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JP2024143956A - 乗り物酔い抑制装置 - Google Patents

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JP2024143956A
JP2024143956A JP2023089720A JP2023089720A JP2024143956A JP 2024143956 A JP2024143956 A JP 2024143956A JP 2023089720 A JP2023089720 A JP 2023089720A JP 2023089720 A JP2023089720 A JP 2023089720A JP 2024143956 A JP2024143956 A JP 2024143956A
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純也 星野
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Abstract

【課題】シートに着座する乗員が乗り物酔いすることを抑制すること。【解決手段】乗り物酔い抑制装置100は、着座する乗員200A,200Bの姿勢を変更できるように可動するシート20A,20Bと、車両の加速度のうち、乗員前方Cfと乗員上方Cuとの間に設定されている仮想軸の軸線方向である仮想軸方向Daの加速度成分と、重力加速度のうちの仮想軸方向Daの加速度成分との和である総合加速度成分を導出する加速度成分導出部M13と、車両の加速度が発生していない場合の総合加速度成分の大きさから、加速度成分導出部M13によって導出された総合加速度成分の大きさが乖離することを抑制するように、シート20A,20Bの姿勢を変更させる姿勢変更処理を実行する変更部M17とを備えている。【選択図】図3

Description

本発明は、車両に設けられる乗り物酔い抑制装置に関する。
特許文献1は、車両に搭載されるシートに着座した乗員の姿勢を制御する制御装置を開示している。当該制御装置は、車両の走行計画に基づいた加速度の予測値に応じた支持状態でシートが乗員の身体を支えることができるようにシートを制御する。
特開2017-71370号公報
本発明の目的は、車両の走行中に乗員が乗り物酔いすることの抑制を可能にすることである。
上記課題を解決するための乗り物酔い抑制装置は、着座する車両の乗員の姿勢を変更できるように可動するシートである可動シートと、前記車両の加速度のうち、前記可動シートに着座する前記乗員の頭部の前方と当該頭部の上方との間に設定されている仮想軸の軸線方向の加速度成分と、重力加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分との和である総合加速度成分を導出する加速度成分導出部と、前記車両の加速度が発生していない場合の前記総合加速度成分である基準加速度成分の大きさから、前記加速度成分導出部によって導出された前記総合加速度成分の大きさが乖離することを抑制するように、前記可動シートの姿勢を変更させる姿勢変更処理を実行する変更部と、を備える。
上記乗り物酔い抑制装置は、シートに着座する乗員が乗り物酔いすることを抑制できるという効果を奏する。
図1は、第1実施形態の乗り物酔い抑制装置が適用される車両の模式図である。 図2は、図1の車両が備えるシートに着座する乗員の一部を示す模式図である。 図3は、第1実施形態の乗り物酔い抑制装置の概略を示す構成図である。 図4は、シートに着座する乗員の姿勢を示す模式図である。 図5は、図4に示した複数の姿勢と乗り物酔いしやすさを表す指標との関係を示す図である。 図6は、第1実施形態の乗り物酔い抑制装置が備える統括制御装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。 図7は、図3に示したシートの姿勢が変更された様子を示す模式図である。 図8は、第2実施形態の乗り物酔い抑制装置において、シートの一部を示す模式図である。 図9は、図8に示したシートの姿勢が変更された様子を示す模式図である。 図10は、第3実施形態の乗り物酔い抑制装置の一部分と、乗員保護装置及び運転支援装置とを示す構成図である。 図11は、シートに着座する乗員の姿勢を示す模式図である。 図12は、第3実施形態の乗り物酔い抑制装置が備える統括制御装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。 図13は、第4実施形態の乗り物酔い抑制装置が備える統括制御装置を示す構成図である。 図14は、図13に示した統括制御装置で作成されるプロファイルの一例を示す図である。 図15は、図13に示した統括制御装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。 図16は、変更例のシートを上方から見た様子を示す模式図である。
(第1実施形態)
以下、乗り物酔い抑制装置の第1実施形態を図1から図7に従って説明する。
図1は、乗り物酔い抑制装置が適用される車両10を図示している。車両10は、複数の車輪11と、車体12とを備えている。車体12内の車室には、車両10の乗員が着座するシートとして、運転者用シート20Aと同乗者用シート20Bとが設けられている。運転者用シート20Aは、車両10の運転者200Aが着座するシートである。同乗者用シート20Bは、運転者200A以外の乗員である同乗者200Bが着座するシートである。車両10にあっては、シート20A,20Bに着座した乗員200A,200Bの正面が車両前方Xfとなるように、複数のシート20A,20Bが車体12内にそれぞれ設置されている。車両前方Xfの反対方向を「車両後方Xr」という。
<方向の定義>
図2には、シート20A,20Bに着座した乗員200A,200Bの頭部210とその周辺とを車両10の横方向から見た場合の模式図である。図2に示すように乗員200A,200Bの耳から鼻に向けて延びる仮想直線の延びる方向を「乗員前方Cf」といい、乗員前方Cfの反対方向を「乗員後方Cr」という。乗員前方Cfが「頭部210の前方」に対応する。シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの顔が車両前方Xfを向いている場合、乗員前方Cfは車両前方Xfと実質的に一致するとともに、乗員後方Crは車両後方Xrと実質的に一致する。その一方で、乗員200A,200Bが上方を向いたり下方を向いたりすると、乗員200A,200Bの顔が車両前方Xfとは異なる方向を向くことになる。そのため、乗員前方Cfが車両前方Xfと相違するとともに、乗員後方Crが車両後方Xrと相違するようになる。したがって、乗員前方Cf及び乗員後方Crは乗員200A,200B毎に規定される。さらに、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの姿勢が変化すると、乗員前方Cf及び乗員後方Crが変わる。
また、乗員前方Cfと直交する2つの方向のうち、一方を「乗員上方Cu」という。乗員上方Cuは乗員200A,200Bの上方のことであり、乗員前方Cfが車両前方Xfと一致する場合には乗員上方Cuが車両上方Za(図1参照)と一致する。なお、乗員上方Cuが「頭部210の上方」に対応する。
<乗り物酔い抑制装置>
図1及び図3を参照し、乗り物酔い抑制装置100について説明する。
乗り物酔い抑制装置100は、複数のシート20A,20Bと、シート制御装置25とを備えている。複数のシート20A,20Bは、座部21とシートバック22とヘッドレスト23とをそれぞれ備えている。ヘッドレスト23は、2本のステーを介してシートバック22に支持されている。ヘッドレスト23は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの頭部210を支える。
シートバック22は、乗員200A,200Bの背中を支える支持面22aを有している。シートバック22は座部21に対して回動可能である。すなわち、複数のシート20A,20Bは、車両10の横方向に延びる回転軸21Aをそれぞれ備えている。回転軸21Aは、車両前方Xf及び車両上方Zaの双方と直交する方向に延びている。シートバック22は、回転軸21Aを中心に回動できる。図3において、反時計回り方向を前傾方向Rfとし、時計回り方向を後傾方向Rrとする。このとき、シートバック22を前傾方向Rfに回動させることにより、乗員200A,200Bが前傾するように乗員200A,200Bの姿勢を変更できる。反対に、シートバック22を後傾方向Rrに回動させることにより、乗員200A,200Bが後傾するように乗員200A,200Bの姿勢を変更できる。
複数のシート20A,20Bは、着座する乗員200A,200Bの姿勢を変更できるように可動する可動シートである。本実施形態において、複数のシート20A,20Bは、座部21に対するシートバック22の傾斜角を自動で可変させるシートバック用アクチュエータ27をそれぞれ備えている。例えば、シートバック用アクチュエータ27は座部21内に設置されている。シートバック用アクチュエータ27が作動すると、シートバック22が前傾方向Rfに回動したり、シートバック22が後傾方向Rrに回動したりする。以降では、座部21に対するシートバック22の傾斜角を「シートバック傾斜角」ともいう。シートバック22が後傾方向Rrに回動すると、シートバック傾斜角が大きくなる一方、シートバック22が前傾方向Rfに回動すると、シートバック傾斜角が小さくなる。
シート制御装置25は、シート20A,20Bの姿勢を制御する処理回路を有している。処理回路の一例は電子制御装置である。処理回路がシートバック用アクチュエータ27を制御することにより、上記シートバック傾斜角が調整される。すなわち、本実施形態では、シート制御装置25は、シートバック傾斜角を制御することにより、シート20A,20Bの姿勢を制御する。
乗り物酔い抑制装置100は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの姿勢を検出する姿勢検出装置を備えている。姿勢検知装置は、撮像装置31と、着座センサとを有している。撮像装置31は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bを撮像する。撮像装置31は、撮像した画像のデータである画像データを生成する。例えば、撮像装置31は、シート20A,20B毎に設けられている。
着座センサは、シート20A,20Bに乗員200A,200Bが着座していることを検出する検出系である。着座センサは、座部21内に埋設された着座センサ33と、シートバック22内に埋設された着座センサ34とを含んでいる。座部21に荷重が加わっている場合の着座センサ33の検出信号は、座部21に荷重が加わっていない場合の着座センサ33の検出信号とは異なる。シートバック22に荷重が加わっている場合の着座センサ34の検出信号は、シートバック22に荷重が加わっていない場合の着座センサ34の検出信号とは異なる。
乗り物酔い抑制装置100は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの視線を誘導する視線誘導装置を備えている。視線誘導装置の一例は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bよりも車両前方Xfに配置されているディスプレイ41と、ヘッドレスト23に取り付けられている生成装置43と、発光制御装置47とを有している。
ディスプレイ41は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bから視認できる位置に配置されている。例えば、ディスプレイ41は、図示しない支持部材を介してシート20A,20Bに支持されている。そのため、シートバック傾斜角が変更されたためにシート20A,20Bの姿勢が変化すると、シート20A,20Bの姿勢の変化に連動してディスプレイ41の位置が変わる。したがって、シート20A,20Bの姿勢が変化することによってシート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの姿勢が変わっても、乗員200A,200Bはディスプレイ41を視認できる。
生成装置43は、ディスプレイ41に注視点GPを生成する装置である。注視点GPは、乗員200A,200Bの視線を誘導するための指標である。例えば、生成装置43はレーザー照射装置である。この場合、生成装置43は、レーザー光LLをディスプレイ41に向けて出力する発光出力部44を有している。生成装置43は、レーザー光LLをディスプレイ41に向けて出力することにより、ディスプレイ41に注視点GPを生成できる。
上述したように生成装置43はヘッドレスト23に取り付けられている。そのため、シート20A,20Bの姿勢の変化に連動してディスプレイ41の位置が変わっても、ディスプレイ41と生成装置43との位置関係が保持される。その結果、シート20A,20Bの姿勢の変化に連動してディスプレイ41の位置が変わっても、生成装置43はディスプレイ41に注視点GPを生成できる。
発光制御装置47は、生成装置43を制御する処理回路を有している。処理回路の一例は電子制御装置である。処理回路は、生成装置43にレーザー光LLを出力させたり、レーザー光LLの出力を停止させたりできる。つまり、発光制御装置47は、処理回路が生成装置43を制御することにより、ディスプレイ41に注視点GPを生成したり、ディスプレイ41への注視点GPの生成を停止したりできる。
乗り物酔い抑制装置100は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの視界を遮る視界遮断装置50を備えている。視界遮断装置50は、乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮る装置である。視界遮断装置50の一例は、可視光線の透過率を可変できるガラス51と、ガラス51の透過率を制御する遮断制御装置53とを有している。例えば、ガラス51は、通電量によって透過率が変わるように構成されている。この場合、通電によってガラス51の透過率が低くなると、乗員200A,200Bがガラス51を介して車外の景色を見ることができにくくなる。その一方で、ガラス51への通電が行われていない場合では、ガラス51の透過率が高いため、乗員200A,200Bはガラス51を介して車外の景色を見ることができる。
遮断制御装置53は、ガラス51への通電量を制御する処理回路を有している。処理回路の一例は電子制御装置である。遮断制御装置53は、処理回路がガラス51への通電量を調整することにより、ガラス51の透過率を調整できる。つまり、遮断制御装置53は、ガラス51を介して乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを妨げたり、ガラス51を介して乗員200A,200Bが車外の景色を見ることをできるようにしたりする。
乗り物酔い抑制装置100は統括制御装置60を備えている。統括制御装置60は、シート制御装置25に指令を出力することによって、シート20A,20Bの姿勢を可変させる。統括制御装置60は、発光制御装置47に指令を出力することによって、注視点GPの生成及び注視点GPの生成の停止を制御する。統括制御装置60は、遮断制御装置53に指令を出力することによって、乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを許容したり、乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮断したりする。
統括制御装置60には、姿勢検出装置の出力結果に関する情報が入力される。すなわち、統括制御装置60には、撮像装置31で生成された画像データと、着座センサ33,34の検出信号とが入力される。
また、統括制御装置60には、車両10の走行状態を検出する複数のセンサの検出信号が入力される。複数のセンサは、車輪速センサ101、前後加速度センサ102及び横加速度センサ103を含んでいる。車輪速センサ101は、対応する車輪11の回転速度を検出する。前後加速度センサ102は車両10の前後加速度を検出する。横加速度センサ103は車両10の横加速度を検出する。車輪速センサ101の検出信号に基づいた車輪11の回転速度を「車輪速度VW」という。前後加速度センサ102の検出信号に基づいた加速度を「前後加速度Gx」という。横加速度センサ103の検出信号に基づいた加速度を「横加速度Gy」という。
統括制御装置60は、車載の他の制御装置と各種の情報を送受信できるように構成されている。例えば、統括制御装置60は、運転支援装置110と情報の送受信ができる。運転支援装置110は、車両10を自律的に走行させるための指令を各種の制御装置に送信する制御装置である。車両10の走行モードとして自動運転モードが選択されている場合、運転支援装置110は、自動運転モードが選択されている旨の情報を統括制御装置60に送信する。車両10の走行モードとして手動運転モードが選択されている場合、運転支援装置110は、手動運転モードが選択されている旨の情報を統括制御装置60に送信する。ここでいう「自動運転モード」は、車両10の加速度である車両加速度を調整しつつ自律的に車両10を走行させるための走行モードである。「手動運転モード」は、運転者のアクセル操作、ブレーキ操作及びステアリング操作に基づいて車両10を走行させるための走行モードである。
統括制御装置60は処理回路61を備えている。処理回路61の一例は電子制御装置である。この場合、処理回路61はCPU62及びメモリ63を有している。メモリ63は、CPU62によって実行される制御プログラムを記憶している。CPU62が制御プログラムを実行することにより、統括制御装置60は、シート制御装置25、発光制御装置47及び遮断制御装置53に指令を出力できる。
<乗員が乗り物酔いするメカニズム>
車両10の加減速が繰り返されると、乗員が乗り物酔いすることがある。そこで、車両10に加減速が発生することに起因して乗員が乗り物酔いするメカニズムについて説明する。
乗員の頭部210に作用する加速度の向きと、乗員の乗り物酔いしやすさとの関係について、本願発明者は鋭意研究を行った。その結果、乗員の頭部210に作用する加速度の向きと、加速度の大きさとによって、乗り物酔いしやすさが変わるという知見を得た。
次に、こうした知見を得るために行った実験について説明する。車速が「10km/h」から「40km/h」の範囲で可変するように車両10の加速及び減速を繰り返す。そして、車両10に搭乗した被験者200Cが、こうした車両10の走行時に感じた気持ち悪さの度合いに応じた評価点を付ける。詳しくは、被験者200Cは、気持ち悪さの度合いが大きいほど値が大きくなるように評価点を付ける。
上記のような実験を行うに際し、被験者200Cには図4に示す複数の姿勢を取って貰う。
(A1)第1姿勢Pos1は、被験者200Cに前傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を90°とする被験者200Cの姿勢である。
(A2)第2姿勢Pos2は、被験者200Cに前傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を50°とする被験者200Cの姿勢である。
(A3)第3姿勢Pos3は、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を0°とする被験者200Cの姿勢である。
(A4)第4姿勢Pos4は、被験者200Cに後傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を30°とする被験者200Cの姿勢である。
(A5)第5姿勢Pos5は、被験者200Cに後傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を90°とする被験者200Cの姿勢である。
第1姿勢Pos1で被験者200Cが乗車した状態で上記のように車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第2姿勢Pos2で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第3姿勢Pos3で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第4姿勢Pos4で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第5姿勢Pos5で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。
その評価の結果が、図5に示されている。酔いやすさ指標INDとは、乗り物酔いのしやすさを数値化したものである。上記の評価点が高いほど酔いやすさ指標INDが大きくなる。そのため、酔いやすさ指標INDが大きいほど、乗り物酔いしやすいことになる。図5からも明らかなように、被験者200Cが第2姿勢Pos2で搭乗した場合、被験者200Cが最も乗り物酔いしやすい。被験者200Cが第3姿勢Pos3で搭乗した場合、被験者200Cが2番目に乗り物酔いしやすい。すなわち、被験者200Cが前傾姿勢をとり、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角が「0°」から「50°」の間である場合に、被験者200Cが乗り物酔いしやすいということが分かった。
さらに詳細に実験を進めると、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角が「25°」から「35°」の間の角度である場合が、被験者200Cが最も乗り物酔いする可能性が高いということが分かった。
こうした結果を踏まえ、乗員前方Cfと乗員上方Cuとの間に延びる仮想直線の延びる方向を「仮想軸方向Da」と定義する。この仮想直線が「仮想軸」に対応し、仮想軸方向Daが「仮想軸の軸線方向」に対応する。このとき、仮想軸方向Daの加速度成分の大きさを小さくしたり、仮想軸方向Daの加速度成分の大きさの変動を抑えたりすることにより、乗員の乗り物酔いを抑制できると推測される。本実施形態では、乗員前方Cfと仮想軸方向Daとのなす角が20°以上であって、且つ40°以下の角度となるように、仮想軸方向Daが設定される。例えば、図2に示すように乗員前方Cfと仮想軸方向Daとのなす角である規定角度θdが30°となるように、仮想軸方向Daが設定されている。
<統括制御装置の機能構成>
図3を参照し、統括制御装置60の機能構成について説明する。
統括制御装置60のメモリ63の制御プログラムをCPU62が実行することにより、処理回路61が、加速度取得部M11、加速度成分導出部M13、基準加速度成分導出部M15及び変更部M17として機能する。
加速度取得部M11は、車両の加速度である車両加速度DVSを取得する。加速度取得部M11は、複数の車輪11の車輪速度VWを基に、車両10の車体速度VSを導出する。車体速度VSは、車両10の移動速度に対応する。加速度取得部M11は、車体速度VSを時間微分した値を、車両加速度DVSとして取得する。車両10が加速している場合、車両加速度DVSが正の値となる。一方、車両10が減速している場合、車両加速度DVSが負の値となる。
ここで、統括制御装置60は、運転支援装置110から各種の情報を受信できる。例えば、統括制御装置60は、車両10の走行モードとして自動運転モードが選択されている場合では、運転支援装置110から車両10の走行計画に関する情報も受信できる。走行計画は、車両加速度DVSの推移を含んでいる。
そこで、車両10の走行モードとして自動運転モードが選択されている場合、加速度取得部M11は、車両加速度DVSとして、上記走行計画から取得できる車両加速度の予測値を取得する。ここで取得する車両加速度の予測値は、例えば、現時点から所定時間が経過した時点の車両加速度である。所定時間として、シート20A,20Bの姿勢を変更するのに必要な時間、若しくは当該時間よりも僅かに長い時間が設定されるとよい。
加速度成分導出部M13は、上記仮想軸方向Daの加速度成分である仮想軸方向加速度Gdを導出する。具体的には、加速度成分導出部M13は、加速度取得部M11によって取得された車両加速度DVSのうちの仮想軸方向Daの加速度成分と、重力加速度Gaのうちの仮想軸方向Daの成分との和を、仮想軸方向加速度Gdとして導出する。この仮想軸方向加速度Gdが「総合加速度成分」に対応する。例えば、加速度成分導出部M13は、下記の関係式(F1)を参照して仮想軸方向加速度Gdを導出できる。関係式(F1)において、「θd」は上記規定角度である。また「θ0」は、鉛直方向に対する乗員200A,200Bの頭部210の傾斜角である頭部傾斜角である。乗員200A,200Bが車両上方Zaを向くほど頭部傾斜角θ0は大きくなる。頭部210がヘッドレスト23に支持されている状態でシートバック22が回動する場合、頭部傾斜角θ0は、シートバック傾斜角とほぼ一致する。そのため、加速度成分導出部M13は、関係式(F1)の頭部傾斜角θ0にシートバック傾斜角を代入することにより、仮想軸方向加速度Gdを導出できる。
基準加速度成分導出部M15は、車両加速度DVSが発生していない場合に、すなわち車両加速度DVSが実質的に0(零)である場合に、基準仮想軸方向加速度GdBを導出する。つまり、基準仮想軸方向加速度GdBは、車両加速度DVSが発生していない場合の仮想軸方向加速度Gd(総合加速度成分)である。よって、基準仮想軸方向加速度GdBが「基準加速度成分」に対応する。例えば、基準加速度成分導出部M15は、下記の関係式(F2)を参照して基準仮想軸方向加速度GdBを算出すればよい。
なお、本実施形態では、基準加速度成分導出部M15は、以下の条件(B1)及び(B2)のうち、少なくとも条件(B1)を満たしている場合に、車両加速度DVSが発生していないと判定する。
(B1)車両加速度DVSが0(零)であること。
(B2)車両加速度DVSの大きさが所定値未満であること。ただし、所定値は、車両加速度DVSの大きさが極めて小さいと判断するための車両加速度DVSである。
変更部M17は、基準仮想軸方向加速度GdBから仮想軸方向加速度Gdが乖離することを抑制するように、シート20A,20Bの姿勢を変更させる姿勢変更処理を実行する。例えば、変更部M17は、姿勢変更処理において、仮想軸方向加速度Gdを基準仮想軸方向加速度GdBに一致させることのできるシート20A,20Bの姿勢を導出する。この際、変更部M17は、以下の関係式(F3)を満たす頭部傾斜角θ0の変更量Δθを導出する。関係式(F3)において、「θ0B」は頭部傾斜角初期値である。頭部傾斜角初期値θ0Bは、車両10に車両加速度DVSが発生する前の頭部傾斜角θ0である。
変更部M17は、頭部傾斜角の変更量Δθを導出すると、シート20A,20Bの姿勢を、当該変更量Δθに応じて変更させる指示をシート制御装置25に出力する。例えば、変更部M17は、シートバック傾斜角を、頭部傾斜角初期値θ0Bと変更量Δθとの和に応じた値とすることをシート制御装置25に指示する。
変更部M17は、姿勢変更処理によってシート20A,20Bの姿勢を変更させる場合に、乗員200A,200Bの視線を車両上方Zaに誘導することを視線誘導装置に指示する。具体的には、変更部M17は、ディスプレイ41に注視点GPを生成させることを発光制御装置47に指示する。
変更部M17は、姿勢変更処理によってシート20A,20Bの姿勢を変更させる場合に、乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮ることを視界遮断装置50に指示する。具体的には、変更部M17は、ガラス51の透過率を低くすることを遮断制御装置53に指示する。
<乗り物酔い抑制処理>
図6を参照し、乗員200A,200Bの乗り物酔いを抑制すべく処理回路61が実行する処理の流れである乗り物酔い抑制処理を説明する。処理回路61は、車両10の走行モードとして自動運転モードが選択されている場合に乗り物酔い抑制処理を繰り返し実行する。また、処理回路61は、乗員200A,200B毎に乗り物酔い抑制処理を実行する。
ステップS11において、処理回路61は、加速度取得部M11として機能することにより、車両加速度DVSを取得する。
続くステップS13において、処理回路61は、基準加速度成分導出部M15として機能することにより、車両加速度が車両10に発生するか否かを判定する。例えば、ステップS11で取得した車両加速度DVSの絶対値が所定の閾値以上である場合は、車両加速度が発生すると予測できる。一方、ステップS11で取得した車両加速度DVSの絶対値が所定の閾値未満である場合は、車両加速度が発生しないと予測できる。処理回路61は、車両加速度が発生すると判定した場合(S13:YES)、処理をステップS17に移行する。一方、処理回路61は、車両加速度が発生しないと判定した場合(S13:NO)、処理をステップS15に移行する。ステップS15において、処理回路61は、基準加速度成分導出部M15として機能することにより、基準仮想軸方向加速度GdBを導出する。例えば、処理回路61は、上記関係式(F2)に現在の頭部傾斜角θ0を代入することにより、基準仮想軸方向加速度GdBを導出できる。そして、処理回路61は処理をステップS17に移行する。
ステップS17において、処理回路61は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの姿勢に関する情報を、姿勢検出装置から取得する。例えば、処理回路61は、撮像装置31が生成した画像データと、複数の着座センサ33,34の検出信号とを取得する。次のステップS19において、処理回路61は、ステップS17で取得した情報を基に、乗員200A,200Bの背中がシートバック22から離れているか否かを判定する。乗員200A,200Bの背中がシートバック22から離れている場合は、姿勢変更処理によってシート20A,20Bの姿勢を変更しても乗員200A,200Bの姿勢を変更できない可能性がある。そこで、処理回路61は、乗員200A,200Bの背中がシートバック22から離れていると判定した場合(S19:YES)、処理をステップS37に移行する。この場合、処理回路61は姿勢変更処理を実行しない。一方、処理回路61は、乗員200A,200Bの背中がシートバック22から離れていないと判定した場合(S19:NO)、処理をステップS21に移行する。
ステップS21において、処理回路61は、加速度成分導出部M13として機能することにより、仮想軸方向加速度Gdを導出する。例えば、処理回路61は、今回のステップS11で取得した車両加速度DVS及び頭部傾斜角θ0を関係式(F1)に代入することにより、仮想軸方向加速度Gdを導出する。そして、処理回路61は処理をステップS23に移行する。
ステップS23において、処理回路61は、変更部M17として機能することにより、上記の姿勢変更処理を実行する。具体的には、ステップS25において、処理回路61は、上記関係式(F3)を満たす頭部傾斜角の変更量Δθを導出する。次のステップS27において、処理回路61は、シート20A,20Bの姿勢を、当該変更量Δθに応じて変更させる指示をシート制御装置25に出力する。処理回路61は、このように姿勢変更処理を実行すると、処理をステップS31に移行する。
シート制御装置25は、統括制御装置60から上記の指示を受け取る。すると、シート制御装置25は、シートバック傾斜角が上記変更量Δθだけ変わるように、シートバック用アクチュエータ27を作動させる。
ステップS31において、処理回路61は、上記ステップS13と同様に、車両加速度が車両10に発生するか否かを判定する。処理回路61は、車両加速度が発生すると判定した場合(S31:YES)、処理をステップS33に移行する。一方、処理回路61は、車両加速度が発生しないと判定した場合(S31:NO)、処理をステップS37に移行する。
ステップS33において、処理回路61は、変更部M17として機能することにより、乗員200A,200Bの視線を車両上方Zaに誘導することを視線誘導装置に指示する。続くステップS35において、処理回路61は、変更部M17として機能することにより、乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮ることを視界遮断装置50に指示する。そして、処理回路61は乗り物酔い抑制処理を一旦終了する。
発光制御装置47は、ステップS33の指示を統括制御装置60から受け取る。すると、発光制御装置47は、生成装置43からレーザー光LLを発光させることにより、ディスプレイ41に注視点GPを生成させる。
遮断制御装置53は、ステップS35の指示を統括制御装置60から受け取る。すると、遮断制御装置53は、ガラス51に通電することによってガラス51の透過率を低くする。
ステップS37において、処理回路61は、変更部M17として機能することにより、視線誘導装置の作動の停止を指示する。続くステップS39において、処理回路61は、変更部M17として機能することにより、視界遮断装置50の作動の停止を指示する。
発光制御装置47は、ステップS37の指示を統括制御装置60から受け取る。すると、発光制御装置47は、生成装置43からのレーザー光LLの出力を停止させる。
遮断制御装置53は、ステップS39の指示を統括制御装置60から受け取る。すると、遮断制御装置53は、ガラス51への通電を停止する。
<本実施形態の作用及び効果>
図7を参照し、乗り物酔い抑制装置100の作用及び効果を説明する。
自動運転モードで車両10が一定速度で走行している場合、統括制御装置60の処理回路61は、そのときの頭部傾斜角θ0に基づいて基準仮想軸方向加速度GdBを導出している。処理回路61は、統括制御装置60から受信した車両10の走行計画に関する情報を基に、車両10に制動力が付与されるなどして車両10が減速すると予測した場合、車両加速度が車両10に発生すると判定する。また、処理回路61は、上記走行計画に関する情報を基に、車両10に駆動力が付与されるなどして車両10が加速すると予測した場合でも、車両加速度が車両10に発生すると判定する。
処理回路61は、車両加速度が発生すると判定すると、車両加速度DVS及び頭部傾斜角θ0に基づいて仮想軸方向加速度Gdを導出する。そして、処理回路61は、車両加速度が発生すると判定する前の基準仮想軸方向加速度GdBの大きさから仮想軸方向加速度Gdの大きさが乖離することを抑制するように、シート20A,20Bの姿勢を変更させる姿勢変更処理を実行する。
姿勢変更処理が実行されると、シート20A,20Bの姿勢が変更される。本実施形態では、図7に示すようにシートバック傾斜角が変更されることによって、シート20A,20Bの姿勢が変更される。例えばシートバック22の支持面22aに乗員200A,200Bの背中が触れている場合には、こうしたシート20A,20Bの姿勢の変更に応じて乗員200A,200Bの姿勢が変化する。その結果、乗り物酔い抑制装置100は、乗員200A,200Bに作用する仮想軸方向加速度Gdの大きさが大きくなることを抑制できる。また、乗り物酔い抑制装置100は、車両加速度DVSが発生しても、乗員200A,200Bに作用する仮想軸方向Daの加速度成分の大きさが変化することを抑制できる。したがって、乗り物酔い抑制装置100は、車両10の走行中に乗員200A,200Bが乗り物酔いすることを抑制できる。
本実施形態では、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(1-1)本実施形態では、処理回路61は、車両加速度が発生すると判定する前の基準仮想軸方向加速度GdBから仮想軸方向加速度Gdが変わらないように、頭部傾斜角の変更量Δθを導出する。すると、シート20A,20Bの姿勢が、当該変更量Δθに応じて変更される。これにより、処理回路61は、基準仮想軸方向加速度GdBの大きさと仮想軸方向加速度Gdの大きさとの乖離を略0(零)とすることが可能となる。したがって、乗り物酔い抑制装置100は、車両加速度が発生した際に、乗員200A,200Bに作用する仮想軸方向Daの加速度成分の大きさが変化することの抑制効果を高くできる。
(1-2)処理回路61は、現時点から所定時間が経過した時点の車両加速度の予測値を車両加速度DVSとして取得する。そして、処理回路61は、こうした車両加速度DVSを用いて、車両加速度が発生するか否かを判定している。その結果、処理回路61は、実際に車両加速度が発生する前からシート20A,20Bの姿勢が変更させることが可能となる。したがって、乗り物酔い抑制装置100は、車両加速度が発生した際に、乗員200A,200Bに作用する仮想軸方向Daの加速度成分の大きさが変化することの抑制効果を高くできる。
(1-3)処理回路61は、上記のような姿勢変更処理を実行する場合には、乗員200A,200Bの視線を車両上方Zaに誘導することを視線誘導装置に指示する。これにより、乗り物酔い抑制装置100は、シート20A,20Bの姿勢の変更に応じて、乗員200A,200Bの姿勢を変更させやすい。したがって、乗り物酔い抑制装置100は、乗員200A,200Bが乗り物酔いすることを抑制する効果を発揮しやすい。
(1-4)車両10に車両加速度が発生すると、車両10の減速又は加速に応じた車外の風景の変化が視覚情報として乗員200A,200Bに入力される。このとき、姿勢変更処理によって仮想軸方向Daの加速度成分の変動を抑えると、仮想軸方向Daの加速度成分があまり変わらないにも拘わらず、視覚情報が変化することで、乗員200A,200Bの知覚情報に矛盾が生じるおそれがある。このような知覚情報の矛盾が発生すると、乗員200A,200Bに乗り物酔いが発生するおそれがある。
この点、本実施形態では、処理回路61は、上記のような姿勢変更処理を実行する場合には、乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮ることを視界遮断装置50に指示する。このように乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮ることにより、上述したような知覚情報の矛盾が生じにくくなる。したがって、乗り物酔い抑制装置100は、知覚情報の矛盾に起因する乗り物酔いが乗員200A,200Bに発生することを抑制できる。
(1-4)乗員200A,200Bの背中がシートバック22から離れている場合、シートバック22を後傾方向Rrに回動させても乗員200A,200Bの姿勢を変更できない可能性がある。そこで、処理回路61は、乗員200A,200Bの背中がシートバック22から離れていると判定した場合、姿勢変更処理を実行しない。したがって、乗り物酔い抑制装置100は、乗員200A,200Bの乗り物酔いを抑制する効果が期待できない場合にシート20A,20Bの姿勢を変更しなくてもよくなる。
(第2実施形態)
乗り物酔い抑制装置の第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、第2実施形態では、シートバックに対してヘッドレストを自動で回動させることができる点などが第1実施形態と異なっている。以下の説明においては、第1実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図8及び図9に示すように、本実施形態の乗り物酔い抑制装置100が備える複数のシート20A,20Bでは、ヘッドレスト123がシートバック22に対して回動可能に支持されている。例えば、ヘッドレスト123の上部には、車両10の横方向に延びる回転軸123Aが内蔵されている。そして、ヘッドレスト123は回転軸123Aを中心に回動する。すなわち、ヘッドレスト123の下部が車両前方Xfに変位するかたちで、ヘッドレスト123は回転軸123Aを中心に回動する。このようにヘッドレスト123が回動することにより、ヘッドレスト123のシートバック22に対する傾斜角が変わる。以降では、ヘッドレスト123のシートバック22に対する傾斜角を「ヘッドレスト傾斜角」ともいう。
複数のシート20A,20Bは、ヘッドレスト傾斜角を可変させるヘッドレスト用アクチュエータ28をそれぞれ備えている。ヘッドレスト用アクチュエータ28が作動すると、ヘッドレスト123が前傾方向RHfに回動したり、ヘッドレスト123が後傾方向RHrに回動したりする。前傾方向RHfは図8における反時計回り方向である一方、後傾方向RHrは図8における時計回り方向である。
シート制御装置25は、統括制御装置60からシート20A,20Bの姿勢を変更する指示を受け取ると、その指示に基づいてヘッドレスト用アクチュエータ28を作動させる。すなわち、シート制御装置25は、ヘッドレスト傾斜角を変更することによってシート20A,20Bの姿勢を変更する。
<本実施形態の作用及び効果>
本実施形態では、上記第1実施形態と同等の作用及び効果に加え、以下に示す効果を得ることができる。
(2-1)シート20A,20Bは、ヘッドレスト123を回動させることにより、乗員200A,200Bの頭部傾斜角θ0を変更できる。そのため、乗り物酔い抑制装置は、シート20A,20Bの車両後方Xrにシートバック22を後傾させるスペースがない場合であっても、乗員200A,200Bの姿勢の変更を促すことができる。
特に、本実施形態では、ヘッドレスト123の下部を車両前方Xfに変位させることで、ヘッドレスト123が後傾方向RHrに回動する。そのため、シートバック22を後傾方向Rrに回動させることができない態様でシート20A,20Bが設置されている場合であっても、乗り物酔い抑制装置は乗員200A,200Bの姿勢の変更を促すことができる。
(第3実施形態)
乗り物酔い抑制装置の第3実施形態を図10から図12に従って説明する。なお、第3実施形態では、仮想軸方向加速度Gd及び基準仮想軸方向加速度GdBの導出手法及び頭部傾斜角の変更量Δθの導出手法などが上記複数の実施形態と異なっている。以下の説明においては、上記複数の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、上記複数の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
<乗員保護装置>
図10に示すように、乗り物酔い抑制装置100Aが搭載される車両10は、車両10の衝突時に乗員200A,200Bを保護する乗員保護装置150を備えている。乗員保護装置150は、シートベルト151とエアバッグ152と制御装置153とを有している。制御装置153は、シートベルト151及びエアバッグ152を制御する処理回路を有している。処理回路の一例は電子制御装置である。処理回路は、車両10の衝突を検知した場合に、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bをシートベルト151によって拘束する。その上で、処理回路は、エアバッグ152を展開させることによって乗員200A,200Bを保護する。
なお、乗員保護装置150と乗員200A,200Bとの位置関係が、適切な保護効果を発揮できない位置関係である場合、乗員保護装置150は、車両10の衝突時にエアバッグ152による乗員200A,200Bの保護性能が低下する可能性がある。つまり、乗員保護装置150は、乗員200A,200Bを適切に保護するためのシートバック傾斜角ANGの範囲を有している。こうしたシートバック傾斜角ANGの範囲を「乗員保護装置150の有効範囲Rang」という。シートバック傾斜角ANGが有効範囲Rang外の値である場合、エアバッグ152によって乗員200A,200Bを保護する能力が、シートバック傾斜角ANGが有効範囲Rang内の値である場合と比較して低下する。制御装置153は、有効範囲Rangに関する情報を保管している。また、制御装置153は、乗り物酔い抑制装置100Aの統括制御装置60Aと各種の情報の送受信が可能に構成されている。そのため、統括制御装置60Aは、上記情報を制御装置153から受信することにより、乗員保護装置150の有効範囲Rangを把握できる。
<統括制御装置>
車両10は、車両10の上下加速度を検出する上下加速度センサ104をさらに備えている。上下加速度センサ104は、検出結果に応じた検出信号を統括制御装置60Aに出力する。上下加速度センサ104の検出信号に基づいた加速度を「上下加速度Gz」という。
統括制御装置60Aは処理回路61Aを備えている。処理回路61Aの一例は電子制御装置である。この場合、処理回路61AはCPU62及びメモリ63を有している。メモリ63は、CPU62によって実行される制御プログラムを記憶している。CPU62が制御プログラムを実行することにより、統括制御装置60Aは、シート制御装置25、発光制御装置47及び遮断制御装置53に指令を出力できる。
<機能部>
統括制御装置60Aのメモリ63の制御プログラムをCPU62が実行することにより、処理回路61Aが、加速度取得部M11、慣性力成分導出部M21、加速度成分導出部M13A、基準加速度成分導出部M15A及び変更部M17Aとして機能する。
慣性力成分導出部M21は、仮想軸方向慣性力FISを導出する。仮想軸方向慣性力FISは、シート20A,20Bの姿勢の変化によって生じる乗員200A,200Bの頭部210の慣性力のうちの仮想軸方向Daの成分である。慣性力成分導出部M21は、シート角加速度DDANGに基づいて仮想軸方向慣性力FISを導出する。シート角加速度DDANGとはシート20A,20Bの角加速度である。詳しくは、シートバック22の回動速度の単位時間あたりの変化量である。シート角加速度DDANGは、シートバック用アクチュエータ27を制御するシート制御装置25によって把握されている。そこで、慣性力成分導出部M21は、シート制御装置25からシート角加速度DDANGを取得するとよい。
例えば、慣性力成分導出部M21は、下記の関係式(F4)を参照して仮想軸方向慣性力FISを導出できる。すなわち、仮想軸方向慣性力FISは、シート角加速度DDANGが大きいほど大きくなる。なお、関係式(F4)において、「RL・DDANG」が、シートバック22の回動に伴って乗員200A,200Bの頭部210に作用する慣性力である。
図11に示すように、関係式(F4)における「RL」は、シートバック22の回転中心である回転軸21Aから乗員200A,200Bの頭部210の耳石までの距離である。詳しくは、乗員200A,200B及びシート20A,20Bを示す側面図において、回転軸21Aから耳石での直線距離が、回転半径RLである。
図10に示すように、加速度成分導出部M13Aは、仮想軸方向Daの加速度成分である仮想軸方向加速度Gd1を導出する。加速度成分導出部M13Aは、車両加速度DVSのうちの仮想軸方向Daの加速度成分と、重力加速度Gaのうちの仮想軸方向Daの成分との和が大きいほど大きくなるように仮想軸方向加速度Gd1を導出する。具体的には、加速度成分導出部M13Aは、車両加速度DVSのうちの仮想軸方向Daの加速度成分と、重力加速度Gaのうちの仮想軸方向Daの成分と、上下加速度Gzのうちの仮想軸方向Daの加速度成分と、仮想軸方向慣性力FISとの和を、仮想軸方向加速度Gd1を導出する。本実施形態では、仮想軸方向加速度Gd1が「総合加速度成分」である。
例えば、加速度成分導出部M13Aは、以下の関係式(F5)を参照して仮想軸方向加速度Gd1を算出できる。関係式(F5)において、「(Ga+Gz)・sin(θd+θ0)」のうち、「Gz・sin(θd+θ0)」が、上下加速度Gzのうちの仮想軸方向Daの加速度成分に相当する。
基準加速度成分導出部M15Aは、車両加速度DVSが発生していない場合に、すなわち車両加速度DVSが実質的に0(零)である場合に、基準仮想軸方向加速度GdB1を導出する。つまり、基準仮想軸方向加速度GdB1は、車両加速度DVSが発生していない場合の仮想軸方向加速度Gd1である。本実施形態では、基準仮想軸方向加速度GdB1が「基準加速度成分」である。例えば、基準加速度成分導出部M15Aは、下記の関係式(F6)を参照して基準仮想軸方向加速度GdB1を算出すればよい。
なお、本実施形態では、基準加速度成分導出部M15Aは、上記の条件(B1)及び(B2)のうち、少なくとも条件(B1)を満たしている場合に、車両加速度DVSが発生していないと判定する。
変更部M17Aは、基準仮想軸方向加速度GdB1から仮想軸方向加速度Gd1が乖離することを抑制するように、シート20A,20Bの姿勢を変更させる姿勢変更処理を実行する。例えば、変更部M17Aは、姿勢変更処理において、仮想軸方向加速度Gd1を基準仮想軸方向加速度GdB1に一致させることのできるシート20A,20Bの姿勢を導出する。この際、変更部M17Aは、以下の関係式(F7)を満たす頭部傾斜角θ0の変更量の仮値Δθ1を導出する。仮値Δθ1を「変更量仮値Δθ1」という。
変更部M17Aは、変更量仮値Δθ1に応じてシート20A,20Bの姿勢を変更させた場合に、シートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内に収まるか否かを判定する。シート20A,20Bの姿勢の変更前のシートバック傾斜角ANGと変更量仮値Δθ1との和が有効範囲Rang内の値である場合は、シート20A,20Bの姿勢の変更後のシートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内に収まると見なせる。一方、シート20A,20Bの姿勢の変更前のシートバック傾斜角ANGと変更量仮値Δθ1との和が有効範囲Rang外の値である場合は、シート20A,20Bの姿勢の変更後のシートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内に収まらないと見なせる。
変更部M17Aは、シートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内に収まると判定した場合、頭部傾斜角の変更量Δθとして変更量仮値Δθ1を設定する。一方、変更部M17Aは、シートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内に収まらないと判定した場合、頭部傾斜角の変更量Δθとして限界値ΔθLmを設定する。限界値ΔθLmとして、頭部傾斜角初期値θ0Bと変更量Δθとの和を有効範囲Rangの内外の境界値と等しくできる値が設定される。
そして、変更部M17Aは、当該変更量Δθに応じて変更させる指示をシート制御装置25に出力する。例えば、変更部M17Aは、シートバック傾斜角を、頭部傾斜角初期値θ0Bと変更量Δθとの和に応じた値とすることをシート制御装置25に指示する。
<乗り物酔い抑制処理>
図12を参照し、本実施形態で実行される乗り物酔い抑制処理を説明する。
ステップS51において、上記ステップS11と同様に、処理回路61Aは、加速度取得部M11として機能することにより、車両加速度DVSを取得する。
続くステップS53において、処理回路61Aは、慣性力成分導出部M21として機能することにより、シート20A,20Bのシート角加速度DDANGを取得する。そしてステップS55において、処理回路61Aは、慣性力成分導出部M21として機能することにより、仮想軸方向慣性力FISを導出する。例えば、処理回路61Aは、ステップS53で取得したシート角加速度DDANGを上記関係式(F4)に代入することにより、仮想軸方向慣性力FISを導出できる。
続くステップS57において、上記ステップS13と同様に、処理回路61Aは、基準加速度成分導出部M15Aとして機能することにより、車両加速度が車両10に発生するか否かを判定する。処理回路61Aは、車両加速度が発生すると判定した場合(S57:YES)、処理をステップS61に移行する。一方、処理回路61Aは、車両加速度が発生しないと判定した場合(S57:NO)、処理をステップS59に移行する。ステップS59において、処理回路61Aは、基準加速度成分導出部M15Aとして機能することにより、基準仮想軸方向加速度GdB1を導出する。例えば、処理回路61Aは、上記関係式(F6)に現在の頭部傾斜角θ0を代入することにより、基準仮想軸方向加速度GdB1を導出できる。そして、処理回路61Aは処理をステップS61に移行する。
ステップS61において、処理回路61Aは、加速度成分導出部M13Aとして機能することにより、仮想軸方向加速度Gd1を導出する。例えば、処理回路61Aは、今回のステップS51で取得した車両加速度DVS及び頭部傾斜角θ0を関係式(F5)に代入することにより、仮想軸方向加速度Gd1を導出できる。そして、処理回路61Aは処理をステップS63に移行する。
ステップS63において、処理回路61Aは、変更部M17Aとして機能することにより、姿勢変更処理を実行する。具体的には、ステップS65において、処理回路61Aは、上記関係式(F7)を満たす変更量仮値Δθ1を導出する。次のステップS67において、処理回路61Aは、変更量仮値Δθ1に応じてシート20A,20Bの姿勢を変更させたと仮定した場合にシートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内に収まるか否かを判定する。処理回路61Aは、シートバック傾斜角ANGが有効範囲Rang内に収まると判定した場合(S67:YES)、処理をステップS69に移行する。一方、処理回路61Aは、シートバック傾斜角ANGが有効範囲Rang内に収まらないと判定した場合(S67:NO)、処理をステップS71に移行する。
ステップS69において、処理回路61Aは、頭部傾斜角の変更量Δθとして変更量仮値Δθ1を設定する。そして、処理回路61Aは処理をステップS73に移行する。
ステップS71において、処理回路61Aは、頭部傾斜角の変更量Δθとして上記限界値ΔθLmを設定する。そして、処理回路61Aは処理をステップS73に移行する。
ステップS73において、処理回路61Aは、シート20A,20Bの姿勢を、当該変更量Δθに応じて変更させる指示をシート制御装置25に出力する。処理回路61Aは、このように姿勢変更処理を実行すると、処理を上記ステップS31に移行する。
シート制御装置25は、統括制御装置60Aから上記の指示を受け取る。すると、シート制御装置25は、シートバック傾斜角が上記変更量Δθだけ変わるように、シートバック用アクチュエータ27を作動させる。
なお、ステップS31以降の処理の流れは、上記第1実施形態の場合と同様である。そのため、以降の説明は省略する。
<本実施形態の作用及び効果>
本実施形態では、上記第1実施形態と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(3-1)処理回路61Aが姿勢変更処理を実行しても、乗員保護装置150の有効範囲Rangにシートバック傾斜角ANGが収まる範囲で、シート20A,20Bの姿勢が調整される。したがって、姿勢変更処理が実行されている最中に車両10の衝突が発生した場合でも、乗員保護装置150によって乗員200A,200Bを保護できる。
(3-2)車両10が走行している場合、走行路面の凹凸度合いによっては車両10が車両上下方向に振動することがある。このように車両10が振動している場合には、上下加速度Gzのうちの一部分が、乗員200A,200Bの頭部210に対して、仮想軸方向に作用する。
この点、本実施形態では、処理回路61Aは、上下加速度Gzのうちの仮想軸方向Daの成分を加味して仮想軸方向加速度Gd1及び基準仮想軸方向加速度GdB1を導出する。そして、処理回路61Aは、基準仮想軸方向加速度GdB1の大きさから仮想軸方向加速度Gd1の大きさが乖離しないように、シート20A,20Bの姿勢を変更させる。したがって、乗り物酔い抑制装置100Aは、車両10の走行中に乗員200A,200Bが乗り物酔いすることの抑制効果を高くできる。
(3-3)シートバック傾斜角ANGが変更されている場合、乗員200A,200Bの頭部210には、シートバック22の回動に起因するシート角加速度DDANGに応じた慣性力が作用する。こうした慣性力のうちの仮想軸方向の成分が変わると、乗員200A,200Bが乗り物酔いしやすい。
この点、本実施形態では、処理回路61Aは、シート角加速度DDANGに基づいて仮想軸方向慣性力FISを導出する。処理回路61Aは、仮想軸方向慣性力FISを加味して仮想軸方向加速度Gd1及び基準仮想軸方向加速度GdB1を導出する。そして、処理回路61Aは、基準仮想軸方向加速度GdB1の大きさから仮想軸方向加速度Gd1の大きさが乖離しないように、シート20A,20Bの姿勢を変更させる。したがって、乗り物酔い抑制装置100Aは、車両10の走行中において、シート20A,20Bの姿勢を変更することに起因して乗員200A,200Bが乗り物酔いすることを抑制できる。
(第4実施形態)
乗り物酔い抑制装置の第4実施形態を図13から図15に従って説明する。なお、第4実施形態では、車両10の衝突が予測される場合の処理内容などが上記複数の実施形態と異なっている。以下の説明においては、上記複数の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、上記複数の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
<運転支援装置>
運転支援装置110は、車両10(自車両)が、他の車両などの障害物に対して相対的に接近している場合、車両10が障害物に衝突するか否かを予測する。そして、運転支援装置110は、車両10が障害物に衝突すると予測した場合、車両10と障害物との衝突発生の予測時刻である衝突予測時刻TMAを導出する。例えば、運転支援装置110は、車両10から障害物までの距離と、車両10の障害物への相対的な接近速度とに基づいて、衝突予測時刻TMAを導出する。運転支援装置110は、現在時刻からTTC後の時刻を、衝突予測時刻TMAを導出すればよい。「TTC」は「Time To Collision」の略記である。そして、運転支援装置110は、車両10の衝突が予測される旨と、衝突予測時刻TMAに関する情報とを、乗り物酔い抑制装置100Bの統括制御装置60Bに送信する。
<乗り物酔い抑制装置>
乗り物酔い抑制装置100Bの統括制御装置60Bは、処理回路61Bを備えている。処理回路61Bの一例は電子制御装置である。この場合、処理回路61BはCPU62及びメモリ63を有している。メモリ63は、CPU62によって実行される制御プログラムを記憶している。CPU62が制御プログラムを実行することにより、統括制御装置60Bは、シート制御装置25、発光制御装置47及び遮断制御装置53に指令を出力できる。
<機能部>
統括制御装置60Aのメモリ63の制御プログラムをCPU62が実行することにより、処理回路61Aが、加速度取得部M11、加速度成分導出部M13B、基準加速度成分導出部M15B、予測時刻取得部M31、目標傾斜角設定部M33、プロファイル作成部M35及び変更部M17Bとして機能する。
加速度成分導出部M13Bは、仮想軸方向Daの加速度成分である仮想軸方向加速度Gd2を導出する。加速度成分導出部M13Bは、車両加速度DVSのうちの仮想軸方向Daの加速度成分と、重力加速度Gaのうちの仮想軸方向Daの成分との和が大きいほど大きくなるように仮想軸方向加速度Gd2を導出する。本実施形態では、仮想軸方向加速度Gd2が「総合加速度成分」である。例えば、加速度成分導出部M13Bは、上記第1実施形態の加速度成分導出部M13の導出値を仮想軸方向加速度Gd2として導出してもよい。また例えば、加速度成分導出部M13Bは、上記第3実施形態の加速度成分導出部M13Aの導出値を仮想軸方向加速度Gd2として導出してもよい。
基準加速度成分導出部M15Bは、車両加速度DVSが発生していない場合に、すなわち車両加速度DVSが実質的に0(零)である場合に、基準仮想軸方向加速度GdB2を導出する。つまり、基準仮想軸方向加速度GdB2は、車両加速度DVSが発生していない場合の仮想軸方向加速度Gd2である。本実施形態では、基準仮想軸方向加速度GdB2が「基準加速度成分」である。例えば、基準加速度成分導出部M15Bは、上記第1実施形態の基準加速度成分導出部M15の導出値を基準仮想軸方向加速度GdB2として導出してもよい。また例えば、基準加速度成分導出部M15Bは、上記第3実施形態の基準加速度成分導出部M15Aの導出値を基準仮想軸方向加速度GdB2として導出してもよい。
予測時刻取得部M31は、運転支援装置110から受信した情報に含まれる衝突予測時刻TMAを取得する。
目標傾斜角設定部M33は、車両10の衝突の発生が予測されている場合に、シートバック傾斜角ANGの目標値である目標傾斜角ANGthを、乗員保護装置150の有効範囲Rang内の傾斜角に設定する。例えば、目標傾斜角設定部M33は、有効範囲Rang内の所定の傾斜角を目標傾斜角ANGthとして設定する。この場合、目標傾斜角ANGthの一例は、有効範囲Rangの内外の境界値である。
プロファイル作成部M35は、車両10の衝突の発生が予測されている状況下でシートバック傾斜角ANGを変更する場合に、衝突予測時刻TMAではシートバック傾斜角ANGの変化速度が0(零)となるように、シートバック傾斜角ANGの変化速度のプロファイルPRを作成する。この際、プロファイル作成部M35は、衝突予測時刻TMAではシートバック傾斜角ANGが目標傾斜角ANGthになっていること、及び、衝突予測時刻TMAではシートバック傾斜角ANGの変化速度が0(零)となることの何れをも満たすように、プロファイルPRを作成する。
図14はプロファイルPRの一例を図示している。図14に示すように、プロファイル作成部M35は、初期ではシートバック傾斜角ANGの変化速度が大きくする一方で、時間が経過するにつれて変化速度が0(零)に近づくように、プロファイルPRを作成する。
変更部M17Bは、車両10の衝突の発生が予測されている状況下でシートバック傾斜角ANGを変更する場合に、プロファイルPRに従ってシートバック傾斜角ANGが変わるようにシート20A,20Bの姿勢を変更させる。具体的には、変更部M17Bは、車両10の衝突の発生が予測されている状況下で、シートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang外の傾斜角である場合、プロファイルPRに従ってシートバック傾斜角ANGが変わるようにシート20A,20Bの姿勢を変更させる。一方、変更部M17Bは、車両10の衝突の発生が予測されている状況下で、シートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内の傾斜角である場合、シートバック傾斜角ANGを保持させる。
なお、変更部M17Bは、車両10の衝突の発生が予測されていない場合、上記複数の実施形態と同様に姿勢変更処理を実行する。
<衝突予測時処理>
図15を参照し、車両10の衝突が予測されるときに処理回路61Bが実行する処理の流れである衝突予測時処理を説明する。処理回路61Bは、乗員200A,200B毎に衝突予測時処理を実行する。
ステップS101において、処理回路61Bは、運転支援装置110から受信した情報を基に、車両10と障害物との衝突が予測できるか否かを判定する。処理回路61Bは、車両10と障害物との衝突が予測される場合(S101:YES)、処理をステップS103に移行する。一方、処理回路61Bは、車両10と障害物との衝突が予測されていない場合(S101:NO)、衝突予測処理を一旦終了する。
ステップS103において、処理回路61Bは、予測時刻取得部M31として機能することにより、衝突予測時刻TMAを取得する。
次のステップS105において、処理回路61Bは、現在のシートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内の傾斜角であるか否かを判定する。処理回路61Bは、現在のシートバック傾斜角ANGが有効範囲Rang内の傾斜角である場合(S105:YES)、処理をステップS107に移行する。一方、処理回路61Bは、現在のシートバック傾斜角ANGが有効範囲Rang外の傾斜角である場合(S105:NO)、処理をステップS111に移行する。
ステップS107において、処理回路61Bは、変更部M17Bとして機能することにより、シートバック傾斜角ANGを現在の傾斜角で保持する旨の指示をシート制御装置25に出力する。続くステップS109において、処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達したか否かを判定する。処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達していない場合(S109:NO)、処理をステップS107に移行する。一方、処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達した場合(S109:YES)、衝突予測時処理を一旦終了する。すなわち、処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達するまでシートバック傾斜角ANGを保持させる。
シート制御装置25は、統括制御装置60Bから上記の指示を受け取る。すると、シート制御装置25は、シートバック傾斜角ANGが保持されるようにシートバック用アクチュエータ27を作動させる。
ステップS111において、処理回路61Bは、目標傾斜角設定部M33として機能することにより、目標傾斜角ANGthを設定する。
次のステップS113において、処理回路61Bは、プロファイル作成部M35として機能することにより、図14に示したようなプロファイルPRを作成する。すなわち、処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達した時点ではシートバック傾斜角ANGが目標傾斜角ANGthとなるようなプロファイルPRを作成する。
そしてステップS115において、処理回路61Bは、変更部M17Bとして機能することにより、ステップS113で作成したプロファイルPRに従ってシートバック傾斜角ANGを変更させる指示をシート制御装置25に出力する。ステップS117において、処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達したか否かを判定する。時刻が衝突予測時刻TMAに達した場合は、シートバック傾斜角ANGが目標傾斜角ANGthになったと見なせる。一方、時刻が衝突予測時刻TMAに達していない場合は、シートバック傾斜角ANGが目標傾斜角ANGthになっていないと見なせる。そこで、処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達していない場合(S117:NO)、処理をステップS115に移行する。一方、処理回路61Bは、時刻が衝突予測時刻TMAに達した場合(S117:YES)、衝突予測時処理を一旦終了する。
シート制御装置25は、統括制御装置60Bから上記の指示を受け取る。すると、シート制御装置25は、プロファイルPRに従ってシートバック傾斜角ANGが変化するようにシートバック用アクチュエータ27を作動させる。
<本実施形態の作用及び効果>
本実施形態では、上記複数の実施形態と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(4-1)車両10と障害物との衝突の発生が予測される場合には、衝突予測時刻TMAではシートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内の傾斜角となるように、シート20A,20Bの姿勢が変更される。これにより、乗員200A,200Bの乗り物酔いの発生を抑制すべくシート20A,20Bの姿勢を変更している状況下においても、車両10と障害物との衝突の発生が予測される場合には乗員保護装置150と協調して乗員200A,200Bを保護できる。
(4-2)シートバック傾斜角ANGを目標傾斜角ANGthまで変更させる際に用いられるプロファイルPRは、衝突予測時刻TMAではシートバック傾斜角ANGの変更速度が0(零)となるように作成される。これにより、乗り物酔い抑制装置100Bは、乗員保護装置150と協調した乗員200A,200Bの保護機能をより高くできる。
(4-3)車両10と障害物との衝突の発生が予測された時点でシートバック傾斜角ANGが乗員保護装置150の有効範囲Rang内の傾斜角である場合には、シートバック傾斜角ANGが保持される。これにより、乗り物酔い抑制装置100Bは、車両10と障害物との衝突の発生が予測される場合に、シート20A,20Bの姿勢を必要以上に変更しなくてもよい。
(4-4)乗り物酔い抑制装置100Bでは、車両10と障害物との衝突の発生が予測されていない場合には、乗員保護装置150の有効範囲Rangを越えてシートバック傾斜角ANGを変更できる。これにより、乗り物酔い抑制装置100Bは、車両10と障害物との衝突の発生が予測されていない場合において、乗員200A,200Bの乗り物酔いの抑制効果を高くできる。
(変更例)
上記複数の実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記複数の実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第2実施形態において、シートは、ヘッドレスト傾斜角を自動で調整できるものであれば、シートバック傾斜角を自動で調整できないシートであってもよい。
・第2実施形態において、シートは、シートバック傾斜角を自動で調整できるシートであってもよい。この場合、処理回路61が姿勢変更処理を実行した場合、シート制御装置25は、シートバック傾斜角及びヘッドレスト傾斜角の何れをも調整することによって乗員200A,200Bの姿勢の変更を促すことができる。
・シートは、ヘッドレスト23の下部と上部との車両前後方向の位置関係を調整することによってヘッドレスト傾斜角を可変できるものであれば、第2実施形態で説明したシートとは異なるものであってもよい。例えば、シートは、ヘッドレスト123の下部を中心にヘッドレスト23の上部を車両前方Xf及び車両後方Xrに変位させることによってヘッドレスト傾斜角を可変できるシートであってもよい。
・視界遮断装置は、乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮ることができるのであれば、任意の構成の装置であってもよい。例えば、視界遮断装置は、カーテンやブラインドなどによって乗員200A,200Bが車外の景色を見ることを遮る装置であってもよい。
・乗り物酔い抑制装置は、シート20A,20Bの姿勢を自動で変更できるのであれば、視界遮断装置を備えていなくてもよい。
・視線誘導装置は、乗員200A,200Bの視線を車両上方Zaに誘導できるのであれば、任意の構成の装置であってもよい。例えば、視線誘導装置は、ディスプレイ41に表示する画像によって乗員200A,200Bの視線を車両上方Zaに誘導する装置であってもよい。
・乗り物酔い抑制装置は、シート20A,20Bの姿勢を自動で変更できるのであれば、視線誘導装置を備えていなくてもよい。
・シートは、例えば図16に示すように乗員200A,200Bの頭部210の正面の車両横方向の向きも矯正できるヘッドレスト223を備えたものであってもよい。
・シートは、シートが設置されている床面に対して座部21を変位させることによって、シートの姿勢を可変できる構成であってもよい。
・乗り物酔い抑制装置は、シートが設置されている床面を可変させることによって、シートに着座する乗員の姿勢を変更する構成であってもよい。
・乗り物酔い抑制装置は、車両10が後方に走行する場合であっても、シートの姿勢を可変させることによって、乗員の姿勢を変更させるようにしてもよい。この場合、乗り物酔い抑制装置では、乗員を前傾させるようにシートの姿勢を変更させることが好ましい。そして、このようにシートの姿勢が変更される場合、視線誘導装置は、乗員の視線を車両10の下方に誘導させることが好ましい。
・姿勢検出装置は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの姿勢を検出できればよい。そのため、姿勢検出装置は、撮像装置31を有しているのであれば、着座センサ33,34を有していなくてもよい。また、姿勢検出装置は、着座センサ33,34を有しているのであれば、撮像装置31を有していなくてもよい。
・処理回路61,61A,61Bは、姿勢検出装置から受信した情報によって示される乗員200A,200Bの姿勢に拘わらず、姿勢変更処理を実行してもよい。
・処理回路61,61A,61Bは、仮想軸方向加速度Gdが基準仮想軸方向加速度GdBから乖離することを抑制するようにシート20A,20Bの姿勢を調整するのであれば、上記複数の実施形態で説明した手法とは異なる手法でシート20A,20Bの姿勢を調整してもよい。例えば、処理回路61,61A,61Bは、車両加速度DVSの大きさに応じてシートバック傾斜角が大きくなるように、シート20A,20Bの姿勢を制御するようにしてもよい。
・第3実施形態において、基準加速度成分導出部M15Aは、上記関係式(F2)を参照した算出値を基準仮想軸方向加速度GdB1として導出してもよい。
・第3実施形態において、加速度成分導出部M13Aは、上下加速度Gzのうちの仮想軸方向Daの加速度成分及び仮想軸方向慣性力FISのうちの一方を加味するのであれば、他方を加味することなく仮想軸方向加速度Gd1を導出してもよい。
・第3実施形態において、慣性力成分導出部M21は、撮像装置などによって乗員200A,200Bを撮像できるのであれば、撮像装置の画像データを解析することによって頭部210の耳石の位置を計測してもよい。この場合、慣性力成分導出部M21は、計測した耳石の位置に基づいて回転半径RLを導出するとよい。
また、慣性力成分導出部M21は、予め設定された固定値を回転半径RLとして採用してもよい。例えば、乗員の性別や年齢などのような乗員の外見に関する情報を取得できるのであれば、慣性力成分導出部M21は、当該情報に応じた値を回転半径RLとして採用するとよい。
・統括制御装置60,60A,60Bは、シート20A,20Bの姿勢を制御するに際し、運転支援装置110から受信する車両10の走行計画に関する情報を用いなくてもよい。この場合、処理回路61,61A,61Bは、車両加速度の現在値を車両加速度DVSとして取得するとよい。そして、処理回路61,61A,61Bは、当該車両加速度DVSを基に、車両加速度が発生していると判定した場合に姿勢変更処理を実行するとよい。
このように車両加速度の現在値を車両加速度DVSとして取得する場合、処理回路61,61A,61Bは、手動運転モードで車両10が走行している場合であっても、図6や図12に示したような乗り物酔い抑制処理を実行してもよい。ただし、手動運転モードで車両10が走行している場合、処理回路61,61A,61Bは、運転者用シート20A及び同乗者用シート20Bのうち同乗者用シート20Bのみの姿勢を変更することになる。これにより、乗り物酔い抑制装置は、手動運転モードで車両10が走行している場合、同乗者用シート20Bに着座する同乗者200Bが乗り物酔いすることを抑制できる。
・車両10が坂路を走行することもある。この場合、処理回路61,61A,61Bは、路面の勾配も考慮して仮想軸方向加速度Gd及び基準仮想軸方向加速度GdBを導出する。すなわち、処理回路61,61A,61Bは、鉛直方向に対する乗員200A,200Bの頭部210の傾斜角を頭部傾斜角θ0として取得し、頭部傾斜角θ0を上記関係式(F1)に代入することにより、路面の勾配も考慮した値を仮想軸方向加速度Gdとして導出できる。処理回路61,61A,61Bは、鉛直方向に対する乗員200A,200Bの頭部210の傾斜角を頭部傾斜角θ0として取得し、頭部傾斜角θ0を上記関係式(F2)に代入することにより、路面の勾配も考慮した値を基準仮想軸方向加速度GdBとして導出できる。
・規定角度θdが20°以上であって且つ40°以下の角度となる方向であれば、規定角度θdが30°とは異なる角度となる方向を、仮想軸方向Daとして設定してもよい。
・処理回路61,61A,61Bは、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。当該メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
<他の技術的思想>
次に、上記複数の実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)前記可動シートは、前記ヘッドレストの上部を中心に当該ヘッドレストの下部を前記車両の前方に変位させることによって前記傾斜角を変更できるように構成されていることが好ましい。
(付記2)着座する車両の乗員の姿勢を変更できるように可動するシートである可動シートと、
前記車両の加速度の大きさが大きいほど前記可動シートのシートバックの傾斜角が大きくなるように、前記可動シートの姿勢を変更させる変更部と、を備える、乗り物酔い抑制装置。
(付記3)前記車両は、当該車両の衝突時に前記乗員を保護する乗員保護装置を備え、
前記乗員保護装置は、シートベルトとエアバッグとを有し、
前記変更部は、前記乗員保護装置の有効範囲に収まる範囲で、前記シートバックの傾斜角を調整することが好ましい。
(付記4)前記車両の衝突の発生が予測されている場合に、衝突発生の予測時刻である衝突予測時刻を取得する予測時刻取得部と、
前記車両の衝突の発生が予測されている状況下で前記シートバックの傾斜角を変更する場合に、前記衝突予測時刻では当該傾斜角の変化速度が0(零)となるように、当該傾斜角の変化速度のプロファイルを作成するプロファイル作成部と、を備え、
前記変更部は、前記車両の衝突の発生が予測されている状況下で前記シートバックの傾斜角を変更する場合に、前記プロファイルに従って前記傾斜角が変わるように前記可動シートの姿勢を変更させることが好ましい。
(付記5)前記車両は、当該車両の衝突時に前記乗員を保護する乗員保護装置を備え、
前記乗員保護装置は、シートベルトとエアバッグとを有し、
前記車両の衝突の発生が予測されている場合に、前記シートバックの傾斜角の目標値である目標傾斜角を、前記乗員保護装置の有効範囲内の傾斜角に設定する目標傾斜角設定部を備え、
前記プロファイル作成部は、前記衝突予測時刻では、前記シートバックの傾斜角が前記目標傾斜角になっていること、及び、当該傾斜角の変化速度が0(零)となることの何れをも満たすように、前記プロファイルを作成することが好ましい。
(付記6)前記変更部は、前記車両の衝突の発生が予測されている状況下で、前記シートバックの傾斜角が前記乗員保護装置の有効範囲内の傾斜角である場合に、当該傾斜角を維持することが好ましい。
(付記7)着座する車両の乗員の姿勢を変更できるように可動するシートである可動シートと、
前記車両の加速度のうち、前記可動シートに着座する前記乗員の頭部の前方と当該頭部の上方との間に設定されている仮想軸の軸線方向の加速度成分と、重力加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分との和が大きいほど大きくなるように総合加速度成分を導出する加速度成分導出部と、
前記車両の加速度が発生していない場合の前記総合加速度成分である基準加速度成分の大きさから、前記加速度成分導出部によって導出された前記総合加速度成分の大きさが乖離することを抑制するように、前記可動シートの姿勢を変更させる姿勢変更処理を実行する変更部と、を備える、乗り物酔い抑制装置。
(付記8)前記加速度成分導出部は、前記車両の加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分と、重力加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分と、前記車両の上下加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分との和が大きいほど大きくなるように前記総合加速度成分を導出することが好ましい。
(付記9)前記可動シートの姿勢によって生じる前記乗員の頭部の慣性力のうちの前記仮想軸の軸線方向の慣性力成分を、前記可動シートの角加速度に基づいて導出する慣性力成分導出部を備え、
前記加速度成分導出部は、前記車両の加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分と、重力加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分と、前記慣性力成分との和が大きいほど大きくなるように前記総合加速度成分を導出することが好ましい。
なお、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」又は「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」又は「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
10…車両
20A,20B…シート(可動シート)
21…座部
22…シートバック
23,123,223…ヘッドレスト
25…シート制御装置
27…シートバック用アクチュエータ
28…ヘッドレスト用アクチュエータ(アクチュエータの一例)
31…撮像装置(姿勢検出装置の一例)
33,34…着座センサ(姿勢検出装置の一例)
41…ディスプレイ(視線誘導装置の一例を構成)
43…生成装置(視線誘導装置の一例を構成)
47…発光制御装置(視線誘導装置の一例を構成)
50…視界遮断装置
51…ガラス
53…遮断制御装置
100,100A,100B…乗り物酔い抑制装置
150…乗員保護装置
151…シートベルト
152…エアバッグ
200A,200B…乗員
210…頭部
M11…加速度取得部
M13,M13A,M13B…加速度成分導出部
M17,M17A,M17B…変更部
M21…慣性力成分導出部
M31…予測時刻取得部
M33…目標傾斜角設定部
M35…プロファイル作成部

Claims (5)

  1. 着座する車両の乗員の姿勢を変更できるように可動するシートである可動シートと、
    前記車両の加速度のうち、前記可動シートに着座する前記乗員の頭部の前方と当該頭部の上方との間に設定されている仮想軸の軸線方向の加速度成分と、重力加速度のうちの前記仮想軸の軸線方向の加速度成分との和である総合加速度成分を導出する加速度成分導出部と、
    前記車両の加速度が発生していない場合の前記総合加速度成分である基準加速度成分の大きさから、前記加速度成分導出部によって導出された前記総合加速度成分の大きさが乖離することを抑制するように、前記可動シートの姿勢を変更させる姿勢変更処理を実行する変更部と、を備える
    乗り物酔い抑制装置。
  2. 前記可動シートは、シートバックと、前記シートバックに対して回動可能な状態で支持されているヘッドレストと、前記ヘッドレストの前記シートバックに対する傾斜角を可変させるアクチュエータと、を備えており、
    前記変更部は、前記姿勢変更処理において、前記アクチュエータを作動させて前記傾斜角を変更することにより、前記可動シートの姿勢を変更させる
    請求項1に記載の乗り物酔い抑制装置。
  3. 前記可動シートに着座する前記乗員の視線を誘導する視線誘導装置を備え、
    前記変更部は、前記姿勢変更処理によって前記可動シートの姿勢を変更させる場合に、当該可動シートの姿勢の変更に応じて前記乗員の視線を前記車両の上下方向に誘導することを前記視線誘導装置に指示する
    請求項1又は請求項2に記載の乗り物酔い抑制装置。
  4. 前記可動シートに着座する前記乗員が車外の景色を見ることを遮る視界遮断装置を備え、
    前記変更部は、前記姿勢変更処理によって前記可動シートの姿勢を変更させる場合に、前記乗員が車外の景色を見ることを遮ることを前記視界遮断装置に指示する
    請求項1又は請求項2に記載の乗り物酔い抑制装置。
  5. 前記可動シートに着座する前記乗員の姿勢を検出する姿勢検出装置を備え、
    前記変更部は、前記姿勢検出装置によって検出された前記乗員の姿勢に基づいて前記姿勢変更処理を実行する
    請求項1又は請求項2に記載の乗り物酔い抑制装置。
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