究を重ねた結果、該晶析母液を酸
触媒と接触させて異性化処理を行ったのち、晶析系へリ
サイクルすることにより、その目的を達成しうることを
見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成した
ものである。すなわち本発明は、酸触媒の存在下、フェ
ノールとアセトンを縮合させて得られた反応混合物を濃
縮工程において、濃縮残液のビスフェノールAの濃度が
20〜40重量%になるように調整後、2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとフェノールとの
付加物を晶析系において晶析させたのち分離し、次いで
この付加物からフェノールを除去して2,2−ビス(4
−ヒドロキシフェニル)プロパンを製造するに当り、該
付加物分離後の残液をスルホン酸型陽イオン交換樹脂と
接触させて異性化処理を行ったのち、前記濃縮工程へリ
サイクルすることを特徴とする2,2−ビス(4−ヒド
ロキシフェニル)プロパンの製造方法を提供するもので
ある。
下、過剰のフェノールとアセトンとを縮合させてビスフ
ェノールAを生成させるが、該酸触媒としては、塩酸や
硫酸などの酸、あるいは陽イオン交換樹脂などが用いら
れる。該陽イオン交換樹脂としては、一般にスチレンと
ジビニルベンゼンとの共重合体を骨格とするものが用い
られる。また、この際、所望により選択率や反応速度を
上げる目的で、例えばエチルメルカプタン,メチルメル
カプタン,n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタ
ン類を助触媒として用いることができる。また、フェノ
ール/アセトンモル比は、通常3〜30、好ましくは5
〜20の範囲で選ばれる。このモル比が30を超えると
反応速度が遅く、3未満ではビスフェノールA(p,
p’−体)の選択率が低下する傾向がみられる。一方、
陽イオン交換樹脂を触媒として用いた場合、反応温度
は、通常45〜110℃の範囲で選ばれる。この温度が
45℃未満では反応速度が遅い上、場合により固化する
おそれがあり、一方、110℃を超えるとビスフェノー
ルA(p,p’−体)の選択率が低下し、またイオン交
換樹脂の耐熱性から制限がある。
知の方法により、酸触媒を除去したのち、晶析に先立っ
て濃縮を行うことが望ましい。なお、陽イオン交換樹脂
を固定床とする反応器を用いる場合には、触媒の除去操
作は必要でない。濃縮条件については特に制限はない
が、通常温度100〜170℃,圧力40〜500to
rrの条件で濃縮が行われる。温度が100℃未満では
高真空が必要となり、170℃を超えると次の晶析工程
で余分な除熱が必要になる。また、濃縮残液のビスフェ
ノールAの濃度は20〜40重量%の範囲にあるのが有
利である。この濃度が20重量%未満ではビスフェノー
ルAの回収率が低く、40重量%を超えると晶析後のス
ラリーの移送が困難となる。濃縮残液からのビスフェノ
ールAとフェノールとの付加物の晶析は、通常一般的な
冷却晶析法により行われる。晶析温度は通常40〜70
℃が好ましい。晶析温度が40℃未満では晶析液の粘度
の増大や固化をもたらすおそれがあり、70℃を超える
とビスフェノールAの溶解ロスが大きくなり、好ましく
ない。
ノールAとフェノールとの付加物は、公知の方法、例え
ば真空ろ過機や遠心分離機などを用いる方法により分離
する。得られた母液は酸触媒、好ましくはスルホン酸型
陽イオン交換樹脂と接触させて異性化処理が施される。
母液中には、通常p,p’−体とo,p’−体とがp,
p’−体/o,p’−体比3〜4の割合で含まれてお
り、該o,p’−体をp,p’−体に異性化するため
に、該母液は異性化工程へ導かれる。この際、不純物の
蓄積を抑えるために、通常母液の一部は系外へ取り出さ
れる。異性化反応においては、通常、一般的によく知ら
れているスルホン酸型陽イオン交換樹脂を充填した反応
器が用いられ、常圧下、45〜110℃程度の温度で異
性化処理が行われる。この異性化処理により、該母液中
のp,p’−体/o,p’−体の比率は、通常7〜8に
上昇する。
は、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であ
ればよく特に制限されず、例えばスルホン化スチレン・
ジビニルベンゼンコポリマー,スルホン化架橋スチレン
ポリマー,フェノールホルムアルデヒド−スルホン酸樹
脂,ベンゼンホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂などが
挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、ま
た、二種以上を組合わせて用いてもよい。また、異性化
反応の温度が45℃未満ではビスフェノールAが結晶化
するおそれがあり、110℃を超えると触媒の耐熱性に
問題がある。さらに、反応様式については特に制限はな
いが、例えば固定床連続反応や回分式反応が望ましい。
固定床連続反応を実施する場合には、液時空間速度(L
HSV)は、通常0.1〜10Hr-1、好ましくは0.5〜
5Hr-1の範囲で選ばれる。このLHSVが0.1Hr-1
未満では副生成物量が増加し、また、10Hr-1を超え
るとる転化率が低い傾向がみられる。
れる。ビスフェノールAの濃度が低い場合には主反応液
と共に濃縮工程へフィードし、フェノールを留出させて
ビスフェノールAの濃度を調整してから晶析工程へフィ
ードするのが望ましい。また、ビスフェノールAの濃度
が高い場合には、晶析工程へ直接フィードしてもよい。
異性化処理によって増加したp,p’−体は、この晶析
工程においてビスフェノールAとフェノールとの付加物
結晶として回収される。該晶析工程で晶析分離されたビ
スフェノールAとフェノールとの付加物結晶は、通常フ
ェノールで洗浄されたのち、該付加物中のフェノールが
除去され、ビスフェノールAが回収される。この回収方
法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いる
ことができるが、特に分解法が好適である。この分解法
においては、通常20〜150torrの減圧下、13
0〜200℃、好ましくは150〜180℃の範囲の温
度において、該付加物を分解することによりフェノール
が除去され、ビスフェノールAが回収される。この際、
分解温度が200℃を超えると得られるビスフェノール
Aはそれ自体の分解により不純物が増加したり、着色す
るなど、好ましくない事態を招来する。
の分解により得られたビスフェノールAは、その中の残
留フェノールをスチームストリッピッグなどの方法によ
り実質上完全に除去することにより、目的とする高品質
のビスフェノールAが得られる。図1は、本発明の方法
を実施するための一例のビスフェノールAの製造工程図
であって、反応器1からの反応混合物2は異性化工程1
1から送られてきた異性化処理液12と共に濃縮工程3
に導かれる。濃縮物4は晶析工程5に導かれ、ビスフェ
ノールAとフェノールとの付加物結晶が晶析される。該
付加物結晶を含むスラリー6は固液分離工程7に送ら
れ、付加物結晶と母液とに分離される。母液10は、一
部系外へ取り出され、残りが異性化工程11に送られ、
異性化処理が施される。異性化処理液12は反応混合物
2と共に濃縮工程3へフィードされる。
する。 実施例1 フェノールとアセトンとを縮合させて得られた反応混合
物を濃縮したのち、45℃で晶析を行い、ビスフェノー
ルA〜フェノール付加物結晶を分離して母液を取り出し
た。この際、母液中のp,p’−体/o,p’−体の比
率は3であった。この母液をスルホン酸型陽イオン交換
樹脂が充填された異性化反応器へフィードして異性化処
理を行った。この際、異性化条件は反応器入口温度75
℃,LHSV1.0Hr-1とした。その結果、異性化後の
p,p’−体/o,p’−体の比率は8まで上昇した。
次に、この異性化処理液をリサイクルして、濃縮塔へフ
ィードしたのち、晶析して回収した。その結果、異性化
しないで母液をそのまま晶析系へリサイクルした場合の
回収率に比べて25wt%も高かった。
とを縮合させて得られた反応混合物の晶析母液を異性化
処理したのち、晶析系へリサイクルすることにより、該
母液から効率よくビスフェノールAが回収され、高い得
率で製品ビスフェノールAを得ることができる。
A製造工程図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 酸触媒の存在下、フェノールとアセトン
を縮合させて得られた反応混合物を濃縮工程において、
濃縮残液のビスフェノールAの濃度が20〜40重量%
になるように調整後、2,2−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)プロパンとフェノールとの付加物を晶析系にお
いて晶析させたのち分離し、次いでこの付加物からフェ
ノールを除去して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)プロパンを製造するに当り、該付加物分離後の残液
をスルホン酸型陽イオン交換樹脂と接触させて異性化処
理を行ったのち、前記濃縮工程へリサイクルすることを
特徴とする2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プ
ロパンの製造方法。 - 【請求項2】 異性化処理における反応温度が45〜1
10℃である請求項1記載の2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)プロパンの製造方法。
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