JP2741788B2 - 清掃部材及び該清掃部材を備えたインクジェット記録装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、画像表示装置や画像形成装置の出力部とし
てインクジェット記録装置を用いる装置、例えば、複写
機，ファクシミリ，電卓，タイプライター，コンピュー
タ等の出力部としてのプリンターあるいは複合機といっ
た機種すべてに適用可能なインクジェット記録装置に搭
載された記録ヘッドのインク吐出面に生じた結露・イン
ク漏れを除去するための清掃部材及び該清掃部材を備え
たインクジェット記録装置に関する。

〔従来の技術〕

インクジェット記録方式には、圧電素子を用いた方式
と、近年小型化，液滴形成を良好に行えるバブルジェッ
ト方式（特公昭61−61985号公報に代表される）とが主
流を占めるものとして挙げられる。これらは、所望の電
気信号に応じて液滴を形成し、インクジェットヘッドの
吐出口から離れた記録媒体に、吐出した液滴を付着させ
て印字又は像形成を行う。

このインクジェット記録方式が適用された記録装置に
おいては、インクや記録媒体に含まれる水分が蒸発して
記録ヘッドの雰囲気が高湿になり、記録ヘッドおよび雰
囲気における温度等の条件次第で記録ヘッドのインク吐
出口が形成された面に結露を生ずることがあった。

また、吐出されたインクが被記録媒体に着弾した際に
生ずるはねかえり、あるいは吐出口から吐出された液滴
以外の微小なインク滴や、そのサテライト等が吐出口面
（即ち、ヘッド表面）に付着することがあった。このよ
うに吐出口面に結露が生じたり、微小インク滴が付着し
た場合には、本来の機能が損なわれ、ある吐出口からの
吐出が困難となったり、吐出方向が変更されてしまう
（ヨレ）ことがあった。

すなわち、吐出面に結露や濡れが生じた場合、吐出面
は不均一に水滴等が付着した状態となり、これら付着し
た水滴等はインクが吐出口から吐出されるときに不均一
に吐出インクを引っ張る。これにより、インクの吐出方
向や吐出速度、またインク滴径にばらつきを生じ、記録
品位の低下をもたらすことになる。また、吐出面の濡れ
によって紙粉、塵埃等が付着し易くなる。そのため、こ
れらがインクの吐出方向等に悪影響を及ぼしたり、吐出
口に目詰りを生じさせたりして記録品位低下の原因とな
ることがあった。

上述した結露や濡れといった現象は、記録画像の記録
媒体への定着を促進するため定着ヒータを用いる場合
や、記録画像のドットデューティーが高い場合により顕
著になる場合があった。

この現象を解決するために、吐出口面を清掃し、結
露，濡れ等を取り除くことが考えられ提案されている。

第１には、ソリッドゴムブレードや金属ブレードを用
いて吐出口面をワイピングすること、第２には、吸収体
によるふき取り等が挙げられる。

吸収体によるふき取りは、特開昭57−61574号公報の
ように詳細は不明であるが（詳細な記載は無い）、多孔
質物質を用いるものや特開昭57−80064号公報、特開昭5
7−116655号公報のように和紙又は布を用いるものが提
案されているが未だ実施されていない。

一方、一般清掃とは異なり、吐出口面を洗浄する目的
で、インク溶解性の液体を含浸したスポンジを吐出口面
に当接させてその液体を吐出口面に塗布する構成も特開
昭59−164149号公報に開示されている。

一方、ゴム製のブレードによって吐出口面をワイピン
グするものとしては、特開昭52−102728号公報（260731
3.2独国番号）、特開昭61−230949号公報等があげられ
る。

これらを含め、数多くのゴム製ソリッドブレードを示
す出願では、その構成しか示されていない。もちろんこ
れらのブレードを使用することで吐出口形成面に対する
清掃の効果は認められる。

例えば、清掃を用いないと、第６図に示すが、吐出口
が設けられてある表面であるヘッド表面（吐出口表面）
２上に微小なインク滴及びその凝集等によって巨大化し
たインク滴などの俗にいうインクの「漏れ状態」３が生
ずる。これは、特にBJ（バブルジェット）方式のような
オンデマンド型のインクジェット方式では、吐出のデュ
ーティ（duty:比率）が高くなると起きやすくなる。ま
た、usp3373437,usp3298038,usp3416153公報等に記載さ
れている連続噴射型のインクジェット方式は、連続的に
記録液体を吐出口より吐出しているため、更に、「漏
れ」が生じやすい環境になっている。

第６図に「３」で示した「漏れ」の状態を（従来の清
掃方法である）例えば、従来構成のシリコンやウレタン
等の主として使用されるゴムの弾性ブレードで吐出口８
の列方向に対してほぼ垂直にワイピングした結果を第７
図に示してある。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、例えば、シリコンゴム製のブレードと
して硬度40°程度で、厚さ0.2mm〜0.6mm程度のものか
ら、その弾性力によって吐出口面の例えばコーティング
等を損傷しないよう厚みを比較的薄い0.2〜0.4mmにして
用いた場合、吐出口面に対する圧接力が充分でないため
記録ヘッドの吐出口面に付着した水分，塵埃等を完全に
除去できない場合があった。

また、これに対してシリコンゴムの厚さを比較的厚い
0.4〜0.6mmにすると、圧接力は充分となり記録ヘッドの
吐出口に付着した水分，塵埃等は良好に除去できるもの
の、30万回程度のワイピング動作を行うと、摩耗による
シリコン材が記録ヘッドの吐出口面や吐出口に付着し、
上述したような吐出不良を生じる場合があった。

加えて、特にブレードと吐出口面との圧接状態につい
ては、吐出口面を強制的にクリーニングするため吐出口
面とブレードとの接触圧力は線圧25g/cm以上の比較的高
圧力とすることでクリーニングの効果を高めることが提
案された。尚、ここでいう線圧とは、荷重を当接長で割
ったものである。

ところが、高圧力による当接の問題としてブレード自
身の摩擦が発生して耐久性が劣るということが発生して
いた。特に、吐出口面にインクが付着しにくい状態、即
ち、クリーニングされやすい状態を形成するために、吐
出口面を撥水剤で処理した撥水処理表面とする場合は、
この高圧力によって撥水剤が除去されて、かえってクリ
ーニング不良を起こすことが見られた。

依って、本発明の技術課題としては、従来よりも低圧
力での接触であっても良好なクリーニング効果が得られ
る材料で構成された清掃部材を提供することを目的とす
る。

本発明の他の目的とするところは、ワイピングの効果
を損なわず、かつブレードの摩耗を最小限とすることを
可能とする清掃部材を提供することである。

本発明の他の目的は、クリーニングを行う毎に接触す
るインクに対する耐溶剤性（耐インク性）、すなわち、
インクと接触してもインクによって清掃部材自身が劣化
することのない清掃部材を提供することにある。

また、本発明の他の目的は、長期の使用にたえ、周囲
環境によっても清掃部材自身が劣化しない耐候性をそな
えた材料の清掃部材を提供することにある。

さらに本発明の他の目的は、記録ヘッドの吐出口形成
面に対する耐傷性、すなわち、吐出口形成面の撥水処理
剤をけずりとったり、吐出口自身にキズを形成すること
のない清掃部材を提供することにある。

本発明の別の目的は、インクに対する接液性、すなわ
ち、インクに対して悪影響をおよぼさない材質からなる
清掃部材を提供することにある。

さらに、本発明の別の目的は、耐寒性に優れ、低温時
においても材質の硬度変化の少ない材質から構成される
清掃部材を提供することにある。

また、本発明は、これら低圧力で効果的なクリーニン
グが行え、耐溶剤性（耐インク性），耐候性，耐傷性，
インク接液性，耐低温性等各種特性を満足する優れた清
掃部材を備えたインクジェット記録装置を提供すること
にある。

これによって、インクの吐出不良がなく、印字品位の
劣化の少ない記録特性が優れたインクジェット記録装置
を得ることを目的とする。

本発明のさらに他の目的は、インクを吐出するための
吐出口を備えたインクジェット記録ヘッドの前記吐出口
が形成された吐出口形成面と当接して、該吐出口形成面
の清掃を行う清掃部材において、前記清掃部材は水素が
添加された水素化ニトリルブタジエンゴムを主たる成分
として構成したものであって、その硬度が40以上70以下
で規定されることを特徴とする清掃部材を提供すること
である。

また、本発明の別の目的は、インクを吐出するための
吐出口を備えたインクジェット記録ヘッドと、該インク
ジェット記録ヘッドを被記録材に対向させて記録を行わ
せる記録位置と該記録位置から前記インクジェット記録
ヘッドを待避させた非記録位置との移動を行わせるキャ
リッジ手段と、前記記録位置と非記録位置との移動経路
中に備えられ、前記インクジェット記録ヘッドの前記吐
出口が形成された吐出口形成面と当接して、該吐出口形
成面の清掃を行う清掃部材と、を有し、前記清掃部材は
水素が添加された水素化ニトリルブタジエンゴムを主た
る成分として構成したものであって、その硬度が40以上
70以下で規定されることを特徴とするインクジェット記
録装置を提供することにある。

〔作用〕

本発明の清掃部材によれば、低圧力で効果的にクリー
ニングが行え、耐溶剤性（耐インク性），耐候性，耐傷
性，インク接液性，耐低温性を満足する材質によって構
成される清掃部材で記録ヘッドの吐出口形成面を清掃す
ることで、吐出口形成面に付着したインクや塵埃等の除
去が効果高く行える。

また、清掃をくりかえしても、清掃部材自身、さらに
は記録ヘッドの吐出口形成面が劣化することなくインク
吐出性能の低下を招くことなく、長期にわたって、安定
したインクの吐出が行える。

〔実施例〕

以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明す
る。

第１図は本発明のワイピング部材が用いられるインク
ジェット記録装置の斜視図である。

第１図において、301は記録ヘッドの吐出口形成面を
清掃する清掃部材としてのブレードであり、その一端は
後述のブレード保持部材によって保持されて固定端とな
りカンチレバーの形態をなす。ブレード301は記録ヘッ
ドによる記録領域に隣接した位置、いわゆる非記録領域
に、配設されている。また、本例の場合、ブレード301
は、記録ヘッドの移動経路中に突出し、記録ヘッドが記
録領域と非記録領域との間を走査する毎に吐出口形成面
と当接する形態で保持される。尚、ブレードは本例のよ
うに固定されて配設される形態だけでなく、キャップの
前進後退の移動に伴ってあるいは独立した移動手段によ
って清掃位置と非清掃位置とをとり得る構成とされても
よい。302はキャップであり、ブレード301に隣接する非
記録領域のホームポジションに配設され、記録ヘッドの
移動方向と垂直な方向すなわち、記録ヘッドに対して当
接する方向あるいは離間する方向に移動可能であり、吐
出口面と当接することでキャッピングを行う構成を具え
る。さらに303はブレード301に隣接して設けられるイン
ク吸収体であり、ブレード301と同様、記録ヘッドの移
動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード30
1、キャップ302、吸収体303によって吐出回復部30が構
成され、ブレード301および吸収体303によってインク吐
出口面の水分，塵埃等の除去が行われる。尚、吸収体30
3は、必ずしも必要な構成ではなく、設けられなくても
よい。ただし、クリーニングの効果をより一層高めよう
とする場合の効果は高い。

101は吐出エネルギー発生手段として電気熱変換体を
有し、吐出口を配した吐出口面に対向して配される被記
録媒体に熱エネルギーを利用してインクを吐出して記録
を行う記録ヘッド、１は記録ヘッド101を搭載して記録
ヘッド101の移動を行うためのキャリッジである。本例
は、キャリッジに搭載された記録ヘッド101の走査と後
述する被記録媒体の搬送手段による被記録媒体の搬送と
の相対移動で所望の記録が行なわれるものである。キャ
リッジ１はガイド軸104と摺動可能に係合し、キャリッ
ジ１の一部はモータ102によって駆動されるベルト103と
接続（不図示）している。これによりキャリッジ１はガ
イド軸104に沿った移動が可能となり、記録ヘッド101に
よる記録領域およびその隣接した領域の移動が可能とな
る。

201は被記録媒体を挿入するための給紙部、20は不図
示のモータにより駆動される紙送りローラである。これ
ら構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ
被記録媒体が給紙され、記録ヘッドの走査に関連して被
記録媒体が搬送されつつ記録が進行するにつれて排紙ロ
ーラ202を配した排紙部へ排紙される。

上記構成において、記録ヘッド101が記録終了等でホ
ームポジションに戻る際、ヘッド回復部３のキャップ30
2は記録ヘッド101の移動経路から退避しているが、ブレ
ード301は移動経路中に突出している。この結果、記録
ヘッド101が非記録領域に配設されたキャップ302部にも
どる際には必ず吐出口面がワイピングされる。なお、キ
ャップ302が記録ヘッド101の吐出面に当接してキャッピ
ングを行う場合、キャップ302は記録ヘッドの移動経路
中へ突出するように適宜移動する。

記録ヘッド101がホームポジションから記録開始位置
へ移動する場合、キャップ302およびブレード301は上述
したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結
果、この移動においても、記録ヘッド101の吐出口面は
ワイピングされる。

すなわち、第２図（Ｄ）に示されるように、例えば、
非記録領域から記録領域へ記録ヘッドが移動するときに
（図中矢印Ｂ方向）ワイピングが行なわれる。この時、
ブレード301と記録ヘッド101との当接状態は記録ヘッド
101の移動方向と同一方向にブレード301がわん曲変形す
る、いわゆる順方向当接状態となる。

したがって、記録ヘッド101の吐出口形成面に対して
は、記録ヘッド101が当接しはじめる側、第２図（Ｄ）
では矢印Ｂ側のブレード301の側面の延長線上の端部に
あたるエッジ部301Cを含む領域が吐出口形成面と当接し
て清掃が行なわれる。ブレード301による吐出口形成面
の清掃では、ブレード301のエッジ部301Cを含む領域が
当接して清掃されることが重要で、エッジ部に加わる線
圧を最適な範囲とすることで吐出口形成面上のインクや
塵埃を良好に除去することができる。

なお、本例のブレード301は第２図（Ｂ）に示すよう
にブレード301の実質的な腕の長さが記録ヘッドの当接
方向で変化するよう保持部材301Aと301Bとにより挟持さ
れるものであり、記録ヘッドの当接方向によりワイピン
グの力が異なったものとなる。すなわち、第２図（Ｂ）
中矢印Ａ方向で示されるホームポジション方向に移動す
る場合は実質的な腕の長さが長くなり、吐出口形成面と
の当接力が弱く、記録開始位置方向へ移動する場合は実
質的な腕の長さが短くなり、記録ヘッドの吐出口形成面
との当接力が結露等を十分に除去できる程度のものとな
る。

上述した記録ヘッドのホームポジションへの移動は、
記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記
録のために記録領域を移動する間に所定の間隔（タイミ
ング）で記録領域に隣接したホームポジションへ移動
し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる構成と
されてもよい。

また、上述の実施例では、ブレード301が記録ヘッド
の移動経路中に突出した形態で固定されたものとした
が、例えばキャップの移動と共にブレードも移動可能な
ものとして記録ヘッド移動の一方向では移動経路から退
避し、他の方向の移動のときのみ記録ヘッドの吐出口形
成面と当接するよう前進し、清掃が行なわれる構成とさ
れてもよい。

ところで、記録ヘッドが記録領域から非記録領域へ、
あるいは、非記録領域から記録領域へと移動する際、ま
た、これらの移動のいずれか一方のときのみ記録ヘッド
の吐出口形成面と当接するブレードは、吐出口形成面に
付着したインク、塵埃、増粘インク等を良好に清掃除去
することができなければならない。

また、ブレードは直接インクや吐出口形成面と接触す
るものであるため相互において悪影響を与えあわないも
のでなければならない。

さらに、ブレードは、長期にわたって、クリーニング
特性を維持されることが必要である。

これらの特性を本発明者らは便宜上、硬度，耐溶剤性
（耐インク性），耐候性，記録ヘッドの吐出口形成面に
対する耐傷性インク接液性，耐（低温）性によって表わ
して本発明が適用されるブレード材について説明する。

本発明者等は、これらの条件を満足し、好適な清掃効
果を得ることができるブレード材として水素を含有した
ニトリルブタジエンゴム（Hydrogenous Nitirile Butad
iene Rubber）を使用することが好ましいという結果を
得た。

水素を含有したニトリルブタジエンゴムはNOK株式会
社製 商品名ゼットポール（Zetpol）を原料とする水素
添加ニトリルゴム で表わされるものであり、一般に耐熱性，耐薬品性，耐
オゾン性，強度特性，耐摩耗性に非常に優れた材料であ
る。

この材料は、特に（CH₂−CH₂）であらわされる炭素−
炭素飽和結合部分を有することで、弾性，耐熱性，科学
的安定性（耐インク性），耐オゾン性（耐候性），耐寒
性等に優れた効果を発揮し、 であらわされるアクリロニトリル部分を有することで耐
油性，耐燃料油性，高強度（耐久性）等に優れた効果を
発揮する。そして、さらに加硫して水素化することで弾
性，耐候性等に優れた効果を発揮するものとなる。

水素添加ニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリ
ル量が増加すると耐久性が向上し、ヨウ素価が小さくな
る（水素化率が高くなる）と硬度が低下し、さらに、不
飽和結合が少なくなるので空気中の酸素などにより酸化
されにくくなり長期安定性，耐候性が向上する。これら
の特性を考慮した上で原料をブレンドし、所望する条件
を満足する水素添加ニトリルブタジエンゴムを得ること
ができる。

以上所望された条件と水素添加ニトリルブタジエンゴ
ムとの関係を説明する。

ブレード材に適する硬度 記録ヘッドの吐出口形成面に直接当接するブレード材
は、インクや塵埃を良好に除去できることと、吐出口形
成面に対して施された撥水処理剤をけずりとったり、吐
出口形成面自身に損傷を与えないような弾力性を有する
ことが必要である。

したがってこれらの条件を満すブレード材に適した硬
度としては35°以上80°以下の範囲であることが好まし
く、さらには、40°以上70°以下、より好ましくは45°
以上65°以下である。硬度は、水素添加ニトリルブタジ
エンゴムの水素添加率が多くなるほど軟くなる性質を示
し、アクリロニトリル量を多くすると硬くなる性質を示
す。したがって、これらの量を適宜選択して所望の硬度
とすることができる。

ブレード材の耐溶剤性（耐インク性） ブレードは記録ヘッドと直接接することでインク等を
除去するものであり、ブレード表面は、インクを直接接
触する状態に常にさらされる。

したがって、インク成分に対して耐久性を有する材料
であることが必要である。これは、水素添加率を多くす
ることで改善される性質を示し、所望の耐インク性が得
られるように適宜水素添加率を選択する。

ブレード材の耐候性 ブレード材は常に大気中にさらされた状態で保持され
るため、長期にわたって使用性能が維持されるように耐
候性を備えることが重要である。

これは、水素添加ニトリルブタジエンゴムでは、水素
化率を高くすることで、ニトリルブタジエンゴム中の炭
素−炭素不飽和結合が少くなり、空気中の酸素との結合
する割合が減少し、酸化されにくくなるため、長期使用
性が向上し耐候性に優れたものとなる。ただし水素化率
は、耐候性改善効果はあるが、硬度や耐溶剤性等に対し
ても影響を与えるのでこれらの特性をバランス良く維持
できる範囲で水素化率は選択される。

ブレード材のヘッドに対する対傷性 ブレードは、吐出口形成面に対しある速度をもって当
接するため吐出口形成面自身あるいは吐出口形成面に施
された撥水処理剤などをけずったりすることがある。こ
れをできる限り防止するためにブレード材自身の硬度が
高くなく、しかも無機添加剤をあまり添加しないことが
好ましい。

インク接液性 インクと接触したブレード材がインクと反応してイン
ク自身を変質させることは、記録インクが本来有してい
なければならない特性を劣化させるとともに、インク中
にとけだしたブレード材の成分の影響によりインクを吐
出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱
変換体上でコゲの原因となることがある。したがってこ
のような影響を及ぼさないように可塑剤を少量添加する
ことが必要である。これは製品成型の際に影響を与える
が、インクへの影響を考慮してその添加量を決め、イン
ク接液性の向上を図ることが好ましい。

耐寒性（低温特性） ブレード材は、様々な環境下で使用され得るが、特に
低温時にその特性が劣化することは好ましくない。これ
は、水素化率を高めることで低温特性に優れるよう改善
できるので、他の特性との間のバランスを考えて水素化
率を選択することがこのましい。

以上のような特性を十分満足し、良好な清掃効果が得
られるブレード材として、硬度55°の水素添加ニトリル
ブタジエンゴムを用いて第２図（Ａ），第２図（Ｂ）に
示すような厚さ0.5mm、記録ヘッドと当接長20mm、図中
矢印Ｂで示される非記録領域から記録領域への移動方向
についての自由長4mm、図中矢印Ａで示される記録領域
から非記録領域への移動方向についての自由長8mmとし
た構成のブレードを作成した。

一方、硬度40°のシリコンゴム製の同一形状のブレー
ドを作成し、比較を行った。

その結果を第３図、第４図に示した。

第３図は記録した枚数と摩耗量との関係を示し、第４
図は記録した枚数とワイピング効果（水分量の付着量で
示す）との関係を示す。

この結果から明らかなように、水素添加ニトリルブタ
ジエンゴム製のブレードは、シリコン製のブレードに比
べ耐摩耗性や清掃効果に優れていることがわかる。

本実施例において使用可能なブレードの形状として
は、前述したものを含め、次のような数値で規定される
ものが好ましい。

硬度 前述したとおり、水素添加ニトリルブタジエンゴムは
35°以上80°以下、好ましくは、40°以上70°以下、さ
らには45°以上65°以下の範囲であることが好適であ
る。

ブレードの厚み 0.2mm以上1.5mm以下、好ましくは0.3mm以上0.7mm以
下、さらには0.4mm以上0.6mm以下の範囲が好適である。
ブレードの硬度とあいまって、清掃効果の向上が図れ
る。

ブレードの自由長 2mm以上であればよいが、装置構成上から15mm程度ま
での範囲とすることができ、3mm以上5mmとすることがよ
り好適である。自由長は、その長さによって、記録ヘッ
ドとの間で当接する時のみかけ上のヘッド吐出口面の圧
力が変化するので、硬度、厚み等とのバランスを考慮し
て選択される。

ブレードの進入量（ヘッドとのオーバーラップ量） 第２図（Ｃ）に示すように、ブレードと当接する記録
ヘッドとの当接（オーバーラップ）量も清掃効果に大き
な影響を与えるものであって、あまりオーバーラップ量
が大きいと、ブレードのエッジ部分301Cで清掃する効果
が得られず清掃効果が低下してしまう。ブレードによる
清掃では、ブレードのエッジ部301Cでヘッドの吐出口面
を清掃するような状態でクリーニングすることが効果的
なクリーニングを行う上で重要である。また、オーバー
ラップ量が小さいと、記録ヘッドとの当接力が低下し、
清掃効果の低下を招いてしまう。さらに、オーバーラッ
プ量は、硬度、厚み、ブレードの自由長等によっても清
掃効果は影響されるためこれらとのバランスを考慮して
決められるべきであるが、少なくとも0.5mm以上2.0mm以
下、より、好適には、0.8mm以上1.5mm以下であることが
好ましい。

前述したように、ブレードの材質、硬度、厚み、ブレ
ード自由長、オーバーラップ量のバランスによって清掃
効果を向上させることができるが、これらのバランスで
数値を決めるに際しては、ブレードによって行なわれる
クリーニングの際にエッジ部301Cで記録ヘッド面をクリ
ーニングする効果が得られる範囲で適宜選択することが
重要である。

本発明は、特にインクジェット記録方式の中でもバブ
ルジェット方式の記録ヘッド、記録装置に於いて、優れ
た効果をもたらすものである。

その代表的な構成や原理については、例えば、米国特
許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示され
ている基本的な原理を用いて行なうものが好ましい。こ
の方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のい
ずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場
合には、液体（インク）が保持されているシートや液路
に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に
対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少
なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気
熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱
作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一
対応し液体（インク）内の気泡を形成出来るので有効で
ある。この気泡の成長，収縮により吐出用開口を介して
液体（インク）を吐出させて、少なくとも一つの滴を形
成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切
に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れ
た液体（インク）の吐出が達成でき、より好ましい。こ
のパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359
号明細書、同第4345262号明細書に記載されているよう
なものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率に
関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されて
いる条件を採用すると、更に優れた記録を行なうことが
できる。

記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示さ
れているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わ
せ構成（直線状液流路又は直角液流路）の他に熱作用部
が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特
許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用
いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数
の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変
換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59年第123670
号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部
に対応せる構成を開示する特開昭59年第138461号公報に
基づいた構成としても本発明は有効である。

更に、装置本体に装着されることで、装置本体との電
気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる
交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘ
ッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記
録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。

又、前述したような本発明の記録装置の構成として設
けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補
助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定でき
るので好ましいものである。これらを具体的に挙げれ
ば、記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、本発明
で説明したクリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気
熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれらの組み合
わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予
備吐出モードを行なうことも安定した記録を行なうため
に有効である。

更に、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色
のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に
構成するか複数個の組み合わせによってでもよいが、異
なる色の複色カラー又は、混色によるフルカラーの少な
くとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効であ
る。

〔発明の効果〕

以上の説明から明らかなように、本発明によれば上述
のような特性を満足する本発明のブレードによって記録
ヘッドの吐出口面をクリーニングしたところ例えば第５
図に示されるように非常に効果的な清掃を行うことがで
きた。

ブレード材として耐オゾン性が高く、また、耐油，耐
薬品性が高く、さらに、耐摩耗性が高い材料である水素
添加ニトリルブタジエンゴムを用いて、以上のような数
値範囲の硬度とすることで、従来使用されていたブレー
ドより一層クリーニング効果が高く、長期にわたる使用
耐久性が維持される清掃部材を提供できる。

また、記録ヘッドの吐出口面に対する影響やインクに
対する影響も極めて少ない、耐久性に優れ、長期にわた
る吐出特性改善効果が発揮される清掃部材を備えたイン
クジェット記録装置を提供できる。

【図面の簡単な説明】 第１図は、本発明の一実施例を示すインクジェット記録
装置の概略を示す斜視図、 第２図（Ａ），（Ｂ），（Ｃ），（Ｄ）は本発明の一実
施例にかかる清掃部材を示す模式的側面図，平面図，ブ
レードによるワイピングの態様を示す概略図およびブレ
ードと記録ヘッドとのオーバーラップの関係を示す概略
図、 第３図はシリコンゴムと水素添加ニトリルブタジエンゴ
ムの各々に対応した記録量と摩耗量との関係を示す線
図、 第４図はシリコンゴムと水素添加ニトリルブタジエンゴ
ムの各々に対応した記録量とワイピング効果との関係を
示す線図、 第５図は、本発明に係るブレードを用いてクリーニング
したときの吐出形成面の一例を示す模式図、 第６図は、濡れが生じた吐出口形成面（ヘッド表面）の
一例を示す模式図、 第７図は、従来構成のゴムブレードを用いてワイピング
した場合の吐出口形成面の一例を示す模式図である。 １……キャリッジ、20……紙送りローラ、30……吐出回
復部、101……記録ヘッド、102……モータ、103……ベ
ルト、104……ガイド軸、201……給紙部、202……排紙
ローラ、301……ブレード、301A,301B……保持部材、30
1C……エッジ部、302……キャップ、303……インク吸収
体。

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】インクを吐出するための吐出口を備えたイ
   ンクジェット記録ヘッドの前記吐出口が形成された吐出
   口形成面と当接して、該吐出口形成面の清掃を行う清掃
   部材において、前記清掃部材は水素が添加された水素化
   ニトリルブタジエンゴムを主たる成分として構成したも
   のであって、その硬度が40以上70以下で規定されること
   を特徴とする清掃部材。
2. 【請求項２】前記硬度はより好ましくは45以上65以下で
   規定されることを特徴とする請求項１に記載の清掃部
   材。
3. 【請求項３】インクを吐出するための吐出口を備えたイ
   ンクジェット記録ヘッドと、 該インクジェット記録ヘッドを被記録材に対向させて記
   録を行わせる記録位置と該記録位置から前記インクジェ
   ット記録ヘッドを待避させた非記録位置との移動を行わ
   せるキャリッジ手段と、 前記記録位置と非記録位置との移動経路中に備えられ、
   前記インクジェット記録ヘッドの前記吐出口が形成され
   た吐出口形成面と当接して、該吐出口形成面の清掃を行
   う清掃部材と、を有し、 前記清掃部材は水素が添加された水素化ニトリルブタジ
   エンゴムを主たる成分として構成したものであって、そ
   の硬度が40以上70以下で規定されることを特徴とするイ
   ンクジェット記録装置。
4. 【請求項４】前記硬度はより好ましくは45以上65以下で
   規定されることを特徴とする請求項３に記載のインクジ
   ェット記録装置。