JP2022091870A - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明のプラズマ処理装置は、チャンバ1と、コイル5と、を備え、チャンバ1は、筒状壁2と、筒状壁2の上側の端面と連結された上側の部材3と、筒状壁2の下側の端面と連結された下側の部材4と、第1の真空シール部材6と、を具備し、コイル5は、筒状壁2の外面に沿って巻回されており、第1の真空シール部材6は、コイル5の上下方向についての中心位置から遠い方の筒状壁2の端面と、上側及び下側の部材のうち、遠い方の端面に連結された部材との間において、遠い方の端面及び/又は連結された部材に形成された溝部9に嵌入され、チャンバ1内でプラズマ処理が実行される状態において遠い方の端面と連結された部材とが非接触となる状態で介設されている。
【選択図】 図1
Description
一般的に、図12に示すように、プラズマ処理装置10Aは、プラズマが生成されるプラズマ生成空間21Aを内側に有する筒状壁2Aと、筒状壁2Aの下方に設けられ、プラズマ処理の対象となる基板Sを載置する載置台8Aが内側に設けられた下筒体4Aと、を具備するチャンバ1Aを備えている。また、本装置10Aは、さらにプラズマ生成空間21Aに処理ガスを供給する処理ガス供給手段(図示せず)と、前記筒状壁2Aの外面に沿って巻回されたコイル5Aと、をさらに備えている。
真空環境下でプラズマ生成空間21A内に処理ガスを供給し、前記コイル5Aに高周波電力を印加することにより、プラズマ生成空間21Aに生じた誘導電界によって処理ガスがプラズマ化される。プラズマ化された処理ガス(以下、単に「プラズマ」と称する)は、下筒体4Aの内側にあるプラズマ処理空間41Aに流下して載置台8Aに至り、載置台8Aに載置された基板Sの表面にプラズマ処理が実行される。例えば、エッチング処理が実行される場合、基板Sの表面がプラズマによってエッチングされる。なお、図12に示す太黒矢印は、プラズマの流下方向を示している(図1についても同様)。
このような問題が発生した場合、プラズマ処理を中断し、チャンバ1A全体が冷却するのを待った後に筒状壁2Aを交換する必要があるため、プラズマ処理の効率が著しく落ちる。
具体的には、本発明者が、従来のプラズマ処理装置10Aについて、プラズマ処理中における筒状壁2Aの外面並びに筒状壁2Aに連結された上側の部材3A及び下側の部材4Aの外面の温度分布を調べた結果、図13に示すような結果が得られた。図13に示すように、筒状壁2Aの温度は、コイル5Aに対応する部分が高温となり、コイル5Aから離れるにつれ徐々に低温となるように分布していることが分かる。このような温度差が生じる理由は以下の通りである。
一般的に、コイル5Aは、図12及び13に示すように筒状壁2Aの外面と密着するように巻回されているか、又は、筒状壁2Aの外面と僅かに離隔するように巻回されている(図示せず)。プラズマ処理中において、コイル5Aに高周波電力が印加されることにより、プラズマ処理空間21Aに高温のプラズマが発生する。この高温のプラズマによって筒状壁2Aはその内側から熱伝達により加熱されると共に、コイル5Aの誘導加熱によっても加熱される。
プラズマは、プラズマ処理空間21Aのコイル5Aに対応した領域で特に多く生成される。そのため、筒状壁2Aのコイル5Aに対応する部分は、高温のプラズマによって加熱され易い。特に、筒状壁2Aのコイル5Aの上下方向における中心位置に対応した部分は、最も温度が高くなる(図13では、300℃を示している)。
一般的に、上側の部材3Aと下側の部材4Aは、チャンバヒーター(図示せず)によって筒状壁2Aよりも低い温度で温度制御されている。そのため、筒状壁2Aのコイル5Aに対応した部分に加えられた熱は、筒状壁2Aの上側の端面から上側の部材3Aへ伝導し、同様に、筒状壁2Aの下側の端面から下側の部材4Aへ伝導する。換言すると、筒状壁2Aのコイル5Aよりも上側の部分及び下側の部分は、上側の部材3A及び下側の部材4Aによってそれぞれ冷却される。従って、筒状壁2Aのコイル5Aよりも上側の部分及び下側の部分は、コイル5Aに対応する部分よりも温度が低くなる。
本発明者は、以上の知見に基づき、プラズマ処理時に、筒状壁2Aのコイル5Aに対応した部分以外の部分の温度を、なるべく筒状壁2Aの最高温度に近づける(即ち、筒状壁2Aの上下方向における温度差を小さくする)ことにより筒状壁2Aのクラックを効果的に防止できることを見出し、本発明を創出した。
従って、プラズマ処理を実行している状態において、筒状壁の遠い方の端面からそれに連結された部材に熱伝導が生じ難くなる。即ち、筒状壁の遠い方の端面が冷却され難くなる。従って、筒状壁の上下方向における温度差を小さくすることができ、効果的にクラックの発生を予防することができる。
なお、前記第1の真空シール部材がOリングである場合、前記溝部の深さは、例えば、前記Oリングの線径の0.3倍以上0.9倍以下に設定される。
前記第2の真空シール部材がOリングである場合、前記溝部の深さは、例えば、前記Oリングの線径の0.3倍以上0.9倍以下に設定される。
この点、本プラズマ処理装置では、第1の真空シール部材が複数のOリングから構成されており、且つ、最も内側に位置するOリングの線径が他のOリングの線径よりも小さい。そのため、最も内側に位置するOリングによってそれより外側のOリングがプラズマから保護される。最も内側に位置するOリングは耐プラズマ性を有する膜によって被覆されているものの、線径が小さいため比較的廉価である。また、外側に位置するOリングは、最も内側に位置するOリングよりも線径が大きいため、チャンバの真空シール性を確保することができる。このように、本プラズマ処理装置では、比較的廉価である線径の小さな耐プラズマ性を有するOリングと線径の大きなOリングを併用することにより、経済的且つ効果的に長期に亘ってチャンバの真空状態を確保することができる。
以下、添付図面を参照しつつ第1乃至第4実施形態に係る本発明のプラズマ処理装置について順に説明するが、第2乃至第4実施形態の説明については、主として第1実施形態との相違点のみに着目し、第1実施形態と共通する構成については適宜説明を省略する。
さらに、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができる。
図1に示すように、第1実施形態に係る本発明のプラズマ処理装置10は、チャンバ1と、コイル5と、を備えている。チャンバ1は、筒状壁2と、筒状壁2の上側の端面と連結された上側の部材3と、筒状壁2の下側の端面と連結された下側の部材4と、第1の真空シール部材6と、を具備している。
以下、チャンバ1を構成する各部材(第1の真空シール部材6を除く)について分説した後、コイル5及び第1の真空シール部材6について詳述する。
筒状壁2は、その内側に、処理ガスの供給によりプラズマが生成されるプラズマ生成空間21を有する筒状の部材である。筒状壁2の形状は、内側にプラズマ生成空間21を有することを条件に、特に限定されない。本実施形態では、筒状壁2は、直胴(上下方向において外径が一定である)の円筒状に形成された筒状体22と、筒状体22の下端部において筒状体22の径外方向に突出したフランジ部23を有している。フランジ部23は後述するクランプ25が取り付けられる部分である。
プラズマは、後述するコイル5によって発生した誘導電界によって筒状壁2の内側に導入された処理ガスがプラズマ化されることによって生成される。従って、筒状壁2は、その内側に誘導電界が発生することを妨げないような絶縁性の材料によって形成される。このような材料としては、例えばセラミックスを主成分とする材料が挙げられる。
なお、セラミックスは、無機物を焼き固めた焼結体の総称であり、特定の化学式によって特定されるものではない。セラミックスとしては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、石英(二酸化ケイ素)、窒化アルミニウム、イットリア(酸化イットリウム)、チタニア(二酸化チタン)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)、及びこれらの混合物などが挙げられる。本発明では、アルミナ及び石英のうち少なくとも一方を主成分とするセラミックスが好ましく用いられ、より好ましくは、実質的にアルミナ及び石英のうち少なくとも一方のみを含むセラミックスが用いられる。
これらを考慮すると、筒状壁2の厚みの下限値は、通常、5mmであり、好ましくは7mmであり、より好ましくは10mmである。また、筒状壁2の厚みの上限値は、通常、20mmであり、好ましくは15mmであり、より好ましくは13mmである。
上側の部材3は、筒状壁2の上側に設けられる部材であり、下側の部材4は、筒状壁2の下側に設けられる部材である。上側の部材3は、筒状壁2の上側の端面と連結されており、下側の部材4は、筒状壁2の下側の端面に連結されている。
上側の部材3及び下側の部材4は、例えば、金属によって形成されており、このような金属としてはアルミ合金などが挙げられる。
天板部材3の略中央部に凹部が形成されているため、プラズマ生成空間21は、図1に示すように、断面視略U字状の空間となる。このような断面視略U字状のプラズマ生成空間21を採用することにより、比較的小さい電力で高密度のプラズマを生成することができる。
下筒体4は、筒状壁2よりも外径が大きな直胴状の円筒である胴部42と、胴部42の下端開口部を閉塞し且つチャンバ1全体を支持する底板部43と、胴部42の上端縁から胴部42の軸心方向へ延びた環状の支持部44と、を有する。本実施形態では、下筒体4の支持部44に筒状壁2が連結されている。
下筒体4の内側にあるプラズマ処理空間41には、プラズマ処理の対象となる基板Sを載置する載置台8が設けられている。載置台8の高さは昇降シリンダなどの昇降手段によって任意の高さに調整することができる。
また、載置台8には、第1のインピーダンス整合器46を介して接続された第1の高周波電源47によって高周波電力が印加される。
支柱壁24は、上側の部材3(本実施形態では、天板部材3)を支持する部材である。本実施形態では、支柱壁24は、下筒体4の支持部44の上面から天板部材3の下面にかけて垂直に立設されている。
後述するように、筒状壁2と上側の部材3との間に第1の真空シール部材6が介設されるため、支柱壁24は、その上端面が筒状壁2の上端面よりも上側に位置する。支柱壁24の上端面と筒状壁2の上端面との高低差が、後述する間隙Gに相当する。
コイル5は、筒状壁2の外面に沿って螺旋状に巻回された線状の部材である。コイルは、図1乃至3に示すように、筒状壁2の外面に接しつつ巻回されていてもよく、特に図示しないが、筒状壁2の外面から僅かに離隔するように巻回されていてもよい(この場合、コイル5を支持する部材が用いられる)。もっとも、コイル5が筒状壁2の外面に接している場合、筒状壁2の温度が上がり易くなるため、コイル5は、筒状壁2の外面から僅かに離隔するように巻回されることが好ましい。
なお、コイル5の位置関係は、後述する第1の真空シール部材6との位置関係を規定する指標となるため、便宜上、図2及び3では、コイル5、上側の部材3、筒状壁2、及び下側の部材4のみを表している。また、図2及び3では、便宜上、筒状壁2と上側の部材3及び下側の部材4は接触するように図示している。
また、図2及び3において、「C」は、螺旋状の線形であるコイル5の一端とその他端の上下方向における中心位置(以下、「中心位置C」と称する)を表し、「W」は、筒状壁2の上下方向における中心位置(以下、「中心位置W」と称する)を表す。
本発明では、コイル5を巻回する筒状壁2の位置は適宜変更することが可能であるが、プラズマの発生位置と筒状壁2の温度差の双方を考慮して設定することが好ましい。
これを考慮すると、コイル5は、図2(a)に示すように、コイル5全体が中心位置Wよりも下側に位置し且つコイル5の下端が筒状壁2の筒状体22の下端よりも上側に位置するように巻回されることが好ましく、図2(b)に示すように、コイル5全体が中心位置Wよりも下側に位置し且つコイル5の下端と筒状壁2の筒状体22の下端(フランジ部23の上端)が略一致するように巻回されることがより好ましい。
他方、上述したように、筒状壁2の上側の端面があまりにコイル5から離れると、筒状壁2のコイル5が巻回された部分と筒状壁2の上側の端面の温度差が非常に大きくなり、筒状壁2にクラックが生じやすくなる虞がある。従って、筒状壁2のクラック発生防止を考慮すると、コイル5は、図2(c)に示すように、中心位置Cと中心位置Wの高さが一致するように巻回されることが好ましい。
コイル5に印加される高周波電力の周波数及び電力は特に限定されないが、例えば、周波数は10MHz~100MHzの範囲で設定され、電力は100W~10000Wの範囲で設定される。
プラズマ処理装置10は、少なくとも第1の真空シール部材6を具備する。
第1の真空シール部材6は、主としてプラズマ処理中においてチャンバ1内の真空状態を保つ部材であり、本発明では、筒状壁2の上下方向における温度差を小さくするために設けられる部材でもある(後述する第2の真空シール部材7についても同様である)。
第1の真空シール部材6は、筒状壁2の上側及び下側の端面のうち、中心位置Cから遠い方の端面と、前記上側の部材3及び下側の部材4のうち、前記遠い方の端面に連結された部材との間において、チャンバ1内でプラズマ処理が実行される状態において前記遠い方の端面と前記連結された部材とが非接触となる状態で介設されている。
コイル5の巻回位置を変えることにより、筒状壁2の上端面及び下端面は、遠端面にもなり得るし近端面にもなり得る。なお、図2(c)に示すように、中心位置Cと中心位置Wの高さが一致する場合、便宜上、筒状壁2の上端面及び下端面のうち一方を遠端面とし、他方を近端面とする。
第1の真空シール部材6は、特に限定されないが、好ましくは、図4に示すように筒状壁2の遠端面(本実施形態では上端面)の全周に亘る環状の弾性部材であり、本実施形態では、その断面形状が円形の弾性部材(いわゆる、Oリング)を第1の真空シール部材6として用いている。第1の真空シール部材6を用いることにより、チャンバ内の真空状態を容易に保つことができる。以下、その理由について図6を参照しつつ説明する。
上側の部材3の下面を支柱壁24の上端面に近づけると、図6(b)に示すように、第1の真空シール部材6は、上側及び下側から押圧されやや弾性変形する。この状態では、第1の真空シール部材6と上側の部材3及び筒状壁2との間に微細な間隙が存在するため、チャンバ1の内外が空間的に分離されていない状態(非真空シール状態)である。
次に、図6(b)の状態から、上側の部材3を支柱壁24の上端面と接するように押さえつけつつチャンバ1内を真空排気する。そうすると、第1の真空シール部材6は上側の部材3及び筒状壁2と密着するように大きく弾性変形し、上記微細な間隙がなくなり、図5で示すようにチャンバ1の内外が空間的に分離された状態(真空シール状態)となる。
本実施形態では、支柱壁24の上端面が筒状壁2の上端面よりも上側に位置しているため、第1の真空シール部材6が真空排気の圧力により潰れ過ぎることがない。そのため、筒状壁2の上端面と上側の部材3の下面が非接触な状態のままチャンバ1内の真空状態を保つことができる。
プラズマ処理の実行により、筒状壁2は上述したように昇温するが、本発明では、遠端面とそれと連結した部材が非接触とされているため、筒状壁2の遠端面から連結した部材への直接的な熱伝導が生じない。また、第1の真空シール部材6は、通常、熱伝導率が低いため、第1の真空シール部材6を介した間接的な熱伝導も生じ難い。
具体的には、図7に示すように、筒状壁2の最上部の温度(280℃)と筒状壁2の最高温度(300℃)との差(Δt1)は、20℃となり、上述した図13に示す従来のプラズマ装置10AのΔt1の値(50℃)よりも温度差が小さくなる。
従って、本発明のプラズマ処理装置10は、プラズマ処理を実行中に筒状壁2にクラックが生じ難くなり、プラズマ処理を長時間安定的に実行することができる。
ここで、従来のプラズマ処理装置のように、筒状壁2と上側の部材3が接触していると、上述のような上側の部材3の熱膨張により筒状壁2の上端面と上側の部材3の下面とが擦れ合い、その結果、筒状壁2の一部又は上側の部材3の一部が微粒子状に剥離する(即ち、パーティクルが発生する)と共にプラズマ処理空間41に拡散し、プラズマ処理の精度に悪影響を及ぼす場合がある。また、上側の部材3は、上下方向にも熱膨張するため、従来のプラズマ処理装置のように、筒状壁2と天板部材3とが接触していると、上側の部材3により筒状壁2の上面が押圧されるため筒状壁2にクラックが発生し易くなる虞がある。
これに対し、本実施形態では、筒状壁2の上端面と上側の部材3が第1の真空シール部材6によって非接触とされている。そのため、熱膨張によって上側の部材3と筒状壁2との位置関係にずれが生じても、第1の真空シール部材6が弾性変形することによりチャンバ1内の真空状態を保ったまま該ずれに対応可能である(図8(b)参照)。そのため、筒状壁2の上端面と上側の部材3はプラズマ処理の過程において擦れ合わない。従って、本発明では、筒状壁2のクラック発生を防止できるだけでなく、プラズマ処理空間41にパーティクルが拡散し基板に付着することを効果的に防止できる。
第1の真空シール部材6の熱伝導率は、好ましくは0.8W/(mK)以下であり、より好ましくは0.6W/(mK)であり、特に好ましくは0.5W/(mK)以下である。このような熱伝導率を満たす材料として公知のエラストマーや樹脂を用いることができ、具体的には、ニトリル系ゴム、シリコン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレンプロピレン(EP)ゴム、スチレンブタジエン(SB)ゴムなどを用いることができる。
この場合、上述と同様の理由により、筒状壁2の最下部の温度と筒状壁2の最高温度(300℃)との差(Δt2)が、上述した図13に示す従来のプラズマ装置10AのΔt2の値(40℃)よりも小さくなり、筒状壁2の上下方向における温度差を小さくすることができる。また、この場合、第1の真空シール部材6は、後述する第2の真空シール部材7と同様に、下側の部材4の上端面に形成された溝部9に嵌入される。
間隙Gが0.3mmよりも小さい場合、チャンバ1内の真空度が僅かに変動することで遠端面とそれと連結した部材が接触する虞がある。他方、間隙Gが1.0mmを超えると、プラズマに暴露される第1の真空シール部材6の表面積が増加し、第1の真空シール部材6がプラズマによって劣化し易くなる虞がある。
一般的に、線径が小さいOリングは線径の大きなOリングに比して、圧縮永久ひずみ率が大きい。そのため、線径が小さいOリングを用いた場合、チャンバ内の真空状態を長期間に亘って安定的に保つことが難しい場合がある。これを考慮すると、Oリングの線径の最小値は、例えば、2.0mmであり、好ましくは3.0mmであり、より好ましくは5.0mmである。他方、Oリングの線径が大きすぎると、チャンバの内のプラズマに曝露されるOリングの表面積が大きくなり、Oリングが劣化し易くなる虞がある。これを考慮すると、Oリングの線径の最大値は、8.0mmであり、好ましくは7.0mmであり、より好ましくは6.0mmである。なお、本明細書で例示したOリングの線径は、弾性変形する前の状態を基準としている。
Oリングの硬度(JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」に準拠して求められる硬度(ショアA))は特に限定されないが、例えば、50~90であり、好ましくは70~90である。
溝部9の深さは特に限定されず、第1の真空シール部材6の形状に合わせて適宜設定することができる。例えば、第1の真空シール部材6としてOリングを用いる場合、好ましくは、溝部9の深さの下限値は、Oリングの線径の0.3倍であり、より好ましくは0.5倍であり、特に好ましくは0.6倍である。また、好ましくは、溝部9の深さの上限値は、Oリングの線径の0.9倍であり、より好ましくは0.8倍であり、特に好ましくは0.7倍である。
例えば、第1の真空シール部材6として、Oリング以外にも、断面形状が四角形状、D字状、不定形状の弾性部材などを用いることもできる。なお、第1の真空シール部材6の断面形状は、第1の真空シール部材6が弾性変形する前の状態を基準としている。
また、溝部9は、筒状壁2の上端面に形成されていてもよく、上側の部材3の下面と筒状壁2の上端面の両方に形成されていてもよい。なお、後者の場合、両溝部9の深さを合計した値が上述した数値範囲内に収まることが好ましい。
第2実施形態に係るプラズマ処理装置10は、チャンバ1が、第1の真空シール部材6に加えさらに第2の真空シール部材7を具備する。第2の真空シール部材7は、筒状壁2の近端面と該近端面に連結された部材との間において、チャンバ1内でプラズマ処理が実行される状態において筒状壁2の近端面と該近端面に連結された部材とが非接触となる状態で介設される。
換言すると、本実施形態において、チャンバ1は、筒状壁2の上端面と上側の部材3との間、及び、筒状壁2の下端面と下側の部材4との間の双方に、筒状壁2の上端面と上側の部材3とを非接触とし且つ筒状壁2の下端面と下側の部材4とを非接触とした状態で真空シール部材(第1の真空シール部材6及び第2の真空シール部材7)を具備する。
上述した第1の真空シール部材6と同様に、第2の真空シール部材7は、下側の部材4の上面に形成された溝部9に嵌入されている。第2の真空シール部材7を上側及び下側から押圧しつつチャンバ1内を真空排気することにより、第2の真空シール部材7は、大きく弾性変形しつつ筒状壁2及び下側の部材4に密着する。これにより、チャンバ1の内外が空間的に分離された状態(真空シール状態)となる。
筒状壁2の下端面と下側の部材4との間に存在する間隙Gの幅は、上述した筒状壁2の上端面と上側の部材3との間に存在する間隙Gの幅と同じ範囲内とすることが好ましい。
また、本実施形態では、筒状壁2の上端面と上側の部材3との間、及び、筒状壁2の下端面と下側の部材4との間の双方が非接触であるため、チャンバ1内にパーティクルが拡散することをより確実に防止でき、より高精度なプラズマ処理を実行することができる。
例えば、第2の真空シール部材7が嵌入される溝部9は、下側の部材4の上面ではなく、筒状壁2の下端面に形成されていてもよい。その他、第2実施形態に対して想定できる変更点については、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する(第3及び第4実施形態についても同様)。
第1実施形態では、第1の真空シール部材6が、1つのOリングから構成されていたが、第3実施形態では、第1の真空シール部材6は、略同一平面上において略同心状に配置された、互いに異なる内径を有する複数のOリングから構成されており、この複数のOリングのうち、最も内側に位置するOリングの線径が他のOリングの線径よりも小さく、最も内側に位置するOリングの表面が耐プラズマ性を有する膜によって被覆されている。
以下、2つのOリングから構成された第1の真空シール部材6について図11を参照しつつ説明する。
2つのOリング61,62は、略同一平面上に同心状に配置されている。略同一平面上に配置されているとは、図11に示すように、2つのOリング61,62が、破線で示された水平線に沿って隣り合うように配置されていることを意味する。また、同心状に配置されているとは、Oリング61の軸心とOリング62の軸心を通る鉛直線が一致するように配置されていることを意味する。該鉛直線は、筒状壁2の軸心と一致していてもよく、一致していなくてもよいが、筒状壁2の軸心と一致することが好ましい。
耐プラズマ膜は特に限定されないが、例えば、フッ素系樹脂を含む膜が例示できる。
フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレンの重合体を用いることが好ましい。テトラフルオロエチレンの重合体としては、例えば、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、及びPFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などが挙げられる。
Oリングが3つ以上である場合、複数のOリングは、チャンバ1の内側から外側に向かって、内径の小さい順に配置されていてもよいし、線径の大きさとは無関係に無作為に配置してもよい(但し、最も内側のOリングの線径が最も小さいことを条件とする)。
また、Oリングの数が3つ以上である場合、外側のOリング(最も内側のOリング以外のOリング)は、互いに同じ線径であってもよい。
第3実施形態では、第1の真空シール部材が、複数のOリングから構成されていたが、第4実施形態では、第1の真空シール部材及び前記第2の真空シール部材は、それぞれ、略同一平面上において略同心状に配置された、互いに異なる内径を有する複数のOリングから構成され、複数のOリングのうち、最も内側に位置するOリングの線径が他のOリングの線径よりも小さく、最も内側に位置するOリングの表面が耐プラズマ性を有する膜によって被覆されている。
即ち、第4実施形態は、上述した第2実施形態が備える第1及び第2の真空シール部材が、共に上述した第3実施形態と同様に、複数のOリングから構成された実施形態である。本実施形態における第2の真空シール部材の具体的な態様については、第3実施形態と同様であるため図面及びその説明を省略する。
また、第4実施形態では、第2実施形態と同様の理由により、プラズマ処理空間にパーティクルが混入することを効果的に防止することができる。
従って、上側及び下側の部材が筒状壁よりも熱伝導率の高い金属で形成されていても、プラズマ処理を実行している状態において、筒状壁の遠い方の端面からそれに連結された部材に熱伝導が生じ難くなる。即ち、筒状壁の遠い方の端面が冷却され難くなる。従って、筒状壁の上下方向における温度差を小さくすることができ、効果的にクラックの発生を予防することができる。
なお、前記溝部の深さは、例えば、前記第1の真空シール部材(断面円形のOリング)の線径の0.3倍以上0.9倍以下に設定される。
前記溝部の深さは、例えば、第2の真空シール部材(断面円形のOリング)の線径の0.3倍以上0.9倍以下に設定される。
なお、本発明は、チャンバと、前記チャンバ内でプラズマ処理を実行するために高周波電力が印加されるコイルと、を備え、前記チャンバは、内側に処理ガスが供給されてプラズマが生成される筒状壁と、前記筒状壁の上側の端面と連結された上側の部材と、前記筒状壁の下側の端面と連結された下側の部材と、断面円形のOリングである第1の真空シール部材と、を具備し、前記上側及び下側の部材は、前記筒状壁よりも熱伝導率の高い金属で形成され、前記コイルは、前記筒状壁の外面に沿って巻回されており、前記第1の真空シール部材は、前記筒状壁の上側及び下側の端面のうち、いずれか一方の端面と、前記上側及び下側の部材のうち、前記一方の端面に連結された部材との間において、前記一方の端面及び/又は前記連結された部材に形成された溝部に嵌入され、前記チャンバ内でプラズマ処理が実行される状態において前記一方の端面と前記連結された部材とが非接触となる状態で介設されていることを特徴とするプラズマ処理装置としても提供される。
そして、前記チャンバは、前記筒状壁の上側及び下側の端面のうち、いずれか他方の端面と、前記上側及び下側の部材のうち、前記他方の端面に連結された部材との間において、前記他方の端面及び/又は前記連結された部材に形成された溝部に嵌入され、前記チャンバ内でプラズマ処理が実行される状態において前記他方の端面と前記連結された部材とが非接触となる状態で介設された、断面円形のOリングである第2の真空シール部材を更に具備することが好ましい。
本発明のプラズマ処理装置としては、前記筒状壁の内側でプラズマを生成するために高周波電力が印加される部材として、前記コイルのみを備える構成を採用可能である。
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記チャンバ内でプラズマ処理が実行される状態において非接触となる、前記筒状壁の端面と前記連結された部材との間には、0.3mm以上1.0mm以下の間隙が存在することが好ましい。
Claims (4)
- チャンバと、前記チャンバ内でプラズマ処理を実行するために高周波電力が印加されるコイルと、を備え、
前記チャンバは、
内側に処理ガスが供給されてプラズマが生成される筒状壁と、
前記筒状壁の上側の端面と連結された上側の部材と、
前記筒状壁の下側の端面と連結された下側の部材と、
第1の真空シール部材と、を具備し、
前記コイルは、前記筒状壁の外面に沿って巻回されており、
前記第1の真空シール部材は、前記筒状壁の上側及び下側の端面のうち、前記コイルの上下方向についての中心位置から遠い方の端面と、前記上側及び下側の部材のうち、前記遠い方の端面に連結された部材との間において、前記遠い方の端面及び/又は前記連結された部材に形成された溝部に嵌入され、前記チャンバ内でプラズマ処理が実行される状態において前記遠い方の端面と前記連結された部材とが非接触となる状態で介設されていることを特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記第1の真空シール部材は、Oリングであり、
前記溝部の深さは、前記Oリングの線径の0.3倍以上0.9倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。 - 前記チャンバは、前記筒状壁の上側及び下側の端面のうち、前記コイルの上下方向についての中心位置から近い方の端面と、前記上側及び下側の部材のうち、前記近い方の端面に連結された部材との間において、前記近い方の端面及び/又は前記連結された部材に形成された溝部に嵌入され、前記チャンバ内でプラズマ処理が実行される状態において前記近い方の端面と前記連結された部材とが非接触となる状態で介設された第2の真空シール部材を更に具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
- 前記第2の真空シール部材は、Oリングであり、
前記溝部の深さは、前記Oリングの線径の0.3倍以上0.9倍以下であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
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