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JP2024070581A - Als検査用バイオマーカー及び検査方法 - Google Patents

Als検査用バイオマーカー及び検査方法 Download PDF

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JP2024070581A
JP2024070581A JP2022181170A JP2022181170A JP2024070581A JP 2024070581 A JP2024070581 A JP 2024070581A JP 2022181170 A JP2022181170 A JP 2022181170A JP 2022181170 A JP2022181170 A JP 2022181170A JP 2024070581 A JP2024070581 A JP 2024070581A
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勉 清藤
Tsutomu Kiyofuji
かずや 宮下
Kazuya Miyashita
辰也 瀬川
Tatsuya Segawa
勇 深町
Isamu Fukamachi
幹夫 東海林
Mikio Shoji
毅 瓦林
Takeshi Kawarabayashi
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Immuno Biological Laboratories Co Ltd
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Abstract

【課題】本発明は、患者への負担が少なくかつ筋萎縮性側索硬化症(ALS)の検査に有用なバイオマーカーを提供することを課題とする。【解決手段】タウ蛋白質を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の血液検査用バイオマーカー。【選択図】図2

Description

本発明は、ALS検査用バイオマーカーと、該バイオマーカーの定性又は定量に使用する抗体を用いた免疫的測定方法及びキットに関する。
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis:ALS)とは、筋肉を動かしている脳や脊髄の神経(運動ニューロン)が障害され、脳から筋肉に指令が伝わらなくなることで手足や喉、舌の筋肉や呼吸筋が徐々にやせていき、呼吸筋が弱まると人工呼吸器を使用しなければ発症から2~5年で死に至ることが多いといわれている進行性・致死性の神経変性疾患である。この疾患の日本における患者数は約1万人とされ、中年以降に発症することがほとんどであり、現在においても発症原因は解明されていない難病の1つである。
現在、ALSを根治させる治療法は見つかっていないが、早期の治療が生命予後を大きく左右することから、早期の診断が極めて重要であると考えられている。一般的なALSの診断は、臨床症状(痙縮、腱反射亢進、線維束性収縮、歩行障害、言語障害、嚥下障害、呼吸障害等)の有無、進行速度、運動機能に障害をきたす他の疾患の除外等を組み合わせて行われる。例えば、神経伝導検査、筋電図検査、筋生検、髄液検査等を適宜組み合わせて行われる。
ところが、早期のALSは、運動機能に障害をきたす他の疾患と区別することが難しく、専門医であっても、上述のように複数の検査を組み合わせた診断を試みたときに高い精度で診断を行うことは難しい。そのため、ALSの疑いがある患者がなんらかの症状を自覚してからALSが確定診断されるまでに要する時間が長くなり、これによりALSに対して早期に治療を開始することが困難となるケースがある。更に、他の病気を除外するために一般的に行われている神経伝導検査、筋電図検査、筋生検、髄液検査は、侵襲性が高く、患者への負担が非常に大きい。
このような背景から、ALSの診断に有用なバイオマーカーの探索研究が幅広く行われ、数多くのバイオマーカー候補が報告(非特許文献1)されているが、患者への負担が少なく、ALSの診断に利用できる有用なバイオマーカーは見出せていないのが現状である。
Molecular Neurodegeneration, 2022;17:11
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、患者への負担が少なくかつALSの検査に有用なバイオマーカーを提供することを課題とする。また、本発明は、該バイオマーカーを用いたALSの検査方法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、生体検体中に存在するタウ蛋白質を測定するための抗タウ蛋白質抗体を含む試薬を含むキットを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ALS患者の血液検体中に存在するタウ蛋白質の量が、コントロール検体と比較して有意に多いことを見出し、
本発明に想到した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]タウ蛋白質を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の血液検査用バイオマーカー。[2]前記タウ蛋白質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列若しくはその一部と同一のアミノ酸配列、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上同一のアミノ酸配列若しくはその一部と同一のアミノ酸配列を有する、[1]に記載のバイオマーカー。
[3]前記検査が、ALS鑑別診断のための検査である、[1]又は[2]に記載のバイオマーカー。
[4]生体から採取された血液検体について、[1]~[3]の何れかに記載のバイオマーカーを測定する工程を含む、ALSの検査方法。
[5]ALSの鑑別診断のために使用される、[4]に記載の方法。
[6]前記血液検体が、全血、血清又は血漿である、[4]又は[5]に記載の方法。
[7]前記バイオマーカーの測定が、免疫学的方法により行われる、[4]~[6]の何れかに記載の方法。
[8]前記免疫学的方法が、タウ蛋白質を認識する2種類の抗体の組み合わせを用いたサンドイッチELISA法であって、
前記2種類の抗体の組み合わせが、
(1)タウ蛋白質を認識する第一抗体;及び
(2)タウ蛋白質を認識する第二抗体であって、該抗体は前記第一抗体とは異なる部分を認識する抗体であり、かつ前記第一抗体と組み合わせてサンドイッチELISA法を行ったとき、非神経変性疾患患者の血液検体に対する反応性と比較して、ALS患者の血液検体に対して1.5倍以上高い反応性を示す抗体
の組み合わせである、[8]に記載の方法。
[9]タウ蛋白質を認識する2種類の抗体の組み合わせを含む、ALSの血液検査用キットであって、
前記キットは、サンドイッチELISA法に用いられるものであり、
前記2種類の抗体の組み合わせが、
(1)タウ蛋白質を認識する第一抗体;及び
(2)タウ蛋白質を認識する第二抗体であって、該抗体は前記第一抗体とは異なる部分を認識する抗体であり、かつ前記第一抗体と組み合わせてサンドイッチELISA法を行ったとき、非神経変性疾患患者の血液検体に対する反応性と比較して、ALS患者の血液検体に対して1.5倍以上高い反応性を示す抗体
の組み合わせである、前記キット。
本発明によれば、血液検体中のタウ蛋白質をバイオマーカーとして定性的又は定量的に測定することにより、ALSの検査が可能となる。また、本発明の方法は、全血、血清又は血漿を生体検体として免疫学的方法でタウ蛋白質の定性的又は定量的な測定を行うことから、従来の検査方法と比較して患者への負担を軽減することが出来る。
抗タウ蛋白質抗体産生ハイブリドーマが産生したモノクローナル抗体であるE22A3抗体及びR103C1A5抗体を用いてタウ蛋白質を測定したときのウェスタンブロットの写真である。Mockとしては、Expi293細胞の培養上清を用いた。 サンドイッチELISA系において使用する固相抗体及び標識抗体の組み合わせを検討した図である。固相抗体(E22A3抗体)及び標識抗体(R103C1A5抗体)の組み合わせ(Method 1)、並びに固相抗体(m40A1抗体)及び標識抗体(R103C1A5抗体)の組み合わせ(Method 2)の検体との反応性を吸光度(試薬ブランク値を差し引いた値)で比較した。 疾患別(アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、非神経変性疾患(コントロール))の患者血漿中のタウ蛋白質濃度を示す図である。 ELISA法によるヒトタウ蛋白質441(図中、Tau441と示す)およびヒトタウ蛋白質758(図中、Big Tauと示す)への反応性を確認した図である。Mockとしては、CHO細胞の培養上清を用いた。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明は単なる例示であり、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施することができる。
特に指定がない場合、本発明に用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者により一般に理解される意味を有する。
本発明において、複数の数値の範囲が示された場合、それらの複数の範囲の任意の下限値および上限値の組み合わせからなる範囲も同様に意味する。
<バイオマーカー>
本発明の一実施形態は、タウ蛋白質を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の血液検査用バイオマーカーである。
本実施形態において、タウ蛋白質は血液検査用バイオマーカーとして使用できる限り特に限定されず、血液中に存在する何れの存在様式のタウ蛋白質であってもよい。例えば、ヒトの血液中には末梢性タウ蛋白質(タウ蛋白質758;ビッグタウとも称される)、及び選択的スプライシングによって得られる分子量が異なる6種類のアイソフォーム、並びにそれらの断片化されたタウ蛋白質等が存在し、これらの1種類以上をバイオマーカーとして測定することができる。
選択的スプライシングによって得られる分子量が異なる6種類のアイソフォームは、N末端近傍領域におけるN1及びN2という2種類のインサート配列の種類(すなわち、N1及びN2が存在しない0N型;N1のみが存在する1N型;N1及びN2が存在する2N型)、並びに微小管結合領域におけるR1~R4という微小管結合ドメインの種類(すなわち、R1、R3及びR4が存在する3R型;R1、R2、R3及びR4が存在する4R型)の組み合わせに基づき表すことができる。具体的には、これらのアイソフォームは、2N4R型アイソフォーム(タウ蛋白質441とも称される)、1N4R型アイソフォーム(タウ蛋白質412とも称される)、0N4R型アイソフォーム(タウ蛋白質383とも称される)、2N3R型アイソフォーム(タウ蛋白質410とも称される)、1N3R型アイソフォーム(タウ蛋白質381とも称される)、0N3R型アイソフォーム(タウ蛋白質352とも称される)である。
断片化されたタウ蛋白質は、血液中に存在し、ALSの血液検査用バイオマーカーとして使用できる限り、N末端側及び/又はC末端側において任意の数のアミノ酸が切断されたことにより断片化されたものであってもよい。
また、タウ蛋白質は、任意のアミノ酸がリン酸化されたものであってもよい。
タウ蛋白質は、例えば配列番号1で表されるアミノ酸配列若しくはその一部と同一のアミノ酸配列を有してよい。または、血液中に存在し、ALSの血液検査用バイオマーカーとして使用できる限り、配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上同一、好ましくは95%以上同一、さらに好ましくは98%以上同一のアミノ酸配列若しくはその一部と同一のアミノ酸配列を有してもよい。
配列番号1で表されるアミノ酸配列の一部と同一のアミノ酸配列とは、例えば、配列番
号1に含まれるアミノ酸のうち、N1、N2、R2から選択される少なくとも1つを表すアミノ酸配列を含まないが、他のアミノ酸配列が同一の配列のことであってもよく、また配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端側及び/又はC末端側において任意の数のアミノ酸が切断されたことにより断片化された配列であってもよい。
配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上同一、好ましくは95%以上同一、さらに好ましくは98%以上同一のアミノ酸配列とは、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列における任意の箇所において置換、欠失、挿入、又は付加がなされた配列のことである。
なお、配列番号1で表されるアミノ酸配列は、例えば配列番号2で表される塩基配列によってコードされるものであってよい。
本実施形態において血液検査は、採取された血液検体中におけるタウ蛋白質の定性的又は定量的な測定を行うものであってよい。
当該血液検査はALSの検査のために行われるものであってよい。ALSの検査を行うことができる限り特に限定されないが、例えば、当該血液検査によって、タウ蛋白質の存在を確認することができたとき、検査対象がALSを有すると判断してもよく、ALSを有する可能性があると判断してもよい。また、例えば、タウ蛋白質の定量的な測定結果に基づき、血液中のタウ蛋白質の濃度が、ALSを有しないコントロール検体における測定結果と比較して大きいとき、または血液中のタウ蛋白質の濃度が一定濃度以上(すなわち、カットオフ値以上)であるとき、検査対象がALSを有すると判断してもよく、ALSを有する可能性があると判断してもよい。カットオフ値は予め定めておいてもよく、検査ごとに定めてもよい。
なお、ALSの検査において、ALSを有しないコントロール検体とは、健常者検体であってもよく、非神経変性疾患を有する患者の検体であってもよく、またはALS以外の疾患を有する患者の検体であってもよい。
また、当該血液検査は、検査対象がALSを有すると、アルツハイマー病や多発性硬化症などの他の疾患と区別して鑑別診断するための検査であってよい。ALSの鑑別診断を行うことができる限り特に限定されないが、例えば、当該血液検査によって、タウ蛋白質の存在を確認することができたとき、検査対象がALSを有する鑑別診断することができる。タウ蛋白質の定量的な測定結果に基づき、血液中のタウ蛋白質の濃度が、ALSを有しないコントロール検体における測定結果と比較して大きいとき、または血液中のタウ蛋白質の濃度が一定濃度以上(すなわち、カットオフ値以上)であるとき、検査対象がALSを有する鑑別診断することができる。カットオフ値は予め定めておいてもよく、検査ごとに定めてもよい。
なお、ALSの鑑別診断において、ALSを有しないコントロール検体とは、健常者検体であってもよく、非神経変性疾患を有する患者の検体であってもよく、ALS以外の疾患を有する患者の検体であってもよく、またはALS以外の疾患であってALSと鑑別する必要がある疾患(例えば、アルツハイマー病や多発性硬化症など)を有する患者の検体であってもよいが、好ましくは、ALS以外の疾患であってALSと鑑別する必要がある疾患を有する患者の検体である。
ALSの鑑別診断における、血液中のタウ蛋白質濃度のカットオフ値は、特に限定されないが、例えば、60pg/mlとしてもよく、70pg/mlとしてもよい。
ALSの鑑別診断は、任意の他の検査と組み合わせて行ってもよい。
本実施形態のバイオマーカーは、任意の他のバイオマーカーや検査と組み合わせて用いてもよい。
<バイオマーカーの定性的又は定量的な測定方法>
本発明の他の実施形態は、生体から採取された血液検体について、上記<バイオマーカー>の項に記載したバイオマーカーの定性的又は定量的な測定方法である。当該測定方法はALSの鑑別診断のために使用されるものであってもよい。
本実施形態において、血液検体は、全血、血清又は血漿である。好ましくは血清又は血漿である。
本実施形態において、バイオマーカーは定性的又は定量的に測定されるものであってよく、該測定は免疫学的方法により行われるものであってよい。
免疫学的方法としては、特に限定されないが、例えば、標識として酵素を用いるELISA法(酵素結合免疫吸着測定法)、EIA法(酵素免疫測定法)、CLEIA法(化学発光酵素免疫測定法)、標識として化学発光性化合物を用いるCLIA法(化学発光免疫測定法)、RIA法(放射免疫測定)、ラテックス凝集法、イムノクロマトグラフィー法等が挙げられる。
免疫学的方法は、高感度な検出感度が期待されるサンドイッチELISA法が好適である。サンドイッチELISA法においては、固相化した捕捉用抗体で検出対象物質を捕捉し、それに標識物質を結合させた抗体(認識抗体)を反応させて、洗浄後、標識物質の種類に応じた検出を行う。固相としては、例えば、プラスチックプレート、磁性粒子やラテックス粒子などの粒子を用いることができる。捕捉用抗体は固相に直接固定しても、間接的に固定してもよい。間接的に固定する場合は、例えば、補足抗体に対する二次抗体を固相に固定し、二次抗体を介して補足抗体を間接的に固定することができる。補足抗体を間接的に固相化する物質としては、プロテインG、プロテインA等が挙げられるが、これらに限定されない。また、捕捉抗体がビオチン化されている場合には、アビジン化した固相を利用することができる。
タウ蛋白質の測定方法は、後述のタウ蛋白質を認識する抗体を用いて、従来の任意の免疫学的測定方法により行うことができる。より具体的には、後述のタウ蛋白質を認識するモノクローナル抗体を、被検試料と反応させることを特徴とする免疫学的測定方法により行うことができる。
タウ蛋白質の測定方法は、基本的な構成として、被検試料と後述のタウ蛋白質を認識する抗体を接触させるステップ、及び、後述のタウ蛋白質を認識する抗体に結合したタウ蛋白質を測定するステップを備える。また、本実施形態の測定方法はin vitro又はex vivoで行われる。また、当該測定方法は定性的又は定量的に行われるものであってよい。
また、免疫学的方法としては、通常の競合法、サンドイッチ法によるRIA又はEIA等が挙げられる。これらの方法において、抗体を標識して用いることもできる。また、抗体を各種プラスチックウェル、各種プラスチックビーズ等の担体に固相化して用いてもよい。より具体的には、当該測定方法は、例えば、以下のステップを含む方法であってもよい。
(a)タウ蛋白質を認識する抗体と被検試料とを接触させるステップ。
(b)前記抗体へ結合したタウ蛋白質を定性的又は定量的に測定するステップ。
(c)測定されたタウ蛋白質量から、被検試料中のタウ蛋白質のレベルを算出し、被検試料中のタウ蛋白質の定性的又は定量的にレベルを決定するステップ。
本実施形態のバイオマーカーの測定を定量的に行う場合、予め適宜既知の濃度に段階希釈された標準物質(例えば、精製したリコンビナントタウ蛋白質)を被検試料の検出と同
時又は別々に用いて検量線を作成し、当該検量線を基に被検試料中の測定値からタウ蛋白質の濃度を計算して求めることができる。
上記「(a)タウ蛋白質を認識する抗体と被検試料とを接触させるステップ」及び「(b)前記抗体へ結合したタウ蛋白質を定性的又は定量的に測定するステップ」は、例えば、サンドイッチELISA法で行うことができる。ELISA法で測定する場合には、ELISAプレートに固相化した後述のタウ蛋白質を認識するモノクローナル抗体に、被検試料又は希釈した被検試料を接触させて反応させること、洗浄すること、更に、タウ蛋白質と結合可能な酵素標識した異なる抗タウ蛋白質モノクローナル抗体と接触させて反応させること、非結合抗体を洗浄により除去すること、当該抗体の標識(例えば、色素等)の存在、量又は強度(例えば、発色等)を測定すること(例えば、吸光度の測定等)、及び、被検試料中に存在するタウ蛋白質を計算することを含むことができる。これらの測定は、通常の免疫学的測定法と同様に0~40℃のいずれの温度で行うこともできる。
免疫学的方法において使用する抗体は、例えば、IgG、IgM等の何れのアイソタイプであってもよい。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってよい。抗体の由来に関しては、例えば、マウス抗体、ラット抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等が挙げられる。抗体は、完全抗体であってもよく、断片抗体であってもよい。断片抗体としては、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、Fab、一本鎖Fv(以下、「scFv」という)、タンデムバイスペシフィック一本鎖Fv(sc(Fv))、一本鎖トリプルボディ、ナノボディ、ダイバレントVHH、ペンタバレントVHH、ミニボディ、ダイアボディ、タンデムダイアボディ、バイスペシフィックトリボディ、バイスペシフィックバイボディ、デュアルアフィニティリターゲティング分子(DART)、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド結合Fv、コンパクトIgG、重鎖抗体、又はそれらの重合体等が挙げられる。抗体の由来としては、例えば、マウス抗体、ラット抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等が挙げられる。
モノクローナル抗体は、市販のものを用いてもよく、製造したものを用いてもよい。例えば、次の方法で製造することができる。
免疫原としては、ヒト生体試料より調整されたタウ蛋白質、リコンビナントタウ蛋白質、または、タウ蛋白質ペプチドフラグメント等が挙げられる。免疫に使用する動物としては特に限定されないが、例えば、マウス、ラット等を用いることができる。
動物への免疫方法は、一般的な手法に従って行うことができる。例えば、免疫原を通常の緩衝液や生理食塩水に懸濁させた懸濁液、またはさらにフロインド・コンプリート・アジュバンド等の補液と混合させた混合物を、動物の皮下、皮内、腹腔等に投与して刺激した後、必要に応じて同様の操作を繰り返し行う方法が挙げられる。抗原の投与量は投与経路、動物種に応じて適宜決定できるが、通常の投与量は、1回当たり10μg~1mg程度である。
細胞融合に用いる免疫細胞は、最終免疫の3~4日後に摘出した脾臓細胞およびリンパ節細胞が好適である。また、前記免疫細胞と融合させる他方の親細胞としての骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)としては既に確立されている公知の各種細胞株、例えば、マウスにおけるNS1(P3/NSI/I-Ag4444-1)〔Eur. J. Immunol. 6:511-519(1976)〕、SP2/O-Ag14〔Nature 276:269(1978)〕、P3X63-Ag8.653〔J. Immunol. 123:1548(1979)〕、P3X63-Ag8U.1〔Curr. Top. Microbiol. Immunol. 81:1(1978)〕等や、ラットにおけるY3-Ag1.2.3〔Nature 277:131-133(1979)〕、YB2/O(YB2/3HL/P2.G11.16Ag.20)〔Methods Enzymol. 73B:1(1981)〕等が挙げられる。細胞融合には通常用いられるポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等を使用することができる。細胞融合は通常の方法と同様にすればよく、例えば免疫細胞は骨髄細胞に対して約1~10倍で、ポリエチレングリコールは平均分子量1000~6000のものを30~60%の濃度で使用し、免疫細胞と骨髄細胞の混合ペレットに滴下し混ぜ合わせる方法が挙げられる。
ハイブリドーマの選択は、通常の選択培地、例えばHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン含む培地)を用いて行うことができる。HAT培地で培養後、得られたハイブリドーマの培養上清を、例えば、ELISA法、RIA法、免疫沈降法で検索し、タウ蛋白質に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。モノクローナル抗体を選択する方法としては、抗体を産生するハイブリドーマを通常の限界希釈法でクローン化後、例えば、次のような方法が挙げられる。
一次選択法として、ELISAプレートに固相化したタウ蛋白質に培養上清を反応させる。次に、酵素標識二次抗体を反応させ、タウ蛋白質と反応する抗体を産生するクローン化抗体産生株を選択する。
二次選択法として、上記の方法で一次選択されたハイブリドーマから産生される抗体を使用して、一方の抗体を固相化抗体、他方の抗体にペルオキシダーゼを標識した標識抗体として用いるサンドイッチELISA法で抗体の反応性を評価する。例えば、ALS患者の血漿と、健常者、非神経変性疾患患者又はALS以外の疾患を有する患者の血漿を試料として、試料中に存在するタウ蛋白質に対する反応性を比較した時に、ALS患者の血漿に対して高い反応性を示す抗体を産生するクローン化抗体産生株を選択する。
本実施形態の免疫学的方法に用いられる抗体は、標識物を結合させた抗体を使用することが出来る。標識物としては、抗体に結合させて検出できるものであれば特に制限はないが、例えば、32P、3H、125I、131I、14C、トリチウム等の放射能標識;β-ガラクトオキシダーゼ、パーオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、モノアミンオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素;FAD、FMN、ATP、ビオチン、ヘム等の補酵素;フルオレセイン誘導体(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインチオフルバミル等)、ローダミン誘導体(テトラメチルローダミン、トリメチルローダミン(RITC)、テキサスレッド、ローダミン110等)、Cy色素(Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7)、Cy-クロム、スペクトラムグリーン、スペクトラムオレンジ、プロピジウムイオダイド、アロフィコシアニン(APC)、R-フィコエリスリン(R-PE)等の蛍光標識;ルシフェラーゼ等の生物発光標識;あるいは、ルミノール、イソルミノール、N-(4-アミノブチル)-N-エチルイソルミノースエステル等のルミノール誘導体、N-メチルアクリジニウムエステル、N-メチルアクリジニウムアシルスルホンアミドエステル等のアクリジニウム誘導体、ルシゲニン、アダマンチルジオキセタン、インドキシル誘導体、ルテニウム錯体等の化学発光標識;金コロイド等の金属;アビジン;ラテックス等が挙げられる。
抗体への標識物の結合は、当分野において一般的な方法により行うことができる。例えば、タンパク質又はペプチドを蛍光標識する場合、タンパク質又はペプチドをリン酸緩衝液で洗浄した後、DMSO、緩衝液等で調整した色素を加え、混合した後室温で10分間静置することにより結合させることができる。また、市販の標識キットとして、ビオチン標識キット(Biotin Labeling Kit-NH2、Biotin Labeling Kit-SH:株式会社同仁化学研究所)、アルカリフォスファターゼ標識用キット(Alkaline Phosphatase Labeling Kit-NH2、Alkaline Phosphatase Labeling Kit-SH:株式会社同仁化学研究所)、ペルオキシダーゼ標識キット(Peroxidase Labeling Kit-NH2、Peroxidase Labeling Kit-SH:株式会社同仁化学研究所)、フィコビリプロテイン標識キット(Allophycocyanin Labeling Kit-NH2、Allophycocyanin Labeling Kit-SH、B-Phycoerythrin Labeling
Kit-NH2、B-Phycoerythrin Labeling Kit-SH、R-Phycoerythrin Labeling Kit-NH2、R-Phycoerythrin Labeling Kit-SH:株式会社同仁化学研究所)、蛍光標識キット(Fluorescein Labeling Kit-NH2、HiLyte Fluor(登録商標) 555 Labeling Kit-NH2、HiLyte Fluor(登録商標) 647 Labeling Kit-NH2:株式会社同仁化学研究所)、DyLight547、DyLight647(テクノケミカル株式会社)、Zenon(登録商標)Alexa Fluor(登録商標)抗体標識キット、Qdot(登録商標)抗体標識キット(インビトロゲン社)、EZ-Label Protein Labeling Kit(フナコシ株式会社)等を用いて標識することもできる。また、標識した抗体又はその断片の検出は、適宜標識に適した機器を使用することにより行うことができる。
本実施形態の免疫学的方法が、タウ蛋白質を認識する2種類の抗体の組み合わせを用いたサンドイッチELISA法であってよい。
前記2種類の抗体の組み合わせは、
(1)タウ蛋白質を認識する第一抗体;及び
(2)タウ蛋白質を認識する第二抗体であって、該抗体は前記第一抗体とは異なる部分を認識する抗体であり、かつ前記第一抗体と組み合わせてサンドイッチELISA法を行ったとき、非神経変性疾患患者の血液検体に対する反応性と比較して、ALS患者の血液検体に対して1.5倍以上高い反応性を示す抗体の組み合わせである。
本実施形態において、タウ蛋白質を認識する2種類の抗体の組み合わせは、これらの抗体を用いたサンドイッチ法による免疫学的方法で、ALS患者(例えば、3検体を混和したもの)の血液検体と非神経変性疾患患者(例えば、3検体を混和したもの)の血液検体とを試料として反応性を比較した時に、ALS患者の試料に対して高い反応性を示す抗体の組み合わせであり、非神経変性疾患患者の試料に対する反応よりも、例えば1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.75倍以上の反応を示す抗体の組み合わせであり、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.6倍以上、さらに好ましくは1.7倍以上、またさらに好ましくは1.75倍以上の反応を示す抗体の組み合わせである。
<ALSの血液検査方法>
本発明の他の実施形態は、上述のバイオマーカーの定性的又は定量的な測定方法を含む、ALSの血液検査方法である。
当該血液検査はALSの検査を行うことができる限り特に限定されないが、例えば、当該血液検査によって、タウ蛋白質の存在を確認することができたとき、検査対象がALSを有すると判断してもよく、ALSを有する可能性があると判断してもよい。また、例えば、タウ蛋白質の定量的な測定結果に基づき、血液中のタウ蛋白質の濃度が、ALSを有しないコントロール検体における測定結果と比較して大きいとき、または血液中のタウ蛋白質の濃度が一定濃度以上(すなわち、カットオフ値以上)であるとき、検査対象がALSを有すると判断してもよく、ALSを有する可能性があると判断してもよい。カットオフ値は予め定めておいてもよく、検査ごとに定めてもよい。
なお、ALSの検査において、ALSを有しないコントロール検体とは、健常者検体であってもよく、非神経変性疾患を有する患者の検体であってもよく、またはALS以外の疾患を有する患者の検体であってもよい。
また、当該血液検査は、検査対象がALSを有すると、アルツハイマー病や多発性硬化症などの他の疾患と区別して鑑別診断するための検査であってよい。ALSの鑑別診断を行うことができる限り特に限定されないが、例えば、当該血液検査によって、タウ蛋白質の存在を確認することができたとき、検査対象がALSを有する鑑別診断することができる。タウ蛋白質の定量的な測定結果に基づき、血液中のタウ蛋白質の濃度が、ALSを有
しないコントロール検体における測定結果と比較して大きいとき、または血液中のタウ蛋白質の濃度が一定濃度以上(すなわち、カットオフ値以上)であるとき、検査対象がALSを有する鑑別診断することができる。カットオフ値は予め定めておいてもよく、検査ごとに定めてもよい。
なお、ALSの鑑別診断において、ALSを有しないコントロール検体とは、健常者検体であってもよく、非神経変性疾患を有する患者の検体であってもよく、ALS以外の疾患を有する患者の検体であってもよく、またはALS以外の疾患であってALSと鑑別する必要がある疾患(例えば、アルツハイマー病や多発性硬化症など)を有する患者の検体であってもよいが、好ましくは、ALS以外の疾患であってALSと鑑別する必要がある疾患を有する患者の検体である。
ALSの鑑別診断における、血液中のタウ蛋白質濃度のカットオフ値は、特に限定されないが、例えば、60pg/mlとしてもよく、70pg/mlとしてもよい。
ALSの鑑別診断は、任意の他の検査と組み合わせて行ってもよい。
本実施形態のバイオマーカーは、任意の他のバイオマーカーや検査と組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の検査方法により測定された血液検体中のタウ蛋白質濃度は、健常者、神経変性疾患以外の有病者、アルツハイマー病(AD)患者、多発性硬化症(MS)患者に比べて、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で有意に高値を示す。従って、本実施形態の方法は、ALSの診断のために利用できる。特に鑑別が難しいADやMSなどの神経変性疾患との鑑別診断のために有用である。
<血液検査用キット>
本発明の他の実施形態は、タウ蛋白質を認識する2種類の抗体の組み合わせを含む、ALSの血液検査用キットであって、
前記キットは、サンドイッチELISA法に用いられるものであり、
前記2種類の抗体の組み合わせが、
(1)タウ蛋白質を認識する第一抗体;及び
(2)タウ蛋白質を認識する第二抗体であって、該抗体は前記第一抗体とは異なる部分を認識する抗体であり、かつ前記第一抗体と組み合わせてサンドイッチELISA法を行ったとき、非神経変性疾患患者の血液検体に対する反応性と比較して、ALS患者の血液検体に対して1.5倍以上高い反応性を示す抗体
の組み合わせである、前記キット。である。
キットは、少なくとも上記2種類の抗体の組み合わせ含む、血液検体中のタウ蛋白質を測定することによってALSの血液検査を行うためのキットである。当該抗体は、上記<バイオマーカーの定性的又は定量的な測定方法>の項に記載した方法に従って作製されたものを用いることができる。その他にも免疫学的方法を実施するために必要な構成物品を含むことができ、例えば、検出用抗体、標識物質、標準品、ブロッキング剤、洗浄液、検出試薬、反応停止液、ELISAプレート等を含んでもよい。キットは目的に応じて当業者に慣用の技術を用いて製造することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1.タウ蛋白質に特異的な抗体の取得>
(1)マウス、ラットへの免疫
タウ蛋白質に特異的な抗体を取得するために、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有
するリコンビナントタウ蛋白質441(#AG960 Tau441/E.Coli(1mg/mL):Merck Millipore)と完全フロイントアジュバンド(GIBCO社)とを体積において1対1の割合で混和して乳化させた。得られたエマルジョンを10μg/0.2mLの量で、BDF1マウス(6週齢;雌;入手元:チャールス・リバー)およびWistarラット(6週齢;雌;入手元:チャールス・リバー)に対して、1週間間隔で4回、皮下又は皮内に投与した。
(2)抗タウ蛋白質抗体産生ハイブリドーマの作製
最終免疫の2日後にリンパ節を摘出した。摘出したリンパ節から得られたリンパ節細胞と骨髄腫細胞X63-Ag8.653(入手元:ATCC)とを細胞数において5対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール1500(Roche社)存在下にて細胞融合させた。得られたハイブリドーマはリンパ節細胞として2.5×10細胞/mLになるようにHAT培地(入手元:ATCC)に懸濁し、96穴培養プレート(CORNING社)に0.1mLずつ分注した。5%COインキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマが生育したウェルの培養上清について、下記のスクリーニング法に従って抗体産生株を選択した。次に、選択した抗体産生株を限界希釈法によりクローニングした後、同様のスクリーニング法によってクローン化抗体産生株を選択した。
[スクリーニング法]
リコンビナントタウ蛋白質441を100mM-炭酸緩衝液(pH9.5)で200ng/mLの濃度に調整後、96穴ELISAプレート(ヌンク社)に50μL/ウェル加え、4℃で一夜インキュベートした。プレートをPBSで2回洗浄後、ブロッキング液(1%BSAを含むPBS)を200μL/ウェル加え、1時間ブロッキングした。ブロッキング液を除去後、細胞融合後の培養液を希釈液にて2倍に調整し、50μL/ウェル加え室温で30分間反応させた。洗浄液(10mM-リン酸緩衝液(pH7.5),0.05%Tween20)で4回洗浄した後、マウスモノクローナル抗体に対してはペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGヤギ抗体(SouthernBiotech社)を50μL/ウェル加え、ラットモノクローナル抗体に対してはペルオキシダーゼ標識抗ラットIgGヤギ抗体(SouthernBiotech社)を50μL/ウェル加え、室温で15分間インキュベートした。洗浄液で5回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質溶液(入手元:IBL)を50μL/ウェル加えた。10分後、1.5N硫酸を50μL/ウェル加え、波長490nmにおける吸光度を測定し、精製タウ蛋白質に対して高い反応を示す抗体産生株を選択した。
(3)ウェスタンブロッティング法によるモノクローナル抗体の特異性の解析
ヒトタウ蛋白質441をコードする遺伝子であるヒトタウ441遺伝子のクローニングおよび哺乳類細胞系での発現を行った。配列番号2で表される塩基配列を有する既知のヒトMicrotubule-associated protein Tau cDNA配列(RefSeq:P10636)に基づいて合成したフォワードプライマー(配列番号3)及びリバースプライマー(配列番号4)を用いて、PCR法によりヒト脳cDNA(Clonetech社)からヒトタウ441遺伝子の全長cDNAを増幅させた。増幅産物をEcoRI及びXhoIで消化し、pcDNA3.4(+)ベクター(Invitrogen社)に挿入し、E.coli JM109細胞(Takara社)の形質転換に用いた。シーケンス解析の結果、PCR法によってクローン化したヒトタウ441遺伝子のcDNAは完全に配列決定された。
次にExpi293 system(入手元:Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造業者の指示に従い、Expi293細胞にヒトタウ441遺伝子発現ベクターをトランスフェクションし、その培養上清を回収した。培養上清をSDS-PAGE後、ウェスタンブロッティング法によりモノクローナル抗体を解析した。
その結果、後述の方法により調製した、抗タウ蛋白質抗体産生ハイブリドーマが産生したモノクローナル抗体であるE22A3抗体及びR103C1A5抗体は、ヒトタウ蛋白質に特異的に反応した(図1)。
(4)モノクローナル抗体の調製
抗タウ蛋白質抗体産生ハイブリドーマE22A3、m40A1及びR103C1A5はそれぞれ、Integra classic1000(Integra社)において高密度培養し、上清を等量の吸着用緩衝液(20mM-リン酸緩衝液pH7.0)と混和後、この培養上清を吸着用緩衝液で平衡化したプロテインGカラム(ファルマシア)に通して抗体をカラムに吸着させ、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させて、モノクローナル抗体であるE22A3抗体、m40A1抗体及びR103C1A5抗体を精製した。
<実施例2.モノクローナル抗体の選択>
(1)サンドイッチELISA系の構築
実施例1で取得したモノクローナル抗体であるE22A3抗体及びm40A1抗体を、100mM-炭酸緩衝液(pH9.5)で5μg/mLの濃度に調整後、96穴ELISAプレート(ヌンク社)に100μL/ウェル加え、4℃で二夜インキュベートすることにより固相化した。プレートをPBSで2回洗浄後、ブロッキング液(1%BSAを含むPBS)を200μL/ウェル加え、1時間ブロッキングした。ブロッキング液を除去後、リコンビナントタウ蛋白質441を標準品として、希釈液(50μg/mL Normal Mouse IgG, 0.5M NaCl, 0.5%エマルゲン109P混合1% BSA, 0.05% Tween-20含有PBS)にて希釈したヒト血漿(希釈倍率2~128倍)を100μL/ウェル加え、4℃で一夜インキュベートした。洗浄液(10mM-リン酸緩衝液(pH7.5),0.05%Tween20)で4回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識したモノクローナル抗体であるR103C1A5抗体を100μL/ウェル加え、4℃で30分間インキュベートした。洗浄液で5回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質溶液を100μL/ウェル加えた。30分後、1.5N硫酸を100μL/ウェル加え、450nmにおける吸光度を測定した。
(2)抗体の選択
上述のELISA法により、ALS患者プール血漿(N=3)及び非神経変性疾患患者プール血漿(N=3)との反応性を検討した。その結果、図2に示す通り、固相抗体(E22A3抗体)と標識抗体(R103C1A5抗体)の組み合わせ(Method 1)及び固相抗体(m40A1抗体)と標識抗体(R103C1A5抗体)の組み合わせ(Method2)は、共にALS患者プール血漿及び非神経変性疾患患者プール血漿と反応することが示されたが、Method 2の反応がALS患者プール血漿と非神経変性疾患患者プール血漿に対して同等であるのに対して、Method 1はALS患者プール血漿に対して高い反応を示した。具体的には、Method 2の場合は、ALS患者プール血漿に対する反応性と非神経変性疾患患者プール血漿に対する反応性を吸光度で表すとそれぞれ0.100及び0.095であり、ALS患者プール血漿に対する反応が非神経変性疾患患者プール血漿に対する反応と比較して同等(1.05倍)であった。その一方で、Method 1の場合は、ALS患者プール血漿に対する反応性と非神経変性疾患患者プール血漿に対する反応性を吸光度で表すとそれぞれ0.294及び0.168であり、ALS患者プール血漿に対する反応が非神経変性疾患患者プール血漿に対する反応と比較して高い(1.75倍)ものであった。
<実施例3.モノクローナル抗体によるヒト血漿中のタウ蛋白質の測定>
(1)対象検体
アルツハイマー病(AD)患者血漿:12例
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者血漿:10例
多発性硬化症(MS)患者血漿:8例
非神経変性疾患(コントロール):9例
(2)ELISA法によるヒト血漿中のタウ蛋白質の測定
実施例1で取得したモノクローナル抗体であるE22A3抗体を、100mM-炭酸緩衝液(pH9.5)で5μg/mLの濃度に調整後、96穴ELISAプレート(ヌンク社)に100μL/ウェル加え、4℃で二夜インキュベートすることにより固相化した。プレートをPBSで2回洗浄後、ブロッキング液(1%BSAを含むPBS)を200μL/ウェル加え、1時間ブロッキングした。ブロッキング液を除去後、リコンビナントタウ蛋白質441を標準品(5.0~317.0pg/mL)として、希釈液にて希釈したヒト血漿(希釈倍率2倍)を100μL/ウェル加え、4℃で一夜インキュベートした。洗浄液で4回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識したモノクローナル抗体であるR103C1A5抗体を100μL/ウェル加え、4℃で30分間インキュベートした。洗浄液で5回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質溶液を100μL/ウェル加えた。30分後、1.5N硫酸を100μL/ウェル加え、450nmにおける吸光度を測定した。
(3)測定結果
図3に示す通り、ALS患者血漿群におけるタウ蛋白質量は、AD患者血漿群、MS患者血漿群及びコントロール血漿群におけるタウ蛋白質量と比較して、有意に高値を示した(t検定、p<0.001)。また、表1に示す通り、タウ蛋白質量のカットオフを60pg/mLとしたとき、ALS患者における陽性率は70%であった。

<実施例4.モノクローナル抗体の各種タウ蛋白質への反応性の検討>
(1)ヒトタウ蛋白質441、ヒトタウ蛋白質758の発現
ヒトタウ蛋白質441をコードする遺伝子であるヒトタウ441遺伝子のクローニングおよび哺乳類細胞系での発現を行った。配列番号2で表される塩基配列を有する既知のヒトMicrotubule-associated protein Tau cDNA配列(RefSeq:P10636)に基づいて合成したフォワードプライマー(配列番号3)及びリバースプライマー(配列番号4)を用いて、PCR法によりヒト脳cDNA(Clonetech社)からヒトタウ441遺伝子の全長cDNAを増幅させた。増幅産物をEcoRI及びXhoIで消化し、pcDNA3.4(+)ベクター(Invitrogen社)に挿入し、E.coli JM109細胞(Takara社)の形質転換に用いた。シーケンス解析の結果、PCR法によってクローン化したヒトタウ441遺伝子のcDNAは完全に配列決定された。
また、ヒトタウ蛋白質758をコードする遺伝子であるヒトタウ758遺伝子の合成および哺乳類細胞系での発現を行った。既知のヒトMicrotubule-associated protein Tau cDNA配列(RefSeq:P10636)に基づいて、ヒトタウ758遺伝子の全長cDNAを得た(遺伝子合成はFASMAC社が行った)。その後、得られたcDNAをpcDNA3.4(+)ベクター(Invitrogen社)に挿入し、E.coli JM109細胞(Takara社)の形質転換に用いた。シーケンス解析の結果、クローン化したヒトタウ758遺伝子のcDNAは完全に配列決定された。
次にLipofectamine2000(Invitrogen社)を用いて、製造業者の指示に従い、CHO細胞(ATCC)にヒトタウ441遺伝子発現ベクターおよびヒトタウ758遺伝子発現ベクターをトランスフェクションし、その培養上清(Sup)を回収した。培養上清をELISA法(固相抗体(E22A3抗体)及び標識抗体(R103C1A5抗体)の組み合わせ)の反応性確認に供した。
(2)ELISA法によるヒトタウ蛋白質441およびヒトタウ蛋白質758への反応性確認
実施例1で取得したモノクローナル抗体であるE22A3抗体を、100mM-炭酸緩衝液(pH9.5)で5μg/mLの濃度に調整後、96穴ELISAプレート(ヌンク社)に100μL/ウェル加え、4℃で二夜インキュベートすることにより固相化した。プレートをPBSで2回洗浄後、ブロッキング液(1%BSAを含むPBS)を200μL/ウェル加え、1時間ブロッキングした。ブロッキング液を除去後、CHO細胞で発現させた培養上清、リコンビナントタウ蛋白質441およびリコンビナントタウ蛋白質758を希釈液にて希釈(希釈倍率2,560から2,621,440倍)を100μL/ウェル加え、4℃で一夜インキュベートした。洗浄液で4回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識したモノクローナル抗体であるR103C1A5抗体を100μL/ウェル加え、4℃で30分間インキュベートした。洗浄液で5回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質溶液を100μL/ウェル加えた。30分後、1.5N硫酸を100μL/ウェル加え、450nmにおける吸光度を測定した。
その結果、図4に示す通り、固相抗体(E22A3抗体)及び標識抗体(R103C1A5抗体)の組み合わせは、ヒトタウ蛋白質441およびヒトタウ蛋白質758の何れにも反応することが示された。よって、当該ELISA法はヒトタウ蛋白質441、ヒトタウ蛋白質758等の各種ヒトタウ蛋白質の測定に利用できることが示唆された。

Claims (9)

  1. タウ蛋白質を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の血液検査用バイオマーカー。
  2. 前記タウ蛋白質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列若しくはその一部と同一のアミノ酸配列、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列と90%以上同一のアミノ酸配列若しくはその一部と同一のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のバイオマーカー。
  3. 前記検査が、ALS鑑別診断のための検査である、請求項1に記載のバイオマーカー。
  4. 生体から採取された血液検体について、請求項1~3の何れかに記載のバイオマーカーを測定する工程を含む、ALSの検査方法。
  5. ALSの鑑別診断のために使用される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記血液検体が、全血、血清又は血漿である、請求項4に記載の方法。
  7. 前記バイオマーカーの測定が、免疫学的方法により行われる、請求項4に記載の方法。
  8. 前記免疫学的方法が、タウ蛋白質を認識する2種類の抗体の組み合わせを用いたサンドイッチELISA法であって、
    前記2種類の抗体の組み合わせが、
    (1)タウ蛋白質を認識する第一抗体;及び
    (2)タウ蛋白質を認識する第二抗体であって、該抗体は前記第一抗体とは異なる部分を認識する抗体であり、かつ前記第一抗体と組み合わせてサンドイッチELISA法を行ったとき、非神経変性疾患患者の血液検体に対する反応性と比較して、ALS患者の血液検体に対して1.5倍以上高い反応性を示す抗体
    の組み合わせである、請求項7に記載の方法。
  9. タウ蛋白質を認識する2種類の抗体の組み合わせを含む、ALSの血液検査用キットであって、
    前記キットは、サンドイッチELISA法に用いられるものであり、
    前記2種類の抗体の組み合わせが、
    (1)タウ蛋白質を認識する第一抗体;及び
    (2)タウ蛋白質を認識する第二抗体であって、該抗体は前記第一抗体とは異なる部分を認識する抗体であり、かつ前記第一抗体と組み合わせてサンドイッチELISA法を行ったとき、非神経変性疾患患者の血液検体に対する反応性と比較して、ALS患者の血液検体に対して1.5倍以上高い反応性を示す抗体
    の組み合わせである、前記キット。
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