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JP2761104B2 - 脊髄小脳変性症治療剤 - Google Patents

脊髄小脳変性症治療剤

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Publication number
JP2761104B2
JP2761104B2 JP8506398A JP50639896A JP2761104B2 JP 2761104 B2 JP2761104 B2 JP 2761104B2 JP 8506398 A JP8506398 A JP 8506398A JP 50639896 A JP50639896 A JP 50639896A JP 2761104 B2 JP2761104 B2 JP 2761104B2
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JP
Japan
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spinocerebellar degeneration
parts
disease
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JP8506398A
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徹雄 酒井
恭演 安徳
豊次郎 松石
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SANTORII KK
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SANTORII KK
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Publication date
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  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、式(I): [式中、R1およびR2は、それぞれ水素原子を表すか、ま
たは一緒になって単結合を表し、R1およびR2が水素原子
を表す場合には、R3は−CH(OH)CH(OH)CH3、−CH(O
COCH3)CH(OCOCH3)CH3、−CH3、−CH2OH又はフェニル
基を表し、R1およびR2が一緒になって単結合を表す場合
には、R3は−COCH(OH)CH3を表す] で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効
成分とする脊髄小脳変性症の治療剤に関する。
従来の技術 脊髄小脳変性症は小脳系を中心とする神経変性疾患
で、孤発性と遺伝性があり、小脳と脊髄およびその連絡
路、ならびに大脳基底核が系統的に変性を示し、これら
の神経機能が徐々に低下するために、失調性歩行障害や
手足のふるえなどの小脳性運動失調を主徴とし、言語障
害・嚥下障害・呼吸障害・ジストニアなどの不随意運動
などをきたし、著しく日常生活を妨げる難病であり、こ
の疾患の発症の原因については全く不明である。治療に
関しては、脊髄小脳変性症の1つであるマチャドジョセ
フ(Machado−Joseph)病患者に抗菌剤であるスルファ
メトキサゾール−トリメトプリム合剤(以下、S−T剤
という)を投与したところ、神経症状の著しい改善が観
察されたという報告(Archives of Neurology,1988;45;
210−213)があるが、本剤は副作用が重篤なため、本症
の治療剤としての使用は検討されるに至っていない。従
って、原因療法的治療薬のみならず、確実に症状を緩和
できる対症療法的治療薬も未だに確立されていないのが
現状であり、治療薬が強く要望されている。また、本発
明の治療剤の有効成分である式(I)の化合物は公知化
合物であり、悪性高フェニルアラニン血症、うつ病、パ
ーキンソン病、その他の治療薬としての用途が知られて
いる。例えば、特開昭59−25323号公報、同59−76086号
公報、同61−277618号公報、同63−267781号公報を参
照。
発明の概要 本発明は、脊髄小脳変性症における脳の神経機能の低
下を回復させて、症状を改善させ、患者を日常生活の困
難から解放し、副作用がなく安全な治療剤を提供するこ
とを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、先に述べた
脊髄小脳変性症の1つであるマチャドジョセフ病患者に
抗菌剤であるS−T剤を投与した際の神経症状の改善
(Archives of Neurology,1988;45;210−213)に着目し
た。そして、S−T剤の薬理作用メカニズムにつき鋭意
研究の末、生体内に微量存在するテトラヒドロビオプテ
リンの脳内代謝回転率を増加させたがゆえに神経症状を
改善させたのではないかとの仮説をたてた。そこで、テ
トラヒドロビオプテリンによるマチャドジョセフ病患者
の治療を試みた。その結果、顕著に神経症状が改善され
ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明
は、マチャドジョセフ病およびそれと共通する小脳系病
変及び病態を有する他の脊髄小脳変性症治療剤に関する
ものである。
発明の詳細な説明 従って、本発明は、式(I): [式中、R1およびR2は、それぞれ水素原子を表すか、ま
たは一緒になって単結合を表し、R1およびR2が水素原子
を表す場合には、R3は−CH(OH)CH(OH)CH3、−CH(O
COCH3)CH(OCOCH3)、−CH3、−CH2OH又はフェニル基
を表し、R1およびR2が一緒になって単結合を表す場合に
は、R3は−COCH(OH)CH3を表す] で表される化合物またはその塩を有効成分とする脊髄小
脳変性症治療剤である。
本発明の有効成分である式(I)で表される化合物に
は次のものおよびそれらの塩が含まれる: (6R)−L−エリスロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプ
テリン(以下、「BH4」という。) (6R,S)−5,6,7,8−テトラヒドロビオプリテン 1′,2′−ジアセチル−5,6,7,8−テトラヒドロビオプ
テリン セピアプテリン 6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン 6−フェニル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン 以上の化合物で、好ましい化合物は5,6,7,8−テトラ
ヒドロビオプテリン類又はその塩であり、更にそのうち
でも最も好ましい化合物はBH4又はその塩である。
本発明で有効成分として使用する式(I)で表される
化合物は公知化合物である。例えば、特開昭59−25323
号公報、同59−76086号公報、同61−277618号公報、同6
3−267781号公報参照。これらは適当な塩として用いて
もよく、そのような塩としては薬理的に無毒性の酸、例
えば、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸等の鉱酸、及び、酢
酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、メシル酸等の有機酸
との塩が例示される。
本明細書において、「脊髄小脳変性症」とは、小脳系
を中心とする神経変性疾患で、小脳性運動失調を中核と
して発展する病態を示すものである。なお、脊髄小脳変
性症には、孤発性と遺伝性とがあり、いずれも、小脳と
脊髄およびその連絡路、ならびに大脳基底核が系統的に
変性を示し、これらの神経機能が徐々に低下するため
に、失調性歩行障害や手足のふるえなどの小脳性運動失
調を主徴とし、言語障害・嚥下障害・呼吸障害・ジスト
ニアなどの不随意運動をきたすものである。
孤発性の脊髄小脳変性症には、Shy−Drager症候群、
オリーブ橋小脳萎縮症(Dejerine−Thomas型)、線条体
黒質変性症、晩発型小脳皮質変性症が含まれる。
また、遺伝性の脊髄小脳変性症には、常染色体優性遺
伝性と常染色体劣性遺伝性があり、前者は常染色体上に
遺伝子座をもつ優性遺伝子により支配されるもの全てを
いい、その代表的な例としては、マチャトジョセフ(Ma
chado−Joseph)病(染色体14qにその遺伝子座を有す
る)、SCA1(染色体6pにその遺伝子座を有する)、SCA2
(染色体12qにその遺伝子座を有する)、遺伝性小脳皮
質萎縮症(Holmes型)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症
(DRPLA)(染色体12pにその遺伝子座を有する)、遺伝
性痙性対麻痺等が挙げられ、従来、遺伝性オリーブ橋小
脳萎縮症(OPCA)またはMenzel型オリーブ橋小脳萎縮症
(OPCA)といわれてきた症例の殆どがこれらに属するこ
とが判明してきた。後者は、常染色体上に遺伝子座をも
つ劣性遺伝子により支配されるもの全てをいい、その代
表的な例としては、Friedreich型運動失調症(染色体9q
13−q21にその遺伝子座を有する)等が挙げられる。
これらの疾患は病理学的にも似ており、小脳やその他
の周辺部位が程度の差こそあれ同様に変性に陥ってい
る。
以下、常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症の中で症例
頻度が高いマチャドジョセフ病を脊髄小脳変性症の例と
して本発明を説明するが、マチャドジョセフ病は、SCA
1、SCA2等の他の遺伝性・孤発性脊髄小脳変性症と共通
する小脳系病変及び病態を有し、本例は、式(I)で表
される化合物のこれら疾患に対する効果を支持するもの
である。なお、マチャドジョセフ病は、小脳性運動失調
と錐体路症状を主な特徴とし、その臨床病型から概ね1
型から3型の3つのタイプに分類される(酒井徹雄:神
経内科,30:246−252,1989)。その診断基準も酒井によ
って提唱されており(同、249−251)、本発明の治療例
において当該基準を採用した。
本発明の治療剤は、式(I)で表される化合物(活性
成分)を一般の医薬製剤に用いられる担体と、常法によ
って経口、直腸又は非経腸(静脈内、髄液中への投与を
含む)投与に適する製剤形態にすることにより製造され
る。
これら医薬製剤に用いられる担体としては、用いられ
る剤形によるが、一般的に賦形剤、結合剤、崩壊剤など
が挙げられる。
賦形剤の代表的な例としては澱粉、乳糖、白糖、ブド
ウ糖、マンニトール、セルロース等があり、結合剤とし
てはポリビニルピロリドン、澱粉、白糖、ヒドロキシプ
ロピルセルロース、アラビアゴムなどがある。又、崩壊
剤の例としてはデンプン、寒天、ゼラチン末、セルロー
ス、CMCなどがあるが、一般に用いられている賦形剤、
結合剤、崩壊剤であればこれら以外でもよい。
本発明の治療剤は、好ましくは上記担体以外に、有効
成分を安定化するための酸化防止剤を含有する。酸化防
止剤は医薬製剤に一般に使用されているものから適宜選
択され、例えば、アスコルビン酸、N−アセチルシステ
イン、L−システイン、dl−α−トコフェロール、天然
トコフェロール等があげられる。使用する量は、活性成
分(1種またはそれ以上)を安定化させる量であればよ
いが、一般的には活性成分1に対し重量で0.2ないし2.0
が好ましい。
経口投与に適する本発明の製剤は各々所定量の活性成
分(1種またはそれ以上)を含有する錠剤、カプセル
剤、粉末、散剤または顆粒剤として、またはシロップ、
エマルジョン若しくは頓服剤のような非水性液中の懸濁
液として提供できる。
顆粒剤は、活性成分(1種またはそれ以上)と1種ま
たはそれ以上の前記担体、酸化防止剤等の補助成分を均
一に混合して造粒し、ふるいを用いてメッシュをそろえ
ることにより提供される。錠剤は、活性成分(1種また
はそれ以上)を、場合により1種またはそれ以上の補助
成分と共に、圧縮または成形により製造できる。カプセ
ル剤は、活性成分(1種またはそれ以上)を、場合によ
り1種またはそれ以上の補助成分と均一に混合した粉末
または顆粒を適当なカプセルに充填機等を用いて充填し
て製造する。直腸投与用の製剤は、カカオ脂などの慣用
の担体を使用し、座薬として提供できる。非経腸投与用
製剤は、殺菌窒素浄化容器中に活性成分(1種またはそ
れ以上)を乾燥固体として密封して提供できる。この乾
燥固体製剤は非経腸投与時に、所定量の無菌水に分散も
しくは溶解して患者に投与することができる。
これらの製剤の製造においては、活性成分及び通常の
担体の他に前述の酸化防止剤を加えて製剤することが好
ましく、又所望により緩衝剤、風味付与剤、表面活性
剤、増粘剤、潤滑剤、滑沢剤等から選ばれる1種または
それ以上の補助成分をさらに含有してもよい。
活性成分、すなわち、式(I)で表される化合物の投
与量は投与経路、処置される症状、および処置を受ける
患者によって変わることは勿論のことであるが、最終的
には医師の判断にまかせられる。
脊髄小脳変性症を処置するのに適当な投与量は、0.1
〜50mg/kg(体重)/日の範囲にあり、代表的な好適投
与量は0.5〜10mg/kg(体重)/日である。
所望の投与量は上記の活性成分を1日1回投与しても
よいが、1日中の適当な間隔で2〜4回分割投与しても
よい。
活性成分は単独で、そのまま他の成分と混合せずに投
与することもできるが、投与量の調節を容易にするため
等の理由から活性成分を医薬製剤として投与することが
好ましい。
本発明の製剤は、有効成分として式(I)で表される
化合物と共に、トリプトファン、5−ヒドロキシトリプ
トファン(5−HTP)、チロシンおよびL−ドーパー
(L−DOPA)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を
補助的有効成分として含有してもよい。これら、有効成
分の混合により、式(I)で表される化合物の単独使用
に比べて、一般に一層優れた脊髄小脳変性症治療効果を
奏することが期待できる。本発明製剤中における上記各
成分の比率は特に限定されないが、例えば、重量で式
(I)で表される化合物の1に対して、トリプトファ
ン、5−HTP、チロシンおよびL−DOPAよりなる群から
選ばれる少なくとも1種を0.1〜10の範囲、好ましくは
0.5〜2の範囲とすることができる。
この混合製剤により脊髄小脳変性症を治療する際の適
当な投与量は、有効成分の合計量として0.1〜50mg/kg
(体重)/日の範囲にあり、好ましくは0.5〜10mg/kg
(体重)/日である。
治療に当たり、式(I)で表される化合物を単独で有
効成分として含む製剤および他の有効成分とともに含む
製剤の選択は、年齢、症状等に応じて医師により適宜選
択される。
本発明の脊髄小脳変性症に用いられる活性成分は、
(6R)−L−エリスロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプ
テリン(BH4)およびその塩が最も好ましいが、(6R,
S)−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン、1′,2′−
ジアセチル−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン、セ
ピアプテリン、6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロプ
テリンまたは6−フェニル−5,6,7,8−テトラヒドロプ
テリンおよびそれらの塩等の類似化合物でもよい。しか
し、生体内に存在する天然体であるBH4が好ましいこと
は言うまでもない。このBH4・2塩酸塩のラットに対す
る急性毒性は経口投与で2g/kg(体重)以上であり、ほ
とんど毒性は見い出されない。また、光学活性体でない
(6R,S)−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリンも、特
開昭59−25323号公報におけるパーキンソン病の治療に
も見られるように毒性は弱く、脊髄小脳変性症の治療に
用いられることは可能である。これら以外の式(I)に
属する化合物も、急性毒性は殆ど見いだされない。
以下の実施例に従ってさらに詳細に説明するが、本発
明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例 実施例1(顆粒剤、細粒剤) ポリビニルピロリドン(コリドン30)1部(重量部)
を滅菌精製水に溶かし、これにアスコルビン酸10部およ
びL−システイン・塩酸塩5部を加え均一な溶液とした
後、BH4・2塩酸塩10部を加え均一とした。
この溶液を賦形剤(マンニトールまたは乳糖)59部お
よび崩壊剤[コーンスターチまたはヒドロキシプロピル
セルロース(LH−22)]15部に加え、練合、造粒、乾燥
した後、篩別した。
実施例2(錠剤) 実施例1で作った活性成分の均一溶液に乳糖58部、微
結晶セルロース15部を混合したのち、さらにステアリン
酸マグネシウム1部を加え混合し打錠した。
実施例3(カプセル剤) 実施例1で作成した錠形のものをカプセルに充填し
た。但し滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを0.2
%添加して製剤したものを用いた。
実施例4(注射用剤) BH4・2塩酸塩 1.5g アスコルビン酸 1.5g L−システイン・塩酸塩 0.5g マンニトール 6.5g 上記成分を滅菌精製水に溶かし、100mlとし除菌した
ものを、1ml又は2mlずつバイアル又はアンプルにとり凍
結乾燥密封した。
実施例5(注射用剤) BH4・2塩酸塩2.0gを無酸素で滅菌精製水に溶かし、1
00mlとした溶液を除菌し、実施例4と同様に密封した。
実施例6(座薬用剤) BH4・2塩酸塩 150部 アスコルビン酸 150部 L−システイン・塩酸塩 50部 上記成分を用い、均一な粉末にしたものをカカオ脂99
50部に分散させた。
実施例7(顆粒剤) BH4・2塩酸塩 5部 アスコルビン酸 5部 L−システイン・塩酸塩 2部 上記成分を用いて均一な溶液とした。
一方マンニトール55部、ポリビニルピロリドン1部、
ヒドロキシプロピルセルロース14部および5−HTP5部を
均一に混合したものに上記の溶液を加え、練合、造粒、
乾燥した後、篩別した。
実施例8(顆粒剤) BH4・2塩酸塩 5部 アスコルビン酸 5部 L−システイン・塩酸塩 5部 マンニトール 52部 ポリビニルピロリドン(コリドン30) 1部 ヒドロキシプロピルセルロース(LH−22) 12部 L−DOPA 10部 上記成分を用い実施例7と同様に造粒し、篩別した。
但し5HTP5部の代わりにL−DOPA10部を用いた。
実施例9(顆粒剤) BH4・2塩酸塩 5部 アスコルビン酸 5部 L−システイン・塩酸塩 2部 上記成分を使用し均一溶液とした。
一方、5−HTP5部、L−DOPA10部、マンニトール50
部、ポリビニルピロリドン(コリドン30)1部およびヒ
ドロキシプロピルセルロース(LH−22)9部を均一に混
合したものに上記溶液を練合、造粒、乾燥した後、篩別
した。
理論により束縛されるものではないが、生化学的考察
に基づいた式(I)で表される化合物による治療の妥当
性は以下のように説明される。
マチャドジョセフ病患者にスルファメトキサゾール−
トリメトプリム合剤(以下、S−T剤という)を投与し
たところ、神経症状が著しく改善したという報告(Arch
ives of Neurology,1988;45:210−213)に着目し、本
発明者らは、スルファメトキサゾールが作用する酵素は
人体には存在しないこと、そしてトリメトプリムはその
作用する酵素が人体に存在し、ジヒドロ葉酸還元酵素
(DHFR)に対してジヒドロ葉酸と競合的に拮抗し、その
活性を阻害すること、このDHFRとジヒドロプテリジン還
元酵素(DHPR)とはホモロジーを有しており、トリメト
プリムはDHFRのみならずDHPRをも阻害する可能性がある
ことから、次のような仮説を立てた。
「S−T剤の投与前状態では、BH4含有黒質線条体ニ
ューロンのみならず、BH4を含有する小脳ニューロンな
ども変性しているために、患者脳内のBH4は顕著に低下
しているので、そのためにフェニルアラニン水酸化酵
素、チロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素の
活性低下を招き、これらの水酸化反応により生じる種々
のカテコールアミンやセロトニンの濃度が低下してい
る。
S−T剤の投与後状態では、脳内のDHPR活性を抑制す
る。すると、BH4の再生低下を生じ、これがBH4生合成代
謝系を刺激して、BH4生合成の脳内代謝回転率が増加す
ることにより前述の3種類のアミノ酸水酸化酵素の活性
が上昇し、カテコールアミンやセロトニンの濃度が増加
する。また、さらに、小脳に高濃度に存在するニトリッ
クオキシドシンターゼ(nitric oxide synthase)の活
性にもBH4は補酵素として重要であることが最近明らか
にされつつあり、BH4の代謝回転率の増加は小脳ニュー
ロン内のニトリックオキシド合成増加にも寄与すること
が予想される。これらの作用により、マチャドジョセフ
病に認められる小脳症状・精神症状・ジストニア等の改
善が説明できる。」 次に以下の予備実験を行った。
(予備試験) マチャドジョセフ病患者8名にS−T剤と偽薬(乳
糖)を投与し、投与期間(各々4週間、各投与期間の間
に2週間の休薬期間を設けた)の各々で神経学的診察を
行った[2重盲検法(Double−blind)、偽薬対照(pla
cebo−controlled)、クロスオーバーテザイン(crosso
ver design)を採用した。]。そして、S−T剤によ
り神経症状を改善させるか否かを観察し、同時にS−T
剤投与期間と偽薬投与期間の直前と最後の日に血液およ
び髄液の総ビオプテリン、酸化型および還元型ビオプテ
リン、ホモバニリン(HVA)、および5−ヒドロキシイ
ンドール酢酸(HIAA)を測定したところ、次のような結
果を得た。
1.臨床研究: 臨床的には、以下の8項目の各種試験でS−T剤投与
期間中に統計学的に有意の改善を認めた。
歩行障害(p<0.05) 指鼻試験(右手;p<002) 指のタッピング試験(左手;p<0.05) 両手の拮抗反復試験(右手;p<0.01、左手;p<0.0
5) 踵膝のタッピング試験(右足;p<0.02、左足p<0.
05) パタ反復復唱試験(p<0.05) 電話ダイアル運動(p<0.05) 貯金箱コイン入れ運動(p<0.01) 2.薬理作用メカニズム解明のための生化学的研究: (1)S−T剤投与前: 髄液中の総ビオプテリン、酸化型および還元型ビオプ
テリン濃度は対照疾患群(進行性筋ジストロフィー 7
症例、Sjogren症候群 1症例の合計8症例)に比較し
て半分以下にまで低下していた。一方、髄液中のHVA濃
度も対照群の半分以下にまで低下していた。
(2)S−T剤投与後: 髄液中の総ビオプテリンおよび酸化型ビオプテリン濃
度は有意に増加を示し(総ビオプテリンはS−T剤投与
前の133%に、また、酸化型ビオプテリンはS−T剤投
与前の172%に増加)、還元型ビオプテリン濃度は有意
に増加を示さなかった。このような髄液中のビオプテリ
ンの変化は、BH4の代謝異常症として知られている3疾
患のうちジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)欠損症に
のみ認められる特有のパターンであることから、本発明
者らのたてた仮説通り、S−T剤がマチャドジョセフ病
患者の脳内DHPR活性を阻害したであろうことが間接的に
証明された。同時に、測定した髄液中のHVAの相対値とH
IAAの相対値もS−T剤の投与により有意に増加したこ
とにより、S−T剤により惹起されたDHPR活性の抑制は
BH4生合成代謝経路へ刺激的にフィードバックすること
によりBH4生合成の脳内代謝回転率の増加を招き、脳内
カテコールアミンやセロトニンなどの合成増加をきたし
たものと考えられる。
この予備試験により、マチャドジョセフ病疾患の神経
症状をS−T剤が緩和させるメカニズムは、トリメトプ
リムが脳内で著しく低下しているであろうBH4の代謝回
転率を増加させたためであろうと仮定される。そこで、
BH4そのものを投与することは合理的であるとの発想か
ら、マチャドジョセフ病患者にBH4治療を適用したとこ
ろ優れた治療効果を得た。
(治療例) 以下の表1に示す5名のマチャドジョセフ病患者に、
以下の方法に従って、偽薬(アスコルビン酸)およびBH
4を2重盲検法で投与した。
<対象患者と方法> 1.対象患者 酒井の診断基準(酒井、上記)に従い、“Clinically
definite family"と診断された3家系より3例、“P
robable family"と診断された2家系より2例の合計5
症例が選択された。各患者の神経学的所見を表1に示
す。
2.投与期間 BH4と偽薬としてアスコルビン酸を各々10日間投与
し、間に9日間の休薬期間を置いた。合計29日間。
3.投与量 1mg/kg(体重)のBH4またはアスコルビン酸含有のカ
プセル剤を毎昼食後1回投与した。症例1−3および5
にはBH4・2塩酸塩を、症例4には(6R,S)−L−エリ
スロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン・2塩酸塩
を投与した。
4.評価方法 以下の3つの方法により評価した。
a.自覚的改善 構音障害・嚥下障害・手の巧緻運動障害・起立時の静
止バランス障害・歩行障害・全体的印象の合計6項目。
b.神経学的検査 四肢筋肉トーヌス・深部反射・ジストニアの程度・起
立時バランス障害・指鼻試験・指のタッピング試験・両
手の拮抗反復試験・踵膝タッピング試験・構音障害。
c.Timed test 指鼻試験・指のタッピング試験・両手の拮抗反復試験
・踵膝タッピング試験・パ/パタの反復復唱試験・10m
歩行・電話ダイアル運動・貯金箱コイン入れ運動に要す
る時間測定。
5.デザイン 2重盲検法、偽薬対照(placebo−controlled)、ク
ロスオーバーデザイン(crossover design)を採用し
た。
6.統計処理 Paired t−testによる。
<結果> 1.自覚症状: 統計学的に有意の改善を示した自覚症状は認められな
かったが、嚥下障害がBH4投与1日目に改善傾向を認め
た(p<0.10)。
2.他覚的所見: (1)神経学的診察: 統計学的に有意の改善を示した所見は認められなかっ
たが、膝蓋腱反射の亢進がBH4投与10日目に改善傾向を
示した(p<0.10)。
(2)Timed Test: 以下の検査項目の統計学的に有意の改善をBH4投与期
間中に認めた。
指鼻試験(右手); 投与3日目(p<0.02)、4日目(p<0.05)、10
日目(p<0.05) 指タッピング試験(左手); 投与8日目(p<0.02) 両手の拮抗反復試験(右手); 投与5日目(p<0.05) 電話ダイアル運動; 投与4日目(p<0.05) 以上の他に、以下の項目にも改善傾向を認めた。
両手の拮抗反復試験(左手); 投与4日目(p<0.10) 貯金箱コイン入れ運動; 投与5日目(p<0.10) <結論> 以上の自覚症状および他覚的所見の結果より、BH4は
マチャドジョセフ病において神経症状を改善させるのに
有効であった。
以上説明したとおり、本発明は難病である脊髄小脳変
性症の神経症状を有効に改善する治療剤を提供するもの
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 31/505 C07D 475/04 CA(STN) REGISTRY(STN) WPIDS(STN)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式: [式中、R1およびR2は、それぞれ水素原子を表すか、ま
    たは一緒になって単結合を表し、R1およびR2が水素原子
    を表す場合には、R3は−CH(OH)CH(OH)CH3、−CH(O
    COCH3)CH(OCOCH3)CH3、−CH3、−CH2OH又はフェニル
    基を表し、R1およびR2が一緒になって単結合を表す場合
    には、R3は−COCH(OH)CH3を表す] で表される化合物又はその塩を有効成分とする脊髄小脳
    変性症治療剤。
  2. 【請求項2】R3がL−エリスロ−CH(OH)CH(OH)CH3
    である、請求項1に記載の脊髄小脳変性症治療剤。
  3. 【請求項3】脊髄小脳変性症の神経症状を改善する、請
    求項1または2に記載の治療剤。
  4. 【請求項4】脊髄小脳変性症が常染色体優性遺伝子脊髄
    小脳変性症である、請求項1、2または3に記載の治療
    剤。
  5. 【請求項5】脊髄小脳変性症がマチャドジョセフ病であ
    る、請求項1、2、3または4に記載の治療剤。
  6. 【請求項6】脊髄小脳変性症治療剤を製造するための、
    式: [式中、R1およびR2は、それぞれ水素原子を表すか、ま
    たは一緒になって単結合を表し、R1およびR2が水素原子
    を表す場合には、R3は−CH(OH)CH(OH)CH3、−CH(O
    COCH3)CH(OCOCH3)CH3、−CH3、−CH2OH又はフェニル
    基を表し、R1およびR2が一緒になって単結合を表す場合
    には、R3は−COCH(OH)CH3を表す] で表される化合物又はその塩の使用。
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