JP2862787B2 - 塗被紙の製造方法 - Google Patents
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Description
るもので、更に詳しくは過熱水蒸気を用いて、塗被紙を
乾燥することに係わるものである。
がある。従来はどちらかと言うと、技術開発の主眼が塗
被工程に置かれていたが、塗工速度の向上に伴い、乾燥
速度アップや品質改善の必要性から近年、乾燥工程も着
目されて来ており、IRドライヤーやフローテーション
ドライヤー等も開発されて来ている。
付与する目的で物質や薬剤から成る塗被液を塗被し、乾
燥することにより製造される。この中で代表的なもの
に、クレーコート紙、感圧記録紙や感熱記録紙がある。
ここで言う塗被とは単に紙の表面塗工のみならず、紙層
中への薬液の含浸も含むものである。これ等塗被紙に用
いられている乾燥方法は、従来は乾燥熱源として加熱空
気が使用され、これを乾燥装置内で直接乾燥すべき紙シ
ートに接触させて乾燥し、乾燥に供した加熱空気は紙シ
ートから蒸発した水蒸気と共に廃気として乾燥装置から
系外に排出されていた。しかしこの方法では、加熱空気
は凝縮潜熱が無いことから熱容量が比較的小さく紙を乾
燥温度に迄温めるのに或る程度時間が掛かる。乾燥に供
した加熱空気は蒸発した水蒸気を含み、多くの熱エネル
ギーを持っているものの、回収して循環利用するには限
界があり、多くの場合廃棄されている。このためこの乾
燥方法に於ける熱効率は極めて低い。
ことは、既に鉱業或いは食品業界で行われており、製紙
業界でも過熱水蒸気を用いること自体は新規な手段では
ない。これ迄、手抄き抄紙機のワイヤー上で抄き上げら
れた湿った紙匹の乾燥へ応用し、通常の乾燥と比較した
報告もあるが、過熱水蒸気を用いて乾燥させる実用的な
方法に関する開示は存在しなかった。特に塗被紙への応
用の報告例は無い。この理由としては、高温の過熱水蒸
気を用いて製造された紙の品質や熱効率の長所が明らか
にされておらず、また実用上、加熱用気体の空気と水蒸
気との割合が変化し易く、製品の品質や生産性の不安定
化が懸念されるためであると思われる。
る塗工速度の向上に伴って、乾燥能力不足が問題となっ
ている。しかし従来の塗被紙の乾燥方法では、乾燥温度
を高くすることで乾燥能力を上げることは可能である
が、前述した様に熱効率に大きな問題を抱えている。一
方、品質面でも印刷技術の革新やOA機器の発展、特に
印刷機やプリンタの高速化や高画像化により、塗工印刷
用紙でのカラー印刷時のモトリング(多色印刷時の色む
ら)、紙ごし、寸法安定性(カールも含む)、インキ乾
燥性などに於いて、現在の製品は必ずしも満足されてい
ない。かかる観点より本発明者等は従来の観念に捉われ
ない全く新しい塗被紙の乾燥方法に就いて検討し、従来
の問題点である乾燥工程に於ける熱効率の改善及び得ら
れる塗被紙の品質向上を図った。
乾燥して塗被紙を製造するに際し、直接紙シートに接触
して乾燥に供した、湿球温度が85〜110℃である水
蒸気若しくは水蒸気と空気から成る気体を加熱再生し
て、循環使用することを特徴とする塗被紙の製造方法に
関するものである。
過熱水蒸気と加熱空気の混合気体2、及び加熱空気3を
用いて、夫々に就いて乾燥時のシート温度の経時変化を
調べたものである。シート温度に就いては、塗工用原紙
の間にシート型熱電対を挾むことによって測定した。図
1をもとに乾燥のプロセスの変化に就いて述べる。何れ
の場合でも乾燥段階は3つに大別される。最初は被乾燥
物質を乾燥温度(その乾燥用気体に対応した湿球温度)
迄に高める予熱乾燥段階、次は単位時間当りの水分の蒸
発量が一定で且つ乾燥温度が一定である恒率乾燥段階、
そして最後が単位時間当りの水分の蒸発量が次第に減
じ、且つ被乾燥物質の温度(シート温度)が急激に上昇
し加熱温度(乾燥媒体温度近辺)に達する減率乾燥段
階、の3段階である。
乾燥の過程を説明する。塗被工程で原紙に水性の塗被液
を塗被された紙シートは、多量の水分を含んだ状態で乾
燥工程に送られる。本発明に用いられる乾燥用の熱源
は、過熱水蒸気または過熱水蒸気と空気から成る気体
で、これが乾燥装置内で低温の紙シートに接触すると過
熱水蒸気の一部が紙シート上で凝縮して液体となる。こ
の際発生する多大の凝縮潜熱により紙シートの温度は急
速に上昇して短時間で乾燥温度に達し恒率乾燥段階に入
る。この段階では乾燥温度が一定であり且つ、加熱用の
気体の水蒸気分圧と関係する湿球温度にほぼ等しい。乾
燥温度に達した紙シートは過熱水蒸気の顕熱を逐次与え
られて水分を蒸発する。恒率乾燥段階を過ぎる(限界含
水率を越える)と単位時間当りの蒸発量を減じ、しかも
紙シートは次第に紙温が高くなって目標水分に達して乾
燥装置を出る。
乾燥熱源としての加熱空気による従来技術の乾燥と比較
して、予熱時間若しくは予熱期間が極めて短いことであ
る。更に同一温度に於ける加熱空気と過熱水蒸気による
乾燥と過熱水蒸気による乾燥とを比較すると、加熱気体
の温度が低い場合には、乾燥温度の低い加熱空気乾燥の
方が乾燥速度が速いが、加熱温度が高くなると気体の加
熱温度と乾燥温度の差より、熱伝達係数(これは気体の
持つ物性で決まる)の方が支配的となり、過熱水蒸気乾
燥の方が有利となる。よって、過熱度が増せば乾燥速度
は速くなることが判る。これが本発明のもう一つの特徴
である。これにより既存の設備では生産能力が高めら
れ、(塗工速度のアップ)、また新しく設備を設計する
際には乾燥工程が短縮され、省スペース化が可能とな
る。次に乾燥媒体と蒸発する気体が同じであるため、設
備的にも品質管理的にも気体の回収、再利用が容易であ
り、熱効率が高くコスト的に有利である。また種々の各
種乾燥方式を検討した結果、本発明で得られた塗工紙は
品質上でも良好な結果が得られ、特に透気度やインキ乾
燥性等の向上を見い出した。
昇により被乾燥物質の内部で温度上昇による水分の膨張
と内部でも水分蒸発が起こるため、被乾燥物は加熱され
る前に比べて密度が粗な状態となって、塗工層のポーラ
ス化に繋がり、透気度やインキ乾燥性が向上する。更に
乾燥速度が高いと紙の弾性率、強度、こわさが向上する
ことより、高弾性率で高強度の、また水中伸び、伸縮
率、カールなどの寸法安定性の優れた紙が得られる。
て説明する。アンワインダ4から繰り出された原紙5
は、ブレードコータ6を用いて水性の塗被液を塗被され
て後、箱型熱風乾燥機から成る乾燥装置7に入る。本発
明に使用される塗被装置は、ブレードコータに限らず、
エアーナイフコータ,ロールコータ,バーコータ,カー
テンコータ,グラビアコータ,含浸装置などが使用出来
る。また本発明に用いられる乾燥装置7は、箱型熱風乾
燥機に限らず、本発明の主旨、特に加熱用気体の循環使
用に適うものであるならば、特に制限はなされない。ま
た、本発明の使用箇所であるが乾燥工程で全ゾーン使用
のみに限らず、従来の乾燥方法との組み合わせも可能で
あり、これに就いても特に制限は無い。乾燥装置内では
塗被により水分を多量に含んだ紙シートは、過熱水蒸気
により乾燥装置7内で図1の様な経過を辿って乾燥さ
れ、所定の水分に管理してリール8で巻き取られる。
ーを示す。スーパーヒーター9により加熱された高温過
熱水蒸気10は、乾燥装置11に送入されて、紙シート
12に直接接触して乾燥に供する。高温過熱水蒸気10
からエネルギーを与えられた紙シート12は、水分を次
第に蒸発させて乾燥し所定の水分となって乾燥装置11
を出る。エネルギーを与えて温度が下がり、且つ新たに
蒸発した水蒸気を含んだ低温水蒸気13は、ブロワー1
4を介してスーパーヒーター9に導入され、そこで所定
の温度に過熱され、回収・再生して、紙シート12の乾
燥に供される。この際回収気体は、紙シートより蒸発し
た水蒸気に相当する量が増加するので、その分は排出口
15により系外に排出させて別の用途に向けられ、絶え
ず一定量を循環させる。
は、重油,軽油,天然ガス,電気など、所定の温度迄過
熱することが出来るものならば、特に制限は無い。従来
の加熱空気を主体とした乾燥では、乾燥により蒸発した
水蒸気が混入するため、循環使用すると空気と水蒸気の
混合割合が変化し、従って乾燥温度が変化して乾燥速度
や製品の品質が変わって操業が難しくなる。また、乾燥
装置の内部や出入口で露結によるトラブルが発生し易く
なる。そのため、乾き空気(フレッシュエアー)を吹き
込んで、水蒸気分圧を下げなければならない。また低い
水蒸気分圧の乾燥媒体から蒸発潜熱を回収するのは難し
く、水蒸気の蒸発潜熱が回収出来ないため、エネルギー
としての価値は低減する。このため現状では乾燥に供し
た空気は大気中に廃棄されている。
水蒸気単独か若しくは過熱水蒸気が主体で、その湿球温
度が85〜110℃であることが望ましい。この温度が85℃
未満であると、加熱用気体の水蒸気分圧が低くなって大
気圧との差が大きくなり、乾燥装置内での空気の混入量
が増加し、また排気からの熱回収の効率も低下する。こ
れを防ぐため、乾燥装置を密閉にして真空性を高くする
方法があるが、設備的負担が著しく増加し、実用的では
ない。また実施例の中に示す様に恒率乾燥段階での乾燥
温度が低下すると、本発明の品質面の効果も薄れる。こ
の温度が110℃を超えてしまうと水蒸気分圧が高くなっ
て加熱用気体の全圧力が高くなり過ぎ、乾燥装置からの
気体の漏れが大きくなり、安定した操業が困難になるた
め注意を要する。
ましい。この温度が500℃を超すと乾燥度の制御が難し
く、減率乾燥段階で急速に過乾燥になる恐れがあり、変
色や角質化等、紙質の低下の懸念がある。一方150℃未
満であると過熱度が小さいため加熱空気に比べて乾燥速
度が劣り、また熱源として容量も低くなる。更には乾燥
装置の周壁により冷されて結露し、天井より水滴となっ
て紙シート上に落下し断紙の原因となる恐れがある。
系,新聞・下級紙系の紙或いは片艶紙,クラフト紙,グ
ラシン紙,板紙など従来から使用されている塗被用原紙
なら何でも使用出来る。次に本発明に用いられる水性の
塗被紙は、本発明の性格からして、紙に塗被する塗被組
成物が水溶液或いは水系のサスペンジョンなど水を媒体
とし、しかも乾燥した時、蒸発の主体が水であって有機
溶媒など他の揮発物を余り含まないものならば特に限定
しない。一例として顔料とバインダを主成分とするクレ
ーコート用塗被液、バインダと顕色剤若しくは発色剤を
含む感圧記録紙用塗被液、発色剤、顕色剤とバインダを
主成分とする感熱記録紙用塗被液、耐水性及び吸水性を
付与する薬剤、バインダなどを含むインクジェット記録
用塗被液、難燃性など特殊な機能を付与するための含浸
紙用の含浸液が挙げられる。
原紙に塗被し、過熱水蒸気のみか、或いは大部分が過熱
水蒸気から成る気体を使用して乾燥するため、循環使用
しても乾燥用空気の組成は、余り変化しない。この加熱
用気体と蒸発気体が同じ物質であることが回収・再生を
容易にし、しかも長時間循環使用しても恒率乾燥温度を
ほぼ一定にしている。更に加熱用気体が過熱水蒸気であ
ることが、予熱乾燥ではその凝縮潜熱を、水分の蒸発に
はその顕熱を利用するため、予熱乾燥の時間を短くし、
恒率乾燥温度を高くしている。これにより高い品質の塗
被紙を効率良く、安定して生産することが出来る。ま
た、本発明を湿球温度85〜110℃、加熱温度150〜500℃
の範囲内で実施すれば、白色度の低下の懸念無く且つモ
トリングの悪化も無い良好な品質を見い出すことが出来
る。
に説明するが、勿論これ等の実施例に限定するものでは
ない。
(81g/m2)の片面に下記の配合組成で固形分濃度60
%の塗布液を乾燥後の塗布重量が13g/m2になる様に
塗被し、乾燥用の加熱気体として温度210,280または42
0℃で、湿球温度99℃の過熱水蒸気及び温度140,210ま
たは280℃で、湿球温度50〜57℃の空気を使用して乾燥
した後、スーパーキャレンダー処理してコート紙を製造
し、夫々実施例1,2,3、比較例1,2,3とした。
各コート紙の品質の分析結果及び蒸発速度を表1に示
す。加熱温度が同一の場合、本発明は比較例と比べて、
密度,透気度,インキ乾燥性及びモトリングに優れてお
り、蒸発温度も速くなっていた。また、塗被後のカール
も見られなかった。一方、白色度及び白色光沢度、IG
T強度は両者殆ど変わらなかった。
g/m2)の片面に下記の配合組成で固形分濃度60%の
塗布液を乾燥後の塗布重量が18g/m2になる様に塗被
し、乾燥用の加熱気体として温度280または420℃で、湿
球温度99℃の過熱水蒸気及び温度140または280℃で、湿
球温度50〜57℃の空気を使用して乾燥した後、スーパー
キャレンダー処理してアート紙を製造し、夫々実施例
4,5、比較例4,5とした。各アート紙の品質の分析
結果及び蒸発速度を表2に示す。実施例1,2,3と同
様な結果となり、特に透気度,インキ乾燥性に就いては
優れていた。
により水蒸気分圧を変え、湿球温度を63,76,91,99℃
とした以外は(夫々比較例6,7、及び実施例6,7)
実施例1,2,3と同様の方法で塗布重量20g/m2の
コート紙を製造し、各コート紙の密度とインキ乾燥性を
調べ、その結果を図4,5に示した。これ等の図から判
る様に過熱水蒸気の湿球温度が高くなるに従ってコート
紙の密度は低下し、インキ乾燥性は向上した。
厚さで除して求めた。 (2)白色度;JIS P 8123に準じ、白色度を測定した。 (3)白色光沢度;JIS P 8142に準じ、75度鏡面光沢度
を測定した。 (4)平滑度;JAPAN TAPPI No.5に準じ、王研式平滑度
計によった測定した。 (5)透気度;JAPAN TAPPI No.5に準じ、王研式透気度
計によった測定した。 (6)IGT;JIS P 8129に準じ、IGT印刷適性試験
機によって測定した。 (7)インキ乾燥性;塗被液を塗被した面に、明製作所
製RIテスターを用いて、サカタインク社製のNew GSL
墨インクを0.8cc印刷し、60秒後、白紙に転写させた時
の転写紙の白色度の低下を測定した。
明製作所製RIテスターを用いて、サカタインク社のNe
w GSL超光沢メジュームインクを0.2cc印刷し、5秒後に
サカタインク社のNew GSL紅インクを0.15cc印刷してイ
ンクむらを目視で判定した。 評価基準:
塗被紙のカールを目視で判定した。 評価基準: (10)蒸発速度;塗被紙の乾燥前後のシート水分から算
出した。単位面積、単位時間当りの水の蒸発量を示す。
気体と塗被紙より蒸発する気体が同じ物質であるため、
回収・再使用が極めて容易となり、熱効率が高い。ま
た、加熱用気体が水蒸気であることが、従来の加熱空気
と比べて予熱乾燥時間を短縮し、恒率乾燥温度を高く出
来、このため全体の乾燥時間が短くなって、乾燥速度が
上がる。従って生産性が向上し、また新しい装置では乾
燥工程が簡素化出来る。更に水分を含んだ塗被紙を急速
に高い温度まで加熱出来るため、被乾燥物質がポーラス
になり、透気度,インキ乾燥性などが向上し、また乾燥
速度も速いため、塗被紙の寸法安定性等も向上する。
図である。
る。
図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 原紙に水性の塗被液を塗被し、乾燥して
塗被紙を製造するに際し、直接紙シートに接触して乾燥
に供した、湿球温度が85〜110℃である水蒸気若し
くは水蒸気と空気から成る気体を加熱再生して循環使用
することを特徴とする塗被紙の製造方法。 - 【請求項2】 加熱再生された気体の温度が150〜5
00℃である請求項1に記載の塗被紙の製造方法。
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