《走行制御装置の構成》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る車両の走行制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の走行制御装置1は、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一実施の形態でもある。
図1に示すように、本実施形態の走行制御装置1は、センサ11、自車位置検出装置12、地図データベース13、車載機器14、ナビゲーション装置15、提示装置16、入力装置17、駆動制御装置18、及び制御装置19を備える。これらの装置は、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANにより接続され、相互に情報の送受信を行うことができる。
センサ11は、自車両の走行状態を検出する。たとえば、センサ11として、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の左右の側方をそれぞれ撮像する側方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の左右の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー、自車両の車速を検出する車速センサ、ドライバーがハンドルを持っているか否かを検出するタッチセンサ(静電容量センサ)およびドライバーを撮像する車内カメラなどが挙げられる。なお、センサ11として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ11の検出結果は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサ等を備える。自車位置検出装置12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得する。また、自車位置検出装置12は、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12により検出された対象車両の位置情報は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、制御装置19からアクセス可能とされたメモリである。三次元高精度地図情報は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された道路形状に基づく三次元地図情報である。三次元高精度地図情報は、地図情報とともに、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置などの詳細かつ高精度の位置情報が、三次元情報として関連付けられた地図情報である。ただし、本発明の地図データベースに格納される地図情報は、三次元高精度地図情報にのみ限定されず、それ以外の地図情報であってもよい。
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーの操作により動作する。このような車載機器としては、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14は、ドライバーにより操作された場合に、その操作情報を制御装置19に出力する。
ナビゲーション装置15は、自車位置検出装置12から自車両の現在の位置情報を取得し、誘導用の地図情報に自車両の位置を重ね合わせてディスプレイなどに表示する。また、ナビゲーション装置15は、ドライバーが目的地を入力すると、その目的地までのルートを演算し、設定されたルートをドライバーに案内するナビゲーション機能を備える。このナビゲーション機能により、ナビゲーション装置15は、ディスプレイの地図上に目的地までのルートを表示するとともに、音声等によってルート上の走行推奨行動をドライバーに知らせる。
提示装置16は、ナビゲーション装置15が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ等の各種ディスプレイを含む。また、提示装置16は、オーディオ装置のスピーカー、振動体が埋設された座席シート装置など、ディスプレイ以外の装置を含む。提示装置16は、制御装置19の制御に従って、各種の提示情報をドライバーに報知する。
入力装置17は、たとえば、ドライバーの手動操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置17を操作することで、提示装置16により提示された提示情報に対する設定情報を入力することができる。図2は、本実施形態の入力装置17の一部を示す正面図であり、ステアリングホイールのスポーク部などに配置されたボタンスイッチ群からなる一例を示す。
図示する入力装置17は、制御装置19が備える自律走行制御機能(自律速度制御機能及び自律操舵制御機能)のON/OFF等を設定する際に使用するボタンスイッチである。自律速度制御機能及び自律操舵制御機能を含む自律走行制御機能の詳細は、後述する。本実施形態の入力装置17は、メインスイッチ171、リジューム・アクセラレートスイッチ172、セット・コーストスイッチ173、キャンセルスイッチ174、車間調整スイッチ175、及び車線変更支援スイッチ176を備える。
メインスイッチ171は、制御装置19の自律速度制御機能及び自律操舵制御機能を実現するシステムの電源をON/OFFするスイッチである。リジューム・アクセラレートスイッチ172は、自律速度制御機能を一旦OFFしたのちOFF前の設定速度で自律速度制御機能を再開したり、先行車両(自車両と同じ車線の前方を走行する他車両。以下、本明細書において同じ。)に追従して停車したのち制御装置19によって再発進したりするリジューム操作や、設定速度を上げるアクセラレート操作をするためのスイッチである。セット・コーストスイッチ173は、走行時の速度で自律速度制御機能を開始するセット操作や、設定速度を下げるコースト操作をするためのスイッチである。キャンセルスイッチ174は、自律速度制御機能をOFFするスイッチである。車間調整スイッチ175は、先行車両との車間距離を設定するためのスイッチであり、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択するスイッチである。車線変更支援スイッチ176は、制御装置19が車線変更の開始をドライバーに確認した場合に車線変更の開始を承諾するためのスイッチである。なお、車線変更の開始を承諾した後に、車線変更支援スイッチ176を所定時間よりも長く押すことで、制御装置19による車線変更の提案の承諾を取り消すことができる。
図2に示すボタンスイッチ群以外にも、方向指示器の方向指示レバーやその他の車載機器14のスイッチを入力装置17として用いることができる。たとえば、制御装置19から自律制御により車線変更を行うか否かを提案された場合に、ドライバーが方向指示器のスイッチをオンにすることで、車線変更の承諾又は許可を入力する構成とすることもできる。また、制御装置19から自律制御により車線変更を行うか否かを提案された場合に、ドライバーが方向指示レバーを操作すると、提案された車線変更ではなく、方向指示レバーが操作された方向に向かって車線変更を行う構成とすることもできる。入力装置17により入力された設定情報は、制御装置19に出力される。
駆動制御装置18は、種々の態様で自車両の走行を制御する。たとえば、駆動制御装置18は、自律速度制御機能により自車両が設定速度で定速走行する場合には、自車両が設定速度となるように、加速および減速、並びに走行速度を維持するために、駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作を制御する。また、駆動制御装置18は、自律速度制御機能により自車両が先行車両に追従走行する場合には、自車両と先行車両との車間距離が一定距離となるように、加減速度および走行速度を実現するための駆動機構の動作およびブレーキ動作を制御する。
また、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能により、上述した駆動機構とブレーキの動作制御に加えて、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。たとえば、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能によりレーンキープ制御を実行する場合に、自車線(自車両が走行する車線。以下、本明細書において同じ。)のレーンマーカを検出し、自車両が自車線内の所定位置を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御する。また、駆動制御装置18は、後述する車線変更支援機能により車線変更支援を実行する場合に、自車両が車線変更を行うように、自車両の幅員方向における走行位置を制御する。さらに、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能により右左折支援を実行する場合には、交差点などにおいて右折又は左折する走行制御を行う。なお、駆動制御装置18は、後述する制御装置19の指示により自車両の走行を制御する。また、駆動制御装置18による走行制御方法として、その他の公知の方法を用いることもできる。
制御装置19は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)等を備える。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
《制御装置19により実現される機能》
制御装置19は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行状態に関する情報を取得する走行情報取得機能と、自車両の走行シーンを判定する走行シーン判定機能と、自車両の走行速度及び/又は操舵を自律制御する自律走行制御機能とを実現する。以下、制御装置19が備える各機能について説明する。
制御装置19の走行情報取得機能は、制御装置19が自車両の走行状態に関する走行情報を取得するための機能である。たとえば、制御装置19は、センサ11の前方カメラ、後方カメラ及び側方カメラにより撮像された自車両外部の画像情報を走行情報として取得する。また、制御装置19は、前方レーダー、後方レーダー及び側方レーダーによる検出結果を、走行情報として取得する。さらに、制御装置19は、センサ11の車速センサにより検出された自車両の車速情報、ジャイロセンサにより検出された自車両の姿勢角・ヨーレート、車内カメラにより撮像されたドライバーの顔の画像情報なども走行情報として取得する。
さらに、制御装置19は、自車両の現在の位置情報を走行情報として自車位置検出装置12から取得する。また、制御装置19は、設定された目的地及び目的地までのルートを走行情報としてナビゲーション装置15から取得する。さらに、制御装置19は、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置などの位置情報を走行情報として地図データベース13から取得する。加えて、制御装置19は、ドライバーによる車載機器14の操作情報を、走行情報として車載機器14から取得する。以上が、制御装置19により実現される走行情報取得機能である。
制御装置19の走行シーン判定機能は、制御装置19のROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両が走行している走行シーンを判定する機能である。制御装置19のROMに記憶されたテーブルには、たとえば車線変更や追い越しに適した走行シーンとその判定条件が、走行シーンごとに記憶されている。制御装置19は、ROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両の走行シーンが、たとえば車線変更や追い越しに適した走行シーンであるか否かを判定する。
たとえば、「先行車両への追いつきシーン」の判定条件として、「前方に先行車両が存在」、「先行車両の車速<自車両の設定車速」、「先行車両への到達が所定時間以内」、および「車線変更の方向が車線変更禁止条件になっていない」の4つの条件が設定されているとする。この場合、制御装置19は、たとえば、センサ11に含まれる前方カメラや前方レーダーによる検出結果、車速センサにより検出された自車両の車速、および自車位置検出装置12による自車両の位置情報などに基づいて、自車両が上記条件を満たすか否かを判断する。上記条件を満たす場合には、制御装置19は、自車両が「先行車両への追いつきシーン」であると判定する。以上が、制御装置19により実現される走行シーン判定機能である。
制御装置19の自律走行制御機能は、制御装置19が自車両の走行をドライバーの操作に依ることなく自律制御するための機能である。制御装置19の自律走行制御機能は、自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御機能と、自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御機能とを含む。なお、ドライバーの操作に依ることなく自律制御することには、一部の操作をドライバーにより行うことも含まれる。また、自律速度制御機能と自律操舵制御機能は、互いに独立した機能であってもよく、互いに関連した機能であってもよい。以下、本実施形態の自律速度制御機能と自律操舵制御機能について説明する。
自律速度制御機能は、先行車両を検出しているときは、ドライバーが設定した車速を上限にして、車速に応じた車間距離を保つように車間制御を行いつつ先行車両に追従走行する一方、先行車両を検出していない場合には、ドライバーが設定した車速で定速走行する機能である。前者を車間制御、後者を定速制御ともいう。なお、自律速度制御機能は、センサ11により道路標識から走行中の道路の制限速度を検出し、あるいは地図データベース13の地図情報から制限速度を取得して、その制限速度を自動的に設定車速にする機能を含んでもよい。
自律速度制御機能を作動するには、まずドライバーが、図2に示す入力装置17のリジューム・アクセラレートスイッチ172又はセット・コーストスイッチ173を操作して、所望の走行速度を入力する。たとえば、自車両が70km/hで走行中にセット・コーストスイッチ173を押すと、現在の走行速度がそのまま設定されるが、ドライバーが所望する速度が80km/hであるとすると、リジューム・アクセラレートスイッチ172を複数回押して、設定速度を上げればよい。リジューム・アクセラレートスイッチ172に付された「+」の印は、設定値を増加させるスイッチであることを示している。逆にドライバーが所望する速度が60km/hであるとすると、セット・コーストスイッチ173を複数回押して、設定速度を下げればよい。セット・コーストスイッチ173に付された「-」の印は、設定値を減少させるスイッチであることを示している。また、ドライバーが所望する車間距離は、図2に示す入力装置17の車間調整スイッチ175を操作し、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択すればよい。
ドライバーが設定した車速で定速走行する定速制御は、センサ11の前方レーダー等により、自車線の前方に先行車両が存在しないことが検出された場合に実行される。定速制御では、設定された走行速度を維持するように、車速センサによる車速データをフィードバックしながら、駆動制御装置18によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御する。
車間制御を行いつつ先行車両に追従走行する車間制御は、センサ11の前方レーダー等により、自車線の前方に先行車両が存在することが検出された場合に実行される。車間制御では、設定された走行速度を上限にして、設定された車間距離を維持するように、前方レーダーにより検出した車間距離データをフィードバックしながら、駆動制御装置18によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御する。なお、車間制御で走行中に先行車両が停止した場合は、先行車両に続いて自車両も停止する。また、自車両が停止した後、たとえば30秒以内に先行車両が発進すると、自車両も発進し、再び車間制御による追従走行を開始する。自車両が30秒を超えて停止している場合は、先行車両が発進しても自動で発進せず、先行車両が発進した後、リジューム・アクセラレートスイッチ172を押すか又はアクセルペダルを踏むと、再び車間制御による追従走行を開始する。
一方、自律操舵制御機能は、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行するための機能である。本実施形態の自律操舵制御機能には、(1)車線のたとえば中央付近を走行するようにステアリングを制御して、ドライバーのハンドル操作を支援するレーンキープ機能(車線幅員方向維持機能)、(2)ドライバーがウィンカーレバーを操作するとステアリングを制御し、車線変更に必要なハンドル操作を支援する車線変更支援機能、(3)設定車速よりも遅い車両を前方に検出すると、表示によりドライバーに追い越し操作を行うか確認し、ドライバーが承諾スイッチを操作した場合、ステアリングを制御し追い越し操作を支援する追い越し支援機能、(4)ドライバーがナビゲーション装置などに目的地を設定している場合には、ルートに従って走行するために必要な車線変更地点に到達すると、表示によりドライバーに車線変更を行うか確認し、ドライバーが承諾スイッチを操作した場合、ステアリングを制御し車線変更を支援するルート走行支援機能などが含まれる。なお、自律操舵制御を実行する場合、自律速度制御も同時に実行するが、速度制御はドライバーのアクセル・ブレーキ操作によって実行してもよい。
ここで、自律操舵制御機能のうちの車線変更支援機能について説明する。なお、車線変更支援とともに、自律速度制御も同時に実行される。図3は、本実施形態の制御装置19が実行する車線変更制御(車線変更支援機能)の一例を示す平面図である。図3に示すように、ドライバーが自車両V1のウィンカーレバーを操作すると、制御装置19は方向指示器を点灯し、予め設定された車線変更開始条件を満たすと車線変更操作LCP(Lane Change Process、自律車線変更の一連の処理をいう。)を開始する。制御装置19は、センサ11により取得した各種の走行情報に基づいて、車線変更開始条件が成立するか否かを判断する。車線変更開始条件としては、特に限定されないが、(1)レーンキープモードであること、(2)ドライバーがステアリングホイールを保持していること、(3)速度60km/時以上で走行していること、(4)車線変更方向に車線があること、(5)車線変更先の車線に車線変更可能なスペースがあること、(6)レーンマーカの種別が車線変更可能であること、(7)道路の曲率半径が250m以上であること、(8)ドライバーが方向指示レバーを操作してから1秒以内であること、といった全ての条件(1)~(8)が成立することを例示できる。なお、制御装置19は、ドライバーの指示がなくても、車線変更支援機能により車線変更開始条件が成立すると判断した場合には、提示装置16によってドライバーに報知することで、ドライバーに車線変更を提案してもよい。
車線変更開始条件を満たすと、制御装置19は、車線変更操作LCPを開始する。本実施形態の車線変更操作LCPは、図3に示すように、自車両V1が自車線L1内において隣接車線L2の方へ移動する横移動と、自車両V1が自車線L1からレーンマーカを跨いで隣接車線L2へ移動する車線変更操縦LCM(Lane Change Manipulation)とを含む。制御装置19は、車線変更操作LCPを実行中に、自律制御により車線変更を行っていることを表す情報を、提示装置16を介してドライバーに提示し、周囲へ注意を払うよう喚起する。制御装置19は、車線変更操縦LCMが完了すると、方向指示器を消灯し、隣接車線L2でのレーンキープ機能の実行などを開始する。なお、車線変更操作LCPは、ウィンカーレバーの操作による方向指示器の点灯から消灯までの期間をいい、車線変更操縦LCMは、自車両V1が自車線L1と隣接車線L2との境界線を踏み始めてから踏み終わるまでの期間をいう。
さて、自律操舵制御機能のうちの車線変更支援機能を用いて車線変更を実行する場合、自車線の位置及び車線変更先の隣接車線の位置と道路の曲率とを制御装置19が認識した上で、この隣接車線に自車両の走行スペースが存在するか否かを確認する必要がある。この場合、地図データベース13に三次元高精度地図情報が格納されていれば、自車線及び隣接車線の位置情報や道路の曲率情報が含まれているが、三次元高精度地図情報が含まれていない道路については、センサ11のうちの前方カメラ、側方カメラ及び後方カメラを用いて実際の道路を撮像し、自車線及び隣接車線の位置と道路の曲率を認識する必要がある。
図4は、図1のセンサ11に含まれる前方カメラ111、側方カメラ112及び後方カメラ113の搭載例を示す平面図である。同図に示す搭載例では、前方カメラ111は、車両Vのフロントグリル又はフロントバンパの中央に設けられ、車両Vの前方走査領域FAを撮像する。側方カメラ112は、車両Vのドアミラーに設けられ、車両Vの左右それぞれの側方走査領域SAを撮像する。後方カメラ113は、トランクリッド、バックドア又はリヤバンパの中央に設けられ、車両Vの後方走査領域BAを撮像する。特に限定されないが、前方カメラ111により撮像される前方走査領域FA、側方カメラ112により撮像される前方走査領域SA及び後方カメラ113により撮像される後方走査領域BAは、半径が約10mの扇形とされている。
このように搭載された前方カメラ111、側方カメラ112及び後方カメラ113を用いて自律的に車線変更制御する場合の一例を図5に示す。図5(A)は、自車両V1と先行車両V2が自車線L1を走行中に、自車両V1が隣接車線L2へ車線変更して先行車両V2を追い越し又は追い抜きするシーンを示す平面図である。この場合、自車線L1のレーンマーカLM1,LM2の位置や車線変更先の隣接車線L2のレーンマーカLM2,LM3の位置は、車線変更によって自車両V1の姿勢(ヨー角)が変更しても前方カメラ111による前方走査領域FAに含まれるので、制御装置19は、自車線L1の位置及び車線変更先の隣接車線L2の位置を認識することができる。また、自車線L1の位置及び隣接車線L2の位置を認識した上で、この隣接車線L2に自車両V1の走行スペースが存在するか否かも前方カメラ111にて確認することができる。
これに対し、図5(B)に示すように車線変更によって自車両V1の姿勢(ヨー角)が大きくなると、自車線L1のレーンマーカLM1,LM2の位置や車線変更先の隣接車線L2のレーンマーカLM2,LM3の位置は、前方カメラ111による前方走査領域FAに含まれなくなるので、制御装置19は、自車線L1の位置及び車線変更先の隣接車線L2の位置を認識することができない。したがって、自律的な車線変更制御が中断又は停止することになり、ドライバーによる手動操作に遷移せざるを得ない。こうした状況は、自車両V1と先行車両V2との車間距離が短い場合などに発生することが少なくない。
そこで、本実施形態に係る車両の走行制御装置1では、前方カメラ111による前方走査領域FAに、自車線L1のレーンマーカLM1,LM2及び車線変更先の隣接車線L2のレーンマーカLM2,LM3が含まれず、これにより自律的な車線変更制御が継続できない場合には、側方カメラ112を用いて自車線L1のレーンマーカLM1,LM2及び車線変更先の隣接車線L2のレーンマーカLM2,LM3を認識する。以下、前方カメラ111及び側方カメラ112を用いた車線変更制御の実施形態を説明する。図6は、制御装置19に含まれる車線変更制御ユニット190の一例を示すブロック図、図7(A)及び(B)のそれぞれは、前方カメラ111及び側方カメラ112を用いた車線変更制御の一例を示す平面図である。
図6に示すように、本実施形態の車線変更制御ユニット190は、車線変更目標軌跡生成部191と、前方レーンマーカ推定部192と、第1追従指令値生成部193と、道路曲率推定部194と、第2追従指令値生成部195と、指令値切り替え部196と、を備え、これに、前方レーンマーカ検出部としての前方カメラ111と、側方レーンマーカ検出部としての側方カメラ112(及び/又は後方カメラ113)と、車両状態検出部としてのセンサ11からの信号又は情報が読み込まれ、さらに最終的な指令値は駆動制御装置18に出力される。この車線変更制御ユニット190を構成する各部は、便宜的に表現したものであり、実際にはROMに格納したプログラムにより実現される。
車線変更目標軌跡生成部191は、車線変更の開始信号をトリガにして車線変更の目標軌跡を生成する。上述した走行シーン判定機能による自律的な車線変更や、ドライバーによって車線変更の指示がされると、車線変更目標軌跡生成部191に車線変更の開始信号が入力される。図7は、車線変更目標軌跡生成部191で実行される生成処理の一例を示す図であり、上図は、車両Vが、車線L1の開始位置から車線L2の終了位置へ車線変更するシーンを示す平面図、下図は、上図のシーンにおける目標横位置Yrefと目標姿勢角θrefを示すグラフである。なお、姿勢角θとは車両Vの進行方向に対するヨー角である。
車線変更目標軌跡生成部191には、基準となる開始位置から終了位置までの距離と、この距離における基準の横位置とが予め格納されており、これら基準距離と基準横位置とに基づいて車線変更の目標軌跡を生成する。たとえば、走行速度に応じて設定された開始位置から終了位置までに対しては、下図の距離-目標横位置Yrefのグラフに示すように、これら開始位置と終了位置を滑らかに繋ぐ緩和曲線、たとえば三角関数、多項式関数、クロソイド曲線、ベジェ曲線などを生成する。また、これら開始位置から終了位置までに対する目標姿勢角θrefは、下図の距離-目標姿勢角θrefのグラフに示すように、距離-目標横位置Yrefのグラフの目標横位置Yrefを距離で微分することで求めることができる。車線変更目標軌跡生成部191は、生成した、車線変更の開始位置から終了位置までに対する目標横位置Yrefと目標姿勢角θrefを、第1追従指令値生成部193へ出力する。
前方レーンマーカ推定部192は、前方レーンマーカ検出部である前方カメラ111にて撮像した前方走査領域FAの撮像画像及び側方レーンマーカ検出部である側方カメラ112(及び/又は後方カメラ113)により撮像した側方走査領域SAの撮像画像から、前方レーンマーカを抽出し、自車両が現在走行中の車線のレーンマーカと、車線変更先となる隣接車線のレーンマーカを認識する。図8(A)は、前方カメラ111及び側方カメラ112を用いた車線変更制御の一例を示す平面図である。自車両V1は、前方カメラ111の前方走査領域FAと側方カメラ112の側方走査領域SAに、現在走行中の車線L1のレーンマーカLM1,LM2と隣接車線L2のレーンマーカLM2,LM3を捉えることができるので、前方レーンマーカ推定部192は、レーンマーカLM1,LM2,L3を認識し、認識した前方レーンマーカLM1,LM2,L3の前方レーンマーカ情報(すなわち横位置Y、姿勢角θ)から道路の曲率ρを演算し、このレーンマーカ情報Y,θ及び道路の曲率ρを第1追従指令値生成部193へ出力する。
側方レーンマーカ検出部である側方カメラ112(及び/又は後方カメラ113)は、側方走査領域SAの撮像画像から、自車両が現在走行中の車線のレーンマーカと、車線変更先となる隣接車線のレーンマーカを認識する。図8(A)において、自車両V1は、側方カメラ112の側方走査領域SAに、現在走行中の車線L1のレーンマーカLM1,LM2と、隣接車線L2のレーンマーカLM2,LM3を捉えることができる。これによる側方レーンマーカLM1,LM2,LM3の側方レーンマーカ情報(すなわち横位置Y及び姿勢角θ)は、第2追従指令値生成部195と道路曲率推定部194へ出力される。ただし、側方レーマーカ情報は、あくまで自車両V1の側方走査領域SAにて検出されるレーンマーカLM1,LM2,LM3であり、自車両V1がこれから車線変更する隣接車線L2の前方領域で検出されたレーンマーカではないため、道路の曲率はその撮像画像からそのまま検出することはできない。
そのため、道路曲率推定部194は、側方カメラ112により自車両V1の側方走査領域SAにて検出されたレーンマーカLM1,LM2,LM3の側方レーンマーカ情報を時間的に蓄積し、蓄積した側方レーンマーカ情報の横位置Y及び姿勢角θと、車両状態検出部であるセンサ11により検出された自車両V1の車速及びヨーレートから、道路の曲率ρを演算し、これを第1追従指令値生成部193へ出力する。図9は、道路曲率推定部194における推定処理の一例を示す図であり、車両Vの後方に位置するレーンマーカ情報(横位置Y及び姿勢角θ,図9に白丸にて示す)が蓄積した側方レーンマーカ情報に相当する。
道路曲率推定部194は、車両Vの車速及びヨーレートに基づき、オドメトリ(odometry,路程測定法)によるデッドレコニング(dead reckoning,推測航法)にて、過去の検出結果である側方レーンマーカ情報を蓄積する。そして、(1)蓄積した直近の横位置Y情報を用い、最小二乗法などの回帰分析によって多項式関数などに関数近似し、これから道路の曲率を推定する。これに代えて又はこれに加えて、(2)蓄積した直近の姿勢角θ情報を用い、距離に対する姿勢角変化量の平均値を求め、これから道路の曲率を推定してもよい。さらにこれに代えて又はこれに加えて、(3)センサ11により検出された自車両V1の走行状態に含まれる車速およびヨーレートから、図9に示す車両Vの走行軌跡Tの曲率を推定し、これから道路の曲率を推定してもよい。なお、上記(3)の車両Vの走行軌跡の曲率から道路の曲率を推定する方法は、上記(1)の回帰分析による関数近時誤差が所定閾値よりも大きく、又は上記(2)の相対角度変化量の平均値の分散が所定閾値よりも大きい場合に限って採用してもよい。
第1追従指令値生成部193は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標横位置Yref及び目標姿勢角θrefと、前方レーンマーカ推定部192にて推定された横位置Ysens,姿勢角θsens,道路の曲率ρroadとから、実際に駆動制御装置18へ出力する車線変更の第1制御指令値を演算する。図10は、第1追従指令値生成部193及び第2追従指令値生成部195で実行される生成処理の一例を示す図であり、上図は、車両Vが、車線L1の開始位置から車線L2の終了位置へ車線変更するシーンを示す平面図、下図は、上図のシーンにおける横位置Yと姿勢角θと道路曲率ρを補償する制御回路の一例を示す回路図である。
図10の下図に示す制御回路図において、横位置補償部197は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標横位置Yrefと前方レーンマーカ推定部192にて推定された横位置Ysensとの差ΔYを演算し、この差ΔYをゼロに近づける横位置の制御指令値をフィードバック制御することで出力する。姿勢角補償部198は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標姿勢角θrefと前方レーンマーカ推定部192にて推定された姿勢角θsensとの差Δθを演算し、この差Δθをゼロに近づける姿勢角の制御指令値をフィードバック制御することで出力する。道路曲率補償部199は、前方レーンマーカ推定部192にて推定された道路曲率ρroadを制御指令値に加算する。これにより、第1追従指令値生成部193は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標横位置Yref及び目標姿勢角θrefに、前方レーンマーカ推定部192にて推定された道路曲率ρroadを加味した、目標軌跡に追従する第1制御指令値を、駆動制御装置18へ出力する。
なお、前方レーンマーカ推定部192にて推定された道路曲率ρroadは、前方カメラ111により前方レーンマーカ情報が検出可能な場合には、時間の経過とともに逐次更新するが、前方レーンマーカ情報が、検出可能な状態から検出不能になった場合には、検出可能になるまで、最後に推定された道路曲率ρroadを保持して第1追従指令値生成部193の第1制御指令値の生成に用いることがより好ましい。
これに対し、第2追従指令値生成部195は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標横位置Yref及び目標姿勢角θrefと、側方レーンマーカ検出部である側方カメラ112(及び/又は後方カメラ113)にて検出された横位置Ysens及び姿勢角θsensと、道路曲率推定部194による推定された道路の曲率ρroadとから、実際に駆動制御装置18へ出力する車線変更の第2制御指令値を演算する。すなわち、上述した第1追従指令値生成部193と同様に図10の下図に示す制御回路図を用い、横位置補償部197は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標横位置Yrefと側方カメラ112にて検出された横位置Ysensとの差ΔYを演算し、この差ΔYをゼロに近づける横位置の制御指令値をフィードバック制御することで出力する。姿勢角補償部198は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標姿勢角θrefと側方カメラ112にて検出された姿勢角θsensとの差Δθを演算し、この差Δθをゼロに近づける姿勢角の制御指令値をフィードバック制御することで出力する。道路曲率補償部199は、道路曲率推定部194にて推定された道路曲率ρroadを制御指令値に加算する。これにより、第2追従指令値生成部195は、車線変更目標軌跡生成部191にて生成された目標横位置Yref及び目標姿勢角θrefに、道路曲率推定部194にて推定された道路曲率ρroadを加味した、目標軌跡に追従する第2制御指令値を、駆動制御装置18へ出力する。
指令値切り替え部196は、第1追従指令値生成部193で生成された第1制御指令値と、第2追従指令値生成部195で生成された第2制御指令値とを選択的に切り替え、いずれか一方を駆動制御装置18へ出力する。駆動制御装置18へ出力する制御指令値は、第1制御指令値及び第2制御指令値の何れでもよいが、好ましくは、指令値切り替え部196は、前方レーンマーカ情報が検出可能な場合、すなわち前方カメラ111により前方レーンマーカの横位置、姿勢角及び道路曲率が認識可能な場合には、第1追従指令値生成部193の第1制御指令値を駆動制御装置18へ出力する。一方において、前方レーンマーカ情報が検出不能な場合、すなわち前方カメラ111により前方レーンマーカの横位置、姿勢角及び道路曲率が認識不可能な場合には、第2追従指令値生成部195の第2制御指令値を駆動制御装置18へ出力する。
特に限定はされないが、指令値切り替え部196は、第1追従指令値生成部193の制御指令値と、第2追従指令値生成部195の制御指令値とを切り替える際は、制御指令値をローパスフィルタ処理するか、又は制御指令値の時間的変化量を抑制する処理を実行することが好ましい。
《車線変更制御処理》
次に、図11を参照して、本実施形態に係る車線変更制御処理について説明する。図11は、本実施形態の制御装置19が実行する車線変更制御処理の一例を示すフローチャートである。以下に説明する走行制御処理は、制御装置19により所定時間間隔で実行される。また、以下においては、制御装置19の自律走行制御機能により、自律速度制御と自律操舵制御が実行され、自車両がドライバーの設定した速度で車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御が行われているものとする。
図11のステップS1において、制御装置19は、車線変更制御の開始信号が入力されたか否かを判断する。車線変更制御の開始信号が入力されるまで、制御装置19はステップS1を繰り返す。これに対して、車線変更制御の開始信号が入力されたらステップS2へ進む。
車線変更制御の開始信号が入力されると、ステップS2において、制御装置19は、前方レーンマーカ検出部である前方カメラ111にて走行中の車線及び車線変更先の隣接車線のレーンマーカが検出可能か否かを判断する。たとえば、図8(A)に示す状態では、前方カメラ111により車線L1,L2のレーンマーカLM1,LM2,LM3が前方走査領域FAに含まれるので、前方レーンマーカ情報は検出可能と判断する。これに対し、自車両V1の姿勢角が大きくなった図8(B)に示す状態では、前方カメラ111により車線L1,L2のレーンマーカLM1,LM2が前方走査領域FAに含まれないので、前方レーンマーカ情報は検出不可能と判断する。前方レーンマーカ情報が検出可能と判断した場合にはステップS3へ進み、前方レーンマーカ情報が検出不可能と判断した場合にはステップS6へ進む。
前方レーンマーカ情報が検出可能と判断した場合には、ステップS3において、第1追従指令値生成部193により第1制御指令値が生成され、続くステップS4において、第1制御指令値により車線変更制御が実行される。
これに対して、図8(B)に示す状態のように、前方レーンマーカ情報が検出不可能と判断した場合には、ステップS6において、側方カメラ112(及び/又は後方カメラ113)にて走行中の車線及び車線変更先の隣接車線のレーンマーカが検出可能か否かを判断する。図8(B)に示す状態では、車線L1,L2のレーンマーカLM1,LM2が前方カメラ111による前方走査領域FAに含まれないが、側方カメラ112による側方走査領域SAに車線L1,L2のレーンマーカLM1,LM2,LM3が含まれるので、側方レーンマーカ情報は検出可能と判断する。そして、ステップS7にて、第2追従指令値生成部195により第2制御指令値が生成され、続くステップS4において、第2制御指令値により車線変更制御が実行される。なお、ステップS6にて側方レーンマーカ情報が検出不可能と判断されたら、車線変更制御を終了する。
ステップS5において、車線変更が終了したか否かを判断し、終了していない場合はステップS2へ戻り、これ以降の処理を繰り返す。
以上のとおり、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、自車両V1の側方において検出される側方レーンマーカ情報(横位置Yと姿勢角θ)に基づいて、現在走行中の道路形状、具体的には道路曲率ρを推定し、この推定された道路形状と、自律車線変更制御の開始指令により生成された目標軌跡と、検出された自車両の走行状態とに基づいて、自律車線変更制御の制御指令値を生成する。これにより、自律車線変更制御による車線変更時に、車線変更後のレーンマーカを認識することができる。その結果、前方レーンマーカ情報が検出できなくても、自律車線変更制御を継続することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、自車両V1の前方において検出される前方レーンマーカ情報に基づいて、現在走行中の道路形状を推定し、前方レーンマーカ情報に基づいて推定された道路形状に依る第1制御指令値と、側方レーンマーカ情報に基づいて推定された道路形状に依る第2制御指令値とを、選択的に用いて自律車線変更制御を実行する。これにより、自車両V1の周囲において検出できるレーンマーカの範囲を拡大することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、前方レーンマーカ情報が検出可能な場合には、これに基づく第1制御指令値を用いて自律車線変更制御を実行し、前方レーンマーカ情報が検出不能な場合には、側方レーンマーカ情報に基づく第2制御指令値を用いて自律車線変更制御を実行するので、前方レーンマーカ情報が検出不能な場合でも自律車線変更制御を継続して実行することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、前方レーンマーカ情報に基づく第1制御指令値と、側方レーンマーカ情報に基づく第2制御指令値を切り替える際は、制御指令値のローパスフィルタ処理又は制御指令値の時間的変化量を抑制する処理を実行するので、切り替え時に制御指令値が急激に変動するのを抑制することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、前方レーンマーカ情報に基づいて推定された道路形状は、前方レーンマーカ情報が検出可能な場合には、時間の経過とともに逐次更新し、前方レーンマーカ情報が、検出可能から検出不能になった場合には、検出可能になるまで、最後に推定された道路形状を保持して第1制御指令値の生成に用いる。これにより、道路形状の推定の信頼性が高い前方レーンマーカ情報を用いた第1制御指令値を可能な限り利用することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、蓄積された側方レーンマーカ情報の位置情報を所定の関数に回帰分析することにより、当該道路の曲率を推定するか、又は蓄積された側方レーンマーカ情報の相対角度情報から、単位長さ当たりの相対角度変化量の平均値を算出することにより、当該道路の曲率を推定するので、道路の曲率を精度よく推定することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、回帰分析による関数近時誤差が所定閾値よりも大きく、又は相対角度変化量の平均値の分散が所定閾値よりも大きい場合には、検出された自車両の走行状態に含まれる車速およびヨーレートから、自車両の走行軌跡の曲率を推定し、この推定された自車両の走行軌跡の曲率を当該道路の曲率と推定するので、道路の曲率を可能な限り精度よく推定することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、自律車線変更制御を実行する際の目標軌跡は、自車両が車線変更を開始する位置及び姿勢と、自車両が車線変更を終了する位置及び姿勢とを滑らかに接続するように生成し、生成された目標軌跡から、自律車線変更制御を実行する際の横位置の目標値及び姿勢角の目標値を生成するので、乗り心地のよい円滑な走行軌跡で車線変更することができる。
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、現在走行中の車線から目標とする車線へ、前記自律車線変更制御を実行する場合、横位置の目標値と実際の横位置との偏差を小さくする横位置補償処理を実行し、姿勢角の目標値と実際の姿勢角との偏差を小さくする姿勢角補償処理を実行し、推定された道路形状を加算処理するので、正確な制御により車線変更することができる。