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JP2022014778A - 高圧タンクの製造方法 - Google Patents

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JP2022014778A JP2020117320A JP2020117320A JP2022014778A JP 2022014778 A JP2022014778 A JP 2022014778A JP 2020117320 A JP2020117320 A JP 2020117320A JP 2020117320 A JP2020117320 A JP 2020117320A JP 2022014778 A JP2022014778 A JP 2022014778A
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孝明 横井
Takaaki Yokoi
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Toyota Motor Corp
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Abstract

Figure 2022014778000001
【課題】特別な工程を設けなくても、繊維強化樹脂から成る筒部材とドーム部材とを容易に接合でき、低コスト化を図ることが可能な高圧タンクの製造方法を提供する。
【解決手段】高圧タンク1の製造方法は、筒部材31とドーム部材32,33とを重ね合わせて嵌合することによって第1補強層30を形成し、第1補強層30の外面に繊維束を巻回して形成された繊維層36に樹脂を含浸させることによって第2補強層35を形成する。筒部材31とドーム部材32,33との少なくとも一方には、両者を重ね合わせた状態において互いの間に隙間Gが形成されるように、複数の凸部が設けられている。第2補強層35の形成工程において繊維層36に樹脂を含浸させる際に樹脂を隙間Gに充填する。
【選択図】図4

Description

本発明は、高圧タンクの製造方法に関する。
天然ガス自動車又は燃料電池自動車では、天然ガス又は水素ガスの燃料ガスを貯蔵する高圧タンクが利用されている。この種の高圧タンクでは、燃料ガスを気密保持するライナーの外面が、繊維強化樹脂から成る補強層によって覆われている。
このような高圧タンクの製造方法として、例えば、特許文献1には、筒部及びドーム部を有するライナーの外面にフィラメントワインディング法により第1補強層を形成し、第1補強層の外面にシートワインディング法により第2補強層を形成する方法が開示されている。
特開2019-044937号公報
しかし、特許文献1の製造方法は、ライナーの外面に繊維束を巻き付けることから、ライナーを厚くして機械的強度を高くする必要があるので、コストが掛かる。この対策として、補強層の形成後にライナーを形成する高圧タンクの製造方法が考えられる。例えば、この製造方法は、繊維強化樹脂から成る筒部材及びドーム部材を予め形成しておき、筒部材及びドーム部材を接着剤にて接合することによって第1補強層を形成する。その後、この製造方法は、第1補強層の外面に繊維束を巻回して第2補強層を形成し、第2補強層の形成後に、第1補強層の内面に樹脂を塗布し、硬化させることによって、ライナーを形成する。
しかしながら、補強層の形成後にライナーを形成する上記の製造方法では、繊維強化樹脂から成る筒部材とドーム部材との接合箇所に接着剤を塗布する工程が新たに必要となる。しかも、この接着剤の塗布工程において、当該接合箇所から接着剤がはみ出てしまうと、繊維束を巻回して第2補強層を形成することが難しくなるので、接着剤の塗布精度が要求される。すなわち、上記の製造方法は、筒部材とドーム部材とを接合するために高難易度の接着剤塗布工程を新たに追加する必要があるので、工数が掛かり、高コスト化する虞がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、特別な工程を設けなくても、繊維強化樹脂から成る筒部材とドーム部材とを容易に接合でき、低コスト化を図ることが可能な高圧タンクの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る高圧タンクの製造方法は、筒部材の両端にドーム部材が接合された第1補強層と、前記第1補強層を覆う第2補強層とを含む、繊維強化樹脂から成る補強層を備える高圧タンクの製造方法であって、前記筒部材の周端部と前記ドーム部材の周端部とを径方向に重ね合わせて嵌合することによって前記第1補強層を形成する第1補強層形成工程と、前記第1補強層の外面に繊維束を巻回して繊維層を形成し、前記繊維層に樹脂を含浸させることによって前記第2補強層を形成する第2補強層形成工程と、を含み、前記筒部材の前記周端部と前記ドーム部材の前記周端部とを重ね合わせた状態において互いの間に隙間が形成されるように、前記筒部材の前記周端部と前記ドーム部材の前記周端部との少なくとも一方には、複数の凸部が設けられており、前記第2補強層形成工程において、前記繊維層に前記樹脂を含浸させる際に前記樹脂を前記隙間に充填することを特徴とする。
本発明によれば、第1補強層形成工程では、筒部材の周端部とドーム部材の周端部との少なくとも一方に設けられた複数の凸部によって、筒部材の周端部とドーム部材の周端部とを重ね合わせた状態において互いの間に隙間が形成される。第2補強層形成工程では、第1補強層に巻回された繊維束により形成された繊維層に対して含浸される樹脂によって、隙間を充填する。これにより、本発明では、繊維層に対して含浸される樹脂によって筒部材とドーム部材とを接合することができる。すなわち、本発明では、1つの工程において、繊維層に対して含浸される樹脂が、繊維強化樹脂を形成する機能と、筒部材とドーム部材とを接合する機能とを兼ねることができる。本発明では、繊維層に対して樹脂を含浸させる工程が接着剤の塗布工程を代替することができるので、接着剤の塗布工程を新たに設ける必要がなく、工数の増加を抑制することができる。よって、本発明は、特別な工程を設けなくても、筒部材とドーム部材とを容易に接合することができ、低コスト化を図ることができる。
高圧タンクの基本的構成を示す断面図。 第1補強層の外観を示す斜視図。 図2に示す重複部の拡大図。 高圧タンクの製造方法を示すフローチャート。 図4に示す嵌合工程を説明する図。 図4に示す含浸工程及び硬化工程を説明する図。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成は、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
[高圧タンクの基本的構成]
図1は、高圧タンク1の基本的構成を示す断面図である。
高圧タンク1は、天然ガス自動車又は燃料電池自動車等に搭載されるタンクである。天然ガス自動車に搭載される高圧タンク1は、CNG(圧縮天然ガス)等の圧縮ガス、又は、LNG(液化天然ガス)若しくはLPG(液化石油ガス)等の液化ガスを貯蔵するタンクである。燃料電池自動車に搭載される高圧タンク1は、高圧の水素ガスを貯蔵するタンクである。
高圧タンク1は、両端がドーム状に丸みを帯びた略円筒状を成す。高圧タンク1は、略円筒状に形成された中空容器であるライナー2と、高圧タンク1の剛性及び耐圧性等の機械的強度を向上させるためにライナー2を補強する補強層3とを備える。
ライナー2は、燃料ガスが収容される収容空間5を形成する。ライナー2は、ガスバリア性を有する樹脂を用いて形成される。ライナー2は、高圧タンク1の軸方向Xに沿って筒状を成す胴体部21と、胴体部21の両端に連接されたドーム状の側端部22,23とを備える。側端部22,23は、胴体部21の両端から離隔するに従って縮径するように形成される。一方の側端部22の頂部には、開口部22aが設けられる。開口部22aには、管状部22bが連接される。管状部22bの外周面には、口金4が取り付けられる。口金4の外周面には、収容空間5への燃料ガスの充填と、収容空間5からの燃料ガスの排出とを切り替えるバルブが取り付けられる。
ライナー2の形成に用いられる樹脂としては、変性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂又は熱硬化性ポリイミド樹脂等の、熱硬化性樹脂が挙げられる。また、ライナー2の形成に用いられる樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)又はポリエステル樹脂等の、熱可塑性樹脂が挙げられる。
補強層3は、繊維束に樹脂が含浸された繊維強化樹脂から成り、ライナー2の外面を覆う積層体である。補強層3は、ライナー2の外面を覆う第1補強層30と、第1補強層30の外面を覆う第2補強層35とを含む。
第1補強層30は、軸方向Xに沿って延びる筒部材31と、筒部材31の両端に接合されるドーム部材32,33とを含む。筒部材31は、ライナー2の胴体部21の外面を覆う。筒部材31は、樹脂が含浸された繊維束が周方向に配向するように巻回(例えばフープ巻き)された巻回体によって構成される。ドーム部材32,33は、ライナー2の側端部22,23の外面を覆う。ドーム部材32,33は、樹脂が含浸された繊維束が周方向と交差する方向に配向するように巻回された巻回体によって構成される。第1補強層30は、予め形成された筒部材31の周端部31aと、予め形成されたドーム部材32,33の周端部32a,33aとを接合することよって、両端がドーム状に丸みを帯びた略円筒状を成す。
第2補強層35は、樹脂が含浸された繊維束が軸方向Xに傾斜して配向するように第1補強層30に巻回(例えばヘリカル巻き)された巻回体によって構成される。第2補強層35は、筒部材31の外面と、ドーム部材32,33の外面とを覆い、両端がドーム状に丸みを帯びた略円筒状を成す。
第1補強層30又は第2補強層35の形成に用いられる繊維束としては、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維又は炭素繊維等の、強化繊維束が挙げられる。強化繊維束は、連続繊維から構成されてもよい。第1補強層30又は第2補強層35の形成に用いられる繊維束としては、軽量性や機械的強度等の観点から、炭素繊維が好適である。繊維束に含浸される樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂又はエポキシ樹脂等の、熱硬化性樹脂が挙げられる。繊維束に含浸される樹脂としては、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂等の、熱可塑性樹脂が挙げられる。
第1補強層30の形成に用いられる繊維束と、第2補強層35の形成に用いられる繊維束とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1補強層30の形成に用いられる繊維束に含浸される樹脂と、第2補強層35の形成に用いられる繊維束に含浸される樹脂とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、第1補強層30の形成に用いられる繊維束と、第2補強層35の形成に用いられる繊維束とは、両者共に炭素繊維束であるとして説明する。但し、第2補強層35の形成に用いられる繊維束は、例えば、ガラス繊維束であってもよい。この場合、第2補強層35は、高圧タンク1の衝撃を緩和する緩衝層として機能し得る。本実施形態では、第1補強層30の形成に用いられる繊維束に含浸される樹脂と、第2補強層35の形成に用いられる繊維束に含浸される樹脂とは、両者共にエポキシ樹脂であるとして説明する。
[第1補強層の詳細構成]
図2は、第1補強層30の外観を示す斜視図である。図3は、図2に示す重複部34の拡大図である。
第1補強層30は、予め形成された筒部材31の周端部31aと、予め形成されたドーム部材32,33の周端部32a,33aとを接合することよって、両端がドーム状に丸みを帯びた略円筒状を成す。筒部材31とドーム部材32,33とは、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとが径方向に重ね合わせた状態となるように嵌合される。すなわち、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとの一方が径方向内側に配置され、他方が径方向外側に配置されるように接合される。本実施形態では、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとが径方向に重ね合わされた部分を、「重複部34」とも称する。本実施形態の重複部34は、図1~図3に示すように、筒部材31の周端部31aが径方向内側に配置され、ドーム部材32,33の周端部32a,33aが径方向外側に配置されている。
筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとを重ね合わせた状態において互いの間に隙間Gが形成されるように、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとの少なくとも一方には、複数の凸部が設けられる。具体的には、重複部34において、筒部材31の周端部31aにおけるドーム部材32,33との対向面と、ドーム部材32,33の周端部32a,33aにおける筒部材31との対向面との少なくとも一方には、複数の凸部が設けられる。本実施形態では、ドーム部材32,33の周端部32a,33aにおける筒部材31との対向面に対して、複数の凸部32c,33cが設けられる(図3、図5参照)。複数の凸部32c,33cのそれぞれは、径方向内方に向かって突出して軸方向Xに沿って延びる突条によって構成される。当該突条は、周方向に沿って等間隔に間隔を空けて複数配置される。
ドーム部材32,33の周端部32a,33aにおける筒部材31との対向面では、複数の凸部32c,33cが、筒部材31の周端部31aにおけるドーム部材32,33との対向面に対して当接する。ドーム部材32,33の周端部32a,33aにおける筒部材31との対向面では、複数の凸部32c,33c以外の部分が、筒部材31の周端部31aにおけるドーム部材32,33との対向面に対して離隔する。複数の凸部32c,33cは、重複部34において、筒部材31とドーム部材32,33との間に隙間Gを形成する。
なお、隙間Gには、後述するように、繊維層36に含浸される樹脂が充填されるが、図1では、隙間Gに充填された樹脂の図示、及び、凸部32c,33cの図示を省略している。図1では、筒部材31の周端部31a、及び、ドーム部材32,33の周端部32a,33aの形状を簡略化して図示している。
また、第1補強層30には、重複部34において隙間Gが形成可能であれば、突条によって構成された凸部ではなく、リブ、ビード、バンプ又はボス等によって構成された凸部が設けられてもよいし、溝又は穴等によって構成された凹部が設けられてもよい。
[高圧タンクの製造方法]
図4は、高圧タンク1の製造方法を示すフローチャートである。図5は、図4に示す嵌合工程(S31)を説明する図である。図6は、図4に示す含浸工程(S42)及び硬化工程(S43)を説明する図である。
筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとの接合方法の1つとして、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとの接合箇所に、接着剤を塗布し、これらを接着させる方法が考えられる。
しかしながら、接着剤を塗布する工程は、樹脂が含浸された繊維束をライナー2の外面に巻回するフィラメントワインディング法を用いて第1補強層30を形成する従来の高圧タンク1の製造方法においては、不要であった新たな工程である。接着剤を塗布する工程は、工数の増加を招いてしまう。しかも、当該接合箇所に接着剤を塗布する際に、当該接合箇所から接着剤がはみ出てしまうと、筒部材31及びドーム部材32,33に繊維束を巻回する際に、はみ出した接着剤が繊維束に付着し易い。当該接合箇所から接着剤がはみ出てしまうと、繊維束を適切に巻回することが難しく、第2補強層35を適切に形成することが難しくなる。よって、接着剤を塗布する工程は、接着剤の塗布精度が要求される。
すなわち、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとの接合箇所に接着剤を塗布し、これらを接着させる方法は、高難易度の接着剤塗布工程を新たに追加する必要があるので、工数が掛かり、高コスト化する虞がある。そこで、本実施形態では、接着剤塗布工程が不要な、図4に示す工程S10~工程S50を含む高圧タンク1の製造方法を採用する。
(S10:筒部材準備工程)
初めに、高圧タンク1の製造方法では、予め形成された筒部材31を準備する筒部材準備工程(S10)が行われる。筒部材31は、フィラメントワインディング法によって形成されてもよい。具体的には、筒部材31は、円柱状のマンドレルの外周面に対して、樹脂を含浸させた繊維束を周方向に幾重か巻回(例えばフープ巻き)して巻回体を形成し、樹脂を硬化させることによって形成されてもよい。
(S20:ドーム部材準備工程)
また、高圧タンク1の製造方法では、予め形成されたドーム部材32,33を準備するドーム部材準備工程(S20)が行われる。ドーム部材準備工程(S20)と、筒部材準備工程(S10)とは、並行して行われてもよいし、順不同で行われてもよい。ドーム部材32,33は、フィラメントワインディング法によって形成されてもよい。具体的には、ドーム部材32,33は、楕円体状のマンドレルの外周面に対して、樹脂を含浸させた繊維束を周方向と交差する方向に幾重か巻回して巻回体を形成し、樹脂を硬化させた後に、カッター等によって2つに分割することよって形成されてもよい。或いは、ドーム部材32,33は、ドーム状のマンドレルに頂部から周端部に向かって、樹脂を含浸させた繊維束を幾重か貼付し、樹脂を硬化させることによって形成されてもよい。一方のドーム部材32には、開口部22a及び管状部22bが予め設けられる。管状部22bには、口金4が予め取り付けられる。
(S30:第1補強層形成工程)
次に、高圧タンク1の製造方法では、第1補強層30を形成する第1補強層形成工程(S30)が行われる。第1補強層形成工程(S30)は、準備された筒部材31とドーム部材32,33とを嵌合する嵌合工程(S31)を含む。嵌合工程(S31)は、図5に示すように、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとを径方向に重ね合わせて嵌合する。本実施形態では、筒部材31の周端部31aが径方向内側に配置され、ドーム部材32,33の周端部32a,33aが径方向外側に配置されるように互いを重ね合わせて嵌合する。嵌合工程(S31)では、筒部材31の周端部31aやドーム部材32,33の周端部32a,33aに対して、接着剤を塗布しない。第1補強層形成工程(S30)の後の第1補強層30には、図1及び図2に示すように、重複部34が形成される。この重複部34には、図3に示すように、凸部32c,33cが設けられていることによって、筒部材31とドーム部材32,33との間に隙間Gが形成される。
(S40:第2補強層形成工程)
次に、高圧タンク1の製造方法では、第2補強層35を形成する第2補強層形成工程(S40)が行われる。第2補強層形成工程(S40)は、第1補強層30の外面に対して繊維束を巻回して繊維層36を形成し、繊維層36に樹脂を含浸させることによって第2補強層35を形成する。具体的には、第2補強層形成工程(S40)は、巻回工程(S41)と、含浸工程(S42)と、硬化工程(S43)とを含む。
巻回工程(S41)は、第1補強層30の外面に対して、繊維束を軸方向Xに傾斜するように幾重か巻回(ヘリカル巻き)することによって繊維層36を形成する工程である。軸方向Xに対する繊維束の傾斜角度は、例えば、10度以上60度以下の範囲に含まれる角度であってもよい。巻回工程(S41)において巻回される繊維束は、樹脂が含浸されていない状態の繊維束である。第1補強層30及び繊維層36は、第2補強層35が最終的に成形される前段階の予備成形体を構成する。本実施形態では、第1補強層30及び繊維層36によって構成された当該予備成形体を、「プリフォーム」とも称する。
含浸工程(S42)は、巻回工程(S41)において形成された繊維層36に対して、樹脂を含浸させる工程である。硬化工程(S43)は、含浸工程(S42)において含浸された樹脂を硬化させる工程である。含浸工程(S42)及び硬化工程(S43)は、RTM(Resin Transfer Molding)法によって行われてもよい。RTM法を用いた含浸工程(S42)及び硬化工程(S43)は、例えば、図6に示す成形機6を用いて行うことができる。
図6に示す成形機6は、プリフォームを構成する繊維層36に液状の樹脂37を含浸させ、硬化させる成形機である。成形機6は、成形金型を構成する固定金型61及び可動金型62を備える。固定金型61及び可動金型62が嵌合すると、プリフォームを配置するための空洞が形成される。固定金型61及び可動金型62の空洞に配置されたプリフォームは、シャフト63によって軸支される。固定金型61の空洞を形成する面には、可動金型62の可動方向に沿って動く可動コア61aが設けられる。可動コア61aが動くことによって、空洞内の圧力を均一化し、樹脂37が繊維層36に偏在して含浸されることを抑制することができる。固定金型61には、空洞から真空脱気される気体が流れる排気管64が設けられる。可動金型62には、空洞への樹脂37の注入口であるゲート65と、空洞に注入される樹脂37が流れる樹脂注入管66とが設けられる。樹脂注入管66には、樹脂37を貯留及び調整すると共に、樹脂37を加圧して空洞に注入する樹脂注入装置67が接続される。
まず、含浸工程(S42)では、所定温度に保温された固定金型61及び可動金型62の空洞にプリフォームを配置し、シャフト63によって軸支する。更に、含浸工程(S42)では、樹脂注入装置67に貯留された液状の樹脂37を注入する準備を行う。この際、樹脂注入装置67は、空洞への樹脂37の注入量として、繊維層36に含浸される樹脂37の体積と、第1補強層30の重複部34に形成された隙間Gの体積とを加えた合計体積に相当する樹脂量を少なくとも準備する。
次に、含浸工程(S42)では、固定金型61及び可動金型62を仮締めし、空洞を真空脱気して空洞内の気体を排気管64から排出する。次に、含浸工程(S42)では、仮締め状態の固定金型61及び可動金型62の空洞に対して樹脂37を注入する。プリフォームを構成する繊維層36と、固定金型61及び可動金型62との間に樹脂37が充填される。
次に、含浸工程(S42)では、可動金型62を更に型締めして、プリフォーム及び樹脂37を加圧する。この際、含浸工程(S42)では、固定金型61に設けられた可動コア61aを、図6の下方(空洞に配置されたプリフォームから離隔する方向)に動かす。空洞内の圧力が均一化され、液状の樹脂37が繊維層36の表面全体に行き渡る。
次に、含浸工程(S42)では、可動金型62を更に型締めすると共に、可動コア61aを図6の上方(空洞に配置されたプリフォームに接近する方向)に動かして、プリフォーム及び樹脂37を加圧する。これにより、加圧された液状の樹脂37が、プリフォームを構成する繊維層36の表面全体から繊維層36の内部に含浸する。更に、この際、含浸工程(S42)では、加圧された液状の樹脂37が、繊維層36に含浸されるだけなく、第1補強層30の重複部34に形成された隙間Gに流し込まれる。これにより、本実施形態の高圧タンク1の製造方法では、第1補強層30の外面に繊維束を巻回して形成された繊維層36に樹脂37を含浸させる際に、当該樹脂37を、第1補強層30の重複部34に形成された隙間Gに充填することができる。
次に、含浸工程(S42)では、可動コア61aを含めて固定金型61及び可動金型62を完全に型締め(本締め)し、樹脂37の繊維層36への含浸と隙間Gへの充填とが完了した後、樹脂37の注入を停止する。樹脂37の注入が停止すると、含浸工程(S42)が終了し、硬化工程(S43)が行われる。
硬化工程(S43)では、固定金型61及び可動金型62を所定の硬化温度にて所定時間保温することによって、繊維層36に含浸されると共に隙間Gに充填された樹脂37を硬化する。樹脂37が完全に硬化すると、硬化工程(S43)が終了し、可動金型62を固定金型61から離隔する方向に可動させて脱型を行う。これにより、本実施形態の高圧タンク1の製造方法では、第1補強層30の外面に対して第2補強層35が形成されると共に、第1補強層30を構成する筒部材31とドーム部材32,33とが接合される。
(S50:ライナー形成工程)
次に、高圧タンク1の製造方法は、ライナー2を形成するライナー形成工程(S50)が行われる。ライナー形成工程(S50)では、ガスバリア性を有する樹脂を、第1補強層30の内面に塗布して、第1補強層30の内面を覆うライナー2を形成する。具体的には、ライナー形成工程(S50)では、まず、開口部22aからノズルを挿入し、当該ノズルから第1補強層30の内面に対して液状の樹脂を吐出しつつ、第1補強層30及び第2補強層35を軸方向Xの周りに回転する。これにより、ライナー形成工程(S50)では、液状の樹脂を第1補強層30の内面に塗布することができる。次に、ライナー形成工程(S50)では、第1補強層30の内面に塗布された液状の樹脂を硬化させることによって、ライナー2を形成することができる。
以上のように、本実施形態の高圧タンク1の製造方法は、筒部材31の両端にドーム部材32,33が接合された第1補強層30と、第1補強層30を覆う第2補強層35とを含む、繊維強化樹脂から成る補強層3を備える高圧タンク1の製造方法である。高圧タンク1の製造方法は、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとを径方向に重ね合わせて嵌合することによって第1補強層30を形成する第1補強層形成工程(S30)を含む。高圧タンク1の製造方法は、第1補強層30の外面に繊維束を巻回して繊維層36を形成し、繊維層36に樹脂を含浸させることによって第2補強層35を形成する第2補強層形成工程(S40)を含む。高圧タンク1の製造方法において、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとを重ね合わせた状態において互いの間に隙間Gが形成されるように、筒部材31の周端部31aとドーム部材32,33の周端部32a,33aとの少なくとも一方には、複数の凸部が設けられている。高圧タンク1の製造方法は、第2補強層形成工程(S40)において、繊維層36に樹脂を含浸させる際に樹脂を隙間Gに充填する。
これにより、本実施形態の高圧タンク1の製造方法は、繊維層36に対して含浸される樹脂によって筒部材31とドーム部材32,33とを接合することができる。すなわち、本実施形態の高圧タンク1の製造方法は、繊維層36に対して含浸される樹脂が、繊維強化樹脂を形成する機能(第2補強層35を形成する機能)と、筒部材31とドーム部材32,33とを接合する機能とを兼ねることができる。本実施形態の高圧タンク1の製造方法は、繊維層36に対して樹脂を含浸させる工程が接着剤の塗布工程を代替することができるので、接着剤の塗布工程を新たに設ける必要がなく、工数の増加を抑制することができる。よって、本実施形態の高圧タンク1の製造方法は、特別な工程を設けなくても、筒部材31とドーム部材32,33とを容易に接合することができ、低コスト化を図ることができる。
上記の実施形態において、第2補強層形成工程(S40)は、第1補強層30の外面に繊維束を巻回して形成された繊維層36に樹脂を含浸させるRTM法を用いて、第2補強層35を形成していた。これに限定されず、第2補強層形成工程(S40)では、樹脂量及び成形条件を管理することにより、第1補強層30の外面に繊維束を巻回する直前に液状の樹脂を繊維束に含浸させるWet法を用いて、第2補強層35を形成してもよい。或いは、第2補強層形成工程(S40)では、樹脂量及び成形条件を管理することにより、繊維束に予め樹脂を含浸させて半硬化させたプリプレグを第1補強層30の外面に巻回するTPP(Tow Prepreg)法を用いて、第2補強層35を形成してもよい。
上記の実施形態において、ライナー形成工程(S50)は、第2補強層形成工程(S40)の後に行われていた。これに限定されず、ライナー形成工程(S50)は、第1補強層形成工程(S30)と第2補強層形成工程(S40)との間に行われてもよい。また、ライナー形成工程(S50)は、第1補強層形成工程(S30)より前に行われてもよい。この場合、ライナー形成工程(S50)によって形成されるライナー2は、樹脂製に限定されず、金属製であってもよい。そして、ライナー形成工程(S50)の後に行われる第1補強層形成工程(S30)では、樹脂製又は金属製のライナー2を筒部材31内に挿入した状態において、筒部材31とドーム部材32,33とを嵌合すればよい。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1・・・高圧タンク 2・・・ライナー
3・・・補強層 30・・・第1補強層
31・・・筒部材 31a・・・周端部
32、33・・・ドーム部材 32a、33a・・・周端部
32c、33c・・・凸部 34・・・重複部
35・・・第2補強層 36・・・繊維層
37・・・樹脂 G・・・隙間

Claims (1)

  1. 筒部材の両端にドーム部材が接合された第1補強層と、前記第1補強層を覆う第2補強層とを含む、繊維強化樹脂から成る補強層を備える高圧タンクの製造方法であって、
    前記筒部材の周端部と前記ドーム部材の周端部とを径方向に重ね合わせて嵌合することによって前記第1補強層を形成する第1補強層形成工程と、
    前記第1補強層の外面に繊維束を巻回して繊維層を形成し、前記繊維層に樹脂を含浸させることによって前記第2補強層を形成する第2補強層形成工程と、
    を含み、
    前記筒部材の前記周端部と前記ドーム部材の前記周端部とを重ね合わせた状態において互いの間に隙間が形成されるように、前記筒部材の前記周端部と前記ドーム部材の前記周端部との少なくとも一方には、複数の凸部が設けられており、
    前記第2補強層形成工程において、前記繊維層に前記樹脂を含浸させる際に前記樹脂を前記隙間に充填する
    ことを特徴とする高圧タンクの製造方法。
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