JP2023042306A - 溶接トーチ - Google Patents
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Abstract
【課題】TIG溶接法およびプラズマ溶接法を使い分けて兼用することが可能な溶接トーチを提供する。
【解決手段】溶接トーチA1は、軸線CL方向に延びる非消耗電極25と、非消耗電極25に対して径方向の外側に同心円状に配置され、かつ着脱可能である内側ノズル35と、内側ノズル35に対して径方向の外側に同心円状に配置された外側ノズル36と、を備え、非消耗電極25と内側ノズル35との間には、第1ガス流路G1が形成され、内側ノズル35と外側ノズル36との間には、第2ガス流路G2が形成されており、内側ノズル35が取り付けられた状態で溶接を行う第1溶接状態と、内側ノズル35が取り外された状態で溶接を行う第2溶接状態と、に切り替え可能である。
【選択図】図10
【解決手段】溶接トーチA1は、軸線CL方向に延びる非消耗電極25と、非消耗電極25に対して径方向の外側に同心円状に配置され、かつ着脱可能である内側ノズル35と、内側ノズル35に対して径方向の外側に同心円状に配置された外側ノズル36と、を備え、非消耗電極25と内側ノズル35との間には、第1ガス流路G1が形成され、内側ノズル35と外側ノズル36との間には、第2ガス流路G2が形成されており、内側ノズル35が取り付けられた状態で溶接を行う第1溶接状態と、内側ノズル35が取り外された状態で溶接を行う第2溶接状態と、に切り替え可能である。
【選択図】図10
Description
本発明は、溶接トーチに関する。
非消耗電極を備えた溶接トーチを用いて行う溶接(TIG溶接法やプラズマ溶接法)では、通常、タングステンで形成された電極(非消耗電極)と被溶接物との間にアークを発生させ、そのアークの熱で被溶接物を溶融する。TIG溶接法では、ガスノズルと電極の間にシールドガスが流される(たとえば特許文献1を参照)。プラズマ溶接法では、シールドガスに加えて、電極の周囲に配置されたインサートチップの内部にプラズマガスを流すとことで、アーク(プラズマアーク)が拘束される。その結果、集中性の良い高温プラズマ流が発生され、その保有エネルギを利用して溶接を行う(たとえば特許文献1を参照)。
一般的に、プラズマ溶接法は、TIG溶接法と比べて溶接強度や溶接能力が高く、溶接速度も速い高効率な溶接が可能である。その一方、プラズマ溶接トーチにシールドガスとプラズマガスをそれぞれ個別に供給する必要があり、溶接装置全体の構成が大掛かりになりやすい。TIG溶接法では、プラズマ溶接法と比べて溶接強度や溶接能力が劣るものの、使用する溶接用ガスはシールドガスのみであり、溶接装置全体としてはプラズマ溶接法よりも簡単な構成とすることが可能である。溶接を行う作業現場では、特徴の異なる上述のTIG溶接法およびプラズマ溶接法を使い分けて溶接作業を行う場合がある。このようにTIG溶接法およびプラズマ溶接法を使い分ける場合、通常、それぞれ専用のTIG溶接トーチおよびプラズマ溶接トーチと、それらの付帯設備とが必要であり、溶接トーチや溶接設備の導入コストの高騰化を招いてしまう。
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、TIG溶接法およびプラズマ溶接法を使い分けて兼用することが可能な溶接トーチを提供することを主たる課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
本発明によって提供される溶接トーチは、軸線方向に延びる非消耗電極と、前記非消耗電極に対して径方向の外側に同心円状に配置され、かつ着脱可能である内側ノズルと、前記内側ノズルに対して径方向の外側に同心円状に配置された外側ノズルと、を備え、前記非消耗電極と前記内側ノズルとの間には、第1ガス流路が形成され、前記内側ノズルと前記外側ノズルとの間には、第2ガス流路が形成されており、前記内側ノズルが取り付けられた状態で溶接を行う第1溶接状態と、前記内側ノズルが取り外された状態で溶接を行う第2溶接状態と、に切り替え可能である。
好ましい実施の形態においては、前記第1ガス流路に通じる第1ガス入口と、前記第2ガス流路に通じる第2ガス入口と、を有し、前記第1ガス入口に導入されるガスの流量、および前記第2ガス入口に導入されるガスの流量は、それぞれ個別に調整される。
好ましい実施の形態においては、前記非消耗電極を保持するコレットボディを備え、前記内側ノズルが、前記コレットボディに対して前記軸線方向における一方側に着脱可能に取り付けられる。
好ましい実施の形態においては、前記コレットボディに対して前記軸線方向における他方側に配置され、かつ前記コレットボディを支持するトーチボディを備え、前記トーチボディは、前記第1ガス入口および前記第2ガス入口を有する。
好ましい実施の形態においては、前記内側ノズルの先端は、前記外側ノズルの先端から前記軸線方向の一方側に0~5mmの範囲で突出している。
好ましい実施の形態においては、前記非消耗電極の先端は、前記内側ノズルの先端から前記軸線方向の一方側に0~2mmの範囲で突出している。
本発明に係る溶接トーチは、軸線方向に延びる非消耗電極と、内側ノズルと、外側ノズルと、を備えている。内側ノズルは、非消耗電極の外側に同心円状に配置され、かつ着脱可能であり、非消耗電極と内側ノズルとの間には、第1ガス流路が形成されている。外側ノズルは、内側ノズルの径方向外側に同心円状に配置されており、内側ノズルと外側ノズルとの間には、第2ガス流路が形成されている。このような構成によれば、内側ノズルが取り付けられた状態では、溶接作業時において、第1ガス流路および第2ガス流路の双方にガスを供給すると、第1ガス流路を流れて内側ノズルの先端から噴出するガスがプラズマガスとして機能し、かつ第2ガス流路を流れて外側ノズルの先端から噴出するガスがシールドガスとして機能する。したがって、内側ノズルが取り付けられた状態では、溶接用ガスとしてプラズマガスおよびシールドガスを使用したプラズマ溶接を行うことができる。一方、内側ノズルが取り外された状態では、溶接作業時において、たとえば第2ガス流路にのみガスを供給すると、第2ガス流路を流れて外側ノズルの先端から噴出するガスがシールドガスとして機能する。したがって、内側ノズルが取り外された状態では、溶接用ガスとしてシールドガスのみを使用したTIG溶接を行うことができる。このように、本発明に係る溶接トーチは、内側ノズルが取り付けられた状態で溶接(プラズマ溶接)を行う第1溶接状態と、内側ノズルが取り外された状態で溶接(TIG溶接)を行う第2溶接状態と、に切り替え可能である。したがって、本発明の溶接トーチによれば、TIG溶接法およびプラズマ溶接法を使い分けて兼用することが可能である。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は、本発明に係る溶接トーチを備えた溶接システムの概略構成を示す図である。図2は、本発明に係る溶接トーチの一例を示す斜視図である。図3は、図2に示す溶接トーチの平面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。図6は、図4のVI-VI線に沿う拡大断面図である。図7は、図4のVII-VII線に沿う拡大断面図である。図8は、図4のVIII-VIII線に沿う拡大断面図である。図9は、図4の部分拡大図である。
図1に示す溶接システムB1は、被溶接物9に対して溶接を行うためのものである。被溶接物9は、金属よりなる板材である。より具体的には、被溶接物9は、たとえば亜鉛めっき鋼板などの低溶融金属よりなる板材である。図1に示す溶接システムB1は、ロボット1と、溶接トーチA1と、電源部4と、制御部5と、ガス供給源6と、第1ガス調整部71と、第2ガス調整部72と、ガス配管8と、を備えている。
ロボット1は、マニピュレータ11を備えており、たとえば多関節ロボットである。溶接トーチA1は、マニピュレータ11に支持されている。マニピュレータ11が駆動することにより、溶接トーチA1が上下前後左右に自在に移動できる。
電源部4は、溶接トーチA1に電力を供給するものである。被溶接物9には、電源部4が接続されている。ガス供給源6は、溶接トーチA1に所定の溶接用ガスを供給するためのものである。本実施形態において、ガス供給源6は、不活性ガスを高圧状態で貯留するガスボンベである。ガス供給源6に貯留された不活性ガスのガス種は特に限定されず、たとえばアルゴン(Ar)ガスおよびヘリウム(He)ガスより選択される少なくとも1種のガスである。本実施形態において、ガス供給源6に貯留された不活性ガスは、アルゴンガスである。
ガス配管8は、ガス供給源6から溶接トーチA1へ不活性ガスを送るためのガス流路である。本実施形態では、ガス配管8は、二手に分岐して延びる第1ガス配管81および第2ガス配管82を含む。第1ガス配管81は、第1不活性ガスを溶接トーチA1へ送るためのガス流路である。第2ガス配管82は、第2不活性ガスを溶接トーチA1へ送るためのガス流路である。
第1ガス調整部71は、第1ガス配管81に設けられており、たとえば電磁弁および流量計を含んで構成される。本実施形態において、当該電磁弁は、溶接作業の際、適宜開度調整がなされる。本実施形態では、上記ガス供給源6から供給される不活性ガスは、第1ガス調整部71により流量が調整されて、第1不活性ガスとして溶接トーチA1へ送られる。
第2ガス調整部72は、第2ガス配管82に設けられており、たとえば電磁弁および流量計を含んで構成される。本実施形態において、当該電磁弁は、溶接作業の際、適宜開度調整がなされる。本実施形態では、上記ガス供給源6から供給される不活性ガスは、第2ガス調整部72により流量が調整されて、第2不活性ガスとして溶接トーチA1へ送られる。
制御部5は、非消耗電極25と被溶接物9との間の電圧の制御や、第1ガス調整部71および第2ガス調整部72の電磁弁の開度の制御を行う。制御部5は、第1ガス調整部71における電磁弁の開度と、第2ガス調整部72における電磁弁の開度とを、別々に制御する。
図2~図9に示すように、溶接トーチA1は、トーチボディ20、非消耗電極25、リアコレット26、リアコレットボディ27、コレット押え部材28、コレット29、コレットボディ30、カバー32、ロックナット33、絶縁リング34、内側ノズル35、外側ノズル36およびノズルホルダ37を備えて構成されている。
本実施形態において、トーチボディ20は、ブロック部材21、第1筒状部材22、第2筒状部材23および第3筒状部材24を含む。第2筒状部材23は、第1筒状部材22の径方向外側に配置されている。第3筒状部材24は、第2筒状部材23の径方向外側に配置されている。これら第1筒状部材22、第2筒状部材23および第3筒状部材24は、同心円状に配置されている。ブロック部材21は、第1筒状部材22、第2筒状部材23および第3筒状部材24を支持している。本実施形態では、ブロック部材21に第1筒状部材22が挿通された状態で、ブロック部材21は第1筒状部材22、第2筒状部材23および第3筒状部材24を支持している。第1筒状部材22、第2筒状部材23および第3筒状部材24は、たとえばろう付け等の適宜手段により、ブロック部材21と一体に連結されている。ブロック部材21は、電源部4からの電力供給を受ける部材であり、導電性材料よりなる。ブロック部材21を構成する導電性材料としては、たとえば銅が挙げられる。第1筒状部材22、第2筒状部材23および第3筒状部材24は、導電性材料よりなる。第1筒状部材22、第2筒状部材23および第3筒状部材24を構成する導電性材料としては、たとえば銅が挙げられる。
非消耗電極25は、軸線CLに沿って延びる棒状の導体である。非消耗電極25は、たとえばタングステンからなる。非消耗電極25は、たとえばコンジットケーブル(図示略)を介して電源部4に接続されており、被溶接物9との間にアーク電圧を印加した際には被溶接物9との間にアークを発生させる。
非消耗電極25は、電極主部251および電極テーパー部252を有する。電極主部251は、外径寸法が一定とされた部位であり、非消耗電極25の先端を除いた大部分を占める。なお、電極主部251は、設計上において外径寸法が一定となるように略円柱状に形成された部位であり、製造上における多少の誤差を含み得る。電極主部251の外径寸法は特に限定されず、本実施形態においては、たとえば約3.2mmである。電極テーパー部252は、電極主部251に対して非消耗電極25の先端側(軸線CL方向の一方側)につながっている。電極テーパー部252は、非消耗電極25の先端側(軸線CL方向の一方側)に向かうにつれて径寸法が小とされており、略円錐形状である。
リアコレット26、リアコレットボディ27、コレット押え部材28、コレット29、およびコレットボディ30は、これらが互いに協働することにより非消耗電極25を保持するものである。リアコレット26、リアコレットボディ27、コレット押え部材28、コレット29、およびコレットボディ30は、導電性材料よりなる。リアコレット26、リアコレットボディ27、コレット押え部材28、コレット29、およびコレットボディ30を構成する導電性材料としては、たとえば銅が挙げられる。
リアコレット26およびコレット29は、非消耗電極25を囲んでいる。リアコレット26は、非消耗電極25の基端寄り(軸線CL方向の他方側:図4、図5における図中上側)に配置されている。コレット29は、非消耗電極25の先端寄り(軸線CL方向の一方側:図4、図5における図中下側)に配置されている。
リアコレットボディ27は、リアコレット26の径方向外側に配置されている。また、リアコレットボディ27は、第1筒状部材22の径方向内側に配置されている。詳細な図示説明は省略するが、リアコレットボディ27は、第1筒状部材22に対してねじ部が螺合している。リアコレットボディ27の軸線CL方向における他方側(図4、図5における図中上側)には摘み部271が設けられている。この摘み部271を回すことによって、リアコレットボディ27は、第1筒状部材22に対する軸線CL方向の位置の調整が可能である。リアコレットボディ27の軸線CL方向における一方側端は、コレット29の軸線CL方向における他方側端に当接している。リアコレットボディ27を軸線CL方向の一方側に移動させると、コレット29は軸線CLの一方側に押し付けられる。コレットボディ30は、コレット29の径方向外側に配置されている。コレットボディ30は、トーチボディ20に対して軸線CL方向の一方側に配置されている。コレットボディ30の軸線CL方向における他方側端は、第1筒状部材22の軸線CL方向の一方側に、たとえばねじ接続されている。これにより、コレットボディ30は、トーチボディ20(第1筒状部材22)に支持されている。
コレット押え部材28は、リアコレットボディ27の径方向内側に配置されている。詳細な図示説明は省略するが、コレット押え部材28は、リアコレットボディ27に対してねじ部が螺合している。コレット押え部材28の軸線CL方向における他方側(図4、図5における図中上側)には摘み部281が設けられている。この摘み部281を回すことによって、コレット押え部材28は、リアコレットボディ27に対する軸線CL方向の位置の調整が可能である。コレット押え部材28の軸線CL方向における一方側端は、リアコレット26の軸線CL方向における他方側端に当接している。コレット押え部材28を軸線CL方向の一方側に移動させると、リアコレット26は軸線CLの一方側に押し付けられる。
リアコレット26およびコレット29は、それぞれ、先端側(軸線CL方向の一方側:図4、図5における図中下側)において軸線CL方向に延びる複数のスリットが形成されており、隣接する相互のスリットの間に位置する複数ずつの可動片261,291を有する。上述のように、リアコレットボディ27を軸線CL方向の一方側に移動させると、コレット29は軸線CLの一方側に押し付けられる。そして、コレット29先端の複数の可動片291がコレットボディ30の先端部に押し付けられて縮径し、コレット29が非消耗電極25を挟んで保持する。また、上述のように、コレット押え部材28を軸線CL方向の一方側に移動させると、リアコレット26は軸線CLの一方側に押し付けられる。そして、リアコレット26先端の複数の可動片261がリアコレットボディ27の先端内周部に押し付けられて縮径し、リアコレット26が非消耗電極25を挟んで保持する。このように、リアコレット26、リアコレットボディ27、コレット押え部材28、コレット29、およびコレットボディ30が互いに協働することによって、非消耗電極25が強固に保持される。
カバー32は、絶縁性材料からなる筒状部材であり、第3筒状部材24を覆っている。ロックナット33は、第3筒状部材24の下端(図4、図5における図中下方側端)にねじ接続されており、かつカバー32の下端に当接している。
図4、図5に示すように、内側ノズル35は、非消耗電極25の先端寄り(軸線CL方向の一方側)の周囲に配置されている。内側ノズル35は、略円筒状とされており、非消耗電極25(電極主部251)の径方向外側に同心円状に配置されている。本実施形態では、内側ノズル35は、コレットボディ30に対してねじ接続により着脱可能に取り付けられている。たとえば、図9に示すように、コレットボディ30の下端側(軸線CL方向の一方側)の外周にはねじ部301が形成され、かつ内側ノズル35の上端側(軸線CL方向の他方側)の内周にはねじ部351が形成されており、内側ノズル35のねじ部351がコレットボディ30のねじ部301に螺合している。これにより、内側ノズル35は、コレットボディ30に対して軸線CL方向の一方側に着脱可能に取り付けられる。
本実施形態において、非消耗電極25の先端は、軸線CL方向において内側ノズル35の先端と一致する、あるいは内側ノズル35の先端から軸線CL方向の一方側に少し突出している。非消耗電極25の先端が内側ノズル35の先端から軸線CL方向の一方側に突出する突出長さP1は、0~2mmの範囲である。
ノズルホルダ37は、筒状とされている。ノズルホルダ37は、コレットボディ30の軸線CL方向の中間部の外周に、たとえばろう付け等の手段によって一体に連結されている。
図4、図5に示すように、外側ノズル36は、内側ノズル35の径方向外側に配置されている。図示した例では、外側ノズル36は、概略円筒状とされており、先端側(軸線CL方向の一方側)が他の部位と比べて小径とされている。本実施形態において、外側ノズル36は、非消耗電極25および内側ノズル35に対して同心円状に配置されている。外側ノズル36は、ノズルホルダ37の外周にねじ接続により取り付けられている。
図4、図9等に示すように、本実施形態において、内側ノズル35の先端は、外側ノズル36の先端から軸線CL方向の一方側に突出している。内側ノズル35の先端が外側ノズル36の先端から軸線CL方向の一方側に突出する突出長さP2は、0~5mmの範囲である。
絶縁リング34は、絶縁性材料からなる筒状部材である。絶縁リング34は、軸線CL方向においてロックナット33と外側ノズル36との間に介在している。
図4~図9に示すように、本実施形態において、溶接トーチA1には、第1ガス流路G1、第2ガス流路G2および冷却水流路Wが形成されている。
第1ガス流路G1は、第1不活性ガスを流すための流路である。図4、図5、図9において、第1ガス流路G1における第1不活性ガスの流れを二点鎖線の矢印で示す。第1ガス流路G1は、リアコレットボディ27と第1筒状部材22との間、コレット29とコレットボディ30との間、非消耗電極25(電極主部251)とコレット29との間、非消耗電極25(電極主部251)とコレットボディ30との間、および非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル35との間、にそれぞれ形成されている。
本実施形態では、図5に示すように、トーチボディ20(第1筒状部材22の上端部)には、第1不活性ガスを導入する第1ガス入口221が設けられている。第1ガス入口221は第1ガス流路G1に通じている。第1ガス入口221から第1不活性ガスが導入されると、当該第1不活性ガスは、第1ガス流路G1において軸線CL方向の他方側から一方側に流れ、非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル35との間を通過した後に内側ノズル35の先端の開口352から噴出する。
第2ガス流路G2は、第2不活性ガスを流すための流路である。図4、図5、図9において、第2ガス流路G2における第2不活性ガスの流れを点線の矢印で示す。第2ガス流路G2は、第2筒状部材23と第3筒状部材24との間、第1筒状部材22と第3筒状部材24との間、コレットボディ30と第1筒状部材22との間、コレットボディ30と絶縁リング34との間、コレットボディ30とノズルホルダ37との間、内側ノズル35とノズルホルダ37との間、および内側ノズル35と外側ノズル36との間、にそれぞれ形成されている。本実施形態において、図4および図7に示すように、第1筒状部材22の下端部には、第1筒状部材22の厚さ方向に貫通する複数の連通孔222が形成されている。複数の連通孔222は、第1筒状部材22の周方向において均等に分散している。第2ガス流路G2において、第1筒状部材22と第3筒状部材24との間、およびコレットボディ30と第1筒状部材22との間は、複数の連通孔222を介して通じている。
本実施形態では、図5に示すように、トーチボディ20(ブロック部材21)には、第2不活性ガスを導入する第2ガス入口211が設けられている。第2ガス入口211は第2ガス流路G2に通じている。第2ガス入口211から第2不活性ガスが導入されると、当該第2不活性ガスは、第1ガス流路G1において軸線CL方向の他方側から一方側に流れ、内側ノズル35と外側ノズル36との間を通過した後に外側ノズル36の先端の開口362から噴出する。
冷却水流路Wは、冷却水を流すための流路である。図4において、冷却水流路Wにおける冷却水の流れを実線の矢印で示す。冷却水流路Wは、主に第1筒状部材22と第2筒状部材23との間に形成されている。冷却水流路Wは、送水側流路W1および復水側流路W2を含む。詳細な図示説明は省略するが、ブロック部材21の適所に設けられた冷却水導入口から冷却水が導入されると、当該冷却水は、送水側流路W1において軸線CL方向の他方側から一方側に流れる。その後、冷却水は、第2筒状部材23の下端付近で折り返して復水側流路W2において軸線CL方向の一方側から他方側に流れ、ブロック部材21に設けられた冷却水導出口から導出される。
本実施形態において、第1ガス入口221に導入される第1不活性ガスの流量は、上述の第1ガス調整部71(図1参照)により調整される。第1ガス調整部71は、ガス供給源6と第1ガス流路G1との間に介在している。第1ガス流路G1を流れる第1不活性ガスの量は、第1ガス調整部71によって所望に調整される。
本実施形態では、第1ガス入口221に導入される第1不活性ガスの流量の調整は、第1ガス調整部71において第1ガス配管81を流れる第1不活性ガスの流量を調整することにより行う。第1ガス調整部71の構成はこれに限定されず、たとえば第1ガス調整部71において第1不活性ガスのガス圧力や流速を調整することにより、第1ガス入口221に導入される第1不活性ガスの流量を調整してもよい。したがって、第1ガス調整部71において第1不活性ガスのガス圧力あるいは流速を調整する場合においても、本発明の「第1ガス入口(221)に導入されるガス(第1不活性ガス)の流量を調整する」ことに含まれる。
本実施形態において、第2ガス入口211に導入される第2不活性ガスの流量は、上述の第2ガス調整部72(図1参照)により調整される。第2ガス調整部72は、ガス供給源6と第2ガス流路G2との間に介在している。第2ガス流路G2を流れる第2不活性ガスの量は、第2ガス調整部72によって所望に調整される。したがって、上述の第1ガス入口221に導入される第1不活性ガスの流量、および第2ガス入口211に導入される第2不活性ガスの流量は、それぞれ個別に調整することが可能である。第1ガス入口221に導入される第1不活性ガスの流量、および第2ガス入口211に導入される第2不活性ガスの流量は、それぞれ特に限定されない。第1ガス入口221に導入される第1不活性ガスの流量の一例を挙げると、5~12L/min程度である。第2ガス入口211に導入される第2不活性ガスの流量の一例を挙げると、5~15L/min程度である。
本実施形態では、第2ガス入口211に導入される第2不活性ガスの流量の調整は、第2ガス調整部72において第2ガス配管82を流れる第2不活性ガスの流量を調整することにより行う。第2ガス調整部72の構成はこれに限定されず、たとえば第2ガス調整部72において第2不活性ガスのガス圧力や流速を調整することにより、第2ガス入口211に導入される第2不活性ガスの流量を調整してもよい。したがって、第2ガス調整部72において第2不活性ガスのガス圧力あるいは流速を調整する場合においても、本発明の「第2ガス入口(211)に導入されるガス(第2不活性ガス)の流量を調整する」ことに含まれる。
図9に示すように、第1ガス流路G1における非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル35との隙間は、第2ガス流路G2における内側ノズル35と外側ノズル36との隙間よりも小である。第1ガス流路G1において非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル35との最小隙間(第1最小隙間L1)は、たとえば0.5~1.5mm程度である。第2ガス流路G2において内側ノズル35と外側ノズル36との最小隙間(第2最小隙間L2)は、たとえば2~5mm程度である。第2最小隙間L2に対する第1最小隙間L1の割合について、第1最小隙間L1は、たとえば第2最小隙間L2の0.2~0.5倍であり、好ましくは第2最小隙間L2の0.2~0.3倍である。また、第1ガス流路G1の第1最小隙間L1を流れる第1不活性ガスの流速は、たとえば8~18m/sec程度である。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の溶接トーチA1は、軸線CL方向に延びる非消耗電極25と、内側ノズル35と、外側ノズル36と、を備えている。内側ノズル35は、非消耗電極25の外側に同心円状に配置されており、非消耗電極25と内側ノズル35との間には、第1ガス流路G1が形成されている。外側ノズル36は、内側ノズル35の径方向外側に同心円状に配置されており、内側ノズル35と外側ノズル36との間には、第2ガス流路G2が形成されている。このような構成によれば、溶接作業時には、第1ガス流路G1を流れて内側ノズル35の先端から噴出するガス(第1不活性ガス)がプラズマガスとして機能し、かつ第2ガス流路G2を流れて外側ノズル36の先端から噴出するガス(第2不活性ガス)がシールドガスとして機能する。これにより、被溶接物9と非消耗電極25先端との間に発生するアークが絞られ、エネルギ密度の高いアーク(プラズマアーク)を利用して溶接(プラズマ溶接)を行うことができる。
本実施形態の溶接トーチA1において、内側ノズル35は、着脱可能に取り付けられている。このため、図4、図5、図9に示した内側ノズル35が取り付けられた状態では、上述のようにプラズマ溶接を行うことが可能である。一方、図10、図11は、内側ノズル35を取り外した状態を示す。内側ノズル35が取り外された状態では、溶接作業時において、たとえば第1ガス流路G1へのガス(第1不活性ガス)の供給を停止し、第2ガス流路G2にのみガス(第2不活性ガス)を供給する。ここで、第2ガス流路G2を流れて外側ノズル36の先端から噴出するガス(第2不活性ガス)がシールドガスとして機能する。したがって、内側ノズル35が取り外された状態では、溶接用ガスとしてシールドガスのみを使用したTIG溶接を行うことができる。このように、本実施形態の溶接トーチA1によれば、内側ノズル35が取り付けられた状態で溶接(プラズマ溶接)を行う第1溶接状態と、内側ノズル35が取り外された状態で溶接(TIG溶接)を行う第2溶接状態と、に切り替え可能である。したがって、溶接トーチA1によれば、TIG溶接法およびプラズマ溶接法を使い分けて兼用することが可能であり、TIG溶接法およびプラズマ溶接法を使い分けて溶接作業を行う場合において、溶接トーチA1およびこれを備えた溶接システムB1の導入コストを削減することができる。
内側ノズル35の先端は、外側ノズル36の先端から軸線CL方向の一方側に突出している。内側ノズル35の先端が外側ノズル36の先端から軸線CL方向の一方側に突出する突出長さP2は、0~5mmの範囲である。このような構成によれば、内側ノズル35を取り外す際、たとえば内側ノズル35のうち外側ノズル36の先端から突出する先端部分を工具等で掴んでねじ部351が緩む方向に回すことにより、内側ノズル35を取り外すことができる。内側ノズル35を取り付ける場合、上記の内側ノズル35を取り外す手順と逆の手順を行う。即ち、内側ノズル35の先端部分を工具等で掴み、コレットボディ30のねじ部301にねじ部351を締め込む方向に回すことにより、内側ノズル35を取り付けることができる。したがって、内側ノズル35の取り外し作業および取り付け作業が行い易く、内側ノズル35の着脱時の作業性に優れる。
溶接トーチA1は、第1ガス流路G1に通じる第1ガス入口221と、第2ガス流路G2に通じる第2ガス入口211と、を有する。第1ガス入口221に導入されるガス(第1不活性ガス)の流量、および第2ガス入口211に導入されるガス(第2不活性ガス)の流量は、それぞれ個別に調整される。このような構成によれば、内側ノズル35が取り付けられた状態で溶接(プラズマ溶接)を行う際、第2不活性ガス(シールドガス)の流量を調整する場合にも、第1不活性ガス(プラズマガス)の流量が意図せずに変化することはなく、第1不活性ガスの流量を好ましい値にすることが可能である。また、内側ノズル35を取り外された状態で溶接(TIG溶接)を行う際には、第1ガス入口221へのガス(第1不活性ガス)の供給を停止して第1ガス流路G1にガスが流れないようにしつつ、第2不活性ガス(シールドガス)の流量を調整することが可能である。
内側ノズル35は、コレットボディ30に対して軸線CL方向の一方側に着脱可能に取り付けられる。このような構成によれば、たとえばコレットボディ30について内側ノズル35を取り付けるための変更を加えればよく、他の部材(トーチボディ20、コレット29等)についてはTIGトーチ用の部材を流用することが可能である。
トーチボディ20(第1筒状部材22およびブロック部材21)には、第1ガス入口221および第2ガス入口211が設けられている。トーチボディ20は、コレットボディ30に対して軸線CL方向における他方側に配置されており、コレットボディ30を支持している。また、上述のように、内側ノズル35は、コレットボディ30に対して軸線CL方向の一方側に着脱可能に取り付けられる。このような構成によれば、内側ノズル35がコレットボディ30から取り外された状態(図に示した第2溶接状態)においても、第2ガス入口211につながる第2ガス流路G2は、トーチボディ20の内部を経て外側ノズル36の内側まで通じている。これにより、内側ノズル35が取り外された状態で溶接を行う第2溶接状態において、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2の双方にガスを供給することが可能である。このように、第2溶接状態において第1ガス流路G1および第2ガス流路G2の双方にガスを供給すれば、外側ノズル36の先端の開口362から噴出するガスの流量を効率よく増やすことが可能である。また、図1に示す場合と異なり、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2に互いに異なる種類のガスを供給してもよい。第2溶接状態において第1ガス流路G1および第2ガス流路G2に互いに異なる種類のガスを流すと、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2それぞれを通過した上記異なる種類のガスが外側ノズル36の内側において混合され、当該混合ガスを外側ノズル36先端の開口362から噴出することができる。したがって、本実施形態によれば、内側ノズル35が取り外された状態で行う第2溶接状態において、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2への様々なガス供給態様が可能である。
非消耗電極25の先端は軸線CL方向において内側ノズル35の先端と一致する、あるいは内側ノズル35の先端から軸線CL方向の一方側に少し突出している。非消耗電極25の先端が内側ノズル35の先端から軸線CL方向の一方側に突出する突出長さP1は、0~2mmの範囲である。このような非消耗電極25の先端位置によれば、非消耗電極25と内側ノズル35との隙間については、内側ノズル35の軸線CL方向の中間から先端近傍に至る範囲において略一定に狭く保たれる。したがって、非消耗電極25の周囲を流れる高速気流の第1不活性ガスは、内側ノズル35先端の開口352から、流速が殆ど低下せずに噴出する。これにより、亜鉛めっき鋼板などの低溶融金属よりなる被溶接物9を溶接する場合においても、非消耗電極25の周囲を流れた高速気流の第1不活性ガスによって、溶接時に生じたヒューム等が吹き飛ばされる。したがって、非消耗電極25先端や内側ノズル35先端へのヒューム等の付着を防止することができる。
溶接トーチA1において、第1ガス流路G1における非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル35との最小隙間(第1最小隙間L1)は、第2ガス流路G2における内側ノズル35と外側ノズル36との最小隙間(第2最小隙間L2)の0.2~0.5倍である。このように第2最小隙間L2に対する第1最小隙間L1の割合が小さくされていると、非消耗電極25と内側ノズル35との間を流れる第1不活性ガスの流速を効率よく速めることが可能である。したがって、非消耗電極25先端や内側ノズル35先端へのヒューム等の付着が適切に防止されるとともに被溶接物9と非消耗電極25との間に生ずるアーク(プラズマアーク)が緊縮され、当該アークの集中性がより高まる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
上記実施形態において、溶接トーチA1に形成された第1ガス流路G1および第2ガス流路G2に不活性ガスを流す場合について説明したが、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2に流すガスの種類は特に限定されない。また、上記実施形態では、単一のガス供給源6から、ガス種は同一であるがガスの供給状態(流量等)を異ならせたガス(第1不活性ガスおよび第2不活性ガス)を第1ガス流路G1および第2ガス流路G2に流す場合について説明したが、これに限定されない。第1ガス流路G1および第2ガス流路G2に互いに異なる種類のガスを流してもよい。なお、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2に流すガスとしては、上記実施形態に例示した不活性ガスに限定されない。
上記実施形態では、内側ノズル35が取り外された状態で行う第2溶接状態において、第2ガス流路G2のみにガスを流す場合について説明したが、これに限定されない。第2溶接状態において、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2双方にガスを流してもよく、第1ガス流路G1および第2ガス流路G2へのガスの供給態様は、種々選択可能である。
A1:溶接トーチ、20:トーチボディ、211:第2ガス入口、221:第1ガス入口、25:非消耗電極、30:コレットボディ、35:内側ノズル、36:外側ノズル、G1:第1ガス流路、G2:第2ガス流路、CL:軸線、P1:突出長さ、P2:突出長さ、L1:第1最小隙間、L2:第2最小隙間
Claims (4)
- 軸線方向に延びる非消耗電極と、
前記非消耗電極に対して径方向の外側に同心円状に配置され、かつ着脱可能である内側ノズルと、
前記内側ノズルに対して径方向の外側に同心円状に配置された外側ノズルと、を備え、
前記非消耗電極と前記内側ノズルとの間には、第1ガス流路が形成され、
前記内側ノズルと前記外側ノズルとの間には、第2ガス流路が形成されており、
前記内側ノズルが取り付けられた状態で溶接を行う第1溶接状態と、前記内側ノズルが取り外された状態で溶接を行う第2溶接状態と、に切り替え可能である、溶接トーチ。 - 前記第1ガス流路に通じる第1ガス入口と、
前記第2ガス流路に通じる第2ガス入口と、を有し、
前記第1ガス入口に導入されるガスの流量、および前記第2ガス入口に導入されるガスの流量は、それぞれ個別に調整される、請求項1に記載の溶接トーチ。 - 前記非消耗電極を保持するコレットボディを備え、
前記内側ノズルが、前記コレットボディに対して前記軸線方向における一方側に着脱可能に取り付けられる、請求項2に記載の溶接トーチ。 - 前記コレットボディに対して前記軸線方向における他方側に配置され、かつ前記コレットボディを支持するトーチボディを備え、
前記トーチボディは、前記第1ガス入口および前記第2ガス入口を有する、請求項3に記載の溶接トーチ。
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