以下、添付の図面を参照しながら発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者(着座者)から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートは、乗物、具体的には、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されている。車両用シートSは、着座者が座るシート本体S0と、シート本体S0に設けられた温調装置1と、温度センサとしてのシート温度センサ31,32と、車内温度センサ40と、外気温センサ50と、制御装置100とを備えている。
シート本体S0は、自動車内に設置され、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを有している。自動車は、シート本体S0が設置された環境の温度、すなわち、車室内の温度(車内温度)を調整するための空調装置ACを備えている。空調装置ACは、作動すると、車内温度が設定温度となるように、設定温度と現在の車内温度とに応じて温風や冷風を車室内に吹き出すように構成されている。
シートクッションS1は、シートクッションS1のフレームを構成するシートクッションフレームに、シートクッションパッドP1とシートクッション表皮U1を被せることで構成されている。また、シートバックS2は、シートバックS2のフレームを構成するシートバックフレームに、シートバックパッドP2とシートバック表皮U2を被せることで構成されている。
図2に示すように、シートクッションパッドP1は、当該シートクッションパッドP1の内部に設けられた通気路A1と、シートクッションパッドP1の着座者側の面、具体的には、上側の面に設けられた複数の通気穴H1とを有している。通気穴H1は、空気を通すための穴であり、シートクッションパッドP1の上側の面から通気路A1に連通している。また、シートバックパッドP2は、当該シートバックパッドP2の内部に設けられた通気路A2と、シートバックパッドP2の着座者側の面、具体的には、前側の面に設けられた複数の通気穴H2とを有している。通気穴H2は、空気を通すための穴であり、シートバックパッドP2の上側の面から通気路A2に連通している。なお、シート本体S0の表皮U1,U2は、通気穴H1,H2に対応する位置に複数の微細な貫通孔が形成されることで通気性を有するか、通気性を有する素材から形成されている。
温調装置1は、シート本体S0に座った着座者を暖める加熱装置10と、シート本体S0に座った着座者を冷やす冷却装置20とを有している。
加熱装置10は、シートクッションヒータ11と、シートバックヒータ12とを有している。図3(a),(b)に示すように、シートクッションヒータ11およびシートバックヒータ12は、それぞれ、不織布などからなり通気性を有するシート状の基材11M,12Mと、基材11M,12Mに支持されたヒータ線11W,12Wとを有する面状のヒータとして構成されている。ヒータ線11W,12Wは、例えば、基材11M,11Mに接着剤などによって貼り付けられることで、基材11M,12Mに固定されている。
シートクッションヒータ11は、シートクッションパッドP1の上側の面とシートクッション表皮U1との間であって、着座者の臀部および大腿部と対向する位置に配置されている。また、シートバックヒータ12は、シートバックパッドP2の前側の面とシートバック表皮U2との間であって、着座者の腰部および肩部(肩甲骨)と対向する位置に配置されている。
加熱装置10は、ヒータ線11W,12Wへの通電によってヒータ線11W,12Wが発熱することで、着座者を暖めるように構成されている。加熱装置10は、ヒータ11,12(ヒータ線11W,12W)に供給する電力を0~100%の出力割合で制御してヒータ線11W,12Wの発熱量を変更することで、その出力が変更可能となっている。
図2に示すように、冷却装置20は、ブロア21と、ダクト22と、シート本体S0のパッドP1,P2に形成された通気路A1,A2および通気穴H1,H2とを有して構成されている。
ブロア21は、シロッコファンであり、シートクッションS1の前部のフレームを構成する板状フレームF12の下側に配置されている。ブロア21は、板状フレームF12にブラケット25を介して取り付けられている。これにより、ブロア21は、シート本体S0のシートクッションS1に設けられている。ブロア21とパッドP1,P2に形成された通気路A1,A2とは、ダクト22によって接続されている。
冷却装置20は、ブロア21から送風された空気(破線の矢印参照)を、ダクト22および通気路A1,A2を通して通気穴H1,H2から着座者に向けて吹き出すことで、着座者を冷やすように構成されている。冷却装置20は、ブロア21に供給する電力を0~100%の出力割合で制御して羽根の回転速度を変更することで、その出力が変更可能となっている。
図1に戻って、シート温度センサ31,32は、シート本体S0の表面付近の温度(シート温度TS)を検出するためのセンサである。詳しくは、シート温度センサ31は、シートクッションS1の上側の面付近の温度を検出し、シート温度センサ32は、シートバックS2の前側の面付近の温度を検出する。
図3(a)に示すように、シート温度センサ31は、シートクッションパッドP1の上側の面とシートクッション表皮U1との間であって、着座者の一方の大腿部と対向する位置に配置されている。さらに説明すると、シート温度センサ31は、シートクッションヒータ11のヒータ線11WおよびシートクッションパッドP1に形成された通気穴H1を避けた位置、言い換えると、上側から見てヒータ線11Wおよび通気穴H1と異なる位置に配置されている。
また、図3(b)に示すように、シート温度センサ32は、シートバックパッドP2の前側の面とシートバック表皮U2との間であって、着座者の腰部と対向する位置に配置されている。さらに説明すると、シート温度センサ32は、シートバックヒータ12のヒータ線12WおよびシートバックパッドP2に形成された通気穴H2を避けた位置、言い換えると、前側から見てヒータ線12Wおよび通気穴H2と異なる位置に配置されている。
図1に示すように、車内温度センサ40は、車内温度TRを検出するためのセンサである。車内温度センサ40は、シート本体S0に設けられていてもよいし、車両に設けられていてもよい。
外気温センサ50は、車外の温度(外気温TO)を検出するためのセンサであり、車両の適宜な位置に設けられている。
なお、車両が、例えば、空調装置ACなどを制御するために車内温度センサを備える場合には、この車内温度センサを車内温度センサ40として利用してもよい。外気温センサ50についても同様である。
制御装置100は、温調装置1の出力を制御する装置であり、シート本体S0内の適宜な位置に設けられている。なお、制御装置100は、シート本体S0の外、すなわち、車両に設けられてもよい。制御装置100は、車両に搭載されたバッテリにより駆動される電源装置110から電力が供給され、この電力により温調装置1の出力を制御する。
制御装置100は、各種温度を取得可能にシート温度センサ31,32、車内温度センサ40および外気温センサ50と接続されている。また、制御装置100は、空調装置ACの設定温度(空調設定温度TRS)を取得可能に空調装置ACと接続されている。また、制御装置100は、車両に設けられた操作スイッチ120と接続され、この操作スイッチ120から温調制御開始の指示を受けて、温調装置1の出力を制御する。また、制御装置100は、操作スイッチ120から温調制御開始の指示を受けた場合に、空調装置ACが作動していなければ、空調装置ACを空調設定温度TRSで作動させる。
本実施形態において、制御装置100は、温調制御を実行する場合、外気温センサ50から取得した外気温TOに基づき、加熱装置10の出力を制御する加熱モード、または、冷却装置20の出力を制御する冷却モードのいずれかを選択する。一例として、制御装置100は、外気温TOが予め設定された外気温閾値TOth以下の場合、冬場のように外気温が低いとみなして着座者を暖めるため、加熱モードを選択する。また、制御装置100は、外気温TOが外気温閾値TOthより大きい場合、夏場のように外気温が高いとみなして着座者を冷やすため、冷却モードを選択する。
制御装置100は、加熱モードを実行する場合、目標温度TTを加熱モード用の第1目標温度TH1に設定する。そして、制御装置100は、温調制御を開始してから、シート温度センサ31,32から取得したシート温度TSが第1目標温度TH1に到達するまでは、最大出力(100%)で加熱装置10(ヒータ11,12)の出力を制御する。また、制御装置100は、シート温度TSが第1目標温度TH1に到達した場合、以後は、第1目標温度TH1と、シート温度TSとに基づいて、必要制御量mvを計算し、算出した必要制御量mvで加熱装置10の出力を制御する。
必要制御量mvは、一例として、いわゆるPI制御の必要制御量として、以下の式により計算することができる。
mv=Kph×e+ie/Kih
ここで、eは、目標温度とシート温度との差分であり、Kphは、加熱モード用の比例制御定数であり、ieは、過去の所定期間内のeの積分(積算)であり、Kihは、加熱モード用の積分制御定数である。各定数Kph,Kihは、実験やシミュレーションなどにより予め設定されている。なお、温度は、計算上、「℃」などの単位である必要はなく、センサから出力される電圧を数値化したものでよい。そして、各定数は、これらの温度の値のスケールによって適宜調整するとよい。
また、加熱モードを実行する場合、目標温度TTとして、シートクッションS1用の目標温度と、シートバックS2用の目標温度を別々に設定してもよい。この場合、シートクッションS1用の目標温度と、シート温度センサ31から取得したシートクッションS1の温度とに基づいて、シートクッションヒータ11の必要制御量を算出することができ、また、シートバックS2用の目標温度と、シート温度センサ32から取得したシートバックS2の温度とに基づいて、シートバックヒータ12の必要制御量を算出することができる。
制御装置100は、冷却モードを実行する場合、目標温度TTを冷却モード用の第1目標温度TC1に設定する。そして、制御装置100は、温調制御を開始してから、シート温度TSが第1目標温度TC1に到達するまでは、最大出力(100%)で冷却装置20(ブロア21)の出力を制御する。また、制御装置100は、シート温度TSが第1目標温度TC1に到達した場合、以後は、第1目標温度TC1と、シート温度TSとに基づいて、必要制御量mvを計算し、算出した必要制御量mvで冷却装置20の出力を制御する。
必要制御量mvは、加熱モードを実行する場合と同様に、以下の式により計算することができる。
mv=Kpc×e+ie/Kic
ここで、Kpcは、冷却モード用の比例制御定数であり、Kicは、冷却モード用の積分制御定数である。各定数Kpc,Kicは、実験やシミュレーションなどにより予め設定されている。なお、必要制御量mvは、上記の計算によると、差分eが大きい場合には、100を超えることがあるが、加熱装置10や冷却装置20には、0~100%の出力割合で電力を供給するので、mvが100を超える場合には、100とされる。
制御装置100は、シート温度TSが第1目標温度TH1,TC1に到達した場合には、そのことを示すフラグF1を1にする。フラグF1は、初期値が0であり、例えば、操作スイッチ120がON状態となって温調制御が開始されたときや、操作スイッチ120がOFF状態となって制御装置100に電力が供給されなくなったときなどに0にリセットされる。
本実施形態において、制御装置100は、所定のタイミングから所定の切替時間tkが経過した場合には、温調装置1の出力を変更するように構成されている。具体的には、制御装置100は、所定のタイミングとしての、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したタイミングから切替時間tkが経過した場合に、温調装置1の出力を制御するための目標温度TTを変更するように構成されている。
制御装置100は、加熱モードの実行中に、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したタイミングから切替時間tkが経過した場合、目標温度TTを、第1目標温度TH1から、第1目標温度TH1よりも小さい第2目標温度TH2に変更する。そして、制御装置100は、第2目標温度TH2と、シート温度TSとに基づいて、必要制御量mvを計算し、算出した必要制御量mvで加熱装置10の出力を制御する。加熱モードにおいて、目標温度TTが小さくなると、加熱を弱めるため、ヒータ11,12(ヒータ線11W,12W)の発熱量が小さくなる。これにより、制御装置100は、切替時間tkが経過した場合、加熱装置10の出力を、切替時間tkが経過する前よりも小さくする。
制御装置100は、冷却モードの実行中に、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したタイミングから切替時間tkが経過した場合、目標温度TTを、第1目標温度TC1から、第1目標温度TC1よりも大きい第2目標温度TC2に変更する。そして、制御装置100は、第2目標温度TC2と、シート温度TSとに基づいて、必要制御量mvを計算し、算出した必要制御量mvで冷却装置20の出力を制御する。冷却モードにおいて、目標温度TTが大きくなると、冷却を弱めるため、ブロア21の羽根の回転速度が小さくなる。これにより、制御装置100は、切替時間tkが経過した場合、冷却装置20の出力を、切替時間tkが経過する前よりも小さくする。
制御装置100は、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達した場合には、そのことを示すフラグF2を1にする。また、制御装置100は、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したタイミングから切替時間tkが経過した場合には、そのことを示すフラグF3を1にする。フラグF2,F3は、初期値が0であり、例えば、操作スイッチ120がON状態となって温調制御が開始されたときや、操作スイッチ120がOFF状態となって制御装置100に電力が供給されなくなったときなどに0にリセットされる。
制御装置100は、初期環境温度としての初期車内温度TR0に基づいて、切替時間tkを設定する。初期車内温度TR0は、温調装置1を作動させたときの車内温度TRである。すなわち、初期車内温度TR0は、操作スイッチ120がOFF状態からON状態に切り替えられて温調制御を開始したときの車内温度TRである。
制御装置100は、加熱モードを実行する場合には、初期車内温度TR0と、図4(a)に示すようなマップとに基づいて、切替時間tkを設定する。また、制御装置100は、冷却モードを実行する場合には、初期車内温度TR0と、図4(b)に示すようなマップとに基づいて、切替時間tkを設定する。
図4(a),(b)のマップは、初期車内温度と切替時間とを関連付けるためのマップの一例であり、実験やシミュレーションなどにより予め設定されている。図4(a)のマップにおいて、切替時間tkは、初期車内温度TR0が高いほど、短い時間になるように設定されている。このため、制御装置100は、加熱モードを実行する場合には、初期車内温度TR0が高いほど、切替時間tkを短い時間に設定する。一方、図4(b)のマップにおいて、切替時間tkは、初期車内温度TR0が低いほど、短い時間になるように設定されている。このため、制御装置100は、冷却モードを実行する場合には、初期車内温度TR0が低いほど、切替時間tkを短い時間に設定する。
次に、制御装置100による処理について説明する。制御装置100は、図5および図6に示す処理を、所定の制御サイクルごとに繰り返し実行している。
図5に示すように、操作スイッチ120がON状態であって(S101,Yes)、1回目の制御サイクルである場合(S102,Yes)、制御装置100は、初期車内温度TR0を取得する(S103)。また、制御装置100は、フラグF1,F2,F3を0にリセットする(S104)。また、制御装置100は、外気温センサ50から取得した外気温TOに基づき、加熱モードまたは冷却モードのいずれかを選択する(S105)。
その後、制御装置100は、切替時間tkを設定する(S106)。詳しくは、加熱モードを実行する場合、制御装置100は、初期車内温度TR0と図4(a)のマップから切替時間tkを設定する。また、冷却モードを実行する場合、制御装置100は、初期車内温度TR0と図4(b)のマップから切替時間tkを設定する。また、制御装置100は、目標温度TTを第1目標温度に設定する(S107)。詳しくは、加熱モードを実行する場合、制御装置100は、目標温度TTを加熱モード用の第1目標温度TH1に設定する。また、冷却モードを実行する場合、制御装置100は、目標温度TTを冷却モード用の第1目標温度TC1に設定する。その後、制御装置100は、ステップS111に進む。
なお、ステップS102において、1回目の制御サイクルでない場合(S102,No)、制御装置100は、ステップS111に進む。また、ステップS101において、操作スイッチ120がON状態でない場合(S101,No)、温調制御を実行しないので、制御装置100は、今回の処理を終了する。
ステップS111において、制御装置100は、フラグF1が1であるか否かを判定する。そして、フラグF1が1でない場合(S111,No)、制御装置100は、シート温度TSが第1目標温度TH1またはTC1に到達したか否かを判定する(S112)。そして、シート温度TSが第1目標温度TH1またはTC1に到達していない場合(S112,No)、制御装置100は、加熱装置10または冷却装置20を100%で出力し(S113)、今回の処理を終了する。
ステップS112において、シート温度TSが第1目標温度TH1またはTC1に到達した場合(S112,Yes)、図6に示すように、制御装置100は、フラグF1を1にして(S121)、ステップS122に進む。また、図5のステップS111において、フラグF1が1である場合(S111,Yes)、制御装置100は、図6のステップS122に進む。
ステップS122において、制御装置100は、フラグF2が1であるか否かを判定する。そして、フラグF2が1でない場合(S122,No)、制御装置100は、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したか否かを判定する(S123)。そして、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達していない場合(S123,No)、制御装置100は、第1目標温度TH1またはTC1と、シート温度TSとに基づいて必要制御量mvを算出する(S141)。そして、制御装置100は、加熱装置10または冷却装置20を算出した必要制御量mvで出力し(S142)、今回の処理を終了する。
ステップS123において、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達した場合(S123,Yes)、制御装置100は、タイマカウントをスタートするとともに(S124)、フラグF2を1にして(S125)、ステップS126に進む。また、ステップS122において、フラグF2が1である場合(S122,Yes)、制御装置100は、ステップS126に進む。
ステップS126において、制御装置100は、フラグF3が1であるか否かを判定する。そして、フラグF3が1でない場合(S126,No)、制御装置100は、タイマカウントスタートから切替時間tkが経過したか否かを判定する(S127)。そして、切替時間tkが経過していない場合(S127,No)、制御装置100は、ステップS141に進む。また、ステップS126において、フラグF3が1である場合(S126,Yes)、制御装置100は、ステップS141に進む。
ステップS127において、タイマカウントスタートから切替時間tkが経過した場合(S127,Yes)、制御装置100は、目標温度TTを第2目標温度に設定する(S131)。詳しくは、加熱モードの実行中には、制御装置100は、目標温度TTを、第1目標温度TH1よりも小さい第2目標温度TH2に設定する。また、冷却モードの実行中には、制御装置100は、目標温度TTを、第1目標温度TC1よりも大きい第2目標温度TC2に設定する。また、制御装置100は、フラグF3を1にする(S132)。
その後、制御装置100は、第2目標温度TH2またはTC2と、シート温度TSとに基づいて必要制御量mvを算出する(S141)。そして、制御装置100は、加熱装置10または冷却装置20を算出した必要制御量mvで出力し(S142)、今回の処理を終了する。
次に、制御装置100の動作について説明する。
図7(a),(b)に示すように、制御装置100は、時刻t10,t20において、加熱モードを開始すると、初期車内温度TR0を取得して切替時間tkを設定するとともに、目標温度TTを第1目標温度TH1に設定する。このとき、制御装置100は、初期車内温度TR0が高い場合、切替時間tk2を、初期車内温度TR0が低い場合の切替時間tk1よりも短い時間に設定する。
その後、制御装置100は、シート温度TSが第1目標温度TH1に到達するまでは、加熱装置10を100%で出力する。そして、時刻t11,t21において、シート温度TSが第1目標温度TH1に到達すると、制御装置100は、第1目標温度TH1とシート温度TSとに基づいて必要制御量mvを算出し、加熱装置10を算出した必要制御量mvで出力する。
その後、時刻t12,22において、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達すると、制御装置100は、タイマカウントをスタートする。そして、時刻t13,23において、タイマカウントスタートから切替時間tkが経過すると、制御装置100は、目標温度TTを第1目標温度TH1よりも小さい第2目標温度TH2に設定する。その後、制御装置100は、第2目標温度TH2とシート温度TSとに基づいて必要制御量mvを算出し、加熱装置10を算出した必要制御量mvで出力する。
図7(b)に示すように、初期車内温度TR0が高かった場合、切替時間tk2が短い時間に設定されるので、タイマカウントスタート(時刻t22)から、目標温度TTを、第1目標温度TH1から第2目標温度TH2に下げるまでの時間を短くすることができる。これにより、初期車内温度TR0が高く、加熱装置10を長く作動させると暑いと感じやすい場合に、シート温度TSを早く下げることができる。
逆に言えば、図7(a)に示すように、初期車内温度TR0が低かった場合、切替時間tk1が長い時間に設定されるので、タイマカウントスタート(時刻t12)から、目標温度TTが高い目標温度(第1目標温度TH1)に保たれる時間を長くすることができる。これにより、車内温度TRが初期車内温度TR0から空調設定温度TRSに上がるまでに時間がかかる場合に、シート温度TSを長く高い状態に保つことができる。
また、図8(a),(b)に示すように、制御装置100は、時刻t30,t40において、冷却モードを開始すると、初期車内温度TR0を取得して切替時間tkを設定するとともに、目標温度TTを第1目標温度TC1に設定する。このとき、制御装置100は、初期車内温度TR0が低い場合、切替時間tk4を、初期車内温度TR0が高い場合の切替時間tk3よりも短い時間に設定する。
その後、制御装置100は、シート温度TSが第1目標温度TC1に到達するまでは、冷却装置20を100%で出力する。そして、時刻t31,t41において、シート温度TSが第1目標温度TC1に到達すると、制御装置100は、第1目標温度TC1とシート温度TSとに基づいて必要制御量mvを算出し、冷却装置20を算出した必要制御量mvで出力する。
その後、時刻t32,42において、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達すると、制御装置100は、タイマカウントをスタートする。そして、時刻t33,43において、タイマカウントスタートから切替時間tkが経過すると、制御装置100は、目標温度TTを第1目標温度TC1よりも大きい第2目標温度TC2に設定する。その後、制御装置100は、第2目標温度TC2とシート温度TSとに基づいて必要制御量mvを算出し、冷却装置20を算出した必要制御量mvで出力する。
図8(b)に示すように、初期車内温度TR0が低かった場合、切替時間tk4が短い時間に設定されるので、タイマカウントスタート(時刻t42)から、目標温度TTを、第1目標温度TC1から第2目標温度TC2に上げるまでの時間を短くすることができる。これにより、初期車内温度TR0が低く、冷却装置20を長く作動させると寒いと感じやすい場合に、シート温度TSを早く上げることができる。
逆に言えば、図8(a)に示すように、初期車内温度TR0が高かった場合、切替時間tk3が長い時間に設定されるので、タイマカウントスタート(時刻t32)から、目標温度TTが低い目標温度(第1目標温度TC1)に保たれる時間を長くすることができる。これにより、車内温度TRが初期車内温度TR0から空調設定温度TRSに下がるまでに時間がかかる場合に、シート温度TSを長く低い状態に保つことができる。
以上説明した本実施形態によれば、初期車内温度TR0に基づいて切替時間tkを設定し、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したタイミングから切替時間tkが経過した場合に温調装置1の出力を変更するので、着座者が快適と感じる状況から暑いまたは寒いと感じる前に、温調装置1の出力を変更することができる。これにより、快適性を維持することができる。
具体的に、制御装置100は、切替時間tkが経過した場合、目標温度TTを、第1目標温度TH1から、第1目標温度TH1よりも小さい第2目標温度TH2に変更することで、加熱装置10の出力を、切替時間tkが経過する前よりも小さくするので、着座者が快適と感じる状況から暑いと感じる前に、加熱装置10の出力を小さくすることができる。これにより、着座者が感じる温度を下げることができるので、快適性を維持することができる。
このとき、制御装置100は、初期車内温度TR0が高いほど、切替時間tkを短い時間に設定するので、初期車内温度TR0が高く、加熱装置10を長く作動させると暑いと感じやすい場合に加熱装置10の出力を早く小さくすることができ、快適性を維持することができる。
また、制御装置100は、切替時間tkが経過した場合、目標温度TTを、第1目標温度TC1から、第1目標温度TC1よりも大きい第2目標温度TC2に変更することで、冷却装置20の出力を、切替時間tkが経過する前よりも小さくするので、着座者が快適と感じる状況から寒いと感じる前に、冷却装置20の出力を小さくすることができる。これにより、着座者が感じる温度を上げることができるので、快適性を維持することができる。
このとき、制御装置100は、初期車内温度TR0が低いほど、切替時間tkを短い時間に設定するので、初期車内温度TR0が低く、冷却装置20を長く作動させると寒いと感じやすい場合に冷却装置20の出力を早く小さくすることができ、快適性を維持することができる。
また、シート温度センサ31,32がヒータ線11W,12Wおよび通気穴H1,H2を避けた位置に配置されているので、シート温度センサ31,32によって検出される温度がヒータ線11W,12Wからの熱や通気穴H1,H2を通る空気の流れの影響を受けにくくなる。これにより、シート温度TSを精度良く検出することができる。
以上に発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、制御装置は、事前に入力された着座者の個人情報に基づいて、着座者ごとに温調装置の出力を制御するように構成されていてもよい。着座者の個人情報としては、快適性に影響を与える情報、例えば、性別の情報、身長や体重などの体格の情報、第1目標温度や第2目標温度などのシートの設定温度の情報、切替時間の情報、汗のかきやすさなどの体質の情報などが挙げられる。また、個人情報の入力は、車両に設けられたスイッチ類やタッチパネルなどの入力装置を用いて行うように構成してもよいし、スマートフォンやタブレット型コンピュータなどの携帯端末を用いて行うように構成してもよい。携帯端末を用いて行う場合には、着座者の個人情報を携帯端末に記憶させておき、その情報を車両側で読み取って車両用シートの制御に利用するように構成してもよい。このような構成によれば、車両が変わった場合であっても、当該車両が本発明に係る車両用シートを搭載していれば、個々の着座者に合わせた最適な温調装置の制御を実行することができるので、車両によらずに、快適性を維持したり、快適性を向上させたりすることができる。
また、制御装置は、着座者の操作によって入力された情報から当該着座者の好みを学習し、着座者の好みに合わせて温調装置の出力を制御するように構成されていてもよい。
例えば、図9に示すように、車両には、操作スイッチ120のほか、アップスイッチ121およびダウンスイッチ122を有する操作パネル120Pが設けられている。一例として、アップスイッチ121を押すことで、第2目標温度TH2,TC2を所定の上限温度まで1度ずつ上げることができ、ダウンスイッチ122を押すことで、第2目標温度TH2,TC2を所定の下限温度まで1度ずつ下げることができる。
制御装置100は、切替時間tkが経過した後の温調装置1の出力を制御するための第2目標温度TH2,TC2が、着座者の操作によって変更された場合、変更後の出力を制御するための変更後の第2目標温度TH3,TC3と、当該着座者の情報とを関連付けて記憶装置190に記憶させておく。着座者の情報は、車両に設けられた入力装置への入力や、着座者が所有する携帯端末に記憶された情報の読み取りなどによって取得することができる。
制御装置100は、次回、シート本体S0に当該着座者が座り、当該着座者の情報を、車両に設けられた入力装置への入力や、携帯端末に記憶された情報の読み取りなどによって取得する。そして、制御装置100は、温調制御が開始され、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したタイミングから切替時間tkが経過した場合に、現在座っている着座者の情報に関連付けられた第2目標温度TH3,TC3を記憶装置190から読み出し、目標温度TTを、第1目標温度TH1,TC1から、当該第2目標温度TH3,TC3に変更する。これにより、制御装置100は、温調装置1の出力を、着座者によって変更された後の所望の出力に変更する。
ここで、本変形例における制御装置100による処理について簡単に説明する。
図10に示すように、制御装置100は、操作スイッチ120がON状態であって(S101,Yes)、1回目の制御サイクルである場合(S102,Yes)のステップS107の処理の後、現在座っている着座者の情報を取得する(S108)。そして、制御装置100は、第2目標温度を設定する(S109)。詳しくは、制御装置100は、取得した着座者の情報と関連付けられた第2目標温度TH3,TC3の情報が記憶装置190に記憶されている場合には、第2目標温度として、第2目標温度TH3,TC3を設定する。また、取得した着座者の情報と関連付けられた第2目標温度TH3,TC3の情報が記憶装置190に記憶されていない場合には、第2目標温度として、規定値、すなわち、第2目標温度TH2,TC2を設定する。
ステップS113または図6のステップS142において、加熱装置10または冷却装置20を所定の制御量で出力した後、制御装置100は、アップスイッチ121またはダウンスイッチ122が操作されたか否かを判定する(S151)。スイッチ121,122が操作されていない場合(S151,No)、制御装置100は、今回の処理を終了する。一方、スイッチ121,122が操作されている場合(S151,Yes)、制御装置100は、第2目標温度TH2,TC2を、スイッチ121,122の操作によって設定された第2目標温度TH4,TC4に変更する(S152)。これにより、ステップS109や図6のステップS131で設定された第2目標温度TH3,TC3が、着座者によって設定された第2目標温度TH4,TC4に変更される。そして、制御装置100は、変更後の第2目標温度TH4,TC4と、ステップS108において取得した着座者の情報とを関連付けて記憶装置190に記憶させ(S153)、今回の処理を終了する。
このような構成によれば、温調装置1の出力を着座者の好みに合わせた出力に変更することができるので、快適性を向上させることができる。
また、図11に示すように、温調装置1は、個別に温度調節可能に構成された複数の温調ユニットの一例としてのヒータ10Aを備え、複数のヒータ10Aが、座部温調ユニットの一例としてのシートクッションヒータ11と、腰部温調ユニットの一例としての腰部ヒータ12Aと、肩部温調ユニットの一例としての肩部ヒータ12Bとを含む構成であってもよい。ヒータ11,12A,12Bは、着座者の異なる部位に対応してそれぞれ設けられている。詳しくは、シートクッションヒータ11は、着座者の臀部および大腿部に対応して、シートクッションS1の、着座者の臀部および大腿部と対向する位置に設けられている。また、腰部ヒータ12Aは、着座者の腰部に対応して、シートバックS2の、着座者の腰部と対向する位置に設けられており、肩部ヒータ12Bは、着座者の肩部に対応して、シートバックS2の、着座者の肩部(肩甲骨)と対向する位置に設けられている。
また、シート本体S0が、上記したようなヒータ11,12A,12Bを備える場合、制御装置100は、ヒータ11,12A,12Bごとに切替時間を設定するように構成することができる。具体的には、本願発明者等の検討の結果、腰部は、他の部位よりも、快適と感じる状況から快適ではないと感じるようになるまでの時間が短いことが分かったため、制御装置100は、腰部ヒータ12Aの切替時間を、シートクッションヒータ11の切替時間や肩部ヒータ12Bの切替時間よりも短い時間に設定するように構成することができる。
一例として、図12に示すように、腰部ヒータ12Aの切替時間は、マップMP1に基づいて設定し、肩部ヒータ12Bの切替時間は、マップMP2に基づいて設定し、シートクッションヒータ11の切替時間は、マップMP3に基づいて設定することができる。マップMP1~MP3は、初期車内温度と切替時間とを関連付けるためのマップであり、初期車内温度が高いほど、切替時間が短い時間になるように設定されている。マップMP1~MP3は、所定の初期車内温度(例えば、破線参照)で比較すると、マップMP1の切替時間が、マップMP2,MP3の切替時間よりも短くなるように設定されている。
このように、着座者の異なる部位に対応してそれぞれ設けられたヒータ11,12A,12Bごとに切替時間を設定することで、着座者の異なる部位ごとに快適性を維持することができる。
また、快適と感じる状況から快適ではないと感じるようになるまでの時間が短い腰部に対応して設けられた腰部ヒータ12Aの切替時間を、シートクッションヒータ11の切替時間や肩部ヒータ12Bの切替時間よりも短い時間に設定することで、腰部ヒータ12Aの出力をシートクッションヒータ11や肩部ヒータ12Bよりも早く変更することができる。具体的には、腰部ヒータ12Aの出力を早く小さくすることができる。これにより、車両用シートS全体として快適性を向上させることができる。
なお、本変形例(図11参照)では、座部温調ユニットとしてのシートクッションヒータ11が、着座者の臀部および大腿部の両方に対応して設けられていたが、これに限定されない。例えば、座部温調ユニット(シートクッションのヒータ)は、着座者の臀部のみに対応して設けられたヒータであってもよいし、着座者の大腿部のみに対応して設けられたヒータであってもよい。また、座部温調ユニットは、臀部に対応して設けられたヒータと、大腿部に対応して設けられたヒータの両方を別々に備える構成であってもよい。
また、腰部ヒータ12Aと肩部ヒータ12Bについて、目標温度を個別に設定するなどして、その出力を個別に制御するようにしてもよい。シートクッションに複数のヒータを設けた場合も同様である。
また、シート本体に、複数の温調ユニットの他の例として、複数のブロアを設け、前記したヒータ10Aの場合と同様に、制御装置が、ブロアごとに切替時間を設定するように構成されていてもよい。なお、前記実施形態では、ブロア21がシートクッションS1に設けられていたが、ブロアは、シートクッションではなく、シートバックに設けられていてもよい。また、ブロアは、シートクッションとシートバックにそれぞれ設けられていてもよい。また、ブロアを複数設けた場合には、目標温度を個別に設定するなどして、その出力を個別に制御するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、ブロア21がシート本体S0に設けられていたが、ブロアは、シート本体ではなく、車両に設けられていてもよい。すなわち、冷却装置は、その一部が車両に設けられていてもよい。この場合でも、車両に設けられたブロアと、シート本体とをダクトで接続することで、車両に設けられたブロアから送風された空気をシート本体の着座者側の面から着座者に向けて吹き出すように構成することができる。加熱装置についても、一部が車両に設けられていてもよい。
また、前記実施形態では、ブロア21としてシロッコファンを例示したが、これに限定されず、例えば、プロペラファンやターボファンなどであってもよい。また、前記実施形態では、冷却装置20が通気穴H1,H2から空気を吹き出すように構成されていたが、これに限定されず、例えば、通気穴H1,H2から空気を吸い込むように構成されていてもよい。また、冷却装置は、例えば、ブロアの羽根車の回転方向を切り替えることで、送風と吸引を切り替えることができる構成であってもよい。また、シートクッションまたはシートバックの一方だけが空気を吹き出し可能、または、吸い込み可能な構成であってもよい。
また、前記実施形態では、加熱装置10を構成する面状のヒータがシートクッションS1とシートバックS2にそれぞれ設けられていたが、これに限定されず、例えば、シートクッションまたはシートバックの一方だけに設けられていてもよい。
また、冷却装置は、冷風をシート本体の着座者側の面から着座者に向けて吹き出すように構成されていてもよい。また、加熱装置は、温風をシート本体の着座者側の面から着座者に向けて吹き出すように構成されていてもよい。
また、前記実施形態では、発明の理解を容易とするため、車両用シートSが、外気温に応じて加熱装置10および冷却装置20の一方だけを選択的に作動させるように構成されていたが、これに限定されない。すなわち、温調制御において加熱装置と冷却装置の両方を同時にバランスよく作動させるように構成されていてもよい。
また、前記実施形態では、温調装置1の出力を制御するため、目標温度を変更する構成であったが、これに限定されない。例えば、冷却装置(ブロア)の出力制御において、目標温度を設定せずに、車内温度が大きくなるほど、出力が大きくなるように設定されたマップなどに基づいて冷却装置の出力を制御するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、所定のタイミングとして、車内温度TRが空調設定温度TRSに到達したタイミングを例示したが、これに限定されない。例えば、所定のタイミングは、温調制御を開始したタイミングや、初期車内温度を取得したタイミング、シート温度が第1目標温度に到達したタイミングなどであってもよい。
また、前記実施形態では、目標温度TTを、第1目標温度から第2目標温度に変更した後は、目標温度を第2目標温度に維持する構成であったが、これに限定されない。例えば、加熱モードにおいて、所定のタイミングから第1切替時間が経過した場合に、目標温度を第1目標温度から第1目標温度よりも小さい第2目標温度に変更し、その後、所定のタイミングから第1切替時間よりも長い第2切替時間が経過した場合に、目標温度を第2目標温度から第2目標温度よりも小さい第3目標温度に変更するように構成してもよい。さらに、所定のタイミングから第2切替時間よりも長い第3切替時間が経過した場合に、目標温度を第3目標温度から第3目標温度よりも小さい第4目標温度に変更するように構成してもよい。冷却モードの場合についても同様である。
また、前記実施形態では、温調装置1が、加熱装置10および冷却装置20の両方を有する構成であったが、これに限定されず、加熱装置または冷却装置の一方だけを有する構成であってもよい。
また、温度センサは、温度と湿度の両方を計測することができる温湿度センサであってもよい。そして、温湿度センサを、シート本体のパッドと表皮との間であって、ヒータ線および通気穴を避けた位置に配置することで、温度だけでなく、湿度も精度良く検出することができる。
また、前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。