<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ20を備えている。本実施形態において、回転電機10は、ブラシレスの同期機であり、例えば永久磁石同期機である。回転電機10は、電機子巻線であるU,V,W相巻線11U,11V,11Wを備えている。
回転電機10は、インバータ20を介して直流電源としてのバッテリ30に接続されている。インバータ20は、上アームスイッチSUH,SVH,SWHと、下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を備えている。U相上,下アームスイッチSUH,SULの接続点には、インバータ20のU相端子21U、U相導電部材22U、及び回転電機10のU相端子12Uを介して、U相巻線11Uの第1端が接続されている。V相上,下アームスイッチSVH,SVLの接続点には、インバータ20のV相端子21V、V相導電部材22V、及び回転電機10のV相端子12Vを介して、V相巻線11Vの第1端が接続されている。W相上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、インバータ20のW相端子21W、W相導電部材22W、及び回転電機10のW相端子12Wを介して、W相巻線11Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線11U,11V,11Wの第2端は中性点で接続されている。
本実施形態において、U,V,W相巻線11U,11V,11Wは、電気角で互いに120°ずれている。なお、各相の導電部材22U,22V,22Wは、例えば、ケーブル又はバスバーである。
本実施形態では、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはNチャネルMOSFETが用いられている。各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLには、ボディダイオードが内蔵されている。
インバータ20は、バッテリ30から供給されるインバータ20の入力電圧を平滑化するコンデンサ23を備えている。コンデンサ23の高電位側端子には、バッテリ30の正極端子が接続され、コンデンサ23の低電位側端子には、バッテリ30の負極端子が接続されている。コンデンサ23の高電位側端子には、上アームスイッチSUH~SWHの高電位側端子であるドレインが接続されている。コンデンサ23の低電位側端子には、下アームスイッチSUL~SWLの低電位側端子であるソースが接続されている。なお、コンデンサ23は、インバータ20の外部に設けられていてもよい。
制御システムは、電圧センサ40、電流センサ41、回転角センサ42、温度センサ43、気圧センサ44及び湿度センサ45を備えている。電圧センサ40は、コンデンサ23の端子電圧である電源電圧を検出する。回転角センサ42は、例えばレゾルバ又はホール素子で構成され、回転電機10を構成するロータの電気角を検出する。
電流センサ41は、回転電機10に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。各相電流の符号は、各相において、上,下アームスイッチの接続点から巻線の第1端へと流れる方向を正とし、巻線の第1端から上,下アームスイッチの接続点へと流れる方向を負とする。
温度センサ43は、回転電機10及びインバータ20の温度を検出する。回転電機10の温度は、例えば、巻線11U~11Wの温度である。また、インバータ20の温度は、例えば、各スイッチSUH~SWLの温度である。
気圧センサ44は、回転電機10及びインバータ20の設置環境における大気圧を検出する。湿度センサ45は、回転電機10及びインバータ20の設置環境における湿度を検出する。各センサ40~45の検出値は、制御システムに備えられるマイコン50に入力される。
マイコン50は、「制御装置」として機能し、回転電機10の制御量を指令値にフィードバック制御するべく、インバータ20を構成する各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行う。本実施形態において、制御量はトルクであり、指令値は図示しない上位制御装置から出力されるトルク指令値Trq*である。マイコン50は、各相において、上,下アームスイッチを交互にオンオフするべく、上,下アームスイッチに対応する駆動信号を、上,下アームスイッチに対して個別に設けられた駆動回路Drに出力する。駆動信号は、オン指令又はオフ指令のいずれかをとる。
続いて、図2を用いて、マイコン50によって実行される回転電機10のトルク制御について説明する。本実施形態では、トルク制御として、電流フィードバック制御を行う。
2相変換部51は、電流センサ41の検出値と、回転角センサ42により検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系における各相電流Iur,Ivr,Iwrを、2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。
指令電流設定部52は、トルク指令値Trq*に基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。本実施形態において、d,q軸指令電流Id*,Iq*は、最小電流最大トルク制御(MTPA)により設定される。
ここで、最小電流最大トルク制御について補足的に説明する。図3は、トルク制御におけるdq座標系のベクトル図である。Iaは電流ベクトルを示し、φ0は鎖交磁束ベクトルを示し、Vaは電圧ベクトルを示す。電流ベクトルIaは、d軸電流Idと、q軸電流Iqとからなるものである。鎖交磁束ベクトルφ0は、回転電機10が有する永久磁石の磁石磁束φaと、d軸電機子反作用磁束Ld・idと、q軸電機子反作用磁束Lq・iqとを足し合わせたものである。電圧ベクトルVaは、磁石磁束φa及びd,q軸電機子反作用磁束Ld・id,Lq・iqによる誘起電圧v0と、電機子巻線抵抗による電圧降下Ra・Iaとを足し合わせたものである。
電流ベクトルIaは、電流ベクトルIaの大きさ|Ia|と、電流位相βとによっても表すことができる。電流位相βは、電流ベクトルIaとq軸とのなす角度である。電流位相βの符号は、q軸から反時計回りに回る向きを正とする。電圧ベクトルVaは、電圧ベクトルVaの大きさ|Va|と、電圧位相とによっても表すことができる。電圧位相は、電圧ベクトルVaとq軸とのなす角度である。
最小電流最大トルク制御では、電流ベクトルIaの大きさ|Ia|を同じとした場合、回転電機10の出力トルクが最大となるように電流位相βが制御される。図4に、最小電流最大トルク制御が行われた場合のトルク制御ラインを示す。最小電流最大トルク制御では、回転電機10の出力トルクが大きいほど、電流位相βも大きくなる。なお、図4において、回転電機10の回転速度は実線→破線→一点鎖線の順に増大する。
先の図2の説明に戻り、指令電流設定部52は、トルク指令値Trq*に基づいて、電流ベクトルIaの大きさ|Ia|を設定するとともに、設定した|Ia|に対して回転電機10の出力トルクが最大となるように、電流位相βを設定する。
d軸偏差算出部53は、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算した値として、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部54は、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算した値として、q軸電流偏差ΔIqを算出する。
d軸指令電圧算出部55は、d軸電流偏差ΔIdに基づいて、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。q軸指令電圧算出部56は、q軸電流偏差ΔIqに基づいて、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。なお、d軸指令電圧算出部55及びq軸指令電圧算出部56で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
3相変換部57は、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*及び電気角θeに基づいて、2相回転座標系におけるd,q軸指令電圧Vd*,Vq*を、3相固定座標系におけるU,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*に変換する。本実施形態において、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*は、電気角で位相が120°ずつずれた正弦波状の波形となる。
信号生成部58は、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*及び電圧センサ40により検出された電源電圧(以下、電源電圧検出値Vdc)に基づいて、各駆動信号GUH,GVH,GWH,GUL,GVL,GWLを生成する。
詳しくは、信号生成部58は、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*を電源電圧検出値Vdcの1/2で除算することにより、U,V,W相規格化指令電圧VUS,VVS,VWSを算出する。信号生成部58は、U,V,W相規格化指令電圧VUS,VVS,VWSと、これら指令電圧に共通のキャリア信号Scとの大小比較に基づくPWM制御により、U,V,W相上,下アーム駆動信号GUH,GUL,GVH,GVL,GWH,GWLとを生成する。本実施形態において、キャリア信号Scは、上昇速度及び下降速度が等しい三角波信号である。
信号生成部58は、生成したU相上,下アーム駆動信号GUH,GULを、U相上,下アームスイッチSUH,SULの駆動回路Drに出力する。信号生成部58は、生成したV相上,下アーム駆動信号GVH,GVLを、V相上,下アームスイッチSVH,SVLの駆動回路Drに出力する。信号生成部58は、生成したW相上,下アーム駆動信号GWH,GWLを、W相上,下アームスイッチSWH,SWLの駆動回路Drに出力する。なお、本実施形態において、マイコン50の制御周期は、キャリア信号Scの周期よりも十分に短い。
本実施形態において、2相変換部51、指令電流設定部52、d,q軸偏差算出部53,54、d,q軸指令電圧算出部55,56、3相変換部57及び信号生成部58が「設定部」に相当し、信号生成部58が「制御部」に相当し、U,V,W相規格化指令電圧VUS,VVS,VWSが「電圧指令値」に相当する。
各スイッチSUH~SWLの駆動回路Drは、信号生成部58から出力された駆動信号GINを取得する。ここで、駆動信号GINは、各スイッチSUH~SWLの駆動回路Drに入力される各駆動信号GUH~GWLを示す。駆動回路Drは、取得した駆動信号GINがオン指令である場合、スイッチのゲートに充電電流を供給する。これにより、スイッチのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、スイッチがオン状態に切り替えられる。一方、駆動回路Drは、取得した駆動信号GINがオフ指令である場合、スイッチのゲートからソース側へと放電電流を流す。これにより、スイッチのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、スイッチがオフ状態に切り替えられる。
続いて、各スイッチSUH~SWLの切り替えに伴い発生する各相のサージ電圧について説明する。ここでは、スイッチのオフ状態への切り替えに伴い発生するオフサージ電圧ΔV1と、スイッチのオン状態への切り替えに伴い発生するオンサージ電圧ΔV2とについて説明する。
図5に、相電流の大きさと、サージ電圧の大きさΔVとの関係を示す。図5において、実線はオフサージ電圧ΔV1の変化を示し、相電流の大きさが大きいほどオフサージ電圧ΔV1は大きくなる。一方、図5において、破線はオンサージ電圧ΔV2の変化を示し、相電流の大きさが小さいほどオンサージ電圧ΔV2は大きくなる。
図6に、オフサージ電圧ΔV1が発生する場合の電流経路の一例を示す。図6では、便宜上、各相のうち1相の上アームスイッチSH、1相の下アームスイッチSL及び上,下アームスイッチSH,SLの接続点に接続された1相の巻線11を示し、残りのスイッチ及び巻線の図示は省略している。
上アームスイッチSHがオン状態とされる場合、上アームスイッチSHを介して巻線11の相電流Irの符号が正となる向きに第1電流I1が流れる。この状態において、上アームスイッチSHがオフ状態へと切り替えられると、下アームスイッチSLのボディダイオードを介して、巻線11の相電流Irの符号が正となる向きに第2電流I2が流れる。
図7に、オフサージ電圧ΔV1が発生する場合の電圧波形の一例を示す。図7において、(a)は上アームスイッチSHの駆動信号GINの推移を示し、(b)は下アームスイッチSLの端子間電圧Vdsの推移を示す。図7(b)において、破線は実線よりも相電流の大きさが大きい場合の下アームスイッチSLの端子間電圧Vdsの推移を示す。
期間t1では、上アームスイッチSHの駆動信号GINがオン指令とされる。この場合、上アームスイッチSHがオン状態とされるため、第1電流I1が流れる。期間t2では、上アームスイッチSHの駆動信号GINがオフ指令とされる。この場合、上アームスイッチSHがオフ状態に切り替えられるため、第2電流I2が流れる。第2電流I2は時間経過とともに減少するため、第2電流I2の時間変化に伴いオフサージ電圧ΔV1が発生する。
図8に、オンサージ電圧ΔV2が発生する場合の電流経路の一例を示す。図8では、便宜上、各相のうち1相の上アームスイッチSH、1相の下アームスイッチSL及び上,下アームスイッチSH,SLの接続点に接続された1相の巻線11を示し、残りのスイッチ及び巻線の図示は省略している。
下アームスイッチSLがオフ状態とされる場合、上アームスイッチSHのボディダイオードを介して、巻線11の相電流Irの符号が負となる向きに第3電流I3が流れる。この状態において、下アームスイッチSLがオン状態へと切り替えられることに伴い、上アームスイッチSHのボディダイオードの逆回復が完了する間に流れる逆回復電流を含む第4電流I4が流れる。
図9に、オンサージ電圧ΔV2が発生する場合の電圧波形の一例を示す。図9において、(a)は下アームスイッチSLの駆動信号GINの推移を示し、(b)は下アームスイッチSLの端子間電圧Vdsの推移を示す。図9(b)において、破線は実線よりも相電流の大きさが小さい場合の下アームスイッチSLの端子間電圧Vdsの推移を示す。
期間t3では、下アームスイッチSLの駆動信号GINがオフ指令とされる。この場合、下アームスイッチSLがオフ状態とされるため、第3電流I3が流れる。期間t4では、下アームスイッチSLの駆動信号GINがオン指令とされる。この場合、下アームスイッチSLがオン状態とされるため、第4電流I4が流れる。上アームスイッチSHのボディダイオードの逆回復電流は、逆回復が完了するとともに減少する。この際、第4電流I4の変化に伴いオンサージ電圧ΔV2が発生する。
各スイッチSUH~SWLの切り替えに伴い発生する各相のサージ電圧が重畳した場合、回転電機10及びインバータ20に高電圧が印加され得る。その結果、回転電機10やインバータ20等、制御システムの信頼性が低下する可能性がある。
図10に、各スイッチSUH~SWLの切り替えに伴う回転電機10内における電圧の推移の一例を示す。図10において、VA,VBは異なる2相のスイッチの切り替えに伴い発生する各相のサージ電圧に起因して、回転電機10内における巻線で発生する電圧である。また、VCは、各相の電圧VA,VBが重畳した電圧である。スイッチの切り替えに伴い発生する各相のサージ電圧が重畳することにより、重畳した電圧VCのピーク値が増大する。
各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSのうち2相分の指令電圧の交差タイミング近傍では、異なる2相のスイッチの切り替えが連続する。以下では、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミングにおける各相電流について説明する。
各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミングにおける各相電流は、先の図4における電流位相βと電圧位相との位相差γによって変化する。位相差γの符号は、電圧ベクトルVaから時計回りに回る向きを正とする。本実施形態では、電流フィードバック制御が行われるため、位相差γは電流位相βに応じて定まる。
図11及び図12に、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミングでの各相電流Iur,Ivr,Iwrを示す。図11及び図12において、(a)は各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの波形を示し、(b)は電流センサ41により検出された各相電流Iur,Ivr,Iwrの波形を示す。図11における回転電機10の出力トルクはTrq1であり、図12における回転電機10の出力トルクはTrq2(>Trq1)である。
各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御は、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSと、図示しないキャリア信号との比較に基づくパルス幅変調により行われる。ここで、規格化指令電圧とキャリア信号との交差タイミングの近傍において、スイッチの駆動状態が切り替えられることに伴い、サージ電圧が発生する。そのため、2相の規格化指令電圧が重なる交差タイミングの近傍において、2相の規格化指令電圧とキャリア信号とが重なると、異なる相のスイッチの駆動状態が連続して切り替えられる。この際、異なる2相のスイッチで発生するサージ電圧が重畳してしまう。図11では、交差タイミングの一例をCPaで示し、図12では、交差タイミングの一例をCPbで示している。交差タイミングCPa,CPbは、V相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの交差タイミングを示すものである。
回転電機10の出力トルクが小さい場合、最小電流最大トルク制御では電流位相βが小さく設定されるため、位相差γは小さくなる。そのため、図11に示すように、位相差γが0となる場合、V相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの交差タイミングCPaにおいて、V相電流Ivrの大きさ及びW相電流Iwrの大きさは、異なる2相の相電流が同じ値(交差電流値Ica)となる。
回転電機10の出力トルクが大きい場合、最小電流最大トルク制御では電流位相βが大きく設定されるため、位相差γは大きくなる。そのため、例えば、図12に示すように、V相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの交差タイミングCPbにおいて、V相電流Ivrの大きさは交差電流値Icbよりも大きい値となり、W相電流Iwrの大きさは交差電流値Icbよりも小さい値となる。
本願発明者は、スイッチの駆動状態の切り替えに伴って発生する2相分のサージ電圧の重畳値が位相差γに応じて変化し、位相差γが変更されることによりサージ電圧の重畳値が低減されることに着目した。そこで、本実施形態では、サージ電圧の重畳値が低減されるように、位相差γが変更される変更処理が行われる構成とした。以下、変更処理について説明する。
まず、スイッチの駆動状態の切り替えに伴って発生する2相分のサージ電圧の重畳値と、位相差γとの関係について説明する。
図13に、最小電流最大トルク制御が行われる場合のトルク制御ラインを示す。本実施形態において、位相差γは電流位相βに応じて定まるため、電流位相βの場合と同様に、回転電機10の出力トルクが大きいほど、位相差γも大きくなる。なお、図13において、回転電機10の回転速度は実線→破線→一点鎖線の順に増大する。
本実施形態では、スイッチの駆動状態の切り替えに伴って発生する2相分のサージ電圧の重畳値が増大する位相差γの範囲として、特定位相範囲γPが設定される。本実施形態では、特定位相範囲γPの上限値γHは30°であり、下限値γLは25°である。
図14~図16に、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの波形と、各相電流Iur,Ivr,Iwrの波形とを示す。図14~図16において、(a)は各規格化指令電圧VUS,VVS,VWS及びキャリア信号Scの波形を示し、(b)は電流センサ41により検出された各相電流Iur,Ivr,Iwrの波形を示す。図14~図16のそれぞれは、トルク制御ライン上の制御点を変えた場合の推移を示す。詳しくは、図14は位相差γが特定位相範囲γP内の場合を示し、図15は位相差γが下限値γLよりも小さい場合を示し、図16は位相差γが上限値γHよりも大きい場合を示す。
図14における第1交差タイミングCP1、図15における第2交差タイミングCP2及び図16における第3交差タイミングCP3は、V相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの交差タイミングの一例を示すものである。第1~第3交差タイミングCP1~CP3の近傍では、V,W相規格化指令電圧VVS,VWSとキャリア信号Scとが重なり、V,W相上アームスイッチSVH,SWHが連続してオフ状態に切り替えられ、V,W相下アームスイッチSVL,SWLが連続してオン状態に切り替えられる。
図14において、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミングにおける異なる2相の相電流のうち、1相の相電流の大きさは、交差電流値Ic1よりも小さく、0近傍の値である。例えば、V相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの第1交差タイミングCP1では、V,W相電流Ivr,Iwrが負となるため、V,W相下アームスイッチSVL,SWLがオン状態に切り替えられることに伴い、オンサージ電圧ΔV2が発生する。ここで、V相電流Ivrの大きさが交差電流値Ic1よりも小さい0近傍の値であるため、V相におけるオンサージ電圧ΔV2が増大する。このため、2相分のオンサージ電圧ΔV2の重畳値が増大する。
図15において、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミングにおいて、異なる2相の相電流はともに交差電流値Ic2と同程度の値となる。例えば、V相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの第2交差タイミングCP2では、V,W相電流Ivr,Iwrが負となるため、V,W相下アームスイッチSVL,SWLがオン状態に切り替えられることに伴い、オンサージ電圧ΔV2が発生する。ここで、V,W相電流Ivr,Iwrの大きさが交差電流値Ic2と同程度の値となるため、V,W相電流Ivr,Iwrの大きさが交差電流値Ic2よりも小さい場合に比べて、V,W相ともにオンサージ電圧ΔV2が増大しない。このため、2相分のオンサージ電圧ΔV2の重畳値が増大しない。
図16において、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミングにおいて、異なる2相の相電流の符号は互いに異なるものとなる。例えば、V相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの第3交差タイミングCP3では、V相電流Ivrの符号が正となり、W相電流Iwrの符号が負となる。この場合、V相上アームスイッチSVHがオフ状態に切り替えられることに伴いオフサージ電圧ΔV1が発生し、W相下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられることに伴いオンサージ電圧ΔV2が発生する。V相電流Ivrの大きさは交差電流値Ic3よりも小さい0近傍の値であるため、オフサージ電圧ΔV1は小さくなる。W相電流Iwrの大きさは交差電流値Ic3よりも大きい値であるため、オンサージ電圧ΔV2は小さくなる。このため、V相上アームスイッチSVHがオフ状態に切り替えられることに伴い発生するオフサージ電圧ΔV1と、W相下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられることに伴い発生するオンサージ電圧ΔV2との重畳値が増大しない。
図14~図16において説明したように、位相差γが特定位相範囲γP内である場合、スイッチの駆動状態の切り替えに伴って発生する2相分のサージ電圧の重畳値が増大し得る。そこで、変更処理では、2相分のサージ電圧の重畳値が低減されるように、位相差γが特定位相範囲γPから外れるように変更される。
続いて、図17に、変更処理が行われる場合のトルク制御ラインを示す。図17において、実線は変更処理が行われる場合のトルク制御ラインを示し、破線は最小電流最大トルク制御が行われる場合のトルク制御ラインを示す。なお、回転電機10の回転速度は、ω1→ω2→ω3の順に大きくなる。
指令電流設定部52は、最小電流最大トルク制御を行うことにより、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βを設定する。指令電流設定部52は、設定した電流位相βに基づく位相差γが特定位相範囲γPから外れている場合、設定した電流位相βをd,q軸指令電流Id*,Iq*の設定に用いる。一方、指令電流設定部52は、設定した電流位相βに基づく位相差γが特定位相範囲γP内の場合、位相差γを上限値γH又は下限値γLにする変更処理を行う。この場合、上限値γH又は下限値γLに対応した電流位相βがd,q軸指令電流Id*,Iq*の設定に用いられる。
詳しくは、指令電流設定部52は、位相差γが中間値γc以上、かつ、上限値γH未満になる場合、位相差γを上限値γHに変更する。一方、指令電流設定部52は、位相差γが下限値γLより大きく、かつ、中間値γc未満の場合、位相差γを下限値γLに変更する。ここで、中間値γcは、上限値γH及び下限値γLの中央値「(γH+γL)/2」である。このため、本実施形態では、位相差γが特定位相範囲γP内の場合、上限値γH及び下限値γLのうち位相差γの変化量が少なくなる方に位相差γが変更される。
図18に、先の図17に示したトルク制御ライン上の点Aでの各波形を示す。制御点Aは、変更処理が行われることにより、位相差γが上限値γHに変更された場合のトルク制御ライン上の制御点である。図18(a),(b)は、先の図14~16(a),(b)に対応している。制御点Aでは、先の図16で説明したように、2相分のサージ電圧の重畳値が増大しない。
詳しくは、例えばV相規格化指令電圧VVSとW相規格化指令電圧VWSとの第4交差タイミングCP4では、V相電流Ivrの符号が正となり、W相電流Iwrの符号が負となる。この場合、V相上アームスイッチSVHがオフ状態に切り替えられることに伴いオフサージ電圧ΔV1が発生し、W相下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられることに伴いオンサージ電圧ΔV2が発生する。V相電流Ivrの大きさは交差電流値Ic4よりも小さい0近傍の値であるため、オフサージ電圧ΔV1は小さくなる。W相電流Iwrの大きさは交差電流値Ic4よりも大きい値であるため、オンサージ電圧ΔV2は小さくなる。これにより、V相上アームスイッチSVHがオフ状態に切り替えられることに伴い発生するオフサージ電圧ΔV1と、W相下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられることに伴い発生するオンサージ電圧ΔV2との重畳値が増大しない。その結果、最小電流最大トルク制御が行われる場合に比べて、2相分のサージ電圧の重畳値が低減される。
一方、変更処理が行われる場合のトルク制御ライン上の制御点Bでは、位相差γが、最小電流最大トルク制御が行われる場合のトルク制御ライン上の位相差γから、下限値γLへと変更される。これにより、先の図15で説明したように、2相分のサージ電圧の重畳値が増大しない。その結果、最小電流最大トルク制御が行われる場合に比べて、2相分のサージ電圧の重畳値が低減される。
変更処理が行われることにより、電流位相βが最小電流最大トルク制御のトルク制御ラインから外れた値に変更され得る。この場合、同じ電流ベクトルIaの大きさ|Ia|に対して、最小電流最大トルク制御が行われる場合に比べて効率が低下することが懸念される。そこで、本実施形態では、効率の低下を抑制するべく、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βの変更が行われるための条件が設定されることとした。
指令電流設定部52は、温度センサ43の検出温度Tr、気圧センサ44の気圧検出値Pr及び湿度センサ45の検出湿度Hrを取得する。指令電流設定部52は、温度センサ43の検出温度Tr、気圧センサ44の気圧検出値Pr及び湿度センサ45の検出湿度Hrに基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βを変更するか否かを判定する。
2相分のサージ電圧の重畳値が増大することにより、各巻線11U,11V,11Wに過度な高電圧が印加され、各巻線11U,11V,11Wにおいて部分放電が発生することがある。これにより、各巻線11U,11V,11Wが劣化する可能性がある。部分放電は、各巻線11U,11V,11Wの温度が高くなるほど生じ易くなり、回転電機10の周囲の気圧が低下するほど生じ易くなり、回転電機10の周囲の湿度が高いほど生じ易くなることが知られている。そこで、本実施形態では、指令電流設定部52は、以下の第1~第3条件のうち少なくとも1つが成立すると判定した場合、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βの変更が行われるべき状況であると判定する。
第1条件は、温度センサ43の検出温度Trが温度閾値Tth以上との条件である。例えば、温度閾値Tthは、気圧センサ44の気圧検出値Pr及び湿度センサ45の検出湿度Hrのうち少なくとも1つと、部分放電の発生を抑制できる温度閾値Tthとが予め対応付けられた対応情報(例えば、マップ情報又は数式情報)を用いて設定されればよい。
第2条件は、気圧センサ44の気圧検出値Prが気圧閾値Pth以下との条件である。例えば、気圧閾値Pthは、温度センサ43の検出温度Tr及び湿度センサ45の検出湿度Hrのうち少なくとも1つと、部分放電の発生を抑制できる気圧閾値Pthとが予め対応付けられた対応情報(例えば、マップ情報又は数式情報)を用いて設定されればよい。
第3条件は、湿度センサ45の検出湿度Hrが湿度閾値Hth以上との条件である。例えば、湿度閾値Hthは、温度センサ43の気圧検出値Pr及び気圧センサ44の気圧検出値Prのうち1つと、部分放電の発生を抑制できる湿度閾値Hthとが予め対応付けられた対応情報(例えば、マップ情報又は数式情報)を用いて設定されればよい。
図19に、指令電流設定部52により行われる変更処理の手順を示す。この処理は所定の周期で繰り返し行われる。
ステップS10では、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βの変更が行われるべき状況であるか否かを判定する。具体的には、温度センサ43の検出温度Tr、気圧センサ44の気圧検出値Pr及び湿度センサ45の検出湿度Hrを取得する。そして、上述した第1~第3条件のうち少なくとも1つが成立するか否かを判定する。ステップS10において否定判定した場合、ステップS11に進む。一方、ステップS10において肯定判定した場合、ステップS12に進む。本実施形態において、ステップS10が、「温度取得部」、「気圧情報取得部」及び「湿度取得部」に相当する。
ステップS11では、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βを変更しない。この場合、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βは最小電流最大トルク制御により設定したものを用いる。これにより、位相差γは最小電流最大トルク制御が行われる場合のトルク制御ライン上に制御される。
ステップS12では、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βに応じて定まる位相差γが、特定位相範囲γP内であるか否かを判定する。具体的には、位相差γが上限値γH未満、かつ、下限値γLより大きいか否かを判定する。ステップS12において否定判定した場合、ステップS11に進む。一方、ステップS12において肯定判定した場合、ステップS13に進む。
ステップS13では、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βに応じて定まる位相差γを上限値γH又は下限値γLに変更する。本実施形態では、最小電流最大トルク制御が行われる場合のトルク制御ラインに対して、上限値γH及び下限値γLのうち位相差γの変化量が少なくなる方に位相差γを変更する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
2相分のサージ電圧の重畳値が低減されるように、位相差γを変更する変更処理が行われる。変更処理は、位相差γを変更するという簡素な処理である。これにより、2相分のサージ電圧の重畳値を低減することができる。その結果、簡素な制御によりシステムの信頼性を高めることができる。
温度センサ43の検出温度Trが温度閾値Tth以上となることを条件として、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βが変更される。これにより、電流位相βが最小電流最大トルク制御のトルク制御ラインから外れた値に変更され、効率の低下を抑制することができる。
気圧センサ44の気圧検出値Prが気圧閾値Pth以下となることを条件として、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βが変更される。これにより、電流位相βが最小電流最大トルク制御のトルク制御ラインから外れた値に変更され、効率の低下を抑制することができる。
湿度センサ45の検出湿度Hrが湿度閾値Hth以上となることを条件として、d,q軸指令電流Id*,Iq*の電流位相βが変更される。これにより、電流位相βが最小電流最大トルク制御のトルク制御ラインから外れた値に変更され、効率の低下を抑制することができる。
最小電流最大トルク制御が行われる場合のトルク制御ラインに対して、上限値γH及び下限値γLのうち位相差γの変化量が少なくなる方に位相差γが変更される。これにより、最小電流最大トルク制御のトルク制御ラインからずれることを最小限に抑えることができる。その結果、効率の低下を抑制することができる。
<第1実施形態の変形例>
先の図17では、回転電機10の回転速度が小さい場合のトルク制御ラインω1において、回転電機10の出力トルクの最大値が特定位相範囲γPの範囲内とされる。この場合、トルク制御ラインω1上の制御では、変更処理が行われることにより位相差γが下限値γLに変更され、回転電機10の出力トルクを最大値にて駆動することができなくなることが懸念される。
そこで、本実施形態では、図20に示すようなトルク制御ラインとなるように、回転電機10が設計される。図20では、回転電機10の駆動中において、回転電機10の回転速度が取り得る範囲のうち、最も回転速度が低い場合のトルク制御ラインω1において、回転電機10の出力トルクの最大値が特定位相範囲γPの上限値γHよりも大きくなるようにされる。これにより、回転電機10の出力トルクの最大値における位相差γが、特定位相範囲γP外となる。そのため、変更処理が行われることにより位相差γが下限値γLに制限され、回転電機10の出力トルクの最大値にて駆動することができないといった事態が発生することを回避できる。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの周波数に応じて、キャリア信号Scの周波数が設定される。
信号生成部58は、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSに基づいて、キャリア信号Scの周波数を変更する。詳しくは、キャリア信号Scの周波数をfcとして、fc=m×n×feを満たす値に設定する。ここで、mは回転電機10及びインバータ20の相数であり、feは各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの周波数であり、nは正の整数である。本実施形態では、n=2とする。
図21に、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの波形と、キャリア信号Scの波形との関係の一例を示す。図21では、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの周期Teは、キャリア信号Scの周期Tcの6倍の値とされる。すなわち、キャリア信号Scの周波数fcは、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの周波数feの6倍の値とされる。これにより、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミングと、キャリア信号Scの値との相対的な関係が固定される。そのため、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの交差タイミング近傍において、異なる2相のスイッチの連続駆動の切替パターンが固定される。
例えば、図21において、負側の3つの交差タイミングCPx,CPy,CPzでは、上アームスイッチSHがオフ状態に切り替えられ、かつ、下アームスイッチSLがオン状態に切り替えられる切替パターンが共通して発生する。そのため、第1実施形態で説明したように位相差γが上限値γH又は下限値γLに変更されることにより、各交差タイミングCPx,CPy,CPzにおいて、異なる2相のスイッチの切り替えに伴い発生するサージ電圧の重畳値を好適に低減することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第1実施形態において、巻線11の相電流Irの符号が正となる向きに電流が流れる場合、上アームスイッチSHがオフ状態に切り替えられることに伴い、オフサージ電圧ΔV1が発生することを説明したが、オフサージ電圧ΔV1が発生するスイッチの切替パターンはこれに限られない。例えば、巻線11の相電流Irの符号が負となる向きに電流が流れる場合、下アームスイッチSLがオフ状態に切り替えられることに伴いオフサージ電圧ΔV1が発生する。
・第1実施形態において、巻線11の相電流Irの符号が負となる向きに電流が流れる場合、下アームスイッチSLがオン状態に切り替えられることに伴い、オンサージ電圧ΔV2が発生することを説明したが、オンサージ電圧ΔV2が発生するスイッチの切替パターンはこれに限られない。例えば、巻線11の相電流Irの符号が正となる向きに電流が流れる場合、上アームスイッチSHがオン状態に切り替えられることに伴いオンサージ電圧ΔV2が発生する。
・第1実施形態において、2相分のサージ電圧の重畳値が増大するのは、各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの負側の交差タイミングとしたが、これに限られない。各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの正側の交差タイミングでも、2相分のサージ電圧の重畳値が増大し得る。具体的には、先の図14の各規格化指令電圧VUS,VVS,VWSの正側の交差タイミングにおいて、異なる2相のスイッチがオン状態に切り替えられる場合、オンサージ電圧ΔV2が発生する。この場合、位相差γが特定位相範囲γP内では、先の図14において説明したように、オンサージ電圧ΔV2の重畳値が増大する。
この点、本実施形態では、変更処理が行われることにより、位相差γが上限値γH又は下限値γLに変更される。これにより、第1実施形態と同様に、2相分のサージ電圧の重畳値が低減される。
・特定位相範囲γPの上限値γHは30°に限られず、下限値γLは25°に限られない。異なる2相のオンサージ電圧ΔV2の重畳値が閾値以上となる位相差γの範囲を特定位相範囲γPとして、上限値γH及び下限値γLを設定してもよい。また、異なる2相のオフサージ電圧ΔV1の重畳値が閾値以上となる位相差γの範囲を特定位相範囲γPとして、上限値γH及び下限値γLを設定してもよい。また、1相のオフサージ電圧ΔV1と、1相のオンサージ電圧ΔV2との重畳値が閾値以上となる位相差γの範囲を特定位相範囲γPとして、上限値γH及び下限値γLを設定してもよい。
・第1実施形態において、変更処理が行われることにより、位相差γが上限値γH又は下限値γLに変更されたが、これに限らない。位相差γが上限値γHより大きい値又は下限値γL未満の値に変更してもよい。
・第1実施形態の変更処理では、位相差γを変更する処理として、ステップS12及びステップS13の処理が行われるとしたが、これに限らない。例えば、指令電流設定部52は、ステップS10において肯定判定した場合、ステップS12及びステップS13の処理を行わずに、位相差γが特定位相範囲γPから外れるように予め設定されたトルク制御ラインに従い、位相差γを設定してもよい。
・システムは、気圧センサ44に代えて、高度を取得する高度センサを備えていてもよい。高度センサにより検出された高度情報は、マイコン50に入力される。マイコン50は、高度情報に基づいて、回転電機10の周囲の気圧検出値Prを取得する。
・回転電機及びインバータは3相のものに限られない。
・回転電機の制御量はトルクに限らず、例えば回転速度であってもよい。
・インバータを構成するスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がコレクタとなり、低電位側端子がエミッタとなる。また、この場合、スイッチにフリーホイールダイオードが逆並列に接続されていればよい。
・キャリア信号としては、三角波信号に限らず、例えばのこぎり波信号であってもよい。
・回転電機10のトルク制御として、電流フィードバック制御に代えて、トルクフィードバック制御が行われてもよい。この場合、変更処理において位相差γが変更されるのに、電流位相βが変更されることに代えて、電圧ベクトルVaの電圧位相が変更されればよい。
・第1実施形態において、中間値γcは、(γH+γL)/2であり、特定位相範囲γP内において、上限値γHまでの変化量ΔγHと、下限値γLまでの変化量ΔγLとが等しくなる値とされたが、これに限られない。中間値γcは、上限値γHまでの変化量ΔγHが下限値γLまでの変化量ΔγLよりも大きくなるように設定されてもよいし、下限値γLまでの変化量ΔγLが上限値γHまでの変化量ΔγHよりも大きくなるように設定されてもよい。
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。