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JP2024141582A - 樹脂組成物及び流動性改善方法 - Google Patents

樹脂組成物及び流動性改善方法 Download PDF

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JP2024141582A
JP2024141582A JP2023053314A JP2023053314A JP2024141582A JP 2024141582 A JP2024141582 A JP 2024141582A JP 2023053314 A JP2023053314 A JP 2023053314A JP 2023053314 A JP2023053314 A JP 2023053314A JP 2024141582 A JP2024141582 A JP 2024141582A
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JP2023053314A
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祐輝 大内
Yuki Ouchi
彩乃 石田
Ayano Ishida
智也 長谷川
Tomoya Hasegawa
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Osaka Gas Chemicals Co Ltd
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Osaka Gas Chemicals Co Ltd
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Abstract

【課題】流動性に優れたポリアミド系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】組成物は、下記式(1A)のアミック酸化合物または(1A)が二価の基で結合された化合物と、ポリアミド系樹脂とを含む。
Figure 2024141582000020

{式中、Zは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示し、R1a及びR2aのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3c)-R3a](式中、R3aは、炭化水素基を示し、R3cは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示し、R1b及びR2bのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3d)-R3b](式中、R3bは、炭化水素基を示し、R3dは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示す}
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド系樹脂組成物と、その流動性の改善方法に関する。
アミド基とカルボキシル基とを有するアミック酸、特にポリアミック酸(ポリアミド酸)は、ポリイミドの前駆体としてよく知られており、通常、テトラカルボン酸二水和物とジアミンとを重合させることにより得られる高分子である。
高分子の前記ポリアミック酸に対し、比較的低分子のアミック酸化合物は、その官能基の性質などの点から、種々の用途への展開が検討されている。
非特許文献1には、無水コハク酸などのコハク酸誘導体(SAD)と第一級アミン(R-NH)とを含む二成分ゲル化剤(two-component gelators)について記載されている。非特許文献1では、アルキレンジアミンの両末端のアミノ基に対して、無水コハク酸の酸無水物基を付加反応させ、両末端にカルボキシル基を有する化合物を得ている。非特許文献1には、芳香族性の溶媒中、この二成分ゲル化剤を、脂肪酸に添加すると従来のゲル(温度の低下に伴って形成されるゲル)が形成され、脂肪酸の代わりにジカルボン酸に添加すると、温度応答性の可逆的なゲル(Heat-set gel)が形成することが記載されている。
Soft Matter, (2015),11 (32), 6386-6392
しかし、非特許文献1には、この二成分ゲル化剤を、熱可塑性樹脂に添加して、その作用や効果を検証することについては何ら開示されておらず、特に、ポリアミド系樹脂の性質(とりわけ、溶融流動性)を改善するための添加剤として利用することについては知られていない。
従って、本発明の目的は、流動性に優れたポリアミド系樹脂組成物、流動性改善剤及び流動性を改善する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、流動性と機械的特性とを高いレベルで両立可能なポリアミド系樹脂組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ポリアミド系樹脂の流動性改善剤、及びポリアミド系樹脂の流動性を改善する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の化学構造を有するアミック酸化合物をポリアミド系樹脂に添加すると、流動性を大きく向上できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、[1]酸無水物基(環状の酸無水物基)1モルに対してアミノ基1モルが開環付加した単位を有するアミック酸化合物と、ポリアミド系樹脂とを含む。
前記態様[1]において、[2]前記アミック酸化合物は、下記式(1A)及び/又は下記式(1B)で表される化合物であってもよい。
Figure 2024141582000001
{式中、Zは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示し、R1a及びR2aのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3c)-R3a](式中、R3aは、炭化水素基を示し、R3cは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示し、R1b及びR2bのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3d)-R3b](式中、R3bは、炭化水素基を示し、R3dは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示す}。
Figure 2024141582000002
[式中、Z2a及びZ2bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示し、Xは、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、スルフィド結合又はスルフィニル基を示し、R1a、R1b、R2a及びR2bはそれぞれ前記式(1A)と同じ]。
本発明の態様[3]として、前記態様[2]の前記式(1A)において、Zは、C6-12アレーン環であってもよく、R3a及びR3bは、それぞれ独立してC6-10アリール基であってもよく、R3c及びR3dは水素原子であってもよい。
また、前記態様[2]の前記式(1B)において、Z2a及びZ2bは、それぞれ独立してC6-12アレーン環であってもよく、R3a及びR3bは、それぞれ独立してC6-10アリール基であってもよく、R3c及びR3dは水素原子であってもよく、Xは、カルボニル基又はエーテル結合であってもよい。
前記態様[1]において、[4]前記アミック酸化合物は、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
Figure 2024141582000003
(式中、Xは、二価の炭化水素基を示し、R4a、R4b、R5a及びR5bは、それぞれ独立して水素原子若しくは置換基を示すか、R4aとR5a及び/又はR4bとR5bが、互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに形成する置換基を有していてもよい炭化水素環を示す)。
前記態様[4]の前記式(2)において、[5]Xは、C4-12アルキレン基であってもよい。
また、前記態様[4]の前記式(2)において、[6]Xは多環式C10-26アリーレン基であってもよく、R4aとR5a及び/又はR4bとR5bが互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともにC6-10アレーン環を形成してもよい。
前記態様[1]~[6]のいずれかの樹脂組成物において、[7]前記アミック酸化合物の分子量は、100~1000であってもよい。前記態様[1]~[7]のいずれかの樹脂組成物において、[8]前記ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂及び/又は脂環族ポリアミド樹脂であってもよい。
前記態様[1]~[8]のいずれかの樹脂組成物において、[9]前記アミック酸化合物と、前記ポリアミド系樹脂との質量割合は、前者/後者=0.1/99.9~15/85(例えば、前者/後者=0.1/99.9~10/90)程度であってもよい。
前記態様[1]~[9]のいずれかの樹脂組成物は、[10]さらに、繊維状補強材を含んでいてもよく、前記アミック酸化合物の割合は、前記繊維状補強材100質量部に対して0.5~100質量部程度であってもよい。
本発明には、[11]前記態様[1]~[7]のいずれかに記載のアミック酸化合物及び/又は前記アミック酸化合物に対応するイミド化合物を含む成形体(又は溶融混練物、ペレット)も含まれる。
また、本発明は、[12]前記態様[1]~[7]のいずれかに記載のアミック酸化合物をポリアミド系樹脂に添加して、ポリアミド系樹脂の流動性を向上する方法、及び[13]前記態様[1]~[7]のいずれかのアミック酸化合物を含む流動性改善剤を包含する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル基」で示し、炭素数が6~10のアリール基は「C6-10アリール基」で示す。
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「アミック酸」、「アミック酸化合物」とは、酸無水物基(環状の酸無水物基)に対してアミノ基が開環付加した単位を有する化合物であってもよい。すなわち、酸無水物基を有する環状の酸無水物が、アミン(アミノ基)と反応して開環し、カルボキシル基(遊離のカルボキシル基)とアミド基[-C(=O)-NH-]とが、隣接する2つの原子(特に炭素原子)にそれぞれ結合している単位又は構造(アミック酸単位又はアミック酸構造)を有する化合物を意味する。
本発明の樹脂組成物は、特定の化学構造を有するアミック酸化合物と、ポリアミド系樹脂とを含むため、流動性(特に、溶融流動性)に優れている。本発明では、前記アミック酸化合物を用いるため、曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃強さなどの機械的強度を低下させることなく、高い流動性を示し、流動性と機械的強度とを高いレベルで両立可能なポリアミド系樹脂組成物を調製できる。
図1は、合成例1で得られたTetAni-AmのH-NMRスペクトルである。 図2は、合成例2で得られたDASc-AmのH-NMRスペクトルである。 図3は、合成例3で得られたPASc-AmのH-NMRスペクトルである。 図4は、合成例4で得られたBAF-AmのH-NMRスペクトルである。
[アミック酸化合物]
本発明のアミック酸化合物又はアミック酸は、酸無水物基、特に環状の酸無水物基1モルに対してアミノ基1モルが開環付加した単位(アミック酸単位)を有する。
前記アミック酸化合物は、1分子中に、少なくとも1つ、好ましくは複数の下記式(1)で表される単位を有する。
Figure 2024141582000004
(式中、R1a及びR2aは前記式(1A)と同じ)。
(酸無水物)
前記酸無水物基、特に環状の酸無水物基を有する化合物、すなわち、酸無水物は、通常、隣接する2つのカルボキシル基が脱水縮合したカルボン酸無水物を示す。
本発明では、前記酸無水物は、環状の酸無水物基を有する化合物(環状の酸無水物)であるのが好ましい。このような環状の酸無水物は、2分子のモノカルボン酸で形成される酸無水物であってもよいが、通常、1分子中に複数のカルボキシル基を有するジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸などのポリカルボン酸であって、かつ少なくとも2つのカルボキシル基が互いに隣接しているポリカルボン酸で形成される酸無水物であるのが好ましい。
前記酸無水物は、1分子中に少なくとも1つの酸無水物基を有する化合物である。1分子中に1つの酸無水物基(特に環状の酸無水物基)を有する化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸無水物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物などの脂環族ジカルボン酸無水物;無水フタル酸などの芳香族ジカルボン酸無水物;シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物などの脂環族トリカルボン酸無水物;ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸無水物(トリメリット酸無水物)などの芳香族トリカルボン酸無水物などが挙げられる。
1分子中に複数の酸無水物基(特に環状の酸無水物基)を有する化合物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物などの脂環族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
前記酸無水物は、単独で又は二種以上組み合わせても用いてもよい。これらの酸無水物のうち、無水コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸無水物、無水フタル酸などの芳香族ジカルボン酸無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
(アミン)
本発明では、アミック酸化合物は、酸無水物基を有する化合物(酸無水物)に対してアミノ基を有する化合物(アミン)が開環付加したアミック酸単位を有する。前記アミンは、アミック酸単位を形成可能であれば特に制限されず、第二級アミンであってもよいが、通常、第一級アミンである。
なお、1分子中に1つの酸無水物基を有する化合物に対しては、少なくとも1つのアミノ基、特に、複数のアミノ基を有する化合物(ジアミン、トリアミンなどのポリアミン、特にジアミン)が開環付加し、一方、1分子中に複数(特に2つ)の酸無水物基を有する化合物(特に酸二無水物)に対しては、1つのアミノ基を有する化合物(モノアミン)が開環付加して、アミック酸単位を形成する。
1分子中に1つのアミノ基を有する化合物(モノアミン)には、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミンなどが含まれる。
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状C1-20アルキルアミンなどが挙げられる。
脂環族アミンとしては、例えば、アミノシクロアルカン(シクロアルキルアミン)、具体的には、アミノシクロヘキサンなどのアミノC5-10シクロアルカンなど;アミノアルキルシクロアルカン、具体的には、ベンジルアミンなどの(アミノC1-6アルキル)C5-10シクロアルカン;アルキルシクロアルキルアミン、具体的には、1-アミノ-2-メチルシクロヘキサン(2-メチルシクロヘキシルアミン)、1-アミノ-3-エチルシクロヘキサンなどのモノ乃至トリ(C1-6アルキル)-C5-10シクロアルキルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、単環式芳香族アミン、多環式芳香族アミンに大別できる。
単環式芳香族アミンとしては、例えば、アミノベンゼン(アニリン);2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリンなどのアミノC1-4アルキル-ベンゼン;2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリンなどのジ乃至トリ(C1-4アルキル)アニリンなどが挙げられる。
多環式芳香族アミンとしては、例えば、縮合多環式芳香族アミン、具体的には、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミンなどのナフチルアミン;1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセンなどのアミノアントラセン(アントラセンアミン);3-アミノフェナントレン、4-アミノフェナントレンなどのアミノフェナントレン;2-アミノフルオレンなどが挙げられる。
1分子中に複数のアミノ基を有する化合物(ポリアミン)は、ビス(2-アミノエチル)アミンなどのトリアミン;トリス(2-アミノエチル)アミンなどのテトラアミンなどであってもよいが、ジアミンであることが多い。
ジアミンには、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミンが含まれる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン(1,5-ペンタメチレンジアミンなど)、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン(1,10-デカンジアミンなど)、ドデカメチレンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-20アルキレンジアミン(特に、直鎖状又は分岐鎖状C2-16アルキレンジアミン)などが挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、例えば、ジアミノシクロアルカン、具体的には、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノC5-10シクロアルカンなど;ビス(アミノアルキル)シクロアルカン、具体的には、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのビス(アミノC1-4アルキル)C5-10シクロアルカンなど;ビス(アミノシクロヘキシル)アルカン、具体的には、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロヘキシル)C1-6アルカン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノ-モノないしトリC1-6アルキル-C5-10シクロアルキル)C1-6アルカンなどが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、単環式芳香族ジアミン、多環式芳香族ジアミンに大別できる。
単環式芳香族ジアミンとしては、例えば、1,2-ジアミノベンゼン(о-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン(m-フェニレンジアミン)、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)などのジアミノベンゼン;4-メチル-о-フェニレンジアミンなどのC1-4アルキル-フェニレンジアミン;m-キシリレンジアミンなどのビス(アミノC1-4アルキル)ベンゼンなどが挙げられる。
多環式芳香族ジアミンとしては、例えば、縮合多環式芳香族ジアミン、具体的には、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,3-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミンなどのナフタレンジアミン;2,3-アントラセンジアミン、9,10-アントラセンジアミンなどのアントラセンジアミン;フェナントレンジアミン;2,7-ジアミノフルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C1-4アルキルアミノフェニル)フルオレンなどの多環式C10-24アレーン-ジアミンなど;2,2’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニル(ベンジジン)などのビC6-10アリール-ジアミンなど;ジアミノジアリールアルカン、具体的には、4,4’-ジアミノフェニルメタンなどのジアミノジC6-10アリールC1-6アルカンなど;ジアリールケトンジアミン、具体的には、4.4’-ジアミノベンゾフェノンなどのビス(アミノC6-10アリール)メタノンなど;ジアミノジアリールエーテル、具体的には、4.4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジC6-10アリール)エーテルなど;ビス(アミノアリール)スルホン、具体的には、4.4’-ジアミノジフェニルスルホンなどのビス(アミノC6-10アリール)スルホンなどが挙げられる。
これらのアミンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのアミンのうち、芳香族アミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンなどが好適に使用され、さらに好ましくは、アミノベンゼン(アニリン)などの単環式芳香族アミン;ナフチルアミン(例えば、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミンなど)などの縮合多環式C10-16芳香族アミン;ペンタメチレンジアミン(1,5-ペンタメチレンジアミンなど)、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン(1,10-デカンジアミンなど)などの直鎖状又は分岐鎖状C2-16アルキレンジアミン;2,7-ジアミノフルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどの多環式C10-24アレーン-ジアミンなどが好ましい。
本発明では、酸無水物基、特に環状の酸無水物基1モルに対してアミノ基1モルが開環付加した単位(アミック酸単位)を少なくとも1つ形成できる限り、前記酸無水物と前記アミンの組み合わせは特に限定されない。
また、前記アミック酸化合物は、前記アミック酸単位を1つ有する化合物であってもよく、耐熱性の観点からは、前記アミック酸単位を複数(2つ以上)有する化合物であるのが好ましい。
例えば、前記アミック酸化合物が、環状の酸無水物とポリアミン(トリアミンなど)との組み合わせにおいて、酸無水物基1モルに対してアミノ基1モルが開環付加したアミック酸単位を複数(特に3つ以上)有する化合物であってもよいが、アミック酸単位の数が増えると、耐熱性は向上するものの、化合物が高分子量化し、樹脂組成物の流動性が低下する虞がある。そのため、流動性及び耐熱性を高いレベルでバランスよく両立するため、前記アミック酸化合物は、1分子中にアミック酸単位を1~2つ(特に2つ)有しているのが好ましい。
1分子中にアミック酸単位を2つ含むアミック酸化合物は、(a)環状の酸二無水物(1分子中に2つの酸無水物基を有する環状酸無水物)とモノアミンとが、酸無水物基1モルに対してアミノ基1モルの割合で開環付加したアミック酸化合物であってもよく、(b)環状の酸無水物(1分子中に1つの酸無水物基を有する環状酸無水物)とジアミンとが、酸無水物基1モルに対してアミノ基1モルの割合で開環付加したアミック酸化合物であってもよい。
前記アミック酸化合物(a)は、例えば、下記式(1A)及び/又は(1B)で表される化合物であってもよい。
Figure 2024141582000005
前記式(1A)において、Zは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示し、R1a及びR2aのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3c)-R3a](式中、R3aは、炭化水素基を示し、R3cは、水素原子又炭化水素基を示す)を示し、R1b及びR2bのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3d)-R3b](式中、R3bは、炭化水素基を示し、R3dは、水素原子又炭化水素基を示す)を示す。
Figure 2024141582000006
前記式(1B)において、Z2a及びZ2bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示し、Xは、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、スルフィド結合又はスルフィニル基を示し、R1a、R1b、R2a及びR2bはそれぞれ前記式(1A)と同じである。
前記式(1A)において、環Zで表される脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロアルカン環、シクロアルケン環、多環式シクロアルカン環、多環式シクロアルケン環などが挙げられる。
シクロアルカン環としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのC3-14シクロアルカンなどが挙げられる。シクロアルケン環としては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのC3-14シクロアルケンなどが挙げられる。
多環式シクロアルカン環としては、縮合多環式シクロアルカン環、具体的には、デカリン、ペルヒドロアントラセンなどのC5-18縮合多環式シクロアルカンなど;架橋環式シクロアルカン環、具体的には、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナン)などのC5-18架橋環式シクロアルカン環などが挙げられる。多環式シクロアルケン環としては、例えば、架橋環式シクロアルケン環、具体的には、ビシクロ[2.2.2]-2-オクテンなどのC5-18架橋環式シクロアルケン環などが挙げられる。
環Zで表される芳香族炭化水素環(アレーン環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられる。多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。縮合四環式アレーン環としては、例えば、ピレン環、ナフタセン環などの縮合四環式C16-18アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式C10-14アレーン環である。
環集合アレーン環としては、例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
好ましい環Zとしては、C6-14アレーン環が挙げられ、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特にベンゼン環である。
環Zとして表される脂肪族炭化水素環及び/又は芳香族炭化水素環は、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、例えば、シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;炭化水素基(例えば、基R4a、R4b、R5a及びR5bで表される炭化水素基として例示の炭化水素基など)などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素環及び/又は芳香族炭化水素環が有していてもよい置換基の数は、例えば、0~2、好ましくは0~1、特に0である。
前記式(1B)において、環Z2a及びZ2bは、前記式(1A)の環Zとして例示された置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環(アレーン環)が挙げられる。
好ましい環Z2a及びZ2bとしては、C6-14アレーン環が挙げられ、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特にベンゼン環である。
環Z2a及びZ2bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
環Z2a及びZ2bとして表される脂肪族炭化水素環及び/又は芳香族炭化水素環も、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、環Zが有していてもよい置換基として例示の置換基であってもよい。前記脂肪族炭化水素環及び/又は芳香族炭化水素環が有していてもよい置換基の数(1つの環あたりの置換基の数)は、例えば、0~2、好ましくは0~1、特に0である。
前記式(1A)又は(1B)において、R1a及びR2aは、一方がヒドロキシル基、他方が[-N(-R3c)-R3a](式中、R3aは、炭化水素基を示し、R3cは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示し、R1b及びR2bのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3d)-R3b](式中、R3bは、炭化水素基を示し、R3dは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示す。
すなわち、前記式(1A)で表される化合物は、下記式(1A-1)又は(1A-2)で表される化合物であってもよく、下記式(1A-1)及び(1A-2)で表される化合物の混合物(異性体)であってもよい。
Figure 2024141582000007
(式中、Z、R3a、R3b、R3c及びR3dはそれぞれ前記式(1A)と同じ)
また、前記式(1B)で表される化合物は、下記式(1B-1)又は(1B-2)で表される化合物であってもよく、下記式(1B-1)及び(1B-2)で表される化合物の混合物(異性体)であってもよい。
Figure 2024141582000008
(式中、Z2a、Z2b、R3a、R3b、R3c及びR3dはそれぞれ前記式(1B)と同じ)
前記式(1A)又は(1B)において、基R3a及びR3bで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(又はトリル基)、ジメチルフェニル基(又はキシリル基)などのモノ乃至トリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
好ましい基R3a及びR3bとしては、シクロアルキル基、アリール基などであり、特に、フェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基である。
基R3a及びR3bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
前記式(1A)又は(1B)において、基R3c及びR3dはそれぞれ、水素原子又炭化水素基を示す。アミック酸単位を形成する前記アミンが第一級アミンであると、基R3c及びR3dは水素原子であり、アミック酸単位を形成する前記アミンが第二級アミンであると、基R3c及びR3dは炭化水素基である。
基R3c及びR3dで表される炭化水素基としては、前記基R3a及びR3bで表される炭化水素基として例示の炭化水素基であってよい。好ましい基R3c及びR3dとしては、水素原子である。
基R3c及びR3dの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
前記式(1B)において、Xは、反応に不活性な非反応性置換基又は結合であってもよく、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基(基[-C(=O)-])、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、スルフィニル基(基[-S(=O)-])又はスルホニル基[基-S(=O)-]などが挙げられる。
で表される二価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、アリーレン基などが挙げられる。
アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、へキサメチレン基、デカメチレン基などのC1-12アルキレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基などのC5-10シクロアルキレン基などが挙げられる。シクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基などのC5-10シクロアルキリデン基などが挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などのC6-10アリーレン基などが挙げられる。
好ましいXは、カルボニル基(基[-C(=O)-])、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)又はスルフィニル基(基[-S(=O)-])であり、特に、カルボニル基又はエーテル結合である。
これらの前記式(1A)又は(1B)で表される化合物は、芳香環を少なくとも1つ(特に複数)含むと、耐熱性を向上でき、有利である。
前記式(1A)で表される代表的な化合物としては、例えば、(i)式(1A)において、Zが芳香族炭化水素環(特に、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環)であり、R3a及びR3bがアリール基(特に、フェニル基、ナフチル基などのC6-10アリール基)であり、R3c及びR3dが水素原子である化合物、具体的には、例えば、4,6-ビス(フェニルカルバモイル)ベンゼン-1,3-ジカルボン酸、4,6-ビス(1-ナフチルカルバモイル)ベンゼン-1,3-ジカルボン酸、4,6-ビス(2-ナフチルカルバモイル)ベンゼン-1,3-ジカルボン酸などのビス(C6-10アリールカルバモイル)C6-12アレーンジカルボン酸などが挙げられる。
前記式(1B)で表される代表的な化合物としては、例えば、(ii)式(1B)において、Z2a及びZ2bが芳香族炭化水素環(特に、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環)であり、R3a及びR3bがアリール基(特に、フェニル基、ナフチル基などのC6-10アリール基)であり、R3c及びR3dが水素原子であり、Xがカルボニル基である化合物、具体的には、例えば、ジ(3-カルボキシ-4-フェニルカルバモイルフェニル)ケトン、ジ(3-カルボキシ-4-ナフチルカルバモイルフェニル)ケトンなどのジ(3-カルボキシ-4-C6-10アリールカルバモイルフェニル)ケトンなど;(iii)式(1B)において、Z2a及びZ2bが芳香族炭化水素環(特に、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環)であり、R3a及びR3bがアリール基(特に、フェニル基、ナフチル基などのC6-10アリール基)であり、R3c及びR3dが水素原子であり、Xがエーテル結合(-O-)である化合物、具体的には、例えば、ジ(3-カルボキシ-4-フェニルカルバモイルフェニル)エーテル、ジ(3-カルボキシ-4-ナフチルカルバモイルフェニル)エーテルなどのジ(3-カルボキシ-4-C6-10アリールカルバモイルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
これらの前記式(1A)又は(1B)で表される化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの前記式(1A)又は(1B)で表される化合物のうち、耐熱性と機械特性とを高いレベルでバランスよく両立できる点から、前記式(1A)において、(i)Zが芳香族炭化水素環(特に、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-10アレーン環)であり、R3a及びR3bがアリール基(特に、フェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基)であり、R3c及びR3dが水素原子である化合物、具体的には、例えば、4,6-ビス(フェニルカルバモイル)ベンゼン-1,3-ジカルボン酸、4,6-ビス(2-ナフチルカルバモイル)ベンゼン-1,3-ジカルボン酸などのビス(C6-10アリールカルバモイル)C6-12アレーンジカルボン酸などが好ましい。
前記アミック酸化合物(b)は、例えば、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
Figure 2024141582000009
(式中、Xは、二価の炭化水素基を示し、R4a、R4b、R5a及びR5bは、それぞれ独立して水素原子若しくは置換基を示すか、R4aとR5a及び/又はR4bとR5bが、互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに形成する置換基を有していてもよい炭化水素環を示す)。
前記式(2)において、Xで表される置換基は、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、二価の炭化水素基であるのが好ましい。
二価の炭化水素基は、前記式(1B)のXとして例示された炭化水素基であってもよく、さらに、9-フルオレニリデン基(9H-フルオレン-9,9-ジイル基)、(9-フルオレニリデン)ビス(フェニレン)基などの9-フルオレニリデンビス(C6-10アリーレン)基(9H-フルオレンの9位に置換した2つのC6-10アリール基からそれぞれ水素原子を1つ除いた二価の基)などの多環式C10-24アリーレン基なども好適に使用できる。
好ましい基Xは、C1-12アルキレン基(例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、へキサメチレン基、デカメチレン基など)などのアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基、多環式C10-24アリーレン基(例えば、9-フルオレニリデン基、(9-フルオレニリデン)ビス(4,1-フェニレン)基などの9-フルオレニリデンビス(C6-10アリーレン)基など)などのC6-26アリーレン基であり、さらに好ましくはC4-12アルキレン基、多環式C10-26アリーレン基であり、より好ましくは、C4-12アルキレン基である。
前記式(2)において、R4a、R4b、R5a及びR5bで表される置換基は、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、例えば、シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;炭化水素基などが挙げられる。
基R4a、R4b、R5a及びR5bで表される炭化水素基は、前記式(1A)又は(1B)の基R3a及びR3bとして例示された炭化水素基であってもよい。
好ましい基R4a、R4b、R5a及びR5bとしては、水素原子;アルキル基などの炭化水素基であり、特に、水素原子;メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。
また、R4aとR5a及びR4bとR5bのうち、いずれか一方が互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよい炭化水素環を形成してもよいが、R4aとR5a及びR4bとR5bの両方が互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよい炭化水素環を形成するのが好ましい。
4aとR5a及び/又はR4bとR5bが、互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに形成してもよい炭化水素環は、例えば5~7員環であることが多く、好ましくは5又は6員環であり、さらに好ましくは6員環である。また、前記炭化水素環は、非芳香族性であってもよいが、耐熱性の観点から芳香族性であるのが好ましい。
具体的には、前記炭化水素環は、前記式(1A)の環Zとして例示された脂肪族炭化水素環又は芳香族炭化水素環であってもよい。好ましい炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6-12アレーン環などが挙げられる。
なお、R4aとR5a及び/又はR4bとR5bが、互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに形成してもよい炭化水素環も、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、環Zが有していてもよい置換基として例示の置換基(炭化水素基などの反応に不活性な非反応性置換基など)であってもよい。前記炭化水素環が有していてもよい置換基の数(1つの環あたりの置換基の数)は、例えば、0~2、好ましくは0~1、特に0である。
基R4a、R4b、R5a及びR5bの種類は、互いに異なっていてもよいが、R4a及びR4bが同一であり、R5a及びR5bが同一であるのが好ましい。また、隣接する2つの炭素原子とともに互いに結合する炭化水素環について、R4a及びR5aを含む炭化水素環と、R4bとR5bを含む炭化水素環とは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
これらの前記式(2)で表される化合物のうち、芳香環を少なくとも1つ(特に複数)含むと、耐熱性を向上でき、一方、鎖状の炭化水素基を含むと、樹脂組成物の流動性の観点から有利である。そのため、樹脂組成物の用途や目的に応じて、基Xや、基R4a、R4b、R5a及びR5bの種類を適宜選択してもよい。
前記式(2)で表される代表的な化合物としては、例えば、式(2)において、(i)Xがアルキレン基(特にC4-12アルキレン基)、R4a、R4b、R5a及びR5bが水素原子である化合物、具体的には、例えば、N,N’-ビス(スクシニル)-1,5-ジアミノペンタン、N,N’-ビス(スクシニル)-1,10-ジアミノデカンなどのN,N’-ビス(スクシニル)-ジアミノC4-12アルカンなど;(ii)Xがアリーレン基(特に、9-フルオレニリデンビス(C6-10アリーレン)基などの多環式C10-26アリーレン基)、R4aとR5a及びR4bとR5bとが互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに芳香族炭化水素環(特に、C6-10アレーン環)を形成している化合物、具体的には、(9,9-ビス[4-(N-フタリルアミノ)フェニル]フルオレン)、(9,9-ビス[4-(N-フタリルアミノ)ナフチル]フルオレン)などの(9,9-ビス[N-フタリルアミノC6-10アリール]フルオレン)などが挙げられる。
これらの前記式(2)で表される化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの前記式(2)で表される化合物のうち、耐熱性と機械特性とを高いレベルでバランスよく両立できる点から、前記式(2)において、(i)Xがアルキレン基(特にC4-12アルキレン基)、R4a、R4b、R5a及びR5bが水素原子である化合物、具体的には、N,N’-ビス(スクシニル)-1,5-ジアミノペンタン、N,N’-ビス(スクシニル)-1,10-ジアミノデカンなどのN,N’-ビス(スクシニル)-ジアミノC4-12アルカンなどが好ましい。
このようなアミック酸化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
前記アミック酸化合物の分子量は、例えば、70~1500程度であってもよく、好ましくは85~1200、さらに好ましくは100~1000、より好ましくは150~900、特に200~800である。アミック酸化合物の分子量が大きすぎると、樹脂組成物の流動性が低下する虞があり、分子量が小さすぎると、耐熱性や機械的特性を低下させる虞がある。
[アミック酸化合物の製造方法]
前記アミック酸化合物は、慣用の方法で製造でき、前記酸無水物と前記アミンとを反応させて製造できる。
前記酸無水物と前記アミンとの割合(モル比)は、酸無水物基とアミノ基とが、1:1の関係で反応する割合であるのが好ましい。すなわち、酸無水物基とアミノ基との反応において、環状の酸無水物にアミンが開環付加し、遊離のカルボキシル基が残存する割合であるのが好ましい。
前記酸無水物と前記アミンとの割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.2~1/5程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/0.3~1/3、1/0.4~1/2.5である。
例えば、前記アミック酸化合物(a)を製造する場合、前記酸無水物(特に1分子中に2つの環状の酸無水物基を有する化合物又は酸二無水物)と前記アミン(特にモノアミン)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/1~1/5程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/1.2~1/4.5、1/1.3~1/4、1/1.5~1/3である。前記アミック酸化合物(b)を製造する場合、前記酸無水物(特に1分子中に1つの環状の酸無水物基を有する化合物)と前記アミン(特にジアミン)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.2~1/1程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/0.3~1/0.9、1/0.35~1/0.8、1/0.4~1/0.7である。
反応は、反応に不活性な溶媒の非存在下又は存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、環状エーテル、鎖状エーテルなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類;脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの炭化水素類などが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、グリコールエーテル類などが挙げられる。前記グリコールエーテル類としては、例えば、メチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメトキシエタンなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ドデカンなどが挙げられる。脂環族炭化水素類としては、シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、DMFなどのアミド類、DMSOなどのスルホキシド類が好ましい。溶媒の使用量は反応の進行を妨げない限り特に制限されず、前記酸無水物及び前記アミンの総量100gに対して、例えば10~800mL程度であってもよく、好ましくは50~500mLである。
反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば10~70℃、好ましくは15~50℃、さらに好ましくは20~30℃程度である。反応時間は特に制限されず、例えば0.5~48時間程度であってもよい。
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、中和、洗浄、抽出、ろ過、デカンテーション、濃縮、脱水、乾燥、晶析、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
[ポリアミド系樹脂]
樹脂組成物が含むポリアミド系樹脂(PA)としては、慣用のポリアミド系樹脂が使用でき、例えば、脂肪族モノマー成分、脂環族モノマー成分及び/又は芳香族モノマー成分などで形成してもよい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ポリアミド系樹脂を形成するジカルボン酸などのカルボキシル基を有するモノマー成分は、アミド形成性誘導体、例えば、酸クロリドなどの酸ハライド、酸無水物などであってもよい。
脂肪族モノマー成分としては、例えば、脂肪族ジアミン成分、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族アミノカルボン酸成分、ラクタム成分などが挙げられる。
脂肪族ジアミン成分としては、例えば、前記アミンの項で例示された脂肪族ジアミンであってもよく、具体的には、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-20アルキレンジアミンなどが挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C4-16アルキレンジアミン、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6-12アルキレンジアミンである。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸(直鎖状又は分岐鎖状アルカンジカルボン酸)、不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
直鎖状又は分岐鎖状アルカンジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸などの直鎖状又は分岐鎖状C1-20アルカン-ジカルボン酸などが挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-16アルカン-ジカルボン酸、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C4-12アルカン-ジカルボン酸である。
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族アミノカルボン酸成分としては、例えば、6-アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などのアミノC2-20アルキル-カルボン酸などが挙げられ、好ましくはアミノC3-16アルキル-カルボン酸、さらに好ましくはアミノC5-11アルキル-カルボン酸である。
ラクタム成分としては、前記脂肪族アミノカルボン酸成分に対応するラクタムであってもよく、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどの4~13員環のラクタムなどが挙げられ、好ましくは7~13員環のラクタムが挙げられる。
脂環族モノマー成分は、脂環骨格(又は脂肪族炭化水素環骨格)を有していればよく、例えば、脂環族ジアミン成分、脂環族ジカルボン酸成分、脂環族アミノカルボン酸成分などが挙げられる。
脂環族ジアミン成分としては、前記アミンの項の脂環族ジアミンとして例示された脂環族ジアミンであってもよく、例えば、ジアミノシクロアルカン、ビス(アミノアルキル)シクロアルカン、ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンなどが挙げられる。
ジアミノシクロアルカンとしては、例えば、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノC5-10シクロアルカンなどが挙げられる。
ビス(アミノアルキル)シクロアルカンとしては、例えば、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのビス(アミノC1-4アルキル)C5-10シクロアルカンなどが挙げられる。
ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンとしては、例えば、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロヘキシル)C1-6アルカン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノ-モノないしトリC1-6アルキル-C5-10シクロアルキル)C1-6アルカンなどが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸、架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、シクロアルケンジカルボン酸、架橋環式シクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
シクロアルカンジカルボン酸としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
架橋環式シクロアルカンジカルボン酸としては、例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸などが挙げられる。
シクロアルケンジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
架橋環式シクロアルケンジカルボン酸としては、例えば、ノルボルネンジカルボン酸などのビ又はトリシクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
脂環族アミノカルボン酸成分としては、例えば、アミノシクロアルカンカルボン酸などが挙げられ、具体的には、アミノシクロヘキサンカルボン酸などのアミノC5-10シクロアルカン-カルボン酸などが挙げられる。
芳香族モノマー成分は、芳香環骨格を有していればよく、例えば、芳香族(又は芳香脂肪族)ジアミン成分、芳香族(又は芳香脂肪族)ジカルボン酸成分、芳香族(又は芳香脂肪族)アミノカルボン酸成分などが例示できる。
芳香族ジアミン成分は、例えば、アミンの項の芳香族ジアミンとして例示されたジアミンであってもよく、具体的には、ジアミノアレーン、ビス(アミノアルキル)アレーンなどが挙げられる。ジアミノアレーンとしては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミンなどのジアミノC6-14アレーンなどが挙げられ、ビス(アミノアルキル)アレーンとしては、例えば、m-キシリレンジアミンなどのビス(アミノC1-4アルキル)アレーンなどが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、ベンゼンジカルボン酸、アルキルベンゼンジカルボン酸、多環式アレーンジカルボン酸、ジアリールアルカンジカルボン酸、ジアリールケトンジカルボン酸、ジアリールエーテルジカルボン酸、ジアリールスルフィドジカルボン酸、ジアリールスルホンジカルボン酸などが挙げられる。
ベンゼンジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。アルキルベンゼンジカルボン酸としては、例えば、4-メチルイソフタル酸、5-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
多環式アレーンジカルボン酸としては、例えば、縮合多環式アレーンジカルボン酸、環集合アレーンジカルボン酸などが挙げられる。
縮合多環式アレーンジカルボン酸としては、例えば、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸;アントラセンジカルボン酸;フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸が挙げられ、好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸が挙げられる。
環集合アレーンジカルボン酸としては、例えば、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのビC6-10アレーン-ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリールアルカンジカルボン酸としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリールケトンジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリールエーテルジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)エーテル-ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリールスルフィドジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルスルフィドジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルフィド-ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリールスルホンジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルホン-ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族アミノカルボン酸成分としては、例えば、アミノアレーンカルボン酸などが挙げられる。アミノアレーンカルボン酸としては、例えば、アミノ安息香酸などのアミノC6-12アレーンカルボン酸などが挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、これらのモノマー成分を単独で又は二種以上組み合わせて形成でき、例えば、ジアミン成分及びジカルボン酸成分の重合、アミノカルボン酸成分及び/又はラクタム成分の重合、ジアミン成分及びジカルボン酸成分とアミノカルボン酸成分及び/又はラクタム成分との重合などにより形成してもよい。また、ポリアミド系樹脂は、単一のモノマー成分(単一のジアミン成分及びジカルボン酸成分、単一のアミノカルボン酸成分、又は単一のラクタム成分)で形成されたホモポリアミドであってもよく、複数のモノマー成分が共重合したコポリアミドであってもよい。代表的なポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。
脂肪族ポリアミド樹脂は、脂肪族モノマー成分に由来する脂肪族モノマー単位で形成されていればよく、例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸成分とのホモポリアミド;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族アミノカルボン酸成分及び/又は対応するラクタム成分のホモポリアミド;コポリアミド6/66、コポリアミド6/11、コポリアミド66/12などの複数の脂肪族モノマー成分の共重合体(コポリアミド)などが挙げられる。
脂環族ポリアミド樹脂は、脂環族モノマー成分に由来する脂環族モノマー単位を有していればよく、脂肪族モノマー成分と脂環族モノマー成分とを組み合わせて形成されていてもよい。代表的な脂環族ポリアミド樹脂は、例えば、ジアミノメチルシクロヘキサンとアジピン酸との重合体などの脂環族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸成分とのホモポリアミドなどが挙げられる。
芳香族ポリアミド樹脂は、少なくとも芳香族モノマー成分に由来する芳香族モノマー単位を有していればよい。前記芳香族ポリアミド樹脂は、全芳香族ポリアミド系樹脂、すなわち、芳香族モノマー成分で形成され、脂肪族又は脂環族モノマー成分を含まないポリアミド樹脂(例えば、m-フェニレンジアミンとイソフタル酸との重合体、p-フェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体などの芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分とのホモポリアミドなど)であってもよいが、芳香族モノマー成分と、脂肪族又は脂環族モノマー成分とから形成される半芳香族ポリアミド樹脂である場合が多い。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミドMXD6(m-キシリレンジアミンとアジピン酸との重合体)などの芳香族(又は芳香脂肪族)ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミド;ポリアミド6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド9T(ノナメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド10T(デカメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド12T(ドデカメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミドM5T(2-メチルペンタメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミドM8T(2-メチルオクタメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド6I(ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との重合体)、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体などの脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのホモポリアミド;コポリアミド6T/66、コポリアミド6T/M5T、コポリアミド6T/6I、コポリアミド6T/6I/6、コポリアミド6T/6I/66などの脂肪族ジアミン成分及び芳香族ジカルボン酸成分を少なくとも含む共重合体などが挙げられる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、コポリアミドにおける「/」は、前後に記載されたモノマー(単位)を共重合成分(共重合単位)としてコポリアミドが形成されることを意味する。すなわち、コポリアミド6/66は、ポリアミド6を形成する単位と、ポリアミド66を形成する単位とを有する共重合体であることを意味する。
ポリアミド樹脂は、N-アルコキシメチル基を有するポリアミド、不飽和高級脂肪酸の二量体であるダイマー酸を重合成分とする重合脂肪酸系ポリアミド樹脂などであってもよい。また、ポリアミド樹脂は、結晶性又は非晶性であってもよく、透明性ポリアミド樹脂(非晶性透明ポリアミド樹脂)であってもよく、成形品の機械的特性の観点から、結晶性樹脂が好ましい。
これらのポリアミド系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらのポリアミド系樹脂のうち、脂肪族ポリアミド樹脂及び/又は脂環族ポリアミド樹脂、特に脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。また、ポリアミド系樹脂は、炭素数が4~12程度、好ましくは6~11、さらに好ましくは6~9、特に少なくとも6のアルキレン基を有する脂肪族モノマー成分を含むモノマーで形成されるのが好ましく、特に、前記炭素数のアルキレン基を有する脂肪族モノマー成分で形成された脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。代表的な好ましい脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸成分とのホモポリアミド;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族アミノカルボン酸成分及び/又は対応するラクタム成分のホモポリアミドである。
ポリアミド系樹脂の数平均分子量Mnは、例えば7000~1000000、好ましい範囲としては、以下段階的に、10000~750000、20000~500000、30000~500000、50000~500000である。分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)などの慣用の方法を利用して測定でき、ポリスチレン換算の分子量として評価してもよい。
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、前記アミック酸化合物及び前記ポリアミド系樹脂を少なくとも含んでいればよい。ポリアミド系樹脂に対して、添加剤として、前記アミック酸化合物(例えば、前記式(1A)、(1B)及び/又は(2)で表されるアミック酸化合物)を添加して樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物)を形成することにより、樹脂組成物の流動性、特に溶融流動性をより有効に向上できる。また、樹脂組成物の流動性が向上することにより、その成形性(加工性)をも向上させることができる。すなわち、流動性向上には成形温度(加工温度)を高くすることが考えられるが、ポリアミド系樹脂は分解温度が比較的低い傾向にあり、例えば、結晶性ポリアミド系樹脂では融点に近いことも多いため、成形温度を上げて流動性を向上することには限界がある。また、ポリアミド系樹脂は、分解温度が低い傾向のみならず、粘度の温度依存性が大きい傾向にあるため、熱分解抑制及び流動性安定化などのために厳密な温度管理が必要になるが、成形温度が高温になるほど温度管理は困難になる。そのため、成形温度を高めなくても流動性を向上できる本発明の樹脂組成物は特に有用性が高い。
さらに、前記アミック酸化合物は低分子化合物であるにもかかわらず、意外にも樹脂組成物の機械的特性を低下させることなく保持できる。また、前記アミック酸化合物を添加することにより、樹脂組成物の機械的特性を向上できる場合もある。
(繊維状補強材)
樹脂組成物は、機械的特性、例えば、曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃強さなどの観点から、必要に応じて繊維状補強材(繊維状強化材又は繊維状充填材)を含んでいてもよい。一般的に繊維状補強材は、樹脂組成物の前記機械的特性などを大きく向上できるものの、粘度を著しく増加させてしまうため、前記機械的特性と流動性(成形性又は加工性)との両立は困難である。特に、前記機械的特性が重要な用途では、繊維状補強材を高い割合で添加する必要があり、繊維状補強材の増加に伴う顕著な高粘度化のため、流動性(成形性又は加工性)を犠牲にせざるを得ない場合がある。しかし、特定のアミック酸化合物と、ポリアミド系樹脂と、繊維状補強材とを組み合わせると、繊維状補強材を含んでいても流動性を有効に向上できる。しかも、低分子化合物(アミック酸化合物)を含むにもかかわらず、繊維状補強材に由来する高い機械的特性の低下を意外にも抑制し易く、保持又は向上できる場合もあるため、高い機械的特性と高い流動性とを高いレベルで両立し易い。特に、前記アミック酸化合物を繊維状補強材と組み合わせると、繊維状補強材を含まない場合(すなわち、繊維状補強材を含まず、かつ前記アミック酸化合物とポリアミド系樹脂との質量割合が同じ樹脂組成物)に比べて衝撃強さを保持し易く、耐衝撃性と流動性とを両立し易いようである。
繊維状補強材としては、有機繊維、無機繊維などが挙げられる。有機繊維としては、例えば、セルロース繊維、セルロースアセテート繊維などの修飾又は未修飾セルロース繊維(セルロース又はその誘導体の繊維)、ポリアルキレンアリレート繊維などのポリエステル繊維などが挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ワラストナイトなどであってもよく、ウィスカーなどの金属繊維であってもよい。前記炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維などのピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維などが挙げられる。
これらの繊維状補強材は単独で又は二種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい繊維状補強材は、修飾又は未修飾セルロース繊維、無機繊維であり、無機繊維がより好ましく、ガラス繊維、炭素繊維がさらに好ましく、特にガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維を形成するガラス成分としては、例えば、Eガラス(無アルカリ電気絶縁用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)、Cガラス(化学用ガラス)、Aガラス(一般用含アルカリガラス)、YM-31-Aガラス(高弾性ガラス)などが挙げられる。なかでも、機械的特性などの点から、Eガラス、Cガラス、Sガラスが好ましく、特にEガラスが好ましい。これらのガラス成分で形成されるガラス繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することもできる。
繊維状補強材の形態は、用途などに応じて、短繊維又は長繊維であってもよく、織布、編布、不織布などの布帛であってもよい。これらの繊維状補強材は単独で又は二種以上組み合わせて使用することもできる。流動性を向上し易い点から短繊維であるのが好ましい。
繊維状補強材の平均繊維長(布帛の形態である場合は、布帛を構成する繊維の平均繊維長)は、例えば0.1~10mm程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、0.2~8mm、0.5~6mm、1~4mmである。また、組成物又は成形体中の繊維状補強材の平均繊維長は、樹脂組成物を調製する際の混合(混練)や成形加工におけるせん断力などの影響によって混合前より短くなっていてもよく、例えば0.05~5mm、好ましくは0.1~3mm、さらに好ましくは0.2~1mmである。
繊維状補強材の平均繊維径(フィラメント径)は、ナノメータオーダーであってもよく、このような繊維状補強材としては、例えば、修飾又は未修飾セルロースナノ繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノファイバーなどが挙げられる。機械的強度などの点から、平均繊維径(フィラメント径)はミクロンオーダー、例えば1~200μm程度の範囲から選択してもよく、好ましくは3~100μm、さらに好ましくは4~30μm、特に5~15μmである。
繊維状補強材の断面形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状などが挙げられる。また、繊維状補強材には慣用の表面処理が施されていてもよく、例えば、集束剤、シランカップリング剤などの表面処理剤により処理されていてもよい。
樹脂組成物において、前記アミック酸化合物とポリアミド系樹脂との割合は、例えば、前者/後者(質量比)=0.01/99.99~50/50程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.05/99.95~30/70、0.08/99.92~20/80、0.1/99.9~15/85、0.15/99.85~10/90、0.2/99.8~7/93、0.25/99.75~6/94、0.3/99.7~5/95、0.4/99.6~4/96、0.5/99.5~3.5/96.5、0.75/99.25~3/93であり、特に1/99~3/93が好ましい。また、樹脂組成物が繊維状補強材を含む場合における好ましい前記割合は、以下段階的に0.1/99.9~15/90、0.5/99.5~10/90、1/99~5/95である。前記アミック酸化合物の割合が多すぎると、耐衝撃性などの機械的特性が大きく低下したり、アミック酸化合物がブリードアウトしたりする虞があり、少なすぎると、流動性や曲げ特性や衝撃強さなどの機械的特性を改善できないおそれがある。しかし、本発明では、前記式アミック酸化合物の割合が少なくても、曲げ特性や衝撃強さなどの機械的特性を大きく低下させることなく、むしろ向上しつつ、流動性を有効に改善できる。
また、前記割合(アミック酸化合物とポリアミド系樹脂との割合)は、用途などに応じて選択してもよい。例えば、流動性が特に重要な用途では、前記割合は以下段階的に、前者/後者(質量比)=1.5/98.5~30/70、1.8/98.2~20/80、2/98~10/90が好ましく、流動性と耐衝撃性とのバランスが重要な用途では、以下段階的に、0.35/99.65~10/90、0.4/99.6~5/95、0.45/95.5~3/97が好ましい。前記アミック酸化合物の割合が、少なすぎると、流動性を向上し難く、さらには曲げ特性などの機械的特性を向上し難い場合があり、多すぎると耐衝撃性を有効に保持又は向上しつつ流動性を向上するのが困難となるおそれがあるとともに、ブリードアウトなども抑制し難くなるおそれがある。
樹脂組成物が繊維状補強材を含む場合、前記アミック酸化合物及びポリアミド系樹脂の総量と、繊維状補強材との割合は、例えば、前者/後者(質量比)=99/1~10/90程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、90/10~20/80、80/20~30/70、70/30~40/60、60/40~45/55、55/45~45/55である。繊維状補強材の割合が、少なすぎると機械的特性を向上し難くなるおそれがあり、多すぎると流動性を有効に向上し難くなるおそれがある。
樹脂組成物が繊維状補強材を含む場合、前記アミック酸化合物の割合は、繊維状補強材100質量部に対して、例えば0.01~10000質量部程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、0.1~1000質量部、0.5~100質量部、1~50質量部であり、機械的特性を保持又は向上しつつ流動性を向上し易く、ブリードアウトも抑制し易い点でさらに好ましくは以下段階的に、1~25質量部、1~20質量部、1.5~15質量部、2~10質量部、2.5~8質量部、3~5質量部である。前記アミック酸化合物の割合が、少なすぎると流動性を有効に向上し難くなるおそれがあり、多すぎると流動性と機械的特性との両立、特に流動性と耐衝撃性との両立が困難になる虞があり、ブリードアウトも抑制し難くなる虞もある。
(他の成分)
樹脂組成物は、必要に応じて、ポリアミド系樹脂(又は第1の熱可塑性樹脂)とは異なる他の熱可塑性樹脂(又は第2の熱可塑性樹脂)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂(PC)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリエーテルケトン系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリスルホン系樹脂、セルロース誘導体、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などの鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂などが挙げられる。
スチレン系樹脂としては、例えば、一般用ポリスチレン(GPPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)などのポリスチレン(PS)、スチレン系共重合体などが挙げられる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分含有スチレン系樹脂又はゴムグラフトスチレン系共重合体などが挙げられる。ゴム成分含有スチレン系樹脂又はゴムグラフトスチレン系共重合体としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、AXS樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。AXS樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル-(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)-スチレン共重合体(AES樹脂)などが挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体などが挙げられる。
酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタールなどが挙げられる。ポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などが挙げられる。塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル単独重合体(PVC);塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル共重合体などが挙げられる。塩化ビニリデン樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体などの塩化ビニリデン共重合体などが挙げられる。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル(LCP)などが挙げられる。ポリアルキレンアリレート系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ1,4-シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂(PC)としては、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂などのビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。
ポリケトン樹脂としては、例えば、脂肪族ポリケトン樹脂などが挙げられる。
ポリスルホン系樹脂としては、例えば、ポリスルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)などが挙げられる。
セルロース誘導体としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル、エチルセルロースなどのセルロースエーテルなどが挙げられる。
熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミドなどが挙げられる。
熱可塑性エラストマー(TPE)としては、例えば、ポリスチレン系TPE、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ポリジエン系TPE、塩素系TPE、フッ素系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系TPE(TPEE)、ポリアミド系TPE(TPA)などが挙げられる。
これらの第2の熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて含んでいてもよい。樹脂組成物におけるポリアミド系樹脂(第1の熱可塑性樹脂)の割合は、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂全体(又はポリアミド系樹脂(第1の熱可塑性樹脂)及び第2の熱可塑性樹脂の合計)に対して、例えば10質量%程度以上であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%である。ポリアミド系樹脂の割合が少なすぎると、流動性及び/又は機械的特性を向上できない虞がある。
また、樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤又は補強剤(ただし、前記繊維状補強材を除く)、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、炭素材(ただし、前記繊維状補強材を除く)などを含んでいてもよい。前記安定剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
樹脂組成物は、アミック酸化合物(流動性改善剤)とポリアミド系樹脂と、必要に応じて、繊維状補強材、添加剤などの他の成分とを、乾式混合、溶融混練などの慣用の方法で混合することにより調製でき、樹脂組成物はペレットなどの形態であってもよい。
本発明の樹脂組成物では、前記アミック酸化合物は、添加剤(流動性改善剤)として作用する。しかし、前記アミック酸化合物がアミド基やカルボキシル基などの反応性基を有するため、前記ポリアミド系樹脂と相互作用又は反応する場合がある。しかし、本発明では、前記アミック酸化合物と前記ポリアミド系樹脂とが相互作用(又は反応)しても、流動性改善剤としての機能を十分に発揮できる。
また、前記アミック酸化合物は、高温状態では、アミド基とカルボキシル基とが相互作用して閉環し、前記アミック酸化合物に対応するイミド化合物となる場合がある。本発明の樹脂組成物は、前記アミック酸化合物のうち、一部のアミック酸化合物が閉環した前記イミド化合物を含んでいてもよい。前記アミック酸化合物が閉環する温度は、通常、160℃以上、好ましくは180℃以上(例えば、180~200℃)程度である。
前記樹脂組成物を製造したり、成形して成形体を得るために溶融混練したりすると、通常、前述の通り、前記アミック酸化合物が対応するイミド化合物に変化する。そのため、本発明の樹脂組成物、溶融混練した溶融混練物及び/又は成形体は、溶融混練の温度や時間などに応じて、前記アミック酸化合物及び/又は前記アミック酸化合物に対応するイミド化合物を含んでいてもよい。このように、本発明の樹脂組成物(又は溶融混練物、成形体(ペレットを含む))は、前記アミック酸化合物に対応するイミド化合物を含んでいても、前記樹脂組成物(又は溶融混練物)の流動性と機械的特性(成形体の機械的強度)とを高いレベルでバランスよく両立できる。
(樹脂組成物の特性)
本発明の樹脂組成物は、流動性及び機械的特性(成形体の機械的強度)に優れる。以下に、繊維状補強材を含まない前記樹脂組成物の流動性及び機械的特性について説明する。
樹脂組成物は流動性に優れているため、樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、前記アミック酸化合物を添加しない樹脂単独(以下、単にブランクともいう)のMFRを100としたとき、例えば110~1000程度であってもよく、好ましくは120~900、さらに好ましくは130~800である。特に、前記アミック酸化合物として、前記式(2)で表されるアミック酸化合物を含むとより一層流動性を向上でき、樹脂組成物のMFRは、ブランクを100としたとき、120~900程度であってもよく、好ましくは、以下段階的に、130~880、140~850、150~830、160~800である。なお、ブランクのMFRは、例えば5~80g/10分、好ましくは、以下段階的に、10~60g/10分、15~40g/10分である。
また、樹脂組成物は、流動性を向上しても機械的特性を過度に低下させることなく、向上できる場合もある。
樹脂組成物の曲げ弾性率は、ブランクの曲げ弾性率を100としたとき、例えば90~150程度であってもよく、好ましくは100~145である。特に、前記アミック酸化合物として、前記式(2)で表されるアミック酸化合物を含む樹脂組成物の曲げ弾性率は、ブランクを100としたとき、100~150程度であってもよく、好ましくは120~140、さらに好ましくは125~135である。なお、ブランクの曲げ弾性率は、例えば1000~5000MPa、好ましくは、以下段階的に、1200~4000MPa、1500~3500MPa、2000~3200MPa、2200~3000MPaである。
樹脂組成物の曲げ強さは、ブランクの曲げ強さを100としたとき、例えば90~150程度であってもよく、好ましくは95~145、さらに好ましくは100~135である。特に、前記アミック酸化合物として、前記式(2)で表されるアミック酸化合物を含む樹脂組成物の曲げ強さは、ブランクを100としたとき、100~140程度であってもよく、好ましくは105~130である。なお、ブランクの曲げ強さは、例えば10~300MPa、好ましくは、以下段階的に、50~200MPa、80~180MPa、100~150MPa、110~130MPaである。
樹脂組成物のたわみ(荷重たわみ温度)は、ブランクのたわみを100としたとき、例えば90~130程度であってもよく、好ましくは95~125、さらに好ましくは100~120、特に105~115である。なお、ブランクのたわみ(荷重たわみ温度)は、例えば30~100℃、好ましくは、以下段階的に、40~90℃、50~85℃、60~80℃である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、MFR、曲げ弾性率、曲げ強さ及び荷重たわみ温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
(成形体)
樹脂組成物は流動性や機械的特性に優れるため、高い成形性(又は生産性)で機械的特性に優れた成形体を形成できる。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて選択でき、例えば、線状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、ブロック状、棒状、管状又はチューブ状などの中空状などの三次元的構造などであってもよい。なお、成形体はペレットなどの形態であってもよい。
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などの慣用の成形法を利用して製造することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価方法、用いた原料の詳細などについて示す。
[評価方法]
H-NMR)
試料を、内部標準物質としてテトラメチルシランを含む重クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(BRUKER社製「AVANCE III HD」)を用いて、H-NMRスペクトルを測定した。
(MFR)
実施例1~6及び比較例1~3では、JIS K 7210-1に準じて、保持時間5分、温度265℃、試験荷重11.77Nの条件で測定した。実施例7~14及び比較例4~7では、JIS K 7210-1に準じて、保持時間5分、温度240℃、試験荷重11.77Nの条件で測定した。実施例15及び比較例8~10では、JIS K 7210-1に準じて、保持時間5分、温度220℃、試験荷重11.77Nの条件で測定した。
(曲げ試験)
JIS K 7171に準じて、曲げ弾性率及び曲げ強さを測定した。なお、曲げ弾性率は接線法により算出した。
(アイゾット衝撃強さ)
実施例1~6及び比較例1~3では、JIS K 7110に準じてアイゾット衝撃強さを測定した。
(シャルピー衝撃強さ)
実施例7~14及び比較例4~7では、JIS K 7111に準じてシャルピー衝撃強さを測定した。
(荷重たわみ温度)
JIS K 7191に準じて、荷重たわみ温度を測定した。
[原料]
(試薬)
ピロメリット酸無水物:1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(富士フイルム和光純薬(株)製、規格含量:85.0+% (NMR))
無水コハク酸:富士フイルム和光純薬(株)製、無水こはく酸(和光特級)
無水フタル酸:富士フイルム和光純薬(株)製、無水フタル酸(和光特級)
アニリン:富士フイルム和光純薬(株)製(試薬特級)
1,10-デカンジアミン:東京化成工業(株)製 純度:>98.0%(GC)(T)
1,5-ジアミノペンタン:東京化成工業(株)製 純度:>98.0%(T)
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン:大阪ガスケミカル(株)製 [BAF]
N,N-ジメチルホルムアミド:富士フイルム和光純薬(株)製(試薬特級) [DMF]
アセトン:富士フイルム和光純薬(株)製(試薬特級)
ヘキサン:富士フイルム和光純薬(株)製(試薬特級)
イソプロピルアルコール:富士フイルム和光純薬(株)製 2-プロパノール(試薬特級) [IPA]
酢酸エチル:富士フイルム和光純薬(株)製(試薬特級)
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
AAD-FL:9,9-ビス(2-カルバモイルエチル)フルオレン。
(ポリアミド系樹脂)
PA1:PA66(ポリアミド66、旭化成(株)製「レオナ(登録商標) 1300S」)
PA2:PA6(ポリアミド6、UBE(株)製「UBEナイロン(登録商標) 1013B」)
PA3:PA11(ポリアミド11、アルケマ(株)製「Rilsan(登録商標)BMNO TLD」)。
[合成例1]TetAni-Amの合成
原料としてピロメリット酸無水物及びアニリンを用い、Scientific World Journal(2014),725981/1-725981/12に記載の合成法に準じて、下記式(3-1)及び(3-2)で表されるアミック酸(分子量:404.12)を合成した。得られた目的物について、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)装置を使用して定性分析した結果を以下及び図1に示す。
Figure 2024141582000010
H-NMR(300MHz、DMSO-d):δ(ppm)=7.09-7.15(m、2H)、7.34-7.40(m、4H)、7.69-7.72(m、4H)、7.73(s、0.5H)、7.99(s、1H)、8.35(s、0.5H)、10.52-10.55(m、2H)、13.54(br、2H)。
上記NMRスペクトルの結果から、得られた目的物が、上記式(3-1)及び(3-2)で表されるアミック酸(4,6-ビス(フェニルカルバモイル)ベンゼン-1,3-ジカルボン酸及び2,5-ビス(フェニルカルバモイル)ベンゼン-1,4-ジカルボン酸(ピロメリット酸ジアニリドパラ異性体)(以下、「TetAni-Am」と総称する)であることを確認した。なお、得られたTetAni-Amは、上記式(3-1)で表される化合物と式(3-2)で表される化合物とのモル比が、前者/後者=50/50程度の混合物(異性体)であった。
[合成例2]DASc-Amの合成
窒素雰囲気下、500mLのナス型フラスコに、無水コハク酸33.4g(0.333mol)及びDMF 200mLを仕込み、無水コハク酸を溶解させた後、1,10-デカンジアミン17.0g(0.167mol)を添加して溶解させた。得られた溶液を25℃で一晩攪拌しながら反応を行った。反応終了後、反応液を濾別し、得られた析出物を、200mLのメタノールで1回洗浄し、200mLのアセトンで1回洗浄し、100mLのヘキサンで1回洗浄したところ、目的物(45.1g)が得られた。得られた目的物について、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)装置を使用して定性分析した結果を以下及び図2に示す。
Figure 2024141582000011
H-NMR(300MHz、DMSO-d):δ(ppm)=1.24(m、12H)、1.35-1.39(m、4H)、2.26-2.31(m、4H)、2.38-2.43(m、4H)、2.98-3.04(m、4H)、7.78(m、2H)。
上記NMRスペクトルの結果から、得られた目的物が、上記式(4)で表されるアミック酸(N,N’-ビス(スクシニル)-1,10-ジアミノデカン)(「DASc-Am」と称する)であることを確認した。
[合成例3]PASc-Amの合成
窒素雰囲気下、500mLのナス型フラスコに、無水コハク酸33.4g(0.333mol)及びDMF 200mLを仕込み、無水コハク酸を溶解させた後、1,5-ジアミノペンタン28.7g(0.167mol)を添加して溶解させた。得られた溶液を25℃で一晩攪拌しながら反応を行った。反応終了後、反応液を濾別し、得られた析出物を、200mLの蒸留水で1回洗浄し、200mLのイソプロピルアルコールで1回洗浄し、100mLのヘキサンで1回洗浄し、その後、50℃で24時間乾燥したところ、目的物(58.1g)が得られた。得られた目的物について、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)装置を使用して定性分析した結果を以下及び図3に示す。
Figure 2024141582000012
H-NMR(300MHz、DMSO-d):δ(ppm)=1.26-1.27(m、2H)、1.35-1.39(m、4H)、2.26-2.31(m、4H)、2.38-2.43(m、4H)、2.97-3.02(m、4H)、7.81(s、2H)。
上記NMRスペクトルの結果から、得られた目的物が、上記式(5)で表されるアミック酸(N,N’-ビス(スクシニル)-1,5-ジアミノペンタン)(「PASc-Am」と称する)であることを確認した。
[合成例4]BAF-Amの合成
窒素雰囲気下、1Lのナス型フラスコに、BAF 81.3g(0.233mol)及び無水フタル酸69.1g(0.467mol)を仕込み、フラスコを水浴で冷却しながらDMF 420mLを加えた。得られた溶液を25℃で一晩攪拌しながら反応を行った。反応終了後、反応液に酢酸エチル1500mLとイオン交換水1500mLとを加え、抽出操作を行い、有機相を得た。得られた有機相を50℃で減圧濃縮し、目的物(148g)を得た。得られた目的物について、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)装置を使用して定性分析した結果を以下及び図4に示す。
Figure 2024141582000013
H-NMR(300MHz、DMSO-d):δ(ppm)=7.11-7.14(d、4H)、7.31-7.66(m、16H)、7.93-7.95(m、4H)、10.36(s、2H)、12.50-13.30(br、2H)。
上記NMRスペクトルの結果から、得られた目的物が、上記式(6)で表されるアミック酸(9,9-ビス[4-(N-フタリルアミノ)フェニル]フルオレン)(「BAF-Am」と称する)であることを確認した。
[実施例1~6及び比較例1~3]樹脂組成物の調製及び評価
表1に記載の割合で、樹脂(PA1)と添加剤とを(比較例1では添加剤を用いることなく)二軸押出機(サーモフィッシャー製「Process11 Twin Screw Extruder」、L/D=40)を用いて280℃で溶融混練し、樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物の曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃強さ、荷重たわみ温度及びMFRを測定した。得られた結果を表1に示す。
Figure 2024141582000014
表1から明らかなように、実施例1~6の樹脂組成物では、比較例1~3に比べて、耐熱性に優れ、曲げ強度、曲げ弾性率などの機械的強度を大きく低下させることなくMFRを向上できた。特に、比較例2及び3のMFRが、比較例1に対して、それぞれ約1.2倍、1.5倍であるのに対し、実施例1及び4では、添加剤の添加量が半量であっても、比較例1~3と同等の機械特性を保持しつつ、MFRがそれぞれ比較例1に比べて、約1.6倍、1.7倍向上した。
また、実施例2、3、5及び6では、アミック酸化合物を含むにもかかわらず、比較例1よりも機械的特性を向上でき、MFRがそれぞれ約2.0倍(実施例2)、2.9倍(実施例3)、2.5倍(実施例5)、4.4倍(実施例6)も向上した。すなわち、アミック酸化合物を含むと、特にアミック酸化合物の含有量が増えると、衝撃強さは若干低下する傾向が見られるものの、曲げ強度などの曲げ特性を低下させることなく、むしろ向上させつつ、MFRも向上でき、機械的強度と溶融流動性とを高いレベルで両立できた。
[実施例7~14及び比較例4~7]樹脂組成物の調製及び評価
表2に記載の割合で、樹脂(PA2)と添加剤とを(比較例4では添加剤を用いることなく)二軸押出機(サーモフィッシャー製「Process11 Twin Screw Extruder」、L/D=40)を用いて280℃で溶融混練し、樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物の曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃強さ、荷重たわみ温度及びMFRを測定した。得られた結果を表2に示す。
Figure 2024141582000015
表2から明らかなように、実施例7~14の樹脂組成物では、比較例4~7に比べて、耐熱性に優れ、曲げ強度、曲げ弾性率などの機械的強度を大きく低下させることなくMFRを向上できた。特に、実施例10では、比較例4と比べて、機械的強度がほぼ同じであるにもかかわらず、MFRが約1.3倍向上した。また、実施例7~9及び11~14では、アミック酸化合物を含むにもかかわらず、比較例4よりも機械的特性を向上でき、MFRがそれぞれ約3.4倍(実施例7)、3.3倍(実施例8)、3.7倍(実施例9)、2.7倍(実施例11)、4.0倍(実施例12)、6.7倍(実施例13)、8.7倍以上(実施例14)も向上した。
また、添加剤の割合が同じ実施例7~9、及び実施例12を比較すると、いずれも機械的特性は同等であるものの、実施例12でMFRが最も大きく、流動性に優れていた。
さらに、同じ9,9-ビスアリールフルオレン構造を有し、添加剤の添加量が同じ比較例6と実施例8とを比較すると、実施例8では、比較例6に対して、MFRが約2.4倍大きく、アミック酸構造による効果であると推測された。
樹脂がPA6であっても、アミック酸化合物を含むと、特にアミック酸化合物の含有量が増えると、衝撃強さは若干低下する傾向が見られるものの、曲げ強度などの曲げ特性を低下させることなく、むしろ向上させつつ、MFRも向上でき、機械的強度と溶融流動性とを高いレベルで両立できた。
[実施例15及び比較例8~10]樹脂組成物の調製及び評価
表3に記載の割合で、樹脂(PA3)と添加剤とを(比較例8では添加剤を用いることなく)二軸押出機(サーモフィッシャー製「Process11 Twin Screw Extruder」、L/D=40)を用いて280℃で溶融混練し、樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物のMFRの結果を表3に示す。
Figure 2024141582000016
表3から明らかなように、実施例15の樹脂組成物では、比較例8~10に比べて、MFRを向上でき、比較例8と比べて、MFRが約1.5倍向上した。なお、実施例15の樹脂組成物(又はその成形体)では、比較例8の機械的強度と同等であり、曲げても弾性に優れ、実用可能なレベルの曲げ強さも備えていた。
樹脂がPA11であっても、アミック酸化合物を含むことによって、機械的強度と溶融流動性とを高いレベルで両立できた。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂の機械的強度を過度に低下させることなく、又は向上させつつ、溶融流動性などの流動性(又は成形性)を大きく向上できるため、成形性を有効に改善できる。そのため、ポリアミド系樹脂が、耐摩耗性、潤滑性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れていることを利用して、繊維、フィルム、日用品、自動車関連部品、電気・電子関連部品、機械関連部品、建築関連部品、スポーツ・レジャー関連部品などの幅広い用途に利用できる。具体的には、ロープ、タイヤコード、漁網、濾過布、衣料用芯材、包装用フィルム、ラジエータタンク、マニホールド、配管用チューブ及びパイプ、ホース、エアクリーナ、クラッチ部品、コネクタ(電気回路コネクタなどを含む)、スイッチ、ギヤ、プーリ、カム、ブッシュ、ローラ、軸受け、ハウジング、ケーシング、電線被覆、戸車、レール部品、キャスタ、シューズ、シャトルコック、リールなどに利用できる。

Claims (12)

  1. 酸無水物基1モルに対してアミノ基1モルが開環付加した単位を有するアミック酸化合物と、ポリアミド系樹脂とを含む樹脂組成物。
  2. 前記アミック酸化合物が、下記式(1A)及び/又は下記式(1B)
    Figure 2024141582000017
    {式中、Zは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示し、R1a及びR2aのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3c)-R3a](式中、R3aは、炭化水素基を示し、R3cは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示し、R1b及びR2bのうち、一方がヒドロキシル基、他方が基[-N(-R3d)-R3b](式中、R3bは、炭化水素基を示し、R3dは、水素原子又は炭化水素基を示す)を示す}
    Figure 2024141582000018
    [式中、Z2a及びZ2bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示し、Xは、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、スルフィド結合又はスルフィニル基を示し、R1a、R1b、R2a及びR2bはそれぞれ前記式(1A)と同じ]
    で表される化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記式(1A)において、ZがC6-12アレーン環であり、R3a及びR3bが、それぞれ独立してC6-10アリール基であり、R3c及びR3dが水素原子であり、前記式(1B)において、Z2a及びZ2bが、それぞれ独立してC6-12アレーン環であり、R3a及びR3bが、それぞれ独立してC6-10アリール基であり、R3c及びR3dが水素原子であり、Xがカルボニル基又はエーテル結合である請求項2記載の樹脂組成物。
  4. 前記アミック酸化合物が、下記式(2)
    Figure 2024141582000019
    (式中、Xは、二価の炭化水素基を示し、R4a、R4b、R5a及びR5bは、それぞれ独立して水素原子若しくは置換基を示すか、R4aとR5a及び/又はR4bとR5bが、互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともに形成する置換基を有していてもよい炭化水素環を示す)
    で表される化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
  5. 前記式(2)において、XがC4-12アルキレン基である請求項4記載の樹脂組成物。
  6. 前記式(2)において、Xが多環式C10-26アリーレン基であり、R4aとR5a及び/又はR4bとR5bが互いに結合して隣接する2つの炭素原子とともにC6-10アレーン環を形成している請求項4記載の樹脂組成物。
  7. 前記アミック酸化合物の分子量が、100~1000である請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 前記ポリアミド系樹脂が、脂肪族ポリアミド樹脂及び/又は脂環族ポリアミド樹脂である請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. 前記アミック酸化合物と、前記ポリアミド系樹脂との質量割合が、前者/後者=0.1/99.9~15/85である請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  10. 請求項1~6のいずれかに記載のアミック酸化合物及び/又は前記アミック酸化合物に対応するイミド化合物を含む成形体。
  11. 請求項1~6のいずれかに記載のアミック酸化合物をポリアミド系樹脂に添加して、ポリアミド系樹脂の流動性を向上する方法。
  12. 請求項1~6のいずれかに記載のアミック酸化合物を含む流動性改善剤。
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