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JP2024518194A - 滑走型船体を備える船舶 - Google Patents

滑走型船体を備える船舶 Download PDF

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JP2024518194A JP2023548939A JP2023548939A JP2024518194A JP 2024518194 A JP2024518194 A JP 2024518194A JP 2023548939 A JP2023548939 A JP 2023548939A JP 2023548939 A JP2023548939 A JP 2023548939A JP 2024518194 A JP2024518194 A JP 2024518194A
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Abstract

本開示は、船首部(14)、船尾部(14)、中心線(20)、及び滑走型船体(11)を備える船舶(10)に関する。滑走型船体(11)は、中心線(20)に沿って船尾部(14)から船首部(14)に延在するV底部(30)と、V底部(30)の各側面に沿って船尾部(14)から船首部(14)に向かって延在する一対の保持壁(40)とを備える。各保持壁(40)は、中心線(20)と平行に、又は中心線(20)に対して鋭角で、下方に延在する。使用中、V底部(30)は、中心線(20)から保持壁(40)に向かって水を外側へ向ける。保持壁(40)は、船舶(10)に揚力を付与するため、この外側に向けられた水を下方に向けるように構成されている。

Description

本開示は、滑走型船体(planing hull)を備える船舶(marine vessel)、及びこのような船舶を運航する方法に関する。
一般に、船舶の船体は、高速で滑走を促進するように設計される。このような船舶が低速で航行するとき、その重量が、水によって働く浮力によって支えられ、船体は、排水量型船体(displacement hull)として運航する。しかし、高速では、船舶の重量が、主として流体動力学的な揚力によって支えられるように、船体は設計される。滑走を促進するため、このような船体は、典型的には、比較的に平坦な底後部を備えるように設計され、表面には、流体動力学的な揚力を増加させる迎え角が付与される。更に、船舶は、滑走状態になるのを支援するため、出力重量比が高くなるように設計される。しかし、底部が平坦な船体を備える場合、船舶は、水中では比較的に不安定であり、通常は高速での旋回半径が大きくなる。
米国特許出願公開第2015/0329179号明細書は、双胴型船体(catamaran hull)の特徴と、従来のV字型の船体の特徴とを組み合わせた、単胴型滑走船(monohull planing vessel)用のハイブリッド船体構造を開示している。船体は、段差のないV字状の中央部と、2つのセミスポンソン(semi-sponson)とを備え、中央部は、船体の全長に沿って延在しており、セミスポンソンは、中央部から離れるように延びる張出部を備え、中央部の各側面に船体構造の長さに沿って配置される。中央部及びセミスポンソンはそれぞれ、船体の走行面を画定する。セミスポンソンは、浮力と、流体動力学上の揚力を付与する。しかし、このような船体の形状は、滑走速度では、波に強く叩きつけられやすい。
本開示は、改善された滑走型船体を備える船舶を提供することを目的とする。また、安定性が改善された滑走型船体を備える船舶を提供することを目的とする。また、操縦性が改善された船舶を提供することを目的とする。また、船体を超えてコックピット内に上昇する飛沫を低減した船舶を提供することを目的とする。
したがって、本開示は、クレームに従って船舶、及びこのような船舶を運航する方法を提供する。
標準的なV字型の船体の滑走船が水中を高速で移動するとき、船首波の水が、ある角度(迎え角)で船体の底部に当たり、これにより、等しく且つ反対向きの反作用で船体に揚力が生じ、船舶が、船首波を越えて上向きに持ち上げられ、滑走し始める。しかし、船首が波に乗るときには船首が上向きに投げ出される傾向にあるため、迎え角が不所望なものとなり、乗り心地が悪くなる。水中の船体表面が不足すると、方向が不安定になり、高速旋回中のグリップが低下する。水は、V字状の船体によって分けられ、船体の外縁又はチャインに向けて上に移動する。そして、水は、ウォッシュ(wash)の形態で船舶から離れるように排出される。
しかし、本開示の船舶は、船舶を滑走状態にするとともに滑走状態を維持するため、迎え角を高くすることなしに水力学的な揚力を付与することによって、揚力を生み出すように構成されている。船舶は、標準の船舶のように水面上に船首を持ち上げる力を付与する船首波に依存せず、代わりに、保持壁によって水面上に船尾が効果的に持ち上げられる。船尾の上昇により、他の滑走線と比較して迎え角を低くすることができ、また、その他にも多くの利点がある。
特に、V底部によって通常は両側に排出されるウォッシュが、保持壁に打ち付けられる。保持壁は、実質的に、保持壁とV底部との間でウォッシュを保持し、ウォッシュからの水滴は、保持壁同士の間でより大きな実質的に非圧縮性を有する水塊へと凝集し、この水塊は、船舶に対して後方へ移動する。この比較的に大きな水塊は、船尾部を上向きに上昇させ、船舶を水面上へ移動させ、船舶を水面上に維持する。
したがって、保持壁は、船舶が水上を移動するように、船体に対して後方に向けられた水を外側へ向け、この外側に向けられた水を少なくとも船尾部において保持壁とV底部との間で保持するように構成されている。保持壁は、実質的に連続的に船尾に向けられ、保持壁とV底部との間の単位体積当たりの気水比(水の空気に対する比)を上昇させる。したがって、保持壁は、外側に向けられた水の外側への動きを止めない場合と比較して、保持壁とV底部との間の容積内で水塊を増加させ得る。
特に、V底部は、使用中、及び/又は船舶が水中を推進する際に、中心線から保持壁に向けて外側へ水を向けるように構成されている。保持壁は、外側に向けられた(すなわち、V底部から保持壁上に向けられた)水の外側への動きを実質的に阻止又は保持するように構成される。そして、外側へ向けられた水の向きを変更し、船舶の移動方向、中心線及び/又は竜骨の方向に対して比較的に平行に水を移動させる。
保持壁は、船舶に流体動力学的な又は水力学的な揚力を付与するため、外側に向けられた水を後方及び/又は下方へ向けるように構成されている。保持壁は、このウォッシュの殆どがチャインに向かって船外側に逃げていくのを防ぐ。水は、下方へ移動できず、また、非圧縮性を有するため、船体を上向きに上昇させる。したがって、保持壁は、外側に向けられた水を下方へ向けることができる一方で、このような水は、下方へ移動することはできず、代わりに船尾に向けて後方へ向けられ得る。
結果として、船舶は、標準的なV字型の船体を有する滑走船と比べ、(前後方向において)より平坦となり、水面に対する迎え角を小さくしても水面上での推進中及び航行中においてより水平となる。これには、多くの重要な利点がある。船舶は、より安定的な空力学的な姿勢で航行でき、それにより乗組員の快適さが向上し、推進のために消費されるエネルギーを削減できる。船首が下がるため、乗組員は船首の向こう側の視界を大幅に広げることができ、救助中などの複数の用途において非常に有益である。
更に、保持壁が船尾から延在する(すなわち、段差付きの船尾プロファイルを形成すべく船尾で終端する)ときに、船体の後部から出てプロペラに当たる水は、はるかに整えられ、気泡が大幅に減る(すなわち、キャビテーションを軽減できる)。これは、保持壁が、V底部からのウォッシュの水滴を効果的に圧縮して水塊にするためである。したがって、船尾のプロペラには、より整えられてよりキャビテーションの少ない水が供給されることになり、これは、プロペラのスリップが減少することを意味する。したがって、船舶は、より大きな加速とトルクで航行できる。プロペラのスリップが減少するということは、プロペラの水中でのトラクション又は「グリップ」がより大きくなることを意味し、船舶が、水中で横方向の動きを大幅に小さくして旋回できることを意味する。
更に、船舶は、より大きな荷物を運搬するのに適している。通常のV型船体の船舶が荷物を積むと、船尾が沈み、船首が自然と浮き上がる。通常のV型船体の船舶は、滑走のために比較的に大きな船首波に乗り上げる必要もあるが、船舶の積み荷が重い場合にはこれが困難又は不可能となる。しかし、本開示の保持壁は、船舶の下側の長さに沿って揚力を付与し、揚力は船尾のみを対象としないので(とはいえ、保持壁の高さが小さくなるにつれて、揚力は船首に向かって漸減するが)、たとえ荷物を積んでいたとしても、船舶は、より平坦に且つより水平に航行する。したがって、船舶は、比較的に重いに荷物を運搬できる。水平且つ平坦な航行を維持する揚力により、船舶内における重荷物の配置は、通常のV型船体の船舶ほど重要ではない。更に、船舶が平坦に航行するため、水面上に乗ったときに船首波がより小さくなり、このことは、荷物が重くても、船舶が滑走を開始するに際して重大な問題を引き起こさないことを意味する。
船舶がより重い荷物を運搬可能であると、推進力を供給するパワーユニットがより重くなってもよいという顕著な利点があり、その結果として、再生エネルギーに基づいて動作するパワーユニットを利用可能となる。例えば、パワーユニットには、水素源や電池等から出力が供給されてもよいが、これらは全て、通常のV型船体の船舶においてはその重量のために重大な問題を引き起こすことになる。結果として、本船舶により、化石燃料の使用を削減できる。
更に、保持壁により水上でグリップがもたらされるため、船舶は旋回中に非常に安定し、操縦性能が向上する。プロペラのキャビテーションが小さくなるという利点に加えて、旋回外側の保持壁は水から飛び出す一方、旋回内側の保持壁は水中に留まり、水中での横方向の運動に対して等しく且つ反対向きの力を付与する。保持壁は、急旋回中における船舶の水中での横滑り量を大幅に減少させ、そのため、船舶は小さな円を描いて旋回できる。
したがって、V底部及び保持壁は、それによって生じる水力学的な揚力を増加させるような形状及び大きさに形成され、例えば、V底部の表面積は、保持壁の表面積よりも大幅に大きい(例えば、少なくとも2倍の大きさ、又は少なくとも4倍の大きさ)。特に、船舶の竜骨は、V底部によって形成され、竜骨は、保持壁よりも下方にある。V底部は、一対の下メイン部を備えてもよく、各下メイン部は、下メイン幅Aに沿って中心線の両側から外側へ延在する。保持壁は、保持壁高さBに沿って延在し、保持壁高さBは、船尾部及び/又はミッドシップ部(amidships section)において約0.5A未満であってもよい。
V底部は、保持壁に向けて水を外側へ押し出すために、十分に急な角度を有していてもよく、水平に対してV底角αで中心線から外側へ延在してもよく、V底角αは、船尾部及び/又はミッドシップ部において、約18度から約28度の範囲内にあってもよい。保持壁は、水が更に外側へ動くのを阻止又は防止するため、及び/又は水を下向きに押し出すため、十分に急な角度を有していてもよく、水平に対して保持壁角βで下向きに延在していてもよく、保持壁角βは、船尾部及び/又はミッドシップ部において、約70度から約90度の範囲内にあってもよい。V底部と保持壁との間の角度は、船尾部及び/又はミッドシップ部において、約50度又は約60度から約90度又は約100度の範囲内にあってもよく、訳90度未満であってもよい。V底部及び/又は保持壁は、船尾部及び/又はミッドシップ部において、平坦な表面を備えていてもよい。
保持壁は、付与される揚力量を制御するように構成されてもよく、揚力の中心は、船尾に到達する前に保持レールを中断することによって前後に変更可能である。特に、保持壁は、船尾から延在していなくてもよく、船尾から分離されている。V底部は、船尾と保持壁との間で延在する。船尾に保持壁を直接的に設けないことにより、圧力を逃がすことができ、それにより、船尾に水力学的な揚力が付与されず、揚力が減少する。
しかし、本開示の船舶は、標準的なV型船体の滑走船よりも平坦に航行するため、船体が、波を切り裂き、船首部の頂部を超える方向に水飛沫を跳ね上げる。したがって、船首部は、船首部を超えて上昇しようとする飛沫を偏向するため、少なくとも1つのスプレーディフレクタを備えていてもよい。スプレーディフレクタは、中心線に沿って前に向かうほど下方に延在し、且つ中心線から外側へ延在する偏向面を備える。スプレーディフレクタは、このような飛沫を下向きに偏向し、船舶のデッキに到達する飛沫の体積を減らすように構成されている。
本開示の船舶は、船首部、船尾部、中心線、及び滑走型船体を備える。滑走型船体は、中心線に沿って船尾部から船首部に延在するV底部と、V底部の各側面に沿って船尾部から船首部に向かって延在する一対の保持壁とを備える。各保持壁は、中心線と平行に、又は中心線に対して鋭角で、下向きに延在する。
本開示は、船首部、船尾部、中心線、及び滑走型船体を備える船舶を提供する。滑走型船体は、中心線に沿って船尾部から船首部に延在するV底部と、V底部の各側面に沿って船尾部から船首部に向かって延在する一対の保持壁とを備える。各保持壁は、中心線と平行に、又は中心線に対して鋭角で、下向きに延在する。使用中、V底部は、中心線から保持壁に向けて水を外側へ向け、保持壁は、(a)この外側に向けられた水を下方に向け、随意にこのウォッシュの殆どが船体の外縁へと外側に逃げるのを防止するよう構成され、及び/又は(b)この外側に向けられた水を船体に対して後方に向け、船舶に揚力を付与するため、少なくとも船尾部において保持壁とV底部との間で、この外側に向けられた水を保持するように構成されている。
本開示の方法は、水中でこのような船舶を推進することを備え、V底部は中心線から保持壁に向かって水を外側に向け、保持壁は、この外側に向けられた水を下方に向け、揚力が、下方に向けられた水によって船舶に付与される。したがって、船舶は、推進中に水面上に移動し、及び/又は水面上で維持される。
本開示において、用語「中心線centreline)」は、船首部から船尾部まで船舶の中心を下向きに通過する鉛直面を参照し、そのため、船舶の左舷側と右舷側との間の分割面である。船体は、中心線周りにほぼ対称である。
本開示において、用語「前方(forwards)」は、船舶の船尾から船首を通過する方向を指す(すなわち、船尾の反対)。本開示において、用語「下方(downwards)」又は「下方に(downwardly)」は、重力の方向に対して鋭角で、船舶の竜骨のラインに向かう方向、及び/又は船舶が浮かんでいる水に向かう方向及び水中に向かう方向を指し、好ましくは、船舶が水中において中立で、空荷で、停止した姿勢にある場合の方向である。本開示において、用語「上方に(upwardly)」は、下方と反対の方向を指す。「上(upper)」及び「下(lower)」は、上方の位置及び下方の位置をそれぞれ指す。
本開示において、用語「水平の(horizontal)」は、中心線の平面に直交する方向に沿って又はそれに平行であることを意味する。水平は、船舶が水中で揺れたり移動したりするときに、必ずしも重力方向に垂直でなくてもよいことが理解されるであろう。本開示において、用語「外側に(outwardly)」は、船舶の左舷側又は右舷側に向かって中心線から遠ざかる水平な方向(すなわち、横方向(laterally))を意味する。
例示のみを目的として、本開示の船舶の実施形態について、添付図面を参照して、添付図面に示されるとおりに、説明する。
図1は、本開示による船体を備える船舶の左舷側の概略側面図である。 図2Aは、図1のA-A線に沿った断面図である。 図2Bは、図1のB-B線に沿った断面図である。 図2Cは、図1のC-C線に沿った断面図である。 図3は、本開示の船体の角度及び相対寸法を示す、図2Cの一部の拡大図である。 図4は、図1から図3の船体の下側の平面図である。 図5は、図1~図4の船体の正面図である。 図6は、本開示による船体の更なる実施形態の左舷側船首部を示す拡大概略側面図である。 図7は、図6の船体の下側の平面図である。 図8は、図6及び図7の船体の正面図である。
図面に図示されるとおり、本開示は、滑走型船体11を備える船舶10を提供する。本開示において、用語「滑走型船体(planing hull)」は、高速時に船舶10の重量が主として流体動力学上の揚力によって支持されるように、船体11が設計されていることを意味する。
本開示の船舶10は、パワーボートであってもよく、図示のような複合艇(Rigid inflatable boat)(RIB)であってもよい。その他の適したパワーボートには、レクレーションパワーボート、クルーザー、高性能パワーボート、ジェットパワーボート、ジェットスキー等が含まれる。例えば、船舶10は、20m長未満、又は15m長未満であってもよい。
図示省略するが、使用中、船舶は水中で推進し、パワーボートは、水中でパワーボートを駆動するため、プロペラ又はジェット等の少なくとも1つの推進器に取り付けられた少なくとも1つのパワーユニットを備える。この少なくとも1つのパワーユニットは、内燃機関のように機械的パワーユニットでもよいし、電源からエネルギーを受け取るモータのように電気的パワーユニットでもよい。
船舶10は、船首部14、船尾部15、及びこれらの間を延在する中心線20を備える。船首部14は、船舶10の船首(vessel bow)17(すなわち、最前部)から延在しており、船舶10の長さに沿ってその最大25パーセントまで延在してもよい。船尾部15は、船舶10の船尾(vessel stern)18(すなわち、最後部)から延在しており、船舶10の長さに沿ってその最大25パーセントまで延在してもよい。船舶10は、中心線20の両側に、左舷側及び右舷側21,22を備える。
船舶10は、船体11に取り付けられた上部本体12を備える。上部本体12は、船体11の上縁13に取り付けられてもよく、船体11の船首部14及び左舷側及び右舷側21,22の周囲に延在してもよい。上部本体12は、船舶10の船首及び/又は船尾17,18を形成し、船首部14及び/又は船尾部15を少なくとも部分的に形成する。
上部本体12は、図1に示すRIBの場合のように、フェンダーを備えてもよい。フェンダーは、インフレータブルフェンダー又はフォームフェンダー等の浮揚装置(floatation device)であってもよい。後者の場合においても、フォームフェンダーは、船舶10をRIBとして認証するために必要な浮揚装置であると考慮され得ることから、船舶10は、依然RIBであると考慮され得る。フェンダーは、インフレータブル型であってもフォーム型であっても、ハイパロン(hypalon)、ポリウレタン、又はポリ塩化ビニル等の布地を備えた外皮を備えてもよい。あるいは、上部本体12は、デッキ、ガンネル等を備えてもよい。
船体11は、船首(vessel bow)17に隣接して又は船首17を形成する船体船首(hull bow)25と、船尾(vessel stern)18に隣接して又は船尾18を形成する船体船尾(hull stern)26とを備える。船首部14は、船体船首25を備え、船尾部15は、船体船尾26を備える。図示される実施形態において、船体11は、中心線20から外側へ順に、中心線20、V底部30、一対の保持壁40,41、一対の外側船体部50,51、一対の外側チャイン60,61、及び一対の船体側部70,71を備える。V底部30、保持壁40,41、外側船体部50,51、外側チャイン60,61、及び船体側部70,71はそれぞれ、中心線20に沿って船体船尾26から船体船首25に延在してもよく、実質的に平らな平面を備えてもよい。
船体11は、船体船首25にステム80を備える。ステム80は、傾斜していてもよく、後下方に又は前上方に延在してもよい。左舷側及び右舷側21,22それぞれの、V底部30、保持壁40,41、外側船体部50,51、外側チャイン60,61、及び船体側部70,71は、ステム80に向けて又はステム80内へと収束してもよく、ステム80で合流してもよい。ステム80は、図示されるとおり湾曲してもよく、ステム80の曲率半径は、比較的に短い船舶においては、比較的に小さくてもよい。
船体11は、竜骨31を更に備え、竜骨31は、船体船尾26からステム80に向かって延在していてもよい。ステム80は、船体船首25から竜骨31に延在してもよい。竜骨31及び/又はステム80は、中心線20の平面に沿って又は実質的に当該平面内で延在する。本開示において、用語「竜骨」は、船舶10の最底縁を指す。図1及び図6に最もよく示されているように、船体11は、竜骨ライン29を備え又は画定してもよく、竜骨ライン29は、竜骨31に沿って延在して竜骨31から突出してもよく、及び/又は中心線20に沿って長手方向に(すなわち、船首17から船尾18に向けて)延在してもよい。
船体11は、中心線20に沿って、船尾部15から船首部14、特に船体船尾26から船体船首25に延在するV底部30を備える。図示のとおり、V底部30は、船体船尾26から船首部14、特にステム80まで完全に延在してもよい。V底部30は、V字状であり、船舶10の竜骨31を形成する。有利なことには、船体11が一旦水面の上方へ上昇してから再び着水して大きな波に打ち付けられたときに、V底部30により、乗組員に伝わる衝撃を軽減できる。更に、船体11が一方の側に傾いている場合には、その一方の側のより大きな表面積が、もう片方の側よりも大きな揚力を付与し、それにより船体11を水平にするのに役立つ。
V底部30は、中心線20の各側から外側に延在する一対の下メイン部32,33を備える。V底部30は、中心線20を中心に実質的に対称である。下メイン部32,33は、好ましくは少なくとも船尾部及び/又はミッドシップ部15,19において、実質的に平らな表面であってもよく、中心線20又は竜骨31から保持壁40,41のそれぞれに延在する。各下メイン部32,33は、中心線20から、水平に対してV底角αで、外側へ延在する。一例として、水平は、中心線20に垂直な水平底面35によって図3に示されている。V底角αは、船尾部15において、少なくとも約18度であってもよく、約28度未満であってもよく、又は約18度から約28度の範囲内であってもよい。
竜骨31は、下メイン部32,33の実質的に平な平面同士の間の交差部のエッジによって形成されてもよい。これにより、V底部30に、そのV形状が設けられる。
V底部30は、特に船尾部及びミッドシップ部15,19において、船舶10のビーム(最大外側幅)の少なくとも50%にわたって延在している。下メイン部幅Aは、中心線20から外側に延在する各下メイン部32,33に沿った幅である。下メイン部幅Aは、船舶10の大きさ及び意匠に応じて変更される。
V底角α及び下メイン部幅Aは、船体船尾26と船体船首25との間で変わる。特に、船体船首25に向かって、及び/又は船首部25からミッドシップ部19を通って船首部15へと、V底角αは増加し及び/又は下メイン部幅Aは減少する。
船体11は、中心線20の両側でV底部30に沿って少なくとも部分的に延在する少なくとも一対のスプレーレール90,91,92,93を更に備えてもよい。少なくとも一対のスプレーレール90,91,92,93は、船体11から下方にスプレーを向けることにより、船体10の船首部14に揚力を付与できる。各スプレーレール90,91,92,93は、中心線20と、保持壁40,41のうちの1つとの間に配置され、中心線20と平行な方向に長尺である。図示されるように、船体11は、2対のスプレーレール90,91,92,93を備えてもよく、各下メイン部32,33上のスプレーレール90,91,92,93は、互いに離れて配置され、中心線20及び保持壁40,41からも離れて配置されている。
スプレーレール90,91,92,93は、船体船首25又はステム80の近傍から船体船尾25に向かって延在する。スプレーレール90,91,92,93は、船尾部15までは延在していない。船舶10の当該部分においては、スプレーレール90,91,92,93が必要とされるほどに、水が残ることはまれであるからである。例えば、スプレーレール90,91,92,93は、船体船首25又はステム80から船体11の長さの約10%の範囲内のところから延在してもよく、また、船体11の長さの3分の2未満のところまで延在してもよい。船尾部15には、竜骨31と保持壁40,41との間のV底部30を横切る段差又はスプレーレール等が、存在していなくてもよい。V底部30は、外側に且つ上方に延在する実質的に平らな平面32,33を備える。各スプレーレール90,91,92,93は、水平に対して少なくとも約10度の、15度未満の、又は約10度から約15度の範囲内にあるスプレーレール角で延在してもよい。
船体11は、船舶10に流体動力学的な揚力を付与するために保持壁40,41を備え、保持壁40,41は、船尾部15から船首部14に向かって延在し、V底部30の両側に沿って延在し、V底部30の両側から外側へ延在する。各保持壁40,41は、V底部30と外側船体部50,51との間で延在する。各保持壁40,41は、V底部30から好ましくは外側船体部50,51それぞれに延びる実質的に平らな平面を備えてもよい。各保持壁40,41は、V底部30に隣接し、及び/又はV底部30から延在してもよい。保持壁40,41は、船尾部15において、好ましくは船尾部15からミッドシップ部19の少なくとも50%に沿って、相互に、中心線20と、及び/又は竜骨31とほぼ平行に延在してもよい。
船体11の左舷側及び右舷側21,22の保持壁40,41は、船体船首25で合流する。各保持壁40,41は、船体船尾26から延在してもよく、又は船体船尾26から分かれていてもよい。例えば、保持壁40,41は、船体船尾26から距離をおいた船尾部15においてのみ開始でき、その距離が少なくとも約20cmであってもよい。V底部30は、船体船尾26と保持壁40,41との間で延在してもよい。
各保持壁40,41は、中心線20と平行に、又は中心線20に対して鋭角で、下方に延在する。各保持壁40,41は、V底部30の下メイン部32,33に隣接して鋭角で下方に延在してもよい。したがって、保持壁40,41は、水平に対して保持壁角βで下向きに、好ましくはV底部30から直接的に、延在する。保持壁角βは、船尾部15において、約90度未満、約70度以上、又は約70度から約90度の範囲内にあってもよい。このような範囲は、滑走中に船舶10に十分な揚力を付与するにあたって特に効果的である。
保持壁40,41は、竜骨31よりも下方には延びておらず、竜骨31は、保持壁40,41の下方又は下にある。保持壁高さBは、各保持壁40,41のC底部30から遠ざかって延在する方向における寸法であるが、十分に小さく、そのため、竜骨31が保持壁40,41よりも下方又は下に位置する。したがって、保持壁高さBは、B<A(sinα/cosβ)として定義され得る。保持壁高さBは、船尾部15において、約0.5A未満であってもよく、約0.25A未満であってもよく、及び/又は約0.09Aから約0.22Aの範囲内にあってもよい。保持壁40,41が船体船尾26に延在するとき、保持壁高さBは、正確な揚力量を生じさせるため、船体船尾26において慎重に計算され得る。
保持壁高さBは、急速旋回時に船体11が横方向に移動するのを防止し、また、V底部30から外側へ噴出される水の移動を防止するため、少なくとも0.09Aのように十分に大きくてもよい。上述したような保持壁高さBは、水力学的な揚力を生成する水に気泡が確実に入らないようにするのに役立つ。気泡は、プロペラのキャビテーションや、ブレード表面の摩耗を生じさせる可能性がある。
保持壁角β及び保持壁高さBは、船体船尾26と船体船首25との間で、好ましくは連続的に及び/又は一定に、変化する。
特に、保持壁高さBは、船体船首25に向かって減少してもよい。これは、船体船首25に向かって、保持壁40,41が水中になく、代わりにスプレーレールとして機能するため、保持壁40,41が十分な揚力を付与できないからである。保持壁高さBは、船尾部15、ミッドシップ部19、及び/又は船首部14において、船体船尾26に向かって連続的に増加してもよい。
保持壁角βは、船体船首25に向かって及び/又は船尾部15から増加し、好ましくは連続的に増加し、好ましくはミッドシップ部19を通して増加し、好ましくは船首部14内で増加する。したがって、保持壁角βは、船尾部15において約70度から約90度の範囲内で変化してもよく、船首部14において約50度前後に又は約50度未満に減少してもよい。保持壁角βは、船体船尾26にて約80度から約90度の範囲内にあってもよい。保持壁角βは、後に詳細に記載するとおり、船首を超えてデッキに到達しようとする飛沫を阻止すべく飛沫を下方に偏向する角度まで減少してもよい。
船体11は、船尾部15から船首部14に向かって延在する外側船体部50,51を備えてもよい。外側船体部50,51は、保持壁40,41に沿って、保持壁40,41に隣接して、及び/又は保持壁40,41から外側へ延在する。各外側船体部50,51は、保持壁40,41と外側チャイン60,61との間で延在し、実質的に平らな平面を備えてもよく、当該平面は、保持壁40,41それぞれから延在し、好ましくは外側チャイン60,61それぞれまで延在する。外側船体部50,51は、旋回中に船体11に揚力を付与するように構成され得る。特に、外側船体部50,51の迎え角は、旋回中にこのような揚力を付与するように構成され得る。
各外側船体部50,51は、水平に対して外側船体角γで外側に延在する。外側船体角γは、V底角αの約0度から±約5度の範囲内又は約0度から±約10度の範囲内のように、V底角αと同様であってもよく、V底角αは、船体11の幅を通過する任意の1つの断面、及び/又は船尾部15における任意の1つの断面、及び/又はミッドシップ部19における任意の1つの断面における角度である。
外側船体幅Cは、中心線20、V底部30、及び保持壁40,41から外側に延在する方向における各外側船体部50,51の長さであるが、旋回中に十分な揚力を付与すべく十分に大きくてもよい。外側船体幅Cは、下メイン部幅Aよりも小さくてもよく、また、保持壁高さBよりも大きくてもよい。外側船体幅Cは、約0.5A未満であってもよく、及び/又は約0.2Aから約0.4Aまでの範囲内にあってもよい。船体船首25に向かって及び/又は船尾部15から、ミッドシップ部19にわたって船首部14内まで、外側船体角γが増加し及び/又は外側船体幅Cは減少する。外側船体幅Cは、船体船首25にてゼロまで減少してもよい。
図1に最もよく示すように、保持壁40,41及び/又は外側船体部50,51、特にこれらの最下縁は、竜骨31から船体船尾26から離れるように起立する。したがって、保持壁40,41及び/又は外側船体部50,51、特にこれらの下端縁は、竜骨31及び/又はV底部30よりも大きい長手角δを有する。長手角δは、水平面及び竜骨ライン29に対する角度である。竜骨31及び竜骨ライン29の長手角は約0度であり、保持壁40,41及び/又は外側船体部50,51の長手角δは、少なくとも船尾部15において、随意にミッドシップ部19及び/又は船首部14においても、約0度から約10度の範囲内にあってもよい。V型船体が旋回中に傾くと、船舶を失速させる抗力がより大きくなる。外側船体部50,51の迎え角を増大させることで、揚力がより大きくなり、抗力がより小さくなり、それにより船体11の滑走状態が保たれる。このような迎え角は、船体船首25に向かって減少する保持壁40,41の高さを慎重に計算することによって生み出される。これは重要である。というのも、これ無しで船体11が水平に航行しようとしても、波頭から波の谷に入るときに船体船首25が理想よりも深く沈む可能性がある。
外側船体部50,51は、静止時に安定性をもたらすため、V底部30に対して均整がとれていてもよく、それにより、人は、過度に動くことなく船体11の縁に立つことができるが、V底部30が深いことで得られる効果を低減するほどに大きくはない。
船体11は、船尾部15から船首部14に向かって延在し、また、外側船体部50,51に沿って且つ外側船体部50,51から外側へ延在する外側チャイン60,61を備えてもよい。各外側チャイン60,61は、外側船体部50,51と船体側部70,71との間で延在し、また、外側船体部50,51から好ましくは船体側部70,71へと延在する実質的に平らな平面を備えてもおい。外側チャイン60,61は、船体11から外側というよりむしろ、下方へとウォッシュを排出するのに役立ち、それにより揚力の付与に役立つ。
各外側チャイン60,61は、水平に対して外側チャイン角εで外側に延在する。外側チャイン角εは、約15度未満であってもよく、約5度以上であってもよく、約5度から約15度の範囲内であってもよい。このような角度は、揚力をアシストすべくウォッシュを外側ではなく下側に排出するのに特に効果的である。
外側チャイン幅Dは、中心線20、V底部30、保持壁40,41、及び外側船体部50,51から外側に延在する方向における各外側チャイン60,61の長さであるが、特に旋回中に、揚力を付与するために十分に大きくてもよい。外側チャイン幅Dは、下メイン部幅A未満、保持壁高さB未満、及び外側船体幅C未満であってもよい。外側船体幅Cは、約0.2A未満であってもよく、約0.1A未満であってもよく、及び/又は約0.03Aから約0.07Aの範囲内であってもよい。このような大きさに形成することにより、揚力をアシストすべくウォッシュを外側ではなく下方に排出するのに特に効果的である。
船体11は、船尾部15から船首部14に向かって延在し、前記外側チャイン60,61に沿って前記外側チャイン60,61から外側/上方に延在する船体側部70,71を備える。船体側部70,71が、外側チャイン60,61から船体11の上縁13に延在し、外側チャイン60,61から上縁13に延在する実質的に平らな平面を備えてもよい。船体側部70,71は、水平に対して船体側部角ωで延在し、船体側部角ωは、約67度から約90度の範囲内にあってもよい。
船首部14は、船首部14を超えて上昇する飛沫を偏向するため、少なくとも1つのスプレーディフレクタ100,110を備える。図1から図5は、1つのスプレーディフレクタ100を備える船舶10の実施形態を示し、図6から図8は、2つのスプレーディフレクタ100,110を備える船舶10の別の実施形態を示す。スプレーディフレクタ100,110は、図6に最もよく示されている。なお、図6のスプレーディフレクタ100の特徴は、図1から図5bのスプレーディフレクタ100と実質的に同一である。
少なくとも1つのスプレーディフレクタ100,110は、飛沫を、船首部14を超えてくるのではなくて下方に及び/又は外側に偏向するため、前下方に且つ外下方に延在する偏向面101,111を備える。偏向面101,111は、左舷側及び右舷側21,22の両側において、中心線20に沿って前下方に延在してもよく、中心線20から遠ざかるようにして外下方に延在してもよい。偏向面101,111は、実質的に平らな平面を備えていてもよい。
偏向面101,111は、船体11及び/又は上部本体12によって形成され得る。偏向面101,111は、船体船首25及び/又は船首17の周囲に延在してもよく、そのため右舷側及び左舷側21,22の各々に部分的に形成されていてもよい。偏向面101,111は、ステム80、船体船首25、上部本体12、及び/又は船体11の上縁13から、下前方に延在してもよい。偏向面101,111は、V底部30、保持壁40,41、外側船体部50,51、外側チャイン60,61、及び/又は船体側部70,71から、下外方に延在してもよい。
少なくとも1つのスプレーディフレクタ100は、偏向面101,111と、船体11及び/又は上部本体12との間に、偏向キャビティ102,112を備えてもよい。偏向キャビティ102,112は、図示されるように、上方に延びる窪んだ凹部である。偏向キャビティ102,112は、図4及び図7に示すように船舶の底面視において、ほぼV状であってもよい。偏向キャビティ102,112は、左舷側21に部分的に沿って中心線を通って右舷側22に部分的に沿って、船首部14の周囲に延在していてもよい。偏向キャビティ102,112は、船首部14の一部に沿って、例えば船首部14の長さの最大75%に沿って又は船首17から船舶10の長さの最大20%に沿って、延在してもよい。
偏向面101,111は、内側偏向面エッジ103,113から、外側偏向面エッジ104,114に延在する。内側偏向面エッジ103,113は、より高く、外側偏向面エッジ104,114の上方にある。偏向キャビティ102,112は、偏向面101,111と、船体側部70,71又はV底部30等の船体11とによって区画されてもよい。
偏向面101,111は、外側チャイン幅Dよりも大きい長さ(すなわち、船体11、ステム80、又はV底部30からの長さ)で前方に延在してもよい。偏向面101,111は、少なくとも約25mm又は少なくとも約50mmの長さで前方に延在してもよく、これにより、飛沫を捕捉するために偏向面101,111が十分に大きいことが保証される。偏向面101,111は、約200mm未満又は約150mm未満の長さで前方に延在してもよく、これにより、船首が大きく後退しないことが保証される。
偏向面101,111は、船体11の竜骨ライン29に対して偏向面角θで中心線20に沿って前下方に延在してもよい。偏向面角θは、約10度であってもよく、少なくとも約10度であってもよく、約10度未満であってもよく、約10度から約30度の範囲内であってもよい。このような範囲は、滑走中に飛沫を下方に偏向するのに特に適している。
上部本体12は、図1から図5の上部本体スプレーディフレクタ100及び図6から図8の上部本体スプレーディフレクタ100を備え、又は少なくとも部分的に形成する。上部本体スプレーディフレクタ100は、船体11の上縁13の周囲で少なくとも部分的に、ステム80から延在する。偏向キャビティ102は、上部本体12によって部分的に区画され、したがって、上部本体12は、その下側で上向きに延びる窪んだ凹部を備える。内側偏向面エッジ103は、船体11の上縁13にある。外側偏向面エッジ104は、上部本体12の下縁にある。
上部本体12がフェンダーを備えている場合には、偏向面101は、フェンダー(発泡材であるか、インフレータブルであるか、複合材であるかに関わらず)の一部に一体成型されてもよい。あるいは、フェンダーが発泡材等で形成されている場合に、偏向面101は材料を機械加工で除去することによって形成されてもよい。
船体11は、図6から図8の船体スプレーディフレクタ110を備える。船体11は、ステム80に配置された偏向面111を備え、船体11は、ステム80及び/又は船体11内へと上方に延在する窪んだ凹部の形態である偏向キャビティ112を備える。船体11は、内側及び外側偏向面エッジ103も備える。船体スプレーディフレクタ110は、船体11の成型中に形成されてもよい。
船体スプレーディフレクタ110の図示される実施形態において、外側チャイン60,61が偏向面111を備える。特に、外側チャイン60,61は、船体船首25の周囲で延在してもよく、偏向面111を形成すべくステム80で前方に突出してもよい。外側チャイン幅Dは、船体船首25の周囲でゼロより大きくてもよい。外側チャイン角εは、船体船首25まで増加してもよく、中心線の面内において船体船首25にて偏向面角θを成していてもよい。したがって、外側チャイン角εは、船体船首25にて、少なくとも約10度であってもよく、約10度未満であってもよく、約10度から約30度の範囲内であってもよい。したがって、外側チャイン60,61は、飛沫を効果的に下方に向けるように光栄されてもよい。更に、保持壁高さB及び外側船体幅Cは、図6に示されるように、船体船首25にて、ゼロまで減少してもよい。
偏向キャビティ112は、偏向面111を形成する外側チャイン60,61、V底部30(特に、船体船首25付近)、及び外側船体部50,51によって区画されてもよい。内側偏向面エッジ113は、外側船体部50,51と外側チャイン60,61との合流線に沿っている。外側偏向面エッジ114は、外側船体部50,51と船体側部70,71との合流線に沿っている。
上部本体及び船体スプレーディフレクタ100,110は、異なる寸法を有していてもよく、上部スプレーディフレクタ100は、例えば船体スプレーディフレクタ110よりも大きな偏向キャビティ102を有することにより、船体スプレーディフレクタ110よりも概して大きくてもよい。上部本体スプレーディフレクタ100は、船体スプレーディフレクタ110よりも大きな距離だけ前方に延在し得る。
上部本体及び船体スプレーディフレクタ100,110の両方を含むと、水に比較的近い(すなわち、上縁13が水に比較的近い)より小型の船舶10において、特に有益である。スプレーディフレクタ100,110が両方とも存在することは、相対的に大量の飛沫を偏向するのに役立つ。
様々な代替の実施形態が本開示の範囲内に含まれる。船舶10は、上部本体スプレーディフレクタ100を備えずに、図6から図8に従って形成された船体スプレーディフレクタ110を備えてもよい。船体スプレーディフレクタ110は、図6から図8に示す偏向面111を形成している外側チャイン60,61と同様にして偏向面111を備えた保持壁40,41により、船体11に形成されてもよい。

Claims (22)

  1. 船首部(14)、船尾部(15)、及び中心線(20)と、
    前記船首部(14)の船体船首(25)と、前記船尾部(15)の船体船尾との間で延在する滑走型船体(11)と、
    を備える、船舶(10)であって、
    前記滑走型船体(11)が、
    前記中心線(20)に沿って前記船尾部(15)から前記船首部(14)に延在し、V状であり、当該船舶(10)の竜骨(31)を形成するV底部(30)と、
    前記V底部(30)の側面に沿って前記船尾部(15)から前記船首部(14)に向かって延在する一対の保持壁(40,41)と、
    を備え、
    少なくとも前記船尾部(15)において、各保持壁(40,41)が、前記中心線と平行に、又は前記中心線に対して鋭角で、下方に延在し、前記保持壁(40,41)が前記竜骨(31)から遠ざかるようにして前記船体船尾(26)から起立し、
    前記V底部(30)は、当該船舶が水を横切って移動するときに、前記中心線(20)から前記保持壁(40,41)に、向けて水を外側に向けるように構成され、
    前記保持壁(40,41)は、当該外側に向けられた水を前記船体(11)に対して後方へ向けるように構成され、且つ、当該船舶(10)に揚力を付与するために少なくとも前記船尾部(15)において前記保持壁(40,41)と前記V底部(30)との間で、当該後方へ向けられた水を保持するように構成される、
    船舶。
  2. 前記保持壁(40,41)は、前記船尾部(15)において、前記中心線(20)及び/又は竜骨(31)と平行に延在する、
    請求項1に記載の船舶(10)。
  3. 前記保持壁(40,41)は、前記船体船尾(26)に向かって、前記保持壁(40,41)と前記V底部(30)との間における単位体積当たりの気水比を増加させるように構成されている、
    請求項1又は2に記載の船舶(10)。
  4. 前記竜骨(31)が、前記保持壁(40,41)よりも下方にある、
    請求項1から3のいずれかに記載の船舶(10)。
  5. 前記V底部(30)が、一対の下メイン部(32,33)を備え、各下メイン部は、下メイン部幅Aに沿って前記中心線の各側から外側に延在し、前記保持壁(40,41)は、保持壁高さBに沿って延在し、前記保持壁高さBは約0.5A未満である、
    請求項1から4のいずれかに記載の船舶(10)。
  6. 前記V底部(30)は、水平に対してV底角αで前記中心線から外側に延在し、当該V底角αは、約18度から約28度までの範囲内にあり、及び/又は、前記保持壁は、水平に対して保持壁角βで下方に延在し、当該保持壁角βは、約70度から約90度までの範囲内にある、
    請求項1から5のいずれかに記載の船舶(10)。
  7. 前記保持壁(40,41)は、前記船体船尾(26)から延在し、又は前記船体船尾(26)から離れている、
    請求項1から6のいずれかに記載の船舶(10)。
  8. 前記船首部(14)は、前記船首部(14)を超えて上昇する飛沫を偏向するための少なくとも1つのスプレーディフレクタ(100,110)を備え、前記少なくとも1つのスプレーディフレクタ(100,110)は、前記中心線(20)に沿って下前方へ延在し且つ前記中心線から外側に延在する偏向面(101,111)を備える、
    請求項1から7のいずれかに記載の船舶(10)。
  9. 前記船体(11)に取り付けられた上部本体(12)を更に備え、前記上部本体(12)が、フェンダー、デッキ、又はガンネルを備える、
    請求項1から8のいずれかに記載の船舶(10)。
  10. 前記竜骨(31)が、竜骨ライン(29)に沿って延在し、前記偏向面(101,111)が、前記竜骨線(29)に対して約10度から約30度までの範囲内にある偏向面角で、前記中心線に沿って下前方に延在する、
    請求項8又は9に記載の船舶(10)。
  11. 前記少なくとも1つのスプレーディフレクタ(100,110)が、上部本体スプレーディフレクタ(100)を備え、当該上部本体スプレーディフレクタが、前記上部本体(12)によって形成される偏向面(101)と、前記偏向面(101)と前記船体(11)との間に形成される偏向キャビティ(102)とを備える、
    請求項8から10のいずれかに記載の船舶(10)。
  12. 前記上部本体スプレーディフレクタ(100)の前記偏向キャビティ(102)は、前記上部本体(12)によって部分的に区画され、前記上部本体(12)内で上方に窪んで延びる凹部によって形成される、
    請求項11に記載の船舶(10)。
  13. 前記船体(11)が、ステム(80)と、前記上部本体(12)が取り付けられる上縁(13)とを備え、前記上部本体スプレーディフレクタ(100)は、前記船体(11)の前記上縁(13)の周囲で少なくとも部分的に、前記ステム(80)から延在する、
    前記ステム(80)から延在し
    請求項8から12のいずれかに記載の船舶(10)。
  14. 前記船尾部(15)から前記船首部(14)に向かって延在する外側船体部(50,51)を備え、当該外側船体部(50,51)は、前記保持壁(40,41)に沿って、且つ前記保持壁(40,41)から外側に延在する、
    請求項1から13のいずれかに記載の船舶(10)。
  15. 前記船尾部(15)から前記船首部(14)に向かって延在する外側チャイン(60,61)を備え、当該外側チャイン(60,61)は、前記外側船体部(50,51)に沿って、且つ前記外側船体部(50,51)から外側に延在する、
    請求項14に記載の船舶(10)。
  16. 前記船尾部(15)から前記船首部(14)に向かって延在する船体側部(70,71)を備え、当該船体側部(70,71)は、前記外側チャイン(60,61)に沿って、且つ前記外側チャイン(60,61)から外側に延在する、
    請求項15に記載の船舶(10)。
  17. 前記少なくとも1つのスプレーディフレクタ(110)は、船体スプレーディフレクタ(110)を備え、当該船体スプレーディフクレタ(110)は、前記船体(11)によって形成された偏向面(111)と、前記偏向面(111)と前記船体(11)との間に形成された偏向キャビティ(112)とを備える、
    請求項8から16のいずれかに記載の船舶(10)。
  18. 前記船体(11)が、ステム(80)と、前記ステム(80)に配置された偏向面(111)とを備え、前記船体(11)は、前記ステム(80)及び前記船体(11)内へと上方に延びる窪んだ凹部の形態の前記偏向キャビティ(112)を備える、
    請求項8から17のいずれかに記載の船舶(10)。
  19. 前記外側チャイン(60,61)が、前記船首部(14)の周囲で延在し、前記外側チャイン(60,61)が、前記船体スプレーディフレクタ(110)の前記偏向面(111)を備える、
    請求項15を引用する請求項17又は18、又は請求項15に記載の船舶(10)。
  20. 前記船体スプレーディフレクタ(110)の前記偏向キャビティ(112)が、前記偏向面(111)を形成する前記外側チャイン(60,61)、前記V底部(30)、及び前記外側船体部(50,51)によって区画されている、
    請求項19に記載の船舶(10)。
  21. 船首部(14)、船尾部(15)、及び中心線(20)と、
    前記船首部(14)の船体船首(25)と、前記船尾部(15)の船体船尾(26)との間で延在する滑走型船体(11)と、
    を備える船舶(10)を運航する方法であって、
    当該滑走型船体(11)が、
    前記中心線(20)に沿って前記船尾部(15)から前記船首部(14)に延在し、V状であり、当該船舶(10)の竜骨(31)を形成するV底部(30)と、
    前記V底部(30)の両側に沿って、前記船尾部(15)から前記船首部(14)に向かって延在する一対の保持壁(40,41)と、を備え、
    少なくとも前記船尾部(15)において、各保持壁(40,41)が、前記竜骨(31)から遠ざかるようにして前記船体船尾(26)から起立し、
    当該方法は、前記V底部(30)が前記中心線(20)から前記保持壁(40,41)に向かって水を外側に向け、前記保持壁(40,41)が、当該外側に向けられた水を前記船体(11)に対して後方に向け、且つ揚力が前記船舶(10)に付与されるべく少なくとも前記船尾部(15)において前記保持壁(40,41)と前記V底部(30)との間で当該後方に向けられた水を保持するようにして、前記船舶(10)を水中で推進させることを備える、
    方法。
  22. 前記船首部(14)が、少なくとも1つのスプレーディフレクタ(100,110)を備え、前記少なくとも1つのスプレーディフレクタ(100,110)が、前記中心線(209に沿って下前方に延在し且つ前記中心線(20)から外側に延在する偏向面(101,111)を備え、当該方法が、前記少なくとも1つのスプレーディフレクタ(100,110)が前記船首部(14)を超えて上昇する飛沫を偏向するようにして、前記船舶(10)を水中で推進させることを備える、
    請求項21に記載の方法。
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