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JP2022184763A - フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置 - Google Patents

フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置 Download PDF

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JP2022184763A
JP2022184763A JP2022083514A JP2022083514A JP2022184763A JP 2022184763 A JP2022184763 A JP 2022184763A JP 2022083514 A JP2022083514 A JP 2022083514A JP 2022083514 A JP2022083514 A JP 2022083514A JP 2022184763 A JP2022184763 A JP 2022184763A
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phosphor
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健一 青柳
Kenichi Aoyanagi
智一 ▲吉▼田
Tomokazu Yoshida
和哉 西俣
Kazuya Nishimata
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Nichia Chemical Industries Ltd
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Nichia Chemical Industries Ltd
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Abstract

Figure 2022184763000001
【課題】発光装置における信頼性を向上することができるフッ化物蛍光体を提供する。
【解決手段】フッ化物粒子と、前記フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆う酸化物と、を有するフッ化物蛍光体である。酸化物は、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含み、その含有率が2質量%以上30質量%以下である。フッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有する。
【選択図】図2

Description

本開示は、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置に関する。
発光素子と蛍光体とを組み合わせた発光装置が、照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で利用されている。例えば、液晶用バックライト用途の発光装置に用いる蛍光体には、色純度が高い、すなわち発光ピークの半値幅が狭いことが求められている。発光ピークの半値幅の狭い赤色発光の蛍光体として、Mnを添加したフッ化物蛍光体が知られている。
例えば、特許文献1には、マンガンドープ赤色蛍光体の劣化による不安定性の問題を低減するため、マンガンドープ赤色蛍光体を酸化アルミニウム等でコーティングすることが記載されており、さらにそのコーティングされたマンガンドープ赤色蛍光体と樹脂を含む蛍光部材を備えた発光装置とすることも記載されている。
特表2019-525974号公報
フッ化物蛍光体と樹脂を含む蛍光部材を備える発光装置では、発光装置を使用する環境によっては、発光装置としての信頼性が低下する場合が起こり得る。本開示の一態様は、発光装置の信頼性をより向上させることができるフッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を提供することを目的とする。
第一態様は、フッ化物粒子と、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆う酸化物と、を含むフッ化物蛍光体である。酸化物は、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含み、その含有率がフッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下である。フッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有する。
第二態様は、フッ化物蛍光体の製造方法であって、フッ化物粒子を準備することと、準備したフッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、金属アルコキシドに由来する酸化物がフッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下でフッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆うことと、を含む製造方法である。フッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有する。
第三態様は、フッ化物蛍光体の製造方法であって、フッ化物粒子を準備することと、液媒体中で、準備したフッ化物粒子と、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を含む希土類イオンと、リン酸イオンと、を接触させて希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子を得ることと、希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、金属アルコキシドに由来する酸化物がフッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下で、希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆うことと、を含む製造方法である。フッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有する。
第四態様は、前記第一態様のフッ化物蛍光体と樹脂とを含む蛍光部材と、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を備える発光装置である。
本開示の一態様によれば、発光装置の信頼性をより向上させることができるフッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を提供することができる。
フッ化物蛍光体を含む発光装置の一例を示す概略断面図である。 フッ化物蛍光体の走査電子顕微鏡(SEM)による反射電子像の一例である。 実施例6に係るフッ化物蛍光体の断面SEM画像の一例である。 実施例6に係るフッ化物蛍光体のSEM画像の一例である。 実施例8に係るフッ化物蛍光体の断面SEM画像の一例である。 実施例8に係るフッ化物蛍光体のSEM画像の一例である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体の半値幅は、蛍光体の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。蛍光体のメディアン径は、体積基準のメディアン径であり、体積基準の粒径分布において、小径側からの体積累積50%に対応する粒径を指す。蛍光体の粒度分布は、レーザー回折法により、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を例示するものであって、本発明は、以下に示すフッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置に限定されない。
フッ化物蛍光体
フッ化物蛍光体は、フッ化物粒子と、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆う酸化物と、を有していてよい。酸化物は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種を含み、その含有率が、フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下である。フッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有する。
特定の組成を有するフッ化物粒子の表面の少なくとも一部が、所定量の特定の酸化物で覆われていることで、例えば耐湿性が向上する。これにより、フッ化物蛍光体と樹脂を含む蛍光部材を備える発光装置における信頼性を向上させることができる。例えば、高温環境下または高湿環境下で蛍光部材の質量が減少することが抑制される。蛍光部材の質量の減少は、主に樹脂量の減少と考えられる。高温環境下または高湿環境下でフッ化物粒子と樹脂とが直接接触することで、何らかの反応が生じて、樹脂の原子間結合の一部が切れた分解物が飛散すると考えられる。フッ化物粒子が、フッ化物粒子よりも化学的な安定性が高いと考えられる所定量の酸化物で覆われていることで、樹脂とフッ化物粒子との直接接触が抑制されて、それらの間の反応が抑えられ樹脂量が維持されると考えられる。樹脂は蛍光体の保護部材としても機能するため、樹脂量の減少により湿気を含む外部環境の影響を受け易くなり蛍光体の劣化が促進されることが考えられる。また、樹脂量の減少により、例えば図1に示される発光装置における蛍光部材の発光面の形状が変形することにより、発光装置の内部からの光が全反射する可能性が高くなる。このため、発光装置の外部へ取り出される光が少なくなり、発光装置の光束が低下することが考えられる。
フッ化物蛍光体を構成するフッ化物粒子は、少なくともMnで賦活される蛍光性物質を含んでいればよく、Mnで賦活される蛍光性物質のみからなるものであってよい。フッ化物粒子の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であってよく、好ましくは0.01以上0.12以下であってよい。またフッ化物粒子の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であってよく、好ましくは0.88以上0.99以下であってよい。フッ化物粒子の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Fのモル数が5を超えて7未満であってよく、好ましくは5.9以上6.1以下であってよい。フッ化物粒子の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析によって測定することができる。
フッ化物粒子の組成におけるアルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。またアルカリ金属は、少なくともカリウム(K)を含み、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するKのモル数の比は、例えば0.90以上であってよく、好ましくは0.95以上、又は0.97以上である。Kのモル数の比の上限は、例えば1又は0.995以下であってよい。フッ化物粒子の組成においては、アルカリ金属の一部がアンモニウムイオン(NH )に置換されていてもよい。アルカリ金属の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
フッ化物粒子の組成における元素Mは、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む。第4族元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第13族元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第14族元素としては、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。元素Mは、少なくとも第14族元素の少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含んでいてよく、より好ましくは少なくともSiを含んでいてよい。また、元素Mは、少なくとも第13族元素の少なくとも1種と第14族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは少なくともAlとSi及びGeの少なくとも一方とを含んでいてよく、より好ましくは少なくともAlとSiとを含んでいてよい。
フッ化物粒子の組成の一態様である第1組成は、元素Mとして第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくはSi及びGeの少なくとも一方を含んでいてよく、さらに好ましくは少なくともSiを含んでいてよい。また、フッ化物粒子の第1組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。
フッ化物粒子の第1組成は、下記式(1)で表される組成であってもよい。
[M 1-bMn] (1)
式(1)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。Mは、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M 1-bMn]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。
式(1)におけるAは、少なくともKを含み、Li、Na、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。また、Aはその一部がアンモニウムイオン(NH )に置換されていてもよい。Aの一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるAの総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
式(1)におけるbは、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。cは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.9以上2.1以下、又は1.95以上2.05以下であってよい。dは好ましくは5.5以上6.5以下、5.9以上6.1以下、5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下であってよい。
更に、第1組成のフッ化物粒子は、下記式(1a)で表される第1の理論組成を有していてもよい。
:Mn (1a)
式(1a)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。Mは、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。
フッ化物粒子の組成の一態様である第2組成は、元素Mとして第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、より好ましくは少なくともSi及びAlを含んでいてよい。また、フッ化物粒子の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとAlとMnの総モル数が、0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。さらにフッ化物粒子の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、Alのモル数が0を超えて0.1以下であってよく、好ましくは0を超えて0.03以下、0.002以上0.02以下、又は0.003以上0.015以下であってよい。
フッ化物粒子の第2組成は、下記式(2)で表される組成であってもよい。
[M 1-eMn] (2)
式(2)中、Aは、少なくともKを含み、Li、Na、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。Mは、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M 1-eMn]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。
式(2)におけるAは、その一部がアンモニウムイオン(NH )に置換されていてもよい。Aの一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるAの総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
式(2)におけるeは、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。fは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.9以上2.1以下、又は1.95以上2.05以下であってよい。gは好ましくは5.5以上6.5以下、5.9以上6.1以下、5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下であってよい。
更に、第2組成のフッ化物粒子は、下記式(2a)で表される第2の理論組成を有していてもよい。
Si1-pAl6-p:Mn (2a)
式(2a)中、Aは、少なくともKを含み、Li、Na、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。pは、0<p<1を満たす。Mnは4価のMnイオンであってよい。
第2組成を有するフッ化物粒子は、その粒子表面に凹凸、溝等を有していてもよい。粒子表面の状態は、例えば、フッ化物粒子からなる粉体の安息角を測定することで評価することができる。第2組成を有するフッ化物粒子からなる粉体の安息角は例えば、70°以下であってよく、好ましくは65°以下、又は60°以下であってよい。安息角の下限は例えば30°以上である。安息角は、例えば、注入法によって測定される。
第2組成を有するフッ化物粒子が表面に凹凸、溝等を有することで、例えば、所定量の特定の酸化物でフッ化物粒子を覆う際に、フッ化物粒子と酸化物との接触面積が大きくなるために、フッ化物粒子と酸化物との間に強固な結合を得て、外力により剥離し難い酸化物膜をフッ化物粒子に被覆することができる。また、所定量の特定の酸化物でフッ化物粒子を覆う工程において、比較的少量の酸化物の原料を使用する場合であっても、所定量の酸化物でフッ化物粒子を覆うことが可能となる。同様に、フッ化物粒子の表面を希土類リン酸塩が覆う場合や、更には酸化物が希土類リン酸塩を介してフッ化物粒子を覆う場合には、フッ化物蛍光体が表面に凹凸、溝等を有していることで、所定量の特定の希土類リン酸塩でフッ化物粒子を覆う際に、フッ化物粒子と希土類リン酸塩との接触面積が大きくなるために、フッ化物粒子と希土類リン酸塩との結合がより強くなり、発光装置の製造時の外力により剥離し難い希土類リン酸塩の膜をフッ化物粒子に被覆することができる。また、所定量の特定の希土類リン酸塩でフッ化物粒子を覆う工程において、比較的少量の希土類リン酸塩の原料を使用する場合であっても、所定量の希土類リン酸塩でフッ化物粒子を覆うことができる。
フッ化物粒子の体積基準のメディアン径は、例えば、輝度の向上の観点から、5μm以上90μm以下であってよく、好ましくは10μm以上70μm以下、又は15μm以上50μm以下であってよい。フッ化物粒子の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよく、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。
フッ化物蛍光体は、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆う酸化物を有していてよい。酸化物はフッ化物粒子の表面を膜状に覆っていてよく、酸化物層としてフッ化物粒子の表面に配置されていてもよい。またフッ化物粒子の表面を覆う酸化物膜は、全く亀裂が存在しない状態に限定されることはなく、発明の効果が得られる程度に、フッ化物粒子の表面を覆う酸化物膜の一部に亀裂が存在していてもよい。また、フッ化物粒子の表面を覆う酸化物膜は、その表面全体を完全に覆うことが好ましいものの、部分的に酸化物膜の一部が欠落してもよく、効果が得られる程度にフッ化物粒子の表面の一部が露出していてもよい。フッ化物蛍光体におけるフッ化物粒子の酸化物による被覆率は、例えば、50%以上であってよく、好ましくは80%以上、又は90%以上であってよい。フッ化物粒子の酸化物による被覆率は、フッ化物粒子の表面積に対する酸化物によって覆われた面積の比率として算出される。
酸化物は、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。すなわち、酸化物は、酸化ケイ素(例えば、SiOx、xは1以上2以下、好ましくは1.5以上2以下、又は約2であってよい)、酸化アルミニウム(例えば、Al)、酸化チタン(例えば、TiO)、酸化ジルコニウム(例えば、ZrO)、酸化スズ(例えば、SnO、SnOなど)及び酸化亜鉛(例えば、ZnO)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくとも酸化ケイ素を含んでいてよい。酸化物は1種のみからなっていてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
フッ化物蛍光体における酸化物の含有率は、フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下であってよく、好ましくは5質量%以上20質量%以下、又は8質量%以上15質量%以下であってよい。フッ化物蛍光体における酸化物の含有率は、例えば、酸化物が酸化ケイ素の場合、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により、酸化物で覆われたフッ化物粒子と酸化物を有しないフッ化物粒子に含まれる各構成元素量とをそれぞれ分析し、アルカリ金属のモル数が2となるようにして各構成元素のモル比を計算する。酸化物で覆う前後のケイ素のモル比の差分を酸化ケイ素(例えば、SiO)の質量に換算し、酸化物で覆われたフッ化物粒子(フッ化物蛍光体)の質量を100質量%として酸化ケイ素(例えば、SiO)の含有率が算出される。酸化物の含有率が上記範囲内であることで発光装置における信頼性をより向上させることができる。
フッ化物蛍光体においては、フッ化物粒子が酸化物層で覆われていてよい。フッ化物粒子を覆う酸化物層の平均厚みは、例えば0.1μm以上1.8μm以下であってよく、好ましくは0.15μm以上1.0μm以下、又は0.20μm以上0.8μm以下であってよい。フッ化物蛍光体における酸化物層の平均厚みは、例えば、フッ化物蛍光体の断面画像において、酸化物層として識別される層の厚みを数カ所について実測し、その算術平均として求められる実測平均厚みであってよい。また、フッ化物蛍光体における酸化物層の平均厚みは、後述するF元素のKα線強度比から算出される理論厚みであってもよい。理論厚みは、酸化物層で覆われていないフッ化物粒子におけるF元素のKα線のピーク強度に対する、酸化物で覆われたフッ化物蛍光体におけるF元素のKα線のピーク強度の比率から、CXRO(The Center for X-Ray Optics)のデータベースを利用して算出することができる。理論厚みは、酸化物層における割れ、欠け等の欠陥の存在が平均化された値として算出される。
フッ化物蛍光体では、フッ化物粒子が酸化物で覆われているため、フッ化物粒子に由来する特性X線のピーク強度が、フッ化物粒子を覆う酸化物量に応じて減少する。従って、フッ化物蛍光体において、フッ化物粒子に由来する特性X線のピーク強度を評価することで、酸化物による被覆状態を評価することができる。具体的には、蛍光X線(XRF)元素分析法において、フッ化物粒子におけるF元素のKα線のピーク強度に対する、フッ化物蛍光体におけるF元素のKα線のピーク強度の比率が、例えば80%以下であってよく、好ましくは70%以下、又は60%以下であってよい。ピーク強度の比の下限値は、例えば20%以上であってよい。フッ化物蛍光体におけるF元素のKα線のピーク強度の比率が上記範囲内であることで、発光装置における信頼性をより効果的に向上させることができる。
フッ化物蛍光体では、フッ化物粒子の表面に希土類リン酸塩が配置され、酸化物が希土類リン酸塩を介してフッ化物粒子を覆っていてもよい。これにより、フッ化物蛍光体の耐湿熱性がより向上する傾向がある。また、フッ化物粒子に対する酸化物の接着性が向上し、酸化物による被覆性がより向上する傾向がある。フッ化物粒子の表面に配置される希土類リン酸塩は、粒子としてフッ化物粒子の表面に付着していてもよく、膜又は層としてフッ化物粒子の表面を被覆していてもよい。好ましくは粒子としてフッ化物粒子の表面に付着していてよい。
希土類リン酸塩は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)からなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素を含んでいてよく、好ましくは少なくともランタンを含んでいてよい。
フッ化物蛍光体における希土類リン酸塩の含有率は、希土類元素の含有率として、例えば0.1質量%以上20質量%以下であってよく、好ましくは0.2質量%以上15質量%以下、又は0.3質量%以上10質量%以下であってよい。
フッ化物蛍光体は、その表面がカップリング剤で処理されていてもよい。すなわち、フッ化物蛍光体の表面にはカップリング剤に由来する官能基を含む表面処理層が配置されていてもよい。フッ化物蛍光体の表面に表面処理層が配置されることで、例えば、フッ化物蛍光体の耐湿性がより向上する。
カップリング剤に由来する官能基としては、例えば、炭素数1から20の脂肪族基を有するシリル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6から12の脂肪族基を有するシリル基であってよい。カップリング剤に由来する官能基は1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエチルシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン等のアリールトリアルコキシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。カップリング剤としては、比較的に容易に入手が可能という点で、シランカップリング剤が好ましい。
一態様においてフッ化物蛍光体は、フッ化物粒子と、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部に配置される希土類リン酸塩とを含むものであってよい。また、希土類リン酸塩がフッ化物粒子の表面の少なくとも一部に配置されてなるフッ化物蛍光体は、その表面に、カップリング剤に由来する官能基を含む表面処理層がさらに配置されていてもよい。フッ化物粒子の表面に希土類リン酸塩が配置されていることで、例えばフッ化物蛍光体としての耐湿性が向上する。これにより、フッ化物蛍光体と樹脂を含む蛍光部材を備える発光装置における信頼性を向上させることができる。また例えば、高温環境下または高湿環境下における蛍光部材の質量の減少が抑制される。さらに、希土類リン酸塩がフッ化物粒子の表面の少なくとも一部に配置されてなるフッ化物蛍光体が、その表面にカップリング剤に由来する官能基を含む表面処理層を有することで、表面処理されたフッ化物蛍光体とシリコーン樹脂等の封止樹脂との界面エネルギーが低減されるために、フッ化物蛍光体が封止樹脂中に均一に混合されて分散されやすくなる。さらに、その混合物を発光装置のパッケージ内に注入して静置する際には、フッ化物蛍光体を発光素子(例えば、LEDチップ)上に緻密に均一に沈降させることができるようになる。そのため、発光装置の駆動時にフッ化物蛍光体の温度を低く抑えることが可能となり、結果として高い発光効率と高い信頼性を有する発光装置を得ることができる。
フッ化物蛍光体の体積基準のメディアン径は、例えば、輝度の向上の観点から、10μm以上90μm以下であってよく、好ましくは15μm以上70μm以下、又は20μm以上50μm以下であってよい。フッ化物蛍光体の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよく、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。
フッ化物蛍光体は、例えば、4価のマンガンイオンで賦活された蛍光体であり、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色発光する。励起光は、主に青色領域の光であってよく、励起光のピーク波長は、例えば、380nm以上485nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば、10nm以下であってよい。
フッ化物蛍光体を構成するフッ化物粒子が第2組成を有する場合、フッ化物蛍光体は、その粒子表面に凹凸、溝等を有していてもよい。第2組成を有するフッ化物粒子を含むフッ化物蛍光体からなる粉体の安息角は例えば、70°以下であってよく、好ましくは65°以下、又は60°以下であってよい。安息角の下限は例えば30°以上である。安息角は、例えば、注入法によって測定される。
第2組成を有するフッ化物粒子を酸化物及び希土類リン酸塩の少なくとも一方で被覆して得られるフッ化物蛍光体は、酸化物及び希土類リン酸塩の少なくとも一方で被覆された後においても、その表面に凹凸、溝等を有している。これにより、そのフッ化物蛍光体の表面の凹凸や溝に起因してフッ化物蛍光体の粉体間の接触面積が低減して粉体の凝集が抑制される。そのため、発光装置を製造する際に樹脂組成物中にフッ化物蛍光体粒子をより均一に分散させることができる。また、例えば、発光装置の製造時にディスペンサーを使用する場合、ディスペンサーのニードル内にフッ化物蛍光体が詰まる等の不具合が発生し難くなる。そして、フッ化物蛍光体粒子の凝集が少なく、色度のバラつきが少ない発光装置を得ることができる。
フッ化物蛍光体の製造方法
フッ化物蛍光体の製造方法の第1態様(以下、第1の製造方法ともいう)は、フッ化物粒子を準備する準備工程と、準備したフッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させて、金属アルコキシドに由来する酸化物でフッ化物粒子を覆う合成工程と、を含む。第1の製造方法では、酸化物の被覆量が、フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下であってよい。また、準備されるフッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有する。
所定の組成を有するフッ化物粒子と、金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部が金属アルコキシドに由来する酸化物で覆われたフッ化物蛍光体を効率的に製造することができる。得られるフッ化物蛍光体と樹脂を含む蛍光部材を備える発光装置においては、例えば、高温環境下における信頼性が向上する。
準備工程では、所定の組成を有するフッ化物粒子を準備する。準備工程では、フッ化物粒子を購入して準備してもよく、所望のフッ化物粒子を製造して準備してもよい。なお、準備されるフッ化物粒子の詳細については既述の通りである。
フッ化物粒子は、例えば以下のようにして製造することができる。フッ化物粒子が第1組成を有する場合、例えば、4価のマンガンを含む第1錯イオン、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンを含む第2錯イオン、並びにフッ化水素を少なくとも含む溶液aと、少なくともカリウムを含むアルカリ金属及びフッ化水素を少なくとも含む溶液bとを混合する工程を含む製造方法で製造することができる。
また、例えば、4価のマンガンを含む第1錯イオン及びフッ化水素を少なくとも含む第1溶液と、少なくともカリウムを含むアルカリ金属及びフッ化水素を少なくとも含む第2溶液と、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンを含む第2錯イオンを少なくとも含む第3溶液とを混合する工程を含む製造方法で製造することもできる。
またフッ化物粒子が第2組成を有する場合、第2組成を有するフッ化物粒子の製造方法として、例えば、第1組成を有するフッ化物粒子を準備することと、Alとアルカリ金属とFとを含むフッ化物粒子を準備することと、このフッ化物粒子及び第1組成を有するフッ化物粒子を含む混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の第一熱処理温度で第一熱処理する第一熱処理工程を含む製造方法で製造することができる。ここでAlとアルカリ金属とFとを含むフッ化物粒子の組成は、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が1以上3以下であり、Fのモル数の比が4以上6以下であってよい。あるいは、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が2以上3以下であり、Fのモル数の比が5以上6以下であってよい。
フッ化物蛍光体の製造方法は、上記第一熱処理した後の第一熱処理物を400℃以上の第二熱処理温度で第二熱処理を行って第二熱処理物を得る第二熱処理工程をさらに含んでいてもよい。
なお、フッ化物粒子のみで第二熱処理工程を行ってもよく、フッ化物粒子をフッ素含有物質とともに第二熱処理工程を行ってもよい。このフッ素含有物質は、常温で固体状態、液体状態又は気体状態のいずれであってもよい。固体状態又は液体状態のフッ素含有物質としては、例えば、NHF等が挙げられる。また、気体状態のフッ素含有物質としては、例えば、F、CHF、CF、NHHF、HF、SiF、KrF、XeF、XeF、NF等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよく、好ましくはF及びHFからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
第二熱処理温度は、好ましくは400℃より高い温度、425℃以上、450℃以上又は480℃以上であってよい。第二熱処理温度の上限は、例えば600℃未満であってよく、好ましくは580℃以下、550℃以下又は520℃以下であってよい。第二熱処理温度は、第一熱処理温度よりも低い温度であってよい。
第一熱処理工程により固相反応法で合成される第2組成のフッ化物粒子は、フッ化物粒子の結晶中で4価のSiイオンと3価のAlイオンと4価のMnイオンが同じ位置に存在することによって、いわば混合原子価を有する化合物を含む状態となっていると考えられる。これにより、4価のSiイオンと3価のAlイオンと4価のMnイオンの存在比率に比例して結晶中のフッ素イオンが存在すべき位置には、混合原子価を有する陽イオン全体の不足する電荷を補償するために、空孔が存在すると考えられる。
ここで、例えば、特開2010-254933号公報に開示されるような、液相反応法で合成されるフッ化物粒子は、結晶中でフッ素イオンが存在すべき位置に、溶液中に存在する水酸化物イオンから結晶中に導入される多数の水酸化物イオンがフッ素イオンとともに混在し、この水酸化物イオンがフッ化物粒子の安定性を損なう原因となっていると考えられる。一方、熱処理により固相反応法で合成される第2組成のフッ化物粒子には、水酸化物イオンが存在し得る溶液を使用していないので、フッ化物粒子の安定性を損なう原因となる水酸化物イオンが混在しない。
また、第一熱処理工程により固相反応法で合成される第2組成のフッ化物粒子には、フッ化物粒子の結晶中または結晶表面に原子価の異なるMnイオンが混在することがある。フッ化物粒子に原子価の異なるMnイオンが混在する場合には、フッ素含有物と接触させた状態で更に熱処理することで、Mnイオンの原子価を4価の状態に揃えることも可能であり、これによりフッ化物粒子の発光効率を上げることもできる。
合成工程では、準備したフッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させて、金属アルコキシドに由来する酸化物でフッ化物粒子を覆って、フッ化物蛍光体を得る。金属アルコキシドを加溶媒分解することで金属アルコキシドに由来する酸化物を生成することができ、生成する酸化物に覆われたフッ化物粒子を含むフッ化物蛍光体が得られる。
金属アルコキシドを構成するアルコキシドの脂肪族基は、炭素数が例えば1以上6以下であってよく、好ましくは1以上4以下、又は1以上3以下であってよい。金属アルコキシドはSi、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含むが、少なくともSiを含んでいてよい。金属アルコキシドが含む金属及び脂肪族基は、それぞれ1種のみであってもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
金属アルコシキドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラエトキシスズ、ジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましくテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトライソプロポキシシランからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。合成工程における金属アルコキシドは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
合成工程において用いられる金属アルコキシドの添加量は、酸化物換算の添加量として、フッ化物粒子の総質量に対して、例えば2質量%以上30質量%以下であってよく、好ましくは5質量%以上、又は8質量%以上であってよく、また好ましくは25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。また、合成工程において用いられる金属アルコキシドの添加量は、金属アルコキシドの添加量としてフッ化物粒子の総質量に対して、例えば5質量%以上110質量%以下であってよく、好ましくは15質量%以上、又は25質量%以上であってよく、また好ましくは90質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
フッ化物粒子と金属アルコシキドとの接触は液媒体中で行われる。液媒体としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン等の炭化水素系溶剤などを挙げることができる。液媒体は、少なくとも水とアルコール系溶剤を含んでいてよい。液媒体がアルコール系溶剤を含む場合、液媒体におけるアルコール系溶剤の含有率は、例えば60質量%以上であってよく、好ましくは70質量%以上であってよい。また液媒体における水の含有率は、例えば4質量%以上40質量%以下であってよい。
また、液媒体はpH調整剤を更に含んでいてもよい。pH調整剤としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性物質、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等の酸性物質を用いることができる。液媒体がpH調整剤を含む場合、液媒体のpHは、例えば酸性条件では1以上6以下であってよく、好ましくは2以上5以下であってよい。アルカリ条件では8以上12以下であってよく、好ましくは8以上11以下であってよい。
フッ化物粒子に対する液媒体の質量比率は、例えば100質量%以上1000質量%以下であってよく、好ましくは150質量%以上、又は180質量%以上であってよく、また好ましくは600質量%以下、又は300質量%以下であってよい。液媒体の質量比率が上記範囲内であると、より均一にフッ化物粒子を酸化物で覆うことができる傾向がある。
フッ化物粒子と金属アルコシキドとの接触は、例えばフッ化物粒子を含む懸濁液に金属アルコキシドを添加することで行うことができる。このとき必要に応じて撹拌等をおこなってもよい。また、フッ化物粒子と金属アルコシキドとの接触温度は、例えば0℃以上70℃以下であってよく、好ましくは10℃以上40℃以下であってよい。接触時間は、例えば1時間以上12時間以下であってよい。なお、接触時間には金属アルコキシドの添加に要する時間も含まれる。
フッ化物蛍光体の製造方法の第2態様(以下、第2の製造方法ともいう)は、フッ化物粒子を準備する準備工程と、準備したフッ化物粒子と、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種のランタノイドを含む希土類イオンと、リン酸イオンとを液媒体中で接触させて希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子を得る付着工程と、希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドを含む溶液と、を接触させて、金属アルコキシドに由来する酸化物で、希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子を覆う合成工程と、を含む。第2の製造方法では、酸化物の被覆量が、フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下であってよい。また、準備されるフッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有していてよい。
第2の製造方法においては、フッ化物粒子の表面に希土類リン酸塩を付着させた後、金属アルコキシドに由来する酸化物で、希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子を覆うことで、得られるフッ化物蛍光体の耐湿熱性がより向上する傾向がある。
第2の製造方法における準備工程は、第1の製造方法における準備工程と同様である。また、第2の製造方法における合成工程は、合成工程に供されるフッ化物粒子に希土類リン酸塩が付着していること以外は、第1の製造方法における合成工程と同様である。
付着工程では、準備したフッ化物粒子と、希土類イオンと、リン酸イオンとを液媒体中で接触させる。これにより、フッ化物粒子の表面に希土類リン酸塩が付着して希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子が得られる。液媒体中で希土類リン酸塩をフッ化物粒子に付着させることで、希土類リン酸塩が、例えばフッ化物粒子表面により均一に付着すると考えられる。
液媒体はリン酸イオン及び希土類イオンを溶解可能であればよく、これらのイオンが溶解し易い点で、少なくとも水を含むことが好ましい。液媒体は必要に応じて、過酸化水素等の還元剤、有機溶剤、pH調整剤等を更に含んでいてもよい。液媒体が含み得る有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコールなどを挙げることができる。pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物;塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等の酸性化合物が挙げられる。液媒体がpH調整剤を含む場合、液媒体のpHは、例えば1から6であり、1.5から4が好ましい。上記下限値以上であると充分な希土類リン酸塩の付着量が得られる傾向があり、また上記上限値以下であるとフッ化物蛍光体の発光特性の低下が抑制される傾向がある。液媒体が水を含む場合、液媒体における水の含有率は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
フッ化物粒子に対する液媒体の質量比率は、例えば100質量%以上又は200質量%以上であり、また例えば1000質量%以下又は800質量%以下である。液媒体の質量比率が上記下限値以上であると、希土類リン酸塩をフッ化物粒子表面により均一に付着させることが容易になり、液媒体の質量比率が上記上限値以下であると希土類リン酸塩のフッ化物粒子への付着率がより向上する傾向がある。
液媒体はリン酸イオンを含むことが好ましく、水及びリン酸イオンを含むことがより好ましい。液媒体がリン酸イオンを含む場合、準備したフッ化物粒子と液媒体とを混合し、更に希土類イオンを含む溶液と混合することで、フッ化物粒子を含む液媒体中でリン酸イオンと希土類イオンとを接触させることができる。液媒体がリン酸イオンを含む場合、液媒体中のリン酸イオン濃度は、例えば0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また例えば5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。液媒体中のリン酸イオン濃度が上記下限値以上であると液媒体量が多くなり過ぎず、フッ化物粒子からの組成成分の溶出が抑制され、フッ化物蛍光体の特性が良好に維持される傾向がある。また上記上限値以下であるとフッ化物粒子への付着物の均一性が良好になる傾向がある。
リン酸イオンには、オルトリン酸イオン、ポリリン酸(メタリン酸)イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオンが含まれる。ポリリン酸イオンには、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン等の直鎖構造のポリリン酸イオン、ヘキサメタリン酸等の環状ポリリン酸イオンが含まれる。
液媒体がリン酸イオンを含む場合、液媒体にリン酸イオン源となる化合物を溶解して調製してもよく、リン酸イオン源を含む溶液と液媒体とを混合して調製してもよい。リン酸イオン源としては、例えばリン酸;メタリン酸;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等のアルカリ金属リン酸水素塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のアルカリ金属リン酸二水素塩;ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム等のアルカリ金属ヘキサメタリン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩;リン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
液媒体は、還元剤を含むことが好ましく、水及び還元剤を含むことがより好ましく、水、リン酸イオン及び還元剤を含むことが更に好ましい。液媒体が還元剤を含むことでフッ化物粒子に含まれるマンガンに由来する二酸化マンガン等が析出することを効果的に抑制することができる。液媒体に含まれる還元剤は、フッ化物から液媒体中へ溶出する、例えば4価のマンガンイオンを還元可能であればよく、例えば過酸化水素、シュウ酸、塩酸ヒドロキシアミン等を挙げることができる。これらのうち、過酸化水素は、水に分解されるため、フッ化物に悪影響を与えない点で好ましい。
液媒体が還元剤を含む場合、液媒体に還元剤となる化合物を溶解して調製してもよく、還元剤を含む溶液と液媒体とを混合して調製してもよい。液媒体中の還元剤の含有率は、特に制限されないが、上記理由で例えば0.1質量%以上であり、0.3質量%以上が好ましい。
リン酸イオンと接触させる希土類イオンとなる希土類元素としては、Sc及びYに加えて、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなるランタノイドを挙げることができ、ランタノイドから選択される少なくとも1種が好ましく、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
液媒体中でのリン酸イオンと希土類イオンとの接触は、例えば、リン酸イオンを含む液媒体に希土類イオン源となる化合物を溶解して行ってもよく、リン酸イオンを含む液媒体と希土類イオンを含む溶液とを混合することで行ってもよい。希土類イオンを含む溶液は、例えば希土類イオン源となる化合物を水等の溶媒に溶解することで調製できる。希土類イオン源となる化合物は、例えば希土類元素を含む金属塩であり、金属塩を構成する陰イオンとしては、硝酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、塩化物イオン等を挙げることができる。
液媒体中でのリン酸イオンと希土類イオンとの接触は、例えば、リン酸イオンを含み、好ましくは更に還元剤を含む液媒体及びフッ化物粒子を混合して蛍光体スラリーを得ることと、蛍光体スラリー及び希土類イオンを含む溶液と混合することとを含むことができる。
リン酸イオンと希土類イオンとを接触させる液媒体における、希土類イオンの含有率は、例えば0.05質量%以上又は0.1質量%以上であり、また例えば3質量%以下又は2質量%以下である。また液媒体におけるフッ化物粒子量に対する希土類イオンの含有率は、例えば0.2質量%以上又は0.5質量%以上であり、また例えば30質量%以下又は20質量%以下である。希土類イオンの濃度が上記下限値以上であると、希土類リン酸塩のフッ化物粒子への付着率がより向上する傾向があり、希土類イオンの濃度が上記上限値以下であると、希土類リン酸塩をフッ化物粒子表面により均一に付着させることが容易になる傾向がある。
希土類リン酸塩を形成するリン酸イオンと希土類イオンとの接触温度は、例えば10℃から50℃であり、20℃から35℃が好ましい。また接触時間は、例えば1分から1時間であり、3分から30分が好ましい。接触は液媒体を撹拌しながら行ってもよい
付着工程の後には、希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子と液媒体とを分離する分離工程を設けてもよい。分離は、例えば、濾過、遠心分離の固液分離手段により行うことができる。固液分離して得られる蛍光体には、洗浄処理、乾燥処理等を必要に応じて行ってもよい。
フッ化物蛍光体の製造方法は、合成工程の後に合成工程で得られるフッ化物蛍光体を固液分離により回収する工程、固液分離されたフッ化物蛍光体を乾燥処理する工程等をさらに含んでいてもよい。
フッ化物蛍光体の製造方法は、合成工程で得られるフッ化物蛍光体をカップリング剤で処理する表面処理工程を含んでいてもよい。金属アルコキシドに由来する酸化物でフッ化物粒子を覆った後、更にシランカップリング処理を行うことを含んでもよい。表面処理工程では、フッ化物蛍光体とカップリング剤とを接触させることでフッ化物蛍光体の表面にカップリング剤に由来する官能基を含む表面処理層を付与することができる。これにより例えば、フッ化物蛍光体の耐湿性が向上する。
表面処理工程に用いられるカップリング剤の具体例については既述の通りである。また、表面処理工程に用いられるカップリング剤の量は、例えば、フッ化物蛍光体の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以上5質量%以下であってよい。フッ化物蛍光体とカップリング剤との接触温度は、例えば0℃以上70℃以下であってよく、好ましくは10℃以上40℃以下であってよい。フッ化物蛍光体とカップリング剤との接触時間は、例えば1分以上10時間以下であってよく、好ましくは10分以上1時間以下であってよい。
発光装置
発光装置は、前記フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体及び樹脂を含む蛍光部材と、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子とを含む。発光装置は、必要に応じてその他の構成部材をさらに含んでいてもよい。
発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。この発光装置は、表面実装型発光装置の一例である。発光装置100は、可視光の短波長側(例えば380nm以上485nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する発光素子10と、発光素子10を載置する成形体40と、を有する。成形体40は第一のリード20と第二のリード30とを有しており、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂により一体成形されている。成形体40は底面と側面を持つ凹部が形成されており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は第一のリード20及び第二のリード30とワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は蛍光部材50により封止されている。蛍光部材50は、発光素子10からの光を波長変換するフッ化物蛍光体を含む蛍光体70を含有している。蛍光体70は、前記フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体と、発光素子10からの励起光によりフッ化物蛍光体とは異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する第二蛍光体を含んでいてもよい。
蛍光部材は、樹脂と蛍光体を含んでいてよい。蛍光部材を構成する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。例えばシリコーン樹脂の屈折率は1.35以上1.55以下であってよく、より好ましくは1.38以上1.43以下の範囲であって良い。シリコーン樹脂の屈折率は、これらの範囲であれば透光性に優れており、蛍光部材を構成する樹脂として好適に用いることができる。ここでシリコーン樹脂の屈折率は硬化後の屈折率であり、JIS K7142:2008に準拠して測定される。蛍光部材は、樹脂及び蛍光体に加えて、光拡散材をさらに含んでいてもよい。光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。光拡散材としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を挙げることができる。
発光素子は、可視光の短波長領域である380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する。発光素子は、フッ化物蛍光体を励起する励起光源であってよい。発光素子は、380nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することが好ましく、410nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがより好ましく、430nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがさらに好ましい。励起光源としての発光素子には、半導体発光素子を用いることが好ましい。励起光源に半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。半導体発光素子としては、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることができる。発光素子の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、例えば、30nm以下であることが好ましい。
発光装置は、フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体を含んで構成される。発光装置に含まれるフッ化物蛍光体の詳細については既述の通りである。フッ化物蛍光体は、例えば、励起光源を覆う蛍光部材に含有される。励起光源がフッ化物蛍光体を含有する蛍光部材で覆われた発光装置は、励起光源から発せられた光の一部がフッ化物蛍光体に吸収されて、赤色光として放射される。380nm以上485nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する励起光源を用いることで、放射される光をより有効に利用することができ、発光装置から出射される光の損失を少なくすることができ、高効率の発光装置を提供することができる。
発光装置は、フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体に加えて、フッ化物蛍光体以外の蛍光体を含む第二蛍光体をさらに含むことが好ましい。フッ化物蛍光体以外の蛍光体は、光源からの光を吸収し、フッ化物蛍光体とは異なる波長の光に波長変換するものであればよい。第二蛍光体は、例えば、第一蛍光体と同様に蛍光部材に含有させることができる。
第二蛍光体は、495nm以上590nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有していてよく、好ましくはβサイアロン蛍光体、ハロシリケート蛍光体、シリケート蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体、ペロブスカイト系発光材料及び窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。βサイアロン蛍光体は、例えば下記式(IIa)で表される組成を有していてよい。ハロシリケート蛍光体は、例えば下記式(IIb)で表される組成を有していてよい。シリケート蛍光体は、例えば下記式(IIc)で表される組成を有していてよい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、下記式(IId)で表される組成を有していてよい。ペロブスカイト系発光材料は、例えば下記式(IIe)で表される組成を有していてよい。窒化物蛍光体は、例えば下記式(IIf)、(IIg)又は(IIh)で表される組成を有していてよい。蛍光部材が、フッ化物蛍光体以外の第二蛍光体として、βサイアロン蛍光体又はペロブスカイト系発光材料を含むことにより、発光装置を例えばバックライト用光源として使用する場合に、色再現性の範囲がより広い発光装置とすることができる。蛍光部材が、フッ化物蛍光体以外の第二蛍光体として、ハロシリケート蛍光体、シリケート蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体又は窒化物蛍光体を含むことにより、発光装置を例えば照明用光源として使用する場合に、演色性がより高い、又は発光効率がより高い発光装置とすることができる。
Si6-tAl8-t:Eu (IIa)
(式(IIa)中、tは、0<t≦4.2を満たす数である。)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (IIb)
(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu (IIc)
(Y,Lu,Gd,Tb)(Al,Ga)12:Ce (IId)
CsPb(F,Cl,Br,I) (IIe)
(La,Y,Gd)Si11:Ce (IIf)
(Sr,Ca)LiAl:Eu (IIg)
(Ca,Sr)AlSiN:Eu (IIh)
本明細書において、蛍光体又は発光材料の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
第二蛍光体の平均粒径は、例えば0.1μm以上7μm以下であってよく、好ましくは0.2μm以上、又は0.5μm以上であってよい。また、平均粒径は、好ましくは5μm以下、又は3μm以下であってよい。第二蛍光体の平均粒径はFSSS法によって測定される。蛍光部材は第二蛍光体を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
蛍光部材は、第一蛍光体に加えて、量子ドットの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。量子ドットは、光源からの光を吸収し、第一蛍光体とは異なる波長の光に波長変換するものであってもよいし、同程度の波長の光に波長変換するものでもよい。量子ドットとしては、(Cs,FA,MA)(Pb,Sn)(Cl,Br,I)(ここで、FAはフォルムアミジニウム、MAはメチルアンモニウムを意味する)等の組成を有するペロブスカイト構造を有する量子ドット、(Ag,Cu,Au)(In,Ga)(S,Se,Te)等の組成を有するカルコパイライト構造を有する量子ドット、(Cd,Zn)(Se,S)等の半導体量子ドット、InP系半導体量子ドット等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。ここで、量子ドットの組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素又はカチオンは、これらの複数の元素又はカチオンのうち少なくとも1種を組成中に含有することを意味する。
本開示に係る発明は以下の態様を包含する。
[1] フッ化物粒子と、前記フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆う酸化物と、を含むフッ化物蛍光体であり、前記酸化物は、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記酸化物の含有率が、前記フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下であり、前記フッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物蛍光体。
[2] 前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びGeの少なくとも一方を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下である[1]に記載のフッ化物蛍光体。
[3] 前記フッ化物粒子は、下記式(1)で表される組成を有する[1]又は[2]に記載のフッ化物蛍光体。
[M 1-bMn] (1)
(式(1)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M 1-bMn]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。)
[4] 前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びAlを含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下である[1]に記載のフッ化物蛍光体。
[5] 前記フッ化物粒子は、下記式(2)で表される組成を有する[1]又は[4]に記載のフッ化物蛍光体。
[M 1-eMn] (2)
(式(2)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M 1-eMn]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。)
[6] 前記酸化物は、ケイ素を含む[1]から[5]のいずれかに記載のフッ化物蛍光体。
[7] 前記酸化物の平均厚みが、0.1μm以上1.8μm以下である[1]から[6]のいずれかに記載のフッ化物蛍光体。
[8] 蛍光X線元素分析法において、前記フッ化物粒子におけるF元素のKα線のピーク強度に対する、前記フッ化物蛍光体におけるF元素のKα線のピーク強度の比率が80%以下である[1]から[7]のいずれかに記載のフッ化物蛍光体。
[9] 前記フッ化物粒子は、その表面に、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素を含む希土類リン酸塩が配置され、前記酸化物は前記希土類リン酸塩を介して前記フッ化物粒子を被覆する[1]から[8]のいずれかに記載のフッ化物蛍光体。
[10] 前記希土類リン酸塩は、ランタンを含む[9]に記載のフッ化物蛍光体。
[11] 前記希土類リン酸塩の含有率は、前記希土類元素の含有率として0.1質量%以上20質量%以下である[9]又は[10]に記載のフッ化物蛍光体。
[12] フッ化物蛍光体の製造方法であって、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物粒子を準備することと、
準備した前記フッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、前記金属アルコキシドに由来する酸化物が前記フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下の量で、前記フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆うことと、を含む製造方法。
[13] フッ化物蛍光体の製造方法であって、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物粒子を準備することと、
液媒体中で、準備した前記フッ化物粒子と、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を含む希土類イオンと、リン酸イオンと、を接触させて希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子を得ることと、
前記希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、前記金属アルコキシドに由来する酸化物が前記フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下の量で、前記希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆うことと、を含む製造方法。
[14] 準備した前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びGeの少なくとも一方を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下である[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15] 準備した前記フッ化物粒子は、下記式(1)で表される組成を有する[14]に記載の製造方法。
[M 1-bMn] (1)
(式(1)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M 1-bMn]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。)
[16] 準備した前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びAlを含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下である[12]又は[13]に記載の製造方法。
[17] 準備した前記フッ化物粒子は、下記式(2)で表される組成を有する[16]に記載の製造方法。
[M 1-eMn] (2)
(式(2)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M 1-eMn]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。)
[18] 前記金属アルコキシドに由来する酸化物でフッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆った後、シランカップリング処理を行うことを更に含む[12]から[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19] 前記液媒体中で接触させる前記金属アルコキシドは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトライソプロポキシシランからなる群から選択される少なくとも1種を含む[12]から[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20] [1]から[11]のいずれかに記載のフッ化物蛍光体と樹脂とを含む蛍光部材と、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を備える発光装置。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例1
上述の方法により、Mn含有率が1.5質量%であり、KSiF:Mnで表される第1の理論組成(以下、「KSF」と略記することがある。)を有する蛍光体であるフッ化物粒子A1を得た。
製造例2
上述の方法により、Mn含有率が1.5質量%であり、KSi0.99Al0.015.99:Mnで表される第2の理論組成(以下、「KSAF」と略記することがある。)を有する蛍光体であるフッ化物粒子A2を得た。
製造例3
リン酸のナトリウム塩水溶液(リン酸濃度:2.4質量%)150.0gに、35質量%の過酸化水素水15.0gと、純水735.0gを加え、(攪拌羽を用いて回転数400rpmで攪拌し、)室温で撹拌しながら、製造例1で製造したフッ化物粒子A1を300g投入して蛍光体スラリーを作製した。
次に蛍光体スラリーに、硝酸ランタン二水和物23.4gを純水156.6gに溶解した硝酸ランタン水溶液(ランタン濃度:5.0質量%)を、約1分間かけて滴下した。滴下終了から約30分間後に撹拌を停止して静置し、上澄みを除去した後に、過酸化水素が1質量%含まれた洗浄水で充分に洗浄した。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、90℃で10時間乾燥することで、表面にリン酸ランタンが配置された製造例3のフッ化物粒子A3を作製した。
製造例4
製造例2で製造したフッ化物粒子A2を用いたこと以外は製造例3と同様の方法で、表面にリン酸ランタンが配置された製造例4のフッ化物粒子A4を作製した。
製造例5
上述の方法により、Mn含有率が1.0質量%であり、KSi0.99Al0.015.99:Mnで表される第2の理論組成を有する蛍光体であるフッ化物粒子A5を得た。
製造例6
製造例5で製造したフッ化物粒子A5を用いたこと以外は製造例3と同様の方法で、表面にリン酸ランタンが配置された製造例6のフッ化物粒子A6を作製した。
製造例7
上述の方法により、Mn含有率が1.2質量%であり、KSi0.99Al0.015.99:Mnで表される第2の理論組成を有する蛍光体を得た後、製造例3と同様の方法で表面にリン酸ランタンが配置された製造例7のフッ化物粒子A7を作製した。
実施例1
製造例1で製造したフッ化物粒子A1を300g秤量し、エタノールを540mlと、16.5質量%のアンモニアを含むアンモニア水を130.2mlと、純水60mlとを混合した溶液に投入し、攪拌羽を用いて回転数400rpmで攪拌しながら、液温を常温に保ち反応母液とした。テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC)を32.1g秤量し、攪拌中の反応母液に約3時間で滴下した。その後、1時間攪拌を継続し、さらに35質量%の過酸化水素(H)を10g投入した後に攪拌を停止した。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、105℃で10時間乾燥することで、二酸化ケイ素(SiO)で覆われた実施例1のフッ化物蛍光体E1を作製した。なお、テトラエトキシシランの滴下量は、フッ化物粒子に対して二酸化ケイ素換算で約3質量%であった。
実施例2
テトラエトキシシランの滴下量を107.1gとした以外は実施例1と同様の方法で実施例2のフッ化物蛍光体E2を作製した。テトラエトキシシランの滴下量は、フッ化物粒子に対して二酸化ケイ素換算で約10質量%であった。
実施例2で得られたフッ化物蛍光体を走査電子顕微鏡で観察した反射電子像を図2に示す。図2において比較的多く観察される灰色部分は二酸化ケイ素の膜に対応し、その間に網の目状に見られる、やや濃い灰色部分はフッ化物粒子の表面の一部が露出していることに対応する。図2に示すように、フッ化物蛍光体では、フッ化物粒子の表面の大部分が二酸化ケイ素に覆われていている。フッ化物粒子を覆う二酸化ケイ素の形態は粒子ではなく、連続した膜状になっていることが分かる。二酸化ケイ素がフッ化物粒子を膜状に覆っていることで、フッ化物粒子と樹脂との直接の接触が効果的に抑制されると考えられる。また、二酸化ケイ素の膜の一部には亀裂(やや濃い灰色部分)が存在している。これらの亀裂が少ない方がより効果的にフッ化物粒子と樹脂との直接接触を抑制できると考えられる。
実施例3
テトラエトキシシランの滴下量を214.2gとした以外は実施例1と同様の方法で実施例3のフッ化物蛍光体E3を作製した。テトラエトキシシランの滴下量は、フッ化物粒子に対して二酸化ケイ素換算で約20質量%であった。
実施例4
製造例2で製造したフッ化物粒子A2を用い、攪拌数を500rpmとし、テトラエトキシシランの滴下量を107.1gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で実施例4のフッ化物蛍光体E4を作製した。
実施例5
製造例3で製造したフッ化物粒子A3を100g秤量し、エタノールを180ml、16.5質量%のアンモニアを含むアンモニア水を43.4ml、純水を20ml、攪拌羽を用いた回転数を300rpm、テトラエトキシシランを35.7gとし、6時間で滴下した以外は、実施例1と同様の方法で実施例5のフッ化物蛍光体E5を作製した。
実施例6
製造例3で製造したフッ化物粒子A3を100g秤量し、エタノール139mlと、純水を35.7mlと、を混合した溶液に投入し、攪拌羽を用いて回転数300rpmで攪拌しながら、液温を常温に保ち反応母液とした。テトラエトキシシランを35.7g秤量しA液とし、16.5質量%のアンモニアを含むアンモニア水を42.9g秤量しB液とした。攪拌中の反応母液にA液及びB液を約3時間で滴下後、1時間攪拌し、さらに35質量%の過酸化水素(H)を10g投入した後に攪拌を停止した。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、105℃で10時間乾燥することで実施例6のフッ化物蛍光体E6を作製した。
実施例7
まず、実施例6で作製したフッ化物蛍光体E6を50g秤量した。次に、エタノール84.9mlと、純水を5.8mlと、シランカップリング剤としてデシルトリメトキシシラン((CHO)Si(CHCH))と、を混合し、30分間攪拌後、20時間以上静置した。この溶液に実施例6で作製したフッ化物蛍光体E6を投入し、200rpmで1時間攪拌後、攪拌を停止した。得られた沈殿物を固液分離後、105℃で10時間乾燥することでシランカップリング処理を行って、フッ化物蛍光体E7を得た。
実施例8
製造例4で製造したフッ化物粒子A4を用いたこと以外は実施例4と同様の方法で実施例8のフッ化物蛍光体E8を作製した。
実施例9
実施例8で作製したフッ化物蛍光体E8を用いたこと以外は実施例7と同様の方法で実施例9のフッ化物蛍光体E9を作製した。
実施例10
製造例5で製造したフッ化物粒子A5を用い、攪拌数を350rpmとし、テトラエトキシシランの滴下時間を6時間としたこと以外は実施例2と同様の方法で実施例10のフッ化物蛍光体E10を作製した。
実施例11
製造例6で製造したフッ化物粒子A6を用いたこと以外は実施例10と同様の方法で実施例11のフッ化物蛍光体E11を作製した。
実施例12
実施例11で作製したフッ化物蛍光体E11を用いたこと以外は実施例7と同様の方法で実施例12のフッ化物蛍光体E12を作製した。
実施例13
テトラエトキシシランの滴下量を64.3gとした以外は実施例10と同様の方法で実施例13のフッ化物蛍光体E13を得た。
実施例14
テトラエトキシシランの滴下量を32.2gとした以外は実施例10と同様の方法で実施例14のフッ化物蛍光体E14を得た。
実施例15
製造例7で製造したフッ化物粒子A7を用いたこと以外は実施例13と同様の方法でフッ化物蛍光体を得た。得られた蛍光体に、シランカップリング剤としてヘキシルトリメトキシシランを用いたこと以外は実施例7と同様の方法でシランカップリング処理を行って、実施例15のフッ化物蛍光体E15を得た。
実施例16
シランカップリング剤としてビニルトリメトキシシランを用いた以外は実施例15と同様の方法で実施例16のフッ化物蛍光体E16を得た。
実施例17
シランカップリング剤として3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いた以外は実施例15と同様の方法で実施例17のフッ化物蛍光体E17を得た。
実施例18
シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例15と同様の方法で実施例18のフッ化物蛍光体E18を得た。
参考例1
製造例1で得られたフッ化物粒子A1を参考例1のフッ化物蛍光体C1とした。
参考例2
製造例2で得られたフッ化物粒子A2を参考例2のフッ化物蛍光体C2とした。
参考例3
製造例3で得られたフッ化物粒子A3を参考例3のフッ化物蛍光体C3とした
参考例4
製造例4で得られたフッ化物粒子A4を参考例4のフッ化物蛍光体C4とした
参考例5
製造例6で得られたフッ化物粒子A6を参考例5のフッ化物蛍光体C5とした。
参考例6
製造例7で得られたフッ化物粒子A7を参考例6のフッ化物蛍光体C6とした。
評価
(1)二酸化ケイ素量
得られた各フッ化物蛍光体について、ICP発光分光分析による組成分析を行い、実施例で得られた二酸化ケイ素で覆われたフッ化物蛍光体の分析Si濃度と、参考例のフッ化物蛍光体の分析Si濃度の差分から、フッ化物粒子を覆っている二酸化ケイ素量を算出し、フッ化物蛍光体に対する二酸化ケイ素の含有率(SiO分析値)を求めた。結果を表1、表2、表3及び表4に示す。
(2)蛍光X線元素分析:XRF評価
上記で得られた各フッ化物蛍光体について、XRF装置(製品名:ZSX PrimusII、株式会社リガク製)を用いて、蛍光X線元素分析法(XRF:X-Ray Fluorescence spectrometry)によりF元素のKα線のピーク強度を測定した。実施例1から3のフッ化物蛍光体のピーク強度比を、参考例1のフッ化物蛍光体のピーク強度を100として相対値として算出した。同様に実施例4のフッ化物蛍光体のピーク強度比を参考例2のフッ化物粒子のピーク強度100とした相対値として算出した。得られたピーク強度比から各実施例のフッ化物蛍光体における二酸化ケイ素膜の平均厚みを、CXRO(The Center for X-Ray Optics)のデータベースを利用して算出した。結果を表1に示す。
(3)走査電子顕微鏡観察
得られた実施例6及び8のフッ化物蛍光体について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて画像観察を行った。SEM画像を図4及び6に示す。さらに実施例6及び8のフッ化物蛍光体について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、任意断面を観察し、画像解析することで二酸化ケイ素膜の平均厚みを計測した。具体的には、複数のフッ化物蛍光体粒子を樹脂に埋め込み、イオンミリング加工により断面試料を作製し、走査電子顕微鏡によるフッ化物蛍光体粒子の断面観察が可能な状態とした。断面SEM画像を図3及び5に示す。
得られた断面SEM画像について、1つのフッ化物蛍光体粒子当たり5ヵ所の二酸化ケイ素膜の厚みを計測し、5粒子分の合計25ヵ所の厚みの算術平均として実測平均厚みを算出した。ただし、ここでの二酸化ケイ素膜の厚みとは、厚み方向に対して斜めに膜を切っている部分も含めて、SEM画像上で見える膜の厚みとした。結果を表2に示す。
(4)トータルカーボン(TC)
得られた実施例7、9、12及び15から18並びに参考例3及び4のフッ化物蛍光体について、全有機体炭素計(製品名:TOC-L、株式会社島津製作所製)を用いてトータルカーボン(TC)の分析を行った。結果を表2、表4及び表5に示す。
(5)ランタン含有率
得られた実施例5から9及び11から18並びに参考例3から6のフッ化物蛍光体について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)によるランタン含有率の分析を行い、フッ化物粒子に対する含有率(La分析値)を求めた。結果を表2及び表4に示す。
(6)マンガン含有量
得られた実施例10から18並びに参考例1、3、5及び6のフッ化物蛍光体について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)によるマンガン含有率の分析を行い、フッ化物蛍光体に対する含有率(Mn分析値)を求めた。結果を表3及び表4に示す。
(7)樹脂組成物の質量変化評価
樹脂とフッ化物蛍光体を含む樹脂組成物の質量変化に対するフッ化物蛍光体の影響について次の様にして評価した。シリコーン樹脂に、シリコーン樹脂に対して33質量%のフッ化物蛍光体を混合して樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物の約1gをアルミ箔上に秤量し、硬化させた後、硬化後の樹脂組成物の質量とアルミ箔の質量との差分を算出し、初期値とした。アルミ箔上で硬化させた樹脂組成物を200℃に維持した小型オーブン(製品名:恒温恒湿器LH-114、エスペック社製)に静置し、100時間後、300時間後、500時間後、1000時間後における質量をそれぞれ測定した。初期値を100%とした時の各時間経過後の樹脂組成物の質量維持率(%)を算出した。質量維持率が高いほど、フッ化物蛍光体と樹脂との反応が抑制されていることを示しており、樹脂組成物の耐久性に優れることを意味する。なお、評価には購入可能なシリコーン樹脂から選択したシリコーン樹脂を用いた。具体的には、実施例1から9及び参考例1から4については、信越化学工業株式会社製ジメチルシリコーン樹脂(製品名KER-2936;屈折率1.41、以下「ジメチルシリコーン樹脂1」と呼ぶ。)を用いて評価を行った。また、実施例10、11及び参考例1については、東レ・ダウコーニング株式会社製ジメチルシリコーン樹脂(商品名OE-6351;屈折率1.41、以下「ジメチルシリコーン樹脂2」と呼ぶ。)、東レ・ダウコーニング株式会社製フェニルシリコーン樹脂(商品名OE-6630;屈折率1.53、以下「フェニルシリコーン樹脂1」と呼ぶ。)及び上記フェニルシリコーン樹脂1とは屈折率が異なるフェニルシリコーン樹脂(屈折率1.50、以下「フェニルシリコーン樹脂2」と呼ぶ。)を用いた評価も併せて実施した。
(8)耐久性評価
上記で得られた各フッ化物蛍光体の耐久性について次の様にして評価した。各フッ化物蛍光体について、量子効率測定装置(製品名:QE-2000、大塚電子株式会社製)を用いて、450nmの励起光に対する内部量子効率を測定し、初期特性とした。次に、フッ化物粒子あるいはフッ化物蛍光体をガラスシャーレに入れ、温度85℃、相対湿度85%に維持した小型高温高湿槽(エスペック社製)中で100時間静置した。その後、同様の方法で各フッ化物蛍光体の内部量子効率を測定し、初期特性を100%とした時の量子効率維持率(%)を算出した。量子効率維持率が高いほど、耐久性に優れていることを意味する。結果を表1から表5に示す。
発光装置の製造例1
実施例1から9及び参考例1から4のフッ化物蛍光体を第一蛍光体として使用した。第二蛍光体としてSi5.81Al0.190.197.81:Euで表される組成を有し、540nm付近に発光ピーク波長を有するβサイアロン蛍光体を使用した。CIE1931表色系における色度座標でxが0.280、yが0.270付近となるように第一蛍光体71及び第二蛍光体72を配合した蛍光体70とシリコーン樹脂とを混合して樹脂組成物を得た。次に、凹部を有する成形体40を準備し、凹部の底面に発光ピーク波長が451nmである、窒化ガリウム系化合物半導体を材料とする発光素子10を第一のリード20に配置した後、発光素子10の電極と第一のリード20、第二のリード30とをそれぞれワイヤ60で接続した。さらに成形体40の凹部に発光素子10を覆うようにシリンジを用いて樹脂組成物を注入し、樹脂組成物を硬化させて蛍光部材を形成して、発光装置1を製造した。
発光装置の製造例2
実施例10から18並びに参考例3、5及び6のフッ化物蛍光体を第一蛍光体として使用した。第二蛍光体としてLuAl11:Ceで表される組成を有し、530nm付近に発光ピークを有する希土類アルミン酸塩蛍光体と、YAl11:Ceで表される組成を有し、535nm付近に発光ピークを有する希土類アルミン酸塩蛍光体と、(Ca,Sr)AlSiN:Euで表される組成を有し、630nm付近に発光ピーク波長を有する窒化物蛍光体を組み合わせて使用した。CIE1931表色系における色度座標でxが0.459、yが0.411付近となるように第一蛍光体71及び第二蛍光体72を配合した蛍光体70とシリコーン樹脂とを混合して樹脂組成物を得たこと以外は発光装置の製造例1と同様にして発光装置2を製造した。
耐久性評価1
実施例1から9及び15から18並びに参考例1から4及び6にて得られた各フッ化物蛍光体を用いた発光装置1又は2について、温度85℃、相対湿度85%の環境試験機内で500時間保管して耐久性試験1を行った。耐久性試験1前の発光装置1又は2の光束を100%とした時の、耐久性試験1後の発光装置1又は2の光束維持率1(%)を求めた。光束維持率1が高いほど高熱高湿に対する耐久性に優れていることを示す。結果を表1、表2及び表5に示す。
耐久性評価2
実施例10から18並びに参考例3、5及び6にて得られた各フッ化物蛍光体を用いた発光装置2について、加湿していない温度85℃の環境試験機内にて、電流値150mAで1000時間駆動して耐久性試験2を行った。耐久性試験2前の発光装置2の光束を100%とした時の、耐久性試験2後の発光装置2の光束維持率2(%)を求めた。光束維持率2が高いほど高熱に対する耐久性に優れていることを示す。結果を表4及び表5に示す。
Figure 2022184763000002
Figure 2022184763000003
Figure 2022184763000004
Figure 2022184763000005
Figure 2022184763000006
実施例1から4のフッ化物蛍光体のSiO分析値は、SiO仕込み量が増えると増加していた。実施例のフッ化物蛍光体におけるXRFによるF元素のKα線のピーク強度比は、参考例1及び2のフッ化物蛍光体のピーク強度に対し、いずれも80%以下に減少していた。このことから、F元素のKα線がSiO膜で吸収されていると考えられ、SiOはフッ化物粒子の表面を膜として覆っていると考えられる。また各吸収率から膜厚は0.13μm以上であると算出された。
実施例1から3のフッ化物蛍光体は参考例1のフッ化物蛍光体と比べて、量子効率維持率が高かった。また、参考例1のフッ化物蛍光体を含む樹脂組成物に対して、実施例1から3のフッ化物蛍光体を含む樹脂組成物では質量維持率が高くなり、樹脂組成物の耐久性に優れていた。樹脂組成物の耐久性については、SiO膜の平均厚みが薄い実施例1と比較して、平均厚みが厚い実施例2及び3では500時間以降での樹脂組成物の質量維持率がさらに向上しており、樹脂組成物の耐久性がより向上していることが分かる。フッ化物粒子の組成を変えた参考例2に対して、同一組成でSiO膜を被覆した実施例4のフッ化物蛍光体は耐久性評価での量子効率維持率が高くなり、樹脂組成物の質量維持率も高くなっている。すなわち、KSAFを組成に有するフッ化物粒子でも同様の効果が得られた。
参考例1のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1に対し、実施例1から3のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1では光束維持率1が高くなり、耐久性に優れていた。このことから、発光装置1においてもSiO膜を被覆したフッ化物蛍光体を用いた方が高い耐久性を示すことが分かる。参考例2のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1に対し、実施例4のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1でも耐久性の向上がみられ、KSAFを組成に有するフッ化物蛍光体でも同様の効果が得られた。実施例2のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1と実施例4のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1とを比較すると、KSAFを組成に有するフッ化物蛍光体を用いた実施例4のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1のほうが、KSFを組成に有するフッ化物蛍光体を用いた実施例2のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1よりも光束維持率1が1%高かった。
実施例6で得られたフッ化物蛍光体を走査電子顕微鏡で観察したSEM画像を図4に示す。図4において、フッ化物蛍光体の表面はなめらかであり、フッ化物粒子を覆う二酸化ケイ素の形態は粒子ではなく、連続した膜状になっていることが分かる。また、実施例8で得られたフッ化物蛍光体を走査電子顕微鏡で観察したSEM画像を図6に示す。図6から、フッ化物粒子を覆う二酸化ケイ素の形態は粒子ではなく、KSAFを組成に有するフッ化物粒子でも連続した膜状になっていることが分かる。
実施例6で得られたフッ化物蛍光体の断面を走査電子顕微鏡で観察した画像を図3に示す。図3において灰色部分はフッ化物粒子2に対応し、白色部がリン酸ランタン4に対応し、濃い灰色部分が二酸化ケイ素6に対応する。このことから、フッ化物蛍光体においては、フッ化物粒子2にリン酸ランタン4が付着しており、さらに二酸化ケイ素6で覆われていることが分かる。また、実施例8で得られたフッ化物蛍光体の断面を走査電子顕微鏡で観察した画像を図5に示す。図5において灰色部分はフッ化物粒子2に対応し、白色部がリン酸ランタン4に対応し、濃い灰色部分が二酸化ケイ素6に対応する。このことから、フッ化物粒子2にリン酸ランタン4が付着しており、さらに二酸化ケイ素6で覆われていることが分かる。
実施例5から11のフッ化物蛍光体のSiO分析値は、実施例2及び4と同程度となった。図3及び5に示す実施例6及び8のフッ化物蛍光体の断面SEM画像を画像解析して計測したSiO膜の実測平均厚みはそれぞれ0.50μm及び0.44μmであり、これは実施例2及び4のXRFから算出した平均膜厚と概ね一致する。このことから、リン酸ランタンが付着したフッ化物蛍光体の表面も同程度の厚みを有するSiO膜で覆われていることが確認された。従って、反応時の滴下方法、滴下時間、攪拌数を変えても同様にSiOが膜としてフッ化物粒子を覆っていると考えられる。
実施例7及び9のフッ化物蛍光体のTC分析値は、参考例3及び4のフッ化物蛍光体よりも増加しており炭素の存在が確認された。この炭素はシランカップリング剤に由来すると考えられることから、SiOで覆われたフッ化物蛍光体をシランカップリング処理することで、フッ化物蛍光体の表面にシランカップリング剤に由来する成分が付着すると考えられる。
実施例5から7のフッ化物蛍光体は、参考例3のフッ化物蛍光体と比べて、量子効率維持率が高かった。また、参考例3のフッ化物蛍光体に対して実施例5から7のフッ化物蛍光体では、樹脂組成物の質量維持率が高くなり、樹脂組成物の耐久性に優れていた。耐久性については実施例6と比較して、シランカップリング処理を行った実施例7は量子効率維持率がさらに高くなり、耐久性がより向上していることが分かる。シランカップリング処理によりSiO膜の表面が疎水化されたためと考えられる。参考例4の第2組成(KSAF)を有するフッ化物粒子にリン酸ランタンが付着したフッ化物蛍光体に対して、同一組成(KSAF)を有し、SiO膜で覆われた実施例8のフッ化物蛍光体では、耐久性評価での量子効率維持率と、樹脂組成物の質量維持率が共に高くなり、フッ化物蛍光体及び樹脂組成物の耐久性に優れていた。耐久性については実施例8と比較して、シランカップリング処理を行った実施例9は量子効率維持率がさらに高くなり、耐久性がより向上していることが分かる。第2組成(KSAF)を有するフッ化物粒子においては、リン酸ランタンが付着していない実施例4よりもリン酸ランタンが付着している実施例8のほうが、量子効率維持率が高くなり、リン酸ランタンが付着した蛍光体の表面をSiOで覆うことで、より高い効果が得られた。すなわち、リン酸ランタンが付着したフッ化物蛍光体においても、SiO膜で覆うことにより耐久性の向上効果が得られた。
参考例3のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1に対し、実施例5から7のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1では、光束維持率1が高くなり、耐久性に優れていた。シランカップリング処理を行った実施例7のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1の光束維持率1はさらに向上しており、耐久性がより向上していることが分かる。フッ化物蛍光体の量子効率維持率と発光装置1の光束維持率1に相関がみられ、フッ化物蛍光体をSiO膜で覆うことで耐久性が向上し、シランカップリング処理によりさらに耐久性の向上効果が得られた。参考例4のフッ化物蛍光体を用いた発光装置1に対し、実施例8及び9のフッ化物粒子を用いた発光装置1でも耐久性の向上がみられ、リン酸ランタンが付着している第2組成(KSAF)を有するフッ化物粒子でも、SiO膜で覆うことで耐久性の向上効果が得られた。
発光装置1の断面観察により蛍光体の沈降状態を確認すると、シランカップリング処理を行った実施例7の発光装置で蛍光体が最も沈降していた。シランカップリング処理により樹脂との親和性が向上し、蛍光体がより沈降し易くなったものと考えられる。
実施例10及び11のフッ化物蛍光体は参考例1のフッ化物粒子と比べて量子効率維持率が高かった。また参考例1のフッ化物粒子に対し実施例10及び11のフッ化物蛍光体では、樹脂組成物の質量維持率が高くなり、樹脂組成物の耐久性が優れていた。フェニルシリコーン樹脂1及び2では、参考例1のフッ化物粒子でも質量維持率が高くなるが、実施例10及び11は、質量維持率がさらに高かった。ジメチルシリコーン樹脂1及び2を用いた場合は、参考例1のフッ化物粒子の質量維持率は大きく低下するが、実施例10及び11では、質量維持率が高い。特に実施例11の質量維持率が高くなっており、リン酸ランタンの付着した蛍光体の表面をSiO膜で覆うことでより高い効果が得られた。いずれの樹脂においても、参考例1のKSFを組成に有するフッ化物粒子よりも、KSAFを組成に有するフッ化物粒子をSiO膜で覆った実施例10や、リン酸ランタンが付着した蛍光体の表面をSiO膜で覆った実施例11のほうが樹脂組成物の耐久性が優れていた。
実施例11から14のフッ化物蛍光体は、参考例5のフッ化物蛍光体と比べて量子効率維持率が高かった。樹脂組成物の質量維持率も高くなり、樹脂組成物の耐久性に優れていた。実施例10から14のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2は、参考例5のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2よりも、光束維持率2が高くなり、耐久性に優れていた。実施例11及び12のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2は、リン酸ランタンの付着した蛍光体の表面をSiOで覆ったフッ化物蛍光体を用いており、これらのほうが実施例10のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2よりも耐久性に優れていた。これは、リン酸ランタンにより、シリカコートの接着性が改善し、コート層の剥離などが抑制されているためと考えられる。さらに、実施例12のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2は、シランカップリング処理で樹脂との親和性が向上することで、蛍光体が沈降し易くなり、樹脂との密着性も改善されたことで、より高い効果が得られるものと考えられる。SiO濃度を減らした実施例13及び14のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2は、実施例10のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2よりも耐久性に優れていた。この理由として、SiO濃度を減らすことで、SiO膜の亀裂が抑制され、亀裂の箇所での外部環境との接触が抑制されたためと考えられる。参考例3のリン酸ランタンが付着したKSF組成を有するフッ化物粒子を用いた発光装置2よりも、実施例13及び14の第2組成(KSAF)を有するフッ化物粒子をSiO膜で覆ったフッ化物蛍光体を用いた発光装置2、並びに実施例11及び12のリン酸ランタンが付着した第2組成(KSAF)を有するフッ化物粒子をSiO膜で覆ったフッ化物蛍光体を用いた発光装置2の方が耐久性に優れていた。
実施例15から18のフッ化物蛍光体は、参考例6のフッ化物蛍光体と比べて量子効率維持率が高かった。樹脂組成物の質量維持率も高くなり、粉体としての耐久性が優れており、シランカップリング処理することで、樹脂との親和性が向上していると考えられる。耐久性評価1では、参考例6のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2よりも、実施例15、16および18のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2のほうが、光束維持率1が高かった。さらに、耐久性評価2では、参考例6のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2よりも、実施例15から18のフッ化物蛍光体を用いた発光装置2のほうが、光束維持率2が高かった。この要因として、例えば以下のように考えることができる。シランカップリング剤は、メトキシ基あるいはエトキシ基が加水分解し、蛍光体表面の-OH基と水素結合し、加熱することで化学結合する。そのため、表面に-OH基が少ない第1組成(KSF)や第2組成(KSAF)のフッ化物粒子には、シランカップリング剤が結合し難い。一方、フッ化物粒子をSiOで覆ったフッ化物蛍光体の表面には、-OH基が多数存在すると考えられ、シランカップリング剤が結合し易くなり、樹脂との親和性が向上することで、上述したような効果が得られたと考えられる。特に実施例15から18のフッ化物蛍光体は、リン酸ランタンの付着した蛍光体の表面をSiOで覆った第2組成を有する。このリン酸ランタンによりSiO膜の接着性が改善し、コート層の亀裂や剥離などが抑制されることにより、シランカップリング剤が均一に結合し易くなり樹脂との親和性が向上したと考えられる。
本開示に係るフッ化物蛍光体は、特に発光ダイオードを励起光源とする発光装置に用いて、例えば、照明用光源、LEDディスプレイ又は液晶バックライト用途等の光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ、各種インジケータ、及び小型ストロボ等に好適に利用できる。
2:フッ化物粒子、4:リン酸ランタン、6:二酸化ケイ素、10:発光素子、20:第一のリード、30:第二のリード、40:成形体、50:蛍光部材、60:ワイヤ、70:蛍光体、100:発光装置。

Claims (20)

  1. フッ化物粒子と、前記フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆う酸化物と、を含むフッ化物蛍光体であり、
    前記酸化物は、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記酸化物の含有率が、前記フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下であり、
    前記フッ化物粒子は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物蛍光体。
  2. 前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びGeの少なくとも一方を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下である請求項1に記載のフッ化物蛍光体。
  3. 前記フッ化物粒子は、下記式(1)で表される組成を有する請求項1に記載のフッ化物蛍光体。
    [M 1-bMn] (1)
    (式(1)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M 1-bMn]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。)
  4. 前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びAlを含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下である請求項1に記載のフッ化物蛍光体。
  5. 前記フッ化物粒子は、下記式(2)で表される組成を有する請求項1に記載のフッ化物蛍光体。
    [M 1-eMn] (2)
    (式(2)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M 1-eMn]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。)
  6. 前記酸化物は、ケイ素を含む請求項1から5のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  7. 前記酸化物の平均厚みが、0.1μm以上1.8μm以下である請求項1から5のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  8. 蛍光X線元素分析法において、前記フッ化物粒子におけるF元素のKα線のピーク強度に対する、前記フッ化物蛍光体におけるF元素のKα線のピーク強度の比率が80%以下である請求項1から5のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  9. 前記フッ化物粒子は、その表面に、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素を含む希土類リン酸塩が配置され、前記酸化物は前記希土類リン酸塩を介して前記フッ化物粒子を被覆する請求項1から5のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  10. 前記希土類リン酸塩は、ランタンを含む請求項9に記載のフッ化物蛍光体。
  11. 前記希土類リン酸塩の含有率は、前記希土類元素の含有率として0.1質量%以上20質量%以下である請求項9に記載のフッ化物蛍光体。
  12. フッ化物蛍光体の製造方法であって、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物粒子を準備することと、
    準備した前記フッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、前記金属アルコキシドに由来する酸化物が前記フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下の量で、前記フッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆うことと、を含む製造方法。
  13. フッ化物蛍光体の製造方法であって、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物粒子を準備することと、
    液媒体中で、準備した前記フッ化物粒子と、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を含む希土類イオンと、リン酸イオンと、を接触させて希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子を得ることと、
    前記希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子と、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、前記金属アルコキシドに由来する酸化物が前記フッ化物蛍光体に対して2質量%以上30質量%以下の量で、前記希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆うことと、を含む製造方法。
  14. 準備した前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びGeの少なくとも一方を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下である請求項12又は13に記載の製造方法。
  15. 準備した前記フッ化物粒子は、下記式(1)で表される組成を有する請求項14に記載の製造方法。
    [M 1-bMn] (1)
    (式(1)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M 1-bMn]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。)
  16. 準備した前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びAlを含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下である請求項12又は13に記載の製造方法。
  17. 準備した前記フッ化物粒子は、下記式(2)で表される組成を有する請求項16に記載の製造方法。
    [M 1-eMn] (2)
    (式(2)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Mは、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M 1-eMn]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。)
  18. 前記金属アルコキシドに由来する酸化物でフッ化物粒子の表面の少なくとも一部を覆った後、シランカップリング処理を行うことを更に含む請求項12又は13に記載の製造方法。
  19. 前記液媒体中で接触させる前記金属アルコキシドは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトライソプロポキシシランからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項12又は13に記載の製造方法。
  20. 請求項1から5のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体と樹脂とを含む蛍光部材と、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を備える発光装置。
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