JP2592764Y2 - 核燃料集合体用スペーサ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、燃料棒などの棒状要素
を格子状に束ねて燃料集合体を形成するためのスペーサ
に係り、特に冷却材の流れに対するスペーサによる圧損
が低減され、バネが比較的小さい空間におさまるように
したスペーサに関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、燃料集合体は、多数の燃料棒及
び１本のウォータロッドを上部タイプレートと下部タイ
プレートとで支持するとともに、その中間部を複数のス
ペーサによって支持し、その核燃料棒が横方向に振動し
ないように拘束して、長い筒状の燃料チャンネル内に内
装することによって構成されている。

【０００３】図１１は燃料棒を支持拘束する従来のスペ
ーサの平面図であって、このスペーサは多数の筒状セル
１０によって構成されている。すなわち、多数の管状セ
ル１０が互いにその軸線が平行になるように格子状に配
列され、互いに隣接する管状セル同志がその側壁部にお
いて溶接によって接合されている。そして、その格子状
に配列された管状セルの外周に支持バンド１１が装着さ
れている。

【０００４】ところで、上記管状セル１０には、それぞ
れ上下両縁部に周方向に離間した２個のセルストップ１
２がセル内方向に突設されている（図１１，図１２）。
そして、上記２個のセルストップ１２が設けられている
部分と直径的に対向する側壁部が他の管状セル１０の側
壁と互いに接触されており、その互いに接触する側壁部
に図１３に示すように、コ字状のスリット１３を設ける
ことによって背中合わせにされた側壁部による突起部１
４が形成され、その突起部１４に、図１４に示すように
菱形のリング状に屈曲形成されたバネ部材１５の上，下
端部１５ａ，１５ｂが系合され、上記バネ部材１５の左
右の突部がそれぞれ隣接する筒状セル１０内に突出する
ようにしてある（図１２）。

【０００５】しかして、筒状セル１０内に燃料棒１６が
挿入されたとき、上記バネ部材１５によってセル内に突
設されたセルストップ１２に上記燃料棒１６が押圧さ
れ、その位置に保持される。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】ところが、このような
スペーサにおいてはバネ部材１５をセルの側壁に設けた
突起部１４に取付けるため、バネ部材１５の高さよりさ
らに高い管状セル１０が必要となる。したがって、この
場合冷却材と接する面積が大きく、圧損が大きくなる等
の問題がある。またこれは、コスト高にもなり、さらに
表面積が体積比に比べて大きいため、中性子吸収が大き
くなるという高燃焼度を志向する際の燃料として耐久性
上のデメリットも考えられる。また、セルを加工するに
は、管を製造した上さらにプレス加工等を施し、セルス
トップ１２、突起部１４等を形成する必要があり、突起
部１４の形状によっては加工が極めて困難となる等の問
題もある。

【０００７】すなわち、上記の如きスペーサにおいて
は、互いに反対方向の曲率を有する突起部１４が背中合
わせの状態で二重になっており、これがリング状のバネ
部材１５の内側に存在するため、この突起部１４がバネ
部材の圧縮代を制限する。しかして、このバネ部材の圧
縮代を考慮すると、バネ部材を配設するために大きなス
ペースが必要となり、例えばＢＷＲ９×９格子の場合に
は構成が不可能となる等の問題がある。

【０００８】本考案はこのような点に鑑み、比較的高さ
が低くでき、冷却材の流れに対する圧損も小さくでき、
かつ材料を削減でき、低コストで製造可能なスペーサを
得ることを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本考案は上記目的を達成
するため、燃料棒などの棒状要素を格子状に束ね燃料集
合体を形成するためのスペーサにおいて、軸線方向の切
り割りを有する略管状の２個のセルを互いにその軸線が
平行になるように配設し、一方のセルの切り割り端縁部
を他方のセルの切り割り端縁部に接合して平面視で略Ｓ
字状に形成し、上記接合部近傍に略リング状のバネ部材
を嵌装することによって一つのセルペアを構成し、その
セルペアの複数個を互いにその軸線が平行になるように
配設して多数のセルを格子状に配列したことを特徴とす
る。

【００１０】

【作用】各セル内に燃料棒などの棒状要素を挿入する
と、上記バネ部材によって上記燃料要素がセルストップ
に押圧され、セル内での燃料要素の保持が行なわれる。
しかして、この場合各セルが最小限の板材を丸め等のプ
レス加工により形成され、コスト低減が可能で、バネ部
材の装着部が１枚の板体によって形成されるので、投影
面積が最小化され圧損を低減することができる。

【００１１】

【実施例】以下、添付図面を参照して本考案の実施例に
ついて説明する。図１は本考案のスペーサの一実施例を
示す平面図であり、図２はそのスペーサを構成するセル
ペアの一例を示す分解斜視図である。図２において符号
２０ａ，２０ｂはそれぞれ燃料棒を挿通支持するセルで
あって、そのセル２０ａ，２０ｂは板体をプレス成形し
セルストップ２１を加工するとともに略円筒状に形成さ
れている。上記両セル２０ａ，２０ｂはともに完全な円
筒形ではなく、セルストップ２１が設けられている部分
と直径的に対向する部分に軸線方向の切り割り２２ａ，
２２ｂがそれぞれ設けられており、一方のセル２０ａに
は、その切り割り端縁の上部に、セル２０ａの接線方向
に延びる突片２３ａが延設され、他方のセル２０ｂには
その切り割り端縁の下部に同様な突片２３ｂが延設され
ている。

【００１２】しかして、上記セル２０ａ，２０ｂは互い
に軸線が平行になるように配設し、一方のセル２０ａの
突片２３ａの先端縁部を他方の切り割り端縁に溶接接合
するとともに、他方のセル２０ｂの突片２３ｂの先端縁
部がセル２０ａの切り割り端縁に溶接接合され、平面視
でＳ字状に形成され、上記両突片２３ａ，２３ｂの外周
にほぼ菱形のリング状のバネ部材２４が嵌装され一つの
セルペア２５が形成されている。図３にその平面図を、
図４にの側面図を示す。なおこの場合、両突片２３ａ，
２３ｂにバネ部材２４を嵌装した後、突片と切り割り端
縁との溶接接合を行なう。

【００１３】そこで、このように形成された複数個のセ
ルペア２５が適宜配列され、図１に示すように各セル２
０ａ，２０ｂが格子状に配設され、その外周部がバンド
部材２６によって囲まれ各セルに対して溶接により接合
されている。

【００１４】なお、溶接についてはセルペア２５を溶接
形成した後全体を溶接することも、拘束治具にスペーサ
部材をすべてはめ合わせた状態で溶接することもでき
る。

【００１５】このように上記スペーサにおいては、各セ
ルを板体から加工できるため、材料費低減と工数低減が
可能でありコストの低減が可能である。さらにバネ高さ
に対して同等程度の高さのセルを用いることができ、冷
却材の圧損を減少させることができ、またバネ部材を保
持する突片は一重でほぼ平らであり、上下にわかれ中央
は孔が形成されているのでバネ部材の圧縮が疎外され
ず、バネ圧縮のための最大のスペースを確保することが
できる。

【００１６】また、拡大された切り割り部を設けること
により、より投影面積を小さくすることができる。この
場合でもセルペアと他のセルペアとは同じ溶接点で溶接
されており、剛性や強度が不足することはない。

【００１７】図５及び図６はそれぞれ本考案の他の実施
例を示す図であり、各セル２０ａ，２０ｂの各突片２３
ａ，２３ｂにはその上端縁或は下端縁にそれぞれバネ部
材２４が係合する溝２７、または横方向に延びる溝２８
を形成し、その溝２７或は２８によってバネ部材２４が
拘束されるようにし、バネ部材２４が確実にその位置に
保持されるようにしてある。

【００１８】また、図７、図８に示すように、少なくと
も一方のセルが管状となるようにセルの一端を延長し端
部をさらに溶接するようにし、剛性をさらに増加させて
もよい。この場合でも第１実施例のものに比べると投影
面積は大きくなるが従来のものとくらべると背中合わせ
二重になっている部分が若干小さいため、この分圧損を
小さくすることができる。

【００１９】上記実施例においては、各セルを略円筒形
のものを示したが、図９に示すように八角形状としても
よい。また、バネ部材２４の移動を制限するためには溝
にかぎらず、バネ部材のセルに沿っての移動を制限する
ようなものであれば、どのようなものでもよい。

【００２０】また、バネ部材２４としては菱形のものを
示したが、おおむねリング状即ちセルの突片部をその内
側に入れて保持でき、セルペアの２本の燃料棒を押圧で
きるような構造のものであれば、溶接構造のヘアピン型
のもの、ランタン型のもの等どんなものでもよい。さら
にバネ部材は、図１０に示すように下端が開放したもの
としておき、セルペアの連設部に嵌め合わせた後、その
下端を溶接止めするようにしてもよい。

【００２１】

【考案の効果】以上説明したように、本考案は、軸線方
向の切り割りを有する略管状の２個のセルを互いにその
軸線が平行になるように配設し、一方のセルの切り割り
端縁部を他方のセルの切り割り端縁部に接合して平面視
で略Ｓ字状に形成し、上記接合部近傍に略リング状のバ
ネ部材を嵌装することによって一つのセルペアを構成
し、そのセルペアの複数個を互いにその軸線が平行にな
るように配設して多数のセルを格子状に配列したので、
各セルを最小限の板材を丸め等プレス加工を行なうこと
により形成することができ、材料費加工費等のコストの
低減が可能で、またバネ部材の装着部が一重になり投影
面積を少なくでき、冷却材に対する圧損の低減を図るこ
とができる。

【００２２】また、切り割り部に設けられた上下の突片
によってバネ部材を保持するようにしたものにおいて
は、バネ部材の中央部には孔が形成されセル部材がない
ようになっているため、バネの圧縮代を十分確保できる
等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案のスペーサの平面図。

【図２】本考案のスペーサにおけるセルペアの分解斜視
図。

【図３】上記セルペアの平面図。

【図４】上記セルペアの側面図。

【図５】本考案におけるセルの他の実施例の斜視図。

【図６】本考案におけるセルのさらに他の実施例の斜視
図。

【図７】本考案におけるセルペアの他の実施例の平面
図。

【図８】図７の側面図。

【図９】本考案におけるセルペアの他の実施例を示す平
面図。

【図１０】本考案におけるバネ部材の他の実施例を示す
図。

【図１１】従来のスペーサの平面図。

【図１２】従来のスペーサにおけるセルの横断拡大図。

【図１３】従来のスペーサのセルの側面図。

【図１４】バネ部材の斜視図。

【図１５】図１１のＡ−Ａ線に沿う断面図。

【符号の説明】

２０ａ，２０ｂ セル ２１ セルストップ ２２ａ，２２ｂ 切り割り ２３ａ，２３ｂ 突片 ２４ バネ部材 ２５ セルペア ２６ バンド部材 ２７，２８ 溝

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】燃料棒などの棒状要素を格子状に束ね燃料
   集合体を形成するためのスペーサにおいて、軸線方向の
   切り割りを有する略管状の２個のセルを互いにその軸線
   が平行になるように配設し、一方のセルの切り割り端縁
   部を他方のセルの切り割り端縁部に接合して平面視で略
   Ｓ字状に形成し、上記接合部近傍に略リング状のバネ部
   材を嵌装することによって一つのセルペアを構成し、そ
   のセルペアの複数個を互いにその軸線が平行になるよう
   に配設して多数のセルを格子状に配列したことを特徴と
   する核燃料集合体用スペーサ。
2. 【請求項２】少なくとも一方のセルの切り割り端縁部の
   上端部及び下端部の少なくとも一方に突片を延設し、そ
   の突片の端縁部を他方のセルの切り割り端縁部或は突片
   に接合して２個のセルを上下の突片によって連設し、上
   記上下の突片の外周にバネ部材を嵌装したことを特徴と
   する請求項１記載の核燃料集合体用スペーサ。
3. 【請求項３】バネ部材と係合するセル又は突片の上下両
   端部には、バネ部材と係合する係合部が形成されている
   ことを特徴とする、請求項１又は２記載の核燃料集合体
   用スペーサ。