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JP2023106259A - 保護素子、及びバッテリパック - Google Patents

保護素子、及びバッテリパック Download PDF

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JP2023106259A JP2022007497A JP2022007497A JP2023106259A JP 2023106259 A JP2023106259 A JP 2023106259A JP 2022007497 A JP2022007497 A JP 2022007497A JP 2022007497 A JP2022007497 A JP 2022007497A JP 2023106259 A JP2023106259 A JP 2023106259A
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Yuji Kimura
千智 小森
Kazutomo Komori
篤哉 芳成
Atsuya Yoshinari
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Abstract

【課題】発熱体を内蔵した保護素子において、高電圧、大電流化に対応するとともに、素子内部で破損を起こすことなく、より安全に且つ速やかに電流経路を遮断する。【解決手段】ヒューズエレメント2と、溶断部材3とを備え、溶断部材3は、絶縁基板4と、発熱体5と、発熱体を被覆する絶縁層6と、絶縁層6を介して発熱体5と重畳される発熱体引出電極7と、絶縁基板4の表面4a側の、少なくとも発熱体5と重畳する領域に形成され、発熱体引出電極7から電気的に独立した放熱部8と、絶縁基板4の裏面4bに形成され、ヒューズエレメント2の溶融導体2aを保持する保持電極10と、発熱体引出電極7と保持電極10とを連続させる貫通孔11を有し、ヒューズエレメント2は、保持電極10と接続されている。【選択図】図2

Description

本技術は、電流経路を遮断する保護素子、及びこれを用いたバッテリパックに関する。
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
多くのリチウムイオン二次電池を用いた電子装置においては、バッテリパックに内蔵されたFETスイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行う。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加され、瞬間的な大電流が流れた場合、或いはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大異常電圧を出力したりした場合であってもバッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態においても、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有するヒューズ素子からなる保護素子が用いられている。
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体の発熱によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が用いられている。
リチウムイオン二次電池の用途は、近年拡大しており、より大電流の用途、例えば電動ドライバ等の電動工具や、ハイブリッドカー、電気自動車、電動アシスト自転車等の輸送機器、ドローン等への採用が開始されている。これらの用途において、特に起動時等には、数10A~100Aを超えるような大電流が流れる場合がある。このような大電流容量に対応した保護素子の実現が望まれている。
このような大電流に対応する保護素子を実現するために、断面積を増大させた可溶導体を用い、この可溶導体の表面に、発熱体を形成した絶縁基板を接続した保護素子が提案されている。
図39は、従来の保護素子の一構成例を示す断面図である。図39に示す保護素子100は、ヒューズエレメント101と、ヒューズエレメント101を溶断する一対の溶断部材102とを備える。
図40は、溶断部材を示す図であり、(A)は発熱体が設けられた絶縁基板表面側を示す平面図であり、(B)はヒューズエレメント101と接する絶縁基板裏面側を示す底面図である。各溶断部材102は、絶縁基板103と、絶縁基板103の表面側に形成された発熱体104と、発熱体104を被覆する絶縁層105と、発熱体104と接続され、絶縁層105を介して発熱体104と重畳される発熱体引出電極106と、絶縁基板103の裏面に形成され、ヒューズエレメント101の溶断時にヒューズエレメント101の溶融導体を保持する保持電極107と、絶縁基板103を貫通し、発熱体引出電極106と保持電極107とを連続させる貫通孔108を有する。
発熱体104は、発熱体給電電極110を介して電源を備えた外部回路と接続され、外部回路から給電可能とされている。
ヒューズエレメント101は、外部回路と接続された第1、第2の電極端子111,112と接続ハンダ114等の接合材料により接続されている。また、ヒューズエレメント101は、保持電極107及び絶縁基板103の裏面に形成された補助電極109と、接続ハンダ114等の接合材料により接続されている。
溶断部材102は、発熱体104が通電、発熱されるとこの熱によりヒューズエレメント101を溶融させ、その溶融導体101aが貫通孔108を介して発熱体引出電極106側に吸引する。これによりヒューズエレメント101は、保持電極107と補助電極109との間が溶断され、第1の電極端子111、第2の電極端子112間の導通が遮断される。
特開2020-173965号公報
図39に示す保護素子100のような従来構造では、電気自動車等の高電圧大電流用途の保護回路に用いられた場合、大電流に対応した断面積が広いヒューズエレメント101が用いられるとともに、保護素子100の作動時には、このヒューズエレメント101を速やかに溶断するために、発熱体104に高電圧が印加され、高熱を発熱することとなる。
このため、絶縁基板103上において、発熱体引出電極106が有る領域と無い領域とで熱伝導性の差によって温度差が発生し、応力によって絶縁基板103あるいは発熱体104が破損する恐れがある。すなわち、図42(A)に示すように、発熱体引出電極106が形成されている領域においては発熱体104の熱が絶縁基板103及び発熱体引出電極106に分散して伝達されるため、絶縁基板103が局所的に過熱することはない。一方、発熱体引出電極106が形成されていない領域Rにおいては発熱体104の熱が絶縁基板103のみに伝達されるため、発熱体引出電極106が形成されている領域に比して過熱される。このため、絶縁基板103上において熱分布に偏りが生じることにより応力が生じ、絶縁基板103や発熱体104が損傷するおそれがある。
これにより、ヒューズエレメント107を溶断させるまでの時間が延びて、速やかに安全に電流経路を遮断することができなくなる恐れがあり、さらには図42(B)、図41に示すように、未切断の状態で発熱体104の発熱が停止する恐れもある。なお、図43(A)は、溶断部材102の図42(A)(B)に示すA-A’断面図である。図43(B)は、溶断部材102の図42(A)(B)に示すB-B’断面図である。
このような絶縁基板103や発熱体104の破損によってヒューズエレメント101が融け残り、電流遮断が阻害されるリスクは、高電圧、大電流化に伴ってヒューズエレメント101が大型化するにつれて、また、電流定格が向上し電界強度が高くなるにつれて、さらには、保護素子100の小型化に伴う絶縁層105の薄型化に伴って、大きくなる。
したがって、発熱体を内蔵した保護素子において、高電圧、大電流化に対応するとともに、素子内部で破損を起こすことなく、より安全に且つ速やかに作動する対策が求められている。
そこで、本技術は、高電圧が印加された場合でも素子内部での破損を防止でき、安全かつ速やかに電流経路を遮断できる保護素子及びこれを用いたバッテリパックを提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、上記溶断部材は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、上記絶縁基板の上記表面と反対側の裏面に形成され、上記ヒューズエレメントの溶断時に上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極と、上記発熱体引出電極と上記保持電極とを連続させる貫通孔を有し、上記ヒューズエレメントは、上記保持電極と接続されているものである。
また、本技術に係る保護素子は、ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、上記溶断部材は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、上記絶縁基板の上記表面と反対側の裏面に形成され、上記ヒューズエレメントの溶断時に上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極と、上記発熱体引出電極と上記保持電極とを連続させる貫通孔を有し、上記ヒューズエレメントは、上記発熱体引出電極と接続されているものである。
また、本技術に係る保護素子は、ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、上記溶断部材は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、上記絶縁基板の上記表面に形成され、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極を有し、上記ヒューズエレメントは、上記第1の電極、上記第2の電極、及び上記第1の電極と上記第2の電極の間に設けられた上記発熱体引出電極に接続されているものである。
また、本技術に係る保護素子は、ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、上記溶断部材は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記絶縁基板の裏面側に上記発熱体と重畳して形成され、上記発熱体と接続された発熱体引出電極と、上記絶縁基板の裏面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、上記絶縁基板の上記裏面に形成され、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極とを有し、上記ヒューズエレメントは、上記第1の電極、上記第2の電極、及び上記発熱体引出電極に接続されているものである。
また、本技術に係る保護素子は、ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、上記溶断部材は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に並列して設けられた複数の発熱体と、上記発熱体を被覆する絶縁層と、上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、上記絶縁基板の上記裏面に形成され、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極と、上記絶縁基板の上記裏面の上記第1の電極と記第2の電極の間に設けられた保持電極と、上記絶縁基板の上記複数の発熱体間の領域を貫通し、上記発熱体引出電極と上記保持電極とを連続させる貫通孔とを有し、上記ヒューズエレメントは、上記第1の電極、上記第2の電極、及び上記保持電極に接続されているものである。
また、本技術に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子とを備え、上記保護素子は、上記いずれかに記載の保護素子である。
本技術によれば、少なくとも発熱体と重畳する領域に放熱部が形成されているため、絶縁基板上において、発熱体の発熱による熱分布の偏りが低減される。したがって、熱分布の偏りに伴う応力による絶縁基板や発熱体の損傷を防止することができ、発熱体に高電圧が印加された場合でも安全かつ速やかにヒューズエレメントを溶断することができる。
図1は、本技術が適用された保護素子の平面図である。 図2は、本技術が適用された保護素子の図1に示すD-D’断面図である。 図3は、溶断部材を示す図であり、(A)は絶縁基板の表面を示す平面図であり、(B)は絶縁基板の裏面を示す底面図である。 図4は、発熱体引出電極の基部を、絶縁層を超えて絶縁基板の両側縁部まで形成した溶断部材を示す平面図である。 図5は、放熱部を覆う絶縁被覆層を設けた溶断部材を示す図であり、(A)は絶縁基板の表面を示す平面図であり、(B)は断面図である。 図6は、可及的に広範囲に放熱部を設けた溶断部材を示す平面図である。 図7は、本技術が適用された保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は図8に示すA-A’断面図、(B)は図8に示すB-B’断面図である。 図8は、本技術が適用された保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。 図9は、本技術が適用された保護素子の回路図である。 図10は、本技術が適用された保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。 図11は、ヒューズエレメントの断面図である。 図12は、一方の面に溶断部材が接続されたヒューズエレメントの他方の面に溶断部材を接続する構成を示す平面図である。 図13は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。 図14は、ケースに凸部を設けた保護素子の変形例を示す断面図である。 図15は、ケースに凸部を設けた保護素子の変形例を示す平面図である。 図16は、放熱部上に放熱素子を設けた保護素子の変形例を示す断面図である。 図17は、放熱部上に放熱素子を設けた保護素子の変形例を示す平面図である。 図18は、放熱部上に放熱素子としてヒートシンクを設けた溶断部材を示す外観斜視図である。 図19は、本技術が適用された保護素子の変形例を示す断面図である。 図20は、図19に示す変形例に係る保護素子の溶断部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。 図21は、本技術が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。 図22は、図21に示す保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。 図23は、図21に示す保護素子において放熱部を絶縁層6上のみに形成した変形例を示す平面図である。 図24は、図21に示す保護素子において放熱部を他の電極が形成されていない領域にわたって可及的に広範囲に形成した変形例を示す平面図である。 図25は、図21に示す保護素子の回路図である。 図26は、本技術が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。 図27は、図26に示す保護素子において放熱部を覆う絶縁被覆層を設けた変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。 図28は、図26に示す保護素子において放熱部を他の電極が形成されていない領域にわたって可及的に広範囲に形成した変形例を示す平面図である。 図29は、図28に示す保護素子において放熱部を覆う絶縁被覆層を設けた変形例を示す平面図である。 図30は、図26に示す保護素子において第2の放熱部を設けた変形例を示す図であり、(A)は断面図、(B)は平面図である。 図31は、誘引電極を形成せず、その分、放熱部を可及的に広げて形成した溶断部材を示す平面図である。 図32は、本技術が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。 図33(A)は図32(A)のA-A’断面図であり、図33(B)は図32(A)のB-B’断面図である。 図34は、図32に示す保護素子の回路図である。 図35は、図32に示す保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。 図36(A)は、図35のA-A’断面図であり、図36(B)は図35のB-B’断面図である。 図37は、本技術が適用された保護素子の変形例を示す断面図である。 図38は、図37に示す保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。 図39は、従来の保護素子の一構成例を示す断面図である。 図40は、溶断部材を示す図であり、(A)は発熱体が設けられた絶縁基板表面側を示す平面図であり、(B)はヒューズエレメントと接する絶縁基板裏面側を示す底面図である。 図41は、図40に示す保護素子においてヒューズエレメントが一部未切断となった状態を示す断面図である。 図42は、図40に示す保護素子においてヒューズエレメントが未切断となった状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。 、図43(A)は、溶断部材の図42(A)(B)に示すA-A’断面図である。図43(B)は、溶断部材の図42(A)(B)に示すB-B’断面図である。
以下、本技術が適用された保護素子及びこれを用いたバッテリパックについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
[保護素子]
図1、図2、図3に示すように、本発明が適用された保護素子1は、ヒューズエレメント2と、ヒューズエレメント2を溶断する溶断部材3とを備える。図1は、保護素子1の平面図であり、図2は、保護素子1の図1に示すD-D’断面図であり、図3は、溶断部材3を示す図であり、(A)は絶縁基板4の表面4aを示す平面図であり、(B)は絶縁基板4の裏面4bを示す底面図である。
溶断部材3は、絶縁基板4と、絶縁基板4の表面4a側に形成された発熱体5と、発熱体5を被覆する絶縁層6と、発熱体5と接続され、絶縁層6を介して発熱体5と重畳される発熱体引出電極7と、絶縁基板4の表面4a側の、少なくとも発熱体5と重畳する領域に形成され、発熱体引出電極7から電気的に独立した放熱部8を有する。
また、絶縁基板4の表面4aと反対側の裏面4bには、ヒューズエレメント2の溶断時にヒューズエレメント2の溶融導体2aを保持する保持電極10が形成され、絶縁基板4から発熱体引出電極7まで貫通する貫通孔11によって、発熱体引出電極7と保持電極10とが連続されている。
ヒューズエレメント2は、保持電極10と接続ハンダ9等の接合材料によって接続されている。また、ヒューズエレメント2は、両端が外部回路と接続された第1、第2の電極端子21,22と接続ハンダ9等の接合材料によって接続されている。
この保護素子1によれば、少なくとも発熱体5と重畳する領域に放熱部8が形成されているため、絶縁基板4上において、発熱体5の発熱による熱分布の偏りが低減される。したがって、熱分布の偏りに伴う応力による絶縁基板4や発熱体5の損傷を防止することができ、発熱体5に高電圧が印加された場合でも安全かつ速やかにヒューズエレメント2を溶断することができる。
以下、保護素子1の溶断部材3の各構成及びヒューズエレメント2について詳細に説明する。
[溶断部材]
[絶縁基板]
溶断部材3は、絶縁基板4を備える。絶縁基板4は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、絶縁基板4は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。絶縁基板4の表面4aには発熱体5が形成されている。
本発明においては、図3(A)に示すように、絶縁基板4の発熱体5が形成されている面を表面4aとし、図3(B)に示すように、表面4aの反対側の面を裏面4bとする。また、絶縁基板4は、表面4aに形成された後述する発熱体引出電極7と、裏面4bに形成された後述する保持電極10とを連続させる貫通孔11が形成されている。
[発熱体]
発熱体5は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体5は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板4上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
図2に示す保護素子1においては、絶縁基板4の表面4aに2つの発熱体5が並列して形成されている。各発熱体5は、一端が発熱体給電電極12と接続され、他端が発熱体電極14と接続されている。発熱体給電電極12は、発熱体5の一端と接続され発熱体5への給電端子となる電極であり、キャスタレーションを介して絶縁基板4の裏面4bに形成された外部接続電極12aと連続されている。また、各発熱体5は、絶縁層6に被覆されるとともに、絶縁層6上に形成された発熱体引出電極7が重畳されている。
外部接続電極12aは、外部回路と接続されている第3の電極端子23と接続ハンダ9等の接合材料によって接続されることにより、外部回路に設けられた電源と接続され、発熱体5へ給電可能とされる。また、発熱体電極14は、後述する発熱体引出電極7が接続されている。
発熱体給電電極12及び発熱体電極14は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、発熱体給電電極12及び発熱体電極14の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、発熱体給電電極12及び発熱体電極14の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。
なお、発熱体給電電極12は、外部接続電極12aと第3の電極端子23とを接続する接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して発熱体給電電極12上に這い上がり、発熱体給電電極12上に濡れ拡がることを防止する規制壁(図示せず)を設けることが好ましい。規制壁は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、発熱体給電電極12上に印刷等により形成することができる。規制壁を設けることにより、溶融した接続用ハンダ9が発熱体給電電極12まで濡れ広がることを防止し、保護素子1と外部回路基板との接続性を維持することができる。
絶縁層6は、発熱体5の保護及び絶縁を図るために設けられ、例えばガラス層からなる。絶縁層6は、厚みが例えば10~40μmと薄く形成されている。なお、絶縁層6は、絶縁基板4の表面4aと発熱体5の間にも形成してもよい。
[発熱体引出電極]
発熱体引出電極7は、発熱体給電電極12及び発熱体電極14と同様に、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、発熱体引出電極7の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。
発熱体引出電極7は、一端を発熱体電極14と接続されるとともに、絶縁層6上に形成され、絶縁層6を介して発熱体5と重畳されている。発熱体引出電極7は、発熱体5が形成されていない領域である2つの発熱体5の間に延在する先端部7aと、2つの発熱体5と重畳するとともに発熱体電極14と接続される基部7bとを有する。発熱体引出電極7は、発熱体5の通電方向と直交する方向を幅方向としたときに、2つの発熱体5と重畳する幅広に形成された部位を基部7bとし、基部7bから突出して2つの発熱体5の間の領域に延在する幅が細い部位を先端部7aとする。
発熱体引出電極7は、貫通孔11が設けられ、絶縁基板4の裏面4bに形成された保持電極10と電気的、熱的に接続されている。これにより、発熱体5の熱が、発熱体引出電極7、貫通孔11及び保持電極10を経てヒューズエレメント2に伝わり、ヒューズエレメント2を溶融させる。また、ヒューズエレメント2の溶融導体2aは、貫通孔11に吸引され、発熱体引出電極7上に保持される。
なお、図4に示すように、発熱体引出電極7の基部7bを、絶縁層6を超えて絶縁基板4の両側縁部まで形成してもよい。発熱体引出電極7の面積が広くなるほど、発熱体5の熱が絶縁基板4上に拡散し、絶縁基板4における熱分布の偏りを解消しやすくなる。
[放熱部]
ここで、図3(A)に示すように、絶縁基板4の表面4a側の、少なくとも発熱体5と重畳する領域には、発熱体引出電極7から電気的に独立した放熱部8が形成されている。放熱部8は、発熱体5の発した熱を吸熱する部位であり、絶縁基板4上における熱分布の偏りを低減するために設けられる。
放熱部8を形成することにより、発熱体5の発熱時における熱集中による絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。すなわち、溶断部材3では、発熱体5の熱が、絶縁基板4や、発熱体引出電極7及び放熱部8に伝わる。放熱部8が形成されていない場合、発熱体5の熱は発熱体引出電極7が形成されている領域では絶縁基板4とともに発熱体引出電極7に吸熱されるが、発熱体引出電極7が形成されていない領域では絶縁基板4側に集中する。このため、絶縁基板4上における熱分布に偏りが生じ、熱が集中する領域において熱衝撃によるクラックが生じ得る。また、発熱体5自身も局所的に過熱されることでクラックが生じ得る。一方、放熱部8を形成することで、発熱体引出電極7と同様に吸熱されるため、絶縁基板4上において熱分布の偏りが低減され、クラックの発生が防止できる。また、発熱体5自身も局所的に過熱されることなくクラックの発生を防止できる。
これにより、熱分布の偏りに起因して発生する応力による絶縁基板4や発熱体5の損傷を防止することができ、発熱体5に高電圧が印加された場合でも安全かつ速やかにヒューズエレメント2を溶断することができる。
放熱部8は、発熱体5の熱を吸熱できる材料であればよく、例えばAgやCu又はこれらの合金等の導電材料を用いて形成することもできる。また、放熱部8は、スクリーン印刷等の公知の方法によって形成することができる。
また、図5に示すように、放熱部8を絶縁被覆する絶縁被覆層17を形成してもよい。絶縁被覆層17を形成することにより、放熱部8を保護するとともに、放熱部8が導電材料で形成された場合に放熱部8と発熱体引出電極7等とのショートを防止し、放熱部8の電気的独立性を確保することができる。絶縁被覆層17は、例えばガラス層からなり、ガラスペーストをスクリーン印刷することにより形成することができる。
放熱部8は、発熱体5の発熱体引出電極7が設けられていない領域に形成され、絶縁層6を介して発熱体5と重畳する。また、放熱部8は、発熱体5と重畳する領域のみに形成してもよく、発熱体5と重畳する領域から絶縁基板4の発熱体5が形成されていない領域にかけて形成してもよい。また、図2に示すように、絶縁層6の表面及び側面にわたって形成することで、発熱体5の表面及び側面を覆うように形成してもよい。これにより、吸熱容量を増加させるとともに、効率よく吸熱することができる。
また、放熱部8は、図6に示すように、絶縁基板4の表面4a上において、発熱体引出電極7、発熱体給電電極12及び発熱体電極14等の各種電極が形成されていない領域に形成してもよい。可及的に放熱部8の面積が広くなるほど、絶縁基板4における熱分布の偏りが解消され、高電圧が印加された場合にも絶縁基板4や発熱体5の損傷を防止することができる。なお、溶断部材3は、発熱体5及び放熱部8を絶縁基板4上において、平面視で左右対称に形成することが、絶縁基板4上における熱分布の偏りを解消するうえで好ましい。
また、放熱部8は、発熱体引出電極7やその他の電極とは接続されておらず、電気的に独立している。これにより、放熱部8は、発熱体引出電極7と同電位とはならず、電位差が生じる電極間のスパーク(絶縁破壊)を抑制することができる。すなわち、近接して形成される発熱体引出電極7の先端部7aと発熱体給電電極12との間には電位差が生じるため、発熱体5に高電位が印加されるとスパークが起きる恐れがある。そして、スパークによる衝撃で発熱体引出電極7や絶縁基板4が破損し、ヒューズエレメント2の速やかな溶断が阻害されたり、発熱体5の発熱が停止したりする恐れもある。しかし、両電極12,7aの間に、電気的に独立した放熱部8が形成されることで、発熱体引出電極7の先端部7aと発熱体給電電極12との間にスパークが発生することを抑制することができる。
[保持電極]
絶縁破壊4の裏面4bには、接続ハンダ9等接続材料によってヒューズエレメント2に接続される保持電極10、補助電極15及び外部接続電極12aが形成されている。保持電極10は、絶縁基板4を介して、表面4aの略中央部に形成された発熱体引出電極7と対向する位置に形成されている。また、保持電極10は、保持電極10の表面から発熱体引出電極7まで貫通する貫通孔11を介して発熱体引出電極7と連続されている。これにより、溶融したヒューズエレメント2の溶融導体2aが、貫通孔11を介して発熱体引出電極7側に吸引される。
補助電極15は、保持電極10とともに、ヒューズエレメント2に接続されるとともに、溶融導体2aを保持するものである。補助電極15は、保持電極10を挟んで絶縁基板4の両側縁部に形成されている。
保持電極10及び補助電極15は、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて、スクリーン印刷等の公知の方法により形成することができる。
貫通孔11は、ヒューズエレメント2が溶融すると、毛管現象によってヒューズエレメント2の溶融導体2aを吸引し、保持電極10上で保持する溶融導体2aの体積を減少させることができる。これにより、保護素子1の高定格化、高容量化に伴いヒューズエレメント2が大型化することにより溶融量が増大した場合にも、図7に示すように、大量の溶融導体2aを保持電極10、発熱体引出電極7及び補助電極15によって保持することができ、ヒューズエレメント2を確実に溶断することができる。
貫通孔11は、絶縁基板4の発熱体5が形成されていない領域に形成されている。図3に示す溶断部材3では、並列する発熱体5の間の領域に形成されている。
貫通孔11は、内面に導電層24が形成されている。導電層24は、保持電極10及び発熱体引出電極7と連続する。これにより、保持電極10と発熱体引出電極7が導電層24を介して電気的に接続される。また、導電層24が形成されることにより、発熱体5の熱を発熱体引出電極7及び保持電極10を介してヒューズエレメント2に速やかに伝えることができる。
また、保持電極10は、ヒューズエレメント2を支持するとともに溶断時には溶融導体2aが凝集するため、保持電極10と導電層24とが連続することにより、溶融導体2aを貫通孔11内に導きやすくすることができる。また、溶融導体2aは、導電層24と連続する発熱体引出電極7に濡れ広がり、保持される(図7、図8参照)。したがって、より多くの溶融導体2aを貫通孔11及び発熱体引出電極7に吸引、保持することができ、保持電極10及び補助電極15によって保持される溶融導体2aの体積を減少させ、確実に溶断することができる。
導電層24は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、貫通孔11の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。また、導電層24は、複数の金属線や、導電性を有するリボンの集合体を貫通孔11内に挿入することにより形成してもよい。
なお、溶断部材3は、貫通孔11を複数形成してもよい。これにより、発熱体5の伝熱経路を増やしてより速やかにヒューズエレメント2へ熱を伝えるとともに、ヒューズエレメント2の溶融導体2aを吸引する経路を増やし、速やかにより多くの溶融導体2aを吸引することで、溶断部位における溶融導体2aの体積を減少させることができる。
[溶断部材の形成工程]
このような溶断部材3は、絶縁基板4の表面4aに、いずれもスクリーン印刷等の公知の形成方法を用いて、発熱体給電電極12、発熱体電極14を形成した後、発熱体5を形成し、絶縁層6を積層形成する。次いで、放熱部8と発熱体引出電極7を形成する。また、絶縁基板4の裏面4bも、スクリーン印刷等の公知の形成方法を用いて、保持電極10、外部接続電極12a及び補助電極15を形成する。その後、ドリル等で貫通孔11を形成し、メッキ等により導電層24を形成することにより完成する。溶断部材3は、保持電極10及び補助電極15が接続ハンダ9によりヒューズエレメント2に接続される。溶断部材3が接続されたヒューズエレメント2は、接続ハンダ9により下側ケース30の側縁部30aに支持された第1、第2の電極端子21,22に接続される。また、絶縁基板4の外部接続電極12aが、接続ハンダ9により下側ケース30の側縁部30aに支持された第3の電極端子23に接続される。
[ヒューズエレメント挟持形態]
図2に示す保護素子1では、ヒューズエレメント2の一面及び上記一面と反対側の他面に、溶断部材3がそれぞれ接続され、これにより、ヒューズエレメント2が複数の溶断部材3に挟持されている。図9は、保護素子1の回路図である。ヒューズエレメント2の一面及び他面に接続された各溶断部材3は、それぞれ発熱体5の一端が、各絶縁基板4に形成された発熱体引出電極7及び保持電極10を介してヒューズエレメント2と接続されている。また、各溶断部材3は、発熱体5の他端と接続された発熱体給電電極12が、それぞれ第3の電極端子23と接続ハンダ9等の接続材料を介して接続され、第3の電極端子23を介して外部回路に設けられた発熱体5を発熱させるための電源に接続される。
また、図10に示すように、保護素子1は、発熱体5の発熱によりヒューズエレメント2を溶断する際には、ヒューズエレメント2の両面に接続された各溶断部材3,3の発熱体5が発熱し、ヒューズエレメント2の両面から加熱する。したがって、保護素子1は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント2の断面積を増大させた場合にも、速やかにヒューズエレメント2を加熱し、溶断することができる。
また、保護素子1は、ヒューズエレメント2の両面から溶融導体2aを、各溶断部材3に形成した各貫通孔11内に吸引し、発熱体引出電極7で保持する。したがって、保護素子1は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント2の断面積を増大させ溶融導体2aが多量に発生した場合にも、複数の溶断部材3によって吸引し、確実にヒューズエレメント2を溶断させることができる。また、保護素子1は、複数の溶断部材3によって溶融導体2aを吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント2を溶断させることができる。
保護素子1は、ヒューズエレメント2として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、ヒューズエレメント2を速やかに溶断させることができる。すなわち、高融点金属で被覆されたヒューズエレメント2は、発熱体5が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。ここで、保護素子1は、複数の溶断部材3を備え、同時に各発熱体5を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子1によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
また、保護素子1は、図2に示すように、一対の溶断部材3,3が対向してヒューズエレメント2に接続されることが好ましい。これにより、保護素子1は、一対の溶断部材3,3で、ヒューズエレメント2の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに溶融導体2aを吸引することができ、より速やかにヒューズエレメント2を加熱、溶断することができる。
また、保護素子1は、一対の溶断部材3,3の各絶縁基板4に形成された保持電極10及び補助電極15がヒューズエレメント2を介して互いに対向することが好ましい。これにより、一対の溶断部材3,3が対称に接続されることで、リフロー実装時やヒューズエレメント2の加熱時等において、ヒューズエレメント2に対する溶断部材3からの負荷のかかり方がアンバランスとなることを抑制し、ヒューズエレメント2の変形や溶断部材3の接続ズレ等への耐性を向上させることができる。
なお、発熱体5は、貫通孔11の両側に形成することが、保持電極10及び発熱体引出電極7を加熱し、またより多くの溶融導体2aを凝集、吸引するうえで好ましい。
[ヒューズエレメント]
ヒューズエレメント2は、第1及び第2の電極端子21,22間にわたって実装され、発熱体5の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによる自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極端子21と第2の電極端子22との間の電流経路を遮断するものである。
ヒューズエレメント2は、発熱体5の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
また、ヒューズエレメント2は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、図11に示すように、ヒューズエレメント2は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層26、低融点金属層26に積層された外層として高融点金属層27を有する。ヒューズエレメント2は、第1、第2の電極端子21,22、保持電極10及び補助電極15上に接続ハンダ9等の接合材料を介して接続される。
低融点金属層26は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層26の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層27は、低融点金属層26の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、第1、第2の電極端子21,22、保持電極10及び補助電極15とヒューズエレメント2との接続をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
このようなヒューズエレメント2は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。ヒューズエレメント2は、低融点金属層26の全面が高融点金属層27によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。なお、ヒューズエレメント2は、高融点金属層27を内層とし、低融点金属層26を外層として構成してもよく、また低融点金属層と高融点金属層とが交互に積層された3層以上の多層構造とする、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させるなど、様々な構成によって形成することができる。
ヒューズエレメント2は、内層となる低融点金属層26に、外層として高融点金属層27を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層26の溶融温度を超えた場合であっても、ヒューズエレメント2として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、第1、第2の電極端子21,22、保持電極10及び補助電極15とヒューズエレメント2との接続を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによってもヒューズエレメント2の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。したがって、保護素子1は、所定の過電流や発熱体5の発熱によって速やかにヒューズエレメント2を溶断することができる。
また、ヒューズエレメント2は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱(ジュール熱)によって溶融し、第1、第2の電極端子21,22間の電流経路を遮断する。
また、ヒューズエレメント2は、発熱体5が通電され発熱することにより溶融し、第1、第2の電極端子21,22間の電流経路を遮断する。このとき、ヒューズエレメント2は、溶融した低融点金属層26が高融点金属層27を浸食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層27が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、ヒューズエレメント2は、低融点金属層26による高融点金属層27の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、ヒューズエレメント2は、保持電極10及び補助電極15による溶融導体2aの物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の電極端子21,22間の電流経路を遮断することができる(図8、図10)。
また、ヒューズエレメント2は、低融点金属層26の体積を、高融点金属層27の体積よりも多く形成するようにしてもよい。ヒューズエレメント2は、過電流による自己発熱又は発熱体5の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント2は、低融点金属層26の体積を高融点金属層27の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の電極端子21,22間を遮断することができる。
また、内層となる低融点金属層26に高融点金属層27が積層されて構成されたヒューズエレメント2においては、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、ヒューズエレメント2は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
また、ヒューズエレメント2は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント2は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層27が設けられたヒューズエレメント2においては、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント2は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
なお、ヒューズエレメント2は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス(図示せず)を塗布してもよい。
ヒューズエレメント2の端部と接続される第1、第2の電極端子21,22は、導電性を有する端子であり、保護素子1のケース28の内外にわたって設けられている。第1、第2の電極端子21,22は、ケース28の外部に導出された先端部にネジ孔20が設けられ、外部回路に設けられた接続電極にねじ止め等により接続可能とされている。
なお、上述した発熱体給電電極12と接続された外部接続電極12aと接続される第3の電極端子23も、同様に、保護素子1のケース28の内外にわたって設けられ、ケース28の外部に導出された先端部にネジ孔20が設けられている。
[ケース]
また、保護素子1は、ヒューズエレメント2及び溶断部材3がケース28に覆われることによりその内部が保護されている。ケース28は、例えば、各種エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチック、セラミックス、ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。ケース28は、ヒューズエレメント2及び溶断部材3を収納するとともに、ヒューズエレメント2の溶融時に溶融導体2aが球状に膨張し、発熱体引出電極7上に凝集するのに十分な内部空間を有する。
図2、図12に示すように、ケース28は、上側ケース29と下側ケース30が組み合わされて形成されている。下側ケース30は、略方形状に形成され、第1~第3の電極端子21~23を支持する側縁部30aと、ヒューズエレメント2の下面側に接続された溶断部材3が位置する中空部30bを有する。
側縁部30aは、第1~第3の電極端子21~23が載置され、ケース28の内外にわたって支持する。中空部30bは、ヒューズエレメント2の下面側に接続された溶断部材3を収納するとともに、発熱体引出電極7に溶融導体2aが濡れ広がり凝集可能な内部空間を有する。
上側ケース29は、下側ケース30と同様に略方形状に形成され、下側ケース30と突き合わせ結合されることによりヒューズエレメント2及びヒューズエレメント2の上面側に接続された溶断部材3を覆う。また、上側ケース29は、発熱体引出電極7に溶融導体2aが濡れ広がり凝集可能な内部空間を有する。
[回路構成例]
このような保護素子1は、図13に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック40内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック40は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル41a~41dからなるバッテリスタック45を有する。
バッテリパック40は、バッテリスタック45と、バッテリスタック45の充放電を制御する充放電制御回路46と、バッテリスタック45の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル41a~41dの電圧を検出する検出回路47と、検出回路47の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子48とを備える。
バッテリスタック45は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル41a~41dが直列接続されたものであり、バッテリパック40の正極端子40a、負極端子40bを介して、着脱可能に充電装置42に接続され、充電装置42からの充電電圧が印加される。充電装置42により充電されたバッテリパック40は、正極端子40a、負極端子40bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
充放電制御回路46は、バッテリスタック45と充電装置42との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子43a、43bと、これらの電流制御素子43a、43bの動作を制御する制御部44とを備える。電流制御素子43a、43bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部44によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック45の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部44は、充電装置42から電力供給を受けて動作し、検出回路47による検出結果に応じて、バッテリスタック45が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子43a、43bの動作を制御する。
保護素子1は、例えば、バッテリスタック45と充放電制御回路46との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子48によって制御される。
検出回路47は、各バッテリセル41a~41dと接続され、各バッテリセル41a~41dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路46の制御部44に供給する。また、検出回路47は、いずれか1つのバッテリセル41a~41dが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子48を制御する制御信号を出力する。
電流制御素子48は、たとえばFETにより構成され、検出回路47から出力される検出信号によって、バッテリセル41a~41dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック45の充放電電流経路を電流制御素子43a、43bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
以上のような構成からなるバッテリパック40に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、図9に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の電極端子21がバッテリスタック45側と接続され、第2の電極端子22が正極端子40a側と接続され、これによりヒューズエレメント2がバッテリスタック45の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体5が発熱体給電電極12及び第3の電極端子23を介して電流制御素子48と接続されるとともに、発熱体5がバッテリスタック45の開放端と接続される。これにより、発熱体5は、一端が発熱体引出電極7及び保持電極10を介してヒューズエレメント2及びバッテリスタック45の一方の開放端と接続され、他端が第3の電極端子23を介して電流制御素子48及びバッテリスタック45の他方の開放端と接続される。これにより、電流制御素子48によって通電が制御される発熱体5への給電経路が形成される。
[保護素子の動作]
発熱体5は、保護素子1が外部回路基板に実装されることにより、第3の電極端子23を介して外部回路に形成された電流制御素子48等と接続され、平常時においては通電及び発熱が規制されている。そして、検出回路47がバッテリセル41a~41dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子48へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子48は、発熱体5に通電するよう電流を制御する。発熱体5は、バッテリスタック45から電流が流れることにより発熱を開始する。
発熱体5の熱は、発熱体引出電極7、貫通孔11及び保持電極10を経てヒューズエレメント2に伝達され、ヒューズエレメント2を溶融させる。ヒューズエレメント2は、溶融導体2aが保持電極10、補助電極15及び発熱体引出電極7上に凝集し、これにより保持電極10と補助電極15との間で溶断される(図8、図10)。
なお、発熱体5の熱は、絶縁基板4から保持電極10や補助電極15を経てヒューズエレメント2に伝わる。また、保護素子1は、ヒューズエレメント2を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶融前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間でヒューズエレメント2を溶解させることができる。
ヒューズエレメント2が溶断することにより、バッテリスタック45の充放電経路が第1、第2の電極端子21,22間で遮断する。また、発熱体5は、ヒューズエレメント2が溶断することにより、自身への給電経路も遮断されることから発熱が停止する。
ここで、保護素子1は、絶縁基板4の表面4a側の、少なくとも発熱体5と重畳する領域には、発熱体引出電極7から電気的に独立した放熱部8が形成されている。これにより、保護素子1は、熱分布の偏りに起因して生じる応力による絶縁基板4や発熱体5の損傷を防止することができ、発熱体5に高電圧が印加された場合でも安全かつ速やかにヒューズエレメント2を溶断することができる。また、保護素子1は、放熱部8を形成することにより、大電流用途に対応するバッテリスタック45より発熱体給電電極12に高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
なお、保護素子1は、ヒューズエレメント2に定格を超える過電流が通電された場合にも、ヒューズエレメント2が自己発熱により溶融し、バッテリパック40の充放電経路を遮断することができる。
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
[凸部]
図14、図15に示すように保護素子1は、ケース28に、放熱部8と接して吸熱する凸部50を形成してもよい。凸部50は上側ケース29及び下側ケース30から突出形成され、先端部が放熱部8と接する。これにより、放熱部8で吸熱した熱を凸部50及びケース28へ拡散し、より効率的に熱拡散を行うことができる。
凸部50は、上側ケース29の上面、及び下側ケース30の中空部30bの底面から突出して形成されている。凸部50は、上側ケース29及び下側ケース30と一体に形成してもよく、上側ケース29及び下側ケース30と別部材により形成し、接着などにより接続して設けてもよい。
凸部50の形状は特に制限はなく、例えば角柱状、円柱状等、任意の形状で形成することができる。また、例えば凸部50の外周に凹凸部や溝部を形成するなどして表面積を増やし、熱拡散を促進させるようにしてもよい。また、凸部50をケース28と別部材で構成する場合において、凸部50をケース28の材料よりも熱伝導率が高い材料で形成してもよい。
凸部50の先端部は平面状とされている。これにより、放熱部8との接触面積を広く確保することができる。また、凸部50の先端部と放熱部8との面接触を確保するために、熱伝導性や耐熱性に優れる樹脂剤や樹脂シート等を介在させてもよい。これにより、凸部50の先端部と放熱部8の接触面が平行に対向しない場合や粗面である場合にも接触面積を広く確保することができ、凸部50への熱伝導効率の低下を防止することができる。
また、凸部50は、放熱部8の発熱体5と重畳する領域のみと接するようにしてもよく、発熱体5と重畳する領域及び発熱体5と重畳する領域以外の領域を含む領域と接するようにしてもよい。
[放熱素子]
図16、図17に示すように保護素子1は、放熱部8上に接して放熱部8の熱を吸熱し放散する放熱素子51を設けてもよい。放熱素子51は、放熱部8と接することにより放熱部8の熱を吸熱するとともにケース28内の空間へ放熱するものである。保護素子1は、放熱素子51を設けることにより、効率的に熱拡散を行うことができる。
放熱素子51は、熱伝導性に優れる部材を好適に用いることができ、例えば高融点金属や、高融点金属に被覆された樹脂材、ヒートシンク(図18)などを例示できる。放熱素子51の大きさや形状は特に制限はないが、放熱部8の熱を十分に吸熱できる熱容量を備えるとともに、ケース28内に効率よく放熱する表面積を備えることが好ましい。放熱素子51は、ケース28の内部空間と接する外周に凹凸部や溝部を形成するなどして表面積を増やし、熱拡散を促進させるようにしてもよい。なお、放熱素子51は、少なくとも放熱部8と接する部位は、放熱部8との接触面積を広く確保するために平面状とされることが好ましい。
また、放熱素子51は、高融点ハンダやタック性を有する熱伝導性シート等の接続材料によって放熱部8上に接続される。ここで、接続材料として高融点のハンダ等を用いるのは、放熱部8の熱によっても溶融しないことが必要だからである。仮に接続材料が放熱部8の熱で溶融した場合、放熱素子51が脱落したり、高融点金属などの放熱素子を溶解したりするしまう恐れがある。
また、放熱素子51は、放熱部8の発熱体5と重畳する領域のみと接するようにしてもよく、発熱体5と重畳する領域及び発熱体5と重畳する領域以外の領域を含む領域と接するようにしてもよい。
保護素子1の実施例について説明する。本実施例では、実施例として図2に示す保護素子を用意し、比較例として図40に示す放熱部が設けられていない保護素子を用意し、それぞれ50V、60V、80V、100Vの電圧を印加した際の発熱体又は絶縁基板の損傷の有無を判定した。発熱体及び絶縁基板に損傷が見られなかった場合を〇(良好)と評価し、発熱体又は絶縁基板に損傷が見られた場合を×(不良)と評価した。
Figure 2023106259000002
表1に示すように、放熱部を形成した実施例では、印加電圧を上げても発熱体及び絶縁基板に損傷は確認されず、ヒューズエレメントを速やかに溶断することができた。一方、放熱部が設けられていない比較例に係る保護素子では、印加電圧が60V以上で発熱体又は絶縁基板の損傷が見られた。このため、比較例ではヒューズエレメントの溶断に時間が長くかかり、また発熱体が損傷してヒューズエレメントが完全には溶断できない場合が生じた。
[変形例1]
次いで、保護素子の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。図19に示すように、本技術が適用された保護素子60は、発熱体引出電極7をヒューズエレメント2に接続させている。図19、図20に示すように、保護素子60は、絶縁基板4の表面4aの、発熱体引出電極7を挟んだ両側縁部に補助電極15が形成されるとともに、接続ハンダ9によって補助電極15及び発熱体引出電極7がヒューズエレメント2に接続されている。すなわち、保護素子60は、絶縁基板4の発熱体5、絶縁層6、発熱体引出電極7及び放熱部8が形成されている表面4aがヒューズエレメント2と接する面とされている。そして、発熱体5が発熱すると、発熱体引出電極7を介してヒューズエレメント2が加熱される。
また、保護素子60の絶縁基板4は、ヒューズエレメント2と接する表面4aと反対側の裏面4bに保持電極10が形成されている。ヒューズエレメント2の溶融導体2aは、発熱体引出電極7と貫通孔11を介して連続されている保持電極10側に吸引、保持される。
保護素子60においても、保護素子1と同様に、絶縁基板4の表面4a側の、少なくとも発熱体5と重畳する領域には、発熱体引出電極7から電気的に独立した放熱部8が形成されている。したがって、保護素子60は、熱分布の偏りに伴う応力による絶縁基板4や発熱体5の損傷を防止することができ、発熱体5に高電圧が印加された場合でも安全かつ速やかにヒューズエレメント2を溶断することができる。また、保護素子60は、放熱部8を形成することにより、発熱体給電電極12に高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。したがって、保護素子60は、大電流用途に対応して高定格化することができる。
なお、保護素子60においても、放熱体8を絶縁被覆する絶縁被覆層17を形成することが好ましい。絶縁被覆層17を形成することにより、導電材料で放熱部8が形成されている場合にも、ヒューズエレメント2や発熱体引出電極7との導通を防止することができる。
[変形例2]
上述した保護素子1,60はヒューズエレメント2に溶断部材3を接続するものであるが、本技術が適用された保護素子は、図21に示すように、絶縁基板4上にヒューズエレメント2を実装し、溶断部材を外部回路基板に表面実装する構造としてもよい。なお、以下の説明においても、上述した保護素子1,60と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図21に示す保護素子70は、ヒューズエレメント2と、溶断部材71とを備える。溶断部材71は、絶縁基板4と、絶縁基板4の表面4a側に形成された発熱体5と、発熱体5を被覆する絶縁層6と、発熱体5と接続され、絶縁層6を介して発熱体5と重畳される発熱体引出電極7と、絶縁基板4の表面4a側の、少なくとも発熱体5と重畳する領域に形成され、発熱体引出電極7から電気的に独立した放熱部8と、絶縁基板4の表面4aに形成され、外部回路と接続される第1の電極72及び第2の電極73を有する。
ヒューズエレメント2は、第1の電極72、第2の電極73、及び第1の電極72と第2の電極73の間に設けられた発熱体引出電極7に、接続ハンダ9等の導電性接続材料によって接続されている。
第1、第2の電極72,73は、絶縁基板4の表面4aの対向する両側縁部に形成されている。また、絶縁基板4は、表面4aの第1、第2の電極72,73が形成された側縁部と異なる対向する側縁部に発熱体給電電極12及び発熱体電極14が形成されている。また、図21(C)に示すように、絶縁基板4は、裏面4bに外部回路基板と接続される第1~第3の外部接続電極74~76が形成されている。
第1、第2の電極72,73は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の電極72,73の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子70は、第1、第2の電極72,73の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、ヒューズエレメント2を第1、第2の電極72,73へリフロー実装する場合や、溶断部材71を外部回路基板へリフロー実装する場合に、ヒューズエレメント2を接続する接続用ハンダ9が溶融することにより第1、第2の電極72,73を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
第1の電極72は、絶縁基板4の表面4aより、キャスタレーションを介して裏面4bに形成された第1の外部接続電極74と連続されている。また、第2の電極73は、絶縁基板4の表面4aより、キャスタレーションを介して裏面4bに形成された第2の外部接続電極75と連続されている。溶断部材71は、第1、第2の外部接続電極74,75が、溶断部材71が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント2が回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
第1、第2の電極72,73は、接続ハンダ9等の導電接続材料によりヒューズエレメント2が搭載されることにより電気的に接続されている。また、図22に示すように、第1、第2の電極72,73は、発熱体5が通電に伴って発熱しヒューズエレメント2が溶断することにより遮断される。あるいは第1、第2の電極72,73は、保護素子70に定格を超える大電流が流れヒューズエレメント2が自己発熱(ジュール熱)によって溶断することにより遮断される。
溶断部材71は、絶縁基板4の表面4aに1つの発熱体5が形成されている。発熱体5は、一端が発熱体給電電極12と接続され、他端が発熱体電極14と接続されている。発熱体給電電極12は、発熱体5の一端と接続され発熱体5への給電端子となる電極であり、キャスタレーションを介して絶縁基板4の裏面4bに形成された第3の外部接続電極76と連続されている。発熱体電極14は、発熱体引出電極7と接続されている。
また、発熱体5は、絶縁層6に被覆されるとともに、絶縁層6上に形成された発熱体引出電極7と重畳されている。発熱体引出電極7は、接続ハンダ9等の接合材料を介して、第1、第2の電極72,73間にわたって設けられているヒューズエレメント2が接続されている。
発熱体5は、溶断部材71が外部回路基板に実装されることにより、第3の外部接続電極76を介して外部回路に形成された電流制御素子等と接続され、平常時においては電流及び発熱が規制されている。そして、発熱体5は、外部回路の通電経路を遮断する所定のタイミングで第3の外部接続電極76を介して通電され、発熱する。保護素子70は、発熱体5の熱が発熱体電極14から発熱体引出電極7を経て、また絶縁層6及び発熱体引出電極7介して、それぞれヒューズエレメント2に伝達することにより、第1、第2の電極72,73を接続しているヒューズエレメント2を溶融させることができる。図22に示すように、ヒューズエレメント2の溶融導体2aは発熱体引出電極7上及び第1、第2の電極72,73に凝集し、これにより第1、第2の電極72,73間の電流経路が遮断される。また、発熱体5は、ヒューズエレメント2が溶断することにより、自身の通電経路も遮断されることから発熱が停止する。
なお、第1、第2の電極72,73及び発熱体給電電極12は、第1~第3の外部接続電極74~76と接続される外部回路基板の電極に設けられた接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して第1、第2の電極72,73や発熱体給電電極12上に這い上がり、濡れ拡がることを防止する規制壁(図示せず)を設けることが好ましい。規制壁は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、第1、第2の電極72,73や発熱体給電電極12上に印刷等により形成することができる。規制壁を設けることにより、溶融した接続用ハンダが第1、第2の電極72,73や発熱体給電電極12まで濡れ広がることを防止し、溶断部材71と外部回路基板との接続性を維持することができる。
[放熱部]
放熱部8は、少なくとも発熱体5と重畳する領域に、発熱体引出電極7から電気的に独立して形成されている。例えば図21(A)に示すように、放熱部8は、発熱体5の発熱体給電電極12側を横断するように形成されている。また、放熱部8は、絶縁層6上に設けられるともに、発熱体引出電極7及び発熱体引出電極7に接続されたヒューズエレメント2と離間して設けられている。これにより、放熱部8は、発熱体5への給電経路や外部回路の電流経路から電気的に独立している。
保護素子70においても、保護素子1,60と同様に、放熱部8が発熱体5の熱を吸熱することにより、絶縁基板4上において熱分布の偏りが低減され、発熱体5の熱が局所的に集中することによる絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。
また、保護素子70においても、放熱部8を絶縁被覆する絶縁被覆層17を形成してもよい。また、図23に示すように、放熱部8は、絶縁層6上のみに形成してもよく、また、図24に示すように、発熱体5と重畳する領域から絶縁基板4の表面4aの発熱体給電電極12等の電極が形成されていない領域にわたって形成することにより、可及的に広範囲に形成してもよい。
[発熱体引出電極]
発熱体引出電極7は、一端を発熱体電極14と接続されるとともに、絶縁層6上に形成され、絶縁層6を介して発熱体5と重畳されている。発熱体引出電極7は、保護素子1と同様に、幅広に形成された基部7bと、基部7bから突出する幅が細い先端部7aとを有する。
発熱体引出電極7に幅広の基部7bを設けることで、ヒューズエレメント2の溶融導体2aを保持する容量を基部7b側で増加させることができ、確実にヒューズエレメント2を溶断するとともに、先端部7aの先に設けられた放熱部8と溶融導体2aとの短絡のリスクを低減することができる。
なお、発熱体引出電極7は、ヒューズエレメント2が搭載され、発熱体引出電極7の先端部7aは、ヒューズエレメント2の側縁よりも発熱体給電電極12側に突出しないことが好ましい。発熱体給電電極12には高電圧が印加され、高電位となることから、発熱体引出電極7がヒューズエレメント2から低電位部側に退避することにより発熱体引出電極7を高電位部から離間させることができる。また、発熱体引出電極7の先端部7aは、ヒューズエレメント2の側縁よりも発熱体給電電極12側に突出すると、当該先端部7aが避雷針的に作用するおそれもあるが、このような避雷針的な部位が形成されず、スパークの発生リスクを低減することができる。さらに、発熱体引出電極7とヒューズエレメント2とが重畳することで高電位となる発熱体給電電極12と対峙する金属(すなわち、先端部7a及びヒューズエレメント2)の体積が増加し、スパークが発生した場合にも衝撃に対する耐性が向上され破損が防止される。
[回路構成]
図25は保護素子70の回路図である。保護素子70は、図13に示すバッテリパック40の保護素子として使用されると、第1の外部接続電極74がバッテリスタック45側と接続され、第2の外部接続電極75が正極端子40a側と接続され、これによりヒューズエレメント2がバッテリスタック45の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子70は、発熱体5が発熱体給電電極12及び第3の外部接続電極76を介して電流制御素子48と接続されるとともに、発熱体5がバッテリスタック45の開放端と接続される。これにより、発熱体5は、一端が発熱体引出電極7を介してヒューズエレメント2及びバッテリスタック45の一方の開放端と接続され、他端が第3の外部接続電極76を介して電流制御素子48及びバッテリスタック45の他方の開放端と接続され、電流制御素子48によって通電が制御される発熱体5への給電経路が形成される。
保護素子70とバッテリ回路等の外部回路との接続は、例えば、溶断部材71を外部回路基板にリフロー実装等により実装することにより行うことができる。すなわち、溶断部材71は、絶縁基板4の裏面4bに形成された第1~第3の外部接続電極74~76が、外部回路基板の所定の実装位置に設けられたランド部に接続ハンダ等の接続材料を介して搭載され、リフロー炉を通されることにより外部回路基板に実装される。これにより、ヒューズエレメント2が外部回路の電流経路上に組み込まれる。
[保護素子の動作]
検出回路47がバッテリセル41a~41dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子48へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子48は、発熱体5に通電するよう電流を制御する。保護素子70は、バッテリスタック45から、発熱体5に電流が流れ、これにより発熱体5が発熱を開始する。保護素子70は、発熱体5の発熱によりヒューズエレメント2が溶断し、バッテリスタック45の充放電経路を遮断する(図22)。また、保護素子70は、ヒューズエレメント2を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶融前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間でヒューズエレメント2を溶解させることができる。
このとき、保護素子70は、放熱部8が発熱体5の熱を吸熱することにより、絶縁基板4上において熱分布の偏りが低減され、発熱体5の熱が局所的に集中することによる絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。また、保護素子70は、発熱体引出電極7の先端部7aと発熱体給電電極12との間に形成された放熱部8が発熱体引出電極7と電気的に独立しているため、発熱体引出電極7の先端部7aと発熱体給電電極12との間にスパーク(絶縁破壊)が発生することを抑制することができる。これにより、保護素子70は、大電流用途に対応するバッテリスタック45より発熱体5に高電圧が印加された場合でも安全かつ速やかにヒューズエレメント2を溶断し、電流経路を遮断することができる。
保護素子70は、ヒューズエレメント2が溶断することにより、発熱体5への給電経路も遮断されるため、発熱体5の発熱が停止される。
なお、保護素子70は、ヒューズエレメント2に定格を超える過電流が通電された場合にも、ヒューズエレメント2が自己発熱により溶融し、バッテリパック40の充放電経路を遮断することができる。
このように、保護素子70は、発熱体5の通電による発熱、あるいは過電流によるヒューズエレメント2の自己発熱によってヒューズエレメント2が溶断する。このとき、保護素子70は、ヒューズエレメント2の絶縁基板4へのリフロー実装時や、溶断部材71の回路基板へのリフロー実装時や、保護素子70が実装された回路基板が更にリフロー加熱等の高温環境下に曝された場合にも、ヒューズエレメント2を低融点金属が高融点金属によって被覆された構成で形成することにより、ヒューズエレメント2の変形が抑制されている。したがって、ヒューズエレメント2の変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、所定の過電流や発熱体5の発熱によって速やかに溶断することができる。
[変形例3]
上述した保護素子70では、発熱体5を形成した絶縁基板4の表面4aに第1、第2の電極72,73及び発熱体引出電極7を形成し、ヒューズエレメント2を実装したが、各電極72,73,7及びヒューズエレメント2は絶縁基板4の裏面4bに形成してもよい。なお、以下の説明においても、上述した保護素子1,60,70と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図26に示す保護素子80は、ヒューズエレメント2と、溶断部材81とを備える。溶断部材81は、絶縁基板4の表面4aに発熱体給電電極12、発熱体電極14、発熱体5、絶縁層6、第1の外部接続電極74、及び第2の外部接続電極75が形成されている。また、保護素子80は、絶縁基板4の裏面4bに、発熱体電極14、発熱体引出電極7、第1の電極72、第2の電極73、放熱部8が形成され、第1の電極72から発熱体引出電極7を経て第2の電極73にかけてヒューズエレメント2が実装されている。
発熱体電極14は絶縁基板4の表面4aと裏面4bにそれぞれ形成され、両発熱体電極14がキャスタレーションを介して電気的に接続されている。発熱体引出電極7は、絶縁基板4の表面4a及び裏面4bに設けられた発熱体電極14を介して絶縁基板4の表面4aに設けられた発熱体5と電気的に接続されている。また、保護素子80は、絶縁基板4の表面4aが外部回路基板への実装面とされ、発熱体給電電極12、第1の外部接続電極74及び第2の外部接続電極75が外部回路基板の所定の実装位置に設けられたランド部に接続ハンダ等の接続材料を介して接続される。
保護素子80においても、放熱部8は、絶縁基板4を介して少なくとも発熱体5と重畳する領域に、発熱体引出電極7から電気的に独立して形成されている。例えば、放熱部8は、発熱体5の発熱体給電電極12側を横断するように絶縁基板4の第1、第2の電極72,73が設けられた両側縁間にわたって形成されている。また、放熱部8は、発熱体引出電極7及び発熱体引出電極7に接続されたヒューズエレメント2と離間して設けられることにより、発熱体5への給電経路や外部回路の電流経路から電気的に独立している。
保護素子80においても、放熱部8を形成することにより、絶縁基板4の裏面4b側から発熱体5が発する熱を吸熱する。したがって、絶縁基板4上において熱分布の偏りが低減され、発熱体引出電極7が形成されていない領域に発熱体5の熱が局所的に集中することによる絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。
なお、絶縁基板4の裏面4bには発熱体給電電極12とキャスタレーションを介して接続された誘引電極83が設けられている。誘引電極83は、発熱体給電電極12をランド部に接続する接続ハンダがキャスタレーションの壁面全面に濡れ広がるように誘引するものである。
また、図27に示すように、保護素子80においても、放熱部8を絶縁被覆する絶縁被覆層17を形成してもよい。また、放熱部8は、図28に示すように、発熱体5と重畳する領域から発熱体給電電極12が形成されている側縁にわたって形成することにより、可及的に広範囲に形成してもよい。図29は、放熱部8を可及的に広げるとともに、放熱部8を絶縁被覆層17で被覆した構成を示す平面図である。
また、図31に示すように、誘引電極83を形成せず、その分、放熱部8を可及的に広げて形成してもよい。この場合、放熱部8はキャスタレーションとも離間され電気的な独立性を保持している。また、当該構成においても放熱部8を絶縁被覆層17で被覆してもよい。
さらに、保護素子80は、絶縁基板4の表面4aに第2の放熱部82を形成してもよい。図30に示すように、第2の放熱部82は、放熱部8と同じ材料、同じ方法で形成することができ、絶縁層6上に発熱体5と重畳するように形成される。また、第2の放熱部82は、絶縁被覆層17によって被覆される。第2の放熱部82によっても発熱体5の熱を吸熱することで、絶縁基板4に伝わる熱量を低減するとともに、発熱体5自体の過熱を防ぎ、絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。
[変形例4]
また、溶断部材を外部回路基板に表面実装する構造の保護素子は、絶縁基板4の表面4aに複数の発熱体を備えてもよい。なお、以下の説明においても、上述した保護素子1,60,70,80と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略することがある。
図32に示す保護素子90は、ヒューズエレメント2と、溶断部材91とを備える。溶断部材91は、複数の発熱体5が絶縁基板4の表面4a上に離間して並列して設けられている。また、保護素子70と同様に、絶縁基板4の表面4aには、第1、第2の電極72,73、発熱体引出電極7、発熱体給電電極12及び発熱体電極14が形成され、絶縁基板4の裏面4bには、第1~第3の外部接続電極74~76が形成されている。さらに、保護素子90は、絶縁基板4の裏面4bに保持電極10が形成されている。そして、図33に示すように、絶縁基板4は、発熱体5が形成されていない領域である並列する発熱体5の間に、表面4aに形成された発熱体引出電極7と、裏面4bに形成された保持電極10とを連続させる貫通孔11が形成されている。なお、図33(A)は図32(A)のA-A’断面図であり、図33(B)は図32(A)のB-B’断面図である。
各発熱体5は、一端が発熱体給電電極12と接続され、他端が発熱体電極14と接続されている。発熱体電極14は発熱体引出電極7と接続されている。また、各発熱体5は、絶縁層6に被覆されるとともに、絶縁層6上に形成された発熱体引出電極7と重畳されている。
発熱体5、絶縁層6、発熱体引出電極7の構成は上述した溶断部材3と同様である。すなわち、発熱体引出電極7は、発熱体5が形成されていない領域である発熱体5の間に延在する先端部7aと発熱体電極14と接続する基部7bとを有する。
また、放熱部8の構成及び作用も上述した溶断部材3と同様である。放熱部8は、絶縁層6上のみに形成してもよく、また、発熱体5と重畳する領域から発熱体給電電極12が形成されている側縁にわたって形成する等、可及的に広範囲に形成してもよい(図2、図8、図6参照)。保護素子90においても、放熱部8は絶縁被覆層17で被覆されることが好ましい。保護素子90においても、放熱部8が発熱体5の熱を吸熱することにより、絶縁基板4上において熱分布の偏りが低減され、発熱体5の熱が局所的に集中することによる絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。
ヒューズエレメント2は、第1の電極72、第2の電極73、及び第1の電極72と第2の電極73の間に設けられた発熱体引出電極7に、接続ハンダ9等の導電性接続材料によって接続されている。
[回路構成]
図34は、図32に示す保護素子90の回路図である。保護素子90は、図13に示すバッテリパック40の保護素子として使用されると、第1の外部接続電極74がバッテリスタック45側と接続され、第2の外部接続電極75が正極端子40a側と接続され、これによりヒューズエレメント2がバッテリスタック45の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子90は、発熱体5が発熱体給電電極12及び第3の外部接続電極76を介して電流制御素子48と接続されるとともに、発熱体5がバッテリスタック45の開放端と接続される。これにより、発熱体5は、一端が発熱体引出電極7を介してヒューズエレメント2及びバッテリスタック45の一方の開放端と接続され、他端が第3の外部接続電極76を介して電流制御素子48及びバッテリスタック45の他方の開放端と接続され、電流制御素子48によって通電が制御される発熱体5への給電経路が形成される。
保護素子90とバッテリ回路等の外部回路との接続は、例えば、溶断部材91を外部回路基板にリフロー実装等により実装することにより行うことができる。すなわち、溶断部材91は、絶縁基板4の裏面4bに形成された第1~第3の外部接続電極74~76が、外部回路基板の所定の実装位置に設けられたランド部に接続ハンダ等の接続材料を介して搭載され、リフロー炉を通されることにより外部回路基板に実装される。これにより、ヒューズエレメント2が外部回路の電流経路上に組み込まれる。
[保護素子の動作]
外部回路から発熱体5に電流が流れ、発熱体5が発熱を開始すると、図35に示すように、発熱体5の発熱によりヒューズエレメント2が溶断し、外部回路の電流経路を遮断する。図36に示すように、ヒューズエレメント2の溶融導体2aは、発熱体引出電極7に保持されるとともに、一部が発熱体引出電極7に開口された貫通孔11に吸引され、絶縁基板4の裏面4bに形成された保持電極10に保持される。なお、図36(A)は図35(A)のA-A’断面図であり、図36(B)は図35(A)のB-B’断面図である。
このとき、保護素子90は、放熱部8が発熱体5の熱を吸熱することにより、絶縁基板4上において熱分布の偏りが低減され、発熱体5の熱が局所的に集中することによる絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。また、保護素子90は、発熱体引出電極7と発熱体給電電極12との間に形成された放熱部8が発熱体引出電極7と電気的に独立しているため、発熱体引出電極7と発熱体給電電極12との間にスパーク(絶縁破壊)が発生することを抑制することができる。これにより、保護素子90は、発熱体5に高電圧が印加された場合でも安全かつ速やかにヒューズエレメント2を溶断し、電流経路を遮断することができる。
保護素子90は、ヒューズエレメント2が溶断することにより、発熱体5への給電経路も遮断されるため、発熱体5の発熱が停止される。
なお、保護素子90は、ヒューズエレメント2に定格を超える過電流が通電された場合にも、ヒューズエレメント2が自己発熱により溶融し、外部回路の電流経路を遮断することができる。
[変形例5]
上述した保護素子90では、発熱体5を形成した絶縁基板4の表面4aに第1、第2の電極72,73及び発熱体引出電極7を形成し、ヒューズエレメント2を実装したが、各電極72,73及びヒューズエレメント2を、絶縁基板4の裏面4bに形成してもよい。なお、以下の説明においても、上述した保護素子1,60,70,80,90と同一の部材については同一の符号を付して、その詳細を省略する。
図37に示す保護素子96は、ヒューズエレメント2と、溶断部材97とを備える。図38に示すように、溶断部材97は、絶縁基板4の表面4aに発熱体給電電極12、発熱体電極14、発熱体5、絶縁層6、発熱体引出電極7、第1の外部接続電極74、及び第2の外部接続電極75、放熱部8が形成されている。
また、保護素子96は、絶縁基板4の裏面4bに、第1の電極72、第2の電極73、保持電極10が形成され、第1の電極72から保持電極10を経て第2の電極73にかけてヒューズエレメント2が実装されている。保持電極10は、貫通孔11を介して発熱体引出電極7と連続されている。
絶縁基板4の表面4aに設けられた発熱体電極14と発熱体引出電極7とは電気的に接続されている。また、保護素子96は、絶縁基板4の表面4aが外部回路基板への実装面とされ、発熱体給電電極12、第1の外部接続電極74及び第2の外部接続電極75が外部回路基板の所定の実装位置に設けられたランド部に接続ハンダ等の接続材料を介して接続される。
保護素子96においても、放熱部8は、絶縁層6を介して少なくとも発熱体5と重畳する領域に、発熱体引出電極7から電気的に独立して形成されている。放熱部8は、発熱体引出電極7及び第1、第2の外部接続電極74,75と離間して設けられることにより、発熱体5への給電経路や外部回路の電流経路から電気的に独立している。
保護素子96においても、発熱体5に重畳して形成された放熱部8により発熱体5の熱が吸熱される。したがって、絶縁基板4上において熱分布の偏りが低減され、発熱体引出電極7が形成されていない領域に発熱体5の熱が局所的に集中することによる絶縁基板4や発熱体5の破損(熱衝撃クラック)を抑制することができる。
また、保護素子96においても、放熱部8を絶縁被覆する絶縁被覆層17を形成してもよい。また、放熱部8は、発熱体5と重畳する領域から発熱体給電電極12等の電極が形成されていない領域にわたって形成する等、可及的に広範囲に形成してもよい。
1 保護素子、2 ヒューズエレメント、2a 溶融導体、3 溶断部材、4 絶縁基板、5 発熱体、6 絶縁層、7 発熱体引出電極、7a 先端部、7b 基部、8 放熱部、9 接続ハンダ、10 保持電極、11 貫通孔、12 発熱体給電電極、14 発熱体電極、15 補助電極、17 絶縁被覆層、20 ネジ孔、21 第1の電極端子、22 第2の電極端子、23 第3の電極端子、24 導電層、26 低融点金属層、27 高融点金属層、28 ケース、29 上側ケース、30 下側ケース、30a 側縁部、30b 中空部、40 バッテリパック、40a 正極端子、40b 負極端子、41 バッテリセル、42 充電装置、43 電流制御素子、44 制御部、45 バッテリスタック、46 充放電制御回路、47 検出回路、48 電流制御素子、50 凸部、51 放熱素子、60 保護素子、70 保護素子、71 溶断部材、72 第1の電極、73 第2の電極、74 第1の外部接続電極、75 第2の外部接続電極、76 第3の外部接続電極、80 保護素子、81 溶断部材、82 第2の放熱部、90 保護素子、91 溶断部材、96 保護素子、97 溶断部材、100 保護素子、101ヒューズエレメント、102 溶断部材、103 絶縁基板、104 発熱体、105 絶縁層、106 発熱体引出電極、107 保持電極、108 貫通孔、109 補助電極、110 発熱体給電電極、111 第1の電極端子、112 第2の電極端子、114 接続ハンダ

Claims (16)

  1. ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、
    上記溶断部材は、
    絶縁基板と、
    上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、
    上記発熱体を被覆する絶縁層と、
    上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、
    上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、
    上記絶縁基板の上記表面と反対側の裏面に形成され、上記ヒューズエレメントの溶断時に上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極と、
    上記発熱体引出電極と上記保持電極とを連続させる貫通孔を有し、
    上記ヒューズエレメントは、上記保持電極と接続されている
    保護素子。
  2. ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、
    上記溶断部材は、
    絶縁基板と、
    上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、
    上記発熱体を被覆する絶縁層と、
    上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、
    上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、
    上記絶縁基板の上記表面と反対側の裏面に形成され、上記ヒューズエレメントの溶断時に上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極と、
    上記発熱体引出電極と上記保持電極とを連続させる貫通孔を有し、
    上記ヒューズエレメントは、上記発熱体引出電極と接続されている
    保護素子。
  3. 複数の上記溶断部材を備え、
    上記ヒューズエレメントの一面及び上記一面と反対側の他面に、上記溶断部材が接続されている請求項1又は2に記載の保護素子。
  4. 上記溶断部材が上記ヒューズエレメントを介して対向する位置に設けられている請求項3に記載の保護素子。
  5. ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、
    上記溶断部材は、
    絶縁基板と、
    上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、
    上記発熱体を被覆する絶縁層と、
    上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、
    上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、
    上記絶縁基板の上記表面に形成され、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極を有し、
    上記ヒューズエレメントは、上記第1の電極、上記第2の電極、及び上記第1の電極と上記第2の電極の間に設けられた上記発熱体引出電極に接続されている
    保護素子。
  6. 複数の上記発熱体が、上記絶縁基板の表面側に並列して設けられている、請求項5に記載の保護素子。
  7. 上記絶縁基板の上記表面と反対側の裏面に形成され、上記ヒューズエレメントの溶断時に上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極と、
    上記複数の発熱体間の領域を貫通し、上記発熱体引出電極と上記保持電極とを連続させる貫通孔とを有する請求項6に記載の保護素子。
  8. ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、
    上記溶断部材は、
    絶縁基板と、
    上記絶縁基板の表面側に形成された発熱体と、
    上記発熱体を被覆する絶縁層と、
    上記絶縁基板の裏面側に上記発熱体と重畳して形成され、上記発熱体と接続された発熱体引出電極と、
    上記絶縁基板の裏面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、
    上記絶縁基板の上記裏面に形成され、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極とを有し、
    上記ヒューズエレメントは、上記第1の電極、上記第2の電極、及び上記発熱体引出電極に接続されている
    保護素子。
  9. ヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメントを溶断する溶断部材とを備え、
    上記溶断部材は、
    絶縁基板と、
    上記絶縁基板の表面側に並列して設けられた複数の発熱体と、
    上記発熱体を被覆する絶縁層と、
    上記発熱体と接続され、上記絶縁層を介して上記発熱体と重畳される発熱体引出電極と、
    上記絶縁基板の表面側の、少なくとも上記発熱体と重畳する領域に形成され、上記発熱体引出電極から電気的に独立した放熱部と、
    上記絶縁基板の上記裏面に形成され、外部回路と接続される第1の電極及び第2の電極と、
    上記絶縁基板の上記裏面の上記第1の電極と記第2の電極の間に設けられた保持電極と、
    上記絶縁基板の上記複数の発熱体間の領域を貫通し、上記発熱体引出電極と上記保持電極とを連続させる貫通孔とを有し、
    上記ヒューズエレメントは、上記第1の電極、上記第2の電極、及び上記保持電極に接続されている
    保護素子。
  10. 上記放熱部は、導電性材料により形成されている請求項1~9のいずれか1項に記載の保護素子。
  11. 上記放熱部を被覆する絶縁被覆層を有する請求項10に記載の保護素子。
  12. 上記放熱部は、上記絶縁層の表面及び側面にわたって形成されている請求項1~7,9のいずれか1項に記載の保護素子。
  13. 上記放熱部は、上記発熱体と重畳する領域及び上記絶縁基板の電極非形成領域にわたって可及的に広範囲に形成されている請求項1~12のいずれか1項に記載の保護素子。
  14. 上記溶断部材及び上記ヒューズエレメントを収納するケースを有し、
    上記ケースには、上記放熱部と接して吸熱する凸部が形成されている請求項1,5~8のいずれか1項に記載の保護素子。
  15. 上記放熱部には、上記放熱部の熱を拡散する放熱素子が設けられている請求項1,5~8のいずれか1項に記載の保護素子。
  16. 1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子とを備え、
    上記保護素子は、上記請求項1~15のいずれか1項に記載の保護素子である
    バッテリパック。
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