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JP2022093150A - 洗浄用溶剤組成物 - Google Patents

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JP2022093150A
JP2022093150A JP2020206275A JP2020206275A JP2022093150A JP 2022093150 A JP2022093150 A JP 2022093150A JP 2020206275 A JP2020206275 A JP 2020206275A JP 2020206275 A JP2020206275 A JP 2020206275A JP 2022093150 A JP2022093150 A JP 2022093150A
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JP
Japan
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cleaning
steam
solvent composition
tank
component
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Pending
Application number
JP2020206275A
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English (en)
Inventor
昌平 河野
Shohei Kono
和音 小柳津
Kazune Koryuzu
旻又 金子
Binsuke Kaneko
清 嶋田
Kiyoshi Shimada
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kaneko Chemical Co Ltd
Original Assignee
Kaneko Chemical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】 循環使用した場合でも組成バランスが崩れにくく、繰り返し使用可能であり、かつ様々な油性汚れ及び油が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄用共沸溶剤組成物を用いた、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる工程を含む洗浄方法を提供する。【解決手段】 本発明は、(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、(B)(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルとを含む洗浄用溶剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部以上30重量部未満である、洗浄用溶剤組成物を用いた、被洗浄物の洗浄方法であって、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる工程を含む洗浄方法に関する。【選択図】 なし

Description

本発明は、洗浄用溶剤組成物に関する。
ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロフルオロエーテルは、複数の洗浄分野(油脂洗浄、フラックス洗浄、塵埃洗浄、水分除去溶剤、ドライクリーニング溶剤、反応溶剤、潤滑剤等の希釈溶剤など)で使用されてきたHCFC-225の代替として期待されている。ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロフルオロエーテルは、いずれも引火点がなく、不燃性である。特許文献1には、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロフルオロエーテルを含む洗浄剤組成物及びそのエアゾール組成物が記載されている。また、特許文献2には、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロフルオロエーテルを含む洗浄剤組成物が、樹脂への影響が小さく、油脂類等への溶解性に優れることが記載されている。
特開2017-200989号公報 特開2017-043742号公報
しかしながら、特許文献1及び2には、ハイドロフルオロオレフィンとハイドロフルオロエーテルとの混合物を洗浄機で循環使用する場合に、混合物の液バランスがどのように変動するかについて知見が開示されていなかった。特に蒸気洗浄、蒸気リンス、蒸気乾燥等の洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる工程を含む洗浄方法においては、洗浄機で循環使用する場合に混合物の液バランスが大きく変動することが問題となる場合があった。
よって、本発明は、循環使用した場合でも組成バランスが崩れにくく、繰り返し使用可能であり、かつ様々な油性汚れ及び油が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄用溶剤組成物を用いた、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる工程を含む洗浄方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1](A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
(B)(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルと
を含む洗浄用溶剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部以上30重量部未満である、洗浄用溶剤組成物を用いた、被洗浄物の洗浄方法であって、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる工程を含む洗浄方法。
[2](B)成分が1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルである、[1]の洗浄方法。
[3]洗浄用溶剤組成物の液温度と蒸気温度の差が2.5℃未満である洗浄用溶剤組成物を用いた、[1]又は[2]の洗浄方法。
[4]油性汚れ及び油からなる群より選択される1種以上が基材に付着した被洗浄物を洗浄するための、[1]~[3]のいずれかの洗浄方法。
[5]蒸気接触工程における蒸気槽の液温度が38~60℃である、[1]~[4]のいずれかの洗浄方法。
[6]被洗浄物の基材が、プラスチック及びゴムからなる群より選択される1種以上を含む、[1]~[5]のいずれかの洗浄方法。
[7][1]~[6]のいずれかの洗浄方法のための、蒸気接触槽又は蒸気接触エリア。
[8][1]~[6]のいずれかの洗浄方法のための、蒸気発生槽。
本発明により、循環使用した場合でも組成バランスが崩れにくく、繰り返し使用可能であり、かつ様々な油性汚れ及び油が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄用共沸溶剤組成物を用いた、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる工程を含む洗浄方法が提供される。
図1は、洗浄システム1の概略を示す図である。 図2は、洗浄システム2の概略を示す図である。 図3は、洗浄システム3の概略を示す図である。 図4は、洗浄システム4の概略を示す図である。
(用語の定義)
「(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」を「(A)」又は「(A)成分」という場合がある。他の成分についても同様である。
数値範囲に関して「~」は、その両端の値を含むことを意味する。即ち、「8~28部」は、「8重量部以上28重量部以下」を意味する。また、「以下」は「同じ又は未満」を意味し、「以上」は「同じ又は超える」を意味する。
[洗浄方法]
洗浄方法は、(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、(B)(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルとを含む洗浄用溶剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部以上30重量部未満である、洗浄用溶剤組成物を用いた、被洗浄物の洗浄方法であって、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる蒸気接触工程を含む。
[洗浄用溶剤組成物]
洗浄用溶剤組成物(以下、単に「溶剤組成物」ともいう。)は、(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、(B)(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルとを含む洗浄用溶剤組成物であって、(A)成分と(B)成分との合計を100重量部としたときに、(A)が8重量部以上30重量部未満である。
本発明者らは、特定のハイドロフルオロオレフィンとハイドロフルオロエーテルの組み合わせにおいて、(A)成分に対して、疑似共沸状態となる(B)を用いることで、循環使用した場合でも組成の変化が少なく、様々な油又は油汚れが付着した被洗浄物を洗浄可能であることを見出した。
ここで、「(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテル」とは、洗浄用溶剤組成物の液温度と蒸気温度の差が2.5℃未満であることを意味する。ここで、液温度と蒸気温度とが測定される洗浄用溶剤組成物は、油等の汚れを含まない状態であるものとする。具体的には、洗浄装置の蒸気槽において、洗浄用溶剤組成物の液温度と蒸気温度とを測定することができる。よって、洗浄方法に適用され、油性汚れ等を含む洗浄用溶剤組成物の液温度と蒸気温度の差とは異なりうる。循環使用した場合でも組成の変化がより少なくなる観点から、洗浄用溶剤組成物の液温度と蒸気温度の差が2℃以内であることが好ましい。
<(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン>
(A)成分は、沸点が39℃であり、洗浄用溶剤組成物の主剤である。(A)成分の市販品として、CELEFIN(登録商標)1233Z(HCFO-1233zd(Z)、HFO-1233zd(Z))(セントラル硝子株式会社製)が挙げられる。
<(B)(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテル>
(B)成分としては、(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルであれば特に限定されない。ハイドロフルオロエーテル(HFE)類は、炭素原子、フッ素原子、水素原子及びエーテル結合(-O-)を含む化合物である。(B)成分としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルが挙げられる。1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルは、沸点が56℃であり、1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、HFE-347pc-fとも呼ばれる。1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルの沸点は、(A)成分の沸点と約17℃離れているにも関わらず、(A)成分と特定の組成で組み合わせた場合に、洗浄用溶剤組成物の液温度と蒸気温度の差を2.5℃未満とすることができることが見出された。また、(A)成分と特定の組成で組み合わせた場合に、油性汚れ及び油が付着した被洗浄物を洗浄性がより高まる点で、(B)成分は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルであることが特に好ましい。
<(A)及び(B)以外の成分>
洗浄用溶剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分及び(B)成分以外の(C)更なる成分及び(D)添加剤を含むことができる。
<<(C)更なる成分>>
(C)更なる成分としては、(c1)ニトロ化合物、(c2)エーテル、(c3)エステル((c2)エーテルを除く)、(c4)アルコール((c2)エーテルを除く)、(c5)アミド化合物、(c6)クロロオレフィン、(c7)ハイドロフルオロオレフィン、(c8)ハイドロブロモカーボン、(c9)ハイドロフルオロカーボン、(c10)ハイドロフルオロエーテル((B)成分を除く)、(c11)炭化水素及び(c12)塩素化炭化水素((c6)クロロオレフィン及び(c11)炭化水素を除く)が挙げられる。
≪(c1)ニトロ化合物≫
(c1)ニトロ化合物は、分子中に1以上のニトロ基を有する化合物であれば特に限定されない。(c1)成分としては、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン等のニトロアルカンが挙げられる。
≪(c2)エーテル≫
(c2)エーテルとしては、炭素原子、水素原子及びエーテル結合(-O-)を含み、直鎖又は分岐状であってもよく、環状又は非環状であってもよい、エーテル系溶剤である。なお、(c2)成分は、グリコール類を含む。(c2)成分の具体例としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、1,2-ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロペンテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエチレングリコールジメチルエーテル(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、モノプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル等が挙げられる。
≪(c3)エステル((c2)エーテルを除く)≫
(c3)エステル((c2)エーテルを除く)としては、例えば、モノエステル系溶剤、カルボニル基を二つ有するエステル系溶剤、炭酸エステル系溶剤及び環状エステル系溶剤が挙げられる。また、(c3)成分の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、大豆脂肪酸メチルエステル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、二塩基酸エステル(DBE)、アセト酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、しゅう酸ジメチル、しゅう酸ジエチル等が挙げられる。
≪(c4)アルコール((c2)エーテルを除く)≫
(c4)アルコール((c2)エーテルを除く)としては、モノアルコール系溶剤が挙げられる。また、(c4)成分の具体例としては、エタノール、メタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、ターシャリーブタノール、セカンダリーブチルアルコール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、2-プロピン-1-オール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
≪(c5)アミド化合物≫
(c5)アミド化合物は、アミド結合を有する環状又は非環状の化合物である。(c5)成分としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド等が挙げられる。
≪(c6)クロロオレフィン≫
(c6)クロロオレフィンは、炭素原子及び塩素原子を含み、水素原子及び/又はフッ素原子を含んでいてもよい、オレフィン化合物である。(c6)成分としては、水素原子を含むハイドロクロロオレフィンであるtrans-1,2-ジクロロエチレン及びトリクロロエチレン、水素原子を含まないテトラクロロエチレン(パークロロエチレン)及び1,1-ジクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(CFO-1214ya)、1,1,2-トリクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CFO-1213xa)等が挙げられる。
≪(c7)ハイドロフルオロオレフィン≫
(c7)ハイドロフルオロオレフィンは、塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハロゲン化フルオロオレフィン化合物である。(c7)成分としては、(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(E))、(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(Z))、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223za)、(Z)-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(Z))、(E)-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(E))、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(E))、(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz(Z))等が挙げられる。ハイドロフルオロオレフィンは、(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(E))又は(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(Z))が好ましい。ハイドロフルオロオレフィン類の市販品として、AMOLEA(登録商標) AS-300(AGC株式会社製)((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd(E))、(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd(Z))及び安定剤の混合物))等が挙げられる。
≪(c8)ハイドロブロモカーボン≫
(c8)ハイドロブロモカーボンは、炭素原子、臭素原子及び水素原子のみからなる化合物である。(c8)成分としては、ノルマルプロピルブロマイド(1-ブロモプロパン)、イソブチルブロマイド等が挙げられる。
≪(c9)ハイドロフルオロカーボン≫
(c9)ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、炭素原子、フッ素原子及び水素原子のみからなる化合物であり、炭素-炭素二重結合を有さない化合物である。(c9)成分としては、例えば、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(HFC-c447ef)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC-43-10mee)が挙げられる。(c1)成分の市販品として、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンの市販品としてはソルカン(登録商標)365mfc(日本ソルベイ株式会社製)等が、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンについてはゼオローラ(登録商標)H(日本ゼオン株式会社製)が挙げられる。
≪(c10)ハイドロフルオロエーテル((B)成分を除く)≫
(c10)ハイドロフルオロエーテル(HFE)は、炭素原子、フッ素原子、水素原子及びエーテル結合(-O-)を含む化合物であり、(B)成分以外である。(c10)成分としては、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、1,1,1,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ブタン、メチルパーフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。
≪(c11)炭化水素≫
(c11)炭化水素は、炭素及び水素のみからなり、直鎖又は分岐状であってもよく、環状又は非環状であってもよく、炭素-炭素二重結合を有していてもよい、炭化水素系溶剤である。(c11)成分としては、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソヘプタン、シクロヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、リモネン、2-メチル-2-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、3-エチル-2-ブテン、2,3-ジメチル-2-ブテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、2,4,4-トリメチル-2-ペンテン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、イソドデカン、イソパラフィン類、ナフテン類、芳香族系炭化水素等が挙げられる。炭化水素系溶剤は、合成物であってもよい。
≪(c12)塩素化炭化水素((c6)クロロオレフィン、(c7)ハイドロフルオロオレフィン及び(c11)炭化水素を除く)≫
(c12)塩素化炭化水素((c6)クロロオレフィン、(c7)ハイドロフルオロオレフィン及び(c11)炭化水素を除く)は、塩素原子及び炭素原子を含み、水素原子を含んでいてもよい炭化水素系溶剤である。(c12)成分としては、塩化メチレン等が挙げられる。
(C)更なる成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
<<(D)添加剤>>
(D)添加剤は、(C)成分以外の成分であって、洗浄用溶剤組成物の分野で慣用されている成分であれば特に制限されない。(D)添加剤としては、水、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、消泡剤、界面活性剤及びキレート剤等からなる群より選択される1種以上が挙げられる。なお、(D)成分として振舞う(C)成分は、(D)成分に含むものとする。
紫外線吸収剤及び酸化防止剤は、洗浄用溶剤組成物の長期保存等における安定性を向上させる成分である。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系等酸化防止剤が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタドデシル-3-[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート]、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、N,N-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン誘導体、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル)イソシアヌレート等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤は、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、ジラウリル-3,3-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3-ジオジプロピオネート、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3-チオジプロピオネート、2-メルカプトベンズイミダゾール、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等が挙げられる。リン系酸化防止剤は、トリス-ノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(イソデシル)フォスファイト等が挙げられる。
キレート剤は、アミノカルボン酸系のキレート剤が挙げられ、ヒドロキシエチルアミノ酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸やそれらの塩等が好ましい。
防錆剤は、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミンが挙げられる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤が挙げられ、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤等が好ましい。
上記した成分以外の添加剤は、洗浄用溶剤組成物の分野で慣用されている成分であれば特に限定されず、適宜用いることができる。
(D)添加剤は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
<洗浄用溶剤組成物の組成>
洗浄用溶剤組成物において、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部以上30重量部未満である。(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部未満である場合、洗浄性が劣る傾向がある。(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が30重量部以上である場合、基材のダメージ性が生じる場合がある。基材のダメージ性の低減及び洗浄性の観点から、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分は8~28重量部であることが好ましく、10~28重量部であることが特に好ましい。また、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分は8~18重量部であってもよく、9~17重量部であってもよく、9~14重量部であってもよい。
洗浄用溶剤組成物としての効果がより優れる観点から、洗浄用溶剤組成物の総量を100重量部としたときに、(A)成分と(B)成分の合計が80重量部以上であることが好ましく、85重量部以上であることがより好ましく、90重量部以上であることが特に好ましい。
[洗浄用溶剤組成物の製造方法]
洗浄用溶剤組成物の製造方法は任意である。洗浄用溶剤組成物に含まれる原料成分を、公知の方法を適宜選択して行うことで、例えば、撹拌、混合、溶解及び分散からなる群より選択される1種以上の手段を行うことで製造することができる。
[洗浄用溶剤組成物の用途]
洗浄用溶剤組成物は、油、フラックス及び/又は未硬化の樹脂の溶解性に優れることから、油性汚れ、油、フラックス及び未硬化の樹脂からなる群より選択される1種以上が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄剤として用いることができる。洗浄方法は、油性汚れ及び油からなる群より選択される1種以上が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄方法であることが特に好ましい。
<<油>>
油としては、鉱物油、植物油、動物油、重質油、ワックス、シリコーンオイル及びフッ素オイル等が挙げられる。これらの油は、例えば切削油、プレス油、引抜き油、熱処理油、防錆油、潤滑油、金属加工油、グリース、アスファルト、水溶性油として用いられている場合がある。
鉱物油としては、特に制限はなく、市販品としてはプーリーSFオイル(出光興産株式会社製)が挙げられる。植物油としては、オリーブ油、アマニ油、キリ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、ヤシ油、コーン油及び脱水ヒマシ油等が挙げられる。植物油を構成する脂肪酸は、C12~C18の飽和又は不飽和脂肪酸であり、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエレオステアリン酸等が挙げられる。動物油としては、魚油、鯨油、豚脂、牛脂等が挙げられる。重質油としては、アスファルテン等が挙げられる。樹脂としては、ピッチ、松脂等が挙げられる。ワックスとしては、植物系、動物系、石油系、合成炭化水素系が挙げられる。
シリコーンオイルとは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであるシリコーンオイルであり、主にジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルの側鎖又は末端に、カルボキシル基、アミノ基、ポリエーテル基又はエポキシ基などの他の有機基を導入したものであってもよい。このようなシリコーンオイルの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリオキシエチレン-メチルポリシロキサンなどが挙げられる。このようなシリコーンオイルとしては、市販品として、信越化学株式会社製KF-96L-2CS、KF-6012等が挙げられる。
フッ素オイルとは、ポリアルキルエーテル化合物における水素原子の一部又は全部をフッ素で置換した物質であり、塩素及び臭素等のハロゲン、リン、硫黄、及び窒素などの更なる原子を含んでいてもよい。フッ素オイルの市販品としては、例えばソルベイソレクシス株式会社製のフォンブリン Y-LVAC、Y-HVAC、Y04、及びYR;NOKクリューバー株式会社製のバリエルタ(BARRIERTA)J100フルード、バリエルタJ25フルード、バリエルタJ400フルード、バリエルタJ25V、バリエルタSJ07、バリエルタSJ15、及びバリエルタSJ30;デュポン株式会社製のクライトックス1506、クライトックス1514、及びクライトックス1525;ダイキン工業株式会社製のデムナムS-20等が挙げられる。
水溶性油は、エマルジョン型、ソリュブル型、ソリューション型に大別される。エマルジョン型は鉱油や脂肪油などの水に不溶な油と界面活性剤とを主成分とし、水で希釈した場合に乳白色のエマルジョンを形成する。ソリュブル型も水に不溶な油と界面活性剤を含有するが、水で希釈した場合に透明~半透明になる。ソリューション型は水溶性の無機塩等を主成分とし、水で希釈した場合には透明となる。また、シリコーンオイルと界面活性剤と水とを混合したエマルジョン型シリコーンオイルもある。
<<フラックス>>
フラックスとしては、ロジン系のフラックスが挙げられる。ロジン系フラックスは、ロジン(アビエチン酸を主成分とする樹脂酸)及び変性ロジン等のロジン類を主成分とする非活性ロジンフラックス;前記ロジン類と、アミン化合物の無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩)及び有機酸からなる群より選択される1種以上の活性化剤とを主成分とする活性ロジンフラックスが挙げられる。アミン化合物の無機酸塩は、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエチレンテトラアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、塩酸アニリン等が挙げられる。有機酸は、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、マレイン酸等のカルボン酸(ジカルボン酸を含む。);オキシ酸(ヒドロキシカルボン酸)等が挙げられる。
また、フラックスは、ハンダ用金属とロジンフラックスが一体となったクリームハンダの形態で提供される場合がある。クリームハンダは、ハンダ合金粉末、樹脂、活性剤、酸化防止剤、チクソ剤、及び溶剤を含む組成物であり、いわゆる金属粉末とフラックス成分からなる。
<<樹脂>>
未硬化の樹脂における樹脂としては、特に限定されず、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチロール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等が挙げられる。
ウレタン樹脂としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、及びジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)等のジイソシアナートと、ポリプロピレングリコール等のポリオール類との反応生成物が挙げられる。ウレタン樹脂がフォーム状である場合、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォームのいずれであってもよい。ウレタン樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、褶動性改良剤、及び耐衝撃性改良剤等が挙げられる。ウレタン樹脂の硬化物は、断熱材や電子基板用コーティング剤等に使用される。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多塩基酸のポリグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びヒダントイン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として通常使用されているものであればいずれであってもよく、例えばフェノールノボラック、ビフェノール型ノボラック、及びビスフェノールA型ノボラック等のノボラック、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、及びヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、並びにポリアミドアミン等のアミド樹脂等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば第三級アミン類又は有機リン化合物が挙げられる。エポキシ樹脂の硬化物は、接着剤や電子基板用ポッティング剤等に使用される。
アクリル樹脂としては、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。アクリル樹脂は、フッ素原子を有さないことが好ましく、ハロゲン原子を有さないことが特に好ましい。アクリル樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。アクリル樹脂は、加工性が良く、透明性も優れることから、アクリル樹脂の硬化物は、風防ガラス、航空機・船舶・自動車等の窓、水槽、レンズ、照明器具、ディスプレー、看板等に使用される。
スチロール樹脂は、スチレンをモノマーとするポリマーであり、その硬化物はポリスチレンとも呼ばれる。スチロール樹脂がフォーム状である場合、スチロール樹脂の硬化フォームは、発泡スチロールとも呼ばれる。スチロール樹脂に配合される添加剤としては、発泡剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。スチロール樹脂の硬化物は、自動車用ランプレンズやカバー等に使用される。
シリコーン樹脂は、有機珪素化合物の高縮合体であり、ジメチルシロキサンやメチルフェニルシロキサンの繰り返し構造を有する。シリコーン樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。シリコーン樹脂の硬化物は、接着剤やコーティング剤等に使用される。
ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルの単独重合体又は塩化ビニルと更なるビニルモノマーとの共重合体である。ポリ塩化ビニル樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂の硬化物は、パイプや床材等の建築資材等に使用される。
ポリカーボネート樹脂は、熱可塑性プラスチックの一種である。モノマー単位同士の接合部が、カーボネート基(-O-(C=O)-O-)で構成される。ポリカーボネート樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の硬化物は、自動車等の部材等に幅広く用いられており、ルーフ、ヘッドランプレンズ等に使用される。
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂は、ゴム質の重合体であるポリブタジエンが分散された、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体であるアクリロニトリル・スチレン系共重合体であり、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの三成分を主体とする。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂の硬化物は、自動車等の内装及び外装部材等に幅広く用いられており、ホイールキャップ、ホイールカバー、ダッシュボード等に使用される。
<<油性汚れ>>
油性汚れとしては、油汚れ、フラックスの汚れ、未硬化の樹脂の汚れが挙げられる。油性汚れの原料となる、油、フラックス及び未硬化の樹脂は、前記したとおりである。油性汚れは、塵埃を含んでいてもよい。油性汚れとしては、前記した油の極性に応じて、非極性の油性汚れ、極性成分による油性汚れ、及び極性の異なる複数の成分による油性汚れが挙げられる。また、フラックスの汚れは、フラックス成分であるロジン、アミン化合物の無機酸塩、有機酸、及び前記成分が高温でのリフローにより一部変質又は炭化した成分を含む。さらに、クリームハンダの汚れは、前記フラックス成分の汚れ及び金属粉末を含む。また、樹脂の汚れは、樹脂成分及び併用される成分の極性に応じて、非極性の樹脂汚れ、極性成分による油性汚れ、及び極性の異なる複数の成分による油性汚れが挙げられる。油性汚れは、油汚れであることが好ましい。
<洗浄方法>
洗浄用溶剤組成物を用いた洗浄方法(即ち、洗浄用溶剤組成物の使用方法)は、洗浄用溶剤組成物の蒸気を被洗浄物と接触させる蒸気接触工程を含む。被洗浄物は、油性汚れ及び/又は油が基材に付着している。蒸気接触工程により、基材に付着した、油性汚れ及び/又は油は、基材から除去される。なお、油性汚れが塵埃等の固形の汚れを含む場合、この固形の汚れは、油性汚れの除去と同時に除去され得る。
<基材>
基材の材質は、特に制限されないが、金属、繊維、ガラス、陶器、ゴム、プラスチック等が挙げられる。金属としては、銀、亜鉛、ニッケル、鉄、アルミニウム、銅、マンガン、マグネシウム、ステンレス、アルミニウム合金(アルミニウムと、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛及びニッケルからなる1種以上の金属との合金)等が挙げられる。ゴムとしては、ニトリルゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系)等が挙げられる。プラスチックとしては、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ウレタン樹脂等が挙げられる。なお、前記した油性汚れ、油、フラックス、未硬化の樹脂等が基材から除去される限り、基材はプラスチックであってもよい。被洗浄物の基材は、プラスチック及び/又はゴムを含むことが好ましく、プラスチック及び/又はゴムのみからなることが特に好ましい。
基材の具体例としては、前記樹脂の硬化物を得るための装置及びその部品、金属加工物、電気・電子部品、光学部品、自動車部品、機械部品、半導体部品及び表示体部品等が挙げられる。
電気・電子部品としては、プリント基板、及びセラミック基板などの配線基板が挙げられる。光学部品としては、光学レンズ(例えばカメラ用のレンズ)及び光学レンズのための部品(例えばカメラ筐体)が挙げられる。自動車部品としては、自動車用のシャフトやフレーム部品、外装部品等に用いられる金属製部品が挙げられる。機械部品としては、真空ポンプ、半導体製造装置、洗浄装置、モーター、ファンなどの軸受、時計などの精密機械用部品などの軸受、並びに印刷機のローラー等の部品が挙げられる。半導体関連部品としては、ICチップ、抵抗器、などの電子部品が挙げられる。表示体部品としては、液晶基板、有機EL基板、無機EL基板などが挙げられる。これらの部品の形状は板状部材に限らず、断面円形状や矩形状のパイプ状部材や長尺部材であったり、その他、複雑な形状を有する部材であったりする。
なお、被洗浄物は、日常的なメンテナンス用、1日に1回~2回洗浄される被洗浄物であるか、オーバーホール用、例えば6か月~1年に1回洗浄される被洗浄物であってもよい。
<蒸気接触工程>
蒸気接触工程は、溶剤組成物から前記溶剤組成物の蒸気を発生させて、前記発生させた蒸気と被洗浄物とを接触させる方法を含む工程であれば特に限定されない。蒸気接触工程としては、蒸気洗浄、蒸気リンス、蒸気乾燥、又はこれらの組み合わせが挙げられ、目的に応じて、適宜選択できる。
蒸気接触工程において、蒸気槽の液温度は、溶剤組成物の沸点に応じて適宜設定できるが、38~60℃であることが好ましく、40~58℃であることがより好ましく、45~56℃であること更に好ましく、溶剤組成物の沸点以上であることが特に好ましい。このような温度とすることで、溶剤組成物の蒸気を効率的に発生させることができる。前記の蒸気槽の液温度は、油等の汚れを含んでいない場合の蒸気槽の液温度であることが好ましい。
<更なる洗浄方法>
洗浄方法は、更なる工程として、浸漬洗浄、シャワー洗浄、超音波洗浄、拭き取り洗浄、バレル洗浄、スプレー洗浄、かけ洗い又はこれらの組み合わせの工程を含んでいてもよい。ここで、シャワー洗浄、超音波洗浄等の更なる工程の条件は、適宜設定できる。洗浄方法は、溶剤組成物に物品を浸漬する浸漬工程と、前記蒸気接触工程とを含むことが好ましい。
浸漬工程において、油等の汚れを含んでいない場合の溶剤組成物の液温度は、溶剤組成物の沸点に応じて適宜設定できるが、15~60℃であることが好ましく、20~54℃であることが特に好ましい。また、次工程が蒸気接触工程の場合、浸漬工程における溶剤組成物の温度は、蒸気接触工程の液温度よりも5℃以上低いことが好ましい。このような温度とすることで、被洗浄物から効率的に汚れを除去することができる。
洗浄用溶剤組成物及び被洗浄物の接触時間に相当する洗浄時間は、基材から油性汚れ及び/又は油を除去できる時間であれば特に制限されない。例えば、洗浄時間は、1秒以上2時間以下であってもよい。蒸気接触工程も同様であるが、接触工程は1秒以上2時間以下であってもよく、発生している蒸気を通過するだけでもよい。
[洗浄方法に用いられる洗浄システム]
洗浄方法に用いられる洗浄システム(洗浄装置)としては、特に限定されず、例えば、特開2008-163400号公報、特開2015-217319号公報に開示された、洗浄剤を収納し被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、洗浄剤の蒸気を発生させる蒸気槽とを有する洗浄装置が挙げられる。また、洗浄方法に用いられる好ましい洗浄システムの例について説明する。
(1)洗浄システム1
洗浄システム1は、単槽式洗浄機である。(A)成分と(B)成分とを含む洗浄用溶剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ当該洗浄用溶剤組成物の蒸気を発生させる煮沸槽と、煮沸槽により発生した当該洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムである。
洗浄システム1の概略を図1に示す。洗浄システム1は、好ましくは、(A)成分と(B)成分とを含む洗浄用溶剤組成物(図1中、1)が収容される煮沸槽(図1中、11)と、煮沸槽から発生した、洗浄用溶剤組成物の蒸気(図1中、2)を液化して、回収する回収部(例えば、図1中、21及び22)と、回収部により回収された回収液から、水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出して、抽出された当該洗浄用溶剤組成物を煮沸槽に供給する水分離器(図1中、23)を備えている。図1中、実線矢印は洗浄用溶剤組成物の流れを示す。
煮沸槽は被洗浄物を煮沸洗浄するための槽である。煮沸槽は、ベーパー槽や蒸気槽と呼ぶことがある。煮沸槽は、洗浄用溶剤組成物の蒸気を発生させる温度以上(好ましくは、洗浄用溶剤組成物の沸点以上)に維持するためのヒーター(図1中、24)を備えている。煮沸槽は、洗浄液に超音波振動を与える超音波振動子を有していてもよい。
洗浄システム1において、煮沸槽にポンプ及びフィルター回路を敷設することができる。洗浄システム1がポンプ及びフィルター回路を備えることにより、被洗浄物から除去される汚れが固形物である場合、煮沸槽に汚れが蓄積することが回避される傾向がある。
煮沸槽の上部には、煮沸槽により発生した洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化して回収する回収部が設けられている。回収部は、洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化する手段及び水分離器に液化した成分を供給する手段を備えていれば特に限定されない。
洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化する手段は、特に限定されないが、冷却パイプ(図1中、21)が好ましい。冷却パイプは、洗浄用溶剤組成物の蒸気の温度を下げて、液化する手段である。洗浄システムが冷却パイプを備えることにより、洗浄用溶剤組成物が洗浄システムから外部へ放出することがより低減される。冷却パイプの巻き数は3以上が好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることが更に好ましく、6以上であることが特に好ましい。
水分離器に液化した洗浄用溶剤組成物を供給する手段は、特に限定されないが、樋(図1中、22)が好ましい。樋は、冷却パイプ等により液化された洗浄用溶剤組成物を、水分離器に供給するために設けられる。ここで、洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化する手段により液化され、水分離器に供給される洗浄用溶剤組成物の液体を回収液という。
そして、洗浄用溶剤組成物は、後述する水分離器により抽出されて、再生液として再利用される。
水分離器は、回収液から水を分離して洗浄用溶剤組成物を抽出して煮沸槽に戻すために設けられる。水分離器による水分離の手段は、回収液から水を分離して、洗浄用溶剤組成物を抽出できるものであれば特に限定されず、比重分離、膜分離等が挙げられる。水分離器は、比重分離により洗浄用溶剤組成物を抽出するのが好ましい。
回収部が冷却パイプ及び樋を含み、水分離器による水分離の手段が比重分離である場合
の水分離器の構造の例は、特開2015-217319号公報に開示されたものが挙げられる。
洗浄システム1には、図示していないが、洗浄用溶剤組成物によるシャワー洗浄のための供給手段を有していてもよい。被洗浄物を煮沸洗浄及び/又は蒸気洗浄した後に、組成物でシャワー洗浄して被洗浄物表面に組成物を衝突させることで、洗浄効果がより向上する傾向がある。
<洗浄システム1を用いた洗浄方法>
洗浄システム1を用いた洗浄方法は、以下の工程:(1A)被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程と、(1B)被洗浄物を煮沸槽から発生した蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程とを含む。
工程(1A)は、被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程である。図1では、被洗浄物(図1中、S)を洗浄開始のS1の位置から、S2の位置に移動して、洗浄用溶剤組成物に浸漬する。工程(1A)において、被洗浄物は、組成物の液体と接触する。煮沸槽において、洗浄用溶剤組成物が沸騰状態となる、すなわち、煮沸洗浄においては、洗浄用溶剤組成物はヒーターなどの加熱手段によって加熱される。
煮沸洗浄において、洗浄効果を高めるために、浸漬と同時に、攪拌、揺動、超音波振動、又はエアバブリング等による手段を組み合わせることが好ましく、超音波振動による手段を組み合わせることがより好ましい。
工程(1B)は、被洗浄物を煮沸槽より発生した蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程である。図1では、被洗浄物をS2の位置から、煮沸槽の上部であるS4の位置に移動して、蒸気エリアに置く。蒸気エリアは、洗浄用溶剤組成物の蒸気からなる。工程(1B)では、被洗浄物を煮沸槽から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄が行われる。これにより、被洗浄物に付着した汚れ成分と、蒸気エリアの洗浄用溶剤組成物とが交換される。また、工程(1B)において、被洗浄物と洗浄用溶剤組成物とが接触することから、蒸気洗浄する工程によってリンス(蒸気リンス)が行われる。そののち、被洗浄物を洗浄終了のS5の位置に移動して、洗浄を終了する。
(2)洗浄システム2
洗浄システム2は、二槽式洗浄機である。(A)成分と(B)成分とを含む洗浄用溶剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬されて洗浄される超音波洗浄槽と、当該洗浄用溶剤組成物の蒸気を発生させる蒸気槽と、蒸気槽により発生した当該洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムである。
洗浄システム2の概略を図2に示す。洗浄システム2は、好ましくは、洗浄用溶剤組成物組(図2中、1)が収容される超音波洗浄槽(図2中、12)と、洗浄用溶剤組成物(図2中、3)が収容される蒸気槽(図2中、13)と、蒸気槽から発生した、洗浄用溶剤組成物の蒸気(図2中、2)を液化して、回収する回収部(例えば、図2中、21及び22)と、回収部により回収された回収液から、水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出して、抽出された当該洗浄用溶剤組成物を超音波洗浄槽に供給する水分離器(図2中、23)を備えている。洗浄システム2は、水分離器から洗浄用溶剤組成物が超音波洗浄槽に戻されることを除き、更に超音波洗浄槽を備える洗浄システム1に相当する。図2中、実線矢印は洗浄用溶剤組成物の流れを示す。
洗浄システム2における蒸気槽については、好ましいものも含め、洗浄システム1で前
記したとおりである。
超音波洗浄槽は、超音波振動を与える超音波振動子(図2中、25)を備えていることが望ましい。また、図示していないが、超音波洗浄槽は、組成物の温度を調節するためのヒーターを備えていてもよい。洗浄システム2において、被洗浄物から除去される汚れが固形物である場合、汚れの蓄積を回避する目的で、超音波洗浄槽にポンプ及びフィルター回路を敷設してもよい。
洗浄システム2において、水分離器により抽出された洗浄用溶剤組成物は超音波洗浄槽に供給される。また、超音波洗浄槽の液面は、蒸気槽の液面よりも高く、洗浄液が超音波洗浄槽から蒸気槽にオーバーフローするようになっている。
<洗浄システム2を用いた洗浄方法>
洗浄システム2を用いた洗浄方法は、以下の工程:(2A)被洗浄物を超音波洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄する工程と、(2B)被洗浄物を蒸気槽より発生する蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程とを含む。
工程(2A)は、被洗浄物(図2中、S)を超音波洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄する工程である。超音波の周波数は、特に限定されず、適宜設定できる。
工程(2B)は、被洗浄物を蒸気槽より発生する蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程である。図2では、被洗浄物をS2の位置から、蒸気槽の上部であるS4の位置に移動して、蒸気エリアに置く。そして、被洗浄物を、煮沸槽から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄を行う。工程(2B)における条件は、好ましいものも含め、工程(1B)で前記したとおりである。そののち、被洗浄物を洗浄終了のS5の位置に移動して、洗浄を終了する。
(3)洗浄システム3
洗浄システム3は、三槽式洗浄機である。(A)成分と(B)成分とを含む洗浄用溶剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬されて洗浄される超音波洗浄槽と、洗浄用溶剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬されてリンスされるリンス槽と、洗浄用溶剤組成物の蒸気を発生させる蒸気槽と、蒸気槽より発生した当該洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出してリンス槽に戻す水分離器と、を備える洗浄システムである。
洗浄システム3の概略を図3に示す。洗浄システム3は、好ましくは、洗浄用溶剤組成物(図3中、1)が収容される超音波洗浄槽(図3中、12)と、リンス液(図3中4)が収容されるリンス槽(図3中、14)と、洗浄用溶剤組成物(図3中、3)が収容される蒸気槽(図3中、13)と、蒸気槽から発生した、洗浄用溶剤組成物の蒸気(図3中、2)を液化して、回収する回収部(例えば、図3中、21及び22)と、回収部により回収された回収液から、水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出して、抽出された当該洗浄用溶剤組成物をリンス槽に供給する水分離器(図3中、23)を備えている。洗浄システム3は、更にリンス槽を備える洗浄システム2に相当する。図3中、実線矢印は洗浄用溶剤組成物の流れを示す。
洗浄システム3における超音波洗浄槽及び蒸気槽については、洗浄システム1及び洗浄システム2で前記したとおりである。リンス槽は被洗浄物をリンス洗浄するための槽である。リンス液は、洗浄用溶剤組成物である。図示していないが、リンス槽は超音波振動子を備えていてもよく、リンス液の温度を調節するためのヒーターを備えていてもよい。なお、蒸気の発生によるリンス液の減少を防ぐ観点から、リンス槽中のリンス液の温度は、リンス液の沸点未満であるのが好ましい。被洗浄物から除去される汚れが固形物である場合、汚れの蓄積を回避する目的で、リンス槽にポンプ及びフィルター回路を敷設してもよい。
洗浄システム3における形態の一つとして、水分離器によって抽出される洗浄用溶剤組成物は、リンス槽に流入する。また、リンス槽の液面は、超音波洗浄槽の液面よりも高く、リンス液がリンス液槽から超音波洗浄槽にオーバーフローするようになっている。さらに、超音波洗浄槽の液面は、蒸気槽の液面よりも高く、洗浄液が超音波洗浄槽から蒸気槽にオーバーフローするようになっている。
<洗浄システム3を用いた洗浄方法>
洗浄システム3を用いた洗浄方法は、以下の工程:(3A)被洗浄物を超音波洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄する工程と、(3B)被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程と、(3C)被洗浄物を蒸気槽より発生する蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程とを含む。
工程(3A)は、被洗浄物を超音波洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄する工程である。工程(3A)における条件は、好ましいものも含め、工程(2A)で前記したとおりである。
工程(3B)は、被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程である。図3では、被洗浄物をS2の位置から、S3の位置に移動して、リンス液に浸漬する。リンス槽に浸漬する時間、すなわちリンス液及び被洗浄物の接触時間に相当するリンス時間は、特に制限されず、1秒間~60分間であるのが好ましく、10秒~30分間であるのがより好ましい。工程(3B)により、被洗浄物にわずかに付着した洗浄剤組成物及び汚れ成分と、リンス液とが交換される。
工程(3C)は、被洗浄物を蒸気槽より発生する蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程である。図3では、被洗浄物をS3の位置から、蒸気槽の上部であるS4の位置に移動させる。そして、被洗浄物を、蒸気槽から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄を行う。蒸気洗浄の条件は、工程(1B)で前記したとおりである。
(4)洗浄システム4
洗浄システム4は、ワンサイクル型洗浄機である。(A)成分と(B)成分とを含む洗浄用溶剤組成物組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、被洗浄物が浸漬されて洗浄される超音波洗浄槽と、当該洗浄用溶剤組成物の蒸気を発生させる蒸気槽と、蒸気槽により発生した当該洗浄用溶剤組成物の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムである。
洗浄システム4の概略を図4に示す。洗浄システム4は、好ましくは、洗浄用溶剤組成物組(図4中、1)が収容される超音波洗浄槽(図4中、12)と、洗浄用溶剤組成物(図4中、3)が収容される蒸気槽(図4中、13)と、蒸気槽から発生した、洗浄用溶剤組成物の蒸気(図4中、2)を回収液化して回収部(例えば、図4中、21及び22)と、回収部により回収された回収液から、水を分離して当該洗浄用溶剤組成物を抽出して、抽出された洗浄用溶剤組成物を超音波洗浄槽に供給する水分離器(図4中、23)を備えている。洗浄システム4は、水分離器から洗浄用溶剤組成物が超音波洗浄槽に戻されること及び超音波洗浄槽で洗浄することを除き、更に超音波洗浄槽を備える洗浄システム1に相当する。図4中、実線矢印は洗浄用溶剤組成物の流れを示す。
洗浄システム4における超音波洗浄槽及び蒸気槽については、好ましいものも含め、洗浄システム1~3で前記したとおりである。
洗浄システム4において、水分離器により抽出された洗浄用溶剤組成物は超音波洗浄槽に供給される。また、超音波洗浄槽の液面は、蒸気槽の液面よりも高く、洗浄液が超音波洗浄槽から蒸気槽へオーバーフローするようになっている。
<洗浄システム4を用いた洗浄方法>
洗浄システム4を用いた洗浄方法は、以下の工程:(4A)被洗浄物を超音波洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄する工程と、(4B)被洗浄物を蒸気槽より発生する蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程とを含む。
工程(4A)は、被洗浄物(図4中、S)を超音波洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄する工程である。工程(4A)における条件は、好ましいものも含め、工程(2A)で前記したとおりである。
工程(4B)は、被洗浄物を蒸気槽より発生する蒸気エリアに置いて、蒸気洗浄する工程である。図4では、被洗浄物をS2の位置から、超音波洗浄槽の上部であるS4の位置に移動して、蒸気エリアに置く。そして、被洗浄物を、蒸気槽から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄を行う。工程(4B)における条件は、好ましいものも含め、工程(2B)で前記したとおりである。そののち、被洗浄物を洗浄終了のS5の位置に移動して、洗浄を終了する。
各洗浄システムには、蒸留再生装置が敷設されていてもよい。
[洗浄方法のための蒸気発生槽、蒸気接触槽又は蒸気接触エリア]
本発明の更なる態様は、(A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、(B)(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルと
を含む洗浄用溶剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部以上30重量部未満である、洗浄用溶剤組成物を用いた、被洗浄物の洗浄方法であって、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる蒸気接触工程を含む洗浄方法のための蒸気発生槽、蒸気接触槽又は蒸気接触エリアに関する(以下、単に、「洗浄方法のための蒸気発生槽」等という)。
洗浄方法のための蒸気発生槽としては、前記洗浄用溶剤組成物が収容され、前記洗浄用溶剤組成物の蒸気を発生させることができる槽であれば特に限定されず、前記した洗浄システム1の煮沸槽、前記した洗浄システム2~4の蒸気槽が挙げられる。前記洗浄方法のための蒸気発生槽は、更なる槽(例えば、洗浄システム3のリンス槽、洗浄システム4の超音波洗浄槽等)を備えた洗浄装置であってもよい。
洗浄方法のための蒸気接触槽は、前記の洗浄方法において、被洗浄物と前記の洗浄用溶剤組成物の蒸気とが接触できる領域を有する槽であって、基材に付着した油性汚れ及び/又は油が、基材から除去される蒸気接触工程が行われる槽であれば特に限定されず、前記した洗浄システム1の煮沸槽、前記した洗浄システム2~4の蒸気槽、前記した洗浄システム4の超音波洗浄槽が挙げられる。洗浄方法のための蒸気発生槽は、更なる槽を備えた洗浄装置であってもよい。
洗浄方法のための蒸気接触エリアは、前記の洗浄方法において、被洗浄物と前記の洗浄用溶剤組成物の蒸気とが接触できる領域である。即ち、洗浄方法のための蒸気接触エリアは、洗浄方法のための蒸気接触槽が備えている。蒸気接触エリアとしては、前記した洗浄システム1の煮沸槽上の蒸気エリア、前記した洗浄システム2~3の蒸気槽上の蒸気エリア、前記した洗浄システム4の超音波洗浄上の蒸気エリアが挙げられる。よって、洗浄方法のための蒸気接触エリアとしては、洗浄システム1~4を用いた洗浄方法で用いられる蒸気エリアであることが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、部は、重量部である。
(使用製品)
実施例で使用した成分は以下のとおりである。実施例及び比較例の組成物は、表の組成(重量%)にしたがって、以下の溶剤をそのまま用いるか、各溶剤を混合することにより調製した。
1.(A)成分
a-1:1233Z;シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z)、セントラル硝子株式会社製)
2.(B)成分
b-1:HFE-347pc-f:1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(AGC株式会社製、アサヒクリンAE-3000)
3.(A)及び(B)以外の成分
a’-1:AS-300;AMOLEA(登録商標) AS-300(AGC株式会社製)((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd(E))、(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd(Z))及び安定剤の混合物))
b’-1:Novec7100;3М(商標)Novec(商標)7100高機能性液体(スリーエムジャパン株式会社製)(メチルノナフルオロブチルエーテル20~80重量部とメチルノナフルオロイソブチルエーテル20~80重量部の混合物)
4.油等
(1)鉱物油:プーリーSFオイル(オザワ工業株式会社製)(鉱油90質量%以上100質量%未満、潤滑油添加剤10質量%未満、2,6-ジ-ターシャリー-4-クレゾール1質量%未満)
(2)フッ素オイル:フォンブリン Y25(ソルベイジャパン株式会社製)
(3)シリコーンオイル:ジメチルシリコーンオイル 1000CS(信越化学工業株式会社製、KF96-1000CS-1、粘度1000cSt)
5.樹脂片及びゴム片等
(1)PC:ポリカーボネート樹脂板(株式会社光製、200mm×300mm×0.5mm)
(2)ABS:ABS型樹脂板(株式会社タカチ電機工業製、200mm×300mm×1.0mm)
(3)PP:ポリプロピレン板(アズワン株式会社製、495mm×495mm×1.0mm)
(4)PE:ポリエチレン板(アズワン株式会社製、495mm×495mm×1.0mm)
(5)PET:仕切板 透明PET(株式会社MonotaRO製、50mm×100mm×380mm×1.0mm)
(6)PU:発泡ウレタンシート(株式会社イノアックコーポレーション製、1000mm×1000mm×10mm)
(7)NR:天然ゴムシート(和気産業株式会社製、100mm×100mm×1.0mm)
(8)CR:クロロプレンゴムシート(ノーブランド、モノタロウ注文コード35844207、100mm×100mm×1.0mm)
(9)EPDM:エチレン・プロピレンゴムシート(ノーブランド、モノタロウ注文コード35841985、100mm×100mm×1.0mm)
6.試験例
以下の試験例1~試験例7を行った。
試験例1:還流試験
JIS K2333に準ずる方法にて気相・液相の温度を測定した。300ml三つ口フラスコに各実施例・比較例の溶剤組成物を60ml入れ、上部には冷却管を取り付けホットプレートで加熱還流した。冷却管を通る冷却水は15℃以下で温度差は±2℃以内とし、3時間後の安定した気相・液相の温度を記録した。目盛りは0.5℃まで読んだ。
○:気相と液相の温度差が2.5℃未満である
×:気相と液相の温度差が2.5℃以上である
試験例2:洗浄試験
<被洗浄物の作製>
SUS304板(株式会社岩田製作所製、10mm×10mm×0.1mm)の表面に、鉱物油、フッ素オイル又はシリコーンオイルを1mg滴下し、1時間放置して、各オイルが付着した洗浄試験のサンプル(被洗浄物)を得た。
<試験方法>
(1)洗浄方法1
上部にSUS製冷却コイル(巻数9巻、管の外径6mm、冷却管を通る冷却水は室温(約20℃)であった)を取り付けた3Lビーカーに各実施例の溶剤組成物を500ml入れたものをシリコーンオイルバスを用いて沸点程度に沸騰させ、洗浄試験のサンプルを浸漬し、60秒間浸漬洗浄を実施した。その後、発生した蒸気に試験サンプルを60秒間晒した。その後、取り出した。なお、本試験方法に用いた装置は、前記した洗浄システム1に相当する。
(2)洗浄方法2
2槽式手動洗浄装置(株式会社ムラマツ製)中の超音波洗浄槽(液容量65L)に各実施例の溶剤組成物65Lを入れ、蒸気槽(液容量48L)に各実施例の溶剤組成物48Lを入れた。超音波洗浄槽に、洗浄試験のサンプルを浸漬し、60秒間超音波(600W、40kHz)をかけて、浸漬洗浄を実施した(液温は成行温度であり、蒸気槽の液温度よりも5~20℃低かった)。続いて、蒸気槽をヒーターを用いて沸点程度に沸騰させて発生した蒸気に試験サンプルを60秒間晒し、その後取り出した。なお、本試験方法に用いた装置は、前記した洗浄システム2に相当する。
(3)洗浄方法3
100mlビーカーに各実施例の溶剤組成物を10ml入れ、液温は室温(20℃)で洗浄試験のサンプルを浸漬し、60秒間超音波(60W、40kHz)をかけて、浸漬洗浄を実施した。その後、100mlビーカーに各実施例の溶剤組成物を10ml入れ、液温は室温(20℃)で洗浄サンプルを浸漬し、60秒間浸漬洗浄を実施した。その後、上部にSUS製冷却コイル(巻数9巻、管の外径6mm、冷却管を通る冷却水は室温(約20℃)であった)を取り付けた3Lビーカーに各実施例の溶剤組成物を500ml入れたものをシリコーンオイルバスを用いて沸点程度に沸騰させ、発生した蒸気に試験サンプルを60秒間晒し、その後取り出した。なお、本試験方法に用いた装置は、前記した洗浄システム3に相当する。
(4)洗浄方法4
100mlビーカーに各実施例・比較例の溶剤組成物を10ml入れ、液温は室温(20℃)で洗浄試験のサンプルを浸漬し、60秒間超音波(60W、40kHz)かけて、浸漬洗浄を実施した。その後、上部にSUS製冷却コイル(巻数9巻、管の外径6mm、冷却管を通る冷却水は室温(約20℃)であった)を取り付けた3Lビーカーに各実施例の溶剤組成物を500ml入れたものをシリコーンオイルバスを用いて沸点程度に沸騰させ、発生した蒸気に試験サンプルを60秒間晒し、その後取り出して肉眼又はHDМIデジタル実体顕微鏡STZ-161-TLED1080М(株式会社島津理化製)を用いて試験サンプル表面の観察を実施した。なお、本試験方法に用いた装置は、前記した洗浄システム4に相当する。
<洗浄性の評価>
試験サンプルを自然乾燥させた後、肉眼又はHDМIデジタル実体顕微鏡STZ-161-TLED1080М(株式会社島津理化製)を用いて試験サンプル表面の観察を実施した。
◎:肉眼でも顕微鏡観察においてもオイルの残存は認められなかった。
○:肉眼ではオイルの残存は認められなかった。顕微鏡観察において極僅かなオイル残存が認められたが、実用上問題なかった。
●:肉眼で極僅かなオイル残存が認められた。
×:肉眼で明らかなオイル残存が認められた。
試験例3:樹脂影響試験
300ml三つ口フラスコに各実施例・比較例を60ml入れ、試験サンプル各1個(50mm×5mm×0.5mm)を気相部分・液相部分に設置し、上部には冷却管を取り付けマントルヒーターで加熱還流した。冷却管を通る冷却水は15℃以下で温度差は±2℃以内であった。30分経過後、試験サンプルを取り出し、自然乾燥後、サンプルを以下の通り評価した。
(1)PC樹脂
○:樹脂表面の光沢や透明性は失われておらず、外観上のダメージも無かった。
×:何らかの外観上のダメージがあった。樹脂の表面が変化する又は崩壊した。
(2)ABS樹脂
○:重量変化率が1%未満であった。
×:重量変化率が1%以上であった。
試験例4:樹脂・ゴム影響試験
300ml三つ口フラスコに各実施例・比較例を60ml入れ、試験サンプル各1個(50mm×5mm×0.5mm、発泡ウレタン樹脂片のみ50mm×5mm×5mm)を気相部分・液相部分に設置し、上部には冷却管を取り付けマントルヒーターで加熱還流した。冷却管を通る冷却水は15℃以下で温度差は±2℃以内であった。1時間経過後、試験サンプルを取り出し、自然乾燥後、サンプルを以下の通り評価した。
◎:重量変化率が1%未満であった。
○:重量変化率が1%以上3%未満であった。
△:重量変化率が3%以上10%未満であった。
×:重量変化率が10%以上であった。
試験例5:各洗浄方法での洗浄性の比較
各実施例について、洗浄方法A~Cの各方法で洗浄試験を実施し、洗浄性を比較した。
<被洗浄物の作製>
SUS304板(株式会社岩田製作所製、10mm×10mm×0.1mm)を鉱物油、フッ素オイル又はシリコーンオイルのいずれかのオイル中に全没浸漬し、引き上げたものを洗浄サンプルとした。
<洗浄方法A>
100mlビーカーに各実施例の溶剤組成物を10ml入れ、液温は室温(20℃)で洗浄試験のサンプルを浸漬し、120秒間超音波(60W、40kHz)をかけて、浸漬洗浄を実施した。その後、上部にSUS製冷却コイル(巻数9巻、管の外径6mm、冷却管を通る冷却水は室温(約20℃)であった)を取り付けた3Lビーカーに各実施例の溶剤組成物を500ml入れたものをシリコーンオイルバスを用いて沸点程度に沸騰させ、発生した蒸気に試験サンプルを120秒間晒した。なお、洗浄方法Aに用いた装置は、前記した洗浄システム4に相当する。
<洗浄方法B>
100mlビーカーに各実施例の溶剤組成物を10ml入れ、液温は室温(20℃)で洗浄試験のサンプルを浸漬し、120秒間超音波(60W、40kHz)をかけて、浸漬洗浄を実施した。その後、別の100mlビーカーに各実施例の溶剤組成物を10ml入れ、液温は室温(20℃)で洗浄試験のサンプルを浸漬し、120秒間浸漬洗浄を実施した。
<洗浄方法C>
2枚重ねのティッシュペーパー(王子ネピア株式会社製)1組を、縦65mm、横72mmの大きさにしたものを、四つ折りにして各実施例の洗浄用組成物を染み込ませ、それを親指と人差し指で1回絞った。各溶剤組成物を染み込ませたティッシュペーパーを試験サンプル表面に接触させて手でこすることにより拭いた。この洗浄を4分間続けた。ティッシュペーパーが乾燥した場合には、別のティッシュペーパーに新たな各実施例の溶剤組成物を染み込ませ、使用した。
<洗浄性の評価>
試験サンプルを自然乾燥させた後、肉眼又はHDМIデジタル実体顕微鏡STZ-161-TLED1080М(株式会社島津理化製)を用いて試験サンプル表面の観察を実施した。
◎:肉眼でも顕微鏡観察においてもオイルの残存は認められなかった。
○:肉眼ではオイルの残存は認められなかった。顕微鏡観察において極僅かなオイル残存が認められたが、実用上問題なかった。
●:肉眼で極僅かなオイル残存が認められた。
×:肉眼で明らかなオイル残存が認められた。
試験例6:蒸気槽の液温度の比較試験
<被洗浄物の作製>
SUS304板(株式会社岩田製作所製、10mm×10mm×0.1mm)の表面に、鉱物油を1mg滴下し、1時間放置して、各オイルが付着した洗浄試験のサンプル(被洗浄物)を得た。
<洗浄方法>
100mlビーカーに各実施例の溶剤組成物を10ml入れ、液温は室温(20℃)で洗浄試験のサンプルを浸漬し、60秒間超音波(60W、40kHz)をかけて、浸漬洗浄を実施した。その後、上部にSUS製冷却コイル(巻数9巻、管の外径6mm、冷却管を通る冷却水は室温(約20℃)であった)を取り付けた3Lビーカーに各実施例の溶剤組成物を500ml入れたものをシリコーンオイルバスを用いて液温が表5に記載となるように加熱し、発生した蒸気に試験サンプルを60秒間晒した。なお、本洗浄方法に用いた装置は、前記した洗浄システム4に相当する。
<洗浄性の評価>
試験サンプルを自然乾燥させた後、肉眼又はHDМIデジタル実体顕微鏡STZ-161-TLED1080М(株式会社島津理化製)を用いて試験サンプル表面の観察を実施した。
◎:肉眼でも、顕微鏡観察においてもオイルの残存は認められなかった。
○:肉眼ではオイルの残存は認められなかった。顕微鏡観察において極僅かなオイル残存が認められたが、実用上問題なかった。
●:肉眼で極僅かなオイル残存が認められた。
×:肉眼で明らかなオイル残存が認められた。
試験例7:樹脂・ゴムの洗浄試験
<被洗浄物の作製>
各樹脂片又はゴム片(50mm×5mm×0.5mm、発泡ウレタン樹脂片のみ50mm×5mm×5mm)の表面に鉱物油又はシリコーンオイルを1mg滴下し、各オイルが付着した洗浄試験のサンプル(被洗浄物)を得た。
<洗浄方法>
2槽式手動洗浄装置(株式会社ムラマツ製)中の超音波洗浄槽(液容量65L)に各実施例の溶剤組成物65Lを入れ、蒸気槽(液容量48L)に各実施例の溶剤組成物48Lを入れた。超音波洗浄槽に、洗浄試験のサンプルを浸漬し、60秒間超音波(600W、40kHz)をかけて、浸漬洗浄を実施した(液温は成行温度であり、蒸気槽の液温度よりも5~20℃低かった)。続いて、蒸気槽をヒーターを用いて沸点程度に沸騰させて発生した蒸気に試験サンプルを60秒間晒し、その後取り出した。なお、本試験方法に用いた装置は、前記した洗浄システム2に相当する。
<洗浄性及びダメージ性の評価>
試験サンプルを1時間自然乾燥させた後、肉眼又はHDМIデジタル実体顕微鏡STZ-161-TLED1080М(株式会社島津理化製)を用いて試験サンプル表面の観察を実施した。
◎:目視上サンプルの外観変化はなく、重量変化率も3%未満(ABSについては1%未満)であった。肉眼でも、顕微鏡観察においてもオイルの残存は認められなかった。
○:目視上サンプルの外観変化はなく、重量変化率も3%未満(ABSについては1%未満)であった。肉眼ではオイルの残存は認められなかった。顕微鏡観察において極僅かなオイル残存が認められたが、実用上問題なかった。
●:目視上サンプルの外観変化はなく、重量変化率も3%未満(ABSについては1%未満)であった。肉眼で極僅かなオイル残存が認められた。
×:目視上サンプルの外観変化があった、及び/又は、重量変化率が3%以上(ABSについては1%以上)であった。あるいは、肉眼で明らかなオイル残存が認められた。
結果を、以下の表にまとめる。
Figure 2022093150000001
表1より以下のことがわかる。
実施例1~6の洗浄用溶剤組成物は、液温度と蒸気温度の差が2.5℃未満であり、b-1成分は(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルであった。また、実施例1~6の洗浄用溶剤組成物は、疑似共沸性に優れているため、循環使用した場合でも組成バランスが崩れにくく、繰り返し使用可能であるといえる。また、試験例2の結果より、実施例1~6では、様々な油、特に、フッ素オイル、鉱物油及びシリコーンオイルの洗浄性に優れていた。また、試験例3の結果より、実施例1~6では、基材へのダメージ性が抑えられていた。
また、実施例1~6と比較例1~4との比較により、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部以上30重量部未満であるときに、洗浄性に優れていた。
比較例5~14は、(A)成分と(B)成分以外のHFE系溶剤とを含む組成物を用いた例であり、気相及び液相の温度差が2.5℃以上であり、疑似共沸性に劣っており、循環使用した場合でも組成バランスが崩れやすいため、繰り返し使用可能であるといえない。さらに、実施例1及び2と比較例11及び12との比較により、(B)成分以外のハイドロフルオロエーテルを用いた比較例の溶剤組成物は、基材のダメージ性が生じていた。特に、比較例11及び比較例12において、PCに対して液相はダメージ性が抑えられていたが、気相ではダメージ性が生じていた。これは、比較例11及び比較例12の組成物が疑似共沸性に劣ることにより液相と気相の組成が大きく異なるためであると推測される。一方で、実施例1及び実施例2においては、疑似共沸性に優れていることにより液相及び気相の組成が近いため、PCに対して液相及び気相の両方でダメージ性が抑えられていた。また、比較例14では、鉱物油及びシリコーンオイルの洗浄性に劣っていた。
比較例15及び16は、(A)成分以外のHFO系溶剤又は(B)成分以外のHFE系溶剤を用いた例である。比較例15及び16では、フッ素オイル、鉱物油及びシリコーンオイルのいずれかの洗浄性に劣っていた。また、比較例16では、基材のダメージ性が生じていた。
比較例17~33は、(A)成分以外のHFO系溶剤を用いた例である。比較例17~25では、気相及び液相の温度差が4℃であり、疑似共沸性に劣っており、循環使用した場合でも組成バランスが崩れやすいため、繰り返し使用可能であるといえない。比較例33は、比較例25において、HFE系溶剤を変えた例である。比較例25及び33では、鉱物油及びシリコーンオイルの洗浄性に劣っていた。また、比較例17~33では、基材のダメージ性が生じていた。
Figure 2022093150000002
Figure 2022093150000003
表2~3より以下のことがわかる。
実施例7~12により、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8~28重量部である洗浄用溶剤組成物を用いた場合、各種基材へのダメージ性がより抑えられていた。
実施例13~15と実施例16~18との比較により、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8~15重量部である洗浄用溶剤組成物を用いた場合、各種基材へのダメージ性がより抑えられていた。
一方、比較例34は、(A)成分のみを用いたため、基材へのダメージ性が生じていた。また、比較例35は、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が30重量部である洗浄用溶剤組成物を用いたため、基材へのダメージ性が生じている場合があった。
Figure 2022093150000004
表4より以下のことがわかる。
実施例19~23により、洗浄方法が蒸気接触工程を含む場合、各種の油の洗浄性に優れていた。蒸気接触工程において、蒸気を発生させるための洗浄用溶剤組成物の液中に油が含まれていたとしても、一般的に油は高沸点であるため、蒸気中には油は含まれにくい。そのため、蒸気接触工程を含む洗浄方法では精密な洗浄が可能であった。一方で、比較例36~40により、洗浄方法が蒸気接触工程を含まない浸漬洗浄であるとき、洗浄用溶剤組成物の液中に油が含まれている場合、少なからず油を含む溶剤組成物が付着したまま自然乾燥させるため、極僅かなオイルの残存が認められた。
Figure 2022093150000005
表5より以下のことがわかる。
実施例24~25と実施例26との比較、実施例27~28と実施例29との比較、実施例30~31と実施例32との比較、及び、実施例33~34と実施例35との比較により、蒸気槽の温度が45℃以上である場合、鉱物油の洗浄性により優れていた。
Figure 2022093150000006
表6より以下のことがわかる。
実施例36~41により、基材が樹脂又はゴムである場合でも、様々な油、特に、鉱物油及びシリコーンオイルの洗浄性に優れていた。また、各種基材へのダメージ性もより抑えられていた。
1 洗浄用溶剤組成物、2 洗浄用溶剤組成物の蒸気、3 洗浄用溶剤組成物、4 リンス液、11 煮沸槽、12 超音波洗浄槽、13 蒸気槽、14 リンス槽、21 冷却パイプ、22 樋、23 水分離器、24 ヒーター、25 超音波振動子、
S 被洗浄物、S1~S5 被洗浄物

Claims (8)

  1. (A)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
    (B)(A)成分と混合したときに疑似共沸性を示すハイドロフルオロエーテルと
    を含む洗浄用溶剤組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分が8重量部以上30重量部未満である、洗浄用溶剤組成物を用いた、被洗浄物の洗浄方法であって、洗浄用溶剤組成物の蒸気と被洗浄物とを接触させる蒸気接触工程を含む洗浄方法。
  2. (B)成分が1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルである、請求項1に記載の洗浄方法。
  3. 前記洗浄用溶剤組成物の液温度と蒸気温度の差が2.5℃未満である、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
  4. 油性汚れ及び油からなる群より選択される1種以上が基材に付着した被洗浄物を洗浄するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の洗浄方法。
  5. 蒸気接触工程における蒸気槽の液温度が38~60℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の洗浄方法。
  6. 被洗浄物の基材が、プラスチック及びゴムからなる群より選択される1種以上を含み、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部としたときに、(A)成分は8~28重量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄方法。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の洗浄方法のための、蒸気接触槽又は蒸気接触エリア。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載の洗浄方法のための、蒸気発生槽。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023009358A1 (en) * 2021-07-29 2023-02-02 Chemours-Mitsui Fluoroproducts Co., Ltd Fluorine-based solvent composition

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