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JP2607039B2 - 耐熱被覆用蒸着材及びその製造方法 - Google Patents

耐熱被覆用蒸着材及びその製造方法

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Publication number
JP2607039B2
JP2607039B2 JP5344997A JP34499793A JP2607039B2 JP 2607039 B2 JP2607039 B2 JP 2607039B2 JP 5344997 A JP5344997 A JP 5344997A JP 34499793 A JP34499793 A JP 34499793A JP 2607039 B2 JP2607039 B2 JP 2607039B2
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zirconia
powder
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浩之 四竈
信夫 鮎澤
正生 小坂
博 宮崎
忠弘 美濃
照光 一森
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Shinagawa Refractories Co Ltd
Daiichi Kigenso Kagaku Kogyo Co Ltd
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Shinagawa Refractories Co Ltd
Daiichi Kigenso Kagaku Kogyo Co Ltd
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  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱被覆用蒸着材及び
その製造方法に関し、特に高温域での耐熱衝撃安定性に
優れたジルコニア質多孔焼結体からなる耐熱被覆用蒸着
材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ジルコニアは、室温では単斜晶が安定で
あり、これを加熱していくと、約1170℃前後で大きな体
積収縮を起こして正方晶に転移し、続いて約2370℃前後
で立方晶に転移する。一方、立方晶ジルコニアを冷却し
ていくと、正方晶に転移し、続いて約960℃前後で大き
な体積膨張を伴い、室温で安定な単斜晶に転移する。
【0003】このようにジルコニアは、可逆相転移をす
る際、大きな体積収縮ないしは体積膨張を伴うものであ
り、これにより割れが発生するという欠点を有してい
る。この欠点を解消するため、一般にマグネシア、カル
シア等のアルカリ土類酸化物又はセリア、イットリア等
の希土類酸化物などを安定化剤として添加し、上記のよ
うなジルコニアの相転移を抑制している。
【0004】この安定化剤を含有するジルコニア質焼結
体は、その結晶を構成する相により安定化ジルコニアあ
るいは部分安定化ジルコニアと呼ばれ、強靱性を応用し
たセラミックス製ハサミ、潤滑性を利用した金型押出し
用ダイス、断熱性や熱膨張特性を利用した断熱型エンジ
ン用部品、酸素イオン導電性を応用した酸素センサー、
燃料電池等の構成材料などに広く利用されている。ま
た、このような利用分野の一例として“耐熱被覆用とし
ての蒸着材”を挙げることができる。
【0005】従来の耐熱被覆法は、溶射被覆法が一般的
であったが、最近の蒸着法の開発に伴って、PVD(Physic
al Vapor Deposition)による耐熱被覆膜の形成技術が実
用化されるようになった。中でもElectron-Beamの手法
によるEB-PVD法が注目され、ADVANCED MATERIALS&PROCE
SSES(Vol.140,No.6,DECEMBER,1991;P18〜22)などの
文献に見られるように、EB-PVD法による蒸着技術の開発
が多数行われている。
【0006】上記耐熱被覆法としてのEB-PVD法は、例え
ば航空機エンジン等部品に対する耐熱被覆を目的として
使われており、この耐熱被覆源として使用される蒸着材
としては、Al2O3やZrO2などが代表的なものとして知ら
れている。このような蒸着材は、耐熱被膜の特性を保持
する目的から、高純度であり、耐熱衝撃安定性が高い材
料であることが要求される。
【0007】また、蒸着材の形態としては、大別して粉
粒体形態とペレットのような塊体形態があり、そのうち
塊体形態とした場合、その使用に当たっては、蒸着材の
熱的条件における安定性、特に従来以上の高温下での耐
熱衝撃安定性が必要とされている。
【0008】この耐熱衝撃安定性を持たない蒸着材で
は、高温環境下で使用する場合、急加熱に伴う熱衝撃等
による割れが発生しやすく、作業の安定性を損ない、大
きな問題となる。この問題点を解決するため、従来、蒸
着材を用途に応じ、様々な手法により多孔質化して耐熱
衝撃安定性を向上させる方法が用いられるようになっ
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
手法によって得られた蒸着材では、PVD法よりも高出力
なElectron-Beamを発生するEB-PVD装置で使用すること
は困難であり、従来以上に蒸着材の耐熱衝撃安定性が必
要となる。更に、EB-PVD装置の能力を十分に生かすため
には、従来よりも大型の蒸着材を作製する必要がある
が、従来の技術では、非常に困難な問題となってきた。
【0010】一方、ジルコニアに安定化剤を添加し、ジ
ルコニア焼結体の各特性を改善することが知られてい
る。例えば特公平5−15665号公報によれば、ジルコニア
に安定化剤として酸化イットリウムを加えて部分安定化
させ、平均粒径、安定化度、気孔率、気孔径を制御して
耐熱衝撃安定性を向上させたジルコニア耐火物を製造す
る方法が提案されている。
【0011】また、特公平4−69106号公報によれば、ジ
ルコニアに安定化剤として酸化セリウムを加えて焼結さ
せることにより、機械的強度、耐熱衝撃特性等に優れた
ジルコニア質焼結体が得られる旨記載されている。更
に、特開昭63−139049号公報によれば、ジルコニアに安
定化剤として酸化セリウムと酸化イットリウムを加えて
焼結させることにより、機械的強度、硬度、靱性が優れ
たジルコニア質焼結体が得られる旨記載されている。
【0012】しかしながら、上記のような提案はその大
半が、構造用部材として利用することを目的としている
ために、耐熱被覆用蒸着材として必要な高い耐熱衝撃安
定性を有するものではなく、焼結体の純度などの面にお
いても考慮されていない。従って、このような材料を用
いて耐熱被覆用蒸着材を得ることは非常に困難である。
【0013】本発明者等は、ジルコニア質多孔焼結体か
らなる耐熱被覆用蒸着材について鋭意研究を重ねた結
果、所定範囲の純度及び平均粒径をもつ酸化ジルコニウ
ム粉末に、酸化イットリウム及び/又は酸化セリウム
(即ち、酸化イットリウム、酸化セリウム、又は、酸化
セリウム及び酸化イットリウム)を固溶させ、部分安定
化させたジルコニア球状集合粒子を原料として使用し、
この原料を成形し焼成することにより、蒸着材の形状に
なんら制約を受けない、しかも高温域での耐熱衝撃安定
性に優れ、かつ操作上なんら問題のない強度を有する酸
化イットリウム及び/又は酸化セリウム含有高純度ジル
コニア質多孔焼結体からなる耐熱被覆用蒸着材が得られ
ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0014】そして、本発明の第1の目的とするところ
は、原料処理、成形、焼成等の工程を経て作製される焼
結体の気孔径及び気孔率等を制御することにより、ジル
コニアの特性である前記した相転移に伴う体積膨張ない
しは体積収縮に起因する割れや高温環境下での使用に起
因する割れ等が生じない、しかも、耐熱衝撃安定性を著
しく向上させたジルコニア質多孔焼結体からなる耐熱被
覆用蒸着材を提供することにある。
【0015】また、本発明の第2の目的は、成形前のジ
ルコニア造粒物を熱処理し、粒度調整した後、成形し焼
成することにより、比較的平均粒子径の大きな酸化ジル
コニウム原料を用いても、焼結体の気孔径及び気孔率の
大きな、しかも耐熱衝撃安定性が向上した耐熱被覆用蒸
着材を得ることができ、更に、気孔のコントロ−ルを容
易にすることができるジルコニア質多孔焼結体からなる
耐熱被覆用蒸着材の製造法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記第1及び
第2の目的を達成するため、 特徴点(A):所定範囲の純度及び平均粒径をもつ酸化ジ
ルコニウム粉末と酸化イットリウム及び/又は酸化セリ
ウムを混練し、これを所定範囲の粒度に調整する点(第
1次造粒)、 特徴点(B):この所定範囲の粒度に調整した造粒物(第
1次造粒物)を加熱処理する点、 特徴点(C):加熱処理後再度所定範囲の粒度に調整した
球状集合粉粒体からなるジルコニア粉粒(第2次造粒
物)を原料として使用する点、 特徴点(D):該ジルコニア粉粒(第2次造粒物)よりな
る原料を焼成することにより、所定範囲の気孔率及び気
孔径を有する酸化イットリウム及び/又は酸化セリウム
含有高純度ジルコニア質多孔焼結体を得る点、からなる
耐熱被覆用蒸着材及びその製造方法である。
【0017】即ち、本発明の耐熱被覆用蒸着材は、「Hf
O2を除く不可避不純物総量が0.2wt%以下の高純度で、
かつ平均粒子径が0.1〜10μmの酸化ジルコニウムに、
酸化イットリウム及び/又は酸化セリウムを加えた混合
粉末を、全体の70%以上が45〜300μmの粒径となるよ
うに造粒し、熱処理を行い、球状集合粉粒体全体の50%
以上が45〜300μmとなるジルコニア粉粒を焼結してな
る焼結体であり、該焼結体の気孔率が25〜50%で、かつ
0.1〜5.0μmの気孔径が全気孔の70%以上を占めるジル
コニア質多孔焼結体よりなることを特徴とする耐熱被覆
用蒸着材。」を要旨とする。
【0018】また、前記ジルコニア質多孔焼結体よりな
る耐熱被覆用蒸着材は、(1) 純度が99.9%以上の高純度
酸化イットリウム及び/又は酸化セリウムを用いること
を特徴とし、(2) 酸化イットリウムを0.1〜30wt%含有
した、又は、酸化セリウムを5〜40wt%及び酸化イット
リウムを10wt%以下含有した、不可避不純物を含む単斜
晶ジルコニアを原料とした焼結体からなり、かつ該焼結
体の結晶相が単斜晶、正方晶及び立方晶の混合相よりな
り、このうち正方晶及び立方晶の割合が10〜90%である
ことを特徴とし、(3) ジルコニア質多孔焼結体の純度
が、Y2O3、HfO2、CeO2を除く不可避不純物総量が1.0wt
%以下であることを特徴とする。
【0019】更に、本発明の耐熱被覆用蒸着材の製造方
法は、「(1) HfO2を除く不可避不純物総量が0.2wt%以
下の高純度で、かつ平均粒子径が0.1〜10μmの酸化ジ
ルコニウムに酸化イットリウム及び/又は酸化セリウム
を加えた混合粉末を、全体の70%以上が45〜300μmの
粒径となるように造粒し、(2) 該造粒粉末を1000〜1600
℃で熱処理し、(3) 熱処理後の球状集合粉粒体を、全体
の50%以上が45〜300μmになるように粒度調整し、(4)
該粒度調整したジルコニア粉粒原料を成形し、(5) 該
成型体を1000〜1700℃で焼成する、ことを特徴とする、
気孔率が25〜50%で、かつ0.1〜5.0μmの気孔径が全気
孔の70%以上を占めるジルコニア質多孔焼結体よりなる
耐熱被覆用蒸着材の製造方法。」を要旨とする。
【0020】以下、本発明を前記した特徴点(A)〜(D)の
順で詳細に説明する。
【0021】(特徴点(A)について)本発明の特徴点(A)
は、前記したとおり「所定範囲の純度及び平均粒径をも
つ酸化ジルコニウム粉末と酸化イットリウム及び/又は
酸化セリウムを混練し、これを所定範囲の粒度に調整す
る点(第1次造粒)」にある。即ち、「HfO2を除く不可
避不純物総量が0.2wt%以下の高純度で、かつ平均粒子
径が0.1〜10μmの酸化ジルコニウムに、酸化イットリ
ウム及び/又は酸化セリウムを加えた混合粉末を、全体
の70%以上が45〜300μmの粒径となるように造粒する
点(第1次造粒)」にあり、以下、この特徴点(A)につ
いて詳細に説明する。
【0022】本発明に係る耐熱被覆用蒸着材において用
いる酸化ジルコニウム粉末は、上記したように、HfO2
除く不可避不純物総量が0.2wt%以下の高純度(99.8%以
上の高純度)の原料でなければならない。即ち、耐熱コ
ーティング(Thermal Barrier Coating)として使用するZ
rO2質膜は、コーティングされた基材の耐熱性を左右す
る極めて重要な部分であり、その目的に対して純度の高
い組成が要求されており、この要求に答えるためには、
特に99.8%以上の高純度の酸化ジルコニウム粉末原料を
使用する必要がある。純度が99.8%未満では、所望の耐
熱性が得られないので、本発明で使用することができな
い。
【0023】また、本発明において、酸化ジルコニウム
粉末原料として特に“HfO2を除く”とした理由は、ZrO2
は、一般にジルコン(ZrO2・SiO2)或いはバッデライト(Z
rO2)から反応を経て精製されるが、原料段階でHfO2は、
ZrO2と結晶構造などが類似することから、ZrO2との分離
が困難であることや特性的にあまり影響を及ぼさないた
め、特にHfO2を除く必要がないからである。なお、本発
明において使用する酸化ジルコニウム粉末には、通常1.
5〜2.2%のHfO2が含有されている。
【0024】さらに、この酸化ジルコニウム粉末の平均
粒子径は、0.1〜10μm程度のものが望ましく、特に2.0
〜8.0μmが好ましい。酸化ジルコニウム粉末の平均粒
子径が0.1μm未満では、造粒により得られる球状集合
粉粒体の径が45μm以下となり、成形体及び焼結体とし
た場合、高密度なものになりやすく、この高密度化に伴
って成形時や焼成時に亀裂が発生しやすくなる。
【0025】一方、酸化ジルコニウム粉末の平均粒子径
が10μmを越えるものでは、造粒により得られる球状集
合粉粒体の径が300μmを越えてしまい、成型性が困難
となり、成型体及び焼成体の密度が上がりにくく、ま
た、焼結体の強度が低いため操作性が悪いと言った問題
が起こるので好ましくない。
【0026】従って、本発明で使用する酸化ジルコニウ
ム粉末は、その平均粒子径が0.1μm未満又は10μmを
越えるものでは 、いずれも安定化剤として用いる酸化
イットリウム及び/又は酸化セリウムとの混合物を所定
範囲の粒度に調製することが難しく、本発明で意図する
「全体の70%以上が45〜300μmの粒径である造粒物」
(第1次造粒:後記参照)が得られ難いため好ましくな
い。
【0027】本発明に係る耐熱被覆用蒸着材において用
いる安定化剤(酸化イットリウム、酸化セリウム)の純度
は、99.9%以上であることが望ましい。この安定化剤の
純度は、前記した酸化ジルコニウムの純度と同様、コ−
ティングされた基材の耐熱性を左右する極めて重要なZr
O2質膜に係るものであり、高純度のものでなくてはなら
ない。純度99.9%未満のものでは、所望の耐熱性を得る
ことができない。なお、これらの安定化剤は、前記した
ようなジルコニアの可逆相転移に伴って生じる割れの発
生を防止するものであり、ジルコニア質焼結体の特性を
大きく左右するものである。
【0028】本発明で使用する安定化剤としては、酸化
イットリウム及び/又は酸化セリウム(即ち、Y2O3、CeO
2、又は、CeO2−Y2O3)であり、まず酸化イットリウム(Y
2O3)単独使用の場合について、以下説明する。本発明で
使用する酸化イットリウム(Y2O3)は、前記したとおり、
99.9%以上の高純度Y2O3粉末原料を使用する必要があ
る。
【0029】このY2O3は、ジルコニアの安定化剤として
作用するが、現在、ニーズスペックとしてのY2O3は6.5
〜8wt%程度であり、焼結体のX線回折法による安定化
度(正方晶+立方晶)の構成比率は、50〜60%であり、緻
密体であれば80%以上と予想される。そして、添加した
Y2O3は、全量が固溶されて正方晶+立方晶になるもので
はなく、粒界相にも存在するものである。
【0030】本発明で用いるY2O3は、耐熱性、耐熱衝撃
性及び蒸着材として使用されるための組織安定性の点か
ら、特に均一分散されることが好ましく、この目的に対
してY2O3の粒度は、1μm程度以下の微粉であることが
好ましい。
【0031】本発明において、酸化イットリウム単独使
用の場合、その添加量は0.1〜30wt%が望ましい。特に1
〜20wt%が望ましく 、耐熱被覆材として最も適したイ
ットリア安定化量としては、8wt%程度が良好である。
0.1wt%未満では安定化することができず、相転移に伴
う体積膨張、収縮に起因する割れが発生し、一方、30wt
%を越える場合には、焼結が困難となり製造に適しない
ので、いずれも好ましくない。
【0032】酸化ジルコニウム粉末と酸化イットリウム
の混合・粉砕方法としては、通常湿式ボ−ルミルを用い
て行うことができ、該ボ−ルの材質としては、不純物混
入を避けるため、イットリア安定化ジルコニア製ボ−ル
を用いるのが好ましい。ただし、本発明において、酸化
ジルコニウム粉末と酸化イットリウムとの混練効果が得
られるのであれば、この手段に制約されるものではな
い。
【0033】次に、安定化剤として酸化セリウム(CeO2)
又は酸化セリウム(CeO2)及び酸化イットリウム(Y2O3)を
使用する場合について、以下説明する。本発明で使用す
る酸化セリウム(CeO2)も、前記したとおり、99.9%以上
の高純度CeO2粉末原料を使用する必要がある。
【0034】このCeO2を安定化剤とするジルコニア質焼
結体は、高い破壊靱性特性を有する材料として知られて
おり、本発明に係る耐熱被覆用蒸着材としても注目され
る材料である。本発明において、安定化剤としてCeO2
独又はY2O3と併用する場合、CeO2を5〜40wt%、Y2O3を1
0wt%以下とするのが望ましく、特にCeO2:10〜30wt
%、Y2O3:2.5wt%程度が好ましい。
【0035】CeO2の含有量が5wt%未満では、ジルコニ
アを安定化させることができず、相転移に伴う体積膨張
及び収縮に起因する割れが発生する。一方、CeO2が40wt
%を越えて含有するようなジルコニアでは、CeO2にて安
定化されたジルコニアの特徴とされる特性を低下させて
しまうため、好ましい材料とはならない。
【0036】さらに、CeO2を含有する酸化ジルコニウム
にY2O3を含有させることにより、より高特性なジルコニ
ア質焼結体を得ることができる。しかし、このY2O3の含
有量が10wt%を越えるものでは、CeO2にて安定化された
ジルコニアの特徴とされる特性を低下させ、さらには、
焼結性を損ない、焼結体の強度低下を起してしまうた
め、好ましい材料とはならない。
【0037】本発明では、上記した条件を満たす酸化イ
ットリウム及び/又は酸化セリウムを同じく前記した条
件を満たす酸化ジルコニウム粉末に混合し、造粒して所
定範囲の粒度に調整したジルコニア球状集合粉粒体(第
1次造粒物)とする。この球状集合粉粒体を製造するに
当たり、その造粒方法(第1次造粒)に関して特に限定さ
れないが、一般のスプレイドライヤ−による乾燥造粒が
望ましい。
【0038】しかし、本発明では、粒径が45〜300μm
の球状集合粉粒体を得ることが目的であるため、その粉
粒体が得られる方法であれば、それ以外の方法でも採用
することが可能である。さらに、造粒時に使用するバイ
ンダ−に関しても、特に限定するものではないが、一般
のアクリル系、ビニル系、共重合系等のバインダ−を用
い、0.3〜10wt%程度の添加、好ましくは0.5〜2wt%の
添加が良い。
【0039】この添加量が0.3wt%未満では、バインダ
−の添加効果が見られず、所望の球状集合粉粒体を得る
ことができない。即ち、0.3wt%未満の場合には、造粒
子自体の強度が低下し、後の熱処理、成形、焼成等の操
作時における造粒物の崩壊を招くと共に成形性が低下す
るので好ましくない。
【0040】一方、10wt%を越えるようなバインダ−を
添加したものでは、極端に凝集硬化した球状集合粉粒体
ができるため、その後に行われる熱処理によりさらに強
固な凝集体となり、製造が困難となるので好ましくな
い。
【0041】以上のように、加熱処理前の造粒操作(第
1次造粒)の段階においては、酸化イットリウム及び/
又は酸化セリウムを添加したジルコニア球状集合粉粒径
は、45〜300μmの粒径となるように造粒するのが好ま
しく、それが材料全体の70%を占めていれば、成形及び
焼成が容易になり、成形及び焼成亀裂の発生を抑制する
ことができる。
【0042】(特徴点(B)“熱処理”について)本発明
では、上記の造粒操作(第1次造粒)により得られたジル
コニア球状集合粉粒体を更に1000〜1600℃の範囲内にお
いて熱処理する必要があり、これが本発明の特徴の1つ
である。
【0043】本発明で特徴とする上記熱処理は、大別し
て二つの目的を持っており、その一は、成型及び焼成過
程において造粒した球状集合粉粒体が容易に崩れない程
度に焼結させることが第1の目的である。この球状集合
粉粒体が適度な状態を保った形で成型及び焼成を行うこ
とにより、球状集合粉粒体が焼結体の骨格を成して球状
集合粉粒間に比較的大きな気孔を生成させることができ
る。
【0044】しかし、熱処理温度が1000℃未満の低温で
ある場合には、球状集合粉粒体の焼結が余り進行しない
ために凝集が弱く、後の成型及び焼成時に球状集合粉粒
体の大半が崩壊してしまい、成型体及び焼結体の密度が
高くなり、低気孔率でかつ、気孔径の小さな焼結体がで
きてしまうため、好ましくない。一方、熱処理温度が16
00℃を越える高温度である場合には、球状集合粉粒体の
焼結が進行し過ぎるために凝集が強く、後の成型及び焼
成時に球状集合粉粒体が崩壊することなく残ってしまう
ため、成型体及び焼結体の密度が低く、高気孔率でか
つ、気孔径の大きな焼結体ができてしまう。このような
焼結体は、耐熱衝撃安定性の面においては良好である
が、強度が低く取り扱いが難しいことや、気孔径及び気
孔の分布のバラツキが大きく安定したジルコニア質多孔
焼結体を得ることが困難であり、好ましくない。
【0045】本発明で特徴とする熱処理の第2の目的
は、酸化ジルコニウム粉末に安定化剤(酸化イットリウ
ム及び/又は酸化セリウム)を固溶させて部分安定化ジ
ルコニアからなる球状集合粉粒体を得ることにある。こ
れは、焼成による収縮を制御して焼成亀裂の発生を防止
すること及び均一な結晶構造を保持させ耐熱衝撃安定性
を向上させることなどに対し極めて重要なものである
【0046】ジルコニアに対する安定化剤の固溶は、50
0℃以上の熱処理にて現れてくるが、前記した第1の目
的を達成するためには、熱処理温度を1000〜1600℃にし
なければならない。ただし、本発明で特徴とする熱処理
については、造粒操作(第1次造粒)により得られたジル
コニア球状集合粉粒体をすべて1000〜1600℃の範囲内に
おいて熱処理する必要がなく、この熱処理を行った球状
集合粉粒体に対して、30wt%以下であれば、熱処理を行
っていない球状集合粉粒体を添加しても、熱処理に伴う
前記目的を達成することが可能であり、これも本発明に
包含されるものである。
【0047】(特徴点(C)について)本発明では、前記
した加熱処理を行った後、再度所定範囲の粒度(全体の5
0%以上が45〜300μmからなる造粒体)に調整する必要
があり(第2次造粒)、これを本発明の耐熱被覆用蒸着材
製造用原料として使用する点を本発明の特徴の1つとす
るものである。
【0048】この45〜300μmからなる球状集合粉粒体
(第2次造粒)が全体の50%を満たないような原料粉を用
いて成型を行ったものでは、焼結体に亀裂が発生しやす
くなることや耐熱衝撃安定性の低下などの原因となるた
め、本発明の耐熱被覆用蒸着材とはなりえず、好ましく
ない。
【0049】本発明に係る前記熱処理条件にて熱処理を
行った球状集合粉粒体には、バインダ−成分がなくなっ
ているため、成型体の取扱いにおける強度の必要性から
再度バインダ−の添加が必要となる。このバインダ−の
添加方法に関しては特に定めるものではないが、成型方
法及び成型体の形状に応じて、スプレイドライヤ−やミ
キサ−等の攪拌メディアの利用が良好である。
【0050】また、バインダ−の種類及び量に関しても
限定するものではなく、前記した造粒時(第1次造粒時)
と同様な条件で行うことが好ましい。即ち、このバイン
ダ−(第2次造粒用バインダ−)として、一般のアクリル
系、ビニル系、共重合系等の結合剤を用いることがで
き、その添加量としては、1〜10wt%程度が良く、特に2
〜6wt%が好ましい。
【0051】バインダ−添加量が1wt%未満では、成形
体強度が上がらず、ハンドリングに問題が生じると共
に、第1次の造粒後からこのバインダ−添加までの一連
の操作により崩壊した球状集合粉粒体が再度凝集され難
く、再造粒効果が得られないため、45〜300μm範囲外
の球状集合粉粒体の分布が多くなり、成形及び焼成亀裂
が発生し易くなるので好ましくない。一方、10wt%を越
えると、球状集合粉粒体同士が必要以上に強く凝集して
しまい、大きな凝集粒が増加して後の成形が困難とな
り、更に成型体及び焼結体密度が上がり、耐熱衝撃安定
性が低下するので好ましくない。
【0052】つまり、熱処理を行い、バインダ−添加し
た後の成型前原料としてのジルコニア球状集合粉粒体
は、成型までの一連の操作によってそのジルコニア球状
集合粉粒体がある程度崩壊することを考慮しても、バイ
ンダ−の添加を行った成型に用いる原料粉は、その全体
の50%以上が45〜300μmからなる球状集合粉粒体(第2
次造粒物)でなくてはならない。なお、このような球状
集合粉粒体の成型方法は、一般に利用される乾式加圧成
型、静水式加圧成型、鋳込成型、押出し成型など任意に
用いることができる。
【0053】(特徴点(D)について)本発明において、
前記ジルコニア造粒物(第2次造粒物)よりなる原料を焼
成することにより、所定範囲の気孔率及び気孔径(気孔
率が25〜50%で、かつ0.1〜5.0μmの気孔径が全気孔の
70%以上)を有する酸化イットリウム及び/又は酸化セ
リウム含有高純度ジルコニア質多孔焼結体を得るもので
あり、以下この点について説明する。
【0054】本発明において、前記のように得られた成
型体の焼成方法に関しては、特に限定するものではない
が、真空中、酸素中、空気中、不活性ガス雰囲気中等で
の焼成が可能であり、一般的には空気中にて焼成を行う
ことが好ましい。しかし、焼成の温度に関しては、次の
焼成温度範囲内で行うものでなくてはならない。
【0055】この焼成温度範囲とは、1000〜1700℃の範
囲を意味しており、本発明の耐熱被覆用蒸着材の特徴の
一つである、結晶相が単斜晶と正方晶及び立方晶からな
る混合相で、かつ、正方晶及び立方晶の含有率が10〜90
%である焼結体の条件を満たすことができる焼成温度で
ある。
【0056】1000℃未満又は1700℃を越える条件で焼成
を行ったものでは、結晶相が単斜晶と正方晶及び立方晶
からなる混合相で、かつ、正方晶及び立方晶の含有率が
10〜90%である焼結体の条件を満たすことができない。
【0057】つまり、正方晶及び立方晶の含有率(以下
“安定率”と略記する)が、10%を満たない焼結体で
は、急加熱ないしは急冷却時に相転移に伴う亀裂が発生
し、焼結体に割れが生じるため好ましくない。逆に、安
定化率が90%を越えるような焼結体では、熱膨張率及び
結晶粒子が大きくなりすぎることにより、耐熱安定性を
損ねてしまうため好ましくない。
【0058】以上の条件を全て満たすことにより、本発
明に係るジルコニア質多孔焼結体、即ち気孔率が25〜50
%で、かつ0.1〜5.0μmの気孔径が全気孔の70%以上を
占めるジルコニア質多孔焼結体を得ることができるもの
であり、このジルコニア質多孔焼結体を耐熱被覆用蒸着
材として用いることにより、電子ビ−ム等のエネルギ−
ビ−ム照射型蒸着法による、高温領域での急激な加熱及
び冷却に十分耐えるような耐熱安定性を有し、取扱い上
必要とされる機械的強度を兼ね備えた従来にない耐熱被
覆用蒸着材を得ることができる。
【0059】従って、本発明のような、気孔率が25〜50
%で、かつ0.1〜5.0μmの気孔径が全気孔の70%以上を
占めるジルコニア質多孔焼結体ではないジルコニア質焼
結体を用いた耐熱被覆用蒸着材では、上記するような高
い耐熱安定性を有し、十分な機械的強度を兼ね備えた耐
熱被覆用蒸着材とはならない。
【0060】更に、本発明は、安定化剤として使用する
酸化イットリウム及び/又は酸化セリウムの添加量、球
状集合粉粒体(第1次造粒物)の粉粒径、バインダ−量、
熱処理温度等を所定範囲内で適宜選定することにより、
得られるジルコニア質多孔焼結体の気孔の分散性、気孔
径、気孔体積率等を任意に制御することができる。ただ
し、本発明は、該焼結体の耐熱衝撃安定性を向上させる
ため、さらには耐熱被覆用蒸着材として好適なジルコニ
ア質多孔焼結体を得るため、この焼結体の気孔率が25〜
50%であり、かつ0.1〜5.0μmの気孔径が全気孔の70%
以上を占めるように制御する必要がある。
【0061】また、本発明は、以上のように得たジルコ
ニア質多孔焼結体(目的に応じ本発明で規定する範囲内
の任意の気孔率、気孔径を有するジルコニア質多孔焼結
体)を使用し、例えば電子ビーム等のエネルギ−ビ−ム
照射型蒸着法により所望基材に蒸着した耐熱被覆部材を
得ることができ、これも本発明に包含されるものであ
る。
【0062】
【実施例】次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、
本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以
下の実施例に限定されるものではない。
【0063】(実施例1)イットリア安定化ジルコニア
製ボ−ルミル(以下、単に“ボ−ルミル”という)のポッ
トに、99.8%以上の高純度で7.0μm程度の平均粒子径
を有する酸化ジルコニウム:92.8重量%と、99.9%以上
の高純度で平均粒子径が1μm程度以下の酸化イットリ
ウム:7.2重量%とを加えて混練した。混練後アクリル
系共重合樹脂を添加し、スプレイドライヤ−により全体
の70%以上が45〜300μmの粒径となるように乾燥造粒
し、第1次造粒粉を得た。
【0064】得られた第1次造粒粉を1400℃にて熱処理
をした後、再度ボ−ルミルにて混練し、アクリル系共重
合樹脂を添加し、スプレイドライヤ−により全体の50%
以上が45〜300μmの粒径となるように乾燥造粒し、第
2次造粒粉を得た。次に、この第2次造粒粉を500μm
のメッシュに通した後φ90×250mmのゴム枠に詰めて
静水圧加圧成形機により成形し、1470℃で焼成した。
【0065】得られた焼結体の「気孔率(%)」、「0.1
〜5.0μmの気孔径分布(%)」及び「安定化度(正方晶及
び立方晶の割合:%)」を表1に示す。また、該焼結体
についてスポ−リングテストを行った。その結果を同じ
く表1に示す。このスポ−リングテストは、得られた焼
結体をアセチレンと酸素の混合ガスのバ−ナ−により24
00℃付近まで一気に加熱し、2分間そのまま加熱した
後、バ−ナ−より焼結体を外して室温まで放冷し、その
際に発生する焼結体の亀裂状態を調査する方法を採用し
た。
【0066】表1に示す“耐スポ−リングテスト”か
ら、この実施例1で得られた焼結体は、耐熱被覆用蒸着
材として実用に充分耐え得る耐熱衝撃安定性が確認され
た。「蒸着材としての実用に耐え得る耐熱衝撃安定性」
とは、焼結体に2000℃以上の急激な加熱を行ってもクラ
ックを発生しないということである。
【0067】更に、この実施例1で得られた焼結体につ
いて、作製評価として“成形性”、“焼結亀裂”及び
“焼結体強度”を、また、総合評価を表1に示した。表
1の「作製評価」に示すように、この実施例1では、焼
成亀裂のない、作製し易い高強度の焼結体が得られ、総
合評価として優れたものであった。
【0068】(実施例2)この実施例2は、前記実施例
1における第2次造粒粉を造粒する手段として「スプレ
イドライヤ−による方法」を採用したのに代えて「大型
ミキサ−」を用いたものであり、それ以外は、実施例1
と同一条件、同一手段で焼結体を製造した例である。
【0069】得られた焼結体について、その気孔率、0.
1〜5.0μmの気孔径分布及び安定化度を、また、実施例
1と同一のスポ−リングテスト結果を表1に示す。更
に、実施例1と同様、作製評価及び総合評価を表1に示
した。
【0070】表1に示す“耐スポ−リングテスト”か
ら、この実施例2による焼結体も、実施例1と同様、耐
熱被覆用蒸着材として実用に充分耐え得る耐熱衝撃安定
性が確認された。また、表1の「作製評価」に示すよう
に、この実施例2においても、焼成亀裂のない、作製し
易い高強度の焼結体が得られ、総合評価として優れたも
のであった。
【0071】(実施例3)この実施例3は、前記実施例
1において、 ・「第2次造粒粉をスプレイドライヤ−により全体の50
%以上が45〜300μmの粒径となるように乾燥造粒す
る」点及び ・「この第2次造粒粉を500μmのメッシュに通した後
成形する」点、に代えて ・「第2次造粒粉を大型ミキサ−により全体の90%以上
が45〜300μmの粒径となるように乾燥造粒する」点及
び ・「この第2次造粒粉を300μmのメッシュに通した後
成形する」点、としたものであり、それ以外は、実施例
1と同一条件、同一手段で焼結体を製造した例である。
【0072】得られた焼結体について、その気孔率、0.
1〜5.0μmの気孔径分布及び安定化度を、また、実施例
1と同一のスポ−リングテスト結果を表1に示す。更
に、実施例1と同様、作製評価及び総合評価を表1に示
した。
【0073】表1に示す“耐スポ−リングテスト”か
ら、この実施例3による焼結体も、実施例1と同様、耐
熱被覆用蒸着材として実用に充分耐え得る耐熱衝撃安定
性が確認された。また、表1の「作製評価」に示すよう
に、この実施例3では、焼成亀裂のない、作製し易い高
強度の焼結体が得られ、総合評価として優れたものであ
り、特に成形性が良好であった。
【0074】(実施例4)この実施例4は、前記実施例
1において、 ・「99.8%以上の高純度で7.0μm程度の平均粒子径を
有する酸化ジルコニウムを使用する」点及び ・「第2次造粒粉を造粒する手段として、スプレイドラ
イヤ−を用いる」点、に代えて ・「99.8%以上の高純度で1.0μm程度の平均粒子径を
有する酸化ジルコニウムを使用する」点及び ・「第2次造粒粉を造粒する手段として、大型ミキサ−
を用いる」点、としたものであり、それ以外は、実施例
1と同一条件、同一手段で焼結体を製造した例である。
【0075】得られた焼結体について、その気孔率、0.
1〜5.0μmの気孔径分布及び安定化度を、また、実施例
1と同一のスポ−リングテスト結果を表1に示す。更
に、実施例1と同様、作製評価及び総合評価を表1に示
した。
【0076】表1に示す“耐スポ−リングテスト”か
ら、この実施例4による焼結体も、実施例1と同様、耐
熱被覆用蒸着材として実用に充分耐え得る耐熱衝撃安定
性が確認された。また、表1の「作製評価」に示すよう
に、この実施例4では、焼成亀裂のない、作製し易い高
強度の焼結体が得られ、総合評価として優れたものであ
り、特に焼結体強度が良好であった。
【0077】(比較例1〜5)ボ−ルミルポットに、9
9.8%以上の高純度で表1に示す平均粒子径(15.2μm、
7.0μm)を有する酸化ジルコニウムと、99.9%以上の高
純度で平均粒子径が1μm程度以下の酸化イットリウム
を加えて混練した。混練終了後アクリル系共重合樹脂を
添加し、スプレイドライヤ−により表1に示す“45〜30
0μmの造粒子分布(%)”の第1次造粒粉を得た。
【0078】得られた第1次造粒粉を表1に示す温度(1
400℃、800℃、1700℃)にて熱処理をした後、アクリル
系共重合樹脂を添加し、大型ミキサ−により表1に示す
“熱処理後の45〜300μmの造粒子分布(%)”の第2次
造粒粉を得た。次に、この第2次造粒粉を500μmのメ
ッシュに通した後φ90×250mmのゴム枠に詰めて静水
圧加圧成形機により成形し、1470℃で焼成した。
【0079】得られた焼結体について、その気孔率、0.
1〜5.0μmの気孔径分布及び安定化度を、また、実施例
1と同一のスポ−リングテスト結果を表1に示す。更
に、実施例1と同様、作製評価及び総合評価を表1に示
した。
【0080】比較例1〜5では、表1に示すように、耐
スポ−リング性又は作製評価、あるいは、その両方の悪
い結果の焼結体しか得ることができなく、耐熱被覆用蒸
着材として使用するには不適当なものばかりであった。
【0081】即ち、本発明で規定する酸化ジルコニウム
の平均粒子径範囲(0.1〜10μm)外の15.2μmを用いた
比較例1では、第1次造粒粉を造粒するのが困難であ
り、本発明で規定する第1次造粒粉分布の範囲(全体の7
0%以上が45〜300μmの粒径となる粒子分布)外の第1
次造粒粉が得られた。そのため、比較例1では、本発明
で規定する焼結体の“0.1〜5.0μmの気孔径が全気孔の
70%以上を占める焼結体”並びに“所望の焼結体強度”
が得られず、耐熱被覆用蒸着材としては不適当であるこ
とが確認された。
【0082】また、比較例2、3の結果から、本発明で
規定する平均粒子径範囲(0.1〜10μm)内である7.0μm
程度の酸化ジルコニウムを原料とした場合でも、熱処理
を行わない比較例2、比較的低い熱処理温度(800℃)で
熱処理した比較例3では、共に耐スポ−リング性が極端
に低下することが確認された。
【0083】更に、比較例4、5の結果から、本発明で
規定する熱処理温度範囲(1000〜1600℃)よりも高温(170
0℃)で熱処理した比較例4、熱処理後の第2次造粒粉分
布が本発明で規定する範囲(50%以上が45〜300μmであ
る範囲)外である比較例5では、前者は成形性及び焼結
体強度が悪く、後者は耐スポ−リング性の低下及び焼結
亀裂が認められた。
【0084】これに対して、本発明で規定する各要件を
すべて具備する本発明の実施例1〜4では、表1から明
かなように、耐スポ−リング性及び作製評価(作製のし
やすさ)を著しく向上させることができ、耐熱被覆用蒸
着材として実用に充分耐え得る耐熱衝撃安定性が確認さ
れた。
【0085】
【表1】
【0086】(実施例5、比較例6)ゴムライニングの
ボ−ルミル(以下、単に“ボ−ルミル”という)に、99.8
%以上の高純度で表2に示す平均粒子径を有する酸化ジ
ルコニウムと99.9%以上の高純度酸化セリウム及び99.9
%以上の高純度酸化イットリウムを同じく表2に示す組
成となるように配合して混練を行った。なお、表2中組
成No.B、D及びEは、本発明の実施例5における組成であ
り、A、C、F及びGは比較例6における組成である。
【0087】
【表2】
【0088】混練後、アクリル系共重合樹脂を1wt%添
加し、スプレイドライヤ−により45〜300μmからなる
球状集合粉粒体の含有量が表3及び表4に示す条件とな
るように乾燥造粒し、第1次造粒粉を得た。
【0089】得られた球状集合粉粒体(第1次造粒粉)を
表3及び表4に示す温度で熱処理をした後、再度ボ−ル
ミルにて混練し、アクリル系共重合樹脂を添加し、スプ
レイドライヤ−を用い、45〜300μmの粒径からなる球
状集合粉粒体の含有量が表3及び表4に示す条件となる
ように乾燥造粒し、第2次造粒粉を得た。次に、この球
状集合粉粒体(第2次造粒粉)を500μmのメッシュに通
した後、φ90×250mmのゴム枠に詰めて静水圧加圧成
形機により成形し、表3及び表4に示す温度で焼成を行
い、焼結体を作製した。
【0090】得られた焼結体の成型時の成型性、焼結体
の亀裂状態及びその強度特性、安定化率(%)、気孔率
(%)、0.1〜5μmの気孔径分布(%)、耐熱衝撃安定性を
測定し、その結果を表3及び表4に示す。なお、表3及
び表4中試料No.2、5、7、11は本発明の実施例5であ
り、他は比較例6である。
【0091】また、表3及び表4中の耐熱衝撃安定性の
試験方法は、焼結体をアセチレンと酸素の混合ガスのバ
−ナ−により2400℃付近まで一気に加熱し、2分間その
まま加熱した後、バ−ナ−より焼結体を外して室温まで
放冷し、その際に発生する焼結体の亀裂状態を調べて耐
熱衝撃安定性とした。安定化率(%)に関しては、焼結体
表面を#600のダイアモンド砥石で研磨した後、1〜5μ
mのダイアモンド粒により鏡面に仕上げ、その表面のX
線回折による強度比より以下の式を用いて求めた。
【0092】
【数1】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】表3及び表4に示す結果より、本発明で規
定する条件を全て満たすことにより、成型性がよく、操
作上必要とされる機械的強度を有し、しかも耐熱衝撃安
定性に優れたジルコニア質多孔焼結体からなる耐熱被覆
用蒸着材が得られることが確認された。これに対して、
本発明で規定する範囲を1つでも具備しない比較例6で
は、本発明で目的とする所望特性を有する耐熱被覆用蒸
着材が得られなかった。
【0096】
【発明の効果】以上詳記したように本発明は、前記特徴
点(A)〜(D)を特徴とし、これにより、耐熱被覆用蒸着材
の形状に何ら制約を受けない、しかも高温域での耐熱衝
撃安定性に優れ、かつ操作上何ら問題のない強度を有
し、更に亀裂や割れが発生しない酸化イットリウム及び
/又は酸化セリウム含有高純度ジルコニア質多孔焼結体
からなる耐熱被覆用蒸着材が得られる効果が生じる。
【0097】また、本発明によれば、比較的平均粒子径
の大きな酸化ジルコニウム原料を用いても焼結体の気孔
径及び気孔率の大きな、しかも耐熱衝撃安定性が向上し
た耐熱被覆用蒸着材を得ることができ、更に、気孔のコ
ントロ−ルを容易にすることができる効果が生じる。そ
して、本発明により得られた適性密度を有する焼結体を
電子ビ−ム等のエネルギ−ビ−ム照射型蒸着法の蒸着材
源として用いても、高温領域での急激な加熱ないしは冷
却にも拘らず、焼結体に亀裂や割れが発生することがな
いので、耐熱部材が実使用時にさらされる高温度域にお
いて、耐熱被膜を形成すための有効な蒸着材、構造材あ
るいは機能材等に効果的に利用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮崎 博 岡山県邑久郡長船町福岡500−202 (72)発明者 美濃 忠弘 岡山県備前市東片上1735−4 (72)発明者 一森 照光 岡山県備前市東片上803 (56)参考文献 特開 平4−367562(JP,A) 特開 平3−137073(JP,A) 特開 平1−148748(JP,A) 特開 昭62−46960(JP,A)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 HfO2を除く不可避不純物総量が0.2wt%
    以下の高純度で、かつ平均粒子径が0.1〜10μmの酸化
    ジルコニウムに、酸化イットリウム及び/又は酸化セリ
    ウムを加えた混合粉末を、全体の70%以上が45〜300μ
    mの粒径となるように造粒し、熱処理を行い、球状集合
    粉粒体全体の50%以上が45〜300μmとなるジルコニア
    粉粒を焼結してなる焼結体であり、該焼結体の気孔率が
    25〜50%で、かつ0.1〜5.0μmの気孔径が全気孔の70%
    以上を占めるジルコニア質多孔焼結体よりなることを特
    徴とする耐熱被覆用蒸着材。
  2. 【請求項2】 純度が99.9%以上の高純度酸化イットリ
    ウム及び/又は酸化セリウムを用いることを特徴とする
    請求項1記載の耐熱被覆用蒸着材。
  3. 【請求項3】 前記混合粉末として酸化イットリウムを
    用いたジルコニア質多孔焼結体が、該酸化イットリウム
    を0.1〜30wt%含有した、不可避不純物を含む単斜晶ジ
    ルコニアを原料とした焼結体よりなり、該焼結体の結晶
    相が単斜晶、正方晶及び立方晶からなる混合相であっ
    て、かつ正方晶及び立方晶の含有率が10〜90%であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の耐熱被覆用蒸着材。
  4. 【請求項4】 前記原料粉末として酸化セリウム、又
    は、酸化セリウム及び酸化イットリウムを用いたジルコ
    ニア質多孔焼結体が、該酸化セリウムを5〜40wt%、酸
    化イットリウムを10wt%以下含有した、不可避不純物を
    含む単斜晶ジルコニアを原料とした焼結体よりなり、該
    焼結体の結晶相が単斜晶、正方晶及び立方晶からなる混
    合相であって、かつ正方晶及び立方晶の含有率が10〜90
    %であることを特徴とする請求項1記載の耐熱被覆用蒸
    着材。
  5. 【請求項5】 Y2O3、HfO2、CeO2を除く不可避不純物総
    量が1.0wt%以下のジルコニア質多孔焼結体よりなるこ
    とを特徴とする請求項1記載の耐熱被覆用蒸着材。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3、4又は5に記載の耐
    熱被覆用蒸着材を基材に蒸着してなることを特徴とする
    耐熱被覆部材。
  7. 【請求項7】 請求項1、2、3、4又は5に記載の耐
    熱被覆用蒸着材を電子ビーム等のエネルギ−ビ−ム照射
    型蒸着法により基材に蒸着することを特徴とする耐熱被
    覆部材の製造方法。
  8. 【請求項8】 (1)HfO2を除く不可避不純物総量が0.2wt
    %以下の高純度で、かつ平均粒子径が0.1〜10μmの酸
    化ジルコニウムに酸化イットリウム及び/又は酸化セリ
    ウムを加えた混合粉末を、全体の70%以上が45〜300μ
    mの粒径となるように造粒し、 (2)該造粒粉末を1000〜1600℃で熱処理し、 (3)熱処理後の球状集合粉粒体を、全体の50%以上が45
    〜300μmになるように粒度調整し、 (4)該粒度調整したジルコニア粉粒原料を成形し、 (5)該成型体を1000〜1700℃で焼成する、 ことを特徴とする、気孔率が25〜50%で、かつ0.1〜5.0
    μmの気孔径が全気孔の70%以上を占めるジルコニア質
    多孔焼結体よりなる耐熱被覆用蒸着材の製造方法。
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