JP2023074364A - コイル挿入装置及びコイル挿入方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スロットへの挿入後のコイルエンド部のスプリングバックによる内方への戻りを抑制し、コイル挿入作業の作業性を向上させること。
【解決手段】巻回状態のコイルアッセンブリを、ステータコアの内方から拡径することによって、ステータコアのスロットへ挿入するコイル拡径手段を有するコイル挿入装置であって、コイル拡径手段は、コイルアッセンブリの内側に配置され、コイルアッセンブリのコイルエンド部を内方から外方に向けて押圧して拡径させるコイル押圧部と、コイルアッセンブリの外側に配置され、コイル押圧部によって拡径されるコイルエンド部の外方への移動を制限するとともに、コイル押圧部との間で、スロットに挿入されたコイルアッセンブリのコイルエンド部を挟持する制限部と、を備える。
【選択図】図13
【解決手段】巻回状態のコイルアッセンブリを、ステータコアの内方から拡径することによって、ステータコアのスロットへ挿入するコイル拡径手段を有するコイル挿入装置であって、コイル拡径手段は、コイルアッセンブリの内側に配置され、コイルアッセンブリのコイルエンド部を内方から外方に向けて押圧して拡径させるコイル押圧部と、コイルアッセンブリの外側に配置され、コイル押圧部によって拡径されるコイルエンド部の外方への移動を制限するとともに、コイル押圧部との間で、スロットに挿入されたコイルアッセンブリのコイルエンド部を挟持する制限部と、を備える。
【選択図】図13
Description
本発明は、コイル挿入装置及びコイル挿入方法に関する。
従来、円環状に巻かれたコイルをステータコアの内側に挿入し、コイルの内側に偏心して配置されるローラによって、コイルをステータコアのスロットに対して内方から外方に向けて押圧してコイルを拡径させ、ステータコアのスロットに装着する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図16は、ステータコア400に装着されるコイルアッセンブリのうちの1本のコイル300が内方から外方に向かって押圧されて拡径し、ステータコア400の内方からスロット401に挿入される様子を示している。コイル300は、コイルエンド部301が押圧されることによって、拡径しながらステータコア400の内方から外方に向けて移動する。それに伴って、スロット401に挿入されるコイル300の直線部302のピッチが広がり、コイルエンド部301もステータコア400の周方向に広がっていく。
しかし、スロットへのコイルの挿入が完了して押圧が解除されると、コイルのスプリングバックによって、図17に示すように、拡径されたコイルエンド部301が拡径前の状態に戻ろうとして縮径する現象が発生する。コイルエンド部301が拡径前の状態に縮径すると、直線部302のピッチPが小さくなる方向に変化し、スロット401に挿入されたコイル300が径方向内側に移動して、ステータコア400の内方に戻ってしまう可能性がある。そのため、コイルを押圧する作業を繰り返す必要がある等、コイル挿入作業の作業性が悪い、という課題がある。
本発明は、スロットへの挿入後のコイルエンド部のスプリングバックによる内方への戻りを抑制し、コイル挿入作業の作業性を向上させることができるコイル挿入装置及びコイル挿入方法を提供することを目的とする。
(1) 本発明に係るコイル挿入装置は、巻回状態のコイルアッセンブリ(例えば、後述の帯状コイル100)を、ステータコア(例えば、後述のステータコア2)の内方から拡径することによって、前記ステータコアのスロット(例えば、後述のスロット22)へ挿入するコイル拡径手段(例えば、後述のコイル拡径装置5)を有するコイル挿入装置(例えば、後述のコイル挿入装置1)であって、前記コイル拡径手段は、前記コイルアッセンブリの内側に配置され、前記コイルアッセンブリのコイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部103)を内方から外方に向けて押圧して拡径させるコイル押圧部(例えば、後述のコイル押圧部53)と、前記コイルアッセンブリの外側に配置され、前記コイル押圧部によって拡径される前記コイルエンド部の外方への移動を制限するとともに、前記コイル押圧部との間で、前記スロットに挿入された前記コイルアッセンブリの前記コイルエンド部を挟持する制限部(例えば、後述の制限部55)と、を備える。
(2) 上記(1)に記載のコイル挿入装置において、前記制限部の内周面(例えば、後述の内周面55a)は、前記ステータコアの端面(例えば、後述の端面2a)に対して垂直な面であってもよい。
(3) 上記(1)に記載のコイル挿入装置において、前記制限部の内周面(例えば、後述の内周面55a)は、前記ステータコアの端面(例えば、後述の端面2a)から離れるに従って径方向外側に傾斜する傾斜面であってもよい。
(4) 本発明に係るコイル挿入方法は、巻回状態のコイルアッセンブリ(例えば、後述の帯状コイル100)を、ステータコア(例えば、後述のステータコア2)の内方から拡径することによって、前記ステータコアのスロット(例えば、後述のスロット22)へ挿入するコイル挿入方法であって、前記コイルアッセンブリの内側に配置したコイル押圧部(例えば、後述のコイル押圧部53)によって、前記コイルアッセンブリのコイルエンド部(例えば、後述のコイルエンド部103)を内方から外方に向けて押圧して拡径させ、前記コイルアッセンブリを前記スロットに挿入する工程と、前記コイル押圧部によって拡径される前記コイルエンド部の外方への移動を、前記コイルエンド部の外側に配置した制限部(例えば、後述の制限部55)によって制限するとともに、前記コイル押圧部と前記制限部との間で、前記スロットに挿入された前記コイルアッセンブリの前記コイルエンド部を挟持する。
上記(1)によれば、スロットに挿入されたコイルアッセンブリのコイルエンド部を、押圧部と制限部との間で挟持することによって、コイルエンド部に発生するスプリングバックを打ち消すことができる。そのため、スロットへの挿入後のコイルエンド部のスプリングバックによるコイルの内方への戻りを抑制することができ、コイル挿入作業の作業性を向上させることができる。押圧部と制限部との間でコイルエンド部が挟持されることによって、スロット内に積層されるコイル間の隙間も解消される。
上記(2)によれば、コイルエンド部に対して均等に押圧力を掛けることができるとともに、コイルエンド部をステータコアの端面に整然とレイアウトすることができる。
上記(3)によれば、コイルエンド部を径方向外側に傾斜させることができるため、コイルエンド部の突出高さを抑制することができるとともに、コイルエンド部の内径側の空間を容易に確保することができる。
上記(4)によれば、スロットに挿入されたコイルアッセンブリのコイルエンド部を、押圧部と制限部との間で挟持することによって、コイルエンド部に発生するスプリングバックを打ち消すことができる。そのため、スロットへの挿入後のコイルエンド部のスプリングバックによるコイルの内方への戻りを抑制することができ、コイル挿入作業の作業性を向上させることができる。押圧部と制限部との間でコイルエンド部が挟持されることによって、スロット内に積層されるコイル間の隙間も解消される。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2に示すように、コイル挿入装置1は、ステータコア2と、ステータコア2を固定するステータコア固定治具3と、ステータコア2の内側に挿入され、帯状コイル100を円環状に巻き取ったコイル巻取治具4と、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100を拡径移動させるコイル拡径装置5と、を備える。
ステータコア2は、図2及び図3に示すように、例えば、薄肉のコアプレートが複数積層された積層体からなる円環部21を有する。円環部21の中心には、軸方向に貫通する貫通孔20を有する。ステータコア2は、ステータコア2の軸方向に貫通する複数のスロット22を有する。スロット22は、円環部21の周方向に沿って一定の間隔で放射状に配列され、貫通孔20に向けて開口する開口部22aを有する。本実施形態のステータコア2は、72個のスロット22を有する。ステータコア2の円環部21の外周には、一定の間隔で突出する6つの耳部23を有する。
なお、ステータコア2において、図2に示すように、スロット22が配列されるX方向が周方向である。貫通孔20の中心から放射方向に沿うY方向が径方向である。Z方向が軸方向である。
ステータコア固定治具3は、図2に示すように、ステータコア2の軸方向の寸法に略等しい軸方向の寸法を有する六角柱形状を有し、ステータコア2を挿入して配置可能なステータコア挿入孔31を中央に有する。本実施形態のコイル挿入装置1において、ステータコア固定治具3は、ステータコア挿入孔31内に固定されたステータコア2の軸方向が水平方向になるように、コイル挿入装置1の基台11の中央部に固定される。
ステータコア固定治具3は、ステータコア挿入孔31内のステータコア2を所定の位置及び姿勢に固定する。詳しくは、ステータコア固定治具3は、図2に示すように、ステータコア2の6つの耳部23の位置に対応して、ステータコア挿入孔31内に対して突出及び後退するように移動可能な6つのコア押さえブロック32を有する。ステータコア固定治具3は、ステータコア挿入孔31内にステータコア2が挿入された後、コア押さえブロック32を、図示しないシリンダ等のアクチュエータの駆動によって、それぞれステータコア挿入孔31内に向けて突出させる。これによって、コア押さえブロック32は、図2に示すように、それぞれステータコア2の耳部23を把持し、ステータコア挿入孔31内のステータコア2を所定の位置及び姿勢に固定する。
ステータコア2のスロット22には、図3に示すように、それぞれ絶縁紙24が予め装着されている。絶縁紙24は、ステータコア2を軸方向から見たときのスロット22の略コ字状の内面形状に倣うように、略コ字状に折り曲げられて形成される。スロット22内に装着された絶縁紙24は、図4に示すように、スロット22からステータコア2の軸方向に所定の高さで突出するカフス部24aを有する。カフス部24aは、スロット22からステータコア2の軸方向の両外側にそれぞれ突出している。
図2に示すように、ステータコア2が固定されたステータコア固定治具3の軸方向の両端面3a,3aには、それぞれ複数のカフスガイド33が周方向に沿って一定の間隔で放射状に配列するように取り付けられる。カフスガイド33は、それぞれ図示しないシリンダ等のアクチュエータの駆動によって、ステータコア2の径方向に沿って移動可能に設けられる。カフスガイド33は、ステータコア2の径方向に沿って長尺な薄板状に形成される。カフスガイド33は、ステータコア固定治具3の内方に向けて開口し、絶縁紙24のカフス部24aを両側から挟持することによって、帯状コイル100の挿入時に、スロット22内の絶縁紙24を支持する。
コイル巻取治具4は、図2に示すように、略円筒状の治具本体41と、治具本体41の外周に放射状に突出する複数の櫛歯部42と、周方向に隣り合う櫛歯部42の間によって形成される複数の櫛歯状溝43と、治具本体41の中心に開口する軸孔44と、を有する。櫛歯部42及び櫛歯状溝43は、治具本体41の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる。治具本体41の両端部の櫛歯部42及び櫛歯状溝43のそれぞれの位相は軸方向に揃えられている。治具本体41の周方向に配列される櫛歯状溝43の数は、ステータコア2に設けられるスロット22の数に一致している。したがって、本実施形態のコイル巻取治具4は、72個の櫛歯状溝43を有する。コイル巻取治具4は、ステータコア2の円環部21の内側に挿入可能となるように、櫛歯部42の先端の位置によって規定されるコイル巻取治具4の外径が、ステータコア2の内径よりも小径になるように形成されている。
帯状コイル100は、コイル巻取治具4に円環状に巻き取られる。帯状コイル100は、図4に示すように、断面形状が略矩形状の銅、アルミニウム等の平角導線101によって形成される長尺帯状の連続する波巻コイルからなるコイルアッセンブリである。コイルアッセンブリとしては、波巻コイルの他に、略U字状に形成された複数のセグメントコイルを使用することも可能である。しかし、連続する波巻コイルは、コイルをステータコアのスロット内にセットする際、世間一般の主流である、コイルを複数のセグメントに分割成形し、スロット内挿入後にコイルエンドを溶接する技術を必要としないため、溶接箇所の熱加工に対応できるように、例えば、コイルに高純度の銅材を使用する必要がなくなる。そのため、不純物を含むリサイクル銅材を使用することも可能となり、資源の循環利用の実現に貢献することができる。しかも、波巻コイルは、溶接の必要がないため、コイルの軽量化が可能であり、このコイルを使用した回転電機の軽量化を図ることができる。回転電機がハイブリッドカーに搭載される場合、車両重量が軽量化されることによって、二酸化炭素の削減が可能であり、地球環境上の悪影響を軽減することができる。
帯状コイル100は、複数の直線部102と複数のコイルエンド部103とを有する。直線部102は、ステータコア2のスロット22内に挿入される部位であり、それぞれ略直線状に延びて一定の間隔で平行に配置される。コイルエンド部103は、直線部102よりも帯状コイル100の側端寄りの位置にそれぞれ配置され、隣り合う直線部102の一方端部同士と他方端部同士とを山型状に交互に連結する。コイルエンド部103は、帯状コイル100がステータコア2のスロット22に装着された際に、スロット22からステータコア2の軸方向にそれぞれ突出するように配置される部位である。本実施形態の帯状コイル100は、複数の直線部102と複数のコイルエンド部103とがそれぞれ折り曲げ形成された6本の平角導線101を、直線部102が一定の間隔で平行に並列するように束ねることによって、長尺帯状に形成される。
コイル巻取治具4は、ステータコア2の内側に挿入される前に、帯状コイル100の直線部102を櫛歯状溝43に順次挿入することによって、帯状コイル100を多重に巻き取っている。これによって、図2に示すように、帯状コイル100が円環状に巻き取られたコイル巻取治具4が構成される。
帯状コイル100を円環状に巻き取ったコイル巻取治具4は、ステータコア固定治具3を間に挟んでその両側にそれぞれ配置されるコイル拡径装置5によって、ステータコア挿入孔31内の所定の位置に所定の姿勢で保持される。本実施形態のコイル拡径装置5は、コイル拡径手段を構成する。コイル拡径装置5は、図1に示すように、ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4に対して軸方向から対向している。
図1及び図5に示すように、コイル挿入装置1には、ステータコア固定治具3を固定する基台11上に、ステータコア固定治具3を挟んで対面するように、一対の支持基板12,12が立設される。コイル拡径装置5は、支持基板12からステータコア2の内側に挿入されるコイル巻取治具4に向けてそれぞれ水平方向に突出している。コイル拡径装置5は、支持基板12が図示しないモータ等の駆動によって基台11上を直線的に移動することによって、コイル巻取治具4に対して当接する方向及び離隔する方向にそれぞれ移動可能に設けられる。
コイル拡径装置5は、図5及び図7に示すように、支持基板12からステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4に向けて延びる主軸部51を中心に有する。主軸部51の先端には、ステータコア2の内側においてコイル巻取治具4を所定の位置及び姿勢に保持する保持部52が設けられる。保持部52は、主軸部51の先端に配置される円形状の端板部521の中心から突出する軸突部522と、軸突部522の径方向外側の端板部521から軸突部522と同一方向に突出する1つの位置決め突部523と、を有する。軸突部522は、コイル巻取治具4の軸孔44に嵌合する。位置決め突部523は、コイル巻取治具4の軸孔44の径方向外側に設けられる1つの位置決め孔45に嵌合する。
コイル巻取治具4の位置決め孔45及び保持部52の位置決め突部523は、互いに嵌合した際に、ステータコア固定治具3に固定されるステータコア2のスロット22の位相と、ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4の櫛歯状溝43の位相とが一致するように、予め位置決めされて設けられている。したがって、コイル拡径装置5がステータコア固定治具3に向けて移動し、コイル巻取治具4の軸孔44及び位置決め孔45と保持部52の軸突部522及び位置決め突部523とが嵌合すると、図6に示すように、コイル巻取治具4は、ステータコア2のスロット22に対して櫛歯状溝43の位相を合わせた状態で保持される。これによって、ステータコア2のスロット22の内部とコイル巻取治具4の櫛歯状溝43の内部とが、径方向に連通する。
コイル拡径装置5は、主軸部51の外周側にコイル押圧部53を有する。コイル押圧部53は、主軸部51の外周側に嵌合する可動筒部531と、可動筒部531のさらに外周側に配置される複数の可動腕部532と、可動腕部532の先端にそれぞれ設けられる複数の駒部材533と、を有する。
可動筒部531は、主軸部51の長さよりも短い長さを有し、支持基板12の後方に配置されるシリンダ等のアクチュエータ54の駆動によって、主軸部51の軸方向に沿って摺動可能に設けられる。
可動腕部532は、主軸部51の軸方向に沿って延び、可動筒部531の外周側において周方向に一定の間隔をおいて複数配置される。本実施形態のコイル押圧部53は、主軸部51の周方向に沿って配列される12本の可動腕部532を有する。支持基板12の表面には、主軸部51を中心にして径方向外側に向けて放射状に配列される12本のガイドレール121が設けられる。可動腕部532の後端532bは、それぞれガイドレール121に沿って移動可能に取り付けられる。可動腕部532は、ガイドレールから可動筒部531の軸方向に沿って屈曲して保持部52の外周近傍まで延びている。可動腕部532の先端532aは、それぞれ回動可能に取り付けられる2つずつのリンク部534を介して、可動筒部531の先端側の外周面に連結される。
駒部材533は、図8~図11に示すように、略扇形状を有し、可動腕部532の先端にそれぞれ1つずつ設けられる。したがって、本実施形態のコイル押圧部53は、円環状に配置される12個の駒部材533を有する。駒部材533は、コイル押圧部53の周方向(円環状の複数の駒部材533の周方向)の一方端部に一対の係合突片533aをそれぞれ有し、周方向の他方端部に、一対の係合突片533aと係合する一対の係合溝533bをそれぞれ有する。一対の係合突片533aは、コイル押圧部53の軸方向に平行に配置され、それぞれコイル押圧部53の外周面530に連続して周方向に向けて平行に突出している。12個の駒部材533は、周方向に隣り合う駒部材533,533の一対の係合突片533aと一対の係合溝533bとが互いに係合し合うことによって、保持部52の外周側に円環状に配列される。なお、コイル押圧部53における周方向は、図8~図11中に示すC方向である。
図5は、可動筒部531が主軸部51の後端側(支持基板12側)に後退した状態を示す。このとき、可動腕部532は、それぞれ放射状のガイドレール121の内方端側に移動し、可動筒部531の外周面に最も近接するように配置される。これによって、コイル押圧部53は、図8及び図9に示すように、12個の駒部材533を互いに密接させて最も縮径した状態とされる。駒部材533が縮径したときのコイル押圧部53の外径は、帯状コイル100が巻き取られたコイル巻取治具4から軸方向に円筒状に突出するコイルエンド部103の内径よりも小さい。コイル拡径装置5は、コイル押圧部53の複数の駒部材533が縮径した状態で、コイル巻取治具4の軸方向に円筒状に突出するコイルエンド部103に挿入され、保持部52によってコイル巻取治具4を保持する。
可動筒部531が、アクチュエータ54の駆動によって、主軸部51に沿ってコイル巻取治具4に向けて前進すると、可動筒部531に連結されるリンク部534が、それぞれ可動筒部531の径方向外側に向けて張り出すように回動し、可動腕部532をガイドレールに沿ってそれぞれ外側に平行移動させる。これによって、12本の可動腕部532は、可動筒部531から径方向外側に離隔する。このとき、コイル押圧部53は、図10及び図11に示すように、隣り合う駒部材533を互いに広げるように移動させて最も拡径した状態とされる。拡径したときのコイル押圧部53の外径は、コイル巻取治具4の外径よりも大きい。コイル押圧部53が拡径することによって、コイルエンド部103を内方から外方に向けて移動させる。
なお、図9及び図11に示すように、コイル押圧部53が最も拡径した際、隣り合う駒部材533,533同士は離隔するが、駒部材533,533間には一対の係合突片533aが周方向に張り出している。係合突片533aは、隣の駒部材533の係合溝533bから完全に抜け出ておらず、係合溝533bに対する係合を維持している。そのため、拡径した円環状の複数の駒部材533は、周方向に連続する閉じた外周面530を有する。したがって、コイル押圧部53を周方向に見た場合、隣り合う駒部材533,533の間は一対の係合突片533aによって連続し、コイル押圧部53を径方向に貫通するような溝部(間隙)は形成されない。
コイル拡径装置5は、図1、図5~図7に示すように、さらに、制限部55を有する。本実施形態の制限部55は円筒状に形成されるが、制限部55は、中央部が円形に開口する板状に形成されてもよい。制限部55は、周方向に複数に分割されてもよい。この場合、制限部55は、ステータコア2に対して径方向に移動可能に設けられてもよい。なお、この制限部55は、図2では省略されている。図6において、ステータコア固定治具3は省略されている。
制限部55は、帯状コイル100のコイルエンド部103の外側において、ステータコア2と同芯状に配置される。詳しくは、制限部55は、図5及び図6に示すように、ステータコア2の軸方向の両端面2a,2aにおいて、円環状の帯状コイル100の外側を全周に亘って包囲するように、コイル巻取治具4に巻き取られた巻回状態の帯状コイル100と同芯状に配置される。本実施形態において、制限部55の内周面55aは、ステータコア2のスロット22の外径側の位置よりもやや外側に配置されている。
本実施形態の制限部55は、ステータコア2がステータコア固定治具3に取り付けられた後のステータコア2の両端面2a,2aに、例えば、図示しない装着機構によって、複数のカフスガイド33を端面2aとの間に挟むようにそれぞれ装着される。また、制限部55は、図示しないが、コイル拡径装置5のコイル押圧部53の外周に同芯状に配置され、コイル押圧部53が帯状コイル100の内側に挿入されたときに、同時に帯状コイル100の外側に配置されるように構成されてもよい。
制限部55は、ステータコア2のスロット22の外側に配置され、後述するように、拡径するコイル押圧部53によって帯状コイル100がスロット22内に挿入された際に、コイルエンド部103をコイル押圧部53の駒部材533との間で挟持する。本実施形態の制限部55の内周面55aは、ステータコア2の端面2aに対して垂直な面を形成している。この内周面55aは、帯状コイル100の移動方向に対して垂直な面であり、ステータコア2の軸方向Zに平行な面である。
次に、コイル挿入装置1において、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100を、ステータコア固定治具3に固定されたステータコア2の内側からスロット22に挿入する方法について、図12A~図12D、図13を参照して説明する。なお、図12A~図12Dは、ステータコア2の一方の端面2a側のみを示す。
まず、帯状コイル100を円環状に巻き取ったコイル巻取治具4がステータコア固定治具3に固定されたステータコア2の内側に挿入される。その後は、カフスガイド33が、図示しないアクチュエータの駆動によって径方向内側に向けて移動し、スロット22内の絶縁紙24のカフス部24aを挟持して支持する。これによって、絶縁紙24は、それぞれスロット22内の所定の位置に位置決めされる。
ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4は、図5及び図7に示すように、一対のコイル拡径装置5がコイル巻取治具4に向けてそれぞれ移動することによって、コイル拡径装置5の保持部52によって挟持されて保持される。このとき、コイル押圧部53の駒部材533は、図8及び図9に示したように、円環状の帯状コイル100の内径よりも縮径した状態であり、帯状コイル100のコイルエンド部103の内側にそれぞれ挿入される。
その後、コイル押圧部53の駒部材533が、アクチュエータ54の駆動によって、図10及び図11に示したように、縮径状態から拡径するように移動する。これによって、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100のコイルエンド部103は、コイル押圧部53の駒部材533によって内方から外方に向けて押圧される。コイル押圧部53によって押圧された帯状コイル100は全周に亘って徐々に拡張する。これに伴い、直線部102は、コイル巻取治具4の櫛歯状溝43にガイドされながら、櫛歯状溝43と連通するステータコア2のスロット22に向けて移動する。帯状コイル100の直線部102は、ステータコア2のスロット22に干渉することなく、スロット22の開口部22aからスロット22内に挿入される(図12A)。
さらにコイル押圧部53が拡径すると、帯状コイル100のコイルエンド部103は、コイル押圧部53の駒部材533に押圧されてスロット22の外径側の端部に当接する。制限部55の内周面55aは、スロット22の外径側の位置よりもやや外側に配置されているため、コイルエンド部103と制限部55の内周面55aとの間は、僅かに離隔している(図12B)。
コイルエンド部103がスロット22の外径側の端部に当接した後、コイルエンド部103がさらに押圧されると、コイルエンド部103は径方向外側に傾くように変形しつつ、制限部55の内周面55aに当接する(図12C)。
その後、コイルエンド部103は、拡径するコイル押圧部53の駒部材533の押圧力によって制限部55の内周面に押し付けられる。これによって、コイルエンド部103は、駒部材533と制限部55との間で挟持される(図12D)。
コイルエンド部103が、駒部材533と制限部55との間で挟持されたとき、図13に示すように、コイルエンド部103の外径側の位置は、制限部55の内周面55aによって規定される外径規制位置Yaに制限される。制限部55は、スロット22の外側に位置不動に配置されているため、コイルエンド部103は、コイル押圧部53の駒部材533の外周面530と制限部55の内周面55aの間で挟持されることよって、径方向外側の制限部55の内周面55aに向けて圧縮される。圧縮されたコイルエンド部103の内径側の位置は、圧縮前の内径基準位置Ybよりも径方向外側に移動する。
コイルエンド部103が、拡径するコイル押圧部53の駒部材533と制限部55との間で所定時間圧縮されることによって、コイルエンド部103には塑性変形以上の応力が掛けられる。これによって、拡径によってコイルエンド部103に発生する残留応力の方向が変化し、スプリングバックが打ち消される。その結果、スロット22内に挿入された帯状コイル100がスプリングバックによって内方に戻ろうとすることが抑制される。また、コイルエンド部103の外方への移動が制限部55によって制限されるため、移動方向前方側の帯状コイル100のバラケの発生が抑制されるとともに、スロット22内に積層される直線部102間の隙間も解消される。さらに、直線部102がスロット22内で絶縁紙24の背部24bに過度に突き当たることが抑制されるため、絶縁紙24の潰れも抑制される。
これによって、図14に示すように、帯状コイル100の戻りが抑制されたステータ200が得られる。
制限部55の内周面55aは、ステータコア2の端面2aに対して垂直な面であるため、コイルエンド部103に対して均等に押圧力を掛けることができるとともに、コイルエンド部103をステータコア2の端面2aに整然とレイアウトすることができる。しかし、制限部55の内周面55aは、垂直な面に限定されない。内周面55aは、ステータコア2の端面2aから軸方向に離れるに従って径方向外側に傾斜する傾斜面であってもよい。
図15A、図15Bは、内周面55aが傾斜面である制限部55に対してコイルエンド部103を押圧する様子を示している。コイル押圧部53の駒部材533によって押圧されたコイルエンド部103は、制限部55の傾斜した内周面55aの下端縁(ステータコア2の端面2a側の端縁)に当接する(図15A)。その後、コイルエンド部103がさらに押圧されると、コイルエンド部103が制限部55の傾斜した内周面55aに沿って径方向外側に傾斜しながら圧縮される(図15B)。圧縮されたコイルエンド部103は、ステータコア2の端面2aから軸方向に離れるに従って、径方向外側に傾斜した形状に形成される。そのため、コイルエンド部103の突出高さが抑制されるとともに、コイルエンド部103の内径側の空間(ローター挿入空間等)を容易に確保することができる。
このような制限部55を使用する場合は、コイル押圧部53の駒部材533の外周面も、制限部55の内周面55aと同様に、ステータコア2の端面2aから軸方向に離れるに従って径方向外側に傾斜する傾斜面によって構成されていてもよい。
以上要するに、本実施形態のコイル挿入装置1によれば、以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態のコイル挿入装置1は、巻回状態の帯状コイル100を、ステータコア2の内方から拡径することによって、ステータコア2のスロット22へ挿入するコイル拡径装置5を有する装置である。コイル拡径装置5は、帯状コイル100の内側に配置され、帯状コイル100のコイルエンド部103を内方から外方に向けて押圧して拡径させるコイル押圧部53と、帯状コイル100の外側に配置され、コイル押圧部53によって拡径されるコイルエンド部103の外方への移動を制限するとともに、コイル押圧部53との間で、スロット22に挿入された帯状コイル100のコイルエンド部103を挟持する制限部55と、を備える。これによれば、スロット22に挿入された帯状コイル100のコイルエンド部103を、コイル押圧部53と制限部55との間で挟持することによって、コイルエンド部103に発生するスプリングバックを打ち消すことができる。そのため、スロット22への挿入後のコイルエンド部103のスプリングバックによる帯状コイル100の内方への戻りを抑制することができ、コイル挿入作業の作業性を向上させることができる。コイル押圧部53と制限部55との間でコイルエンド部103が挟持されることによって、スロット22内に積層される帯状コイル100の直線部102間の隙間も解消される。直線部102がスロット22内で絶縁紙24の背部24bに過度に突き当たることが抑制されるため、絶縁紙24の潰れも抑制される。
制限部55の内周面55aが、ステータコア2の端面2aに対して垂直な面である場合は、コイルエンド部103に対して均等に押圧力を掛けることができるとともに、コイルエンド部103をステータコア2の端面2aに整然とレイアウトすることができる。
制限部55の内周面55aが、ステータコア2の端面2aから離れるに従って径方向外側に傾斜する傾斜面である場合は、コイルエンド部103の突出高さを抑制することができるとともに、コイルエンド部103の内径側の空間を容易に確保することができる。
さらに、本実施形態のコイル挿入方法によれば、以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態のコイル挿入方法は、巻回状態の帯状コイル100を、ステータコア2の内方から拡径することによって、ステータコア2のスロット22へ挿入する方法である。帯状コイル100の内側に配置したコイル押圧部53によって、帯状コイル100のコイルエンド部103を内方から外方に向けて押圧して拡径させ、帯状コイル100をスロット22に挿入する工程と、コイル押圧部53によって拡径されるコイルエンド部103の外方への移動を、コイルエンド部103の外側に配置した制限部55によって制限するとともに、コイル押圧部53と制限部55との間で、スロット22に挿入された帯状コイル100のコイルエンド部103を挟持する。これによれば、スロット22に挿入された帯状コイル100のコイルエンド部103を、コイル押圧部53と制限部55との間で挟持することによって、コイルエンド部103に発生するスプリングバックを打ち消すことができる。そのため、スロット22への挿入後のコイルエンド部103のスプリングバックによる帯状コイル100の内方への戻りを抑制することができ、コイル挿入作業の作業性を向上させることができる。コイル押圧部53と制限部55との間でコイルエンド部103が挟持されることによって、スロット22内に積層される帯状コイル100の直線部102間の隙間も解消される。直線部102がスロット22内で絶縁紙24の背部24bに過度に突き当たることが抑制されるため、絶縁紙24の潰れも抑制される。
以上説明した実施形態のコイル挿入装置1は、ステータコア2及びコイル巻取治具4の軸方向が水平方向に配置されるように構成されるが、ステータコア2及びコイル巻取治具4の軸方向が垂直方向等の水平方向以外の方向に配置されるように構成されてもよい。
1 コイル挿入装置
2 ステータコア
2a 端面
22 スロット
5 コイル拡径装置(コイル拡径手段)
53 コイル押圧部
55 制限部
55a 内周面
100 帯状コイル(コイルアッセンブリ)
103 コイルエンド部
2 ステータコア
2a 端面
22 スロット
5 コイル拡径装置(コイル拡径手段)
53 コイル押圧部
55 制限部
55a 内周面
100 帯状コイル(コイルアッセンブリ)
103 コイルエンド部
Claims (4)
- 巻回状態のコイルアッセンブリを、ステータコアの内方から拡径することによって、前記ステータコアのスロットへ挿入するコイル拡径手段を有するコイル挿入装置であって、
前記コイル拡径手段は、
前記コイルアッセンブリの内側に配置され、前記コイルアッセンブリのコイルエンド部を内方から外方に向けて押圧して拡径させるコイル押圧部と、
前記コイルアッセンブリの外側に配置され、前記コイル押圧部によって拡径される前記コイルエンド部の外方への移動を制限するとともに、前記コイル押圧部との間で、前記スロットに挿入された前記コイルアッセンブリの前記コイルエンド部を挟持する制限部と、を備える、コイル挿入装置。 - 前記制限部の内周面は、前記ステータコアの端面に対して垂直な面である、請求項1に記載のコイル挿入装置。
- 前記制限部の内周面は、前記ステータコアの端面から離れるに従って径方向外側に傾斜する傾斜面である、請求項1に記載のコイル挿入装置。
- 巻回状態のコイルアッセンブリを、ステータコアの内方から拡径することによって、前記ステータコアのスロットへ挿入するコイル挿入方法であって、
前記コイルアッセンブリの内側に配置したコイル押圧部によって、前記コイルアッセンブリのコイルエンド部を内方から外方に向けて押圧して拡径させ、前記コイルアッセンブリを前記スロットに挿入する工程と、
前記コイル押圧部によって拡径される前記コイルエンド部の外方への移動を、前記コイルエンド部の外側に配置した制限部によって制限するとともに、前記コイル押圧部と前記制限部との間で、前記スロットに挿入された前記コイルアッセンブリの前記コイルエンド部を挟持する、コイル挿入方法。
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