JP2732380B2 - 樹脂製品の電気溶融着装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性の樹脂製品を
接合させる電気溶融着装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、樹脂製の管の端部を差込んだ樹脂
製の継手の受口の内周面に予め螺旋状に巻かれた電気抵
抗線に電流を流し、管と継手の接合部を溶融させて接合
させる電気溶融着装置があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従来の電気溶融着装置
は、溶融着作業を開始する前にオペレータ自身が被溶融
着樹脂製品の品種（継手の材質、形状、サイズ）から発
熱（仕事）量を判別してコントローラにヒートパターン
を入力し、そのヒートパターンに基づいて溶融着作業を
行っていたから、取扱いに熟練や経験が必要となる問題
があった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】然るに、本発明は、樹脂
製継手に埋込んだ発熱体両端の２つの端子に、コントロ
ーラのコネクタより突出させる固定端子を接続させて発
熱体に電力を供給し、継手の受口に接続する樹脂製管と
の接合面の電気融着を行うようにした樹脂製品の電気溶
融着装置において、継手の品種を判別する可動端子をコ
ネクタに退入自在に突設させ、前記固定端子を接続させ
る電力供給用のメス形端子及び可動端子を係合させるヒ
ートパターン選定用の凹部を、継手の受口端面で管の軸
芯方向に沿って設けると共に、溶融着作業開始からの最
大電力量を時間差で検出する補正手段をコントローラに
設けて、これら最大電力量と時間差に基づいて設定され
るヒートパターンを補正するように構成したものであ
る。

【０００５】

【作 用】従って本発明は、コントローラに予め設定さ
れる継手の材質形状・サイズなど品種に対応したヒート
パターンに基づく自動の溶融着作業が行われるもので、
コネクタ接続時凹部に可動端子を自動的に係合させて品
種を判別し適正なヒートパターンを選定して、その品種
に適正に対処させた溶融着を可能とさせ、特にこの場合
固定端子を接続する端子及び可動端子を係合させる凹部
を継手端面で管の軸芯方向に設けることによって、家屋
と家屋の間或いは他の設置物間など狭少スペースでのこ
れら接続においても、管の軸芯に沿った支障のない良好
な作業を可能とさせて取扱い性に秀れると共に、接続後
においてもこれら端子及び凹部を外側に突出させて障害
とさせることなどない簡潔外観構造を保持させて保守及
び耐久性などの向上も図れ、また溶融着作業開始からの
最大電力量とその時間から例えば継手と管との隙間を検
出して、この隙間に応じてヒートパターンを自動的に補
正して、隙間の大小の影響を受けることのない常に安定
した高精度な溶融着作業を可能とさせるものである。

【０００６】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述
する。図１は制御回路図、図２は電気溶融着装着全体の
外観図であり、図中（１）は電気溶融着器本体で、本体
ケース（２）上面には持運び用の左右取手（３）（４）
を設けると共に、本体ケース（２）一側の操作パネル
（５）面には、溶融着作業開始及び停止の各釦（６）
（７）と、ヒートパターン設定用の複数の入力釦（８）
…と、溶融着作業状態及び設定入力するヒートパターン
などを可視表示するデジタル表示器（９）と、各種の報
知声を発生するスピーカ（１０）とを設けている。また
交流１００ボルトの商用電源に接続させるプラグ（１
１）を先端に設ける電源コード（１２）と、地面などに
差込む金属棒（１３）を先端に設けるアースコード（１
４）と、継手の端子に接続させるコネクタ（１５）を先
端に設ける接続コード（１６）とを、前記本体ケース
（２）から延出している。

【０００７】また、図中（１７）及び（１８）は接合部
を溶融させて接合させる同材質の熱可塑性の樹脂製品で
ある継手及び管である。

【０００８】図３及び図４に示す如く、前記継手（１
７）の各受口（１９）内周面には、電気絶縁被膜を施し
た電気抵抗線（２０）を螺旋状に巻いてスリーブ状に形
成した発熱体（２１）が二次成形により予め埋込まれる
と共に、前記継手（１７）の各受口（１９）端面には、
その内周面の電気抵抗線（２０）両端の端子（２２）
（２３）を露出させ、また各受口（１９）の内周面から
外周面に貫通させる溶融確認用の小孔（１９ａ）を設け
ている。

【０００９】尚、前記電気抵抗線（２０）の材質、長
さ、太さ、電気抵抗は継手（１７）の材質、形状、サイ
ズなど品種によって適宜選定されている。

【００１０】また、前記継手（１７）の各受口（１９）
端面で、前記端子（２２）（２３）の間には、その継手
（１７）の材質、形状、サイズなど品種によって深さの
異なる品種判別用の凹部（２４）を形成している。

【００１１】一方、前記コネクタ（１５）の接続端面か
らは、前記端子（２２）（２３）に差込み接続させる固
定端子（２５）（２６）を突出させると共に、その固定
端子（２５）（２６）の間から前記凹部（２４）に差込
む可動端子（２７）を突出させている。

【００１２】また、前記コネクタ（１５）内部に品種セ
ンサであるポテンショメータ（２８）を備えると共に、
コネクタ（１５）内部の可動端子（２７）にポテンショ
メータ（２８）のピニオンギヤ（２９）に噛合うラック
（３０）を形成し、継手（１７）側の各端子（２２）
（２３）にコネクタ（１５）側の各端子（２５）（２
６）を差込み接続させたとき、同時に継手（１７）側の
凹部（２４）にコネクタ（１５）側の可動端子（２９）
を差込み、その可動端子（２７）の退入移動量をポテン
ショメータ（２８）で検出することにより、継手（１
７）の材質、形状、サイズなど品種を判別するように構
成している。

【００１３】また、前記可動端子（２７）を突出方向に
弾圧するバネ（３１）と、前記ポテンショメータ（２
８）の取付ブラケット（３２）に当接させて、可動端子
（２７）の突出方向の移動を規制するストッパ（３３）
により、可動端子（２７）をポテンショメータ（２８）
の基準位置に位置決めしている。

【００１４】また、前記コネクタ（１５）内部に温度セ
ンサ（３４）を備え、温度センサ（３４）の検知面（３
５）をコネクタ（１５）に開設した孔（３６）から外部
に臨ませ、前記温度センサ（３４）により継手（１７）
直近の外気温度を検出するように構成している。

【００１５】前記コネクタ（１５）を先端に取付けた接
続コードは前記端子（２５）（２６）に接続する電源コ
ード（３７）と、前記ポテンショメータ（２８）に接続
する接続コード（３８）と、前記温度センサ（３４）に
接続する接続コード（３９）を前記本体（１）に接続す
るものである。

【００１６】図１に示す如く、前記本体（１）にマイク
ロコンピュータで構成するコントローラ（４０）を備
え、前記溶融着開始及び停止の各釦（６）（７）と、ヒ
ートパターン設定用の各入力釦（８）…を有するヒート
パターン設定器（４１）と、前記表示器（９）と、前記
スピーカ（１０）の音声合成回路（４２）と前記ポテン
ショメータ（２８）と、前記温度センサ（３４）と、ヒ
ートパターンを記憶させるメモリ（４３）を前記コント
ローラ（４０）に接続させると共に、そのコントローラ
（４０）に前記コネクタ（１５）を介して継手（１７）
の発熱体（２１）を接続させ、ポテンショメータ（２
８）の出力に基づいて継手（１７）の品種を判別し、そ
の継手（１７）の品種に対応したヒートパターンを選択
設定し、そのヒートパターンに基づいて発熱体（２１）
の発熱（仕事）量を制御し、継手（１７）と管（１８）
の電気溶融着作業を行うように構成している。

【００１７】ところで、前記メモリ（４３）には継手
（１７）の品種毎のヒートパターンが記憶されるもの
で、図５のヒートパターン線図から明らかなように、前
記ヒートパターンは発熱体（２１）に流す電流値（Ａ）
と時間（ｔ）とを設定し、溶融着作業開始から電流を流
し始め、第１の設定電流値（Ａ１）に達したらその第１
の設定電流値（Ａ１）を第１の時間（ｔ１）保ち、第１
の時間（ｔ１）が経過したら電流値（Ａ）を第４の時間
の間一定の度合で下げ、第２の設定電流値（Ａ２）に達
したらその第２の設定電流値（Ａ２）を第２の時間（ｔ
２）保ち、第２の時間（ｔ２）が経過したら電流値を
「０」にするようにしている。

【００１８】そして、前記第１の設定電流値（Ａ１）に
よる発熱体（２１）の発熱量で継手（１７）と管（１
８）の接合部の樹脂を溶融させ、第２の設定電流値（Ａ
２）による発熱体（２１）の発熱量で溶融樹脂を定着さ
せて、継手（１７）と管（１８）の接合部を接合させる
ように構成している。

【００１９】また、継手（１７）と管（１８）の接合部
の隙間（Ｌ）が大きい場合、樹脂に伝達される熱量が小
さく、発熱体（２１）の温度が早く上昇し、温度が上昇
すると電気抵抗も大きくなる一方、逆に前記隙間（Ｌ）
が小さい場合、樹脂に伝達される熱量が大きく、発熱体
（２１）の温度上昇が遅くなる。そして、この特性を利
用し、電流値（Ａ）が溶融着作業開始から第１の設定電
流値（Ａ１）に立上がる時間（ｔ３）差により継手（１
７）と管（１８）の接合部の隙間（Ｌ）を検出し、また
前記ヒートパターンを補正するように構成している。

【００２０】また、溶融着作業現場の外気温度が高い場
合、樹脂温度が早く上昇し、逆に外気温度が低い場合、
樹脂温度の上昇が遅くなるから、前記温度センサ（３
４）出力に基づいても前記ヒートパターンを補正するよ
うに構成している。

【００２１】本実施例は上記の如く構成するもので、溶
融着作業現場に電気溶融着器本体（１）を持込み、前記
本体（１）の電源コード（１２）先端のプラグ（１１）
を溶融着作業現場に備えられる電源に接続させると共
に、前記本体（１）のアースコード（１２）先端の金属
棒（１３）を溶融着作業現場の地面に差込み、前記本体
（１）を溶融着作業可能にセットした後、継手（１７）
の受口（１９）に管（１８）の端部を差込むと共に、管
（１８）の端部を差込んだ継手（１７）の受口（１９）
端面の端子（２２）（２３）及び凹部（２４）に前記本
体（１）の接続コード（１６）先端のコネクタ（１５）
の固定端子（２５）（２６）及び可動端子（２７）を差
込み、前記本体（１）の溶融着作業開始釦（６）をオン
操作することにより、自動的に溶融着作業が開始される
もので、図６のフローチャートにも示す如く、溶融着作
業開始釦（６）がオン操作されると、先ずポテンショメ
ータ（２８）の出力値を読み込み、継手（１７）の材
質、形状、サイズなど品種を判別し、その品種に対応し
たヒートパターンをメモリ（４３）から読み出し、溶融
着作業の初期設定が自動的に行われる。然る後、発熱体
（２１）に電流を流し始め、第１の設定電流値（Ａ１）
に達したら、温度センサ（３４）の出力値を読み込み、
また隙間（Ｌ）を算出し、適正発熱（仕事）量を演算
し、その適正発熱（仕事）量に基づいて初期設定時に選
択設定したヒートパターンを補正する。そして、その補
正後のヒートパターンの時間（ｔ１）が経過したら電流
値（Ａ）を一定の度合で下げ、その電流値下降時間（ｔ
４）後、第２の設定電流値（Ａ２）に達したら、電流値
（Ａ）の下降を停止させ、時間（ｔ２）が経過したら、
電流値（Ａ）を「０」にすることにより、溶融着作業を
完了するものである。

【００２２】また、図８のフローチャートに示す如く、
前記本体（１）のヒートパターン設定用の入力釦（８）
…操作に基づく品種設定器（４１）の出力値を読み込
み、コントローラ（４０）に品種を判断させることがで
きる。この場合、対応するヒートパターンがメモリ（４
３）に記憶されている場合には、そのヒートパターンを
読み出し、溶融着作業が開始される一方、対応するヒー
トパターンがメモリ（４３）に記憶されていない場合に
は、作業不可能をオペレータに報知するものである。

【００２３】ところで、上記実施例では、凹部（２４）
という機械的変化を継手（１７）の受口（１９）の端面
に与え、その凹部（２４）の深さをポテンショメータ
（２８）によって電気信号に変換し、コントローラ（４
０）に継手（１７）の材質、形状、サイズなど品種を自
動的に判別させたが、図９に示す如く、継手（１７）の
各受口（１９）の内部にその継手（１７）の材質、形
状、サイズなど品種によって電気抵抗値の異なる抵抗素
子（４４）を予め二次成型により埋め込んでおき、その
抵抗素子（４４）の一端を発熱体（２１）の電気抵抗線
（２０）に接続させると共に、前記抵抗素子（４４）の
他端に接続させる端子（４５）を発熱体（２１）用の端
子（２２）（２３）の間で継手（１７）の各受口（１
９）の端面に露出させる一方、コントローラ（４０）の
コネクタ（１５）の接続端面の発熱体（２１）用の端子
（２５）（２６）の間に前記端子（４５）に差込み接続
させる固定端子（４６）を突出させ、継手（１７）側の
各端子（２２）（２３）（４５）にコネクタ（１５）側
の各端子（２５）（２６）（４６）を同時に差込み接続
させることにより、継手（１７）の抵抗素子（４４）の
電気抵抗値をコントローラ（４０）に入力させることに
より、コントローラ（４０）に継手（１７）の材質、形
状、サイズなど品種を継手（１７）に与えた電気的変化
によって判別させてもよい。

【００２４】

【発明の効果】以上実施例から明らかなように本発明
は、樹脂製継手（１７）に埋込んだ発熱体（２１）両端
の２つの端子（２２）（２３）に、コントローラ（４
０）のコネクタ（１５）より突出させる固定端子（２
５）（２６）を接続させて発熱体（２１）に電力を供給
し、継手（１７）の受口（１９）に接続する樹脂製管
（１８）との接合面の電気融着を行うようにした樹脂製
品の電気溶融着装置において、継手（１７）の品種を判
別する可動端子（２７）をコネクタ（１５）に退入自在
に突設させ、前記固定端子（２５）（２６）を接続させ
る電力供給用のメス形端子（２２）（２３）及び可動端
子（２７）を係合させるヒートパターン選定用の凹部
（２４）を、継手（１７）の受口（１９）端面で管（１
８）の軸芯方向に沿って設けると共に、溶融着作業開始
からの最大電力量を時間差で検出する補正手段をコント
ローラ（４０）に設けて、これら最大電力量と時間差に
基づいて設定されるヒートパターンを補正するように構
成したものであるから、コントローラ（４０）に予め設
定される継手（１７）の材質形状・サイズなど品種に対
応したヒートパターンに基づく自動の溶融着作業が行わ
れるもので、コネクタ（１５）接続時凹部（２４）に可
動端子（２７）を自動的に係合させて適正なヒートパタ
ーンを選定して、その品種に適正に対処させた溶融着を
可能とさせることができ、特にこの場合固定端子（２
５）（２６）を接続する端子（２２）（２３）及び可動
端子（２７）を係合させる凹部（２４）を継手（１７）
端面で管（１８）の軸芯方向に沿って設けて、家屋と家
屋の間或いは他の設置物間など狭少スペースでのこれら
接続においても、管の軸芯に沿った支障のない良好な作
業を可能とさせることができて取扱い性に秀れると共
に、接続後においてもこれら端子（２２）（２３）及び
凹部（２４）を外側に突出させて障害とさせることなど
ない簡潔外観構造を保持させて保守及び耐久性などの向
上も図ることができ、また溶融着作業開始からの最大電
力量とその時間から例えば継手（１７）と管（１８）と
の隙間を検出して、この隙間に応じてヒートパターンを
自動的に補正して、隙間の大小の影響を受けることのな
い常に安定した高精度な溶融着作業を可能とさせること
ができるなど顕著な効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】制御回路図。

【図２】電気溶融着装置全体の外観図。

【図３】樹脂製品の接合部の断面説明図。

【図４】発熱体とコントローラの接続説明図。

【図５】ヒートパターン線図。

【図６】フローチャート。

【図７】フローチャート。

【図８】フローチャート。

【図９】樹脂製品の品種判別手段の変形例の説明図。

【符号の説明】

（１５） コネクタ （１７） 継手 （１８） 管 （１９） 受口 （２１） 発熱体 （２２）（２３） 端子 （２４） 凹部 （２５）（２６） 端子 （４０） コントローラ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱可塑性樹脂製継手の熱可塑性樹脂製管
   との接合面に埋込まれた電気抵抗線から成る発熱体に、
   継手の品種に応じて選択設定されたヒートパターンに基
   づいて通電するコントローラを備え、継手と管の接合面
   の樹脂を溶融させて接合させる樹脂製品の電気溶融着装
   置において、ヒートパターンで設定された発熱体への通
   電量と通電時間をもとに、通電開始から所定の通電量に
   立上がるまでの時間差により継手と管の隙間量を検出す
   る手段を設けると共に、発熱体に接続させるコントロー
   ラのコネクタに温度センサを設け、コントローラは検出
   された継手と管の隙間量と温度センサで検出する外気温
   度とに基づいてヒートパターンを補正することを特徴と
   する樹脂製品の電気溶融着装置。