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JP2022017977A - 細胞、組成物及び治療用組成物 - Google Patents

細胞、組成物及び治療用組成物 Download PDF

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JP2022017977A
JP2022017977A JP2020120876A JP2020120876A JP2022017977A JP 2022017977 A JP2022017977 A JP 2022017977A JP 2020120876 A JP2020120876 A JP 2020120876A JP 2020120876 A JP2020120876 A JP 2020120876A JP 2022017977 A JP2022017977 A JP 2022017977A
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裕明 吉田
Hiroaki Yoshida
知也 長田
Tomoya Osada
三奈子 古賀
Minako Koga
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Reeir Inc
Juntendo University
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Abstract

【課題】本発明は、細胞、組成物、治療用組成物に関する。【解決手段】本発明の細胞は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である。本発明の細胞群は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を40%以上含む。本発明の治療用組成物は、上記細胞または細胞群を含む、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療用組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞、組成物に関する。
本発明の細胞は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)であることを特徴とする。本発明の細胞群は、本発明の細胞を40%以上含む細胞群である。本発明はまた、本発明の細胞または細胞群を含む、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療用組成物に関する。
近年、虚血性疾患を対象として、骨髄単核球移植治療や末梢血幹細胞採取による血管内皮前駆細胞(Endothelial progenitor cell;EPC)を用いた細胞移植治療法がおこなわれるようになった。それゆえ、EPCを大量に培養する技術が特に求められていた。CD34及び/又はCD133陽性細胞からの血管内皮前駆細胞の生体外増幅方法は、効率的なEPCの培養技術を提供することを可能にした(特許文献1)。さらに血管内皮細胞分化動態解析方法によって内皮細胞様大コロニー(分化型EPCコロニー)形成細胞と内皮細胞様小コロニー(未分化型EPCコロニー)形成細胞が存在することが明らかになり細胞移植による治療効果を予測、把握することを可能にした(特許文献2)。また骨髄単核球からCD34及び/又はCD133陽性細胞を効率的に増幅させる方法を示した(特許文献3)。
国際公開WO2014/051154に示されるように、骨髄、臍帯血又は末梢血由来の単核球画分から血管内皮前駆細胞又は抗炎症・免疫寛容誘導細胞が富化した細胞群を増幅させる方法(以下、本明細書において、「QQ-MNC法」)と呼称する場合がある)を記載している。当該方法は、(1)幹細胞因子(Stem cell factor;SCF),(2)インターロイキン6(Interleukin-6;IL-6),(3)FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FMS-like tyrosine kinase 3 ligand;FL),(4)トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)及び(5)血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor;VEGF)の5つの因子を含む無血清培地で、単核球を培養することにより、EPCを含む細胞群を生体外で増幅する、というものである。
本発明者らは、さらに、特願2019-231606(非公開)に示されるように、鋭意研究に努めた結果、骨髄、臍帯血又は末梢血由来の単核球を、幹細胞因子、インタ一ロイキン6、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、トロンボポエチン及び血管内皮細胞増殖因子からなる群から選択される4以下の因子、並びに、血清、を含む培地中で、培養することにより、血管再生能及び創傷治癒能を有し、かつ、国際公開WO2014/051154に示した細胞群とは異なる新たな細胞群の取得に成功した。
国際公開 WO2006/090882 国際公開 WO2006/090886 国際公開 WO2006/093172 国際公開WO2014/051154
本発明者らは、特願2019-231606(非公開)で示す細胞群の研究を進めた結果、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞、及び当該細胞を多く含む細胞群を発見し、当該細胞および当該細胞を多く含む細胞群がさらに優れた血管再生能及び創傷治癒能を有することを見出して本願発明を想到した。
本発明は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を提供する。
本発明はまた、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を40%以上含む細胞群を提供する。
本発明はまた、本発明の細胞または細胞群を含む、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療用組成物を提供する。
限定されるわけではないが、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞。
[態様2]
態様1の細胞を40%以上含む細胞群。
[態様3]
CD14(+)CD206(+)CXCR4(-)の細胞が20%以下である、態様2に記載の細胞群。
[態様4]
態様1に記載の細胞、あるいは、態様2又は3に記載の細胞群を含む、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療用組成物。
[態様5]
虚血性疾患が、四肢虚血である、態様4に記載の治療用組成物、
[態様6]
虚血性疾患が、潰瘍を伴う四肢虚血である、態様4又は5に記載の治療用組成物。
[態様7]
血管新生及び/又は創傷治癒を促進する、態様4-6のいずれか1項に記載の治療用組成物。
図1は、健常人の末梢血より調製したRema細胞を含む領域の細胞集団をゲーティングするのに使用したフローサイトメトリー(FACS)スキャタープロットの例を示す。 図2は、管腔形成能を持つヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対し、Rema細胞共培養、non-Rema細胞共培養した場合の顕微鏡写真図である。 図3は、管腔形成能を持つヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対し、Rema細胞共培養、non-Rema細胞共培養した場合の効果を示す。図3Aは、形成した管腔数、図3Bは管腔構造中に取り込まれている蛍光標識されたRema細胞、non-Rema細胞の細胞数である。 図4は、創傷治癒能力を調べる実験の概要を示した模式図である。 図5は、Rema細胞、non-Rema細胞と線維芽細胞と共培養した場合の、線維芽細胞の遊走、即ち、創傷縮小に与える効果を調べた結果である。細胞共培養0、6、12、24時間後の写真を、全自動ハイスループット生細胞解析システムIncuCyte(登録商標) S3により撮影した。 図6は、図5の写真よりIncuCyte(登録商標) 細胞遊走ソフトウェアを用いて創傷面積を算出し、6、12、24時間後の創傷の縮小率を示したものである。 図7は、管腔形成能を持つヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対し、Rema細胞群共培養した場合の顕微鏡写真図である。 図8は、管腔形成能を持つヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対し、Rema細胞群共培養した場合の効果を形成した管腔数で示す。
1.細胞
本発明は、一態様において、細胞に関する。本発明の細胞は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)であることを特徴とする。
CD14は、ヒト、マウス等で観察される自然免疫系の構成要素の1つである。CD14は共受容体として(TLR4又はMD-2と共に)働き、細菌に由来するリポ多糖(LPS)を認識する。
CD206(別名:MMR、CLEC13D、MRC1)は、マルチレクチンレセプタ構造を有するI型膜受容体である。CD206は、糖鎖を含むタンパク質のマクロファージによる細胞内取り込み、エンドサイトーシスを媒介する。CD206は、潜在的な病原性ウイルスおよび細菌、真菌の表面上の高マンノース構造に結合することが示されており、それらは貪食により排除される。
CXCR4(別名:CD184)は、細胞膜を7回貫通するGタンパク質共役受容体(GPCR)である。CXCR4の生理的リガンドは、CXCケモカインの1種である、storomal cell-derived factor-1(SDF-1)である。
CXCR4は生体において比較的広範な分布を示し、免疫系や中枢神経系において、様々なCD4(+)細胞に発現している。血液中ではCD184細胞は、好中球、単球、樹状細胞、NK細胞、B細胞、T細胞そして血小板に強く発現している。
CD14、CD206、CXCR4のタンパク質及び遺伝子の配列、構造は公知であり、各々が共陽性であること、即ち、CD14(+)、CD206(+)、CXCR4(+)は公知方法によって調べることができる。非限定的に、CD14、CD206、CXCR4のタンパク質の存在は、例えば、これらのタンパク質に特異的に結合する物質、例えば、抗体、リガンド等によって、確認することができる。例えば、各々に特定的な抗体として以下のものが知られている。
CD14特異的な抗体: APC-Cy7-抗ヒトCD14抗体(BioLegend社製)
CD206特異的な抗体:PE-cy7-抗ヒトCD206抗体(BioLegend社製)
CXCR4特異的な抗体:APC-抗ヒトCXCR4抗体(BioLegend社製)
これらの抗体を用いて例えば、蛍光抗体法等によりこれらのタンパク質の存否を確認し、例えば、フローサイトメトリー、マイクロビーズ標識による磁気回収等によりCD14(+)、CD206(+)、CXCR4(+)の細胞をソートすることができる。
あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RNAシーケンス(RNA-Seq) 等の方法を用いて、CD14、CD206、CXCR4の核酸の存否を確認してもよい。
2.細胞群
本発明は、一態様において、細胞群に関する。
上記細胞群は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を含む。一態様において(即ち、非限定的に)上記細胞群は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上含む。
細胞群中に含まれるCD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞の割合は、公知の方法によって調べることができる。例えば、フローサイトメトリーにより細胞群がCD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を40%以上含む、と判断できる。
一態様において(即ち、非限定的に)CD14(+)CD206(+)CXCR4(-)の細胞は40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下である。CD14(+)CD206(+)CXCR4(-)の細胞の割合は、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞の割合に関して上述したのと同様の方法によって行うことができる。
3.細胞又は細胞群の取得方法
上記CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を含む細胞群の取得方法は特に限定されない。
一態様において、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を含む細胞群は、骨髄、臍帯血又は末梢血由来の単核球を培養することによって得られる。上記細胞群の取得のために用いられる「単核球」とは、末梢血、骨髄又は臍帯血等に含まれる円形核を持つ細胞の総称で、リンパ球、単球、マクロファージ、血管内皮前駆細胞、造血幹細胞等が含まれる。例えば、動物から骨髄、臍帯血又は末梢血を採取し、それを例えば単核球分離用採血管を用いることにより、又は密度勾配遠心法に付して該分画を抽出することにより単核球が得られる。密度勾配遠心法としては、単核球分画が形成されれば特に限定されない。例えば、Histopaque-1077(Sigma-Aldrich)を用いてもよい。
骨髄、臍帯血又は末梢血が由来する動物種は、特に限定されない。動物種には、虚血性疾患、炎症性疾患、又は難治性創傷等の疾患に対する細胞移植療法が適用されるヒトを含む哺乳動物一般が含まれる。臨床応用という目的に鑑みれば、好ましくはヒトである。
一態様において、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞は、(i)骨髄、臍帯血又は末梢血由来の単核球を、幹細胞因子、インタ一ロイキン6、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、トロンボポエチン及び血管内皮細胞増殖因子の5種類の因子もしくはこの5種類の因子から選択される3因子又は4因子、並びに、血清を含む培地もしくは血清を含まない培地中で培養し、そして(ii)CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)選択的に回収することにより得られる。
また、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を含む細胞群は、骨髄、臍帯血又は末梢血由来の単核球を、幹細胞因子、インタ一ロイキン6、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、トロンボポエチン及び血管内皮細胞増殖因子の5種類の因子もしくはこの5種類の因子から選択される3因子又は4因子、並びに、血清を含む培地もしくは血清を含まない培地中で培養することで得られる。
幹細胞因子(SCF)は、248個のアミノ酸からなる分子量約30,000の糖タンパク質である。選択的スプライシングにより可溶型と膜結合型が存在するが、上記細胞群の取得のためにSCFは単核球の培養に有用である限りいずれのタイプのSCFでもよい。好ましくは可溶型である。SCFの由来等は特に限定されない。非限定的に、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。培養培地中のSCFの濃度は、用いるSCFの種類によっても異なり、単核球の培養に有用である限り特に限定されない。ヒト組換えSCFの場合であれば、非限定的に、例えば10~1000ng/mL、好ましくは50~500ng/mL、より好ましくは約100ng/mLである。
インターロイキン6(IL-6)は、B細胞の抗体産生細胞への最終分化を誘導する因子として単離された分子量21万の糖タンパク質である。IL-6は、一般に、免疫応答、造血系や神経系細胞の増殖分化、急性期反応等に関与することが知られている。上記細胞群の取得のために用いるIL-6は、特に限定されず、適宜選択される。ヒトの単核球の培養に用いる場合には、ヒトIL-6が好ましく、安定した供給が見込まれる組換え体が特に好ましい。商業的に入手可能なものが知られている。培養培地中のIL-6の濃度は、用いるIL-6の種類によっても異なり、単核球の培養に有用である限り特に限定されない。ヒト組換えIL-6の場合であれば、非限定的に、例えば1~500ng/mL、好ましくは5~100ng/mL、より好ましくは約20ng/mLである。
FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FL)は、初期造血制御において重要な役目を担う受容体型チロシンキナーゼのリガンドとして知られている。いくつかの選択的スプライシングによる産物が知られているが、造血系幹細胞の増殖を刺激するという報告がある。上記細胞群の取得のために用いるFLは、単核球の培養に有用である限り、いずれのタイプのFLであってもよい。商業的に入手可能なものが知られている。培養培地中のFLの濃度は、用いるFLの種類によっても異なり、単核球の培養に有用である限り特に限定されない。ヒト組換えFlt-3リガンドの場合であれば、非限定的に、例えば10~1000ng/mL、好ましくは50~500ng/mL、より好ましくは約100ng/mLである。
トロンボポエチン(TPO)は、造血系サイトカインの一種であり、造血幹細胞から巨核球が作られる過程に特異的に作用し、巨核球の産生を促進することが知られている。上記細胞群の取得のために用いるTPOの由来等は特に限定されない。安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。培養培地中のTPOの濃度は、用いるTPOの種類によっても異なり、単核球の培養に有用である限り特に限定されないが、ヒト組換えTPOの場合であれば、非限定的に、例えば1~500ng/mL、好ましくは5~100ng/mL、より好ましくは約20ng/mLである。
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、血管内皮前駆細胞(EPC)に特異的に作用する増殖因子であり、主に血管周囲の細胞で産生されることが知られている。選択的スプライシングによってサイズの異なる数種のVEGFタンパク質が産生されるが、上記細胞群の取得のために用いるVEGFはEPCのコロニー形成を可能にする限りいずれのタイプのVEGFでもよい。好ましくはVEGF165である。VEGFの由来等は特に限定されない。安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。商業的に入手可能なものが知られている。培養培地中のVEGFの濃度は、用いるVEGFの種類によっても異なり、単核球の培養に有用である限り特に限定されな。ヒト組換えVEGF165の場合であれば、非限定的に、例えば約5~500ng/mL、好ましくは約20~100ng/mL、より好ましくは約50ng/mLである。
単核球の培養に用いる培養培地に添加される各種因子はまた、非限定的に、単核球が由来する動物と同種の動物に由来する因子で統一してもよい。このように単核球及び各種因子の由来を統一することで、同種異系移植等の同種移植に好適な細胞培養物が得られる。また、細胞移植が意図される個体由来の単核球を用いることで、同種同系移植に好適な細胞培養物を得ることも可能である。
上記した各成分は培養培地で所定の濃度に溶解するか、あるいはあらかじめ各成分の濃縮液(ストック溶液)を調製し、培養培地で所定の濃度に希釈することによって、単核球を培養するための培養培地を調製することができる。例えば市販の培養培地に必要な成分を所定の濃度となるよう溶解した後、濾過滅菌等により滅菌するか、あるいは濾過滅菌等により滅菌したストック溶液を無菌的に市販の培養培地に添加、希釈することによって培養培地を調製することができる。濾過滅菌は当分野で通常実施されている方法に準じて行うことができ、例えば0.22μmや0.45μmのミリポアフィルター等を用いて行う。
本発明で用いられる「培養培地」は、当分野で通常用いられている培地を利用することができ、例えば造血幹細胞の増殖用培地として知られている培養地を用いることができる。培養培地として用いられる基礎培地としては、例えば、Stemline II、DMEM、MEM、IMDM、RPMI、SCGM、EBM等が挙げられる。
上記細胞、細胞群を取得するために、単核球を培養するための培地は、幹細胞因子、インタ一ロイキン6、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、トロンボポエチン及び血管内皮細胞増殖因子の5種類の因子、もしくはこの5種類の因子から選択される3因子又は4因子の他に、血清を含む培地もしくは含まない培地、を含む。
血清の種類は特に限定されない。非限定的に、一態様において、血清は、ウシ又はヒトの血清である。一態様において、血清は、ウシとヒトの血清両方を含んでもよい。一態様において、血清は、ウシ胎児血清である。培地中における血清の濃度も特に限定されない。一態様において、血清は培地中に、0.1容量%以上、0.3容量%以上、0.5容量%以上含まれる。培地中の血清の濃度の上限は特にない。一態様において、30容量%以内、20容量%以内、10容量%以内、5容量%以内である。非限定的に、血清は、培地中に0.1容量%以上20容量%の濃度、培地中に0.5容量%以上10容量%の濃度で含まれる。
単核球培養は、単核球を含有する細胞懸濁液を、上述した因子及び血清を含む培地もしくは血清を含まない培地に添加することにより行われる。細胞懸濁液としてはまた、単核球を含有する体液自体(例えば、骨髄液、臍帯血、末梢血)を用いることもできる。単核球の培養条件は特に限定されず、通常当分野で実施される条件で実施することができる。非限定的に、例えば、5%CO雰囲気下、約37℃で培養される。培養期間は、非限定的に例えば、3日間以上であり、5日間以内、6日間以内、7日間以内、10日間以内である。例えば、3日間-10日間、3日間-6日間である。単核球の培地中の濃度は、単核球の培養を可能とする限り特に限定されないが、例えば約0.1~10×10細胞/ml、より好ましくは約0.5~5×10細胞/mlである。
「CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)選択的に回収する」ことは、例えば「1.細胞」で説明したCD14、CD206、CXCR4の存在確認するための方法を適宜利用することにより、CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)細胞、即ち、CD14、CD206、CXCR4が存在する細胞を選択的に回収(ソート)することにより行うことができる。例えば、これらのタンパク質に特異的に結合する物質、例えば、抗体、リガンド等を利用したフローサイトメトリー、マイクロビーズ標識による磁気回収等が利用できる。
上述した方法は、上記細胞、細胞群を得るための一例である。
4.治療用組成物
本発明は、一態様において、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療用組成物に関する。本発明の治療用組成物は、「1.細胞」「2.細胞群」で説明した細胞、細胞群を含む。細胞、細胞群は、治療用組成物を使用する対象に由来しても(自家)、治療用組成物を使用する対象以外に由来しても(他家)よい。
「虚血性疾患」は、血量の減少によって組織内の血流が下がり、細胞の変性、萎縮、線維化などの組織障害が生じることによって起こる疾患である。虚血はその原因により、閉塞性虚血、圧迫性虚血、痙攣性虚血、代償性虚血に大別される。虚血が持続すると細胞の変性、萎縮、線維化が生じる。「虚血性疾患」には、四肢虚血、虚血性潰瘍、虚血性心疾患、脳梗塞、虚血性腸炎、虚血性肝炎、虚血性腎障害等が含まれる。「脳梗塞」(又は脳軟化症)は、脳を栄養する動脈の閉塞、又は狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、又は栄養の不足のため壊死、又は壊死に近い状態になる事をいう、脳血栓及び脳塞栓に分類される。「四肢虚血」は、手足に血液を供給する動脈が狭窄又は閉塞する疾患であり、この閉塞性動脈硬化症が重症化したり、膠原病により、重症の四肢虚血となり、疼痛などの症状及び難治性の潰瘍が生じ、最悪の場合、切断が必要になる場合もある。非限定的に、四肢は一態様において下肢である。
非限定的に、一態様において、虚血性疾患は、四肢虚血である。虚血性疾患は、潰瘍を伴う四肢虚血である。
「炎症性疾患」は、なんらかの原因により組織損傷などの異常が生じることで症状を起こす疾患の総称である。炎症性疾患には、クローン病、肝硬変、肝炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患等が含まれる。
上記治療用組成物は、血管新生及び/又は創傷治癒を促進する。よって、血管新生及び/又は創傷治癒により治療できる疾患に適用することができる。「血管新生及び/又は創傷治癒により治療できる疾患」としては、例えば、虚血性疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患、下肢虚血性動脈硬化症等の下肢虚血、バージャー(Burger)病)、血管損傷が挙げられる。また、皮膚潰瘍等の創傷を治癒するため、あるいは人工血管の作製に使用できる。治療用組成物の適用の効果は、自体公知の方法により確認できる。例えば血管新生により治療できる疾患が下肢虚血性疾患である場合には、移植後の治療効果を例えば下肢血流量及び壊死改善率を調べることによって評価することができる。血流量の増加の測定はレーザドップラーイメージング解析の値を測定することによって行うことができる。また壊死改善率はリムサルベージスコアとして目視により測定することができる。
上記治療用組成物の使用態様は特に限定されない。有効成分たる細胞群又は細胞群そのものであってもよいし、細胞又は細胞群を液状媒体に懸濁したものであってもよい。液体媒体はヒトに注入可能な液体であればいずれであってもよく、例えば、等張電解質輸液やリン酸緩衝液や生理食塩水あるいは無血清培地であるDMEMなども利用可能である。また液体媒体にはアルブミンなど細胞の生存に好ましい化合物が含まれてもよい。また凍結保存する場合には凍結細胞保存液などで懸濁したものであってもよい。
上記治療用組成物の適用対象は、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療が必要である対象であれば、特に限定されない。非限定的に、ヒト、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ネズミ、モルモット等が含まれる。
4.治療方法等
本発明は、一態様において、「1.細胞」「2.細胞群」で説明した細胞、細胞群を、必要のある対象に適用することを含む、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療方法に関する。
本発明は、一態様において、「1.細胞」「2.細胞群」で説明した細胞、細胞群の、必要のある対象に適用することを含む、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療方法への使用、あるいは、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療用組成物への使用、に関する。
本発明は、一態様において、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療方法へ使用するための、「1.細胞」「2.細胞群」で説明した細胞、細胞群に関する。
「虚血性疾患」、「炎症性疾患」又は「難治療性創傷」、「細胞群の適用態様」、「適用対象」等については、「3.治療用組成物」に記載した通りである。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1 Rema細胞の単離
(1)単核球の単離
健常人のボランティアから、BD バキュテイナ(登録商標)CPT(商標)BD社製)単核球分離用採血管を用いて100mLの末梢血を採取した。採血後、そのまま採血管を遠心した後、輸送、到着後培養開始までは冷蔵で保管した。単核球及び血漿を含むCPT(商標)採血管内のゲルバリアより上を遠心管へ回収し、少量のEDTA-PBSでゲルバリア上など採血管内を洗いこみ、同じ遠心管へ回収した。細胞を回収した遠心管をEDTA-PBSでメスアップしたのち、遠心分離(300xg、室温、15分間)し、沈査として細胞を回収した。回収された細胞は、混入する赤血球を除くためACK溶血緩衝液(15mL/管)(Gibco、Thermo-Fisher社製)中、室温で5分間インキュベートした。ACK溶血緩衝液の組成は、NHCl 8,290mg/l;KHCO 1,000mg/l;EDTA.Na・2HO 37mg/lである。その後、EDTA-PBSでメスアップし、遠心分離(200xg、室温、10分間)又は(100xg、室温、15分間)で細胞を回収する操作を2回繰り返した。
(2)無血清培地での培養
回収した単核球細胞を、1mLの増殖培地に懸濁し、その一部を使用してトリパンブルーを用いた細胞数計数を行った。下記に示すいくつかの増殖培地で培養した。培地1は、50ng/ml VEGF、100ng/ml SCF、100ng/ml Flt-3リガンド、20ng/ml TPO、20ng/ml及びIL-6、100単位/mLの5種類の因子、並びに、ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシンを添加した stemline(登録商標) II Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium(シグマ-アルドリッチ社製、Cat No.S0192を用いた。
得られた細胞増殖培地中で、細胞濃度を1x10/mLに調製し、6穴培養プレートの各ウェルに2mLずつ播種した。通常の培養条件(37℃、5%CO)で5日間培養した。5日間の培養終了後、遠心管に回収し、250xg(~1000rpm)で7-10分間、遠心洗浄を3回実施した。遠心後、細胞数計測、生存率測定、QC(確認)試験用のサンプルを除き、残りの細胞はPlasmaLyte A、2.5% ヒトアルブミン血清に懸濁し、8x10細胞/mLの濃度になるように調整した。
(3)フローサイトメトリー解析
本実施例では、上記の培養によって得られた細胞群について、その中のCD14(+)CD206(+)CXCR4(+)細胞およびCD14(+)CD206(+)CXCR4(―)細胞の含有量を明らかにするため、フローサイトメトリー解析を行った。
FACS緩衝液(組成:2% FBSを添加した2mM EDTA-PBS)中に懸濁した細胞(1.5×10細胞/300μL-FACS緩衝液)にFCブロッキング試薬(ミルテニィ社製)を10μL添加し、4℃で30分間インキュベートした。インキュベート後の細胞群を、染色反応用チューブに等量ずつ分注した(100μL/チューブ×3チューブ)。各アリコートに各一次抗体を2μL添加し、4℃で20分間培養した。その後1mLのFACS緩衝液で2回洗浄し、染色された細胞をFACS緩衝液中に懸濁した(5×10細胞/200~300μL-FACS緩衝液)。フローサイトメトリー計測は、BD FACSAria(商標) IIIセルソーター(BD社製)を用いて行った。
具体的には、得られた細胞群における各細胞表面マーカーに対する抗体を用いて各細胞表面マーカーの発現を調べた。なお、各細胞表面マーカーに対する抗体は、いずれも下記の市販のものを使用した。
抗CD206抗体:PE/Cy7標識抗ヒトCD206 (MMR)抗体(BioLegend社製);
抗CXCR4抗体:APC標識抗ヒトCD184(CXCR4)抗体(BD社製)、
抗CD14抗体: APC-Cy7-抗ヒトCD14抗体(BioLegend社製)。
CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞を、「Rema細胞」、CD14(+)CD206(+)CXCR4(-)である細胞を、「Non-Rema細胞」、と呼称する場合がある。
本細胞群にはRema細胞が33.34%、Non-Rema細胞が28.17%含まれてた。
(4)Rema細胞、Non-Rema細胞の単離
本実施例において、上記の方法において取得した単核球より培養した培養物よりCD14(+)CD206(+)CXCR4(+)であるRema細胞とCD14(+)CD206(+)CXCR4(-)であるNon-Rema細胞を分離した。
細胞数計測後、50mL遠心管に1×10細胞/300μLとなるようFACS緩衝液(組成:2% FBSを添加した2mM EDTA-PBS)で懸濁調製した。ついで、1×10細胞/20μL FcRブロッキング試薬(ミルテニィバイオテク社製)を添加し、4℃下で10分間インキュベートした。
PEcy7-抗ヒトCD206抗体(BioLegend社製)とAPC-抗ヒトCXCR4抗体(BioLegend社製)を各々1×10細胞/400μL量添加した。ここにおいて、上記2種の抗体による染色前に、Sorting設定調整用にアイソタイプ対照、CD206単染色、CXCR4単染色分を各々2~5×10細胞ずつ1.5mLチューブに取り分け染色した。
抗体添加後、4℃下で30分インキュベートした。FACS緩衝液を足して50mLとし、遠心した(250G×10分、4℃)。上清を吸引後、FACS緩衝液で1×10細胞/3mLに懸濁し、セルストレーナー付き5mLチューブ(フローサイトメーター用、Corning社製,米国、NY)へ移し、調整した。フローサイトメトリー計測は、BD FACSAria(商標) IIIセルソーター(BD社製)を用いて行った。
CD206陽性かつCXCR4陽性の分画をRema細胞とし、CD206陽性かつCXCR4陰性の分画をNon-Rema細胞としてそれぞれ同時にソートした。ソートの初期設定として、DAPI染色にて死細胞を除去し、目的細胞を含む領域の細胞集団(図1)をゲーティングした。ゲートされた領域の下層をダブレット除去し、アイソタイプ対照と単染色サンプルを用いて蛍光色素の漏れ込み調整を実施した。
実施例2 Rema細胞の効果
(1)Rema細胞の血管形成能
本実施例では、実施例1で単離したRema細胞の血管形成能を調べた。
管腔形成能を持つヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(Lonza社、スイス、バーゼルより入手)を、8~10継代で使用し、各群の細胞とHUVECと共培養した。96ウェルのプレートに基底膜マトリックス(Corning(登録商標) Matrigel(登録商標)(Corning社製,米国、NY))50μl/ウェルを分注し、37℃、30分コーティングした。一方、実施例2で単離したReMa細胞を、DiI-Ac-LDLで標識するために、IMDM 500μl+DiI-Ac-LDL 5μlに懸濁し、37℃、1時間インキュベートした。比較例として、実施例1で調製したnon-Rema細胞を用いた。
標識後、Rema細胞又はnon-Rema細胞を1x10/25μl、及び、HUVECを5x10/25μlになるよう、各々PBSに再懸濁した。細胞数を調整した懸濁液を、Rema細胞群とHUVECが1:1になるよう混和し、Matrigel上に50μlずつ添加した。、37℃、5%CO下で、3~5時間培養した。培養後、IX83蛍光顕微鏡(オリンパス社製)を用い、倍率100倍で、形成した管腔数、並びに、管腔構造中に取り込まれている蛍光標識された細胞数(Rema細胞又はnon-Rema細胞)を目視でカウントした。
図2及び図3に結果を示す。図2は、HUVECのみ(コントロール群)、Rema細胞共培養、non-Rema細胞共培養の顕微鏡写真図である。図3Aは、形成した管腔数、図3Bは管腔構造中に取り込まれている蛍光標識されたRema細胞およびnon-Rema細胞の細胞数の結果を示す。図3に示されるように、Rema細胞は、コントロール群、non-Rema細胞と比較してIn vitro血管形成能が高いことが明らかになった。また、Rema細胞は、non-Rema細胞よりも管腔構造中に取り込まれていることが明らかになった。
(2)Rema細胞の創傷治癒能
本実施例では、実施例1で取得されたRema細胞による創傷治癒能力を調べた。比較例として、non-Rema細胞(CD14(+)CD206(+)CXCR4(-))、を用いた。実験の概要を図4示す。
ヒト皮膚由来線維芽細胞を、培養培地(10%FBS含有DMEM)中で6~10継代で使用したものを準備した。準備した線維芽細胞を、96ウェルのIncuCyte(登録商標)ImageLock Plates(Essen BioScience社製、ann Arbor,MI,米国)に0.8x10細胞/ウェルの密度で播種した。ここに、Rema細胞、non-Rema細胞又を、各々、0.8x10細胞/ウェルの密度で、カルチャーインサート を用いて、線維芽細胞と接触しないように添加した。0.5%FBS含有DMEM培地中で、37℃、24時間共培養した。
IncuCyte(登録商標)のスクラッチアッセイの96ウェルのWound Makerツールを用い、スクラッチ創傷を形成した。死細胞を除去するために、PBSで細胞を洗浄した。細胞共培養0、6、12、24時間後の写真を、全自動ハイスループット生細胞解析システムIncuCyte(登録商標) S3により撮影した。結果を、図5に示す。さらに、IncuCyte(登録商標) 細胞遊走ソフトウェアにより創傷面積を算出した。0時間時を0とした場合の、6、12、24時間後の創傷の縮小率を図6に示す。
図6から明らかなようにRema細胞は、6、12、24時間後いずれにおいても、non-Rema細胞と比較して、高い創傷治癒能力を示した。
実施例3 Rema細胞を多く含む細胞群の培養
本実施例において、末梢血より単核球を単離し、Rema細胞を多く含む細胞群の培養を行った。
(1)単核球の単離
糖尿病患者のボランティアから、BD バキュテイナ(登録商標)CPT(商標)BD社製)単核球分離用採血管を用いて100mLの末梢血を採取した。採決方法、単核球の単離方法は実施例1(1)と同様である。
(2)血清培地での培養
回収した単核球細胞を、1mLの増殖培地に懸濁し、その一部を使用してトリパンブルーを用いた細胞数計数を行った。下記に示すいくつかの増殖培地で培養した。培地1は、50ng/ml VEGF、100ng/ml SCF、100ng/ml Flt-3リガンド、20ng/ml TPO、20ng/ml及びIL-6、100単位/mLの5種類の因子、並びに、ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、0.5% FBSを添加した stemline(登録商標) II Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium(シグマ-アルドリッチ社製、Cat No.S0192を用いた。培地2は、50ng/ml VEGF、100ng/ml Flt-3リガンド、20ng/ml TPO、20ng/の3種類の因子、並びに、ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、0.5% FBSを添加した stemline(登録商標) II Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium(シグマ-アルドリッチ社製、Cat No.S0192を用いた。培地3は、50ng/ml VEGF、100ng/ml Flt-3リガンド、20ng/ml TPO、20ng/の3種類の因子、並びに、ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、0.5% FBS及び0.5% ヒトアルブミン血清を添加した Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium (IMDM)を用いた。
得られた細胞増殖培地中で、細胞濃度を1x10/mLに調製し、6穴培養プレートの各ウェルに2mLずつ播種した。通常の培養条件(37℃、5%CO)で5日間培養した。5日間の培養終了後、遠心管に回収し、250xg(~1000rpm)で7-10分間、遠心洗浄を3回実施した。遠心後、細胞数計測、生存率測定、QC(確認)試験用のサンプルを除き、残りの細胞はPlasmaLyte A、2.5% ヒトアルブミン血清に懸濁し、8x10細胞/mLの濃度になるように調整した。
(3)フローサイトメトリー解析
本実施例では、上記の培養によって得られた細胞群について、その中のCD14(+)CD206(+)CXCR4(+)細胞の含有量を明らかにするため、フローサイトメトリー解析を行った。
方法は実施例1と同様である。
それぞれの培地で培養した細胞群に含まれるRema細胞、Non-Rema細胞の割合を表1に示す。
Figure 2022017977000001
実施例4 Rema細胞を多く含む細胞群の効果
(1)Rema細胞を多く含む細胞群の血管形成能
本実施例では、上記の培地2で取得されたRema細胞を多く含む細胞集団(Rema細胞群)の血管形成能を調べた。血管形成能の試験方法は実施例2と同様である。
図7及び図8に結果を示す。図7は、HUVEC、Rema細胞群共培養の顕微鏡写真図である。図8は、形成した管腔数の結果を示す。図8に示されるように、Rema細胞群はコントロール群(HUVECのみ)と比較してIn vitro血管形成能が高いことが明らかになった。
(2)マウス下肢虚血モデルに対するRema細胞群の効果
本実施例では、実施例3で取得されたRema細胞を多く含む細胞集団(Rema細胞群)のマウス下肢虚血モデルに対する効果を調べた。
免疫不全マウスであるBALB/cAJcl-nu/nuヌードマウス(日本クレア より入手)用いて全身吸入麻酔下にて下肢虚血モデルを作製した。具体的には、全身吸入麻酔をした免疫不全マウスの鼡径部皮膚を切開し、鼠径部脂肪組織を除去した。切除部位直下の大腿動脈を6-0絹糸で結紮し、下流の伏在動脈をバイポーラーにて焼灼・切断した。
実施例3の培地2で取得したRema細胞群を2,500細胞/部位の濃度で虚血部位4ヶ所に筋肉内移植した。比較例として、生理食塩水を投与したグループを用いた。移植後に肉眼所見観察及びレーザードップラーによる血流測定を経時的に行った。観察終了後は組織免疫染色にて血管数、抗炎症マクロファージ数を計測し、細胞移植による組織再生効果を確認した。
本発明により、高い血管再生能及び創傷治癒能を有する新たな細胞もしくは細胞群が提供される。本発明の細胞もしくは細胞群は、例えば、難病の下肢虚血疾患の患者の治療薬としての使用できる。これにより、例えば、下肢切断の回避が可能になるなど、患者QOLの向上、介護負担の軽減などライフイノベーションをもたらすことが可能であり、社会的意義が大きい。また、新規な細胞もしくは細胞群の提供は、新たな治療戦略の構築につながるとともに、血管病変全般へに対する知見をもたしうる。

Claims (7)

  1. CD14(+)CD206(+)CXCR4(+)である細胞。
  2. 請求項1の細胞を40%以上含む細胞群。
  3. CD14(+)CD206(+)CXCR4(-)の細胞が20%以下である、請求項2に記載の細胞群。
  4. 請求項1に記載の細胞、あるいは、請求項2又は3に記載の細胞群を含む、虚血性疾患、炎症性疾患又は難治療性創傷の治療用組成物。
  5. 虚血性疾患が、四肢虚血である、請求項4に記載の治療用組成物、
  6. 虚血性疾患が、潰瘍を伴う四肢虚血である、請求項4又は5に記載の治療用組成物。
  7. 血管新生及び/又は創傷治癒を促進する、請求項4-6のいずれか1項に記載の治療用組成物。
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