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JP2024062951A - 誘電体、誘電体の製造方法及びトランスデューサー - Google Patents

誘電体、誘電体の製造方法及びトランスデューサー Download PDF

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JP2024062951A
JP2024062951A JP2023177083A JP2023177083A JP2024062951A JP 2024062951 A JP2024062951 A JP 2024062951A JP 2023177083 A JP2023177083 A JP 2023177083A JP 2023177083 A JP2023177083 A JP 2023177083A JP 2024062951 A JP2024062951 A JP 2024062951A
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JP2023177083A
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一帆 佐伯
Kazuho SAEKI
卓之 平谷
Takuyuki Hiratani
政浩 渡辺
Masahiro Watanabe
涼 小川
Ryo Ogawa
哲男 日野
Tetsuo Hino
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Canon Inc
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Abstract

【課題】高い誘電性で低ヒステリシスロス、かつ高い柔軟性を有する誘電体。【解決手段】誘電体であって、該誘電体が、ポリウレタンエラストマーと、該ポリウレタンエラストマー中のイオン液体と、を含み、該ポリウレタンエラストマーは、マトリックスと、該マトリックスに分散されているドメインと、を有し、該ドメインは、特定のポリエーテル構造を含む。【選択図】図2

Description

本開示は、誘電体、誘電体の製造方法及びトランスデューサーに関する。
誘電体と、当該誘電体を挟持する少なくとも二つの電極と、からなるトランスデューサーは、誘電体の変形(伸縮及び収縮)を利用して電気的エネルギーと機械的エネルギーを高い変換効率で相互変換する素子として、様々な分野で応用が進んでいる。例えば、外力による誘電体の変形により生じる電気的エネルギーを出力として得る場合にはセンサーや発電素子としての応用が可能である。また、一対の電極間に電位差を付与することで誘電体中に応力を発生させることでアクチュエーターとして機能させることも可能である。
このような駆動用途、センサー用途及び発電用途で誘電体を使用する場合には、以下の特性が重要となる。すなわち、変換効率を高める観点からは高い誘電率を有していること、変形容易性の観点からは柔軟性を有していること、さらに変形サイクルによるエネルギー損失を低減する観点からは低ヒステリシスロス性を有していることが好ましい。
例えば特許文献1には誘電体としてポリオレフィンポリオールを含むエラストマー組成物を使用した誘電センサーが開示されている。また特許文献2には、ブロックポリマーを用いたミクロ層分離構造中にイオン性液体を偏在させることで、高誘電率層と低誘電率層がミクロ相分離構造の形態に応じてナノオーダーで形成させて高い誘電率を実現する誘電体が開示されている。
特開2022-069960号公報 特開2021-034207号公報
Sustainability 2021, 13(17), 9881 L.K. Huang and M.J.J. Wang. Image thresholding by minimizing the measures of fuzziness. Pattern recognition, 28(1):41-51, 1995. 1, 2.1 IEEE Transactions on SYSTEMS, MAN, AND CYBERNETICS, Vol. SMC-9, No. 1, January 1979, pp. 62-66
しかしながら、特許文献1に係る誘電体は柔軟性を有しているものの、ヒステリシスロスが高く変形に伴うエネルギー損失が大きい傾向がある。また、特許文献2に係るスチレン系重合体とアクリル酸エステル系重合体からなるブロックポリマーについては優れた柔軟性を実現することが困難である。
このように、トランスデューサーとして誘電体を使用する際に求められる諸特性を両立することは困難であった。
本開示の少なくとも一つの態様は、高い誘電率で、低ヒステリシスロス、かつ高い柔軟性を有する誘電体に向けたものである。また、本開示の少なくとも一つの態様は、該誘電
体の製造方法に向けたものである。また、本開示の少なくとも一つの態様は、該誘電体を備えるトランスデューサーに向けたものである。
本開示の一形態によれば、誘電体であって、
該誘電体が、ポリウレタンエラストマーと、該ポリウレタンエラストマー中のイオン液体と、を含み、
該ポリウレタンエラストマーは、マトリックスと、該マトリックスに分散されているドメインと、を有し、
該ドメインは、下記式(1)で示される第1の構造を含む、誘電体が提供される。
Figure 2024062951000002


式(1)中、Rは、炭素数3~6のアルキレン基を示す。
また、本開示の別の形態によれば、上記誘電体の製造方法であって、
(i)少なくとも1個のイソシアネート基を有する第1のウレタンプレポリマーと、少なくとも2個の水酸基を有する第1のポリカーボネートポリオールとを反応させて少なくとも2個の水酸基を有する第2のウレタンプレポリマーを得る工程、
(ii)該第2のウレタンプレポリマーの少なくとも一部を含む液滴を第2のポリカーボネートポリオール中に分散させた第1の分散体を得る工程、
(iii)該第1の分散体に前記イオン液体を分散させた第2の分散体を得る工程、及び、
(iv)該第2の分散体、及び、少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含む誘電体形成用混合物を調製し、次いで、該誘電体形成用混合物中の該第2のウレタンプレポリマー、該第2のポリカーボネートポリオール、及び該ポリイソシアネートを反応させて前記誘電体を形成する工程、
を有する誘電体の製造方法が提供される。
さらに、本開示の別の形態によれば、上記の誘電体を使用したトランスデューサーであって、少なくとも二つの電極と、該電極に挟持される上記の誘電体を有するトランスデューサーが提供される。
本開示の少なくとも一つの態様によれば、高い誘電性で低ヒステリシスロス、かつ高い柔軟性を有する誘電体が提供される。また、本開示の少なくとも一つの態様によれば、上記誘電体の製造方法を提供される。さらに、また、本開示の少なくとも一つの態様によれば、上記誘電体を備えたトランスデューサーが提供される。
本開示に係る誘電体の製造方法を表す模式図 実施例1で製造した誘電体断面の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるイオン性液体の分布を示す写真(図面代用写真) 実施例1及び比較例1で製造した誘電体の動的粘弾性測定(DMA)により得られる温度-損失正接(tanδ)曲線を示すグラフ 本発明の実施形態に係るトランスデューサーの模式図
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。本開示において、例えば「XX、YY及びZZからなる群から選択される少なくとも一つ」のような記載は、XX、YY、ZZ、XXとYYとの組合せ、XXとZZとの組合せ、YYとZZとの組合せ、又はXXとYYとZZとの組合せのいずれかを意味する。
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態はあくまでも一例であり、本開示はこれら実施形態に限定されるものではない。
<ポリウレタンエラストマー>
ポリウレタンエラストマーは、マトリックスと、該マトリックスに分散されているドメインを有する。ドメインは、下記式(1)で示される第1の構造(ポリエーテル構造)を含む。
Figure 2024062951000003
式(1)中、Rは、炭素数3~6のアルキレン基を示す。
一般的に、ポリエーテル構造を有するポリオール(ポリエーテルポリオール)とポリイソシアネートとの反応により得られるポリウレタンは、エーテル基間で弱い分子間力を有する。そのことに起因して、硬度を極めて低く抑えられるため、ポリウレタンエラストマーへの柔軟性の付与に好適である。一方、その弱い分子間力に起因して後述するイオン液体の移動性が高いという性質があり、電場の印加によりイオン電荷が局所的に集中する現象(空間電荷の蓄積)が生じることによって絶縁破壊しやすいという性質がある。
ドメインは、好ましくは式(1)で表されるポリエーテル構造を少なくとも一つ有し、より好ましくは複数個有する。ドメインが、式(1)で示されるポリエーテル構造を複数個有する場合において、該ポリエーテル構造は、繰り返し構造単位であることができる。
マトリックスは、第1の構造を含むドメインと相分離するものであれば、特に限定されない。後述するように柔軟性・低ヒステリシスロスを両立する観点からは、マトリックスとドメインとの相分離が明瞭であることが好ましい。すなわち、マトリックスは、ドメインが含むポリエーテル構造との低い相溶性を有するものが好ましく、下記式(2)で表される、第2の構造(ポリカーボネート構造)を有することが好ましい。
Figure 2024062951000004
式(2)中、Rは、炭素数3~12のアルキレン基を示す。
一般に、ポリカーボネート構造を有するポリオール(ポリカーボネートポリオール)とポリイソシアネートとの反応により得られるポリウレタンは、カーボネート基間で強い分子間力を有する。そのことに起因して、後述するイオン液体の移動性が低く、前述の空間電荷の蓄積が生じにくいことから耐絶縁破壊性に優れるといった特徴を有する。加えて、その強い分子間力に起因して良好な摩擦特性や高い耐摩耗性といった機械的特性を示す。
マトリックスは、式(2)で表されるポリカーボネート構造を少なくとも1つ有し、好ましくは複数個有する。マトリックスが、式(2)で示されるポリカーボネート構造を複数個有する場合において、該ポリカーボネート構造は、繰り返し構造単位であることができる。
ポリウレタンエラストマーが、マトリックス・ドメイン構造を形成していれば、誘電体の外表面の少なくとも一部がマトリックスで構成されていてもよい。例えば、誘電体の外表面のすべてがマトリックスで構成されていてもよい。
本開示に係るポリウレタンエラストマーは、ドメインとマトリックスとを含むドメイン・マトリックス構造を有する。そして該ドメインは第1の構造を含む。ポリウレタンエラストマーがこのような構成にある場合、優れた柔軟性に加えて、低ヒステリシスロスが両立しうることを本発明者らは見出した。
この理由としては、ドメイン全体がエントロピー弾性の効果により、軟らかい架橋点として機能するため、ポリウレタンエラストマーが圧縮等の外力に対して塑性変形することなく、優れた弾性(エントロピー弾性)を発揮するためと考えられる。その結果、優れた柔軟性と低ヒステリシスロスの両立が実現可能になったと考えられる。
また、ドメインに由来する柔軟性を最大限活用する観点においては、ドメインとマトリックスの相分離が明瞭であることが好ましい。さらに、マトリックスとドメインとが、界面においてウレタン結合により化学的に連結していることが好ましい。マトリックスとして式(2)で表される、ポリカーボネート構造を有する第2の構造を有する場合が特に好ましい。この場合に柔軟性・低ヒステリシスロスの両立をより高度に実現することが可能となる。
さらに本開示に係るポリウレタンエラストマーはドメイン・マトリックス構造を有していることによって、マトリックスとドメインの各々に異なる機能を担わせることが可能である。その一例として、マトリックスとして式(2)で表される、ポリカーボネート構造を有する第2の構造を有する場合には、柔軟性・低ヒステリシスロスに加えて、耐絶縁破壊性、耐摩耗性及び低摩擦特性を付与することが可能となる。
さらに驚くべきことに、本発明者らはポリウレタンエラストマーを含む誘電体がイオン液体を含む場合に高い誘電率をも発現しうることを見出した。その発現機構は明らかではないが、以下のように考えられる。すなわち、ポリウレタンエラストマーに含まれるポリエーテルポリオール由来のポリエーテル構造がイオン液体のカチオンを捕捉し安定化することにより、イオンペア間の相互作用が低下する。これにより、イオンペア間の平均距離が増加することで双極子の配向分極に基づく緩和成分が増大する事が考えられる。
また、誘電体の動的粘弾性測定(DMA)により得られる温度-損失正接(tanδ)曲線において、-80~+20℃の温度範囲で観察されるガラス転移によるピークが少なくとも2つ以上あることが好ましい。より好ましくは、-70~0℃の温度範囲で観察されるガラス転移によるピークが少なくとも2つ以上あることである。
これは、ポリエーテル構造を含むポリウレタンセグメントとマトリックスを形成するポリウレタンセグメントとが、マトリックス及びドメインの界面を介して明瞭に相分離していることを示している。
前述のように、ポリウレタンエラストマーに耐絶縁破壊性、耐摩耗性及び低摩擦特性を付与する場合には、マトリクスは、式(2)で表される、ポリカーボネート構造としての第2の構造を有することが好ましい。この場合には、誘電体のDMAにより得られる温度-tanδ曲線において、ガラス転移によるピークのうち少なくとも1つが-50℃以下
(好ましくは-80~-50℃)の温度範囲に観察され、またピークのうち少なくとも1つが-40℃以上(好ましくは-40~20℃)の温度範囲にあることが好ましい。より好ましくは、少なくとも1つが-60℃以下(より好ましくは-70~-60℃)の温度範囲にあり、また少なくとも1つが-35℃以上(より好ましくは-35~-10℃)の温度範囲にあることである。
一般的に、ポリエーテルのガラス転移によるピークは、-80℃~-50℃以下の温度範囲に観察される。また、ポリカーボネートのガラス転移によるピークは、-40℃~+20℃以下の温度範囲に観察される。したがって、ガラス転移によるピークが上記2つの温度範囲にあることは、第1の構造で構成されるセグメントと、第2の構造で構成されるセグメントとは相分離しており、さらに2つのセグメントがお互いほとんど相溶することなく存在している事を示す。
このような明瞭な相分離により、マトリックスへの第1の構造で構成されるセグメントの混入が抑えられている。このことにより、ポリウレタンエラストマーにおいてマトリクスとしてポリカーボネート構造を有する第2の構造を有する場合には、柔軟性・低ヒステリシスロスの両立をより高度に実現することが可能となる。それに加え、耐絶縁破壊性、良好な摩擦特性、及び高い耐摩耗性を達成することが可能となる。
誘電体におけるドメインが含む、式(1)で表されるポリエーテル構造を含む第1の構造について説明する。ドメインが含む、式(1)で表される第1の構造において、Rは、炭素数3~6のアルキレン基を示す。好ましくはRは、炭素数3~5の分岐構造を有するアルキレン基を示し、より好ましくは、炭素数3~4の分岐構造を有するアルキレン基を示す。
が炭素数3~6のアルキレン基であることにより、ポリマー鎖の柔軟性とエーテル基の密度が最適化され、後述するイオン液体由来のカチオンを安定化させる効果が担保される。また、Rが炭素数3~5の分岐構造を有するアルキレン基を含有することは、エーテル基間での分子間力を極めて低く抑え、低硬度を実現できるという観点からより好ましい。
としては、例えば、-(CH-(m=3~6(好ましくは3~5,より好ましくは3~4))、-CHCH(CH)-、-CHC(CHCH-、-CHCH(CH)CH-、-(CHCH(CH)CH-、-(CHCH(CH)(CH-などが挙げられる。ポリウレタンエラストマー中、Rは全て同一であっても、異なるRの組合せであってもよい。
式(1)で表されるポリエーテル構造の数平均分子量(Mn)は、ポリウレタンエラストマーにおける繰り返し単位として1000以上50000以下であることが好ましい。該数平均分子量は、原料ポリエーテルポリオールに基づくものである。より好ましくは、1200以上30000以下である。
数平均分子量が1000以上であることにより、ポリエーテル構造を含むセグメントがドメインを形成しやすくなる。さらに、数平均分子量が50000以下であることにより、相分離構造をより安定化させ得る。
誘電体におけるマトリックスの一例として開示した、式(2)で表されるポリカーボネート構造を含む第2の構造について説明する。式(2)中のRは、炭素数3~12のアルキレン基を示す。好ましくは、Rは、炭素数3~9のアルキレン基を示し、より好ましくは、炭素数3~6のアルキレン基を示す。
が炭素数3~12のアルキレン基であることにより、式(1)で表されるポリエーテル構造を含むセグメントとの低い相溶性が担保され、マトリックスとドメインとをより
明瞭に相分離させ得る。また、Rが炭素数3~12のアルキレン基を含有することにより、カーボネート基間での分子間力を適度に抑え、良好な摩擦特性、及び高い耐摩耗性と低硬度の両立が実現できるという観点からより好ましい。
としては、例えば、-(CH-(m=3~12(好ましくは3~9,より好ましくは5~7))、-CHC(CHCH-、-CHCH(CH)CH-、-(CHCH(CH)(CH-などが挙げられる。ポリウレタンエラストマー中、Rは全て同一であっても、異なるRの組合せであってもよい。
式(2)で表されるポリカーボネート構造の数平均分子量(Mn)は、ポリウレタンエラストマーにおける繰り返し単位として500以上10000以下であることが好ましい。該数平均分子量は、原料ポリカーボネートポリオールに基づくものである。より好ましくは、700以上8000以下である。数平均分子量が500以上である場合、式(1)で表される構造のポリエーテル構造を含むポリウレタンセグメントとの低い相溶性が担保され、マトリックスとドメインとの相分離がより明瞭化する。また、数平均分子量が10000以下とすることで、原料となるポリカーボネートポリオールの粘度上昇を抑制し得る。
ポリカーボネート構造の数平均分子量を含め後述のポリオールなどの数平均分子量は、いずれも、標準ポリスチレン分子量換算、又は水酸基価(mgKOH/g)と価数を用いて算出した値である。
ポリスチレン分子量換算による数平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。東ソー社製、高速GPC装置「HLC-8220GPC」に、カラム:Shodex GPCLF-804(排除限界分子量:2×10、分離範囲:300~2×10)の2本直列を用いて測定することができる。
水酸基価と価数を用いる場合、下記の数式によって算出することができる。例えば、56.1mgKOH/g、価数2のポリオールの数平均分子量は2000と算出することができる。
数平均分子量=56.1×1000×価数÷水酸基価
誘電体のドメインとマトリックスとが露出してなる断面に50μm×50μmの観察領域をおいて観察される、マトリックスのドメインに対する面積比率(マトリックス/ドメイン)は、40.0/60.0~90.0/10.0であることが好ましい。より好ましくは50.0/50.0~85.0/15.0であり、さらに好ましくは55.0/45.0~80.0/20.0である。マトリックス/ドメインの面積比率が上記範囲にある場合、相分離形態がより安定化し、安定的にマトリックス、及びドメインが形成されやすくなる傾向がある。
上記面積比率は、使用するドメインの材料及びマトリックスの材料の量により制御しうる。
ドメインとマトリックスとが露出してなる断面において観察される、ドメインの円相当径の算術平均値(平均径)は、0.2~30.0μmが好ましい。より好ましくは、0.5~20.0μmであり、さらに好ましくは、5.0~15.0μmである。平均径が0.2μm以上であると、より低硬度になりやすく、30.0μm以下であることにより相分離形態がより安定化する。
ドメインの円相当径は、例えば、後述する第1のウレタンプレポリマーを得る工程におけるイソシアネートインデックスを変化させることにより制御することができる。具体的には、イソシアネートインデックスを小さくすることにより円相当径を大きくし、イソシアネートインデックスを大きくすることにより円相当径を小さくしやすい。また、ドメインの円相当径は、使用するドメインの材料、分子量及びマトリックスの材料を混合する際
に印加するせん断力によっても制御することができる。
さらに、誘電体の断面の3カ所に50μm四方の観察領域を置いて観察したとき、円形度が0.60~0.95であるドメインの個数の、ドメインの総個数に占める割合が、70個数%以上であることが好ましい。より好ましくは80~99個数%であり、さらに好ましくは85~95個数%である。
円形度が上記の範囲内にあるドメインは、ドメインが変形から回復する際に、ドメインの形状が回復していく方向の異方性が生じにくい。そして、円形度が上記範囲内にあるドメインの数(割合)が多いことにより、変形からの回復もより異方性が生じにくい。言い換えれば、変形からの回復がより等方的な誘電体とすることができる。その結果、変形からの回復後に、変形回復の異方性に起因するシワ、歪み等が生じにくい。
上記個数割合は、例えば、金型に材料を注入する速度によって調整することができる。注入速度を遅くすると、材料に加わるせん断力も小さくなり、高い円形度を維持したまま加熱硬化させることができる。
なお、マトリックス/ドメインの面積比率、ドメインの平均径、及び円形度は、走査型電子顕微鏡を用いて得られた誘電体の断面像から算出する。具体的には後述する。
さらに、誘電体において、第1の構造を含むドメインの弾性率は、マトリックスの弾性率よりも低く設計されていることが好ましい。具体的には、ドメインとマトリックスとが露出してなる断面の、走査型プローブ顕微鏡による粘弾性像において測定される、ドメインの粘弾性項を示すパラメータをパラメータAとし、マトリックスの粘弾性項を示すパラメータをパラメータBとする。このとき、パラメータA及びBがA<Bを満たすことが好ましい。
誘電体におけるマトリックス、及び、ドメインの相対的な弾性率の差は、薄片化した誘電体を、走査型プローブ顕微鏡(SPM/AFM)で観察することにより測定することができる。走査型プローブ顕微鏡としては、日立ハイテクサイエンス社製の「S-Image」(商品名)を使用することができる。
また、薄片化するための装置としては、例えば鋭利なカミソリや、ミクロトーム、収束イオンビーム法(FIB)等が挙げられる。上記した装置の中でも、超薄の切片の調製が可能なウルトラミクロトームは特に好適に用いることができる。切片は計3枚作製し、任意の50μm四方の観察領域を選択し、合計3カ所の観察領域で粘弾性像の観察を行う。
SPMによる粘弾性像の測定モードは、マイクロ粘弾性ダイナミックフォースモード(Viscoelastic Dynamic Force Mode(VE-DFM))とする。また、カンチレバーとしては、DFM用のシリコン製マイクロカンチレバー(「SI-DF3」(商品名)、日立ハイテクサイエンス社製、ばね定数=1.9N/m)を用いる。さらに、走査周波数は0.5Hzとする。
なお、VE-DFM(マイクロ粘弾性DFM)とは、カンチレバーを共振させた状態で当該カンチレバーの振動振幅が一定となるように探針と測定試料の距離を制御しながら表面形状像を得ると同時に、粘弾性分布を測定するモードである。VE-DFMでは試料をZ方向に微小振動させて周期的な力を加えた際のカンチレバーのたわみ振幅から粘弾性分布を画像化する。試料が硬ければ、試料変形が少ない分、カンチレバー振幅が大きくなり、試料が軟らかければ、試料変形振動が誘起され、カンチレバー振幅は小さくなる。
得られた振幅を変位としてmVに変換したものが粘弾性項を示すパラメータとなる。従って、パラメータA及びパラメータBは、一つの観察試料に存在しているドメインの硬さ及びマトリックスの硬さの関係を示す指標となる。なお、VF-DFMにおいては、カン
チレバーの振幅の大きさは電圧で出力されるため、パラメータAとパラメータBの単位はmVとなる。また、その値が大きい方が弾性は高いことになる。
粘弾性像を取得した後、各観察領域で粘弾性項を示すパラメータをマトリックスとドメインで各10点求め、その算術平均値をドメインの粘弾性項を示すパラメータAとマトリックスの粘弾性項を示すパラメータBとする。測定手順は後述する。
パラメータAのパラメータBに対する比の値(A/B)は、0.65以下であることが好ましい。より好ましくは0.05~0.50、さらに好ましくは0.05~0.40、さらにより好ましくは0.10~0.30、特に好ましくは0.12~0.20である。A/Bが小さいほどマトリックスとドメインの粘弾性の差が大きくなるため、柔軟性と低ヒステリシスロスの両立がより達成しやすくなる。
粘弾性の差を高める方法としては、ドメインとマトリックスの相分離の明瞭性を高めることが有効であり、上述のようにマトリックスとして式(2)で表される、ポリカーボネート構造を有する第2の構造を有する事がこの観点においても好ましい。また後述するように、誘電体の製造工程において、マトリックスとして使用されるポリオールとドメインとして使用されるポリエーテルポリオールを予め反応させてウレタンプレポリマーとする製造工程を採用することも、相分離の明瞭性を高め、すなわち粘弾性の差を高める方法として有効である。
パラメータA及びBは、例えば、ドメイン及びマトリックスの弾性率によって調整することができる。マトリックスの弾性率は、例えば、マトリックス形成用の原料として、ポリイソシアネートの3量体化合物や多量体化合物を用いてマトリックスの架橋密度を上げることで高めることができる。ドメインの弾性率については、例えばドメイン形成用の原料としてのポリエーテルポリオールの分子量を大きくすることでドメインの架橋密度が下がり、弾性率は低くなる。
また、マトリックス及びドメインに含まれる成分の化学構造については、例えば、AFM赤外分光分析装置や顕微赤外分光分析装置、顕微ラマン分光分析装置などの分光分析装置、あるいは質量分析装置などを用いて分析することができる。
<イオン液体>
イオン液体とは、カチオン成分とアニオン成分とからなる液体であって、幅広い温度範囲で液体として存在する塩である。例えば、塩を構成するイオン種に比較的大きな有機イオンを用いることにより、100℃以下の融点を有する塩が挙げられる。イオン液体は該ポリウレタンエラストマーの誘電性を高める役割を担う。
カチオン成分としては特に限定されるものではないが、例えばイミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどからなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。これらの中でも、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。すなわち、イオン液体は、アンモニウム系イオン液体、イミダゾリウム系イオン液体からなる群から選択される少なくとも一のイオン液体が好ましい。
アンモニウムイオンは一般に他のカチオン骨格と比較して、還元電位に対する抵抗性が高く、すなわち広い電位窓を有する。そのため、場合によって高電場に晒されうるトランスデューサー用途の誘電体においては、電解反応の起こりにくいアンモニウムイオンで構成されるイオン液体を好適に使用しうる。
また、イミダゾリウムイオンを好適に使用しうる理由については以下の通りである。上述したようにポリウレタンエラストマーのドメインが含む、ポリエーテルポリウレタンに由来するポリエーテル構造がカチオンを安定化させることで、高誘電性が発現する。この観点において、イミダゾリウムイオンは正電荷が非局在化しており、さらに平面性を有しているため、ポリエーテル構造による安定化を受けやすく、またアニオンとのクーロン相互作用が他のカチオン骨格と比較して相対的に弱まっていることから高いレベルの高誘電率化が期待できる。また、その電荷非局在性に起因して、他のカチオン骨格と比較してイミダゾリウムイオンで構成されるイオン液体は一般的に粘度が低く、誘電体の製造工程におけるハンドリングの観点からも好適である。
アンモニウムイオンとしては、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)-メチル-オクチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)-メチル-デシルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N,N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(9-オクタデセン)-N-メチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。
また、イミダゾリウムイオンとしては、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-(3-ヒドロキシプロピル)-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウム、1-エチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウムなどからなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。
アニオン成分としては特に限定されるものではないが、ハロゲンイオン、BF 、PF 、CFSO 、(CFSO、(FSOなどからなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。誘電性を高める観点からはカチオンとアニオンの相互作用が高くないことが好ましい。したがって分子体積の大きなアニオンである、BF 、PF 、CFSO 、(CFSO、(FSOからなる群から選択される少なくとも一が特に好ましい。アニオンは、より好ましくはBF 、PF 、CFSO 及び(CFSOからなる群から選択される少なくとも一のアニオンである。
さらに、イオン液体は、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有することが好ましい。イソシアネート基と反応する反応性官能基としては、例えば水酸基などが挙げられる。イオン液体がイソシアネート基と反応する反応性官能基を有していることで、後述する該ポリウレタンエラストマーの製造工程において使用されるポリイソシアネートと反応し、ポリマーネットワーク中に組み込まれる。これにより、電場印加下におけるイオン液体の移動性が抑制され、空間電荷の蓄積による耐絶縁破壊性の低下を抑制することができる。また、イオン液体がポリマーネットワークに組み込まれることは、経時でイオン液体がブリードアウトしてしまうことを防ぐ観点からも有用である。例えば、カチオンが水酸基を有することが好ましい。
本開示において好適に使用しうるイオン液体の具体例としては、1-エチル-3メチルイミゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3メチルイミゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミ
ド、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-(3-ヒドロキシプロピル)-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-プロピルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジ
ニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピペリ
ジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2-ヒドロキシエチル)-メチル-オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2-ヒドロキシエチル)-メチル-デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(9-オクタデセン)-N-メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等からなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。
また、イオン液体の市販品としては、第一工業製薬株式会社製の「エレクセルAS-110」、「エレクセルMP-442」、「エレクセルIL-210」、「エレクセルMP-471」、「エレクセルMP-456」、「エレクセルAS-804」、三菱マテリアル株式会社製の「HMI-FSI」、日本カーリット株式会社製の「CIL-312」、「CIL-542」および「CIL-313」、広栄化学株式会社製のIL-Pシリーズ、IL-Aシリーズ、IL-Cシリーズ、IL-IMシリーズ、IL-APシリーズ、IL-OHシリーズ等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
イオン液体は誘電体においてマトリックスに偏在していることが好ましい。ここで偏在しているとは、以下の様に定義される濃度Dの濃度Cに対する比の値D/Cが、D/C>1.0を満たすことを示す。誘電体のドメインとマトリックスとが露出してなる断面において観察される、50μm×50μmの観察領域当たりのイオン液体の濃度を濃度Cとする。また、50μm×50μmの観察領域におけるマトリックスに含まれるイオン液体の濃度を濃度Dとする。
D/Cは、好ましくは1.0~3.0,より好ましくは1.2~2.0,さらに好ましくは1.3~1.7である。
D/Cは、誘電体中におけるマトリックス/ドメインの面積比率を下げることにより大きくすることができる。また、D/Cは、誘電体中におけるマトリックス/ドメインの面積比率を上げることにより小さくすることができる。
イオン液体がマトリックスに偏在している場合、良好な耐絶縁破壊性が得られやすい。この理由を説明するために、イオン液体がポリエーテルウレタンからなるドメインに多く存在している場合を考える。この場合、ポリエーテル鎖間には弱い分子間力が作用しているため、イオンが容易に移動できる環境となっており、電場の印加によってイオンがドメイン-マトリックス界面に集中することが考えられる。
通常であれば電場の開放に伴いイオンの界面集中は緩和されるが、トランスデューサー用途として誘電体を使用する場合、電場の繰り返し印加により上記現象が反復して起こることでイオン電荷の偏りが固定化されてしまう。この時、誘電体内部に局所的に電界が集
中する箇所が発生し絶縁破壊が発生しやすい環境となっていると考えられる。上記の理由により、イオン液体が誘電体のマトリックスに偏在していることが好ましい。イオン液体をマトリックスに偏在させるためには、マトリックスとドメインの相分離を明瞭化させることが有効であり、マトリックスが式(2)で表される、ポリカーボネート構造を有する第2の構造を有することが好ましい。
より好ましくは、イオン液体がマトリックスにおいてマトリックスとドメインの界面近傍に偏在していることが好ましい。ここで界面近傍に偏在しているとは、上記濃度Dと、下記の濃度D3と、がD3/D>1.0を満たすことを示す。濃度D3は、誘電体のドメインとマトリックスとが露出してなる断面において観察される、50μm×50μmの観察領域におけるマトリックスにおけるドメインの界面近傍に含まれるイオン液体の濃度である。
界面近傍の定義については後述する。イオン液体がこのような配置をとることで、ポリエーテルポリウレタンのエーテル構造によるカチオンの安定化が効果的に生じるため、より高いレベルの高誘電率化が期待できる。
イオン液体の濃度C及びDの算出方法について説明する。まず、誘電体を薄片化する。薄片化する手段としては、ミクロトームが挙げられる。
得られた切片の断面について任意の50μm四方の観察領域を設定し、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を使用して観察領域において検出されたフラグメントイオンの質量スペクトルを得る。飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)としては、nanoTOF II(アルバック・ファイ株式会社製)が挙げられる。
観察領域で得られたフラグメントイオンの質量スペクトルのうち、イオン液体のカチオン又はアニオン、あるいはそれらの分解物に相当するフラグメントイオンの強度を観察領域の輝度として、観察領域における輝度プロファイルを作製する。次いで、観察領域全域における平均輝度を観察領域内のイオン液体の濃度Cとして規定する。また観察領域のうちマトリックスに相当する領域の平均輝度をマトリックスに含まれるイオン液体の濃度Dとして規定する。
ここで界面近傍の定義、及び界面近傍におけるイオン液体濃度D3の算出方法についてさらに説明する。任意のドメインの領域をa1、その幾何中心をc1とする。また、同じ幾何中心c1を持ち、a1の相似図形であって相似比が1.2である領域a2を考える。
このときa2からa1を除いた領域a3をマトリックスにおけるドメインの界面近傍として規定する。このように各ドメインについて規定された近傍領域a3の和集合をA3とし、当該領域A3を界面近傍として定義する。前述の観察領域における輝度プロファイルについて領域A3における平均輝度を算出することで、界面近傍におけるイオン液体濃度D3を得ることができる。
なお、ドメイン同士の距離が近い場合など、a3に他のドメインが含まれる場合、そのドメイン部分はa3からは除外する。
誘電体におけるイオン液体の含有量は、誘電体の質量を基準として、0.5~8.0質量%が好ましい。より好ましくは2.0~8.0質量%であり、さらに好ましくは2.0~3.0質量%である。該イオン液体の含有量が0.5質量%以上である場合には、それよりも少ない場合と比較して、より高いレベルの高誘電率化が期待できる。さらに該イオン液体の含有量が2.0質量%以上である場合には、マトリックス-ドメイン界面におけるイオン液体の偏在化が効果的に生じさらに高度な高誘電率化が期待できる。また、該イオン液体の含有量が8.0質量%以下であることで、高誘電率化と耐絶縁破壊性の両立がより達成しやすい。
誘電体におけるイオン液体の存在の確認や、イオン液体の含有量の算出は以下の方法で行うことができる。イオン液体はイソシアネート基と反応する反応性官能基の有無、及び該反応基の反応性に応じて二つの形態で存在しうる。すなわち、イソシアネート基を介してポリマーネットワークに組み込まれた形態、ポリマーネットワークに組み込まれず遊離状態にある形態の二つである。
前者の形態にあるイオン液体の含有量は、例えばNMR、GC-MS、LC-MSを用いた構造解析により同定することができる。後者の形態にあるイオン液体の含有量は、イオン液体を表層から抽出して定量することで判断できる。抽出に用いる溶媒としては、前記イオン液体を溶解し得る溶媒を選択する。具体例としては、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。そして、抽出後の抽出液中の溶媒を、ロータリーエバポレーター等を用いて除去し、各種クロマトグラフィーによりイオン液体を単離することで、誘電体中のイオン液体の含有割合を定量できる。
<誘電体>
誘電体の比誘電率は10.0以上であることが好ましい。より好ましくは15.0以上である。ここで本開示における比誘電率とは室温下において100Hzの交流電圧印加時において観測される比誘電率である。比誘電率の上限は特に制限されない。比誘電率は、好ましくは10.0~200.0、より好ましくは15.0~100.0である。
比誘電率が当該範囲である時に、電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換効率に優れたトランスデューサー用の誘電体としてより好適に使用できる。比誘電率は、インピーダンスアナライザ(1260A、ソーラトロン社製)、誘電インターフェイス(1296A、ソーラトロン社製)を使用し、4端子サンプルホルダ(SH2-Z型、東陽テクニカ社製)に誘電体を挟み込み、室温下において交流電圧0.1Vpp、周波数0.01Hz-1MHzでスイープを行い100Hzにおける比誘電率を測定することにより得ることが可能である。
誘電体の比誘電率は、使用するドメインの材料及びマトリックスの材料の量(マトリックス/ドメインの面積比率)や化学構造、イオン液体の含有量により制御することができる。
また、誘電体のヤング率は2.5MPa以下であることが好ましい。より好ましくは0.1~2.5MPaであり、さらに好ましくは1.0~2.2MPaである。ここで本開示におけるヤング率とは室温下において1Hzの正弦波歪み印加下において得られる複素弾性率の実部である。ヤング率が該範囲であることによって、圧縮や引張などの外力に対して柔軟に変形することができる。ヤング率は、粘弾性測定装置(商品名:Rheogel-E4000、ユービーエム社製)を用いて、複素弾性率の周波数依存を測定することにより取得することができる。
該ヤング率は、使用するドメインの材料及びマトリックスの材料の量(マトリックス/ドメインの面積比率)や化学構造、架橋密度により制御することができる。
また、誘電体のヒステリシスロスは10%以下であることが好ましい。より好ましくは6%以下である。ここで本開示におけるヒステリシスロスとは、室温下において、誘電体に変位33%、変位速度0.275mm/sec、変位往復回数5回の条件で応力-歪み曲線を取得した時に、下記式から算出される値のことを指す。
ヒステリシスロス[%]=(1-(弾性変形仕事量/全変形仕事量))×100
ヒステリシスロスは、使用するドメインの材料及びマトリックスの材料の量(マトリックス/ドメインの面積比率)や化学構造、架橋密度により制御することができる。
ヒステリシスロスが当該範囲にあることで、回復性に優れ変位に伴うエネルギー損失の低いトランスデューサー用の誘電体としてより好適に使用できる。ヒステリシスロスは、
粘弾性測定装置(商品名:Rheogel-E4000、ユービーエム社製)を用いて引張モードにて上記のプロトコルに従い応力-歪み曲線を測定することで算出することが可能である。
ヒステリシスロスは低いほど好ましく、下限は特に制限されない。ヒステリシスロスは、例えば0~10%、1~6%が挙げられる。
さらに、誘電体の絶縁破壊強度は15kV/mm以上であることが好ましい。より好ましくは20kV/mm以上である。ここで本開示における絶縁破壊強度とは、室温において歪みを印加していない誘電体において、5mAを超えるリーク電流が検知される電場強度として規定される。絶縁破壊強度が上記範囲にあることで、より高電圧条件での使用に耐えうるトランスデューサー用の誘電体として好適に使用できる。絶縁破壊強度は、耐電圧試験機(GPT-9903A、テクシオ・テクノロジー社製)を使用して、誘電体に印加する電場強度を変えながらリーク電流を検知することで取得することができる。
絶縁破壊強度の上限は特に制限されない。絶縁破壊強度は、例えば15~100kV/mm、20~50kV/mmが挙げられる。
絶縁破壊強度は、使用するドメインの材料及びマトリックスの材料の量(マトリックス/ドメインの面積比率)や化学構造、イオン液体の含有量により制御することができる。
<誘電体の製造方法>
誘電体は、例えば、下記工程(i)~工程(iv)を有する方法によって合成することができる。誘電体は、下記工程(i)~工程(iv)を有する方法で製造された誘電体であることが好ましい。
工程(i):少なくとも1個(好ましくは少なくとも2個)のイソシアネート基を有する第1のウレタンプレポリマーと、少なくとも2個の水酸基を有する第1のポリカーボネートポリオールとを反応させて少なくとも2個の水酸基を有する第2のウレタンプレポリマーを得る工程
工程(ii):第2のウレタンプレポリマーの少なくとも一部を含む液滴を第2のポリカーボネートポリオール(第1のポリカーボネートポリオールのうちの余剰の未反応物でもよい)中に分散させた第1の分散体を得る工程
工程(iii):該第1の分散体にイオン液体を分散させた第2の分散体を得る工程
工程(iv):該第2の分散体及び少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含む誘電体形成用混合物を調製し、次いで、該誘電体形成用混合物中の該第2のウレタンプレポリマー、該第2のポリカーボネートポリオール、(該イオン液体が水酸基を含有する場合は該イオン液体)、及び、該少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを反応させて誘電体を形成する工程
上述した、誘電体の製造方法の一形態について、図1を用いて説明する。なお、誘電体の製造方法はこの形態に限定されるものではない。
工程(i)では、少なくとも1個(好ましくは少なくとも2個)のイソシアネート基を有する第1のウレタンプレポリマー51と、少なくとも2個の水酸基を有する第1のポリカーボネートポリオール52とを混合する。次に硬化触媒の存在下で得られた混合物中のイソシアネート基と水酸基とを反応させ、ウレタン結合を介して両者を連結することによって、少なくとも2個の水酸基を有する第2のウレタンプレポリマー53を得る。
なお、図1においては、第1のウレタンプレポリマー51の例として、2個のイソシアネート基を有するポリエーテルを記載している。第1のウレタンプレポリマー51としては、例えば、第2の構造を含むものが挙げられ、ポリエーテルジオールなどのポリオールとポリイソシアネートの反応物が好ましい。
工程(ii)では、第2のウレタンプレポリマーの少なくとも一部を含む液滴が、第2
のポリカーボネートポリオール中に分散した分散体を得る。なお、ここでは、第2のウレタンプレポリマーを、本工程で新たに添加する第2のポリカーボネートポリオールと混合することができる。また、工程(i)における第1のポリカーボネートポリオールのうちの余剰の未反応物を第2のポリカーボネートポリオールとしても用いることもできる。
第2のウレタンプレポリマー53に含まれる該第1のウレタンプレポリマー51は、第2のポリカーボネートポリオール55とは相溶せず、液滴54を形成する。
一方、第2のウレタンプレポリマー53に含まれる第1のポリカーボネートポリオール52は、第2のポリカーボネートポリオール55と相溶する。そのため、第1のポリカーボネートポリオール52を介して、第2のポリカーボネートポリオール55中において、第2のウレタンプレポリマー53の一部を構成する第1のウレタンプレポリマー51を含む液滴54は、均一かつ安定に分散される。その結果、第1のウレタンプレポリマー51(第2の構造)を含む液滴54が第2のポリカーボネートポリオール55中に分散した第1の分散体が得られる。
工程(ii)において、液滴54を分散させる第2のポリカーボネートポリオール55は、工程(i)で用いた第1のポリカーボネートポリオールのうち、第1のウレタンプレポリマーとの未反応物であることができる。すなわち、工程(i)において、第1のウレタンプレポリマーに対して第1のポリカーボネートポリオールを過剰量用いることで、工程(ii)で説明した、第2のウレタンプレポリマー53が余剰の第1のポリカーボネートポリオール(すなわち、第2のポリカーボネートポリオール55)に分散してなる分散体を得ることができる。
なお、第1のポリカーボネートポリオールを過剰量用いた場合であっても、第2のウレタンプレポリマーの分散媒としてのポリカーボネートポリオール(第2のポリカーボネートポリオール)を追加で加えることもできる。この場合において、追加するポリカーボネートポリオールは、工程(i)で用いた第1のポリカーボネートポリオールと同一の化学組成のものであっても異なっていてもよい。
一方、工程(i)において、第1のポリカーボネートポリオールと、第1のウレタンプレポリマーと、を当量で反応させ、第1のポリカーボネートポリオールを全て消費した場合には、工程(ii)においては、新たなポリカーボネートポリオールを第2のポリカーボネートポリオールとして用いて、分散体を調製する。この場合においても、第2のポリカーボネートポリオールとして用いるポリカーボネートポリオールは、第1のポリカーボネートポリオールと同一の化学組成のものであっても異なっていてもよい。
なお、第1のポリカーボネートポリオールのうちの余剰の未反応物を第2のポリカーボネートポリオールとして用いる場合は、工程(i)及び工程(ii)を同時に行うこともできる。
工程(iii)では、工程(ii)で得られた第1の分散体にイオン液体を分散させて第2の分散体を得る。分散方法としては、機械式の攪拌など公知の方法を任意に使用できる。
最後に工程(iv)では、工程(iii)で調製した第2の分散体、及び、少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート56を含む誘電体形成用混合物を調製する。次いで、誘電体形成用混合物中の該第2のウレタンプレポリマー53の末端水酸基、該第2のポリカーボネートポリオール55の水酸基、及び該ポリイソシアネート56のイソシアネート基を反応させる。
イオン液体が水酸基を含有することが好ましい。工程(iv)では誘電体形成用混合物中の第2のウレタンプレポリマー、第2のポリカーボネートポリオール、イオン液体、及
び少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを反応させて誘電体を形成することが好ましい。
こうして、ウレタン結合を介したネットワーク構造を形成させ、誘電体形成用混合物を硬化させて、本開示に係る誘電体を得る。こうして得られた誘電体33は、第1のウレタンプレポリマー51に由来するポリエーテル構造、すなわち、第1の構造を含むドメイン32が、第1のポリカーボネートポリオール52、及び第2のポリカーボネートポリオール55に由来するポリカーボネート構造、すなわち、第2の構造を有するウレタンエラストマーを含むマトリックス31中に分散してなる、マトリックス・ドメイン構造を有する。
また、ドメイン32は、主としてポリエーテル構造(第1の構造)で構成され、ドメイン内部は架橋構造を実質的に有さないようにすることができる。言い換えれば、ドメイン32は、ほぼ液体の状態でマトリックス中に存在させ得る。このことにより、本開示に係る誘電体33においては、ドメインが低い弾性率を有することができる。
さらに、ドメインは、単に液体部分がマトリックス中に閉じ込められているのではなくて、ドメインとマトリックスとの境界部分において、ドメインとマトリックスとがウレタン結合で化学結合している。そのため、該誘電体33に加えられた荷重が除去されたときのドメインの変形からの回復をマトリックスの変形からの回復に連動させることができる。
すなわち、略液状のドメインは、例えば内部に架橋構造を実質的に有さない。そのため、誘電体33に対して荷重が付加されて変形したドメインは、自律的には変形から回復することが困難である。しかしながら、本開示に係る誘電体においては、ドメインがマトリックスとの境界部分においてマトリックスと化学結合(ウレタン結合)していることにより、マトリックスの変形回復とともにドメインも変形から回復し得る。このことにより、誘電体33に荷重の負荷と除荷とが繰り返された場合であっても安定した変形(変形量)と、当該変形からの安定的な回復とが達成され、低ヒステリシスロスをより実現しやすくなる。
イオン液体をマトリックスに偏在させるためには、上述のように工程(ii)の後にイオン液体を分散させることが好ましい。工程(ii)においてマトリックスとドメインの界面は化学結合(ウレタン結合)を介して強固に形成されるため、イオン液体のドメインへの侵入が抑制され、マトリックスに偏在した状態を実現することができる。あるいは、工程(ii)において、予めイオン液体を分散させた第2のポリカーボネートポリオールを使用し、工程(iii)を省略することによってもイオン液体を良好にマトリックスに分散させることができる。
なお、上記工程(i)~(iv)は、マトリックスとして使用されるポリカーボネートポリオールとドメインとして使用されるポリエーテルポリオールの相溶性が低い時に、ポリカーボネートポリオール中にポリエーテルポリオールを安定かつ均一に分散させる工程である。すなわち、第1のウレタンプレポリマー51を、第1のポリカーボネートポリオール52と反応させて第2のウレタンプレポリマー53とする。
そのことにより、第1のウレタンプレポリマー51に由来するポリエーテルポリオールのセグメントを、第2のポリカーボネートポリオール中に安定かつ均一に分散してなる分散体を得ることができる。これにより、円形度が高く、かつサイズがマイクロメートルオーダーと小さくて比較的均一なサイズ分布のドメイン32が、マトリックス31中に分散してなる誘電体33を作製することが容易となる。
なお、相溶性が低い材料同士を混合する他の方法として、例えば、高いせん断力で混合
、分散させる方法がある。しかしながら、この方法では、該第1の構造を有するポリオールに高いせん断力が加わる結果、ドメインの形状がいびつになって円形度が低下し、また、ドメイン同士のサイズも不均一となり得る。また、分散状態も不安定であり、比較的短時間でドメイン同士の凝集が進む。
また、ポリエーテルポリオールとポリカーボネートポリオールとの非相溶性が担保されず、得られるウレタンエラストマーのマトリックスとドメインとの相分離が不明瞭化する。そのため、イオン液体のマトリックスへの偏在が担保されず、耐絶縁破壊性の低下を招く。また、相分離の不明瞭化は機械的特性にも影響を与え、本開示に係る、柔軟かつ低ヒステリシスロス性に優れる誘電体を得ることが困難となってしまう。
使用する第1の構造を有するポリオール及び第2の構造を有するポリオールの量は、特に制限されず、液滴54を第2のポリカーボネートポリオール55に分散させ、明瞭なドメインを形成可能な量であればよい。例えば、第1の構造を有するポリオール:第2の構造を有するポリオールが、質量基準で、好ましくは15:85~50:50であり、より好ましくは20:80~50:50である。
第1のウレタンプレポリマーは、少なくとも1個のイソシアネート基を有し、かつ式(1)で表される構造を有するポリエーテルである。第1のウレタンプレポリマーは、例えば、以下の工程により得ることができる。
少なくとも2つの水酸基を有し、かつ式(1)で表される構造を有するポリエーテルポリオールと、少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートを反応させる。
該ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとの共重合体、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフランとの共重合体等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム又はブロック共重合体などが挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
該ポリエーテルポリオールの中でも、エーテル基の可動性が高くカチオンの安定化効果が高い、及び低硬度を実現できるという観点から、非晶性のポリエーテルポリオールが好ましい。より好ましくは、ポリエーテルポリオールの中でも、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとの共重合体、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフランとの共重合体から選ばれる少なくとも一つを含有することである。さらに好ましくは、少なくともポリプロピレングリコールを含有することである。
該ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、1000以上50000以下であることが好ましい。より好ましくは、1200以上30000以下である。数平均分子量が1000以上である場合、ポリエーテル構造を含むセグメントがドメインを形成しやすくなる。また、数平均分子量が50000以下の場合、より相分離構造が安定化するため好ましい。
該ポリエーテルポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物(イソシアヌレート)又は多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
上記に例示したポリイソシアネートの中でも、ポリエーテルポリオールとの相溶性の高さ、及び粘度等の物性調整の容易さから、2つのイソシアネート基を有する二官能イソシアネート(ジイソシアネート)が好ましい。より好ましくは、上記ポリイソシアネートの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる少なくとも一つを含有することである。キシリレンジイソシアネートがさらに好ましい。
式(1)で表される構造を有するポリエーテルポリオールと、前記ポリイソシアネートを反応させて前記第1のウレタンプレポリマーを得る工程において、イソシアネートインデックスが0.05~8.0であることが好ましい。より好ましくは、0.1~5.0である。イソシアネートインデックスが該範囲にあることによって、ネットワーク構造化されずに残存する第1のウレタンプレポリマー由来の成分を低減し、ポリウレタンエラストマーからの液状物質の滲み出しを抑制することができる。
なお、イソシアネートインデックスとは、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数のポリオール化合物中の水酸基のモル数に対する比([NCO]/[OH])を示すものである。
式(1)で表される構造を有するポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応で得られる第1のウレタンプレポリマーは、水酸基とイソシアネート基との反応によるウレタン結合を介して連結された構造を有している。その数平均分子量は1000以上100000以下であることが好ましい。より好ましくは、1200以上50000以下である。
第1のポリカーボネートポリオールは、第1のウレタンプレポリマーと相分離するものであれば、特に限定されないが、少なくとも2個の水酸基を有し、且つ式(2)で表される構造を有するポリカーボネートポリオールであることが好ましい。第1のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオールなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。
アルキレンカーボネートとしては、例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。
第1のポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、500以上10000以下であることが好ましい。より好ましくは、700以上8000以下である。数平均分子量が500以上である場合、式(1)で表されるポリエーテル構造を含むポリウレタンセグメントとの低い相溶性が担保され、マトリックスとドメインとの相分離をより明確にすることができる。また、数平均分子量が10000以下である場合、原料となるポリカーボネートポリオールの粘度上昇によって、取り扱いが困難になることを防げるため好ましい。
第1のポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、該ポリエーテルポリオールの数平均分子量と同様、水酸基価(mgKOH/g)と価数を用いて算出することができる。
工程(iv)で使用する少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート56としては、第1のウレタンプレポリマーの原料として上記に例示したポリイソシアネートと同様のものを用いることができる。これらポリイソシアネートは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
工程(iv)で使用するポリイソシアネートとしては、上記に例示したポリイソシアネートの中でも、マトリックスの弾性率を上げられる観点から、ポリイソシアネートの3量体化合物(イソシアヌレート)又は多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート等、少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含むことが好ましい。
より好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートの3量体化合物(イソシアヌレート)、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体化合物(イソシアヌレート)、ジフェニルメタンジイソシアネートの多量体化合物、ポリメリックMDIからなる群から選択される少なくとも一を用いることができる。ウレタンエラストマーの硬化触媒は、ゴム化(樹脂化)や泡化を促進するためのウレタン化触媒(反応促進触媒)と、イソシアヌレート化触媒(イソシアネート3量化触媒)とに大別される。本開示では、これらの一つを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
上記の中でもポリメリックMDIが好ましい。ここで、ポリメリックMDIはモノメリックMDIと高分子量のポリイソシアネートの混合物であり、以下の式(A)で示される。式(A)におけるnは、0以上4以下であることが好ましい。
ポリメリックMDIは、市販のものを用いてもよく、ミリオネートMR200(商品名)など、ミリオネートMRシリーズ(東ソー社製)が挙げられる。
Figure 2024062951000005
少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート56としては、ポリメリックMDIなどの少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート及び2つのイソシアネート基を有する二官能イソシアネートを併用することが好ましい。上記併用により、架橋密度を制御することができるため、低硬度と低圧縮永久歪みの両立を実現する観点から好ましい。
少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート及び2つのイソシアネート基を有する二官能イソシアネートの量は、特に制限されない。工程(iv)における上記分散体に混合するときの量として、二官能イソシアネート:少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが、好ましくは3:1~1:10であり、より好ましくは1:1~1:6である。工程(iv)における上記分散体100質量部に対するポリイソシアネートの量も特に制限されず、例えば、1~10質量部、3~8質量部が挙げられる。
ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエートなどのスズ系のウレタン化触媒や、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジエチルイミダゾール、テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノールなどのアミン系のウレタン化触媒などが挙げられる。これらの一つを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。これらのウレタン化触媒の中でも、ウレタン反応を特に促進する点で、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノールが好ましい。
イソシアヌレート化触媒としては、例えば、LiO,(BuSn)Oなどの金属酸化物や、NaBHなどのハイドライド化合物や、NaOCH、KO-(t-Bu)、ホウ酸塩などのアルコキシド化合物や、N(C、N(CHCH、1,4-エチレンピペラジン(DABCO)などのアミン化合物や、HCOONa、NaCO、PhCOONa/DMF、CHCOOK、(CHCOO)Ca、アルカリ石鹸、ナフテン酸塩などのアルカリ性カルボキシレート塩化合物や、アルカリ性ギ酸塩化合物や、((R)-NR’OH)―OCOR”などの4級アンモニウム塩化合物などが挙げられる。
また、イソシアヌレート化触媒として用いられる組み合わせ触媒(共触媒)として、例えばアミン/エポキシド、アミン/カルボン酸、アミン/アルキレンイミドなどが挙げられる。これらイソシアヌレート化触媒及び組合せ触媒は、単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
ウレタン合成用触媒として、単独でウレタン化触媒として作用し、かつイソシアヌレート化触媒の作用も示すN,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン(以下、ETAという)を用いてもよい。
誘電体の製造方法においては、必要に応じて鎖延長剤(多官能の低分子量ポリオール)を用いてもよい。鎖延長剤としては、例えば、数平均分子量1000以下のグリコールが挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4-ブタンジオール(1,4-BD)、1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコールなどが挙げられる。
また、グリコール以外の鎖延長剤としては、例えば3価以上の多価アルコールが挙げられる。3価以上の多価アルコールとしては、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
また、必要に応じて導電剤、顔料、可塑剤、防水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの添加剤を併せて用いることもできる。
<トランスデューサー>
本開示の他の一態様では、上記誘電体を備えたトランスデューサーが提供される。該トランスデューサーは少なくとも二つの電極と、該電極に挟持される該誘電体とを備えてなる。電極には電源や制御素子と通電するための配線が接続されていてもよい。また、誘電体と電極が交互に積層させた積層構造をとっていてもよい。
図4は、本開示に係るトランスデューサーの一例を示している。トランスデューサー6は本開示に係る誘電体61及び該誘電体61を挟持する一対の電極62を有する。トラン
スデューサーの用途は特に限定されないが、例えばアクチュエーター、センサー、又は発電素子等として利用が可能である。
トランスデューサーをアクチュエーターとして使用する場合、電気回路装置7により一対の電極62の間に電位差を付与することで、誘電体61中に駆動力を誘起させることができる。トランスデューサーをセンサーとして使用する場合には、トランスデューサー6の伸縮による静電容量の変化を電気回路装置7により計測することで、変形量を取得することができる。トランスデューサーを発電素子として使用する場合には、たとえばSustainability 2021, 13(17), 9881に記載の公知の方法によって、トランスデューサーの変形に伴う電気的エネルギーを得ることが可能である。
誘電体61の厚さはトランスデューサー6の用途に応じて適宜決定すればよく、アクチュエーターとして使用する場合には、小型化、低電圧駆動化、及び変位量を大きくする等の観点から誘電層の厚さは薄い方が好ましい。耐絶縁破壊性を考慮すると、誘電層の厚さは1μm以上1000μm以下であることが好ましい。
電極62の材料は通常の導電性材料であればよく、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェンなどの導電性炭素粉末、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金などの金属粉末、コロイド銀等の金属コロイド、テトラチアフルバレン/テトラシアノキノジメタン等の電荷移動錯体、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子が挙げられる。使用する誘電体の伸縮に追従する伸縮性を有する部材が好ましい。
このような電極部材としては上述の導電材とバインダーから成る複合材料が挙げられる。例えば、アクリル系、シリコン系、ウレタン系、スチレン系のエラストマー材料、シリコングリース等に導電材フィラーを分散させた複合材料や、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)の水分散体に有機溶剤、樹脂及び架橋剤等を適宜含有したもの等が挙げられる。
本開示に係るトランスデューサーの製造方法は特に限定されないが、本開示に係る誘電体に電極材料をスプレーする方法、電極材料と誘電体とを貼り合わせる方法、電極材料に誘電体を含侵又は分散含有させる方法、誘電体に電極材料を塗布又は印刷する方法などが挙げられる。
高い誘電性を有しており、かつ低ヒステリシスロス・柔軟性を兼ね備えた本開示の誘電体を該トランスデューサーの誘電体として使用することにより、変形量の増加、出力の増加、高効率化、駆動安定化、および低電圧駆動化などに優れたアクチュエーターを実現できる。またセンサー用途においては高効率化、高容量化、小型化、変形に対する回復性に優れたセンサーを提供できる。同様に発電素子として該トランスデューサーを使用する場合には、高効率化、高出力化、小型化、発電量向上などに優れた素子を提供できる。
さらに上述のように本開示に係る誘電体が式(2)で表されるポリカーボネート構造を有するマトリックスを有する場合は上記に加えて、耐絶縁破壊性・耐摩耗性・低摩擦特性を有する。これにより、該トランスデューサーの使用において、高電場印加による絶縁破壊を抑制し、周辺部材との摩擦によるエネルギー損失を低減でき、さらに摩耗による性能劣化を抑制することが可能になる。
以下、本発明にかかる実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<使用材料>
以下、実施例及び比較例にて使用した材料を列記する。
[ポリオール]
・A-1:ポリエーテルジオール(ポリプロピレングリコール)〔製品名:PREMINOL S4013F、Rの炭素数=3(分岐)、Mn=12000、水酸基価:9.4mgKOH/g、AGC社製〕
・A-2:ポリエーテルジオール(ポリプロピレングリコール)〔製品名:ユニオール D-2000、Rの炭素数=3(分岐)、Mn=2000、水酸基価:55.0mgKOH/g、日油社製〕
・A-3:ポリエーテルジオール(ポリテトラメチレングリコール)〔製品名:PTMG4000、Rの炭素数=4(直鎖)、Mn=4000、水酸基価:29.1mgKOH/g、三菱ケミカル社製〕
・A-4:ポリカーボネートジオール〔製品名:クラレポリオール C-2090、Rの炭素数=6(直鎖)+6(分岐)、Mn=2000、クラレ社製〕
・A-5:ポリカーボネートジオール〔製品名:デュラノール T6002、Rの炭素数=6(直鎖)、Mn=1900、水酸基価:57.6mgKOH/g、旭化成ケミカル社製〕
ポリカーボネートジオールの炭素数に関し、例えば、6(直鎖)+6(分岐)の記載は、Rが直鎖の炭素数6の構造と、分岐の炭素数6の構造を含んでいることを示す。
[ポリイソシアネート]
・B-1:キシリレンジイソシアネート〔東京化成工業社製〕
・B-2:ポリメリックMDI〔製品名:ミリオネート MR-200、東ソー社製〕
[硬化触媒]
・C-1:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(製品名;RZETA)〔東ソー社製〕
・C-2:ジラウリン酸ジブチルすず〔東京化成社製〕
[イオン液体]
・E-1:1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(特開2021-113853に開示の方法により合成)
・E-2:N,N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(9-オクタデセン)-N-メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
・E-3:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(製品名:EMITFSI、シグマアルドリッチ社製)
・E-4:1-(ヒドロキシプロピル)ピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
<評価>
以下、実施例及び比較例における評価方法は下記のとおりである。
[評価1:マトリックスとドメインの確認と分析]
凍結切削システム(商品名:EM FC6、ライカマイクロシステムズ社製)及びウルトラミクロトーム(商品名:EM UC6、ライカマイクロシステムズ社製)を用いて誘電体から超薄の切片(500μm×500μm×5μm)を作製した。切片を作製する場所は、誘電体の中央とそこから十分に離れた2か所の計3か所とした。
作製した切片に対して、赤外顕微鏡・イメージングシステム(商品名:Spectrum400(分析装置)及びSpotlight400(走査装置)、PerkinElmer社製)を用いてマッピング測定を行ってマッピング画像を作成した。測定は、ATRイメージングアクセサリを用い、ピクセルサイズ:1.56μm、分解能:16cm-1、視野:300μm×300μm、及びスキャン速度:1.0cm/sの条件にてマッピング測定を行った。上記マッピング画像は、ピクセル毎の赤外吸収スペクトルの積分値の
大小を画像化したものである。
得られたマッピング画像から、連続相としてマッピングされるマトリックス及び非連続相としてマッピングされるドメインの存在を確認した。さらに、マッピング画像のマトリックスの赤外吸収スペクトルから、マトリックスが第2の構造(例えばポリカーボネートジオールに対応する構造)を含むことを確認した。また、マッピング画像のドメインの赤外吸収スペクトルから、ドメインが第1の構造(例えばポリプロピレングリコールに対応する構造)を含んでいることを確認した。すなわち、マトリックスが、式(2)で表されるカーボネート構造を含むこと、ドメインが、式(1)で表されるエーテル構造を含んでいることを確認した。
[評価2:粘弾性項を示すパラメータの評価]
評価1と同様にして、超薄の切片を作製した。
切片は計3枚作製し、任意の50μm四方の観察領域を選択し、合計3カ所の観察領域で粘弾性像の観察を行った。合計3カ所の観察領域で走査型プローブ顕微鏡(商品名:S-Image、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使って粘弾性像の測定を行った。
粘弾性像の測定モードはVE-DFMとした。また、カンチレバーは、「SI-DF3」(商品名、株式会社日立ハイテクサイエンス社製、ばね定数=1.9N/m)を用いた。さらに、走査周波数は0.5Hzとした。
得られた粘弾性像から、各観察領域で粘弾性項を示すパラメータをマトリックスとドメインで各10点算出し、それらの算術平均値からドメインの粘弾性項を示すパラメータA(mV)とマトリックスの粘弾性項を示すパラメータB(mV)を求めた。
なお、断面においてドメインが露出していること、及び、マトリックスが露出していることは、SPMの粘弾性像によって確認した。
[評価3,4:イオン液体濃度D/C、D3/Dの評価]
評価1と同様にして、超薄の切片を作製した。
切片の断面の内、任意の50μm四方の観察領域を選択し、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)によってイオン液体の分布を評価した。使用装置、測定条件及び解析方法を以下に示す。
・測定装置:nanoTOF II(商品名、アルバック・ファイ株式会社製)
・一次イオン種:Bi3++
・加速電圧:30kV
・一次イオン電流:0.05pA
・繰り返し周波数:8.2kHz
・ラスタモード:Unbunch
・ラスタサイズ:50μm×50μm
・測定モード:Positive
・中和電子銃:使用しない
・測定時間:360秒
・ピクセルサイズ:256×256
・試料前処理:加速電圧10kV、電流17.2nA、ラスタサイズ400×400μm、スパッタ時間48秒
50μm×50μmの観察領域に相当する256×256の各ピクセルにおいて、上記測定条件において観測されたイオン液体のアニオンの分子量(例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド アニオン(TFSI)、分子量280)に相当する質量数を有するフラグメントイオンのカウント数を各ピクセルの輝度とし、次いで当該輝度を256階調に変換することでモノクロ画像を得た。
得られたモノクロ画像に対し、画像処理ソフト(ImageJ)を使用して平滑化、お
よび2値化を行い、マトリックス(輝度255)とドメイン(輝度0)を分離した。平滑化のためフィルタとしてはカーネルサイズ3×3のメディアンフィルタを使用した。2値化のための閾値は、当該モノクロ画像の輝度分布から非特許文献2に記載のHuangのファジー2値化手法に基づいて決定した。
得られた2値化画像に対しノイズ処理のため、輝度0のドメインについてそのピクセル数が全ピクセル数の0.05%以下である場合には、ノイズ起因と見直して輝度255で上書きした。このようにして得られたノイズ除去済みの2値化画像に対してマトリックス(輝度255)の輪郭を抽出し、得られた輪郭に囲まれる領域を選択範囲として、当該範囲におけるモノクロ画像の平均輝度を算出し、これをマトリックスに含まれるイオン液体の濃度Dとして規定した。次いで、モノクロ画像全体における平均輝度を算出し、これを観察領域当たりのイオン液体の濃度Cとして規定した。
次いで、上記のノイズ除去済みの2値化画像について、各ドメイン(輝度0)に以下の処理を行った。ドメインを範囲選択し(a1)、幾何中心c1を固定して1.2倍に拡大した(a2)。拡大後の範囲a2と拡大前の範囲a1の差集合a3を取ることで、ドメインの近傍領域の範囲選択を得た。各ドメインについて得られた該ドメイン近傍領域の和集合A3をとり、該範囲におけるモノクロ画像の平均輝度を算出し、これをマトリックスにおけるドメインの界面近傍におけるイオン液体濃度D3として規定した。
なお、a3にドメインが含まれる場合は、A3の算出には含めない。すなわち、A3はマトリックスにおける領域となる。
D/C、D3/Dの測定においては、3つの観察領域の算術平均値を採用する。
[評価5:比誘電率の評価]
誘電体のサンプルを1.5cm×1.5cmに切り出し、4端子サンプルホルダ(SH2-Z型、東陽テクニカ社製)に挟み込んだ。インピーダンスアナライザ(1260A、ソーラトロン社製)、誘電インターフェイス(1296A、ソーラトロン社製)を使用して、室温下において交流電圧0.1Vpp、周波数0.01Hz-1MHzでスイープを行い100Hzにおける比誘電率ε′を測定した。サンプル3個の算術平均値を採用する。
[評価6:絶縁破壊強度の評価]
後述する評価8に記載と同様の手順で誘電体の試験片を作製し、耐電圧試験機(GPT-9903A、テクシオ・テクノロジー社製)を使用して室温下の条件で1kV/mmから20kV/mmの範囲において1kVのステップでDC電圧を印加した。印加パターンとしては、10秒間のRAMP期間の後、設定電圧を30秒間保持した。この印加パターンの間にARCモードOFFの状態で5mAを超える電流が検知された場合は、当該電場強度で絶縁破壊が生じたと判断し、当該ステップの電場強度を絶縁破壊強度として決定した。サンプル3個の算術平均値を採用する。
[評価7:ヤング率の評価]
粘弾性測定装置(商品名:Rheogel-E4000、ユービーエム社製)を用いて、下記のように測定した。打抜きカッターで成形した5mm×30mmの誘電体の試験片を引っ張り試験機チャックにセットし、室温下において振幅1mmの正弦波歪みを印加して、1~200Hzにおける複素弾性率を取得した。この内、1Hzにおける実部成分を当該試験片のヤング率として決定した。サンプル3個の算術平均値を採用する。
[評価8:ヒステリシスロスの評価]
粘弾性測定装置(商品名:Rheogel-E4000、ユービーエム社製)を用いて、下記のように測定した。打抜きカッターで成形した5mm×30mmの誘電体の試験片を引っ張り試験機チャックにセットし、室温下において変位量9mm、変位速度0.27
5mm/sec、変位往復回数5回の条件で応力-歪み曲線を取得した。得られた応力-歪み曲線から以下の式を用いて算出した。サンプル3個の算術平均値を採用する。
ヒステリシスロス[%]=(1-(弾性変形仕事量/全変形仕事量))×100
[評価9:電場印加時の歪み量の評価]
市販のカッターを使用して誘電体のサンプルを1.5cm×4.5cmに切り出した。エキシマランプ光源(EX-mini L12530、浜松ホトニクス社製)を使用して、切り出したサンプルの表面改質を行った後、1.5cm×4.5cmの面(両面)に対して、0.8cm×4.1cmのサイズで導電性コーティング剤(デナトロンSPS-801、ナガセケムテックス社製)を100μmの厚さで塗布し、その後100℃の環境に5分静置して導電性コーティング剤に含まれる溶媒を蒸発させ、電極を形成した。
続いて、得られた電極付き誘電体を1.5cmの一辺を固定して、4.5cmの辺が鉛直方向になるように吊り下げた。電圧源として耐電圧試験機(GPT-9903A、テクシオ・テクノロジー社製)を使用して、対向する電極間に8kV/mmの電場を印加した。この時、固定側と対向する1.5cmの辺が電場印加前の1.5cm×4.5cmの面の法線方向に対して変位する量Δdを小型レーザー変位センサー(HL-G108-S-J、 パナソニック社製)を使用して取得した。得られたΔdから以下の式を用いて歪み量を算出した。
歪み量[%]=(Δd[cm]/4.5[cm])×100
[評価10,11:ドメインの円相当径の算術平均値(平均径)、面積比率の評価]
評価2で得られた3つの粘弾性像それぞれについて、画像処理ソフトウェア(商品名:ImageProPlus、MediaCybernetics社製)を用いて256階調のグレースケール画像に変換し、次いで2値化して解析用の2値化画像を得た。2値化のための閾値は、モノクロ画像の輝度分布から、非特許文献3に記載されている大津のアルゴリズムに基づいて決定した。
得られた2値化画像から、上記画像処理ソフトウェアのカウント機能を用いて、ドメインの面積を算出した。ただし、カウント機能によってドメインと判定されたもののうち、50μm四方の観察領域に対して断面積が0.05面積%未満のドメインは、ノイズと見做してデータから削除した。得られた面積を観察領域の全面積から引くことによりマトリックスに相当する面積を算出した。これらの面積から、面積比率(マトリックス/ドメイン)を算出した。
さらに、上記2値化画像にモルフォロジー変換を施し、ドメイン-マトリックスの界面に相当する輪郭を抽出した。モルフォロジー変換としては、カーネルサイズ3×3で上記2値化画像に膨張処理を施した画像と同カーネルサイズで上記2値化画像に収縮処理を施した画像を生成し、それらの差分を変換後の画像として得た。得られた輪郭からハフ変換を用いて円を検出し、検出された円の直径からドメインの円相当径を算出した。観察領域におけるすべてのドメインの算術平均値を採用する。
[評価12,13:ドメインの円形度と個数の測定]
評価10,11で得られたノイズ除去済みの2値化画像から、上記画像ソフトウェアのカウント機能を用いて、ドメインの円形度を算出した。そして、観察領域内のドメインのうち、円形度が0.60~0.95であるドメインの個数をカウントし、観察領域内のドメインの総個数に対する割合(%)を算出した。
[評価14:ガラス転移によるtanδピーク温度]
粘弾性測定装置(商品名:Physica MCR302、アントンパール社製)を用いて、下記のように測定した。打抜きカッターで成形した厚さ2mm、幅5mmの試験片をセットし、長さ20mm間でのトーションモード(ねじり)で、昇温速度2℃/min
で-85℃~20℃まで周波数1Hzにて粘弾性を測定し、温度-tanδ曲線を得た。
[実施例1]
<ウレタンプレポリマーUP1-1の調製>
31.2質量部のポリオールA-1、0.3質量部のポリイソシアネートB-1、及び、1000ppmの硬化触媒C-1を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオール(第1のウレタンプレポリマー)を合成した。この中に、58.0質量部のポリオールA-2を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP1-1(第2のウレタンプレポリマー)を製造した(工程(i)及び工程(ii))。
なお、以下の実施例及び比較例も含めて、硬化触媒C-1の量は誘電体に使用する全材料の質量を基準とした質量ppmである。
<誘電体No.1の合成>
89.5質量部の該ウレタンプレポリマーUP1-1、及び、
2.0質量部のイオン液体E-1、
を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP1-2を得た(工程(iii))。
91.5質量部のUP1-2、
3.2質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.3質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。
次いで、当該誘電体形成用混合物を、100μmにスペーシングした離形フィルムに挟み、温度130℃で2時間加熱して硬化させた(工程(iv))。次いで、硬化物をフィルムから剥がし、温度80℃で3日間ポストキュアを行って、厚みが100μmのシート形状の誘電体No.1を得た。
[実施例2]
<ウレタンプレポリマーUP2-1の調製>
31.3質量部のポリオールA-1、
0.2質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。
この中に、58.1質量部のポリオールA-4を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP2-1を製造した。
<誘電体No.2の合成>
89.6質量部の該ウレタンプレポリマーUP2-1、及び、
2.0質量部のイオン液体E-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP2-2を得た。
91.6質量部のUP2-2、
3.0質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.2を得た。
[実施例3]
<ウレタンプレポリマーUP3-1の調製>
31.2質量部のポリオールA-1、
0.5質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。
この中に、58.7質量部のポリオールA-4を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP3-1を製造した。
<誘電体No.3の合成>
91.4質量部の該ウレタンプレポリマーUP3-1、及び、
1.0質量部のイオン液体E-3、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP3-2を得た。
92.4質量部のUP3-2、
2.2質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.3を得た。
[実施例4]
<ウレタンプレポリマーUP4-1の調製>
31.4質量部のポリオールA-1、
0.5質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。
この中に、58.3質量部のポリオールA-4を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP4-1を製造した。
<誘電体No.4の合成>
90.2質量部の該ウレタンプレポリマーUP4-1、及び、
1.8質量部のイオン液体E-4、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP4-2を得た。
92.0質量部のUP4-2、
2.6質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.4を得た。
[実施例5]
<ウレタンプレポリマーUP5-1の調製>
30.4質量部のポリオールA-2、
2.8質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。
この中に、56.6質量部のポリオールA-4を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP5-1を製造した。
<誘電体No.5の合成>
89.8質量部の該ウレタンプレポリマーUP5-1、及び、
2.0質量部のイオン液体E-1を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP5-2を得た。
91.8質量部のUP5-2、
2.8質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.5を得た。
[実施例6]
<ウレタンプレポリマーUP6-1の調製>
31.0質量部のポリオールA-3、
1.4質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。
この中に、57.4質量部のポリオールA-4を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP6-1を製造した。
<誘電体No.6の合成>
89.8質量部の該ウレタンプレポリマーUP6-1、及び、
2.0質量部のイオン液体E-1、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP6-2を得た。
91.8質量部のUP6-2、
2.8質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.6を得た。
[実施例7]
<ウレタンプレポリマーUP7-1の調製>
31.1質量部のポリオールA-1、
0.5質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。
この中に、58.0質量部のポリオールA-5を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP7-1を製造した。
<誘電体No.7の合成>
89.6質量部の該ウレタンプレポリマーUP7-1、及び、
2.0質量部のイオン液体E-1を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP7-2を得た。
91.6質量部のUP7-2、
3.0質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.7を得た。
[実施例8]
<ウレタンプレポリマーUP8-1の調製>
40.5質量部のポリオールA-1、
0.6質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。
この中に、49.4質量部のポリオールA-4を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP8-1を製造した。
<誘電体No.8の合成>
90.5質量部の該ウレタンプレポリマーUP8-1、及び、
2.0質量部のイオン液体E-1、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP8-2を得た。
92.5質量部のUP8-2、
2.1質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.8を得た。
[実施例9]
<ウレタンプレポリマーUP9-1の調製>
40.1質量部のポリオールA-1、
0.7質量部のポリイソシアネートB-1、及び
1000ppmの硬化触媒C-1、を均一に混合し、温度100℃で24時間加熱することにより、末端にイソシアネート基を有するポリオールを合成した。この中に、50.4質量部のポリオールA-4を混合し、温度100℃で4時間加熱することにより、ウレタンプレポリマーUP9-1を製造した。
<誘電体No.9の合成>
91.2質量部の該ウレタンプレポリマーUP9-1、及び、
2.0質量部のイオン液体E-3を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで撹拌して、イオン液体を含有したウレタンプレポリマーUP9-2を得た。
93.2質量部のUP9-2、
1.4質量部のポリイソシアネートB-1、及び、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(製品名:V-mini300、EME社製)を用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで1~2分間程度撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして誘電体No.9を得た。
[比較例1]
89.4質量部のポリオールA-4、
5.2質量部のポリイソシアネートB-1、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1、
を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーを用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで2分間撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマーNo.C1を得た。
[比較例2]
97.2質量部のポリオールA-1、
2.8質量部のポリイソシアネートB-2、及び、
250ppmの硬化触媒C-2、
を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーを用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで2分間撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマーNo.C2を得た
[比較例3]
87.1質量部のポリオールA-4、
1.8質量部のイオン液体E-1、
を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーを用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで10分間撹拌し、イオン液体を含有した混合物を得た。
得られた混合物88.9質量部に対し、
5.7質量部のポリイソシアネートB-1、
5.4質量部のポリイソシアネートB-2、及び、
1000ppmの硬化触媒C-1を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーを用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで2分間撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマーNo.C3を得た。
[比較例4]
94.1質量部のポリオールA-1、
2.0質量部のイオン液体E-1、
を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーを用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで10分間撹拌し、イオン液体を含有した混合物を得た。
得られた混合物96.1質量部に対し、
3.9質量部のポリイソシアネートB-2、及び、
250ppmの硬化触媒C-2、を混合し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーを用いて公転速度1600rpmの条件で均質になるまで2分間撹拌して、誘電体形成用混合物を得た。次いで、この誘電体形成用混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマーNo.C4を得た。
実施例1~9及び比較例1~4についての評価1~14の結果を表1~表2に示す。
<誘電体の構造>
評価1の結果に関して、実施例1~9に係る誘電体No.1~9ではマトリックスとドメインの明瞭な相分離が観られた。また、マトリックスにはポリカーボネート由来の構造(第2の構造)を含むポリウレタンを含み、ドメインにはポリエーテル由来の構造(第1の構造)が含まれることを確認した。また、評価2の結果に関して、誘電体No.1~9では、ドメインの粘弾性項を示すパラメータAと、マトリックスの粘弾性項を示すパラメータBとの関係がA<Bであった。
評価3の結果に関して、ポリウレタンエラストマーNo.1の断面について飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるイオン性液体の分布を可視化した像を図2に示す。この結果から、マトリックス-ドメインの明確な相分離構造が確認でき、さらにイオン液体がマトリックスに偏在していた。
また、単位断面積当たりのイオン液体の濃度Cと、該単位断面積当たりのマトリックスに含まれる該イオン液体の濃度Dとの関係について、実施例1~9に係る誘電体が、D/C>1.0を満たすことを確認した。
さらにドメインの近傍領域における該イオン液体の濃度D3とマトリックスに含まれる該イオン液体の濃度Dについて、実施例1~9に係る誘電体が、D3/D>1.0を満たすことから、マトリックスとドメインの界面近傍のマトリックス側にイオン液体が偏在化していることも明らかとなった。
評価14の結果に関して、粘弾性測定により得られた代表的な温度-tanδ曲線(実施例1~2、比較例1)を図3に示す。図3に示すように、実施例1及び実施例2では、-80~10℃の範囲においてtanδピーク温度(ガラス転移温度)が2つ確認されたのに対して、比較例1においては、1つのピーク温度のみ確認された。
また、実施例3~9についても、実施例1~2と同様に、2つのガラス転移温度が確認された。
また、誘電体の外観についても、実施例1~9に係る誘電体No.1~9では不透明であった。一方、比較例1~4に係る誘電体No.C1~C4では透明性が高かった。
実施例1~2に係る誘電体No.1、及び誘電体No.2で観測されたtanδピーク温度は-67℃と-18℃であり、それぞれ原料A-1(ポリプロピレングリコール)に由来するポリエーテルポリウレタン、原料A-4(ポリカーボネートポリオール)に由来するポリカーボネートポリウレタン(比較例1参照)に相当するガラス転移温度であった。すなわち、実施例1、2で得られた誘電体No.1及び2については、ポリカーボネートを有するポリウレタンとポリエーテルを有するポリウレタンがほとんど相溶することなく、明瞭に相分離して存在していることが明らかとなった。
また、実施例3~9についても同様にポリカーボネートを有するポリウレタン、ポリエーテルを有するポリウレタンのガラス転移温度に相当する二つのガラス転移温度が確認された。
一方、比較例1~4で得られた誘電体No.C1~C4については、評価1~3、9~12に係る断面像観察において相分離構造を確認することはできなかった。さらに、前述したように比較例1について観測されたtanδは単一のピークを示しており、この結果からも相分離構造を有さないことが確認できる。この傾向については、比較例2~4についても同様であった。
<誘電体の評価結果>
実施例1~9に係る誘電体No.1~9は、比較例1で得られた単独のポリカーボネートポリウレタンNo.C1と比べてヤング率が低減し、さらに低ヒステリシスロス性も良好であった。また比誘電率に関しては顕著な上昇が認められ、電場印加による歪み量についても明らかな差が見られた。
また、比較例3は比較例1に対してイオン液体を添加したものであるが、実施例1~9と同様な誘電率上昇は見られなかった。また、耐絶縁破壊性については実施例1~9のいずれも比較例3と同等かそれ以上の水準を有していた。
比較例2で得られた単独のポリエーテルポリウレタンNo.C2についてはヤング率が低いものの、ヒステリシスロスが高く、また比誘電率についても実施例1~2のような高水準のものは得られていない。
比較例4は比較例2に対してイオン液体を添加したものであるが、比誘電率の顕著な増加は認められたが、実施例1~9と同水準の低ヒステリシスロスは実現できていなかった。
実施例1~9ではいずれも十分な絶縁破壊強度を有しているが、特にイソシアネート基と反応する反応性官能基を有するイオン液体を用いた実施例1~2及び実施例4~8においては20kV/mmを超える良好な絶縁破壊強度を有していることが確認された。
実施例1~9のいずれも優れた比誘電率を有しているが、特に式(1)においてRが炭素数3~5の分岐構造を有するアルキレン基である実施例1~5及び実施例7~9においては良好な比誘電率が得られた。
以上の評価結果から、本開示に係る誘電体は、高い誘電性を有しており、かつ低ヒステリシスロス・柔軟性を兼ね備えており、トランスデューサー用などの誘電体として好適であることが明らかとなった。
Figure 2024062951000006


Figure 2024062951000007
本開示は以下の構成及び方法に関する。
(構成1)
誘電体であって、
該誘電体が、ポリウレタンエラストマーと、該ポリウレタンエラストマー中のイオン液体と、を含み、
該ポリウレタンエラストマーは、マトリックスと、該マトリックスに分散されているドメインと、を有し、
該ドメインは、下記式(1)で示される第1の構造を含む、ことを特徴とする誘電体;
Figure 2024062951000008


式(1)中、Rは、炭素数3~6のアルキレン基を示す。
(構成2)
前記イオン液体が、前記マトリックスに存在している、構成1に記載の誘電体。
(構成3)
前記イオン液体が、前記マトリックスにおいて前記マトリックスと前記ドメインの界面近傍に偏在している、構成2に記載の誘電体。
(構成4)
前記誘電体の、前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面の、走査型プローブ顕微鏡による粘弾性像において測定される、前記ドメインの粘弾性項を示すパラメータAと、前記マトリックスの粘弾性項を示すパラメータBと、の関係がA<Bである、構成1~3のいずれかに記載の誘電体。
(構成5)
前記誘電体の前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面において観察される、50μm×50μmの観察領域当たりのイオン液体の濃度を濃度Cとし、該観察領域におけるマトリックスに含まれるイオン液体の濃度を濃度Dとしたとき、該濃度Dの該濃度Cに対する比の値D/Cが、D/C>1.0である構成2又は3に記載の誘電体。
(構成6)
前記誘電体の前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面に50μm×50μmの観察領域をおいて観察される、前記マトリックスの前記ドメインに対する面積比率(マトリックス/ドメイン)が、50.0/50.0~85.0/15.0である構成1~5のいずれかに記載の誘電体。
(構成7)
前記イオン液体が、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有する、構成1~6のいずれかに記載の誘電体。
(構成8)
前記イオン液体が、アンモニウム系イオン液体及びイミダゾリウム系イオン液体からなる群から選択される少なくとも一のイオン液体である、構成1~7のいずれかに記載の誘電体。
(構成9)
前記イオン液体のアニオンが、BF 、PF 、CFSO 及び(CFSOからなる群から選択される少なくとも一のアニオンである、構成1~8のいずれかに記載の誘電体。
(構成10)
前記誘電体における前記イオン液体の含有量が、0.5~8.0質量%である、構成1~9のいずれかに記載の誘電体。
(構成11)
前記マトリックスが下記式(2)で表される構造を含む構成1~10のいずれかに記載の誘電体;
Figure 2024062951000009


式(2)中、Rは、炭素数3~12のアルキレン基を示す。
(構成12)
前記Rが、炭素数3~5の分岐構造を有するアルキレン基である、構成1~11のいずれかに記載の誘電体。
(構成13)
前記Rが、炭素数3~9のアルキレン基である、構成11に記載の誘電体。
(構成14)
前記誘電体の前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面において観察される、ドメインの円相当径の算術平均値が、0.2~30.0μmである構成1~13のいずれかに記載の誘電体。
(構成15)
前記誘電体の比誘電率が、10.0以上である、構成1~14のいずれかに記載の誘電体。
(構成16)
前記誘電体のヤング率が、2.5MPa以下である、構成1~15のいずれかに記載の誘電体。
(構成17)
前記誘電体のヒステリシスロスが、10%以下である、構成1~16のいずれかに記載の誘電体。
(構成18)
前記誘電体の絶縁破壊強度が、15kV/mm以上である構成1~17のいずれかに記載の誘電体。
(方法19)
構成1~18のいずれかに記載の誘電体の製造方法であって、
(i)少なくとも1個のイソシアネート基を有する第1のウレタンプレポリマーと、少なくとも2個の水酸基を有する第1のポリカーボネートポリオールとを反応させて少なくとも2個の水酸基を有する第2のウレタンプレポリマーを得る工程、
(ii)該第2のウレタンプレポリマーの少なくとも一部を含む液滴を第2のポリカーボネートポリオール中に分散させた第1の分散体を得る工程、
(iii)該第1の分散体に前記イオン液体を分散させた第2の分散体を得る工程、及び、
(iv)該第2の分散体、及び、少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含む誘電体形成用混合物を調製し、次いで、該誘電体形成用混合物中の該第2のウレタンプレポリマー、該第2のポリカーボネートポリオール、及び該ポリイソシアネートを反応させて前記誘電体を形成する工程、
を有することを特徴とする誘電体の製造方法。
(構成20)
少なくとも二つの電極と、
該電極に挟持される構成1~18のいずれかに記載の誘電体と、
を備えてなることを特徴とするトランスデューサー。
(構成21)
前記トランスデューサーが、アクチュエーター、センサー、又は発電素子である、構成20に記載のトランスデューサー。

Claims (21)

  1. 誘電体であって、
    該誘電体が、ポリウレタンエラストマーと、該ポリウレタンエラストマー中のイオン液体と、を含み、
    該ポリウレタンエラストマーは、マトリックスと、該マトリックスに分散されているドメインと、を有し、
    該ドメインは、下記式(1)で示される第1の構造を含む、ことを特徴とする誘電体;
    Figure 2024062951000010

    式(1)中、Rは、炭素数3~6のアルキレン基を示す。
  2. 前記イオン液体が、前記マトリックスに存在している、請求項1に記載の誘電体。
  3. 前記イオン液体が、前記マトリックスにおいて前記マトリックスと前記ドメインの界面近傍に偏在している、請求項2に記載の誘電体。
  4. 前記誘電体の、前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面の、走査型プローブ顕微鏡による粘弾性像において測定される、前記ドメインの粘弾性項を示すパラメータAと、前記マトリックスの粘弾性項を示すパラメータBと、の関係がA<Bである、請求項1に記載の誘電体。
  5. 前記誘電体の前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面において観察される、50μm×50μmの観察領域当たりのイオン液体の濃度を濃度Cとし、該観察領域におけるマトリックスに含まれるイオン液体の濃度を濃度Dとしたとき、該濃度Dの該濃度Cに対する比の値D/Cが、D/C>1.0である請求項2に記載の誘電体。
  6. 前記誘電体の前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面に50μm×50μmの観察領域をおいて観察される、前記マトリックスの前記ドメインに対する面積比率(マトリックス/ドメイン)が、50.0/50.0~85.0/15.0である請求項1に記載の誘電体。
  7. 前記イオン液体が、イソシアネート基と反応する反応性官能基を有する、請求項1に記載の誘電体。
  8. 前記イオン液体が、アンモニウム系イオン液体及びイミダゾリウム系イオン液体からなる群から選択される少なくとも一のイオン液体である、請求項1に記載の誘電体。
  9. 前記イオン液体のアニオンが、BF 、PF 、CFSO 及び(CFSOからなる群から選択される少なくとも一のアニオンである、請求項1に記載の誘電体。
  10. 前記誘電体における前記イオン液体の含有量が、0.5~8.0質量%である、請求項1に記載の誘電体。
  11. 前記マトリックスが下記式(2)で表される構造を含む請求項1に記載の誘電体;
    Figure 2024062951000011

    式(2)中、Rは、炭素数3~12のアルキレン基を示す。
  12. 前記Rが、炭素数3~5の分岐構造を有するアルキレン基である、請求項1に記載の誘電体。
  13. 前記Rが、炭素数3~9のアルキレン基である、請求項11に記載の誘電体。
  14. 前記誘電体の前記ドメインと前記マトリックスとが露出してなる断面において観察される、ドメインの円相当径の算術平均値が、0.2~30.0μmである請求項1に記載の誘電体。
  15. 前記誘電体の比誘電率が、10.0以上である、請求項1に記載の誘電体。
  16. 前記誘電体のヤング率が、2.5MPa以下である、請求項1に記載の誘電体。
  17. 前記誘電体のヒステリシスロスが、10%以下である、請求項1に記載の誘電体。
  18. 前記誘電体の絶縁破壊強度が、15kV/mm以上である請求項1に記載の誘電体。
  19. 請求項1~18のいずれか一項に記載の誘電体の製造方法であって、
    (i)少なくとも1個のイソシアネート基を有する第1のウレタンプレポリマーと、少なくとも2個の水酸基を有する第1のポリカーボネートポリオールとを反応させて少なくとも2個の水酸基を有する第2のウレタンプレポリマーを得る工程、
    (ii)該第2のウレタンプレポリマーの少なくとも一部を含む液滴を第2のポリカーボネートポリオール中に分散させた第1の分散体を得る工程、
    (iii)該第1の分散体に前記イオン液体を分散させた第2の分散体を得る工程、及び、
    (iv)該第2の分散体、及び、少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含む誘電体形成用混合物を調製し、次いで、該誘電体形成用混合物中の該第2のウレタンプレポリマー、該第2のポリカーボネートポリオール、及び該ポリイソシアネートを反応させて前記誘電体を形成する工程、
    を有することを特徴とする誘電体の製造方法。
  20. 少なくとも二つの電極と、
    該電極に挟持される請求項1~18のいずれか一項に記載の誘電体と、
    を備えてなることを特徴とするトランスデューサー。
  21. 前記トランスデューサーが、アクチュエーター、センサー、又は発電素子である、請求項20に記載のトランスデューサー。
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