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JP2022146628A - 錠剤及びその製造方法 - Google Patents

錠剤及びその製造方法 Download PDF

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JP2022146628A
JP2022146628A JP2021047689A JP2021047689A JP2022146628A JP 2022146628 A JP2022146628 A JP 2022146628A JP 2021047689 A JP2021047689 A JP 2021047689A JP 2021047689 A JP2021047689 A JP 2021047689A JP 2022146628 A JP2022146628 A JP 2022146628A
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crystalline cellulose
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JP2021047689A
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章裕 畦津
Akihiro Azetsu
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Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
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Abstract

【課題】粉体原料の混合及び直打法による打錠を連続的に行う連続生産システムにおいて、良好な物性を有する錠剤を安定的に製造できる錠剤の製造方法を提供する。【解決手段】錠剤の製造方法は、粉体原料の混合、充填及び圧縮成形を連続的に行う装置を用いて、活性成分、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含む錠剤を製造する製造工程を含み、前記結晶セルロースの見掛け比容積が4.0cm3/g以上9.0cm3/g以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、錠剤及びその製造方法に関する。
錠剤等の固形製剤の製造方法としては、製造工程を構成するいくつかの単位操作や工程を経て製造されるバッチ式の生産が一般である。しかし、固形製剤の開発において、バッチ式の生産方式では実験室スケールでの研究開発段階から製造スケールに合わせてスケールアップでの検証が必要となる。また、製造スケールにおいて研究開発スケールで取得したデータが有用かを検証するには多量の原薬等を使用し、また検証期間が長期となる。これらのことから、バッチ式の生産方式では、膨大なコストと時間がかかる。また、実生産においてもバッチ式の生産方式の場合、工程間での待ち時間が発生し、生産効率が悪い。
これらの課題を解決するために、バッチ式の代わりに、各製造工程を連続的に行う連続生産が検討されている。連続生産では、スケールアップ試験が不要となるため、開発期間を短縮することが可能となる。また、連続生産の場合、実生産においても生産効率が上がることが期待できる。
例えば、特許文献1には、湿式造粒法による口腔内崩壊錠連続生産が報告されている。また、特許文献2には、錠剤を作製する連続生産システムが開示されている。
特開2020-189805号公報 特開2017-001081号公報
しかしながら、特許文献1等に記載の湿式造粒法では多くの工程を経るために、コストが高く、また、水分や熱に弱い薬物では薬効が低下するという問題がある。そのため、錠剤の製法としては、コストの観点から、湿式造粒ではなく、直打法による錠剤の生産が好まれる。
また、錠剤の連続生産システムを用いて、良好な物性を有する錠剤を安定して製造できる方法が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、粉体原料の混合及び直打法による打錠を連続的に行う連続生産システムにおいて、良好な物性を有する錠剤を安定的に製造できる錠剤の製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 粉体原料の混合、充填及び圧縮成形を連続的に行う装置を用いて、活性成分、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含む錠剤を製造する製造工程を含み、
前記結晶セルロースの見掛け比容積が4.0cm/g以上9.0cm/g以下である、錠剤の製造方法。
(2) 前記製造工程が、
前記装置が備える混合手段で前記粉体原料の混合を行い、混合粉体を得る混合工程と、
前記混合粉体を、前記混合手段に連結された圧縮成形手段に供給及び充填する充填工程と、
前記充填工程後の前記混合粉体を前記圧縮成形手段で圧縮成形する圧縮成形工程と、
を含む、(1)に記載の錠剤の製造方法。
(3) 前記錠剤が、流動化剤、及び乳糖水和物を更に含む、(1)又は(2)に記載の錠剤の製造方法。
(4) 前記錠剤100質量部に対して、
前記活性成分の含有量が10質量部以上92質量部以下であり、
前記結晶セルロースの含有量が5質量部以上50質量部以下であり、
前記崩壊剤の含有量が1質量部以上2質量部以下であり、
前記滑沢剤の含有量が1質量部以上2質量部以下であり、
前記流動化剤の含有量が0質量部以上2質量部以下であり、
前記乳糖水和物の含有量が0質量部以上45質量部以下である、(3)に記載の錠剤の製造方法。
(5) 前記流動化剤は、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(3)又は(4)に記載の錠剤の製造方法。
(6) 前記結晶セルロースの平均粒子径が10μm以上200μm以下であり、且つ、安息角が40°以上60°以下である、(1)~(5)のいずれか一つに記載の錠剤の製造方法。
(7) 前記崩壊剤が、アルファー化デンプン、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、及び部分アルファー化デンプンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)~(6)のいずれか一つに記載の錠剤の製造方法。
(8) (1)~(7)のいずれか一つに記載の錠剤の製造方法によって得られた錠剤。
上記態様の製造方法によれば、粉体原料の混合及び直打法による打錠を連続的に行う連続生産システムにおいて、良好な物性を有する錠剤を安定的に製造できる錠剤の製造方法を提供することができる。
実施例1における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 実施例2における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 実施例3における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 実施例4における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 実施例5における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 実施例6における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 比較例1における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 比較例2における連続生産時(60分間)の硬度の変化を示すグラフである。 比較例3におけるバッチ式生産による打錠時(10分間)の硬度の変化を示すグラフである。
以下、本発明を実施する為の最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<錠剤の製造方法>
本実施形態の錠剤の製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」と略記する場合がある)は、粉体原料の混合、充填及び圧縮成形を連続的に行う装置を用いて、活性成分、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含む錠剤を製造する製造工程を含む。
本実施形態の製造方法で用いられる結晶セルロースの見掛け比容積は、4.0cm/g以上9.0cm/g以下であり、4.1cm/g以上8.7cm/g以下であることが好ましく、4.3cm/g以上8.5cm/g以下であることがより好ましく、4.5cm/g以上8.3cm/g以下であることがさらに好ましい。結晶セルロースの見掛け比容積が上記下限値以上であることで、得られる錠剤の硬度及び崩壊性が良好になる傾向がみられる。一方で、結晶セルロースの見掛け比容積が上記上限値以下であることで、錠剤製造時の硬度の安定性が良好になる傾向がみられる。
結晶セルロースの見掛け比容積は、例えば、以下に示す方法で測定することができる。
具体的には、まず、結晶セルロースを100cmのガラス製メスシリンダーに定量フィーダー等を用いて、2分間以上3分間以下程度かけて粗充填する。その後、粉体層上面を筆のような軟らかい刷毛で水平にならし、その容積を読みとり、容積を結晶セルロースの質量で除した値を見掛け比容積(cm/g)とする。結晶セルロースの質量は容積が70cm以上100cm以下程度になるように適宜決定する。
本実施形態の製造方法は、上記構成を有することで、粉体原料の混合及び直打法による打錠を連続的に行う連続生産システムにおいて、良好な物性、具体的には、硬度が良好な錠剤を安定的に製造することができ、また、耐摩損性に優れる錠剤が得られる。また、従来のバッチ式生産よりも、原薬(活性成分)の含有量が均一な錠剤を安定的に製造することができる。
次いで、本実施形態の製造方法の各工程について以下に詳細を説明する。
[製造工程]
製造工程では、粉体原料の混合、充填及び圧縮成形を連続的に行う装置を用いて、活性成分、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含む錠剤を製造する。
製造工程で用いられる装置としては、粉体原料の混合、充填及び圧縮成形を連続的に行う装置(以下、「連続生産システム」又は「連続生産機」という)である。
連続生産機は、定量フィーダー、混合手段、充填手段、及び圧縮成形手段を備え、これら手段が連結しているものであれば、特に限定されない。
定量フィーダーは、各種粉体原料を定量し、混合手段に供給するものである。連続生産機において、定量フィーダーの配置及び形状等は特に限定されず、公知のものを適宜選択して用いることができる。連続生産機は、定量フィーダーを1以上備えることができ、混合する粉体原料の種類数によって変化するため、複数あってもよく、特に数量を限定するものではない。混合する粉体の種類数にあわせた数の定量フィーダーを備えることで、各粉体原料を独立して定量し、混合手段に供給することができる。
混合手段は、粉体原料の混合に一般的に使用される公知の混合装置を用いることができる。公知の混合装置としては、例えば、供給口から供給された粉体原料が下方に流れ、その間に攪拌混合でき、攪拌軸が垂直又は斜めに傾いて配置されている垂直混合装置や、筒状部材内の軸中央部に自転する攪拌軸が配置されており、前記攪拌軸を回転させるモーターと、回転により粉体原料を略水平方向に移動させる攪拌羽根とを備える水平混合装置等が挙げられる。より具体的な混合装置としては、例えば、V型、W型、ダブルコーン型、コンテナタック型混合機等の容器回転式混合機;高速攪拌型、万能攪拌型、リボン型、ナウター型混合機等の攪拌式混合機等が挙げられる。連続生産機は、混合手段を1以上備えることができ、特に数量を限定するものではない。
充填手段は、混合手段で得られた混合粉体を圧縮成形手段に充填するためのものであり、公知の充填装置を用いることができる。
圧縮成形手段は、混合手段で得られた混合粉体を圧縮成形するために一般的に使用される圧縮成形機を用いることができる。このような圧縮成形機としては、例えば、静圧プレス機、ブリケッティングローラー型プレス機、平滑ローラー型プレス機等のローラー式プレス機、シングルパンチ打錠機、ロータリー打錠機等が挙げられる。
上述した各種手段を備える連続生産機としては、例えば、特許文献2に記載の粉体混合供給装置を備える粉体圧縮成形機が挙げられ、より具体的には、株式会社菊水製作所製の「CRA-RIS SYSTEM」等が挙げられる。
製造工程は、混合工程と、充填工程と、圧縮成形工程と、を含むことが好ましい。
(混合工程)
混合工程では、連続生産機が備える混合手段で粉体原料の混合を行い、混合粉体を得る。粉体原料の混合方法としては、通常行われる方法であれば特に限定されず、例えば、上述した、V型、W型、ダブルコーン型、コンテナタック型混合機等の容器回転式混合機、或いは、高速攪拌型、万能攪拌型、リボン型、ナウター型混合機等の攪拌式混合機を使用した方法が挙げられる。
(充填工程)
充填工程では、混合工程で得られた混合粉体を、混合手段に連結された圧縮成形手段に供給及び充填する。
混合粉体の充填方法としては、通常行われる方法であれば特に限定されない。
(圧縮成形工程)
圧縮成形工程では、前記充填工程後の前記混合粉体を圧縮成形手段で圧縮成形する。
圧縮成形方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、例えば、臼と杵を使用し所望の形状に圧縮成形する方法であってもよく、予めシート状に圧縮成形した後所望の形状に割断する方法であってもよい。
また、圧縮成形時の圧力(以下、「打錠圧力」又は「打圧」ともいう)は、できるだけ低くすることが望ましく、20kN以下であることが好ましく、15kN以下であることがより好ましい。打錠圧力と錠剤の崩壊性は、錠剤内の空隙率と水浸透性に相関がある。そのため、打錠圧力が上記上限値以下であることで、口腔内崩壊錠としての崩壊性をより確保することができる。
(その他の工程)
製造工程は、混合工程の前に、定量供給工程を更に含むことが好ましい。
定量供給工程では、連続生産機が備える定量フィーダーを用いて、各種粉体原料を定量子ながら、前記混合手段に供給する。
粉体原料の供給方法としては、例えば、粉体の自重によって供給する方法であってもよく、強制的に供給する方法であってもよく、噴霧装置(噴射装置)を用いて粉体を供給する方法であってもよい。
本実施形態の製造方法では、上記のとおり、混合工程から圧縮成形工程までを連続的に行うことができる。これにより、硬度が良好な錠剤を安定的に製造でき、耐摩損性に優れる錠剤が得られる。また、そのような錠剤を短期間に開発することができ、生産コストも下げることが可能となるため、医療への大きな貢献が期待できる。
[原料]
次いで、本実施形態の製造方法で用いられる各種原料について以下に詳細を説明する。
(結晶セルロース)
結晶セルロースとしては、少なくとも、食品添加物公定書第8版に記載の微結晶セルロースの確認試験に適合するものであり、好ましくは、第17改正日本薬局方に記載の結晶セルロースの確認試験に適合するものである。
セルロースの結晶形としてはI型、II型、III型、IV型等が知られているが、中でも、結晶セルロースはI型結晶であることが好ましい。I型結晶はラミー、コットンリンター、木材パルプ等の天然セルロースと同じ結晶構造であるため、天然資源を用いるだけで特別な処理が不要であり、コスト及び環境への影響の点で優れている。
結晶セルロースの平均粒子径が10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
平均粒子径が上記下限値以上であることで、流動性がより良好なものとなる。一方で、平均粒子径が上記上限値以下であることで、成形性がより良好なものとなる。
なお、結晶セルロースの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(Partica LA-950 V2型(商品名)、堀場製作所製)を用いて測定される累積体積50%の粒子径である。
結晶セルロースの安息角は40°以上60°以下であることが好ましい。
安息角が上記下限値以上であることで、成形性がより良好なものとなる。一方で、安息角が上記上限値以下であることで、流動性がより良好なものとなる。
結晶セルロースの安息角は、粉体水分を3.5質量%以上4.5質量%以下に調整した後、パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)で測定する。
好ましい結晶セルロースの物性の一例としては、見掛け比容積が4.0cm/g以上9.0cm/g以下であり、平均粒子径が10μm以上200μm以下であり、且つ、安息角が40°以上60°以下であるものである。
結晶セルロースの圧縮度は40%以上60%以下であることが好ましい。
圧縮度が上記下限値以上であることで、成形性がより良好なものとなる。一方で、上記上限値以下であることで、流動性がより良好なものとなる。
結晶セルロースの圧縮度は下記式で求めることができる。
「圧縮度(%)」
=100×[{1/(見掛けタッピング比容積)}-{1/(見掛け比容積)}/{1/(見掛けタッピング比容積)}
なお、見掛けタッピング比容積は、例えば、以下に示す方法で測定することができる。まず、市販粉体物性測定機(ホソカワミクロン製、パウダーテスターT-R型)を用いて、100cmカップに粉体試料を充填し、180回タッピングする。その後、カップの容積を、カップに充填された粉体試料の質量で除した値を見掛けタッピング比容積(cm/g)とする。
結晶セルロースの粒子の短径に対する長径の比L/Dは、1.5以上4.0以下であることが好ましく、1.7以上3.5以下であることがより好ましく、2.0以上3.0以下であることがさらに好ましい。
L/Dが上記範囲内であることにより、活性成分との混合性も良好であり、細長い粒子同士の絡み合いも適度であり、成形性と崩壊性のバランスにより優れる。
結晶セルロース粒子の長径(L)及び短径(D)は、マイクロスコープで測定できる。粒子200個を観察し、それぞれの長径及び短径を測定し、L/Dの比を算出する。その後、粒子200個の平均値をセルロース粉末のL/Dとする。なお、長径とは、マイクロスコープで観察された粒子の最も長い方向における長さであり、短径とは、長径に垂直方向で最も長い部分の長さである。
結晶セルロースの吸油量は、50質量%以上250質量%以下であること好ましく、70質量%以上230質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上220質量%以下であることがさらに好ましい。
吸油量が上記下限値以上であることで、スティッキング等の打錠障害をより抑制できる。一方で、吸油量が上記上限値以下であることで、錠剤の硬度をより良好なものとすることができる。
結晶セルロースの吸油量は、結晶セルロースに保持されα-トコフェノールの飽和質量を、結晶セルロースの質量に対する割合(百分率)で表した値である。
錠剤中の結晶セルロースの含有量は、錠剤100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。結晶セルロースの含有量が上記下限値以上であることで、成形性をより良好なものとすることができる。一方で、結晶セルロースの含有量が上記上限値以下であることで、コストをより効果的に抑えることができる。
(結晶セルロースの製造方法)
以下に、結晶セルロースの製造方法について記述する。
結晶セルロースは、例えば、加水分解処理された天然セルロース系物質を適当な媒体に分散して得られるセルロース分散液を乾燥することにより得られる。この場合、加水分解処理により得られる、加水分解反応溶液から、加水分解処理されたセルロース系物質を含む固形分を単離し、別途これを適当な媒体に分散させて調製した分散液を乾燥してもよいし、また、同加水分解溶液がそのままの状態で、セルロース分散液を形成している場合はこの分散液を直接乾燥することもできる。
天然セルロース系物質とは、植物性でも動物性でもよく、例えば、木材、竹、コットン、ラミー、ホヤ、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース等のセルロースを含有する天然物由来の繊維質物質であり、セルロースI型の結晶構造を有していることが好ましい。原料として、前記のうち1種の天然セルロース系物質を使用してもよく、2種以上を混合したものを使用することも可能である。また、精製パルプの形態で使用することが好ましいが、パルプの精製方法には特に制限はなく、溶解パルプ、クラフトパルプ、NBKPパルプ等いずれのパルプを使用してもよい。
加水分解方法は、酸加水分解であっても、アルカリ酸化分解、熱水分解、スチームエクプロージョン等であってもよく、いずれかの方法単独であってもよく、2種を併用することも可能である。
上記製法において、天然セルロース系物質を含む固形分を、適当な媒体に分散させる場合に用いられる媒体としては、水が好ましいが、工業的に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、2-メチルブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類が挙げられる。特に有機溶剤は、医薬品に使用されるものが好ましく、そのようなものとしては「医薬品添加物事典2016」(薬事日報社(株)発行)に溶剤として分類されるものが挙げられる。水、有機溶剤はそれを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、1種の媒体で一旦分散させたのち、その媒体を除去し、異なる媒体に分散させてもよい。
セルロース分散粒子の平均粒子径は、加水分解による原料セルロースの重合度、並びに、セルロースの加水分解及び分散工程のうち少なくともいずれかでの攪拌力を調整することにより、所望の範囲に制御することができる。一般に、加水分解溶液の酸、アルカリ濃度、反応温度を高くすると、セルロース重合度が低下し、分散液中のセルロース平均粒子径が小さくなる傾向にあり、また、溶液の攪拌力を強めても、セルロース分散粒子の平均粒子径が小さくなる傾向にある。天然セルロース系物質の加水分解方法は、酸加水分解であってもよく、アルカリ酸化分解、熱水分解、スチームエクプロージョン等であってもよい。また、これらの方法を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
天然セルロース系物質の加水分解には酸又はアルカリを使用することができるが、工業的には酸を使用することが多い。加水分解時の酸濃度は、0.1質量%以上1.0質量%以下が好ましい。酸濃度が上記下限値以上であることで、天然セルロース系物質の加水分解反応をより効率的に進めることができる。一方、酸濃度が上記上限値以下であることで、天然セルロース系物質の加水分解が進みすぎることをより効果的に抑制し、セルロース分散粒子の平均粒子径が10μm未満となることをより効果的に抑制することができる。
また、加水分解反応で平均粒子径を制御する場合にディスク式噴霧乾燥を行うときには、ディスク式の回転盤速度、及び噴霧乾燥に供するセルロース分散液の固形分濃度も制御する必要がある。セルロース分散液の固形分濃度は1質量%以上7質量%以下の範囲が好ましく、噴霧乾燥のディスクの周速は、130m/秒以上220m/秒以下が好ましい。固形分濃度が上記下限値以上であることで、生産性を良好に保つことができる。一方、固形分濃度が上記上限値以下であることで、周速130m/秒では、粗大な二次凝集物が発生することをより効果的に抑制することができる。こうして得られたセルロース粉末を配合して得られた錠剤は、硬度がより高く、崩壊もより早い傾向が見られる。また、固形分濃度が上記上限値以下であることで、周速を上げていき、220m/秒であっても、平均粒子径を所望の大きさに制御することができる。
セルロース分散液を乾燥させてセルロース粉末を得る際の乾燥方法は、特に制限はない。例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、棚乾燥、気流乾燥、真空乾燥のいずれを使用してもよく、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。噴霧乾燥する際の噴霧方法は、ディスク式、加圧ノズル、加圧二流体ノズル、加圧四流体ノズル等のいずれの噴霧方法でもよく、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記の噴霧乾燥の際には、分散液の表面張力を下げる目的で、微量の水溶性高分子、界面活性剤を添加してもよく、媒体の気化速度を促進させる目的で分散液に発泡剤又はガスを添加してもよい。
乾燥後のセルロース粉末の平均粒子径が大きい場合でも、後述する粉砕工程に供することにより、平均粒子径は所望の数値範囲内に調整可能である。
粉砕工程では、乾燥後のセルロース粉末を、超遠心粉砕機(ZM-200、Retsch製)、ジェットミル(STJ-200、セイシン企業製)、ハンマーミル(H-12、ホソカワミクロン製)、バンタムミル(AP-B、ホソカワミクロン製)、ピンミル(160Z、パウレック製)、フェザミル(FM、ホソカワミクロン製)、ハンマーミル(HM-600、奈良機械製作所製)、フラッシュミル(FL-250N、ダルトン製)、ボールミル(Emax、Retsch製)、振動ボールミル(2C、TRU製)、スクリーンを通過させるスクリーンミル(U30、パウレック製)等の粉砕機で粉砕することにより実施できる。特に、ジェットミル粉砕機(STJ-200、セイシン企業製)は、高い空気圧で粒子同士を衝突させながら粉砕する気流式粉砕機であり、二次粒子が破砕され一次粒子化しやすいため、好ましい。
(活性成分)
活性成分としては、常温で粉末の形態にあるものであればいずれの薬効成分でもよく、また結晶及び非晶質のいずれの形態でもよい。また、医薬品薬効成分、食品成分、健康食品成分を含む。
例えば活性成分のうち医薬品薬効成分としては、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、精神神経用薬、骨格筋弛緩薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗鬆症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。薬効成分は、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。具体的には、例えば、抗癲癇薬(フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム、等)、解熱鎮痛消炎薬(アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド、等)、鎮暈薬(ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール、等)、麻薬(塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール等)、精神神経用薬(塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン、等)、骨格筋弛緩薬(クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン、等)、自律神経用薬(塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン、等)、鎮痙薬(硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスコポラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン、等)、抗パーキンソン薬(塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ、等)、抗ヒスタミン薬(塩酸ジフェンヒドラミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン、等)、強心剤(アミノフィリン、カフェイン、dl-塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン、等)、不整脈用薬(塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド、等)、利尿薬(塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド、等)、血圧降下薬(臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ、等)、血管収縮薬(メシル酸ジヒドロエルゴタミン、等)、血管拡張薬(塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン、等)、動脈硬化用薬(リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート、等)、循環器官用薬(塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン、等)、呼吸促進薬(塩酸ジメフリン、等)、鎮咳去痰薬(リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L-メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス、等)、利胆薬(オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン、等)、整腸薬(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、等)、消化器官用薬(メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン、等)、ビタミン剤(L-アスコルビン酸ナトリウム、酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン、等)、抗生物質(ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、セフロキシムアキセチル、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム、等)、化学療法薬(スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、等)が挙げられる。
その他の活性成分としては、カフェイン、ランソプラゾール、ファモチジン、オメプラゾール、クエン酸モサプリド、ボグリボース、酒石酸ゾルピデム、ロラタジン、イミダプリル塩酸塩、ミゾリビン、塩酸セフカペンピボキシル、レボフロキサシン、リスペリドン、コハク酸スマトリプタン、フマル酸クエチアピン、コハク酸ソリフェナシン、グルコサミン、グルコサミン塩酸塩、N-アセチルグルコサミン、コエンザイムQ10、ギムネマ、アガリクス、コラーゲン、サイリウムハスク末、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸塩、ウコン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸亜鉛、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、防風痛聖散、明日葉、アスタキサンチン、アルファーリポ酸、イチョウ葉、エラスチン、L-カルニチン、キトサン、クロレラ、スピルリナ、セラミド、コノギリヤシ、ヒアルロン酸、ビルベリー、β-グルカン、マカ、松樹皮抽出物、ルテイン、アフリカマンゴノキ、柑橘系フルーツ抽出エキス、キノコキトサン、葛の花エキス、グリーンコーヒー豆エキス、グリーンルイボス、黒酢、オルニチン、アミノ酸、オリーブ、クルクミン、アガリクス、霊芝等菌類、リン脂質、オリゴ乳酸、フェルラ酸、青大豆パウダー、ラクトビオン酸、キャッツクロー、ポリフェノール等が挙げられる。
錠剤において、活性成分は、当該活性成分の治療等の効果の発現に有効な量となる量にて適宜含有させることができるが、錠剤中の活性成分の含有量は、例えば、錠剤100質量部に対して、10質量部以上92質量部以下とすることができる。
(崩壊剤)
崩壊剤としては、例えば、寒天;クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類;クロスポビドン、クロスポビドンコポリマー等の合成高分子等の「医薬品添加物事典2016」(薬事日報社(株)発行)に崩壊剤として分類されるものやその他の添加剤等の、製剤や食品等に使用可能な成分が挙げられる。これら崩壊剤を単独で使用してもよく、2種以上を併用することもよい。中でも、崩壊剤としては、アルファー化デンプン、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、及び部分アルファー化デンプンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
錠剤中の崩壊剤の含有量は、錠剤100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。崩壊剤の含有量が上記下限値以上であることで、崩壊性により優れる。一方で、崩壊剤の含有量が上記上限値以下であることで、成形性により優れる。
(滑沢剤)
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等の「医薬品添加物事典2016」(薬事日報社(株)発行)に滑沢剤として分類されるものが挙げられる。これら滑沢剤を単独で使用してもよく、2種以上を併用することもよい。
錠剤中の滑沢剤の含有量は、錠剤100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下であることが好ましく、1質量部以上2質量部以下であることがより好ましい。滑沢剤の含有量が上記下限値以上であることで、打錠障害をより抑制できる。一方で、滑沢剤の含有量が上記上限値以下であることで、成形性により優れる。
(流動化剤)
流動化剤としては、例えば、「医薬品添加物事典2016」(薬事日報社(株)発行)に流動化剤として分類されるもの等が挙げられる。これら流動化剤を単独で使用してもよく、2種以上を併用することもよい。中でも、流動化改善剤としては、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、軽質無水ケイ酸がより好ましい。
錠剤中の流動化剤の含有量は、錠剤100質量部に対して、0質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0質量部超1質量部以下であることがより好ましい。流動化剤の含有量が上記下限値超であることで、流動性により優れる。一方で、流動化剤の含有量が上記上限値以下であることで、成形性により優れる。
(乳糖水和物)
乳糖水和物としては、賦形剤として一般的に使用されているものを用いることができる。市販の乳糖水和物としては、例えば、「SuperTab 11SD」(DFEファーマ(株)製)等が挙げられる。
錠剤中の乳糖水和物の含有量は、錠剤100質量部に対して、0質量部以上45質量部以下であることが好ましく、0質量部超43質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上41質量部以下であることがさらに好ましい。乳糖水和物の含有量が上記下限値超であることで、流動性により優れる。一方で、乳糖水和物の含有量が上記上限値以下であることで、成形性により優れる。
好ましい錠剤(或いは、混合粉末)の組成としては、例えば、錠剤(或いは、混合粉末)100質量部に対して、
活性成分の含有量が10質量部以上92質量部以下であり、
結晶セルロースの含有量が5質量部以上50質量部以下であり、
崩壊剤の含有量が1質量部以上2質量部以下であり、
滑沢剤の含有量が1質量部以上2質量部以下であり、
流動化剤の含有量が0質量部以上2質量部以下であり、
乳糖水和物の含有量が0質量部以上45質量部以下であるもの等が挙げられる。
<錠剤>
本実施形態の製造方法を用いて得られる錠剤は、硬度及び耐摩損性に優れる。
錠剤硬度は40N以上200N未満であることが好ましく、50N以上200N未満であることがより好ましく、90N以上195N以下であることがさらに好ましい。錠剤硬度が上記下限値以上であることで、輸送や保管中に錠剤側面が掛けたり、割れたりすることをより効果的に抑制することができる。一方、錠剤硬度が上記上限値未満であることで、錠剤の崩壊性をより良好なものとすることができる。
錠剤硬度は、例えば、一般的に使用される錠剤硬度測定器(Tablet Tester 8M/DR.SCHLEUNIGER製)等を用いて測定することができる。
錠剤の摩損度は、0.20質量%以下であることが好ましく、0.18質量%以下であることがより好ましく、0.17質量%以下であることがさらに好ましい。
錠剤の摩損度が上記上限値以下であることで、コーティング錠を作製する際に錠剤側面の割れや欠けの発生をより抑制できる。
錠剤の摩損度は、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
錠剤の崩壊時間は、30分未満であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。
錠剤の崩壊時間が上記上限値未満であることで、崩壊性により優れる。
錠剤の崩壊時間は、第17改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に準じて実施した錠剤の崩壊試験によって測定することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、結晶セルロースの物性の測定方法、及び、実施例及び比較例で製造された錠剤の特性の測定及び評価方法は以下のとおりである。
<結晶セルロースの物性の測定方法>
[結晶セルロースの平均粒子径(μm)]
結晶セルロースの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(Partica LA-950 V2型(商品名)、堀場製作所製)を用いて測定し、累積体積50%の粒子径を平均粒子径(μm)とした。
[結晶セルロースの見掛け比容積(cm/g)]
粉体試料を100cmのガラス製メスシリンダーに定量フィーダー等を用いて、2分間以上3分間以下程度かけて粗充填した。その後、粉体層上面を筆のような軟らかい刷毛で水平にならし、その容積を読みとり、容積を粉体試料の質量で除した値を見掛け比容積(cm/g)とした。粉体試料の質量は容積が70cm以上100cm以下程度になるように適宜決定した。
[結晶セルロースの見掛けタッピング比容積(cm/g)]
市販粉体物性測定機(ホソカワミクロン製、パウダーテスターT-R型)を用いて、100cmカップに粉体試料を充填し、180回タッピングした。その後、カップの容積を、カップに充填された粉体試料の質量で除した値を見掛けタッピング比容積(cm/g)とした。
[結晶セルロースの圧縮度(%)]
圧縮度は上記で測定された見掛け比容積、及び見掛けタッピング比容積を用いて、下式より求めた。
「圧縮度(%)」
=100×[{1/(見掛けタッピング比容積)}-{1/(見掛け比容積)}/{1/(見掛けタッピング比容積)}
[結晶セルロースの安息角(°)]
赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD-220型、試料:1g、105℃)で測定し、粉体試料中の水分量を3.5質量%以上4.5質量%以下程度に調整した。その後、市販粉体物性測定機(ホソカワミクロン製、パウダーテスターT-R型)でオリフィス径0.8cmの金属製ロート(静電気の発生しない材質であること)、振動目盛1.5の条件で粉体試料を落下させ、粉体試料の作る山の稜線角度(2稜線角度測定、測定間隔3°)を測定した値を安息角(°)とした。安息角(°)は、3回測定の平均値で示した。
[結晶セルロースの長径/短径(L/D)]
デジタルマイクロスコープ(VHX-6000型、キーエンス製、VH-501レンズ使用)を用いて撮影した画像を1360×1024ピクセル、TIFFファイル形式で保存した。次いで、保存した画像を、画像処理解析ソフト(Image HyperII、デジモ製)を使用して、200個の粒子の短径及び長径を測定して、短径に対する長径の比L/Dを算出し、粒子200個のL/Dの平均値をとった。
[結晶セルロースの吸油量]
まず、粉体試料の質量を測定した。その後、ガラス板上で粉体試料にα-トコフェノールを滴下して薬さじで練り込み、混錬物がガラス板に張り付かない限界の吸油量を測定し、次の式より、吸油量(質量%)を算出した。
「吸油量(質量%)」
={(吸収したα-トコフェノールの質量)/(初期の粉体試料の質量)}×100
<錠剤特性の測定及び評価方法>
[錠剤の質量CV値]
実施例及び比較例において、連続生産による製造開始時(0分)、並びに、製造開始から2、4、6、8、10、15、30、45、及び60分後に錠剤を100錠ずつサンプリングした。なお、バッチ式生産である比較例3については、打錠開始時(0分)、並びに、打錠開始から2、4、6、8、及び10分後に錠剤を100錠ずつサンプリングした。
サンプリング時間毎の錠剤を精秤した時の錠剤質量の変動係数を、質量CV値として測定した。具体的には、サンプリング時間毎に錠剤10錠を精秤し、合計100錠の錠剤(比較例3については、サンプリング時間毎に錠剤10錠を精秤し、合計60錠の錠剤)に対し、下記に示す式を用いて、均一性の尺度である変動係数(「錠剤の質量CV値(質量%)」ともいう)を算出した。なお、変動係数が低いほど、原薬の含有量の均一性が良好であると評価した。
「錠剤の質量CV値(質量%)」={(錠剤質量の標準偏差)/(錠剤の平均質量))×100
[錠剤の硬度、硬度CV値及び硬度増減]
一般的に使用される錠剤硬度測定器(Tablet Tester 8M/DR.SCHLEUNIGER製)にて、サンプリングした錠剤の硬度を測定した。サンプリング時間毎に10錠の錠剤硬度(N)を測定し、合計100錠分の錠剤硬度の平均値を算出した。なお、錠剤硬度の目標値は50Nであり、錠剤硬度が90N以上のものを硬度が良好であると評価した。
また、錠剤の硬度の変動係数を、硬度CV値として測定した。具体的には、サンプリング時間毎の錠剤10錠の硬度の平均値を算出した後、下記に示す式を用いて、均一性の尺度である変動係数(「錠剤の硬度CV値(%)」ともいう)を算出した。なお、変動係数が低いほど硬度の安定性が高く、5%以下を安定した硬度で錠剤を生産できていると評価した。
「錠剤の硬度CV値(質量%)」={(サンプリング時間毎の錠剤平均硬度間の標準偏差)/(錠剤の平均硬度)}×100
また、錠剤の硬度増減(%)については、以下の式を用いて算出した。なお、錠剤の硬度増減は、-15%以上+15%以下である場合に、硬度が安定していると評価した。
「錠剤の硬度増減(%)」
=(製造開始0分の錠剤硬度)/(製造開始60分後(比較例3に関しては10分後)の錠剤硬度)×100
[錠剤の摩損度]
サンプリング時間毎に錠剤37錠分の質量(Wa)を測定した。次いで、質量を測定した錠剤37錠を錠剤摩損度試験機(PTER-A、PHARMA TEST製)に入れ、25rpm、4分間回転した。その後、錠剤に付着している微粉を取り除き、再度質量(Wb)を測定した。次いで、下記式より錠剤の摩損度を計算し、サンプリング時間毎の摩損度の平均値を算出した。なお、全サンプリング時間毎の摩損度の平均値を算出し、摩損度が0.20質量%以下である場合に、摩損度が低く良好であると評価した。
「摩損度(質量%)」=100×(Wa-Wb)/Wa
[錠剤の崩壊性]
第17改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に従って、サンプリング時間毎の錠剤の崩壊試験を実施し、サンプリング時間毎の錠剤の崩壊時間の平均値を算出した。試験液は純水を用いた。なお、全サンプリング時間毎の摩損度の平均値を算出し、崩壊時間が10分以内であるものを崩壊性が良好であると評価した。
[錠剤の溶出性]
第17改正日本薬局方、一般試験法「6.10溶出試験法」のパドル法の装置(装置2)を用いて、錠剤の溶出試験を行った。なお、パドルの回転数は50rpmとし、試験液には日本薬局、一般試験法、試薬・試液等に記載の溶出試験第1液を用いた。測定時間に液をサンプリングし、活性成分の含有量を測定した。測定は3ベッセルで行い、その平均値を平均溶出率(質量%)とした。なお、合計6点の錠剤(0、2、15、30、45、及び60分にサンプリングした錠剤;比較例3については、2、4、6、8、及び10分にサンプリングした錠剤)の溶出率を測定した上でその平均値を算出し、平均溶出率が95質量%以上であるものを溶出性が良好であると評価した。
[錠剤の原薬含有量CV値]
まず、アセトアミノフェンの検量線を作成した。本実施例では、吸光度計にてアセトアミノフェンの吸収スペクトルを測定し、ピークトップの波長を元に検量線を作成した(アセトアミノフェンの波長:244nm)。錠剤を2錠分サンプリングし、100mLメスフラスコに入れて日本薬局方溶出試験第1液(pH1.2)で100mLにメスアップした。得られた水溶液を樹脂フィルターにより濾過して不溶分を除去した後、濾液中の活性成分のサンプリングした錠剤質量に対するアセトアミノフェンの含有量を吸光度法により定量した。錠剤は、合計6点の錠剤(0、2、15、30、45、及び60分にサンプリングした錠剤;比較例3については、2、4、6、8、及び10分にサンプリングした錠剤)を測定し、原薬の含有量の平均値(原薬の平均含有量)及び標準偏差を求めた。次いで、下記に示す式を用いて、均一性の尺度である変動係数(「原薬含有量CV値(%)」ともいう)を算出した。なお、変動係数が低いほど、原薬の含有量の均一性が良好であると評価した。
「原薬含有量CV値(%)」={(標準偏差)/(原薬の平均含有量)}×100
[キャッピング]
キャッピングとは、錠剤の上面又は下面が帽子状に剥離する現象を意味する。サンプリング時間毎に10錠剤の錠剤を観察し、合計100錠分についてキャッピングの発生有無を確認し、以下の評価基準に従い、キャッピングについて評価した。
(評価基準)
○:キャッピング未発生
×:キャッピング発生
[スティッキング]
スティッキングとは、杵面に錠剤の一部が付着して剥がれる現象を意味する。実施例及び比較例での錠剤製造後に杵を確認し、錠剤の付着の有無を確認した。以下の評価基準に従い、スティッキングについて評価した。
(評価基準)
○:錠剤の付着の無し
×:錠剤の付着の有り
<結晶セルロースの製造方法>
賦形剤として、結晶セルロースA~D及び市販の結晶セルロース2種を用いた。結晶セルロースA~Dの製造方法を以下に示す。
[製造例1]
(結晶セルロースAの製造)
市販のパルプ(平均重合度1000)を細断したもの2kgと、4Nの塩酸水溶液30Lを低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径約30cm)に入れ、攪拌速度5rpmで攪拌しながら、40℃、22時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分40質量%となるよう濾過し、濾過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和した。その後、100Lのポリバケツに入れ、純水を加えて、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G、8M/M、攪拌翼径5cm)で、攪拌速度5rpmで攪拌することにより、固形分濃度10質量%のセルロース分散液とした。次いで、得られたセルロース分散液を噴霧乾燥(分散液供給速度6L/時間、入口温度185℃以上215℃以下、出口温度55℃以上70℃以下)して、結晶セルロースAを得た。
[製造例2]
(結晶セルロースBの製造)
市販パルプ(平均重合度1000)を細断したもの2kgと、4Nの塩酸水溶液30Lを、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径約30cm)に入れ、攪拌速度10rpmで攪拌しながら、58℃、70時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣はヌッチェを使用し、固形分40質量%となるよう濾過し、ろ過残渣を更に70Lの純水で4回洗浄し、アンモニア水で中和した。その後、90Lのポリバケツに入れ、純水を加え、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G、8M/M、攪拌翼径5cm)で、攪拌速度100rpmで攪拌することにより、固形分濃度10質量%のセルロース分散液とした。次いで、得られたセルロース分散液を噴霧乾燥(分散液供給速度6L/時間、入口温度185℃以上215℃以下、出口温度55℃以上70℃以下)して、結晶セルロースBを得た。
[製造例3]
(結晶セルロースCの製造)
市販のパルプ(平均重合度1000)を細断したもの2kgを水に浸漬し、約70%の水分を含む状態で、カッターミル(URSCHEL LABORATORIES,INC.製、「コミトロール」(商品名)、モデル1700、マイクロカットヘッド/ブレード間隙:2.029mm、インペラー回転数9000rpm)を通した。その後、純水を加えて約1.95%濃度のセルロース分散液に調製し、高圧ホモジナイザー(MFIC Corp.製、商品名「マイクロフルイダイザー」M-140K型、処理圧力200MPa)で2回処理した。次いで、遠心力19600m/sで遠心分離し、上澄みを捨て、沈降物を得た。沈降物を42℃で16時間乾燥したもの約2kgと、4N塩酸水溶液30Lを低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、50LGL反応器(商品名))に入れ攪拌しながら、40℃、38時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、純水で十分に洗浄した後、ろ過した。その後、100Lポリバケツに導入し、固形分濃度が18質量%になるように純水を加え、3-1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和した。該セルロース分散液を噴霧乾燥(分散液供給速度6kg/hr、入口温度185~215℃、出口温度55℃以上70℃以下)して、セルロース凝集体である結晶セルロースCを得た。
[製造例4]
(結晶セルロースDの製造)
市販のパルプ(重合度1000)を細断したもの2kgと、4Nの塩酸水溶液30Lを低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径約30cm)に入れ、攪拌速度5rpmで攪拌しながら、40℃、22時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分40質量%となるよう濾過し、濾過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和した。その後、100Lのポリバケツに入れ、純水を加えて、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G、8M/M、攪拌翼径5cm)で、攪拌速度5rpmで攪拌することにより、固形分濃度10質量%のセルロース分散液とした。これを噴霧乾燥(分散液供給速度6L/hr、入口温度185℃以上215℃以下、出口温度55℃以上70℃以下)して、気流式粉砕機((株)セイシン企業製、シングルトラックジェットミルSTJ-200型)を使用して粉砕圧力0.42MPa、粉体供給速度10kg/時間で粉砕し、結晶セルロースDを得た。
結晶セルロースA~D及び市販の結晶セルロース2種の各種物性を以下の表1に示す。なお、市販の結晶セルロースとしては、以下のものを使用した。
(市販の結晶セルロース)
PH-102:結晶セルロース、旭化成社製、商品名「セオラス(登録商標) PH-102」
SMCC HD 90:微結晶セルロース、JRS PHARMA社製、商品名「PROSOLV(登録商標) SMCC HD 90」
Figure 2022146628000001
<錠剤の製造>
[実施例1]
(錠剤T-a1の製造)
連続生産機として、(株)菊水製作所の「CRA-RIS SYSTEM」を選択した。
CRA-RIS SYSTEMに備わった定量フィーダーに、活性成分としてアセトアミノフェン(山本化学工業(株)製)、結晶セルロースA、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム「キッコレートND-2HS」(ニチリン化学工業(株)製)、滑沢剤として植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)、流動化剤として軽質無水ケイ酸「アエロジル200」(日本アエロジル製)、及び乳糖水和物である「SuperTab 11SD」(DFEファーマ(株)製)を投入し、各定量フィーダーから表2に示す処方割合となるように供給量を設定した。打錠機のターンテーブル回転数は41.1rpm、撹拌フィーダーの回転数は45rpmで直径0.8cm、12R杵にて、60分間連続生産を行った。製造開始から0、2、4、6、8、10、15、30、45及び60分後に錠剤をサンプリングした。
[実施例2~5及び比較例1~2]
(錠剤T-a2~T-a5及びT-b1~T-b2の製造)
表2に示す組成及び打圧条件とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、錠剤の連続生産を行った。
[実施例6]
(錠剤T-a6の製造)
CRA-RIS SYSTEMに備わった定量フィーダーに、活性成分としてアスコルビン酸(BASFジャパン株式会社製)、結晶セルロースA、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム「キッコレートND-2HS」(ニチリン化学工業(株)製)、及び滑沢剤として植物性ステアリン酸マグネシウムを投入し、各定量フィーダーから表2に示す処方割合となるように供給量を設定した。打錠機のターンテーブル回転数は41.1rpm、撹拌フィーダーの回転数は45rpmで直径0.8cm、12R杵にて、60分間連続生産を行った。製造開始から0、2、4、6、8、10、15、30、45及び60分後に錠剤をサンプリングした。
[比較例3]
(錠剤T-b3の製造)
実施例1と同様の処方にて、非連続(バッチ式)生産で錠剤を製造した。具体的には、活性成分としてアセトアミノフェン(山本化学工業(株)製)800g、結晶セルロースA300g、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム「キッコレートND-2HS」(ニチリン化学工業(株)製)40g、流動化剤として軽質無水ケイ酸「アエロジル200」(日本アエロジル製)20g、及び乳糖水和物である「SuperTab 11SD」(DFEファーマ(株)製)820gをポリエチレン袋中で3分間十分混合した。その後、滑沢剤として植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)20gを加えて、さらにゆっくり30秒間混合し混合粉体とした。該混合粉体をロータリー打錠機(株式会社菊水製作所製、LIBRA2)で直径0.8cm、R杵(12R)を用いて、ターンテーブル回転数30rpm、撹拌フィーダーの回転数10rpm、圧縮圧本圧12kN、予圧6kNで10分間打錠を行った。打錠開始から0、2、4、6、8、10分後に錠剤をサンプリングした。
各錠剤特性の評価結果を表2に、各サンプリング時間での硬度の経時変化を図1~図9に示す。
Figure 2022146628000002
表2及び図1~図9から、見掛け比容積が4.0cm/g以上9.0cm/g以下である結晶セルロースを用いた錠剤T-a1~T-a6(実施例1~6)では、60分間の連続生産において大きな硬度低下もなく、摩損度も0.20質量%以下であった。
しかしながら、見掛け比容積が4.0cm/g未満である結晶セルロースを用いた錠剤T-b1~T-b2(比較例1~2)では、初期の錠剤硬度から時間が経過するにつれ、大きく硬度が低下する傾向がみられた。また、比較例2においては初期の硬度は目標値である50Nを満たすものであったが、時間が経過するにつれて硬度が低下し50N以下となり、目標値を満たさない結果となった。また、比較例1においては摩損度が0.20質量%を超えており、劣っていた。
これらのことから、錠剤の連続生産において、安定した錠剤特性を得るには、見掛け比容積が特定の数値範囲内である結晶セルロースを添加することで、目標値とする硬度より高い成形性を付与することができ、装置内で粉体の混合状態にばらつきが発生し目標とする硬度にバラつきが生じた場合においても、目標値より高い硬度を発現できることが明らかとなった。また、その結果、目標値を維持した状態で、錠剤の連続生産が可能となることが示された。
また、実施例1と同様の処方で、非連続生産機(バッチ式)で製造した錠剤T-b3(比較例3)では、質量CV値が、連続生産機で製造した錠剤T-a1(実施例1)より小さかったものの、いずれの質量CV値も許容範囲内であった。また、他の錠剤特性についても目標値を満していた。このことから、見掛け比容積が特定の数値範囲内である結晶セルロースを含む処方においては、連続生産機においてもバッチ式と同様に目標値を満たす錠剤を製造できることが示された。さらに、連続生産で製造した錠剤T-a1(実施例1)では、非連続生産機(バッチ式)で製造した錠剤T-b3(比較例3)よりも原薬含有量CV値が優れており、一定量の活性成分を含む錠剤をより安定的に製造できることが示された。
本実施形態の製造方法によれば、粉体原料の混合及び直打法による打錠を連続的に行う連続生産システムにおいて、良好な物性を有する錠剤を安定的に製造することができる。

Claims (8)

  1. 粉体原料の混合、充填及び圧縮成形を連続的に行う装置を用いて、活性成分、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含む錠剤を製造する製造工程を含み、
    前記結晶セルロースの見掛け比容積が4.0cm/g以上9.0cm/g以下である、錠剤の製造方法。
  2. 前記製造工程が、
    前記装置が備える混合手段で前記粉体原料の混合を行い、混合粉体を得る混合工程と、
    前記混合粉体を、前記混合手段に連結された圧縮成形手段に供給及び充填する充填工程と、
    前記充填工程後の前記混合粉体を前記圧縮成形手段で圧縮成形する圧縮成形工程と、
    を含む、請求項1に記載の錠剤の製造方法。
  3. 前記錠剤が、流動化剤、及び乳糖水和物を更に含む、請求項1又は2に記載の錠剤の製造方法。
  4. 前記錠剤100質量部に対して、
    前記活性成分の含有量が10質量部以上92質量部以下であり、
    前記結晶セルロースの含有量が5質量部以上50質量部以下であり、
    前記崩壊剤の含有量が1質量部以上2質量部以下であり、
    前記滑沢剤の含有量が1質量部以上2質量部以下であり、
    前記流動化剤の含有量が0質量部以上2質量部以下であり、
    前記乳糖水和物の含有量が0質量部以上45質量部以下である、請求項3に記載の錠剤の製造方法。
  5. 前記流動化剤は、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3又は4に記載の錠剤の製造方法。
  6. 前記結晶セルロースの平均粒子径が10μm以上200μm以下であり、且つ、安息角が40°以上60°以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
  7. 前記崩壊剤が、アルファー化デンプン、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、及び部分アルファー化デンプンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法によって得られた錠剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024204699A1 (ja) * 2023-03-31 2024-10-03 旭化成株式会社 セルロース粉末及び成形体

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