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JP2024073734A - スクロール圧縮機 - Google Patents

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JP2024073734A JP2022184596A JP2022184596A JP2024073734A JP 2024073734 A JP2024073734 A JP 2024073734A JP 2022184596 A JP2022184596 A JP 2022184596A JP 2022184596 A JP2022184596 A JP 2022184596A JP 2024073734 A JP2024073734 A JP 2024073734A
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雅嗣 近野
Masatsugu Konno
敦 大沼
Atsushi Onuma
哲也 北村
Tetsuya Kitamura
浩一 坂本
Koichi Sakamoto
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Hitachi Global Life Solutions Inc
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Hitachi Global Life Solutions Inc
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Abstract

【課題】圧縮ガスの圧力によって旋回スクロールの鏡板が変形した場合でも、渦巻状ラップと歯底との間の軸方向すき間を、キー溝による鏡板の変形も考慮して適切に保つ。【解決手段】スクロール圧縮機は、台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備える。前記旋回スクロールは、固定スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に旋回スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面と、前記鏡板の背面に形成されオルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、旋回スクロールの外周部側から中央部側に向かう渦巻状摺動面において、キー溝が設けられている部分に対応する渦巻状摺動面の部分に凸部を設けている。【選択図】図8

Description

本発明は、ヒートポンプ式の給湯機、空気調和機、冷凍機などの冷凍サイクル装置に使用されるスクロール圧縮機に関する。
ヒートポンプ式の給湯機、空気調和機、冷凍機などの冷凍サイクル装置に使用されるスクロール圧縮機としては、特開平7-197891号公報(特許文献1)に記載されたものなどがある。この特許文献1のものには、鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、固定スクロールのラップ部との間に複数の圧縮室を形成する渦巻状のラップ部が立設された旋回スクロールとを備えたスクロール式流体機械において、旋回スクロールまたは固定スクロールのうち少なくとも一方のラップ部は、相手方歯底との間の軸方向すき間が複数段階で変化するように形成することが記載されている。
特開平7-197891号公報
上記特許文献1のものでは、渦巻状のラップ部とその相手方歯底との間に軸方向すき間を設けているため、ラップ部が熱膨張することにより発生する摩擦やカジリ等を防止することができる。特許文献1のものにおいて、前記軸方向すき間は、熱膨張がより大きくなるラップ中央部側ほど直線的に大きくなるように形成されており、ラップの熱膨張を考慮した構成としている。しかし、圧縮ガスの圧力によって旋回スクロールの鏡板が変形し、それによって前記軸方向すき間が変わることについては考慮されていない。
本発明の目的は、圧縮ガスの圧力によって旋回スクロールの鏡板が変形した場合でも、渦巻状ラップとその相手方となる歯底との間の軸方向すき間を、キー溝による鏡板の変形も考慮して適切に保つことのできるスクロール圧縮機を得ることにある。
上記目的を達成するため、本発明は、台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、前記旋回スクロールは、前記固定スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に旋回スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面と、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、前記旋回スクロールの外周部側から中央部側に向かう前記渦巻状摺動面において、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記渦巻状摺動面の部分に凸部を設けていることを特徴とする。
本発明の他の特徴は、台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、前記旋回スクロールは、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、前記固定スクロールは、前記旋回スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に固定スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面を備え、前記固定スクロールの外周部側から中央部側に向かう前記渦巻状摺動面において、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記固定スクロールの前記渦巻状摺動面の部分に凸部を設けているスクロール圧縮機にある。
本発明の更に他の特徴は、台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、前記旋回スクロールは、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、前記固定スクロールは、前記旋回スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に固定スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面を備え、前記旋回スクロールの外周部側から中央部側に向かう渦巻状ラップにおいて、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記旋回スクロールの渦巻状ラップの歯先の部分に凸部を設けているスクロール圧縮機にある。
本発明の更に他の特徴は、台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、前記旋回スクロールは、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、前記旋回スクロールは、前記固定スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に旋回スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面を備え、前記固定スクロールの外周部側から中央部側に向かう渦巻状ラップにおいて、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記固定スクロールの渦巻状ラップの歯先の部分に凸部を設けているスクロール圧縮機にある。
本発明によれば、圧縮ガスの圧力によって旋回スクロールの鏡板が変形した場合でも、渦巻状ラップとその相手方となる歯底との間の軸方向すき間を、キー溝による鏡板の変形も考慮して適切に保つことのできるスクロール圧縮機を得ることができる効果がある。
本発明のスクロール圧縮機の実施例1を示す縦断面図。 図1に示す固定スクロールと旋回スクロールとが噛み合っている状態を示す図で、図1のII-II方向から見た矢視断面図。 図1に示すスクロール圧縮機における背圧弁周辺を拡大して示す一部断面図。 固定スクロールの歯先形状と旋回スクロールの歯底形状を模式的に示す展開図。 旋回スクロールに作用する圧力分布を説明する模式図。 旋回スクロールの鏡板の変形状態を説明する斜視図。 旋回スクロールの背面の形状を説明する背面斜視図。 本発明のスクロール圧縮機の実施例1における固定スクロールの歯先形状と旋回スクロールの歯底形状を模式的に示す展開図。 旋回スクロールに設けた凸部の形成範囲を説明する平面図。 本発明の変形例1を説明する図で、固定スクロールの歯底形状と旋回スクロールの歯先形状を模式的に示す展開図。 本発明の変形例2を説明する図で図10に相当する図。 本発明の変形例3を説明する図で図8に相当する図。
以下、本発明のスクロール圧縮機の具体的実施例を、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
図1~図8を用いて本発明のスクロール圧縮機の実施例1を説明する。まず、図1及び図2を用いて、本実施例のスクロール圧縮機の全体構成を説明する。
図1は本発明のスクロール圧縮機の実施例1を示す縦断面図である。図1に示すように、スクロール圧縮機1は、密閉容器(ケース)2内に、圧縮機構部3及びモータ部4などを収容して構成されている。
前記圧縮機構部3では、フレーム5に固定された固定スクロール7に、旋回スクロール8が噛み合わされて、圧縮室13が形成され、前記モータ部4の回転により、クランクシャフト(回転軸)10を介して、前記旋回スクロール8を旋回運動させることにより、前記圧縮室13の容積を減少させて圧縮動作を行う。
この圧縮動作に伴い、作動流体が吸込ポート14から吸込室20(図2も参照)へ吸込まれ、吸込まれた作動流体は圧縮室13での圧縮行程を経て、吐出ポート15から吐出空間16を構成している第1の吐出空間16aに吐出される。その後、この第1の吐出空間16aと連通している密閉容器2内上部の吐出空間16である第2の吐出空間16bを通り、吐出パイプ6から密閉容器2外に吐出されるように構成されている。
前記固定スクロール7は、円板状の台板7a、この台板7aに立設された渦巻状ラップ(以下、固定ラップ或いは単にラップともいう)7b、前記ラップ7b間の台板7aの表面である歯底(渦巻状摺動面)7c、前記台板7aの外周側に位置し前記ラップ7bを囲むように筒状に設けられた支持部7dを備えている。この支持部7dには鏡板面7eが形成され、この鏡板面7eの高さは前記ラップ7bの先端面である歯先7fの高さとほぼ同じ高さに構成されている。また、前記鏡板面7eは、固定スクロール7の支持部7dが、前記旋回スクロール8の鏡板8aと接する摺動面となっている。
固定スクロール7は、前記支持部7dをボルト等により前記フレーム5に固定しており、固定スクロール7と一体に結合された前記フレーム5は溶接等の固定手段により前記密閉容器2に固定されている。
前記旋回スクロール8は、前記固定スクロール7に対向して配置され、固定スクロール7の渦巻状ラップ7bと旋回スクロール8の渦巻状ラップ(以下、旋回ラップ或いは単にラップともいう)8bとが噛み合わされて、前記フレーム5内に旋回可能に設けられている。この旋回スクロール8は、円板状の鏡板8aの表面である歯底(渦巻状摺動面)8cから立設された前記渦巻状ラップ8b及び前記鏡板8aの背面中央に設けられた旋回ボス部8dを有している。また、前記鏡板8a外周部の前記固定スクロール7と接する表面は、旋回スクロール8の鏡板面8eとなっている。
前記旋回スクロール8のラップ8b先端部である歯先8fは前記固定スクロール7の歯底7cと微小すき間をもって相対するように構成されている。同様に、固定スクロール7のラップ7b先端部の歯先7fも前記旋回スクロール8の歯底8cと微小すき間をもって相対するように構成されている。
前記圧縮機構部3及びモータ部4等を収容している前記密閉容器2の底部には、潤滑油(以下、冷凍機油や油ともいう)を溜める油溜り25が設けられている。前記モータ部4は回転子4aと固定子4bにより構成され、前記回転子4aには前記クランクシャフト10が一体に固定されている。このクランクシャフト10は前記フレーム5に設けた主軸受5aにより回転自在に支持され、前記固定スクロール7の中心軸線と同軸となっている。
前記クランクシャフト10の先端には偏心したクランク部10aが設けられており、このクランク部10aは、前記旋回スクロール8の旋回ボス部8dに設けられた旋回軸受8gに挿入され、前記旋回スクロール8はクランクシャフト10の回転に伴い旋回可能に構成されている。
前記旋回スクロール8の中心軸線は、前記固定スクロール7の中心軸線に対して所定距離(旋回半径)だけ偏心した状態と構成されている。また、旋回スクロール8のラップ8bは、固定スクロール7のラップ7bに対し、周方向に所定角度(一般には180度)だけずらして重ね合わせられている。
12は、前記旋回スクロール8を前記固定スクロール7に対して、自転しないように拘束しながら相対的に旋回運動させるためのオルダムリングである。このオルダムリング12は、円環状のリングの上面側に2個のキー(凸部)が対角に配置され、下面側にも2個のキーが上面側のキーと90度ずらして配置されている。上面側のキーは旋回スクロール8に設けたキー溝8hと、下面側のキーはフレーム5に設けたキー溝5bと摺動可能に噛み合っている。
図2は図1に示す固定スクロール7と旋回スクロール8とが噛み合っている状態を示す図で、図1のII-II方向から見た矢視断面図である。この図2において、旋回スクロール8については、旋回ラップ8bが断面で示され、旋回スクロール8の鏡板8aの外周に相当する部分は二点鎖線(想像線)で示している。
図2に示すように、固定ラップ7bと旋回ラップ8bの間には三日月状の複数の圧縮室13(旋回内線側圧縮室13a、旋回外線側圧縮室13b)が形成され、旋回スクロール8を旋回運動させると、各圧縮室13は中央部の方向に移動するに従い、連続的にその容積が縮小されて圧縮動作が行なわれる。旋回内線側圧縮室13aは旋回ラップ8bの内側に形成される圧縮室であり、旋回外線側圧縮室13bは旋回ラップ8bの外側に形成される圧縮室である。
20は吸込室で、流体を吸入している途中の空間である。この吸込室20は、旋回スクロール8の旋回運動の位相が進んで、流体の閉じ込みを完了した時点から圧縮室13となる。
前記吸込ポート14は、図1、図2に示すように、固定スクロール7に設けられている。この吸込ポート14は、吸込室20と連通するように、固定スクロール7の台板7aの外周側に穿設されている。
前記吐出ポート15は、最内周側の圧縮室13と連通するように、前記固定スクロール7の台板7aの渦巻中心付近に穿設されている。
図1に示すモータ部4によりクランクシャフト10を回転させると、旋回スクロール8は、固定スクロール7の中心軸線を中心に、所定の旋回半径をもって旋回運動する。これにより、吸込ポート14から吸込まれた作動流体、例えば冷凍サイクルを循環する冷媒ガスを各圧縮室13内で順次圧縮し、圧縮された作動流体は吐出ポート15から第1の吐出空間16aに吐出され、その後第2の吐出空間16bに流れて吐出パイプ6から、圧縮機外の例えば冷凍サイクルに供給される。
前記主軸受5aや前記旋回軸受8g等の各摺動部への給油は差圧給油構造によりなされる。即ち、密閉容器2内は吐出圧力となっており、密閉容器2底部の油溜り25も吐出圧力となっている。前記差圧給油構造は、油溜り25の高圧下の油を、背圧室の圧力(吐出圧力と吸込圧力との間の圧力)との圧力差を利用して汲み上げる構造である。従って、油溜り25の潤滑油は圧力差により、クランクシャフト10下部に設けた潤滑油吸込口10cから吸い込まれ、クランクシャフト10内に軸方向に形成されている貫通穴(給油穴)10bを通って、クランクシャフト10の上部へ送られる。
前記潤滑油は、前記貫通穴10bを流れる途中で、その一部がクランクシャフト10に形成されている横穴10dを介して、クランクシャフト10の下部を支持している副軸受23に供給される。副軸受23を潤滑した油は、その後密閉容器2底部の油溜り25に戻される。前記貫通穴10bを流れるその他の大部分の潤滑油は、クランクシャフト10に設けた横穴10eを介して主軸受5aに流入するとともに、クランクシャフト10の上部空間24を通って旋回軸受8gに流入し、これらの摺動部を潤滑する。その後、主軸受5a及び旋回軸受8gの各軸受部の微小すき間を通る際に油の流れが絞られ、減圧膨張して背圧室18へ流入する。
背圧室18に流入した潤滑油は、前記吸込室20や前記圧縮室13に流入するように構成されており、前記渦巻状ラップ7b,8bのラップ摺動面やラップ先端すき間などを潤滑すると共に、圧縮室13間などのシールにも利用される。その後、前記潤滑油は冷媒ガスと共に吐出ポート15から第1の吐出空間16aに吐出される。その際、潤滑油と冷媒ガスは、第1の吐出空間16aを形成している吐出カバー26に衝突して、油と冷媒ガスは分離しつつ、横向きに流れの方向を変えて第2の吐出空間16bに流入する。第2の吐出空間16bに流入した冷媒ガスはその後吐出パイプ6から冷凍サイクル等に吐出され、潤滑油は前記固定スクロール7の外周と前記フレーム5の外周に形成されている通路(図示せず)を通って、モータ室27を経由して圧縮機底部の油溜り25に戻る。
次に、前記背圧室18の機能について説明する。スクロール圧縮機1では、その圧縮作用により、固定スクロール7と旋回スクロール8を互いに引離そうとする軸方向の力(引き離し力)が発生する。この軸方向の力により、前記両スクロールが引き離される、いわゆる旋回スクロール8の離脱現象が発生すると、圧縮室13の密閉性が悪化し、スクロール圧縮機1の効率を低下させる。
そこで、旋回スクロール8の鏡板8aの背面側に、吐出圧力と吸込圧力の間の圧力(中間圧力)となる前記背圧室18を設け、この背圧室18の圧力(背圧)により、前記引き離し力を打ち消すと共に、旋回スクロール8を固定スクロール7に押し付けるようにしている。このときの押し付け力が大きすぎると、旋回スクロール8の鏡板面8eと固定スクロール7の鏡板面7eとの摺動損失が増大し、スクロール圧縮機1の効率が低下する。
即ち、前記背圧には最適な値が存在し、小さすぎると圧縮室の密閉性が悪化して熱流体損失が増大し、大きすぎると摺動損失が増大する。従って、背圧を最適な値に維持することが、圧縮機の高性能化、高信頼性化において重要である。
この最適な背圧値を得るため、本実施例のスクロール圧縮機では、図1に示すように、前記背圧室18の背圧を調整するための背圧弁31が前記固定スクロール7の支持部7dに備えられている。
次に、図3を用いて、前記背圧弁31周辺の構成を説明する。図3は図1に示すスクロール圧縮機における背圧弁31の周辺を拡大して示す一部断面図である。
背圧弁31の周辺は、前記背圧室18と前記背圧弁31を連通する背圧弁流入路(背圧室18と通じている空間)32a、前記背圧弁31と前記圧縮室13を連通する背圧弁流出路(圧縮室13に通じている空間)32c、及び前記背圧弁31を収容している空間32bにより構成されている。前記背圧弁31は、前記背圧弁流入路32aと前記背圧弁流出路32cを仕切るようにバルブ31aを備えている。このバルブ31aは、ストッパ31cに固定されたばね31bにより、前記背圧弁流入路32aの開口部に押付けられるように設けられている。
前記バルブ31aは、前記背圧弁流入路32a内の圧力(即ち背圧室18の圧力である背圧)による荷重が、前記背圧弁流出路32cを介して導入される前記空間32b内の圧力(即ち圧縮室の圧力)と、前記ばね31bとの合計による荷重よりも高くなった場合に、上方へ移動して、前記背圧弁流入路32aと前記背圧弁流出路32cとを連通させる。つまり、前記背圧弁31は、背圧室18内の圧力がある値よりも高くなった場合に、背圧室18内の流体を前記圧縮室13側に逃がし、前記背圧室18の圧力(背圧)を適正値に調整するものである。
以上、スクロール圧縮機1の基本的な構成について説明したが、次に本実施例において重要な構成となる固定スクロール7の歯底7cまたは歯先7fと、旋回スクロール8の歯底8cまたは歯先8fとの軸方向すき間について説明する。前記軸方向すき間とは、固定スクロール7のラップ7bの歯先7fと、旋回スクロール8の歯底(渦巻状摺動面)8cとの微小すき間、または固定スクロール7の歯底(渦巻状摺動面)7cと旋回スクロール8のラップ8bの歯先8fとの微小すき間のことである。
この軸方向すき間は、小さすぎるとラップ先端部(歯先7f,8f)での摺動損失が増大したり、ラップ先端部と歯底(渦巻状摺動面)7c,8cが接触して摩耗やカジリが発生し、信頼性が低下する。また、前記軸方向すき間が大きすぎると、圧縮室13の密閉性が低下して漏れが増え、熱流体損失が増大してスクロール圧縮機1の効率が低下する。従って、背圧室18の圧力(背圧)を適正値に調整することと同様に、前記軸方向すき間についても最適な値に維持することが、スクロール圧縮機1の高性能化、高信頼性化において重要となる。
スクロール圧縮機1は、図2に示す吸込ポート14から冷媒ガスを吸い込み、三日月状の圧縮室13で順次圧縮して、吐出ポート15から圧縮された冷媒ガスを吐出する。冷媒ガスは、圧縮されるにつれてその温度が上昇する。従って、固定ラップ7bや旋回ラップ8bも、吸込ポート14に近い外周部よりも、吐出ポート15に近い中央部ほど温度が高くなる。このため、温度が高いラップ中央部側では、外周部側より熱膨張が大きくなり、ラップの高さが熱膨張によって高くなる。例えば、固定ラップ7bのラップ中央部側のラップ高さが高くなると、相対する旋回スクロール8の歯底8cとの前記軸方向すき間がなくなり、摺動損失の増大や、接触による摩耗やカジリの発生により信頼性が低下する。旋回ラップ8bのラップ歯先と、相対する固定スクロール7の歯底7cについても同様である。
この課題を解決するため、図4に示すように、旋回スクロール8の歯底(渦巻状摺動面)8cを、ラップ外周部側からラップ中央部側に向かって深さが単調に深くなるように掘り込むスロープ形状として、固定ラップ7bの歯先7fと旋回スクロール8の歯底8cとの接触を回避することが考えられている。なお図4は、旋回スクロールにおける歯底形状(歯底掘り込み形状)を模式的に示す展開図で、本実施例1に対する比較例であり、旋回ラップ8bの渦巻形状に沿って歯底の深さを示した展開図である。また、横軸の左側が旋回ラップ8b外周部側、右側が旋回ラップ8bの中央部側を示している。
図中の40は、スクロール圧縮機1を運転していないとき、即ち熱膨張していないときの固定スクロール7のラップ7bの歯先7fと旋回スクロール8の鏡板8aに形成している歯底8cとの軸方向すき間を表している。スクロール圧縮機1の運転時に旋回ラップ8bが熱膨張した際に、この軸方向すき間40がほぼゼロとなるように、旋回スクロール8の渦巻状ラップ間に形成された歯底(渦巻状摺動面)8cのスロープ形状を決定している。
なお、ここでは旋回スクロール8の歯底形状について説明したが、固定スクロール7の歯底(渦巻状摺動面)7cを、ラップ外周部側からラップ中央部側に向かって深さが単調に深くなるように掘り込むスロープ形状としても、前記軸方向すき間40を同様に形成することができる。また、ラップの歯底7cや8cではなく、渦巻状ラップ7bまたは8bの歯先7fまたは8f側に、前記スロープ形状を設けて前記軸方向すき間40を構成することもできる。
図4で説明したように、ラップの熱膨張のみを考えた場合には、例えば旋回スクロール8の歯底(渦巻状摺動面)8cを、ラップ外周部側からラップ中央部側に向かって深さが単調に深くなるスロープ形状に形成すれば、固定ラップ7bの歯先7fと旋回スクロール8の歯底8cとの接触を回避することができる。
しかし、実際には、旋回スクロール8に作用する圧力によっても鏡板8aが変形する。このため、歯底を単調なスロープ形状に掘り込むだけでは、作用する圧力によって局所的に軸方向すき間が縮小して摺動損失が増大したり、軸方向すき間が拡大して熱流体損失が増大する。
ここで、図5、図6を用いて、旋回スクロール8に作用する圧力を説明する。図5は旋回スクロール8に作用する圧力分布を説明する模式図、図6は旋回スクロール8の鏡板8aの変形状態を説明する斜視図である。
図5に示すように、旋回スクロール8は、その背面側における旋回軸受8gより内側の領域には吐出圧力Pdが作用しており、前記旋回軸受8gよりも外側の領域は背圧室18であるため、背圧(吐出圧力と吸込圧力の間の圧力)Pbが作用している。これらの圧力による合力が旋回スクロール8の押し上げ力となる。旋回スクロール8の上面側における鏡板8aの最外周部は、背圧室18に臨んでいるため背圧Pbが作用しており、そこから少し内周側にある吸込室20または圧縮室13(図1、図2参照)にいくに従い、一旦圧力が吸込圧力Psまたは圧縮途中の圧縮室13内圧力まで低下する。さらに内周側では圧縮が進んだ圧縮室13となるため圧力は上昇し、吐出ポート15のある中央部では吐出圧力Pdとなる。これらの圧力による合力が旋回スクロール8の押し下げ力となる。前記押し上げ力から前記押し下げ力を引いた力が、旋回スクロール8を固定スクロール7に押し付ける押付力となる。
旋回スクロール8にこれらの圧力が作用した場合、鏡板8aにおいて、上面に吸込圧力Psが、背面に背圧Pbが作用している領域では、荷重が下から上へ作用するため、図6に示すように、ラップ8bの外周部側が上方へ、ラップ8bの中央部側が下方へ撓んだ凹形状に変形する。このような変形だけであれば、図4を用いて説明したように、熱膨張に対応した歯底形状のように、ラップ8bの中央部側にいくに従い、歯底8c等を単調に深く掘り込んだスロープ形状とすれば良い。
しかし、一般的に旋回スクロール8の背面には、図7に示すようにオルダムリング12のキー部(凸部)を取り付けるためのキー溝(ザグリ長穴)8hが設けられているが、このキー溝8hによる旋回スクロール8の変形については考慮されていない。
次に、図7~図9を用いて本発明のスクロール圧縮機の実施例1の構成を説明する。図7は旋回スクロールの背面の形状を説明する背面斜視図、図8は本発明のスクロール圧縮機の実施例1における固定スクロールの歯先形状と旋回スクロールの歯底形状(歯底掘り込み形状)を模式的に示す展開図、図9は旋回スクロールに設けた凸部の形成範囲を説明する平面図である。
上述したように、旋回スクロール8が熱膨張したり、図5、6で説明した圧力が作用することによる変形に対しては、例えば図4を用いて説明したように、ラップ8bの中央部側にいくに従い、歯底8cを単調に深く掘り込んだスロープ形状とすれば良い。しかし実際には、旋回スクロール8の背面に設けられているキー溝8hにより旋回スクロール8が変形する。
即ち、前記キー溝8hが設けられた箇所は、鏡板8aの板厚が薄くなるため剛性が低くなっている。図5,6を用いて説明したように旋回スクロール8の鏡板に作用する圧力により、鏡板8aは図6で説明したように概略凹形状に変形するが、この変形に加えて、前記キー溝8hが設けられている剛性の低い箇所では、図7中に一点鎖線で示したキー溝8hを接続する仮想線41を境にして折れ曲がるように変形する。
旋回スクロール8の鏡板8aが折れ曲がると、その折れ曲がった部分(仮想線41の近傍)では、旋回ラップ8bの歯先が固定スクロール7の歯底7cから離れることになり、また固定ラップ7bの歯先は旋回スクロール8の歯底8cから離れることになる。従って、キー溝8hが設けられている部分の反対側に位置する旋回ラップ8bの歯先8fや歯底8cでは、前記軸方向すき間40がより拡がることになる。
この軸方向すき間40が運転中に拡がることを防ぐため、本実施例1では、キー溝8hが設けられている部分の反対側に位置する旋回ラップ8b間の歯底8cの深さを局所的に浅くして、肉盛りを施したような歯底形状としている。
具体的には、図8に示すように、キー溝8hがあるため折れ曲がる位置42(図7の仮想線41の位置に対応する位置)での歯底8cの部分で肉盛りが厚くなるように(軸方向すき間40が縮小するように)、歯底8cに凸部(肉盛り部)50を形成している。図8に示す折れ曲がる位置42で鏡板8aは最も大きく折れ曲がるため、この折れ曲がる位置42で前記凸部50の高さが最も高く(肉盛りが最も厚く)なるように形成し、前記折れ曲がる位置42から遠ざかるにしたがって前記凸部50の高さが低く(肉盛り量を少なく)なるように形成している。
次に、図8及び図9を用いて、前記凸部50の好ましい形状について説明する。
図8に示すように、本実施例においては、キー溝8hにより折れ曲がる位置42(図7の仮想線41に対応する位置で、以下単に位置ともいう)に対応する歯底8cの部分付近に前記凸部50を設けている。折れ曲がる位置42で鏡板8aは最も大きく折れ曲がるため、この位置42での凸部50の高さが最も高い頂点となるように形成され、この頂点位置から歯底(渦巻状摺動面)8cに沿って遠ざかるにしたがって凸部50の高さが次第に減少するような斜面50a,50b,50c,50dに形成されている。
即ち、前記凸部50は、その中心を頂点とする複数の斜面50a,50b,50c,50dにより構成されている。また、本実施例では、前記中心から外周部側に向かう斜面50a,50cの勾配より、前記中心から中央部側に向かう斜面50b,50dの勾配の方が大きくなるように構成している。更に、前記凸部50の中心は、前記キー溝8hの溝幅方向の中心線上、即ち前記仮想線41上に存在するように構成されている。
前記キー溝8hは、旋回スクロール8の鏡板8aの略中心に関して互いに反対側の位置となるように二つ設けられているので、前記凸部50は、二つの前記キー溝8hの位置に対応する歯底(渦巻状摺動面)8cの部分(または前記渦巻状ラップの歯先の部分)にそれぞれ設けられている。即ち、前記凸部50は、二つの前記キー溝8hを結ぶ仮想線41と前記歯底(渦巻状摺動面)8cとの交点を基準とした場合、該基準となる部分の前記歯底(渦巻状摺動面)8c(または前記基準に対応する前記渦巻状ラップ8bの歯先8f)に設けられ、該凸部50は、前記基準よりも外周部側に向かう傾斜の勾配より、前記基準から中央部側に向かう傾斜の勾配の方を大きく構成している。なお、前記基準は前述した折れ曲がる位置42に対応している。
図9は旋回スクロール8の歯底8cに設けられている前記凸部50の形成範囲を示している。この図9に示すように、前記凸部50は、歯底(渦巻状摺動面)8cにおける領域51a,51b,51c,51dの位置に形成されている。ここで、前記領域51a,51b,51c,51dは、それぞれ前述した斜面50a,50b,50c,50dにそれぞれ対応している。即ち、旋回スクロール8を上から見た場合、本実施例では図9に示す領域51a,51b,51c,51dの範囲に凸部50が形成されている。また、二つの前記キー溝8hに対応して設けられている二つの凸部50のうち、外周部側の凸部は領域51aと51bに示す範囲に設けられ、中央部側の凸部は領域51cと51dに示す範囲に設けられており、二つの凸部50のそれぞれの頂点は折れ曲がる位置42の部分となるように形成されている。
なお、図9に示す凸部50の形成範囲は一例であり、本実施例では、領域51a~51dのいずれも、折れ曲がる位置42から90度の範囲で形成している。このため、最も外周部側に位置する領域51aの斜面50aの長さが最も長く、最も中央部側に位置する領域51dの斜面の長さが最も短くなっている。
なお、凸部50を形成している各領域51a~51dの範囲は90度に限定されるものではなく、例えば折れ曲がる位置42から45度の範囲としても良い。各領域51a~51dの範囲を45度とした場合でも、鏡板8aが最も大きく折れ曲がる位置42での軸方向すき間40が小さくなるように構成することは可能である。即ち、二つの前記キー溝8hを結ぶ仮想線41と前記歯底(渦巻状摺動面)8cとの交点を基準(折れ曲がる位置42に対応)とした場合、該基準となる部分の前記歯底8c(または前記基準に対応する前記渦巻状ラップの歯先)に前記凸部50の頂点が設けられ、前記凸部50は、前記基準から外周部側に向かう斜面50a,50cの長さ及び中央部側に向かう斜面50b,50dの長さは、それぞれ巻角で45~90度の範囲にすると良い。
また、前記凸部50が設けられている部分を除いて、前記歯底(渦巻状摺動面)8cと前記渦巻状ラップ7bの歯先7fとの軸方向すき間40が、熱膨張を考慮して、外周部側から中央部側に向かって次第に大きくなるように、前記歯底8c(または前記渦巻状ラップ7bの歯先7f)は外周部側から中央部側に向かって熱膨張を考慮した基準スロープに沿って形成している。このようにすると、熱膨張も考慮した軸方向すき間とすることができる。
なお、前記凸部50の外周部側に向かう端部と中央部側に向かう端部はそれぞれ前記基準スロープ上にあるように構成することが好ましい。また、二つの前記キー溝8hの位置にそれぞれ対応して設けられている二つの凸部50間であって前記二つのキー溝8hを結ぶ仮想線41に直交する前記歯底8c(または前記渦巻状ラップの歯先)の部分も前記基準スロープ上にあるように構成することが好ましい。
以上説明したように構成することにより、ラップの熱膨張だけでなく、キー溝8hによる鏡板8aの変形も考慮した軸方向すき間の適正化が可能となり、熱流体損失を更に低減して圧縮機の高効率化を図ることができる。
なお図8は旋回スクロール8の歯底8cに前記凸部50を設けることで、旋回スクロール8の歯底8cと固定スクロール7の歯先7fとの軸方向すき間40を適正化する場合について説明したが、前記凸部50を固定スクロール7の歯底7cに設けて軸方向すき間40を適正化するように構成しても同様の効果が得られる。また、前記凸部50を歯底8cまたは7cに設けるのではなく、旋回スクロール8の歯先8f或いは固定スクロール7の歯先7fに設けて前記軸方向すき間40を適正化するように構成しても同様の効果を得ることができる。以下、図10~図12を用いて、凸部50を設ける位置を変えた場合の本発明の変形例について具体的に説明する。
(変形例1)
図10は本発明の実施例1を説明する図で、固定スクロールの歯底形状と旋回スクロールの歯先形状を模式的に示す展開図である。この図10に示す例では、固定スクロール7の歯底7cを、熱膨張を考慮して、外周部側から中央部側に向かってスロープ形状に次第に深くなるように構成し、この固定スクロール7の歯底7cの位置42付近に凸部50を設けている。他の構成は実施例1と同様である。
このように構成しても、固定スクロール7の歯底7cと旋回スクロール8の歯先8fとの軸方向すき間40を、実施例1と同様に適正化することができる。即ち、ラップの熱膨張だけでなく、キー溝8hによる鏡板8aの変形も考慮した軸方向すき間の適正化が可能となるので、熱流体損失を低減して圧縮機の高効率化を図ることができる。
なお、図8に示す実施例1と同様に、凸部50を旋回スクロール8の歯底8cにも設けるように構成しても良いし、旋回スクロール8の歯底8cには凸部を設けず、歯底8cをスロープ形状にしなくても良い。
(変形例2)
図11は本発明の変形例2を説明する図で、図10に相当する図である。この図11に示す例では、旋回スクロール8の歯先8fを、熱膨張を考慮して、外周部側から中央部側に向かってスロープ形状に次第に低くなるように構成し、この旋回スクロール8の歯先8fの位置42付近に凸部50を設けたものである。他の構成は実施例1や変形例1と同様である。
このように構成しても、固定スクロール7の歯底7cと旋回スクロール8の歯先8fとの軸方向すき間40を、実施例1と同様に適正化することができ、ラップの熱膨張だけでなくキー溝8hによる鏡板8aの変形も考慮した軸方向すき間の適正化が可能となり、実施例1と同様の効果が得られる。
なお、旋回スクロール8の歯先8fの形状と同様に、凸部50を、固定スクロール7の歯先7fにも設けるように構成しても良いし、固定スクロール7の歯先7fには凸部を設けず、歯先7fをスロープ形状にしなくても良い。また、図8や図10に示す実施例1や変形例1のように、凸部50を旋回スクロール8の歯底8c或いは固定スクロール7の歯底7cにも設けるように構成しても良い。
(変形例3)
図12は本発明の変形例3を説明する図で、図8に相当する図である。この図12に示す例では、固定スクロール7の歯先7fを、熱膨張を考慮して、外周部側から中央部側に向かってスロープ形状に次第に低くなるように構成し、この固定スクロール7の歯先7fの位置42付近に凸部50を設けたものである。他の構成は実施例1や変形例1と同様である。
このように構成しても、固定スクロール7の歯先7fと旋回スクロール8の歯底8cとの軸方向すき間40を、実施例1と同様に適正化することができ、ラップの熱膨張だけでなくキー溝8hによる鏡板8aの変形も考慮した軸方向すき間の適正化が可能となり、実施例1と同様の効果が得られる。
なお、固定スクロール7の歯先7fの形状と同様に、凸部50を、旋回スクロール8の歯先8fにも設けるように構成しても良いし、旋回スクロール8の歯先8fには凸部を設けず、歯先8fをスロープ形状にしなくても良い。また、図8や図10に示す実施例1や変形例1のように、凸部50を旋回スクロール8の歯底8c或いは固定スクロール7の歯底7cにも設けるように構成しても良い。
以上説明したように、本発明の実施例1や各変形例のように構成すれば、旋回スクロールのキー溝に対応する部分の旋回スクロールの歯底または歯先、固定スクロールの歯底または歯先の少なくとも何れかの部分に凸部を設けているので、圧縮ガスの圧力によって旋回スクロールの鏡板が変形した場合でも、渦巻状ラップとその相手方となる歯底との間の軸方向すき間を、キー溝による鏡板の変形も考慮して適切に保つことのできるスクロール圧縮機を得ることができる。従って、固定スクロールや旋回スクロールのラップの先端部(歯先)と歯底との摩擦やカジリを抑制することができると共に、ラップの先端部における漏れ損失も低減してスクロール圧縮機の効率を更に向上できるから、高効率のスクロール圧縮機を得ることができる。
なお、本発明は上述した実施例或いは変形例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例或いは変形例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
1:スクロール圧縮機、2:密閉容器(ケース)、3:圧縮機構部、
4:モータ部、4a:回転子、4b:固定子、
5:フレーム、5a:主軸受、5b:キー溝、
6:吐出パイプ、
7:固定スクロール、7a:台板、7b:渦巻状ラップ(固定ラップ、ラップ)、
7c:歯底(渦巻状摺動面)、7d:支持部、7e:鏡板面、7f:歯先、
8:旋回スクロール、8a:鏡板、8b:渦巻状ラップ(旋回ラップ、ラップ)、
8c:歯底(渦巻状摺動面)、8d:旋回ボス部、8e:鏡板面、
8f:歯先、8g:旋回軸受、8h:キー溝、
10:クランクシャフト(回転軸)、10a:クランク部、10b:貫通穴(給油穴)、
10c:潤滑油吸込口、10d,10e:横穴、
12:オルダムリング、
13:圧縮室、13a:旋回内線側圧縮室、13b:旋回外線側圧縮室、
14:吸込ポート、15:吐出ポート、
16:吐出空間、16a:第1の吐出空間、16b:第2の吐出空間、
18:背圧室、20:吸込室、
23:副軸受、24:上部空間、
25:油溜り、26:吐出カバー、27:モータ室、
31:背圧弁、31a:バルブ、31b:ばね、31c:ストッパ、
32a:背圧弁流入路、32b:空間、32c:背圧弁流出路、
33:止め栓、
40:軸方向すき間、41:(キー溝を接続する)仮想線(一点鎖線)、
42:折れ曲がる位置、
50:凸部(肉盛り部)、50a,50b,50c,50d:斜面、
51a,51b,51c,51d:(凸部が形成されている)領域。

Claims (12)

  1. 台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、
    前記旋回スクロールは、前記固定スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に旋回スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面と、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、
    前記旋回スクロールの外周部側から中央部側に向かう前記渦巻状摺動面において、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記渦巻状摺動面の部分に凸部を設けていることを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、
    前記旋回スクロールは、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、
    前記固定スクロールは、前記旋回スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に固定スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面を備え、
    前記固定スクロールの外周部側から中央部側に向かう前記渦巻状摺動面において、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記固定スクロールの前記渦巻状摺動面の部分に凸部を設けていることを特徴とするスクロール圧縮機。
  3. 台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、
    前記旋回スクロールは、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、
    前記固定スクロールは、前記旋回スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に固定スクロールの渦巻状ラップ間に形成された渦巻状摺動面を備え、
    前記旋回スクロールの外周部側から中央部側に向かう渦巻状ラップにおいて、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記旋回スクロールの渦巻状ラップの歯先の部分に凸部を設けていることを特徴とするスクロール圧縮機。
  4. 台板に渦巻状ラップが立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して旋回可能に設けられ、前記固定スクロールの渦巻状ラップとの間に複数の圧縮室を形成する渦巻状ラップが鏡板に立設された旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を防止するためのオルダムリングを備えるスクロール圧縮機であって、
    前記旋回スクロールは、前記鏡板の背面に形成され前記オルダムリングのキーと係合するキー溝を備え、
    前記旋回スクロールは、前記固定スクロールの渦巻状ラップの歯先と対向すると共に旋回スクロールのラップ間に形成された渦巻状摺動面を備え、
    前記固定スクロールの外周部側から中央部側に向かう渦巻状ラップにおいて、前記キー溝が設けられている部分に対応する前記固定スクロールの渦巻状ラップの歯先の部分に凸部を設けていることを特徴とするスクロール圧縮機。
  5. 請求項1~4の何れか一項に記載のスクロール圧縮機であって、
    前記凸部は、その中心を頂点とする複数の斜面により構成され、前記中心から外周部側に向かう斜面の勾配より、前記中心から中央部側に向かう斜面の勾配の方を大きく構成していることを特徴とするスクロール圧縮機。
  6. 請求項5に記載のスクロール圧縮機であって、
    前記凸部の中心は、前記キー溝の溝幅方向の略中心線上に存在することを特徴とするスクロール圧縮機。
  7. 請求項6に記載のスクロール圧縮機であって、
    前記キー溝は、旋回スクロールの鏡板の略中心に関して互いに反対側の位置となるように二つ設けられ、前記凸部は、二つの前記キー溝の位置に対応する前記渦巻状摺動面の部分または前記渦巻状ラップの歯先の部分にそれぞれ設けられていることを特徴とするスクロール圧縮機。
  8. 請求項7に記載のスクロール圧縮機であって、
    二つの前記キー溝を結ぶ仮想線と前記渦巻状摺動面との交点を基準とした場合、該基準となる部分の前記渦巻状摺動面または前記基準に対応する前記渦巻状ラップの歯先に前記凸部が設けられ、該凸部は、前記基準よりも外周部側に向かう斜面の勾配より、前記基準から中央部側に向かう斜面の勾配の方を大きく構成していることを特徴とするスクロール圧縮機。
  9. 請求項7に記載のスクロール圧縮機であって、
    二つの前記キー溝を結ぶ仮想線と前記渦巻状摺動面との交点を基準とした場合、該基準となる部分の前記渦巻状摺動面または前記基準に対応する前記渦巻状ラップの歯先に前記凸部が設けられ、該凸部は、前記基準よりも外周部側に向かう斜面の長さを、前記基準から中央部側に向かう斜面の長さよりも大きく構成していることを特徴とするスクロール圧縮機。
  10. 請求項7に記載のスクロール圧縮機であって、
    二つの前記キー溝を結ぶ仮想線と前記渦巻状摺動面との交点を基準とした場合、該基準となる部分の前記渦巻状摺動面または前記基準に対応する前記渦巻状ラップの歯先に前記凸部が設けられ、前記凸部は、前記基準から外周部側に向かう斜面の長さ及び中央部側に向かう斜面の長さは、それぞれ巻角で45~90度であることを特徴とするスクロール圧縮機。
  11. 請求項7に記載のスクロール圧縮機であって、
    前記凸部が設けられている部分を除いて、前記渦巻状摺動面と前記渦巻状ラップの歯先との隙間が外周部側から中央部側に向かって次第に大きくなるように、前記渦巻状摺動面または前記渦巻状ラップの歯先は外周部側から中央部側に向かい基準スロープに沿って形成され、前記凸部の外周部側に向かう端部と中央部側に向かう端部はそれぞれ前記基準スロープ上にあることを特徴とするスクロール圧縮機。
  12. 請求項7に記載のスクロール圧縮機であって、
    前記凸部が設けられている部分を除いて、前記渦巻状摺動面と前記渦巻状ラップの歯先との隙間が外周部側から中央部側に向かって次第に大きくなるように、前記渦巻状摺動面または前記渦巻状ラップの歯先は外周部側から中央部側に向かい基準スロープに沿って形成され、二つの前記キー溝の位置にそれぞれ対応して設けられている二つの凸部の間であって前記二つのキー溝を結ぶ仮想線に直交する前記渦巻状摺動面または前記渦巻状ラップの歯先の部分は前記基準スロープ上にあることを特徴とするスクロール圧縮機。
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