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JP2022096231A - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及び発泡粒子成形体 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及び発泡粒子成形体 Download PDF

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JP2022096231A JP2020209224A JP2020209224A JP2022096231A JP 2022096231 A JP2022096231 A JP 2022096231A JP 2020209224 A JP2020209224 A JP 2020209224A JP 2020209224 A JP2020209224 A JP 2020209224A JP 2022096231 A JP2022096231 A JP 2022096231A
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Takumi Sakamura
肇 太田
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Abstract

【課題】外観が良好であるとともに、圧縮強度などの機械的物性に優れる発泡粒子成形体を、広い成形加熱温度範囲で作製できるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供しようとするものである。さらに、たとえ養生工程を省略しても、所望の形状を有する外観が良好な発泡粒子成形体を製造することができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供しようとするものである。【解決手段】貫通孔を有する筒形状のポリプロピレン系樹脂発泡粒子及び発泡粒子が相互に融着した発泡粒子成形体である。発泡粒子の平均孔径dが特定の範囲であり、前記平均孔径dと平均外径Dとの比d/Dが特定の範囲である。発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂がエチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、ブテン成分含有量とエチレン成分含有量とが特定量であるとともに、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が特定の範囲である。【選択図】なし

Description

本発明は、基材樹脂としてエチレン-プロピレン-ブテン共重合体を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、軽量で、緩衝性、剛性等に優れるため種々の用途に用いられている。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、たとえば、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、スチームで加熱することにより、発泡粒子を二次発泡させると共にその表面を溶融させて相互に融着させて、所望の形状に成形するという型内成形法によって得られる。成形後の発泡粒子成形体は、成形型内で水や空気等で冷却された後成形型から離型される。
従来、発泡粒子の型内成形性や発泡粒子成形体の物性を向上させるために、ポリプロピレン系樹脂として、プロピレンと他のモノマーとを共重合した共重合体が用いられることがある。共重合体の中でも、プロピレンと1-ブテンとエチレンとを共重合させた3元共重合体を用いる試みが行われている。たとえば、特許文献1には、特定の融点とメルトインデックスを有するエチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が開示されている。また、特許文献2には、1-ブテンからなる構造単位を含むポリプロピレン系樹脂と高融点のポリプロピレン系樹脂とを含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子が開示されている。
型内成形後の発泡粒子成形体を常温で保管すると、型内成形時に発泡粒子成形体の気泡内へ流入していたスチームが気泡中で凝縮し、気泡内が負圧となり、発泡粒子成形体に体積収縮が生じて成形体が大きく変形することがある。そのため、発泡粒子成形体を離型した後に、たとえば60℃から80℃程度の温度に調整された高温雰囲気下で所定時間静置させて発泡粒子成形体の形状を回復させる養生工程が通常は必要である。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造においては、養生工程を省略する試みが行われている。たとえば、特許文献3には、発泡芯層と被覆層とからなる発泡粒子を粒子間に空隙を維持したまま融着させる技術が開示されており、特許文献3によれば、養生工程を省略できるとしている。また、特許文献4には、特定の融点、メルトフローインデックス、及びZ平均分子量等を有するポリプロピレン系樹脂を用いた発泡粒子を型内成形する技術が開示されており、特許文献4によれば養生時間を短縮できるとしている。
特開平10-316791号公報 WO2016/60162号 特開2003-39565号公報 特開2000-129028号公報
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子には、広い温度範囲で成形可能であることが求められている。特に、装置の負担軽減や使用エネルギー削減の観点から、より低温で成形可能であることが求められている。また、発泡粒子成形体には、十分な剛性や優れた外観が求められている。さらに、養生工程を省略した場合であっても、剛性や外観の良好な発泡粒子成形体を製造することができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の開発が求められている。
特許文献1、2に記載された技術では、成形可能な加熱温度範囲が狭く、また、養生工程を省略すると、発泡粒子成形体が著しく収縮、変形してしまい、外観が良好な発泡粒子成形体を製造することは困難であった。
特許文献3に記載された技術では、養生工程を省略できるものの、成形体の発泡粒子間に空隙が形成されるため、成形体の外観が悪くなる。また、特許文献3の発泡粒子成形体を、たとえば、エネルギー吸収材として用いた場合には、剛性、強度が不十分であった。特許文献4の技術によれば、養生工程を短縮できるものの、養生工程を必要とするものであり、養生工程を省略した場合には、発泡粒子成形体が収縮、変形してしまい、外観の良好な発泡粒子成形体を得ることは困難であった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされてものであって、外観が良好であるとともに、圧縮強度などの機械的物性に優れる発泡粒子成形体を、広い成形加熱温度範囲で作製できるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供しようとするものである。さらに、たとえ養生工程を省略しても、所望の形状を有する外観が良好な発泡粒子成形体を製造することができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、貫通孔を有する筒形状のポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
上記発泡粒子の上記貫通孔の平均孔径dが1mm未満であるとともに、上記発泡粒子の平均外径Dに対する上記平均孔径dの比d/Dが0.4以下であり、
上記発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂がエチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、
上記エチレン-プロピレン-ブテン共重合体におけるブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量が2質量%以上15質量%以下であるとともに、上記エチレン成分含有量[質量%]に対する上記ブテン成分含有量[質量%]の比が2以上であり、
上記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が800MPa以上である、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子にある。
本発明の他の態様は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が相互に融着した発泡粒子成形体であって、連通した空隙を有する、発泡粒子成形体にある。
上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子によれば、外観が良好であるとともに、圧縮強度などの機械的物性に優れる発泡粒子成形体を、幅広い範囲の成形加熱温度において作製できる。さらに、養生工程を省略しても外観が良好であるとともに、機械的物性に優れる発泡粒子成形体を製造することができる。
また、上記発泡粒子成形体は、外観が良好であるとともに、圧縮強度などの機械的物性に優れる。
図1は、高温ピークの面積の算出方法を示す説明図である。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、下限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以上であることを意味し、上限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以下であることを意味する。また、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は、それぞれ実質的に同義である。また、以降の説明において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のことを適宜「発泡粒子」といい、発泡粒子成形体のことを適宜「成形体」という。
上記発泡粒子は、貫通孔を有する筒形状であって、平均孔径dが1mm未満であるとともに、平均外径Dに対する平均孔径dの比[d/D]が0.4以下である。また、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が800MPa以上であり、ポリプロピレン系樹脂はエチレン-プロピレン-ブテン共重合体を含有する。エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量は2~15質量%である。エチレン-プロピレン-ブテン共重合体におけるブテン成分含有量Cbuとエチレン成分含有量Cetとの比(具体的には、Cbu/Cet)が2以上である。発泡粒子が上記構成を備えることにより、外観が良好であるとともに、圧縮時の強度にも優れる成形体を幅広い範囲の成形加熱温度条件で製造できる。さらに、養生工程を省略しても、所望の形状を有する外観が良好な成形体を製造することができる。
(エチレン-プロピレン-ブテン共重合体)
発泡粒子の基材樹脂であるエチレン-プロピレン-ブテン共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう。)中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量が2質量%以上15質量%以下であるとともに、ブテン成分含有量とエチレン成分含有量との質量比(ブテン成分含有量/エチレン成分含有量)が2以上である。なお、共重合体中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量とプロピレン成分含有量との合計を100質量%とする。
エチレン-プロピレン-ブテン共重合体中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量が少なすぎると、低い成形加熱温度で外観が良好な成形体を得ることができないおそれがある。かかる観点から、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量は上記のごとく2質量%以上である。より低い成形加熱温度での成形が可能になるという観点から、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量は5質量%以上であることが好ましく、6質量%を超えることがより好ましく、8質量%以上であることがさらにより好ましい。一方、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量が多すぎると、養生工程を省略した場合には、離型後の成形体の収縮、変形を抑制することが難しくなり、所望の形状を有する外観が良好な成形体を得ることができないおそれがある。かかる観点から、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量は上記のごとく15質量%以下である。離型後の成形体の著しい収縮、変形をより抑制し易くするという観点から、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体中のブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量は14質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。
エチレン-プロピレン-ブテン共重合体中の、エチレン成分含有量Cetに対するブテン成分含有量Cbuの比Cbu/Cetは2以上である。比Cbu/Cetが小さすぎると、幅広い範囲の成形加熱温度条件において発泡粒子を型内成形することができなくなるおそれがある。また、養生工程を省略した場合には、離型後、成形体が収縮、変形しやすくなる。成形加熱温度がより広くなるという観点、成形体の収縮、変形をより抑制し易くなるという観点から、比Cbu/Cetは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、さらにより好ましくは7以上、特に好ましくは9以上、最も好ましくは13以上である。一方、比Cbu/Cetの上限は、上記観点からは特に限定されるものではないが、好ましくは50、より好ましくは30、さらに好ましくは20である。
樹脂の剛性を維持しつつ融点を低下させることができるという観点から、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のブテン成分含有量は、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは6質量%以上、さらにより好ましくは7質量%以上であり、特に好ましくは7質量%超であり、最も好ましくは8質量%以上である。一方、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のブテン成分含有量は、15質量%未満であり、好ましくは14質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。上記エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のブテン成分含有量が上記範囲内であれば、発泡粒子は、成形性と剛性とのバランスにより優れる。共重合体のブテン成分に用いられるブテンは、直鎖のα-オレフィンである1-ブテンが好ましい。また、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体は、ランダム共重合体であることが好ましい。
成形性向上の観点から、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のエチレン成分含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上である。また、養生工程を省略した場合の成形性を向上させるという観点、型内成形時の水冷時間を短縮させるという観点から、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のエチレン成分含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1.2質量%以下である。
また、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のプロピレン成分含有量は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは86質量%以上、更に好ましくは88質量%である。エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のプロピレン成分含有量は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量以下、さらに好ましくは92質量%以下である。
エチレン-プロピレン-ブテン共重合体は、ブテン成分含有量Cbuとエチレン成分含有量Cetとの合計量が6質量%を超え15質量%以下であるとともに、上記ブテン成分含有量Cbuが6質量%以上15質量%未満であることが特に好ましく、さらに比Cbu/Cetが6以上であることが最も好ましい。この場合には、成形性と剛性とのバランスにより優れるとともに、養生工程を省略した場合の成形性がより良好なものとなる。さらに、型内成形時の水冷時間が短くなる。
エチレン-プロピレン-ブテン共重合体は、エチレン成分、プロピレン成分、及びブテン成分以外のモノマー成分を含んでいてもよいが、実質的にこれら3種のモノマー成分からなることが好ましく、これら3種のモノマー成分のみからなることがより好ましい。
IRスペクトル測定によりこれらモノマー成分の含有量を求めることができる。
エチレン-プロピレン-ブテン共重合体のエチレン成分、プロピレン成分、ブテン成分は、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体におけるエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、ブテン由来の構成単位をそれぞれ意味する。エチレン成分、プロピレン成分及びブテン成分以外のモノマー成分は、エチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位及びブテン由来の構成単位以外のモノマー由来の構成単位を意味する。
また、共重合体中の各モノマー成分の含有量は、共重合体中の各モノマー由来の構成単位の含有量を意味するものとする。
発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂は、本発明の目的効果を阻害しない範囲でエチレン-プロピレン-ブテン共重合体以外の他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、エチレン-プロピレンランダム共重体、プロピレン-ブテンランダム共重体、プロピレン単独重合体等のその他のポリプロピレン系樹脂が例示され、また、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等のポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が例示される。発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂中の他の重合体の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、0、つまり、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂が重合体としてエチレン-プロピレン-ブテン共重合体のみを含むことが特に好ましい。
型内成形性と耐熱性を両立させるという観点から、ポリプロピレン系樹脂の融点は、好ましくは135℃以上、より好ましくは136℃以上、さらに好ましくは137℃以上、特に好ましくは138℃以上である。型内成形性向上の観点から、ポリプロピレン系樹脂の融点は、好ましくは145℃以下、より好ましくは142℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
ポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K7121:1987に基づき求められる。具体的には、状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節された試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、該融解ピークの頂点温度を融点とする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、発泡性の観点から、好ましくは2~10g/10分、より好ましくは5~9g/10分である。なお、上記ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014に基づき、試験温度230℃ 、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
発泡粒子は、加熱速度10℃/分で23℃から200℃まで加熱した際に得られるDSC曲線に、ポリプロピレン系樹脂固有の融解による吸熱ピーク(つまり、樹脂固有ピーク)と、その高温側に1以上の融解ピーク(つまり、高温ピーク)とが現れる結晶構造を有することが好ましい。DSC曲線は、発泡粒子1~3mgを試験サンプルとして用い、JIS K7121:1987に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により得られる。
樹脂固有ピークとは、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂固有の融解による吸熱ピークであり、ポリプロピレン系樹脂が本来有する結晶の融解時の吸熱によるものであると考えられる。一方、樹脂固有ピークの高温側の吸熱ピーク(つまり、高温ピーク)とは、DSC曲線で上記樹脂固有ピークよりも高温側に現れる吸熱ピークである。この高温ピークが現れる場合、樹脂中に二次結晶が存在するものと推定される。なお、上記のように10℃/分の昇温速度で23℃から200℃までの加熱(つまり、第1回目の加熱)を行った後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃までの加熱(つまり、第2回目の加熱)を行ったときに得られるDSC曲線においては、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に固有の融解による吸熱ピークのみが見られるため、樹脂固有ピークと高温ピークとを見分けることができる。この樹脂固有ピークの頂点の温度は、第1回目の加熱と第2回目の加熱とで多少異なる場合があるが、通常、その差は5℃以内である。
発泡粒子の高温ピークの融解熱量は、好ましくは5~40J/g、より好ましくは7~30J/g、更に好ましくは10~20J/gである。
また、上記高温ピークの融解熱量と、DSC曲線の全融解ピークの融解熱量の比(高温ピークの融解熱量/全融解ピークの融解熱量)は、好ましくは0.05~0.3、より好ましくは0.1~0.25、更に好ましくは0.15~0.2である。
高温ピークの融解熱量及び全融解ピークの融解熱量との比をこのような範囲にすることで、高温ピークとして表れる二次結晶の存在により、発泡粒子は特に機械的強度に優れると共に、型内成形性に優れるものになると考えられる。
ここで、全融解ピークの融解熱量とは、DSC曲線の全ての融解ピークの面積から求められる融解熱量の合計をいう。
発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が低すぎると、養生工程を省略した場合、成形体が著しく収縮、変形して所望の形状を有する成形体を得ることができないおそれがある。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は上記のごとく800MPa以上である。養生工程を省略したときの成形体の著しい収縮、変形をより抑制し易くするという観点から、曲げ弾性率は850MPa以上であることが好ましく、880MPa以上であることがさらに好ましく、900MPa以上であることが特に好ましい。また、成形性向上の観点から、曲げ弾性率は、好ましくは1200MPa以下、より好ましくは1100MPa以下、さらに好ましくは1000MPa以下である。
なお、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2008に基づき、求めることができる。
発泡粒子は、貫通孔を有する筒形状であり、平均孔径dが1mm未満であるとともに、平均外径Dに対する平均孔径dの比d/Dが0.4以下である。発泡粒子が上記特定のエチレン-プロピレン-ブテン共重合体を含有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とし、かつ上記特定の貫通孔を有することにより、広い成形加熱温度条件において、外観が良好であるとともに、圧縮時の強度にも優れる成形体を製造することができる。さらに、養生工程を省略した場合であっても、良好な成形体を製造することができる。発泡粒子が貫通孔を有することにより成形性が向上する理由は、成形工程において供給されるスチーム等の加熱媒体が貫通孔を通り発泡粒子群の内部まで行きわたることにより、型内に充填された発泡粒子全体が十分に加熱され、発泡粒子の二次発泡性や融着性が向上するためと考えられる。
貫通孔を有する筒形状の発泡粒子は、円柱、角柱等の柱状の発泡粒子の軸方向を貫通する筒孔を少なくとも1つ有することが好ましい。発泡粒子は、円柱状であり、その軸方向を貫通する筒孔を有することがより好ましい。
また、融着性を向上させる観点から、発泡粒子に、その表面を被覆する被覆層を形成してもよい。被覆層は、例えば、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂から構成されることが好ましい。
発泡粒子が貫通孔を有していない場合には、低い成形加熱温度で成形体を成形することが困難となるおそれがある。また、養生工程を省略した場合において、良好な成形体を製造することが難しくなるおそれがある。一方、発泡粒子が貫通孔を有している場合であっても、平均孔径dが大きすぎる場合には、成形体の外観が低下するおそれがあるとともに、圧縮時の強度が低下するおそれがある。また、型内成形時の発泡粒子の二次発泡性が低下するおそれがある。かかる観点から、発泡粒子の平均孔径dは上記のごとく1mm未満である。成形体の外観がより向上するという観点、圧縮強度がより向上するという観点、発泡粒子の二次発泡性がより向上するという観点から、発泡粒子の平均孔径dは、0.9mm以下であることが好ましく、0.85mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。なお、製造容易性の観点から、発泡粒子の平均孔径dの下限は、概ね0.2mm以上である。
発泡粒子の貫通孔の平均孔径dは、以下のように求められる。発泡粒子群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子を、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断する。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、貫通孔の部分の断面積(具体的には、開口面積)を求め、その面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、これらを算術平均した値を、発泡粒子の貫通孔の平均孔径dとする。
発泡粒子の成形型への充填性を高めるとともに、成形体の剛性を高める観点から、発泡粒子の平均外径Dは、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上、更に好ましくは3mm以上であり、そして、好ましくは5mm以下、より好ましくは4.5mm以下、更に好ましくは4.3mm以下である。
発泡粒子の平均外径Dに対する上記平均孔径dの比d/Dが大きすぎる場合には、成形体の外観が低下するおそれがあるとともに、圧縮時の強度が低下するおそれがある。また、この場合には、型内成形時の発泡粒子の二次発泡性が低下するおそれがある。かかる観点から、比d/Dは上記のごとく0.4以下である。成形体の外観がより良好になるという観点、圧縮強度がより向上するという観点、二次発泡性がより向上するという観点から、d/Dは、0.35以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.25以下であることがさらに好ましく、0.2未満であることが特に好ましい。なお、比d/Dは、製造容易性の観点から、0.1以上であることが好ましい。
発泡粒子の平均外径Dは、以下のように求められる。発泡粒子群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子を、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断する。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、発泡粒子の断面積(具体的には、貫通孔の開口部分も含む断面積)を求め、その面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、これらの算術平均した値を、発泡粒子の平均外径Dとする。
発泡粒子の肉厚tの平均値は1.2mm以上2mm以下であることが好ましい。該肉厚tの平均値がこの範囲内であれば、発泡粒子の肉厚が十分に厚いため、型内成形時の二次発泡性がより向上する。また、外力に対して発泡粒子がより潰れにくくなり、成形体の圧縮応力がより向上するという観点から、発泡粒子の平均肉厚tは、より好ましくは1.3mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上である。
発泡粒子の肉厚tは、発泡粒子の表面(つまり、外表面)から貫通孔の外縁(つまり、発泡粒子の内表面)までの距離であり、下記式(1)により求められる値である。
t=(D-d)/2 ・・・(1)
d:貫通孔の平均孔径(mm)
D:発泡粒子の平均外径(mm)
また、発泡粒子の平均外径Dに対する平均肉厚tの比t/Dは0.35以上0.5以下であることが好ましい。t/Dが上記範囲内であれば、発泡粒子の型内成形において、発泡粒子の充填性がよく、また、二次発泡性をより向上させることができる。したがって、剛性に優れる成形体をより低い成形加熱温度で製造することができる。
成形体の軽量性と剛性とのバランスの観点から、発泡粒子の見掛け密度は、10kg/m3以上150kg/m3以下であることが好ましく、より好ましくは15kg/m3以上100kg/m3以下、さらに好ましくは20kg/m3以上80kg/m3以下である。従来、特に見掛け密度の小さい成形体を製造する場合には、成形体が離型後に著しく変形しやすく、養生工程を省略することは困難であった。これに対し、本開示における発泡粒子は、見掛け密度が小さい場合であっても、養生工程を省略することが可能であり、無養生成形により良好な成形体を製造することができる。無養生成形は、型内成形後に養生を行わない成形方法のことを意味する。
発泡粒子の見掛け密度は、23℃のアルコール(例えばエタノール)を入れたメスシリンダー内に、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて1日放置した発泡粒子群(発泡粒子群の重量W(g))を、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積V(L)を求め、発泡粒子群の重量を発泡粒子群の体積で除し(W/V)、単位を[kg/m3]に換算することにより求めることができる。
成形体の剛性をより高める観点、外観をより良好なものとする観点から、発泡粒子の嵩密度に対する発泡粒子の見掛け密度の比(つまり、見掛け密度/嵩密度)は、好ましくは1.7以上であり、そして、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.1以下、さらに好ましくは1.9以下である。
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求められる。発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W2[g]を収容体積V2(1L])で除して(W2/V2)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度が求められる。
発泡粒子は、型内成形性に優れ、広い範囲の成形加熱温度で良好な成形体を製造することができる。さらに、養生工程を省略しても成形体が著しく収縮、変形することなく良好な成形体を製造することができる。上記発泡粒子が、養生工程を省略しても良好な成形体を製造することができる理由は、明らかではないが、以下のように考えられる。
発泡粒子は、曲げ弾性率が特定以上のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂としている。したがって、離型後に成形体が収縮することを抑制しやすく、寸法変化が抑制されると考えられる。また、発泡粒子が、共重合体組成が特定範囲のエチレン-プロピレン-ブテン共重合体から構成されているとともに、所定の形状の貫通孔を有することにより、より低い成形圧で成形することが可能である。そのため、型内成形においてスチーム等の加熱媒体により発泡粒子が受ける熱量を低く抑えることができるため、成形体の熱収縮による寸法変化が抑制されると考えられる。さらに、成形体が発泡粒子の貫通孔に由来する連通した微小な空隙を有すると、離型後速やかに成形体内部の気泡まで空気が流入し、成形体全体の内圧が高められる結果、成形体の寸法が早期に安定化しやすくなると考えられる。
以上の理由により、発泡粒子が、養生工程を省略しても成形体の寸法が安定し、良好な成形体を製造することができるものとなると考えられる。
[発泡粒子の製造方法]
発泡粒子は、たとえば、上記エチレン-プロピレン-ブテン共重合体を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂粒子を分散媒(例えば、液体)に分散させ、樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、発泡剤を含む樹脂粒子を低圧下に放出する方法(つまり、分散媒放出発泡方法)により製造することができる。具体的には、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂粒子を、密閉容器内で分散媒に分散させ、加熱後、発泡剤を圧入して樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが好ましい。その後、一定温度にて二次結晶を成長させる保持工程を経た後、密閉容器内の内容物を低圧下に放出することにより発泡剤を含む樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得ることが好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂粒子の製造)
発泡粒子の製造に用いられる樹脂粒子は、例えば、次のようにして製造される。まず、押出機内に基材樹脂を供給し、加熱、混練して樹脂溶融物とする。基材樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、例えば、押出機内で気泡核剤等の添加剤が必要に応じて配合される。その後、押出機先端に付設されたダイの小孔から、樹脂溶融物を、貫通孔を有する筒形状のストランド状に押し出し、冷却させてカットすることにより樹脂粒子を得ることができる。カット方式は、ストランドカット方式、ホットカット方式、水中カット方式等から選択することができる。このようにして、貫通孔を有する筒形状の非発泡状態のポリプロピレン系樹脂粒子を得ることができる。
樹脂粒子の粒子径は、好ましくは0.1~3.0mm、より好ましくは0.3~1.5mmである。また、樹脂粒子の長さ/直径(具体的には外径)比は、好ましくは0.5~5.0、より好ましくは1.0~3.0である。また、1個当たりの平均質量(無作為に選んだ200個の粒子の質量から求める)は、0.1~20mgとなるように調製されることが好ましく、より好ましくは0.2~10mg、更に好ましくは0.3~5mg、特に好ましくは0.4~2mgである。
なお、ストランドカット法における、樹脂粒子の粒子径、長さ/直径比や平均質量の調製は、樹脂溶融物を押出す際に、押出速度、引き取り速度、カッタースピードなどを適宜変えて切断することにより行うことができる。
(発泡粒子の製造)
上記のようにして得られた樹脂粒子を密閉容器内で分散させるための分散媒(具体的には液体)としては水性分散媒が用いられる。該水性分散媒は、水を主成分とする分散媒である。水性分散媒における水の割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。水性分散媒中の水以外の分散媒としては、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
樹脂粒子には、必要に応じて、気泡調製剤、結晶核剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等の添加剤を添加できる。気泡調製剤としては、タルク、マイカ、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機粉体が挙げられる。気泡調製剤を添加する場合、樹脂粒子中の気泡調製剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部である。
上記分散媒放出発泡方法においては、容器内で加熱されたポリプロピレン系樹脂粒子同士が容器内で互いに融着しないように、分散媒体中に分散剤を添加することが好ましい。分散剤としては、ポリプロピレン系樹脂粒子の容器内での融着を防止するものであればよく、有機系、無機系を問わず使用可能であるが、取り扱いの容易さから微粒状無機物が好ましい。分散剤としては、例えば、アムスナイト、カオリン、マイカ、クレー等の粘土鉱物が挙げられる。粘土鉱物は、天然のものであっても、合成されたものであってもよい。また、分散剤としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄等が挙げられる。分散剤は、1種または2種以上が使用される。これらの中でも分散剤としては粘土鉱物を用いることが好ましい。分散剤は、樹脂粒子100質量部当たり0.001~5質量部程度添加することが好ましい。
なお、分散剤を使用する場合、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。上記分散助剤の添加量は、上記樹脂粒子100質量部当たり、0.001~1質量部とすることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させるための発泡剤としては、物理発泡剤を用いることが好ましい。物理発泡剤は、無機系物理発泡剤と有機系物理発泡剤が挙げられ、無機系物理発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。また、有機系物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロメタン、1-クロロ-1,1-ジクロロエタン、1,2,2,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なお、物理発泡剤は単独で用いても、あるいは二種以上を混合して用いてもよい。また、無機系物理発泡剤と有機系物理発泡剤とを混合して用いることもできる。環境に対する負荷や取扱い性の観点から、好ましくは無機系物理発泡剤、より好ましくは二酸化炭素が用いられる。有機系物理発泡剤を用いる場合には、ポリプロピレン系樹脂への溶解性、発泡性の観点から、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタンを使用することが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部に対する発泡剤の添加量は、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~15質量部である。
発泡粒子の製造工程において、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法としては、樹脂粒子を密閉容器内の水性分散媒中に分散させ、加熱しながら、発泡剤を圧入し、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法が好ましく用いられる。
発泡時の密閉容器内圧は0.5MPa(G:ゲージ圧)以上であることが好ましい。一方、密閉容器内圧は4.0MPa(G)以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、密閉容器の破損や爆発等のおそれがなく安全に発泡粒子を製造することができる。
発泡粒子製造工程における水性分散媒の昇温を、1~5℃/分で行うことで、発泡時の温度も適切な範囲とすることができる。
示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線に、樹脂固有の融解ピーク(樹脂固有ピーク)とその高温側に1以上の融解ピーク(高温ピーク)とが現れる結晶構造を有する発泡粒子は、例えば、次のようにして得られる。
発泡粒子製造工程における加熱時に、(ポリプロピレン系樹脂の融点-20℃)以上、(ポリプロピレン系樹脂の融解終了温度)未満の温度で十分な時間、好ましくは10~60分程度保持する一段保持工程を行う。その後、(ポリプロピレン系樹脂の融点-15℃)から(ポリプロピレン系樹脂の融解終了温度+10℃)の温度に調節する。そして、必要により、その温度でさらに十分な時間、好ましくは10~60分程度保持する二段保持工程を行う。次いで、発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させることにより、上述の結晶構造を有する発泡粒子を得ることができる。発泡は、密閉容器内を(ポリプロピレン系樹脂の融点-10℃)以上で行われることが好ましく、(ポリプロピレン系樹脂の融点)以上(ポリプロピレン系樹脂の融点+20℃)以下で行われることがより好ましい。
なお、上記のようにして得られる発泡粒子は、空気等により加圧処理して気泡の内圧を高めた後、スチーム等で加熱して発泡させ(二段発泡)、さらに見掛け密度の低い発泡粒子とすることもできる。
(成形体の製造)
成形体は、発泡粒子を型内成形すること(つまり、型内成形法)により得ることができる。型内成形法は、発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより行われる。具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して二次発泡させると共に、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された成形体を得ることができる。また、加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報参照)により、発泡粒子を成形することが好ましい。加圧成形法では、まず、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子の気泡内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を大気圧よりも0.01~0.3MPa高い圧力に調製する。次に、大気圧下又は減圧下で発泡粒子を成形型内に充填し、次いで型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる。また、圧縮充填成形法(特公平4-46217号公報参照)により発泡粒子を成形することもできる。圧縮充填成形法では、まず、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧した成形型内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填する。次いで、キャビティ内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子の加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる。また、常圧充填成形法(特公平6-49795号公報参照)により発泡粒子を成形することもできる。常圧充填成形法では、まず、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下で成形型のキャビティ内に充填する。次いで、キャビティ内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子の加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる。また、上記の成形法を組み合わせた方法(特公平6-22919号公報参照)によって、発泡粒子を成形することもできる。
(成形体)
成形体は、例えば、発泡粒子を型内成形してなり、相互に融着した多数の発泡粒子から構成されている。成形体は、連通した空隙を有する。成形体の連通した空隙は、複数の発泡粒子の貫通孔が相互に連通して形成される空隙や、発泡粒子の貫通孔が発泡粒子間に形成される空隙と連通して形成される空隙や、発泡粒子間の空隙が連通して形成される空隙などが、複雑につながって形成される。
成形体の空隙率は、外観と機械的物性とをバランスよく両立させる観点、養生工程を省略したときの成形体の著しい収縮、変形をより抑制し易くするという観点から、4%以上12%以下であることが好ましく、5%以上10%以下であることがより好ましい。
成形体の空隙率は、以下のように求めることができる。まず、成形体の中心部分から直方体形状(縦20mm×横100mm×高さ20mmの試験片を切り出す。ついで、この試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc[L]を求める。また、該試験片の外形寸法から見掛けの体積Vd[L]を求める。求められる真の体積Vcと見掛けの体積Vdから下記式(2)により成形体の空隙率を求めることができる。
空隙率(%)=[(Vd-Vc)/Vd]×100・・・(2)
成形体の密度は、軽量性と剛性とのバランスの観点から、10kg/m3以上100kg/m3以下であることが好ましく、15kg/m3以上80kg/m3以下がより好ましく、20kg/m3以上50kg/m3以下がさらに好ましい。従来の成形体は、見掛け密度が小さい場合には離型後に著しく収縮、変形しやすいため、養生工程を設けることにより成形体の寸法を回復させる必要があった。本開示における成形体は、見掛け密度が小さい場合であっても、養生工程を設けることなく寸法が安定したものとなる。
上記発泡粒子は、低い成形加熱温度での成形性に優れるので、成形体の製造時に良好な成形体が得られる成形可能温度範囲が広がる。さらに、養生工程を省略した場合であっても、外観が良好で機械的強度が優れた成形体が得られることから、生産性にも優れる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例、比較例に使用した樹脂、発泡粒子、成形体について、以下の測定及び評価を実施した。なお、発泡粒子又は成形体の評価は、これらを相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間静置して状態調節した後に行った。
<ポリプロピレン系樹脂>
表1に、使用したポリプロピレン系樹脂の性状を示す。なお、本例において使用したエチレン-プロピレン-ブテン共重合体は、いずれもランダム共重合体である。
Figure 2022096231000001
(ポリプロピレン系樹脂のモノマー成分含有量)
ポリプロピレン系樹脂(具体的には、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体)のモノマー成分含有量は、IRスペクトルにより決定する公知の方法により求めた。具体的には、高分子分析ハンドブック(日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、出版年月:1995年1月、出版社:紀伊国屋書店、ページ番号と項目名:615~616「II.2.3 2.3.4 プロピレン/エチレン共重合体」、618~619「II.2.3 2.3.5 プロピレン/ブテン共重合体」)に記載されている方法、つまり、エチレン及びブテンの吸光度を所定の係数で補正した値とフィルム状の試験片の厚み等との関係から定量する方法により求めた。より具体的には、まず、ポリプロピレン系樹脂を180℃環境下でホットプレスしてフィルム状に成形し、厚みの異なる複数の試験片を作製した。次いで、各試験片のIRスペクトルを測定することにより、エチレン由来の722cm-1及び733cm-1における吸光度(A722、A733)と、ブテン由来の766cm-1における吸光度(A766)とを読み取った。次いで、各試験片について、以下の式(3)~(5)を用いてポリプロピレン系樹脂中のエチレン成分含有量を算出した。各試験片について得られたエチレン成分含有量を算術平均した値をポリプロピレン系樹脂中のエチレン成分含有量(単位:wt%)とした。
(K´733=1/0.96{(K´733-0.268(K´722}・・・(3)
(K´722=1/0.96{(K´722-0.268(K´722}・・・(4)
エチレン成分含有量(%)=0.575{(K´722+(K´733}・・・(5)
ただし、式(3)~(5)において、K´:各波数における見かけの吸光係数(K´=A/ρt)、K´:補正後の吸光係数、A:吸光度、ρ:樹脂の密度(単位:g/cm3)、t:フィルム状の試験片の厚み(単位:cm)を意味する。なお、上記式(3)~(5)はランダム共重合体に適用することができる。
また、各試験片について、以下の式(6)を用いてポリプロピレン系樹脂中のブテン成分含有量を算出した。各試験片について得られたブテン成分含有量を算術平均した値をポリプロピレン系樹脂中のエチレン成分含有量(%)とした。
ブテン成分含有量(%)=12.3(A766/L)・・・(6)
ただし、式(6)において、A:吸光度、L:フィルム状の試験片の厚み(mm)を意味する。
(ポリプロピレン系樹脂の融点)
ポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K7121:1987に基づき求めた。具体的には、状態調節として「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節された試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、該融解ピークの頂点温度を融点とした。なお、測定装置は、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)を用いた。
(ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト)
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト(つまり、MFR)は、JIS K7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率)
ポリプロピレン系樹脂を230℃でヒートプレスして4mmのシートを作製し、このシートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を切り出した。この試験片の曲げ弾性率を、JIS K7171:2008に準拠して求めた。なお、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mmであり、支点間距離は64mmであり、試験速度は2mm/minである。
<発泡粒子>
表2に、発泡粒子の性状等を示す。
Figure 2022096231000002
(貫通孔の平均孔径d)
発泡粒子の貫通孔の平均孔径は、以下のように求めた。状態調節後の発泡粒子群から無作為に選択した100個の発泡粒子について、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断した。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、断面写真における貫通孔部分の断面積(開口面積)を求めた。断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、これらを算術平均した値を、発泡粒子の貫通孔の平均孔径(d)とした。
(平均外径D)
発泡粒子の平均外径は、以下のように求めた。状態調節後の発泡粒子群から無作為に選択した100個の発泡粒子について、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔の貫通方向に対して垂直に切断した。各発泡粒子の切断面の写真撮影をし、発泡粒子の断面積(貫通孔の開口部も含む)を求めた。断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径を算出し、これらを算術平均した値を、発泡粒子の平均外径(D)とした。
(平均肉厚t)
発泡粒子の平均肉厚は、下記式(7)により求めた。
平均肉厚t=(平均外径D-平均孔径d)/2・・・(7)
(アスペクト比L/D)
発泡粒子の平均外径D及び貫通孔の平均孔径dを測定する前の、100個の発泡粒子について、貫通孔の貫通方向における最大長をノギスで測定し、これらを算術平均することにより発泡粒子の平均長さLを求め、平均長さLを平均外径Dで除することにより、発泡粒子の平均アスペクト比L/Dを求めた。
(見掛け密度)
発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求めた。まず、温度23℃のエタノールが入ったメスシリンダーを用意し、状態調節後の任意の量の発泡粒子群(発泡粒子群の質量W1[g])をメスシリンダー内のエタノール中に金網を使用して沈めた。そして、金網の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1[L]を測定した。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1[g]を容積V1[L]で除して(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求めた。
(嵩密度)
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求めた。状態調節後の発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W2[g]を収容体積V2(1[L])で除して(W2/V2)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度を求めた。
(発泡粒子のDSC曲線の各ピークの融解熱量)
状態調節を行った後の発泡粒子群から1個の発泡粒子を採取した。この発泡粒子を試験片として用い、試験片を示差熱走査熱量計(具体的には、ティー・エイ・インスツルメント社製DSC.Q1000)によって23℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温させたときのDSC曲線を得た。図1にDSC曲線の一例を示す。図1に例示されるように、DSC曲線には、樹脂固有ピークΔH1と、樹脂固有ピークΔH1の頂点よりも高温側に頂点を有する高温ピークΔH2とが現れる。
次いで、DSC曲線上における温度80℃での点αと、発泡粒子の融解終了温度Tでの点βとを結び直線L1を得た。次に、上記の樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2との間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線L2を引き、直線L1と直線L2との交わる点をδとした。なお、点γは、樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2との間に存在する極大点ということもできる。
樹脂固有ピークΔH1の面積は、DSC曲線の樹脂固有ピークΔH1部分の曲線と、線分α-δと、線分γ-δとによって囲まれる部分の面積であり、これを樹脂固有ピークの融解熱量とした。
高温ピークΔH2の面積は、DSC曲線の高温ピークΔH2部分の曲線と、線分δ-βと、線分γ-δとによって囲まれる部分の面積であり、これを高温ピークの融解熱量とした。
全融解ピークの面積は、DSC曲線の樹脂固有ピークΔH1部分の曲線と高温ピークΔH2部分の曲線と、線分α-β(つまり、直線L1)とによって囲まれる部分の面積であり、これを全融解ピークの融解熱量とした。
上記測定を5個の発泡粒子について行い、算術平均した値を表2に示した。
<成形体>
表3に、成形体の性状を示す。
Figure 2022096231000003
(型内成形性の評価)
型内成形性は、成形可能範囲を調べることにより評価する。具体的には、まず、後述の<成形体の製造>の方法で、成形スチーム圧を0.20~0.28MPa(G)の間で0.02MPaずつ変化させて成形体を成形した。離型後の成形体を80℃のオーブン中で12時間静置した。オーブン中での12時間の静置が養生工程である。養生工程後、成形体を相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間静置することにより、成形体の状態調節を行った。次いで、成形体の融着性、回復性(具体的には、型内成形後の膨張または収縮の回復性)を評価した。その結果、下記基準に達したものを合格とし、全ての項目で合格となったスチーム圧(つまり、合格品が取得可能であったスチーム圧))を成形可能なスチーム圧とした。成形可能なスチーム圧の下限値から上限値までの幅が広いものほど、成形可能な成形加熱温度範囲が広いことを意味する。
(融着性)
成形体を折り曲げて破断させ、破断面に存在する発泡粒子の数C1と破壊した発泡粒子の数C2とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(つまり、材料破壊率)を算出した。材料破壊率は、C2/C1×100という式から算出される。異なる試験片を用いて上記測定を5回行い、材料破壊率をそれぞれ求めた。材料破壊率の算術平均値が80%以上であるときを合格とした。
(回復性)
縦300mm、横250mm、厚み60mmの平板形状の金型を用いて得られた成形体における四隅部付近(具体的には、角より中心方向に10mm内側)の厚みと、中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みをそれぞれ計測した。次いで、四隅部付近のうち最も厚みの厚い箇所の厚みに対する最も厚みの薄い箇所の厚みの比(単位:%)を算出し、比が95%以上であるときを合格とした。
(無養生成形における型内成形性の評価)
養生工程を行うことなく、離型後の成形体を23℃で12時間静置した以外は上述の型内成形性の評価と同様にして融着性及び回復性を評価した。評価結果に基づき、以下の基準で判定を行った。
○:いずれかの成形スチーム圧において、合格品を取得することができた。
×:いずれの成形スチーム圧においても合格品を取得できなかった。
後述の<成形体の製造>において、0.24MPa(G)の成形圧で得られた成形体を相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間静置して状態調節しものについて、成形体の空隙率、成形体密度、50%圧縮応力の測定、表面性評価を行った。なお、比較例3においては0.20MPa(G)の成形圧で得られた成形体を状態調節したものを各測定、評価に用いた。
(成形体の空隙率)
成形体の空隙率は、以下のように求めた。成形体の中心部分から切り出した直方体形状(縦20mm×横100mm×高さ20mmの試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc[L]を求めた。また、該試験片の外形寸法から見掛けの体積Vd[L]を求めた。求められた真の体積Vcと見掛けの体積Vdから下記式(8)により成形体の空隙率を求めた。
空隙率(%)=[(Vd-Vc)/Vd]×100・・・(8)
(成形体密度)
成形体密度(kg/m3)は、成形体の重量(g)を成形体の外形寸法から求められる体積(L)で除し、単位換算することにより算出される。
(50%歪時圧縮応力)
成形体の表面にあるスキン層が試験片に含まれないように、成形体の中心部から縦50mm×横50mm×厚み25mmの試験片を切り出した。JIS K6767:1999に基づき、圧縮速度10mm/分にて圧縮試験を行い成形体の50%圧縮応力を求めた。
(表面性評価)
下記基準に基づいて評価した。
A:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙が少なく、かつ貫通孔等に起因する凹凸が目立たない良好な表面状態を示す
B:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙および/または貫通孔等に起因する凹凸がやや認められる
C:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙および/または貫通孔等に起因する凹凸が著しく認められる
(水冷時間の評価)
後述の<成形体の製造>において、加熱終了後、放圧し、成形型内面に取付けられた面圧計の値が0.04MPa(G)に低下するまで水冷する際に要した時間(つまり、水冷時間)を測定し、測定された水冷時間をもとに以下の基準で評価した。なお、水冷時間の評価は、成形圧0.26MPa(G)での成形における水冷時間で評価した。水冷時間の評価として成形圧0.26MPa(G)の条件を採用した理由は、成形圧が高くなるほど水冷時間が長くなりやすいためである。
A:水冷時間が70秒以下
B:水冷時間が70秒超120秒以下
C:水冷時間が120秒超
以下、実施例1~3、比較例1~4における、発泡粒子の製造方法及び成形体の製造方法を説明する。
(実施例1)
<ポリプロピレン系発泡粒子の製造>
ポリプロピレン系樹脂1(略称PP1)を押出機内で最高設定温度230℃にて溶融混練して樹脂溶融物を得た。なお、PP1は、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、ブテン成分含有量9.0質量%、エチレン成分含有量1.0質量%である。PP1の特性を表1に示す。次いで、樹脂溶融物を押出機先端に付設されたダイの小孔から、貫通孔を有す筒形状を有するストランド状に押し出し、ストランド状物を引取ながら水冷した後、ペレタイザーで質量が約1.5mgとなるように切断した。このようにして、貫通孔を有する円筒状のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。ポリプロピレン系樹脂粒子のアスペクト比は2.5である。なお、樹脂粒子の製造に際し、気泡調製剤としてのホウ酸亜鉛を押出機に供給し、ポリプロピレン系樹脂中にホウ酸亜鉛500質量ppmを含有させた。
ポリプロピレン系樹脂粒子1kgを、分散媒としての水3Lともに5Lの密閉容器内に仕込み、更に樹脂粒子100質量部に対し、分散剤としてカオリン0.3質量部、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004質量部を密閉容器内に添加した。発泡剤としてドライアイス70gを密閉容器内に添加した後、密閉容器を密閉し、密閉容器内を攪拌しながら発泡温度143.2℃まで加熱した。このときの容器内圧力(含浸圧力)は3.1MPa(G)であった。同温度(つまり、143.2℃)で15分保持した後、容器内容物を大気圧下に放出して発泡粒子を得た。この発泡粒子を23℃で24時間乾燥させた。
次いで、耐圧容器内に発泡粒子を入れ、耐圧容器内に空気を圧入することにより、容器内の圧力を高め、空気を気泡内に含浸させて発泡粒子の気泡内の内圧を高めた。次いで、耐圧容器から取り出した発泡粒子(一段発泡粒子)に耐圧容器内の圧力が表2に示す圧力となるようスチームを供給し、大気圧下で加熱した。耐圧容器から取り出した一段発泡粒子における気泡内の圧力(ただし、ゲージ圧)は表2に示す値であった。以上により、一段発泡粒子の見掛け密度を低下させ、発泡粒子(二段発泡粒子)を得た。
<成形体の製造>
成形体の製造には、上記二段発泡により得られた発泡粒子を23℃で24時間乾燥させたものを用いた。乾燥後の発泡粒子を加圧空気により加圧し、発泡粒子内の内圧を0.10MPa(G)とした。次いで、クラッキング量を6mmに調節した、縦300mm×横250mm×厚さ60mmの平板成形型に発泡粒子を充填し、型締めして金型両面からスチームを5秒供給して予備加熱する排気工程を行った。その後、所定の成形圧より0.08MPa(G)低い圧力に達するまで、金型の一方の面側からスチームを供給して一方加熱を行った。次いで、成形圧より0.04MPa(G)低い圧力に達するまで金型の他方の面側よりスチームを供給して一方加熱を行った後、所定の成形圧に達するまで加熱(つまり、本加熱)を行った。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷した後、型を開放して成形体を取り出した。次いで、成形体を80℃のオーブン中で12時間静置する養生工程を行った。このようにして成形体を製造した。
(実施例2)
ポリプロピレン系樹脂1をポリプロピレン系樹脂2(略称PP2)に変更し、発泡温度を表2に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。また、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、PP2は、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、そのモノマー成分含有量などを表1に示す。
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂1をポリプロピレン系樹脂3(略称PP3)に変更し、含浸圧力と発泡温度を表2に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。また、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、PP3は、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、そのモノマー成分含有量などを表1に示す。
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂粒子の製造時に、貫通孔を有さない樹脂粒子を製造した以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。本例の発泡粒子は、貫通孔を有さない略球形の発泡粒子であった。また、実施例1と同様にして成形体を得た。
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂粒子の製造にあたり、貫通孔を形成するためのダイの小孔の孔径を変更し、二酸化炭素圧力と発泡温度を表2に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。また、実施例1と同様にして成形体を得た。
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂1をポリプロピレン系樹脂4(略称PP4)に変更し、含浸圧力と発泡温度を表2に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。また、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、PP4は、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、そのモノマー成分含有量などを表1に示す。
(比較例4)
ポリプロピレン系樹脂1をポリプロピレン系樹脂5(略称PP5)に変更し、含浸圧力と発泡温度を表2に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。また、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、PP5は、エチレン-プロピレン共重合体であり、そのモノマー成分含有量などを表1に示す。
表2~表3より理解されるように、実施例1~3の発泡粒子によれば、外観が良好であるとともに、圧縮時の強度にも優れる成形体を幅広い成形圧で作製できる。さらに、養生工程を省略しても外観が良好で、機械的強度に優れた成形体を作製できる。

Claims (10)

  1. 貫通孔を有する筒形状のポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
    上記発泡粒子の上記貫通孔の平均孔径dが1mm未満であるとともに、上記発泡粒子の平均外径Dに対する上記平均孔径dの比d/Dが0.4以下であり、
    上記発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂がエチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、
    上記エチレン-プロピレン-ブテン共重合体におけるブテン成分含有量とエチレン成分含有量との合計量が2質量%以上15質量%以下であるとともに、上記エチレン成分含有量[質量%]に対する上記ブテン成分含有量[質量%]の比が2以上であり、
    上記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が800MPa以上である、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  2. 上記エチレン-プロピレン-ブテン共重合体における上記ブテン成分含有量と上記エチレン成分含有量との合計量が6質量%を超え15質量%以下であるとともに、上記ブテン成分含有量が6質量%以上15質量%未満である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  3. 上記エチレン成分含有量[質量%]に対する上記ブテン成分含有量[質量%]の比が6以上である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  4. 上記エチレン-プロピレン-ブテン共重合体における上記エチレン成分含有量が0.05質量%以上3質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  5. 上記ポリプロピレン系樹脂の融点が135℃以上145℃以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  6. 上記平均外径Dが2mm以上5mm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  7. 上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均肉厚tが1.2mm以上2mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  8. 上記比d/Dが0.25以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  9. 上記発泡粒子の見掛け密度が、10kg/m3以上100kg/m3以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子が相互に融着した発泡粒子成形体であって、連通した空隙を有する、発泡粒子成形体。
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