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JP2023540556A - 永久磁石モータを駆動する装置および方法 - Google Patents

永久磁石モータを駆動する装置および方法 Download PDF

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JP2023540556A
JP2023540556A JP2023515079A JP2023515079A JP2023540556A JP 2023540556 A JP2023540556 A JP 2023540556A JP 2023515079 A JP2023515079 A JP 2023515079A JP 2023515079 A JP2023515079 A JP 2023515079A JP 2023540556 A JP2023540556 A JP 2023540556A
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Abstract

Figure 2023540556000001
永久磁石モータ(311)用の駆動回路(300)が提供される。この駆動回路(300)は電源交流(305)を直流に変換するよう構築かつ構成される整流回路(307)と、整流回路(307)に並列な経路に配置されるフィルムコンデンサ(303)とを備える。駆動回路(300)は、直流を三相交流に変換して永久磁石モータ(311)を駆動するよう構築かつ構成されるインバータ回路(309)も備える。さらに、駆動回路(300)は、電源交流(305)とインバータ回路(309)とに接続される制御回路を備え、制御回路はd軸電流基準を電源交流(305)の電圧角度と同期する余弦波の二乗により変調するよう構築かつ構成され、変調されたd軸電流基準はインバータ回路(309)への入力として供給される。

Description

本願開示は、永久磁石モータを駆動する装置および方法に関する。
電気モータは、多くの様々な目的のために数多くの機器および装置に用いられる。電気モータは大量のエネルギーを消費することから、電力消費を減らし効率を向上することが常に求められる。永久磁石モータは、他の特徴に加え、効率を向上するためにますます利用されるようになっている。しかし、既存の永久磁石モータ用の駆動回路には、様々な欠点がある。
本明細書に開示される一態様によれば、永久磁石モータ用の駆動回路であって、
電源交流を直流に変換するよう構築かつ構成される整流回路と、
整流回路と並列な経路に配置されるフィルムコンデンサと、
直流を三相交流に変換して当該永久磁石モータを駆動するよう構築かつ構成されるインバータ回路と、
電源交流とインバータ回路とに接続され、d軸電流基準を電源交流の電圧角度と同期する余弦波の二乗により変調するよう構築かつ構成される制御回路とを備え、
変調されたd軸電流基準がインバータ回路への入力として供給される駆動回路が提供される。
一例において、フィルムコンデンサは、駆動回路用の直流リンクコンデンサとして構成される。
一例において、駆動回路は、制御回路によって変調される前にd軸電流基準の振幅が調整されるよう構成される。
d軸基準電流の振幅は、当該永久磁石モータのトルクコントロールの断絶の可能性を低減するよう増加されてもよい。
d軸電流基準の振幅は、当該永久磁石モータの力率を低下させる不要なd軸電流がインバータ回路に印加されないよう低減されてもよい。
一例において、制御回路は、q軸電流基準を電源交流の電圧角度と同期する正弦波の二乗により変調するよう構築され、変調されたq軸電流基準がインバータ回路へのさらなる入力として供給される。
一例において、駆動回路は、q軸電流基準の振幅が比例積分コントローラにより調整されるよう構成される。
q軸基準の振幅は、所望の速度に実質的に維持されるモータ速度を提供するために調整されてもよい。
一例において、制御回路はd軸電流基準の値を決定するよう構築かつ構成される電圧マージン比例積分コントローラを備える。
一例において、駆動回路は、電圧マージン比例積分コントローラが負荷をかけた動作条件で駆動回路を調整することによって得られた電圧マージン基準値を用いてd軸電流基準を決定するよう構成される。
一例において、駆動回路は、ゼロ交差イベント時に電圧マージン比例積分コントローラによりd軸電流基準が決定されるよう構成される。
一例において、制御回路は、電源交流に接続され、電源交流の電圧角度を決定するよう構築かつ構成されるグリッド角生成手段を備える。
一例において、組み合わせて、永久磁石同期モータと、この永久磁石同期モータを駆動するための駆動回路とが設けられる。
本明細書に開示される別の態様によれば、永久磁石モータを駆動するための方法であって、
電源回路で、電源単相交流を永久磁石モータ用の三相交流に変換する工程と、
電源回路が電源単相交流を三相交流に変換している間に、変調d軸電流基準を含むフィードバックを電源回路に印加する工程とを含み、
変調d軸電流基準が電源単相交流の電圧角度と同期する余弦波の二乗によりd軸電流基準を変調することにより決定される方法が提供される。
一例において、この方法は、変調される前にd軸電流基準の振幅を調整する工程を含む。
一例において、フィードバックは、電源単相交流の電圧角度と同期する正弦波の二乗によりq軸電流基準を変調することにより決定される変調q軸電流基準を含む。
一例において、この方法は、変調q軸電流基準の振幅を調整する工程を含む。
一例において、この方法は、負荷をかけた動作条件で電源回路を調整することにより得られる電圧マージン基準値に基づきd軸電流基準を決定する工程を含む。
一例において、この方法は、ゼロ交差イベント時に行われるd軸電流基準を決定する工程を含む。
一例において、この方法は、電源単相交流の電圧角度を決定する工程と、電源単相交流の電圧角度を正弦波形生成手段と余弦波形生成手段とに供給する工程とを含む。
一例において、この方法は、電源回路内の電流の測定を一回以上行う工程と、一つ以上の電流測定値を用いて電源回路用のフィードバックを決定する工程とを備える。
この方法は、永久磁石同期モータを駆動するためのものであってもよい。
本願開示の理解を促進し、実施形態がどのように実施されるかを示すため、例示的に添付図面が参照される。
電解コンデンサを有する公知の単相/三相インバータ駆動回路の一例の回路図を模式的に示す。 本願開示にかかるフィルムコンデンサを有する単相/三相インバータ駆動回路の一例を模式的に示す。 本願開示にかかる永久磁石モータ用の駆動回路の別の例を模式的に示す。 図3の駆動回路の波形図の一例を示す。 本願開示にかかる永久磁石モータの駆動回路の制御回路の一部を模式的に示す。
上述のように、電気モータは数多くの装置および製品、家庭環境、産業用途、運送用車両、軍事用途等に用いられる。世界における電気消費の多くの部分は、電気モータによるものである。世界における乏しいエネルギー資源とエネルギーコストの高騰とを考えると、電気モータをできるだけ効率的に用いることが必須である。実際、高効率電気モータを先進国で用いることは、多くの用途において必須となっている。したがって、高効率のモータ設計およびこれらのモータを効率的に駆動することは、ますます重要になっている。
例えば、白物家電などの多くの装置において、誘導およびブラシ付き直流(DC)モータは、例えば、永久磁石同期モータ(PMSM)およびブラシレス直流モータ(BLDC)等の永久磁石モータに置き換えられつつある。永久磁石同期モータは、モータの回転子に埋め込まれた、またはモータの回転子の表面に取り付けられた磁石を用いる交流(AC)モータである。これらの磁石は、誘導モータの場合のように、固定子の磁界が回転子にリンクさせて磁束を生ずることを必要とするのではなく、一定のモータ磁束を生じさせるのに用いられる。
PMSMは、誘導およびブラシ付きDCモータのいずれよりも効率を高くすることができる。これと並び、PMSMは、ほぼ無音の動作が可能であり、誘導またはブラシ付きDCモータと比べて、メンテナンスの必要が著しく少ない。これらの特徴から、PMSMは誘導またはブラシ付DCモータよりも白物家電に使うのに有利である。しかし、PMSMを駆動するのは、インバータ基板、および時には複雑な制御システムを必要とすることから、他のモータを実装する場合ほど単純ではないかもしれない。
以下の例のいくつかは、PMSMに関連して記載されるが、いくつかの例はBLDCモータにも適用可能であることが理解されるべきである。
一般に、永久磁石モータ用の駆動回路は、少なくとも整流回路などの交流-直流コンバータと、インバータ回路などの直流-交流コンバータとを備える。この駆動回路は、一般の家庭機器が送電網から受ける単相交流を、直流を介して三相交流に変換して出力し、モータを駆動する。この三相は、互いに120度ずれる通常の三つの正弦波形である。三相電力では、任意の時点で三相の一つがピークの近くにある。したがって、高出力三相モータと、三相溶接装置等の製品は、均一な入力を有することになる。駆動回路で交流から直流に変換するため、回路内にコンデンサが設けられることが多い。このコンデンサは、しばしば直流リンクコンデンサとして知られる。直流リンクコンデンサは、交流電源が高出力の間は充電可能であり、交流電源が低出力の間は放電可能である。直流リンク電圧は、交流-直流変換からの出力電圧である。したがって、電源交流の全体サイクル中、直流リンク電圧は変換された交流電圧によって、または直流リンクコンデンサを放電することによって提供される。したがって、直流リンクコンデンサを設けることで、駆動回路からの出力をより平滑とすることができる。
PMSM駆動回路において、電解コンデンサを直流リンクコンデンサとして利用可能である。電解コンデンサにより直流リンク電圧をフラットに保ち、モータに高品質の電力供給を行い、これにより、より良いモータ性能を得ることができる。上述のように、出力電圧を平滑化するために、直流リンクコンデンサが駆動回路に用いられる。直流リンクコンデンサにより、交流から直流への、およびその逆の電力変換での高速な切り替えにより起こる電圧と電流リップルの問題を解決することができる。直流リンク電圧がほぼ一定に保たれるのであれば、従来の制御が適用可能である。しかし、電解コンデンサを駆動回路に用いると、いくつかの問題が起こる。最も顕著なのは、コンデンサの寿命が短く、駆動回路の他の部分よりも著しく短い可能性があることである。したがって、大抵の場合、この電解コンデンサにより、駆動回路の全体の寿命が決まる。また、このような直流リンク電解コンデンサの信頼性を欠くことも公知である。電解コンデンサに関する他の重要な問題としては、物理的サイズが大きいこと、および高コストであることが挙げられる。さらに、電解コンデンサが大きいと、入力力率が低くなり、また突入電流が高くなる。特に、産業用途および白物家電などの家電においては、これらの問題は安全性、信頼性および電磁両立性(EMC)要件のために重要となる可能性がある。
次に図面を参照すると、図1は、電解コンデンサ103を有する公知の単相/三相インバータ駆動回路100の一例の回路図を模式的に示す。単相/三相インバータ駆動回路100は、PMSM101を駆動するのに使用可能されてよい。図1に見られるように、駆動回路100は、能動または受動力率改善(PFC)回路105とプリチャージ回路107とを備える。上述のように、電解コンデンサを用いると、入力力率が低くなり、突入電流が高くなる可能性がある。PFC回路105は、電解コンデンサ103のために起こる、この低い力率という問題に応えるのに必要とされる。プリチャージ回路107は、電解コンデンサ103により生じる高い突入電流という問題を克服するのに必要とされる。
駆動回路100は、交流電圧源109に接続される。また、駆動回路100は、整流回路111とインバータ回路113とを備える。整流回路111は、交流電源109と並列に配置される。PFC回路105は、整流回路111と並列に配置される。プリチャージ回路107は、PFC回路105とインバータ回路113との間で直列に配置される。電解コンデンサ103は、PFC回路105と並列に配置される。インバータ回路113は、電解コンデンサ103と並列に配置される。インバータ回路113からの出力は、PMSM101に接続される。電解コンデンサに関連する問題に応えるために設けられたPFC回路105とプリチャージ回路107とは、コストが高く、一般に装置内で(特に回路基板(プリント回路基板:PCB)上で)大きなスペースを占める。電解コンデンサ自体の信頼性が低いことに加え、必要となる追加の回路によりシステム全体の信頼性が低下する可能性がある。
電解コンデンサに代えてフィルムコンデンサを用いるインバータ基板によりPMSM制御を実現可能であることが提案されている。フィルムコンデンサは、絶縁性(通常プラスチック)フィルムを誘電体として備え、場合により紙を電極の担体として組み合わせたコンデンサである。フィルムコンデンサを用いれば、大型電解コンデンサを駆動回路に用いることによる既述の問題の一つ以上を解決することができる。この場合のフィルムコンデンサは、例えば、実質的に電解コンデンサよりも物理的に小さく、実装するのにより低価格とすることができる。また、このフィルムコンデンサは、電解コンデンサと比べてより小さな容量値を有するものとすることもできる。
図2は、本願開示にかかる単相/三相インバータ駆動回路200の一例を模式的に示す。この駆動回路200はフィルムコンデンサ203を有する。単相/三相インバータ駆動回路200は、永久磁石同期モータ(PMSM)201を駆動するのに使用可能である。別の例において、例えば、ブラシレス直流モータ(BLDC)を含む、異なる種類の永久磁石モータを駆動回路200によって駆動してもよい。フィルムコンデンサ203の容量値は、類似の駆動回路に用いられる通常の電解コンデンサの大きな容量に比べて、比較的小さなものであってもよい。フィルムコンデンサ203の物理的サイズは、電解コンデンサの大きな物理的サイズと比べて比較的小さなものとしてもよい。別の例において、フィルムコンデンサの代わりに、電解コンデンサ以外の比較的小さな容量値の他の適切なコンデンサを用いてもよい。図2の回路において、駆動回路200は、交流電圧源205に接続される。また、駆動回路200は、整流回路207とインバータ回路209とを備える。整流回路207は、交流電源電圧205と並列である。フィルムコンデンサ203は、整流回路207と並列に配置される。インバータ回路209は、フィルムコンデンサ203と並列に配置される。インバータ回路209からの出力は、PMSM201に接続される。
図2からわかるように、この回路は、図1の回路と比べてより少ない部品しか要しない。したがって、このシステムのコストは著しく低減する。用いられるコンデンサ203がより小さく、またより少ない部品しか要しないために、インバータ基板のサイズも小さくなる。また、これにより、システムの信頼性も向上する。これらの上述した改善点すべてが、産業用途に向けた動機付けの源泉となる。
しかし、これらの種類の駆動回路にフィルムコンデンサを用いるのは、制御上の難点を引き起こす可能性がある。フィルムコンデンサが単相交流システムに用いられる場合、整流された直流リンク電圧は交流電源電圧の周波数の二倍の周波数で変動する。出力電力が増加するにつれ、直流リンク電圧の波形は整流された交流信号波形と似たものになる。変動する直流リンク電圧はトルク変動、および駆動されているモータの速度制御を困難とする可能性がある。
これらの問題を克服するため、以前のシステムにおいて様々な補正技術が提案されている。従来の磁界方向ベクトル制御(field-oriented vector control)は小さなフィルムコンデンサを有するインバータにより駆動されるPMSMの速度を制御するには十分でないことから、提案の多くは、インバータ回路のd軸およびq軸電流基準を変えることによりこれらの問題を克服しようと試みていた。
さらに説明すると、幾何学的用語において、いわゆる「d」および「q」軸とは、同じ角速度での三つの独立した正弦波位相量によりもたらされる磁束の単相表示である。直軸としても知られるd軸は、(PMモータの界磁巻線などの)界磁巻線により磁束が生じる軸である。q軸(横軸)は、モータによりトルクが生じる軸である。横軸は、常に電気的に直軸に対して90度先行する。別の言い方をすると、d軸は主磁束方向であり、q軸は主トルク生成方向である。PMモータの分野では、d軸とq軸の電流および電圧の測定値がオープンおよびクローズドフィードバックシステムでモータを制御するための重要な量となりうる。特に、d軸およびq軸電流は、「弱め磁束」操作にとって重要である。特に、永久磁石モータは磁石を備えることから、モータが高速で動作しているとき、導体の断面を通る磁界(すなわち磁束)の割合によってはシステムに問題が生じうる。PMSMの速度が高く、また出力が大きいため、システムの正確な機能を確保するために弱め磁束操作がしばしば必要となる。これについては、より詳細に後述する。
PMSMに弱め磁束を実装するのには二つの主なアプローチがある。一つの方法はモータの磁力設計を改良することであり、別の方法は洗練された電子制御技術を用いることである。本願開示は、特にPMSMの弱め磁束の制御技術に取り組むものである。最大出力トルクを得るためには、適切な制御戦略が必要である。この電子制御アプローチは、回転子の磁石により生成される強度固定空隙磁束(fixed-amplitude magnetic airgap flux)を抑制するために、固定子の電流成分、すなわちd軸およびq軸電流を制御することに基づく。
磁界方向制御においては、二軸の電流成分はd軸電流およびq軸電流である。本願の提案では、q軸電流について、q軸電流基準の形状は、交流電源電圧角度と同期した正弦波の二乗として変形される。これは、台形q軸電流基準は正弦波q軸電流基準と比較して入力電流の高調波が悪いことから、q軸電流基準が台形波形とされるアプローチよりも好ましいアプローチである。
d軸電流基準に関しては、電流基準値はモータパラメータに関連する数式により演算される。以前のシステムにおいては、d軸電流基準を演算するのに様々なアプローチが用いられていた。例えば、d軸電流基準を所望のトルクおよび速度に従った定数値として保持可能であることが提案されている。別の例では、d軸電流基準は、平均電圧制限コンセプト(average voltage constraint concept)に従ってゆっくりと変化する。さらなる例では、d軸電流基準は、動作点を変化させることによる試行錯誤により、負の定数値として設定される。別の例では、波形中に鋭いピークを持つd軸電流基準波形が選択される。しかし、d軸基準電流にこのような鋭いピークを有する状態で安定した制御ループを実現するためには、電流制御のために比例共振(proportional resonant:PR)コントローラを用いなくてはならない。比例積分(proportional integral:PI)コントローラと比べて、PRコントローラはより実装するのが困難である。また、d軸電流の鋭いピーク値が高すぎて、電流がモータを減磁させる恐れがありうる。この高いd軸電流により、より高い電流容量(current carrying capacity)に対応するために、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)をシステムに使わなくてはならない。しかし、IGBTは、ユニット当たりのコストが高い。したがって、コストを低く保つため、これらの種類の回路においてIGBTの使用は最小限に留めるか、または避けられるべきである。
上記の一つ以上の課題に対応するため、本明細書では、必要とされるときのみ、d軸電流を駆動回路に印加することが提案される。電解コンデンサのないシステムでは、例えばフィルムコンデンサを用いると、電解コンデンサが用いられる場合と比べて、比較的小さなフィルムコンデンサの容量のために電源交流の周波数の二倍で直流リンク電圧が変動する。直流リンク電圧のピークにおいて、フィルムコンデンサを用いるシステムは、比較的大きな容量のシステムと考えることができる。したがって、公称速度での直流リンク電圧のピーク値で、またはその付近では、d軸電流を供給する必要性は少ない。すなわち、これは直流リンク電圧のピークにおいては印加可能な電源電圧がモータ端子電圧よりも大きく、ここでは弱め磁束操作の有用性が低いことによる。
しかし、d軸電流を直流リンク電圧の値が低いとき、またはその付近で供給する必要性はより大きい。特に、印加可能な電圧がモータ端子電圧よりも低い可能性があり、ここでは弱め磁束操作は有用であるかもしれない。弱め磁束操作は、d軸電流を駆動回路に供給することにより実行可能である。d軸電流は負の電流である。d軸電流は、図2のインバータ回路209などのインバータ回路に供給されてよい。この結果、本願開示の実施形態の例によれば、d軸電流波形は交流電源電圧角度と同期した余弦波の二乗(cos(θ))に沿ったものとなる。これについては、より詳細に後述する。
図3は、本願開示にかかる永久磁石モータ用の駆動回路300の一例を模式的に示す。図3からわかるように、本例の駆動回路はPMSM311に接続される。他の例では、駆動回路はブラシレスDCモータに接続されてもよい。駆動回路の電源回路部301が点線で囲まれた形で示される。駆動回路の残りの回路は、駆動回路の制御回路を構成する。図3の電源回路301は、図2の単相/三相インバータ駆動回路に対応する。電源回路301は、使用時に、例えば全国送電網または何らかの他の交流電源等の交流電圧源305に接続される。電源回路301は、整流回路307とインバータ回路309とを備える。整流回路307は、交流電源電圧305と並列である。フィルムコンデンサ303は、整流回路307と並列に配置される。インバータ回路309は、フィルムコンデンサ303と並列に配置される。インバータ回路309からの出力は、PMSM311に接続される。
駆動回路300の制御回路は、グリッド角生成ブロック313を備える。グリッド角生成手段313は、使用時に交流電圧源305に接続される。グリッド角生成手段は、交流電圧源の角度を演算および出力するよう構成される。グリッド角生成手段313からの出力は、コサインブロック315およびサインブロック317に供給される。コサインブロック315は二つの出力を乗算ブロック316に供給し、乗算ブロック316はグリッド角生成手段313によって演算された角度と同期する余弦波の二乗を出力する。サインブロック317は二つの出力を乗算ブロック318に出力し、乗算ブロック318はグリッド角生成手段313によって演算された角度と同期する正弦波の二乗を出力する。
以下の制御回路では、静止座標系または回転座標系のいずれかで異なる測定値が演算されうる。互いに対して一定の速度で動く系は、すべて慣性(静止)系である。回転座標系では、線速度で共に動くのではなく、何らかの角速度で回転する。
速度基準値319が速度PIブロック321に供給される。速度基準は、PMSM311の所望の速度を表す。速度基準値は、PMSM311のユーザによって決定されてもよい。別の例において、速度基準値はユーザの用途、モータが実装される機器または装置の現在の動作特性等により決定されてもよい。速度基準値319は変更可能であり、PMSM311の動作中に変更されてもよい。速度PI321からの出力を、q軸電流基準(iq_ref)と呼称する。q軸電流基準は回転系にある。iq_refと正弦波の二乗は乗算ブロック320に供給され、乗算ブロック320は変調q軸電流基準(iqr_mod)を出力する。変調q軸電流基準は回転系にある。iqr_modがPIコントローラ323に供給されてq軸電圧を出力する。q軸電圧は逆パーク変換ブロック325に供給される。
逆パーク変換ブロックはα電圧とβ電圧とを出力する。このαおよびβ電圧は、変調q軸およびd軸電流基準に基づく。αおよびβ電圧は、磁界方向ベクトル制御に関連する。静止系でのαおよびβ電圧は、電圧マージン演算ブロック327への入力として供給される。電圧マージン演算ブロック327からの出力は、マージン基準値329から減算され、第二PI331に供給される。マージン基準値329は、駆動回路内の定数値として記憶されてもよい。別の例において、マージン基準値329は変更可能であってもよい。第二PI331の出力が、d軸電流基準(id_ref)である。d軸電流基準は回転系にある。id_refと乗算ブロック332からの余弦の二乗とが、乗算ブロックに供給され、変調d軸電流基準(idr_mod)を出力する。変調d軸電流基準は回転系にある。idr_modは第三PI333に供給されてd軸電圧を出力する。d軸電圧は回転系にある。d軸電圧は逆パーク変換ブロック325に供給される。逆パーク変換ブロック325からの出力が、回転系でのq軸およびd軸電圧である。q軸およびd軸電圧は、空間ベクトル変調ブロック335に供給される。空間ベクトル変調ブロック335からの出力は、電源回路301のインバータ309に供給される。
電流測定ブロック337がインバータ309に接続される。電流測定ブロック337は、インバータ309に流れる一以上の電流を測定するよう構成される。本例では、電流測定ブロック337は、インバータ回路309により出力されている交流の三相の三つの電流を測定する。電流測定ブロック337からの出力は、クラーク変換ブロック339に供給される。クラーク変換ブロック339はα電流とβ電流とを出力する。α電流およびβ電流の双方は静止系にある。α電流とβ電流とは、パーク変換ブロック341に供給される。パーク変換ブロック341は、回転系での測定されたq軸電流である第一出力を有する。この第一出力は、PI323の前にiqr_modから減算される。パーク変換ブロック341は、回転系での測定されたd軸電流である第二出力を有する。この第二出力は、第三PI333の前にidr_modから減算される。位置観察ブロック343が、PI323の出力、第三PI333の出力、およびパーク変換ブロック341からの第一および第二出力に接続される。位置観察ブロック343は位相Aからの回転子電気角度を出力する。この点に関し、PMモータは三つの位相A、B、C(U、V、Wと呼称する場合もある)を有する。位相Aの回転子電気角度は、回転子(すなわち磁石)と固定子位相Aとの間の角度距離、などである。回転子電気角度は、逆パーク変換ブロック325、パーク変換ブロック341、および速度演算ブロック345に供給される。速度演算ブロック345は決定された速度を出力する。決定された速度は、速度PIブロック321の前に速度基準値319から減算される。
図3からわかるように、q軸電流基準(iq_ref)は交流電源電圧角度と同期する正弦波の二乗(sin(θ))として変形される。さらに、本願開示の実施形態によれば、d軸電流基準(id_ref)は、乗算ブロック316からの交流電源電圧角度と同期する余弦波の二乗として変形される。このようにして、d軸電流は、最も有用なとき(例えば直流リンク電圧が低い値であるとき)に印加される。このようにd軸電流を印加することにより、システムは、PMSMを回生領域ではなく、電動領域内に維持することになる。モータは、回生領域として知られる領域で、逆に機能すると発電機として動作する可能性があるが、これは本願開示に従うことで防止される。
まとめると、上述したように、フィルムコンデンサの容量が比較的小さいことから、直流リンク電圧は(例えば、送電網からの)交流電源の周波数の二倍で変動する。直流リンク電圧のピークにおいて、フィルムコンデンサを用いるシステムは、比較的大きな容量のシステムとして動作するものと考えることができる。したがって、公称速度での直流リンク電圧のピーク値で、またはその付近では、d軸電流(すなわち弱め磁束)を供給する必要は少ない。印加される電源電圧はモータ端子電圧よりも大きく、したがって、ここでは弱め磁束操作の有用性はより低い。
一方、直流リンク電圧がより低い値付近にあるとき、印加可能な電源電圧がモータ端子電圧よりも低いことから、弱め磁束操作のためのd軸電流は有用である。本明細書に記載されるように、d軸電流波形は、図4に示される、決定された交流電源電圧角度と同期する余弦波の二乗に沿ったものとなる。
図4は、図3の駆動回路の波形図の一例を示す。波形図は、q軸電流基準線(iqr_ref)、d軸電流基準線(idr_ref)、変調q軸電流基準波形(iqr_mod)、変調d軸基準波形(idr_mod)および直流リンクコンデンサ電圧波形(Vdc-link)を含む。
q軸電流基準線(iqr_ref)は、一定の正の振幅を示す水平線として示される。d軸電流基準線(idr_ref)は、一定の負の振幅を示す水平線として示される。本例では、q軸電流基準(iqr_ref)の正の振幅はd軸電流基準(idr_ref)の負の振幅よりも大きい。
直流リンク電圧波形(Vdc-link)は正弦波の二乗である。変調q軸電流基準(iqr_mod)も正弦波の二乗である。変調q軸電流基準波形(iqr_mod)のピークは、q軸電流基準線(iqr_ref)と同じ振幅を有する。直流リンク電圧と変調q軸電流基準波形(iqr_mod)は、互いに位相が一致する。直流リンク電圧波形(Vdc-link)のピーク振幅は、変調q軸電流基準波形(iqr_mod)のピーク振幅よりも大きい。変調d軸電流基準波形(idr_mod)は負の波形である。変調d軸電流基準波形(idr_mod)は余弦波の二乗である。変調d軸電流基準波形(idr_mod)の負のピーク振幅は、d軸電流基準線(iqr_ref)と同じ振幅を有する。
直流リンク電圧波形(Vdc-link)がピーク振幅にあるとき、変調d軸電流基準波形(idr_mod)は最小値をとる。これが示しているのは、最小量のd軸電流が図3の駆動回路のインバータ回路に供給されているということである。前述のように、直流リンク電圧がピーク振幅にあるとき、弱め磁束操作は有用ではなく、あるいは必要とされないかもしれない。したがって、d軸電流はほとんど、ないし全くインバータ回路に供給されない。
直流リンク電圧波形(Vdc-link)が最小であるとき、変調d軸電流基準波形(idr_mod)は負のピーク振幅となる。これが示しているのは、最大量のd軸電流が駆動回路のインバータ回路に供給されているということである。繰り返すと、直流リンク電圧がより低い値付近にあるとき、印加可能な電源電圧がモータ端子電圧よりも低いことから、d軸電流は有用である。したがって、弱め磁束操作は、この場合に有用である。図4の本例では、最小振幅とはゼロ交差またはゼロ交差近辺を指すことが理解されるべきである。
図5は例示的制御回路図を模式的に示す。図5の制御回路図は、図3の制御回路の回路の一部をより詳細に示す。図5の回路の機能は、d軸電流基準値を生成することである。電圧マージン演算ブロック501が設けられる。静止系でのαおよびβ電圧(Vα、Vβ)が、電圧マージン演算ブロック501への入力として供給される。電圧マージンは、最大印加可能電源電圧とモータ端子電圧との差である。マージン基準値503も設けられる。電圧マージン演算ブロック501からの出力が、マージン基準値503から減算される。演算された値がPI505に供給される。PI505からの出力が、d軸電流基準(id_ref)である。d軸電流基準は減磁制御ブロック507を通過する。変調d軸電流基準509は、d軸電流基準を決定された交流電源電圧角度と同期する余弦波の二乗(cos(θ))と乗算することにより生成される。
電圧マージン基準値503が高すぎる場合、不要な余剰のd軸電流が印加される。この余剰のd軸電流はPMモータの力率を低下させうる。電圧マージン基準値503が低すぎる場合、PMモータのトルク制御に断絶が生じうる。トルク制御の断絶は、d軸電流の欠如によるものでありうる。したがって、電圧マージン基準値503は、負荷をかけた動作条件での微調整により得られる。変調d軸電流基準および変調q軸電流基準の正弦曲線波形を乱さないようにするため、d軸電流基準とq軸電流基準とは、すべてのゼロ交差イベント時に決定される。
したがって、本願開示によれば、PMモータ駆動用途において、改善された入力電流の高調波を提供することができる。駆動回路は、より効率的とすることができ、PMモータに最大の電力出力を供給することができる。これにより、モータの安定した動作を確保しつつ、公称速度条件で以前のシステムと比べてより高い力率、したがってより高い効率が得られる。本回路および方法は、ブラシレスDCモータおよびPMSMなどのPMモータを駆動するのに適切となりうる。本明細書に開示される回路および方法は、例えばエアコン等の白物家電、および他の家庭および産業機器を含む各種電気機器に特に適するものとなりうる。
本明細書に記載される例は、本発明の実施形態の説明的事例として理解されるべきである。別の実施形態および事例も想定される。一つの例または実施形態に関連して記載された任意の特徴は、単独で、または他の特徴と組み合わせて使用可能である。さらに、任意の一例または実施形態に関連して記載された任意の特徴は、他の例または実施形態の一つ以上の特徴と組み合わせて、または他の例または実施形態と組み合わせても利用可能である。さらに、本明細書に記載されない等価物または変形例も、請求項に定義される本発明の範囲内で利用可能である。

Claims (15)

  1. 永久磁石モータ用の駆動回路であって、
    電源交流を直流に変換するよう構築かつ構成される整流回路と、
    前記整流回路と並列な経路に配置されるフィルムコンデンサと、
    前記直流を三相交流に変換して前記永久磁石モータを駆動するよう構築かつ構成されるインバータ回路と、
    前記電源交流と前記インバータ回路とに接続され、d軸電流基準を前記電源交流の電圧角度と同期する余弦波の二乗により変調するよう構築かつ構成される制御回路とを備え、
    変調された前記d軸電流基準が前記インバータ回路への入力として供給されることを特徴とする駆動回路。
  2. 請求項1に記載の駆動回路であって、前記制御回路によって変調される前に前記d軸電流基準の振幅が調整されるよう構成されることを特徴とする駆動回路。
  3. 請求項1または請求項2に記載の駆動回路であって、前記制御回路は、q軸電流基準を前記電源交流の電圧角度と同期する正弦波の二乗により変調するよう構築かつ構成され、変調された前記q軸電流基準が前記インバータ回路へのさらなる入力として供給されることを特徴とする駆動回路。
  4. 請求項3に記載の駆動回路であって、前記q軸電流基準の振幅が比例積分コントローラにより調整されるよう構成されることを特徴とする駆動回路。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動回路であって、前記制御回路は、前記d軸電流基準の値を決定するよう構築かつ構成される電圧マージン比例積分コントローラを備えることを特徴とする駆動回路。
  6. 請求項5に記載の駆動回路であって、前記電圧マージン比例積分コントローラは負荷をかけた動作条件で駆動回路を調整することによって得られた電圧マージン基準値を用いて前記d軸電流基準を決定するよう構成されることを特徴とする駆動回路。
  7. 請求項5または請求項6に記載の駆動回路であって、ゼロ交差イベント時に前記電圧マージン比例積分コントローラにより前記d軸電流基準が決定されるよう構成されることを特徴とする駆動回路。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動回路であって、前記制御回路は前記電源交流に接続され、前記電源交流の電圧角度を決定するよう構築かつ構成されるグリッド角生成手段を備えることを特徴とする駆動回路。
  9. 永久磁石同期モータと、請求項1から8のいずれか一項に記載の前記永久磁石同期モータを駆動するための駆動回路との組み合わせ。
  10. 永久磁石モータを駆動するための方法であって、
    電源回路で、電源単相交流を永久磁石モータ用の三相交流に変換する工程と、
    前記電源回路が前記電源単相交流を前記三相交流に変換している間に、変調d軸電流基準を含むフィードバックを前記電源回路に印加する工程とを含み、
    前記変調d軸電流基準が前記電源単相交流の電圧角度と同期する余弦波の二乗によりd軸電流基準を変調することにより決定されることを特徴とする方法。
  11. 請求項10に記載の方法において、変調される前に前記d軸電流基準の振幅を調整する工程を含むことを特徴とする方法。
  12. 請求項10または請求項11に記載の方法であって、前記フィードバックは、前記電源単相交流の電圧角度と同期する正弦波の二乗によりq軸電流基準を変調することにより決定される変調q軸電流基準を含むことを特徴とする方法。
  13. 請求項10から12のいずれか一項に記載の方法であって、負荷をかけた動作条件で前記電源回路を調整することにより得られる電圧マージン基準値に基づき前記d軸電流基準を決定する工程を含むことを特徴とする方法。
  14. 請求項10から13のいずれか一項に記載の方法において、
    前記電源単相交流の電圧角度を決定する工程と、
    前記電源単相交流の電圧角度を正弦波形生成手段と余弦波形生成手段とに供給する工程を含むことを特徴とする方法。
  15. 請求項10から14のいずれか一項に記載の方法において、
    前記電源回路内の電流の測定を一回以上行う工程と、
    一つ以上の電流測定値を用いて前記電源回路用の前記フィードバックを決定する工程とを備えることを特徴とする方法。
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