JP2022110598A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱伝導率、衝撃性、引張強度および生産性に優れる成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーを50~200重量部、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維を20~150重量部含有する、熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、自動車部品、電気・電子部品などの幅広い用途に適した熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関するものである。
熱可塑性樹脂は、優れた耐熱性、機械特性、成形性などを有することから、射出成形用途を中心として、各種自動車部品、電気・電子部品などの用途に広く使用されている。
近年、自動車や電気・電子機器の高機能化・高性能化に伴い、各部品の小型化や軽量化が進んでいる。一方、電圧の大容量化や高速大容量の情報処理により、各部品の発熱量は増加の一途をたどり、装置内部で温度が上昇し、誤動作を引き起こす可能性が高まっている。これらに対応するため、樹脂成形品には、高い熱伝導率(放熱性)が求められる。加えて、部品の小型に伴い、薄肉化が進み、高度な引張強度や衝撃性が求められている。
これに対して、熱可塑性樹脂の熱伝導率を改善する方法としては、ポリアミド樹脂に特定の水酸化マグネシウムと窒化ホウ素を含む方法(例えば、特許文献1)、ポリアミド樹脂に金属水酸化物系難燃剤とポリテトラフルオロエチレン樹脂、窒化ホウ素を含有する方法(例えば、特許文献2)、6-ナイロン樹脂に特定の窒化ホウ素を含有する方法(例えば、特許文献3)、ポリアミド樹脂に特定の化合物と熱伝導性充填剤を含有する方法(例えば、特許文献4)、ポリアミド樹脂にガラス繊維、熱伝導フィラー、ポリアミドエラストマーを含む方法(例えば、特許文献5)、ポリマーに熱伝導性充填剤と補強充填剤を含む方法(例えば、特許文献6)、ポリアミド樹脂に水酸化マグネシウムとガラス繊維、酸化チタンを配合する方法(例えば、特許文献7)が提案されている。また、繊維強化ポリアミドの引張強度や衝撃性などの靭性を改善する方法としては、特定のポリアミド樹脂にガラス繊維と粒子状フィラー、さらなる添加剤を有する方法(例えば、特許文献8)が提案されている。
しかしながら、特許文献1~7に記載の樹脂組成物では、高い熱伝導率を得るために水酸化マグネシウムや窒化ホウ素などの熱伝導フィラーを多量に含有するため衝撃性や引張強度が不十分である課題や熱伝導フィラーの分散不良に起因した生産性低下の課題があった。また、特許文献8に記載の樹脂組成物では、高い靭性を得るために扁平ガラス繊維を含有するものの熱伝導率が不十分である課題があった。
これらの技術的課題に鑑み、本発明は、ポリアミド樹脂の熱伝導率、衝撃性、引張強度を改善するとともに生産性に優れる熱可塑性樹脂組成物及びそれを成形してなる成形品を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂に水酸化マグネシウムおよび窒化ホウ素、長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維を含有してなる熱可塑性樹脂組成物は、熱伝導率、衝撃性、引張強度および生産性に優れることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、本発明の実施形態は、以下に挙げる構成の少なくとも一部を含み得る。
[1](A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーを50~200重量部、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維を20~150重量部含有する、熱可塑性樹脂組成物。
[2](B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素の含有比((B)水酸化マグネシウム/(C)窒化ホウ素)が1.5~4.0である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]成形品の熱伝導率が1.5W/m・K以上かつCp衝撃性(Vノッチ)が8kJ/m2以上である、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4](A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、さらに(E)難燃剤を5~50重量部含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
[1](A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーを50~200重量部、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維を20~150重量部含有する、熱可塑性樹脂組成物。
[2](B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素の含有比((B)水酸化マグネシウム/(C)窒化ホウ素)が1.5~4.0である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]成形品の熱伝導率が1.5W/m・K以上かつCp衝撃性(Vノッチ)が8kJ/m2以上である、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4](A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、さらに(E)難燃剤を5~50重量部含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
本発明によって、熱伝導率、衝撃性、引張強度および生産性に優れる熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明について、実施形態とともに詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーを50~200重量部、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維を20~150重量部含有する、熱可塑性樹脂組成物。
以下、各成分について説明する。
以下、各成分について説明する。
本発明の(A)ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリカプロアミド(PA6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ポリペンタメチレンアジパミド(PA56)、ポリテトラメチレンアジパミド(PA46)、ポリテトラメチレンセバカミド(PA410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(PA612)、ポリウンデカンアミド(PA11)、ポリドデカンアミド(PA12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(PA6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(PA6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(PA66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(PA66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(PA6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(PA6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(PA66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(XD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(PA6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(PA9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。これらの中でも衝撃性や引張強度の点でPA6、PA66、PA610、PA66/6I/6が好ましく、PA66/6I/6がより好ましく、難燃性の点でPA6とPA66/6I/6を組み合わせることが特に好ましい。PA6とPA66/6I/6の配合比は、難燃性と衝撃性や引張強度の点で、80/20~20/80が好ましく、60/40~40/60がより好ましい。また、吸水前後の引張強度の変化(吸水後の引張強度保持率)が少ない点でPA610が好ましい。吸水前後の引張強度変化が少ないことで製品組み立て時等での破損が低減できる。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度(ηr)が1.5~5.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、衝撃性と引張強度をより向上させることができる。相対粘度は、1.6以上がより好ましく、1.7以上がさらに好ましい。一方、相対粘度が5.0以下であれば、衝撃性と引張強度のバランスに優れる。成形加工時のGFの折損を抑制できることから、衝撃性と引張強度のバランスをより向上させることができる。相対粘度は、4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。また、PA610を用いる場合は、GFの折損抑制による引張強度の観点から相対粘度は3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。
これらポリアミド樹脂の末端基量の比(アミノ末端基量/カルボキシル末端基量)は特に制限はないが、衝撃性や引張強度、熱伝導率に優れる観点で1.0以上が好ましい。末端基量の比が1.0以上であれば衝撃性や引張強度、熱伝導率をより向上できる。末端基量の比は、1.1以上がより好ましく、1.2以上が特に好ましい。また、末端基量の比は、溶融混練時の熱劣化を抑制し、衝撃性や引張強度を向上できる観点で20以下が好ましい。末端基量の比が20以下であれば衝撃性や引張強度をより向上できる。末端基量の比は、15以下がより好ましく、10以下がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーを50~200重量部含有することを特徴とする。
本発明の(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を組み合わせることで高度な熱伝導率と引張強度および衝撃性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明に用いられる(B)水酸化マグネシウムとしては、化学式Mg(OH)2で示される無機物を80重量%以上含む純度の高い水酸化マグネシウムが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物に(B)水酸化マグネシウムを配合することにより、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を向上させることができる。熱伝導率をより向上できる点から、Mg(OH)2で示される無機物を80重量%以上含み、CaO含量5重量%以下、塩素含量1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがより好ましく、Mg(OH)2を98重量%以上含み、CaO含量0.1重量%以下、塩素含量0.1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがさらに好ましい。
本発明に用いられる(B)水酸化マグネシウムの形状は、粒子状、フレーク状、繊維状いずれでもよいが、押出混練時のフィード性、分散性などの点から、粒子状、フレーク状が好ましく、成形時に流動方向に配向し、熱伝導性をより高めることができる点でフレーク状が特に好ましい。また、その粒子径に関して特に限定はないが、熱伝導率と引張強度のバランスに優れる点でレーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.1~10μmの範囲であることが好ましく、0.3~6μmの範囲のものがより好ましい。
本発明に用いられる(B)水酸化マグネシウムは、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールなどにより表面処理が施されていてもよい。熱伝導率に優れる点でエポキシシラン化合物および/またはアミノシラン化合物により表面処理が施された水酸化マグネシウムがより好ましい。
本発明に用いられる(C)窒化ホウ素としては、熱伝導性をより向上させる観点から、六方晶系結晶構造のものが好ましい。
本発明に用いられる(C)窒化ホウ素の形状は、粒子状、フレーク状、繊維状いずれでもよいが、押出混練時のフィード性、分散性などの点から、粒子状、フレーク状が好ましく、成形時に流動方向に配向し、熱伝導性をより高めることができる点でフレーク状が特に好ましい。また、その粒子径に関して特に限定はないが、熱伝導率に優れる点でレーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.1~200μmの範囲であることが好ましく、0.1~100μmの範囲のものがより好ましい。
本発明に用いられる(C)窒化ホウ素は、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールなどにより表面処理が施されていてもよい。熱伝導率に優れる点でエポキシシラン化合物および/またはアミノシラン化合物により表面処理が施された窒化ホウ素がより好ましい。
(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーの含有量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して50重量部未満であると熱伝導率が低下する。(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーの含有量は熱伝導率をより向上させる点で80重量部以上が好ましく、100重量部以上がより好ましい。
一方、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーの含有量が(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して200重量部を超えると、流動性が大きく低下し、生産が困難となる。(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーの含有量は引張強度や衝撃性、生産性をより向上させる点で175重量部以下が好ましく、160重量部以下がより好ましい。
また、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素の含有比((B)水酸化マグネシウム/(C)窒化ホウ素)は1.5~4.0であることが好ましい。(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素の含有比を1.5~4.0の範囲内とすることで熱伝導率、衝撃性、引張強度および生産性のバランスにより優れる。(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素の含有比((B)水酸化マグネシウム/(C)窒化ホウ素)は2.0~3.0がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維を20~150重量部含有することを特徴とする。
本発明の(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維は丸径ガラス繊維と比較し、断面積が大きいことからガラス繊維の本数は低下するものの1本あたりの体積が大きくなることからガラス繊維自体が欠損の少ない熱伝導パスとなりかつ、扁平ガラス繊維は1本あたりの体積が大きいため(B)水酸化マグネシウムや(C)窒化ホウ素との熱伝導パスの形成がされやすく熱伝導率が向上する。また、扁平ガラス繊維は配向しやすいため、扁平ガラス繊維の層間に放熱フィラーが分散するためCp衝撃性などの靭性低下およびコンパウンド時のストランド切れ(生産性)を抑制できる。
本発明に用いられる(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維の長径/短径の比は、衝撃性や熱伝導率をより向上できる点で2.0以上のものが好ましく、3.0以上のものがより好ましい。一方、扁平ガラス繊維の生産性やコストの点で8.0以下のものが好ましく、6.0以下のものがより好ましい。
本発明に用いられる(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維の長径/短径の比は、衝撃性や熱伝導率をより向上できる点で2.0以上のものが好ましく、3.0以上のものがより好ましい。一方、扁平ガラス繊維の生産性やコストの点で8.0以下のものが好ましく、6.0以下のものがより好ましい。
本発明に用いられる(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により被膜あるいは集束されていてもよく、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)などにより処理されていてもよく、成形品の機械強度や表面外観をより向上させることができる。例えば、常法に従って予め充填材をカップリング剤により表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法が好ましく用いられるが、予め充填材の表面処理を行わずに、充填材とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、カップリング剤を添加するインテグラブルブレンド法を用いてもよい。カップリング剤の処理量は、充填材100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。一方、カップリング剤の処理量は、充填材100重量部に対して10重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましい。
(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維の含有量は20重量部未満であると引張強度や衝撃性、生産性、熱伝導率が低下する。(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維は引張強度や衝撃性、生産性、熱伝導率をより向上させる点で35重量部以上が好ましく、60重量部以上がより好ましい。
一方、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維が150重量部を超えると流動性が大幅に低下し、生産が困難となる。(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維は衝撃性や引張強度をより向上させる点で120重量部以下が好ましく、100重量部以下かより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形品の熱伝導率が1.5W/m・K以上かつCp衝撃性(Vノッチ)が8kJ/m2以上であることが好ましい。
一般的に熱伝導率を向上させるため熱伝導フィラーを多量に添加した場合、衝撃性などの靭性が低下するため成形品の耐久性を向上するため成形品の厚みが必要となるが成形品の厚みを厚くしてしまうとより高度な熱伝導率が必要となる。また、自動車や電気・電子機器の高機能化・高性能化に伴う、各部品の小型化や軽量化が進んでいるため成形品の厚みが必要となる場合は適用困難となる。
熱伝導率が1.5W/m・K以上かつCp衝撃性(Vノッチ)が8kJ/m2以上であれば熱伝導率と靭性に優れるため薄肉化が可能であり、特にCp衝撃性(Vノッチ)に優れるとコーナー部やノッチ部を有する部材に特に有用である。熱伝導率は適用部材によるが製品設計の自由度の点で1.8W/m・K以上が好ましく、2.0W/m・K以上がより好ましい。一方、Cp衝撃性(Vノッチ)はコーナー部やノッチ部の耐久性を向上できる点で9kJ/m2以上が好ましく、10kJ/m2以上がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに(E)難燃剤を5~50重量部含有しても良い。
本発明の(E)難燃剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に難燃性を付与できる物であれば特に限定されない。具体的には、臭素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤などのハロゲン原子を含まない非ハロゲン系難燃剤などを挙げることができ、これらの難燃剤を2種以上含有してもよい。中でも、少量でも難燃性効果が得られることからハロゲン系難燃剤が好ましい。
臭素系難燃剤としては、化学構造中に臭素を含有する化合物であれば特に制限はなく、通常公知の難燃剤を使用することができる。例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールAなどのモノマー系有機臭素化合物、臭素化ポリカーボネート(例えば、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールAとの共重合物)、臭素化エポキシ化合物(例えば、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化ポリスチレン、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレンなどの臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリα-メチルスチレンなどのハロゲン化されたポリマー系臭素化合物などが挙げられる。なかでもエチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが好ましく、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートがより好ましい。
リン系難燃剤としては、リン元素を含有する化合物であり、具体的には、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンなどのポリリン酸系化合物、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ホスファゼン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。これらの中でも、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ホスファゼン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルが好ましい。
窒素系難燃剤としては、例えば、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との塩などが挙げられる。シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との塩とは、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との付加物であり、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の付加物である。トリアジン系化合物としては、例えば、メラミン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2-アミド-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンなどが挙げられ、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンが好ましい。トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩の具体例としては、メラミンシアヌレート、モノ(β-シアノエチル)イソシアヌレート、ビス(β-シアノエチル)イソシアヌレート、トリス(β-シアノエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、とりわけメラミンシアヌレートが好ましい。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、硼酸亜鉛水和物、水酸化亜鉛酸化第一鉄、酸化第二鉄、硫化イオウ、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、ジルコニウム系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン系難燃剤と含有させることでより少量で難燃性効果が得られる点で三酸化アンチモンが好ましい。
(E)難燃剤の含有量は5重量部以上であると難燃性をより向上できる。10重量部以上がより好ましい。
一方、(E)難燃剤を50重量部以下とすることで引張強度をより向上できる。35重量部以下がより好ましい。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて各種添加剤を含有することが可能である。各種添加剤の具体例としては、酸化防止剤や熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物などの可塑剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、耐衝撃改良剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂の特徴を十分に活かすため、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、前記(A)~(E)および必要に応じてその他成分を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、溶融混練して樹脂組成物とすることができる。中でも生産性の観点から、二軸押出機が好ましい。
かくして得られる熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法で各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、中空成形、カレンダ成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形などが可能であり、糸状、ペレット状、板状、フィルム又はシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形することができる。
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、熱伝導率、衝撃性、引張強度に優れるため高度な熱伝導率や衝撃性や引張強度などの靭性が要求される自動車電装部品、電気・電子部品用途に好ましく用いられる。具体的には、本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、ラジエータータンクのトップおよびベース、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、他極ロッド、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギヤ、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクタ、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、リレー、リレーケース、リフレクター、小型スイッチ、電源部品、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品などに好ましく用いられる。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[(A)ポリアミド樹脂]
実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(A)は以下の通りである。なお、ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃の条件でオストワルド式粘度計を用いて測定した。
(A-1)融点222℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.35のポリアミド6樹脂。(以下、PA6と略す場合もある)
(A-2)融点260℃、比重1.14g/cm3、相対粘度2.78のポリアミド66樹脂。(以下、PA66と略す場合もある)
(A-3)融点228℃、比重1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド66/6I/6(=76/17/7重量%)樹脂。(以下、PA66/6I/6と略す場合もある)
(A-4)融点225℃、密度1.08g/cm3、相対粘度2.35のポリアミド610樹脂。(以下、PA610と略す場合もある)
(A-5)融点225℃、密度1.08g/cm3、相対粘度2.70のポリアミド610樹脂。(以下、PA610と略す場合もある)
実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(A)は以下の通りである。なお、ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃の条件でオストワルド式粘度計を用いて測定した。
(A-1)融点222℃、密度1.13g/cm3、相対粘度2.35のポリアミド6樹脂。(以下、PA6と略す場合もある)
(A-2)融点260℃、比重1.14g/cm3、相対粘度2.78のポリアミド66樹脂。(以下、PA66と略す場合もある)
(A-3)融点228℃、比重1.13g/cm3、相対粘度2.00のポリアミド66/6I/6(=76/17/7重量%)樹脂。(以下、PA66/6I/6と略す場合もある)
(A-4)融点225℃、密度1.08g/cm3、相対粘度2.35のポリアミド610樹脂。(以下、PA610と略す場合もある)
(A-5)融点225℃、密度1.08g/cm3、相対粘度2.70のポリアミド610樹脂。(以下、PA610と略す場合もある)
[熱伝導フィラー]
[(B)水酸化マグネシウム]
(B-1)水酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、“キスマ”(登録商標)5E)
[(B)水酸化マグネシウム]
(B-1)水酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、“キスマ”(登録商標)5E)
[(C)窒化ホウ素]
(C-1)窒化ホウ素(電気化学工業(株)製、平均粒径:15μm、六方晶系結晶、フレーク状)
(C-1)窒化ホウ素(電気化学工業(株)製、平均粒径:15μm、六方晶系結晶、フレーク状)
[その他フィラー]
(F-1)硫化亜鉛(Sachtleben Chemie社製、“Sachtolith” (登録商標)HD-S)
[(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維]
(D-1)扁平ガラス繊維(日東紡績(株)製、3PA820S、長径/短径の比:4.0)
(D’-1)丸径ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、T-717H)
(F-1)硫化亜鉛(Sachtleben Chemie社製、“Sachtolith” (登録商標)HD-S)
[(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維]
(D-1)扁平ガラス繊維(日東紡績(株)製、3PA820S、長径/短径の比:4.0)
(D’-1)丸径ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、T-717H)
[(E)難燃剤]
(E-1)臭素化芳香族ポリマー(第一工業製薬(株)製、“ピロガード”(登録商標)SR-460B)
(E-2)三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製、PATOX-MK)
(E-1)臭素化芳香族ポリマー(第一工業製薬(株)製、“ピロガード”(登録商標)SR-460B)
(E-2)三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製、PATOX-MK)
[熱伝導率]
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-DUZ)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、角板成形品(80mm×80mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-DUZ)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、角板成形品(80mm×80mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。
この成形品の中央部を18mm×18mm角となるように切削した。切削した、18mm×18mm×厚み3mmの成形品を熱流計法熱伝導率測定装置(リガク株式会社製GH-1S)を用い、測定温度:80℃、温度差:24℃、安定性判断時間:10分、安定性判断温度幅:±0.2℃、標準試料:パイレックス(登録商標)7740(厚み3mm、6mm、9mm)の条件で熱伝導率を測定し、熱伝導率を得た。
[引張強度]
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、ISO3167タイプA試験片を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。また、試験片は、即座にデシケーターで保管し、乾燥状態を維持した。
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、ISO3167タイプA試験片を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。また、試験片は、即座にデシケーターで保管し、乾燥状態を維持した。
この試験片について、乾燥状態のままISO527に従い、オートグラフAG-50kNX((株)島津製作所)を用い、23℃で引張試験を行い、引張強度(乾燥時の引張強度)を得た。
[吸水後の引張強度保持率]
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、ISO3167タイプA試験片を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、ISO3167タイプA試験片を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。
この試験片を密閉袋にポリアミド樹脂分に対する大気平衡吸水相当量の水(PA6:3.5%、PA66:2.5%、PA610:1.5%)と共に密閉し、80℃×24時間の条件で吸水させた。吸水後の試験片について、ISO527に従い、オートグラフAG-50kNX((株)島津製作所)を用い、23℃で引張試験を行い、吸水後の引張強度を得た。得られた吸水後の引張強度と乾燥時の引張強度から引張強度保持率を算出した(吸水後の引張強度/乾燥時の引張強度×100=引張強度保持率)
[衝撃性(Cp衝撃性(Vノッチ))]
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、ISO3167タイプA試験片を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒、保圧速度40mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、ISO3167タイプA試験片を作製した。なお、射出と保圧の切り替え位置は、金型末端部に樹脂が充填した位置とした。
この試験片について、中央部を80mmの短冊片となるように切削したのちISO2818に従い、(株)東洋精機製作所製“ノッチングツールA-4”を用い、ISO179/1eA試験片を作成した。切削した試験片を(株)東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機DG-UBを用い、ISO179:93に従い、シャルピー衝撃試験を行い、Cp衝撃値(衝撃値)を得た。
[生産性(ストランド切れの発生回数)]
各実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物を作成する際に各実施例および比較例につき30分運転を行い、ストランド切れの発生回数を数えた。なお、ストランドが切れた場合は、即座にストランドを引き直した。なお、ストランド切れが多発しストランドが引けないものは押出困難とした。
各実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物を作成する際に各実施例および比較例につき30分運転を行い、ストランド切れの発生回数を数えた。なお、ストランドが切れた場合は、即座にストランドを引き直した。なお、ストランド切れが多発しストランドが引けないものは押出困難とした。
[難燃性(燃焼時間)]
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:100mm/秒、保圧速度50mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、厚さ0.8mmのUL94V試験片を得た。
各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+30℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:100mm/秒、保圧速度50mm/秒、保圧圧力:射出時のピーク圧力×0.5MPaの条件で射出成形することにより、厚さ0.8mmのUL94V試験片を得た。
この試験片について、UL94V試験に従い、20mm垂直燃焼試験を行い、5本の合計燃焼時間(燃焼時間)を得た。
[実施例1~38、比較例1~14]
表1~6に示す(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウム、(C)窒化ホウ素、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維、(E)難燃剤をシリンダー設定温度:熱可塑性樹脂の融点+30℃、スクリュー回転数:200rpm、吐出量:20kg/hr、ダイスホール数:3の条件で(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。なお、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維は、繊維の折損を抑制し、機械強度を向上させるためサイドフィーダーから2軸押出機に供給した。
表1~6に示す(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウム、(C)窒化ホウ素、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維、(E)難燃剤をシリンダー設定温度:熱可塑性樹脂の融点+30℃、スクリュー回転数:200rpm、吐出量:20kg/hr、ダイスホール数:3の条件で(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。なお、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維は、繊維の折損を抑制し、機械強度を向上させるためサイドフィーダーから2軸押出機に供給した。
ダイスから吐出されるストランドを即座に長さ100cm、幅10cm、深さ10cmの水浴にて冷却し、ダイスより2m離れたストランドカッターによりペレット化した。なお、ストランドは水浴のストランドカッター側の端からストランドカッターの投入口をつないだ直線を0cmとした際、水浴とストランドカッターの中間部(ダイスから1.5m地点)のストランドが直線から±15cm以内の高さになるようにストランドカッターの引き取り速度を調整した。
各実施例および比較例の評価結果を表1~6に示す。
実施例3~12、19~28、33~38と比較例5、7、11、12より、(B)成分と(C)成分の合計量を本発明の範囲内とすることで熱伝導率、引張強度、衝撃性および生産性に優れた。また、(B)成分と(C)成分の合計量を本発明の範囲を超えた比較例7、12は、流動性が大幅に低下し生産が困難であった。
実施例3、4、7、11、12、19、20、23、27、28より、(B)成分と(C)成分の合計量を本発明の好ましい範囲とすることで熱伝導率、引張強度、衝撃性、生産性のバランスにより優れた。
実施例3、4、7、11、12、19、20、23、27、28より、(B)成分と(C)成分の合計量を本発明の好ましい範囲とすることで熱伝導率、引張強度、衝撃性、生産性のバランスにより優れた。
実施例5~10、21~23、26、33より、(B)成分と(C)成分の比を本発明の好ましい範囲とすることで熱伝導率、引張強度、衝撃性、生産性のバランスにさらに優れた。
また、実施例7と比較例1~4より、放熱フィラーとして(B)成分と(C)成分を組み合わせることで熱伝導率、引張強度、衝撃性、生産性のバランスに優れた。
実施例1、2、7、13、14、17、18、23、29、30と比較例6、8、11、13より(D)成分を本発明の範囲内とすることで熱伝導率、引張強度、衝撃性、生産性に優れた。
実施例1、2、7、13、14、17、18、23、29、30より、(D)成分を本発明の好ましい範囲とすることで熱伝導率、引張強度、衝撃性、生産性により優れた。
また、実施例7、23と比較例9、14より、扁平ガラス繊維を用いることで熱伝導率、衝撃性、生産性に優れた。
また、実施例7、23と比較例9、14より、扁平ガラス繊維を用いることで熱伝導率、衝撃性、生産性に優れた。
実施例1~14と実施例15~38より、(E)成分を本発明の範囲で含有した場合、難燃性に優れた。
実施例23と実施例24、25より、PA6とPA66/6I/6の含有比を本発明の好ましい範囲とすることで衝撃性と難燃性のバランスに優れた。
実施例23、34~38より、PA6とPA66/6I/6を組み合わせることで熱伝導率、引張強度、衝撃性のバランスに優れた。
実施例37、38より、PA610の相対粘度を本発明の好ましい範囲とすることで引張強度に優れた。
表6より、PA610を含有することで吸水後の引張強度保持率に優れた。
表1、3より(A)~(D)成分を本発明の好ましい範囲とすることで熱伝導率1.5W/m・K以上かつ、Cp衝撃性(Vノッチ)8kJ/m2以上を達成できることが分かった。
Claims (5)
- (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素を含む熱伝導フィラーを50~200重量部、(D)長径/短径の比が1.5~10である扁平断面を有する扁平ガラス繊維を20~150重量部含有する、熱可塑性樹脂組成物。
- (B)水酸化マグネシウムと(C)窒化ホウ素の含有比((B)水酸化マグネシウム/(C)窒化ホウ素)が1.5~4.0である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 成形品の熱伝導率が1.5W/m・K以上かつCp衝撃性(Vノッチ)が8kJ/m2以上である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、さらに(E)難燃剤を5~50重量部含有する、請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
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EP4456111A1 (en) * | 2023-02-09 | 2024-10-30 | Littelfuse, Inc. | High thermal conductivity fuse holder |
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