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JP2023017551A - 固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いたシール材、並びに該シール材を用いた固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いたシール材、並びに該シール材を用いた固体高分子型燃料電池 Download PDF

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JP2023017551A
JP2023017551A JP2021121891A JP2021121891A JP2023017551A JP 2023017551 A JP2023017551 A JP 2023017551A JP 2021121891 A JP2021121891 A JP 2021121891A JP 2021121891 A JP2021121891 A JP 2021121891A JP 2023017551 A JP2023017551 A JP 2023017551A
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JP
Japan
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resin
resin composition
sealing material
fuel cell
mass
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Pending
Application number
JP2021121891A
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English (en)
Inventor
翔太 中野
Shota Nakano
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Panac Co Ltd
Original Assignee
Panac Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】本発明は、高温下で接着力の低下を抑え、また、高温高湿下での耐久性に優れ、更に高温加圧下における熱プレス等でのシール材の形状や膜厚の変化等を抑制できる形状安定性に優れた固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いたシール材、並びに該シール材を用いた固体高分子型燃料電池を提供することを課題とする。【解決手段】酸価が15mgKOH/g未満のアクリル樹脂(A)、酸価が15mgKOH/g以上のアクリル樹脂(B)、及び架橋剤を含む、固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたシール材及び該シール材を用いた固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池(以下、「燃料電池」と称する場合もある)は、水素を含有する燃料ガスと、酸素を含有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させることで、電力と熱とを同時に発生させるものである。
図1に、一般的な燃料電池の構成単位であるセル10の断面図を示す。一般的な燃料電池は、セル10を数十~数百セル積層し、その積層体を、集電板及び絶縁板を介して端板で挟み、これらを締結ボルトで両端から締め付けることによって構成される。
このように構成された燃料電池は、高温高湿状態で稼動し、固体高分子電解質膜(以下、「電解質膜」と称する場合もある)から微量にフッ酸が溶出する。従って、このような条件下で用いられるシール材16として、特許文献1~3の手段が提案されている。
特開2002-42835号公報 特開2000-56694号公報 特開2008-171667号公報
特許文献1は、シール材として、ウレタン系樹脂又は液状シリコンゴムを用いるものである。しかし、ウレタン樹脂は高湿環境下で加水分解を生じてしまうという問題があった。また、ポリウレタン樹脂は、ポリエステル系とポリエーテル系に大別されるが、いずれも熱に弱く、ポリエステル系は100℃弱、ポリエーテル系は70℃程度で接着力が低下してしまうものであった。液状シリコンゴムは、機械的強度が低く、酸やアルカリによって加水分解を受けやすいという問題があった。
特許文献2は、シール材として、オレフィン系樹脂や軟質エポキシ系樹脂を用いるものである。しかし、オレフィン樹脂は高温環境下で樹脂の凝集力の低下が起こるため十分な接着力が得られず、軟質エポキシ系樹脂は、高温環境下において軟化により接着力が低下してしまうという問題があった。
特許文献3は、シール材として、スチレン系ブロック重合エラストマー及びタッキファイヤーを含む組成物を用いるものである。しかし、該組成物は、高温環境下で接着力が低下してしまうものであった。
また、上記シール材は、燃料電池の製造時に電解質膜と熱プレス際に、高温加圧化に晒されることにより、設計よりも膜厚が小さくなる場合があり、シール材として十分な性能を発揮できない場合があった。
本発明は、高温下で接着力の低下を抑え、また、高温高湿下での耐久性に優れ、更に高温高圧下における熱プレス等でのシール材の形状や膜厚の変化等を抑制できる形状安定性に優れた固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いたシール材、並びに該シール材を用いた固体高分子型燃料電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]酸価が15mgKOH/g未満のアクリル樹脂(A)、酸価が15mgKOH/g以上のアクリル樹脂(B)、及び架橋剤を含む、固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[2]前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)の質量比(A)/(B)が、20/80以上80/20以下である、[1]に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[3]前記樹脂(A)が、スチレンを5質量%以上40質量%以下、及びメチルメタクリレートを20質量%以上60質量%以下を含む原料成分を共重合してなり、重量平均分子量が30万以上の共重合樹脂である、[1]又は[2]に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[4]前記樹脂(A)の前記原料成分中に、更に、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上を含有する、[3]に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[5]前記樹脂(A)の前記原料成分中に、更に、炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含有する、[3]又は[4]に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[6]前記樹脂(B)が、スチレンを30質量%以上70質量%以下、及びメチルメタクリレートを5質量%以上30質量%以下を含む原料成分を共重合してなり、重量平均分子量が20万以上の共重合樹脂である、[1]~[5]のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[7]前記樹脂(A)の前記原料成分中に、更に、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上を含有する、[6]に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[8]前記樹脂(B)の前記原料成分中に、更に、炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含有する、[6]又は[7]に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[9]前記架橋剤が、アミン系エポキシ架橋剤である、[1]~[8]のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物から形成されてなる、固体高分子型燃料電池用のシール材。
[11][10]に記載の固体高分子型燃料電池用シール材によるシール部位を備えてなる、固体高分子型燃料電池。
本発明によれば、高温下で接着力の低下を抑え、また、高温高湿下での耐久性に優れ、更に高温高圧下における熱プレス等でのシール材の形状や膜厚の変化等を抑制できる形状安定性に優れた固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いたシール材、並びに該シール材を用いた固体高分子型燃料電池を提供することができる。
一般的な燃料電池を構成するセルの一例を示す断面図です。
[固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物]
本発明の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物は、酸価が15mgKOH/g未満のアクリル樹脂(A)(以下、「樹脂(A)」とも称する)、酸価が15mgKOH/g以上のアクリル樹脂(B)(以下、「樹脂(B)」とも称する)、及び架橋剤を含むことを特徴としている。
一般に、樹脂における酸価とは、カルボン酸及び水酸基等の酸性置換基の樹脂中の含有量の指標であり、通常、酸価が大きいほど、酸性置換基の含有量は大きくなる。この酸性置換基は、樹脂において、架橋反応の架橋点となるため、当該酸性置換基を有する樹脂をブレンドし、エポキシやイソシアネート等の架橋剤を用いることで、架橋をすることができる。
従来の燃料電池シール材用の樹脂組成物は、架橋反応をしていない樹脂組成物が用いられてきたが、これらの樹脂組成物は架橋点が存在しないため、ガラス転移温度以上で流動しやすいことから、高温高湿下で剥離などの不具合が起こり難いものの、シール材の形状が変化しやすいため、シール材としての機能を十分に発揮できない場合があった。
一方で、上記のような形状の変化を改善するために、燃料電池シール材用の樹脂組成物を架橋して用いることも実施されてきたが、その場合は、樹脂全体の架橋点が均一であることから、樹脂組成物全体が硬化することにより流動性が損なわれるため、高温高圧下でのシール材の性能が損なわれてしまっていた。
本発明の樹脂組成物は、樹脂(A)は酸価が15mgKOH/g未満であることから、架橋点の少ない樹脂である一方、樹脂(B)は酸価が15mgKOH/g以上であることから、架橋点の多い樹脂である。本発明の樹脂組成物は、これら架橋点の量が異なる2種の樹脂をブレンドすることにより、樹脂組成物の架橋が不均一になるため、高温高湿下での柔軟性を確保しつつ、形状の変化を抑制することができる。本発明における樹脂組成物は以上のような特徴を有することにより、高温下で接着力の低下を抑え、また、高温高湿下での耐久性に優れ、更に、高温高圧下における熱プレス等でのシール材の形状や膜厚の変化等を抑制できる形状安定性に優れたシール材を得ることができる。
本発明の樹脂(A)及び樹脂(B)における酸価とは、JIS K 0070(1992)に準拠した、水酸化カリウムを用いた中和滴定法等で求められる。
なお、本発明において、樹脂(A)の酸価が測定値として得られない場合は、樹脂(A)の酸価は0mgKOH/gであり、架橋点が少ない樹脂であることを示す。
樹脂(A)の酸価は、高温高湿下における樹脂組成物の柔軟性を向上しやすくする観点から、12mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以下がより好ましく、8mgKOH/g以下が更に好ましい。また、樹脂(A)の酸価の下限値としては、0mgKOH/g以上であることが好ましい。
樹脂(B)の酸価の下限は、高温下における樹脂組成物の形状安定性を向上しやすくする観点から、15mgKOH/g以上であり、16mgKOH/g以上であることが好ましく、17mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、樹脂(B)の酸価の上限は、樹脂組成物の架橋を抑制し、柔軟性を確保する観点から、100mgKOH/g以下が好ましく、95mgKOH/g以下がより好ましく、90mgKOH/g以下が更に好ましい。
樹脂(A)の酸価と樹脂(B)の酸価との差([樹脂(B)の酸価]-[樹脂(A)の酸価])は、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましく、15mgKOH/g以上が更に好ましく、20mgKOH/g以上がより更に好ましい。樹脂(A)の酸価と樹脂(B)の酸価との差が5mgKOH/g以上であることで、樹脂組成物の架橋が不均一になりやすくなるため、高温高湿下における樹脂組成物の柔軟性及び高温下における樹脂組成物の形状安定性を向上しやすくできる。
また、樹脂(A)の酸価と樹脂(B)の酸価との差([樹脂(B)の酸価]-[樹脂(A)の酸価])は、90mgKOH/g以下が好ましく、80mgKOH/g以下がより好ましく、75mgKOH/g以以下が更に好ましく、70mgKOH/g以下がより更に好ましい。樹脂(A)の酸価と樹脂(B)の酸価との差が90mgKOH/g以下であることで、樹脂組成物の架橋密度が低くなりすぎることを抑制しやすくなるため、高温高湿下における樹脂組成物の柔軟性及び高温下における樹脂組成物の形状安定性を両立することができる。
樹脂(A)及び樹脂(B)の酸価は、例えば、ポリマー重合時のモノマー組成比において、カルボン酸モノマーの比率を上げることにより調節することが可能である。
カルボン酸モノマーの比率を上げることにより、樹脂(A)及び樹脂(B)の酸価は大きくなり、樹脂(A)及び樹脂(B)を架橋点が多い樹脂とすることができる。一方、カルボン酸モノマーの比率を下げることにより、樹脂(A)及び樹脂(B)の酸価は小さくなり、樹脂(A)及び樹脂(B)を架橋点の少ない樹脂とすることができる。
本発明の樹脂組成物において、樹脂(A)及び樹脂(B)の質量比(A)/(B)は、20/80以上80/20以下であることが好ましく、30/70以上70/30以下が好ましい。質量比(A)/(B)が上記範囲にあることにより、高温高湿下における樹脂組成物の柔軟性及び高温化における形状安定性をバランス良く向上しやすくできる。
〔樹脂(A)及び樹脂(B)〕
樹脂(A)は、スチレンを5質量%以上40質量%以下、及びメチルメタクリレートを20質量%以上60質量%以下を含む原料成分を共重合してなり、重量平均分子量が30万以上の共重合樹脂であることが好ましい。
また、樹脂(B)は、スチレンを30質量%以上70質量%以下、及びメチルメタクリレートを5質量%以上30質量%以下を含む原料成分を共重合してなり、重量平均分子量が20万以上の共重合樹脂であることが好ましい。
樹脂(A)及び樹脂(B)が上記特徴を有していることにより、高温高湿下での耐久性に優れた樹脂組成物及びシール材を得ることができる。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラム法(GPC法)により測定し、ポリスチレン換算した値である。
<スチレン>
本発明の樹脂組成物における樹脂(A)及び樹脂(B)は、原料成分中にスチレン(スチレンモノマー)を含有することが好ましい。
スチレンは、構成元素がCHからなる非極性の成分であるので、本発明における樹脂(A)及び樹脂(B)に、スチレンを導入することで、極性材料(例えば、電解質膜)と非極性材料の構成品との間で、優れた接着性及び密着性を付与しやすくできる。
また、スチレンは、比較的ガラス転移温度(Tg)が高いため、本発明における共重合樹脂にスチレンを導入することで、凝集力の向上効果による耐熱接着性も得られやすい。
樹脂組成物に耐熱接着性の機能を与える一般的な手法は、樹脂にシランカップリング剤、粘着付与剤等を付与して接着性を付与することが多いが、シランカップリング剤が染み出し(ブリードアウト)、製品の信頼性を損ねることがある。しかし、共重合成分として、樹脂自体に組み込むことでブリードアウトを抑制しやすくできる。
樹脂(A)の、原料成分中のスチレンの含有量は5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、7質量%以上35質量%以下がより好ましく、9質量%以上30質量%以下が更に好ましい。
樹脂(A)の原料成分中のスチレンの含有量を5質量%以上とすることにより、本発明の樹脂組成物をシール材として用いた際の接着性及び密着性を向上しやすくできる。また、樹脂(A)の原料成分中のスチレンの含有量が40質量%以下とすることにより、本発明の樹脂組成物の硬度を、被接着物の形状に追随する硬度に調整しやすくできる。また、後述のメチルメタクリレートの割合を確保することができるため、高温環境下での接着力の低下をより抑えるとともに、耐酸性をより良好することができる。
樹脂(B)の、原料成分中のスチレンの含有量は30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、35質量%以上65質量%以下がより好ましく、40質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
樹脂(B)の原料成分中のスチレンの含有量を30質量%以上とすることにより、本発明の樹脂組成物をシール材として用いた際の接着性及び密着性を向上しやすくでき、更に、樹脂組成物の形状安定性を向上させやすくできる。また、樹脂(B)の原料成分中のスチレンの含有量を70質量%以下とすることにより、本発明の樹脂組成物の硬度を、被接着物の形状に追随する硬度に調整しやすくできる。また、後述のメチルメタクリレートの割合を確保することができるため、高温環境下での接着力の低下をより抑えるとともに、耐酸性をより良好することができる。
<メチルメタクリレート>
本発明の樹脂組成物における樹脂(A)及び樹脂(B)は、原料成分中にメチルメタクリレート(メチルメタクリレートモノマー)を含有することが好ましい。
メチルメタクリレートを、スチレンと共に用いることにより、原料成分を共重合して得られる樹脂(A)及び樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)を微調整することができ、また、重量平均分子量を調整することができる。そのため、樹脂(A)及び樹脂(B)を含む樹脂組成物において、極性の異なる材料間の接着性及び接合条件を制御しやすくできる。
また、樹脂(A)及び樹脂(B)がメチルメタクリレートを含むことで、樹脂組成物が水分及び酸により分解して重量が減少することを抑制しやすくできるため、高温高湿下でのシール材の凝集力及び接着力の低下を抑えることができる。
樹脂(A)の原料成分中のメチルメタクリレート(メチルメタクリレートモノマー)の含有量は、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。
樹脂(A)の原料成分中のメチルメタクリレートの含有量を20質量%以上とすることにより、本発明の樹脂組成物の軟化点を高くしてシール材として用いる際の取り扱い性を良好にし易くでき、更に形状安定性を向上しやすくできる。また、メチルメタクリレートの含有量を60質量%以下とすることにより、本発明の樹脂組成物の硬度を被着物の形状に追従しやすく調整できる。
樹脂(B)の原料成分中のメチルメタクリレート(メチルメタクリレートモノマー)の含有量は、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、8質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
樹脂(B)の原料成分中のメチルメタクリレートの含有量を5質量%以上とすることにより、本発明の樹脂組成物の軟化点を高くしてシール材として用いる際の取り扱い性を良好にし易くでき、更に形状安定性を向上しやすくできる。また、メチルメタクリレートの含有量を30質量%以下とすることにより、本発明の樹脂組成物の硬度を被着物の形状に追従しやすく調整できる。
<その他のモノマー>
樹脂(A)及び(B)は、原料成分中に、更に、その他のモノマーとして、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上を含有することが好ましい。
樹脂(A)の原料成分にその他のモノマーが含有されていることにより、高温環境下での接着力を維持したまま、樹脂の凝集力が確保しやすくなる。
共重合樹脂の原料成分中のその他のモノマーとしては、上記の化合物をいずれも好適に用いることができるが、皮膚刺激性等の取り扱い性、化合物としての安定性、及び合成の容易性の観点から、グリシジルメタクリレート及びメタクリル酸がより好適である。
樹脂(A)の原料成分中のその他のモノマーの含有量は、0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、0.8質量%以上4質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下が更に好ましい。樹脂(A)の原料成分中のその他のモノマーの含有量が0.5質量%以上であることにより、本発明の樹脂組成物の樹脂の凝集力をより向上しやすくできる。また、樹脂(A)の原料成分中のその他のモノマーの含有量が5質量%以下であることにより、共重合樹脂のゲル化を防止するとともに、メチルメタクリレートの割合を確保して耐熱水性及び耐酸性を良好にしやすくできる。また、樹脂(A)の酸価を低くすることができるため、樹脂(A)を架橋点の少ない樹脂とすることができ、本発明の樹脂組成物の架橋を不均一とすることができ、高温高湿下での耐久性及び高温加圧下での形状安定性を両立しやすくできる。
樹脂(B)の原料成分中のその他のモノマーの含有量は、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上12質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下が更に好ましい。樹脂(B)の原料成分中のその他のモノマーの含有量が1質量%以上であることにより、本発明の樹脂組成物の樹脂の凝集力をより向上しやすくできる。また、樹脂(A)の原料成分中のその他のモノマーの含有量が15質量%以下であることにより、共重合樹脂のゲル化を防止するとともに、メチルメタクリレートの割合を確保して耐熱水性及び耐酸性を良好にしやすくできる。また、樹脂(B)の酸価を高くすることができるため、樹脂(B)を架橋点の多い樹脂とすることができ、本発明の樹脂組成物の架橋を不均一とすることができ、高温高湿下での耐久性及び高温加圧下での形状安定性を両立しやすくできる。
<炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート>
樹脂(A)及び樹脂(B)は、原料成分中に、更に、炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
樹脂(A)及び樹脂(B)は、原料成分としてスチレン及びメチルメタアクリレートを含有することにより、水分及び酸による劣化を抑制し、高温環境下での接着力を良好にできる一方で、共重合樹脂の軟化点が高くなりすぎる場合がある。ここで、原料成分として炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含有することにより、共重合樹脂の軟化点を下げ、燃料電池のセルのシール部位にシール材を熱融着する際の作業性を向上させることができる。
炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートを用いることができ、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート等のブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートは、樹脂(A)及び樹脂(B)の軟化点を調整しやすいという観点から、アルキルアクリレートが好適である。さらに、共重合しやすく、工業的に汎用性もあるという観点から、エチルアクリレートが好適である。
樹脂(A)及び樹脂(B)の原料成分中の炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、20質量%以上70質量%以下が好ましく、23質量%以上60質量%以下がより好ましく、25質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートを20質量%以上とすることにより、共重合樹脂の軟化点を下げ、シール材の熱融着作業を容易にすることができ、70質量%以下とすることにより、メチルメタクリレート及びその他のモノマーの割合を確保して、高温環境下での接着力、耐熱水性及び耐酸性を良好にすることができる。
樹脂(A)及び樹脂(B)は、上述したスチレン及びメチルメタクリレートと、必要に応じて用いるその他のモノマー及び炭素数が2以上の炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとを含有してなる原料組成物を共重合してなるものである。
共重合の方法としては、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等が挙げられる。これら共重合の方法の中では、分子量分布が狭く、残留モノマーの少ないポリマーが得られる点、高分子量ポリマーが得られる点、乳化剤が不要であるため不純物の少ない点、水中で重合でありながら耐水性及び耐熱性に優れる共重合樹脂が得やすいという点から、懸濁重合が好適である。
重合条件は、例えば懸濁重合の場合、50~80℃で、2~24時間行うことが好ましい。
共重合体の形態は、交互、ランダム、ブロック、グラフト等の何れの形態であっても良い。
粒状体を製造するための水系懸濁重合においては、一種以上の懸濁安定剤を使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸塩、ポリアクリルアミド、部分ケン化ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等の水溶性高分子、リン酸カルシウム類、炭酸カルシウム等の無機塩粉体等が挙げられる。
重合開始剤としては、分解後の重合開始ラジカル種が油溶性であることが好ましい。 ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤や過酸化物系ラジカル重合開始剤が典型的なものとして挙げられる。
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビスプロパン、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスプロパン、1,1’-アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノプロパン)硝酸塩、2,2’-アゾビスイソブタン、2,2’-アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオン酸メチル、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスブタン、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、2-(4-メチルフェニルアゾ)-2-メチルマロノジニトリル4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸、3,5-ジヒドロキシメチルフェニルアゾ-2-アリルマロノジニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸ジメチル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’-アゾビス-2-プロピルブチロニトリル、1,1’-アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’-アゾビス-2-プロピルブチロニトリル、1,1’-アゾビス-1-クロロフェニルエタン、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’-アゾビス-1-シクロヘプタンニトリル、1,1’-アゾビス-1-フェニルエタン、1,1’-アゾビスクメン、4-ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4-ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’-アゾビス-1,2-ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA-4,4’-アゾビス-4-シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2’-アゾビスイソブチレート)等が挙げられる。
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2-クロロベンゾイル、過酸化3-クロロベンゾイル、過酸化4-クロロベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、過酸化4-ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ブチル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸tert-ブチル、過酢酸tert-ブチル、安息香酸tert-ブチル、過フェニル酢酸tert-ブチル、過4-メトキシ酢酸tert-ブチル、過N-(3-トルイル)カルバミン酸tert-ブチル等が挙げられる。重合開始剤を例示すると、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、キュメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド等の過酸化物がある。
また、連鎖移動剤として、メルカプト化合物を加えることができる。例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトブタンジオール、ヒドロキシベンゼンチオール及びその誘導体等の水酸基を有する連鎖移動剤;1-ブタンチオール、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1-オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、チオグリセロール、4,4-チオビスベンゼンチオール等が挙げられる。
樹脂(A)及び樹脂(B)の重量平均分子量は20万以上であることが好ましい。重量平均分子量を20万以上とすることにより高温環境下での接着力を良好にすることができる。また、共重合樹脂の重量平均分子量は、重合時のゲル化の抑制及び品質の安定化の観点から、150万以下とすることが好ましい。
樹脂(A)の重量平均分子量は、20万以上150万以下が好ましく、25万以上140万以下が好ましく、30万以上130万以下が更に好ましい。
樹脂(B)の重量平均分子量は、20万以上150万以下が好ましく、20万以上100万以下が好ましく、20万以上80万以下が更に好ましく、20万以上60万以下がより更に好ましい。
本発明の樹脂組成物における樹脂(A)及び樹脂(B)の合計の含有量は、本発明の効果を十分に発揮しやすくするために、本発明の樹脂組成物の全固形分の50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することがよりさらに好ましい。
〔架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、上述の樹脂(A)及び樹脂(B)に加え、更に架橋剤を含有する。架橋剤を含有することにより、高温環境下の接着力の低下を抑えるとともに、高温環境下で樹脂組成物が劣化して重量が減少することを防ぐことができる。更に、シール材とした際、高温加圧下における熱プレス等での形状の変化を抑制することができる。そのため、本発明の樹脂組成物を用いたシール材は、燃料電池の性能を安定して維持させることができる。
本発明の樹脂組成物における架橋剤としては、エポキシ系架橋剤が好適に用いられ、その中でも、反応性が高く、架橋反応を進行させやすいことから、アミン系エポキシ架橋剤を用いることが好ましい。
アミン系エポキシ架橋剤としては、例えば1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、N,N-ビス(オキシラニルメチル)-4-(オキシラニルメトキシ)アニリン、4,4’-メチレンビス[N,N-ビス(オキシラニルメチル)アニリン等が挙げられ、その中でも、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを用いることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物における架橋剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂(A)及び樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上6.0質量部以下であることが更に好ましい。
樹脂組成物における架橋剤の含有量を0.5質量部以上とすることにより、高温環境下の接着性を維持できるとともに、高温環境下で樹脂組成物が劣化して樹脂の重量が減少することを防ぎやすくできる。また、樹脂組成物における架橋剤の含有量を10.0質量部以下とすることにより、架橋剤が熱や酸の影響により溶出することを防ぎやすくできる。
また、架橋剤がエポキシ系架橋剤の場合、本発明の樹脂組成物における架橋剤の含有量は、エポキシ系架橋剤に含まれるエポキシ基と、樹脂(A)及び樹脂(B)に含まれる酸性置換基との当量比[エポキシ基]/[酸性置換基]が、0.50以上1.20以下であることが好ましく、0.60以上1.10以下であることがより好ましく、0.70以上1.00以下であることが更に好ましい。樹脂組成物における架橋剤の含有量を0.50以上とすることにより、高温環境下の接着性を維持できるとともに、高温環境下で樹脂組成物が劣化して樹脂の重量が減少することを防ぎやすくできる。また、樹脂組成物における架橋剤の含有量を1.20以下とすることにより、架橋剤が熱や酸の影響により溶出することを防ぎやすくできる。
なお、当量比[エポキシ基]/[酸性置換基]は、配合する樹脂組成物中の樹脂(A)及び樹脂(B)に含まれる酸性置換基のモル数と、当該酸性置換基と反応する架橋剤中のエポキシ基のモル数から算出される。
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を害しない範囲で、顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、粘着付与剤等の添加剤を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物は、上述の樹脂(A)、樹脂(B)及び架橋剤と、必要に応じて用いるその他添加剤とを溶剤に溶解し、撹拌混合してなるものである。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の全固形分中に含まれるアンモニウムイオン溶出量が、質量基準で1ppm/g以下であることが好ましい。アンモニウムイオン溶出量を1ppm/g以下とすることにより、シール材から陽イオンが溶出することを防止し、燃料電池の性能に影響を与えることを防止できる。共重合樹脂中のアンモニウムイオン溶出量は、1ppm/g以下であることがより好ましく、含有しないことがさらに好ましい。
共重合樹脂中の窒素原子量は、例えば、株式会社島津製作所製のHIC-SP等のイオンクロマトグラフ装置により測定することができる。
[固体高分子型燃料電池用のシール材]
本発明のシール材は、上述した本発明の樹脂組成物から形成されてなるものである。シール材の形態は、粒子状、シート状等の固形であることが好ましく、取り扱いの観点からシート状であることがより好ましい。
本発明のシール材をシート状に形成する場合、取り扱い性の観点から、上述した本発明の樹脂組成物を溶剤に溶解させたシール材層形成組成物を、基材フィルム上に塗工し、乾燥させることで、シール材層を形成することが好ましい。
また、シート状のシール材の場合、シール材層の厚みは、燃料電池のセパレータや電解質膜等により異なるため一概には言えないが、10~500μmが好ましく、20~200μmがより好ましい。なお、必要に応じてシール材層をラミネート積層してもよい。
基材フィルムは、シール材をシート状に形成でき、燃料電池のシール材として用いる際の作業性が良好であれば特に制限はされないが、取り扱い性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムであることが好ましく、ポリエチレンナフタレートであることがより好ましい。
また、シール材をシート状に形成する場合、シート状のシール材のシール材層上に、更に剥離可能な基材が貼り合わされていることが好ましい。シール材上に剥離可能な基材が貼り合わされていることにより、燃料電池のシール材として用いるまでの間に、シール材表面を傷や汚染から保護しやすくできる。
剥離可能な基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムや紙等に離型処理を施したものが好適である。
剥離可能な基材の厚みは、取り扱い性の観点から、10~100μmが好ましく、25~75μmがより好ましい。剥離可能な基材は、電解質膜及びシール材層へのシリコーン成分が移行することによる悪影響を防止するために、非シリコーン系の離型剤で処理された基材であることが好ましい。非シリコーン系の離型剤としては、ポリオレフィンが挙げられる。
このような本発明のシール材は、燃料電池のシール部位、より具体的には、燃料電池を構成するセルのシール部位に用いることができる。使用時には、シール材を加熱、溶融し、セルのシール部位をシールする。なお、シール材層が剥離可能な基材で挟み込まれたものは、基材を剥離した後に、シール材層を加熱、溶融し、セルのシール部位をシールすればよい。
従来の燃料電池用のシール材は、架橋反応をさせる場合、シール材として十分な性能を発揮するために、100℃~150℃で1時間という、高温でのバッチ式処理が必要であったため、製造工程が煩雑であり、製造効率を向上し難かった。
一方で、本発明のシール材は、上述の樹脂組成物から形成され、エポキシ系架橋剤を用いているため、45℃~60℃と、低温での架橋反応させることが可能であるため、ロール状でのエージング処理が可能となり、生産効率を向上しやすくなった。更に、45℃~60℃と比較的低温でエージング処理できることから、シール材をシート状で形成する体に用いる基材等の耐熱温度以下で処理ができるため、基材等の熱収縮等によるシール材の不具合の発生を要請することができるため、歩留まりを向上することができる。
[固体高分子型燃料電池]
本発明の固体高分子型燃料電池は、本発明のシール材によるシール部位を備えてなるものである。
図1は、一般的な燃料電池を構成するセルの一例を示す断面図である。
セル10は、固体高分子電解質膜11と、その両面に配置された一対の電極(アノード、カソード)12、13とからなる複合体(MEA:Membrane and Electrode Assembly)、該複合体の両面に配置され、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するためのガス流路(14a、15a)が形成されたセパレータ(14、15)、及び前記複合体とセパレータ(14、15)との間を密封すべくシールするシール材16から構成されている。
一般的な燃料電池は、セル10を数十~数百セル積層し、その積層体を、集電板及び絶縁板を介して端板で挟み、これらを締結ボルトで両端から締め付けることによって構成される。
本発明のシール材は、このような一般的な燃料電池におけるシール材として好適に使用することができる。なお、図1のシール材の位置(シール部位)は例示であり、燃料電池を構成するセルの構成によりシール材の位置は適宜変更できる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
1.測定及び評価
1-1.耐熱性接着力
幅5cm、長さ10cmとした実施例及び比較例で得られたシート状シール材のシール材層上に、電解質膜(デュポン社製、Nafion NRE-212、厚さ50μm)を重ね合わせ、2MPa、100℃の条件で30秒間プレス接合した。プレス接合後、幅1cmの短冊状にカットして、耐熱性接着力評価用サンプルとした。
次いで、耐熱性接着力評価用サンプルの電解質膜側の面の全面をポリイミドテープで補強し、ポリイミドテープ及び電解質膜を角度180°、速度10mm/min、120℃雰囲気下の条件でテンシロンにより引っ張り、剥離強度を測定した。この時の剥離強度を、耐熱性接着力の指標とした。なお、この時の剥離強度が大きいほど、耐熱性接着力は大きく、良好であることを示す。評価結果を表3に示す。
1-2.熱湿耐久性
幅5cm、長さ10cmとした実施例及び比較例で得られたシート状シール材のシール材層上に、電解質膜(デュポン社製、Nafion NRE-212、厚さ50μm)を重ね合わせ、2MPa、100℃の条件で30秒間プレス接合した。プレス接合後、幅1cmの短冊状にカットして、熱湿耐久性試験用サンプルとした。
次いで、前記熱湿耐久性試験用サンプルを、温度110℃、湿度100%RHの雰囲気下で300時間放置し、熱湿耐久性試験を実施した。
熱湿耐久性試験後のサンプルを、下記の手順により評価した。
(1)外観評価
熱湿耐久性試験後のサンプルのシール材層と電解質膜との状態を目視で確認し、剥離が生じていないか確認し、下記評価基準で評価した。評価結果を表3に示す。
A:シール材層と電解質膜との間で、剥離は生じなかった。
B:シール材層と電解質膜との間で、剥離していることが確認された。
(2)熱湿耐久性試験後の接着力評価
熱湿耐久性試験後のサンプルの電解質膜側の面の全面をポリイミドテープで補強し、ポリイミドテープ及び電解質膜を角度180°、速度10mm/min、120℃雰囲気下の条件でテンシロンにより引っ張り、剥離強度を測定した。この時の剥離強度を、熱湿耐久性試験後の接着力の指標とした。なお、この時の剥離強度が大きいほど、熱湿耐久性試験後の接着力は大きく、良好であることを示す。評価結果を表3に示す。
1-3.形状安定性
(1)クリープ試験
実施例及び比較例で得られたシール材を5cm角に切り出し、クリープ試験用サンプルとした。
上記クリープ試験評価用サンプルを、熱プレスにて、5MPa、100℃の条件下で24時間加圧し、膜厚を測定した。
クリープ試験前後のクリープ試験用サンプルのシール材の膜厚から、下記計算式によって、膜厚の変化率を求め、クリープ試験の指標とした。評価結果を表3に示す。なお、この時の変化率が50%未満であると、燃料電池を運転させた際でもシール材の形状が良好に保たれるため、シール材の性能を十分に発揮できる。一方、変化率が50%以上であると、燃料電池の運転中にシール材がクリープし、シール材の性能を損なう場合がある。
<クリープ試験の変化率>
(クリープ試験の変化率[%])={(クリープ試験前のシール材の膜厚[μm]-(クリープ試験後のシール材の膜厚[μm])}×100/(クリープ試験前のシール材の膜厚[μm])
(2)膜厚変化試験
実施例及び比較例で得られたシート状シール材のシール材層上に、電解質膜(デュポン社製、Nafion NRE-212、厚さ50μm)を重ね合わせ、0.05MPa、170℃の条件で1分間プレス接合し、その時のシール材の膜厚を測定した。
プレス接合前後のシール材の膜厚から、下記計算式によって、膜厚の変化率を求め、膜厚変化の指標とした。評価結果を表3に示す。なお、この時の変化率が50%未満であると、燃料電池を運転させた際でもシール材の形状が良好に保たれるため、シール材の性能を十分に発揮できる。一方、変化率が50%以上であると、燃料電池の運転中にシール材の膜厚が不足し、シール材の性能を損なう場合がある。
<膜厚変化試験の変化率>
(膜厚変化試験の変化率[%])={(膜厚変化試験前のシール材の膜厚[μm]-(膜厚変化試験後のシール材の膜厚[μm])}×100/(クリープ試験前のシール材の膜厚[μm])
1-4.酸価
製造例で得られたアクリル樹脂1gを、イソプロパノール100gに溶解させた。得られた溶液に対し、フェノールフタレインを指示薬として用い、0.1N水酸化カリウム水溶液で中和滴定を行い、アクリル樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウム水溶液の量(mL)を測定し、次式により、アクリル樹脂の酸価を求めた。
酸価(単位:mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
計算式中のaは0.1N水酸化カリウム-エタノール溶液の滴定量(mL)であり、Fは0.1N水酸化カリウム-エタノール溶液のファクターであり、Sはアクリル樹脂の採取量(g)である。アクリル樹脂の酸価の測定結果を表1に示す。
1-5.理論Tg
製造例で得られたアクリル樹脂の理論Tgは、下記のFOX式による理論計算上のガラス転移温度(Tg)として算出した。結果を表1に示す。
(FOX式)
1/Tg=W/Tg+W/Tg+…+W/Tg+…+W/Tg
上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTg(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wとする(W+W+…+W+…W=1である。)。
1-6.イオン溶出
耐熱容器中に脱イオン水50gを投入し、更に、実施例及び比較例のシート状シール層から1cm×5cmの大きさにカットしたシール材層を約2g投入し、耐熱容器を95℃のオーブンで24時間加熱した。次いで、耐熱容器中の液を検液として、イオンクロマトグラフでアンモニウムイオン等のイオン溶出量を測定しシール材層中のイオン含有量を算出した。なお、この時の実施例1~4及び比較例1~3のシール材層の厚みは50μmとした。結果を表2に示す。
2.アクリル樹脂の作製
<製造例1>
容量1リットルのセパラブルフラスコに、0.2質量%のポリビニルアルコールを含有する水200質量部と、スチレンモノマー(ST)20質量部と、メチルメタクリレートモノマー(MMA)40質量部と、グリシジルメタクリレートモノマー(GMA)1質量部と、エチルアクリレートモノマー(EA)39質量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.1質量部と、分子量調整用に連鎖移動剤とを含む均一混合液を投入した。
該混合液を窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温し、4時間懸濁重合させた。次いで、デカンテーションによって懸濁液から水分を除いた。固形物を吸引ろ過しながら水で洗浄し、水分を飛ばした後に、60℃で真空乾燥を行い、製造例1のアクリル樹脂を得た。
得られたアクリル樹脂について重量平均分子量の測定方法により、重量平均分子量を測定したところ、43.7×10であった。モノマー組成と重量平均分子量を表1に示す。
<製造例2~8>
アクリル樹脂のモノマーの組成及び重量平均分子量を表1の通りとした以外は、製造例1と同様にして、製造例2~8のアクリル樹脂を得た。なお、各製造例のアクリル樹脂の重量平均分子量は連鎖移動剤の量で調整した。
3.シール材の作製
<実施例1>
[樹脂組成物の作製]
アクリル樹脂(A)として製造例1のアクリル樹脂を70質量物と、アクリル樹脂(B)として製造例5のアクリル樹脂を30質量部とを酢酸エチルに溶解した後、更に架橋剤としてアミン系エポキシ(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、製品名:TETRAD-C、三菱ガス化学社製)を2.24質量部(当量比0.75)加え、撹拌混合し、実施例1の樹脂組成物を得た。
[シート状シール材の作製]
得られた樹脂組成物を、メチルエチルケトン中で溶融攪拌し、シール材層形成組成物を調製した。厚さ100μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムに上に、上記のシール材層形成組成物を塗布後、100℃、2分の条件で乾燥させ、厚さ10μmのシール材層を形成し、実施例1のシート状シール材を得た。
<実施例2~7、比較例1~5>
樹脂組成物の樹脂組成及び架橋剤を表2の通りとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~7及び比較例1~5の樹脂組成物及びシート状のシール材を得た。
Figure 2023017551000001
Figure 2023017551000002
Figure 2023017551000003
表3の結果から、本願発明の特徴を有する実施例1~7のシール材は、耐熱接着力及び熱湿耐久性後の接着力が良好であり、更に高温雰囲気下での形状安定性も優れていたことから、特に高温高湿下のような過酷な環境下でも、優れた耐久性を有することが確認できた。
さらに、実施例1~7のシール材は、イオン溶出が少ないことも確認された。
10 :セル
11 :電解質膜
12,13 :電極
14,15 :セパレータ
14a,15a:ガス流路
16 :シール材

Claims (11)

  1. 酸価が15mgKOH/g未満のアクリル樹脂(A)、酸価が15mgKOH/g以上のアクリル樹脂(B)、及び架橋剤を含む、固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  2. 前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)の質量比(A)/(B)が、20/80以上80/20以下である、請求項1に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  3. 前記樹脂(A)が、スチレンを5質量%以上40質量%以下、及びメチルメタクリレートを20質量%以上60質量%以下を含む原料成分を共重合してなり、重量平均分子量が30万以上の共重合樹脂である、請求項1又は2に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  4. 前記樹脂(A)の前記原料成分中に、更に、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上を含有する、請求項3に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  5. 前記樹脂(A)の前記原料成分中に、更に、炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含有する、請求項3又は4に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  6. 前記樹脂(B)が、スチレンを30質量%以上70質量%以下、及びメチルメタクリレートを5質量%以上30質量%以下を含む原料成分を共重合してなり、重量平均分子量が20万以上の共重合樹脂である、請求項1~5のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  7. 前記樹脂(A)の前記原料成分中に、更に、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上を含有する、請求項6に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  8. 前記樹脂(B)の前記原料成分中に、更に、炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含有する、請求項6又は7に記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  9. 前記架橋剤が、アミン系エポキシ架橋剤である、請求項1~8のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物から形成されてなる、固体高分子型燃料電池用のシール材。
  11. 請求項10に記載の固体高分子型燃料電池用シール材によるシール部位を備えてなる、固体高分子型燃料電池。
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CN118234823A (zh) * 2023-06-12 2024-06-21 凡纳克株式会社 密封材料用的树脂组合物、使用了所述树脂组合物的密封材料、以及使用了所述密封材料的固体高分子型燃料电池及水电解装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7382527B1 (ja) * 2023-06-12 2023-11-16 パナック株式会社 シール材用の樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたシール材、並びに、前記シール材を用いた固体高分子型燃料電池及び水電解装置
CN118234823A (zh) * 2023-06-12 2024-06-21 凡纳克株式会社 密封材料用的树脂组合物、使用了所述树脂组合物的密封材料、以及使用了所述密封材料的固体高分子型燃料电池及水电解装置

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