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JP2024135230A - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents

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JP2024135230A
JP2024135230A JP2023045811A JP2023045811A JP2024135230A JP 2024135230 A JP2024135230 A JP 2024135230A JP 2023045811 A JP2023045811 A JP 2023045811A JP 2023045811 A JP2023045811 A JP 2023045811A JP 2024135230 A JP2024135230 A JP 2024135230A
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秀明 三宅
Hideaki Miyake
瑞紀 岡▲崎▼
Mizuki Okazaki
圭祐 深谷
Keisuke Fukaya
歩 高橋
Ayumi Takahashi
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Tokuyama Dental Corp
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Tokuyama Dental Corp
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Abstract

【課題】 機械的・物理的強度が良好な硬化体を与えることができると共に深い窩洞に対しても隅々まで容易に行き渡るような流動性を有し、更に形態保持性及び手押しの吐出性が良好な、支台築造用に好適に使用できる歯科用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 重合性単量体A、平均粒径1~6μmの不定形無機粉粒体b1:40~80質量%、平均粒径0.1~1μmの球状無機粉粒体b2:20~60質量%、及び平均粒径0.05μm以下の無機粉粒体b3:0~1.5質量%からなる充填材B、重合開始剤C及び分子内の炭素原子の総数が10以上である双性イオン化合物Dを含み、各成分の含有量(単位:質量部)が、A:100、B:220~380、b1及びb2:各50以上、b3:4以下、C:0.01~10、D:0.1~10である歯科用硬化性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、歯科用硬化性組成物、特に支台築造用途の歯科用コンポジットレジンとして好適に使用できる歯科用重合硬化性組成物に関する。
歯科用硬化性組成物は、天然歯牙色と同等の色調を付与でき、また、歯牙修復作業における取扱いが容易なことから、歯牙を修復するための材料として普及している。当該歯科用硬化性組成物は、重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤を主成分とし、その用途に応じて成分の最適化が図られている。
たとえば、重合開始剤についてみてみると、審美性の要求される浅い窩洞の修復に際しては、操作性が高く短時間で硬化するため患者への負担が軽いといった理由から光重合開始剤を含む歯科用コンポジットレジン(以下、歯科用コンポジットレジンを「CR」と略記することもある。)が用いられている。光重合開始剤としては、環境光程度の弱い光に対しては活性を示さず、光照射器等による高強度の光照射に対しては高活性を示しCRを急速に硬化させることができるという理由から、α-ジケトン化合物、第三級アミン化合物などの電子供与体化合物(還元剤と呼ばれることもある。)などの組み合わせからなるものが使用されることが多い。
一方、光が届き難い深い窩洞を修復する場合には、化学重合開始剤が主に配合されている。化学重合開始剤は、通常、2成分以上の重合開始剤成分(たとえば、有機過酸化物と第三級アミン)で構成され、使用時においてこれら成分の全てを接触させて重合開始種を生成させるものであり、室温下でも硬化する化学重合開始剤を用いることで、光が届かない深部まで硬化させることが可能となる。なお、化学重合開始剤を用いるCRにおいては、使用前にラジカル重合性単量体が重合してしまうことを避けるために全ての化学重合開始剤成分が(たとえば、有機過酸化物と第三級アミンとが)一緒にならないように2つのペーストに分けて分包し、使用時に両者を混合するのが一般的である。
これらCRは、シリンジタイプの容器内に包装されて提供されることが多い。例えば、光硬化型CRの場合には、ペースト状のCRが1つのバレルを有する「シングルシリンジタイプ」の容器内に充填された包装体を用い、これを必要に応じてディスペンサーと呼ばれる押し子を押し込むための治具にセットした後に、シリンジの吐出口にノズルチップを装着し、手指を用いて直接或いは前記ディスペンサーを介して押し子をバレル内に押し込み、ノズルチップの先端からペーストを直接所望の位置に押出して使用するのが一般的である。また、化学硬化型やデュアルキュア型の場合には、シングルシリンジタイプの容器に夫々分包された2種類のペーストを練和紙などに一旦取り出して、練和してからヘラなどを用いて充填や賦形を行う場合もあるが、2つのバレルが一体化した所謂「ダブルシリンジタイプ」の容器を用い、その各バレル内に(分包されるべき)2つのペーストが夫々収納保持された包装体を、必要に応じてディスペンサーにセットした後に、各シリンジの吐出口にミキシングチップと呼ばれるノズルチップタイプの混合器装着機構を装着してから手指を用いて直接、或いは前記ディスペンサーを介して2つの押し子を連動させて各バレル内に押し込み、ミキシングチップ内で混合されたペーストをミキシングチップ先端より所望の位置に押出して使用することが一般的である。
ところで、抜髄後の歯根部に支台築造を行う場合等では、光硬化型と化学硬化型との両方の性質を兼ね備えた、所謂デュアルキュア型コンポジットレジンが使用されることもある(特許文献1、2及び3参照)。ここで、支台築造とは、抜髄後の歯根部等の深い窩洞にCRを充填・硬化(場合によってはこのときポストの固定が行われる)させた後に、更に(通常、同一組成の)CRを支台形状に築盛して歯冠補綴物用の支台を築造することを意味し、通常は築盛されたペーストを硬化後に研削器具を用いた形態修正により最終的な支台形態とされる。そして、この支台築造にデュアルキュア型CRを用いた場合には、化学重合開始剤の機能によって深い窩洞中では良好な硬化性が発揮され、光重合開始剤の機能を活用して支台築造を効率的に操作性良く行うことが可能となる。
デュアルキュア型に限らず、支台築造用CRとして使用できる歯科用硬化性組成物或いは歯科用修復材料に関しては、使いやすさや硬化体強度を考慮して様々な工夫がされている。たとえば、特許文献1には、機械的・物理的強度の良好な硬化体を与え、更に深い窩洞に対しても隅々まで容易に行き渡るような流動性を有する化学重合型の歯科用修復材料として、平均粒子径が1μm以上6μm以下の不定形無機粒子、平均粒子径が0.05μm以上1μm以下の球状無機粒子及び必要に応じて配合される粒径が0.05μm未満の無機粒子を所定量配合したものが記載されている。
また、特許文献2には、硬化体の機械的強度、吐出性及び形態保性の良好な歯科用重合性支台築造材料として、特定のシランカップリング剤で処理された平均粒子径1.6~10μmの無機粒子と、特定のシランカップリング剤で処理された平均粒子径0.01~0.1μmの無機粒子及び表面処理されていない平均粒子径0.01~0.1μmの無機粒子と、配合した分包型の歯科用重合性支台築造材料が記載されている。
更に、特許文献3には、機械的・物理的性質が良好な硬化体を与え、深い窩洞に適用可能な流動性を有し、審美修復が可能であるばかりでなく、シリンジで容易に取り扱うことができるペースト性状(吐出性)を有し、更に形態保持性が良好な歯科用硬化性組成物として、界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子を含む2分包型の歯科用硬化性組成物が記載されている。
なお、特許文献2及び3における前記吐出性とは、分包された2つのペーストが前記「ダブルシリンジタイプ」の包装形態を用い、押し子を押してバレル内のペーストをミキシングチップ内で混合してチップ先端より押出すときの力で評価されるものであり、形態保性とはペーストを盛り上げて硬化させて支台築造を行う際の形態の整え易さ(賦形性とも言われる。)を意味している。
特開2005-170813号公報 特開2011-225526号公報 特開2020-40937号公報
特許文献2および3では、特色のある表面処理を施された無機充填材を使用することにより、形態保持性及び押し出し感のバランスのとれた分包型の歯科用重合性支台築造材料となるとされているが、表面処理の変更は製造において容易ではない。発明者らの検討では、表面処理剤の分子構造や表面処理条件がわずかに異なるだけで、物性が大きく変わってしまうことがあった。
一方、特許文献1に記載された歯科用硬化性組成物において使用される無機充填材においては、特殊な表面処理剤を用いた表面処理を特に行う必要はないため、上記したような問題は起こらないが、形態保持性に関しては評価されていない。また、窩洞の隅々まで容易に行き渡るような流動性に関しては評価されているが吐出性に関しては評価されていない。
また、吐出性に関して付言すると、特許文献2及び3における吐出性は、前記したようなダブルシリンジタイプの容器に包装されたものを使用する際の押出力で評価されるものである。光硬化型のCRにおいてシングルシリンジタイプの容器に充填して押出して使用する場合においても同様にして吐出性を評価することは可能であるが、シングル、ダブルの何れのタイプの包装形態においても、実際の使用に際してはディスペンサーと呼ばれる押し子を押し込むための治具を用いることが多く、操作可能な押出力の範囲は比較的広くなっている。一方、ディスペンサーを用いずに直接手指で押し子を押し込むこと(単に、「手押し」ともいう。)により使用する場合には、比較的弱い力で容易に吐出速度を制御できることが好ましい。操作の効率性の観点からは、ディスペンサーを用いずに手押しすることが好ましいが、特許文献2や3においては、このような手押しの場合の感覚的な使い易さを含めた吐出性については評価されていない。
このような状況に鑑み、本発明者らが特許文献1に記載された歯科用硬化性組成物の形態保持性について確認したところ、十分とは言えず改善の余地があることが判明した(後述の比較例1参照)。また、特許文献1には、チキソトロピー性調整剤として粒径が0.05μm未満の微細無機粒子を配合してもよいと記載されていることから該微細無機粒子の配合効果についても検討したところ、その配合量が増えるに従って形態保持性は高くなるものの、ペーストの粘度は上昇し、ペーストの手押しでの吐出性が更に悪化することが明らかとなった。
そこで、本発明は、機械的・物理的強度が良好な硬化体を与えることができると共に深い窩洞に対しても隅々まで容易に行き渡るような流動性を有し、更に形態保持性及び手押しの吐出性が良好な、歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。なお、手押しの吐出性とは、手で直接押し子を押してペーストを吐出させる際の操作性の指標であり、比較的弱い力で容易に吐出速度を制御できる場合には、吐出性が良く、ペーストを吐出させるのに強い力を要し、吐出量の制御が難しい場合は吐出性が悪いと評価されるものである(以下、本明細書における「吐出性」とは、この「手押しの吐出性」を意味するものとする)。
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の第一の形態は、重合性単量体(A):100質量部、充填材(B):220~380質量部、重合開始剤(C):0.01~10質量部、及び分子内の炭素原子の総数が10以上である双性イオン化合物(D):0.1~10質量部を含む歯科用硬化性組成物であって、
前記充填材(B)は、不定形無機粒子からなる平均粒子径が1~6μmの粉粒体(b1):40~80質量%、球状無機粒子からなる平均粒子径が0.1~1μmの粉粒体(b2):20~60質量%、及び平均粒子径が0.05μm以下である無機粉粒体(b3):0~1.5質量%からなり、前記(b1)、(b2)及び(b3)の含有量が、夫々(b1):50質量部以上、(b2):50質量部以上及び前記(b3):4質量部以下である、ことを特徴とする歯科用硬化性組成物である。
上記形態の歯科用硬化性組成物(以下、「本発明の歯科用硬化性組成物」ともいう。)においては、前記重合開始剤(C)が、有機過酸化物(C1a)及び第三級アミン化合物(C1b)を含んでなる化学重合開始剤(C1)並びにα-ジケトン化合物(C2a)及び電子供与体化合物(C2b)を含んでなる光重合開始剤(C2)を含む、ことが好ましい(以下、当該好ましい態様の本発明の歯科用硬化性組成物を「本発明の好適歯科用硬化性組成物」ともいう。)。
また、前記双性イオン化合物(D)が、オキソ酸の共役塩基からなるアニオン部を含むことが好ましく、更に、分子内に芳香環を含むことが特に好ましい。
本発明の第二の形態は、重合性単量体(A):100質量部、不定形無機粒子からなる平均粒子径が1~6μmの粉粒体(b1):40~80質量%、球状無機粒子からなる平均粒子径が0.1~1μmの粉粒体(b2):20~60質量%、及び平均粒子径が0.05μm以下である無機粉粒体(b3):0~1.5質量%からなる充填材(B):220~380質量部、重合開始剤(C):0.01~10質量部、及び分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D):0.1~10質量部を混合する工程を含み、前記工程では、前記(b1)、(b2)及び(b3)の含有量が、夫々(b1):50質量部以上、(b2):50質量部以上及び前記(b3):4質量部以下となるように、前記充填材(B)の組成又は配合量を調整する、ことを特徴とする本発明の歯科用硬化性組成物の製造方法である。
本発明の第三の形態は、本発明の好適歯科用硬化性組成物からなることを特徴とする支台築造用コンポジットレジンである。
本発明の第四の形態は、前記重合開始剤(C)が、前記化学重合開始剤(C1)を含む本発明の好適歯科用硬化性組成物を調製するためのキットであって、互いに物理的に接触不可な状態で包装された第一の部分組成物からなる第1剤と第二の部分組成物からなる第2剤の組み合わせから構成され、
前記第1剤は、前記重合性単量体(A)の一部、前記フィラーの(B)一部、前記第三級アミン化合物(C1b)及び前記電子供与体化合物(C2b)を含み、前記有機過酸化物(C1a)及び前記α-ジケトン化合物(C2a)を含まず、
前記第2剤は、前記重合性単量体(A)の残部、前記フィラー(B)の残部、前記有機過酸化物(C1a)及び前記α-ジケトン化合物(C2a)を含み、前記第三級アミン化合物(C1b)及び前記電子供与体化合物(C2b)を含まず、
前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、前記双性イオン化合物(D)を含むことを特徴とする歯科用硬化性組成物調製用キット(以下、「本発明のキット」ともいう。)である。
本発明の歯科用重合硬化性組成物は、機械的・物理的強度が良好な硬化体を与えることができると共に深い窩洞に対しても隅々まで容易に行き渡るような流動性を有し、更に形態保持性及び吐出性が良好であるという優れた特長を有する。窩洞充填に必要な流動性や硬化体強度が良好な特許文献1に記載された歯科用重合硬化性組成物において、0.05μm未満の微細無機粒子配合により形態保持性と吐出性とを両立させることは困難であったのに対し、本発明の歯科用重合硬化性組成物では、ペーストを盛り上げて大まかな支台形状を整えられる形態保持性を有しながら、細いチップを装着したシリンジに充填して使用する際に、歯科用ディスペンサーを使用することなく片手で容易に必要量のペーストを押し出すことが可能である。
1.本発明の歯科用硬化性組成物の概要
本発明の歯科用硬化性組成物は、重合性単量体(A):100質量部、充填材(B):220~380質量部、重合開始剤(C):0.01~10質量部、及び分子内の炭素原子の総数が10以上である双性イオン化合物(D):0.1~10質量部を含む歯科用硬化性組成物であって、前記充填材(B)は、不定形無機粒子からなる平均粒子径が1~6μmの粉粒体(b1):40~80質量%、球状無機粒子からなる平均粒子径が0.1~1μmの粉粒体(b2):20~60質量%、平均粒子径が0.05μm以下である無機粉粒体(b3):0~3質量%からなり、前記(b1)、(b2)及び(b3)の含有量が、夫々(b1):50質量部以上、(b2):50質量部以上及び前記(b3):4質量部以下である、ことを特徴とする。
そして、主として特定の充填材(B)を特定量配合したこと及び特定の双性イオン化合物(D)を特定量配合したことにより前記効果を奏するものとなっている。このような優れた効果が得られる機構は必ずしも明らかではないが、硬化体の強度や上記流動性に関しては、本発明の歯科用重合硬化性組成物が基本的には特許文献1に記載された歯科用重合硬化性組成物の範疇に属することによると考えられる。また、形態保持性と吐出性の両立に関しては次のようなことによると考えている。すなわち、歯科用硬化性組成物に含まれる無機充填材は極性が高いため、イオン性化合物を添加した場合、それらの静電引力によってペーストの粘度が上昇し、流動性が低下し、形態保持性が向上する。このとき、イオン性化合物が一般的なイオン対である場合、解離したイオンと無機充填材が3次元的なネットワークを形成するため、そのペーストが狭い吐出口を通る際には抵抗が生じ、吐出性が悪化してしまう。これに対し、本発明の歯科用重合硬化性組成物で使用される双性イオン化合物においては、分子内の対イオンによって電荷が打ち消されて静電引力の影響は局所的に限られるようになり、(ミリメートルレベルである吐出口を通る際の抵抗は小さいこともあって)吐出性の悪化を抑えられたものと推定している。また、静電引力影響は局所的であっても、ほぼ静止状態の形態を保持する能力はあるため形態保持が向上したものと考えている。
なお、形態保持性と吐出性とを両立させるためには、充填材(B)において粒径の異なる無機粒子を一定量ずつ配合していること及び粒径が0.05μm未満の微細無機粒子を含まないか含むとしてもその配合量が極めて少ないことも重要である。たとえば、粒径の近い無機粒子のみを用いた場合、ダイラタンシー性等により押し出し感が重くなる傾向があり、たとえ双性イオン化合物を添加したとしても、好ましい性状に調整することは困難である。さらに、(B)の配合量が上限値の380質量部を超える場合にも形態保持性と吐出性とを両立は困難となる。(B)の配合量は(A)100質量部に対して250~350質量部であることが好ましく、270~330質量部であることが特に好ましい。
以下、本発明の歯科用重合硬化性組成物の成分について説明した上で、本発明の製造方法、本発明のキット等について説明する。
なお、本明細書においては特に断らない限り、数値x及びyを用いた「x~y」という表記は「x以上y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値xにも適用されるものとする。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との用語は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者を意味する。
2.本発明の歯科用硬化性組成物の成分について
2-1.重合性単量体(A)
重合単量体(A)としては、従来の歯科用硬化性組成物で使用されるものが特に制限なく使用できる。本発明で使用できる重合性単量体を例示すれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリジジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート等の単官能性重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス[4-(メタ)アクリオイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシエトキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’-ビス{4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多官能性重合性(メタ)アクリレート系単量体;フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー等のスチレン、α-メチルスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物などを挙げることができる。
上記重合性単量体の中でも、有機溶媒と相溶性を有する重合性単量体が好ましい。また、得られる重合体の機械的強度や生体安全性等が良好であることから、(メタ)アクリレート系重合性単量体が好ましい。更に、重合性の高さや硬化体の機械的物性が特に高くなる等の理由から、二官能以上、より好適には2官能~4官能の重合性単量体が好ましい。これらの重合性単量体は、単独で使用しても、異種を混合して使用してもよい。
ただし、イオン性部位を有する化合物(イオン化合物)はペースト性状への影響が大きいため、メタクロイルコリンクロリド等のイオン性部位を有する重合性単量体(イオン化合物からなる重合性単量体)は、重合性単量体(A)100質量部に対して、5質量部未満が好ましく、2質量部以上であることが更に好ましく、含まないことが特に好ましい。
2-1.充填材(B)
本発明の歯科用硬化性組成物において、重合性単量体(A)100質量部に対して、200~380質量部配合される充填材(B)は、不定形無機粒子からなる平均粒子径が1~6μmの粉粒体(b1):40~80質量%、球状無機粒子からなる平均粒子径が0.1~1μmの粉粒体(b2):20~60質量%、及び平均粒子径が0.05μm以下である無機粉粒体(b3):0~1.5質量%からなり、且つ前記重合性単量体(A)100質量部に対する前記(b1)及び(b2)の含有量は夫々50質量部以上であり、前記(b3)の含有量は4質量部以下である、必要がある。
なお、ここでいう平均粒子径とは、レーザー回折粒度分布測定によって粒子径が0.05μm以上の粒子を計算し、粒径-体積積算分布において、積算分布が50%となる粒径である。ただし、0.05μm未満の粒子については一般的に分散が困難であるため、電子顕微鏡によって粒径を測定する。すなわち、走査型または透過型の電子顕微鏡で粒子を観察し、その単位視野内の粒子30個以上を無作為に選び、それぞれの一次粒子径(最大径)を計測する。その一次粒子径の合計を選択した粒子の数で除して得られる値を平均粒子径とする。
なお、充填材(B)そのもの或いは他の成分と混合された状態の本発明の歯科用硬化性組成物中に存在する充填材(B)を分析して上記粉粒体(b1)~(b3)を構成する粒子の形状を判別し、各粉粒体の平均粒子径や含有率(質量%)を確認することは非常に困難である。このような理由から、本発明においては、上記粉粒体(b1)~(b3)を規定する粒子形状および平均粒子径並びに(B)中に占める各粉粒体の含有率(質量%)は、本発明の歯科用硬化性組成物に配合する充填材(B)を調製する際に使用する粉粒体(b1)~(b3)をもとに規定している。すなわち、本発明の歯科用硬化性組成物において上記充填材(B)を重合性単量体(A)100質量部に対して220~380質量部含むとは、事前に準備された上記各粉粒体(b1)~(b3)を準備し、粉粒体(b1)が40~80質量%、粉粒体(b2)が20~60質量%、粉粒体(b3)が0~1.5質量%となり、且つ前記(b1)及び(b2)を夫々{使用する(A)100質量部に対して}50質量部以上含み、前記(b3)を4質量部を超えて含まないようにして、(1)予め混合したものを(A)100質量部に対して220~380質量部配合したこと、或いは(2)このような条件を満足し(b1)~(b2)の合計質量が(A)100質量部に対して220~380質量部となるように別々に配合したことと同義である。このとき、上記(2)の場合には、(b1)と(b2)、(b1)と(b3)又は(b2)と(b3)を事前混合して、他の粉粒体と別々に配合するケースも含む。
これら粉粒体(b1)~(b3)を構成する粒子の材質(成分)は特に限定されず、歯科用硬化性組成物の配合成分として公知の無機充填材と同様の材質のものを用いることができる。具体的には、シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、アルミノシリケートガラス、及びフルオロアルミノシリケートガラス、重金属(例えばバリウム、ストロンチウム、ジルコニウム)を含むガラス;それらのガラスに結晶を析出させた結晶化ガラス、ディオプサイド、リューサイト等の結晶を析出させた結晶化ガラス等のガラスセラミックス;シリカ-ジルコニア、シリカ-チタニア、シリカ-アルミナ等の複合無機酸化物;あるいはそれらの複合酸化物にI族金属酸化物を添加した酸化物;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属無機酸化物;等が使用できる。得られる硬化体に歯質に近い透明性を付与しやすいこと、生体に対して為害性の少ないことなどから、シリカとIV族金属酸化物を主な構成成分とする複合酸化物が好適である。さらに好ましくは、得られる硬化体にX線造影性を付与でき、さらには、より耐摩耗性に優れた硬化体が得られること、また、重合性単量体と同程度の屈折率であるため、硬化性組成物に高い可視光透過性を与えることができ、これにより後述するようなデュアルキュア(光-化学)重合を行わせる際の硬化深度が深くなることから、シリカ-ジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物が特に好適に用いられる。
これら無機粒子は、重合性単量体への分散性を改良する目的でその表面を疎水化処理されたものを用いることが好ましい。代表的な疎水化処理方法を例示すれば、疎水化剤としてシランカップリング剤、例えばγ-メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、γ-メチルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシアルキルモノメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等の有機珪素化合物による処理や、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコ-アルミネート系カップリング剤を用いる方法、粒子表面に前記重合性単量体をグラフト重合させる方法がある。
本発明における不定形無機粒子からなる粉粒体(b1)は、平均粒径が1μm以上、6μm以下のものであり、好ましくは平均粒径が3μm以上、5μm以下のものである。該粒子の形状が球状である場合、あるいは平均粒径が6μmより大きい場合には、流動性には優れるが、曲げ強度に劣るものとなってしまう。また、平均粒径が1μm未満では、流動性と硬化体の機械的強度等の理工学的物性の両立が困難となる。なお、不定形粒子からなるとは、粉粒体を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した場合に粒子の形状が一定ではいことを意味し、後述する球状粒子以外の粒子によって構成される粉体を意味する。粉粒体(b1)を構成する粒子は、多くの場合、破砕粒子に見られるような角部を有する。
上記粉粒体(b1)においては、安定した機械的、物理的強度が得られることから、最大粒径が40μm以下である(粒径40μmを超える粒子を含まない)ことが好ましい。さらには、高い無機充填材含有率を達成するために、粉粒体(b1)を構成する不定形無機粒子の変動係数が0.70以上である無機充填材を採用することがより好ましい。なお、変動係数とは、JIS-Z8101-1で定義される変動係数[標準偏差(σ)/平均値]である。変動係数は、粒度分布の広がりを表す指標であり、値が大きくなるほど、粒度分布の幅が広いことを意味する。
また、粉粒体(b1)は、平均粒径が上記範囲にある限り必ずしも単一の粒子として製造や入手されるものである必要はなく、平均粒径や材質(成分)の異なる2つあるいはそれ以上の無機粒子を混合して得られるものであってもよい。
本発明における球状無機粒子からなる粉粒体(b2)は、平均粒径が0.1μm以上、1μm以下のものであり、好ましくは平均粒径が0.15μm以上、0.5μm以下のものである。該粒子の形状が球状でない場合には流動性に劣るものとなる。
ここで球状とは、SEMで観察される粒子が丸みをおびており、かつ、その最大径に直交する方向の粒径をその最大径で除した平均斉度が0.6以上であることを意味する。
また、粉粒体(b2)は、その平均粒径が上記範囲内にあれば、必ずしも単一粒子として製造や入手されるものである必要はなく、平均粒径や材質(成分)の異なる2つあるいはそれ以上の無機粒子を混合して得られるものであってもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物には、上記粉粒体(b1)が、配合される全無機充填材(B)中40~80質量%、上記粉粒体(b2)が、配合される全無機充填材(B)中20~60質量%の割合で配合される必要がある。この範囲にすることにより、優れた流動性と機械的物性の両立が可能となる。また、配合される粉粒体(b1)及び粉粒体(b2)の量は、吐出性と形態保持性の両立を図るために、前記重合性単量体(A)100質量部に対して何れも50質量部以上である必要がある。粉粒体(b1)及び(b2)の重合性単量体(A)100質量部に対する含有量(配合量)は、夫々70質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることが更に好ましい。また、(b1)と(b2)の質量比は、1:5~5:1の範囲であることが好ましく、1:3~3:1の範囲であることが特に好ましい。
さらに本発明の歯科用硬化性組成物には、前記粉粒体(b3)を配合してもよい。但し、吐出性と形態保持性の両立を図るために、全無機充填材(B)中に占める粉粒体(b3)は0~1.5質量%以下で、且つ重合性単量体(A)100質量部に対する配合量は0~4質量部である必要がある。このような範囲の配合であれば、吐出性を低下させずに形態保持性を向上させることができる。粉粒体(b3)の重合性単量体(A)100質量部に対する配合量は0~2.5質量部であることが好ましい。
2-3.重合開始剤(C)
重合開始剤としては、化学重合開始剤(C1)、光重合開始剤(C2)、熱重合開始剤の何れも使用可能であるが、ペースト充填直後の光照射によって硬化が可能であり、さらに光が届きにくい部分の硬化性も可能であることから、化学重合開始剤と光重合開始剤とを併用することが好ましい。
化学重合開始剤(C1)を使用する場合には、従来の化学重合硬化型歯科用コンポジットレジンやデュアルキュア型歯科用コンポジットレジンで使用されている化学重合開始剤が特に制限なく使用できるが、高い硬化性が得られ、また取扱いが容易な理由から、有機過酸化物(C1a)及び第三級アミン化合物(C1b)を含んでなる化学重合開始剤が好適に使用される。
好適に使用できる有機過酸化物(C1a)としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキシド;ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;α-クミルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル類;ジ-3-メトキシパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類などが挙げられる。これらの中でもラジカル生成能力と安定性の観点から、ベンゾイルパーオキサイドが特に好適に用いられる。
好適に使用される第三級アミン化合物(C1b)としては、アミノ基がアリール基又はピリジル基等の芳香族基に結合した第三級芳香族アミンを挙げることができ、具体的には、後述の光重合開始剤の還元剤と重複するが、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、4-t-ブチル-N,N-ジメチルアニリン、p-トリルジエタノールアミンが挙げられる。
なお、有機過酸化物(C1a)及び第三級アミン化合物(C1b)からなる化学重合開始剤(C1)においては、通常、有機過酸化物(C1a)1モル当たり、第三級アミン化合物(C1b)を0.01~4モル、好ましくは0.05~3モルの割合で使用される。
化学重合開始剤(C1)の配合量は、従来の化学重合硬化型CRやデュアルキュア型CRにおけるものと特に変わる点はなく、化学重合開始剤の合計質量で表して、通常は重合性単量体(A)100質量部に対して0.01~10質量部の割合で、好ましくは0.1~5質量部の割合で使用される。
光重合開始剤(C2)としては、従来の光硬化型歯科用コンポジットレジンやデュアルキュア型歯科用コンポジットレジンで使用されている光重合開始剤が特に制限なく使用できるが、硬化性が高いという理由から、α-ジケトン(C2a)化合物及び電子供与体化合物(C2b)を含む光重合開始剤(C2)を使用することが好ましい。
好適に使用できるα-ジケトン(C2a)としては、カンファーキノン、ベンジル、α-ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、1,4-フェナントレンキノン、3,4-フェナントレンキノン、9,10-フェナントレンキノン等を挙げることができる。また、好適に使用できる電子供与体化合物(C2b)としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、4-t-ブチル-N,N-ジメチルアニリン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、p-トリルジエタノールアミン等を挙げることができる。
光重合開始剤の(C2)配合量は、重合性単量体(A)100質量部に対して0.01~10質量部とするが、硬化性の観点から、0.1~8質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましい。
2-4.分子内の炭素原子の総数が10以上である双性イオン化合物(D)
上記双性イオン化合物(D)は、分子内の炭素原子の総数が10以上である双性イオン化合物であれば、制限なく使用することができる。炭素原子の総数は分子内に含まれるものを全て含む数であり、他の原子を介して結合しているものも全て足し合わせた数である。双性イオン化合物とは、分子内に正電荷を持つカチオン部と負電荷を持つアニオン部の両方を有する化合物である。本発明で用いる双性イオン化合物は、分子内に有する正電荷と負電荷がそれぞれ2つ以上でも構わないが、分子内での電荷のつり合いが必要であることから、分子内に有する正電荷と負電荷が同数であるものを用いる。また、電荷数が多い程重合性単量体への分散性が低下することから、双性イオン化合物の正電荷と負電荷がそれぞれ1つずつであることが好ましい。なお、分子内の炭素数が10未満の場合、重合性単量体への分散性が低く、本発明の効果を十分に得ることができない。
上記双性イオン化合物(D)のアニオン部は、効果の観点から、オキソ酸の共役塩基からなることが好ましく、その中でも入手が容易なことから、カルボキシラートまたはスルホナートであることが特に好ましい。上記双性イオン化合物(D)のカチオン部は、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ヨードニウムなどが例として挙げられるが、入手が容易なことから、アンモニウム、ピリジニウム、ヨードニウムであることが好ましく、アンモニウムまたはピリジニウムであることが特に好ましい。また、双性イオン化合物は、分子内に芳香環を有することが好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環などが挙げられ、それらが縮環したナフタレン環、キノリン環や、修飾によって電荷を有したピリジニウム環、イミダゾリウム環などでもよい。双性イオン化合物が芳香環を有する場合、比較的少量の添加で形態保持性を向上させることができる。
上記双性イオン化合物(D)の具体例としては、3-[ジメチル(ドデシル)アンモニオ]プロパン-1-スルホナート、3-[ジメチル(オクタデシル)アンモニオ]プロパン-1-スルホナート、3-(4-t-ブチル-1-ピリジニオ)プロパンスルホナート、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート、3-(4-t-ブチル-1-ピリジニオ)プロパンスルホナート、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシラート一水和物が挙げられる。これらの中でも、芳香環を有することから、3-(4-t-ブチル-1-ピリジニオ)プロパンスルホナートおよびジフェニルヨードニウム-2-カルボキシラート一水和物が特に好ましい。
分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)の配合量は、0.1~10質量部とするが、ペースト性状のバランスが良好になることから、0.2~5質量部であること好ましく、0.3~2質量部であることが特に好ましい。
2-5.その他成分
本発明の歯科用硬化性組成物においては、前記(A)~(D)成分の他に、任意成分としてさらに重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤は公知のものを制限なく配合できる。重合禁止剤を配合する場合の配合量は、重合性単量体(A)100質量部に対して、通常は、0.001~5質量部、好ましくは0.01~3質量部である。さらに、任意成分として紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料等の各種添加剤を必要に応じて配合しても良い。
3.本発明の歯科用硬化性組成物の製造方法及び用途
本発明の歯科用硬化性組成物は、重合性単量体(A):100質量部、前記充填材(B):200~380質量部、重合開始剤(C):0.01~10質量部、及び分子内の炭素原子の総数が10以上である双性イオン化合物(D):0.1~10質量部を混合する工程を含む方法の該混合工程において前記(b1)、(b2)及び(b3)の含有量が、夫々(b1):50質量部以上、(b2):50質量部以上及び前記(b3):4質量部以下となるように、前記充填材(B)の組成又は配合量を調整することにより好適に製造することができる。
混合方法は、特に限定されるものではなく、公知の歯科用硬化性組成物の製造方法に準じて行えば良く、例えば、それぞれ所定量の各成分を均一のペーストになるまで混練することにより調製することが出来る。また、前記した様に有機過酸化物(C1a)と第三級アミン(C1b)の組み合わせからなる化学重合開始剤(C1)を含む本発明の好適歯科用硬化性組成物を調製する場合には、有機過酸化物(C1a)と第三級アミン(C1b)とが共存しないように2剤に分けて混合した後に分包し、使用時に2剤を混合することによって(要時)調製することが一般的である。このような場合には、充填材と重合性単量体とを混合して均一のペーストを調製し、その後2つに分割して、一方に第三級アミン(C1b)を、他方に有機過酸化物(C1a)を配合して再度練和する方法により、上記2剤を効率よく調製することができる。
本発明の歯科用硬化性組成物の用途は歯科用であれば特に限定されるものではないが、流動性に優れ、かつ機械的強度も良好であるという特性をより強く求められる点で、歯科用修復材料(特にCR)として用いるのが好適である。また、デュアルキュア型の特長も生かせ、形態保持性及び吐出性も良好であることから、支台築造用CR、特に後述する本発明のキットとして使用する支台築造用CRとして用いるのが好適である。
4.本発明のキット
本発明のキットは、本発明の好適歯科用硬化性組成物を調製するためのキットであって、互いに物理的に接触不可な状態で包装された第一の部分組成物からなる第1剤と第二の部分組成物からなる第2剤の組み合わせから構成され、
前記第1剤は、前記重合性単量体(A)の一部、前記フィラーの(B)一部、前記第三級アミン化合物(C1b)及び前記電子供与体化合物(C2b)を含み、前記有機過酸化物(C1a)及び前記α-ジケトン化合物(C2a)を含まず、
前記第2剤は、前記重合性単量体(A)の残部、前記フィラー(B)の残部、前記有機過酸化物(C1a)及び前記α-ジケトン化合物(C2a)を含み、前記第三級アミン化合物(C1b)及び前記電子供与体化合物(C2b)を含まず
前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、前記双性イオン化合物(D)を含むことを特徴とする。
ここで、「物理的に接触不可能な状態で包装される」とは、第1剤と第2剤とが両者間での分子拡散を阻害する阻害部材(包装部材)によって分離されて包装されている状態を意味する。
なお、本発明の好適歯科用硬化性組成物が前記した必須成分以外の任意成分を含む場合、本発明の効果の発現を損なう副反応等が起こらないようにして、前記第1剤もしくは前記第2剤のいずれかに配合する。第1剤及び第2剤それぞれの組成は、基本的には、両者を等量で混合したとき{1剤と2剤との混合比(1剤の量/2剤の量):1/1、あるいは、1剤と2剤との混合比率(100×1剤の量/2剤の量):100%で混合したとき}に、本発明の好適歯科用硬化性組成物の組成となるように決定される。そして、このようにして決定された組成に従い、各成分を秤量し混合することにより容易に第1剤及び第2剤を調製することができる。
分包の際に用いる包装部材としては、一般的には、容器や袋の素材として好適に用いられる樹脂等が用いられる。「物理的に接触不可能な状態」の典型例としては、たとえば、外気および外光を遮断する容器内に密封された状態で1種類の組成物が保管されている状態が挙げられる。具体的な包装形態としては、ボトル、チューブ、シングルシリンジタイプ或いはダブルシリンジタイプのシリンジなどの容器内に充填された形態を挙げることができる。本発明のキットを用いて本発明の好適歯科用硬化性組成物を調製する方法としては、たとえば、i)練和紙上に第1剤と、第2剤と適量採取して、両者をヘラで練和する方法、ii)先端にミキシングチップを接続したダブルシリンジタイプのシリンジから第1剤と第2剤とを同時に押出す方法等が採用できる。
利便性及び吐出性が良好であるという効果を生かすことができるという観点から上記ii)方法を採用するのが好ましく、分包容器としても該方法が採用できる以下に示すようなダブルシリンジタイプのものを用いることが好ましい。すなわち、着脱可能なキャップにより封止された吐出口を先端に有する筒状バレルと、先端部にガスケットを有する押し子と、を有し前記バレルの後端部より前記ガスケットを摺動可能に挿入することによりガスケットより先端側のバレル内に形成される流体収容空間に流体を保持することができるシリンジ2本を有する容器を用い、その一方のシリンジの前記流体収容空間に前記第1剤が、他方のシリンジの前記流体収容空間に前記第2剤が夫々充填されることによって、前記第1剤と前記第2剤とが互いに物理的に接触不可な状態で包装することが好ましい。
通常、ダブルシリンジタイプの容器は、前記2つのシリンジが夫々の吐出口が隣接するようにして並列に配置して保持する保持機構と、夫々キャップを外した前記2つのシリンジの両吐出口にミキシングチップ等の混合器を着脱可能に装着できるようにする混合器装着機構と、前記2つのシリンジの両押し子を連動させて各押し子を同時に各バレル内に押し込むことができようにする押し子連動機構と、を有し、前記2つのシリンジの各流体保持空間に保持された前記第1剤及び第2剤を各吐出口より同時に流出させて、各吐出口より流出したこれら剤を前記混合器により混合できるようされている。なお、上記保持機構は、第1のシリンジ及び第2のシリンジが上記したように並列に配置されたものを一体成形する等の方法により一体化することを含み、押し子連動機構も、例えば一体成型することにより、2つの押し子を連結する部材或いは各押し子末端の操作部(指で押す部分)を連結して両押し子を並列に配置した状態で一体化することを含む。
上記ダブルシリンジタイプの容器を用いたキットにおいては、容器をディスペンサーと呼ばれる押し子を押し込むための治具を使用することも多いが、本発明のキットは調製される本発明の好適歯科用硬化性組成物が良好な吐出性を有するため、歯科用ディスペンサーを使用することなく片手で容易に必要量のペーストを押し出すことが可能である、所謂「手押しダブルシリンジタイプ」の容器を用いることが好ましい。「手押しダブルシリンジタイプ」の容器は、保持機構及び押し子連動機構として上記したような一体化を採用したものであり、前記キャップが外された2つの吐出口にミキシングチップ等の混合器装着機構を取り付けてから、前記2つのシリンジの両押し子を連動させて各押し子を同時に各バレル内に押し込み、第1剤及び第2剤を各吐出口より同時に、所定の量比(通常は等量)で流出させて、各吐出口より流出したこれら剤を前記混合器により混合することによって、CRが(用事)調製される。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(1)化合物の略称
<重合性単量体(A)>
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・Bis-GMA:2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
・D-2.6E:下記式で示される化合物
<無機充填材(B)>
・F1:不定形シリカ-ジルコニア、平均粒径;5μm、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで処理したもの
・F2:球状シリカ-ジルコニア、平均粒径;0.2μm、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで処理したもの
・F3:微粉末シリカ、平均粒径;0.01μm程度、ヘキサメチルジシラザンで処理したもの
なお上記F1およびF2の平均粒子径は、レーザー回折粒度分布測定によって求められた値であり、F3の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって求められた値である。
<重合開始剤(C)>
・CQ:カンファーキノン
・DMBE:p-ジメチルアミノ安息香酸エチル
・BPO:過酸化ベンゾイル
・DEPT:p-トリルジエタノールアミン。
<分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)>
・DAPS:3-[ジメチル(ドデシル)アンモニオ]プロパン-1-スルホナート
・BPPS:3-(4-t-ブチル-1-ピリジニオ)プロパンスルホナート
・DPIC:ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシラート一水和物。
<その他の化合物>
・TMG:トリメチルグリシン
・BTEAC:ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド
・BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール。
(2)実施例及び比較例
実施例1
D-2.6E:44質量部、3G:44質量部及びBis-GMA:12質量部の混合物から成る重合性単量体(A)100質量部に重合開始剤(C)としてのCQ:0.3質量部及びDMBE:1.0質量部、及び分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)としてのDAPS:1質量部を配合して重合性単量体組成物を調製した。次に、得られた重合性単量体組成物と、無機充填材(B)としてのF1:100質量部及びF2:220質量部と、を、乳鉢を用いて均一になるまで攪拌混合してペースト状の歯科用硬化性組成物を調製した。得られたペーストを歯科用1ペーストフロワブルコンポジットレジン用シリンジ(株式会社トクヤマデンタル社製、商品名:エステライトフロークイックで使用しているものと同じ容器)のバレル内に、(シリンジバレル内に挿入された押し子を引くことによって)吸引して充填した後に、シリンジの吐出口にニードルチップ(内径φ0.75mm)を装着してから手で押し子を押すことによって両剤を混合して、ペーストを押し出し、次のようにして表面硬度、形態保持性及び吐出性の評価を行った。結果を表1示す。
なお、表面硬度、形態保持性及び吐出性の評価は次のようにして行った。
(1)表面硬度(ビッカース硬度の測定)
直径7mm×深さ1mmの孔を有するポリアセタール製のモールド内に上記した方法によりペーストを充填した後、直ちにポリプロピレンフィルムで孔の上面を覆ってモールドに圧接してから歯科用光照射器(トクヤマデンタル社製、トクソーパワーライト;光出力密度700mW/cm)をポリプロピレンフィルムに密着させてペーストを10秒光照射し、硬化させた。得られた硬化体の硬度を、微小硬度計(MMT-X7型、松沢精機製)を用いて測定した。すなわち、ビッカース圧子を、荷重100gf、荷重保持時間30秒間の条件で硬化体に押しつけた後、硬化体にできたくぼみの対角線長さを測定し、ビッカース硬度を求めた。
(2)形態保持性(流動性の測定)
前記した方法によりニードルチップ先端からガラス板の上に直径3mm程度の円を重ねるように押し出し、0.1gを量り取った。それを37℃に保った恒温器に2分間置いた後、ガラス板とペーストの接着面の直径を縦横2方向について測定し、その平均を流動性の値とした。なお、試験は2回行い、平均を求めた。
ペーストの形態保持性が高い場合には、押し出し時の形状が保持されるため流動性の値は3mmに近い値となるのに対して、形態保持性が低い場合には、ペーストが流れてガラス板との接着面が広くなるため、流動性の値がより大きくなる。なお、流動性が6未満の場合、形態保持性が良好と判断した。
(3)吐出性(押し出し感の評価)
前記した方法によりニードルチップ先端からペースト0.2gをガラス板上に吐出させ、このときのプランジャーの押し易さを確認し、以下の評価基準に従って、ペーストの押し出し感を評価した。なお、押し出し感が1から3の場合、吐出性が良好と判断した。
1:弱い力で押してもペーストの吐出が可能で、吐出性は非常に良い
2:難なくペーストの吐出が可能で、吐出性は良好である
3:少し力強く押せばペーストの吐出が可能であり、吐出性は許容
4:力強く押せばペーストの吐出は可能であるが、吐出性は悪い
5:ペーストを全く吐出できない。
実施例2~9及び比較例1~8
ペースト組成が表1に示すものとなるように変更する以外は実施例1と同様にしてペーストを調製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
上記表1の実施例1~9に示すように、分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)を配合した場合は、流動性が6mm未満、押し出し感が1から3のいずれかであり、形態保持性と吐出性の両方が良好であった。また、表面硬度は40HV以上であり、支台築造に適した強度を保有していた。一方、分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)を配合しない場合(比較例1~5)は、流動性か押し出し感のいずれかが良好の条件を満たさず、形態保持性と吐出性の両立が困難であることがわかる。また、無機充填材(B)の総計が380質量部を超える場合や、粒径の等しい無機粒子のみを使用した場合(比較例6~8)も、流動性か押し出し感のいずれかが良好の条件を満たさなかった。
実施例10
まず、第一のペーストとしてPA-1を調製した。すなわち、重合性単量体(A)の一部としてのD-2.6E:22質量部、3G:22質量部及びBis-GMA:6質量部の混合物に、重合開始剤(C)の一部としてのDMBE:0.5質量部及びDEPT:1.0質量部、及び分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)としてのBPPS:0.3質量部を配合して重合性単量体組成物を調製した。次に、得られた重合性単量体組成物と、無機充填材(B)の一部としてのF1:70質量部及びF2:90質量部と、を、乳鉢を用いて均一になるまで攪拌混合して得られたペーストを、PA-1とした。次に、これとは別に、第二のペーストとしてPB-1を調製した。すなわち、重合性単量体(A)の残部としてのD-2.6E:22質量部、3G:22質量部及びBis-GMA:6質量部の混合物に、重合開始剤(C)の残部としてのCQ:0.4質量部及びBPO:1.0質量部、及び分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)としてのDPIC:0.3質量部を配合して重合性単量体組成物を調製した。次に、得られた重合性単量体組成物と、無機充填材(B)の残部としてのF1:70質量部及びF2:90質量部と、を、乳鉢を用いて均一になるまで攪拌混合して得られたペーストを、PB-1とした。
得られたPA-1及びPB-1を、手押しダブルシリンジタイプの容器(株式会社トクヤマデンタル社製、商品名:エステコアハンドタイプで使用しているものと同じ容器)の各シリンジの各バレル内に充填した後に、2つのシリンジの両吐出口にミキシングチップ(先端部内径φ0.8mm)を装着してから手で押し子を押すことによって両剤を混合して、混合されたペースト(歯科用硬化性組成物)を押し出し、実施例1と同様にして表面硬度、形態保持性及び吐出性の評価を行った。結果を表2示す。
実施例11、12及び比較例9
ペースト組成が表2に示すものとなるように変更する以外は実施例10と同様にしてペーストを調製し、実施例10と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
上記表2の実施例10~12に示すように、分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)を配合した場合は、形態保持性と吐出性の両方が良好であった。一方、分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D)を配合しない比較例9では、流動性が7以上であり、形態保持性が低かった。

Claims (7)

  1. 重合性単量体(A):100質量部、
    充填材(B):220~380質量部、
    重合開始剤(C):0.01~10質量部、及び
    分子内の炭素原子の総数が10以上である双性イオン化合物(D):0.1~10質量部
    を含む歯科用硬化性組成物であって、
    前記充填材(B)は、不定形無機粒子からなる平均粒子径が1~6μmの粉粒体(b1):40~80質量%、球状無機粒子からなる平均粒子径が0.1~1μmの粉粒体(b2):20~60質量%、及び平均粒子径が0.05μm以下である無機粉粒体(b3):0~1.5質量%からなり、
    前記(b1)、(b2)及び(b3)の含有量が、夫々(b1):50質量部以上、(b2):50質量部以上及び前記(b3):4質量部以下である、
    ことを特徴とする歯科用硬化性組成物。
  2. 前記重合開始剤(C)が、有機過酸化物(C1a)及び第三級アミン化合物(C1b)を含んでなる化学重合開始剤(C1)並びにα-ジケトン化合物(C2a)及び電子供与体化合物(C2b)を含んでなる光重合開始剤(C2)を含む、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. 前記双性イオン化合物(D)が、オキソ酸の共役塩基からなるアニオン部を含む、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. 前記双性イオン化合物(D)が、分子内に芳香環を含む、請求項3に記載の歯科用硬化性組成物。
  5. 重合性単量体(A):100質量部、
    不定形無機粒子からなる平均粒子径が1~6μmの粉粒体(b1):40~80質量%、球状無機粒子からなる平均粒子径が0.1~1μmの粉粒体(b2):20~60質量%、及び平均粒子径が0.05μm以下である無機粉粒体(b3):0~1.5質量%からなる充填材(B):220~380質量部、
    重合開始剤(C):0.01~10質量部、及び
    分子内の炭素原子の総数が10以上の双性イオン化合物(D):0.1~10質量部
    を混合する工程を含み、
    前記工程では、前記(b1)、(b2)及び(b3)の含有量が、夫々(b1):50質量部以上、(b2):50質量部以上及び前記(b3):4質量部以下となるように、前記充填材(B)の組成又は配合量を調整する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の歯科用硬化性組成物の製造方法。
  6. 請求項2に記載の歯科用硬化性組成物からなることを特徴とする支台築造用コンポジットレジン。
  7. 請求項2に記載の歯科用硬化性組成物を調製するためのキットであって、
    互いに物理的に接触不可な状態で包装された第一の部分組成物からなる第1剤と第二の部分組成物からなる第2剤の組み合わせから構成され、
    前記第1剤は、前記重合性単量体(A)の一部、前記フィラーの(B)一部、前記第三級アミン化合物(C1b)及び前記電子供与体化合物(C2b)を含み、前記有機過酸化物(C1a)及び前記α-ジケトン化合物(C2a)を含まず、
    前記第2剤は、前記重合性単量体(A)の残部、前記フィラー(B)の残部、前記有機過酸化物(C1a)及び前記α-ジケトン化合物(C2a)を含み、前記第三級アミン化合物(C1b)及び前記電子供与体化合物(C2b)を含まず
    前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、前記双性イオン化合物(D)を含む
    ことを特徴とする歯科用硬化性組成物調製用キット。
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