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JP2022018470A - 電磁鋼板積層鉄心用接着剤、および電磁鋼板積層鉄心 - Google Patents

電磁鋼板積層鉄心用接着剤、および電磁鋼板積層鉄心 Download PDF

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JP2022018470A
JP2022018470A JP2020121587A JP2020121587A JP2022018470A JP 2022018470 A JP2022018470 A JP 2022018470A JP 2020121587 A JP2020121587 A JP 2020121587A JP 2020121587 A JP2020121587 A JP 2020121587A JP 2022018470 A JP2022018470 A JP 2022018470A
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adhesive
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laminated iron
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浩 大石
Hiroshi Oishi
高志 荒牧
Takashi Aramaki
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Abstract

【課題】電磁鋼板を積層した鉄心を高速で回転しても、鋼板の塑性変形や破損を抑制することができる電磁鋼板積層鉄心用接着剤を提供する。【解決手段】JIS K 7161に準じて35℃で測定した降伏応力が35MPa以上である接着樹脂を含むことを特徴とする電磁鋼板積層鉄心用接着剤。この接着剤で接合した電磁鋼板積層鉄心は家電、ハイブリット自動車や電気自動車の駆動用電動機の固定子や回転子として好適に使用することができる。【選択図】 図1

Description

電動機、発電機などの回転機に応用する電磁鋼板積層鉄心用接着剤に関する。また、前記電磁鋼板積層鉄心用接着剤を用いる電磁鋼板積層鉄心に関する。
電動機や発電機は、固定子や回転子に、磁性を有する珪素鋼板や電磁鋼板を積層した鉄心を使用している。これらは、エアコンや、掃除機、オーディオなどの家電や、HVや、EVといった自動車のモーターなどに用いられている。
自動車駆動系への応用では、高トルク化が必要である。このため、200mmφ以上の大型鉄心を、12,000~20,000rpmまでの高速で回転する場合もある。また、鉄鋼材料では、鋼板を薄くして電気抵抗をアップし、渦電流による鉄損を低減した鋼板を接着積層することが試行されている。
例えば、特許文献1には、接着剤を鋼板に効率的に塗布するため、積層金型内で積層する技術が開示され、この工程で使用できる接着剤として噴霧塗布可能な低粘度、低溶媒濃度のアクリルもしくはエポキシ系接着剤が使用できることが開示されている。
また、特許文献2には、圧着工程での加熱を省略して効率化するために、常温で硬化が進行する嫌気性接着剤が使用できることが開示されている。
また、特許文献3および特許文献4には、各々Tピール強度>1kgf/25mmの接着剤が好ましいこと、引っ張りせん断強度>50kgf/m2が好ましいことが開示されている。
さらに、特許文献5には、耐熱接着剤を使用した電動機、発電機積層板が開示されている。
非特許文献1は、アクリル系含侵接着剤に関する。これは、スイッチング電源用トランス・コイル、リアクトル用カットコア、センサーコイル、ノイズフィルター、アモルファスカットコア、ギャップコア製造時の固着、珪素鋼板カットコア、ギャップコア製造時の固着、モーター用コアの固着などの用途に用いられていることが記載されている。
WO2018/047209 特開2005-073451号公報 特開2000-336487号公報 特開2000-173815号公報 特開2004-42345号公報
"ビステックスV-4000"カタログ,[online]、マツモトファインケミカル(株)、[令和2年6月11日検索]、<URL:http://www.m-chem.co.jp/products/pdf/vis/V-4000.pdf>
積層鉄心を電動機や発電機に使用する場合、高速で回転する場合が多い。この回転により、積層鉄心には遠心力が働く。特に電気自動車やハイブリット自動車の駆動モーターの回転子鉄心に使用する場合、後述するように回転時に応力集中する部位がある。この応力集中部位では、高速回転時に鉄心の鉄板間を接合している接着剤層に大きな引張り応力が働く。そして、接着剤層が凝集破壊し、鋼板間の拘束力がなくなる。拘束力を喪失した応力集中部では、鋼板に括れ(くびれ)が容易に成長して破損する場合もあった。
しかしながら、前述の先行技術文献等には、積層鉄心を製造する工程での効率をアップするために必要な接着剤の要件や、接着力、耐熱性に関する技術開示はあるものの、接着樹脂の降伏応力に関する開示がない。
非特許文献1に記載されているV-4000の接着樹脂の降伏応力を測定すると、35MPa未満である。この結果、積層鉄心を高速で回転した場合、遠心力が大きく作用し、接着剤層が凝集破壊する場合があった。
特許文献5は、接着剤の耐熱性を示す1つの指標として、窒素雰囲気下で300℃、1時間保持した後の接着樹脂強度>30MPaが好ましいとの開示がある。しかしながら、当該技術は非晶質金属磁性薄体用接着剤に関するものであり、電磁鋼板積層鉄心用接着剤とは以下の点で異なる。非晶質金属磁性薄体は、特殊な構造によって磁気特性を発現するため、300~500℃での熱処理が必須となる。さらに熱処理後は脆化し、コイル化が困難になる場合もある。この結果、熱処理前に非晶質金属磁性薄体に接着剤を連続塗布する。従って、非晶質金属磁性薄体用接着剤にはこの工程で熱劣化しない耐熱性が必要となる。
そして、製造工程での劣化度合いを保証するため、熱処理後でも一定の接着樹脂強度を保持している接着剤が好ましい。一方、電磁鋼板では、熱処置がなくとも良好な磁気特性を発現できるため、このような高熱での熱処理工程は不要である。この結果、電磁鋼板積層鉄心用接着剤では、特許文献5の接着剤と必要な物性が異なるものとなり、転用しようとするものではない。
このように電磁鋼板積層鉄心用接着剤では、積層体を回転子などに使用した際の特性に着目し、使用環境温度下での接着樹脂強度が必要である。しかしながら、従来、これに関する開示はなかった。
係る状況下、本願は、電磁鋼板を積層した鉄心を高速で回転しても、鋼板の塑性変形や破損を抑制することができる電磁鋼板積層鉄心用接着剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> JIS K 7161に準じて35℃で測定した降伏応力が35MPa以上である接着樹脂を含むことを特徴とする電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
<2> 前記降伏応力が60MPa以上であることを特徴とする前記<1>に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
<3> 前記降伏応力が100MPa以上であることを特徴とする前記<1>に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
<4> 140℃で測定した前記接着樹脂の前記降伏応力が35MPa以上であることを特徴とする前記<1>~<3>の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
<5> 前記降伏応力が下記式(1)もしくは式(2)を満足することを特徴とする前記<1>~<4>の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
Figure 2022018470000002
Figure 2022018470000003
ここで、式(1)、式(2)において、A=0.105、B=17000、C=17000、D=410、E=30、ω:回転数(rpm)、YPR:鋼板の降伏応力(MPa)、YPB:接着樹脂の降伏応力(MPa)
<6> 前記接着樹脂の主成分が、アクリル樹脂および、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする前記<1>~<5>の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
<7> 前記接着樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする前記<1>~<6>の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
<8> 前記接着樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする前記<1>~<6>の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
<9> 鋼板と接着剤層が交互に積層された積層鉄心であって、前記接着剤層が前記<1>~<8>のいずれか1項に記載の積層鉄心用接着剤からなり、かつ、前記接着剤層の厚みtが下記式(3)を満足することを特徴とする電磁鋼板積層鉄心。
Figure 2022018470000004
ここで、t1=1.5×Rmax、t2=Er×ts/Es、Rmax:鋼板表面粗度、Er:接着樹脂のヤング率(GPa)、Es:鋼板のヤング率(GPa)、ts:鋼板厚み(μm)
本発明の電磁鋼板積層鉄心用接着剤によれば、電磁鋼板積層鉄心を比較的安価に製造でき、低強度の鋼板を積層した積層鉄心でも高速回転に耐えることができる。これにより、積層鉄心は渦電流鉄損を低減でき、高い磁気特性も発現できる。さらに、この積層鉄心をモーター回転子に使用すれば、高いトルクを発現できる。
本発明の一実施形態に係る積層鉄心の一部を示す図である。 図1(a)に示すA-A矢視断面図である。 図1(a)に示すB-B矢視断面図である。 回転時にブリッジ部に応力集中するメカニズムの概念を示す図である。 積層鉄心回転時に、応力集中部位で括れ成長する概念を示す図である。 図1に積層鉄心の鋼板強度とブリッジ内の磁石端部接触部で接着剤層の凝集破壊を防止するために必要な接着樹脂の降伏応力との相関を示す図である。 積層鉄心の応力集中部での厚み方向変形概念図とバネモデルを示す図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
本発明の電磁鋼板積層鉄心用接着剤は、JIS K 7161に準じて35℃で測定した降伏応力が35MPa以上である接着樹脂を含む。なお、本願において、「本発明の電磁鋼板積層鉄心用接着剤」を、単に「本発明の接着剤」と呼ぶ場合がある。
本発明は、JIS K 7161に準じて35℃で測定した降伏応力が35MPa以上の接着樹脂を含む電磁鋼板積層鉄心用接着剤に関する。降伏応力を35MPa以上にすることにより、電磁鋼板積層鉄心を高速で回転しても、遠心力による接着剤層の凝集破壊を防止できる。この結果、鋼板の降伏応力に関わらず、接着剤層の拘束効果により鋼板の括れの進行を抑制して破損を防止できる。
本発明者らは、従来技術では着目されていなかった接着樹脂の降伏応力に着目し、本発明に至った。すなわち、JIS K 7161に準じて35℃で測定した接着樹脂の降伏応力が35MPa以上であれば、高速回転時に遠心力が加わっても接着樹脂の凝集破壊を防止し、鋼板の降伏応力が比較的小さくても、接着剤の拘束効果により鋼板の変形を抑制して、積層鉄心の破損を防止できることを見出した。
なお、JIS K 7161(2014)において、JIS K 7161-1は、「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」に関し、JIS K 7161-2は、「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」に関する。
さらに、35℃での降伏応力が35MPa以上の接着樹脂を含む接着剤を使用すれば、鋼板の強度を接着樹脂が補完するので、比較的低強度の鋼板を使用できる。このため、打ち抜き加工後も焼鈍が必要なほどの歪も発生しない。よって、打ち抜き加工後の歪とり焼鈍も不要である。従って、この観点からも、窒素雰囲気下で300℃、1時間保持することを想定する必要はない。
[接着樹脂の強度]
本発明の接着剤において、接着樹脂はJIS K 7161(2014)に準じて35℃で測定した降伏応力が所定の降伏応力を有する。35℃で測定するのは、本発明の接着剤を用いる電磁鋼板積層鉄心が使用されるとき、夏場には容易に35℃付近まで気温が上昇するため、夏場でも安定して使用できるものとするためである。
接着樹脂は接着剤層を形成する樹脂であり、接着剤として使用して固化したときの接着剤の固形分として定義できる。接着剤固形分をえる具体的な方法は、溶媒に樹脂を溶解した接着剤であれば、接着剤溶液からキャストフィルムを作製して溶媒除去する。そして、鉄心を積層接着する条件に準じて熱履歴を与えることによって得られる。また無溶媒系接着剤では堰に入れ、鉄心を積層接着する条件に準じて重合・架橋することにより固化させる。あるいは、接着接合した鉄心などの基板から、基板を溶解法などで除外し、接着剤固形分をえる方法などがある。なお、熱硬化性接着剤の場合は、所謂、“硬化物の最大強度”が接着樹脂の降伏応力に該当する。
EV、HV車などの駆動モーターでは、大きなトルクが必要である。このため、径を大きくして高速回転する。さらに、これらの用途では永久磁石同期型モーターが主流である。
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁鋼板積層鉄心の一部を示す図である。(a)は平面図であり、(b)は回転時に応力集中する部位を示す図である。ローター10は、積層鉄心20と、磁石30と、封止樹脂40とを備えている。積層鉄心20は、互いに積層された鋼板21と積層方向に隣り合う鋼板21を接着する接着層22(図2参照)と、を備えている。鋼板21は、無方向性電磁鋼板である。接着層22は、鋼板21のうち、少なくともブリッジ23を含む部分を接着している。積層鉄心20には、貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、積層鉄心20を積層方向Zに貫通している。貫通孔24は磁石30に対応して設けられている。
図2は、図1(a)に示すローター10のA-A矢視断面図である。図3は、図1(a)に示すローター10のB-B矢視断面図である。図2、図3において、外縁20aがローター10の外縁側である。なお、この積層鉄心20の貫通孔24には、隙間25(図1(a))、隙間26(図3)が設けられている。
図1に示す通り、電磁鋼板積層鉄心にはスロットを設けて永久磁石を封止樹脂で埋め込む場合が多い。また、モーター効率をアップすることを目的に磁場の時間変化を大きくするため、封止樹脂40が配置されるスロットは外周近傍に設けられる。すると、スロットの外側には幅狭のブリッジが形成される。さらに、封止樹脂の接着力は一般的には高くとも5MPa程度であり(参考文献:住友ベークライト(株) スミコンEME―M630 カタログ)、永久磁石は鉄心に緩やかに拘束されているに過ぎない場合が多い。
本発明者らは、このような形状の積層鉄心を高速で回転すると、以下のような変形が発生することを見出し、本発明に至った。積層鉄心を高速で回転すると、大きな遠心力がはたらく。永久磁石に加わる遠心力が閾値をこえると、封止樹脂が鉄心から剥離し、永久磁石が外側に押し出される。すると、永久磁石と接するブリッジ部では解放された永久磁石による押し出し力が外方向へ加わり、撓む。
このとき「ブリッジのR止め部」(図1(b)、図3)と「磁石の端部に位置する部位」(図1(b)、図2)との間では、周方向に伸ばされる。そして、「ブリッジのR止め部」と「磁石の端部に位置する部位」では、周方向への単軸引張りに近い状態になる。さらに、この押し出し力は、回転数が大きくなるほど増加する。
図4は、このメカニズムを概念的に示したものである。図4(a)は低速、図4(b)は高速で、回転した際の永久磁石の外側への変位した部位を白色とし、ブリッジ部に働く引っ張り応力の大きさを濃淡で示した。濃色になるほど、応力が大きい。高速回転時に磁石端部に位置するブリッジ部に大きな周方向の応力が加わることがわかる。
さらに、ブリッジ部は細くて力を吸収できる面積が小さいため、これらの部位には応力が集中しやすい。よって、局所的に大応力となって周方向、板厚および径方向に各々、延伸、収縮する。すると、周方向の引張りを受ける断面積がさらに減少し、益々応力が上昇して径方向や厚み方向に変形が進みやすくなる。さらに、周方向への延伸に対する抵抗力が小さくなると、より外側に撓みやすくなり、当該部位の外側への変位は大きくなる。
図5は、積層鉄心が回転する時に、応力集中部位で括れ成長する概念を示す図である。図5(a)は接着剤が凝集破壊し、上下鋼板の拘束がない状態である。ここでは各鋼板で個別に括れが成長する。図5(b)は接着剤が健全で上下鋼板を拘束した鉄心である。ここでは接着剤の拘束により、一体となった積層鋼板で括れが成長する。この結果、図5(b)の状態では厚肉効果が生じる。よって、括れの成長速度は、図5(b)よりも図5(a)の方が著しく速い。
より詳しく説明すると、図5(a)に示す通り、拘束力なしで単純積層した鉄心では、やがて厚み上下方向の括れが進行して大きく変形する。さらにこの括れは、鋼板の降伏応力が低下するとより容易に成長し、ついには破損する場合もある。また、外側への撓みも大きくなるため、ステーターとのクリアランスが小さくなる。元来、モーターでは、透磁率を向上するためにローターとステーター間のクリアランスを極力小さく設計されている。よって、当該撓みにより、ローターとステーターとが接触してローターが破損する場合もある。
一般に鋼板を薄肉化するためには圧延回数を増加しなければならない。しかしながら、圧延回数を増加するとコストが増加する。圧延回数を増加することなく薄肉化するためには、鋼板の降伏応力を低下することが必要になる。しかし、安価に製造できる薄肉電磁鋼板を拘束力無しに積層すると、安価に薄肉化できる降伏応力の小さい電磁鋼板では図4(a)の概念に従い、高速回転時に破損する場合がある。
一方、図5(b)に示す通り、積層された電磁鋼板間を接着剤で接合し拘束すると、鋼板厚みを増加したのと同等の効果を発現し、厚み方向の変形を抑制して括れの成長を抑制できる。この結果、大きな変形や破損を防止できる。但し、この際、接着剤層の厚み方向にも大きな引張り応力が加わる。この結果、接着剤層を形成する樹脂に一定の強度がないと接着剤層が凝集破壊し、拘束効果を発現できない。
図6は、図1~3に示すような形状の積層鉄心を回転した際に、既述の応力集中部に加わる応力(YPB:接着樹脂の降伏応力(MPa))を計算し、接着剤層が凝集破壊しないために必要な樹脂の強度を求めた結果を示す図である。
接着樹脂の降伏応力が35MPa以上であれば、電磁鋼板の降伏応力が200MPaと低い場合でも12000rpmの高速回転において凝集破壊をしない。逆に、接着樹脂の降伏応力が35MPa未満の場合、降伏応力200MPaの電磁鋼板を使用すると、接着剤層が凝集破壊し、鋼板が破損する場合がある。
さらに、接着樹脂の降伏応力が60MPa以上であれば、電磁鋼板の降伏応力200MPa、12500rpmで回転させる場合でも接着剤層は凝集破壊せず、より高速回転が可能となる。
また、接着樹脂の降伏応力が100MPa以上であれば、自動車用駆動モーターに使用されている降伏応力550MPaで板厚0.35mmの電磁鋼板からなる積層鉄心を20000rpmで回転させても接着剤層は凝集破壊しない。これは、電磁鋼板の強度上昇なしに、より高速回転が可能になることを示すものである。
以上の結果は、図1~3の形状をした電磁鋼板積層鉄心での具体的な計算例であるが、形状が異なっても同様の結果がえられることが予想され、本発明はこのような計算例等から見出されたものである。
[接着剤の物性]
以下、本発明の接着剤の物性について、より詳しく説明する。
[降伏応力≧35MPa]
本発明の接着剤は、JIS K 7161に準拠して35℃で測定した降伏応力が35MPa以上の接着樹脂を含む。これにより、降伏応力200MPa程度の低強度の電磁鋼板を使用して12000rpmで高速回転しても、接着剤層が凝集破壊しない。
[降伏応力≧60MPa]
本発明の接着剤は、接着樹脂の降伏応力が60MPa以上であることが好ましい。これにより、強度の低い降伏応力200MPaの電磁鋼板を積層した積層鉄心をより高速回転しても破壊しない。200MPaレベルの電磁鋼板を使用して、12500rpmで高速回転することができる。
[降伏応力≧100MPa]
本発明の接着剤は、接着樹脂の降伏応力が100MPa以上であることが好ましい。これにより、降伏応力550MPaレベルの強度の電磁鋼板でも20,000rpmレベルの高速回転が可能になる。
[鋼板応力および接着樹脂の降伏応力について]
本発明の接着剤は、式(1)もしくは式(2)を満足することが好ましい。これにより、電磁鋼板の強度や、モーターの回転数に応じて最適化した接着剤の設計ができる。
Figure 2022018470000005
Figure 2022018470000006
ここで、式(1)、式(2)において、A=0.105、B=17000、C=17000、D=410、E=30である。また、ω:回転数(rpm)、YPR:鋼板の降伏応力(MPa)、YPB:接着樹脂の降伏応力(MPa)である。
鋼板21の降伏応力(降伏点、強度)をYPR(MPa)とし、接着層22に用いる接着樹脂の降伏応力(降伏点、強度)をYPB(MPa)とし、自動車の走行時における最大回転数をω(rpm)としたとき、YPRおよびYPBの各値は、式(1)もしくは式(2)を満たすことが好ましい。
YPRおよびYPBの各値が式(1)を満たすことで、ローター10が最大回転数で回転したときに、鋼板21のブリッジ23が弾性域内で変形して塑性変形することが規制される。言い換えると、ブリッジ23が弾性変形して塑性変形していない。また、ローター10が11000rpmで回転するときには、積層鉄心20の外縁20aの径方向への最大変位量が小さくなり、例えば0.1mm以下を達成することができる。
YPRおよびYPBの各値が式(2)を満たすことで、接着層22の接着樹脂の降伏応力YPBを最適な範囲に収めることができる。すなわち、接着層22の接着樹脂の降伏応力YPBが鋼板21の降伏応力YPRの0.1倍未満の場合、接着層22の接着樹脂の降伏応力YPBが低すぎて低回転で変形するおそれがある。接着層22の接着樹脂の降伏応力YPBが鋼板21の降伏応力YPRの10倍超の場合、接着層22の接着樹脂の降伏応力YPBが高すぎて効果が飽和し、かつ、経済性が成立しない。
なお、電磁鋼板21の降伏応力YPRは、150MPa以上580MPa以下であることが好ましい。接着層22の接着樹脂の降伏応力YPBは、35MPa以上200MPa以下であることが好ましい。
[140℃での降伏応力≧35MPa]
本発明の接着剤は、140℃で測定する降伏応力が35MPa以上である接着樹脂を含むことが好ましい。この降伏応力は、35℃での降伏応力と同様に、JIS K 7161(2014)に準じて測定される。このような接着剤とすることで、積層鉄心の回転時に鉄損によって発熱しても強度維持することができる。永久磁石を埋め込んだローターの連続回転時の温度は、エンジンオイルなどでの冷却がない場合、140℃程度まで上昇するといわれている(参考文献:平野覚、“電気自動車用モータ構造を模擬した回転二重円筒内の熱流動特性”、9ページ、2013年、筑波大学大学院 学位論文 12102甲第6725号)。従って、140℃で、35MPa以上であれば、エンジンオイルなどによる冷却がない場合でも接着樹脂の強度を十分に維持し、回転時の変形を抑止できる。
[接着剤の成分]
本発明の接着剤は、接着樹脂の主成分がアクリル樹脂および、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、強度や、密着性、耐熱性、コストの観点から適したものをえやすい。
接着樹脂の主成分とは、接着樹脂の70質量%以上のものとすることができる。主成分として含まれる接着樹脂は、接着樹脂の80質量%以上としてもよく、90質量%以上や、95質量%以上としてもよい。
さらに、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂は、降伏応力を35MPa以上にするために、引張り応力により分子配向しやすい剛直な棒状分子構造であることが望ましい。このためには、モノマーは、主鎖の周りの回転を阻害するような嵩高い構造を含むことが好ましい。
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート単量体を重合したものである。アクリル樹脂は、ガラス転移温度120℃以上であることが好ましい。具体的には無水マレイン酸と(メタ)アクリレートの共重合体、N-置換マレイミドと(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリレート共重合体を分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した、ラクトン化重合体、(メタ)アクリレート共重合体を分子内環化反応によりグルタルイミド環構造を導入した、グルタルイミドポリマー等があげられる。
(メタ)アクリレート単量体としては、炭素数1~18のアルキル基、シクロヘキシル基、およびベンジル基のうちのいずれかを有する(メタ)アクリル酸エステルが好適である。また、好適な(メタ)アクリレート単量体として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-フェニルプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシルエチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが特に好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。なお、本願において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタアクリレートを示すものであり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸を示す。
また、これらは耐熱性を損なわない範囲で共重合可能なその他の単量体成分を共重合した単位を有していても良い。共重合可能なその他の単量体成分としては、具体的にはスチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル類、無水マレイン酸、イタコン酸、マレイミド等の官能基含有ビニル系単量体、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物、メタアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、などのメタクリルアミド系化合物およびグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルアクリレート等があげられる。
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、高分子内に残存させたエポキシ基を用いて架橋することで硬化させることができる樹脂の総称である。この硬化は熱硬化などで行われる。例えば、ナフタレン系エポキシ(DON、DONE)、カルド骨格エポキシ(BPFL、BCFL、BCFL-E)、ビスフェノール系エポキシ化合物(BPAP、BPCH-E)残基などを含むエポキシ樹脂があげられる。
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸とポリアルコールとを、脱水縮合してエステル結合を形成させることによって合成された重縮合体である。好ましくは、ビスフェノールA(BPA)、ナフタレン残基などの芳香族成分を含むポリエステル樹脂である。
[ウレタン樹脂]
ウレタン樹脂は、ウレタン結合を有する重合体であり、イソシアネート基と水酸基を有する化合物の重付加等により生成される。例えば、芳香族ポリオールもしくは芳香族イソシアネート残基を含むウレタン樹脂などを用いることができる。
より具体的には、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、及びフェノール樹脂等のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリオール;ベンゼンジメタノール、及びベンゼンジエタノール等のアルコール性水酸基を有する芳香族ポリオール;並びに、芳香族骨格を含有したポリカーボネートポリオール、芳香族骨格を含有したポリエステルポリオール、芳香族骨格を含有したポリエーテルポリオール及び芳香族骨格を含有したヒマシ油系変性ポリオール等のポリマー系芳香族ポリオールなどの残基が挙げられる。
また、芳香族イソシアネート残基として、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4´-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4´,4´´-トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω´-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω´-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω´-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネートの残基が挙げられる。
これらの剛直なモノマー残基を樹脂中に30質量%以上含有していることが望ましい。強度を発現しやすい。より好ましくは、50質量%以上である。50%質量以上にすることにより、-C-C-結合が引張り方向に配向しやすくなり、強度を発現しやすい。
[ポリイミド樹脂]
ポリイミド樹脂は、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子である。ポリイミド樹脂としては、酸二無水物残基とジアミンもしくはジイソシアネート化合物残基からなるポリイミド樹脂を広く利用できる。例えば、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミド等を指す。
具体的な酸二無水物は、トラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4´-オキシジフタル酸二無水物は、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフルフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフルフリル)-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2´,3,3´-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2´-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物等が挙げられる。
これらの中でも、接着性の観点から3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4´-オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4´-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物が好ましい。
ジアミンもしくはジイソシアネート化合物を例示すると、1つのベンゼン核あるいは2個以上の複数のベンゼン核を有する化合物があげられる。1つのベンゼン核を有する化合物としては、p-フェニルジアミン、1,3ジアミノベンゼン、2,4ジアミノトルエン、2,5ジアミノトルエン、2,6ジアミノトルエン、ジエチルトルエンジアミンあるいはこれらのアミノ基をイソシアネート基に置換した化合物があげられる。
また、複数のベンゼン核を有する化合物としては3,3´-(m-フェニレンジオキシ)ジアニリン(APB-N)などのジアミノジフェニルエーテル類、3,3´-ジメチル-4,4´-ジアミノビフェニル、2,2´-ジメチル-4,4´-ジアミノビフェニル、およびこれらのジイソシアネート基置換体などの2個のベンゼン核を有する化合物、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、およびこれらのジイソシアネート基置換体などの3個以上ベンゼン核を有する化合物が挙げられる。
中でも、比較的安価に入手でき、接着力も発現しやすいジエチルトルエンジアミンが好ましい。さらに、熱流動性を向上してアンカー効果による接着力を向上する目的で、ジアミンもしくはジイソシアネート残基にはエーテル基を導入することが望ましい。あるいは、ジアミンもしくはジイソシアネート残基にカルボキシル基を導入すると鋼板表面の水酸基との親和性が増し、化学的にも結合して接着力を増すことが可能になる。
具体的には、各々、3,3´-(m-フェニレンジオキシ)ジアニリン(APB-N)、3,5-ジアミノ安息香酸などがあげられる。これらの接着力改善のために加える残基は、全ジアミンもしくはジイソシアネート残基に対して、30~70モル%であることが好ましい。30モル%未満では接着力が発現しにくい。70モル%を超えると、引張り強度が低下する場合がある。
また、ポリイミド樹脂の場合はワニス状態で鋼板に塗布できるので、溶媒溶解性を付与することが好ましい。この意味で、鋼板塗布前にはポリアミック酸の状態で乾燥時に開環してイミド化する樹脂が望ましい。
[熱可塑性樹脂]
本発明の接着樹脂は、熱可塑性樹脂であるものとすることができる。熱可塑性樹脂を用いれば、塗布後の乾燥、加熱圧着工程で比較的容易に接着剤の硬度を制御できる。この結果、積層鉄心を接着接合するプロセスで広く設定できる。
[熱硬化性樹脂]
本発明の接着樹脂は、熱硬化性樹脂であるものとすることができる。熱硬化性樹脂は、熱安定性がよく、回転時に鉄損によって発熱しても接着樹脂の強度を保持しやすい。
[鋼板への接着力]
本発明の接着剤の鋼板との接着力は、35℃での引張接着強度が35MPa以上であることが好ましい。しかしながら、薄肉化した鋼板との引張接着強度を測定することは相当に困難であり、引張り剪断応力で代用される場合が多い。また、ミーゼス応力理論を代用すると引張り剪断応力の許容値は、以下の式になる。
Figure 2022018470000007
上記式において、τは、引張剪断応力である。σは、引張応力である。よって、鋼板との引張り剪断応力は、28MPa以上と考えられる。接着樹脂の降伏応力と同様の理由で、より好ましいのは49MPa、さらに好ましいのは、81MPa以上と考えられる。
[積層鉄心を製造する工程]
本発明の接着剤を用いて、積層鉄心を製造する工程について説明する。接着剤の塗布面は、鋼板の片面または両面のいずれとしてもよい。塗布工程は、電磁鋼板の積層前や、積層金型内、積層後のいずれでもよい。接着剤の塗布は、接着剤の性状、塗布工程を行う位置等に応じて、適した塗布法を選択することができる。ここで、接着剤の性状は、接着剤が液状であれば、溶媒の有無、粘度、粘弾性性状などを指す。接着剤が固形であれば、粉体、シートなどの形態などを指す。
接着剤の具体的な塗布方法は、接着剤の性状に合わせて適宜選択され特に限定されない。例えば、ロールコータ法、グラビアコータ法、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロッドコータ法、キスコータ法、ビードコータ法、キャストコータ法、ロータリースクリーン法や、液状樹脂中に鋼板を浸漬しながらコーティングする浸漬コーティング方法、液状樹脂を鋼板にオリフィスから落下させコーティングするスロットオリフィスコータ法などで行うことができる。
また、これらの他にも、バーコード方法や霧吹きの原理を用いて液状樹脂を霧上に吹き付けるスプレーコーティング法やインクジェット法、スピンコーティング法、電着コーティング法などで行うことができる。さらには、接着剤がフィルム状であればラミネート法などで行うこともできる。さらには、スパッタ法のような物理的な蒸着法、CVD法のような気相法などで重合しながら鋼板表面に塗布する方法がある。
積層前に塗布するのであれば、厚みや塗布面積の制御性、さらには生産性から、溶媒に溶解した接着剤をコート法、中でもロールコータで塗布するのが好ましい。例えば、広幅コイルを高速で連続塗布することが比較的容易である。この場合、積層前、より好ましくは打ち抜き工程前に、接着剤の脱溶媒を行う工程を設けるのがより好ましい。積層工程以降では鋼板が接着剤層表面を覆い、脱溶媒が困難な場合がある。
[脱溶媒工程]
溶媒を含む接着剤を用いる場合、接着剤の脱溶媒には任意の方法を利用できる。例えば、熱風乾燥や、誘導加熱、真空加熱などがある。脱溶媒工程では、接着剤層が可塑化して接着樹脂強度(接着樹脂の降伏応力)が低下しない、かつ、打ち抜き工程で粘着しない状態のいわゆるタックフリーになる濃度まで溶媒を除去することが好ましい。
さらに、接着樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、積層後の熱圧着工程での加熱で十分に接着力を発現するために、脱溶媒工程での加熱で過度に硬化を進行させないことが好ましい。
[積層金型内塗布]
積層金型内で塗布する場合は、空間制約が大きいため、スプレーやインクジェット、粉体吹付のような噴霧でコートするのが好ましい。よって、接着剤の性状は、低粘度の液状接着剤や粉末状であることが好ましい。さらに液状の接着剤も、積層後の脱溶媒が困難であるため、無溶媒の接着剤が好ましい。具体的には、ビニル系モノマーを用いる接着剤である、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂を含む接着剤があげられる。これらの接着剤は塗布前にはモノマーで低粘度であり、塗布後にラジカル重合が開始して硬化する場合が多い。重合開始する手法は公知のラジカル開始法であればよく、嫌気性のように脱酸素であってもよく、熱や、光を用いるようないずれの手法でもよい。
[接着剤塗布鋼板の積層時の仮止め]
本発明の接着剤を電磁鋼板に塗布してから積層する場合は、仮止めできる程度の接着力を付与することを目的に、塗布した接着剤層の表面に噴霧上の溶媒や油を塗布し、表面を可塑化させることもできる。または、熱を加えて可塑化することもできる。
仮接着力を付与することにより、熱圧着工程に積層鉄心を移動する際の剪断ずれを防止することができる。塗布する溶媒や油の量は、可塑化しにくいように少量とすることが好ましい。また、熱硬化樹脂からなる接着剤層の表面を熱で硬化する場合は、熱圧着工程でアンカー効果が十分に発現できる程度に硬化反応の進行を抑制することが好ましい。
[積層後塗布]
積層後の塗布例を示すと、積層鉄心を接着剤液浴に浸漬し、接着剤液を積層鋼板間に侵入させる方法などがある。この場合も脱溶媒が困難なので、非溶媒系接着剤を用いることが好ましい。かつ、接着剤液の毛管浸透力がドライビングフォースになるため、鋼板の表面性状に応じて目標浸透長を定め、接着剤液の粘度、表面張力をWashburn方程式などに従って調整するのが好ましい。また、浸透速度を加速、もしくは浸透力を増大するために減圧下で浸透することも可能である。
[接着工程]
本発明の接着剤を塗布した電磁鋼板は公知の方法で、接着することができる。具体的には、加熱圧着、無負荷での加熱、常温で圧着することが可能である。
[塗布後の熱処理・歪とり焼鈍]
また、本発明の接着剤は電磁鋼板積層鉄心に使用される。電磁鋼板は、熱処置がなくとも良好な磁気特性を発現できるため、熱処理は不要である。さらに、35℃で降伏応力が、35MPa以上である接着剤を含む接着剤を使用すれば、電磁鋼板の強度を接着樹脂が補完するので、比較的低強度の珪素鋼板のような電磁鋼板を使用できる。よって、打ち抜き加工後も焼鈍が必要なほどの歪が発生しない。従って、打ち抜き加工後の歪とり焼鈍は不要である。よって、300℃までの耐熱性などは必ずしも必要ではなく、実使用環境での温度域、すなわち、35℃や、好ましくは140℃での所定の接着樹脂の降伏応力を有するものであればよい。
[製品への組み込み]
本発明の接着剤で電磁鋼板鉄心を積層接着する際に、鉄心に塗布する接着剤の面積および接着剤層厚みは特に限定されない。
接着樹脂が電磁鋼板の強度を補完して、高速回転時に積層鉄心の破断を防止するとの観点からは、鉄心コアの外周部の接着面積は90%以上であることが好ましい。ここで、接着面積とは剥離した鋼板の表面を覆う接着剤面積を以下のように画像解析して得られる面積などで評価できる。具体的には、上面に残留した接着剤の面積+下面に残留した接着剤の面積-上下双方に共通に残留した面積(接着層が凝集破壊した面積)を算出し、鋼板表面の面積で割った値で評価できる。90%未満では、高速回転時に鋼板を十分に拘束できず、鋼板の括れが大きくなる場合がある。
[接着剤層の厚み]
接着剤層の厚みは、式(3)を満足することが好ましい。
Figure 2022018470000008
ここで、t1=1.5×Rmaxである。t2=Er×ts/Esである。Rmax:鋼板表面粗度(μm)である。Er:接着樹脂のヤング率(GPa)である。Es:鋼板のヤング率(GPa)である。ts:鋼板厚み(μm)である。
[t1]
t(μm)がt1(μm)以下の場合、鋼板の凹凸に接着剤が十分に侵入しない。よってアンカー効果を発現できず、接着力が低下する場合ある。なお、t1=1.5×Rmaxである。Rmaxは、鋼板表面粗度(μm)であり、この1.5倍以上とすることで、より確実に、鋼板の凹凸に接着剤が侵入する状態とすることができる。
[t2]
t(mm)がt2(mm)以上の場合、鋼板を十分に拘束することができない場合がある。なお、t2=5×Er×ts/Esである。Erは接着樹脂のヤング率、Esは鋼板のヤング率、tsは鋼板厚みである。t2は、以下のバネモデルから導出される。
回転時には既述のように、鋼板および接着樹脂の厚み方向に各々収縮応力σsおよびこれを拘束する接着樹脂の伸長力σrがはたらく。この時の各々の変形を図7の連結バネモデルで近似する。バネモデルで近似するのは、鋼板および接着樹脂の変位xが共通パラメーターとなるためであり、鋼板および接着樹脂のバネ定数(各々、ks、krとする)は、各々のヤング率を各々の厚みで割った値になる。鋼板および接着樹脂の厚み方向に各々収縮応力σsおよびこれを拘束する接着樹脂の伸長力σrは、バネモデルでは以下のように記載できる。
Figure 2022018470000009
Figure 2022018470000010
接着樹脂が鋼板の収縮応力を十分に吸収するためには、σs<σrであることが好ましい。このためには、t<1.3×t2であることが望ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[鋼板]
降伏強度が200~550MPaの板厚0.15mmの無方向性電磁鋼板を使用した。
[接着樹脂]
BC1:エポキシ系接着樹脂(I):ビスフェノール型エポキシ樹脂(分子量380、エポキシ当量190±5g/eq、エピコート828、三菱ケミカル(株)製)からなる主剤(以下、「エポキシ樹脂主剤」)に、硬化剤(アジピン酸(HOOC(-CH2-)4-COOH))主剤エポキシ基1個に対して硬化剤のカルボン酸1個が対応するように配合した。さらに、硬化促進剤として、三級アミン(べンジルジメチルアミン(BDMA))を主剤樹脂100質量部に対して1質量部配合した。
BC2:エポキシ系接着樹脂(II):上記エポキシ樹脂主剤500gに対してピリジン系硬化剤ピぺリジン(アルドリッチ化学(株)製)を27mLの割合で配合した。
BC3:エポキシ系樹脂(III):上記エポキシ樹脂主剤60.4質量部に、ノボラック型フェノール樹脂硬化剤(当量105g/eq)を39.0質量部、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール0.6質量部を配合した。
BC4:アクリル系接着樹脂:嫌気性アクリル接着剤(3MTB-1360、スリーボンド(株)製)を使用。
BC5:フェノール系接着樹脂:ハマタイトA-344-B(横浜ゴム(株)製)を使用。
BC6:熱硬化性ポリエステル接着樹脂:ポリエステル主剤(Y-6410-A、横浜ゴム(株)製)95質量部に、イソシアネート系硬化剤(Y-6410-B、横浜ゴム(株)製)5質量部を配合した。
BC7:ウレタン系接着樹脂:ポリウレタン主剤(ニッポラン3114、東ソー(株)製)90質量部にイソシアネート硬化剤(コロネートL、東ソー(株)製)10質量部を配合した。
BC8:PI:熱可塑性PI接着樹脂(SIXAREA VR0125-078、ソマール(株)製)を使用。
BC9:熱可塑性ポリエステル接着樹脂:ポリエチレンテレフタレート(PET、イソフタル酸共重合比:8mol%、SA-1346、ユニチカ製)83質量部に、オレフィンゴム(タフマーTMA 三井化学(株)製)7質量部、エポキシ基含有エチレン系共重合体(住友化学(株)製2C(エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体:E-GMA)3質量部を加え、T型ダイス付き2軸押し出し機で、260℃で6μm厚の無延伸PETアロイフィルムを作製した。当該フィルムをフィルム接着樹脂として使用。
[接着樹脂の評価]
接着樹脂の引張試験片を下記4通りの方法にて、JIS K 7161(2014)に準じて作成した。
BT1:キャストフィルム(I)(無溶媒系接着剤のキャストフィルム):ガラス基板上に厚みが20μmになるようにバーコーターでキャスト。この後、表の条件で硬化。水を貼ったバット中にガラス基板を浸漬してキャストフィルムをガラス基板から剥離した。剥離後、キャストフィルムから試験片打ち抜き刃(高分子計器(株)製)を使用して、1号形引張試験ダンベルを作製した。
BT2:キャストフィルム(II)(溶媒系接着剤のキャストフィルム):室温、真空下で3日間乾燥。脱溶媒して、20μm厚のフィルムを作製。当該フィルムを表の条件で乾燥および硬化させた後、BT1と同様にしてキャストフィルムとして、1号形引張試験ダンベルを得た。
BT3:注型法による引張試験片ダンベル:200×200mmのSPCC鋼板表面に1mm×10mm幅とSiゴム堰を乗せ、150mm×150mmの注入型を作成する。嫌気性接着剤を型内に注入した後、型表面を200×200mmのSPCC鋼板で覆う。そして、表の条件で硬化。硬化後、型を濃塩酸に浸漬し、上下の鋼板をエッチング。150×150mmの固形板を得た。本固形板を旋盤加工して1号形引張試験ダンベルを試作した。
BT4:フィルム接着剤:フィルムから試験片打ち抜き刃(高分子計器(株)製)を使用して、1号形引張試験ダンベルを作製した。
上記で作成した接着樹脂の引張試験片を用い、接着樹脂の降伏応力をJIS K 7161に準じて、恒温付万能材料試験機5966型(インストロン(株)製)を用いて、35℃もしくは140℃、50%RH±5%RHで降伏強度を測定した。引張り速度:5mm/分、標線間距離:20mm(接触式伸び計使用)、チャック間距離:40mmで各5本を測定し、その平均値を表1に示す。発明例A1~A13の接着樹脂はすべて35℃における降伏応力35MPa以上を満足した。更に、140℃における引張試験も実施した発明例A5は降伏応力35MPa以上を満足した。
Figure 2022018470000011
[接着剤層の厚み]
鋼板をエポキシ樹脂に包埋し、断面研磨して断面を切り出した。当該サンプルを実体顕微鏡で観察して、接着剤層厚みを実測した。表2に積層鉄心作成時の接着剤層厚みを示す。
[積層鉄心]
無方向性電磁鋼板の表面をアセトンで洗浄後、下記BA1~BA3の方法にて接着剤層を無方向性電磁鋼板の表面に付与した。
BA1:コーター塗布:ドクターバー方式ロールコータ((株)ファーネ製)を使用して、鋼板の両面に接着剤を塗布した。塗布後、オーブンに装入し、表2の条件で乾燥した。
BA2:ラミネート:鋼板表面を260℃に加熱し、鋼板の片面にフィルム状接着剤を連続ラミネーターで積層した。積層後、鋼板を急冷して室温まで降下した。
BA3:スプレー塗布:剪断加工により図1の形状に加工した鉄心の片面に、エアスプレーで接着剤を吹き付けた。実施例7では、吹付後、表の条件で、硬化させた。
無方向性電磁鋼板の表面に接着を樹脂付与した鋼板を剪断加工して、図1の形状を有する積層鉄心用剪断鋼板を製造し、積層鉄心用剪断鋼板を400枚積層して積層鉄心とした。ここで片面のみに接着剤層が付与されている積層鉄心用剪断鋼板は、接着剤層の付与面を上面として積層し、積層後、表2に記載の熱圧着条件(温度、時間)にて1MPaで圧下し、積層鉄心を得た。
[積層鉄心の評価]
駆動原動機(参考文献「伊藤洋茂、ターボ機械、Vol. 13, 583, 1985」に準拠)を空気タービンとする回転試験機を使用して、積層鉄心を3時間連続回転した。発明例B1~B12の回転数を表2に示す。なお、冷却なしで連続運転した際の鉄損による発熱下の回転を模擬するためには、高周波誘導加熱により積層鉄心最上面の鋼板表面温度が140℃になるように加熱し、回転した。回転後、積層鉄心を回収した。そして、ブリッジ磁石端部に位置する部位(図4(b)参照)の径方向の変位量(撓み量)量を、レーザー変位計で測定した。そして、当該部位の断面を切り出し、研磨して顕微鏡観察した。厚み歪量を測定すると同時に、変形形態から、均一歪、括れ歪のいずれかを表3に示す評価基準にて判定し、発明例B1~B12の結果を表2に示す。
Figure 2022018470000012
Figure 2022018470000013
また、発明例B4と同一の鋼板、接着剤、製法により、接着剤層厚みが両面合計で10μmの積層鉄心である発明例B13を製造した。鋼板の表面粗度を表面粗さ計で測定した結果、Rmax=0.6μmであった。また、ヤング率は、1.5×102GPaであった。さらに、接着剤BC1のヤング率は5GPaであった。これらから、式(3)のt1およびt2は各々以下のものであった。
t1=0.9μm、t2=5μm
また、接着剤層の厚みtは、発明例B4、B13では各々両面合計で6、10μmであった。よって、式(3)は、以下のようになり、発明例B4は範囲内、発明例B13は範囲外であった。
0.9<t<6.5μm 式(3)
そして、変形の評点は、発明例B4、B13が各々◎、○であった。従って、発明例B4のほうが発明例B13よりも変形評点が良好であった。
表4に記載の嫌気性接着剤、アクリル系接着剤の接着樹脂の降伏応力を測定した。いずれの比較例a1~a3も35℃での降伏応力は35MPa未満であった。表4に記載の接着剤を使用して、積層鉄心を試作した。当該積層鉄心の回転試験後の撓み量、および歪量(厚み歪量)を測定、評価した結果、いずれも××、もしくは×の評点であった。
Figure 2022018470000014
以上、発明例B1~B13により、35℃での接着樹脂の降伏応力が35MPaの接着樹脂を使用して無方向性電磁鋼板を積層すれば、鋼板の降伏応力が200MPaであっても、12000回転(rpm)以上の高速回転における鉄心の変形を小さく抑制することができる。一方、比較例a1~a3に示すように接着樹脂の降伏応力が35MPa未満では、このような12000回転(rpm)の高速回転をすると鉄心が変形する。よって、接着樹脂の降伏応力が35MPa以上の接着樹脂を有する鋼板を積層することにより、低強度の鋼板でも、変形することなく積層鉄心を高速回転することが可能になる。
さらに、発明例B3は発明例B2よりも鋼板の変形が抑制できている。これは、接着樹脂の降伏応力が発明例B3では60MPa以上であることに起因していると推定される。よって、200MPa程度の低強度鋼板を鉄心にする場合は、接着樹脂の降伏応力が60MPa以上の接着剤で接着接合する方が好ましい。12500回転でも変形をより抑制できる。
同様に発明例B5よりも発明例B4、B11はより変形を抑制できている。従って、20,000回転レベルの超高速回転には接着樹脂の降伏応力が100MPaの接着剤を使用して接着積層することが好ましい。
また、発明例B6は発明例B1よりも140℃で回転した際にも評価結果が良好である。よって、140℃の接着樹脂の降伏応力が35MPa以上であることが、冷却なしで連続回転した際に望ましい。
また、降伏強度540MPaの鉄板を接着積層した鉄心を20,000回転で超高速回転する場合、式(1)から予想される接着樹脂の適正降伏強度は101MPaになる。同様に、降伏強度200MPaの鋼板を接着積層した鉄心を12,500回転で回転する場合、式(1)から予測され接着樹脂の降伏強度は、66MPaになる。変形の評点は、発明例B5,B2よりも各々、発明例B4,B3の方がよい。すなわち、式(1)の予測に近い接着樹脂の降伏応力を有する接着剤で接着積層した鉄心の方が変形評点は良好である。従って、式(1)を満たす接着樹脂の強度の接着剤で積層する方が好ましい。
さらに、発明例B4は発明例B13よりも良好な評価結果であり、積層鉄心の接着層厚みは、式(3)の範囲にすることが好ましい。
本発明の接着剤で接合することにより、薄肉化した鋼板でも積層して高速回転できる。この結果、鉄損が少ない高度な磁気特性を有し、かつ、大トルクを発生できる積層鉄心を比較的安価に得ることができる。従って、本発明の接着剤で接合した積層鉄心は家電、ハイブリット自動車や電気自動車の駆動用電動機に好適に使用することが可能である。
10 ローター
20 積層鉄心
20a 外縁
21 鋼板
22 接着層
23 ブリッジ
24 貫通孔
30 磁石
40 封止樹脂

Claims (9)

  1. JIS K 7161に準じて35℃で測定した降伏応力が35MPa以上である接着樹脂を含むことを特徴とする電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
  2. 前記降伏応力が60MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
  3. 前記降伏応力が100MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
  4. 140℃で測定した前記接着樹脂の前記降伏応力が35MPa以上であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
  5. 前記降伏応力が下記式(1)もしくは式(2)を満足することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
    Figure 2022018470000015
    Figure 2022018470000016
    ここで、式(1)、式(2)において、A=0.105、B=17000、C=17000、D=410、E=30、ω:回転数(rpm)、YPR:鋼板の降伏応力(MPa)、YPB:接着樹脂の降伏応力(MPa)
  6. 前記接着樹脂の主成分が、アクリル樹脂および、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
  7. 前記接着樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
  8. 前記接着樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の電磁鋼板積層鉄心用接着剤。
  9. 鋼板と接着剤層が交互に積層された積層鉄心であって、前記接着剤層が請求項1~8のいずれか1項に記載の積層鉄心用接着剤からなり、かつ、前記接着剤層の厚みtが下記式(3)を満足することを特徴とする電磁鋼板積層鉄心。
    Figure 2022018470000017
    ここで、t1=1.5×Rmax、t2=Er×ts/Es、Rmax:鋼板表面粗度、Er:接着樹脂のヤング率(GPa)、Es:鋼板のヤング率(GPa)、ts:鋼板厚み(μm)
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