JP2799388B2 - 過給機付エンジン - Google Patents
過給機付エンジンInfo
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Description
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は過給機付エンジンであって幾何学的圧縮比を
高圧縮比としたエンジンに関するものである。 (従来技術) 従来から、エンジンの吸気充填量を高めるため、過給
機によって吸気を過給するようにしたエンジンは種々知
られており(例えば実開昭56−171630号公報参照)、過
給機としては、排気ガスで駆動されるターボ過給機、エ
ンジン出力軸で駆動される機械式過給機等が知られてい
る。 ところで、従来の過給機付の火花点火式エンジンで
は、圧縮比を高くすると高過給領域でノッキングが生じ
易くなるため、エンジンの幾何学的圧縮比は8.5以下の
比較的低い値に設定されていたが、圧縮比を低くする
と、エンジンのサイクル効率が低下する傾向がある。ま
た、過給機付エンジンにおいては高過給時に排気温度の
過度の上昇を抑制して排気系の信頼性を確保する必要が
あり、このため従来は、高速高負荷時に空燃比をリッチ
にすることにより排気温度を引下げるようにしていた
が、このようにすると出力上の要求量より余分に燃料が
供給されることとなる。 これらの事情により、従来の過給機付エンジンでは燃
費が充分に改善されておらず、とくに高速高負荷域での
燃費が高くなり、このような点についての対策が要求さ
れていた。 (発明の目的) 本発明は上記の事情に鑑み、過給機付の火花点火式エ
ンジンにおいて、熱効率を向上し、燃費を大幅に改善す
ることができる過給機付エンジンを提供するものであ
る。 (発明の構成) 第1の発明は、過給機を備えた火花点火式エンジンに
おいて、エンジンの幾何学的圧縮化を8.5を越える高圧
縮比に設定するとともに、エンジンの低速域及び高速域
とも、バルブリフト量1mmとなる時点をもって吸排気弁
の開閉時点を定義した場合の、下死点からのクランク角
で表わした吸気弁閉時期Y(degABDC)とクランク角で
表わした吸排気弁の開弁オーバラップ期間X(deg)と
を、 Y≧−1.75X+10 という関係を満足するように設定したものである。 また、第2の発明は、過給機を備えた火花点火式エン
ジンにおいて、過給機で加圧された空気を冷却するイン
タークーラを吸気通路に設け、エンジンの幾何学的圧縮
比を8.5を越える高圧縮比に設定するとともに、エンジ
ンの低負荷域及び高負荷域とも、吸気弁がバルブリフト
量1mmの位置まで閉じる時点をもって定義した吸気弁閉
時期を下死点よりクランク角で50deg以上遅れた時期
で、かつ、有効圧縮比が膨張比より小さくて8.5以下と
なる時期に設定したものである。 また、第3の発明は、ターボ過給機を備えた火花点火
式エンジンにおいて、ターボ過給機で加圧された空気を
冷却するインタークーラを吸気通路に設け、エンジンの
幾何学的圧縮比を8.5を越える高圧縮比に設定するとと
もに、吸気弁閉時期を、吸気弁がバルブリフト量1mmの
位置まで閉じる時点をもって定義した場合に下死点より
クランク角で50deg以上遅れる第1閉時期と、この第1
閉時期よりも早い第2閉時期とに変更可能とした吸気弁
閉時期可変装置を設け、上記吸気弁閉時期を少なくとも
高速高負荷時及び低速高負荷時で加速初期以外は上記第
1閉時期とし、低速域における加速初期は上記第2閉時
期とするように吸気弁閉時期可変装置を制御する制御装
置を設けたものである。 なお、吸気弁および排気弁の開閉時期については一般
にその定義が統一されていないため、上記各発明の構成
では有効に吸,排気が行なわれる時期を考慮し、バルブ
リフト量1mmとなる時点をもって開閉時期を定義してい
る。以下、明細書中で単に吸気弁閉時期、開弁オーバラ
ップ期間というときは、上記定義に従うものを意味す
る。また、幾何学的圧縮比とは、シリンダのピストン下
死点での容積と隙間容積(上死点での容積)との比をい
う。 (作用) 上記第1の発明の過給機付エンジンによると、上記幾
何学的圧縮比が従来の過給機付の火花点火式エンジンよ
りも高い8.5を越える高圧縮比とされることにより熱効
率が高められ、しかも、エンジンの低速域及び高速域と
も、上記吸気弁閉時期Yと上記開弁オーバラップ期間X
とが上記不等式で示す関係を満足するように設定される
ことにより、高過給領域でのノッキングおよび排気温度
上昇を抑制する作用が得られる。 つまり、幾何学的圧縮比を高くした上で吸気弁閉時期
を遅らせると、膨張比が稼がれながら有効圧縮比が適度
に抑えられることにより、耐ノック性を高めるとともに
排気温度を引き下げる作用が得られ、、また、吸排気弁
の開弁オーバラップ期間を大きくしても、その開弁オー
バラップ期間中に燃焼室内の残留排気ガスが掃気される
ことで燃焼室内の温度が低下して耐ノック性が高められ
るとともに排気温度を引下げる作用が得られ、吸気弁閉
時期を遅らせることによる作用と開弁オーバラップ期間
を大きくすることによる作用とは互いに補い合うことが
できる。このことに着目して第1の発明は、後述のよう
な実験データに基づき、エンジンの低速域及び高速域と
も、両者の関係を上記のように設定したものであり、こ
れによってノッキングおよび排気温度上昇が抑制されつ
つ、高圧縮比化により熱効率が高められ、燃費が改善さ
れる。 また、上記第2の発明の過給機付エンジンによると、
上記幾何学的圧縮比が8.5を越える高圧縮比とされると
ともに上記吸気弁閉時期が遅らされ、とくに幾何学的圧
縮比がかなり高い場合(例えば9.5以上)であっても有
効圧縮比が8.5以下となるように吸気弁閉時期が設定さ
れることにより、膨張比が稼がれながら有効圧縮比が適
度に抑えられ、かつ、エンジン外部では過給機により加
圧供給される吸気がインタークーラで冷却される。従っ
て、高負荷域では、上記吸気弁閉時期が遅らされること
による圧縮量の減少分が過給によるエンジン外部の圧縮
仕事で補われて充填量が確保されつつ、この外部の圧縮
仕事による過給気の温度上昇がインタークーラで抑制さ
れるとともに、上記吸気弁閉時期が遅らされることでエ
ンジン内部での圧縮仕事による温度上昇が抑制されるこ
とにより、ノッキングおよび排気温度上昇を抑制する作
用が高められる。そして、高圧縮比化により熱効率が高
められ、燃費が改善される。また、上記のように幾何学
的圧縮比が8.5を越える高圧縮比とされるという設定下
で低負荷域でも吸気弁閉時期が大きく遅らされることに
より、低負荷域でのポンピングロスによる燃費改善も有
効に達成される。 上記第3の発明の過給機付エンジンによると、高速高
負荷時及び低速高負荷時で加速初期以外は、吸気弁閉時
期が遅らされることによりノッキングおよび排気温度上
昇が抑制されつつ、高圧縮比化により熱効率が高められ
られることで燃費改善が図られ、また、過給量が比較的
少ない低速域での加速初期には吸気弁閉時期が早められ
ることによって吸気の吹返しが防止され、有効圧縮比が
高められるため、加速性能が高められる。 (実施例) 第1図は本発明の第1実施例を示し、この図におい
て、1は火花点火式エンジンであって、その各気筒2の
燃焼室には吸気ポート3および排気ポート4が開口して
おり、これらのポート3,4には図外の動弁機構により開
閉作動される吸気弁5および排気弁6が装備されてい
る。 上記各気筒2の吸気ポート3には吸気通路7が接続さ
れている。この吸気通路7は、下流端が各気筒2の吸気
ポート3に連通する独立吸気通路8と、各独立吸気通路
8の上流端に接続されたサージタンク9と、このサージ
タンクの上流側に接続された共通吸気通路10とで構成さ
れ、共通吸気通路10の上流端はエアクリーナ11に接続さ
れている。 上記共通吸気通路10には、吸入空気量を検出するエア
フローメータ12と、吸入空気量を調整するスロットル弁
13と、吸気を過給する過給機14とが設けられている。こ
の過給機14は、当実施例ではエンジンで駆動されるルー
ツ式等の機械式過給機で形成され、図外のエンジン出力
軸に電磁クラッチ等を介して連結されている。また、上
記共通吸気通路10における過給機14の直上流と直下流と
はバイパス吸気通路15によって連通され、このバイパス
吸気通路15の途中には、このバイパス吸気通路15を開閉
するバイパス弁16が設けられている。 上記各気筒2の吸気ポート3に連通する独立吸気通路
8にはそれぞれ、燃料を噴射供給する燃料噴射弁17が設
けられるとともに、この燃料噴射弁17の上流に、全開状
態と小開度に閉じて独立吸気通路8を絞る状態とにわた
って開閉可能な絞り制御弁18が配設されている。この各
絞り制御弁18はアクチュエータ19に連結されて、このア
クチュエータ19により同時に開閉作動されるようになっ
ている。そして、エンジン回転数を検出する回転数セン
サ21およびエンジン負荷に相当するスロットル開度等を
検出するセンサ22からの信号を受けるコントロールユニ
ット20により、上記アクチュエータ19に制御信号が出力
されて、後述のように運転状態に応じて絞り制御弁18の
開閉作動が制御される。 このような過給機付エンジンにおいて、エンジンの幾
何学的圧縮比は8.5を越えるように設定され、従来の過
給機付エンジン(幾何学的圧縮比が7.5〜8.5程度)と比
べて高圧縮比に設定されている。 また、第2図に示すような吸気弁5と排気弁6のバル
ブリフト特性において、吸気弁5の開閉時期(I.Oおよ
びI.C)ならびに排気弁6の開閉時期(E.OおよびE.C)
は次のように設定されている。すなわち、第2図中に示
すように、クランク角で表わした吸排気弁の開弁オーバ
ラップ期間をX(deg)とし、下死点(BDC)からのクラ
ンク角で表わした吸気弁閉時期をY(degABDC)とする
と、バルブリフト量1mmとなる時点をもって吸排気弁の
開閉時点を定義した場合に上記両者の関係が Y≧−1.75X+10 …… となるように設定されている。また、後述のように吸気
弁5の遅閉じによって断熱圧縮より断熱膨張を大きくす
る作用をもたせるため、下死点までのクランク角で表わ
した排気弁開時期Z(degBBDC)と上記吸気弁閉時期Y
との関係は[Y>Z]となるように設定されている。 このような設定を従来の過給機付エンジンと比べる
と、従来の一般的な過給機付の火花点火式エンジンでは
吸気弁閉時期が20〜40degABDC程度、開弁オーバラップ
期間が−30〜−20deg程度となっており、これでは上記
式を満足しないのに対し、本発明では、吸気弁閉時期
Yおよび開弁オーバラップ期間Xの双方を従来よりも大
きくするか、少なくともいずれか一方を従来より大きく
することにより、上記式の条件を満足するように設定
される。 また、上記開弁オーバラップ期間を格別に大きくせず
に、主に吸気弁遅閉じによる作用で高過給時のノッキン
グおよび排気温度上昇を抑制しつつ燃費改善を図ろうと
する場合には、上記吸気弁閉時期を約50degABDC以上に
遅い時期で、かつ、有効圧縮比が8.5以下となるような
時期(幾何学的圧縮比が9.5程度以上においてはこの条
件を満足すべく吸気弁閉時期を50degABDCよりもさらに
大きく遅らせた時期)に設定しておく。 以上のような過給機付エンジンによると、幾何学的圧
縮比の高圧縮比化によってサイクル効率の向上が図られ
つつ、高過給域でもノッキングを防止する作用および排
気温度を引下げる作用が得られる。 すなわち、吸気弁5の閉時期Yを遅らせると、吸気弁
5が閉じられてから排気弁6が開かれるまでの間で、圧
縮行程と比べて膨張行程が大きくなり、有効圧縮比が引
下げられつつ膨張比が稼がれることとなる。従って、幾
何学的圧縮比に対応する膨張行程での仕事によりサイク
ル効率が高められるとともに、有効圧縮比が引下げられ
ることにより、過給量が多い高速高負荷域での耐ノック
性が高められ、かつ、断熱圧縮による温度上昇に比べて
断熱膨張による温度低下が大きくなることにより排気温
度が引下げられる。 また、開弁オーバラップ期間Xを大きくすると、過給
圧が排気圧を上回る過給領域において、上記開弁オーバ
ラップ期間に燃焼室内の残留排気ガスを掃気する作用が
高められ、この掃気作用によって燃焼室内の温度が引下
げられるため、耐ノック性が高められるとともに排気温
度が引下げられる。そして、耐ノック性が高められるこ
とによりエンジンの高圧縮比化が可能となってサイクル
効率が高められる。 このように、吸気弁閉時期を遅らせることと、開弁オ
ーバラップ期間を大きくすることは、共に高圧縮比の下
で耐ノック性を高めるとともに排気温度を引下げる作用
をなし、両者は互いにその作用を補い合うような関係を
有する。 この関係を耐ノック性について調べると第3図のよう
になる。すなわち、第3図は、幾何学的圧縮比を9.4と
し、吸気弁閉時期Yおよび開弁オーバラップ期間Xを種
々変えた場合の、エンジン回転数1500rpmでのノック限
界時の平均有効圧力Pe(kg/cm2)を示したものであり、
図中の線P1〜P4は平均有効圧力が等圧のラインである。
なお、このデータにおいてエンジン回転数を1500rpmと
したのは、使用頻度が高くて代表例としてふさわしいた
めである。また、幾何学的圧縮比は9.4以外の高圧縮比
に設定しても、傾向としては第3図に示すものと同様と
なる。 この図のように、吸気弁閉時期Yを一定値に固定して
開弁オーバラップ期間Xを変化させた場合、図中の線A
よりも左側まで開弁オーバラップ期間Xが小さくなると
ノック限界時の平均有効圧力が極端に下がる傾向が生
じ、つまりこのような領域ではノッキングが生じ易くな
る。従って、吸気弁閉時期Yに対して開弁オーバラップ
期間Xは、線Aより右側の斜線を付した領域内とするこ
とが、耐ノック性にとって望ましいものとなる。また、
図中の線Bよりも右側の領域では吸気の吹抜けにより平
均有効圧力が低下するので、線Aと線Bとの間が望まし
い領域である。 この図から、上記線Aを吸気弁閉時期Yと開弁オーバ
ラップ期間Xとの関係式で求めると、 Y=−1.75X+100 (バルブリフト量0mmでX,Yを定義) もしくは Y=−1.75X+10 (バルブリフト量1mmでX,Yを定義) となる。よって、前記の式を満足するように吸気弁閉
時期Yと開弁オーバラップ期間Xとを設定しておけば、
幾何学的圧縮比を高くしても耐ノック性を高めることが
可能となる。 本発明において上記開弁オーバラップ期間Xを約−23
degに設定した場合の、幾何学的圧縮比および吸気弁閉
時期Yの望ましい領域は第4図および第5図のようにな
る。 すなわち、第4図は、幾何学的圧縮比を横軸、有効圧
縮比を縦軸にとり、吸気ポート閉時期をパラメータとし
て、これらの関係を示している。この図において、破線
の斜線を付した範囲は従来の過給機付エンジンによる場
合の設定範囲を示し、このように従来の過給機付エンジ
ンでは、幾何学的圧縮比が7.5〜8.5、吸気ポート閉時期
が20〜40degABDC程度に設定されており、この範囲で高
過給時のノッキング防止および燃焼安定性の確保のため
の適度の有効圧縮比が得られるようにしている。これに
対し、本発明において開弁オーバラップ期間を上記設定
とした場合、幾何学的圧縮比および吸気弁閉時期Yの望
ましい範囲とそれに対応する有効圧縮比の範囲は、実線
の斜線を付した領域となる。つまり、幾何学的圧縮比を
8.5より高い高圧縮比とする一方、吸気弁閉時期を50deg
ABDC以上に遅い時期で、かつ、有効圧縮比が膨張比より
も小さくて8.5以下となるような時期(幾何学的圧縮比
が9.5程度以上においてはこの条件を満足すべく吸気弁
閉時期を50degABDCよりもさらに大きく遅らせた時期)
に設定することにより、有効圧縮比を従来と同程度とす
ることができる。あるいは、幾何学的圧縮比を高くする
と隙間容積が小さくなって残留ガスの減少により燃焼安
定性が高められるため、有効圧縮比を従来よりも低くす
るように設定することもできる。 有効圧縮比を上記のような所定範囲内とするには、幾
何学的圧縮比と吸気弁閉時期Yとの関係が第5図に斜線
を付して示した範囲となるように、幾何学的圧縮比を高
くするほど吸気弁閉時期の遅れを大きくすればよい。 このような設定による場合の作用効果を確認した実験
データを第6図(a)〜(c)に示す。 第6図(a)〜(c)は種々の平均有効圧力下での燃
費率、吸気負圧、排気温度を、本発明による場合と従来
の過給機付エンジンによる場合および無過給エンジンに
よる場合について調べたデータを示したものである。こ
れら各図においてそれぞれ、実線は本発明のエンジンで
幾何学的圧縮比を9.4、吸気弁閉時期を約60degABDC、開
弁オーバラップ期間を−23degに設定した場合のもので
あり、また、破線は従来の過給機付エンジンで幾何学的
圧縮比を7.9、吸気弁閉時期を約30degABDCとした場合、
二点鎖線は無過給エンジンで幾何学的圧縮比を9.4、吸
気弁閉時期を約30degABDCとしたものである。エンジン
回転数は1500rpm、空燃比はλ=1としている。 これらの実験データから明らかなように、本発明にお
いて上記設定とした過給機付エンジンによると、従来の
過給機付エンジンおよび無過給の高圧縮比エンジンのい
ずれと比べても、燃費率が低くなる。さらに、吸気負圧
が小さくなることから、低,中負荷域でポンピングロス
を低減する効果も得られる。このような傾向は他のエン
ジン回転数域でもみられる。また、排気温度は従来の過
給機付エンジンと比べて低くなり、従って、高速高負荷
時に排気温度の過度の上昇を抑制するためにも従来の過
給機付エンジンほど空燃比のリッチ化が必要でないこと
がわかる。 なお、上記データは、吸気弁閉時期を遅らせた場合の
ものであるが、ノッキングを抑制しつつ高圧縮比を達成
することによる燃費改善および排気温度低下の効果は前
述のように開弁オーバラップ期間Xを大きくすることに
よっても可能となる。 また、このように吸気弁閉時期や開弁オーバラップ期
間を大きくした場合、アイドル等の低速軽負荷域では排
気ガスの逆流等により燃焼安定性が多少悪化する傾向が
あるが、第1図に示す実施例ではこのような傾向を是正
するため、独立吸気通路8に絞り制御弁18が設けられて
いる。そして、第7図に示すように、低速軽負荷域で
は、上記絞り制御弁18が小開度に閉じられる。これによ
り、例えば開弁オーバラップ期間Xが大きく設定されて
いる場合に、第8図に示すように、開弁オーバラップ期
間中の排気ガスの逆流を抑制する作用が得られる。 すなわち、第8図は吸排気弁のバルブリフト特性に対
応させて、低速軽負荷域での平均排気圧Pe、平均吸気圧
Pb、絞り制御弁18を閉じた場合の独立吸気通路8での吸
気圧Pb1と気筒内圧力Pc、絞り制御弁18を設けない場合
の気筒内圧力Pc′を示している。このように低速軽負荷
域では、平均吸気圧Pbが平均排気圧Peよりも低くなるこ
とにより、排気ガスが各独立吸気通路8に逆流するが、
絞り制御弁18を閉じると、ここで排気ガスの逆流が止め
られるので、これより下流側の独立吸気通路18内および
気筒2内の圧力が上昇し、この圧力上昇により排気圧と
の圧力差が小さくなるため、排気系から気筒および独立
吸気通路8への排気ガスの逆流が抑えられる。こうして
燃焼安定性が高められることとなる。 第9図は本発明の第2実施例を示し、この実施例で
は、吸気弁閉時期Yおよび開弁オーバラップ期間Xを運
転状態に応じて変更可能としている。すなわち、この図
において、エンジン1の各気筒2の燃焼室には主吸気ポ
ート31、副吸気ポート32および排気ポート33が開口し、
これらのポートが主吸気弁34、副吸気弁35および排気弁
36によってそれぞれ開閉される。そして、後述のように
主吸気弁34と副吸気弁35の開弁期間が異なっている。 上記各吸気ポート31,32とサージタンク37との間に
は、主吸気ポート31に連通する主吸気通路38と副吸気ポ
ート32に連通する副吸気通路39とが、互いに独立して形
成され、上記副吸気通路39にはこの通路を開閉するシャ
ッター弁40が設けられており、これらにより吸気弁閉時
期(および開弁オーバラップ期間)を変更可能とする吸
気弁閉時期可変装置41が構成されている。上記シャッタ
ー弁40は、コントロールユニット42によりアクチュエー
タ43を介してエンジン回転数を検出する回転数センサ44
と、スロットル弁47下流の吸気通路内圧力を検出する圧
力センサ45と、スロットル弁47の開度を検出するスロッ
トル開度センサ46とからの各検出信号が入力されてい
る。 また、過給機50は、当実施例ではターボ過給機が用い
られ、排気通路53に設けられたタービン51と、吸気通路
54に設けられたコンプレッサ52とを備え、排気ガスによ
り駆動されて吸気を過給するようになっている。上記吸
気通路54における過給機50のコンプレッサ52の下流に
は、過給機50から吐出された過給気を冷却するインター
クーラ56が設けられている。なお、55は上記主,副吸気
通路38,39に燃料を噴射する燃料噴射弁、57は過給機50
のタービン51をバイパスするウエストゲート通路、58は
上記ウエストゲート通路57に設けられたウエストゲート
バルブである。 このエンジン1でも、その幾何学的圧縮比は8.5を越
えるの高圧縮比に予め設定されている。 また、上記主吸気弁34、副吸気弁35および排気弁36の
バルブリフト特性は第10図のように設定され、副吸気弁
35は主吸気弁34よりも開弁期間が長くなっている。そし
て、上記シャッター弁40が開かれた状態では、副吸気弁
35の開弁期間が各気筒の実質上の吸気弁開弁期間とな
り、このときの吸気弁閉時期Ysおよび開弁オーバラップ
期間Xsは前述の式を満足するように大きく設定されて
いる。一方、上記シャッター弁40が閉じられた状態で
は、主吸気弁34の開弁期間が各気筒の実質上の吸気弁開
期間となり、このときの吸気弁閉時期Ypおよび開弁オー
バラップ期間Xpは比較的小さく、従来と同程度となるよ
うに設定されている。なお、この第2実施例でも、主に
吸気弁遅閉じによる作用で高過給時のノッキングおよび
排気温度上昇を抑制しつつ燃費改善を図ろうとする場合
には、シャッター弁40が開かれたときの実質上の吸気弁
閉弁時期(副吸気弁35の閉時期)Ysを約50degABDC以上
としておけばよい。 また、上記シャッター弁40は、コントロールユニット
42により、少なくとも高速高負荷域では開かれる一方、
低速で過給量が少ない所定高負荷時には閉じられるよう
に制御される。例えば第11図に示すように、エンジン回
転数が所定回転数Ns(1700rpm程度)以上の高速域でシ
ャッター弁40を全開とし、所定回転数Ns未満の低速域で
は加速初期に閉じられるように制御される。 この制御を第12図のフローチャートにより説明する
と、このフローチャートにおいては、ステップS1でエン
ジン回転速度Eを読込み、次にステップS2での判定に基
づき、エンジン回転速度Eが所定回転数Ns以上と判定し
たときはシャッター弁40を開く(ステップS4)。また、
所定回転数Ns未満のときは、ステップS3での判定に基づ
き、加速開始後所定時間(たとえば2秒)以内の加速初
期と判定したときはシャッター弁40を閉じ(ステップ
S5)、それ以外はシャッター弁40を開く。 上記制御をさらに第13図のタイムチャートによって具
体的に説明すると、低速域でもスロットル開度が小さい
低負荷時にはシャッター弁40を開くが、スロットル開度
が大きくなる加速初期にはシャッター弁40を閉じ、その
後は吸気通路内圧力の上昇に応じてシャッター弁40を次
第に開く(第13図の実線参照)。この場合、低速段での
加速により過給圧が充分に上昇する前にエンジン回転数
が所定回転数Nsに達したときは、その時点でシャッター
弁40を全開する(第13図の破線参照)。 このような当実施例の構造によると、上記シャッター
弁40が開かれたときは、両吸気ポート31,32から吸気が
燃焼室に供給されて、副吸気弁35の開閉時期が各気筒の
実質上の吸気弁開閉時期となる。これにより、幾何学的
圧縮比は従来の過給機付エンジンと比べて高く設定され
ていながら、吸気弁閉時期Ys、開弁オーバラップ期間Xs
が大きくされることにより、第1実施例と同様に高速高
負荷域でもノッキングを抑制するとともに排気温度を引
下げる作用が得られる。 つまり、上記吸気弁閉時期Ysを遅らせると、膨張比と
比べて有効圧縮比が小さくされることにより、過給量が
多い高速高負荷域で耐ノック性が高められるとともに排
気温度が引下げられ、また、上記開弁オーバラップ期間
Xsを大きくすると、高過給時に開弁オーバラップ期間中
の掃気作用により耐ノック性が高められるとともに排気
温度が引下げられる。さらに、吸気通路8に過給気を冷
却するインタークーラ56が設けられていると、上記吸気
弁閉時期Ysが遅らされることに伴う圧縮量の減少分が過
給によるエンジン外部の圧縮仕事で補われて充填量が確
保されつつ、上記インタークーラ56による冷却作用で過
給気の温度が低く保たれ、上記吸気弁閉時期Ysが遅らさ
れることによる温度上昇抑制作用が有効に発揮されて、
ノッキングおよび排気温度上昇を抑制する作用が高めら
れる。 また、中,低負荷域では、吸気弁閉時期が遅らされる
ことによるポンピングロス低減作用が得られる。 一方、低速域での加速初期には、吸気弁開閉時期可変
装置41のシャッター弁40が閉じられ、副吸気ポート32か
らの吸気供給が停止されて、主吸気弁34の開閉時期が実
質的な吸気弁開閉時期となり、これによって有効にエン
ジン出力が高められ、加速性能の低下が防止される。つ
まり、高負荷でもエンジン回転数が低ければ過給量が比
較的少なく、とくにターボ過給機50はエンジン負荷の変
動に対する応答遅れ(いわゆるターボラグ)によって加
速初期の過給量が少ないので、このときに吸気弁閉時期
および開弁オーバラップ期間が大きくされれば、吸気の
吹返しや排気ガスの逆流等によって出力が低下する可能
性がある。そこでこのような加速初期の低過給状態にあ
るときは吸気弁閉時期が早められるとともに開弁オーバ
ラップ期間が小さくされ、これによって吸気の吹返しお
よび排気ガスの逆流が防止されるとともに有効圧縮比が
高められるため、加速性能が高められることとなる。 なお、この実施例においても、過給機50には上記ター
ボ過給機の代りにエンジンで駆動される機械式過給機を
用いてもよい。また、この実施例の構造において、副吸
気弁35の閉時期Ysを50degABDC以上とした場合に、実質
上の吸気弁閉時期を副吸気弁35の閉時期Ysとする(シャ
ッター弁40を開く)領域と主吸気弁34の閉時期Ypとする
(シャッター弁40を閉じる)領域とを第14図に示すよう
に設定しておいてもよく、とくに上記機械式過給機が用
いられる場合はこのような領域設定に基づいて制御すれ
ばよい。すなわち、上記機械式過給機が用いられる場合
も、第14図に斜線を付して示した高速高負荷域および
中,低負荷域(アイドル域を除く)ではシャッター弁40
を開いて実質上の吸気弁閉時期を副吸気弁35の閉時期Ys
とすることにより、高速高負荷域でのノッキング防止お
よび排気温度引下げ等の作用と中,低負荷域でのポンピ
ングロス低減作用が得られる。一方、エンジン回転数が
低くて過給量が少ない領域では、シャッター弁40を閉じ
て実質上の吸気弁閉時期を主吸気弁34の閉時期Ypとする
ことにより、有効圧縮比が高められてエンジン出力向上
に有利となる。 上記各実施例に示すように、吸気弁の開閉時期は一定
であってもよいし変更可能としてもよいが、少なくとも
高速高負荷域で、前記の式を満足するように吸気弁閉
時期および開弁オーバラップ期間を設定し、吸気弁閉時
期を遅らせる場合は50degABDC以上に設定する。 また、吸気弁開閉時期を変更可能とする場合に、吸気
弁閉時期可変装置としては、上記実施例に示したものの
ほかにも、例えば副吸気弁35に対してその作動を停止可
能とする弁停止機構を設け、あるいは、吸気弁の駆動タ
イミングを可変とするタイミング可変機構を設けてもよ
い。 (発明の効果) 以上のように本発明によると、ノッキングを防止しつ
つエンジンの幾何学的圧縮比を高圧縮比化してサイクル
効率を高めることができるとともに、空燃比のリッチ化
に頼らずに排気温度の過度上昇を防止することができ、
これらの作用で燃費を改善することがでる。 つまり、特許請求の範囲第1項に記載の発明による
と、エンジンの幾何学的圧縮比を8.5を越える高圧縮比
に設定するとともに、エンジンの低速域及び高速域と
も、吸気弁閉時期Y(degATDC)と吸排気弁の開弁オー
バラップ期間X(deg)とを、 Y≧−1.75X+10 という関係を満足するように設定しているため、この関
係を満足する範囲で吸気弁閉時期を遅らせると有効圧縮
比が引下げられ、また開弁オーバラップ期間を大きくす
ると高過給域での掃気作用が得られて、これらの相互作
用により高過給時のノッキングおよび排気温度上昇を抑
制して、有効に燃費を改善することができる。 また、特許請求の範囲第2項に記載の発明によると、
過給機で加圧された空気を冷却するインタークーラを吸
気通路に設け、エンジンの幾何学的圧縮比を8.5を越え
る高圧縮比に設定するとともに、エンジンに低負荷域及
び高速高負荷域とも、吸気弁閉時期を下死点よりクラン
ク角で50deg以上遅れた時期で、かつ、有効圧縮比が膨
張比よりも小さくて8.5以下となる時期に設定している
ため、エンジン外部でのインタークーラによる過給気冷
却作用と、吸気弁閉時期を遅らせることによるエンジン
内部での温度上昇抑制作用とにより、高過給時のノッキ
ングおよび排気温度上昇を抑制するとともに、低負荷域
でポンピングロスを低減することができ、低負荷域及び
高負荷域で有効に燃費を改善することができる。 また、特許請求の範囲第3項に記載の発明によると、
吸気弁閉時期を下死点よりクランク角で50deg以上遅れ
る第1閉時期とこれよりも早い第2閉時期とに変更可能
とし、少なくとも高速高負荷時及び低速高負荷時で加速
初期以外は上記第1閉時期とし、低速域における加速初
期は上記第2閉時期とするように制御しているため、高
負荷時で過給量が多いときのノッキングおよび排気温度
上昇を抑制する一方、エンジン負荷の変動に対するター
ボ過給機の応答遅れにより過給量が比較的少ない低速域
での過給初期には、吸気の吹き返しを抑制してエンジン
出力を高めることができる。
高圧縮比としたエンジンに関するものである。 (従来技術) 従来から、エンジンの吸気充填量を高めるため、過給
機によって吸気を過給するようにしたエンジンは種々知
られており(例えば実開昭56−171630号公報参照)、過
給機としては、排気ガスで駆動されるターボ過給機、エ
ンジン出力軸で駆動される機械式過給機等が知られてい
る。 ところで、従来の過給機付の火花点火式エンジンで
は、圧縮比を高くすると高過給領域でノッキングが生じ
易くなるため、エンジンの幾何学的圧縮比は8.5以下の
比較的低い値に設定されていたが、圧縮比を低くする
と、エンジンのサイクル効率が低下する傾向がある。ま
た、過給機付エンジンにおいては高過給時に排気温度の
過度の上昇を抑制して排気系の信頼性を確保する必要が
あり、このため従来は、高速高負荷時に空燃比をリッチ
にすることにより排気温度を引下げるようにしていた
が、このようにすると出力上の要求量より余分に燃料が
供給されることとなる。 これらの事情により、従来の過給機付エンジンでは燃
費が充分に改善されておらず、とくに高速高負荷域での
燃費が高くなり、このような点についての対策が要求さ
れていた。 (発明の目的) 本発明は上記の事情に鑑み、過給機付の火花点火式エ
ンジンにおいて、熱効率を向上し、燃費を大幅に改善す
ることができる過給機付エンジンを提供するものであ
る。 (発明の構成) 第1の発明は、過給機を備えた火花点火式エンジンに
おいて、エンジンの幾何学的圧縮化を8.5を越える高圧
縮比に設定するとともに、エンジンの低速域及び高速域
とも、バルブリフト量1mmとなる時点をもって吸排気弁
の開閉時点を定義した場合の、下死点からのクランク角
で表わした吸気弁閉時期Y(degABDC)とクランク角で
表わした吸排気弁の開弁オーバラップ期間X(deg)と
を、 Y≧−1.75X+10 という関係を満足するように設定したものである。 また、第2の発明は、過給機を備えた火花点火式エン
ジンにおいて、過給機で加圧された空気を冷却するイン
タークーラを吸気通路に設け、エンジンの幾何学的圧縮
比を8.5を越える高圧縮比に設定するとともに、エンジ
ンの低負荷域及び高負荷域とも、吸気弁がバルブリフト
量1mmの位置まで閉じる時点をもって定義した吸気弁閉
時期を下死点よりクランク角で50deg以上遅れた時期
で、かつ、有効圧縮比が膨張比より小さくて8.5以下と
なる時期に設定したものである。 また、第3の発明は、ターボ過給機を備えた火花点火
式エンジンにおいて、ターボ過給機で加圧された空気を
冷却するインタークーラを吸気通路に設け、エンジンの
幾何学的圧縮比を8.5を越える高圧縮比に設定するとと
もに、吸気弁閉時期を、吸気弁がバルブリフト量1mmの
位置まで閉じる時点をもって定義した場合に下死点より
クランク角で50deg以上遅れる第1閉時期と、この第1
閉時期よりも早い第2閉時期とに変更可能とした吸気弁
閉時期可変装置を設け、上記吸気弁閉時期を少なくとも
高速高負荷時及び低速高負荷時で加速初期以外は上記第
1閉時期とし、低速域における加速初期は上記第2閉時
期とするように吸気弁閉時期可変装置を制御する制御装
置を設けたものである。 なお、吸気弁および排気弁の開閉時期については一般
にその定義が統一されていないため、上記各発明の構成
では有効に吸,排気が行なわれる時期を考慮し、バルブ
リフト量1mmとなる時点をもって開閉時期を定義してい
る。以下、明細書中で単に吸気弁閉時期、開弁オーバラ
ップ期間というときは、上記定義に従うものを意味す
る。また、幾何学的圧縮比とは、シリンダのピストン下
死点での容積と隙間容積(上死点での容積)との比をい
う。 (作用) 上記第1の発明の過給機付エンジンによると、上記幾
何学的圧縮比が従来の過給機付の火花点火式エンジンよ
りも高い8.5を越える高圧縮比とされることにより熱効
率が高められ、しかも、エンジンの低速域及び高速域と
も、上記吸気弁閉時期Yと上記開弁オーバラップ期間X
とが上記不等式で示す関係を満足するように設定される
ことにより、高過給領域でのノッキングおよび排気温度
上昇を抑制する作用が得られる。 つまり、幾何学的圧縮比を高くした上で吸気弁閉時期
を遅らせると、膨張比が稼がれながら有効圧縮比が適度
に抑えられることにより、耐ノック性を高めるとともに
排気温度を引き下げる作用が得られ、、また、吸排気弁
の開弁オーバラップ期間を大きくしても、その開弁オー
バラップ期間中に燃焼室内の残留排気ガスが掃気される
ことで燃焼室内の温度が低下して耐ノック性が高められ
るとともに排気温度を引下げる作用が得られ、吸気弁閉
時期を遅らせることによる作用と開弁オーバラップ期間
を大きくすることによる作用とは互いに補い合うことが
できる。このことに着目して第1の発明は、後述のよう
な実験データに基づき、エンジンの低速域及び高速域と
も、両者の関係を上記のように設定したものであり、こ
れによってノッキングおよび排気温度上昇が抑制されつ
つ、高圧縮比化により熱効率が高められ、燃費が改善さ
れる。 また、上記第2の発明の過給機付エンジンによると、
上記幾何学的圧縮比が8.5を越える高圧縮比とされると
ともに上記吸気弁閉時期が遅らされ、とくに幾何学的圧
縮比がかなり高い場合(例えば9.5以上)であっても有
効圧縮比が8.5以下となるように吸気弁閉時期が設定さ
れることにより、膨張比が稼がれながら有効圧縮比が適
度に抑えられ、かつ、エンジン外部では過給機により加
圧供給される吸気がインタークーラで冷却される。従っ
て、高負荷域では、上記吸気弁閉時期が遅らされること
による圧縮量の減少分が過給によるエンジン外部の圧縮
仕事で補われて充填量が確保されつつ、この外部の圧縮
仕事による過給気の温度上昇がインタークーラで抑制さ
れるとともに、上記吸気弁閉時期が遅らされることでエ
ンジン内部での圧縮仕事による温度上昇が抑制されるこ
とにより、ノッキングおよび排気温度上昇を抑制する作
用が高められる。そして、高圧縮比化により熱効率が高
められ、燃費が改善される。また、上記のように幾何学
的圧縮比が8.5を越える高圧縮比とされるという設定下
で低負荷域でも吸気弁閉時期が大きく遅らされることに
より、低負荷域でのポンピングロスによる燃費改善も有
効に達成される。 上記第3の発明の過給機付エンジンによると、高速高
負荷時及び低速高負荷時で加速初期以外は、吸気弁閉時
期が遅らされることによりノッキングおよび排気温度上
昇が抑制されつつ、高圧縮比化により熱効率が高められ
られることで燃費改善が図られ、また、過給量が比較的
少ない低速域での加速初期には吸気弁閉時期が早められ
ることによって吸気の吹返しが防止され、有効圧縮比が
高められるため、加速性能が高められる。 (実施例) 第1図は本発明の第1実施例を示し、この図におい
て、1は火花点火式エンジンであって、その各気筒2の
燃焼室には吸気ポート3および排気ポート4が開口して
おり、これらのポート3,4には図外の動弁機構により開
閉作動される吸気弁5および排気弁6が装備されてい
る。 上記各気筒2の吸気ポート3には吸気通路7が接続さ
れている。この吸気通路7は、下流端が各気筒2の吸気
ポート3に連通する独立吸気通路8と、各独立吸気通路
8の上流端に接続されたサージタンク9と、このサージ
タンクの上流側に接続された共通吸気通路10とで構成さ
れ、共通吸気通路10の上流端はエアクリーナ11に接続さ
れている。 上記共通吸気通路10には、吸入空気量を検出するエア
フローメータ12と、吸入空気量を調整するスロットル弁
13と、吸気を過給する過給機14とが設けられている。こ
の過給機14は、当実施例ではエンジンで駆動されるルー
ツ式等の機械式過給機で形成され、図外のエンジン出力
軸に電磁クラッチ等を介して連結されている。また、上
記共通吸気通路10における過給機14の直上流と直下流と
はバイパス吸気通路15によって連通され、このバイパス
吸気通路15の途中には、このバイパス吸気通路15を開閉
するバイパス弁16が設けられている。 上記各気筒2の吸気ポート3に連通する独立吸気通路
8にはそれぞれ、燃料を噴射供給する燃料噴射弁17が設
けられるとともに、この燃料噴射弁17の上流に、全開状
態と小開度に閉じて独立吸気通路8を絞る状態とにわた
って開閉可能な絞り制御弁18が配設されている。この各
絞り制御弁18はアクチュエータ19に連結されて、このア
クチュエータ19により同時に開閉作動されるようになっ
ている。そして、エンジン回転数を検出する回転数セン
サ21およびエンジン負荷に相当するスロットル開度等を
検出するセンサ22からの信号を受けるコントロールユニ
ット20により、上記アクチュエータ19に制御信号が出力
されて、後述のように運転状態に応じて絞り制御弁18の
開閉作動が制御される。 このような過給機付エンジンにおいて、エンジンの幾
何学的圧縮比は8.5を越えるように設定され、従来の過
給機付エンジン(幾何学的圧縮比が7.5〜8.5程度)と比
べて高圧縮比に設定されている。 また、第2図に示すような吸気弁5と排気弁6のバル
ブリフト特性において、吸気弁5の開閉時期(I.Oおよ
びI.C)ならびに排気弁6の開閉時期(E.OおよびE.C)
は次のように設定されている。すなわち、第2図中に示
すように、クランク角で表わした吸排気弁の開弁オーバ
ラップ期間をX(deg)とし、下死点(BDC)からのクラ
ンク角で表わした吸気弁閉時期をY(degABDC)とする
と、バルブリフト量1mmとなる時点をもって吸排気弁の
開閉時点を定義した場合に上記両者の関係が Y≧−1.75X+10 …… となるように設定されている。また、後述のように吸気
弁5の遅閉じによって断熱圧縮より断熱膨張を大きくす
る作用をもたせるため、下死点までのクランク角で表わ
した排気弁開時期Z(degBBDC)と上記吸気弁閉時期Y
との関係は[Y>Z]となるように設定されている。 このような設定を従来の過給機付エンジンと比べる
と、従来の一般的な過給機付の火花点火式エンジンでは
吸気弁閉時期が20〜40degABDC程度、開弁オーバラップ
期間が−30〜−20deg程度となっており、これでは上記
式を満足しないのに対し、本発明では、吸気弁閉時期
Yおよび開弁オーバラップ期間Xの双方を従来よりも大
きくするか、少なくともいずれか一方を従来より大きく
することにより、上記式の条件を満足するように設定
される。 また、上記開弁オーバラップ期間を格別に大きくせず
に、主に吸気弁遅閉じによる作用で高過給時のノッキン
グおよび排気温度上昇を抑制しつつ燃費改善を図ろうと
する場合には、上記吸気弁閉時期を約50degABDC以上に
遅い時期で、かつ、有効圧縮比が8.5以下となるような
時期(幾何学的圧縮比が9.5程度以上においてはこの条
件を満足すべく吸気弁閉時期を50degABDCよりもさらに
大きく遅らせた時期)に設定しておく。 以上のような過給機付エンジンによると、幾何学的圧
縮比の高圧縮比化によってサイクル効率の向上が図られ
つつ、高過給域でもノッキングを防止する作用および排
気温度を引下げる作用が得られる。 すなわち、吸気弁5の閉時期Yを遅らせると、吸気弁
5が閉じられてから排気弁6が開かれるまでの間で、圧
縮行程と比べて膨張行程が大きくなり、有効圧縮比が引
下げられつつ膨張比が稼がれることとなる。従って、幾
何学的圧縮比に対応する膨張行程での仕事によりサイク
ル効率が高められるとともに、有効圧縮比が引下げられ
ることにより、過給量が多い高速高負荷域での耐ノック
性が高められ、かつ、断熱圧縮による温度上昇に比べて
断熱膨張による温度低下が大きくなることにより排気温
度が引下げられる。 また、開弁オーバラップ期間Xを大きくすると、過給
圧が排気圧を上回る過給領域において、上記開弁オーバ
ラップ期間に燃焼室内の残留排気ガスを掃気する作用が
高められ、この掃気作用によって燃焼室内の温度が引下
げられるため、耐ノック性が高められるとともに排気温
度が引下げられる。そして、耐ノック性が高められるこ
とによりエンジンの高圧縮比化が可能となってサイクル
効率が高められる。 このように、吸気弁閉時期を遅らせることと、開弁オ
ーバラップ期間を大きくすることは、共に高圧縮比の下
で耐ノック性を高めるとともに排気温度を引下げる作用
をなし、両者は互いにその作用を補い合うような関係を
有する。 この関係を耐ノック性について調べると第3図のよう
になる。すなわち、第3図は、幾何学的圧縮比を9.4と
し、吸気弁閉時期Yおよび開弁オーバラップ期間Xを種
々変えた場合の、エンジン回転数1500rpmでのノック限
界時の平均有効圧力Pe(kg/cm2)を示したものであり、
図中の線P1〜P4は平均有効圧力が等圧のラインである。
なお、このデータにおいてエンジン回転数を1500rpmと
したのは、使用頻度が高くて代表例としてふさわしいた
めである。また、幾何学的圧縮比は9.4以外の高圧縮比
に設定しても、傾向としては第3図に示すものと同様と
なる。 この図のように、吸気弁閉時期Yを一定値に固定して
開弁オーバラップ期間Xを変化させた場合、図中の線A
よりも左側まで開弁オーバラップ期間Xが小さくなると
ノック限界時の平均有効圧力が極端に下がる傾向が生
じ、つまりこのような領域ではノッキングが生じ易くな
る。従って、吸気弁閉時期Yに対して開弁オーバラップ
期間Xは、線Aより右側の斜線を付した領域内とするこ
とが、耐ノック性にとって望ましいものとなる。また、
図中の線Bよりも右側の領域では吸気の吹抜けにより平
均有効圧力が低下するので、線Aと線Bとの間が望まし
い領域である。 この図から、上記線Aを吸気弁閉時期Yと開弁オーバ
ラップ期間Xとの関係式で求めると、 Y=−1.75X+100 (バルブリフト量0mmでX,Yを定義) もしくは Y=−1.75X+10 (バルブリフト量1mmでX,Yを定義) となる。よって、前記の式を満足するように吸気弁閉
時期Yと開弁オーバラップ期間Xとを設定しておけば、
幾何学的圧縮比を高くしても耐ノック性を高めることが
可能となる。 本発明において上記開弁オーバラップ期間Xを約−23
degに設定した場合の、幾何学的圧縮比および吸気弁閉
時期Yの望ましい領域は第4図および第5図のようにな
る。 すなわち、第4図は、幾何学的圧縮比を横軸、有効圧
縮比を縦軸にとり、吸気ポート閉時期をパラメータとし
て、これらの関係を示している。この図において、破線
の斜線を付した範囲は従来の過給機付エンジンによる場
合の設定範囲を示し、このように従来の過給機付エンジ
ンでは、幾何学的圧縮比が7.5〜8.5、吸気ポート閉時期
が20〜40degABDC程度に設定されており、この範囲で高
過給時のノッキング防止および燃焼安定性の確保のため
の適度の有効圧縮比が得られるようにしている。これに
対し、本発明において開弁オーバラップ期間を上記設定
とした場合、幾何学的圧縮比および吸気弁閉時期Yの望
ましい範囲とそれに対応する有効圧縮比の範囲は、実線
の斜線を付した領域となる。つまり、幾何学的圧縮比を
8.5より高い高圧縮比とする一方、吸気弁閉時期を50deg
ABDC以上に遅い時期で、かつ、有効圧縮比が膨張比より
も小さくて8.5以下となるような時期(幾何学的圧縮比
が9.5程度以上においてはこの条件を満足すべく吸気弁
閉時期を50degABDCよりもさらに大きく遅らせた時期)
に設定することにより、有効圧縮比を従来と同程度とす
ることができる。あるいは、幾何学的圧縮比を高くする
と隙間容積が小さくなって残留ガスの減少により燃焼安
定性が高められるため、有効圧縮比を従来よりも低くす
るように設定することもできる。 有効圧縮比を上記のような所定範囲内とするには、幾
何学的圧縮比と吸気弁閉時期Yとの関係が第5図に斜線
を付して示した範囲となるように、幾何学的圧縮比を高
くするほど吸気弁閉時期の遅れを大きくすればよい。 このような設定による場合の作用効果を確認した実験
データを第6図(a)〜(c)に示す。 第6図(a)〜(c)は種々の平均有効圧力下での燃
費率、吸気負圧、排気温度を、本発明による場合と従来
の過給機付エンジンによる場合および無過給エンジンに
よる場合について調べたデータを示したものである。こ
れら各図においてそれぞれ、実線は本発明のエンジンで
幾何学的圧縮比を9.4、吸気弁閉時期を約60degABDC、開
弁オーバラップ期間を−23degに設定した場合のもので
あり、また、破線は従来の過給機付エンジンで幾何学的
圧縮比を7.9、吸気弁閉時期を約30degABDCとした場合、
二点鎖線は無過給エンジンで幾何学的圧縮比を9.4、吸
気弁閉時期を約30degABDCとしたものである。エンジン
回転数は1500rpm、空燃比はλ=1としている。 これらの実験データから明らかなように、本発明にお
いて上記設定とした過給機付エンジンによると、従来の
過給機付エンジンおよび無過給の高圧縮比エンジンのい
ずれと比べても、燃費率が低くなる。さらに、吸気負圧
が小さくなることから、低,中負荷域でポンピングロス
を低減する効果も得られる。このような傾向は他のエン
ジン回転数域でもみられる。また、排気温度は従来の過
給機付エンジンと比べて低くなり、従って、高速高負荷
時に排気温度の過度の上昇を抑制するためにも従来の過
給機付エンジンほど空燃比のリッチ化が必要でないこと
がわかる。 なお、上記データは、吸気弁閉時期を遅らせた場合の
ものであるが、ノッキングを抑制しつつ高圧縮比を達成
することによる燃費改善および排気温度低下の効果は前
述のように開弁オーバラップ期間Xを大きくすることに
よっても可能となる。 また、このように吸気弁閉時期や開弁オーバラップ期
間を大きくした場合、アイドル等の低速軽負荷域では排
気ガスの逆流等により燃焼安定性が多少悪化する傾向が
あるが、第1図に示す実施例ではこのような傾向を是正
するため、独立吸気通路8に絞り制御弁18が設けられて
いる。そして、第7図に示すように、低速軽負荷域で
は、上記絞り制御弁18が小開度に閉じられる。これによ
り、例えば開弁オーバラップ期間Xが大きく設定されて
いる場合に、第8図に示すように、開弁オーバラップ期
間中の排気ガスの逆流を抑制する作用が得られる。 すなわち、第8図は吸排気弁のバルブリフト特性に対
応させて、低速軽負荷域での平均排気圧Pe、平均吸気圧
Pb、絞り制御弁18を閉じた場合の独立吸気通路8での吸
気圧Pb1と気筒内圧力Pc、絞り制御弁18を設けない場合
の気筒内圧力Pc′を示している。このように低速軽負荷
域では、平均吸気圧Pbが平均排気圧Peよりも低くなるこ
とにより、排気ガスが各独立吸気通路8に逆流するが、
絞り制御弁18を閉じると、ここで排気ガスの逆流が止め
られるので、これより下流側の独立吸気通路18内および
気筒2内の圧力が上昇し、この圧力上昇により排気圧と
の圧力差が小さくなるため、排気系から気筒および独立
吸気通路8への排気ガスの逆流が抑えられる。こうして
燃焼安定性が高められることとなる。 第9図は本発明の第2実施例を示し、この実施例で
は、吸気弁閉時期Yおよび開弁オーバラップ期間Xを運
転状態に応じて変更可能としている。すなわち、この図
において、エンジン1の各気筒2の燃焼室には主吸気ポ
ート31、副吸気ポート32および排気ポート33が開口し、
これらのポートが主吸気弁34、副吸気弁35および排気弁
36によってそれぞれ開閉される。そして、後述のように
主吸気弁34と副吸気弁35の開弁期間が異なっている。 上記各吸気ポート31,32とサージタンク37との間に
は、主吸気ポート31に連通する主吸気通路38と副吸気ポ
ート32に連通する副吸気通路39とが、互いに独立して形
成され、上記副吸気通路39にはこの通路を開閉するシャ
ッター弁40が設けられており、これらにより吸気弁閉時
期(および開弁オーバラップ期間)を変更可能とする吸
気弁閉時期可変装置41が構成されている。上記シャッタ
ー弁40は、コントロールユニット42によりアクチュエー
タ43を介してエンジン回転数を検出する回転数センサ44
と、スロットル弁47下流の吸気通路内圧力を検出する圧
力センサ45と、スロットル弁47の開度を検出するスロッ
トル開度センサ46とからの各検出信号が入力されてい
る。 また、過給機50は、当実施例ではターボ過給機が用い
られ、排気通路53に設けられたタービン51と、吸気通路
54に設けられたコンプレッサ52とを備え、排気ガスによ
り駆動されて吸気を過給するようになっている。上記吸
気通路54における過給機50のコンプレッサ52の下流に
は、過給機50から吐出された過給気を冷却するインター
クーラ56が設けられている。なお、55は上記主,副吸気
通路38,39に燃料を噴射する燃料噴射弁、57は過給機50
のタービン51をバイパスするウエストゲート通路、58は
上記ウエストゲート通路57に設けられたウエストゲート
バルブである。 このエンジン1でも、その幾何学的圧縮比は8.5を越
えるの高圧縮比に予め設定されている。 また、上記主吸気弁34、副吸気弁35および排気弁36の
バルブリフト特性は第10図のように設定され、副吸気弁
35は主吸気弁34よりも開弁期間が長くなっている。そし
て、上記シャッター弁40が開かれた状態では、副吸気弁
35の開弁期間が各気筒の実質上の吸気弁開弁期間とな
り、このときの吸気弁閉時期Ysおよび開弁オーバラップ
期間Xsは前述の式を満足するように大きく設定されて
いる。一方、上記シャッター弁40が閉じられた状態で
は、主吸気弁34の開弁期間が各気筒の実質上の吸気弁開
期間となり、このときの吸気弁閉時期Ypおよび開弁オー
バラップ期間Xpは比較的小さく、従来と同程度となるよ
うに設定されている。なお、この第2実施例でも、主に
吸気弁遅閉じによる作用で高過給時のノッキングおよび
排気温度上昇を抑制しつつ燃費改善を図ろうとする場合
には、シャッター弁40が開かれたときの実質上の吸気弁
閉弁時期(副吸気弁35の閉時期)Ysを約50degABDC以上
としておけばよい。 また、上記シャッター弁40は、コントロールユニット
42により、少なくとも高速高負荷域では開かれる一方、
低速で過給量が少ない所定高負荷時には閉じられるよう
に制御される。例えば第11図に示すように、エンジン回
転数が所定回転数Ns(1700rpm程度)以上の高速域でシ
ャッター弁40を全開とし、所定回転数Ns未満の低速域で
は加速初期に閉じられるように制御される。 この制御を第12図のフローチャートにより説明する
と、このフローチャートにおいては、ステップS1でエン
ジン回転速度Eを読込み、次にステップS2での判定に基
づき、エンジン回転速度Eが所定回転数Ns以上と判定し
たときはシャッター弁40を開く(ステップS4)。また、
所定回転数Ns未満のときは、ステップS3での判定に基づ
き、加速開始後所定時間(たとえば2秒)以内の加速初
期と判定したときはシャッター弁40を閉じ(ステップ
S5)、それ以外はシャッター弁40を開く。 上記制御をさらに第13図のタイムチャートによって具
体的に説明すると、低速域でもスロットル開度が小さい
低負荷時にはシャッター弁40を開くが、スロットル開度
が大きくなる加速初期にはシャッター弁40を閉じ、その
後は吸気通路内圧力の上昇に応じてシャッター弁40を次
第に開く(第13図の実線参照)。この場合、低速段での
加速により過給圧が充分に上昇する前にエンジン回転数
が所定回転数Nsに達したときは、その時点でシャッター
弁40を全開する(第13図の破線参照)。 このような当実施例の構造によると、上記シャッター
弁40が開かれたときは、両吸気ポート31,32から吸気が
燃焼室に供給されて、副吸気弁35の開閉時期が各気筒の
実質上の吸気弁開閉時期となる。これにより、幾何学的
圧縮比は従来の過給機付エンジンと比べて高く設定され
ていながら、吸気弁閉時期Ys、開弁オーバラップ期間Xs
が大きくされることにより、第1実施例と同様に高速高
負荷域でもノッキングを抑制するとともに排気温度を引
下げる作用が得られる。 つまり、上記吸気弁閉時期Ysを遅らせると、膨張比と
比べて有効圧縮比が小さくされることにより、過給量が
多い高速高負荷域で耐ノック性が高められるとともに排
気温度が引下げられ、また、上記開弁オーバラップ期間
Xsを大きくすると、高過給時に開弁オーバラップ期間中
の掃気作用により耐ノック性が高められるとともに排気
温度が引下げられる。さらに、吸気通路8に過給気を冷
却するインタークーラ56が設けられていると、上記吸気
弁閉時期Ysが遅らされることに伴う圧縮量の減少分が過
給によるエンジン外部の圧縮仕事で補われて充填量が確
保されつつ、上記インタークーラ56による冷却作用で過
給気の温度が低く保たれ、上記吸気弁閉時期Ysが遅らさ
れることによる温度上昇抑制作用が有効に発揮されて、
ノッキングおよび排気温度上昇を抑制する作用が高めら
れる。 また、中,低負荷域では、吸気弁閉時期が遅らされる
ことによるポンピングロス低減作用が得られる。 一方、低速域での加速初期には、吸気弁開閉時期可変
装置41のシャッター弁40が閉じられ、副吸気ポート32か
らの吸気供給が停止されて、主吸気弁34の開閉時期が実
質的な吸気弁開閉時期となり、これによって有効にエン
ジン出力が高められ、加速性能の低下が防止される。つ
まり、高負荷でもエンジン回転数が低ければ過給量が比
較的少なく、とくにターボ過給機50はエンジン負荷の変
動に対する応答遅れ(いわゆるターボラグ)によって加
速初期の過給量が少ないので、このときに吸気弁閉時期
および開弁オーバラップ期間が大きくされれば、吸気の
吹返しや排気ガスの逆流等によって出力が低下する可能
性がある。そこでこのような加速初期の低過給状態にあ
るときは吸気弁閉時期が早められるとともに開弁オーバ
ラップ期間が小さくされ、これによって吸気の吹返しお
よび排気ガスの逆流が防止されるとともに有効圧縮比が
高められるため、加速性能が高められることとなる。 なお、この実施例においても、過給機50には上記ター
ボ過給機の代りにエンジンで駆動される機械式過給機を
用いてもよい。また、この実施例の構造において、副吸
気弁35の閉時期Ysを50degABDC以上とした場合に、実質
上の吸気弁閉時期を副吸気弁35の閉時期Ysとする(シャ
ッター弁40を開く)領域と主吸気弁34の閉時期Ypとする
(シャッター弁40を閉じる)領域とを第14図に示すよう
に設定しておいてもよく、とくに上記機械式過給機が用
いられる場合はこのような領域設定に基づいて制御すれ
ばよい。すなわち、上記機械式過給機が用いられる場合
も、第14図に斜線を付して示した高速高負荷域および
中,低負荷域(アイドル域を除く)ではシャッター弁40
を開いて実質上の吸気弁閉時期を副吸気弁35の閉時期Ys
とすることにより、高速高負荷域でのノッキング防止お
よび排気温度引下げ等の作用と中,低負荷域でのポンピ
ングロス低減作用が得られる。一方、エンジン回転数が
低くて過給量が少ない領域では、シャッター弁40を閉じ
て実質上の吸気弁閉時期を主吸気弁34の閉時期Ypとする
ことにより、有効圧縮比が高められてエンジン出力向上
に有利となる。 上記各実施例に示すように、吸気弁の開閉時期は一定
であってもよいし変更可能としてもよいが、少なくとも
高速高負荷域で、前記の式を満足するように吸気弁閉
時期および開弁オーバラップ期間を設定し、吸気弁閉時
期を遅らせる場合は50degABDC以上に設定する。 また、吸気弁開閉時期を変更可能とする場合に、吸気
弁閉時期可変装置としては、上記実施例に示したものの
ほかにも、例えば副吸気弁35に対してその作動を停止可
能とする弁停止機構を設け、あるいは、吸気弁の駆動タ
イミングを可変とするタイミング可変機構を設けてもよ
い。 (発明の効果) 以上のように本発明によると、ノッキングを防止しつ
つエンジンの幾何学的圧縮比を高圧縮比化してサイクル
効率を高めることができるとともに、空燃比のリッチ化
に頼らずに排気温度の過度上昇を防止することができ、
これらの作用で燃費を改善することがでる。 つまり、特許請求の範囲第1項に記載の発明による
と、エンジンの幾何学的圧縮比を8.5を越える高圧縮比
に設定するとともに、エンジンの低速域及び高速域と
も、吸気弁閉時期Y(degATDC)と吸排気弁の開弁オー
バラップ期間X(deg)とを、 Y≧−1.75X+10 という関係を満足するように設定しているため、この関
係を満足する範囲で吸気弁閉時期を遅らせると有効圧縮
比が引下げられ、また開弁オーバラップ期間を大きくす
ると高過給域での掃気作用が得られて、これらの相互作
用により高過給時のノッキングおよび排気温度上昇を抑
制して、有効に燃費を改善することができる。 また、特許請求の範囲第2項に記載の発明によると、
過給機で加圧された空気を冷却するインタークーラを吸
気通路に設け、エンジンの幾何学的圧縮比を8.5を越え
る高圧縮比に設定するとともに、エンジンに低負荷域及
び高速高負荷域とも、吸気弁閉時期を下死点よりクラン
ク角で50deg以上遅れた時期で、かつ、有効圧縮比が膨
張比よりも小さくて8.5以下となる時期に設定している
ため、エンジン外部でのインタークーラによる過給気冷
却作用と、吸気弁閉時期を遅らせることによるエンジン
内部での温度上昇抑制作用とにより、高過給時のノッキ
ングおよび排気温度上昇を抑制するとともに、低負荷域
でポンピングロスを低減することができ、低負荷域及び
高負荷域で有効に燃費を改善することができる。 また、特許請求の範囲第3項に記載の発明によると、
吸気弁閉時期を下死点よりクランク角で50deg以上遅れ
る第1閉時期とこれよりも早い第2閉時期とに変更可能
とし、少なくとも高速高負荷時及び低速高負荷時で加速
初期以外は上記第1閉時期とし、低速域における加速初
期は上記第2閉時期とするように制御しているため、高
負荷時で過給量が多いときのノッキングおよび排気温度
上昇を抑制する一方、エンジン負荷の変動に対するター
ボ過給機の応答遅れにより過給量が比較的少ない低速域
での過給初期には、吸気の吹き返しを抑制してエンジン
出力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例を示す過給機付エンジン全
体の概略図、第2図はこの実施例における吸気弁と排気
弁のバルブリフト特性を示す図、第3図はこの実施例に
おける吸気弁閉時期および開弁オーバラップ期間とノッ
キング限界時の平均有効圧力との関係を示す図、第4図
は開弁オーバラップ期間を一定値に設定した場合の幾何
学的圧縮比と吸気弁閉時期と有効圧縮比との関係を示す
図、第5図は第4図に示した関係に基づく上記幾何学的
圧縮比および吸気弁閉時期の好ましい範囲を示す図、第
6図(a)〜(c)は燃費率と吸気圧力と排気温度とに
ついて本発明の一実施例による場合と従来のエンジンに
よる場合とを比較した実験データ、第7図は絞り制御弁
の開閉制御の領域設定を示す図、第8図はエンジンの軽
負荷域での吸気圧と排気圧の関係を示す特性図、第9図
は第2実施例を示す過給機付エンジン全体の概略図、第
10図は第2実施例による場合の吸気弁および排気弁のバ
ルブリフト特性を示す図、第11図は第2実施例における
シャッター弁の制御の領域設定を示す図、第12図は上記
シャッター弁の制御のフローチャート、第13図は同制御
のタイムチャート、第14図は第2実施例における制御の
領域設定の別の例を示す図である。 1……エンジン、2……気筒、3,34,35……吸気弁、6,3
6……排気弁、14,50……過給機
体の概略図、第2図はこの実施例における吸気弁と排気
弁のバルブリフト特性を示す図、第3図はこの実施例に
おける吸気弁閉時期および開弁オーバラップ期間とノッ
キング限界時の平均有効圧力との関係を示す図、第4図
は開弁オーバラップ期間を一定値に設定した場合の幾何
学的圧縮比と吸気弁閉時期と有効圧縮比との関係を示す
図、第5図は第4図に示した関係に基づく上記幾何学的
圧縮比および吸気弁閉時期の好ましい範囲を示す図、第
6図(a)〜(c)は燃費率と吸気圧力と排気温度とに
ついて本発明の一実施例による場合と従来のエンジンに
よる場合とを比較した実験データ、第7図は絞り制御弁
の開閉制御の領域設定を示す図、第8図はエンジンの軽
負荷域での吸気圧と排気圧の関係を示す特性図、第9図
は第2実施例を示す過給機付エンジン全体の概略図、第
10図は第2実施例による場合の吸気弁および排気弁のバ
ルブリフト特性を示す図、第11図は第2実施例における
シャッター弁の制御の領域設定を示す図、第12図は上記
シャッター弁の制御のフローチャート、第13図は同制御
のタイムチャート、第14図は第2実施例における制御の
領域設定の別の例を示す図である。 1……エンジン、2……気筒、3,34,35……吸気弁、6,3
6……排気弁、14,50……過給機
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フロントページの続き
(72)発明者 梅園 和明
広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ
ダ株式会社内
(72)発明者 日當瀬 文雄
広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ
ダ株式会社内
(56)参考文献 特開 昭56−69411(JP,A)
特開 昭60−60223(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名)
F02B 29/08
F02B 33/00
F02B 37/00 302
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.過給機を備えた火花点火式エンジンにおいて、エン
ジンの幾何学的圧縮比を8.5を越える高圧縮比に設定す
るとともに、エンジンの低速域及び高速域とも、バルブ
リフト量1mmとなる時点をもって吸排気弁の開閉時点を
定義した場合の、下死点からのクランク角で表わした吸
気弁閉時期Y(degABDC)とクランク角で表わした吸排
気弁の開弁オーバラップ期間X(deg)とを、 Y≧−1.75X+10 という関係を満足するように設定したことを特徴とする
過給機付エンジン。 2.過給機を備えた火花点火式エンジンにおいて、過給
機で加圧された空気を冷却するインタークーラを吸気通
路に設け、エンジンの幾何学的圧縮比を8.5を越える高
圧縮比に設定するとともに、エンジンの低負荷域及び高
負荷域とも、吸気弁がバルブリフト量1mmの位置まで閉
じる時点をもって定義した吸気弁閉時期を下死点よりク
ランク角で50deg以上遅れた時期で、かつ、有効圧縮比
が膨張比より小さくて8.5以下となる時期に設定したこ
とを特徴とする過給機付エンジン。 3.ターボ過給機を備えた火花点火式エンジンにおい
て、ターボ過給機で加圧された空気を冷却するインター
クーラを吸気通路に設け、エンジンの幾何学的圧縮比を
8.5を越える高圧縮比に設定するとともに、吸気弁閉時
期を、吸気弁がバルブリフト量1mmの位置まで閉じる時
点をもって定義した場合に下死点よりクランク角で50de
g以上遅れる第1閉時期と、この第1閉時期よりも早い
第2閉時期とに変更可能とした吸気弁閉時期可変装置を
設け、上記吸気弁閉時期を少なくとも高速高負荷時及び
低速高負荷時で加速初期以外は上記第1閉時期とし、低
速域における加速初期は上記第2閉時期とするように吸
気弁閉時期可変装置を制御する制御装置を設けたことを
特徴とする過給機付エンジン。
Applications Claiming Priority (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP61-282625 | 1986-11-27 | ||
JP61-282624 | 1986-11-27 | ||
JP28262586 | 1986-11-27 | ||
JP28262486 | 1986-11-27 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63239312A JPS63239312A (ja) | 1988-10-05 |
JP2799388B2 true JP2799388B2 (ja) | 1998-09-17 |
Family
ID=26554683
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29932487A Expired - Fee Related JP2799388B2 (ja) | 1986-11-27 | 1987-11-26 | 過給機付エンジン |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2799388B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3236654B2 (ja) * | 1992-03-31 | 2001-12-10 | マツダ株式会社 | 機械式過給機付エンジン |
JPH05296070A (ja) * | 1992-04-14 | 1993-11-09 | Mazda Motor Corp | 過給機付エンジンの制御装置 |
JPH062552A (ja) * | 1992-06-19 | 1994-01-11 | Mazda Motor Corp | 過給機付きエンジンの吸気制御装置 |
JP3422033B2 (ja) * | 1992-09-28 | 2003-06-30 | マツダ株式会社 | 機械式過給機付エンジンの吸気装置 |
JP2022136514A (ja) * | 2021-03-08 | 2022-09-21 | マツダ株式会社 | エンジン |
-
1987
- 1987-11-26 JP JP29932487A patent/JP2799388B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS63239312A (ja) | 1988-10-05 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |