JP2022021944A - 依存症回復支援システム - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、依存症などの精神障害の回復を支援するための依存症回復支援システムに関する。
人は誰でも何かに依存して生活しているが、いわゆる依存症は、適度な依存を逸脱し、その行為を繰り返さないと満足できない状態となる精神障害の1つであると言われている。そして、依存症は、自身の力だけでは依存を止めることができなくなった結果、心身に障害が生じたり、家庭生活や社会生活に悪影響が及ぶに至る。代表的な依存の対象として、アルコールや薬物などの物質依存、ギャンブルや買い物、インターネットゲームなどの行為依存、異性や暴力(DV)、ストーカーなどの人間関係依存などがある。
依存症は、依存対象(アルコールや薬物、ギャンブル、ゲームなど)によって脳の報酬系が強い刺激(快楽)を受け続けることで、依存対象以外ではドーパミン(幸福ホルモン)が出にくくなり、脳がそれをストレスと感じてドーパミンの放出を待ちきれなくなることで、生活の優先順位が快楽を得ることに代わり、脳のコントロールができなってしまう病気と言われている。
従来、依存症回復施設や自立支援施設などにおいて、依存症からの回復を試みる様々な支援が行われている。これらの支援の多くは精神療法のプログラムが多く、回復するまでの期間に約2年以上を必要とするのが通常である。
ところで、依存症は正しく治療すれば回復することができる。一般に、依存症の回復度の判断は、問診や診察などで得られた情報をもとに行われる。しかしながら、問診などによる回復度の判断は、主観的な評価になりやすく、信頼性に欠けるという問題があった。
また、近年、脳波からその脳波の特徴量を抽出した脳波特徴データをもとに、脳疾患の判定を行う脳疾患診断支援システムが提案されている(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、このような脳疾患診断支援システムは、依存症の回復度の判定には適用されていない。
本発明は、このような状況を背景にして成されたものであり、依存症などの精神障害の回復度を客観的に評価できる依存症回復支援システムを提供することを目的とする。
本発明の依存症回復支援システムは、被検者を撮像した映像から精神状態を測定する波動測定装置と、被検者の脳波を測定する脳波測定装置との測定結果に基づき、被検者の精神的な傾向を分析し、分析した結果により、複数の所定の回復プログラム項目の中から被検者に経験させる回復プログラム項目を選択可能に構成したものである。
本発明の依存症回復支援システムにおいて、被検者の脳に電磁気的な刺激を付与する経頭蓋磁気刺激装置をさらに備え、前記回復プログラム項目の1つは、前記経頭蓋磁気刺激装置による被検者の脳への電磁気的な刺激付与であるようにしてもよい。
また、本発明の依存症回復支援システムにおいて、依存症の種類に応じた仮想現実映像を再生する映像再生装置をさらに備え、前記回復プログラム項目の1つは、前記仮想現実映像の視聴であるようにしてもよい。
また、本発明の依存症回復支援システムにおいて、前記複数のプログラム項目には、ビジョントレーニング、足裏ツボ刺激、ヨガ、座禅、読書、及び空手トレーニングのうちの少なくとも1つが含まれているようにしてもよい。
本発明の依存症回復支援システムによれば、依存症などの精神障害の回復度を客観的に評価できる。
以下に、本発明の依存症回復支援システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、依存症回復支援システムの一実施形態を示す模式図である。
本実施形態の依存症回復支援システム1は、波動測定装置2と、脳波測定装置3と、制御装置4と、記憶装置5と、表示装置6と、入力装置7と、TMS装置(経頭蓋磁気刺激装置)8と、VR装置(映像再生装置)9とを備えている。
波動測定装置2は、被検者をカメラで撮像した映像から精神状態を測定するものであり、ここでは被検者の微小な振動を測定することで精神状態を判定するもので構成される。波動測定装置2は測定結果を精神状態情報として取得する。波動測定装置2は、被検者をカメラで所定時間(例えば1分間)撮像し、取り込んだ映像と画像処理によって被検者の微細動(微細な動作や微振動)を解析することで、10項目の感情を数値化して精神状態を可視化する。このような波動測定装置2として、Mental-Checker(ELESYS JAPAN社の製品)が知られている。
脳波測定装置3は、被検者の脳波を測定するものであり、測定結果を脳波情報として取得する。本実施形態では、脳波測定装置3として、左脳の脳波と右脳の脳波を同時計測し、コヒーレンス(位相の揃い具合)を計測できるものを使用した。
制御装置4及び記憶装置5は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)などのコンピュータで構成される。制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)や入力インターフェース等を有し、記憶装置5は、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)と制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。なお、記憶装置5は、コンピュータに外付けされる記憶媒体で構成されてもよい。
制御装置4は、ある被検者の波動測定装置2の測定結果(精神状態情報)及び脳波測定装置3の測定結果(脳波情報)を被検者名や測定日時などと関連付けて、記憶装置5に記憶する。また、被検者が実践した回復プログラム項目(後述する)と関連付けて、精神状態情報及び脳波情報を記憶してもよい。
記憶装置5は、被検者に経験させる複数の所定の回復プログラム項目を記憶している。これらの回復プログラム項目は、例えば、TMS装置8を使用した脳への電磁気的な刺激付与、VR装置9を使用した仮想現実映像の視聴(VR視聴)、ビジョントレーニング、足裏ツボ刺激、ヨガ、座禅、読書、空手トレーニングなどの項目が含まれる。
表示装置6は、各種情報を表示するためのディスプレイであり、制御装置4から受け取った信号に従って情報を表示する。入力装置7は、キーボードやマウスなどであり、ユーザの操作を示す信号を制御装置4へ入力する。なお、表示装置6としてタッチパネル式のものを使用することで、表示装置6と入力装置7を一体に構成してもよい。
依存症回復支援システム1において、波動測定装置2、脳波測定装置3、制御装置4、記憶装置5、表示装置6、入力装置7の間のデータのやり取りは、有線、無線、可搬記憶媒体など、任意の手段を介して行える。
また、波動測定装置2のうち、取り込んだ画像を解析して精神状態を判定した測定結果(精神状態情報)を作成する機能(ソフトウェア)は、制御装置4及び記憶装置5によって実行されるものとしてもよい。この場合、制御装置4にカメラを接続することで、波動測定装置2を構成できる。
また、脳波測定装置3のうち、脳波信号を処理する機能(ソフトウェア)は、制御装置4及び記憶装置5によって実行されるものとしてもよい。この場合、被検者に装着されるヘッドセンサーを接続した脳波測定装置本体を制御装置4に接続することで、脳波測定装置3を構成できる。
TMS装置8は、被検者の脳に電磁的な刺激を付与可能なものである。脳のうち抑制や報酬回路において重要な役割をもつ背外側前頭前野をTMS装置8によって磁気刺激することで、うつ病などの精神障害が改善されると言われている。
VR装置9は、仮想現実映像を再生するものであり、例えばVRゴーグルにて構成される。本実施形態では、仮想現実映像として、依存症の種類に応じたものが使用される。
図2は、依存症回復支援システム1を使用した依存症回復支援方法の一例のフローチャートを示す図である。図1及び図2を参照しながら、被検者の精神状態の見える化の一例について説明する。
まず、波動測定装置2を使用して被検者の精神状態を測定する(ステップS1)。制御装置4は、その測定結果を記憶装置5に記憶する(ステップS2)。続いて、脳波測定装置3を使用して被検者の脳波を測定する(ステップS3)。制御装置4はその測定結果を記憶装置5に記憶する(ステップS4)。なお、精神状態測定(ステップS1)と脳波測定(ステップS3)を行う順序はどちらが先でもよい。
記憶装置5に記憶した精神状態情報及び脳波情報に基づいて、被検者の精神的な傾向を分析する(ステップS5)。この分析は、制御装置4が記憶装置5に記憶されたプログラムを実行することで行われる。制御装置4は、精神的な傾向の分析結果を精神状態情報及び脳波情報に関連付けて記憶装置5に記憶する。なお、この分析を医師などの支援者が行ってもかまわない。この場合、支援者は入力装置7を操作して分析結果を入力し、制御装置4は、その分析結果を精神状態情報及び脳波情報に関連付けて記憶装置5に記憶する。
本実施形態において波動測定装置2として使用するMental-Checker(ELESYS JAPAN社の製品)は、約10万人の感情分析データから開発されたものであるとされている。そして、その測定結果(精神状態情報)は、「攻撃性」、「ストレス」などの10項目について数値化した情報と、被検者の微細振動のヒストグラム(度数分布)を示す情報などを含んでおり、それらの情報から被検者の精神状態が正常な範囲内にあるかどうかを判定可能であるとされており、その測定結果を被検者の精神状態を判定する指標として使用できる。
また、本実施形態において使用する脳波測定装置3は、左脳の脳波と右脳の脳波を同時計測し、コヒーレンス(位相の揃い具合)を計測できるものであり、その測定結果から脳の活動状態(精神状態)を評価できる。また、被検者は、測定中に、左脳と右脳の脳波の同調(シンクロ)によるアルファ波の出現具合を確認することで、脳波を操る訓練を行える。
次に、制御装置4は、波動測定装置2の測定結果(精神状態情報)と脳波測定装置3の測定結果(脳波情報)とを記憶装置5から読み出して表示装置6に表示する(ステップS6)。また、制御装置4は、ステップS5で行った精神的な傾向の分析結果を表示装置6に表示する。精神状態情報、脳波情報及び分析結果を表示することで、依存症の回復度を「見える化」することができる。被検者及び支援者は、これらの情報を参照することで、依存症の回復度を客観的に評価できる。
また、制御装置4は、記憶装置5から被検者に経験させる複数の所定の回復プログラム項目を読み出して表示装置6に表示する(ステップS7)。このとき、制御装置4は、精神状態情報、脳波情報及び分析結果に基づいて、被検者に経験させることが好ましい回復プログラム項目を選択して表示装置6に表示させてもよい。制御装置4が選択した回復プログラム項目は、被検者及び支援者などが以降の回復プログラムを決める目安とすることができる。なお、ステップS7において、記憶装置5に記憶された全ての回復プログラム項目を表示装置6に表示させて、支援者などが任意の回復プログラム項目を選択可能に構成してもかまわない。
図3は、依存症回復支援システム1を使用した依存症回復支援方法の他の例のフローチャートを示す図である。図1及び図3を参照しながら、依存症回復度の見える化の他の例について説明する。
TMS装置8を使用して、被検者の脳に電磁気的な刺激を付与する(ステップS10)。脳への電磁気的な刺激付与(ステップS10)は、回復プログラムの1つであり、被検者の脳にダイレクトに刺激を与えることで、被検者の脳の前頭葉を活性化させる。このようなTMS装置8による磁気刺激付与のタイミングは、図2のフローチャートに沿って測定した被検者の依存症回復度を確認しながら、被検者と支援者とで相談して決めることができる。
その後、図2のフローチャートのステップS1~S7と同様にして、精神状態及び脳波の測定及び記憶、被検者の精神的な傾向の分析、これらの情報及びプログラム項目の表示を行う(ステップS11~S17)。
本実施形態において、記憶装置5には、被検者の過去の精神状態情報、脳波情報及び分析結果も記憶されており、ステップS16で、今回及び過去の精神状態情報、脳波情報及び分析結果を表示装置6に表示するようにしてもよい。これにより、TMS装置8による磁気刺激付与の前後の精神状態情報等を比較でき、磁気刺激付与の効果と依存症回復度を「見える化」できる。
図4は、依存症回復支援システム1を使用した依存症回復支援方法のさらに他の例のフローチャートを示す図である。図1及び図4を参照しながら、依存症回復度の見える化のさらに他の例について説明する。
図2又は図3に示したフローチャートを実行して依存症の回復度を「見える化」し、被検者の依存症がほぼ回復したと認定できるときには、被検者は、VR装置9を使用して、依存症の種類に応じたVR映像を視聴する(ステップS20)。このVR映像視聴は、回復プログラムの1つであり、例えば、被検者がパチンコ依存症者の場合には、VR装置9を使用してパチンコを遊戯している場面を仮想体験する。
その後、図2のフローチャートのステップS1~S7と同様にして、精神状態及び脳波の測定及び記憶、被検者の精神的な傾向の分析、これらの情報及びプログラム項目の表示を行う(ステップS21~S27)。
本実施形態のステップS26で、VR映像視聴後の精神状態情報、脳波情報及び分析結果を表示装置6に表示することで、被検者の依存対象への耐性を「見える化」して確認できる。依存対象を仮想体験しても、精神状態や脳波に異常が見られず、依存対象への耐性が確認されたときは、依存症から回復したと判断できる。そして、依存症への耐性の「見える化」は、被検者の大きな自信につながるので、社会復帰した後の依存症再発の低減に寄与する。
図3及び図4では、回復プログラムの一例として、脳への電磁気的な刺激付与と、VR視聴とを説明した。記憶装置5には、これらの回復プログラム項目の他にも、ビジョントレーニングや足裏ツボ刺激、ヨガ、座禅、読書、空手トレーニングなどの項目が記憶されており、これらの回復プログラムのうちの1つ又は複数を行った後に、図1に示したフローチャートを実行することで、依存症の回復度を「見える化」して確認できる。
例えば、依存症は、認知機能を低下させ、視野を狭くすると言われていることから、視覚機能を向上させるビジョントレーニングを行うことで、選択可能な回復プログラム項目として、低下した認知機能を向上させる回復プログラムが記憶装置5に記憶されている。被検者は、ビジョントレーニングを実践して視覚を通じて脳を刺激することで、依存回復を加速させることができる。
また、足裏に刺激を与えること(足裏ツボ刺激)は、解毒力を高めることができると言われている。ツボ療法は臨床経験に基づいており、世界保健機構では361か所のツボの有効性を認めている。足裏の老廃物の原因はストレスが原因と言われており、本実施形態では、脳から最も遠い「足裏」に着目して、選択可能な回復プログラム項目として、足裏ツボ刺激を記憶装置5に記憶している。
記憶装置5に記憶されたその他の回復プログラム項目は、五感(味覚、聴覚、嗅覚、視覚、触覚)を刺激するのに役立つ。依存症は、快感を得ることのみ求め続ける脳の病気であり、五感が鈍くなって脳のバランスが崩れ、制御不能に陥った状態であるといえる。そこで、五感を刺激して、脳の情報処理を行う神経細胞(ニューロン)同士の適正なつながりと接続点であるシナプスを増やし、脳を再起動させて、依存症を回復させる。
以上のように、本実施形態の依存症回復支援システム1は、被検者の脳にダイレクトに刺激を与えることができるとともに、その効果(依存症回復度)を「見える化」できることから、被検者は依存症回復の進捗を実感できるとともに、被検者と支援者との信頼関係の形成に寄与する。また、依存症回復支援システム1を使用することで、依存症回復度を「見える化」して確実に判断できることから、短期間での依存症回復及び社会復帰が期待できる。
以上、実施形態を説明したが、本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
1 依存症回復支援システム
2 波動測定装置
3 脳波測定装置
4 制御装置
5 記憶装置
6 表示装置
7 入力装置
8 TMS装置(経頭蓋磁気刺激装置)
9 VR装置(映像再生装置)
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Claims (4)
- 被検者を撮像した映像から精神状態を測定する波動測定装置と、被検者の脳波を測定する脳波測定装置との測定結果に基づき、被検者の精神的な傾向を分析し、分析した結果により、複数の所定の回復プログラム項目の中から被検者に経験させる回復プログラム項目を選択可能に構成したことを特徴とする、
依存症回復支援システム。 - 被検者の脳に電磁気的な刺激を付与する経頭蓋磁気刺激装置をさらに備え、
前記回復プログラム項目の1つは、前記経頭蓋磁気刺激装置による被検者の脳への電磁気的な刺激付与である、
請求項1に記載の依存症回復支援システム。 - 依存症の種類に応じた仮想現実映像を再生する映像再生装置をさらに備え、
前記回復プログラム項目の1つは、前記仮想現実映像の視聴である、
請求項1又は2に記載の依存症回復支援システム。 - 前記複数のプログラム項目には、ビジョントレーニング、足裏ツボ刺激、ヨガ、座禅、読書、及び空手トレーニングのうちの少なくとも1つが含まれている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の依存症回復支援システム。
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- 2020-07-22 JP JP2020125856A patent/JP2022021944A/ja active Pending
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