以下に添付図面を参照して、本発明に係る冷媒回路装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態である冷媒回路装置が適用されたショーケースを模式的に示す断面側面図であり、図2は、本発明の実施の形態である冷媒回路装置の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。ここで例示するショーケースは、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗において商品を収容するものであり、ケース本体10を備えて構成されている。
ケース本体10は、底面部11、後面部12及び天面部13を備え、これら底面部11、後面部12及び天面部13によって囲まれる部分に前面及び左右両側面が開口した収納室(対象室)14が構成されている。またケース本体10には、上記収納室14と区画される態様で、通風路15が設けられている。通風路15は、底面部11、後面部12及び天面部13の内部に形成されており、下側通風ダクト15a、後側通風ダクト15b及び上側通風ダクト15cを備えている。
下側通風ダクト15aは、底面部11において、収納室14の底面を構成する底面板11aよりも下方となる部分に構成されている。底面板11aの前端部分には、左右方向に沿って延在する吸込口16aが形成されている。つまり吸込口16aは、収納室14の前方下部に開口している。
後側通風ダクト15bは、後面部12において、収納室14の背面を構成する背面板12aよりも後方となる部分に構成されている。この後側通風ダクト15bは、下端部分が下側通風ダクト15aの後端部分と連通している。
上側通風ダクト15cは、天面部13において、収納室14の天面を構成する天面板13aよりも上方となる部分に構成されている。この上側通風ダクト15cは、後端部分が後側通風ダクト15bの上端部分と連通している。天面板13aの前端部分には、左右方向に沿って延在する吹出口16bが形成されている。つまり吹出口16bは、収納室14の前方上部に開口している。
収納室14には、上下に沿って複数段(図示の例では6段)の商品載置棚17が設けられている。商品載置棚17は、背面板12aの左右両側部に設けられた図示せぬ棚支柱に取り付けられた棚支持部材17aに、棚板17bが図示せぬスライダを介して支持されて構成されている。これら商品載置棚17においては、棚板17bが前後方向に沿ってスライド可能であり、該棚板17bの上面に商品を載置して陳列させるものである。
上記通風路15には、蒸発器21a及び庫内ファン22が設置されている。蒸発器21aは、後側通風ダクト15bに設置されている。この蒸発器21aは、圧縮機21b、凝縮器21c及び膨張機構21dと冷媒管路21eで環状に接続されることで、冷媒を循環させる冷媒回路21を構成している。
圧縮機21bは、収納室14の下方となる機械室18に設置されている。この圧縮機21bは、後述する制御部40から与えられる指令に応じて駆動するもので、駆動する場合に、蒸発器21aから冷媒を吸引して圧縮し、高温高圧の冷媒を吐出するものである。凝縮器21cは、機械室18において、圧縮機21bよりも前方側に設置されている。この凝縮器21cは、圧縮機21bから吐出された冷媒(高温高圧の冷媒)を凝縮させて放熱させるものである。膨張機構21dは、例えば電子膨張弁やキャピラリーチューブ等で構成されており、凝縮器21cで凝縮して流通する冷媒を断熱膨張させて低温低圧の状態にさせるものである。
上記蒸発器21aは、自身の周囲の空気と、膨張機構21dで低温低圧状態にされた冷媒とを熱交換させるもの、より詳細には、低温低圧の冷媒を蒸発させることにより周囲の空気を冷却するものである。この蒸発器21aで蒸発した冷媒は、圧縮機21bに吸引されて冷媒回路21を循環することになる。
上記機械室18の前面にも開口が形成されており、かかる開口を閉塞する態様でキックプレート19が設置されている。キックプレート19は、ケース本体10に着脱可能なものであり、図には明示しないが、凝縮器21cの前方域となる個所に複数の通風孔が形成されている。かかる通風孔は、凝縮器21cの後方側に配置された庫外ファン23が駆動することにより、外気を機械室18の内部に取り込むためのものである。
庫内ファン22は、蒸発器21aの近傍に設置されており、冷媒回路21とともに冷媒回路装置20を構成している。この庫内ファン22は、内蔵する庫内ファンモータ22a(図2参照)を駆動源として駆動し、吸込口16aを通じて通風路15に吸い込んだ空気を吹出口16bまで送出し、該吹出口16bより収納室14に吹き出すことにより、収納室14と通風路15との間で空気を循環させるものである。つまり、庫内ファン22は、収納室14の空気を蒸発器21aに向けて送出するとともに該蒸発器21aで冷却された空気を収納室14に送出するものである。これにより収納室14には、吹出口16bから吸込口16aに向けてエアカーテンが形成されることになる。
これにより上記ショーケースでは、圧縮機21b及び庫内ファン22が駆動すれば、蒸発器21aを通過した空気が通風路15を通じて収納室14に循環供給され、収納室14が所望の冷蔵温度に維持される。
そのような冷媒回路装置20は、上記構成の他、図2に示すように、周囲温度センサ31、庫内温度センサ32、吐出冷媒温度センサ33及び制御部40を備えている。
周囲温度センサ31は、ショーケースのケース本体10の外部に設置されており、該ショーケースの周囲温度を検知する周囲温度検知手段である。この周囲温度センサ31は、検知した周囲温度を検知信号として制御部40に送出するものである。
庫内温度センサ32は、収納室14に設置されており、該収納室14の内部温度である庫内温度を検知する庫内温度検知手段である。この庫内温度センサ32は、検知した庫内温度を検知信号として制御部40に送出するものである。
吐出冷媒温度センサ33は、冷媒回路21における圧縮機21bと凝縮器21cとを接続する冷媒管路21eに設置されており、圧縮機21bより吐出された冷媒の温度である冷媒吐出温度を検知する吐出冷媒温度検知手段である。この吐出冷媒温度センサ33は、検知した冷媒吐出温度を検知信号として制御部40に送出するものである。
制御部40は、圧縮機21b、庫内ファンモータ22a、周囲温度センサ31、庫内温度センサ32及び吐出冷媒温度センサ33と電気的に接続されるとともに、ショーケースの動作を統括する主制御部50と電気的に接続されている。この制御部40は、同じく電気的に接続された記憶部41に記憶されたプログラムやデータに従って冷媒回路装置20の動作を統括的に制御するものであり、入力処理部40a、高負荷判定処理部40b、解除判定処理部40c及び出力処理部40dを有している。
尚、制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
また記憶部41は、本発明に特徴的なものとして、高負荷環境閾値情報及び解除閾値情報を記憶している。高負荷環境閾値情報は、圧縮機21bの運転環境、すなわちショーケースが高負荷環境にあるか否かを判定するための閾値を含んでおり、この閾値として周囲基準温度(例えば30℃程度)及び庫内基準温度(例えば0℃程度)が設定されている。解除閾値情報は、高負荷環境に応じた運転から解除するための解除条件の閾値を含んでおり、この閾値として解除判定温度が設定されている。
入力処理部40aは、周囲温度センサ31、庫内温度センサ32及び吐出冷媒温度センサ33より送出される検知信号を入力するとともに、主制御部50から与えられる指令信号を入力するものである。
高負荷判定処理部40bは、入力処理部40aを通じて入力した周囲温度及び庫内温度と、記憶部41から読み出した高負荷環境閾値情報に含まれる周囲基準温度及び庫内基準温度とを比較して、圧縮機21bの運転環境(ショーケース)が高負荷環境にあるか否かを判定するものである。
解除判定処理部40cは、入力処理部40aを通じて入力した冷媒吐出温度と、記憶部41から読み出した解除閾値情報に含まれる解除判定温度とを比較して、解除条件を具備するか否かを判定するものである。
出力処理部40dは、圧縮機21bに対して駆動指令を与えるとともに、庫内ファンモータ22aに対して、所定の回転数での駆動指令を与えるものである。
図3は、図2に示した制御部40が実施する庫内ファン制御処理の処理内容を示すフローチャートである。かかる庫内ファン制御処理を説明しながら、冷媒回路装置20の動作について説明する。かかる庫内ファン制御処理の前提として、ショーケースが所定の店舗に設置され、電源が投入されていないものとする。
この庫内ファン制御処理において制御部40は、入力処理部40aを通じて、主制御部50からの駆動指令の入力待ちとなる(ステップS101)。ショーケースの電源が投入され、オペレータによる入力操作により主制御部50から送出された駆動指令を入力した場合(ステップS101:Yes)、制御部40は、出力処理部40dを通じて圧縮機21bに駆動指令を送出するとともに(ステップS102)、高負荷判定処理を実施する(ステップS103)。これにより圧縮機21bが駆動し、冷媒が冷媒回路21を循環する。
図4は、図3に示した高負荷判定処理の処理内容を示すフローチャートである。この高負荷判定処理において制御部40は、入力処理部40aを通じて、周囲温度センサ31からの周囲温度、並びに庫内温度センサ32からの庫内温度の入力待ちとなる(ステップS103a)。
周囲温度及び庫内温度を入力した場合(ステップS103a:Yes)、制御部40は、高負荷判定処理部40bを通じて、記憶部41から高負荷環境閾値情報を読み出し、ステップS103aで入力した周囲温度が高負荷環境閾値情報に含まれる周囲基準温度以上であるか否かを判断する(ステップS103b)。
周囲温度が周囲基準温度以上であると判断した場合(ステップS103b:Yes)、制御部40は、高負荷判定処理部40bを通じて、ステップS103aで入力した庫内温度が高負荷環境閾値情報に含まれる庫内基準温度以上であるか否かを判断する(ステップS103c)。
庫内温度が庫内基準温度以上であると判断した場合(ステップS103c:Yes)、つまり、周囲温度が周囲基準温度以上であり庫内温度が庫内基準温度以上であると判断した場合、制御部40は、高負荷判定処理部40bを通じて圧縮機21bの運転環境が高負荷環境にあるものと判定し(ステップS103d)、その後に手順をリターンさせて今回の高負荷判定処理を終了する。
一方、上記ステップS103bにおいて周囲温度が周囲基準温度未満であると判断した場合(ステップS103b:No)、あるいは上記ステップS103cにおいて庫内温度が庫内基準温度未満であると判断した場合(ステップS103c:No)、制御部40は、高負荷判定処理部40bを通じて圧縮機21bの運転環境が通常負荷環境にあるものと判定し(ステップS103e)、その後に手順をリターンさせて今回の高負荷判定処理を終了する。
そのように高負荷判定処理を実施した制御部40は、該高負荷判定処理において高負荷環境にあるものと判定しなかった場合(ステップS104:No)、すなわち通常負荷環境にあるものと判定した場合、出力処理部40dを通じて庫内ファンモータ22aに対して予め設定された初期設定値での回転数での駆動指令を与えることにより、初期設定値の回転数で庫内ファン22を駆動させ(ステップS105)、その後に手順をリターンさせて今回の庫内ファン制御処理を終了する。
これによれば、吸込口16aを通じて通風路15に吸い込まれた空気が蒸発器21aで冷却されて吹出口16bに至り、該吹出口16bより収納室14に吹き出されることにより、収納室14の内部雰囲気を冷却することができる。
一方、ステップS103の高負荷判定処理において高負荷環境にあるものと判定した場合(ステップS104:Yes)、制御部40は、出力処理部40dを通じて庫内ファンモータ22aに対して初期設定値よりも回転数を低減させた駆動指令を与えることにより、庫内ファン22を低回転駆動させる(ステップS106)。
このように庫内ファン22を低回転駆動させることにより、蒸発器21aにおける冷媒と周囲空気との熱交換量が低減し、圧縮機21bに吸引される冷媒が低温となる。そのため、圧縮機21bが必要以上に高温となることを抑制することができる。尚、庫内ファン22を低回転駆動させても通風路15を通過する空気は、蒸発器21aである程度冷却されて吹出口16bより吹き出されるので、収納室14の内部雰囲気を冷却することができる。
庫内ファン22を低回転駆動させた制御部40は、該低回転駆動を維持しながら、解除判定処理を実施する(ステップS107)。
図5は、図3に示した解除判定処理の処理内容を示すフローチャートである。この解除判定処理において制御部40は、入力処理部40aを通じて、吐出冷媒温度センサ33からの冷媒吐出温度の入力待ちとなる(ステップS107a)。
冷媒吐出温度を入力した場合(ステップS107a:Yes)、制御部40は、解除判定処理部40cを通じて、記憶部41から解除閾値情報を読み出し、ステップS107aで入力した冷媒吐出温度が解除閾値情報に含まれる解除判定温度以下であるか否かを判断する(ステップS107b)。
冷媒吐出温度が解除判定温度以下でないと判断した場合(ステップS107b:No)、制御部40は、上述したステップS107aの処理を繰り返す。
一方、冷媒吐出温度が解除判定温度以下であると判断した場合(ステップS107b:Yes)、制御部40は、解除判定処理部40cを通じて解除条件を具備するものとして解除判定し(ステップS107c)、その後に手順をリターンさせて今回の解除判定処理を終了する。
そのようにして解除判定処理を実施した制御部40は、出力処理部40dを通じて庫内ファンモータ22aに対して回転数を増大させた駆動指令を与えることにより、初期設定値の回転数で庫内ファン22を駆動させ(ステップS108)、その後に手順をリターンさせて今回の庫内ファン制御処理を終了する。
これによれば、蒸発器21aにおいての熱交換量を増大させることができ、蒸発器21aにより十分に冷却された空気を吹出口16bより収納室14に吹き出させて、収納室14の内部雰囲気冷却することができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態である冷媒回路装置20によれば、制御部40が、駆動指令が与えられることにより圧縮機21bの運転環境が高負荷環境にあるか否かを判定し、高負荷環境にあるものと判定した場合に、初期設定値よりも回転数を低減させて庫内ファン22を低回転駆動させるので、圧縮機21bが必要以上に高温になることを抑制することができる。そして、制御部40が、所定の解除条件を具備することを条件に、低回転駆動を解除して回転数を増大させて初期設定値にて庫内ファン22を駆動させるので、冷媒の循環量等を調整するための機器等を必要としないで、蒸発器での冷却能力を向上させることができる。従って、製造コストの増大化を抑制しつつ冷却効率を良好なものとすることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
上述した実施の形態では、冷媒吐出温度が解除判定温度以下であることを、解除条件を具備するものとして説明したが、本発明においては、庫内ファンを低回転駆動させてからの経過時間が所定の解除時間(例えば2~3時間程度)を経過したことを、解除条件を具備するものとしてもよい。
上述した実施の形態では、解除判定を行った場合に、庫内ファン22の回転数を増大させて初期設定値の回転数で庫内ファン22を駆動させていたが、本発明においては、庫内ファンの回転数を増大させるのであれば、初期設定値を超える回転数であってもよいし初期設定未満の回転数であってもよい。
上述した実施の形態では、周囲温度が周囲基準温度以上であって庫内温度が庫内基準温度以上であることを高負荷判定の条件としたが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
上述した実施の形態では、ショーケースに適用される冷媒回路装置20について説明したが、本発明は、自動販売機に適用されるものであってもよい。