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JP2022163089A - 建築用配管システム及び当該システムの施工方法 - Google Patents

建築用配管システム及び当該システムの施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】メカニカル形管継手を用いて配管要素同士を接続して編成される建築用配管システムにおいて、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる建築用配管システムを提供する。【解決手段】配管要素の少なくとも1つの管端に環状膨出部を一体的に形成する。更に、メカニカル形管継手と配管要素との接続部分において、当該接続部分を構成する配管要素の環状膨出部が形成された管端により、メカニカル形管継手の一部を構成する。配管要素を製造現場において製造し、建築用配管システムの施工現場へ移送して、複数の配管要素を施工現場においてメカニカル形管継手によって互いに接続して建築用配管システムを編成する。配管要素の製造後、施工現場への移送の前に、品質検査を行ってもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、建築用配管システム及び当該システムの施工方法に関する。より具体的には、本発明は、メカニカル形管継手を用いて配管要素同士を接続して編成される建築用配管システム及び当該システムの施工方法に関する。
生活用水及び冷暖房用熱媒体として冷水及び/又は温水等を供給及び/又は循環させる建築用配管システムは、例えばステンレス鋼を始めとする鉄等の金属からなる薄肉の配管要素を施工現場において接続することによって編成されることがある。このような施工現場における配管要素の接続作業においては、例えば作業の容易性及び安全性の確保等の観点から、火器等の使用を必要としないメカニカル形管継手が使用されている。メカニカル形管継手は、ステンレス協会によって定められる規格(SAS322)により、プレス式、拡管式、ナット式、転造ネジ式、差し込み式及びカップリング式等の種々の形式に分類される。それらのうちの多くの形式においては、施工現場において、作業者により、環状膨出部又は環状溝部等が配管要素の端部に形成され、管継手が組み立てられる際に配管要素が管継手に係止され、配管要素同士が気密又は液密に接続される。
上記のようなメカニカル形管継手によれば、例えば溶接作業及びネジ切り作業等の難度が高く危険な作業が不要となるので、施工現場における作業が容易化される。しかしながら、環状膨出部又は環状溝部等を各配管要素に形成する作業及び管継手を組み立てつつ配管要素同士を接続する作業が依然として必要であるため、更なる作業の容易化及び低コスト化が求められている。
そこで、当該技術分野においては、環状膨出部が一体的に形成され且つ様々な形状を有する金属製のメカニカル形管継手を多数用意し、配管要素としての直管を当該管継手の拡径部(ソケット部)に内挿して環状膨出部を変形させる(カシメ加工する)ことにより、配管要素同士を接続して配管システムを編成する施工方法が用いられている。このようなメカニカル形管継手の具体例としては、例えば特許文献1(特許第3436822号公報)に開示されている「プレス式管継手」を挙げることができる。このプレス式管継手においては、拡径部に形成された環状膨出部の内側(環状溝)に弾性材料からなる環状のシール部材(Oリング)が装着され、配管要素(接続管)の端部(管端)が拡径部の内部に挿入される。そして、この状態が保持されたまま拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部が縮径加工(カシメ加工)されて、接続管が気密又は液密に接続される。
しかしながら、直管、屈曲部を含むエルボ管、分岐部を含むチーズ管、径徐変部を含むレデューサ管及び低剛性部を含む管(例えば、蛇腹部を含むベローズ等)の複数の配管要素によって所望の配管システムを構築する場合、これらの配管要素同士の接続部の各々にプレス式管継手を個別に配してカシメ加工を施す必要がある。従って、カシメ加工の回数が膨大となり、結果として、例えば施工作業の効率の低下及びコストの増大等の問題に繋がる虞がある。また、配管要素同士の接続に用いられる管継手の数も膨大となるため、資材コストの増大に繋がる虞もある。
上記のような問題に対する解決手段として、工場等の製造現場において所定数の配管要素をユニットとして予め編成しておき、当該ユニットを施工現場へ移送し、当該ユニットと他のユニット及び/又は他の配管要素とをメカニカル形管継手によって相互に接続する、所謂「プレハブ工法」も提案されている。例えば特許文献2(特許第6177520号公報)には、空気調和装置の室内外ユニット間に冷媒を循環させる回路をこのようなプレハブ工法によって施工する方法が提案されている。当該施工法においては、製造現場において複数の部品が鑞付けによって接続されたユニットが編成され、気密試験の後に当該ユニットが施工現場へ移送され、独立した嵌め込み式接続継手を用いてユニット同士が接続される。
特許第3436822号公報 特許第6177520号公報
しかしながら、上述した従来技術においては、工場等の製造現場において所定数の配管要素をユニットとして予め編成しておくことにより、その分だけ施工現場における作業量は減るものの独立した嵌め込み式接続継手によってユニット同士を接続する必要がある。即ち、上記のようなプレハブ工法は、現場において使用される嵌め込み式接続継手の数(及び接続作業の工数)の一部を製造現場へ移したに過ぎない。仮に嵌め込み式接続継手をプレス式管継手に置き換えたとしても、上記と同様に、現場において使用されるプレス式管継手の数及びカシメ加工の回数の一部を製造現場へ移すに過ぎず、程度問題に帰結する。このように、配管システムを構成する複数の配管要素の一部をプレハブ化するだけでは、製造現場及び施工現場を含む全体としての作業負荷並びに部品点数を低減することは難しい。
そこで、プレス式管継手のカシメ加工の回数を低減することを目的として、配管要素の管端にプレス式管継手の一部を構成する構造(例えば、拡径部及び環状膨出部等)を一体的に形成することが考えられる。しかしながら、このような構造を配管要素の管端に形成する加工作業を行うための設備及び場所は一般的な施工現場には無く、また当該加工作業を行うための技量を有する作業者も少ないため、施工現場において当該加工作業を行うことは著しく困難である。
そこで、本発明の1つの目的は、メカニカル形管継手を用いて配管要素同士を接続して編成される建築用配管システムにおいて、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる建築用配管システムを提供することである。
本発明者は鋭意研究の結果、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムにおいて、配管要素の少なくとも1つの管端に環状膨出部を一体的に形成しておき、管継手の一部又は管継手と配管要素との接続構造の一部を当該管端によって構成させることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
上記に鑑み、本発明に係る建築用配管システム(以降、「本発明システム」と称呼される場合がある。)は、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムである。更に、配管要素の少なくとも1つの管端における一定の範囲に亘って拡径部が一体的に形成されており、当該拡径部には全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部が一体的に形成されている。加えて、上記メカニカル形管継手の少なくとも1つは、上記拡径部と、上記環状膨出部と、上記環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材(Oリング)と、によって構成されたプレス式管継手である。
また、本発明に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「本発明方法」と称呼される場合がある。)は、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムの施工方法であって、以下に列挙する製造工程、移送工程及び施工工程を含むことを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。
製造工程:製造現場において、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端における一定の範囲に亘って拡径部を一体的に形成し、全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部を前記拡径部に一体的に形成することを含む工程。
移送工程:配管要素及びメカニカル管継手を製造現場から建築用配管システムの施工現場へ移送する工程。
施工工程:移送工程において移送された複数の配管要素を施工現場においてメカニカル形管継手によって互いに接続して建築用配管システムを編成する工程。
加えて、本発明方法においては、配管要素の環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手の一部を構成している、
本発明システムは、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムである。更に、配管要素の少なくとも1つの管端には拡径部が一体的に形成されており、当該前記拡径部には環状膨出部が一体的に形成されている。加えて、上メカニカル形管継手の少なくとも1つは、上記拡径部と、上記環状膨出部と、上記環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、によって構成されたプレス式管継手である。拡径部及び環状膨出部を工場等の製造現場において配管要素の管端に一体的に形成することにより、拡径部及び環状膨出部の加工精度を高めると共に、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができる。また、配管要素の拡径部及び環状膨出部が形成された少なくとも1つの管端によってプレス式管継手が構成されているので、配管要素とは別個のプレス式管継手を使用する場合に比べて、カシメ加工の回数を半減することができる。
即ち、本発明によれば、メカニカル形管継手を用いて配管要素同士を接続して編成される建築用配管システムにおいて、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
本発明の第1実施形態に係る建築用配管システム(第1システム)の構成の一例を示す模式図である。 第1システムを構成する複数の配管要素のうちの1つの配管要素の構成の一例を示す模式図である。 第1システムを構成する複数の配管要素のうちの2つの配管要素が一方の配管要素の管端に一体的に形成されたプレス式管継手によって接続される様子を示す模式図である。 本発明の第3実施形態に係る建築用配管システム(第3システム)に含まれる拡管式管継手によって接続される一対の配管要素、シール部材及びケーシングの位置関係を示す模式図である。 本発明の第4実施形態に係る建築用配管システム(第4システム)を構成する複数の配管要素のうちの2つの配管要素がプレス式管継手によって接続される際に第1マークが利用されて相互差込代及び相互割出が所定の適切な量とされる様子を示す模式図である。 本発明の第6実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(第6方法)における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。 本発明の第10実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(第10方法)における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。 本発明の第11実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(第11方法)における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。 第11方法の施工工程に含まれる第1工程乃至第3工程の実行に伴って建築用配管システムが編成される様子を示す模式図である。 本発明の第12実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(第12方法)における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る建築用配管システム(以降、「第1システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第1システムは、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムである。実際の建築物等において施工される配管システムは、例えば、殆ど全ての表面は断熱材によって被覆されたり、適当な箇所において支持金具によって天井から吊り下げられたりする。第1システムについても同様であるが、このような付随的な施工形態は当業者に周知の形態であるので、本明細書においては、このような付随的な施工形態に関する説明は省略する。
更に、配管要素の少なくとも1つの管端における一定の範囲に亘って拡径部が一体的に形成されており、当該拡径部には全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部が一体的に形成されている。本明細書において、配管要素とは流体が流れることができる空間が内部に画定された管状の部材であり、複数の配管要素を接続することにより所望の構造を有する流路を構成することができる。また、拡径部とは、配管要素の内径が他の部分よりも大きいように拡径された部分を指す。更に、環状膨出部とは、配管要素の管壁の一部が全周に亘って径方向における外側に向かって膨出している部分を指す。このような拡径部及び環状膨出部を形成するための具体的な手法は特に限定されない。拡径部は、例えば、所謂「スピニング加工」等の塑性加工によって形成することができる。環状膨出部は、例えば、転造加工によって形成することができる。また、内部にウレタン材が充填された管材を軸方向に圧縮することによって管材の一部に膨出部を形成する所謂「ウレタンバルジ工法」によって環状膨出部を形成することができる。或いは、例えば所謂「液圧バルジ(ハイドロフォ-ミング)加工」及び分割型拡張式の拡管工法等によって環状膨出部を形成してもよい。
尚、拡径部及び環状膨出部は、各々の配管要素の少なくとも1つの管端に形成されている。即ち、各々の配管要素において、1つの管端、2つ以上の管端又は全ての管端に環状膨出部が形成されている。
加えて、メカニカル形管継手の少なくとも1つは、上記拡径部と、上記環状膨出部と、上記環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材(Oリング)と、によって構成されたプレス式管継手である。
プレス式管継手を用いて配管要素を接続する場合、配管要素の管端に形成された拡径部に形成された環状膨出部の内側に弾性材料からなる環状のシール部材(Oリング)を装着し、他の配管要素の管端が上記拡径部に挿入された状態のまま拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部にカシメ加工を施して、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続することができる。即ち、接続される2つの配管要素の対向する2つの管端の一方には拡径部及び環状膨出部が形成されており他方には拡径部及び環状膨出部が形成されておらず、前者の配管要素の環状膨出部が形成された拡径部がプレス式管継手として機能する。換言すれば、これら2つの配管要素の接続部分において、一方の配管要素の拡径部及び環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手としてのプレス式管継手の一部を構成している。
尚、従来技術に係る建築用配管システム(以降、「従来システム」と称呼される場合がある。)と同様に、第1システムもまた、配管システムが設けられる建築物等の構造に合わせた構造となるように構成される。従って、第1システムを構成する複数の配管要素の少なくとも一部は、二次元的又は三次元的に延在する流路を構成するように接続されていてもよい。換言すれば、第1システムを構成する複数の配管要素の少なくとも一部は、二次元的なxy直交座標平面におけるx及びyの特定の範囲に対応する領域に亘って存在することができる。この場合、上記領域において、x軸方向に複数の配管要素が存在し、y方向にも複数の配管要素が存在するように、第1システムが構成されていてもよい。或いは、第1システムを構成する複数の配管要素の少なくとも一部は、三元的なxyz直交座標空間におけるx、y及びzの特定の範囲に対応する領域に亘って存在することができる。この場合、上記領域において、x軸方向に複数の配管要素が存在し、y軸方向にも複数の配管要素が存在し、z方向にも複数の配管要素が存在するように、第1システムが構成されていてもよい。
更に、第1システムを構成する複数の配管要素の少なくとも1つは、屈曲部、分岐部、径徐変部及び低剛性部からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分を更に含んでいてもよい。これにより、配管システムが設けられる建築物等の構造に合わせた構造となるように第1システムを容易に構成することができる。例えば、上述したように第1システムを構成する複数の配管要素の少なくとも一部によって二次元的又は三次元的に延在する流路を容易に構成することができる。
尚、上述した屈曲部、分岐部、径徐変部及び低剛性部からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分は個々の配管要素と一体的に形成されている。尚、本明細書における「一体的に形成する」とは、所望の形状を有する部分を塑性加工によって素管自体の一部に形成すること(文字通りの一体形成)のみならず、別体として予め形成された所望の形状を有する部分を素管に例えば溶接等の手法によって接続することをも意味する。即ち、分離不可に気密又は液密に接続された状態が「一体的に形成された状態」と称呼される。
尚、第1システムを構成する配管要素の構造及び構成材料は、建築用配管システムとしての機能を発揮し且つ当該用途における使用環境及び使用条件等に耐え得る限り特に限定されない。第1システムを構成する個々の配管要素は単純な直管に限定されず、詳しくは後述するように、第1システムによって構成しようとする流体の流路の構造に応じて多種多様な構造を有することができる。
例えば、第1システムを構成する配管要素の構成材料は、例えばステンレス鋼を始めとする鉄等の金属である。ステンレス鋼は、建築用配管システムにおいて従来広く使用されてきた炭素鋼からなる鋼管(SGP管)に比べて、より強度が高いことから薄肉化による軽量化が可能であり、また、耐食性がより高いことから配管システムの長寿命化(更新頻度の低減)が可能である。建築用配管システムにおいて使用されるステンレス鋼としては、例えば流通量の多さ及び入手の容易さ等の理由から、オーステナイト系ステンレス鋼が広く使用されている。
しかしながら、第1システムを構成する配管要素は、上述したように多種多様な形状を有する部分を含み得る。オーステナイト系ステンレス鋼は塑性加工が比較的困難であり、塑性加工及び/又は溶接等によって生じた内部応力を固溶化熱処理によって除去する必要がある。このため、配管システムの製造工程が複雑且つ困難となり、製造コストの増大に繋がる虞がある。また、オーステナイト系ステンレス鋼を使用する配管システムにおいては、内部に流れる流体等の温度変化に伴う配管要素の寸法変化に起因する配管システムの変形及び/又は破損等の問題が生ずる場合がある。更に、オーステナイト系ステンレス鋼は炭素鋼に比べて著しく高価格であり、配管システムの資材コストの増大に繋がる虞がある。
そこで、第1システムを構成する複数の配管要素の少なくとも一部をフェライト系ステンレス鋼によって構成してもよい。フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、塑性加工が容易であり固溶化熱処理が不要である。また、フェライト系ステンレス鋼の線膨張係数はオーステナイト系ステンレス鋼の線膨張係数に比べて大幅に小さい。例えば、SUS430の線膨張係数はSUS304の線膨張係数の60%程度に過ぎない。更に、フェライト系ステンレス鋼(例えば、SUS430等)は、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304等)に比べて安価である。従って、複数の配管要素の少なくとも一部をフェライト系ステンレス鋼によって構成することにより、配管システムの製造コスト及び資材コストの増大を抑えると共に、上述したような温度変化に起因する問題をも低減することができる。
図1は、第1システムの構成の一例を示す模式図であり、略水平な面内に(略二次元的に)延在する流路を構成する第1システムを鉛直方向における上側から俯瞰した図である。図1に例示する第1システム1は、互いに接続された14個の配管要素2乃至15によって構成されている。上述したように、実際の建築物等において施工される配管システム1は、例えば、殆ど全ての表面は断熱材によって被覆されたり、適当な箇所において支持金具によって天井から吊り下げられたりするが、このような付随的な施工形態に関する図示及び説明は省略する。
配管システム1の最上流端イに上流側の管が接続され、イから配管システム1の最初の配管要素2の内部へと流体が流入する。尚、配管要素3、8、9、11、12、13及び15の各下流端部ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ及びリにも他の配管及び/又は機器が接続されるが、それらについての詳細な説明は割愛する。即ち、図1においては、本発明の対象である配管システム1のみを図示する。
第1システム1を構成する14個の配管要素2乃至15は、二次元的に延在する流路を構成するように接続されている。換言すれば、配管要素2乃至15は、二次元的なxy直交座標平面におけるx及びyの特定の範囲に対応する領域に亘って存在する。即ち、上記領域において、x軸方向に複数の配管要素が存在し、y方向にも複数の配管要素が存在するように、配管要素2乃至15が互いに接続されている。尚、図1に例示した第1システム1においては上記領域において14個の配管要素2乃至15が存在するが、実際の施工現場における配管システムにおいてはx方向及びy方向の何れにおいても数十個ずつの配管要素が接続されていてもよい。
また、図1に示した例においては、上記のように複数の配管要素が二次元的に延在する流路を構成するように接続されているが、第1システムが設けられる建築物等の構造に合わせて、複数の配管要素が三次元的に延在する流路を構成するように接続されていてもよい。換言すれば、複数の配管要素の全てが1つの平面内に収まるのではなく、当該平面に直交する方向(z方向)において延在する流路を構成する配管要素を第1システムが含むことができる。尚、本発明によって達成される効果を最大化する観点からは、例えばビルの個々のフロア全体等、対象となる建築物等に設けられる配管システムの出来る限り大きい部分を第1システムによって構成することが理想的ではある。しかしながら、例えば配管システムが設けられる建築物等の構造等の実状に応じて、配管システムの特定の部分のみを第1システムによって構成してもよい。
配管要素2乃至15においては、直管部、屈曲部(エルボ管部)、分岐部(チーズ管部)及び径徐変部(レデューサ管部)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分が一体的に形成されている。また、図1には図示しないが、第1システムを構成する複数の配管要素の少なくとも1つが低剛性部(ベローズ部)を含んでいてもよい。
図1に示すa乃至nは、上述した環状膨出部が形成された部分(接続部)を指す。図1に例示した第1システム1においては、各々の配管要素2乃至15の上流側の端部に接続部a乃至nが一体的に形成されている。各々の接続部b乃至nにおいては、各々の配管要素3乃至15の上流側の管端に形成された拡径部に環状膨出部が一体的に形成されており、拡径部と環状膨出部と環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材(図示せず)とによってプレス式管継手が構成されている。そして、当該配管要素の上流側に隣接する他の配管要素の下流側の端部が当該配管要素の拡径部に嵌挿された状態にて、拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部が縮径加工(カシメ加工)されている(図示せず)。このようにして、隣接する配管要素同士が気密又は液密に接続・固定されている。
次に、第1システム1を構成する複数の配管要素のうち1つに着目して、配管要素の構成について、より詳しく説明する。図2は、第1システム1を構成する14個の配管要素2乃至15のうちの1つの配管要素14の構成の一例を示す模式図である。配管要素14は、図に向かって左方の上流側から図に向かって右下方へと屈曲して延在する第1の管21と、第1の管21の中央部に位置する溶接部23においてT字状に分岐するように接続・固定されている第2の管22とから成る。即ち、第1の管21と第2の管22とが溶接によって接続されて、配管要素14が一体的に形成されている。
第1の管21の上流側の端部には、メカニカル形管継手としてのプレス接続部lが一体的に形成されている。プレス接続部lは、Oリング(弾性材料からなる環状のシール部材)を内装する環状膨出部とその両脇の拡径部(上流側に隣接する配管要素10が嵌挿される範囲。「ソケット部」と称呼される場合がある。)とから成るプレス式管継手である。そして、上流側の配管要素10の下流側の端部が拡径部内に嵌挿されカシメ固定されている。これとは逆に、第2の管22の下流側の端部は、下流側に隣接する配管要素13の上流側の端部24に形成されたプレス接続部m内に嵌挿され、カシメ固定されている。このように、各々の配管要素2乃至14の下流側の端部は、各々の下流側に隣接する他の配管要素の上流側の端部に一体的に形成されたプレス接続部に嵌装され、カシメ固定されている。
図3は、第1システムを構成する複数の配管要素のうちの2つの配管要素が一方の配管要素の管端に一体的に形成されたプレス式管継手によって接続される様子を示す模式図である。図3に示す例においては、2つの配管要素16及び17のうち配管要素16の上流側の管端における一定の範囲に亘って拡径部16eが一体的に形成されている。そして、拡径部16eには環状膨出部16bが一体的に形成されており、環状膨出部16bの内側には図示しない環状のシール部材が内装されている。これらの拡径部16eと環状膨出部16bとシール部材とによってプレス式管継手41が構成されている。一方、配管要素16の上流側の管端に接続される配管要素17の下流側の管端には上記のような構造は形成されていない。即ち、配管要素17の下流側の管端の近傍は直管状の形状を有する。
配管要素16と配管要素17とを接続する際には、黒塗りの矢印によって図中に示すように、配管要素16の上流側の管端に形成された拡径部16eの内部に配管要素17の下流側の管端が挿入される。次に、この状態が保持されたまま、環状膨出部16b及び拡径部16eの軸方向において環状膨出部16bを挟む両側の部分(図中に示す斜線部41cを参照)が縮径加工(カシメ加工)されて、配管要素16と配管要素17とが気密又は液密に接続される。
〈効果〉
第1システムにおいては、配管要素の少なくとも1つの管端に拡径部及び環状膨出部が一体的に形成されている。加えて、第1システムを構成するメカニカル形管継手の少なくとも1つは、上記拡径部と上記環状膨出部と上記環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材とによって構成されたプレス式管継手である。この環状膨出部を工場等の製造現場において配管要素の管端に一体的に形成することにより、環状膨出部の加工精度を高めると共に、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができる。また、上記のように配管要素の管端に一体的に構成されたプレス式管継手を使用する場合、配管要素とは別個のプレス式管継手を使用する場合に比べて、カシメ加工の回数を半減することができる。即ち、第1システムによれば、メカニカル形管継手を用いて配管要素同士を接続して編成される建築用配管システムにおいて、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る建築用配管システム(以降、「第2システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
上述したように、第1システムにおいては、メカニカル形管継手の少なくとも1つが、配管要素の管端に一体的に形成された拡径部と、拡径部に一体的に形成された環状膨出部と、当該環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、によって構成されたプレス式管継手である。この拡径部及び環状膨出部を工場等の製造現場において配管要素の管端に一体的に形成することにより、拡径部及び環状膨出部の加工精度を高めると共に、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができる。
また、プレス式管継手を用いて配管要素を接続する場合は、配管要素の管端に形成された拡径部に形成された環状膨出部の内側に弾性材料からなる環状のシール部材を装着し、他の配管要素の管端が上記拡径部に挿入された状態のまま拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部にカシメ加工を施して、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続することができる。即ち、接続される2つの配管要素の対向する2つの管端の一方には拡径部及び環状膨出部が形成されており他方には拡径部及び環状膨出部が形成されておらず、前者の配管要素の環状膨出部が形成された拡径部がプレス式管継手として機能する。換言すれば、これら2つの配管要素の接続部分において、一方の配管要素の拡径部及び環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手としてのプレス式管継手の一部を構成している。
しかしながら、接続されるべき2つの配管要素の管端の両方に環状膨出部が形成されている場合は、一方の配管要素の管端(に形成された拡径部)に他方の配管要素の管端を挿入することができない。従って、この場合は、環状膨出部が形成された管端をプレス式管継手として機能させることができない。因みに、この場合は、例えば、メカニカル形管継手としてハウジング形管継手の一種である拡管式管継手を採用すれば、接続されるべき2つの配管要素の環状膨出部が形成されている側の管端同士を対向させ、これら2つの配管要素の管端に跨がるように弾性材料からなる環状のシール部材を装着し、当該シール部材を径方向における内側に向かって圧縮し且つこれら2つの配管要素の環状膨出部に当接してこれら2つの配管要素が互いに離隔しないように係止するようにケーシングを外嵌することにより、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続することができる。即ち、この場合は、配管要素の環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手としての拡管式管継手と配管要素との接続構造の一部を構成している。
更に、接続されるべき2つの配管要素の管端の何れにも環状膨出部が形成されていない場合は、2つの配管要素を接続するためには、例えば、配管要素とは別個のプレス式管継手又は拡管式管継手を使用する必要がある。前者の場合、プレス式管継手の両側から挿入された2つの配管要素の各々についてカシメ加工を施す必要があるので、カシメ加工の回数を低減する効果は達成されない。即ち、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができない。一方、後者の場合も、拡管式管継手の両側から挿入される2つの配管要素の各々の管端に環状膨出部を形成する必要があるので、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができない。
上記のように、接続される2つの配管要素の管端の一方のみに環状膨出部が形成されているか、接続される2つの配管要素の管端の両方に環状膨出部が形成されているか或いは接続される2つの配管要素の管端の何れにも環状膨出部が形成されていないかによって、採用可能なメカニカル形管継手の形式が異なる。従って、個々の配管要素において環状膨出部が形成される管端の位置が不揃いである場合、接続される配管要素の組み毎に管端における環状膨出部の有無に応じてメカニカル形管継手の形式を選択する必要があり、配管システムの編成作業が繁雑になる。
〈構成〉
そこで、第2システムは、上述した第1システムであって、複数の配管要素のうち建築用配管システムの最も上流側に配設された配管要素及び建築用配管システムの最も下流側に配設された配管要素を除く他の全ての配管要素において上流側の管端のみ又は下流側の管端のみに統一的に拡径部及び環状膨出部が形成されていることを特徴とする建築用配管システムである。
上記のように、第2システムを構成する複数の配管要素のうち最も上流側及び下流側に配設された配管要素を除く他の全ての配管要素において、上流側又は下流側の管端のみに統一的に拡径部及び環状膨出部が形成されている。第2システムを構成する複数の配管要素のうち最も上流側及び下流側に配設された配管要素については、他の配管要素と同様に上流側又は下流側の管端のみに統一的に拡径部及び環状膨出部が形成されていてもよい。しかしながら、例えば第2システムよりも更に上流側又は下流側の配管との接続を容易にすること等を目的として、第2システムを構成する複数の配管要素のうち最も上流側及び下流側に配設された配管要素において環状膨出部が形成されている管端の配置が他の配管要素とは異なっていてもよい。
尚、図1に例示した第1システム1においては、前述したように、環状膨出部が形成された部分である接続部a乃至nが各々の配管要素2乃至15の上流側の端部に一体的に形成されている。即ち、図1に例示した第1システム1は、第2システムとしての技術的特徴をも備えている。
〈効果〉
上記のように、第2システムを構成する複数の配管要素のうち第2システムの最も上流側に配設された配管要素及び第2システムの最も下流側に配設された配管要素を除く他の全ての配管要素において、上流側の管端のみ又は下流側の管端のみに統一的に拡径部及び環状膨出部が形成されている。従って、第2システムにおいては、これらの配管要素の接続順序等に拘わらず、第2システムが設けられる建築物等の構造に合わせて、様々な構造を有する配管要素を組み合わせて、配管要素の管端によって構成されたプレス式管継手を用いて配管要素を接続して、第2システムによって画定される流体の流路を自由に設計することができる。
また、第2システムによれば、配管要素の製造現場における環状膨出部の形成等の加工も統一的な作業となるので効率的である。更に、施工現場における配管要素同士の接続も統一的な作業となるので効率的であり、例えば作業ミスの低減等にも繋がる。
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る建築用配管システム(以降、「第3システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
前述したように、第1システムを始めとする本発明システムにおいては、メカニカル形管継手の少なくとも1つが、配管要素の管端に一体的に形成された拡径部と、拡径部に一体的に形成された環状膨出部と、当該環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、によって構成されたプレス式管継手である。このプレス式管継手を用いて配管要素を接続する場合、配管要素の管端に形成された拡径部に形成された環状膨出部の内側に弾性材料からなる環状のシール部材を装着し、他の配管要素の管端が上記拡径部に挿入された状態のまま拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部にカシメ加工を施して、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続することができる。即ち、一方の配管要素の環状膨出部が形成された拡径部がプレス式管継手として機能する。従って、配管要素とは別個のプレス式管継手を使用する場合に比べて、カシメ加工の回数を半減することができるので、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。
しかしながら、本発明システムを構成するために接続される配管要素の組み合わせ及び/又は本発明システムと他の配管システムとの組み合わせによっては、拡管式管継手をメカニカル形管継手として採用することが望ましい場合がある。即ち、本発明システムは、メカニカル形管継手として拡管式管継手を採用することを排除するものではない。
〈構成〉
そこで、第3システムは、上述した第1システムであって、メカニカル形管継手の少なくとも1つがケーシング及び環状のシール部材を有する拡管式管継手であることを特徴とする建築用配管システムである。更に、上記拡管式管継手によって接続される2つの配管要素の管端から所定の距離だけ離れた位置には全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部が一体的に形成されており、当該環状膨出部は、それぞれが上記ケーシングに係止されることによって当該2つの前記配管要素が互いに離隔しないように固定されている。加えて、上記シール部材は上記ケーシング内に内装されて互いに対向する当該2つの配管要素の管端に跨嵌している。
上記のように、第3システムが備える拡管式管継手は、所謂「ハウジング形管継手」に該当する。これにより、例えば第3システムによって画定される流体の流路の設計上の都合等により環状膨出部が形成された管端同士を接続する必要が生じた場合においても、当該接続箇所において使用されるメカニカル形管継手として拡管式管継手を採用することにより、これらの管端同士を問題無く接続することができる。尚、上記拡管式管継手によって接続される2つの配管要素の管端の近傍には、環状膨出部さえ形成されていれば十分であり、前述した拡径部が形成されている必要は無い。換言すれば、上記拡管式管継手によって接続される2つの配管要素の管端の近傍に形成される環状膨出部は、直管状の配管要素の管壁に形成されていてもよく、或いは前述したように配管要素の管端における一定の範囲に亘って形成された拡径部に形成されていてもよい。
しかしながら、上記のように第3システムによって画定される流体の流路の設計等に応じてメカニカル形管継手として採用される管継手を使い分けることを容易にする観点からは、各々の配管要素の管端に形成される環状膨出部の位置及び形状等をメカニカル形管継手として採用される管継手の形式に依らない統一的なものとすることが望ましい。これにより、メカニカル形管継手として採用される管継手がプレス式管継手であっても拡管式管継手であっても同一の構成を有する環状膨出部を共通的に使用することができる。斯かる観点からは、拡管式管継手によって接続される配管要素においても、プレス式管継手によって接続される配管要素と同様に、配管要素の管端における一定の範囲に亘って形成された拡径部に環状膨出部が形成されていてもよい。
ところで、特に建築業界において広く使用されている従来技術に係る拡管式管継手(以降、「従来継手」と称呼される場合がある。)においては、鋳物製のケーシングを備えるハウジング形管継手が一般的に使用されている。鋳物製のケーシングを備えるハウジング形管継手は、長年に亘る使用実績及び高い信頼性が認められている一方で質量及びサイズが何れも大きく、設置スペース及び施工作業の面における改善が継続的に求められている。
そこで、当該技術分野においては、上記課題に対する解決策として、鋳造に代えて金属(例えばステンレス鋼等)製の薄板の成形加工によってハウジング形管継手を構成することにより、軽量であり且つコンパクトなハウジング形管継手を提供することが知られている。特に、本発明の出願人は、令和2年3月31日に出願された特願2020-62953において、ハウジング形管継手を構成するケーシングをシール部材に外嵌されてシール部材の形状を拘束するインナーケーシングとインナーケーシングの外側に設けられてシール部材の内部において管端同士が互いに対向する一対の管材と係合すると共にインナーケーシングをシール部材に向かって押圧するアウターケーシングとに分けることにより管材を係止する機能及びシール部材の形状を拘束する機能を十分に高いレベルにて両立することが可能な小型であり且つ軽量なハウジング形管継手を提案している。
図4の(a)は、上記のような構成を有する拡管式のハウジング形管継手101Aによって接続される一対の配管要素211、シール部材110、第1ケーシング120及び第2ケーシングを構成する一対の第2セグメント131Sの位置関係を示す模式図である。図4の(b)は、ハウジング形管継手101Aにおける第2セグメント131Sの外周部131P及びリム部131Rと一対の配管要素211に形成された環状膨出部210D及び第1ケーシング120との位置関係を示す模式図である。図4の(a)及び(b)においては、一対の第2セグメント131Sを締結して互いに近付けることにより第2ケーシングを形成する締結部材は省略されている。また、図4の(a)においては、第2セグメント131Sについては、その輪郭及び着座面に穿孔された貫通孔のみが描かれている。
図4に例示されているように、ハウジング形管継手101Aにおいては、所謂「セルフシールタイプ」のシール部材110の軸AXの方向における両側から一対の配管要素211の管端が挿入されてシール部材110の内部において一対の配管要素211の管端同士が互いに所定の間隙を空けて対向している。そして、シール部材110を覆うように(複数の第1セグメントからなる)第1ケーシング120をシール部材110に外嵌する。更に、第1ケーシング120を覆うように2つの第2セグメント131Sを配置する。この状態において、隣り合う第2セグメント131Sのフランジ部131Fの着座面に穿孔された貫通孔に挿通されたボルト及び当該ボルトと螺合するナットからなる締結部材によって隣り合う第2セグメント131S同士を締結する。
上記の結果、2つの第2セグメント131Sが互いに近付いて第2ケーシングが集成され、複数の第1セグメントが互いに近付いて第1ケーシング120が集成される。この際、2つの第2セグメント131Sの外周部131Pによって複数の第1セグメントがシール部材110に向かって押圧され、第1ケーシング120の外周部によってシール部材110が一対の配管要素211に向かって押圧される。その結果、シール部材110の外周部及びリム部の外面形状が第1ケーシング120によって拘束されて一対の配管要素211が液密又は気密に接続され、且つ2つの第2セグメント131Sがそれぞれ備える2つのリム部131Rの内面と一対の配管要素211がそれぞれ備える環状膨出部210Dの外面とが当接することにより一対の配管要素211が互いに離隔しないように係止される。
〈効果〉
以上のように、例えば第3システムによって画定される流体の流路の設計上の都合等により環状膨出部が形成された管端同士を接続する必要が生じた場合においても、当該接続箇所において使用されるメカニカル形管継手として拡管式管継手を採用することにより、これらの管端同士を問題無く接続することができる。従って、第3システムによれば、第3システムが設けられる建築物等の構造に合わせて、環状膨出部が形成された管端の位置に制限されずに様々な構造を有する配管要素を自由に組み合わせて、第3システムによって画定される流体の流路を自由に設計することができる。
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係る建築用配管システム(以降、「第4システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
本発明システムを構成するメカニカル形管継手として採用される管継手がプレス式管継手であっても或いは拡管式管継手であっても、配管要素同士が気密又は液密に接続され且つ互いに離隔しないように係止されるためには、管継手の内部の所定の位置まで配管要素が挿入される必要がある。換言すれば、配管要素同士が気密又は液密に接続され且つ互いに離隔しないように係止されるためには、配管要素の管継手への相互差込代を所定の適切な量とする必要がある。
また、本発明システムにおいて二次元的又は三次元的に延在する所望の構造を有する流路を構成するためには、接続される配管要素及び管継手に共通の軸の周りにおける配管要素と管継手との相対的な回転角度を所定の適切な角度とする必要がある。これを達成するためには、二次元的又は三次元的な構造を構成する部分を有する配管要素と管継手との相対割出を所定の適切な量とする必要がある。
〈構成〉
そこで、第4システムは、上述した第1システム乃至第3システムの何れかであって、少なくとも1つの配管要素及び/又は当該配管要素と接続されるメカニカル形管継手の外周面に第1マークが表示されていることを特徴とする建築用配管システムである。第1マークとは、配管要素とメカニカル形管継手との接続に必要な相互差込代及び/又は相互割出に対応する印である。換言すれば、第1マークは、配管要素とメカニカル形管継手とを接続する作業者が当該配管要素と当該メカニカル形管継手との相互差込代及び/又は相互割出を所定の適切な量とするために利用することができる印である。
第1マークは、配管要素とメカニカル形管継手との接続に必要な相互差込代及び相互割出の両方に対応する印であってもよく、或いは相互差込代及び相互割出の何れか一方に対応する印であってもよい。
配管要素とメカニカル形管継手との接続に必要な相互差込代に対応する印としての第1マークの具体例としては、例えば、メカニカル形管継手の内部の所定の位置まで配管要素が挿入された状態において当該管継手の端部が到達する位置を示すように配管要素の外周面に表示された線分等の印を挙げることができる。一方、配管要素とメカニカル形管継手との接続に必要な相互割出に対応する印としての第1マークの具体例としては、例えば、共通の軸の周りにおいて相対的に所定の適切な角度だけ回転された(割出された)状態において対向するように配管要素及び管継手の双方の外周面にそれぞれ表示された線分等の印を挙げることができる。尚、相互差込代に対応する印としての第1マークと相互割出に対応する印としての第1マークとは、別個に表示されていてもよく、或いは一体的に表示されていてもよい。
尚、配管要素及び/又はメカニカル形管継手の外周面に第1マークを表示するための具体的な手法は、建築用配管システムとしての用途における使用環境及び使用条件等に耐えることが可能であり且つ配管要素とメカニカル形管継手とを接続する作業において(例えば視認により)利用可能に構成されている限り特に限定されない。例えば、第1マークは、例えばインク若しくは塗料による印刷、ステッカ等の貼付又は刻印等の様々な手法によって配管要素及び/又はメカニカル形管継手の外周面に表示することができる。また、ステッカの貼付けによって第1マークを実現する場合は、個々の配管要素の識別情報((例えば、ID番号等)等の各種情報を当該ステッカに印刷する等して表示して、作業者が目視にて確認することができるようにしてもよい。
図5は、第4システムを構成する複数の配管要素のうちの2つの配管要素がプレス式管継手によって接続される際に第1マークが利用されて相互差込代及び相互割出が所定の適切な量とされる様子を示す模式図である。図5は、第1システムに関する説明において参照された図3に対応する図である。即ち、配管要素16の上流側の管端に形成された拡径部16e及び環状膨出部16bと環状膨出部16bの内側に内装された環状のシール部材(図示せず)とによってプレス式管継手41が形成されている。一方、配管要素17の下流側の管端の近傍は直管状の形状を有する。
但し、第4システムに関する図5においては、配管要素16と配管要素17(の管端に形成されたメカニカル形管継手41)との接続に必要な相互割出に対応する印としての線分16i及び17iが配管要素16の上流側の管端の外周面及びに配管要素17の下流側の外周面にそれぞれ表示されている。更に、配管要素17の下流側の外周面には、メカニカル形管継手41の内部の所定の位置まで配管要素が挿入された状態における当該管継手の端部(即ち、配管要素16の管端)の位置を表示する線分17oが表示されている。
配管要素16と配管要素17とを接続する際には、黒塗りの矢印によって図中に示すように、配管要素16の上流側の管端に形成された拡径部16eの内部に配管要素17の下流側の管端が挿入される。この際、配管要素16の管端(に形成されたメカニカル形管継手41の端部)が線分17oに到達するまで配管要素16に配管要素17を挿入することにより、配管要素16と配管要素17とが気密又は液密に接続され且つ互いに離隔しないように係止されるために必要な挿入代を容易且つ確実に達成することができる。また、線分16iと線分17iとを対向させる(周方向において一致する位置に存在させて軸方向に平行な1本の線分を構成させる)ことにより、配管要素16と配管要素17とが共通の軸の周りにおいて相対的に所定の適切な角度だけ回転された(割出された)状態を容易且つ確実に達成することができる。次に、この状態が保持されたまま、環状膨出部16b及び拡径部16eの軸方向において環状膨出部16bを挟む両側の部分(図中に示す斜線部を参照)が縮径加工(カシメ加工)されて、配管要素16と配管要素17とが気密又は液密に接続される。
〈効果〉
上述したように、第4システムにおいては、少なくとも1つの配管要素及び/又は当該配管要素と接続されるメカニカル形管継手の外周面に、当該配管要素と当該メカニカル形管継手との接続に必要な相互差込代及び/又は相互割出に対応する印である第1マークが表示されている。従って、配管要素とメカニカル形管継手とを接続する作業において作業者が第1マークを認識し利用することにより、配管要素とメカニカル形管継手とを適切に接続するために必要な挿入代及び/又は割出量を容易且つ確実に達成することができる。尚、図5及び上記説明においては第1マークが表示されるメカニカル形管継手としてプレス式管継手が採用されている第4システムを例示したが、第1マークが表示されるメカニカル形管継手は拡管式管継手であってもよい。即ち、第1マークが表示されるメカニカル形管継手はプレス式管継手に限定されず、拡管式管継手に第1マークを表示してもよい。
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る建築用配管システム(以降、「第5システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
前述したように、第1システムを始めとする本発明システムにおいては、本発明システムが設けられる建築物等の構造に合わせて様々な構造を有する配管要素を組み合わせて、本発明システムによって画定される流体の流路を自由に設計することができる。このような設計を正確に反映して本発明システムを正確に編成するためには、本発明システムにおける個々の配管要素の施工及び施工順序等を監督者及び作業者が正しく認識する必要がある。
また、メカニカル形管継手と配管要素とを液密又は気密に接続するに当たっては、プレス式管継手の場合は環状膨出部及びその近傍にカシメ加工を施す際に、拡管式管継手の場合はケーシングを構成するセグメントを締結する際に、それぞれ適正な大きさの力(以降、「接続加工力」と称呼される場合がある。)を作用させる必要がある。しかしながら、施工現場における個々の作業についての適正な接続加工力を確実に把握することは決して容易ではなく、施工作業の複雑化及び労力の増大を招く虞がある。
更に、本発明システムの施工完了時における検査又は施工から一定期間が経過した後のメインテナンス等の際には、施工現場における実際の作業における接続加工力等の施工履歴が個々の接続箇所について正確に記録されていることが重要である。しかしながら、施工現場における実際の作業における個々の接続箇所の施工履歴を正確且つ確実に記録することは決して容易ではなく、施工作業及びメインテナンス作業の複雑化及び労力の増大を招く虞がある。
〈構成〉
そこで、第5システムは、上述した第1システム乃至第4システムの何れかであって、複数の配管要素の少なくとも一部が電子データの書き込み及び読み出しが可能なRFタグを備えることを特徴とする建築用配管システムである。上記電子データは、個々の配管要素の識別情報、施工位置情報、施工要領情報及び施工履歴情報からなる群より選ばれる少なくとも1つに対応するデータである。
RFタグは、例えば様々な電子データの書き替え及び/又は読み取りを電波及び/又は電磁波を用いて非接触式にて行うことができるRFID(Radio Frequency Identification)システムを構成するタグである。RFタグには、例えばアンテナ、制御回路及びメモリ等が内蔵されており、リーダ/ライタからの電波及び/又は電磁誘導により非接触式にて電力供給及びデータ授受を行うことができる。当該技術分野においては様々な形態のRFタグが知られているが、第6システムを構成する配管要素が備えるRFタグとしては例えばステッカ状(ラベル型)のRFタグが好ましく、配管要素の外周面にRFタグを配設することが好ましい。また、ステッカ状のRFタグに配管要素の識別情報(例えば、ID番号等)を例えば印刷等の手法によって表示して作業者による目視確認に供してもよい。更に、ステッカ状のRFタグに上述した第1マークとしての機能を持たせてもよい。
上述した図2に例示した第1システムを構成する複数の配管要素のうちの1つの配管要素14の構成を例示した模式図においては、配管要素14を構成する第1の管21の上流側の端部(管端)にメカニカル形管継手としてのプレス接続部lが一体的に形成されており、当該プレス接続部lよりも下流側の外周面にRFタグ30が配設されている。尚、配管要素は金属によって形成されているので、配管要素の表面に直接的に又は磁気シールド機能を有する膜体を介して間接的にRFタグが貼り付けられる。
尚、施工履歴情報に対応する電子データをRFタグに自動的に記録する場合は、配管要素に加えられた接続加工力に対応する検出信号を出力するように構成されたセンサを例えば配管要素又は加工工具等が備えていてもよい。この場合、RFタグは、当該センサから出力された検出信号に対応する情報をデータとして記録するように構成されていてもよい。上記センサの具体例としては、例えば、感圧センサ、応力センサ及び歪ゲージ等を挙げることができる。このようなセンサ及びRFタグの詳細については、当業者に周知であるので、ここでの説明は省略する。尚、これらのセンサを配設する部位については、これらのセンサによって検知しようとする情報に応じて適宜定められる。尚、上記センサ及びRFタグは、例えば信号線等によって電気的に接続された別個の装置として構成されていてもよく、或いは一体の装置として構成されていてもよい。
〈効果〉
上記のように、第5システムにおいては、複数の配管要素の少なくとも一部が、個々の配管要素の識別情報、施工位置情報、施工要領情報及び施工履歴情報からなる群より選ばれる少なくとも1つに対応するデータである電子データの書き込み及び読み出しが可能なRFタグを備える。
従って、対応するリーダ/ライタによって個々の配管要素の識別情報及び施工位置情報を読み取ることにより、個々の配管要素の配置、姿勢及び施工順序等を作業者が正しく認識し、所期の設計を正確に反映した配管システムを正確に編成することが容易となる。更に、対応するリーダ/ライタによって個々の配管要素の識別情報及び施工要領情報を読み取ることにより、施工現場における個々の作業についての適正な接続加工力を作業者が確実に把握して、メカニカル形管継手と配管要素とを液密又は気密に接続する作業を容易化することができる。加えて、対応するリーダ/ライタによって個々の配管要素の識別情報及び施工履歴情報を読み取ることにより、施工作業及びメインテナンス作業の複雑化及び労力の増大を招くこと無く、第5システムの施工完了時における検査又はメインテナンス等の作業の効率化及び精度向上を達成することができる。尚、将来的には、ロボットによって施工作業がアシストされる施工現場、更にはロボットのみによって施工作業が行われる無人施工現場等の出現が予想される。このような施工現場においても、RFタグの具備は有用である。
《第6実施形態》
以下、本発明の第6実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「第6方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、建築用配管システムのみならず、当該システムの施工方法にも関する。
〈構成〉
第6方法は、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムの施工方法であって、以下に列挙する製造工程、移送工程及び施工工程を含むことを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。
製造工程:製造現場において、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端から所定の距離だけ離れた位置に全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部を一体的に形成することを含む工程。
移送工程:配管要素及びメカニカル管継手を製造現場から建築用配管システムの施工現場へ移送する工程。
施工工程:移送工程において移送された複数の配管要素を施工現場においてメカニカル形管継手によって互いに接続して建築用配管システムを編成する工程。
更に、第6方法においては、配管要素の環状膨出部が形成された管端がメカニカル形管継手の一部を構成している。
上述したように、第6方法は、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムの施工方法である。上述した第1システムに関する説明においても述べたように、複数の配管要素の少なくとも一部は、二次元的又は三次元的に延在する流路を構成するように接続されていてもよい。更に、複数の配管要素の少なくとも1つは、屈曲部、分岐部、径徐変部及び低剛性部からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分を更に含んでいてもよい。加えて、複数の配管要素の少なくとも一部は、フェライト系ステンレス鋼によって形成されていてもよい。配管要素及び環状膨出部の詳細については、上述した第1システムに関する説明において既に述べたので、ここでの説明は省略する。
製造工程においては、例えば工場等の製造現場において、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端から所定の距離だけ離れた位置に全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部が当該拡径部に一体的に形成される。
移送工程においては、配管要素及びメカニカル管継手が製造現場から建築用配管システムの施工現場へと移送される。即ち、施工現場は、上述した製造現場とは異なる場所である。この際、例えば移送手段の積載容量並びに施工現場における作業スペースの大きさ及び許容される人工等に応じて、配管要素及びメカニカル管継手の移送形態を適宜定めることができる。例えば、複数の配管要素の全数を単品として移送してもよく、或いは複数の配管要素のうちの幾つかが接続されたユニットとして移送してもよい。
施工工程においては、移送工程において移送された複数の配管要素が施工現場においてメカニカル形管継手によって互いに接続されて建築用配管システムが編成される。この際、上述した製造工程により、配管要素の少なくとも1つの管端には環状膨出部が高い加工精度にて既に形成されているので、施工現場における作業の工数及び難度が大幅に低減される。また、上述した第1システムに関する説明において述べたように配管要素の拡径部及び環状膨出部が形成された管端によってプレス式管継手が構成されている場合は、配管要素とは別個のプレス式管継手を使用する場合に比べて、カシメ加工の回数を半減することができる。
尚、第6方法において「配管要素の環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手の一部を構成している」とは、文字通り「配管要素の環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手の一部を構成している」状態のみならず、「配管要素の環状膨出部が形成された管端が、施工工程において構成されるメカニカル形管継手と配管要素との接続構造の一部を構成している」状態をも指す。
例えば、メカニカル形管継手としてプレス式管継手が採用される場合は、配管要素の管端に形成された拡径部に形成された環状膨出部の内側に弾性材料からなる環状のシール部材(Oリング)を装着し、他の配管要素の管端が当該拡径部に挿入された状態のまま環状膨出部及び拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分にカシメ加工を施して、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続する。即ち、この場合は、接続される2つの配管要素のうち一方の配管要素の管端には拡径部及び環状膨出部が形成されており他方の配管要素の管端には拡径部及び環状膨出部が形成されておらず、前者の配管要素の環状膨出部が形成された拡径部がプレス式管継手として機能する。換言すれば、この場合は、これら2つの配管要素の接続部分において、一方の配管要素の環状膨出部が形成された管端である拡径部が、メカニカル形管継手としてのプレス式管継手の一部を構成している。
一方、例えば、メカニカル形管継手としてハウジング形管継手の一種である拡管式管継手が採用される場合は、接続されるべき2つの配管要素の環状膨出部が形成されている側の管端同士を対向させ、これら2つの配管要素の管端に跨がるように弾性材料からなる環状のシール部材を装着し、当該シール部材を径方向における内側に向かって圧縮し且つこれら2つの配管要素の環状膨出部に当接させてケーシングを外嵌することにより、これら2つの配管要素が互いに離隔しないように係止すると共にこれら2つの配管要素を気密又は液密に接続する。即ち、この場合は、配管要素の環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手としての拡管式管継手と配管要素との接続構造の一部を構成している。
図6は、第6方法における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。実際の建築用配管システムにおいては、当該配管システムの配管施工図に基づいて、工場等の製造現場において個々の配管要素が製造され、施工現場においてこれらの配管要素が接続されて当該配管システムが編成される。製造現場において配管要素が製造される上記工程(「プレハブ工程」と称呼される場合がある。)においては、上記配管施工図から個々の配管要素(「プレハブ品」と称呼される場合がある。)の単品としての設計図(配管要素毎の図面)が起こされ、当該設計図に基づいて製造工程が進められる。しかしながら、以下の説明においては、上記のような設計図に関連する作業については省略して、製造工程以降の各工程について説明する。
図6に例示するように、第6方法による建築用配管システムの製造が開始されると、先ずステップS10において製造工程が実行される。製造工程においては、上述したように、製造現場においては、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端から所定の距離だけ離れた位置に全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部が一体的に形成される。上述したように配管要素の環状膨出部が形成された管端によってプレス式管継手が構成される場合は、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端における一定の範囲に亘って拡径部が一体的に形成され、全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部が当該拡径部に一体的に形成される。製造現場は施工現場とは異なる現場であり、製造現場の具体例としては、例えば環状膨出部の形成等、配管要素の製造に必要な加工処理を行うことができる工場等を挙げることができる。例えば作業スペース及び加工設備等の面における制約のある施工現場においては、配管要素の管端に拡径部及び環状膨出部を形成することは不可能又は困難である。しかしながら、第6方法においては、施工現場とは異なる製造現場において、配管要素の管端に環状膨出部(及び場合によっては拡径部)を効率的に且つ高い精度にて形成することができる。尚、製造工程において製造される配管要素の構成並びに拡径部及び環状膨出部の形成方法等の詳細については、例えば第1システムに関する説明において既に述べたので、ここでの説明は省略する。
次に、ステップS20において移送工程が実行される。移送工程においては、配管要素及びメカニカル管継手が製造現場から建築用配管システムの施工現場へと移送される。この際、上述したように、例えば移送手段の積載容量並びに施工現場における作業スペースの大きさ及び許容される人工等に応じて、配管要素及びメカニカル管継手の移送形態を適宜定めることができる。例えば、複数の配管要素の全数を単品として移送してもよく、或いは複数の配管要素のうちの幾つかが接続されたユニットとして移送してもよい。
次に、ステップS30において施工工程が実行される。施工工程においては、移送工程において製造現場から施工現場に移送された複数の配管要素がメカニカル形管継手によって互いに接続されて所望の構造を有する建築用配管システムが編成される。この際、ステップS10として製造現場において実行された製造工程により、配管要素の少なくとも1つの管端には環状膨出部(及び場合によっては拡径部)が高い加工精度にて既に形成されている。従って、施工現場における作業の工数及び難度が大幅に低減される。特に、前述したように、配管要素の拡径部及び環状膨出部が形成された管端によってプレス式管継手が構成される場合は、配管要素とは別個のプレス式管継手を使用する場合に比べて、カシメ加工の回数を半減することができる。
一方、メカニカル形管継手として拡管式管継手が用いられる場合は、拡径部は必須ではないが、当該管継手によって接続される2つの配管要素の対向する2つの管端の両方に環状膨出部が形成されている必要がある。しかしながら、上述したように、第6方法においては、製造現場において、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端に環状膨出部が予め一体的に形成される。従って、施工現場において接続される2つの配管要素の対向する2つの管端の両方に環状膨出部を形成する必要のある従来技術に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「従来方法」と称呼される場合がある。)に比べて、施工現場における作業の工数及び難度が大幅に低減される。
〈効果〉
以上のように、第6方法によれば、メカニカル形管継手を用いて配管要素同士を接続して編成される建築用配管システムの施工方法において、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。また、施工現場とは異なる製造現場において配管要素が予め製造されるので、配管要素の少なくとも1つの管端に環状膨出部を効率的に且つ高い精度にて形成することができる。
《第7実施形態》
以下、本発明の第7実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「第7方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
上述したように、第6方法は、メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素によって構成された建築用配管システムの施工方法である。第6方法によれば、製造現場において、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端に環状膨出部が予め一体的に形成される。これにより、環状膨出部の加工精度を高めると共に、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができる。
また、メカニカル形管継手としてプレス式管継手を用いて配管要素を接続する場合は、配管要素の管端における一定の範囲に亘って一体的に形成された拡径部に形成された環状膨出部の内側に弾性材料からなる環状のシール部材を装着し、他の配管要素の管端が当該拡径部に挿入された状態のまま拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部にカシメ加工を施して、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続することができる。即ち、接続される2つの配管要素の対向する2つの管端の一方には拡径部及び環状膨出部が形成されており他方には拡径部及び環状膨出部が形成されておらず、前者の配管要素の環状膨出部が形成された拡径部がプレス式管継手として機能する。換言すれば、これら2つの配管要素の接続部分において、一方の配管要素の拡径部及び環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手としてのプレス式管継手の一部を構成している。
しかしながら、接続されるべき2つの配管要素の管端の両方に環状膨出部が形成されている場合は、一方の配管要素の管端(に形成された拡径部)に他方の配管要素の管端を挿入することができない。従って、この場合は、環状膨出部が形成された管端をプレス式管継手として機能させることができない。因みに、この場合は、例えばメカニカル形管継手として拡管式管継手を採用すれば、接続されるべき2つの配管要素の環状膨出部が形成されている側の管端同士を対向させ、これら2つの配管要素の管端に跨がるように弾性材料からなる環状のシール部材を装着し、当該シール部材を径方向における内側に向かって圧縮し且つこれら2つの配管要素の環状膨出部に当接してこれら2つの配管要素が互いに離隔しないように係止するようにケーシングを外嵌することにより、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続することができる。即ち、この場合は、配管要素の環状膨出部が形成された管端が、メカニカル形管継手としての拡管式管継手と配管要素との接続構造の一部を構成している。
更に、接続されるべき2つの配管要素の管端の何れにも環状膨出部が形成されていない場合は、2つの配管要素を接続するためには、例えば、配管要素とは別個のプレス式管継手又は拡管式管継手を使用する必要がある。前者の場合、プレス式管継手の両側から挿入された2つの配管要素の各々についてカシメ加工を施す必要があるので、カシメ加工の回数を低減する効果は達成されない。即ち、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができない。一方、後者の場合も、拡管式管継手の両側から挿入される2つの配管要素の各々の管端に環状膨出部を形成する必要があるので、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができない。
上記のように、接続される2つの配管要素の管端の一方のみに環状膨出部が形成されているか、接続される2つの配管要素の管端の両方に環状膨出部が形成されているか或いは接続される2つの配管要素の管端の何れにも環状膨出部が形成されていないかによって、採用可能なメカニカル形管継手の形式が異なる。従って、個々の配管要素において環状膨出部が形成される管端の位置が不揃いである場合、接続される配管要素の組み合わせ毎に管端における環状膨出部の有無に応じてメカニカル形管継手の形式を選択する必要があり、配管システムの編成作業が繁雑になる。
〈構成〉
そこで、第7方法は、上述した第6方法であって、複数の配管要素のうち建築用配管システムの最も上流側に配設された配管要素及び建築用配管システムの最も下流側に配設された配管要素を除く他の全ての配管要素において上流側の管端のみ又は下流側の管端のみに統一的に環状膨出部が形成されていることを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。
上記のように、第7方法によって編成される建築用配管システムを構成する複数の配管要素のうち最も上流側及び下流側に配設された配管要素を除く他の全ての配管要素において、上流側又は下流側の管端のみに統一的に環状膨出部が形成されている。当該システムを構成する複数の配管要素のうち最も上流側及び下流側に配設された配管要素については、他の配管要素と同様に上流側又は下流側の管端のみに統一的に環状膨出部が形成されていてもよい。しかしながら、例えば当該システムよりも更に上流側又は下流側の配管との接続を容易にすること等を目的として、当該システムを構成する複数の配管要素のうち最も上流側及び下流側に配設された配管要素において環状膨出部が形成されている管端の配置が他の配管要素とは異なっていてもよい。
尚、前述した第2システムに関する説明において述べたように、図1に例示した第1システム1においては、環状膨出部が形成された部分である接続部a乃至nが各々の配管要素2乃至15の上流側の端部に一体的に形成されている。即ち、図1に例示した第1システム1は、第7方法によって編成される建築用配管システムとしての技術的特徴をも備えている。
〈効果〉
上記のように、第7方法によって編成される建築用配管システムを構成する複数の配管要素のうち当該システムの最も上流側に配設された配管要素及び当該システムの最も下流側に配設された配管要素を除く他の全ての配管要素において、上流側の管端のみ又は下流側の管端のみに統一的に環状膨出部が形成されている。従って、第7方法においては、これらの配管要素の接続順序等に拘わらず、当該システムが設けられる建築物等の構造に合わせて、様々な構造を有する配管要素を組み合わせて、配管要素の管端によって構成されたメカニカル形管継手を用いて配管要素を接続して、当該システムによって画定される流体の流路を自由に設計することができる。
また、第7方法においては、配管要素の製造現場における環状膨出部の形成等の加工も統一的な作業となるので効率的である。更に、施工現場における配管要素同士の接続も統一的な作業となるので効率的であり、例えば作業ミスの低減等にも繋がる。尚、上述したように、配管要素の環状膨出部が形成された管端によってプレス式管継手が構成される場合は、配管要素の環状膨出部が形成される側の管端における一定の範囲に亘って拡径部が形成され、当該拡径部に環状膨出部が形成される必要がある。
《第8実施形態》
以下、本発明の第8実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「第8方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
上述したように、第6方法を始めとする本発明に係る建築用配管システムの施工方法(本発明方法)においては、メカニカル形管継手と配管要素との接続部分を構成する配管要素の環状膨出部が形成された管端がメカニカル形管継手の一部を構成している。この環状膨出部を工場等の製造現場において配管要素の管端に一体的に形成することにより、環状膨出部の加工精度を高めると共に、施工現場における作業の工数及び難度を低減することができる。
また、メカニカル形管継手としては、前述したように、例えばプレス式管継手及び/又は拡管式管継手を採用することができる。特に、配管要素の環状膨出部が形成された管端によってプレス式管継手が構成される場合は、配管要素とは別個のプレス式管継手を使用する場合に比べて、カシメ加工の回数を半減することができるので、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。
〈構成〉
そこで、第8方法は、上述した第6方法又は第7方法であって、メカニカル形管継手の少なくとも1つは、配管要素の環状膨出部が形成された管端によって構成されたプレス式管継手であることを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。より詳しくは、上記メカニカル形管継手の少なくとも1つが配管要素の環状膨出部が形成された管端によって構成されたプレス式管継手であることを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。より詳しくは、上記メカニカル形管継手の少なくとも1つは、配管要素の一方の管端における一定の範囲に亘って一体的に形成された拡径部と、当該拡径部に一体的に形成された環状膨出部と、当該環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、によって構成されたプレス式管継手である。
更に、第8方法に含まれる施工工程においては、上記プレス式管継手を構成する配管要素である第1要素とは異なる他の配管要素である第2要素の環状膨出部が形成されていない管端が第1要素の拡径部内に挿入された状態において第1要素の環状膨出部及び拡径部の少なくとも一部を縮径させることにより第1要素と第2要素とを上記プレス式管継手によって締結する。
上記施工工程において第1要素と第2要素とが上記プレス式管継手によって締結される過程については、前述した第3システムに関する説明において参照した図3に示した模式図と同様である。従って、第8方法についての更なる説明は省略する。
〈効果〉
上記のように、第8方法によって編成される建築用配管システムにおいては、メカニカル形管継手の少なくとも1つが、配管要素の環状膨出部が形成された管端によって構成されたプレス式管継手である。このように環状膨出部が形成された管端によってプレス式管継手が構成されている配管要素はプレス式管継手と一体的に形成されているので、他の配管要素と接続するためのカシメ加工は当該プレス式管継手に挿入される他の配管要素についてのみ行えばよい。即ち、第8方法によれば、環状膨出部が形成された管端によってプレス式管継手が構成されている配管要素については、他の配管要素との接続のためのカシメ加工の回数を従来に比べて半減することができる。従って、第8方法によって編成される建築用配管システムを構成するメカニカル形管継手において配管要素の環状膨出部が形成された管端によって構成されたプレス式管継手が占める割合を増大させるほど、施工現場におけるカシメ加工の回数を低減することができ、施工現場における作業負荷を大幅に軽減することができる。
《第9実施形態》
以下、本発明の第9実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「第9方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
上述した第8方法によって編成される建築用配管システムにおいては、メカニカル形管継手の少なくとも1つが、配管要素の管端に一体的に形成された拡径部と、拡径部に一体的に形成された環状膨出部と、当該環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、によって構成されたプレス式管継手である。このプレス式管継手を用いて配管要素を接続する場合、配管要素の管端に形成された拡径部に形成された環状膨出部の内側に弾性材料からなる環状のシール部材を装着し、他の配管要素の管端が上記拡径部に挿入された状態のまま拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部にカシメ加工を施して、これら2つの配管要素を気密又は液密に接続することができる。即ち、一方の配管要素の環状膨出部が形成された拡径部がプレス式管継手として機能する。従って、配管要素とは別個のプレス式管継手を使用する場合に比べて、カシメ加工の回数を半減することができるので、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。
しかしながら、建築用配管システムを構成するために接続される配管要素の組み合わせ及び/又は建築用配管システムと他の配管システムとの組み合わせによっては、拡管式管継手をメカニカル形管継手として採用することが望ましい場合がある。即ち、本発明に係る建築用配管システムの施工方法(本発明方法)は、メカニカル形管継手として拡管式管継手を採用することを排除するものではない。
〈構成〉
そこで、第9方法は、上述した第6方法乃至第8方法の何れかであって、メカニカル形管継手の少なくとも1つがケーシング及び環状のシール部材を有する拡管式管継手であることを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。更に、第9方法に含まれる施工工程においては、上記拡管式管継手によって接続される2つの配管要素の環状膨出部が形成されている側の管端をケーシング内に挿入して当該ケーシング内において互いに対向させ、当該ケーシング内において互いに対向する2つの上記管端にシール部材を跨嵌させ、当該ケーシング内において互いに対向する2つの配管要素の環状膨出部を当該ケーシングによってそれぞれ係止することにより、2つの当該配管要素が互いに離隔しないように固定する。
上記のように、第9方法によって編成される建築用配管システムを構成するメカニカル形管継手としての拡管式管継手は、所謂「ハウジング形管継手」に該当する。これにより、例えば第9方法によって編成される建築用配管システムによって画定される流体の流路の設計上の都合等により環状膨出部が形成された管端同士を接続する必要が生じた場合においても、当該接続箇所において使用されるメカニカル形管継手として拡管式管継手を採用することにより、これらの管端同士を問題無く接続することができる。尚、上記のように拡管式管継手によって接続される2つの配管要素の管端の近傍には、環状膨出部さえ形成されていれば十分であり、前述した拡径部が形成されている必要は無い。換言すれば、拡管式管継手によって接続される2つの配管要素の管端の近傍に形成される環状膨出部は、直管状の配管要素の管壁に形成されていてもよく、或いは前述したように配管要素の管端における一定の範囲に亘って形成された拡径部に形成されていてもよい。
しかしながら、上記のように第9方法によって編成される建築用配管システムによって画定される流体の流路の設計等に応じてメカニカル形管継手として採用される管継手を使い分けることを容易にする観点からは、各々の配管要素の管端に形成される環状膨出部の位置及び形状等をメカニカル形管継手として採用される管継手の形式に依らない統一的なものとすることが望ましい。これにより、メカニカル形管継手として採用される管継手がプレス式管継手であっても拡管式管継手であっても同一の構成を有する環状膨出部を共通的に使用することができる。斯かる観点からは、拡管式管継手によって接続される配管要素においても、プレス式管継手によって接続される配管要素と同様に、配管要素の管端における一定の範囲に亘って形成された拡径部に環状膨出部が形成されていてもよい。
尚、第9方法において使用することができる拡管式管継手の具体例としては、上述した第3システムに関する説明において例示したように、例えば、特に建築業界において広く使用されている鋳物製のケーシングを備えるハウジング形管継手を挙げることができる。更に、上述した第3システムに関する説明において図4を参照しながら例示したような、鋳造に代えて金属(例えばステンレス鋼等)製の薄板の成形加工によって構成された軽量であり且つコンパクトなハウジング形管継手を用いてもよい。
〈効果〉
以上のように、例えば建築用配管システムによって画定される流体の流路の設計上の都合等により環状膨出部が形成された管端同士を接続する必要が生じた場合においても、第9方法においては、当該接続箇所において使用されるメカニカル形管継手として拡管式管継手を採用することにより、これらの管端同士を問題無く接続することができる。従って、第9方法によれば、建築用配管システムが設けられる建築物等の構造に合わせて、環状膨出部が形成された管端の位置に制限されずに様々な構造を有する配管要素を自由に組み合わせて、当該システムによって画定される流体の流路を自由に設計することができる。
《第10実施形態》
以下、本発明の第10実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「第10方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
上述した第6方法を始めとする本発明方法は、前述したように、製造工程、移送工程及び施工工程を含む。本発明方法によれば、施工現場とは異なる場所にある工場等の製造現場において上述した製造工程が予め実行され、建築用配管システムを構成する配管要素の少なくとも1つの管端に環状膨出部が一体的に形成される。これにより、メカニカル形管継手を用いて配管要素同士を接続して編成される建築用配管システムの施工方法において、施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。また、配管要素の少なくとも1つの管端に環状膨出部を効率的に且つ高い精度にて形成することができる。
施工現場において編成される建築用配管システムを構成する複数の配管要素の相互の位置合わせ、接続強度、液密性又は気密性及びメカニカル形管継手による接続の作業性等について、より高い品質を達成する観点からは、配管要素及びメカニカル形管継手が製造現場から施工現場へと移送される前に、配管要素及びメカニカル形管継手の品質についての検査を行い、当該品質が所定の基準を満たす配管要素及びメカニカル管継手のみを製造現場から施工現場へと移送することが望ましい。
〈構成〉
そこで、第10方法は、上述した第6方法乃至第9方法の何れかであって、以下の検査工程を更に含むことを特徴とする、建築用配管システムの施工方法である。
検査工程:製造工程において製造された複数の配管要素について、個々の配管要素の寸法精度及び機械的強度並びにメカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素の接続強度及び液密性又は気密性からなる群より選ばれる1つ以上の品質について検査する工程。
更に、第10方法に含まれる移送工程においては、上記検査工程において検査された複数の配管要素及びメカニカル管継手のうち上記品質が所定の基準を満たす配管要素及びメカニカル管継手のみを建築用配管システムの施工現場へ移送する。
図7は、第10方法における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。図7に例示するフローチャートは、製造工程が実行されるステップS10と移送工程が実行されるステップS20との間に検査工程が実行されるステップS15が追加されている点を除き、上述した第6方法に関する説明において参照した図6に例示したフローチャートと同様である。従って、以下の説明においては、第10方法が更に備える検査工程及び検査工程の後に実行される移送工程に着目して、第10方法について説明する。
第10方法におけるステップS10においては、上述した第6方法乃至第9方法におけるステップS10と同様に、上述した製造工程が実行される。そして、図7に例示する第10方法においては、次のステップS15において、上述した検査工程が実行される。検査工程においては、製造工程において製造された複数の配管要素につき、個々の配管要素の寸法精度及び機械的強度並びにメカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素の接続強度及び液密性又は気密性からなる群より選ばれる1つ以上の品質が検査される。検査工程においては、配管要素単品としての検査に加えて、施工作業によって接続されるであろう上流側及び/又は下流側の配管要素等と仮組みした状態において、相互の位置合わせ、接続強度、液密性又は気密性、及び管継手による接続の作業性等についても検査することができる。
次に、ステップS20において移送工程が実行される。但し、第10方法において実行される移送工程においては、上述したステップS15において実行される検査工程において検査された複数の配管要素及びメカニカル管継手のうち上述した品質が所定の基準を満たす配管要素及びメカニカル管継手のみが製造現場から建築用配管システムの施工現場へ移送される。
〈効果〉
以上のように、第10方法によれば、検査工程において、製造工程において製造された複数の配管要素の各々の寸法精度及び機械的強度並びにメカニカル形管継手によって互いに接続された複数の配管要素の接続強度及び液密性又は気密性からなる群より選ばれる1つ以上の品質についての検査が行われる。そして、次の移送工程においては、上記検査工程において検査された複数の配管要素及びメカニカル管継手のうち上記品質が所定の基準を満たす配管要素及びメカニカル管継手のみが製造現場から建築用配管システムの施工現場へと移送される。
従って、第10方法によれば、施工現場において編成される建築用配管システムを構成する複数の配管要素の相互の位置合わせ、接続強度、液密性又は気密性及びメカニカル形管継手による接続の作業性等について、より高い品質を達成することができる。
《第11実施形態》
以下、本発明の第11実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「第11方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
プレス式管継手は、その単純な構造等に起因して安価且つ軽量であり、また本発明システムを構成する配管要素の管端に一体的に形成することができるので、本発明システムのコスト及び質量の低減に有効である。しかしながら、プレス式管継手の拡径部の内部に配管要素の管端が挿入された状態において環状膨出部及び拡径部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分に縮径加工(カシメ加工)を施すための工具(以降、「カシメ工具」と称呼される場合がある。)は非常に重い。具体的には、ハンディタイプのカシメ工具であっても、油圧機構を伴うため、その重量は例えば十数kgにも及ぶ。従って、施工現場の天井付近に配設された配管要素を個々に接続する場合、作業者は重いカシメ工具を天井に向けて掲げながらカシメ加工を施す必要があるため、作業負担が非常に大きく、作業者の疲労を招き易い。
〈構成〉
そこで、第11方法は、上述した第6方法乃至第10方法の何れかであって、以下に列挙する第1工程乃至第3工程を施工工程が含むことを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。
第1工程:複数の配管要素のうちの幾つかをプレス式管継手によって接続して第1中間ユニットを形成する。
第2工程:第1中間ユニットの最も上流側に配設された配管要素の上流側の管端である上流側端部及び最も下流側に配設された配管要素の下流側の管端である下流側端部にケーシング及び環状のシール部材を有する拡管式管継手をそれぞれ装着して第2中間ユニットを形成する。
第3工程:上流側端部及び下流側端部を上記拡管式管継手によって他の配管要素に接続して建築用配管システムを編成する。
尚、上記プレス式管継手の少なくとも一部は、配管要素と一体的に構成されたプレス式管継手である。具体的には、上記プレス式管継手の少なくとも一部は、配管要素の一方の管端における一定の範囲に亘って一体的に形成された拡径部と、拡径部に一体的に形成された環状膨出部と、環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、によって構成されている。
図8は、第11方法における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。図8に例示するように、第11方法におけるステップS10からステップS20迄の各工程の流れは上述した第10方法と同様であり、ステップS30において実行される施工工程が上述した第1工程乃至第3工程を含む点において、上述した第10方法とは異なる。従って、第11方法に関する以下の説明においては、上述した第1工程乃至第3工程を含む施工工程(ステップS30)についてのみ詳細に述べる。また、以下の説明においては、第11方法の施工工程に含まれる第1工程乃至第3工程の実行に伴って建築用配管システムが編成される様子を示す模式図である図9が適宜参照される。尚、図9においては、各工程の要点を理解し易くすること等を目的として、配管要素18、19a及び19bの具体的な構造は省略され、相互の接続部位の近傍のみが描かれている。
ステップS20において実行される移送工程が完了し、次のステップS30において施工工程が実行されると、先ずステップS31において第1工程が実行される。第1工程においては、上述したように、複数の配管要素のうちの幾つかがプレス式管継手によって接続されて第1中間ユニットが形成される。図9に示す例においては、4つの配管要素18が(そのうちの3つの配管要素18と一体的に形成された)3つのプレス式管継手41によって接続されて第1中間ユニット61が形成されている。第1工程においては、例えば4つの配管要素18を床の上において第1中間ユニット61を形成することができる。従って、上述したように非常に重いカシメ工具を天井に向けて掲げながらカシメ加工を施す必要が無い。
次に、ステップS32において第2工程が実行される。第2工程においては、上述したように、第1中間ユニットの上流側端部及び下流側端部に拡管式管継手がそれぞれ装着されて第2中間ユニットが形成される。図9に示す例においては、第1工程において形成された第1中間ユニット61の最も上流側に配設された配管要素18の上流側の管端(上流側端部)及び最も下流側に配設された配管要素18の下流側の管端(下流側端部)に拡管式管継手42a及び42bがそれぞれ装着されて第2中間ユニット62が形成されている。第2工程においても、例えば床の上において第1中間ユニット61の上流側及び下流側の端部に拡管式管継手を接続することができる。
次に、ステップS33において第3工程が実行される。第3工程においては、上述したように、第2中間ユニットの上流側及び下流側の端部が上記拡管式管継手によって他の配管要素に接続されて建築用配管システムが編成される。図9に示す例においては、第2工程において形成された第2中間ユニット62の上流側及び下流側の端部が、拡管式管継手42a及び42bを介して、例えば第11方法によって編成される建築用配管システムが設けられる建築物等における流体の流路を構成する配管要素19a及び19bにそれぞれ接続される。第3工程においては、建築物の天井等に配設された他の配管要素19a及び19bに第2中間ユニット62を接続する必要がある。この際、拡管式管継手42a及び42bを構成する締結部材(例えば、ボルトとナットとの組み合わせ等)を締結する作業は例えばハンドドリル又はインパクトレンチ等の電動式回転工具によって行われる。これらの電動式回転工具は比較的軽量であり、片手での締結作業も容易である。従って、第2中間ユニット62を他の配管要素19a及び19bに容易且つ迅速に接続することができるので、カシメ加工に比べて作業者の疲労を招く虞が低い。
〈効果〉
上記のように、第11方法に含まれる施工工程においては、第1工程において幾つかの配管要素をプレス式管継手によって接続して第1中間ユニットが形成され、第2工程において第1中間ユニットの上流側及び下流側の端部に拡管式管継手がそれぞれ装着されて第2中間ユニットが形成され、第3工程において拡管式管継手を介して第2中間ユニットが他の配管要素に接続されて建築用配管システムが編成される。
そのため、第1工程においては、例えば配管要素を床の上において第1中間ユニットを形成することができる。従って、上述したように非常に重いカシメ工具を天井に向けて掲げながらカシメ加工を施す必要が無い。また、第2工程においても、例えば床の上において第1中間ユニットの上流側及び下流側の端部に拡管式管継手を接続することができる。一方、第3工程においては、建築物の天井等に配設された他の配管要素に第2中間ユニットを接続する必要があるものの、拡管式管継手を構成する締結部材は例えばハンドドリル又はインパクトレンチ等の比較的軽量な電動式回転工具によって締結することができる。従って、第11方法によれば、従来の施工作業に比べて、第1中間ユニット及び第2中間ユニットの形成並びに第2中間ユニットの建築物への設置における作業者の負担を軽減することができるので、作業者の疲労を招く虞が低い。
《第12実施形態》
以下、本発明の第12実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(以降、「第12方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
前述したように、第4システム及び第5システムを構成する複数の配管要素のうちの少なくとも1つは上述した第1マーク及びRFタグをそれぞれ備えることができる。本発明に係る建築用配管システムの施工方法(本発明方法)によって編成される建築用配管システムを構成する複数の配管要素のうちの少なくとも1つもまた、このような第1マーク及びRFタグをそれぞれ備えることができる。
また、上述した検査工程における各種検査の実施、製造現場から施工現場への移送及び本発明方法によって編成される建築用配管システムが設けられる建築物等への最終的な設置に先立ち幾つかの配管要素からなる中間ユニットを形成すること等を目的として、メカニカル形管継手を構成する部品を予め仮組みしてもよい。更に、上述した移送工程における建築用配管システムを構成する部品等の損傷並びに/又は施工工程における当該システムを構成する部品及び/若しくは当該システムが設けられる建築物等の損傷を低減すること等を目的として、当該システムに養生部材を予め装着してもよい。
〈構成〉
そこで、第12方法は、上述した第6方法乃至第11方法の何れかであって、艤装工程を更に含むことを特徴とする建築用配管システムの施工方法である。艤装工程とは、施工工程及び/又は施工工程よりも前の何れかの時点において、以下に列挙する第1作業乃至第4作業からなる群より選ばれる1つ以上の作業を行う工程である。
第1作業:メカニカル形管継手を構成する部品を仮組みする作業。
第2作業:少なくとも1つの配管要素及び/又は当該配管要素と接続されるメカニカル形管継手の外周面に配管要素とメカニカル形管継手との接続に必要な相互差込代及び/又は相互割出に対応する印である第1マークを表示する作業。
第3作業:個々の配管要素の識別情報、施工位置情報、施工要領情報及び施工履歴情報からなる群より選ばれる少なくとも1つに対応する電子データの書き込み及び読み出しが可能なRFタグを装着し上記電子データを書き込む作業。
第4作業:建築用配管システムに養生部材を装着する作業。
尚、第1マーク及びRFタグの詳細については、前述した第4システム及び第5システムに関する説明において既に述べたものと同様であるので、ここでの説明は省略する。養生部材の具体例としては、例えば、上述した移送工程における建築用配管システムを構成する部品等の損傷を低減することを目的として仮組みされたメカニカル形管継手の開口部に装着される弾性材料からなるキャップ等を挙げることができる。このような養生部材をメカニカル形管継手のみならず配管要素の開口部に装着することにより、メカニカル形管継手及び配管要素の内部への異物の混入を防止することもできる。また、施工工程における建築用配管システムを構成する部品及び/若しくは建築用配管システムが設けられる建築物等の損傷を低減すること等を目的として建築用配管システムに装着される養生部材の具体例としては、例えば、クッション性を有するカバー等を挙げることができる。
図10は、第12方法における各工程の流れの一例を示すフローチャートである。図10に例示するように、第12方法におけるステップS10からステップS30迄の各工程の流れは上述した第6方法乃至第11方法の何れかと同様である。しかしながら、第12方法においては、ステップS30において実行される施工工程及び/又は施工工程よりも前の何れかの時点において、ステップS40に示す艤装工程が実行される点において第6方法乃至第11方法とは異なる。即ち、第12方法においては、図10に例示するように、製造工程の途中、製造工程と検査工程との間、検査工程の途中、検査工程と移送工程との間、移送工程の途中、移送工程と施工工程との間及び施工工程の途中の何れかの段階において実行される(図中に示す破線の矢印を参照)。
第1作業を行うことにより、例えば、配管要素単品としての検査に加えて、施工作業によって接続されるであろう上流側及び/又は下流側の配管要素等と仮組みした状態において、相互の位置合わせ、接続強度、液密性又は気密性、及び管継手による接続の作業性等についても検査工程において検査することができる。また、製造現場から施工現場への移送及び建築用配管システムが設けられる建築物等への最終的な設置に先立って上記第1作業を行うことにより、幾つかの配管要素からなる中間ユニットを形成して、移送作業及び/又は最終的な設置作業の効率を高めることもできる。
また、第2作業を行うことにより、例えば、配管要素とメカニカル形管継手とを接続する作業において作業者が第1マークを認識し、配管要素とメカニカル形管継手とを適切に接続するために必要な挿入代及び/又は割出量を容易且つ確実に達成することができる。
更に、第3作業を行うことにより、例えば、RFタグに対応するリーダ/ライタによって個々の配管要素の識別情報及び施工位置情報を読み取り、個々の配管要素の配置、姿勢及び施工順序等を作業者が正しく認識し、所期の設計を正確に反映した配管システムを正確に編成することが容易となる。更に、リーダ/ライタによって個々の配管要素の識別情報及び施工要領情報を読み取り、施工現場における個々の作業についての適正な接続加工力を作業者が確実に把握して、メカニカル形管継手と配管要素とを液密又は気密に接続する作業を容易化することができる。加えて、リーダ/ライタによって個々の配管要素の識別情報及び施工履歴情報を読み取り、施工作業及びメインテナンス作業の複雑化及び労力の増大を招くこと無く、建築用配管システムの施工完了時における検査又はメインテナンス等の作業の効率化及び精度向上を達成することができる。
また、工場等の製造現場から施工現場への配管要素等の輸送(移送工程)においては、所定の配送容器(例えば、コンテナ等)に収納された配管要素等を施工状況の進捗に応じて輸送・供給することが望ましく、施工作業の順序及び/又は個々の配管要素の位置に応じて配管要素等を配送容器内に格納(順建て)することが望ましい。これによれば、施工現場における作業者の混乱を防ぎ、円滑な施工作業の達成に寄与することができる。更には、自動車業界において標準化されているような、ジャストインタイムの生産・供給システムを採り入れてもよい。このような高度に効率化された施工過程における種々の確認作業において、RFタグは極めて有用なツールとなる。
上記のような製造現場(工場)から移送された配管要素等を施工現場において接続して建築用配管システムを編成するプロセスにおけるRFタグの活用について、以下に詳しく説明する。
先ず、各配管要素を製造現場としての工場等において製造した後、出荷までの間にRFタグを装着し、各種情報に対応する電子データをリーダ/ライタによってRFタグに格納(書き込み)する。上記情報の具体例としては、例えば、以下の(a)乃至(c)を挙げることができる。
(a)当該配管要素の認識番号、寸法及び名前等の個体識別情報。
(b)施工現場において施工する際の当該配管要素の位置(アドレス)及び設置姿勢並びに施工順序及びレイアウト順序等の情報。
(c)カシメ加工を施す際に当該配管要素に加えられるべき力(接続加工力)の大きさ及びスピード等の施工要領に関する情報。
移送工程によって製造現場から施工現場へと運ばれた配管要素が配送容器から搬出される際に、例えばハンディタイプのリーダ/ライタ又はスキャナ等によってRFタグに格納された情報を読み取ることにより、当該配管要素の素性、施工時のレイアウト、施工順序及び施工要領等の情報を作業者及び/又は監督者が容易に認識すると共に、これらの情報を電子的に共有することができる。リーダ/ライタ又はスキャナ等によるRFタグの読み取り及び/又は書き換えは、個々のRFタグについて個別に行うことも可能であり、或いは所定の範囲内に存在する複数のRFタグについて一括して行うことも可能である。
そして、適所に配置(例えば、吊り支持等)された複数の配管要素は例えばカシメ工具又は電動式回転工具等によって互いに接続される。この際、作業者及び/又は監督者は、RFタグに格納された情報に基づき、予め定められた施工順序に従い、予め定められた位置及び姿勢に配置し(吊り)、予め定められた加工工具によって、個々の配管要素を接続して、建築用配管システムを編成することができる。
この際、これらの工具にもリーダ/ライタが搭載され且つ工具の制御系と電気的に接続されて連携されていれば、施工(カシメ)状況及び施工工程の進捗状況を個々の配管要素のRFタグにリアルタイムに書き込むことができる。即ち、上述した(a)乃至(c)に加えて、更なる情報として、(d)接続作業(例えば、カシメ加工等)の実施状況(例えば、接続加工力等)及び施工工程の進捗度等の施工履歴情報をRFタグに書き加えることができる。従って、建築用配管システムの施工完了時における検査又は施工から一定期間が経過した後のメインテナンス等の際に、施工履歴を容易に且つ一括して参照することができる。斯かる観点からは、メカニカル形管継手の近傍であり且つ施工作業において支障の無い位置にRFタグが装着されることが好ましい。
尚、RFタグに格納される上述した情報(d)に含まれる接続作業の実施状況に対応する電子データとしては、例えば加工工具の電流値の推移を示す電子データ等を挙げることができる。また、施工工程の進捗度に対応する電子データとしては、例えば建築用配管システムにおけるカシメ工具の到達位置を示す電子データ等を挙げることができる。
更に、三次元的な位置情報をRFタグに格納することにより、個々の配管要素(に装着されたRFタグ)の三次元的な位置座標及び姿勢に関する情報を把握することができる。従って、当該情報に対応する電子データをハンディスキャナ等によって読み取り、ホストコンピュータ等によって演算することにより、建築用配管システム全体としての流体の経路(流路のアラインメント)、個々の配管要素の正確な位置及び所期の位置からのズレ等についても正確に把握することできる。その結果、これらの電子データに基づいて配管施工(結果)図を作成することも可能となる。必要であれば、これらの情報を、例えば、BIM(Building Information Modeling)と連携させたり、ブロックチェーンに組み入れたりして、トレーサビリティを担保することもできる。
加えて、第4作業を行うことにより、例えば、移送工程における建築用配管システムを構成する部品等の損傷並びに/又は施工工程における建築用配管システムを構成する部品及び/若しくは建築用配管システムが設けられる建築物等の損傷を低減することができる。
〈効果〉
前述したように、本発明に係る建築用配管システムの施工方法(本発明方法)によれば、製造現場において配管要素の管端に拡径部及び環状膨出部を効率的に且つ高い精度にて形成することができ、また施工現場における施工作業を大幅に低減することができる。本発明の第12実施形態に係る建築用配管システムの施工方法(第12方法)においては、上述した第1作業乃至第4作業からなる群より選ばれる1つ以上の作業を行う工程である艤装工程が施工工程及び/又は施工工程よりも前の何れかの時点において実行される。その結果、第1作業乃至第4作業の各々について上記に詳しく説明したような様々な効果が達成され、施工現場における施工作業の効率及び精度を大幅に向上させたり、施工完了時における建築用配管システムの検査又は施工完了後のメインテナンス等の作業の効率化及び精度向上を達成したりすることができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び当該実施形態の好ましい態様につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び好ましい態様に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
1…配管システム、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18、19a,19b…配管要素、16b…環状膨出部、16e…拡径部、16i,17i,17o…線分(第1マーク)、21…第1の管、22…第2の管、23…溶接部、24…配管要素13の上流側の端部、30…RFタグ、41…プレス式管継手、41c…斜線部(カシメ加工部分)、42a,42b…拡管式管継手、51…第1マーク、61…第1中間ユニット、62…第2中間ユニット、101A…ハウジング形管継手、110…シール部材、120…第1ケーシング、131S…第2セグメント、131P…外周部、131R…リム部、131F…フランジ部、210D…環状膨出部、211…配管要素、a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,n…接続部、イ…配管システム1の最上流端、ロ,ハ,ニ,ホ,ヘ,ト,チ,リ…配管要素3,8,9,11,12,13,15の下流端部。

Claims (10)

  1. 複数の配管要素によって構成された建築用配管システムであって、
    複数の前記配管要素のうち少なくとも1つの前記配管要素は、管端における一定の範囲に亘って拡径部が一体的に形成され且つ前記拡径部には全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部が一体的に形成されることによりメカニカル形管継手の一部又はメカニカル形管継手と他の前記配管要素との接続構造の一部が構成された管端である第1管端を備えており、
    前記メカニカル形管継手の少なくとも1つは、前記拡径部と、前記環状膨出部と、前記環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、によって構成されたプレス式管継手であって、
    前記プレス式管継手が構成された前記配管要素においては、前記第1管端ではない管端のうち少なくとも1つが直管状の形状を有しており、
    前記プレス式管継手の前記拡径部には、隣接する配管要素の直管状の形状を有する管端が嵌装され、カシメ固定されている、
    ことを特徴とする建築用配管システム。
  2. 請求項1に記載された建築用配管システムであって、
    複数の前記配管要素の少なくとも一部は、二次元的又は三次元的に延在する流路を構成するように接続されている、
    ことを特徴とする建築用配管システム。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された建築用配管システムであって、
    複数の前記配管要素のうち前記建築用配管システムの最も上流側に配設された前記配管要素及び前記建築用配管システムの最も下流側に配設された前記配管要素を除く他の全ての前記配管要素において上流側の管端のみ又は下流側の管端のみに統一的に前記プレス式管継手を構成する前記拡径部及び前記環状膨出部が形成されており、
    前記プレス式管継手の前記拡径部には、隣接する配管要素の直管状の形状を有する管端が嵌装され、カシメ固定されている、
    ことを特徴とする建築用配管システム。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された建築用配管システムであって、
    少なくとも1つの前記配管要素及び当該配管要素と接続される前記メカニカル形管継手の外周面に当該配管要素と当該メカニカル形管継手との接続に必要な相互差込代及び/又は相互割出に対応する印である第1マークが表示されている、
    ことを特徴とする建築用配管システム。
  5. 請求項1に記載された建築用配管システムの施工方法であって、
    製造現場において、前記建築用配管システムを構成する前記配管要素の少なくとも1つの管端から所定の距離だけ離れた位置に全周に亘って径方向において外側に向かって膨出した部分である環状膨出部を一体的に形成することを含む製造工程と、
    前記配管要素及び前記メカニカル管継手を前記製造現場から前記建築用配管システムの施工現場へ移送する移送工程と、
    前記移送工程において移送された複数の前記配管要素を前記施工現場において前記メカニカル形管継手によって互いに接続して前記建築用配管システムを編成する施工工程と、
    を含み、
    前記施工工程において構成される前記メカニカル形管継手と前記配管要素との接続構造において、前記配管要素の前記環状膨出部が形成された前記管端は、前記メカニカル形管継手の一部を構成している、
    ことを特徴とする、建築用配管システムの施工方法。
  6. 請求項5に記載された建築用配管システムの施工方法であって、
    前記施工工程において、複数の前記配管要素の少なくとも一部を、二次元的又は三次元的に延在する流路を構成するように接続する、
    ことを特徴とする建築用配管システムの施工方法。
  7. 請求項5又は請求項6に記載された建築用配管システムの施工方法であって、
    前記建築用配管システムを構成する複数の前記配管要素のうち前記建築用配管システムの最も上流側に配設された前記配管要素及び前記建築用配管システムの最も下流側に配設された前記配管要素を除く他の全ての前記配管要素において上流側の管端のみ又は下流側の管端のみに統一的に前記環状膨出部が形成されている、
    ことを特徴とする建築用配管システムの施工方法。
  8. 請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載された建築用配管システムの施工方法であって、
    前記メカニカル形管継手の少なくとも1つは、
    前記配管要素の一方の管端における一定の範囲に亘って一体的に形成された拡径部と、
    前記拡径部に一体的に形成された前記環状膨出部と、
    前記環状膨出部の内側に内装された環状のシール部材と、
    によって構成されたプレス式管継手であり、
    前記施工工程において、前記プレス式管継手を構成する前記配管要素である第1要素とは異なる他の前記配管要素である第2要素の前記環状膨出部が形成されていない管端が前記第1要素の前記拡径部内に挿入された状態において前記第1要素の前記環状膨出部及び前記拡径部の少なくとも一部を縮径させることにより前記第1要素と前記第2要素とを前記プレス式管継手によって締結する、
    ことを特徴とする建築用配管システムの施工方法。
  9. 請求項5乃至請求項8の何れか1項に記載された建築用配管システムの施工方法であって、
    前記製造工程において製造された複数の前記配管要素について、個々の配管要素の寸法精度及び機械的強度並びに前記メカニカル形管継手によって互いに接続された複数の前記配管要素の接続強度及び液密性又は気密性からなる群より選ばれる1つ以上の品質について検査する検査工程、
    を更に含み、
    移送工程において、前記検査工程において検査された複数の前記配管要素及び前記メカニカル管継手のうち前記品質が所定の基準を満たす前記配管要素及び前記メカニカル管継手のみを前記建築用配管システムの施工現場へ移送する、
    ことを特徴とする、建築用配管システムの施工方法。
  10. 請求項5乃至請求項9の何れか1項に記載された建築用配管システムの施工方法であって、
    前記施工工程及び/又は施工工程よりも前の何れかの時点において、
    前記メカニカル形管継手を構成する部品を仮組みする作業、少なくとも1つの前記配管要素及び当該配管要素と接続される前記メカニカル形管継手の外周面に当該配管要素と当該メカニカル形管継手との接続に必要な相互差込代及び/又は相互割出に対応する印である第1マークを表示する作業並びに前記建築用配管システムに養生部材を装着する作業からなる群より選ばれる1つ以上の作業を行う艤装工程を更に含む、
    ことを特徴とする建築用配管システムの施工方法。
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