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JP2022548316A - ゲノム複合体の調節 - Google Patents

ゲノム複合体の調節 Download PDF

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JP2022548316A JP2022518249A JP2022518249A JP2022548316A JP 2022548316 A JP2022548316 A JP 2022548316A JP 2022518249 A JP2022518249 A JP 2022518249A JP 2022518249 A JP2022518249 A JP 2022518249A JP 2022548316 A JP2022548316 A JP 2022548316A
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ローラ ガブリエラ ランド,
デイビッド アーサー ベリー,
ジョディ ミシェル ケネディ,
ジェレミア デイル ファレリ,
Original Assignee
フラッグシップ パイオニアリング イノベーションズ ブイ, インコーポレイテッド
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Abstract

本開示は、一般に、ノンコーディングRNAなどの非ゲノム成分の調節によるゲノム複合体の調節に関する。本発明は、調節剤、例えば、eRNAをターゲティングする融合分子を用いて、特定のゲノム若しくは転写複合体を調節し、且つ/又は標的遺伝子の発現を変更、例えば、低減するための技術を提供する。一部の実施形態では、eRNAは、上記標的遺伝子を含むゲノム複合体又は転写複合体と関連、例えば、結合している。本明細書に開示される調節剤、例えば、融合分子で、eRNAをターゲティングすることにより、関連するゲノム複合体若しくは転写複合体のレベル、又は標的遺伝子におけるゲノム複合体若しくは転写複合体の占有を変更、例えば、低減することができる。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/904,437号明細書(2019年9月23日に出願)に対する優先権及びそれからの利益を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
特定のゲノム構造の調節は、遺伝子発現に影響を及ぼすことができる。特に、過剰発現又は低発現が疾患と関連している(例えば、哺乳動物、例えば、ヒトにおいて)場合に、発現に影響を与えるゲノム構造を調節するための新規の手段が求められている。
本開示は、中でも、ゲノム若しくは転写複合体、及び/又は1つ若しくは複数の標的遺伝子の発現を変更するための調節剤、並びに調節剤を使用及び製造する方法を提供する。一部の実施形態では、調節剤は、ターゲティング部分とエフェクター部分を含み、その場合、ターゲティング部分は、ノンコーディングRNA(ncRNA)、例えば、エンハンサーRNA(eRNA)に特異的に結合する核酸を含む。一部の実施形態では、ncRNA、例えば、eRNAは、標的遺伝子と結合したゲノム又は転写複合体の一部である。一般に、ncRNA、例えば、eRNAに対するターゲティング部分の結合は、ゲノム又は転写複合体の特性を変更し、例えば、その結果、標的遺伝子の発現を変更する。エフェクター部分は、ターゲティング部分とは個別の異なる部分であり、一部の実施形態では、ターゲティング部分の作用(例えば、ゲノム若しくは転写複合体又は発現に対して)を増強するか、或いは、ターゲティング部分によって賦与されるものとは別の、例えば、異なる作用をもたらす。
従って、いくつかの態様において、本開示は、一部には、ノンコーディングRNA(ncRNA)、例えば、エンハンサーRNA(eRNA)に結合するターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子に関し、ここで、ターゲティング部分は、10~50ヌクレオチドの長さを有する核酸と;eRNAにより調節される遺伝子の発現を調節、例えば、増大又は低減するエフェクター部分(例えば、ターゲティング部分に共有結合する)を含む。
別の態様では、本開示は、一部には、本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子を含む細胞に関する。
別の態様では、本開示は、一部には、本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子と、細胞を含む反応混合物に関する。
別の態様では、本開示は、一部には、本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子と、薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物に関する。
別の態様では、本開示は、一部には、標的遺伝子の異常な発現を有する患者を治療する方法に関し、この方法は、以下:本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子を患者に投与し、それにより標的遺伝子の異常な発現を有する患者を治療することを含む。
別の態様では、本開示は、一部には、細胞中の標的遺伝子の発現を低減する方法に関し、この方法は、本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子と細胞を接触させ、それにより標的遺伝子の発現を低減することを含む。
別の態様では、本開示は、一部には、ゲノム複合体又は転写複合体を調節(例えば、阻害)する方法に関し、この方法は、ゲノム複合体又は転写複合体を、本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子と接触させることを含み、ここで、(a)調節剤、例えば、融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルが変更(例えば、低減)され;(b)転写複合体は、eRNAに結合する転写因子を含み、調節剤、例えば、融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、転写因子を含む転写複合体のレベルが変更(例えば、低減)され;(c)ゲノム複合体は、eRNAに結合するゲノム複合体成分を含み、調節剤、例えば、融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、ゲノム複合体成分を含むゲノム複合体のレベルが変更(例えば、低減)され;(d)調節剤、例えば、融合分子が、存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位でのゲノム複合体又は転写複合体の占有が変更(例えば、低減)されるか;或いは(e)調節剤、例えば、融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での転写因子又はゲノム複合体成分の占有が変更(例えば、低減)される。
別の態様では、本開示は、一部には、調節剤、例えば、融合分子を細胞、例えば、哺乳動物細胞に送達する方法であって、本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子を用意すること;及び調節剤、例えば、融合分子と細胞を接触させ、それにより、調節剤、例えば、融合分子を細胞に送達することを含む方法に関する。
前述した方法又は組成物のいずれかの別の特徴は、以下に列挙される実施形態の1つ又は複数を含む。
当業者であれば、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識するか、又は常用的な実験を用いるだけでそれらを確認することができるだろう。こうした同等物は、以下に列挙される実施形態に包含されることが意図される。
本明細書に挙げる全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献(例えば、配列データベース参照番号)は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、本明細書、例えば、本明細書のいずれかの表で参照される全てのGenBank、Unigene、及びEntrez配列は、参照により本明細書に組み込まれる。別に明示しない限り、本明細書の全ての表を含め、本明細書に記載される配列アクセッション番号は、2019年9月23日現在のデータベースエントリーを指す。1つの遺伝子又はタンパク質が、複数の配列アクセッション番号を示す場合には、全ての配列変異体が包含される。
実施形態の列挙
1.以下:
ノンコーディングRNA(ncRNA)、例えば、エンハンサーRNA(eRNA)に結合するターゲティング部分であって、上記ターゲティング部分は、長さが10~50ヌクレオチドの核酸を含むターゲティング部分と、
eRNAにより調節される遺伝子の発現を調節、例えば、増大又は低減するエフェクター部分と、
を含む調節剤、例えば、融合分子。
2.上記調節剤が、融合分子である、実施形態1に記載の調節剤。
3.以下:
ノンコーディングRNA(ncRNA)、例えば、エンハンサーRNA(eRNA)に結合するターゲティング部分であって、上記ターゲティング部分は、10~50ヌクレオチドの長さを有する核酸を含むターゲティング部分と、
eRNAにより調節される遺伝子の発現を調節、例えば、増大又は低減する、上記ターゲティング部分と共有結合したエフェクター部分と、
を含む融合分子。
4.上記ターゲティング部分が、50、40、30、又は20以下のヌクレオチドを含む、実施形態2又は3のいずれかに記載の融合分子。
5.上記融合分子が、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、又は100以下のアミノ酸を含む、実施形態2~4のいずれかに記載の融合分子。
6.上記エフェクター部分が、CRISPRタンパク質を含まない、例えば、Cas9を含まない、実施形態2~5のいずれかに記載の融合分子。
7.上記エフェクター部分が、CTCF又はその機能性断片を含まない、実施形態2~6のいずれかに記載の融合分子。
8.上記エフェクター部分が、CTCFに結合しない、実施形態2~7のいずれかに記載の融合分子。
9.上記エフェクター部分が、酵素を含む、実施形態2~8のいずれかに記載の融合分子。
10.上記エフェクター部分が、内在性タンパク質、例えば、細胞に対して内在性のタンパク質を上記ターゲティング部分及び/又はeRNAに動員することができる、実施形態2~9のいずれかに記載の融合分子。
11.上記エフェクター部分が、例えば、以下:クラスター化規則的配置短回文配列リピート(CRISPR)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及び転写活性因子様エフェクターベースヌクレアーゼ(TALEN)から選択される、遺伝子修飾部分を含む、実施形態2~10のいずれかに記載の融合分子。
12.上記エフェクター部分が、例えば、以下:DNAメチラーゼ(例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMTL);DNA脱メチル化酵素(例えば、TETファミリーのメンバー);ヒストンメチルトランスフェラーゼ;ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3);サーチュイン1、2、3、4、5、6、若しくは7;リシン特異的ヒストンデメチラーゼ1(LSD1);ヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1);ユークロマチン様ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ2(G9a);ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1);ゼスト(zeste)ホモログ2のエンハンサー(EZH2);ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET);ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2);又はタンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)から選択される、エピジェネティック修飾部分を含む、実施形態2~11のいずれかに記載の融合分子。
13.上記エフェクター部分が、切断可能部分、例えば、トロンビン切断可能CPRSCリンカーを介して上記ターゲティング部分に結合された部分を含む、実施形態2~12のいずれかに記載の融合分子。
14.上記エフェクター部分が、小分子を含む、実施形態2~13のいずれかに記載の融合分子。
15.上記エフェクター部分が、以下:メトトレキサート、亜硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸アンモニウムを含む、実施形態2~14のいずれかに記載の融合分子。
16.上記エフェクター部分が、以下:メチルトランスフェラーゼ、デメチラーゼ、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)、又はデアミナーゼを含む、実施形態2~15のいずれかに記載の融合分子。
17.上記エフェクター部分が、以下:ペプチドリガンド、完全長タンパク質、タンパク質断片、抗体、抗体断片、ターゲティングアプタマー、抗原、受容体(例えば、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-1受容体2、コレシストキニンB(CCKB)、及びソマトスタチン受容体)、或いはペプチド治療薬(例えば、Gタンパク質結合受容体(GPCR)などの特異的細胞表面受容体若しくはイオンチャネルに結合するもの;天然に生物活性のペプチドからの合成若しくはアナログペプチド;抗菌ペプチド;孔形成ペプチド;腫瘍ターゲティング若しくは細胞傷害性ペプチド;又はアポトーシス誘導ペプチドシグナル若しくは光増感剤ペプチドなどの分解若しくは自壊ペプチド)を含む、実施形態2~16のいずれかに記載の融合分子。
18.上記エフェクター部分が、以下:接合部核形成分子、例えば、CTCF、コヒーシン、USF1、YY1、TATAボックス結合タンパク質関連因子3(TAF3)、又はZNF143結合モチーフを含む、実施形態2~17のいずれかに記載の融合分子。
19.上記エフェクター部分が、DNA結合ドメインを含む、実施形態2~18のいずれかに記載の融合分子。
20.上記エフェクター部分が、gRNA、siRNA、RNAi分子、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、実施形態2~19のいずれかに記載の融合分子。
21.上記エフェクター部分が、Cas9を含む、実施形態2~20のいずれかに記載の融合分子。
22.上記エフェクター部分が、アプタマー、例えば、オリゴヌクレオチド又はペプチドアプタマーを含む、実施形態2~21のいずれかに記載の融合分子。
23.上記ターゲティング部分が、タンパク質又は小分子、例えば、RNA結合タンパク質を含む、実施形態2~22のいずれかに記載の融合分子。
24.上記ターゲティング部分が、Cas13若しくはPufタンパク質、又はその機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態23に記載の融合分子。
25.上記ターゲティング部分が、gRNA、siRNA、又はRNAi分子を含む、実施形態2~24のいずれかに記載の融合分子。
26.上記ターゲティング部分が、ncRNA、例えば、eRNAと相補的であるか、又はncRNA、例えば、eRNAに相補的な配列と少なくとも80、85、90、95、99、若しくは100%同一である、実施形態2~25のいずれかに記載の融合分子。
27.上記ターゲティング部分が、長さ10~50ヌクレオチドの核酸からほぼ構成される、実施形態2~26のいずれかに記載の融合分子。
28.上記核酸が、以下:デオキシリボ核酸;リボ核酸、核酸アナログ(例えば、以下:ペプチド核酸(PNA)、ペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲート、ロック核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)の1つ若しくは複数);リンカー;及びそれらの組合せのうちの1つ又は複数を含む、実施形態2~27のいずれかに記載の融合分子。
29.上記核酸が、例えば、一対の核酸又は核酸アナログの間に1つ若しくは複数のホスホロチオエート結合を含む、実施形態2~28のいずれかに記載の融合分子。
30.別の転写因子、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントの上記eRNAのKが、上記融合分子の存在下で、少なくとも1.05×(即ち、1.05倍)、1.1×、1.2×、1.3×、1.4×、1.5×、1.6×、1.7×、1.8×、1.9×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、20×、50×、又は100×(及び任意選択的に、20×、10×、9×、8×、7×、6×、5×、4×、3×、2×、1.9×、1.8×、1.7×、1.6×、1.5×、1.4×、1.3×、1.2×、若しくは1.1×以下)増加する、実施形態2~29のいずれかに記載の融合分子。
31.上記eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルが、上記融合分子の存在下で、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、若しくは20%)低下する、実施形態2~30のいずれかに記載の融合分子。
32.上記eRNAと上記ターゲティング部分の結合によって、ゲノム配列エレメントでのeRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体の占有が、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、若しくは20%)低下する、実施形態2~31のいずれかに記載の融合分子。
33.上記eRNAと上記ターゲティング部分の結合によって、ゲノム複合体又は転写複合体中/そこでのeRNAの占有が、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、若しくは20%)低下する、実施形態2~32のいずれかに記載の融合分子。
34.上記eRNAと上記ターゲティング部分の結合によって、標的遺伝子の発現が、例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、若しくは20%)変更する、例えば、低下する、実施形態2~33のいずれかに記載の融合分子。
35.上記核酸が、配列番号9013~9073と少なくとも80、85、90、95、99、若しくは100%の同一性を有するか、又は配列番号9013~9073から選択される配列に対して10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1つ以下(例えば、ゼロ)の変更を有する配列を含む、実施形態2~34のいずれかに記載の融合分子。
36.上記融合分子が、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートを含む、実施形態2~35のいずれかに記載の融合分子。
37.上記融合分子が、追加部分、例えば、第2エフェクター若しくは第2ターゲティング部分、タグ付け若しくはモニタリング部分、膜転移部分、薬物部分、又は小分子をさらに含む、実施形態2~36のいずれかに記載の融合分子。
38.上記融合分子が、核局在化配列(NLS)をさらに含む、実施形態2~37のいずれかに記載の融合分子。
39.上記融合分子が、上記ターゲティング部分と上記エフェクター部分との間にリンカーを含む、実施形態2~38のいずれかに記載の融合分子。
40.実施形態2~39のいずれかに記載の融合分子を含む細胞。
41.実施形態2~39のいずれかに記載の融合分子と、細胞と、を含む反応混合物。
42.実施形態2~39のいずれかに記載の融合分子と、薬学的に許容できる賦形剤と、を含む医薬組成物。
43.標的遺伝子の異常な発現を有する患者を治療する方法であって、上記方法は、以下:
実施形態2~39のいずれかに記載の融合分子を上記患者に投与し、それにより標的遺伝子の異常な発現を有する上記患者を治療すること
を含む方法。
44.細胞における標的遺伝子の発現を低減する方法であって、上記方法は、以下:
実施形態2~39のいずれかに記載の融合分子と上記細胞を接触させ、それにより上記標的遺伝子の発現を低減すること
を含む方法。
45.上記細胞が、上記eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体を含む、実施形態40、43、又は44のいずれかに記載の方法又は細胞。
46.上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、上記eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルが、変更(例えば、増大又は低減)される、実施形態45に記載の方法又は細胞。
47.上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での上記ゲノム複合体又は転写複合体の安定性が、変更(例えば、増大又は低減)される、実施形態45に記載の方法又は細胞。
48.上記細胞が、上記eRNAに結合するゲノム複合体成分又は転写因子を含む、実施形態45~47のいずれかに記載の方法又は細胞。
49.上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、上記eRNAに結合するゲノム複合体成分又は転写因子のレベルが、変更(例えば、増大又は低減)される、実施形態48に記載の方法又は細胞。
50.上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での上記転写因子又はゲノム複合体成分の安定性が、変更(例えば、増大又は低減)される、実施形態48に記載の方法又は細胞。
51.上記標的部位が、上記標的遺伝子の発現に関連するものであり、例えば、上記標的遺伝子に関連するプロモータ、エンハンサー、転写開始部位、又はコーディング配列から選択される、実施形態47又は50のいずれかに記載の方法又は細胞。
52.ゲノム複合体又は転写複合体を調節(例えば、阻害又は安定化)する方法であって、上記方法は、以下:
上記ゲノム複合体又は転写複合体を、いずれかの先行する請求項に記載の融合分子と接触させることを含み、
ここで、
(a)上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、上記eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルが変更(例えば、増大若しくは低減)され;
(b)上記転写複合体は、上記eRNAに結合する転写因子を含み、上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、上記転写因子を含む転写複合体のレベルが変更(例えば、増大若しくは低減)され;
(c)上記ゲノム複合体は、上記eRNAに結合するゲノム複合体成分を含み、上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、上記ゲノム複合体成分を含むゲノム複合体のレベルが変更(例えば、増大若しくは低減)され;
(d)上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位でのゲノム複合体又は転写複合体の占有が変更(例えば、増大若しくは低減)されるか;或いは
(e)上記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での転写因子又はゲノム複合体成分の占有が変更(例えば、増大若しくは低減)される方法。
53.融合分子を細胞、例えば、哺乳動物細胞に送達する方法であって、
実施形態2~39のいずれかに記載の融合分子を用意することと、
上記融合分子と上記細胞を接触させ、
それにより、上記融合分子を上記細胞に送達することと、
を含む方法。
54.上記細胞が、神経細胞(例えば、CNS細胞)、筋肉細胞(例えば、心筋細胞)、血液細胞(例えば、免疫細胞)、上皮細胞、肝細胞、CD34+細胞、CD3+細胞、又は線維芽細胞から選択される、いずれかの先行する請求項に記載の融合分子、方法、細胞、又は反応混合物。
定義
アンカー配列:本明細書で用いられるとき、用語「アンカー配列」は、核形成剤により認識される核酸配列であって、十分に結合して、アンカー配列媒介接合部、例えば、複合体を形成する配列を指す。一部の実施形態では、アンカー配列は、1つ又は複数のCTCF結合モチーフを含む。一部の実施形態では、アンカー配列は、遺伝子コーディング領域内に位置しない。一部の実施形態では、アンカー配列は、遺伝子間領域内に位置する。一部の実施形態では、アンカー配列は、エンハンサー又はプロモータ内のいずれにも位置しない。一部の実施形態では、アンカー配列は、任意の転写開始部位から少なくとも400bp、少なくとも450bp、少なくとも500bp、少なくとも550bp、少なくとも600bp、少なくとも650bp、少なくとも700bp、少なくとも750bp、少なくとも800bp、少なくとも850bp、少なくとも900bp、少なくとも950bp、又は少なくとも1kb離れて位置する。一部の実施形態では、アンカー配列は、ゲノム刷り込み、単一対立遺伝子の発現、及び/又は単一対立遺伝子のエピジェネティックマークと関連しない領域内に位置する。一部の実施形態では、アンカー配列は、以下:内因性核形成ポリペプチド(例えば、CTCF)との結合、アンカー配列媒介接合部を形成する第2アンカー配列との相互作用、又はアンカー配列媒介接合部外側のエンハンサーの遮断から選択される1つ若しくは複数の機能を有する。本開示の一部の実施形態では、他のアンカー配列(例えば、別の状況での核形成剤(例えば、CTCF)結合モチーフを含有し得る配列)をターゲティングすることなく、特定の1つ又は複数のアンカー配列を特異的にターゲティングすることができる技術が提供され;こうした標的化アンカー配列は、「標的アンカー配列」と呼ばれることもある。一部の実施形態では、標的アンカー配列の配列及び/又は活性は調節されるが、標的化アンカー配列と同じシステム内(例えば、同じ細胞内及び/又は一部の実施形態では、同じ核酸分子、例えば、同じ染色体上)に存在し得る1つ若しくは複数の他のアンカー配列の配列及び/又は活性は調節されない。一部の実施形態では、アンカー配列は、核形成ポリペプチド結合モチーフを含むか、又はそれである。一部の実施形態では、アンカー配列は、核形成ポリペプチド結合モチーフと隣接している。
アンカー配列媒介接合部:本明細書で用いられるとき、用語「アンカー配列媒介接合部」は、核形成ポリペプチドなどの1つ若しくは複数のポリペプチド、又は1つ若しくは複数のタンパク質及び/又は核酸実体(例えば、RNA若しくはDNAなど)によるDNA内の少なくとも2つのアンカー配列の物理的相互作用若しくは結合によって起こる、及び/又はそれにより維持されるDNA構造、場合によっては複合体を指し、これは、アンカー配列と結合して、アンカー配列同士の空間的近接及び機能的連結を可能にする(例えば、図1を参照されたい)。
と関連する:この用語が本明細書で用いられるとき、2つの事象又は実体は、その一方の存在、レベル、形態及び/又は機能が、他方のものと相関する場合に、互いに「関連する」。例えば、一部の実施形態では、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャー、代謝物、微生物など)は、その存在、レベル、形態及び/又は機能が、特定の疾患、障害、若しくは病状の発生率及び/又はそれに対する感受性と相関する場合に、その疾患、障害、又は病状と関連すると考えられる。一部の実施形態では、2つ以上の実体は、それらが直接又は間接的に相互作用して、互いに物理的に近接し、且つ/又は物理的に近接したままであれば、互いに物理的に「関連する」。一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合しており;一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気、及びそれらの組合せにより、非共有結合している。一部の実施形態では、DNA配列は、標的ゲノム又は転写複合体内に核酸が少なくとも部分的に存在し、DNA配列内での遺伝子の発現が、標的ゲノム又は転写複合体の形成若しくは妨害により影響される場合、標的ゲノム又は転写複合体と「関連する」。
ドメイン:本明細書で用いられるとき、用語「ドメイン」は、或る実体のセクション又は部分を指す。一部の実施形態では、「ドメイン」は、当該実体の特定の構造及び/又は機能的特徴と関連しており、ドメインがその親実体の残りから物理的に分離されたとき、それは、上記の特定の構造及び/又は機能的特徴を実質的に若しくは完全に保持する。これに代わり、又は加えて、一部の実施形態では、ドメインは、(親)実体から分離されて、別の(レシピエント)実体と連結されると、レシピエント実体に、親実体においてそれを特徴付けた1つ若しくは複数の構造及び/又は機能的特徴を実質的に保持し、且つ/又は付与する実体の1部分であるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、ドメインは、或る分子(例えば、小分子、炭水化物、脂質、核酸、ポリペプチドなど)のセクション若しくは1部分であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ドメインは、ポリペプチドのセクションであるか、又はそれを含む。いくつかのそうした実施形態では、ドメインは、特定の構造エレメント(例えば、特定のアミノ酸配列若しくは配列モチーフ、α-ヘリックス特徴、β-シート特徴、コイルドコイル特徴、ランダムコイル特徴など)、及び/又は特定の機能的特徴(例えば、結合活性、酵素活性、フォールディング活性、シグナル伝達活性など)を特徴とする。
エフェクター部分:本明細書で用いられるとき、「エフェクター部分」は、ゲノム又は転写複合体の特性を変更し、且つ/又は遺伝子の発現を調節、例えば、阻害する部分(例えば、ポリペプチド)を指す。調節剤に関連して、エフェクター部分は、やはり調節剤に存在するターゲティング部分とは別の異なる部分である。一部の実施形態では、エフェクター部分は、ターゲティング部分が核内にあるとき、エフェクター部分の非存在下で、ターゲティング部分による同じ遺伝子の調節と比較して、ターゲティング部分により標的化される遺伝子の調節を増大する。一部の実施形態では、ターゲティング部分は単独で、ゲノム又は転写複合体の特性を変更し、且つ/又は遺伝子発現を調節、例えば、阻害し、エフェクター部分は、そうした遺伝子発現の調節を増大する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、核局在化配列(NLS)ではない。一部の実施形態では、調節剤は、ターゲティング部分、エフェクター部分、及びNLSを含み、ここで、エフェクター部分は、ターゲティング部分又はNLSと同じではない。
eRNA:本明細書で用いられるとき、用語「eRNA」は、エンハンサーRNAを指す。eRNAは、エンハンサー又はエンハンサーの部分から転写され得る1タイプのノンコーディングRNAである。一部の実施形態では、eRNAは、ゲノム複合体又は転写複合体と会合、例えば、結合する。eRNAは、一部の実施形態では、上記エンハンサーにより調節される1つ又は複数の遺伝子、例えば、複数の遺伝子の転写に参加する。一部の実施形態では、eRNAは、転写複合体又はゲノム複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の成分である。一部の実施形態では、eRNAは、エンハンサー(例えば、eRNAをコードするエンハンサー)と、標的遺伝子に作動可能に連結したプロモータも含むアンカー配列媒介接合部の一部である。一部の実施形態では、eRNAは、アンカー配列媒介接合部の一部ではない。一部の実施形態では、eRNAは、1つ若しくは複数のタンパク質、例えば、CTCF及びYY1などのアンカー配列核形成タンパク質、基本転写機構の成分、エンハンサーが豊富であるか、若しくはエンハンサーに近いことがわかっているタンパク質(例えば、メディエータ(Mediator)、p300など)、又は1つ若しくは複数の転写調節因子(例えば、エンハンサー結合タンパク質)(例えば、p53若しくはOct4)に結合しうる。一部の実施形態では、1つ又は複数のeRNAのレベルの変化は、特定の標的遺伝子の発現のレベルの変化と相関し、且つ/又はそうした変化を引き起こし得る。一部の実施形態では、例えば、eRNAのノックダウンは、標的遺伝子のノックダウンと相関し、且つ/又はそのようなノックダウンを引き起こし得る。
融合分子:本明細書で用いられるとき、用語「融合分子」は、ゲノム又は転写複合体の特性を変更するか、又は例えば、細胞の核中に存在する場合標的遺伝子の発現を調節する2つ以上の部分、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分を含む化合物を指す。一部の実施形態では、2つ以上の部分、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分は、共有結合している。融合分子とその部分は、ポリペプチド、核酸、グリカン、小分子、又は本明細書に記載の他の成分の任意の組合せを含んでもよい(例えば、ターゲティング部分は、核酸を含んでもよく、エフェクター部分は、ポリペプチドを含んでもよい)。一部の実施形態では、融合分子は、例えば、ペプチド結合を介して共有結合される1つ又は複数のポリペプチドドメインを含む融合タンパク質である。一部の実施形態では、融合分子は、ターゲティング部分とエフェクター部分を含むコンジュゲート分子であり、それらは、ペプチド結合又はリン酸ジエステル結合以外の共有結合によって連結されている(例えば、ペプチド結合又はリン酸ジエステル結合以外の共有結合によって連結された、核酸を含むターゲティング部分と、ポリペプチドを含むエフェクター部分)。一部の実施形態では、調節剤は、融合分子であるか、又はそれを含む。
ゲノム複合体:本明細書で用いられるとき、用語「ゲノム複合体」は、複数のタンパク質及び/又は他の成分(恐らく、ゲノム配列エレメントを含む)同士の相互作用によって、1つ若しくは複数の染色体上で互いに間隔をあけた2つのゲノム配列エレメントを一緒にする複合体である。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、複合体の1つ又は複数のタンパク質成分が結合するアンカー配列である。一部の実施形態では、ゲノム複合体は、アンカー配列媒介接合部を含み得る。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、CTCF結合モチーフ、プロモータ及び/又はエンハンサーであってもよいし、又はそれを含んでもよい。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、プロモータ及び/又は調節部位(例えば、エンハンサー)の少なくとも1つ又はその両方を含む。一部の実施形態では、複合体形成は、ゲノム配列エレメントにおいて、且つ/又はゲノム配列エレメントと1つ若しくは複数のタンパク質成分の結合により核形成される。当業者には理解されるように、一部の実施形態では、複合体の形成によるゲノム部位の共局在化(例えば、共役)によって、ゲノム配列エレメントにおける、又はその付近で(例えば、一部の実施形態では、配列間)のDNAトポロジーが変更される。一部の実施形態では、ゲノム複合体は、1つ又は複数のループを有するアンカー配列媒介接合部を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のゲノム複合体は、例えば、CTCF及び/又はコヒーシンなどの核形成ポリペプチドにより核形成される。一部の実施形態では、本明細書に記載のゲノム複合体は、例えば、以下:CTCF、コヒーシン、ノンコーディングRNA(例えば、eRNA)、転写機構タンパク質(例えば、RNAポリメラーゼ、例えば、TFIIA、TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIF、TFIIHなどからなる群から選択される1つ若しくは複数の転写因子)、転写調節因子(例えば、メディエータ(Mediator)、P300、エンハンサー結合タンパク質、リプレッサー結合タンパク質、ヒストン修飾因子など)のうち1つ又は複数を含み得る。一部の実施形態では、本明細書に記載のゲノム複合体は、1つ若しくは複数のポリペプチド成分及び/又は1つ若しくは複数の核酸成分(例えば、1つ若しくは複数のRNA成分)を含み、それらは、一部の実施形態では、互いに及び/又は1つ若しくは複数のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列、プロモータ配列、調節配列(例えば、エンハンサー配列)と相互作用することにより、ゲノムDNAの1区間を、複合体が形成されなければ採用されないトポロジー立体配置(例えば、ループ)中に閉じ込め得る。
ゲノム配列エレメント:本明細書で用いられるとき、用語「ゲノム配列エレメント」は、遺伝子、プロモータ、エンハンサー、アンカー配列、転写因子結合部位、これらのいずれかに近接した配列、又はこれらのいずれかの1部分から選択される、ゲノムDNA内に位置する核酸の機能性単位を指す。本明細書で用いられるとき、近接(した)とは、最初の部位での調節剤の結合及び/又は調節剤による最初の部位の修飾が、他の部位の結合及び/又は修飾と同じ若しくは実質的に同じ効果を生み出すような、2つの部位、例えば、核酸部位同士の近さを意味する。一部の実施形態では、近接は、5000、4000、3000、2000、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、又は25塩基対未満の距離を指す。
リンカー:本明細書で用いられるとき、用語「リンカー」は、異なるエレメントを互いに連結させる多エレメント剤の1部分を指す。例えば、当業者であれば、構造が2つ以上の機能性又は組織ドメインを含むポリペプチドは、往々にして、そうしたドメインの間に1区間のアミノ酸を含み、それが、ドメイン同士を互いに連結させることを理解する。一部の実施形態では、リンカーエレメントを含むポリペプチドは、一般的形態S1-L-S2の全体的構造を有し、この場合、S1とS2は、同じでも、又は異なっていてもよく、リンカーによって互いに結合された2つのドメインを表す。一部の実施形態では、リンカーは、ほぼアミノ酸から構成され;そのようなリンカーは、本明細書において、ポリペプチドリンカーと呼ばれる。一部の実施形態では、リンカー、例えば、ポリペプチドリンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100以上のアミノ酸長(及び任意選択的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100以下のアミノ酸長)である。一部の実施形態では、リンカーは、固定した3次元構造を取る傾向ではなく、むしろ構造的に柔軟である。ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を操作する場合に好適に用いることができる多種多様なリンカーエレメントが当技術分野で知られている(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1 121-1123を参照)。
非天然アミノ酸:本明細書で用いられるとき、語句「非天然アミノ酸」は、アミノ酸の化学構造を有し、従って、少なくとも2つのペプチド結合に参加することができるが、天然には存在するものとは異なるR基を有する実体を指す。一部の実施形態では、非天然アミノ酸はまた、水素ではなく第2のR基を有してもよく、且つ/或いはアミノ又はカルボン酸部分に1つ若しくは複数の他の置換を有してもよい。
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質:本明細書で用いられるとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、ペプチド結合により、又はペプチド結合以外の手段で共有結合されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならならず、タンパク質配列又はペプチド配列を含み得る最大数のアミノ酸に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合により、又はペプチド結合以外の手段で互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で用いられるとき、この用語は、短鎖(例えば、当技術分野では一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる)、並びに長鎖(当技術分野では一般にタンパク質と呼ばれ、多くのタイプが存在する)の両方を指す。
標的遺伝子:本明細書で用いられるとき、用語「標的遺伝子」は、例えば、発現の調節のためにターゲティングされる遺伝子を意味する。一部の実施形態では、標的遺伝子は、標的化ゲノム複合体の一部(例えば、標的ゲノム複合体の一部として、例えば、アンカー配列媒介接合部の内部に、そのゲノム配列の少なくとも一部を有する遺伝子)であり、このゲノム複合体は、本明細書に記載される1つ又は複数の調節剤によりターゲティングされる。一部の実施形態では、調節は、標的遺伝子の発現の阻害を含む。一部の実施形態では、標的遺伝子は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列を本明細書に記載の活性剤、例えば、融合分子と接触させることにより調節される。一部の実施形態では、標的遺伝子は、標的ゲノム複合体の外部にあり、例えば、標的ゲノム複合体の1成分(例えば、転写因子のサブユニット)をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、標的遺伝子は、細胞、例えば、対象(例えば、患者)の細胞に、異常に発現(例えば、過剰発現)される。
ターゲティング部分:本明細書で用いられるとき、調節剤に関連して、用語「ターゲティング部分」は、本明細書に記載のゲノム複合体又は転写複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)に参加する成分若しくは成分のセットと特異的に結合する薬剤又は実体を意味する。一部の実施形態では、本開示のターゲティング部分は、本明細書に記載のゲノム複合体の1つ又は複数の成分をターゲティングする。一部の実施形態では、本開示のターゲティング部分は、本明細書に記載の転写複合体の1つ又は複数の成分をターゲティングする。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ゲノム配列エレメント以外のゲノム複合体成分をターゲティングする。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、複数のゲノム複合体成分、又はその組合せをターゲティングし、その複数は、一部の実施形態において、ゲノム配列エレメントを含み得る。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、eRNA、例えば、ゲノム複合体又は転写複合体の一部であるeRNAに結合する。一部の態様では、本開示が寄与するものとして、本明細書に記載されるように、標的遺伝子及び/又はゲノム複合体若しくは転写複合体の発現の効果的な調節が、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分を含む融合分子を用いて、標的遺伝子を含むゲノム複合体又は転写複合体の一部であるeRNAをターゲティングすることにより達成することができるという見識が挙げられる。一部の実施形態では、本開示は、改善された(例えば、特定のゲノム複合体、転写複合体、又は標的遺伝子に対する特異性の程度に関して)調節が、標的遺伝子と関連するか、又はそれを含むゲノム複合体又は転写複合体の一部であるeRNAをターゲティングすることにより達成され得ると予想する。ターゲティング部分による遺伝子のターゲティングは、当該遺伝子の発現を調節するncRNA(例えば、eRNA)に結合するターゲティング部分を含み得る。
治療薬:本明細書で用いられるとき、語句「治療薬」は、対象に投与されると、治療効果を有し、且つ/又は所望の生物学的及び/若しくは薬理学的効果を誘発する薬剤を指す。一部の実施形態では、疾患、障害、及び/又は病状の1つ若しくは複数の症状又は特徴を改善、緩和、軽減、阻害、予防し、その発症を遅延させ、その重症度を低減させ、且つ/又はその発生率を低下させるために使用することができる任意の物質である。
治療有効量:本明細書で用いられるとき、用語「治療有効量」は、治療レジメンの一環として投与されると、所望の生物学的応答を誘発する物質(例えば、治療薬、組成物、及び/又は製剤)の量を意味する。一部の実施形態では、或る物質の治療有効量は、疾患、障害、及び/又は病状に罹患しているか、若しくは罹患しやすい対象に投与されると、疾患、障害、及び/又は病状を治療、診断、予防する、且つ/又はその発症を遅延させるのに十分な量である。当業者には理解されるように、或る物質の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達しようとする物質、標的細胞又は組織などの要因に応じて変動し得る。例えば、一部の実施形態では、疾患、障害、及び/又は病状を治療するための製剤中の化合物の有効量は、疾患、障害、及び/又は病状の1つ若しくは複数の症状又は特徴を改善、緩和、軽減、阻害、予防し、その発症を遅延させ、その重症度を低減させ、且つ/又はその発生率を低下させる量である。一部の実施形態では、治療有効量は、単一用量で投与され;一部の実施形態では、治療有効量を送達するために、複数回用量が必要とされる。
転写複合体:本明細書で用いられるとき、用語「転写複合体」は、少なくとも1つのゲノム配列要素、1つ若しくは複数の転写因子、及び1つ若しくは複数のノンコーディングRNA(ncRNA)、例えば、eRNAを含む複合体である。一部の実施形態では、ゲノム配列要素は、遺伝子、エンハンサー(例えば、遺伝子に関連する)、プロモータ(例えば、遺伝子に関連する)、又はアンカー配列から選択される。
本発明の実施形態の以下に詳述される説明は、添付の図面と共に読めば、よりよく理解されるだろう。本発明を説明する目的で、図面にいくつかの実施例が示され、それらはここで例示される。しかし、本発明は、図面に示される実施形態の詳細な構成及び有用性に限定されるわけではないことは理解すべきである。
本明細書に記載される例示的なゲノム複合体の例示である。 本明細書に記載される例示的なゲノム複合体の例示である。 本明細書に記載される例示的なゲノム複合体の例示である。 本明細書に記載される例示的なゲノム複合体の例示である。 本明細書に記載される例示的なゲノム複合体の例示である。 例示的なゲノム複合体調節剤を示す。
本特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許又は特許出願公報のコピーは、要請及び必要費用の支払い時に特許庁から提供され得る。
本発明は、調節剤、例えば、eRNAをターゲティングする融合分子を用いて、特定のゲノム若しくは転写複合体を調節し、且つ/又は標的遺伝子の発現を変更、例えば、低減するための技術を提供する。一部の実施形態では、eRNAは、上記標的遺伝子を含むゲノム複合体又は転写複合体と関連、例えば、結合している。本明細書に開示される調節剤、例えば、融合分子で、eRNAをターゲティングすることにより、関連するゲノム複合体若しくは転写複合体のレベル、又は標的遺伝子におけるゲノム複合体若しくは転写複合体の占有を変更、例えば、低減することができる。一部の実施形態では、eRNAは、上記標的遺伝子を含むゲノム複合体又は転写複合体と関連、例えば、結合しているゲノム複合体成分又は転写因子と関連、例えば、結合している。特定の態様では、調節剤、例えば、eRNAをターゲティングする融合分子、及びそれを含む組成物が開示され、さらには、そうした薬剤を特性決定、製造、及び/又は使用する方法が開示される。
一部の実施形態では、提供される組成物は、特定のゲノム複合体又は転写複合体(例えば、特定のアンカー配列媒介接合部若しくはゲノム複合体)に関連する1つ若しくは複数の遺伝子の転写を調節する。本開示は、ゲノム複合体成分若しくは転写因子、特にeRNA、又はeRNAを含むゲノム複合体成分若しくは転写因子、又はその組合せをターゲティングする本明細書に記載される調節剤、例えば、融合分子を含む組成物が、特定のゲノム複合体/転写複合体のアセンブリ及び/若しくはレベルを調節することができ、且つ/又は特定のゲノム複合体/転写複合体と関連する(例えば、それと作動可能に近接した)1つ若しくは複数の遺伝子の発現を調節することができると教示する。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ゲノム複合体成分、転写因子、eRNA、又はそれらの組合せを特異的にターゲティングするターゲティング部分であるか、又はそれを含む。
一部の態様では、本開示が寄与することとして、標的遺伝子及び/又は1つ若しくは複数の遺伝子ゲノム複合体の発現の効果的な調節は、eRNAをターゲティングすることにより達成することができるという見識が挙げられる。一部の実施形態では、本開示は、改善された(例えば、所与のシステムで形成する、若しくは形成され得る他のゲノム複合体、又は他の標的遺伝子の発現の変化と比較した、特定のゲノム複合体又は標的遺伝子に対する特異性の程度)調節の有効性(例えば、或る集団に検出される複合体の数に対する影響又は相対的な発現の変化に関して)が、eRNA(標的遺伝子を含むゲノム複合体又は転写複合体の一部であるeRNA)をターゲティングすることにより達成され得ると考える。
一部の実施形態では、本開示は、複合体の非ゲノム核酸成分をターゲティングすることにより、特定のゲノム又は転写複合体を変更する(例えば、1つ又は複数の特定のゲノム複合体のレベルを変更する)技術を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるターゲティングに適した非ゲノム核酸は、eRNAである。
例えば、当業者は、特定のゲノム又は転写複合体が、1つ若しくは複数のノンコーディングRNA(ncRNA)、例えば、1つ若しくは複数のエンハンサーRNA(eRNA)を含み得ることを認識されよう。当業者は、eRNAが、典型的にエンハンサーから転写され、エンハンサーにより調節される1つ若しくは複数の遺伝子(エンハンサーの標的遺伝子)の発現の調節に参加し得ることを認識されよう。一部の実施形態では、ゲノム又は転写複合体は、eRNA、エンハンサー(例えば、eRNAが転写されたエンハンサー)及び例えば、標的遺伝子と作動可能に連結されたプロモータを含む。一部の実施形態では、こうしたゲノム又は転写複合体は、CTCF及びYY1などのタンパク質を核形成する1つ若しくは複数のアンカー配列、基本転写機構成分、メディエータ、及び/又はp53若しくはOct4などの1つ若しくは複数の配列特異的転写調節因子をさらに含む。特定の理論に束縛されることは望まないが、eRNAのレベルの変化は、例えば、標的遺伝子を含むゲノム若しくは転写複合体のレベルを変更することにより、又は標的遺伝子におけるゲノム若しくは転写複合体の占有を変更することによって、標的遺伝子の発現レベルの変化を引き起こし得る。一部の実施形態では、調節剤は、例えば、ターゲティング部分を介して、eRNAをターゲティングする、例えば、それに結合することもできる。一部の実施形態では、eRNAのレベル低下は、標的遺伝子の発現レベルの減少を引き起こし得る。非限定的な例として、表1(以下)に列挙されるeRNAのノックダウンは、特定の標的遺伝子のノックダウンを招く。
Figure 2022548316000002
ゲノム複合体
本開示に関連するゲノム複合体は、複数のポリペプチド及び/又は核酸成分を含み、且つ2つ以上のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)を共局在化する安定した構造を含む。本開示に関連するゲノム複合体は、1つ又は複数のeRNAを含み得る。一部の実施形態では、関連ゲノム複合体は、アンカー配列媒介接合部であるか、又はそれらを含む。
アンカー配列媒介接合部
一部の実施形態では、本開示に関連するゲノム複合体は、アンカー配列媒介接合部であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、核形成タンパク質が、ゲノム中のアンカー配列に結合して、これらのタンパク質及び任意選択的に、1つ若しくは複数の他の成分の間の相互作用によって接合部が形成され、そこにアンカー配列が物理的に共局在化されるとき、形成される。本明細書に記載される一部の実施形態では、1つ若しくは複数の遺伝子は、アンカー配列媒介接合部と関連し;そのような実施形態において、アンカー配列媒介接合部は、典型的に、1つ若しくは複数のアンカー配列、1つ若しくは複数の遺伝子、及び1つ若しくは複数の転写制御配列、例えば、増強配列又はサイレンシング配列を含む。一部の実施形態では、転写制御配列は、アンカー配列媒介接合部内にあるか、一部がアンカー配列媒介接合部内にあるか、又はその外部にある。
一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、1つ若しくは複数のゲノム配列エレメントを含むか、又はそれと関連する。ゲノム複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)に関与するゲノム配列エレメントは、互いに不連続であってもよい。不連続なゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)を含む一部の実施形態では、最初のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)は、2番目のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)から約500bp~約500Mb、約750bp~約200Mb、約1kb~約100kb、約25kb~約50Mb、約50kb~約1Mb、約100kb~約750kb、約150kb~約500kb、又は約175kb~約500kbの間隔を有し得る。一部の実施形態では、最初のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)は、2番目のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)から約500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1kb、5kb、10kb、15kb、20kb、25kb、30kb、35kb、40kb、45kb、50kb、55kb、60kb、65kb、70kb、75kb、80kb、85kb、90kb、95kb、100kb、125kb、150kb、175kb、200kb、225kb、250kb、275kb、300kb、350kb、400kb、500kb、600kb、700kb、800kb、900kb、1Mb、2Mb、3Mb、4Mb、5Mb、6Mb、7Mb、8Mb、9Mb、10Mb、15Mb、20Mb、25Mb、50Mb、75Mb、100Mb、200Mb、300Mb、400Mb、500Mb、又はその間の任意のサイズの間隔を有し得る。
一部の実施形態では、本明細書に記載されるゲノム複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)は、染色体内複合体であるか、又はそれを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載されるゲノム複合体は、複数のアンカー配列媒介接合部を含む。一部の実施形態では、ゲノム複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)は、TATAボックス、CAATボックス、GCボックス、又はCAP部位を含む。
一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、複数のゲノム複合体を含み;一部のそのような実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、1つ又は複数のゲノム複合体中に以下:アンカー配列、核酸配列、及び転写制御配列の少なくとも1つを含む。
いくつかの態様では、本明細書に提供される組成物は、ゲノム複合体のレベル及び/又は標的遺伝子の発現を変更する調節剤を含み得る。一部の実施形態では、調節剤は、ゲノム複合体の1成分、例えば、eRNA(例えば、その存在が、ゲノム複合体に関連する遺伝子の転写に影響を及ぼし得る)に結合するターゲティング部分を含む。一部の実施形態では、調節剤は、例えば、複合体の1つ若しくは複数の成分と物理的に相互作用する、複合体の1つ若しくは複数の成分を転写後修飾する、及び/又は複合体の1つ若しくは複数の核酸成分を編集する(例えば、置換、付加又は欠失により)ことによって、標的化ゲノム複合体の1つ若しくは複数の成分を修飾し得る。
一部の実施形態では、ゲノム複合体は、1つ又は複数、例えば、2、3、4、5、若しくはそれ以上の遺伝子を含む。
一部の実施形態では、本開示は、複合体内の標的遺伝子の発現を調節する方法であって、(i)その発現が調節される遺伝子(例えば、標的遺伝子);及び/又は(ii)その発現が調節される遺伝子の転写に影響を与える1つ若しくは複数の関連転写制御配列の外部にあるか、その一部ではない、又はその内部に含まれるゲノム配列の共局在化を達成する複合体をターゲティングすることを含む方法を提供する。
一部の実施形態では、本開示は、標的遺伝子の転写を調節する方法であって、(i)その発現が調節される遺伝子;及び/又は(ii)その発現が調節される遺伝子の転写に影響を与える関連転写制御配列と不連続なゲノム配列の共局在化を達成する複合体をターゲティングすることを含む方法を提供する。
一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、1つ又は複数の、例えば、2、3、4、5、若しくはそれ以上の転写制御配列と結合している。一部の実施形態では、標的遺伝子は、1つ又は複数の転写制御配列と不連続である。遺伝子がその転写制御配列と不連続である一部の実施形態では、遺伝子は、1つ若しくは複数の転写制御配列から約100bp~約500Mb、約500bp~約200Mb、約1kb~約100Mb、約25kb~約50Mb、約50kb~約1Mb、約100kb~約750kb、約150kb~約500kb、又は約175kb~約500kbの間隔を有し得る。一部の実施形態では、遺伝子は、転写制御配列から約100bp、300bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1kb、5kb、10kb、15kb、20kb、25kb、30kb、35kb、40kb、45kb、50kb、55kb、60kb、65kb、70kb、75kb、80kb、85kb、90kb、95kb、100kb、125kb、150kb、175kb、200kb、225kb、250kb、275kb、300kb、350kb、400kb、500kb、600kb、700kb、800kb、900kb、1Mb、2Mb、3Mb、4Mb、5Mb、6Mb、7Mb、8Mb、9Mb、10Mb、15Mb、20Mb、25Mb、50Mb、75Mb、100Mb、200Mb、300Mb、400Mb、500Mb、又はそれらの間の任意のサイズの間隔を有する。
一部の実施形態では、特定のタイプのアンカー配列媒介接合部(ゲノム複合体)は、ゲノム複合体を変更することにより、どのようにして遺伝子発現を調節するか、例えば、ターゲティング部分の選択を決定する上で役立ち得る。例えば、一部の実施形態では、いくつかのタイプのアンカー配列媒介接合部は、アンカー配列媒介接合部内に1つ若しくは複数の転写制御配列を含む。複合体の形成を妨害する、例えば、1つ又は複数のアンカー配列を変更することによるこうしたゲノム複合体の破壊は、ゲノム複合体内の標的遺伝子の転写を低減する可能性がある。
一部の実施形態では、構造的特徴の変化は、核形成後の活性及びプログラムを変更し得る。一部の実施形態では、構造的特徴の変化は、ゲノム複合体の一部であるが、遺伝子自体の一部ではないタンパク質、ノンコーディング配列などに対する変化から起こり得る。一部の実施形態では、構造変化の非存在下での非構造的(例えば、機能的)特徴の変化は、タンパク質、ノンコーディング配列などに対する変化から起こり得る。
アンカー配列
一般に、アンカー配列は、ゲノム複合体成分が特異的に結合するゲノム配列エレメントである。一部の実施形態では、アンカー配列との結合は、複合体形成を核形成する。
各アンカー配列媒介接合部は、1つ又は複数のアンカー配列、例えば、複数のアンカー配列を含む。一部の実施形態では、アンカー配列を操作又は変更して、天然に存在する複合体を破壊するか、或いは1つ若しくは複数の新たな複合体を形成する(例えば、外性複合体を形成するか、又は外性若しくは変更されたアンカー配列と一緒に天然に存在しない複合体を形成する)ことができる。こうした変更は、例えば、DNAのトポロジー構造を変更することにより、例えば、標的遺伝子が遺伝子調節及び制御因子(例えば、増強及びサイレンシング/抑制配列)と相互作用する能力を調節することによって、遺伝子発現を調節し得る。
一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部内の1つ若しくは複数のヌクレオチドの置換、付加又は欠失により、クロマチン構造を修飾する。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部のアンカー配列内の1つ若しくは複数のヌクレオチドの置換、付加又は欠失により、クロマチン構造を修飾する。
プロモータ配列
一部の実施形態では、本明細書に記載されるゲノム複合体は、プロモータを含むゲノム配列エレメントの共局在化を達成する。当業者であれば、プロモータが、典型的には、結合した遺伝子の転写を開始する配列エレメントであることを認識する。プロモータは、典型的に遺伝子の5’末端付近にあり、その転写開始部位から離れていない。
当業者は認識するように、真核細胞におけるタンパク質コード遺伝子の転写は、典型的に、基本転写因子(例えば、TFIID、TFIIE、TFIIHなど)及びメディエータと、転写開始前複合体としてのコアプロモータ配列との結合によって開始され、上記複合体は、RNAポリメラーゼIIを転写開始部位に向け、多くの事例では、RNAポリメラーゼエスケープ及び一次転写物の伸長が開始された後もコアプロモータ配列に結合されたままである。
多くの実施形態では、プロモータは、TATA、Inr、DPE、又はBREなどの配列エレメントを含むが、当業者は、プロモータを定義するためにこうした配列が必ずしも必要ではないことは十分に認識される。
転写調節配列
一部の実施形態では、本明細書に記載されるゲノム複合体は、1つ又は複数の転写調節配列を含むゲノム配列エレメントの共局在化を達成する。当業者は、遺伝子と関連する様々な正(例えば、エンハンサー)又は負(例えば、リプレッサー若しくはサイレンサー)の転写調節配列エレメントを周知している。典型的には、コグネイト調節タンパク質がこうした転写調節配列に結合すると、関連する遺伝子からの転写が変更される(例えば、正の調節配列の場合には増大し;負の調節配列の場合には低減する。
ゲノム複合体及び転写複合体の検出
一部の実施形態では、所与のゲノム複合体又は転写複合体は、特定の測定可能な量又は立体配置で特定のゲノム部位にあり、調節剤の投与は、特定の部位に存在する複合体の量を変更(例えば、低減)し得る。一部の実施形態では、調節剤によるゲノム複合体又は転写複合体の変更は、異なるゲノム部位に位置する別のゲノム複合体又は転写複合体に変化若しくは影響をもたらし得る。
一部の実施形態では、特定のアッセイ又は試験を実施して、1つ若しくは複数のゲノム又は転写複合体の存在若しくは非存在(例えば、所与のゲノム位置における1つ若しくは複数の複合体の存在若しくは非存在)を決定することができる。一部の実施形態では、アッセイを実施して、ゲノム又は転写複合体の妨害が成功したか否かを決定する。一部の実施形態では、複合体の位置決定は、1又は複数のアッセイによって正確に実施することができる。一部の実施形態では、アッセイは構造の読出しである。一部の実施形態では、アッセイは、機能の読出しである。当業者は、本出願を読んで、ゲノム又は転写複合体の構造及び/又は機能及び/又は活性(例えば、存在若しくは非存在)を決定するために、どのアッセイ及び視覚化技術が最も適切であるかに関して知識を有するであろう。
一部の実施形態では、アッセイは、特定のゲノム又は転写複合体の量を定量することができる(例えば、クロマチン免疫沈降アッセイ)。一部の実施形態では、アッセイは、特定の調節剤及び/又はゲノム若しくは転写複合体の存在を視覚化することができる(例えば、免疫染色)。一部の実施形態では、アッセイは、特定の調節剤及び/又はゲノム若しくは転写複合体の存在の視覚化及び位置決定の両方が可能である(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH))。一部の実施形態では、調節剤は、機能に対して検出可能な作用を引き起こし得る(例えば、ゲノム又は転写複合体の予想される成分は、調節剤が存在しない場合と比較して、調節剤の存在下で変化する機能的アッセイ)。
一部の実施形態では、アッセイは、免疫沈降、例えば、クロマチン免疫沈降のステップを含む。
一部の実施形態では、アッセイは、1回又は複数回の連続的クロマチン免疫沈降の実施、例えば、標的化ゲノム又は転写複合体の第1成分に対する抗体を用いる少なくとも最初のクロマチン免疫沈降、標的化ゲノム又は転写複合体の第2成分に対する抗体を用いる2回目のクロマチン免疫沈降、及び任意選択的に、ゲノム又は転写複合体に近接するゲノム配列の存在及び/若しくはレベルを決定するためのステップを含む(例えば、PCRアッセイ)。
一部の実施形態では、アッセイは、染色体立体配座キャプチャーアッセイである。一部の実施形態では、染色体キャプチャーアッセイは、一対のゲノム遺伝子座同士の相互作用の存在及び/又はレベルを検出する(例えば、「1対1」アッセイ、例えば、3Cアッセイ)。一部の実施形態では、染色体キャプチャーアッセイは、1つのゲノム遺伝子座と複数及び/又は全ての他のゲノム遺伝子座との間の相互作用の存在及び/又はレベルを検出する(例えば、「1対多又は全部」アッセイ、例えば、4Cアッセイ)。一部の実施形態では、染色体キャプチャーアッセイは、所与の領域内の複数及び/又は多数のゲノム遺伝子座の間の相互作用の存在及び/又はレベルを検出する(例えば、「多対多」アッセイ、例えば、5Cアッセイ)。一部の実施形態では、染色体キャプチャーアッセイは、全て若しくはほぼ全てのゲノム遺伝子座の間の相互作用の存在及び/又はレベルを検出する(例えば、「全部対全部」アッセイ、例えば、Hi-Cアッセイ)。
一部の実施形態では、アッセイは、細胞ゲノムを架橋するステップ(例えば、ホルムアルデヒドを用いて)を含む。一部の実施形態では、アッセイは、特定の遺伝子座又は目的とする特定の遺伝子座を富化するためのキャプチャーステップ(例えば、オリゴヌクレオチドを用いて)を含む。一部の実施形態では、アッセイは、シングルセルアッセイである。
一部の実施形態では、アッセイは、ゲノムワイドレベルでのゲノム遺伝子座間の相互作用を検出する(例えば、ペアエンドタグシーケンシングによるクロマチン相互作用解析(ChiA-PET)アッセイ)。
本明細書で引用される全ての参照文献及び刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
転写複合体
本開示に関連する転写複合体は、少なくとも1つのゲノム配列エレメント(例えば、遺伝子、プロモータ、又は転写制御配列、例えば、エンハンサー、サイレンサー、又はリプレッサー)、1つ若しくは複数の転写因子、及び1つ若しくは複数のncRNA、例えば、eRNAを含む構造を包含する。一部の実施形態では、転写複合体は、ゲノム複合体であってよい。一部の実施形態では、ゲノム複合体は、転写複合体であるか、又はそれを含み得る。例えば、転写複合体は、遺伝子、遺伝子に作動可能に連結したプロモータ、転写因子(例えば、プロモータに結合した)、エンハンサー、及びeRNA(例えば、エンハンサーから転写された)を含み得る。また、転写複合体が、2つ以上のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)を共局在化した場合、これもゲノム複合体となる。
一部の実施形態では、本開示は、複合体の非ゲノム核酸成分をターゲティングすることにより特定の転写複合体(例えば、1つ又は複数の特定の転写複合体のレベルを変更する)を変更するための技術を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるターゲティングのために好適な非ゲノム核酸は、eRNAである。
例えば、当業者は、特定の転写複合体が、1つ若しくは複数のエンハンサーRNA(例えば、eRNA)などの1つ又は複数のノンコーディングRNA(ncRNA)を含み得ることを認識されよう。当業者は、eRNAが、典型的にエンハンサーから転写されて、エンハンサーにより調節される1つ又は複数の遺伝子(エンハンサーの標的遺伝子)の発現の調節に参加し得ることを認識されよう。一部の実施形態では、転写複合体は、eRNA、エンハンサー(例えば、eRNAが転写されるエンハンサー)及びプロモータ、例えば、標的遺伝子に作動可能に連結したプロモータを含む。一部の実施形態では、こうした転写複合体は、1つ又は複数のアンカー配列核形成タンパク質、例えば、CTCF及びYY1をさらに含む。転写複合体は、1つ又は複数の転写因子を含む。当業者は、転写因子が、配列特異的因子(例えば、特定の1つ若しくは複数の遺伝子、例えば、p53又はOct4の転写を促進するもの)及び基本転写機構成分、例えば、メディエータを含むことを理解されよう。理論に束縛されることは望まないが、eRNAのレベルの変化は、例えば、標的遺伝子を含む転写複合体のレベルを変更することにより、又は標的遺伝子における転写複合体の占有を変更することによって、標的遺伝子の発現レベルの変化を引き起こし得る。一部の実施形態では、調節剤は、例えば、ターゲティング部分を介して、eRNAをターゲティングする、例えば、それに結合し得る。一部の実施形態では、eRNAのレベルの低下は、標的遺伝子のレベルの低下を引き起こし得る。非限定的な例として、表1(以下)に挙げるeRNAのノックダウンによって、特定の標的遺伝子のノックダウンが起こる。
調節剤
本明細書に記載されるように、本開示は、ゲノム複合体及び/又は転写複合体を調節する、例えば、妨害するための技術を提供し、これは、そうした複合体が形成された、或いはそうでなければ、形成されることが予想されるシステムを本明細書に記載の調節剤と接触させることにより達成される。一部の実施形態では、複合体形成及び/又は維持の程度(例えば、所与の時点での、又は一定期間にわたるシステム中の複合体の数)は、調節剤の存在により、調節剤の非存在下で観察される程度と比較して、変更(例えば、低減)される。
一般に、本明細書に記載の調節剤は、1つ又は複数のエンハンサーRNA(eRNA)と相互作用する。一部の実施形態では、調節剤は、ゲノム配列エレメントをターゲティングしない。一部の実施形態では、ターゲティングは、例えば、1つ又は複数のeRNAのターゲティングに加えて、1つ又は複数のゲノム配列エレメントのターゲティングを含み得る。
一部の実施形態では、調節剤は、複合体の1つ若しくは複数の態様(例えば、その成分がターゲティングされるゲノム複合体又は転写複合体)を妨害する。一部の実施形態では、妨害は、ゲノム複合体のトポロジー構造の妨害であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ゲノム複合体のトポロジー構造の妨害によって、所与の標的遺伝子の発現の変更、例えば、低減が起こる。一部の実施形態では、トポロジー構造の検出可能な妨害は観察されないが、それでも尚、所与の標的遺伝子の発現の変更が観察される。一部の実施形態では、妨害は、複合体(例えば、ゲノム又は転写複合体)の1成分、例えば、eRNAとの結合であるか、又はそれを含む。結合は、上記成分、例えば、eRNAの隔離、又は上記成分、例えば、eRNAの分解(例えば、細胞の1酵素により)を引き起こし得るが;いずれの例示的な場合も、上記成分、例えば、eRNAのレベルが変更され、例えば、低下し、それによって、例えば、標的遺伝子におけるゲノム/転写複合体のレベル又は占有が変更される。
一部の実施形態では、調節剤は、複合体の1つ若しくは複数の態様(例えば、その成分がターゲティングされるゲノム複合体若しくは転写複合体)を強化又は促進する。一部の実施形態では、強化又は促進は、ゲノム複合体のトポロジー構造の安定化を含む。一部の実施形態では、ゲノム複合体のトポロジー構造の強化又は促進によって、所与の標的遺伝子の発現の変更、例えば、低減又は増大が起こる。一部の実施形態では、トポロジー構造の検出可能な変更は観察されないが、それでも尚、所与の標的遺伝子の発現の変更が観察される。一部の実施形態では、強化又は促進は、複合体(例えば、ゲノム若しくは転写複合体)の1成分、例えば、eRNAとの結合であるか、又はそれを含む。結合は、上記成分、例えば、eRNAと別のゲノム複合体成分又は転写因子との相互作用の安定化をもたらすことができ、例えば、それによって、例えば、標的遺伝子におけるゲノム/転写複合体のレベル又は占有が変更される。
一部の実施形態では、ゲノム/転写複合体の標的成分、例えば、eRNAと調節剤の接触により、遺伝子発現の変更が起こる。一部の実施形態では、変更は、調節剤の非存在下での遺伝子発現と比較した変化(例えば、発現の低減)であるか、又はそれを含み得る。
調節剤は、ゲノム/転写複合体の標的成分、例えば、eRNAに結合して、ゲノム/転写複合体の形成を変更し得る(例えば、1つ又は複数の他の複合体成分に対する標的化成分の親和性を、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上変更することにより)。これに代わり、又は加えて、一部の実施形態では、調節剤による結合は、ゲノム複合体により影響されるゲノムDNAのトポロジーを、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上変更する。一部の実施形態では、調節剤は、標的化ゲノム/転写複合体に関連する遺伝子の発現を、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上変更する。一部の実施形態では、ゲノム/転写複合体の形成及び/又はゲノムDNAトポロジーに対する変化は、ChIP-Seq、ChIA-PET、RNA-Seq、及び/又はqPCRにより評価される。
一部の実施形態では、調節剤は、eRNAをターゲティングすることによりゲノム又は転写複合体を妨害する。一部の実施形態では、調節剤は、ゲノム複合体の形成及び/又はその維持を物理的に干渉する。一部の実施形態では、調節剤は、eRNAに結合して、ゲノム複合体を妨害する。
一部の実施形態では、本開示は、調節剤を提供し、これは、1つ若しくは複数のeRNA、及び/又はそうでなければ前記eRNAに結合し得るゲノム複合体成分若しくは転写因子に特異的に結合し、非標的化配列、例えば、非標的化eRNA(又はそれらに結合するゲノム複合体成分若しくは転写因子)には結合しないターゲティング部分を含む調節剤を提供する。一部の実施形態では、eRNAとターゲティング部分の前記結合は細胞内で、例えば、細胞内の内因性ポリペプチド(例えば、eRNAに結合するゲノム複合体成分若しくは転写因子)の結合に対してそれが競合する十分な親和性で起こる。
一部の実施形態では、本開示は、標的遺伝子の発現に対してターゲティング部分が及ぼし得る任意の作用に加えて、又はそれとは別に、標的遺伝子の発現の調節、例えば、発現の低減を増強するエフェクター部分を含む調節剤を提供する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、標的遺伝子の発現を低減する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、eRNA(例えば、ターゲティング部分が結合するeRNA)に結合しない。
以下に、より詳細に記載されるように、調節剤(並びに/又はターゲティング部分、エフェクター部分、及び/若しくは他の部分のいずれか)は、ポリペプチド、例えば、タンパク質若しくはタンパク質断片、抗体若しくは抗体断片(例えば、抗原結合断片、融合分子など)、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、小分子などであるか、又はそれを含んでもよく、且つ/或いは1つ若しくは複数の非天然残基又は他の構造を含んでもよい。一部の実施形態では、調節剤は、アプタマー及び/又は薬剤、特に本明細書に記載されるような低薬物動態を有するものであるか、又はそれを含んでもよい。
調節剤は、融合分子であるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、融合分子は、互いに共有結合したターゲティング部分とエフェクター部分を含む。
一部の実施形態では、融合分子、例えば、融合分子のターゲティング部分は、100、90、80、70、60、50、40、30、又は20以下のヌクレオチド(及び任意選択的に、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90のヌクレオチド)を含む。一部の実施形態では、融合分子、例えば、融合分子のエフェクター部分は、2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、又は100以下のアミノ酸(及び任意選択的に、少なくとも50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、又は1900のアミノ酸)を含む。一部の実施形態では、融合分子、例えば、融合分子のエフェクター部分は、100~2000、100~1900、100~1800、100~1700、100~1600、100~1500、100~1400、100~1300、100~1200、100~1100、100~1000、100~900、100~800、100~700、100~600、100~500、100~400、100~300、100~200、200~2000、200~1900、200~1800、200~1700、200~1600、200~1500、200~1400、200~1300、200~1200、200~1100、200~1000、200~900、200~800、200~700、200~600、200~500、200~400、200~300、300~2000、300~1900、300~1800、300~1700、300~1600、300~1500、300~1400、300~1300、300~1200、300~1100、300~1000、300~900、300~800、300~700、300~600、300~500、300~400、400~2000、400~1900、400~1800、400~1700、400~1600、400~1500、400~1400、400~1300、400~1200、400~1100、400~1000、400~900、400~800、400~700、400~600、400~500、500~2000、500~1900、500~1800、500~1700、500~1600、500~1500、500~1400、500~1300、500~1200、500~1100、500~1000、500~900、500~800、500~700、500~600、600~2000、600~1900、600~1800、600~1700、600~1600、600~1500、600~1400、600~1300、600~1200、600~1100、600~1000、600~900、600~800、600~700、700~2000、700~1900、700~1800、700~1700、700~1600、700~1500、700~1400、700~1300、700~1200、700~1100、700~1000、700~900、700~800、800~2000、800~1900、800~1800、800~1700、800~1600、800~1500、800~1400、800~1300、800~1200、800~1100、800~1000、800~900、900~2000、900~1900、900~1800、900~1700、900~1600、900~1500、900~1400、900~1300、900~1200、900~1100、900~1000、1000~2000、1000~1900、1000~1800、1000~1700、1000~1600、1000~1500、1000~1400、1000~1300、1000~1200、1000~1100、1100~2000、1100~1900、1100~1800、1100~1700、1100~1600、1100~1500、1100~1400、1100~1300、1100~1200、1200~2000、1200~1900、1200~1800、1200~1700、1200~1600、1200~1500、1200~1400、1200~1300、1300~2000、1300~1900、1300~1800、1300~1700、1300~1600、1300~1500、1300~1400、1400~2000、1400~1900、1400~1800、1400~1700、1400~1600、1400~1500、1500~2000、1500~1900、1500~1800、1500~1700、1500~1600、1600~2000、1600~1900、1600~1800、1600~1700、1700~2000、1700~1900、1700~1800、1800~2000、1800~1900、又は1900~2000アミノ酸を含む。
調節剤、例えば、融合分子は、ポリペプチド、例えば、RNA結合タンパク質、例えば、ncRNA、例えば、eRNAをターゲティングするRNA結合タンパク質を含み得る。一部の実施形態では、RNA結合タンパク質は、Puf、Cas13、又はそのいずれかの変異体若しくは機能性断片から選択される。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ポリペプチド、例えば、RNA結合タンパク質、例えば、Puf又はCas13を含む。一部の実施形態では、エフェクター部分は、ポリペプチド、例えば、RNA結合タンパク質、例えば、Puf又はCas13を含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、RNA結合タンパク質と、ゲノム複合体又は転写複合体を強化、促進、若しくは安定化するエフェクター部分とを含むターゲティング部分を含む。一部の実施形態では、エフェクター部分は、p300、VP16、VP64、VP160、又はそのいずれかの機能性断片若しくは変異体であるか、又はそれを含む。
調節剤、例えば、融合分子は、核酸、例えば、1つ又は複数の核酸を含み得る。用語「核酸」は、オリゴヌクレオチド鎖中に組み込まれているか、又は組み込まれ得る任意の化合物を指す。一部の実施形態では、核酸は、リン酸ジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖中に組み込まれているか、又は組み込まれ得る化合物及び/若しくは物質である。文脈から明らかになるように、一部の実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/又はヌクレオシド)を指し;一部の実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAであるか、又はそれを含み;一部の実施形態では、「核酸」は、DNAであるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の天然の核酸残基であるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の核酸アナログであるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸アナログは、それがリン酸ジエステル骨格を利用しない点で、核酸とは異なる。例えば、一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の「ペプチド核酸」であるか、それを含むか、又はそれから構成され、ペプチド核酸は、当技術分野で公知であり、骨格にリン酸ジエステル結合ではなくペプチド結合を有するものであり、これらは本発明の範囲に含まれるとみなされる。これに代わり、又は加えて、一部の実施形態では、核酸は、リン酸ジエステル結合ではなく、1つ若しくは複数のホスホロチオエート及び/又は5’-N-ホスホロアミダイト結合を有する。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)であるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数のヌクレオシドアナログ(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、介在塩基、及びそれらの組合せ)であるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸は、天然の核酸に存在するものと比較して、1つ若しくは複数の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。一部の実施形態では、核酸は、RNA又はタンパク質などの機能性遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、1つ又は複数のイントロンを含む。一部の実施形態では、核酸は、天然の供給源からの単離、相補性鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボ若しくはインビトロ)、組換え細胞若しくは系中での生殖、及び化学合成のうちの1つ又は複数により調製される。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000残基長又はそれ以上である。一部の実施形態では、核酸は、一部が、又は完全に一本鎖であり;一部の実施形態では、核酸は、一部が、又は完全に二本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードするか、又はポリペプチドをコードする配列の補体である少なくとも1つのエレメントを含むヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、酵素活性を有する。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、核酸を含むか、又は核酸である。一部の実施形態では、エフェクター部分は、核酸を含むか、又は核酸である。一部の実施形態では、本明細書に記載される核酸部分又は実体に含まれ得る核酸は、DNA、RNA、及び/又は人工若しくは合成核酸又は核酸アナログ若しくは模倣物であってもよいし、或いはそれを含有してもよい。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載される核酸部分に含まれる核酸は、以下:ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)、ペプチド核酸(PNA)、ペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲート、ロック核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ポリアミド、トリプレックス形成オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、tRNA、mRNA、rRNA、miRNA、gRNA、siRNA若しくは他のRNAi分子(例えば、本明細書に記載されるノンコーディングRNAをターゲティングするもの、及び/又は本明細書に記載される標的化ゲノム複合体に関連する特定の遺伝子の発現産物をターゲティングするもの)などのうちの1つ若しくは複数であるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、核酸は、天然に存在するDNA又はRNA残基ではない1つ若しくは複数の残基を含んでもよく、リン酸ジエステル結合ではない1つ若しくは複数の連結(例えば、ホスホロチオエート結合などであり得る)を含んでもよく、且つ/又は例えば、2’-OMePといった2’O修飾などの1つ若しくは複数の修飾を含んでもよい。合成核酸を調製するのに有用な種々の核酸構造は当技術分野で公知であり(例えば、国際公開第2017/062862l号パンフレット及び同第2014/012081号パンフレットを参照)、当業者は、これらが、本開示に従って使用され得ることを理解されよう。
一部の実施形態では、核酸は、約2~約5000nt、約10~約100nt、約50~約150nt、約100~約200nt、約150~250nt、約200~約300nt、約250~約350nt、約300~約500nt、約10~約1000nt、約50~約1000nt、約100~約1000nt、約1000~約2000nt、約2000~約3000nt、約3000~約4000nt、約4000~約5000nt、又はそれらの間の任意の範囲の長さを有し得る。
核酸のいくつかの例として、限定されないが、内因性遺伝子(例えば、本明細書の他所に記載されるgRNA若しくはアンチセンスssDNA)とハイブリダイズする核酸、ウイルスDNA若しくはRNAなどの外性核酸とハイブリダイズする核酸、RNAとハイブリダイズする核酸、遺伝子転写に干渉する核酸、RNA翻訳に干渉する核酸、RNAを安定化するか、又は分解のためのターゲティングなどによってRNAを不安定化する核酸、その発現若しくはその機能の干渉によるDNA又はRNA結合因子に干渉する核酸、細胞内タンパク質若しくはタンパク質複合体と連結して、その機能を調節する核酸が挙げられる。
本開示は、本明細書に記載されるように、提供される組成物の有用な成分としてRNA治療薬(例えば、修飾RNA)を含む調節剤を企図する。例えば、一部の実施形態では、目的のタンパク質をコードする修飾mRNAを本明細書に記載のポリペプチドと連結させて、対象においてインビボで発現させることができる。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、1つ又は複数のヌクレオシドアナログを含む。一部の実施形態では、核酸配列は、1つ又は複数の天然ヌクレオシドヌクレオシドに加えて、又はそれに代わるものとして、例えば、プリン若しくはピリミジン、例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミン及びウラシル、1つ若しくは複数のヌクレオシドアナログを含んでもよい。一部の実施形態では、核酸配列は、1つ又は複数のヌクレオシドアナログを含む。ヌクレオシドアナログとして、限定されないが、ヌクレオシドアナログ、例えば、5-フルオロウラシル;5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、4-メチルベンズイミダゾール、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ジヒドロウリジン、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6-ジアミノプリン、3-ニトロピロール、イノシン、チオウリジン、キューオシン、ワイオシン、ジアミノプリン、イソグアニン、イソシトシン、ジアミノピリミジン、2,4-ジフルオロトルエン、イソキノリン、ピロロ[2,3-β]ピリジン、及びプリン又はピリミジン側鎖と塩基対合することができるいずれか他のものが挙げられる。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、遺伝子発現産物をコードする核酸配列を含む。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、遺伝子発現産物をコードしない核酸を含む。例えば、ターゲティング部分は、ncRNA、例えば、eRNAとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み得る。例えば、一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドの配列は、標的eRNAの補体を含むか、又は標的eRNAの補体と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一の配列を有する。
調節剤、例えば、融合分子に使用するのに好適な核酸配列として、限定されないが、DNA、RNA、修飾オリゴヌクレオチド(例えば、化学修飾、例えば、骨格連結、糖分子、及び/又は核酸塩基を変更する修飾など)、並びに人工核酸を挙げることができる。一部の実施形態では、核酸配列として、限定されないが、ゲノムDNA、cDNA、ペプチド核酸(PNA)若しくはペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲート、ロック核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ポリアミド、トリプレックス形成オリゴヌクレオチド、修飾DNA、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド、tRNA、mRNA、rRNA、修飾RNA、miRNA、gRNA、及びsiRNA又は他のRNA若しくはDNA分子が挙げられる。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子で使用するのに好適な核酸配列は、約15~200、20~200、30~200、40~200、50~200、60~200、70~200、80~200、90~200、100~200、110~200、120~200、130~200、140~200、150~200、160~200、170~200、180~200、190~200、215~190、20~190、30~190、40~190、50~190、60~190、70~190、80~190、90~190、100~190、110~190、120~190、130~190、140~190、150~190、160~190、170~190、180~190、15~180、20~180、30~180、40~180、50~180、60~180、70~180、80~180、90~180、100~180、110~180、120~180、130~180、140~180、150~180、160~180、170~180、15~170、20~170、30~170、40~170、50~170、60~170、70~170、80~170、90~170、100~170、110~170、120~170、130~170、140~170、150~170、160~170、15~160、20~160、30~160、40~160、50~160、60~160、70~160、80~160、90~160、100~160、110~160、120~160、130~160、140~160、150~160、215~150、20~150、30~150、40~150、50~150、60~150、70~150、80~150、90~150、100~150、110~150、120~150、130~150、140~150、15~140、20~140、30~140、40~140、50~140、60~140、70~140、80~140、90~140、100~140、110~140、120~140、130~140、15~130、20~130、30~130、40~130、50~130、60~130、70~130、80~130、90~130、100~130、110~130、120~130、215~120、20~120、30~120、40~120、50~120、60~120、70~120、80~120、90~120、100~120、110~120、15~110、20~110、30~110、40~110、50~110、60~110、70~110、80~110、90~110、100~110、15~100、20~100、30~100、40~100、50~100、60~100、70~100、80~100,90~100、15~90、20~90、30~90、40~90、50~90、60~90、70~90、80~90、15~80、20~80、30~80、40~80、50~80、60~80、70~80、15~70、20~70、30~70、40~70、50~70、60~70、15~60、20~60、30~60、40~60、50~60、15~50、20~50、30~50、40~50、15~40、20~40、30~40、15~30、20~30、若しくは15~20ヌクレオチド、又はそれらの間の任意の範囲の長さを有する。
一部の実施形態では、核酸(例えば、調節剤、例えば、融合分子をコードする核酸、又は調節剤、例えば、融合分子に含有される核酸)は、作動可能に連結した配列を含んでもよい。用語「作動可能に連結した」は、第1核酸配列と第2核酸配列との間の関係を表し、その場合、第1核酸配列は、例えば、融合遺伝子として一緒に共発現されることにより、並びに/又は転写、エピジェネティック修飾、及び/若しくは染色体トポロジーに影響を与えることによって、第2核酸配列に影響を及ぼすことができる。一部の実施形態では、作動可能に連結(された)とは、2つの核酸配列が、同じ核酸分子に含まれることを意味する。別の実施形態では、作動可能に連結(された)とは、2つの核酸配列が、同じ核酸分子上で互いに近接しており、例えば、互いに1000、500、100、50、若しくは10塩基対以内にあるか、又は互いに隣していることを意味する場合もある。一実施形態では、タンパク質をコードする配列と作動可能に連結されたプロモータ又はエンハンサー配列は、例えば、転写を実施することができる細胞又は無細胞系において、タンパク質をコードする配列の転写を促進することができる。一実施形態では、第2タンパク質若しくはタンパク質の第2断片をコードする第2核酸配列と作動可能に連結した、タンパク質若しくはタンパク質の断片をコードする第1核酸配列は一緒に発現され、例えば、第1及び第2核酸配列は、融合遺伝子を含み、一緒に転写され、翻訳されて、融合タンパク質を産生する。
ターゲティング部分
一部の実施形態では、調節剤は、ターゲティング部分を含む融合分子であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、eRNA、例えば、ゲノム複合体若しくは転写複合体の1成分であるeRNAをターゲティングし、例えば、それに結合するか、又はeRNAと結合するゲノム複合体成分若しくは転写因子に結合する。ターゲティング部分の標的は、その標的化成分(例えば、eRNA、又はeRNAと結合するゲノム複合体成分若しくは転写因子)と呼ばれることもある。
一部の実施形態では、ターゲティング部分とその標的化成分との間の相互作用は、標的化成分がそうでなければ形成するであろう1つ又は複数の他の相互作用に干渉する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との間の結合は、標的化成分が、別の転写因子、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントと相互作用するのを阻止する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、別の転写因子、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントに対する標的化成分の結合親和性を低減する。一部の実施形態では、別の転写因子、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントに対する標的化成分のKは、ターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子の存在下で、ターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子が存在しない場合に比して、少なくとも1.05×(即ち、1.05 倍)、1.1×、1.2×、1.3×、1.4×、1.5×、1.6×、1.7×、1.8×、1.9×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、20×、50×、又は100×(及び任意選択的に、20×、10×、9×、8×、7×、6×、5×、4×、3×、2×、1.9×、1.8×、1.7×、1.6×、1.5×、1.4×、1.3×、1.2×、又は1.1×以下)増加する。一部の実施形態では、結合親和性及び/又はKは、ChIP-Seqを用いて決定される。
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、標的化成分を含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルを変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、標的化成分を含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルは、ターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム配列エレメント(例えば、標的遺伝子、又は標的化eRNAに関連するエンハンサー)において、ゲノム複合体又は転写複合体の占有を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、占有は、ターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。一部の実施形態では、ゲノム/転写複合体の形成及び/又はゲノムDNAトポロジーに対する変化は、ChIP-Seq、ChIA-PET、RNA-Seq、及び/又はqPCRにより評価される。
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム配列エレメント(例えば、遺伝子、プロモータ、又はエンハンサー、例えば、ゲノム若しくは転写複合体に関連するもの)におけるゲノム複合体又は転写複合体の占有を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム配列エレメントにおけるゲノム複合体又は転写複合体の占有を、ターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子の存在下で、前記調節剤の非存在下に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。一部の実施形態では、占有は、例えば、HiC、ChIP、免疫沈降、又は当技術分野で公知の他の結合測定アッセイにより決定して、或るエレメントが別のエレメントと結合した状態で見出され得る頻度を指す。
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム複合体又は転写複合体中/ゲノム複合体又は転写複合体での標的化成分の占有を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム複合体又は転写複合体中/ゲノム複合体又は転写複合体での標的化成分の占有を、ターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、標的化成分を含むゲノム複合体又は転写複合体に関連する標的遺伝子の発現を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現は、ターゲティング部分を含む調節剤、例えば、融合分子の存在下で、前記調節剤の非存在下に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。
一部の実施形態では、標的遺伝子は、ゲノム又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の形成若しくは妨害が、標的遺伝子の発現(例えば、転写)の変更を引き起こす場合に、ゲノム又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部と「関連している」。例えば、一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部の形成又は妨害は、増強若しくはサイレンシング/抑制配列を標的遺伝子と関連させるか、又は無関係にさせる。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド(例えば、gRNA、siRNAなど)、一部の実施形態では、そうした核酸は、1つ若しくは複数の修飾残基、連結、若しくは他の特徴を含有し得る)、ポリペプチド(例えば、タンパク質、タンパク質断片、抗体、抗体断片(例えば、抗原結合断片)、若しくはその両方であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、1つ若しくは複数の修飾残基、連結、又は他の特徴)、ペプチド核酸、小分子などを含み得る。
当業者は、本開示を読んで、一部の実施形態では、調節剤が複合体特異的であることを理解されよう。即ち、一部の実施形態では、ターゲティング部分は、1若しくは複数のゲノム又は転写複合体中(例えば、1細胞内の)のその標的化成分に特異的に結合するが、非標的化ゲノム又は転写複合体(例えば、同じ細胞内の)には結合しない。一部の実施形態では、調節剤は、特定の細胞型だけに存在する、且つ/又は特定の発生段階若しくは時期に存在するゲノム複合体を特異的にターゲティングする。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、同じシステム(例えば、細胞、組織など)に存在し得る他のゲノム若しくは転写複合体に比して、それが特定のゲノム若しくは転写複合体と特異的に相互作用するように、設計及び/又は投与される。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ゲノム又は転写複合体中の標的化成分、例えば、eRNAと相補的な核酸配列を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ゲノム又は転写複合体中の標的化成分、例えば、eRNAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上と相補的な核酸配列を含む。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、配列番号9013~9073から選択される配列と少なくとも50、60、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%同一の核酸配列を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、配列番号9013~9073から選択される配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15以下の変更(例えば、置換、欠失、又は挿入)を有する核酸配列を含む。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、配列番号9013~9073から選択される配列の補体と少なくとも50、60、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%同一の核酸配列を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、配列番号9013~9073から選択される配列の補体に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15以下の変更(例えば、置換、欠失、又は挿入)を有する核酸配列を含む。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、タンパク質、例えば、RNA結合タンパク質、又はその機能性断片を含む。一部の実施形態では、そうしたRNA結合タンパク質は、ncRNA、例えば、本明細書に記載されるeRNA又は他のRNA標的に結合する。RNA結合タンパク質の例として、限定されないが、Cas13及びPufが挙げられる。
一部の実施形態では、ゲノム若しくは転写複合体のポリペプチド成分をターゲティングするターゲティング部分は、標的ポリペプチド成分と特異的に結合するポリペプチド剤(例えば、抗体若しくはその抗原結合断片)であるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ゲノム若しくは転写複合体のポリペプチド成分、例えば、eRNAに結合するポリペプチドをターゲティングし、例えば、それに結合する。一部の実施形態では、ポリペプチドをターゲティングするターゲティング部分は、ポリペプチドではないか、又はそれを含まない。一部の実施形態では、ポリペプチドをターゲティングするターゲティング部分は、ポリペプチド、例えば、抗体又はその抗原結合断片を含む。一部の実施形態では、ポリペプチド、例えば、eRNAに結合するポリペプチドをターゲティングするターゲティング部分は、標的化成分と特異的に結合する小分子又は核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的化成分と相互作用する非抗体ポリペプチド、例えば別のタンパク質(例えば、別のゲノム/転写複合体成分、若しくはその変異体)を含むか、又はさらに(例えば、核酸に加えて)含み得る。
例えば、一部の実施形態では、ターゲティング部分は、以下:DNA結合小分子(例えば、副溝(minor groove)若しくは主溝(major groove)バインダー)、ペプチド(例えば、ジンクフィンガー、TALEN、新規若しくは修飾ペプチド)、タンパク質(例えば、CTCF、損傷CTCF結合及び/若しくは粘着結合親和性を備える修飾CTCF)、又は核酸(例えば、ssDNA、修飾DNA若しくはRNA、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲート、ロック核酸、架橋核酸、ポリアミド、ペプチド核酸、及び/若しくはトリプレックス形成オリゴヌクレオチドのうち1つ若しくは複数を含む。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、核酸をターゲティングし、例えば、それに結合する。こうしたターゲティング部分は、合成核酸(SNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ポリアミド-SNA/LNA/BNA/PNAコンジュゲート、DNA挿入剤(例えば、SNA/LNA/BNA/PNAコンジュゲート)、及びDNA配列特異的結合ペプチド-又はタンパク質-SNA/LNA/PNA/BNAコンジュゲートを含み得る。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ARID1Aプロモータから転写されたncRNA、例えば、eRNAをターゲティングする。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ARID1Aプロモータから転写されたncRNA、例えば、eRNAに相補的な配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%同一の配列を有する核酸を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ARID1Aプロモータから転写されたncRNA、例えば、eRNAと相補的な配列に対して、8、7、6、5、4、3、2、1、又はゼロの変更を備える配列を有する核酸を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ARID1Aプロモータから転写されたncRNA、例えば、eRNAとハイブリダイズするリボ核酸デュプレックスを含み、その場合、ncRNA:リボ核酸デュプレックス複合体は、siRNA媒介の分解に対して感受性が高い。
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、表2~7から選択される配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%同一の核酸配列を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、表2~7から選択される配列に対して、8、7、6、5、4、3、2、1、又はゼロの変更を備える配列を有する核酸を含む。
エフェクター部分
本明細書に記載されるように、調節剤、例えば、融合分子は、例えば、eRNAを含む標的化ゲノム複合体若しくは転写複合体の構造及び/又は機能を調節する(例えば、それに対する作用を有する)。一部の実施形態では、調節剤は、ターゲティング部分を含み、これは、ゲノム/転写複合体の標的化成分(例えば、eRNA又はeRNAを含む成分)に結合することにより、調節を達成する。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ターゲティング部分とエフェクター部分を含み、その場合、エフェクター部分は、調節剤の作用に寄与するか、又はそれを増強する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、ターゲティング部分の結合が、例えば、標的遺伝子のゲノム複合体若しくは転写複合体又はその発現のレベル又は占有に対して有する作用を増大させる。一部の実施形態では、エフェクター部分は、ターゲティング部分の結合が有する作用とは無関係の機能性を有する。例えば、エフェクター部分は、例えば、ゲノム配列エレメント(例えば、ターゲティング部分によりターゲティングされるゲノム複合体又は転写複合体中、若しくはそれに近接したゲノム配列エレメント)をターゲティングし、例えば、それと結合することができる。
一部の実施形態では、エフェクター部分は、生物活性を調節し、例えば、酵素活性、遺伝子発現、細胞シグナル伝達、及び細胞若しくは器官機能を増大又は低減する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、例えば、転写又は翻訳に影響を与える調節タンパク質に結合し、それにより、調節タンパク質の活性を調節する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、本明細書に記載されるような活性化因子若しくは阻害剤(又は「負のエフェクター」)である。エフェクター部分はまた、タンパク質安定性/分解及び/又は転写物安定性/分解も調節し得る。例えば、エフェクター部分は、ユビキチン化のためのタンパク質をターゲティングするか、又は標的タンパク質の分解を調節(例えば、ユビキチン化を増大若しくは低減)し得る。一部の実施形態では、エフェクター部分は、酵素の活性部分を遮断することにより、酵素活性を阻害する。例えば、エフェクター部分は、メトトレキサート、テトラヒドロ葉酸の構造アナログ、ジヒドロ葉酸レダクターゼの補酵素(ジヒドロ葉酸レダクターゼと、その天然基質の1000倍強力に結合して、ヌクレオチド塩基合成を阻害する)であるか、又はそれらを含み得る。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ターゲティング部分を含み、これは、ゲノム複合体又は転写複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)内の核酸、例えば、eRNAに結合し、また、ゲノム複合体又は転写複合体を調節するエフェクター部分と作動可能に連結されている。
一部の実施形態では、エフェクター部分は、化学物質、例えば、シトシン(C)又はアデニン(A)を調節する化学物質(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム)である。一部の実施形態では、エフェクター部分は、酵素活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ、デメチラーゼ、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)、又はデアミナーゼ活性)を有する。
エフェクター部分は、小分子、ペプチド、核酸、ナノ粒子、アプタマー、又は低PK/PDを有する薬剤のうち1つ若しくは複数であるか、又はそれを含み得る。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、1つのエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、2つ以上のエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、若しくはそれ以上のエフェクタードメイン(及び任意選択的に、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、若しくは2未満のエフェクタードメイン)を含む。例えば、調節剤、例えば、融合分子は、DNAメチル化に特定の役割を有する複数の酵素(例えば、1若しくは複数種のメチルトランスフェラーゼ、デメチラーゼ、又はDNAトポロジー修飾酵素)を含み得る。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ターゲティング部分とエフェクター部分を連結するリンカー、例えば、アミノ酸リンカーを含む。一部の実施形態では、リンカーは、2つ以上のアミノ酸、例えば、1つ若しくは複数のGS配列を含む。調節剤、例えば、融合分子が、複数のエフェクター部分を含むいくつかの実施形態では、調節剤は、上記部分の各々の間にリンカーを含む。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、ペプチドリガンド、完全長タンパク質、タンパク質断片、抗体、抗体断片、及び/又はターゲティングアプタマーを含み得る。一部の実施形態では、調節剤のタンパク質、例えば、融合分子は、細胞外受容体、神経ペプチド、ホルモンペプチド、ペプチド薬剤、毒性ペプチド、ウイルス若しくは微生物ペプチド、合成ペプチド、又はアゴニスト若しくはアンタゴニストペプチドなどの受容体に結合し得る。
一部の実施形態では、ペプチド又はタンパク質部分、調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、抗原、抗体、抗体断片(例えば、単一ドメイン抗体、リガンドなど)、並びに受容体(例えば、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-2受容体2、コレシストキニンB(CCKB)、及びソマトスタチン受容体)、ペプチド治療薬(例えば、Gタンパク質結合受容体(GPCR)若しくはイオンチャネルのような特定の細胞表面受容体に結合するもの、天然の生物活性ペプチド由来の合成若しくはアナログペプチド、抗微生物ペプチド、孔形成ペプチド、腫瘍ターゲティング若しくは細胞傷害性ペプチドなど)、並びに分解若しくは自壊ペプチド(例えば、アポトーシス誘導ペプチドシグナル又は光増感剤ペプチドなど)を含み得る。
本明細書に記載されるペプチド又はタンパク質はまた、小さな抗原結合ペプチド、例えば、抗原結合抗体又は抗体様断片、例えば、一本鎖抗体、ナノボディなども含み得る(例えば、Steeland et al.2016.Nanobodies as therapeutics:big opportunities for small antibodies.Drug Discov Today:21(7):1076-113を参照)。こうした小分子抗原結合ペプチドは、例えば、細胞質ゾル抗原、核抗原、オルガネラ内抗原に結合し得る。
一部の態様では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、抗体又はその断片を含む(例えば、ターゲティング又はエフェクター部分は、抗体を含む)。一部の実施形態では、遺伝子発現は、1若しくは複数の抗体又はその断片であるか、或いはそれを含むエフェクター部分の使用により変更される。一部の実施形態では、遺伝子の発現は、1つ若しくは複数の抗体(又はその断片)及びdCas9であるか、或いはそれらを含むエフェクター部分の使用により変更される。一部の実施形態では、抗体又はその断片は、特定のゲノム又は転写複合体に対してターゲティングされる。一部の実施形態では、2つ以上の抗体又はその断片(例えば、同じ抗体又は1つ若しくは複数の異なる抗体の2つ以上(例えば、各抗体が異なる抗体である少なくとも2つの抗体))を特定のゲノム又は転写複合体に対してターゲティングさせる。
一部の実施形態では、遺伝子発現は、1つ若しくは複数の抗体又はその断片及びdCas9を含む、調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分の使用により、変更、例えば、低減される。一部の実施形態では、1つ若しくは複数の抗体又はその断片を、dCas9及び標的特異的ガイドRNAを介して特定のゲノム又は転写複合体に対してターゲティングさせる。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子に使用するための抗体又はその断片。抗体は、融合物、キメラ抗体、非ヒト化抗体、部分的又は完全ヒト型抗体などであってよい。当業者には理解されるように、ターゲティングに使用される抗体のフォーマットは、所与の標的に応じて同じでも異なっていてもよい。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、接合部核形成分子、接合部核形成分子をコードする核酸、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、エフェクター部分は、接合部核形成分子、接合部核形成分子をコードする核酸、又はそれらの組合せを含む。
接合部核形成分子は、例えば、CTCF、コヒーシン、USF1、YY1、TATAボックス結合タンパク質関連因子3(TAF3)、ZNF143結合モチーフ、又はアンカー配列媒介接合部の形成を促進する別のポリペプチドであってもよい。接合部核形成分子は、内因性ポリペプチド又は他のタンパク質、例えば、転写因子、例えば、自己免疫調節因子(AIRE)、別の因子、例えば、X-不活性化特異的転写物(XIST)、又は目的とする特定のDNA配列を認識するように操作されたポリペプチド(例えば、配列認識用のジンクフィンガー、ロイシンジッパー若しくはbHLHドメインを有する)であってもよい。接合部核形成分子は、アンカー配列媒介接合部内又はその周辺のDNA相互作用を調節し得る。例えば、接合部核形成分子は、アンカー配列媒介接合部形成又は破壊を変更するアンカー配列に他の因子を動員することができる。
接合部核形成分子はさらに、ホモ又はヘテロ二量体化のために二量体化ドメインを有してもよい。1つ又は複数の接合部核形成分子(例えば、内因性及び操作された)は、相互作用して、アンカー配列媒介接合部を形成し得る。一部の実施形態では、安定化ドメイン、例えば、コヒーシン相互作用ドメインをさらに含むように、接合部核形成分子を操作して、アンカー配列媒介接合部を安定化する。一部の実施形態では、標的配列と結合するように、接合部核形成分子を操作し、例えば、標的配列結合親和性を調節する。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部内のアンカー配列に対して選択された結合親和性を有する接合部核形成分子を選択するか、又は操作する。
CTCFの非存在下で、トポロジーが関連するドメイン、例えば、遠位DNA領域又は遺伝子座同士のトポロジカル相互作用を調べるために、CTCF中の不活性化突然変異を保有する細胞、並びに染色体立体配座キャプチャー若しくは3Cベースの技術の使用により、接合部核形成分子及びその対応するアンカー配列を見出すことができる。また、長期にわたるDNA相互作用を明らかにすることもできる。追加の解析としては、ベイト、例えば、コヒーシン、YY1若しくはUSF1、ZNF143結合モチーフ、及びMSを用いて、ベイトに関連する複合体を見出すChIA-PET解析を挙げることができる。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、タンパク質のDNA結合ドメインを含む。いくつかのこうした実施形態では、調節剤のターゲティング部分は、DNA結合ドメインであるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、ターゲティング部分及び/又はエフェクター部分の1つ若しくは複数は、DNA結合ドメインであるか、又はそれを含む。
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、調節剤、例えば、融合分子のターゲティングの作用を増強又は変更するが、単独では調節剤による完全なターゲティングを達成しない。一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、調節剤、例えば、融合分子のターゲティングを増強する。一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、調節剤、例えば、融合分子の効力を増強する。DNA結合タンパク質は、DNAとの結合に重要な役割を果たす異なる構造モチーフを有する。ヘリックス-ターン-ヘリックス(HTH)モチーフは、リプレッサータンパク質中の共有のDNA認識モチーフである。こうしたモチーフは、2つのヘリックスを有し、その1つは、結合特異性を賦与する側鎖を備えたDNAを認識するもの(別名:認識ヘリックス)である。こうしたモチーフは、一般に、発生過程に関与するタンパク質を調節するために使用される。時として、2つ以上のタンパク質は、同じ配列について競合するか、又は同じDNA断片を認識する。様々なタンパク質は、同じ配列に対するその親和性、又はDNA立体配座が、それぞれH-結合、塩架橋及びファンデルワールス相互作用によって異なる可能性がある。
ヘリックス-ヘアピン-ヘリックスHhH構造モチーフを備えるDNA結合タンパク質は、タンパク質骨格窒素とDNAリン酸基との間の窒素結合の形成を介して起こる非配列特異的DNA結合に関与し得る。
HLH構造モチーフを備えるDNA結合ドメインは、転写調節タンパク質であり、主として多様な発生過程に関連する。HLH構造モチーフは、残基に関して、HTH又はHhHモチーフより長い。これらのタンパク質の多くは相互作用して、ホモ-及びヘテロ-二量体化を形成する。構造モチーフは、2つの長いヘリックス領域と、DNAに結合するN末端ヘリックスとから構成され、複合体は、タンパク質が二量体化することを可能にする。
いくつかの転写因子の場合、DNAを含む二量体結合部位は、ロイシンジッパーを形成する。このモチーフは、2つの両親媒性ヘリックスを含み、各サブユニットからの1つが、互いに相互作用して、左巻きコイルドコイル超二次構造をもたらす。ロイシンジッパーは、隣接するヘリックスからのロイシンを含む1つのヘリックス中に規則的に間隔をあけたロイシン残基の相互篏合構造(interdigitation)である。主に、ロイシンジッパーに関与するヘリックスは、疎水性の残基a及びdと、親水性の他の残基を備えるヘプタッド(heptad)配列(abcdefg)を呈示する。ロイシンジッパーモチーフは、ホモ-又はヘテロ二量体形成のいずれかを媒介することができる。
一部の真核生物転写因子は、Zn-フィンガーと呼ばれるユニークなモチーフを示し、ここで、Zn++イオンは、2つのCysと2つのHis残基により配位結合されている。こうした転写因子は、化学量論ββ’αを有する三量体を含む。Zn++配位結合の明らかな作用は、疎水性コア残基ではなく、小さな複合体構造の安定化である。各Zn-フィンガーは、立体配座的に同じ様式で、二重螺旋の主溝内の連続的な三重塩基対セグメントと相互作用する。タンパク質-DNA相互作用は、2つの要因:(i)α-ヘリックスとDNAセグメント、主としてArg残基とグアニン塩基の間のH-結合相互作用、(ii)DNAリン酸骨格、主としてArg及びHisとのH-結合相互作用によって決定される。別のZn-フィンガーモチーフは、6つのCysでZn++をキレートする。
DNA結合タンパク質はまた、TATAボックス結合タンパク質(TBP)も含み、これは、クラスII開始因子TFIIDの成分として最初に同定された。これらの結合タンパク質は、全3つの各々でサブユニットとして作用する核RNAポリメラーゼによる転写に参加する。TBPの構造は、89~90アミノ酸のα/β構造ドメインを示す。TBPのC-末端又はコア領域は、副溝決定因子を認識して、DNA湾曲を促進するTATAコンセンサス配列(TATAa/tAa/t、配列番号3)に、高い親和性で結合する。TBPは、分子サドルと類似している。結合側は、10鎖逆平行βシートの中央の8鎖と一列に並ぶ。上部表面は、4つのα-ヘリックスを含み、転写機構の様々な成分に結合する。
DNAは、窒素塩基を介して塩基特異性を賦与する。アミノ酸のR基、並びにリシン、アルギン、ヒスチジン、アスパラギン及びグルタミンなどの塩基性残基は、A:T塩基対のアデニン、及びG:C塩基対のグアニンと容易に相互作用することができ、ここで、塩基対のNH2及びX=O基は、好ましくは、グルタミン、アスパラギン、アルギン及びリシンのアミノ酸残基と水素結合を形成することができる。
一部の実施形態では、DNA結合タンパク質は、転写因子である。転写因子(TF)は、塩基配列の特異的な認識を担うDNA結合ドメインと、転写を活性化又は抑制することができる1つ若しくは複数のエフェクタードメインを含む調節タンパク質であってもよい。TFは、クロマチンと相互作用し、共活性化因子又は共抑制因子として役立つタンパク質複合体を動員する。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、融合分子のエフェクター部分は、1つ又は複数のRNA(例えば、gRNA)及びdCas9を含む。1つ又は複数のRNAは、dCas9及び標的特異的ガイドRNAを介して特定のゲノム又は転写複合体をターゲティングする。当業者には理解されるように、ターゲティングのために用いられるRNAは、所与の標的に応じて同じでも、又は異なっていてもよい。
一部の実施形態では、遺伝子発現は、調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の使用により変更され、これは、抗体又はその断片とdCas9を含む。一部の実施形態では、1つ又は複数のRNAを、dCas9及び標的特異的ガイドRNAを介して特定のゲノム合体にターゲティングさせる。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、融合分子のエフェクター部分は、核酸配列、例えば、ガイドRNA(gRNA)を含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、融合分子のエフェクター部分は、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含む。gRNAは、Cas9結合に必要な「スカフォールド」配列と、ゲノム標的のためのユーザ定義の約20ヌクレオチドターゲティング配列から構成される短い合成RNAである。実際には、ガイドRNA配列は、概して17~24ヌクレオチド(例えば、19、20、又は21ヌクレオチド)の間の長さを有するように設計され、且つ標的化核酸配列に対して相補的である。カスタムgRNAジェネレータ及びアルゴリズムは、有効なガイドRNAの設計に使用する目的で市販されている。キメラ「単一ガイドRNA」(「sgRNA」)を用いて遺伝子編集も達成されており、これは、天然に存在するcrRNA-tracrRNA複合体を模倣し、tracrRNA(ヌクレアーゼとの結合用)と、少なくとも1つのcrRNA(編集のためにターゲティングされる配列にヌクレアーゼを誘導するため)の両方を含有する。キメラ編集sgRNAはまた、ゲノム編集に有効であることが実証されている;例えば、Hendel et al.(2015)Nature Biotechnol.,985-991を参照されたい。
一部の実施形態では、gRNAは、ゲノム又は転写複合体、例えば、ゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)若しくはncRNA(例えば、eRNA)に参加する核酸と相補的である。
一部の実施形態では、gRNAは、ゲノム複合体又は転写複合体の一部と相補的である。一部の実施形態では、gRNAは、それ自体がゲノム複合体又は転写複合体ではないゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列媒介接合部)と相補的である。例えば、いくつかのこうした実施形態では、gRNAは、転写因子をコードするゲノム配列と相補的であってもよく、その場合、転写因子は、標的ゲノム複合体の一部であるが、転写因子をコードするゲノム配列は、例えば、異なる染色体上にある。
一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、gRNA、アンチセンスDNA、又はゲノム複合体又は転写複合体の近傍、例えば、アンカー配列の近傍に、DNA標的及び立体障害(steric presence)として用いられるオリゴヌクレオチドを形成するトリプレックスを含む。gRNAは、特定のDNA配列(例えば、配列特異性を付与する配列にフランキングされたアンカー配列、CTCFアンカー配列)を認識する。gRNAは、接合部核形成分子配列に干渉して、立体的ブロッカー(steric blocker)として作用する別の配列を含み得る。一部の実施形態では、gRNAは、立体障害の存在として作用して、接合部核形成分子に干渉する1つ又は複数のペプチド、例えば、S-アデノシルメチオニン(SAM)と組み合わせる。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、RNAi分子を含む。特定のRNA剤は、RNA干渉(RNAi)を用いる生物学的プロセスを介して遺伝子発現を阻害することができる。RNAi分子は、典型的に15~50の塩基対(例えば、約18~25塩基対)を含有し、且つ細胞内の発現された標的遺伝子中のコーディング配列と同一の(相補的な)又はほぼ同一の(相補的な)核酸塩基配列を有するRNA又はRNA様構造を含む。RNAi分子として、限定されないが、以下:低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、microRNA(miRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、メロデュプレックス、及びダイサー基質が挙げられる(米国特許第8,084,599号明細書、同第8,349,809号明細書、及び同第8,513,207号明細書)。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする遺伝子の発現を阻害するための組成物、例えば、接合部核形成分子又はエピジェネティック修飾剤を提供する。
RNAi分子は、標的遺伝子の全部若しくは断片に対して実質的に相補的な、又は完全に相補的な配列を含む。RNAi分子は、特定の遺伝子の新しく生成された核RNA転写物の転写用mRNAへの成熟を阻止するために、イントロンとエキソンの間の境界に補体配列を含み得る。特定の遺伝子と相補的なRNAi分子は、その遺伝子のmRNAとハイブリダイズして、その翻訳を阻止することができる。アンチセンス分子は、例えば、DNA、RNA、又はその誘導体若しくはハイブリッドであってよい。こうした誘導体分子の例として、限定されないが、ペプチド核酸(PNA)及びホスホロチオエートベースの分子、例えば、デオキシリボ核酸グアニジン(DNG)又はリボ核酸グアニジン(RNG)が挙げられる。アンチセンス分子は、合成ヌクレオチドから構成され得る。
RNAi分子は、インビトロで合成された「そのまま使用できる」RNAとして、又は細胞にトランスフェクトしたアンチセンス遺伝子(これにより、転写時にRNAi分子が産生される)として、細胞に供給することができる。mRNAとのハイブリダイゼーションによって、RNAse Hによるハイブリダイズされた分子の分解及び/又は翻訳複合体の形成の阻害が起こる。そのいずれによっても、本来の遺伝子の産物を産生することができなくなる。
目的の転写物とハイブリダイズするRNAi分子の長さは、約10ヌクレオチド前後、約15~30ヌクレオチド、又は約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30若しくはそれ以上であるべきである。標的化転写物に対するアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%であるべきである。
RNAi分子はまた、オーバーハング、即ち、通常本明細書に定義される対のセンス鎖及びアンチセンス鎖のコア配列により形成される二重螺旋構造に直接関与しない不対の突出したヌクレオチドも含み得る。RNAi分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖の各々に独立して約1~5塩基の3’及び/又は5’オーバーハングを含み得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が3’及び5’オーバーハングを含有する。一部の実施形態では、一方の鎖塩基(例えば、センス)の1つ又は複数の3’オーバーハングヌクレオチドは、他方の鎖(例えば、アンチセンス)の1つ又は複数の5’オーバーハングヌクレオチドと対合する。一部の実施形態では、一方の鎖塩基(例えば、センス)の1つ又は複数の3’オーバーハングヌクレオチドは、他方の鎖(例えば、アンチセンス)の1つ又は複数の5’オーバーハングヌクレオチドと対合しない。RNAi分子のセンス及びアンチセンス鎖は、同数のヌクレオチド塩基を含有してもよいし、又は含有なくてもよい。アンチセンス及びセンス鎖は、デュプレックスを形成し得るが、その場合、5’末端のみが平滑末端を有するか、3’末端のみが平滑末端を有するか、5’及び3’末端の両方が平滑末端であるか、又は5’及び3’末端のいずれも平滑末端ではない。一部の実施形態では、オーバーハング中の1つ又は複数のヌクレオチドは、チオリン酸、ホスホロチオエート、デオキシヌクレオチド逆向き(3’対 3’連結)ヌクレオチドを含むか、又は修飾リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドである。
低分子干渉RNA(siRNA)分子は、標的RNAの約15~約25の連続したヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、siRNA配列は、ジヌクレオチドAAで開始し、約30~70%(例えば、約30~60%、約40~60%、又は約45%~55%)のGC含有率を含み、それを導入しようとする哺乳動物のゲノム中の標的以外のいずれのヌクレオチド配列に対しても、例えば、標準的なBLAST検索により決定して、高い同一性(%)を有さない。
siRNA及びshRNAは、内因性microRNA(miRNA)遺伝子の経路を有するという点で中間体に類似する(Bartel,Cell 116:281-297,2004)。一部の実施形態では、siRNAは、miRNAとして機能することができ、その逆も同様である(Zeng et al.,Mol Cell 9:1327-1333,2002;Doench et al.,Genes Dev 17:438-442,2003)。siRNAのようなmicroRNAは、標的遺伝子を下方制御するためにRISCを使用するが、siRNAとは異なり、ほとんどの哺乳動物miRNAは、mRNAを切断しない。その代わり、miRNAは、翻訳抑制又はポリA除去及びmRNA分解によってタンパク質産出を低減する(Wu et al.,Proc Natl Acad Sci USA 103:4034-4039,2006)。既知のmiRNA結合部位は、mRNA3’UTR内にあり;miRNAは、miRNAの5’末端からのヌクレオチド2~8に対するほぼ完全な相補性を備える部位をターゲティングすると思われる(Rajewsky,Nat Genet 38 Suppl:S8-13,2006;Lim et al.,Nature 433:769-773,2005)。この領域は、シード領域として知られる。siRNA及びmiRNAは、交換可能であるため、外性siRNAは、siRNAに対するシード相補性を備えるmRNAを下方制御する(Birmingham et al.,Nat Methods 3:199-204,2006。3’UTR内の複数の標的部位が、より強力な下方制御を付与する(Doench et al.,Genes Dev 17:438-442,2003)。
既知miRNA配列のリストは、例えば、中でもWellcome Trust Sanger Institute,Penn Center for Bioinformatics,Memorial Sloan Kettering Cancer Center、及びEuropean Molecule Biology Laboratoryなどの研究組織により維持されているデータベースに見出すことができる。既知の有効なsiRNA配列及びコグネイト結合部位もまた関連文献に十分に表示されている。RNAi分子は、当技術分野で公知の技術により容易に設計及び生産される。加えて、有効且つ特異的な配列モチーフを見出す機会を増加させる計算手段も存在する(Pei et al.2006,Reynolds et al.2004,Khvorova et al.2003,Schwarz et al.2003,Ui-Tei et al.2004,Heale et al.2005,Chalk et al.2004,Amarzguioui et al.2004)。
RNAi分子は、遺伝子によりコードされたRNAの発現を調節する。多数の遺伝子が、ある程度の配列相同性を互いに共有し得ることから、一部の実施形態では、RNAi分子は、十分な配列相同性を有する遺伝子のクラスをターゲティングするように設計することができる。一部の実施形態では、RNAi分子は、様々な遺伝子標的間で共有される配列又は特定の遺伝子標的に特有の配列に対して相同性を有する配列を含むことができる。一部の実施形態では、RNAi分子は、いくつかの遺伝子同士の相同性を有するRNA配列の保存された領域をターゲティングし、それにより、遺伝子ファミリー中のいくつかの遺伝子(例えば、異なる遺伝子アイソフォーム、スプライス変異体、突然変異遺伝子など)をターゲティングするように設計することができる。一部の実施形態では、RNAi分子は、単一遺伝子の特定のRNA配列に特有な配列をターゲティングするように設計することができる。
一部の実施形態では、RNAi分子は、ゲノム複合体又は転写複合体の1成分、例えば、接合部核形成分子、例えば、CTCF、コヒーシン、USF1、YY1、TATAボックス結合タンパク質関連因子3(TAF3)、ZNF143、又はアンカー配列媒介接合部の形成を促進する別のポリペプチド、又はエピジェネティック修飾剤、例えば、翻訳後修飾に関連する酵素をコードする配列をターゲティングし、上記の酵素として、限定されないが、DNAメチラーゼ(例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMTL)、DNAデメチラーゼ(例えば、TETファミリー酵素は、5-メチルシトシンから5-ヒドロキシルメチルシトシン及びより高度の酸化誘導体への酸化を触媒する)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3)、サーチュイン1、2、3、4、5、6、又は7、リシン特異的ヒストンデメチラーゼ1(LSD1)、ヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1)、ユークロマチンヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ2(G9a)、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1)、zesteホモログ2のエンハンサー(EZH2)、ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2)、タンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)などが挙げられる。一部の実施形態では、RNAi分子は、タンパク質デアセチラーゼ、例えば、サーチュイン1、2、3、4、5、6、又は7をターゲティングする。一部の実施形態では、本開示は、接合部核形成分子、例えば、CTCFをターゲティングするRNAiを含む組成物を提供する。
一部の実施形態では、RNAi分子は、ゲノム複合体又は転写複合体の一部である核酸配列(例えば、ncRNA、例えば、eRNA)をターゲティングする。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子、例えば、融合分子のターゲティング部分若しくはエフェクター部分は、ゲノム複合体又は転写複合体の一部であるeRNAをターゲティングするRNAi分子を含む。調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、アプタマー、例えば、オリゴヌクレオチドアプタマー又はペプチドアプタマーを含み得る。アプタマー部分は、オリゴヌクレオチド又はペプチドアプタマーである。
調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、オリゴヌクレオチドアプタマーを含み得る。オリゴヌクレオチドアプタマーは、タンパク質及びペプチドなど、予め選択した標的に、高い親和性及び特異性で結合することができる一本鎖DNA又はRNA(ssDNA若しくはssRNA)分子である。
オリゴヌクレオチドアプタマーは、核酸種であり、これは、小分子、タンパク質、核酸、さらには、細胞、組織及び生物などの様々な分子標的に結合するように、インビトロ選択又は同様に、SELEX(試験管内進化法)のラウンドを反復することによって操作することができる。アプタマーは、明確な分子認識を提供し、化学合成により生成することができる。加えて、アプタマーは、望ましい貯蔵特性を有し、治療用途において免疫原性をほとんど又は全く誘発しない。
DNA及びRNAアプタマーの両方が、様々な標的に対して頑健な結合親和性を示す。例えば、DNA及びRNAアプタマーは、tリゾチーム、トロンビン、ヒト免疫不全ウイルストランス作用性応答エレメント(HIV TAR)、https://en.wikipedia.org/wiki/Aptamer - cite_note-10 hemin、インターフェロンγ、血管内皮増殖因子(VEGF)、前立腺特異的抗原(PSA)、ドーパミン、及び非古典的癌遺伝子、熱ショック因子(HSF1)に対して選択されている。
アプタマーに基づく血漿タンパク質プロファイリングのための診断技術には、アプタマー血漿プロテオミクスがある。この技術は、健康な状態に対して疾患の分別診断を助けることができる将来のマルチバイオマーカータンパク質測定を可能にするであろう。
調節剤、例えば、融合分子、例えば、エフェクター部分は、ペプチドアプタマー部分を含み得る。ペプチドアプタマーは、低分子量、即ち、12~14kDaを有するペプチドを含め、1つ又は複数の短い可変ペプチドを有する。ペプチドアプタマーは、細胞内部のタンパク質-タンパク質相互作用に特異的に結合して、それに干渉するように設計され得る。
ペプチドアプタマーは、特定の遺伝子分子に結合するように選択又は操作された人工タンパク質である。これらのタンパク質は、可変配列の1つ又は複数の複合体を含む。これらは典型的に、コンビナトリアルライブラリーから単離され、多くの場合、その後、指定突然変異又は複数ラウンドの可変領域突然変異誘発及び選択によって改善される。インビボで、ペプチドアプタマーは、細胞タンパク質標的と結合して、その標的化分子と他のタンパク質との正常なタンパク質相互作用の干渉を含め、生物学的作用を及ぼすことができる。特に、転写因子結合ドメインに結合した可変ペプチドアプタマーを、転写因子活性化因子に結合した標的タンパク質からスクリーニングする。この選択戦略を介したその標的に対するペプチドアプタマーのインビボ結合は、下流酵母マーカー遺伝子の発現として検出される。こうした実験によって、所与の表現型をもたらすために、アプタマーに結合された特定のタンパク質、及びアプタマーが妨害するタンパク質相互作用が見出される。加えて、適切な機能性部分と共に誘導体化したペプチドアプタマーは、その標的タンパク質の特定の翻訳後修飾を引き起こすか、又は標的の細胞内局在化を変更することができる。
ペプチドアプタマーはまた、インビトロで標的を認識することもできる。これらのペプチドアプタマーは、バイオセンサーにおける抗体の代わりに有用であることが判明し、不活性及び活性両方のタンパク質形態を含む集団からタンパク質の活性アイソフォームを検出するために使用されている。タッドポール(tadpole)として知られる誘導体(ペプチドアプタマー「ヘッド」が、ユニーク配列二本鎖DNA「テイル」に共有結合されている)は、そのDNAテイルのPCR(例えば、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用いる)による混合物中の稀有な標的分子の定量を可能にする。
ペプチドアプタマー選択は、様々なシステムを用いて実施することができるが、使用されているほとんどは、現時点で、酵母ツーハイブリッドシステムである。ペプチドアプタマーはまた、ファージディスプレイ、並びにmRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイ及び酵母ディスプレイなどの他のディスプレイ技術により構築されるコンビナトリアルペプチドライブラリーから選択することもできる。これらの実験手順は、バイオパニングとしても知られている。バイオパニングから得られたペプチドのうち、ミモトープは、一種のペプチドアプタマーとして考えることができる。コンビナトリアルペプチドライブラリーからパニングされたペプチドは、MimoDBと称する特別なデータベースに保存されている。
ゲノム/転写複合体に負に作用するエフェクター部分
一部の実施形態では、エフェクター部分は、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部のレベルを(例えば、エフェクター部分を含む調節剤(例えば、融合分子)と細胞を接触させたとき、又はエフェクター部分が、ターゲティング部分によりゲノム複合体成分又は転写因子に対して共局在化されたとき)、それが存在しない場合に比して、低下させる。一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体のレベルは、調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低下する。一部の実施形態では、エフェクター部分の存在は、ゲノム配列エレメント(例えば、標的遺伝子、又は標的化eRNAに関連するエンハンサー)におけるゲノム複合体又は転写複合体の占有を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、占有は、調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。
一部の実施形態では、ゲノム配列エレメント(例えば、ゲノム若しくは転写複合体に関連する遺伝子、プロモータ、又はエンハンサー)におけるゲノム複合体又は転写複合体の占有は、調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して低減される。一部の実施形態では、エフェクター部分の存在は、ゲノム配列エレメントにおけるゲノム複合体又は転写複合体の占有を調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)変更、例えば、低減する。
一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体中の/ゲノム複合体又は転写複合体における標的化成分の占有は、調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の存在下で、前記調節剤ゲノム複合体又は転写複合体に比して低減される。一部の実施形態ではエフェクター部分の存在は、ゲノム複合体又は転写複合体中の/ゲノム複合体又は転写複合体における標的化成分の占有を調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の存在下で、前記調節剤ゲノム複合体又は転写複合体に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)変更、例えば、低減する。
一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントと、別のゲノム複合体成分又は転写因子との間の相互作用を妨害する調節剤、例えば、融合分子は、エフェクター部分が存在しない場合と比較して、存在する場合に、内因性核形成ポリペプチドの二量体化を低減するエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、二量体化の変化及び/又は相互作用の変化は、ChIP-Seqを用いて決定される。
一部の実施形態では、エフェクター部分は、標的化成分を含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルを変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、ゲノム複合体の変化及び/又は相互作用の変化は、ChIP-Seqを用いて決定される。
一部の実施形態では、エフェクター部分は、標的化成分を含むゲノム複合体又は転写複合体と関連する標的遺伝子の発現を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現は、調節剤、例えば、エフェクター部分を含む融合分子の存在下で、前記調節剤の非存在に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ゲノム複合体又は転写複合体の核酸成分(例えば、eRNA)をターゲティングする、例えば、それと結合するターゲティング部分と、立体障害(steric presence)(例えば、別のゲノム複合体成分又は転写因子と、例えば、eRNAに結合する成分の結合を阻害する)を賦与するエフェクター部分とを含む。エフェクター部分は、ドミナントネガティブ分子若しくはその断片(例えば、ゲノム配列エレメント、例えば、アンカー配列、(例えば、CTCF結合モチーフ))又は転写因子を認識して、それと結合するが、機能性転写因子若しくはゲノム複合体の形成を阻止する変更(例えば、突然変異)を有するタンパク質)、転写因子の結合若しくは機能(例えば、転写因子と、転写されるその標的配列との接触)に干渉するポリペプチド、立体障害を付与する小分子と連結した核酸配列、又は認識エレメント及び立体遮断因子のいずれか他の組合せを含み得る。
例示的なエフェクター部分として、限定されないが、以下:ユビキチン、ユビキチンリガーゼ阻害剤などの二環式ペプチド、転写因子、トポイソメラーゼなどのDNA及びタンパク質修飾酵素、トポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、DNMTファミリー(例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMTL)などのDNAメチルトランスフェラーゼ、タンパク質メチルトランスフェラーゼ(例えば、ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET)、タンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)、デアミナーゼ(例えば、APOBEC、UG1)、zesteホモログ2のエンハンサー(EZH2)、PRMT1、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2)、ユークロマチンヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ2(G9a)、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1)、及びG9aなどのヒストンメチルトランスフェラーゼ)、ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2,HDAC3)、DNA脱メチル化に役割を有する酵素(例えば、TETファミリー酵素は、5-メチルシトシンから5-ヒドロキシルメチルシトシン及びより高度の酸化誘導体への酸化を触媒する)、KDM1A及びリシン特異的ヒストンデメチラーゼ1(LSD1)などのタンパク質デメチラーゼ、DHX9などのヘリカーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、デアセチラーゼ(例えば、サーチュイン1、2、3、4、5、6、又は7)、キナーゼ、ホスファターゼ、臭化エチジウム、SYBRグリーン及びプロフラボンなどのDNA挿入剤、フェニルアラニンアルギニルβ-ナフチルアミド若しくはキノリン誘導体のようなペプチド模倣物などの排出ポンプ阻害剤、核受容体活性化因子及び阻害剤、プロテアソーム阻害剤、酵素に関する競合阻害剤(例えば、リソソーム蓄積症に関与するものなど)、タンパク質合成阻害剤、ヌクレアーゼ(例えば、Cpf1、Cas9、ジンクフィンガーヌクレアーゼ)、それらの1つ若しくは複数の融合物(例えば、dCas9-DNMT、dCas9-APOBEC、dCas9-UG1)、並びにタンパク質からの特定のドメイン(例えば、KRABドメイン)を挙げることができる。
遺伝子修飾部分
一部の実施形態では、調節剤(例えば、融合分子)は、遺伝子修飾部分(例えば、遺伝子編集システムの成分)であるか、又はそれを含むエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、遺伝子編集システムの1つ若しくは複数の成分を含む。遺伝子修飾部分は、限定されないが、遺伝子編集を含む様々な状況で使用され得る。例えば、こうした部分を用いて、例えば、調節剤、例えば、エフェクター部分が、標的配列、例えば、アンカー配列を物理的に修飾する、遺伝子的に修飾する、且つ/又はエピジェネティック的に修飾し得るように、エフェクター部分を遺伝子座に局在化させることができる。
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、例えば、遺伝子編集システムを介して、配列、例えば、eRNAなどのncRNAの1つ若しくは複数のヌクレオチドをターゲティングすることができる。一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、eRNAなどのncRNAに結合して、ゲノム又は転写複合体を変更し、例えば、アンカー配列媒介接合部のトポロジーを変更する。
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、置換、付加又は欠失のために、例えば、CRISPR、TALEN、dCas9、オリゴヌクレオチド対合、組換え、トランスポゾンなどを介して、ゲノム又は転写複合体の成分内で若しくはその成分として(例えば、アンカー配列媒介接合部内で)、ゲノムDNAの1つ若しくは複数のヌクレオチドをターゲティングする。
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、ゲノム又は転写複合体内のゲノムDNAの1つ若しくは複数のヌクレオシド中に標的化変更を導入し、上記変更によって、例えば、ヒト細胞中の遺伝子の転写を調節する。一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、ゲノム若しくは転写複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)の一部であるncRNA又はeRNA中に標的化変更を導入し、上記変更によって、ゲノム若しくは転写複合体に関連する遺伝子の転写を調節する。標的化変更は、1つ若しくは複数のヌクレオチドの置換、付加、又は欠失を含み得る。
成分が遺伝子の修飾部分に使用するのに好適となり得る例示的な遺伝子編集システムとしては、クラスター化した規則的な間隔の短い回文配列リピート(CRISPR)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及び転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)が挙げられる。ZFN、TALEN、及びCRISPRに基づく方法は、例えば、Gaj et al.Trends Biotechnol.31.7(2013):397-405に記載されており;遺伝子編集のCRISPR法は、例えば、Guan et al.,Application of CRISPR-Cas system in gene therapy:Pre-clinical progress in animal model.DNA Repair 2016 July 30,46:1-8;及びZheng et al.,Precise gene deletion and replacement using the CRISPR/Cas9 system in human cells.BioTechniques,Vol.57,No.3,September 2014,pp.115-124に記載されている。
例えば、一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、部位特異的であり、本明細書にさらに説明されるように、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)と部位特異的ガイドRNAを含む。一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)、部位特異的ガイドRNA、及びエフェクター部分(例えば、限定されないが、以下:DNMT3a、DNMT3L、DNMT3b、KRABドメイン、Tet1、p300、VP64などのエピゲノム編集因子を含む。一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、本明細書にさらに説明されるように、酵素として不活性であり、例えば、dCas9である。
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法及び組成物は、CRISPRに基づく遺伝子編集と一緒に用いることができ、その場合、ガイドRNA(gRNA)を、遺伝子編集のためのクラスター化した規則的な間隔の短い回文配列リピート(CRISPR)システムに使用する。CRISPRシステムは、細菌及び古細菌中に最初に発見された適応型防御システムである。CRISPRシステムは、CRISPR関連又は「Cas」エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9若しくはCpf1)と呼ばれるRNA誘導ヌクレアーゼを用いて、外来DNAを切断する。例えば、典型的なCRISPR/Casシステムでは、エンドヌクレアーゼは、一本鎖又は二本鎖DNA配列をターゲティングする配列特異的、ノンコーディング「ガイドRNA」によりヌクレアーゼ配列(例えば、配列編集しようとするゲノム内の部位)に向けられる。3つのクラス(I~III)のCRISPRシステムが同定されている。クラスII CRISPRシステムは、単一のCasエンドヌクレアーゼ(複数のCasタンパク質ではなく)を使用する。1クラスのII CRISPRシステムは、II型Casエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9、CRISPR RNA(「crRNA」)、及びトランス作用性crRNA(「tracrRNA」)を含む。crRNAは、「ガイドRNA」を含み、これは、典型的には約20ヌクレオチドRNA配列であり、標的DNA配列に対応する。crRNAはまた、tracrRNAに結合して、部分的二本鎖構造を形成する領域を含み、この構造が、RNaseIIIにより切断されて、crRNA/tracrRNAハイブリッドが得られる。次に、crRNA/tracrRNAハイブリッドは、Cas9エンドヌクレアーゼを指令して、標的DNA配列を認識させ、これを切断させる。標的DNA配列は、概して、所与のCasエンドヌクレアーゼに特異的な「プロトスペーサ隣接モチーフ」(「PAM」)と隣接していなければならないが;PAM配列は、所与のゲノム全体にわたって出現する。多様な原核生物種から同定されたCRISPRエンドヌクレアーゼは、ユニークなPAM配列要件を有し;PAM配列の例としては、5’-NGG(化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))、5’-NNAGAA(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CRISPR1)、5’-NGGNG(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CRISPR3)、及び5’-NNNGATT(髄膜炎菌(Neisseria meningiditis))が挙げられる。いくつかのエンドグルカナーゼ、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、G-リッチPAM部位、例えば、5’-NGGと関連し、PAM部位から(その5’側)上流の3ヌクレオチドの位置の標的DNAの平滑末端切断を実施する。別のクラスのII CRISPRシステムは、Cas9より小さいV型エンドヌクレアーゼCpf1を含み;例として、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)由来)及びLbCpf1(ラクノスピラ科種(Lachnospiraceae sp.)由来)が挙げられる。Cpf1関連CRISPRアレイは、tracrRNAを必要とせずに成熟crRNAにプロセシングされ;言い換えれば、Cpf1システムは、標的DNA配列を切断するために、Cpf1ヌクレアーゼとcrRNAしか必要としない。Cpf1エンドヌクレアーゼは、T-リッチPAM部位、例えば、5‘-TTNと関連する。Cpf1はまた、5’-CTA PAMモチーフも認識し得る。Cpf1は、4-若しくは5-ヌクレオチド5’オーバーハングを有するオフセット又はスタッガード二本鎖切断を導入する、例えば、コーディング鎖上のPAMから(その3’側)下流18ヌクレオチド及び相補鎖上のPAMから下流23ヌクレオチドに位置する5-ヌクレオチドオフセット又はスタッガード切断を用いて標的DNAを切断することにより、標的DNAを切断し;こうしたオフセット切断によって生じる5-ヌクレオチドオーバーハングは、平滑末端切断DNAでの挿入によるものと比較して、相同組換えによるDNA挿入によってさらに正確なゲノム編集を可能にする。例えば、Zetsche et al.(2015)Cell,163:759-771を参照されたい。
多種多様なCRISPR関連(Cas)遺伝子又はタンパク質を、本開示に提供される技術で使用することができ、Casタンパク質の選択は、本方法の特定の条件に応じて変化し得る。Casタンパク質の具体的な例として、クラスIIシステムが挙げられ、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Cpf1、C2C1、又はC2C3を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質、例えば、Cas9タンパク質は、多様な原核生物種のいずれに由来するものでもよい。一部の実施形態では、特定のCasタンパク質、例えば、特定のCas9タンパク質は、特定のプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)配列を認識するように選択される。一部の実施形態では、調節剤としては、酵素などの配列ターゲティングポリペプチド、例えば、Cas9が挙げられる。特定の実施形態では、Casタンパク質、例えば、Cas9タンパク質は、細菌若しくは古細菌から取得するか、又は公知の方法を用いて合成してもよい。特定の実施形態では、Casタンパク質は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌に由来するものであってもよい。特定の実施形態では、Casタンパク質は、レンサ球菌属(例えば、(化膿性レンサ球菌(S.pyogenes))、S.サーモフィルス(S.thermophilus))、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ヘモフィラス属(Haemophilus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、パスツレラ属(Pasteurella)、プレボテラ属(Prevotella)、ベイロネラ属(Veillonella)、又はマリノバクター属(Marinobacter)に由来するものであってよい。一部の実施形態では、2種以上の異なるCasタンパク質、又は2つ以上のCasタンパク質をコードする核酸を、細胞、接合子、胚、又は動物に導入して、例えば、同じ、類似若しくは異なるPAMモチーフを含む認識及び修飾を可能にすることもできる。一部の実施形態では、Casタンパク質を修飾することにより、ヌクレアーゼ、例えば、ヌクレアーゼ欠損Cas9を非活性化し、転写活性化因子若しくは抑制因子、例えば、大腸菌(E.coli)Pol、VP64のω-サブユニット、p65、KRAB、若しくはSID4Xの活性化ドメインを動員して、エピジェネティック修飾、例えば、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ及びデメチラーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼ、並びにDNA脱メチル化に役割を有する酵素(例えば、TETファミリー酵素は、5-メチルシトシンから5-ヒドロキシルメチルシトシン及びより高度の酸化誘導体への酸化を触媒する)を動員する。
遺伝子編集の目的のために、所望の標的DNAに対応する1つ又は複数のガイドRNA配列を含有するように、CRISPRアレイを設計することができ;例えば、Cong et al.(2013)Science,339:819-823;Ran et al.(2013)Nature Protocols,8:2281-2308を参照されたい。DNA切断を実施するためには、gRNA配列の少なくとも約16又は17個のヌクレオチドがCas9に必要であり;Cpf1の場合、検出可能なDNA切断を達成するために、gRNA配列の少なくとも約16個のヌクレオチドが必要とされる。
野生型Cas9は、gRNAがターゲティングする特定のDNA配列に二本鎖切断(DSB)を生成するのに対し、修飾された機能性を有するいくつかのCRISPRエンドヌクレアーゼが入手可能であり、例えば:Cas9の「ニッカーゼ」バージョンは、一本鎖切断のみを生成し;触媒として不活性のCas9(「dCas9」)は、標的DNAをターゲティングしないが、立体障害により転写に干渉する。標的遺伝子の発現を抑制(CRISPRi)又は活性化(CRISPRa)するために、dCas9を異種エフェクターとさらに融合させてもよい。例えば、Cas9を転写サイレンサー(例えば、KRABドメイン)又は転写活性化因子(例えば、dCas9-VP64融合物)と融合させることができる。FokIヌクレアーゼ(「dCas9-FokI」)と融合させた、触媒不活性Cas9(dCas9)を用いて、2つのgRNAと相補的な標的配列にDSBを生成することができる。例えば、アドジーン・レポジトリ(Addgene repository)(Addgene,75 Sidney St.,Suite 550A,Cambridge,MA 02139;addgene.org/crispr/)に開示され、そこから一般に入手可能な多数のCRISPR/Cas9プラスミドを参照されたい。各々が個別のガイドRNAにより指令される2つの個別の二本鎖切断を導入する「ダブルニッカーゼ」Cas9が、より正確なゲノム編集を達成するものとして、Ran et al.(2013)Cell,154:1380-1389により記載されている。
真核生物の遺伝子を編集するためのCRISPR技術は、米国特許出願公開第2016/0138008A1号明細書及び同第2015/0344912A1号明細書、並びに米国特許第8,697,359号明細書、同第8,771,945号明細書、同第8,945,839号明細書、同第8,999,641号明細書、同第8,993,233号明細書、同第8,895,308号明細書、同第8,865,406号明細書、同第8,889,418号明細書、同第8,871,445号明細書、同第8,889,356号明細書、同第8,932,814号明細書、同第8,795,965号明細書、及び同第8,906,616号明細書に開示されている。Cpf1エンドヌクレアーゼ並びに対応するガイドRNA及びPAM部位は、米国特許出願公開第2016/0208243A1号明細書に開示されている。
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、gRNAに連結したポリペプチド(例えば、ペプチド若しくはタンパク質部分)と、標的化ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、例えば、野生型Cas9、ニッカーゼCas9(例えば、Cas9 D10A)、不活性型Cas9(dCas9)、eSpCas9、Cpf1、C2C1、若しくはC2C3、又はそのようなヌクレアーゼをコードする核酸を含み得る。ヌクレアーゼ及びgRNAの選択は、標的化突然変異が、ヌクレオチドの欠失、置換、又は付加、例えば、標的化配列に対するヌクレオチドの欠失、置換、又は付加であるかどうかによって決定される。(1つ若しくは複数の)エフェクタードメイン(例えば、限定されないが、以下:DNMT3a、DNMT3L、DNMT3b、KRABドメイン、Tet1、p300、VP64及びこれらの融合物を含むエピゲノム編集因子)の全部又は1部分とテザリングした触媒不活性エンドヌクレアーゼ、例えば、不活性型Cas9(dCas9、例えば、D10A;H840A)の融合物は、キメラタンパク質を生成し、このキメラタンパク質は、ポリペプチドに連結されて、1つ若しくは複数のRNA配列(例えば、限定されないが、本明細書に記載されるジンクフィンガーアレイ、sgRNA、TALアレイ、ペプチド核酸をはじめとするDNA認識エレメント)により特定のDNA部位に、提供された組成物を誘導して、1つ若しくは複数の標的核酸配列の活性及び/又は発現を調節する(例えば、DNA配列のメチル化若しくは脱メチル化の目的で)ことができる。
本明細書で用いられるとき、「エフェクタードメインの生物活性部分」は、エフェクタードメイン(例えば、「最小」又は「コア」ドメイン)の機能を(例えば、完全に、部分的に、最小限)維持する部分である。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤(例えば、DNAメチラーゼ又はDNA脱メチル化に役割を有する酵素、例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMT3L、DNMT阻害剤、それらの組合せ、TETファミリー酵素、タンパク質アセチルトランスフェラーゼ若しくはデアセチラーゼ、dCas9-DNMT3a/3L、dCas9-DNMT3a/3L/KRAB、dCas9/V64)の1つ若しくは複数のエフェクタードメインの全部又は1部分と、dCas9との融合物はキメラタンパク質を生成し、これは、ポリペプチドに連結され、また、本明細書に記載の方法に有用である。こうしたキメラタンパク質を含むエフェクター部分は、遺伝子修飾部分(遺伝子編集システム成分、即ち、Cas9のその使用のために)又はエピジェネティック修飾部分(エピジェネティック修飾剤のエフェクタードメインのその使用のために)と呼ばれる。
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、本明細書に記載のCRISPRシステムの1つ又は複数の成分を含む。
一部の実施形態では、提供される技術は、標的遺伝子を特異的にターゲティングするgRNAを含むものとして記載される。一部の実施形態では、標的遺伝子は、癌遺伝子、腫瘍抑制因子、又はヌクレオチドリピート病関連遺伝子である。
一部の実施形態では、本明細書に提供される技術は、本明細書に記載の1つ若しくは複数の遺伝子修飾部分(例えば、CRISPRシステム成分)を対象、例えば、対象の細胞又は組織の核に、そうした部分を融合分子の一部としてターゲティング部分と連結することにより、送達する方法を含む。
エピジェネティック修飾部分
一部の実施形態では、エフェクター部分は、クロマチンの二次元構造を調節する(即ち、その二次元表示を変更し得る方法でクロマチンの構造を調節する)エピジェネティック修飾部分であるか、又はそれを含む。
本開示の方法及び組成物で有用なエピジェネティック修飾部分は、例えば、DNAメチル化、ヒストンアセチル化、及びRNA関連サイレンシングに影響を与える物質を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、エピジェネティック酵素(例えば、エピジェネティックマーク、例えば、アセチル化及び/又はメチル化を生成若しくは除去する酵素)の配列特異的ターゲティングを含む。本明細書に記載のゲノム配列エレメントをターゲティングさせることができる例示的なエピジェネティック酵素として、DNAメチラーゼ(例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMTL)、DNA脱メチル化(例えば、TETファミリー)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3)、サーチュイン1、2、3、4、5、6、又は7、リシン特異的ヒストンデメチラーゼ1(LSD1)、ヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1)、ユークロマチンヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ2(G9a)、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1)、zesteホモログ2のエンハンサー(EZH2)、ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2)、及びタンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)などが挙げられる。こうしたエピジェネティック修飾剤の例は、例えば、de Groote et al.Nuc.Acids Res.(2012):1-18に記載されている。
一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性(例えば、SETDB1、SETDB2、EHMT2(即ち、G9A)、EHMT1(即ち、GLP)、SUV39H1、EZH2、EZH1、SUV39H2、SETD8、SUV420H1、SUV420H2、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片、例えば、それらいずれかのSETドメインから選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、ヒストンデメチラーゼ活性(例えば、KDM1A(即ち、LSD1)、KDM1B(即ち、LSD2)、KDM2A、KDM2B、KDM5A、KDM5B、KDM5C、KDM5D、KDM4B、NO66、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、ヒストンデアセチラーゼ活性(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11、SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、SIRT7、SIRT8、SIRT9、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、DNAメチルトランスフェラーゼ活性(例えば、MQ1、DNMT1、DNMT3A1、DNMT3A2、DNMT3B1、DNMT3B2、DNMT3B3、DNMT3B4、DNMT3B5、DNMT3B6、DNMT3L、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、DNAデメチラーゼ活性(例えば、TET1、TET2、TET3、若しくはTDG、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、転写抑制活性(例えば、KRAB、MeCP2、HP1、RBBP4、REST、FOG1、SUZ12、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。
一部の実施形態では、本明細書に記載される有用なエピジェネティック修飾部分は、Koferle et al.Genome Medicine 7.59(2015):1-3(例えば、表1)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている構築物を含む。例えば、一部の実施形態では、発現抑制因子は、Koferle et al.の表1に見出される構築物、例えば、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、又はH3K4及び/若しくはH3K9ヒストンデメチラーゼ(例えば、dCas9-p300、TALE-TET1、ZF-DNMT3A、若しくはTALE-LSD1)を含むか、又はそうした構築物である。
融合分子
一部の実施形態では、本開示の調節剤は、融合分子、例えば、2つ以上の部分を含む融合分子などであるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、融合分子は、本明細書に記載される1つ若しくは複数の部分、例えば、ターゲティング部分及び/又はエフェクター部分を含む。
例えば、一部の実施形態では、提供される組成物は、ターゲティング部分(例えば、本明細書に記載されるターゲティング部分のいずれか1つ)と、脱アミノ化剤を含むエフェクター部分とを含む融合分子であり、ここで、ターゲティング部分は、融合分子を標的ゲノム又は転写複合体に、例えば、前記標的ゲノム又は転写複合体に関連するeRNAと特異的に結合することによってターゲティングさせる。様々な脱アミノ化剤、例えば、酵素活性がない脱アミノ剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの化学物質)、及び/又は酵素活性を有する脱アミノ剤(例えば、デアミナーゼ若しくはその機能性部分)を使用することができる。
いくつかの態様では、本開示は、DNAに作用するドメイン、例えば、酵素ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメイン、例えば、Cas9ドメイン、例えば、dCas9ドメイン;DNAメチルトランスフェラーゼ、デメチラーゼ、デアミナーゼ)を、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドと組み合わせて含む、調節剤、例えば、融合分子を提供し、上記ガイドRNA(gRNA)又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドは、標的アンカー配列媒介接合部又はゲノム若しくは転写複合体(例えば、アンカー配列を含む)と結合したeRNAのアンカー配列に上記融合分子をターゲティングさせる。一部の実施形態では、酵素ドメインは、Cas9又はdCas9である。一部の実施形態では、融合分子は、2つの酵素ドメイン、例えば、dCas9及びメチラーゼ若しくはデメチラーゼドメインを含む。
いくつかの態様では、本開示は、DNAに作用するドメイン、例えば、酵素ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメイン、例えば、Cas9ドメイン、例えば、dCas9ドメイン;DNAメチルトランスフェラーゼ、デメチラーゼ、デアミナーゼ)を、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドと組み合わせて含む、調節剤、例えば、融合分子を提供し、上記ガイドRNA(gRNA)又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドは、アンカー配列ではないゲノム複合体内の配列に上記融合分子をターゲティングさせる。一部の実施形態では、融合分子によるターゲティング(例えば、融合分子の結合及び/又はその生物活性の局在化)は、ヒト細胞において、ゲノム若しくは転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部を変更するのに有効である。一部の実施形態では、配列を、ncRNA、例えば、eRNAであるか、又はそれを含むゲノム若しくは転写複合体の1成分にターゲティングさせる。一部の実施形態では、酵素ドメインは、Cas9又はdCas9である。一部の実施形態では、融合分子は、2つの酵素ドメイン、例えば、dCas9及びメチラーゼ若しくはデメチラーゼドメインを含む。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される融合分子、例えば、タンパク質融合物を含む組成物を投与することにより、遺伝子の発現を調節する方法を提供する。一部の実施形態では、例えば、融合分子は、(例えば、エフェクター部分又はターゲティング部分の一部として)dCas9-DNMT(例えば、同じポリペプチド鎖の一部としてdCas9及びDNMTを含む)、dCas9-DNMT-3a-3L、dCas9-DNMT-3a-3a、dCas9-DNMT-3a-3L-3a、dCas9-DNMT-3a-3L-KRAB、dCas9-KRAB、dCas9-APOBEC、APOBEC-dCas9、dCas9-APOBEC-UGI、dCas9-UGI、UGI-dCas9-APOBEC、UGI-APOBEC-dCas9、本明細書に記載のタンパク質融合物の任意の変種、又は本明細書に記載のタンパク質若しくはタンパク質ドメインの他の融合物を含み得る。
本開示により提供される方法及び組成物に適応可能な例示的dCas9融合方法及び組成物は、公知であり、例えば、Kearns et al.,Functional annotation of native enhancers with a Cas9-histone demethylase fusion.Nature Methods 12,401-403(2015);並びにMcDonald et al.,Reprogrammable CRISPR/Cas9-based system for inducing site-specific DNA methylation.Biology Open 2016:doi:10.1242/bio.019067に記載されている。当技術分野で公知の方法を用いて、dCas9を、本明細書に記載される様々な薬剤及び/又は分子のいずれかと融合させることができ;そのようにして得られた融合分子は、開示される方法において有用となり得る。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲート部分若しくは実体であるか、又はそれを含み得る。ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、ペプチド部分に連結した核酸部分を含むキメラ分子(例えば、ペプチド/核酸ミックスマー(mixmer))を包含する。一部の実施形態では、ペプチド部分は、本明細書に記載される任意のペプチド又はタンパク質を含み得る。一部の実施形態では、核酸部分は、本明細書に記載される任意の核酸又はオリゴヌクレオチド、例えば、DNA若しくはRNA又は修飾DNA若しくはRNAを含み得る。
一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、ペプチドアンチセンスオリゴヌクレオチドコンジュゲートを含む。一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、化学修飾骨格を有する合成オリゴヌクレオチドである。ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、配列特異的な様式で、DNA及びRNA標的の両方に結合して、デュプレックス構造を形成することができる。二本鎖DNA(dsDNA)標的に結合すると、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、鎖侵入によりデュプレックス内の1つのDNA鎖を置換して、トリプレックス構造を形成し、置換されたDNA鎖は、一本鎖D-ループとして存在し得る。
一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、細胞及び/又は組織特異的であり得る。一部の実施形態では、こうしたコンジュゲートを、オリゴ、ペプチド、及び/又はタンパク質と直接共役させてもよい。
一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、膜転移ポリペプチド、例えば、本明細書の他所に記載される膜転移ポリペプチドを含む。
いくつかのペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの固相合成は、例えば、Williams、et al.,2010,Curr.Protoc.Nucleic Acid Chem.,Chapter Unit 4.41に記載されている。非常に短いペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの合成及び特性決定、並びに新たな固体支持体上でのペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの段階的な固相合成は、例えば、Bongardt,et al.,Innovation Perspect.Solid Phase Synth.Comb.Libr.,Collect.Pap.,Int.Symp.,5th,1999,267-270;Antopolsky,et al.,Helv.Chim.Acta,1999,82,2130-2140に記載されている。
一部の実施形態では、提供される組成物は、本明細書に記載される融合分子を含む医薬組成物である。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される融合分子を含む細胞又は組織を提供する。
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合分子を含む医薬組成物を提供する。
リンカー
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、1つ又は複数のリンカーを含み得る。一部の実施形態では、第1部分と第2部分を含む調節剤、例えば、融合分子は、第1部分と第2部分との間に、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分との間にリンカーを有する。リンカーは、化学結合、例えば、1つ若しくは複数の共有結合又は非共有結合であってもよい。一部の実施形態では、リンカーは、共有結合である。一部の実施形態では、リンカーは、非共有結合である。一部の実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーである。こうしたリンカーは、2~30、5~30、10~30、15~30、20~30、25~30、2~25、5~25、10~25、15~25、20~25、2~20、5~20、10~20、15~20、2~15、5~15、10~15、2~10、5~10、若しくは2~5アミノ酸長、又は2、5、10、15、20、25、若しくは30アミノ酸長以上(及び任意選択的に、最大50、40、30、25、20、15、10、若しくは5アミノ酸長)であり得る。一部の実施形態では、リンカーを用いて、第1部分と第2部分の、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分の間に間隔をあけることができる。一部の実施形態では、例えば、二次及び三次構造の分子柔軟性を賦与するために、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分の間にリンカーを配置することができる。リンカーは、本明細書に記載のフレキシブル、リジッド、及び/又は切断可能リンカーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、柔軟性をもたらすため、リンカーは、少なくとも1つのグリシン、アラニン、及びセリンアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば負に帯電したスルホン酸基、ポリエチレングリコール(PEG)基、又はピロリン酸ジエステル基を含む、疎水性リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、ある部分(例えばポリペプチド)を調節剤から選択的に放出するために切断可能であるが、未成熟切断を阻止するために十分に安定である。
一部の実施形態では、本明細書に記載の調節剤の1つ若しくは複数の部分は、1つ又は複数のリンカーと連結している。
当業者には周知であるように、一般に使用される柔軟なリンカーは、主としてGly及びSer残基の区間から構成される配列(「GS」リンカー)を有する。フレキシブルリンカーは、ある程度の運動又は相互作用を必要とするドメインを連結するのに有用であってもよく、小さい非極性(例えばGly)又は極性(例えば、Ser又はThr)アミノ酸を含んでもよい。さらに、Ser又はThrを包含することで、水分子と水素結合を形成することにより、水溶液中でのリンカーの安定性が維持され得、ひいてはリンカーとタンパク質部分との間の好ましくない相互作用が低減され得る。
リジッドリンカーは、ドメイン間の固定距離を保持し、それらの独立した機能を維持するために有用である。リジッドリンカーはまた、融合における1以上の成分の安定性又は生物活性を保存するのにドメインの空間的分離がクリティカルであるとき、有用であってもよい。リジッドリンカーは、αヘリックス構造又はProリッチ配列(XP)n(ここでXは、任意のアミノ酸、好ましくはAla、Lys、又はGluを指す)を有してもよい。
切断可能リンカーは、遊離機能ドメインをインビボで放出してもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、還元試薬又はプロテアーゼの存在などの特定条件下で切断されてもよい。インビボでの切断可能リンカーでは、ジスルフィド結合の可逆性が利用されてもよい。一例として、2つのCys残基間のトロンビン感受性配列(例えばPRS)が挙げられる。CPRSCのインビトロでのトロンビン処理により、トロンビン感受性配列の切断がもたらされる一方で、可逆的ジスルフィド結合は、未変化のままである。かかるリンカーは、公知であり、例えば、Chen et al.2013.Fusion Protein Linkers:Property,Design and Functionality.Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369に記載されている。融合中でのリンカーのインビボ切断はまた、特定の細胞若しくは組織内、特定条件下、インビボで発現される、又は特定の細胞区画内に制限されるプロテアーゼにより実施されてもよい。多数のプロテアーゼの特異性により、制限された区画内でのリンカーのより緩徐な切断がもたらされる。
連結分子の例として、疎水性リンカー、例えば負に帯電したスルホン酸基;脂質、例えばポリ(--CH--)炭化水素鎖、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)基、その不飽和変異体、そのヒドロキシル化変異体、そのアミド化若しくはそれ以外のN含有変異体、非炭素リンカー;炭水化物リンカー;リン酸ジエステルリンカー、又は調節剤の2以上の成分(例えば2つのポリペプチド)に共有結合する能力がある他の分子が挙げられる。非共有結合リンカーも含まれ、例えばポリペプチドの疎水性領域又はポリペプチドの疎水性延長部、例えばロイシン、イソロイシン、バリン、又はおそらくはさらにアラニン、フェニルアラニン、又はさらにチロシン、メチオニン、グリシン又は他の疎水性残基が豊富に存在する一連の残基を通じてポリペプチドが連結される疎水性脂質小球などが挙げられる。調節剤の成分が電荷に基づく化学を用いて連結されてもよいことで、調節剤の正に帯電した成分が負に帯電した別の成分又は核酸に連結される。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、投与(例えば、対象への)後に、他のポリペプチド、本明細書に記載される別の部分、例えば、エフェクター分子、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド若しくは他の分子、又は他の薬剤、例えば、細胞内分子との連結を、例えば共有結合若しくは非共有結合を介して形成する能力を有する。一部の実施形態では、調節剤のポリペプチド上の1つ若しくは複数のアミノ酸は、例えば、グアノシンとのプソイド対合を形成するアルギニン、又はヌクレオチド管リン酸結合若しくはポリマー間結合などにより、核酸と連結することができる。一部の実施形態では、核酸は、ゲノムDNAなどのDNA、tRNA若しくはmRNA分子などのRNAである。一部の実施形態では、ポリペプチド上の1つ若しくは複数のアミノ酸は、タンパク質又はペプチドと連結することができる。
一部の実施形態では、2つ以上の実体は、それらが直接若しくは間接的に相互作用して、それらが互いに物理的に近接している、及び/又は物理的に近接したままであれば、物理的に「結合」している。一部の実施形態では、互いに物理的に結合している2つ以上の実体は、互いに共有結合しており;一部の実施形態では、互いに物理的に結合している2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、及びそれらの組合せによって非共有結合している。
タグ付け又はモニタリング部分
調節剤、例えば、融合分子は、調節剤、標的成分、若しくはエフェクター機能を標識又はモニタリングするためのタグ付け又はモニタリング部分をさらに含んでもよい。当業者は、本開示の調節剤、例えば、融合分子と適合可能なタグ付け又はモニタリング部分を認識するであろう;そうしたものとして、限定されないが、以下:アフィニティタグ、可溶化タグ、光感受性タグ、蛍光タグ、及び他のタンパク質タグが挙げられる。タグ付け又はモニタリング部分は、化学物質又は酵素切断、例えば、タンパク質分解若しくはインテインスプライシングにより除去可能となり得る。アフィニティタグは、アフィニティ技術を用いて、タグ付けポリペプチドを精製するのに有用となり得る。いくつかの例として、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、及びポリ(ヒズ)タグが挙げられる。可溶化タグは、タンパク質の適正な折り畳みを助けると共に、それらを沈降から保護するために、大腸菌(E.coli)などのシャペロン欠失種に発現される組換えタンパク質を補助する上で有用となり得る。いくつかの例として、チオレドキシン(TRX)及びポリ(NANP)が挙げられる。タグ付け又はモニタリング部分は、光感応性タグ、例えば、蛍光を含み得る。蛍光タグは、視覚化に有用である。GFP及びその変異体は、蛍光タグとして一般的に使用されるいくつかの例である。タンパク質タグは、特定の酵素修飾(ビオチンリガーゼによるビオチン化)又は化学修飾(例えば、蛍光イメージングのためのFlAsH-EDT2との反応など)が起こることを可能にし得る。タンパク質を複数の他の成分と連結させるために、多くの場合、タグ付け又はモニタリング部分を組み合わせる。タグ付け又はモニタリング部分はまた、特異的タンパク質分解又は酵素切断(例えば、TEVプロテアーゼ、トロンビン、因子Xa若しくはエンテロペプチダーゼによる)によって除去することもできる。
一部の実施形態では、タグ付け又はモニタリング部分は、小分子、ペプチド、タンパク質(例えば、タンパク質断片、抗体、抗体断片など)、核酸、ナノ粒子、アプタマー、又は他の薬剤若しくはその部分であってもよい。
切断可能な部分
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、特異的タンパク質分解又は酵素切断(例えば、TEVプロテアーゼ、トロンビン、因子Xa若しくはエンテロペプチダーゼによる)によって、調節剤のポリペプチド部分から切断することができる(例えば、投与後に)部分(例えば、ターゲティング、エフェクター、又はタグ付け若しくはモニタリング部分)を含む。
膜転移部分
一部の実施形態では、本開示の調節剤、例えば、融合分子は、例えば、共有結合若しくは非共有結合又は本明細書に記載のリンカーなどにより、部分(例えば、ターゲティング部分)と連結した膜転移ポリペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ペプチド結合を介して膜転移部分と連結した部分を含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子のアミノ末端は、例えば、任意選択のリンカーを含むペプチド結合を介して、膜転移部分と連結される。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子のカルボキシル末端は、本明細書に記載の膜転移部分に連結される。
一部の実施形態では、膜転移ポリペプチドの1つ若しくは複数のアミノ酸は、システイン側鎖同士のジスルフィド結合、水素結合などを介して、別の部分と連結するか、又は特定の受容体を発現する特定の細胞に対して、組成物をターゲティングさせるためのリガンド若しくは抗体であってもよい。例えば、一部の実施形態では、化学治療薬、例えば、トポイソメラーゼ阻害剤であるトポテカンをポリペプチドの一方の末端に連結させ、リガンド又は抗体をポリペプチドの他方の末端に連結させて、組成物を特定の細胞又は組織に対してターゲティングさせる。一部の実施形態では、他の部分は、いずれも、生物活性を備えたエフェクターである。
一部の実施形態では、複数の膜転移ポリペプチド、同じ又は異なる膜転移ポリペプチドのいずれかを単一の調節剤に連結させる。ポリペプチドは、調節剤を取り囲むコーティングとして作用して、その膜透過を助ける。
一部の実施形態では、本開示の調節剤、例えば、融合分子は、一方若しくは両方の末端上の標的部分及び/又はエフェクター部分と連結した膜転移ポリペプチドを含んでもよく、また別の個別の部分をポリペプチド上の別の部位に連結してもよい。一部の実施形態では、投与時に、調節剤、例えば、融合分子は細胞膜を透過し、エフェクターが機能を果たす。一部の実施形態では、エフェクターが機能を果たすと、ユビキチンは、調節剤、例えば、融合分子をターゲティングして、分解する。一部の実施形態では、投与時に、調節剤、例えば、融合分子は、或る遺伝子の転写を調節するために、非CTCFゲノム配列(例えば、eRNAなどのncRNA)をターゲティングし得る。
一部の実施形態では、本開示により提供される調節剤、例えば、融合分子は、共有結合を介してターゲティング部分及び/又はエフェクター部分と連結した膜転移ポリペプチド、並びにポリペプチド中の核酸と連結した別の任意選択的部分(例えば、ターゲティング部分及び/又はエフェクター部分)を含んでもよい。一部の実施形態では、例えば、タンパク質合成阻害剤を、調節剤、例えば、融合分子と共有結合させ、siRNA又は他の標的特異的核酸を、調節剤中の核酸とハイブリダイズさせる。投与時に、siRNAは、調節剤、例えば、融合分子を、mRNA転写物に対してターゲティングさせ、タンパク質合成阻害剤及びsiRNAが作用して、mRNAの発現を阻害する。
本明細書に記載される膜転移ポリペプチドは、ポリペプチドを連結させるための当技術分野で公知の技術など、標準的な連結技術を使用することにより、別の部分と連結させることができる。
薬物部分
一部の実施形態では、調節剤は、薬物部分をさらに含む。一部の実施形態では、そうした調節剤、例えば、融合分子は、望ましくない薬物動態又は薬力学(PK/PD)パラメータを有し得る。薬物部分とターゲティング部分及び/又はエフェクター部分との連結によって、薬物の少なくとも1つのPK/PDパラメータ、例えば、ターゲティング、吸収、及び輸送などを改善するか、或いは少なくとも1つの望ましくないPK/PDパラメータ、例えば、オフターゲット部位への拡散、及び毒性代謝産物などを低減することができる。例えば、ターゲティング/輸送が不良の薬剤、例えば、ドキソルビシン、ペニシリンなどのβラクタムに対する、本明細書に記載のターゲティング部分及び/又はエフェクター部分と薬物部分の連結は、その特異性を改善する。
小分子
本明細書で用いられる場合、用語「小分子」は、低分子量有機及び/又は無機化合物を意味する。一般に、「小分子」は、サイズが約5キロダルトン(kD)未満の分子である。一部の実施形態では、小分子は、約4kD、3kD、約2kD、又は約1kD未満である。一部の実施形態では、小分子は、約800ダルトン(D)、約600D、約500D、約400D、約300D、約200D、又は約100D未満である。一部の実施形態では、小分子は、約2000g/mol未満、約1500g/mol未満、約1000g/mol未満、約800g/mol未満、又は約500g/mol未満である。一部の実施形態では、小分子は、ポリマーではない。一部の実施形態では、小分子は、ポリマー部分を含まない。一部の実施形態では、小分子は、タンパク質若しくはポリペプチドではない、及び/又はそれを含まない(例えば、オリゴペプチド若しくはペプチドではない)。一部の実施形態では、小分子は、ポリヌクレオチドではない、及び/又はそれを含まない(例えば、オリゴヌクレオチドではない)。一部の実施形態では、小分子は、多糖ではない、及び/又はそれを含まない;例えば、一部の実施形態では、小分子は、糖タンパク質、プロテオグリカン、糖脂質などではない)。一部の実施形態では、小分子は、脂質ではない。一部の実施形態では、調節剤は、小分子であるか、又はそれを含む(例えば、阻害剤若しくは活性化剤である)。一部の実施形態では、小分子は、生物活性である。一部の実施形態では、小分子は、検出可能である(例えば、少なくとも1つの検出可能な部分を含む)。一部の実施形態では、小分子は、治療薬である。当業者は、本開示を読んで、本明細書に記載される特定の小分子化合物が、多種多様な形態、例えば、結晶形態、塩形態、保護形態、プロドラッグ形態、エステル形態、異性体形態(例えば、光学及び/又は構造異性体)、同位体形態などのいずれでも提供及び/又は使用され得ることは理解されよう。当業者は、特定の小分子化合物が、1つ若しくは複数の立体異性体形態で存在し得る構造を有することを理解されよう。一部の実施形態では、こうした小分子は、本開示に従って、個別のエナンチオマー、ジアステレオマー若しくは幾何異性体の形態で使用してもよいし、又は立体異性体の混合物の形態であってもよく;一部の実施形態では、こうした小分子は、本開示に従って、ラセミ混合物形態で使用することもできる。当業者は、特定の小分子が、1つ若しくは複数の互変異性体形態で存在し得る構造を有することは理解されよう。一部の実施形態では、そうした小分子は、本開示に従って、個別の互変異性体の形態、又は互変異性体間を相互転換する形態で使用することができる。当業者は、特定の小分子が、同位体置換(例えば、Hの代わりにH又はH;12Cの代わりに11C、13C又は14C;14Nの代わりに13N又は15N;16Oの代わりに17O又は18O;XXCの代わりに36Cl;XXFの代わりに18F;XXXIの代わりに131I;など)を可能にする構造を有することは理解されよう。一部の実施形態では、こうした小分子は、本開示に従って、1つ若しくは複数の同位体修飾された形態、又はそれらの混合物で使用することができる。一部の実施形態では、特定の小分子化合物に言及するとき、それは、当該化合物の具体的な形態に関係し得る。一部の実施形態では、特定の小分子化合物は、塩形態で(例えば、化合物に応じて、酸付加若しくは塩基付加塩形態で)提供及び/又は使用してもよいし;いくつかのそうした実施形態では、塩形態は、薬学的に許容できる塩形態であってよい。小分子化合物が天然に存在するか、若しくは見出されるものである場合、その化合物は、本開示に従って、天然に存在するか、若しくは見出される形態とは異なる形態で提供及び/又は使用してもよい。当業者は、一部の実施形態において、目的の標準調製物中に(例えば、生物又は環境供給源などの目的の供給源からの一次サンプル中に)存在する化合物若しくは形態の絶対若しくは相対(例えば、別の形態の化合物を含む調製物の別の成分に対して)量とは異なる、絶対若しくは相対量の化合物、又はその特定の形態を含有する特定の小分子化合物の調製物が、標準調製物若しくは供給源に存在するような化合物とは異なることを理解されよう。従って、一部の実施形態では、例えば、小分子化合物の単一の立体異性体の調製物は、化合物のラセミ混合物とは異なる形態の化合物であるとみなすことができ;小分子化合物の特定の塩は、別の塩形態の化合物とは異なる形態であるとみなすことができ;二重結合の1つの立体配座異性体((Z)若しくは(E))を含む化合物の1形態のみを含む調製物は、二重結合の他の立体配座異性体((E)若しくは(Z))を含むものとは異なる形態の化合物であるとみなすことができ;1つ若しくは複数の原子が、標準調製物中に存在するのとは異なる同位体である調製物は、異なる形態であるとみなすことができる、等である。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、1つ又は複数の小分子を含む。
一部の実施形態では、調節剤(例えば、ターゲティング、エフェクター、及び/又はその別の部分)は、例えば、特定の部位で、核酸構造に介在する小分子を含む。
一部の実施形態では、調節剤は、小分子薬物を含む。
一部の実施形態では、調節剤は、1つ又は複数のDNAメチル化部位を変更する、例えば、アンカー配列媒介接合部内で、メチル化システインをチミンに変異させる小分子を含む。例えば、亜硫酸塩化合物、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、又は他の亜硫酸塩を用いて、1つ又は複数のDNAメチル化部位を変更する、例えば、ヌクレオチド配列をシステインからチミンに変更することができる。
一部の実施形態では、小分子として、限定されないが、小ペプチド、ペプチド模倣物(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸アナログ、合成ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、概して1モル当たり約5,000グラム未満の分子量を有する有機及び無機化合物(ヘテロ無機及び有機金属化合物を含む)、例えば、1モル当たり約2,000グラム未満の分子量を有する有機及び無機化合物、例えば、1モル当たり約1,000グラム未満の分子量を有する有機及び無機化合物、例えば、1モル当たり約500グラム未満の分子量を有する有機及び無機化合物、並びにそうした化合物の塩、エステル、及び他の薬学的に許容できる形態を挙げることができる。小分子として、限定されないが、神経伝達物質、ホルモン、薬物、毒素、ウイルス若しくは微生物粒子、合成分子、及びアゴニスト又はアンタゴニストを挙げることができる。
好適な分子の例として、以下:“The Pharmacological Basis of Therapeutics,” Goodman and Gilman,McGraw-Hill,New York,N.Y.,(1996),Ninth edition,under the sections:Drugs Acting at Synaptic and Neuroeffector Junctional Sites;Drugs Acting on the Central Nervous System;Autacoids:Drug Therapy of Inflammation;Water,Salts and Ions;Drugs Affecting Renal Function and Electrolyte Metabolism;Cardiovascular Drugs; Drugs Affecting Gastrointestinal Function;Drugs Affecting Uterine Motility;Chemotherapy of Parasitic Infections;Chemotherapy of Microbial Diseases;Chemotherapy of Neoplastic Diseases;Drugs Used for Immunosuppression;Drugs Acting on Blood-Forming organs;Hormones and Hormone Antagonists;Vitamins,Dermatology;及びToxicologyに記載されるものが挙げられ、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。小分子のいくつかの例として、限定されないが、タクロリムスなどのプリオン薬、へクリンなどのユビキチンリガーゼ若しくはHECTリガーゼ阻害剤、酪酸ナトリウムなどのヒストン修飾剤、5-アザ-シチジンなどの酵素阻害剤、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン、ペニシリンなどのβ-ラクタム、抗菌剤、化学療法薬、抗ウイルス薬、VP64などの他の生物からの調節剤、並びに生体利用性が不十分な薬物、例えば、薬物動態が不十分な化学治療薬などを挙げることができる。
一部の実施形態では、小分子は、エピジェネティック修飾剤、例えば、Groote et al.Nuc.Acids Res.(2012):1-18に記載されているものなどである。例示的な小分子エピジェネティック修飾剤は、例えば、Lu et al.J.Biomolecular Screening 17.5(2012):555-71(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤は、ボリノスタット、ロミデスピンを含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤は、クラスI、II、III、及び/又はIVヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤は、SirT1の活性化因子を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤は、ガルシノール(Garcinol)、Lys-CoA、C646、(+)-JQI、I-BET、BICI、MS120、DZNep、UNC0321、EPZ004777、AZ505、AMI-I、ピラノゾールアミド7b、ベンゾ[d]イミダゾール17b、アシル化ダプソン誘導体(例えば、PRMTI)、メチルスタット、4,4’-ジカルボキシ-2,2’-ビピリジン、SID857363331、ヒドロキサメートアナログ8、トラニルシクロプロミン、ビスグアニジン及びビグアニドポリアミドアナログ、UNC669、ビダザ(Vidaza)、デシタビン、フェニル酪酸ナトリウム(SDB)、リポ酸(LA)、ケルセチン、バルプロ酸、ヒドララジン、バクトリム、緑茶エキス(例えば、没食子酸エピガロカテキン(EGCG))、クルクミン、スルホルファン及び/又はアリシン/二硫化ジアリルを含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤は、DNAメチル化を阻害し、例えば、DNAメチルトランスフェラーゼの阻害剤(例えば、5-アザシチジン及び/又はデシタビン)である。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤は、ヒストン修飾、例えば、ヒストンアセチル化、ヒストンメチル化、ヒストンSUMO化、及び/又はヒストンリン酸化を修飾する。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤である(例えば、ボリノスタット及び/又はトリコスタチンA)である。
一部の実施形態では、小分子は、薬学的に活性の薬剤である。一部の実施形態では、小分子は、代謝活性又は成分の阻害剤である。薬学的に活性の薬剤の有用なクラスとして、限定されないが、抗生物質、抗炎症薬、血管形成若しくは血管作用薬、増殖因子及び/又は化学治療薬が挙げられる。本明細書に記載されるカテゴリー及び例からの分子、又は(Orme-Johnson 2007,Methods Cell Biol.2007;80:813-26)からの分子の1つ若しくは組合せを使用することができる。一部の実施形態では、本開示は、1若しくは複数種の抗生物質、抗炎症薬、血管形成若しくは血管作用薬、増殖因子及び/又は化学治療薬を含む組成物を提供する。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、小分子部分(例えば、分子量が2000ダルトン未満のペプチド模倣物又は小有機分子)、ペプチド若しくはポリペプチド(例えば、抗体若しくはその抗原結合断片)、核酸(例えば、siRNA、mRNA、RNA、DNA、修飾DNA若しくはRNA、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、リボザイム、タンパク質をコードする治療用mRNA)、ナノ粒子、アプタマー、又は低いPK/PDを有する薬物を含む。
組成物:製造、製剤化、送達、及び投与方法
本開示は、中でも、調節剤、例えば、融合分子を含む、又はそれを送達する組成物を提供する。一部の実施形態では、ポリペプチド部分若しくは実体を含む調節剤、例えば、融合分子は、融合分子、例えば、ポリペプチド部分若しくは実体を含む組成物を介して、或いは、融合分子、例えば、ポリペプチド部分若しくは実体コードする核酸を含み、且つ目的のシステム(例えば、特定の細胞、組織、器官など)において融合分子、例えば、ポリペプチド部分若しくは実体の発現を達成するのに十分な他の配列と結合した組成物を介して、提供され得る。
一部の実施形態では、提供される組成物は、その活性成分が本明細書に記載されるように、調節剤、例えば、融合分子を含むか、又はそれを送達する医薬組成物であってもよく、これは、1つ若しくは複数の薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせて提供され、任意選択的に、対象(例えば、細胞、組織、若しくはそれらの他の部位)への投与のために製剤化される。
従って、一部の実施形態では、本開示は、調節剤(例えば、融合分子)、又はその生成中間体を含む組成物を提供する。いくつかの具体的な実施形態では、本開示は、調節剤(例えば、融合分子)又はそのポリペプチド部分をコードする核酸の組成物を提供する。いくつかのそうした実施形態では、提供される核酸は、DNA、RNA、又は本明細書に記載されるいずれか他の核酸部分若しくは実体であるか、又はそれを含んでよく、本明細書に記載されるか、又はそうでなければ、当技術分野で利用可能な任意の技術(例えば、合成、クローニング、増幅、インビトロ若しくはインビボ転写など)により調製され得る。一部の実施形態では、調節剤(例えば、融合分子)又はそのポリペプチド部分をコードする、提供される核酸は、目的のシステム、例えば、特定の細胞、組織、生物など)において提供される核酸の組込み、複製、及び/又は発現を達成するのに適した及び/又は十分な1つ若しくは複数の複製、組込み、及び/又は発現シグナルと作動可能に結合されていてもよい。
一部の実施形態では、調節剤(例えば、融合分子)は、ベクター、例えば、ウイルスベクターであるか、又はそれを含み、それは、本明細書に記載の調節剤(例えば、融合分子)の1つ若しくは複数の成分をコードする1つ若しくは複数の核酸を含む。
本明細書に記載のような核酸又は本明細書に記載のタンパク質をコードする核酸は、ベクター中に組み込まれてもよい。ベクター、例えばレンチウイルスなどのレトロウイルス由来のものは、導入遺伝子の長期の安定な組込み及び娘細胞におけるその増殖を可能にすることから、長期遺伝子導入を達成するために好適なツールである。ベクターの例として、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、種々のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに説明されている。ベクターとして有用であるウイルスとして、限定はされないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられる。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモータ配列、便宜的な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1以上の選択可能マーカーを有する。
天然又は合成核酸の発現は、典型的には目的の遺伝子をコードする核酸をプロモータに作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことにより達成される。ベクターは、真核生物における複製及び組み込みに適し得る。典型的なクローニングベクターは、所望される核酸配列の発現にとって有用な転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、並びにプロモータを有する。
追加的なプロモータ領域、例えば増強配列は、転写開始の頻度を調節してもよい。典型的には、これらの配列は転写開始部位の30~110bp上流の領域内に位置するが、近年、いくつかのプロモータが同様に転写開始部位の下流に機能的要素を有することが示されている。プロモータ領域間のスペーシングはフレキシブルであることが多いことから、プロモータ機能は、領域が互いに対して反転又は移動されるとき、保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモータでは、プロモータ領域間のスペーシングは、活性が低下し始める前に50bp離れるまで増加し得る。プロモータに応じて、転写を活性化するため、各領域が協同的又は非依存的に機能し得るように思われる。
好適なプロモータの一例が、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列である。このプロモータ配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の発現を高レベルで駆動する能力がある強力な構成的プロモータ配列である。いくつかの実施形態では、好適なプロモータが伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかし、他の構成的プロモータ配列、例えば限定はされないが、サルウイルス40(SV40)初期プロモータ、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端リピート(LTR)プロモータ、MoMuLVプロモータ、トリ白血病ウイルスプロモータ、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータ、並びにヒト遺伝子プロモータ、例えば限定はされないが、アクチンプロモータ、ミオシンプロモータ、ヘモグロビンプロモータ、及びクレアチンキナーゼプロモータも使用されてもよい。
本開示は、任意の特定のプロモータ又はプロモータのカテゴリー(例えば構成的プロモータ)の使用に限定されるように解釈されるべきではない。例えば、いくつかの実施形態では、誘導性プロモータが本開示の一部として検討される。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータの使用により、それが作動可能に連結される対象のポリヌクレオチド配列の発現を、かかる発現が所望されるときに活性化する能力がある分子スイッチが提供される。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータの使用により、発現を、所望されないときに不活性化する能力がある分子スイッチが提供される。誘導性プロモータの例として、限定はされないが、メタロチオニンプロモータ、グルココルチコイドプロモータ、プロゲステロンプロモータ、及びテトラサイクリンプロモータが挙げられる。
いくつかの実施形態では、導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクト又は感染されることが探求された細胞の集団から細胞を発現する同定及び選択を促進するため、選択可能マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか又は双方を有し得る。いくつかの態様では、選択可能マーカーは、DNAの分離片に対して実施され、同時トランスフェクション法において使用されてもよい。宿主細胞内での発現を可能にするため、選択可能マーカーとレポーター遺伝子の双方は、適切な転写調節配列と隣接されてもよい。有用な選択可能マーカーは、例えば抗生物質耐性遺伝子、例えばneoなどを含んでもよい。
いくつかの実施形態では、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定するため、且つ/又は転写調節配列の機能性を評価するため、レポーター遺伝子が使用されてもよい。一般に、レポーター遺伝子は、(レポーター遺伝子の)レシピエント供給源中に存在しないか又はそれによって発現され、且ついくつかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性又は可視化可能な蛍光により発現が明らかにされるようなポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入されてからの好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されたアルカリホスファターゼをコードする遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)を含んでもよい。好適な発現系は、周知であり、公知の技術を用いて調製されるか又は商業的に得られてもよい。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルでの発現を示す最小の5’隣接領域を有する構築物は、プロモータとして同定される。かかるプロモータ領域は、レポーター遺伝子に連結され、薬剤のプロモータ駆動転写を調節する能力について評価するため、使用されてもよい。
様々な実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、調節剤、例えば、融合分子)は、医薬組成物である。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、医薬組成物)は、任意の投与経路を介して、細胞及び/又は対象に送達するために、製剤化され得る。対象への投与方法としては、注射、注入、吸入、鼻内、眼内、局所送達、カニューレ内送達、又は摂取を挙げることができる。注射としては、限定しないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、血管内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、並びに胸骨内注射及び注入が挙げられる。一部の実施形態では、投与は、例えば、噴霧法を用いたエアロゾル吸入を含む。一部の実施形態では、投与は、全身(例えば、経口、直腸、鼻内、舌下、口腔、若しくは非経口)、経腸(例えば、全身作用だが、消化管を介して送達される)、又は局所(例えば、皮膚への局所適用、硝子体内注射)である。一部の実施形態では、1つ若しくは複数の組成物は、全身投与される。一部の実施形態では、投与は注射ではなく、且つ、治療薬は非経口治療薬である。いくつかの特定の実施形態では、投与は、気管支(例えば、気管支内点滴による)、口腔、皮膚(例えば、真皮、皮内、皮内、経皮などに対する局所の1つ若しくは複数であるか、又はそれを含み得る)、経腸、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻内、腹腔内、髄腔内、静脈内、心室内、特定の器官内(例えば、肝臓内)、粘膜、鼻内、経口、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内点滴により)、膣内、硝子体などであってよい。一部の実施形態では、投与は、単回用量であり得る。一部の実施形態では、投与は、間欠的(例えば、時間間隔をあけた複数回用量)及び/又は定期的(例えば、共通の時間間隔を開けた個別の用量)な投薬を含み得る。一部の実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたり連続した投薬(例えば、灌流)を含み得る。
本明細書で用いられる場合、用語「医薬組成物」は、1つ若しくは複数の薬学的に許容できる担体(例えば、当業者には周知の薬学的に許容できる担体)と一緒に製剤化される活性薬剤(例えば、融合分子)を指す。一部の実施形態では、活性薬剤は、関連集団に投与すると、予定された治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンでの投与に適した単位用量で存在する。一部の実施形態では、医薬組成物は、固体又は液体形態での投与のために特別に製剤化してもよく、そうしたものとして、以下:経口投与、例えば、飲薬(水性若しくは非水性溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば、口腔、舌下、及び全身吸収を目的とするもの、ボーラス、粉末剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤;非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内若しくは硬膜外注射(例えば、滅菌溶液若しくは懸濁液など)、又は持続放出製剤;例えば、クリーム、軟膏などの局所適用、又は皮膚、肺、若しくは口腔に適用される制御放出パッチ若しくはスプレー;例えば、ペッサリー、クリーム、若しくはフォームとしての膣内若しくは直腸内;舌下;眼内;経皮;或いは鼻、肺、及び/又は他の粘膜表面のために設計されたものが挙げられる。
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容できる」は、信頼できる医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の障害若しくは合併症を起こすことなく、ヒト及び動物の組織と接触した使用に適しており、妥当なベネフィット/リスト比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容できる担体」とは、主題の組成物を1つの器官、若しくは身体の部分から、別の器官、若しくは身体の部分に運搬又は輸送するのに関与する液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、若しくは溶媒カプセル化材料などの薬学的に許容できる材料、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、且つ患者に対して有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。一部の実施形態では、例えば、薬学的に許容できる担体として役立ち得る材料として、以下:ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、及びその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、ココナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;エチルアルコール;アルギン酸;発熱性物質除去蒸留水;等張食塩水;リンガー液;エチルアルコール;pH緩衝液;ポリエステル、ポリカーボネート、及び/又はポリ無水物;並びに医薬製剤に使用されている他の非毒性適合性物質が挙げられる。
本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容できる塩」は、医薬関連での使用に適した化合物の塩、即ち、信頼できる医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを起こすことなく、ヒト及び下等動物の組織と接触した使用に適しており、且つ妥当なベネフィット/リスト比に見合う塩を指す。薬学的に許容できる塩は、当技術分野で公知である。例えば、S.M.Berge,et al.は、J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19(1977)に薬学的に許容できる塩を記載している。一部の実施形態では、薬学的に許容できる塩として、限定されないが、非毒性酸付加塩が挙げられ、これは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸、又は酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸若しくはマロン酸などの有機酸と共に形成されるか、或いはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を用いることにより形成されるアミノ基の塩である。一部の実施形態では、薬学的に許容できる塩として、限定されないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアネート、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。一部の実施形態では、薬学的に許容できる塩として、適切であれば、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、並びにハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、1~6個の炭素原子を有するアルキル、スルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミンカチオンが挙げられる。
様々な実施形態では、本開示は、薬学的に許容できる賦形剤と共に、本明細書に記載の医薬組成物を提供する。薬学的に許容できる賦形剤は、一般に安全、非毒性で望ましい医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を含み、且つ動物使用と共にヒト医薬品使用にとって許容できる賦形剤を含む。こうした賦形剤は、固体、液体、半固体であってもよいし、又はエアロゾル組成物の場合には、気体であってよい。
医薬調製物は、錠剤の場合、粉砕、混合、顆粒化、及び必要に応じて圧縮;硬質ゼラチンカプセル剤形の場合、粉砕、混合及び充填を含む従来の製剤技術に従って製造することができる。液体担体を用いる場合、調製物は、シロップ、エレキシル、エマルジョン又は水性若しくは非水性溶液又は懸濁液の形態であってよい。こうした液体製剤は、直接経口投与され得る。
医薬調製物は、本開示に従う医薬組成物は、治療有効量で投与され得る。正確な治療有効量は、所与の対象の治療の効力に関して最も有効な結果をもたらすと考えられる組成物の量である。この量は、限定はされないが、(活性、薬物動態、薬力学、及び生物学的利用率を含む)治療化合物の特徴、(年齢、性別、疾患タイプ及びステージ、全身健康状態、所与の用量に対する応答性、及び処方のタイプを含む)対象の生理的状態、製剤中の薬学的に許容できる1以上の担体の性質、及び/又は投与経路を含む種々の要素に応じて変化することになる。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、治療薬の送達方法を提供し、ここで、ゲノム複合体調整剤が治療薬であり、且つ/又は治療薬の送達は、治療薬の非存在下での遺伝子発現に比して、遺伝子発現の変化を引き起こす。
本明細書に記載の様々な実施形態で提供される方法を、本明細書で描写するいくつかの態様のいずれに使用してもよい。一部の実施形態では、1つ若しくは複数の組成物を特定の細胞、又は1つ若しくは複数の特定の組織にターゲティングさせる。
例えば、一部の実施形態では、1つ若しくは複数の組成物を、上皮、結合、筋肉、及び/又は神経組織若しくは細胞に対してターゲティングさせる。一部の実施形態では、組成物を、特定の器官系、例えば、心血管系(心臓、血管);消化系(食道、胃、肝臓、膀胱、膵臓、腸、結腸、直腸及び肛門);内分泌系(視床下部、下垂体、松果体若しくは松果腺、甲状腺、副甲状腺、副腎);排出系(腎臓、尿管、膀胱);リンパ系(リンパ、リンパ節、リンパ管、扁桃腺、アデノイド、胸腺、脾臓);外皮系(皮膚、毛髪、爪);筋肉系(例えば、骨格筋);神経系(脳、脊髄、神経);生殖系(卵巣、子宮、乳腺、精巣、精管、精嚢、前立腺);呼吸系(咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、横隔膜);骨格系(骨、軟骨);及び/又はそれらの組合せの細胞又は組織にターゲティングさせる。
一部の実施形態では、本開示の組成物は、血液脳関門、胎盤膜、又は血液精巣関門を通過する。
一部の実施形態では、本明細書に提供される組成物は、全身投与される。
一部の実施形態では、投与は注射によるものではなく、且つ治療薬は非経口治療薬である。
一部の実施形態では、本開示の組成物は、治療薬単独と比較して、PK/PDの改善、例えば、増加した薬物動態又は薬物力学、例えば、ターゲティング、吸収、若しくは輸送の改善(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、若しくはそれ以上の改善)を有する。一部の実施形態では、組成物は、治療薬単独と比較して、低減した望ましくない作用、例えば、低減した非標的位置への拡散、オフターゲット活性、又は毒性代謝産物(例えば、治療薬単独と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、若しくはそれ以上の低減)を有する。一部の実施形態では、組成物は、治療薬単独と比較して、治療薬の効力を増大し、且つ/又は治療薬の毒性を低減する(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、若しくはそれ以上)。
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、製剤用担体及び/又はポリマー担体、例えば、リポソーム若しくは小胞体などの担体を含め、製剤化して、公知の方法により、それを必要とする対象(例えば、ヒト又はヒト以外の農場若しくは家畜動物、例えば、畜牛、イヌ、ネコ、ウマ、家禽)に送達される。こうした方法としては、トランスフェクション(例えば、脂質媒介性、カチオンポリマー、リン酸カルシウム);エレクトロポレーション又は他の膜破壊(例えば、ヌクレオフェクション)及びウイルス送達(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAV)が挙げられる。さらに送達方法は、例えば、以下:Gori et al.,Delivery and Specificity of CRISPR/Cas9 Genome Editing Technologies for Human Gene Therapy.Human Gene Therapy.July 2015,26(7):443-451.doi:10.1089/hum.2015.074;及びZuris et al.にも記載されている。タンパク質のカチオン脂質媒介送達は、インビトロ及びインビボで効率的なタンパク質ベースのゲノム編集を可能にする。Nat Biotechnol.2014 Oct 30;33(1):73-80。リポソームは、内部水性区画を囲む単層又は多重層の脂質二重層並びに比較的不透過性の外部親油性リン脂質二重層から構成された球状小胞構造である。リポソームは、アニオン性、中性又はカチオン性であってもよい。リポソームは、生体適合性、非毒性であり、親水性及び親油性薬剤分子の双方を送達し、それらのカーゴを血漿酵素により分解から保護し、それらの負荷を生物学的膜及び血液脳関門(BBB)を通じて輸送し得る(例えば、レビューとして、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照)。
小胞は、いくつかの異なるタイプの脂質から作成され得るが、薬物担体としてのリポソームを作成するため、リン脂質が最も一般的に使用される。小胞は、限定はされないが、DOTMA、DOTAP、DOTIM、DDABを単独で含むか、又はコレステロールと一緒に含み、DOTMA及びコレステロール、DOTAP及びコレステロール、DOTIM及びコレステロール、並びにDDAB及びコレステロールを生成してもよい。多重膜小胞脂質を調製するための方法は、当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第6,693,086号明細書を参照、多重膜小胞脂質製剤に関するその教示内容は、参照により本明細書中に援用される)。脂質膜が水溶液と混合されるとき、小胞形成は自発的であり得るが、それはまた、ホモジナイザー、ソニケーター、又は押出成形装置に使用により振盪の形態で力を加えることにより促進され得る(例えば、レビューとして、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照)。押し出された脂質は、サイズを低減するフィルターを介して押し出すことにより調製可能であり、それはTempleton et al.,Nature Biotech,15:647-652,1997に記載の通りである(押し出された脂質製剤に関するその教示内容は、参照により本明細書中に援用される)。
本明細書に記載される方法及び組成物は、疾患、障害及び/又は病状の症状を緩和するのに十分なレジメンにより投与される医薬組成物を含み得る。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の組成物を投与することにより、治療薬を送達する方法を提供する。
本開示の医薬使用は、本明細書に記載の組成物(例えば、調節剤、例えば、融合分子)を含み得る。いくつかの態様では、医薬使用のためのシステムは、以下:第1ポリペプチドドメインを含むタンパク質、例えば、Cas又は修飾Casタンパク質、及び第2ポリペプチドドメイン、例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ活性を有するか、又は脱メチル化若しくはデアミナーゼ活性と関連するポリペプチドを、eRNAなどのncRNAをターゲティングする少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドと組み合わせて含む。システムは、少なくとも1つのヒト細胞において、ゲノム複合体若しくは転写複合体、例えば、標的アンカー配列媒介接合部を変更するのに効果的である。
いくつかの態様では、本開示の医薬組成物は、eRNAなどのncRNAをターゲティングする(例えば、切断する)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又はZFNをコードするmRNAを含む。
いくつかの態様では、医薬使用のためのシステムは、ncRNA、例えば、eRNAに結合して、ncRNA(例えば、eRNA)を含むゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の形成を変更し、ここで、そうした組成物は、ヒト細胞において、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部に関連する標的遺伝子の転写を調節する。
いくつかの態様では、ヒト細胞において、標的遺伝子の発現を変更するためのシステムは、標的遺伝子と関連するncRNA、例えば、eRNAと結合するターゲティング部分(例えば、gRNA、膜転移ポリペプチド)と、ターゲティング部分と作動可能に連結したエフェクター部分(例えば、酵素、例えば、ヌクレアーゼ若しくは不活性化ヌクレアーゼ(例えば、Cas9、dCas9)、メチラーゼ、デメチラーゼ、デアミナーゼ)とを含み、ここで、上記システムは、標的遺伝子の発現を変更(例えば、低減)するのに有効である。ターゲティング部分とエフェクター部分は、異なる個別の(例えば、融合分子の異なる物理的部分に含まれる)部分であってもよい。ターゲティング部分とエフェクター部分は、例えば、リンカーにより、例えば、共有結合されてもよい。一部の実施形態では、システムは、ターゲティング部分とエフェクター部分を含む合成ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、システムは、ターゲティング部分及びエフェクター部分の少なくとも1つをコードする1つ又は複数の核酸ベクターを含む。
いくつかの態様では、医薬組成物は、ncRNA、例えば、eRNAに結合して、ゲノム又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の形成を変更、例えば、低減する調節剤、例えば、融合分子を含んでよく、ここで、調節剤は、ヒト細胞において、ゲノム又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部に関連する標的遺伝子の転写を調節する。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、ゲノム又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の形成を妨害する(例えば、接合部核形成分子に対するアンカー配列の親和性を、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくはそれ以上低減する)。
一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物(例えば、薬物)の少なくとも1つの成分の少なくとも1つの薬物動態又は薬物力学パラメータ、例えば、ターゲティング、吸収、若しくは輸送を、別の部分単独と比較して改善するか、又は少なくとも1つのトキシコキネティックスパラメータ、例えば、非標的位置への拡散、オフターゲット活性、及び毒性代謝産物を、別の部分単独と比較して低減する(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)。一部の実施形態では、本開示の組成物の投与は、調節剤の少なくとも1つの成分の治療範囲を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)増大する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、別の部分単独と比較して、最小有効用量を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)低減する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、調節剤単独と比較して、最大耐用量を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)増大する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、治療薬、例えば、非経口治療薬の注射以外の投与などの効力を増大するか、又はその毒性を低減する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、調節剤単独と比較して、調節剤の治療範囲を増大すると同時に毒性を低減する(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、タンパク質を含むか、又はタンパク質であり、従って、タンパク質を作製する方法により生産され得る。当業者には理解されるように、タンパク質又はポリペプチド(本明細書に記載の調節剤に含有され得る)を作製する方法は、当技術分野で常用的である。概要については、以下:Smales & James(Eds.),Therapeutic Proteins:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press(2005);及びCrommelin,Sindelar & Meibohm(Eds.),Pharmaceutical Biotechnology:Fundamentals and Applications,Springer(2013)を参照されたい。
本開示の組成物のタンパク質又はポリペプチドは、標準的な固相技術を用いて生化学的に合成することができる。こうした方法としては、排他的固相合成、部分的固相合成方法、フラグメント凝縮、古典的溶液合成が挙げられる。これらの方法は、ペプチドが比較的短い(例えば、10kDa)場合、且つ/又はそれを組換え技術により生産することができない(即ち、核酸配列によりコードされない)ため、別の化学を必要とする場合に使用することができる。
固相合成法は、当技術分野で公知であり、John Morrow Stewart and Janis Dillaha Young,Solid Phase Peptide Syntheses,2nd Ed.,Pierce Chemical Company 1984;及びCoin,I.,et al.,Nature Protocols,2:3247-3256,2007により詳しく記載されている。
より長いペプチドの場合、組換え法を使用することができる。組換え治療用ポリペプチドを作製する方法は、当技術分野において常用的である。概要については、以下:Smales & James(Eds.),Therapeutic Proteins:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press(2005);及びCrommelin,Sindelar & Meibohm(Eds.),Pharmaceutical Biotechnology:Fundamentals and Applications,Springer(2013)を参照されたい。
治療薬用タンパク質又はポリペプチドを生産する例示的な方法は、哺乳動物細胞における発現を含むが、適切なプロモータの制御下で、昆虫細胞、酵母、細菌、又は他の細胞を用いて組換えタンパク質を生産することもできる。哺乳動物発現ベクターは、非転写エレメント、例えば、複製起点、好適なプロモータ、並びに他の5’又は3’フランキング非転写配列、及び5’又は3非翻訳配列、例えば、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、並びに終結配列を含み得る。異種DNA配列の発現に必要な他の遺伝子エレメントを取得するために、SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列、例えば、SV40複製起点、初期プロモータ、スプライス、及びポリアデニル化部位を用いてもよい。細菌、真菌、酵母、及び哺乳動物細胞宿主と共に使用するのに適したクローニング及び発現ベクターは、以下:Green & Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Fourth Edition),Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012)に記載されている。
多量のタンパク質又はポリペプチドが要望される場合には、以下:Brian Bray,Nature Reviews Drug Discovery,2:587-593,2003;及びWeissbach & Weissbach,1988,Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,Section VIII,pp 421-463に記載されるような技術を用いて、それを生成することができる。
様々な哺乳動物細胞培養システムを使用して、組換えタンパク質を発現させ、製造することができる。哺乳動物発現システムの例として、CHO細胞、COS細胞、HeLA及びBHK細胞株が挙げられる。タンパク質治療薬生産のための宿主細胞培養のプロセスは、Zhou and Kantardjieff(Eds.),Mammalian Cell Cultures for Biologics Manufacturing(Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology),Springer(2014)に記載されている。本明細書に記載される組成物は、組換えタンパク質をコードするベクター、例えば、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターを含有してもよい。一部の実施形態では、ベクター、例えば、ウイルスベクターは、組換えタンパク質をコードする核酸を含み得る。
タンパク質治療薬の精製については、以下:Franks,Protein Biotechnology:Isolation,Characterization,and Stabilization,Humana Press(2013);及びCutler,Protein Purification Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press(2010)に記載されている。タンパク質治療薬の製剤化については、以下:Meyer(Ed.),Therapeutic Protein Drug Products:Practical Approaches to formulation in the Laboratory,Manufacturing,and the Clinic,Woodhead Publishing Series(2012)に記載されている。タンパク質は、1つ又は複数のアミノ酸を含む。アミノ酸は、例えば、1つ又は複数のペプチド結合を介して、ポリペプチド鎖に組み込むことができる任意の化合物及び/又は物質を含む。一部の実施形態では、アミノ酸は、一般構造:HN-C(H)(R)-COOHを有する。一部の実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。一部の実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、D-アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、L-アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然に存在するペプチドに共通して存在する20の標準L-アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」とは、それが合成により調製されたか、又は天然供給源から得られたにかかわらず、標準アミノ酸以外のあらゆるアミノ酸を指す。一部の実施形態では、ポリペプチド中のカルボキシ-及び/又はアミノ-末端アミノ酸を含め、アミノ酸は、上の一般的構造と比較して、構造修飾を含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、アミノ酸は、一般的構造と比較して、(例えば、アミノ基、カルボン酸基、1つ若しくは複数のプロトン、及び/又はヒドロキシル基の)メチル化、アミド化、アセチル化、ペグ化、グリコシル化、リン酸化、及び/又は置換により修飾されていてもよい。一部の実施形態では、こうした修飾は、例えば、そうでなければ同じ非修飾アミノ酸を含有するものと比較して、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの循環半減期を変更し得る。一部の実施形態では、こうした修飾は、そうでなければ同じ非修飾アミノ酸を含有するものと比較して、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの関連活性を有意に変更しない。文脈から明らかになるように、一部の実施形態では、用語「アミノ酸」は、遊離アミノ酸を示すために使用される場合もあり;一部の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸残基を示すために使用される場合もある。
いくつかの態様では、本開示は、ncRNA、例えば、eRNAに結合して、ゲノム又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の形成を変更、例えば、低減若しくは増大する(例えば、複合体のレベルを少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上低下させる)調節剤、例えば、融合分子を提供する。
いくつかの態様では、医薬組成物は、Casタンパク質と、Cas9タンパク質をncRNA、例えば、eRNAに対してターゲティングさせる少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含む。
一部の実施形態では、gRNAは、標的化ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、例えば、野生型Cas9、ニッカーゼCas9(例えば、Cas9 D10A)、不活性型Cas9(dCas9)、eSpCas9、Cpf1、C2C1、若しくはC2C3、又はそのようなヌクレアーゼをコードする核酸と組み合わせて投与される。ヌクレアーゼ及びgRNAの選択は、標的化突然変異が、ヌクレオチドの欠失、置換、又は付加、例えば、ncRNA、例えば、eRNAに対するヌクレオチドの欠失、置換、又は付加であるかどうかによって決定される。例えば、一部の実施形態では、1つのgRNAを投与して、例えば、ncRNA、例えば、eRNA中の不活性化インデル突然変異を引き起こし、例えば、1つのgRNAは、ヌクレアーゼ、例えば、wtCas9と組み合わせて投与する。
いくつかの態様では、本開示は、それを必要とする対象に投与されると、標的ゲノム複合体/転写複合体又は標的ゲノム複合体若しくは転写複合体の成分、例えば、ncRNA、eRNAの標的配列に、部位特異的変更(例えば、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転位、反転、単一の点突然変異)を導入し、それにより、対象における遺伝子発現を調節する、核酸又は核酸の組合せを含む組成物を提供する。
使用
本明細書に記載される技術は、ゲノム複合体又は転写複合体の構造及び/若しくは機能の調節を達成する。中でも、一部の実施形態では、提供されるこうした技術は、遺伝子発現の調節を達成し、例えば、細胞において、遺伝子活性、送達、及び透過の広範な制御を可能にする。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、細胞は、体細胞である。一部の実施形態では、細胞は、初代細胞である。
例えば、一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物の体細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物体細胞は、初代細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物体細胞は、非胚性細胞である。
一部の実施形態では、提供される方法は、調節剤(例えば、融合分子)を細胞に送達するステップを含む。一部の実施形態では、送達ステップは、エクスビボで実施される。一部の実施形態では、複数の方法は、送達ステップの前に、対象から細胞(例えば、哺乳動物細胞)を取り出すステップをさらに含む。一部の実施形態では、複数の方法は、送達ステップの後に、(b)細胞(例えば、哺乳動物細胞)を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、送達ステップは、調節剤(例えば、融合分子)を含む組成物を対象に送達するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、疾患又は病状を有する。
一部の実施形態では、送達ステップは、細胞膜を介した送達を含む。一部の実施形態では、提供される方法は、(a)細胞、例えば、哺乳動物体細胞内で、ncRNA、例えばeRNAの1つ若しくは複数のヌクレオチドを置換する、付加する、又は欠失させるステップを含む。
一部の実施形態では、置換、付加、又は欠失のステップは、インビボで実施される。一部の実施形態では、置換、付加、又は欠失のステップは、エクスビボで実施される。
一部の実施形態では、提供される方法は、疾患又は病状を有する対象に、哺乳動物体細胞を送達するステップを含み、ここで、哺乳動物体細胞内で、ncRNA、例えばeRNAの1つ若しくは複数のヌクレオチドが、置換、付加、又は欠失される。
一部の実施形態では、提供される方法は、(a)哺乳動物体細胞を対象に投与するステップを含み、ここで、哺乳動物体細胞は、上記対象から取得したものであり、本明細書に記載の調節剤(例えば、融合分子)が、哺乳動物体細胞にエクスビボで送達されている。
一部の実施形態では、血液、肝臓、免疫系、神経系など、又はそれらの組合せに影響を及ぼす適応症は、遺伝子発現の調節により、哺乳動物対象における、ゲノム複合体又は転写複合体、例えばアンカー配列媒介接合部を変更することによって治療することができる。
いくつかの態様では、提供される方法は、哺乳動物対象における、遺伝子発現を変更するか、又はゲノム複合体若しくは転写複合体、例えばアンカー配列媒介接合部を変更することを含む。複数の方法は、対象に(個別に、又は単一の医薬組成物中で)以下:Cas若しくは修飾Casタンパク質を含む第1ポリペプチドドメインと、DNAメチルトランスフェラーゼ活性を有する(又は脱メチル化若しくはデアミナーゼ活性に関連する)ポリペプチドを含む第2ポリペプチドドメインとを含むタンパク質、或いはCas若しくは修飾Casタンパク質を含む第1ポリペプチドドメインと、DNAメチルトランスフェラーゼ活性を有する(又は脱メチル化若しくはデアミナーゼ活性に関連する)ポリペプチドを含む第2ポリペプチドドメインとを含むタンパク質をコードする核酸、並びにncRNA、例えばeRNAをターゲティングする少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)を投与することを含み得る。一部の実施形態では、gRNAは、ゲノム複合体又は転写複合体の成分、例えばncRNA若しくはeRNAをターゲティングする。
本明細書に記載される方法及び組成物は、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部を安定して若しくは一過性変更(例えば、低減する)か、或いは核酸配列の転写を調節することにより、疾患を治療することができる。一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部のクロマチン構造若しくはトポロジーを変更して、安定した転写の調節、例えば、少なくとも約1時間~約30日、又は少なくとも約2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、若しくはそれ以上又はそれらの間の任意の時間持続する調節を達成する。一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部のクロマチン構造若しくはトポロジーを変更して、転写の一過性調節、例えば、約30分~約7日以下、又は約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、4日、5日、6日、7日以下、若しくはそれらの間の任意の時間持続する調節を達成する。
いくつかの態様では、本開示により提供される方法は、標的遺伝子の発現を調節することを含み得るが、これは、細胞、組織又は対象に、本明細書に記載の調節剤、例えば、融合分子を投与することを含む。
いくつかの態様では、本開示は、標的遺伝子の発現を調節する方法を提供し、これは、標的遺伝子に関連するゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部を変更することを含み、ここで、変更により、標的遺伝子の転写を調節する。
一部の実施形態では、提供される方法は、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部、又はその部分(例えば、ncRNA、例えば、eRNA)を誘導性変更することを含み得る。アンカー媒介接合部又はゲノム複合体の他の成分(例えば、ncRNA、例えば、eRNA)に対する誘導性変更の使用によって、分子スイッチが得られる。一部の実施形態では、分子スイッチは、所望されるとき、変更をオンにすることができる。一部の実施形態では、分子スイッチは、それが所望されないとき、変更をオフにすることができる。一部の実施形態では、分子スイッチは、必要に応じて、変更をオン及びオフのいずれにすることもできる。変更を誘導するために用いられるシステムの例として、限定されないが、原核生物オペロン、例えば、lacオペロン、トランスポゾンTn10、テトラサイクリンオペロンなどに基づく誘導性ターゲティング部分、及び真核生物シグナル伝達経路に基づく誘導性ターゲティング部分、例えば、ステロイド受容体ベースの発現系、例えば、エストロゲン受容体若しくはプロゲステロンベースの発現系、メタロチオネインベースの発現系、エクジソンベースの発現系が挙げられる。
一部の実施形態では、細胞又は組織を対象から切除し、遺伝子発現、例えば、内因性又は外性遺伝子発現をエクスビボで変更した後、細胞又は組織を対象に移植して戻してもよい。再移植のために、任意の細胞又は組織を切除し、使用することができる。細胞及び組織のいくつかの例として、限定されないが、幹細胞、脂肪細胞、免疫細胞、筋肉細胞、骨髄由来細胞、腎臓被膜からの細胞、線維芽細胞、内皮細胞、及び肝細胞が挙げられる。一部の実施形態では、例えば、患者からの脂肪細胞を、エネルギー生産及び脂質利用を増大するように、エクスビボで変更してもよい。修飾された脂肪細胞を、それが切除された患者に戻すと、「炉(furnace)」として作用する(例えば、それらは、循環から脂質を取り込み、脂質をエネルギー生産のために使用する)。
本開示は、本明細書に記載の組成物を対象に送達する方法も提供する。一部の実施形態では、組成物は、細胞膜、例えば、原形質膜、核膜、又はオルガネラ膜を介して送達される。既存のポリマー送達技術は、特定の細胞型、通常、エンドサイトーシスを優先的に使用する細胞、例えば、マクロファージ、並びにエンドサイトーシスをトリガーするためにカルシウム流入に依存する他の細胞型でのエンドサイトーシス速度を高める。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載の組成物は、典型的にほとんどの薬剤が進入不可能な膜を介した組成物の移動を助けると考えられる。
いくつかの態様では、以下:(a)Cas若しくは修飾Casタンパク質を含む第1ポリペプチドドメインと、第2ポリペプチドドメイン、例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ活性を有する、又は脱メチル化若しくはデアミナーゼ活性に関連するポリペプチドとを含むタンパク質をコードする核酸、並びに(b)標的細胞中の標的アンカー配列媒介接合部のアンカー配列にタンパク質をターゲティングさせるための少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)を含むキットが記載される。一部の実施形態では、タンパク質をコードする核酸とgRNAは、同じベクター、例えば、プラスミド、AAVベクター、AAV9ベクター中にある。一部の実施形態では、タンパク質をコードする核酸とgRNAは、個別のベクター中にある。
遺伝子の発現の調節
当業者には理解されるように、特定の遺伝子が、複合体と関連することがわかっており、多くの場合、遺伝子の発現に対する所与のゲノム複合体又は転写複合体の作用は知られている。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載されるように、複合体の阻害により、関連遺伝子の発現を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるように、複合体の阻害により、関連遺伝子の発現を促進する。
一部の実施形態では、核酸配列の転写、例えば、標的核酸配列の転写は、標準値、例えば、変更されたゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の非存在下での標的配列の転写と比較して、調節される。
一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部と関連する遺伝子の発現を調節する技術が提供され、上記接合部は、第1アンカー配列及び第2アンカー配列を含む。アンカー配列媒介接合部と関連する遺伝子は、少なくとも部分的に、接合部内(即ち、第1及び第2アンカー配列の間に配列様に位置する)にあってもよいし、又は第1及び第2アンカー配列の間に配列様に位置していないという点で接合部の外部であってもよいが、上記遺伝子は、同じ染色体上で、しかも、アンカー配列媒介接合部のトポロジーを制御することによりその発現を調節することができるように、少なくとも第1又は第2アンカー配列と十分に近接して位置する。当業者は、2つのエレメント同士(例えば、上記遺伝子とアンカー配列媒介接合部の間)の三次元空間中での距離が、一部の実施形態において、塩基対に関する距離よりも重要となり得ることは理解されよう。一部の実施形態では、外部ではあるが、関連する遺伝子は、第1又は第2アンカー配列から2Mb以内、1.9Mb以内、1.8Mb以内、1.7Mb以内、1.6M以内、1.5Mb以内、1.4Mb以内、1.3Mb以内、1.3Mb以内、1.2Mb以内、1.1Mb以内、1Mb以内、900kb以内、800kb以内、700kb以内、500kb以内、400kb以内、300kb以内、200kb以内、100kb以内、50kb以内、20kb以内、10kb以内、又は5kb以内に位置する。
一部の実施形態では、遺伝子の発現の調節は、遺伝子に対する転写制御配列の到達性を変更することを含む。転写制御配列は、アンカー配列媒介接合部の内部又は外部にかかわらず、増強配列又はサイレンシング(若しくは抑制)配列であり得る。
例えば、一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部内の遺伝子の発現を調節するための方法が提供され、これは、以下:第1及び/又は第2アンカー配列を本明細書に記載の調節剤と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、少なくとも1つの転写制御配列を含み、これは、それが少なくとも部分的に第1及び第2アンカー配列の間で配列様に位置するという点で、接合部の「内部」にある。従って、一部の実施形態では、発現を調節しようとする遺伝子(「標的遺伝子」)と、転写制御配列の両方がアンカー配列媒介接合部内にある。
一部の実施形態では、遺伝子は、内部転写制御配列から、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、又は少なくとも900塩基対離れている。一部の実施形態では、遺伝子は、内部転写制御配列から、少なくとも1.0、少なくとも1.2、少なくとも1.4、少なくとも1.6、又は少なくとも1.8kb離れている。一部の実施形態では、遺伝子は、内部転写制御配列から、少なくとも2kb、少なくとも3kb、少なくとも4kb、少なくとも5kb、少なくとも6kb、少なくとも7kb、少なくとも8kb、少なくとも9kb、又は少なくとも10kb離れている。一部の実施形態では、遺伝子は、内部転写制御配列から、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、又は少なくとも100kb離れている。一部の実施形態では、遺伝子は、内部転写制御配列から、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、又は少なくとも500kb離れている。一部の実施形態では、遺伝子は、内部転写制御配列から、少なくとも600kb、少なくとも700kb、少なくとも800kb、少なくとも900kb、又は少なくとも1Mb離れている。
一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、第1及び第2アンカー配列の間に配列様に位置していないという点で、接合部の「外部」にある少なくとも1つの転写制御配列を含む。(例えば、図1に描かれる2、3、及び4型アンカー配列媒介接合部を参照されたい)。一部の実施形態では、第1及び/又は第2アンカー配列は、外部転写制御配列から1Mb以内、900kb以内、800kb以内、700kb以内、600kb以内、500kb以内、450kb以内、400kb以内、350kb以内、300kb以内、250kb以内、200kb以内、180kb以内、160kb以内、140kb以内、120kb以内、100kb以内、90kb以内、80kb以内、70kb以内、60kb以内、50kb以内、40kb以内、30kb以内、20kb以内、又は10kb以内に位置する。一部の実施形態では、第1及び/又は第2アンカー配列は、外部転写制御配列から9kb以内、8kb以内、7kb以内、6kb以内、5kb以内、4kb以内、3kb以内、2kb以内、又は1kb以内に位置する。
例えば、一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部に対して外部の遺伝子の発現を調節する方法が提供され、これは、第1及び/又は第2アンカー配列を本明細書に記載の調節剤と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、少なくとも1つの内部転写制御配列を含む。
一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、少なくとも1つの外部転写制御配列を含む。
一部の実施形態では、疾患関連遺伝子を含むゲノム又は転写複合体と関連するeRNAをターゲティングするターゲティング部分を含む調節剤を投与し、それによって、疾患を治療する(例えば、疾患関連遺伝子の発現を阻害することにより)。
例えば、本明細書に記載される組成物及び方法を用いて、重症先天性好中球減少症(SCN)を治療することができる。一部の実施形態では、この疾患を引き起こすELANE遺伝子の発現を阻害する。ターゲティング部分は投与されて、ELANE遺伝子に隣接する1つ又は複数のアンカー配列をターゲティングし、ELANE遺伝子を含む抑制複合体を生成する。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の医薬組成物を用いてSCNを治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載される1つ又は複数の組成物の投与は、1つ若しくは複数遺伝子の遺伝子発現を調節し、例えば、ELANE遺伝子の遺伝子発現を調節して、SCNを治療する。
本明細書に記載される組成物及び方法を用いて、鎌状血球性貧血及びβサラセミアを治療することができる。一部の実施形態では、HBG遺伝子からのHbF(正常ヘモグロビンレベルを回復することがわかっている)の発現を活性化する。HBB遺伝子クラスター又はHBG遺伝子中の隣接する1つ若しくは複数のアンカー配列をターゲティングするために、ターゲティング部分を投与する。一部の実施形態では、HBB遺伝子クラスターを含む阻害性複合体が生成される。一部の実施形態では、HBG遺伝子を含む活性化複合体が生成される。また、BCL11Aの下方制御も、HBBを上方制御し、且つHBG発現を下方制御することが明らかにされている。一部の実施形態では、BCL11A遺伝子クラスターと結合した阻害性アンカー配列媒介接合部が形成される。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の医薬組成物を用いて、鎌状血球性貧血及びβサラセミアを治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与によって、1つ若しくは複数の遺伝子の遺伝子発現を調節し、例えば、HBB遺伝子クラスター又はHBG遺伝子からの遺伝子発現を調節して、SCNを治療する。
本明細書に記載される組成物及び方法を用いて、MYC関連腫瘍、例えば、MYC依存性癌を治療することができる。一部の実施形態では、腫瘍の原因であることが判明しているMYCの発現を阻害する。MYC遺伝子内で隣接する1つ又は複数のアンカー配列をターゲティングするために、ターゲティング部分を投与する。一部の実施形態では、MYC遺伝子を含む阻害性複合体が生成される。一部の実施形態では、MYC関連アンカー配列媒介接合部を妨害することにより、例えば、アンカー配列媒介接合部内の転写に対して以前利用可能であったDNAの立体配座変化による転写の低減、例えば、MYC遺伝子と増強配列の間にさらなる距離を生み出すDNAの立体配座変化による転写の低減によって、MYC発現を低減させる。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の組成物を用いて、MYC関連腫瘍を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載される1つ又は複数の組成物の投与によって、1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現を調節し、例えば、MYC遺伝子からの遺伝子発現を調節して、MYC関連腫瘍を治療する。
本明細書に記載される組成物及び方法を用いて、乳児のミオクロニーてんかん(SMEI又はドラベ症候群)を治療することができる。一部の実施形態では、SCN1A遺伝子からのNa1.1(また、電位依存性ナトリウムチャネル、I型、αサブユニット(SCN1A)としても知られる)での機能喪失突然変異は、重度のトラベ症候群を引き起こす。一部の実施形態では、SCN1A遺伝子中で隣接する1つ又は複数のアンカー配列をターゲティングするために、調節剤を投与する。一部の実施形態では、SCN3A遺伝子中で隣接する1つ又は複数のアンカー配列をターゲティングして、Na1.3(また、電位依存性ナトリウムチャネル、III型、αサブユニット(SCN3A)としても知られる)の発現を増大するために、調節剤を投与する。一部の実施形態では、SCN5A遺伝子中で隣接する1つ又は複数のアンカー配列をターゲティングして、Na1.5(また、電位依存性ナトリウムチャネル、V型、αサブユニット(SCN5A)としても知られる)の発現を増大するために、調節剤を投与する。一部の実施形態では、SCN8A遺伝子中で隣接する1つ又は複数のアンカー配列をターゲティングして、Na1.6(また、電位依存性ナトリウムチャネル、VIII型、αサブユニット(SCN8A)としても知られる)の発現を増大するために、調節剤を投与する。一部の実施形態では、Na1.1、Na1.3、Na1.5、及びNa1.6の発現をそれぞれ増大するために、SCN1A、SCN3A、SCN5A、及びSCN8A遺伝子のいずれか1つを含む活性化複合体を作製する。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の医薬組成物を用いて、ドラベ症候群を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与は、1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現を調節すること(例えば、SCN1A、SCN3A、SCN5A、及びSCN8A遺伝子からの遺伝子発現の調節など)により、ドラベ症候群を治療する。一部の実施形態では、GABA活性を増大するための、GABAアゴニストに連結した膜転移ポリペプチドを含む組成物の投与。
本明細書に記載される組成物及び方法を用いて、家族性肢端紅痛症を治療することができる。一部の実施形態では、SCN9A遺伝子からのNa1.7(また、電位依存性ナトリウムチャネル、IX型、αサブユニット(SCN9A)としても知られる)での機能喪失突然変異は、重度の家族性肢端紅痛症を引き起こす。一部の実施形態では、SCN9A遺伝子中で隣接する1つ又は複数のアンカー配列をターゲティングするために、調節剤を投与する。一部の実施形態では、Na1.7の発現を増大するために、SCN9A遺伝子を含む活性化化合物を作製する。
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の医薬組成物を用いて、家族性肢端紅痛症を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与によって、例えば、1つ又は複数の遺伝子発現を調節する、例えば、SCN9A遺伝子からの遺伝子発現を調節することができる。一部の実施形態では、SCN9A遺伝子の調節によって、家族性肢端紅痛症を治療する。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法はまた、既存の治療薬を改善して、生体利用可能性を高め、且つ/又はトキシコキネティックを低減することもできる。
従って、とりわけ、本出願は、本明細書に記載のゲノム複合体を調節することにより遺伝子発現を調節する技術を提供する。
一部の実施形態では、調節は、絶縁された近傍(insulated neighborhood)の妨害又は形成を誘導することを含み得る。一部の実施形態では、絶縁された近傍の調節は、アセンブリの形成の妨害/頻度の低下/ゲノム複合体、即ち、絶縁された近傍が遺伝子転写に及ぼすあらゆる調節作用の媒介を担う細胞複合体の解離の誘導によって転写に影響を与える。
いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数のゲノム複合体を妨害する方法を提供する。非限定的な例として、一部の実施形態では、妨害は、1つ又は複数のゲノム複合体の構造トポロジーの変化を指す場合がある。一部の実施形態では、本明細書で用いられるとき、妨害は、構造トポロジーに対する影響又は変化を必要としない、1つ又は複数のゲノム複合体の機能の変化を指す場合もある。例えば、一部の実施形態では、複数の方法は、1つ又は複数のゲノム複合体の構造トポロジーの妨害を含み得る。いずれの理論にも束縛されることは望まないが、一部の実施形態では、ゲノム複合体の妨害は、遺伝子発現を変更し得る。遺伝子発現の変更は、ゲノム複合体妨害が存在しない場合の発現レベルに比して、1つ若しくは複数の遺伝子の上方制御であるか、又はそれを含み得る。遺伝子発現の変更は、ゲノム複合体妨害が存在しない場合の発現レベルに比して、1つ若しくは複数の遺伝子の下方制御であるか、又はそれを含み得る。
一部の実施形態では、妨害は、1つ若しくは複数のCTCF結合部位の欠失であるか、又はそれを含み得る。
一部の実施形態では、妨害は、1つ若しくは複数のCTCF結合部位のメチル化であるか、又はそれを含み得る。
一部の実施形態では、妨害は、ゲノム複合体の一部(例えば、2つのCTCF結合部位/アンカー部位の間)であるノンコーディングRNAの分解の誘導であるか、又はそれを含み得る。
一部の実施形態では、妨害は、常在ノンコーディングRNAを阻止することによる1つ若しくは複数のゲノム複合体(例えば、そうでなければ外性干渉の存在下で形成し得るゲノム複合体)のアセンブリの干渉であるか、又はそれを含み得る。
ゲノム修飾
一部の実施形態では、標的遺伝子を変更するための本開示に提供される技術(例えば、方法及び/又は組成物)は、ゲノム配列エレメント(例えば、ゲノム複合体若しくは転写複合体に参加する、且つ/又はそれに関連する遺伝子の一部である)の部位特異的編集又は突然変異を含み得る。例えば、一部の実施形態では、内因性又は天然に存在するアンカー配列を変更して、アンカー配列を不活性化若しくは欠失させる(例えば、それにより、アンカー配列媒介接合部若しくは前記連結を含むゲノム複合体を妨害する)こともできるし、或いはそれを変更して、アンカー配列を変異させるか、又は置換する(例えば、アンカー配列を変異させるか、又は核形成タンパク質に対して、変更された親和性、例えば、低減した親和性若しくは増大した親和性を有する変更されたアンカー配列でアンカー配列を置換する)ことにより標的化接合部の強度を調節することもできる。一部の実施形態では、例えば、標的遺伝子をサイレンシングするために、例えば、1つ又は複数の外性アンカー配列を対象のゲノムに組み込むことにより、標的遺伝子を組み込む非天然アンカー配列媒介接合部を生成することができる。一部の実施形態では、外性アンカー配列は、内因性アンカー配列と一緒にアンカー配列媒介接合部を形成することができる。核形成タンパク質は、例えば、CTCF、コヒーシン、USF、YY1、TAF3、ZNF143結合モチーフ、又はアンカー配列媒介結合の形成を促進する別のポリペプチドであり得る。
一部の実施形態では、本明細書に提供される技術は、標的配列(例えば、標的化ゲノム複合体の一部であるか、又はそれに参加する配列)を変更するものを含み得る。
一部の実施形態では、本明細書に提供される技術は、CTCF-結合モチーフ:
N(T/C/G)N(G/A/T)CC(A/T/G)(C/G)(C/T/A)AG(G/A)(G/T)GG(C/A/T)(G/A)(C/G)(C/T/A)(G/A/C)(配列番号1)(Nは、任意のヌクレオチドである)
である、標的遺伝子(例えば、アンカー配列)を変更するものを含み得る。CTCF-結合モチーフはまた、逆配向、例えば、
(G/A/C)(C/T/A)(C/G)(G/A)(C/A/T)GG(G/T)(G/A)GA(C/T/A)(C/G)(A/T/G)CC(G/A/T)N(T/C/G)N(配列番号2)
になるように変更することもできる。
変更は、細胞の遺伝子に、例えば、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで導入することができる。
いくつかのケースでは、本開示の組成物及び/又は方法は、例えば、クロマチン構造の二次元表示が、複合体から非複合体に変化し得る(若しくは複合体よりも非複合体を優先する)ように、又はその逆も同様に、クロマチン構造を変更して、ゲノム複合体若しくは転写複合体の1成分(例えば、転写因子、例えば、ゲノム配列とのその相互作用)を変更すること、標的化CTCF-結合モチーフを不活性化することを目的とし、例えば、変更は、CTCF-結合を消失させ、それにより、標的化接合部の形成を消失させる。他の事例では、変更は、特定のゲノム複合体成分の活性を減弱(例えば、そのレベルを低下)させ、それにより、ゲノム複合体の形成を低減若しくは妨害する(例えば、より低い親和性で核形成タンパク質と結合するように、CTCF配列を変更することによって)。一部の実施形態では、標的化変更は、特定のゲノム複合体成分の活性を増大し、それにより、ゲノム複合体の形成を増大若しくは維持し(例えば、より高い親和性で核形成タンパク質と結合するようにCTCF配列を変更することによって)、それにより、標的化接合部の形成を促進する。
一部の実施形態では、提供される調節剤は、(i)酵素として不活性のCasポリペプチド及び脱アミノ化剤、又は融合分子をコードする核酸を含む融合分子;並びに(ii)核酸分子(例えば、gRNA、PNA、BNAなど)であって、この核酸分子は、標的配列(例えば、ゲノム複合体内、例えば、アンカー配列媒介接合部内の)に対して融合分子をターゲティングさせるが、少なくとも1つの非標的アンカー配列にはターゲティングさせない核酸分子(本明細書にさらに記載されるような、「部位特異的核酸分子」)を含み得る。
一部の実施形態では、小さな突然変異又は単一点突然変異を導入するために、相同組換え(HR)鋳型を使用することもできる。一部の実施形態では、HR鋳型は、一本鎖DNA(ssDNA)オリゴ又はプラスミドである。一部の実施形態では、例えば、ssDNAオリゴ設計のために、概ね中央に導入した突然変異を含む約100~150bpの全相同性を用いて、50~75bp相同性アームを取得することができる。
一部の実施形態では、標的アンカー配列、例えば、標的配列をターゲティングする核酸分子は、以下:
(a)目的の標的配列(例えば、標的ゲノム複合体の一部であるか、又はそれに参加する標的配列)を含むヌクレオチド配列;
(b)目的の標的配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%同一のヌクレオチド配列;
(c)少なくとも1、2、3、4、5で、且つ15、12若しくは10未満のヌクレオチド付加、置換又は欠失を有する目的の標的配列を含むヌクレオチド配列
から選択されるHR鋳型と組み合わせて投与する。
クロマチン構造の修飾
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、対象における遺伝子発現を調節するために、クロマチン構造(例えば、ゲノム複合体、転写複合体、又は配列媒介接合部内)を調節する。本明細書を読む当業者は、本明細書に記載の調節が、二次元表示を変更する(例えば、複合体又は他のアンカー配列媒介接合部を付加、変更するか、若しくは欠失させる)様式で、クロマチン構造を変更し得ることは理解されよう;こうした修飾は、本明細書では、一般的用語に従って、二次元構造の調節又は修飾と呼ばれる。
いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部のトポロジーを変更して、核酸配列の転写を調節することにより、二次元構造を修飾することを含んでもよく、ここで、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の変更されたトポロジーは、核酸配列の転写を調節する。
いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、複数のゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部のトポロジーを変更して、核酸配列の転写を調節することにより、クロマチン構造の二次元構造を修飾することを含んでもよく、ここで、変更されたトポロジーは、核酸配列の転写を調節する。
いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、核酸配列の転写に影響を与えるゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部を変更することにより、核酸配列の転写を調節することを含んでもよく、ここで、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の変更は、核酸配列の転写を調節する。
一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の変更は、以下:クロマチン構造の修飾、例えば、ゲノム複合体若しくは転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部のトポロジーの[可逆的若しくは不可逆的]妨害、ゲノム複合体若しくは転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部中の1つ若しくは複数のヌクレオチドの変更、[配列の遺伝子修飾]、ゲノム複合体若しくは転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部中の1つ若しくは複数のヌクレオチドのエピジェネティック修飾[1つ若しくは複数の部位でのDNAメチル化の調節]、又は非天然アンカー配列媒介接合部の形成を含む。一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の変更は、クロマチン構造の修飾を含む。
当業者には理解されるように、所与のアンカー配列ペアは、アンカー配列媒介接合部の「ブリーシング(breathe)」が可能であるが、所与のアンカー配列ペアは、例えば、細胞型などの要因に応じて、多かれ少なかれ、特定の状態(連結内若しくは外のいずれでも)にある傾向を有し得る。
「妨害」とは、ゲノム複合体若しくは転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の形成及び/又は安定性に負の影響が及ぼされることを意味する。
エピジェネティック修飾
一部の実施形態では、部位特異的エピジェネティック修飾(例えば、メチル化若しくは脱メチル化)により、ゲノム複合体若しくは転写複合体を変更する目的で、提供される組成物及び/又は方法が本明細書に記載される。
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、エピジェネティック修飾をもたらし得る。例えば、内因性又は天然に存在する標的配列(例えば、ゲノム複合体若しくは転写複合体内の配列)を変更して、そのメチル化を増大する(例えば、ゲノム複合体若しくは転写複合体の1成分(例えば、転写因子)とゲノム配列の1部分との相互作用を低減する、核形成タンパク質とアンカー配列の結合を低減する、並びにアンカー配列媒介接合部を妨害若しくは阻止することができ、或いはそれを変更して、そのメチル化を低減する(例えば、ゲノム複合体の1成分(例えば、1転写因子)とゲノム配列の1部分との相互作用、核形成タンパク質とアンカー配列の結合を増大し、アンカー配列媒介接合部を促進又はその強度を増大する、など)ことができる。
いくつかの特定の実施形態では、調節剤は、例えば、部位特異的ターゲティング部分(例えば、本明細書に記載されるターゲティング部分のいずれか1つ)と、エフェクター部分、例えば、エピジェネティック修飾剤であるか、又はそれらを含んでもよく、ここで、部位特異的ターゲティング部分は、融合分子を標的アンカー配列に対してターゲティングさせるが、少なくとも1つの非標的アンカー配列に対してはターゲティングさせない。他の実施形態では、ターゲティング部分は、融合分子を標的eRNAに関連するゲノム配列エレメント(例えば、標的eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体)に対してターゲティングさせる。エピジェネティック修飾剤は、本明細書に開示されるエピジェネティック修飾剤のいずれか1つ又はそれらの任意の組合せであってよい。
一部の実施形態では、例えば、(1つ若しくは複数の)エフェクタードメインの全部又は1部分(例えば、その生物活性部分)とテザリングした、触媒として不活性のエンドヌクレアーゼ、例えば、不活性型Cas9(dCas9、例えば、D10A;H840A)の融合によって、キメラタンパク質が生成され、これを1つ若しくは複数のRNA配列(sgRNA)により特定のDNA部位に誘導して、1つ若しくは複数の標的核酸配列の活性及び/又は発現を調節する(例えば、DNA配列をメチル化又は脱メチル化する)ことができる。
一部の実施形態では、dCas9と、エピジェネティック修飾剤(例えば、DNAメチラーゼ又はDNA脱メチル化に役割を有する酵素)の1つ若しくは複数のエフェクター部分の全部又は1部分との融合によって、本開示により提供される方法で有用なキメラタンパク質が生成される。従って、例えば、一部の実施形態では、dCas9-メチラーゼ融合物をコードする核酸は、融合物をゲノム複合体成分(例えば、転写因子、ncRNA、(例えば、eRNA)、CTCF-結合モチーフなど)に対してターゲティングさせる部位特異的gRNA又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドと組み合わせると、一緒に、ゲノム複合体若しくは転写複合体の1成分が、特定のゲノム配列と相互作用する親和性又は能力を低減し得る。一部の実施形態では、dCas9-酵素融合物をコードする核酸は、融合物をゲノム複合体成分(例えば、転写因子、ncRNA、(例えば、eRNA)、CTCF-結合モチーフなど)に対してターゲティングさせる部位特異的gRNA又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドと組み合わせると、一緒に、ゲノム複合体若しくは転写複合体の1成分が、特定のゲノム配列と相互作用する親和性又は能力を低減し得る。
一部の実施形態では、1つ若しくは複数のメチラーゼ、又はDNA脱メチル化に役割を有する酵素、エフェクター部分の全部若しくは1部分を不活性ヌクレアーゼ、例えば、dCas9と融合させる。一部の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、若しくはそれ以上のメチラーゼ、又はDNA脱メチル化に役割を有する酵素、エフェクター部分(全部若しくは生物活性部分)をdCas9と融合させる。本明細書に記載されるキメラタンパク質はまた、リンカー、例えば、アミノリンカーを含んでもよい。一部の実施形態では、リンカーは、2つ以上のアミノ酸、例えば、1つ又は複数のGS配列を含む。一部の実施形態では、Cas9(例えば、dCas9)と2つ以上のエフェクター部分(例えば、DNAメチラーゼ、又はDNA脱メチル化に役割を有する酵素)の融合物は、ドメインの間に散在する1つ又は複数のリンカー(例えば、GSリンカー)を含む。いくつかの態様では、dCas9を、リンカーが散在する2~5個のエフェクター部分と融合させる。
複数の実施形態では、本開示の組成物及び/又は方法は、ゲノム複合体又は転写複合体の1配列若しくは成分(例えば、CTCF結合モチーフ、ncRNA/eRNA、転写因子、転写調節因子など)を特異的にターゲティングするgRNAを含み得る。一部の実施形態では、上記配列若しくは成分は、1つ若しくは複数の疾患、障害及び/又は病状と関連し得る特定タイプの遺伝子若しくは配列と結合している。
提供される方法及び/又は組成物で有用なエピジェネティック修飾剤は、例えば、DNAメチル化、ヒストンアセチル化、及びRNA関連サイレンシングに影響を与える薬剤を含む。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、エピジェネティック酵素(例えば、エピジェネティックマーク、例えば、アセチル化及び/若しくはメチル化を生成又は除去する酵素)の配列特異的ターゲティングを含み得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されるCRISPR方法を用いて別の配列にターゲティングさせることができる例示的なエピジェネティック酵素として、DNAメチラーゼ(例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMTL)、DNA脱メチル化に役割を有する酵素(例えば、TETファミリー酵素は、5-メチルシトシンから5-ヒドロキシルメチルシトシン及びより高度の酸化誘導体への酸化を触媒する)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3)、サーチュイン1、2、3、4、5、6、又は7、リシン特異的ヒストンデメチラーゼ1(LSD1)、ヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1)、ユークロマチンヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ2(G9a)、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1)、zesteホモログ2のエンハンサー(EZH2)、ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2)、及びタンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)などが挙げられる。こうしたエピジェネティック薬剤の例は、例えば、Groote et al.Nuc.Acids Res.(2012):1-18に記載されている。
一部の実施形態では、ここで有用なエピジェネティック修飾剤は、Koferle et al.Genome Medicine 7.59(2015):1-3(例えば、表1)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている構築物を含む。
本開示の方法及び/又は組成物に適応可能である例示的なdCas9融合方法及び組成物は公知であり、例えば、Kearns et al.,Functional annotation of native enhancers with a Cas9-histone demethylase fusion.Nature Methods 12,401-403(2015);及びMcDonald et al.,Reprogrammable CRISPR/Cas9-based system for inducing site-specific DNA methylation.Biology Open 2016:doi:10.1242/bio.019067に記載されている。
一部の実施形態では、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部を可逆的に妨害するための組成物及び方法が本明細書に記載される。一部の実施形態では、例えば、妨害は、転写を一時的に調節することができ、調節は、約30分~約7日以下、又は約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、4日、5日、6日、7日以下、若しくはそれらの間の任意の時間持続する。
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又は組成物は、ゲノム複合体又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部を不可逆的に妨害し得る。
以下の実施例は、本開示のいくつかの例をさらに説明するために提供されるが、本開示の範囲の限定を意図するものではなく;それらの例示的な性質から、当業者には周知の他の手順、方法、又は技術が代替的に使用され得ることは理解されよう。
実施例1
本実施例は、本明細書に記載のゲノム複合体内の遺伝子(この場合、ARID1A)の発現を低減するための戦略を記載する。
この実施例では、ゲノム複合体のノンコーディングRNA(ncRNA)成分を分解し、且つ/又はその半減期を短縮する薬剤を用いることにより、標的化ゲノム複合体のレベルを低下させる技術を説明する。
この具体的な実施例では、オリゴヌクレオチドであるか、又はそれを含むターゲティング剤を、標的化ncRNAと特異的にハイブリダイズするように設計及び選択して、ハイブリダイズされたデュプレックスを生成するが、このハイブリダイズデュプレックスは、RNAse Hによる分解を被りやすい。典型的には、こうしたターゲティング剤は、デオキシリボ核酸であるか、又はそれを含む。
一部の実施形態では、本実施例に記載される薬剤をシステムと(例えば、1つ又は複数の細胞と)接触させて、それを、ncRNAを含む活性転写複合体が上記システム中に存在する部位又は位置に送達する。例えば、1つ又は複数の細胞を含むシステムでは、薬剤を核に送達することができ;こうした送達は、受動又は能動的であり得る(例えば、上記薬剤と結合した核局在化アミノ酸配列を含み得る)。
具体的には、この実施例では、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写され、ゲノム複合体の1成分(その存在は、ARID1A遺伝子の発現と相関している)として参加することがわかっている特定のncRNAの1部分(「標的ncRNA」)に対して相補的なデオキシリボ核酸ポリマーを含む薬剤を説明する。また、上記複合体は、YY1を含有することも判明している。
この実施例のデオキシリボ核酸ポリマーは、例えば、供給業者によって化学合成され得る。この実施例での薬剤は、滅菌水で再構成される。
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチド中の残基の一部又は全部を、ホスホロチオエート結合を介して互いに連結する。一部の実施形態では、ホスホロチオエート結合を介して、全ての残基を連結する。以下の表2で、*は、表示される糖残基の2’-OMe(O-メチル)修飾を指す。
Figure 2022548316000003
HEK293T細胞を、表2に記載される薬剤で、或いはそのヌクレオチド配列が表2に示すものに対してスクランブルされている以外は同等の薬剤、及び/又はそうでなければ、この実施例に記載の条件下でヒトゲノム内のいずれか特定のRNA配列と特異的にハイブリダイズする上で十分に相補的でない以外は同等の薬剤で、トランスフェクト又はエレクトロポレーションする。
トランスフェクションの72時間後に、市販の試薬及びプロトコル(Qiagen;Thermo Fisher Scientific)を用いたRNA抽出及びcDNA合成のために、細胞を採取し、ゲノムDNAを抽出する(Qiagen)。得られたcDNAは、定量リアルタイムPCR(Thermo Fisher Scientific)のために使用する。ゲノム遺伝子座特異的な定量PCRプローブ/プライマーを内部標準定量PCRプローブ/プライマーで多重化した後、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて、遺伝子発現を解析する。ARID1A特異的定量PCRプローブ/プライマー(Assay ID Hs00153408_m1,Thermo Fisher Scientific)を、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又はVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
さらに、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写されたncRNAに特異的なプローブを、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又はVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
表2に記載される1つ又は複数の薬剤でトランスフェクトした細胞は、ARID1A発現の低減及びARID1Aプロモータから転写されたncRNAの低減を示すと予想される。
表2に記載される薬剤が、ARID1Aプロモータに近接してアセンブリングするゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性に対して変化をもたらす程度を決定するために、以前の実施例に記載されるように、ゲノム複合体中で富化することがわかっているタンパク質、例えば、コヒーシン、RNAポリメラーゼ、又はメディエータ複合体の成分に対する抗体を用いて、クロマチン免疫沈降を実施する。次に、定量PCRアッセイを、以前の実施例に記載されるように実施する。増幅反応のために用いられるプライマー配列は、以下の通りである:5’-GGGAATGAGCCGGGAGAG’-3’、5’-TGCGCTGCGCTCGCTCCT-3’。
インプット-正規化増幅が、約5%~約100%減少すれば、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示す。
表2に記載される薬剤が、ARID1A発現を調節するエンハンサーに対するARID1Aプロモータの近接性に変化をもたらす程度を決定するために、実施例1に記載のように、4C-seqアッセイを実施する。長い鋳型PCR反応との増幅反応のために使用されるプライマー配列(Roche)は、以下の通りである:ND263926_f 5’-TGGACTGAATCGTTGACATG-3’及びND263926_r 5’-CTTTCCCGTTGCCACTGC-3’。
非ターゲティング対照と比較して、約5%~約100%減少したシーケンシングリード数は、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示し、これは、表2に記載する1つ若しくは複数の薬剤が、ARID1Aプロモータと、ARID1A発現を調節する1つ若しくは複数のエンハンサーとの結合を妨害するのに十分であることを示唆している。非ターゲティング対照中のベイト/視点(viewpoint)としてARID1Aプロモータを用いる4C-seqアッセイにより、ARID1Aプロモータと相互作用するエンハンサーを同定する。4C-seqアッセイで、ARID1Aプロモータに対してターゲティングさせた薬剤が、所与のエンハンサーがARID1Aプロモータに近接して観察される確率を低下させる場合には、表2に記載される1つ又は複数の薬剤の上記エンハンサー領域に対するターゲティングが、同じ薬剤のARID1Aプロモータに対するターゲティングが達成するのと同じ効果をもたらすか否かを決定する。
実施例2
本実施例では、本明細書に記載のゲノム複合体内の遺伝子(この場合、ARID1A)の発現を低減するための戦略を説明する。この実施例は、ゲノム複合体のノンコーディングRNA(ncRNA)成分を分解する、及び/又はその半減期を短縮する薬剤を用いることにより、標的化ゲノム複合体のレベルを低下させる技術を記載する。
この具体的な実施例では、リボ核酸デュプレックスポリマーであるか、又はそれを含むターゲティング剤を、標的化ncRNAと特異的にハイブリダイズするように設計及び選択して、RNA/ncRNAデュプレックス(このRNA/ncRNAデュプレックスは、siRNA媒介性分解を被りやすい)を生成させ、これにより、ゲノム複合体への標的化ncRNAの参加に干渉する。
具体的には、この実施例は、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写され、ゲノム複合体の1成分(その存在は、ARID1A遺伝子の発現と相関している)として参加することがわかっている特定のncRNAの1部分(「標的ncRNA」)に対して相補的な1つの鎖を有するリボ核酸デュプレックスポリマーを含む薬剤を記載する。また、上記複合体は、YY1を含有することも判明している。
この実施例のリボ核酸ポリマーは、例えば、供給業者によって化学合成され得る。この実施例での薬剤は、滅菌水で再構成される。
Figure 2022548316000004
HEK293T細胞を、表3に記載される薬剤で、或いはそのヌクレオチド配列が表3に示すものに対してスクランブルされている以外は同等の薬剤、及び/又はそうでなければ、この実施例に記載の条件下でヒトゲノム内のいずれか特定のRNA配列と特異的にハイブリダイズする上で十分に相補的でない以外は同等の薬剤で、トランスフェクト又はエレクトロポレーションする。
トランスフェクションの72時間後に、市販の試薬及びプロトコル(Qiagen;Thermo Fisher Scientific)を用いたRNA抽出及びcDNA合成のために、細胞を採取し、ゲノムDNAを抽出する(Qiagen)。得られたcDNAは、定量リアルタイムPCR(Thermo Fisher Scientific)のために使用する。ゲノム遺伝子座特異的な定量PCRプローブ/プライマーを内部標準定量PCRプローブ/プライマーで多重化した後、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて、遺伝子発現を解析する。ARID1A特異的定量PCRプローブ/プライマー(Assay ID Hs00153408_m1,Thermo Fisher Scientific)を、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB及びVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
さらに、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写されたncRNAに特異的なプローブを、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又はVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
表3に記載される1つ又は複数の薬剤でトランスフェクトした細胞は、ARID1A発現の低減及びARID1Aプロモータから転写されたncRNAの低減を示すと予想される。
表3に記載される薬剤が、ARID1Aプロモータに近接してアセンブリングするゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性に対して変化をもたらす程度を決定するために、以前の実施例に記載されるように、ゲノム複合体中で富化することがわかっているタンパク質、例えば、コヒーシン、RNAポリメラーゼ、又はメディエータ複合体の成分に対する抗体を用いて、クロマチン免疫沈降を実施する。次に、定量PCRアッセイを以前の実施例に記載されるように実施する。増幅反応のために用いられるプライマー配列は、以下の通りである:5’-GGGAATGAGCCGGGAGAG’-3’、5’-TGCGCTGCGCTCGCTCCT-3’。
インプット-正規化増幅が、約5%~約100%減少すれば、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示す。
表3に記載される薬剤が、ARID1A発現を調節するエンハンサーに対するARID1Aプロモータの近接性に変化をもたらす程度を決定するために、実施例1に記載のように、4C-seqアッセイを実施する。長い鋳型PCR反応との増幅反応のために使用されるプライマー配列(Roche)は以下の通りである:ND263926_f 5’-TGGACTGAATCGTTGACATG-3’及びND263926_r 5’-CTTTCCCGTTGCCACTGC-3’。
非ターゲティング対照と比較して、約5%~約100%減少したシーケンシングリード数は、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示し、これは、表3に記載する1つ若しくは複数の薬剤が、ARID1Aプロモータと、ARID1A発現を調節する1つ若しくは複数のエンハンサーとの結合を妨害するのに十分であることを示唆している。非ターゲティング対照中のベイト/視点(viewpoint)としてARID1Aプロモータを用いる4C-seqアッセイにより、ARID1Aプロモータと相互作用するエンハンサーを同定する。
4C-seqアッセイで、ARID1Aプロモータに対してターゲティングさせた薬剤が、所与のエンハンサーがARID1Aプロモータに近接して観察される確率を低下させる場合には、表3に記載される1つ又は複数の薬剤の上記エンハンサー領域に対するターゲティングが、同じ薬剤のARID1Aプロモータに対するターゲティングが達成するのと同じ効果をもたらすか否かを決定する。
実施例3
本実施例では、本明細書に記載のゲノム複合体内の遺伝子(この場合、ARID1A)の発現を低減するための戦略を説明する。この実施例は、ゲノム複合体のノンコーディングRNA(ncRNA)成分に直接結合して、標的化ncRNAがゲノム複合体の他の成分と相互作用するのを立体的に遮断する薬剤を用いることにより、標的化ゲノム複合体のレベルを低下させる技術を記載する。
この具体的な実施例では、オリゴヌクレオチドであるか、又はそれを含むターゲティング剤を、標的化ncRNAと特異的にハイブリダイズするように設計及び選択して、ハイブリダイズされたデュプレックスを生成する。この実施例では、薬剤は、ncRNAに対して相補的である一本鎖リボ核酸ポリマーであるか、又はそれを含む。
一部の実施形態では、本実施例に記載される薬剤をシステム(例えば、1つ若しくは複数の細胞)と接触させて、それを、ncRNAを含む活性転写複合体が上記システム中に存在する部位又は位置に送達する。例えば、1つ又は複数の細胞を含むシステムでは、薬剤を核に送達することができ;こうした送達は、受動又は能動的であり得る(例えば、上記薬剤と結合した核局在化アミノ酸配列を含み得る)。
具体的には、この実施例では、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写され、ゲノム複合体の1成分(その存在は、ARID1A遺伝子の発現と相関している)として参加することがわかっている特定のncRNAの1部分(「標的ncRNA」)に対して相補的な一本鎖リボ核酸ポリマーを含む薬剤を説明する。また、上記複合体は、YY1を含有することも判明している。
この実施例のリボ核酸ポリマーは、例えば、供給業者によって化学合成され得る。この実施例での薬剤は、滅菌水で再構成される。
Figure 2022548316000005
HEK293T細胞を、表4に記載される薬剤で、或いはそのヌクレオチド配列が表4に示すものに対してスクランブルされている以外は同等の薬剤、及び/又はそうでなければ、この実施例に記載の条件下でヒトゲノム内のいずれか特定のRNA配列と特異的にハイブリダイズする上で十分に相補的でない以外は同等の薬剤で、トランスフェクト又はエレクトロポレーションする。
トランスフェクションの72時間後に、市販の試薬及びプロトコル(Qiagen;Thermo Fisher Scientific)を用いたRNA抽出及びcDNA合成のために、細胞を採取し、ゲノムDNAを抽出する(Qiagen)。得られたcDNAは、定量リアルタイムPCR(Thermo Fisher Scientific)のために使用する。ゲノム遺伝子座特異的な定量PCRプローブ/プライマーを内部標準定量PCRプローブ/プライマーで多重化した後、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて、遺伝子発現を解析する。ARID1A特異的定量PCRプローブ/プライマー(Assay ID Hs00153408_m1,Thermo Fisher Scientific)を、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB及びVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。さらに、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写されたncRNAに特異的なプローブを、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又はVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
表4に記載される1つ又は複数の薬剤でトランスフェクトした細胞は、ARID1A発現の低減及びARID1Aプロモータから転写されたncRNAの低減を示すと予想される。
表4に記載される薬剤が、ARID1Aプロモータに近接してアセンブリングするゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性に対して変化をもたらす程度を決定するために、以前の実施例に記載されるように、ゲノム複合体中で富化することがわかっているタンパク質、例えば、コヒーシン、RNAポリメラーゼ、又はメディエータ複合体の成分に対する抗体を用いて、クロマチン免疫沈降を実施し、それに続いて、定量PCRアッセイを以前の実施例に記載されるように実施する。増幅反応のために用いられるプライマー配列は、以下の通りである:5’-GGGAATGAGCCGGGAGAG’-3’、5’-TGCGCTGCGCTCGCTCCT-3’。
インプット-正規化増幅が、約5%~約100%減少すれば、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示す。
表4に記載される薬剤が、ARID1A発現を調節するエンハンサーに対するARID1Aプロモータの近接性に変化をもたらす程度を決定するために、実施例1に記載のように、4C-seqアッセイを実施する。長い鋳型PCR反応との増幅反応のために使用されるプライマー配列(Roche)は以下の通りである:ND263926_f 5’-TGGACTGAATCGTTGACATG-3’及びND263926_r 5’-CTTTCCCGTTGCCACTGC-3’。
非ターゲティング対照と比較して約5%~約100%減少したシーケンシングリード数は、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示し、これは、表4に記載される1つ若しくは複数の薬剤が、ARID1Aプロモータと、ARID1A発現を調節する1つ若しくは複数のエンハンサーとの結合を妨害するのに十分であることを示唆している。
実施例4
本実施例では、本明細書に記載のゲノム複合体内の遺伝子(この場合、ARID1A)の発現を低減するための戦略を説明する。この実施例は、ゲノム複合体のノンコーディングRNA(ncRNA)に直接結合して、標的化ncRNAがゲノム複合体の他の成分と相互作用するのを立体的に遮断する薬剤を用いることにより、標的化ゲノム複合体のレベルを低下させる技術を記載する。この具体的な実施例では、薬剤は、リボ核酸塩基を含むPNA(ペプチド核酸)であり、その配列は、ncRNAの少なくとも1部分に対して相補的である。
一部の実施形態では、本実施例に記載される薬剤をシステム(例えば、1つ若しくは複数)と接触させて、それを、ncRNAを含む活性転写複合体が上記システム中に存在する部位又は位置に送達する。例えば、1つ又は複数の細胞を含むシステムでは、薬剤を核に送達することができ;こうした送達は、受動又は能動的であり得る(例えば、上記薬剤と結合した核局在化アミノ酸配列を含み得る)。
具体的には、この実施例では、そのリボ核酸配列が、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写され、ゲノム複合体の1成分(その存在は、ARID1A遺伝子の発現と相関している)として参加することがわかっている特定のncRNAの1部分(「標的ncRNA」)に対して相補的なPNAを含む薬剤を説明する。また、上記複合体は、YY1を含有することも判明している。
この実施例のPNAは、例えば、供給業者によって化学合成され得る。この実施例での薬剤は、滅菌水で再構成される。
Figure 2022548316000006
HEK293T細胞を、表5に記載される薬剤で、或いはそのヌクレオチド配列が表5に示すものに対してスクランブルされている以外は同等の薬剤、及び/又はそうでなければ、この実施例に記載の条件下でヒトゲノム内のいずれか特定のRNA配列と特異的にハイブリダイズする上で十分に相補的でない以外は同等の薬剤で、トランスフェクト又はエレクトロポレーションする。
トランスフェクションの72時間後に、市販の試薬及びプロトコル(Qiagen;Thermo Fisher Scientific)を用いたRNA抽出及びcDNA合成のために、細胞を採取し、ゲノムDNAを抽出する(Qiagen)。得られたcDNAは、定量リアルタイムPCR(Thermo Fisher Scientific)のために使用する。ゲノム遺伝子座特異的な定量PCRプローブ/プライマーを内部標準定量PCRプローブ/プライマーで多重化した後、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて、遺伝子発現を解析する。ARID1A特異的定量PCRプローブ/プライマー(Assay ID Hs00153408_m1,Thermo Fisher Scientific)を、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又はVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
さらに、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写されたncRNAに特異的なプローブを、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又はVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
表5に記載される1つ又は複数の薬剤でトランスフェクトした細胞は、ARID1A発現の低減及びARID1Aプロモータから転写されたncRNAの低減を示すと予想される。
表5に記載される薬剤が、ARID1Aプロモータに近接してアセンブリングするゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性に対して変化をもたらす程度を決定するために、以前の実施例に記載されるように、ゲノム複合体中で富化することがわかっているタンパク質、例えば、コヒーシン、RNAポリメラーゼ、又はメディエータ複合体の成分に対する抗体を用いて、クロマチン免疫沈降を実施する。次に、定量PCRアッセイを以前の実施例に記載のように実施する。増幅反応のために用いられるプライマー配列は、以下の通りである:5’-GGGAATGAGCCGGGAGAG’-3’、5’-TGCGCTGCGCTCGCTCCT-3’。
インプット-正規化増幅が、約5%~約100%減少すれば、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示す。
表5に記載される薬剤が、ARID1A発現を調節するエンハンサーに対するARID1Aプロモータの近接性に変化をもたらす程度を決定するために、実施例1に記載のように、4C-seqアッセイを実施する。長い鋳型PCR反応との増幅反応のために使用されるプライマー配列(Roche)は以下の通りである:ND263926_f 5’-TGGACTGAATCGTTGACATG-3’及びND263926_r 5’-CTTTCCCGTTGCCACTGC-3’。
非ターゲティング対照と比較して、約5%~約100%減少したシーケンシングリード数は、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示し、これは、表5に記載される1つ若しくは複数の薬剤が、ARID1Aプロモータと、ARID1A発現を調節する1つ若しくは複数のエンハンサーとの結合を妨害するのに十分であることを示唆している。
実施例5
本実施例では、本明細書に記載のゲノム複合体内の遺伝子(この場合、ARID1A)の発現を低減するための戦略を説明する。この実施例は、ゲノム複合体のノンコーディングRNA(ncRNA)に直接結合し、それによって標的化ncRNAがゲノム複合体の他の成分と相互作用するのを立体的に遮断する薬剤を用いることにより、標的化ゲノム複合体のレベルを低下させる技術を記載する。
この具体的な実施例では、ターゲティング剤は、オリゴヌクレオチドであるか、又はそれを含むターゲティング剤を、標的化ncRNAと特異的にハイブリダイズするように設計及び選択して、ハイブリダイズされたデュプレックスを生成する。この実施例では、薬剤は、標的化ncRNAに対して相補的で、且つtracrRNAの3’末端と共有結合した一本鎖リボ核酸ポリマーである。dCas9と複合体化した標的化ガイドRNAを介して、上記薬剤を特定のゲノム複合体に対してターゲティングさせる。
具体的には、この実施例では、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写され、ゲノム複合体の1成分(その存在は、ARID1A遺伝子の発現と相関している)として参加することがわかっている特定のncRNAの1部分(「標的ncRNA」)に対して相補的なリボ核酸ポリマーを含む薬剤を説明する。また、上記複合体は、YY1を含有することも判明している。
この実施例のリボ核酸ポリマーは、例えば、供給業者によって化学合成され得る。この実施例での薬剤は、滅菌水で再構成される。
Figure 2022548316000007
Figure 2022548316000008
HEK293T細胞を、表6若しくは7に記載される薬剤で、或いはそのヌクレオチド配列が表6若しくは7に示すものに対してスクランブルされている以外は同等の薬剤、及び/又はそうでなければ、この実施例に記載の条件下でヒトゲノム内のいずれか特定のRNA配列と特異的にハイブリダイズする上で十分に相補的でない以外は同等の薬剤で、トランスフェクト又はエレクトロポレーションする。
トランスフェクションの72時間後に、市販の試薬及びプロトコル(Qiagen;Thermo Fisher Scientific)を用いたRNA抽出及びcDNA合成のために、細胞を採取し、ゲノムDNAを抽出する(Qiagen)。得られたcDNAは、定量リアルタイムPCR(Thermo Fisher Scientific)のために使用する。ゲノム遺伝子座特異的な定量PCRプローブ/プライマーを内部標準定量PCRプローブ/プライマーで多重化した後、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて、遺伝子発現を解析する。ARID1A特異的定量PCRプローブ/プライマー(Assay ID Hs00153408_m1,Thermo Fisher Scientific)を、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又は VIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。さらに、ARID1Aプロモータ(5’-CTCTTCTCTCTTAAAATGGCTGCCTGTCTG-3’)から転写されたncRNAに特異的なプローブを、PPIB(Assay ID Hs00168719_m1,Thermo Fisher Scientific)又はGAPDH(Assay ID Hs02786624_g1,Thermo Fisher Scientific)のいずれかである内部標準定量PCRプローブ/プライマーで、それぞれFAM-MGB又はVIC-MGB色素を用いて多重化する。続いて、リアルタイムPCRキット(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific)を用いて遺伝子発現を解析する。
表6又は7に記載される1つ若しくは複数の薬剤でトランスフェクトした細胞は、ARID1A発現の低減及びARID1Aプロモータから転写されたncRNAの低減を示すと予想される。
表6及び7に記載される薬剤が、ARID1Aプロモータに近接してアセンブリングするゲノム複合体のアセンブリに対して変化をもたらす程度を決定するために、以前の実施例に記載のように、ゲノム複合体中で富化することがわかっているタンパク質、例えば、コヒーシン、RNAポリメラーゼ、又はメディエータ複合体の成分に対する抗体を用いて、クロマチン免疫沈降を実施する。次に、定量PCRアッセイを以前の実施例に記載のように実施する。増幅反応のために用いられるプライマー配列は、以下の通りである:5’-GGGAATGAGCCGGGAGAG’-3’、5’-TGCGCTGCGCTCGCTCCT-3’。
インプット-正規化増幅が、約5%~約100%減少すれば、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示す。
表6及び7に記載される薬剤が、ARID1A発現を調節するエンハンサーに対するARID1Aプロモータの近接性に変化をもたらす程度を決定するために、実施例1に記載のように、4C-seqアッセイを実施する。長い鋳型PCR反応との増幅反応のために使用されるプライマー配列(Roche)は以下の通りである:ND263926_f 5’-TGGACTGAATCGTTGACATG-3’及びND263926_r 5’-CTTTCCCGTTGCCACTGC-3’。
非ターゲティング対照と比較して、約5%~約100%減少したシーケンシングリード数は、標的化ゲノム複合体のアセンブリ及び/又は安定性(例えば、半減期)の低減を示し、これは、表6及び7に記載される1つ若しくは複数の薬剤が、ARID1Aプロモータと、ARID1A発現を調節する1つ若しくは複数のエンハンサーとの結合を妨害するのに十分であることを示唆している。非ターゲティング対照中のベイト/視点(viewpoint)としてARID1Aプロモータを用いる4C-seqアッセイにより、ARID1Aプロモータと相互作用するエンハンサーを同定する。4C-seqアッセイで、ARID1Aプロモータに対してターゲティングさせた薬剤が、所与のエンハンサーがARID1Aプロモータに近接して観察される確率を低下させる場合には、表6及び7に記載される1つ又は複数の薬剤の上記エンハンサー領域に対するターゲティングが、同じ薬剤のARID1Aプロモータに対するターゲティングが達成するのと同じ効果をもたらすか否かを決定する。
同等物
本発明は、その詳細な説明と共に記載されるが、以上の説明は、例示を目的とし、本発明の範囲を限定するものではないことは理解すべきであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により明確にされる。いくつかの態様、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲に含まれる。

Claims (31)

  1. 以下:
    エンハンサーRNA(eRNA)に結合するターゲティング部分であって、前記ターゲティング部分は、長さが10~50ヌクレオチドの核酸を含むターゲティング部分と、
    前記eRNAにより調節される遺伝子の発現を調節、例えば、増大又は低減する、前記ターゲティング部分と共有結合したエフェクター部分と、
    を含む融合分子。
  2. 前記ターゲティング部分が、50、40、30、又は20以下のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の融合分子。
  3. 前記融合分子が、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、又は100以下のアミノ酸を含む、請求項1又は2に記載の融合分子。
  4. 前記エフェクター部分が、CRISPRタンパク質を含まない、例えば、Cas9を含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の融合分子。
  5. 前記エフェクター部分が、CTCF又はその機能性断片を含まない、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合分子。
  6. 前記エフェクター部分が、CTCFに結合しない、請求項1~5のいずれか1項に記載の融合分子。
  7. 前記エフェクター部分が、酵素を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の融合分子。
  8. 前記エフェクター部分が、内在性タンパク質、例えば、細胞に対して内在性のタンパク質を前記ターゲティング部分及び/又はeRNAに動員することができる、請求項1~7のいずれか1項に記載の融合分子。
  9. 前記エフェクター部分が、例えば、以下:クラスター化規則的配置短回文配列リピート(CRISPR)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及び転写活性因子様エフェクターベースヌクレアーゼ(TALEN)から選択される、遺伝子修飾部分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の融合分子。
  10. 前記エフェクター部分が、例えば、以下:DNAメチラーゼ(例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMTL);DNA脱メチル化酵素(例えば、TETファミリーのメンバー);ヒストンメチルトランスフェラーゼ;ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3);サーチュイン1、2、3、4、5、6、若しくは7;リシン特異的ヒストンデメチラーゼ1(LSD1);ヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1);ユークロマチン様ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ2(G9a);ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1);ゼストホモログ2のエンハンサー(EZH2);ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET);ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2);又はタンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)から選択される、エピジェネティック修飾部分を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の融合分子。
  11. 前記エフェクター部分が、切断可能部分、例えば、トロンビン切断可能CPRSCリンカーを介して前記ターゲティング部分に結合された部分を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の融合分子。
  12. 前記エフェクター部分が、小分子を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の融合分子。
  13. 前記ターゲティング部分が、タンパク質又は小分子、例えば、RNA結合タンパク質をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の融合分子。
  14. 前記ターゲティング部分が、長さ10~50ヌクレオチドの核酸からほぼ構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の融合分子。
  15. 前記核酸が、以下:デオキシリボ核酸;リボ核酸、核酸アナログ(例えば、以下:ペプチド核酸(PNA)、ペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲート、ロック核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)の1つ若しくは複数);リンカー;及びそれらの組合せのうちの1つ又は複数を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の融合分子。
  16. 前記核酸が、例えば、一対の核酸又は核酸アナログの間に1つ若しくは複数のホスホロチオエート結合を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の融合分子。
  17. 前記核酸が、配列番号9013~9073と少なくとも80、85、90、95、99、若しくは100%の同一性を有するか、又は配列番号9013~9073から選択される配列に対して10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1つ以下(例えば、ゼロ)の変更を有する配列を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の融合分子。
  18. 請求項1~17のいずれか1項に記載の融合分子を含む細胞。
  19. 請求項1~17のいずれか1項に記載の融合分子と、細胞と、を含む反応混合物。
  20. 標的遺伝子の異常な発現を有する患者を治療する方法であって、前記方法は、以下:
    請求項1~17のいずれか1項に記載の融合分子を前記患者に投与し、それにより標的遺伝子の異常な発現を有する前記患者を治療すること
    を含む方法。
  21. 細胞における標的遺伝子の発現を低減する方法であって、前記方法は、以下:
    請求項1~17のいずれか1項に記載の融合分子と前記細胞を接触させ、それにより前記標的遺伝子の発現を低減すること
    を含む方法。
  22. 前記細胞が、前記eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体を含む、請求項18、20、又は21のいずれか1項に記載の方法又は細胞。
  23. 前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、前記eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルが、変更(例えば、低減)される、請求項22に記載の方法又は細胞。
  24. 前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での前記ゲノム複合体又は転写複合体の安定性が、変更(例えば、低減)される、請求項22に記載の方法又は細胞。
  25. 前記細胞が、前記eRNAに結合するゲノム複合体成分又は転写因子を含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法又は細胞。
  26. 前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、前記eRNAに結合するゲノム複合体成分又は転写因子のレベルが、変更(例えば、低減)される、請求項25に記載の方法又は細胞。
  27. 前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での前記転写因子又はゲノム複合体成分の安定性が、変更(例えば、低減)される、請求項25に記載の方法又は細胞。
  28. 前記標的部位が、前記標的遺伝子の発現に関連するものであり、例えば、前記標的遺伝子に関連するプロモータ、エンハンサー、転写開始部位、又はコーディング配列から選択される、請求項24又は27に記載の方法又は細胞。
  29. ゲノム複合体又は転写複合体を調節(例えば、阻害)する方法であって、前記方法は、以下:
    前記ゲノム複合体又は転写複合体を、請求項1~17のいずれか1項に記載の融合分子と接触させることを含み、
    (a)前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、前記eRNAを含むゲノム複合体又は転写複合体のレベルが変更(例えば、低減)され;
    (b)前記転写複合体は、前記eRNAに結合する転写因子を含み、前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、前記転写因子を含む転写複合体のレベルが変更(例えば、低減)され;
    (c)前記ゲノム複合体は、前記eRNAに結合するゲノム複合体成分を含み、前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、前記ゲノム複合体成分を含むゲノム複合体のレベルが変更(例えば、低減)され;
    (d)前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での前記ゲノム複合体又は転写複合体の占有が変更(例えば、低減)されるか;或いは
    (e)前記融合分子が存在する場合、それが存在しない場合に比して、標的部位での前記転写因子又はゲノム複合体成分の占有が変更(例えば、低減)される方法。
  30. 融合分子を細胞、例えば、哺乳動物細胞に送達する方法であって、
    請求項1~17のいずれか1項に記載の融合分子を用意することと、
    前記融合分子と前記細胞を接触させ、
    それにより、前記融合分子を前記細胞に送達することと、
    を含む方法。
  31. 前記細胞が、神経細胞(例えば、CNS細胞)、筋肉細胞(例えば、心筋細胞)、血液細胞(例えば、免疫細胞)、上皮細胞、肝細胞、CD34+細胞、CD3+細胞、又は線維芽細胞から選択される、請求項1~30のいずれか1項に記載の融合分子、方法、細胞、又は反応混合物。
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