本発明は、半導体装置に関する。
従来、「高圧側及び低圧側にスイッチング素子を直列接続してなるハーフブリッジ回路」を有する半導体装置において、「低圧側のスイッチング素子の低圧側端子に接続する配線上に発生するノイズを除去するノイズ除去手段」を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2003-309982号公報
高圧側のスイッチング素子を駆動するためのハイサイド駆動部の破壊を回避することが望まれている。
本発明の第1の態様においては、ハイサイドスイッチング素子と、ローサイドスイッチング素子と、ハイサイドスイッチング素子のオンオフを切り替えるハイサイド駆動部と、ローサイドスイッチング素子のオンオフを切り替えるローサイド駆動部と、ハイサイド駆動部を駆動するための電源電圧を供給するハイサイド駆動外部端子と、ハイサイド駆動外部端子に接続された保護回路部とを備える半導体装置を提供する。ハイサイド駆動部は、ハイサイド駆動部の基準電位に設定された基準電位端子を有してよい。保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間に接続されてよい。
ハイサイド駆動部は、ハイサイド駆動外部端子と接続されたハイサイド電源端子を有してよい。基準電位端子は、ハイサイドスイッチング素子のエミッタ端子と接続されてよい。保護回路部は、ハイサイド電源端子とエミッタ端子との間に接続されてよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間に接続されたコンデンサを含んでよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間において、直列に接続されたダイオードおよびツェナーダイオードを含んでよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間において、直列に接続された複数のツェナーダイオードを含んでよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間に接続されたダイナミッククランプ回路を含んでよい。
ダイナミッククランプ回路は、トランジスタと、トランジスタのコレクタ端子とベース端子との間に接続された逆阻止ツェナーダイオードと、トランジスタのエミッタ端子とベース端子との間に接続された抵抗とを備えてよい。
ダイナミッククランプ回路は、MOSFETと、MOSFETのドレイン端子とゲート端子との間に接続された逆阻止ツェナーダイオードと、MOSFETのソース端子とゲート端子との間に接続された抵抗とを備えてよい。
保護回路部は、横型の半導体素子構造を有してよい。
保護回路部は、縦型の半導体素子構造を有してよい。
半導体装置は、ハイサイド駆動外部端子とハイサイド駆動部の電源電圧入力端子との間に接続されたブートストラップ部を備えてよい。保護回路部は、ブートストラップ部を同一チップに内蔵してよい。
ハイサイド駆動部と保護回路部とを電気的に接続するための第1ボンディングワイヤの長さは、ハイサイド駆動部とハイサイドスイッチング素子とを電気的に接続するための第2ボンディングワイヤの長さよりも長くてよい。
ハイサイド駆動部と保護回路部とを電気的に接続するための第1ボンディングワイヤの長さは、ハイサイド駆動部とハイサイドスイッチング素子とを電気的に接続するための第2ボンディングワイヤの長さよりも短くてよい。
ハイサイド駆動部は、ハイサイド電源端子と基準電位端子との間に設けられたツェナーダイオードを備えてよい。ツェナーダイオードの耐圧は、保護回路部の耐圧よりも大きくてよい。
ハイサイド駆動部は、ハイサイド電源端子と基準電位端子との間に設けられたツェナーダイオードを備えてよい。保護回路部に流すことが可能なエネルギー量は、ツェナーダイオードに流すことが可能なエネルギー量よりも大きくてよい。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
本実施形態に係る半導体システム200の一例を示す。
より具体的な半導体システム200の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。
ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。
横型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。
縦型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。
半導体装置100の変形例を示す。
図6Aに係る半導体装置100の実装方法の一例を示す。
半導体装置100の実装方法の変形例を示す。
ハイサイド駆動部10の具体的な構成の一例を示す。
比較例に係る半導体装置500の構成を示す。
短絡保護動作時の動作タイムチャートを示す。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1Aは、本実施形態に係る半導体システム200の一例を示す。本例の半導体システム200は、負荷210に接続されている。
半導体システム200は、負荷210に供給する電流のオンオフを切り替える。半導体システム200は、モーター駆動用インバータまたはDC-DCコンバータなどの電力変換装置として機能してよい。本例の半導体システム200は、半導体装置100と、制御部110と、電源130と、コンデンサ140と、電流検出抵抗150とを備える。
半導体装置100は、電力を消費する負荷210に対する電力供給に用いられ、スイッチング素子、駆動回路および保護回路等を備えるインテリジェントパワーモジュール(IPM)であってよい。本例の半導体装置100は、ハイサイド駆動部10と、ローサイド駆動部20と、ハイサイドスイッチング素子30と、ハイサイドダイオード35と、ローサイドスイッチング素子40と、ローサイドダイオード45と、ブートストラップ部50と、保護回路部60とを備える。
ハイサイドスイッチング素子30およびローサイドスイッチング素子40は、負荷210に供給する電流のオンオフを切り替える。ハイサイドスイッチング素子30およびローサイドスイッチング素子40は、電圧駆動型のスイッチング素子であってよく、一例としてIGBTである。これに代えて、スイッチング素子は、パワーMOSFET等のMOSFETであってもよく、例えばSiC、GaN、ダイヤモンド、窒化ガリウム系材料、酸化ガリウム系材料、AlN、AlGaN、または、ZnO等のワイドギャップ半導体を用いたものであってもよい。
ハイサイドスイッチング素子30は、正極端子Pと各相の出力端子(U,V,W)との間に設けられる。ハイサイドスイッチング素子30は、ゲート端子に入力されるゲート電圧に応じて、正極端子Pと負荷210とを接続するか否かを切り替える。
ローサイドスイッチング素子40は、負極端子(N(U),N(V),N(W))と各相の出力端子(U,V,W)との間に設けられる。ローサイドスイッチング素子40は、ゲート端子に入力されるゲート電圧に応じて、負極端子(N(U),N(V),N(W))と負荷210とを接続するか否かを切り替える。
ハイサイドダイオード35は、負荷210からの負荷電流を転流させるためのFWD(Free Wheel Diode)である。ハイサイドダイオード35は、ハイサイドスイッチング素子30に対して並列に接続される。ハイサイドダイオード35は、ワイドギャップ半導体を用いたものであってもよく、ハイサイドスイッチング素子30がMOSFETの場合には寄生ダイオードによって実現されてもよい。ハイサイドスイッチング素子30およびハイサイドダイオード35は、上アーム(即ち、高電圧側アーム)を構成する。
同様に、ローサイドダイオード45は、ローサイドスイッチング素子40に対して並列に接続され、負荷210からの負荷電流を転流させるためのFWDである。ローサイドダイオード45は、ワイドギャップ半導体を用いたものであってもよく、ローサイドスイッチング素子40がMOSFETの場合には寄生ダイオードによって実現されてもよい。ローサイドスイッチング素子40およびローサイドダイオード45は、下アーム(即ち、低電圧側アーム)を構成する。
上アームのエミッタ端子と下アームのコレクタ端子とを接続したノードは、各相の出力端子U~Wと接続されている。上アームのコレクタ端子は、各相の正極端子Pと接続されている。本例の上アームのコレクタ端子は、共通の正極端子Pに接続されている。下アームのエミッタ端子は、各相の負極端子(N(U),N(V),N(W))とそれぞれ接続されている。各相の上アームと下アームは、ハーフブリッジ回路を構成している。
負極端子(N(U),N(V),N(W))は、半導体装置100の外部で相互接続された共通負極端子である端子107に接続されている。正極端子Pと端子107との間には、出力用の直流電源である電源130が接続されている。
ハイサイド駆動部10は、上側アームのハイサイドスイッチング素子30を駆動して、ハイサイドスイッチング素子30のオンオフを切り替えるHVIC(High-Voltage IC)である。ハイサイド駆動部10は、制御部110からのゲート制御入力信号(HU,HV,HW)に応じたゲート電圧を、ハイサイドスイッチング素子30のゲート端子に供給して、ハイサイドスイッチング素子30のオンオフを制御する。本例の半導体装置100は、各相に応じた3つのハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cを備える。
ハイサイド駆動部10は、対応するハイサイドスイッチング素子30のゲート端子およびエミッタ端子と接続されている。ハイサイドスイッチング素子30のゲート端子は、対応するハイサイド駆動部10のゲート出力端子OUTと接続されている。ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ端子は、対応するハイサイド駆動部10の基準電位端子VSと接続されている。ハイサイド駆動部10は、ゲート出力端子OUTと基準電位端子Vsとの間の端子間電圧を制御することにより、対応するハイサイドスイッチング素子30のコレクタ-エミッタ間の導通および遮断を制御する。
これにより、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cは、U相、V相、およびW相のハイサイドスイッチング素子30a~ハイサイド駆動部10cのオンオフをそれぞれ切り替える。ハイサイド駆動部10は、ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ端子と接続され、ハイサイド駆動部10の基準電位に設定された基準電位端子Vsを有する。ハイサイド駆動部10の基準電位は、対応するハイサイドスイッチング素子30のエミッタ側の電位である。
なお、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cは、動作の基準電位が異なるので、各相で独立した駆動ICとされている。そのため、IC内部において各相で独立した基準電位を設ける場合には、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cが1つのICに集積化されてもよい。
ローサイド駆動部20は、下側アームのローサイドスイッチング素子40を駆動して、ローサイドスイッチング素子40のオンオフを切り替えるLVIC(Low-Voltage IC)である。ローサイド駆動部20は、制御部110からのゲート制御入力信号(LU,LV,LW)に応じたゲート電圧を、ローサイドスイッチング素子40のゲート端子に供給して、ローサイドスイッチング素子40のオンオフを制御する。
本例のローサイド駆動部20は、3つのローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cと接続されている。ローサイド駆動部20は、3つのゲート出力端子(UOUT,VOUT,WOUT)を有し、3つのローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cのそれぞれのゲート端子と接続されている。
また、ローサイド駆動部20は、過電流検出外部端子ISに接続されて、電流検出抵抗150で検出されたセンス電圧が入力される。ローサイド駆動部20は、センス電圧が閾値よりも高い場合に、複数のローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cに過電流が流れていると検出する。ローサイド駆動部20は、過電流を検出したことに応じて、複数のローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cをオフに切り替える等の保護動作を行ってよい。
ローサイド駆動部20は、ローサイド制御電源端子VCCLに接続された電源電圧入力端子VCCおよび共通グランド外部端子COMに接続されたグランド端子GNDを有し、電源電圧入力端子VCCとグランド電源GNDとの間の電圧を電源電圧として動作する。ローサイドスイッチング素子40のエミッタ端子は、電流検出抵抗150を介して共通グランド外部端子COMと接続されている。即ち、ローサイド駆動部20は、ローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cのエミッタ側の電位を基準電位として動作する。ローサイド駆動部20は、ゲート出力端子(UOUT,VOUT,WOUT)とグランド端子GNDとの間の端子間電圧を制御することによってローサイドスイッチング素子40のオンオフを制御する。
制御部110は、半導体装置100の駆動を制御するマイクロコントローラである。制御部110は、負荷210であるモーターを予め定められた回転数で回転させるべくゲート制御入力信号(HU,HV,HW,LU,LV,LW)を生成し、外部入力端子INを介してハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cおよびローサイド駆動部20に供給する。一例において、制御部110は、PWM(パルス幅変調)制御によって各ゲート制御入力信号を制御する。
負荷210は、半導体装置100に接続される。本例の負荷210は、U相、V相、およびW相の3相を有する3相モーターであるが、2相(即ち、単相)モーターであってよい。半導体装置100は、モーターの相数に応じた数のハーフブリッジ回路を有してよい。
ブートストラップ部50は、ハイサイド制御電源端子VCCHからの電源電圧によってコンデンサ140を充電するために用いられる。ブートストラップ部50は、ハイサイド制御電源端子VCCHとハイサイド駆動外部端子VBとの間に配置されている。また、ブートストラップ部50は、ハイサイド駆動外部端子VBと電源電圧入力端子VCCとの間に接続されている。ブートストラップ部50の詳細については後述する。
保護回路部60は、発生したサージを吸収するためのハイサイド側の電源保護回路として機能する。保護回路部60は、ハイサイド駆動部10を駆動するための電源電圧を供給するハイサイド駆動外部端子VBと電気的に接続されている。本例の保護回路部60は、ハイサイド駆動外部端子VBと基準電位端子VSとの間に設けられる。また、保護回路部60は、ハイサイド電源端子VBとハイサイドスイッチング素子30のエミッタ端子との間に接続される。ハイサイド電源端子VBは、ハイサイド駆動外部端子VBと接続されている。保護回路部60は、U,V,W相の各相に設けられてよい。保護回路部60の詳細については後述する。
コンデンサ140は、ブートストラップ部50を介して充電され、ハイサイド駆動部10を動作させる。コンデンサ140は、ハイサイド駆動部10の電源用に昇圧するためのブートストラップコンデンサとして機能する。コンデンサ140は、ハイサイド駆動外部端子VBを介して各相のハイサイド駆動部10に電源電圧を供給する。
コンデンサ140aは、ハイサイド駆動外部端子VB(U)端子と出力端子Uとの間に接続され、ブートストラップ部50aにより充電される。コンデンサ140bは、ハイサイド駆動外部端子VB(V)とV端子との間に接続され、ブートストラップ部50bにより充電される。コンデンサ140cは、ハイサイド駆動外部端子VB(W)とW端子との間に接続され、ブートストラップ部50cにより充電される。そして、コンデンサ140a~コンデンサ140cは、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cにそれぞれ電源電圧を供給する。
電流検出抵抗150は、端子107および基準電位105の間に接続される。本変形例において、電流検出抵抗150は、半導体装置100の外部に接続される回路に応じて変更可能とするために半導体装置100の外部に接続される。これに代えて、半導体装置100は、電流検出抵抗150を内蔵してもよい。
なお、本例では、ハイサイドスイッチング素子30が相毎に異なるタイミングでオンに駆動するので、複数のローサイドスイッチング素子40のうち2つ以上が同時にオンとなるタイミングがない。このため、ローサイド駆動部20は、1つの電流検出抵抗150を用いて3相分のローサイドスイッチング素子40の過電流検出を行うことができる。
ここで、ローサイド駆動部20は、電流検出抵抗150により各相のハーフブリッジ回路を流れる電流を検出して、過電流の発生時にモジュールを保護する機能を有する。電流検出抵抗150で検出された電流レベル信号は、過電流検出外部端子ISを介してローサイド駆動部20に伝達される。ローサイド駆動部20は、過電流判定を行い、過電流の発生時にローサイドスイッチング素子40を遮断して下アームを保護する。
一方、ハイサイド駆動部10は、電流検出抵抗150で検出された電流レベル信号が制御部110に伝達されて、過電流の発生時に制御部110の過電流判定に基づいて、ハイサイドスイッチング素子30を遮断して上アームを保護する。制御部110はマイクロコントローラであり、プログラム処理によりこの過電流判定を行う。下アームの側の過電流保護動作に比べてプログラム処理があるために、上アーム側の過電流保護動作は過電流発生からハイサイドスイッチング素子30のOFF動作までの遅延時間が長くなることが多い。本例の半導体装置100は、保護回路部60を備えるので、ハイサイドスイッチング素子30の遮断が遅れてサージ電圧が発生した場合においてもハイサイド駆動部10を保護することができる。
図1Bは、より具体的な半導体システム200の構成の一例を示す。本例では、説明を簡潔にするために、3相のうち1相(本例ではU相)のハーフブリッジ回路のみを図示している。
ブートストラップ部50は、ダイオード52および抵抗54を備える。ダイオード52および抵抗54は、ハイサイド駆動外部端子VBとハイサイド制御電源端子VCCHとの間において直列に接続されている。ダイオード52は、コンデンサ140に充電するためのブートストラップダイオード(BSD)として機能する。ダイオード52のカソード端子は、ハイサイド駆動外部端子VBと接続されている。ダイオード52のアノード端子は、抵抗54を介してハイサイド駆動部10の電源電圧入力端子VCCと接続されている。ブートストラップ部50の構成はこれに限定されない。本例では、U相のブートストラップ部50aを用いて説明したが、他の相のブートストラップ部50についても同様である。
保護回路部60は、端子aおよび端子bを有する。保護回路部60の具体的な回路については後述する。端子aは、ハイサイド電源電位のノード延伸部80に接続されている。端子bは、各相基準電位のノード延伸部90に接続されている。
ノード延伸部80は、ハイサイド電源電位に設定されている。ノード延伸部80の一端は、端子aと接続されている。ノード延伸部80の他端は、ハイサイド駆動外部端子VBおよびハイサイド電源端子VBと接続されている。
ノード延伸部90は、各相の基準電位に設定されている。例えば、U相のハイサイド側の基準電位は、ハイサイドスイッチング素子30aのエミッタ端子の電位である。ノード延伸部90の一端は、端子bと接続されている。ノード延伸部90の他端は、基準電位端子Vsおよびハイサイドスイッチング素子30aのエミッタ端子と接続されている。
図2は、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、コンデンサ61を備える。コンデンサ61の一端が端子aに接続され、他端が端子bに接続されている。保護回路部60は、セラミック等のコンデンサを有するチップ部品であってもよく、後述の通り、横型の半導体素子として実装されても、縦型の半導体素子として実装されてもよい。一例において、保護回路部60が横型の半導体素子として実装される場合、端子aおよび端子bが同一平面上に形成される。保護回路部60が縦型の半導体素子として実装される場合、端子aおよび端子bが対向する平面上にそれぞれ形成される。
図3Aは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、逆阻止ツェナーダイオード69を備える。
逆阻止ツェナーダイオード69は、直列に接続されたツェナーダイオード62およびダイオード63を有する。ツェナーダイオード62のカソード端子が端子aに接続され、ツェナーダイオード62のアノード端子がダイオード63のアノード端子に接続されている。ダイオード63のカソード端子は、端子bに接続されている。このように、逆阻止ツェナーダイオード69においては、ツェナーダイオード62のカソード端子が端子a側に設けられ、ツェナーダイオード62のアノード端子が端子b側に設けられる。
ツェナーダイオード62の降伏電圧は、ハイサイド制御電源端子VCCHとグランド電圧GNDとの間の電源電圧よりも大きく、ハイサイド駆動部10の耐圧よりも小さくなるように選定する。また、ダイオード63の耐圧は、ハイサイド制御電源端子VCCHとグランド電圧GNDとの間の電源電圧以上とする。
図3Bは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、逆阻止ツェナーダイオード69として、直列に接続されたツェナーダイオード62およびダイオード63を備えるが、図3Aの保護回路部60とは接続の向きと順序が異なる。ダイオード63のアノード端子が端子aに接続されている。ツェナーダイオード62およびダイオード63のカソード端子が互いに接続されている。ツェナーダイオード62のアノード端子は、端子bに接続されている。つまり、図3Aの場合と同様に、逆阻止ツェナーダイオード69においては、ツェナーダイオード62のカソード端子が端子a側に設けられ、ツェナーダイオード62のアノード端子が端子b側に設けられる。
図3Cは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、直列に接続されたツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bを備える。保護回路部60は、3つ以上のツェナーダイオード62を備えてもよい。ツェナーダイオード62aのカソード端子が端子aに接続されている。ツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bのアノード端子が互いに接続されている。ツェナーダイオード62bのカソード端子は、端子bに接続されている。
図3Dは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、直列に接続されたツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bを備えるが、図3Cの保護回路部60とは接続の向きと順序が異なる。ツェナーダイオード62aのアノード端子が端子aに接続されている。ツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bのカソード端子が互いに接続されている。ツェナーダイオード62bのアノード端子は、端子bに接続されている。
図4Aは、ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、ツェナーダイオード62と、ダイオード63と、npnトランジスタ64と、抵抗65とを備える。ツェナーダイオード62およびダイオード63は、逆阻止ツェナーダイオード69を構成する。抵抗65は、ペース接地低抗であってよい。一例において、保護回路部60は、縦型の半導体素子として実装されるが、これに限定されない。
抵抗65の抵抗値は、逆阻止ツェナーダイオード69の降伏電流を定格未満に制限できる抵抗値以上に設定される。抵抗65の抵抗値は、制御電源VCCが印加されている状態において、npnトランジスタ64のコレクタ-ベース間の漏れ電流により、npnトランジスタ64がオンしないように選定される。
逆阻止ツェナーダイオード69は、npnトランジスタ64のコレクタ端子とベース端子との間に接続される。npnトランジスタ64のコレクタ端子が端子aに接続され、エミッタ端子が端子bに接続されている。抵抗65は、npnトランジスタ64のベース端子とエミッタ端子との間に接続されている。抵抗65とnpnトランジスタ64のエミッタ端子とが接続されたノードは、端子bに接続される。
図4Bは、ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、npnトランジスタ64の代わりにnチャネルMOSFET66を備える点で、図4Aの保護回路部60と相違する。
逆阻止ツェナーダイオード69は、一端が端子aに接続され、他端がnチャネルMOSFET66のゲート端子に接続される。nチャネルMOSFET66のドレイン端子が端子aに接続され、ソース端子が端子bに接続されている。抵抗65は、nチャネルMOSFET66のゲート端子とソース端子との間に接続されている。即ち、抵抗65は、ゲート接地抵抗であってよい。抵抗65とnチャネルMOSFET66のソース端子とが接続されたノードは、端子bに接続される。本例の保護回路部60は、ダイナミッククランプ回路として機能することにより、サージ電圧が重畳して、ハイサイド駆動部10の定格電圧を超える場合であっても、ハイサイド駆動部10の誤動作および破壊を防止することができる。
ダイナミッククランプ回路である保護回路部60は、逆阻止ツェナーダイオード69と抵抗65の大きさを適切に設定することにより、npnトランジスタ64またはnチャネルMOSFET66がオンする場合に、端子aと端子bとの間の電圧を定める(即ち、クランプする)ことができる。また、npnトランジスタ64またはnチャネルMOSFET66をオンしてサージ電流を流すことで、より高エネルギーのサージが印加されても適切な電圧にクランプすることができる。
図5Aは、横型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、面実装されたセラミック積層コンデンサを有する。
保護回路部60は、横型の半導体素子構造を有する。端子aがノード延伸部80に接続されており、端子bがノード延伸部90に接続されている。端子aおよび端子bは、はんだまたは導電接合材によって接合が可能な電極構造を有している。保護回路部60は、ノード延伸部80とノード延伸部90との間において架橋された状態で搭載されている。
ノード延伸部80は、接続部81およびインナーリード82を有する。接続部81は、端子aと対向して設けられ、端子aとインナーリード82とを接続するための平坦部である。インナーリード82は、ハイサイド駆動外部端子VBに接続されている。本例のインナーリード82上には、ブートストラップ部50が配置されている。ブートストラップ部50は、縦型の半導体素子として実装され、ハイサイド制御電源端子VCCHとボンディングワイヤ53によって接続されている。
ノード延伸部90は、接続部91と、インナーリード92と、ボンディングワイヤ93とを有する。接続部91は、端子bと対向して設けられ、端子bとインナーリード92とを接続するための平坦部である。接続部91は、接続部81と同一平面上に設けられてよい。インナーリード92は、接続部91と電気的に接続して設けられ、保護回路部60から予め定められた方向に延伸して設けられる。ボンディングワイヤ93は、インナーリード92と基準電位端子Vsとを接続する。なお、ノード延伸部90は、ハイサイド駆動外部端子VB、外部入力端子IN、ハイサイド制御電源端子VCCH、および共通グランド外部端子COM等の外部端子と絶縁されている。
ボンディングワイヤ94は、ハイサイド駆動部10の基準電位端子Vsと、ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ電極とを電気的に接続している。本例のボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93よりも短い。即ち、ハイサイドスイッチング素子30は、インナーリード92よりもハイサイド駆動部10により近接して配置されている。
なお、保護回路部60を横型の半導体素子で実装する場合、図2から図4Bのいずれの保護回路部60を用いてもよい。また、本例の実装方法は、上アームの各相に対して同様に適用されてよい。
図5Bは、縦型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、縦型の半導体素子構造を有する。本例では、図5Aの場合と相違する点について特に説明する。
端子aは、保護回路部60の半導体素子の下方に設けられ、インナーリード82に接続されている。端子bは、保護回路部60の半導体素子の上方に設け、ボンディングワイヤ93と接続されている。保護回路部60を縦型の半導体素子で実装する場合も、図2から図4Bのいずれの保護回路部60を用いてもよい。
図6Aは、半導体装置100の変形例を示す。本例の半導体装置100は、ブートストラップ部50を内蔵した保護回路部60を備える点で図1Bの実施形態と相違する。本例では、図1Bの実施形態と相違する点について特に説明する。
保護回路部60がブートストラップ部50を内蔵するとは、保護回路部60およびブートストラップ部50が同一チップ内に設けられることを指してよい。本例では、U相である保護回路部60aがブートストラップ部50aを内蔵する場合を示すが、他の相についても同様に、保護回路部60がブートストラップ部50を内蔵してよい。本例の保護回路部60aは、図4Aの実施例と同様に、npnトランジスタ64と、抵抗65と、逆阻止ツェナーダイオード69とを備えている。
本例の保護回路部60aは、端子a、端子bおよび端子cの3つの端子を備える。端子aは、ハイサイド電源電位のノード延伸部80に接続され、端子bは、各相基準電位のノード延伸部90に接続されている。端子cは、ハイサイド制御電源端子VCCHおよび電源電圧入力端子VCCに接続された端子である。なお、ダイオード52、ツェナーダイオード62、ダイオード63および抵抗65を同一の半導体基板に縦型素子として生成することによって、追加コスト無しでブートストラップ部50を内蔵した保護回路部60を提供することができる。
図6Bは、図6Aに係る半導体装置100の実装方法の一例を示す。本例の保護回路部60は、ブートストラップ部50を内蔵している。保護回路部60は、下面に端子aを備え、上面に端子bおよび端子cを備える。保護回路部60は、インナーリード82の上面に設けられ、端子aがインナーリード82と電気的に接続されている。端子bは、ボンディングワイヤ93によって基準電位端子Vsに接続されている。端子cは、ボンディングワイヤ95によってハイサイド制御電源端子VCCHに接続されている。
本例のボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93よりも短い。即ち、ハイサイドスイッチング素子30は、保護回路部60の端子bよりもハイサイド駆動部10に近接して配置されている。なお、ボンディングワイヤ93は、ハイサイド駆動部10と保護回路部60とを電気的に接続するための第1ボンディングワイヤの一例である。ボンディングワイヤ94は、ハイサイド駆動部10とハイサイドスイッチング素子30とを電気的に接続するための第2ボンディングワイヤの一例である。
図6Cは、半導体装置100の実装方法の変形例を示す。本例のボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93よりも長い。即ち、ハイサイドスイッチング素子30は、保護回路部60の端子bよりもハイサイド駆動部10と離間して配置されている。このように、半導体装置100は、外部端子に接続されたインナーリードの形状を変更することにより、ボンディングワイヤ93およびボンディングワイヤ94の長さを自由に変形することができる。ボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93と同一の長さであってもよい。本例では、保護回路部60とハイサイド駆動部10との間にハイサイド制御電源端子VCCHのインナーリードが設けられていない。そのため、保護回路部60、ハイサイド駆動部10およびハイサイドスイッチング素子30がこの順で配列されて、半導体装置100全体のレイアウトを小さくすることができる。
図7は、ハイサイド駆動部10の具体的な構成の一例を示す。ハイサイド駆動部10は、IN保護回路11と、信号伝達回路12と、出力部13と、VB保護回路14とを備える。
IN保護回路11は、ダイオード111と、ダイオード112と、抵抗113とを備える。ダイオード111およびダイオード112は、電源電圧入力端子VCCとグランド端子GNDとの間に直列に接続される。抵抗113は、入力端子INと、ダイオード111およびダイオード112の接続ノードとの間に接続されている。入力端子INは、電源電圧入力端子VCCから安定した電源が入り入力電流の制限が許容されるので、ダイオードと抵抗による保護回路を構成することができる。
信号伝達回路12は、入力端子INから入力されたIN信号に応じて伝達信号を生成して出力部13に出力する。IN信号は、外部入力端子INと共通グランド外部端子COMとの間の電圧に応じた信号である。出力部13は、CMOS回路を有し、信号伝達回路12からの伝達信号に応じて、ハイサイドスイッチング素子30のゲート端子に入力するための制御信号を出力する。
VB保護回路14は、ハイサイド電源端子VBと基準電位端子Vsとの間に設けられたツェナーダイオード141を備える。VB保護回路14は、アプリケーション上、抵抗を直列に接続した回路構成を用いることが難しいので、ツェナーダイオード141による保護回路で構成されている。ここで、IC耐圧(即ち、VB-Vs間)は、ツェナーダイオード141の耐圧よりも大きくてよい。ツェナーダイオード141の耐圧は、保護回路部60のツェナーダイオード62の耐圧よりも大きくてよい。これにより、発生したサージは、ツェナーダイオード141よりも、保護回路部60のツェナーダイオード62を通って消費されやすくなるので、ツェナーダイオード141の破壊を抑制しやすくなる。保護回路部60のツェナーダイオード62の耐圧は、制御電源VCCにおよそ等しいVB電源電圧よりも大きくてよい。
なお、半導体装置100に保護回路部60が設けられない場合、ハイサイド電源端子VBの過電圧はエネルギーが大きく、ツェナーダイオード141のみの保護回路構成では、十分な過電圧保護効果が得られにくく、ツェナーダイオード141が破壊される可能性がある。保護回路部60に流すことが可能なエネルギー量は、ツェナーダイオード141に流すことが可能なエネルギー量よりも大きくてよい。これにより、保護回路部60は十分なエネルギー量のノイズにも耐えられる。一方、ツェナーダイオード141はハイサイド駆動部10の内部に設けられるので、ハイサイド駆動部10近辺にて発生したノイズに対して素早く反応してハイサイド駆動部10を保護することができる。
図8Aは、比較例に係る半導体装置500の構成を示す。下アーム側のローサイドスイッチング素子40のいずれかに短絡が発生し、上アーム側のハイサイドスイッチング素子30のいずれかがオンした場合、短絡電流ISCが流れる。短絡電流ISCが電流検出抵抗150に流れることで、制御部110は短絡電流ISCが過電流であることを検出し、オンされた上アーム側のハイサイドスイッチング素子30をオフにする。短絡電流ISCは、電流経路をAからA'に流れており、上アームの遮断時に、各寄生インダクタンスによる逆起電圧(Vls0、Vls1、Vls21、Vls3)が発生する。
ここで、遮断時において印加されるハイサイドスイッチング素子30のコレクタ-エミッタ間電圧Vce(sc)およびハイサイド駆動部10の電源端子間電圧(VB-VS)は次式で示される。
Vce(sc)=VDC+Vls0+Vls1+Vls2+Vls3
VB-VS=VBAT+Vls2
このように、ハイサイド駆動部10の電源端子間電圧(VB-VS)に、ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ配線部における寄生インダクタンスLs2によって、逆起電圧Vls2が発生する場合がある。そして、ハイサイド電源電圧VBATとの合計がハイサイド駆動部10の耐圧を超えるような過電圧になった場合、ハイサイド駆動部10の誤動作または破壊の恐れがある。
これに対して、半導体装置100は、寄生インダクタンスLs2が生じるエミッタ配線部に対して並列に保護回路部60を備えることにより、サージ電圧が重畳して、ハイサイド駆動部10の定格電圧を超える場合であっても、効果的にサージ電圧を吸収することができる。これにより、ハイサイド駆動部10の誤動作および破壊を防止することができる。
図8Bは、短絡保護動作時の動作タイムチャートを示す。時刻T1において、IN信号がローからハイに立ち上がり、正極端子Pから負極端子N(U)に向けて短絡電流ISCが流れ始める。短絡電流ISCは、電流検出抵抗150で検出され、ローサイド駆動部20で短絡異常を判定する。ローサイド駆動部20は、短絡異常を判定すると、ローサイドスイッチング素子40を遮断する。
時刻T2において、ハイサイド駆動部10は、電流検出抵抗150の信号を受けた制御部110からの指示によりIN信号がローに下がり、ハイサイドスイッチング素子30を遮断すると、ハイサイドスイッチング素子30のコレクタ-エミッタ間電圧Vceとハイサイド駆動部10の電源端子間電圧(VB-VS)にサージ電圧が発生する。サージ電圧の大きさは、配線経路等の寄生インダクタンス、ハイサイドスイッチング素子30の遮断スピード、直流電圧Vdc、または短絡電流ISC等に応じて変化する。
したがって、上アーム側のハイサイドスイッチング素子30のいずれかが短絡故障しており、下アーム側のローサイドスイッチング素子40がオンした場合のアーム短絡の場合、ローサイド駆動部20にて過電流を判定してローサイドスイッチング素子40を遮断する。この場合、過電流判定から遮断までの時間が短いので、図8Bで説明したような短絡電流が長時間流れることはないので、その大きさも比較的小さい。一方、短絡電流ISCが流れるようなアーム短絡の場合、制御部110における過電流判定に基づき、ハイサイド駆動部10がハイサイドスイッチング素子30を遮断する。この場合、過電流判定から遮断までの時間が長く、短絡電流ISCは流れる時間が長いほど大きくなるので、遮断直前の短絡電流ISCは通常電流の数倍以上となり、これを遮断する場合にdi/dt(時間当たりの電流変化量)も数倍以上に上昇する。このように上昇したdi/dtにより上述した寄生インダクタンスに大きな逆起電力(Vls1、Vls2、Vls3、Vls0)が発生して、遮断しようとする上アームのハイサイドスイッチング素子30に過電圧が印加されて、電源端子間電圧(VB-VS)に大きな電圧が印加され、ハイサイド駆動部10が破壊する恐れがある。
なお、負荷短絡の場合(不図示)、下アームについては、ローサイド駆動部20で過電流を判定して、ローサイドスイッチング素子40を遮断するのに対して、上アームについては、制御部110における過電流判定に基づき、ハイサイド駆動部10がハイサイドスイッチング素子30を遮断する。そのため、上アームにおける過電流保護が下アームにおける過電流保護よりも遅れる場合がある。よって、先に下アームで遮断された短絡電流ISCが上アーム側に転流することとなり、ハイサイドスイッチング素子30は転流した短絡電流ISCを遮断する必要が生じる。
ここで、短絡電流ISCは、通常動作電流の数倍以上となり、これを遮断する場合のdi/dtも数倍以上に上昇する。このように上昇したdi/dtにより、短絡電流ISCの転流経路上の一巡の寄生インダクタンスに大きな逆起電力が発生して、遮断しようとする上アームのハイサイドスイッチング素子30に過電圧が印加されて破壊する恐れがある。
本例の半導体装置100は、スイッチング素子の短絡時に流れる短絡電流ISCに伴う、寄生インダクタに発生する誘起電圧によってハイサイド駆動部10の破壊を防止することができる。また、半導体装置100は、保護回路部60を備えることにより、半導体装置100の外部における対策部品を追加する必要がないので、システムへの影響が少なく、対策コストの低減が可能である。そして、信頼性の高い半導体モジュールを実現できる。
なお、本発明の実施の形態では、制御部110も過電流検出外部端子ISからの電流を検出し、電流検出抵抗150に流れる電流が過電流であると判断した場合、上アームのハイサイドスイッチング素子30をオフにする制御を行っている。ローサイド駆動部20が過電流検出外部端子ISからの電流を検出した結果を制御部110に送るための過電流検出結果送付用信号線を、制御部110とローサイド駆動部20との間に設け、ローサイド駆動部20が過電流検出外部端子ISからの電流を検出し、電流検出抵抗150に流れる電流が過電流であると判断する。その後、その情報を過電流検出結果送付用信号線から制御部110が受けて、上アームのハイサイドスイッチング素子30をオフにする制御を行ってもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
10・・・ハイサイド駆動部、11・・・IN保護回路、12・・・信号伝達回路、13・・・出力部、14・・・VB保護回路、20・・・ローサイド駆動部、30・・・ハイサイドスイッチング素子、35・・・ハイサイドダイオード、40・・・ローサイドスイッチング素子、45・・・ローサイドダイオード、50・・・ブートストラップ部、52・・・ダイオード、53・・・ボンディングワイヤ、54・・・抵抗、60・・・保護回路部、61・・・コンデンサ、62・・・ツェナーダイオード、63・・・ダイオード、64・・・npnトランジスタ、65・・・抵抗、66・・・nチャネルMOSFET、69・・・逆阻止ツェナーダイオード、80・・・ノード延伸部、81・・・接続部、82・・・インナーリード、90・・・ノード延伸部、91・・・接続部、92・・・インナーリード、93・・・ボンディングワイヤ、94・・・ボンディングワイヤ、95・・・ボンディングワイヤ、100・・・半導体装置、105・・・基準電位、107・・・端子、110・・・制御部、111・・・ダイオード、112・・・ダイオード、113・・・抵抗、130・・・電源、140・・・コンデンサ、141・・・ツェナーダイオード、150・・・電流検出抵抗、200・・・半導体システム、210・・・負荷、500・・・半導体装置
本発明は、半導体装置に関する。
従来、「高圧側及び低圧側にスイッチング素子を直列接続してなるハーフブリッジ回路」を有する半導体装置において、「低圧側のスイッチング素子の低圧側端子に接続する配線上に発生するノイズを除去するノイズ除去手段」を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2003-309982号公報
高圧側のスイッチング素子を駆動するためのハイサイド駆動部の破壊を回避することが望まれている。
本発明の第1の態様においては、ハイサイドスイッチング素子と、ローサイドスイッチング素子と、ハイサイドスイッチング素子のオンオフを切り替えるハイサイド駆動部と、ローサイドスイッチング素子のオンオフを切り替えるローサイド駆動部と、ハイサイド駆動部を駆動するための電源電圧を供給するハイサイド駆動外部端子と、ハイサイド駆動外部端子に接続された保護回路部とを備える半導体装置を提供する。ハイサイド駆動部は、ハイサイド駆動部の基準電位に設定された基準電位端子を有してよい。保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間に接続されてよい。
ハイサイド駆動部は、ハイサイド駆動外部端子と接続されたハイサイド電源端子を有してよい。基準電位端子は、ハイサイドスイッチング素子のエミッタ端子と接続されてよい。保護回路部は、ハイサイド電源端子とエミッタ端子との間に接続されてよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間に接続されたコンデンサを含んでよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間において、直列に接続されたダイオードおよびツェナーダイオードを含んでよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間において、直列に接続された複数のツェナーダイオードを含んでよい。
保護回路部は、ハイサイド駆動外部端子と基準電位端子との間に接続されたダイナミッククランプ回路を含んでよい。
ダイナミッククランプ回路は、トランジスタと、トランジスタのコレクタ端子とベース端子との間に接続された逆阻止ツェナーダイオードと、トランジスタのエミッタ端子とベース端子との間に接続された抵抗とを備えてよい。
ダイナミッククランプ回路は、MOSFETと、MOSFETのドレイン端子とゲート端子との間に接続された逆阻止ツェナーダイオードと、MOSFETのソース端子とゲート端子との間に接続された抵抗とを備えてよい。
保護回路部は、横型の半導体素子構造を有してよい。
保護回路部は、縦型の半導体素子構造を有してよい。
半導体装置は、ハイサイド駆動外部端子とハイサイド駆動部の電源電圧入力端子との間に接続されたブートストラップ部を備えてよい。保護回路部は、ブートストラップ部を同一チップに内蔵してよい。
ハイサイド駆動部と保護回路部とを電気的に接続するための第1ボンディングワイヤの長さは、ハイサイド駆動部とハイサイドスイッチング素子とを電気的に接続するための第2ボンディングワイヤの長さよりも長くてよい。
ハイサイド駆動部と保護回路部とを電気的に接続するための第1ボンディングワイヤの長さは、ハイサイド駆動部とハイサイドスイッチング素子とを電気的に接続するための第2ボンディングワイヤの長さよりも短くてよい。
ハイサイド駆動部は、ハイサイド電源端子と基準電位端子との間に設けられたツェナーダイオードを備えてよい。ハイサイド駆動部のツェナーダイオードの耐圧は、保護回路部の耐圧よりも大きくてよい。
ハイサイド駆動部は、ハイサイド電源端子と基準電位端子との間に設けられたツェナーダイオードを備えてよい。保護回路部に流すことが可能なエネルギー量は、ハイサイド駆動部のツェナーダイオードに流すことが可能なエネルギー量よりも大きくてよい。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
本実施形態に係る半導体システム200の一例を示す。
より具体的な半導体システム200の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
保護回路部60の構成の一例を示す。
ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。
ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。
横型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。
縦型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。
半導体装置100の変形例を示す。
図6Aに係る半導体装置100の実装方法の一例を示す。
半導体装置100の実装方法の変形例を示す。
ハイサイド駆動部10の具体的な構成の一例を示す。
比較例に係る半導体装置500の構成を示す。
短絡保護動作時の動作タイムチャートを示す。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1Aは、本実施形態に係る半導体システム200の一例を示す。本例の半導体システム200は、負荷210に接続されている。
半導体システム200は、負荷210に供給する電流のオンオフを切り替える。半導体システム200は、モーター駆動用インバータまたはDC-DCコンバータなどの電力変換装置として機能してよい。本例の半導体システム200は、半導体装置100と、制御部110と、電源130と、コンデンサ140と、電流検出抵抗150とを備える。
半導体装置100は、電力を消費する負荷210に対する電力供給に用いられ、スイッチング素子、駆動回路および保護回路等を備えるインテリジェントパワーモジュール(IPM)であってよい。本例の半導体装置100は、ハイサイド駆動部10と、ローサイド駆動部20と、ハイサイドスイッチング素子30と、ハイサイドダイオード35と、ローサイドスイッチング素子40と、ローサイドダイオード45と、ブートストラップ部50と、保護回路部60とを備える。
ハイサイドスイッチング素子30およびローサイドスイッチング素子40は、負荷210に供給する電流のオンオフを切り替える。ハイサイドスイッチング素子30およびローサイドスイッチング素子40は、電圧駆動型のスイッチング素子であってよく、一例としてIGBTである。これに代えて、スイッチング素子は、パワーMOSFET等のMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)であってもよく、例えばSiC、GaN、ダイヤモンド、窒化ガリウム系材料、酸化ガリウム系材料、AlN、AlGaN、または、ZnO等のワイドギャップ半導体を用いたものであってもよい。
ハイサイドスイッチング素子30は、正極端子Pと各相の出力端子(U,V,W)との間に設けられる。ハイサイドスイッチング素子30は、ゲート端子に入力されるゲート電圧に応じて、正極端子Pと負荷210とを接続するか否かを切り替える。
ローサイドスイッチング素子40は、負極端子(N(U),N(V),N(W))と各相の出力端子(U,V,W)との間に設けられる。ローサイドスイッチング素子40は、ゲート端子に入力されるゲート電圧に応じて、負極端子(N(U),N(V),N(W))と負荷210とを接続するか否かを切り替える。
ハイサイドダイオード35は、負荷210からの負荷電流を転流させるためのFWD(Free Wheel Diode)である。ハイサイドダイオード35は、ハイサイドスイッチング素子30に対して並列に接続される。ハイサイドダイオード35は、ワイドギャップ半導体を用いたものであってもよく、ハイサイドスイッチング素子30がMOSFETの場合には寄生ダイオードによって実現されてもよい。ハイサイドスイッチング素子30およびハイサイドダイオード35は、上アーム(即ち、高電圧側アーム)を構成する。
同様に、ローサイドダイオード45は、ローサイドスイッチング素子40に対して並列に接続され、負荷210からの負荷電流を転流させるためのFWDである。ローサイドダイオード45は、ワイドギャップ半導体を用いたものであってもよく、ローサイドスイッチング素子40がMOSFETの場合には寄生ダイオードによって実現されてもよい。ローサイドスイッチング素子40およびローサイドダイオード45は、下アーム(即ち、低電圧側アーム)を構成する。
上アームのエミッタ端子と下アームのコレクタ端子とを接続したノードは、各相の出力端子U~Wと接続されている。上アームのコレクタ端子は、各相の正極端子Pと接続されている。本例の上アームのコレクタ端子は、共通の正極端子Pに接続されている。下アームのエミッタ端子は、各相の負極端子(N(U),N(V),N(W))とそれぞれ接続されている。各相の上アームと下アームは、ハーフブリッジ回路を構成している。
負極端子(N(U),N(V),N(W))は、半導体装置100の外部で相互接続された共通負極端子である端子107に接続されている。正極端子Pと端子107との間には、出力用の直流電源である電源130が接続されている。
ハイサイド駆動部10は、上アーム側のハイサイドスイッチング素子30を駆動して、ハイサイドスイッチング素子30のオンオフを切り替えるHVIC(High-Voltage IC)である。ハイサイド駆動部10は、制御部110からのゲート制御入力信号(HU,HV,HW)に応じたゲート電圧を、ハイサイドスイッチング素子30のゲート端子に供給して、ハイサイドスイッチング素子30のオンオフを制御する。本例の半導体装置100は、各相に応じた3つのハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cを備える。
ハイサイド駆動部10は、対応するハイサイドスイッチング素子30のゲート端子およびエミッタ端子と接続されている。ハイサイドスイッチング素子30のゲート端子は、対応するハイサイド駆動部10のゲート出力端子OUTと接続されている。ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ端子は、対応するハイサイド駆動部10の基準電位端子VSと接続されている。ハイサイド駆動部10は、ゲート出力端子OUTと基準電位端子Vsとの間の端子間電圧を制御することにより、対応するハイサイドスイッチング素子30のコレクタ-エミッタ間の導通および遮断を制御する。
これにより、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cは、U相、V相、およびW相のハイサイドスイッチング素子30a~ハイサイドスイッチング素子30cのオンオフをそれぞれ切り替える。ハイサイド駆動部10は、ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ端子と接続され、ハイサイド駆動部10の基準電位に設定された基準電位端子Vsを有する。ハイサイド駆動部10の基準電位は、対応するハイサイドスイッチング素子30のエミッタ側の電位である。
なお、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cは、動作の基準電位が異なるので、各相で独立した駆動ICとされている。そのため、IC内部において各相で独立した基準電位を設ける場合には、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cが1つのICに集積化されてもよい。
ローサイド駆動部20は、下アーム側のローサイドスイッチング素子40を駆動して、ローサイドスイッチング素子40のオンオフを切り替えるLVIC(Low-Voltage IC)である。ローサイド駆動部20は、制御部110からのゲート制御入力信号(LU,LV,LW)に応じたゲート電圧を、ローサイドスイッチング素子40のゲート端子に供給して、ローサイドスイッチング素子40のオンオフを制御する。
本例のローサイド駆動部20は、3つのローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cと接続されている。ローサイド駆動部20は、3つのゲート出力端子(UOUT,VOUT,WOUT)を有し、3つのローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cのそれぞれのゲート端子と接続されている。
また、ローサイド駆動部20は、過電流検出外部端子ISに接続されて、電流検出抵抗150で検出されたセンス電圧が入力される。ローサイド駆動部20は、センス電圧が閾値よりも高い場合に、複数のローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cに過電流が流れていると検出する。ローサイド駆動部20は、過電流を検出したことに応じて、複数のローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cをオフに切り替える等の保護動作を行ってよい。
ローサイド駆動部20は、ローサイド制御電源端子VCCLに接続された電源電圧入力端子VCCおよび共通グランド外部端子COMに接続されたグランド端子GNDを有し、電源電圧入力端子VCCとグランド端子GNDとの間の電圧を電源電圧として動作する。ローサイドスイッチング素子40のエミッタ端子は、電流検出抵抗150を介して共通グランド外部端子COMと接続されている。即ち、ローサイド駆動部20は、ローサイドスイッチング素子40a~ローサイドスイッチング素子40cのエミッタ側の電位を基準電位として動作する。ローサイド駆動部20は、ゲート出力端子(UOUT,VOUT,WOUT)とグランド端子GNDとの間の端子間電圧を制御することによってローサイドスイッチング素子40のオンオフを制御する。
制御部110は、半導体装置100の駆動を制御するマイクロコントローラである。制御部110は、負荷210であるモーターを予め定められた回転数で回転させるべくゲート制御入力信号(HU,HV,HW,LU,LV,LW)を生成し、外部入力端子INを介してハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cおよびローサイド駆動部20に供給する。一例において、制御部110は、PWM(パルス幅変調)制御によって各ゲート制御入力信号を制御する。
負荷210は、半導体装置100に接続される。本例の負荷210は、U相、V相、およびW相の3相を有する3相モーターであるが、2相(即ち、単相)モーターであってよい。半導体装置100は、モーターの相数に応じた数のハーフブリッジ回路を有してよい。
ブートストラップ部50は、ハイサイド制御電源端子VCCHからの電源電圧によってコンデンサ140を充電するために用いられる。ブートストラップ部50は、ハイサイド制御電源端子VCCHとハイサイド駆動外部端子VBとの間に配置されている。また、ブートストラップ部50は、ハイサイド駆動外部端子VBと電源電圧入力端子VCCとの間に接続されている。ブートストラップ部50の詳細については後述する。
保護回路部60は、発生したサージを吸収するためのハイサイド側の電源保護回路として機能する。保護回路部60は、ハイサイド駆動部10を駆動するための電源電圧を供給するハイサイド駆動外部端子VBと電気的に接続されている。本例の保護回路部60は、ハイサイド駆動外部端子VBと基準電位端子VSとの間に設けられる。また、保護回路部60は、ハイサイド電源端子VBとハイサイドスイッチング素子30のエミッタ端子との間に接続される。ハイサイド電源端子VBは、ハイサイド駆動外部端子VBと接続されている。保護回路部60は、U,V,W相の各相に設けられてよい。保護回路部60の詳細については後述する。
コンデンサ140は、ブートストラップ部50を介して充電され、ハイサイド駆動部10を動作させる。コンデンサ140は、ハイサイド駆動部10の電源を昇圧するためのブートストラップコンデンサとして機能する。コンデンサ140は、ハイサイド駆動外部端子VBを介して各相のハイサイド駆動部10に電源電圧を供給する。
コンデンサ140aは、ハイサイド駆動外部端子VB(U)と出力端子Uとの間に接続され、ブートストラップ部50aにより充電される。コンデンサ140bは、ハイサイド駆動外部端子VB(V)と出力端子Vとの間に接続され、ブートストラップ部50bにより充電される。コンデンサ140cは、ハイサイド駆動外部端子VB(W)と出力端子Wとの間に接続され、ブートストラップ部50cにより充電される。そして、コンデンサ140a~コンデンサ140cは、ハイサイド駆動部10a~ハイサイド駆動部10cにそれぞれ電源電圧を供給する。
電流検出抵抗150は、端子107および基準電位105の間に接続される。本変形例において、電流検出抵抗150は、半導体装置100の外部に接続される回路に応じて変更可能とするために半導体装置100の外部に接続される。これに代えて、半導体装置100は、電流検出抵抗150を内蔵してもよい。
なお、本例では、ハイサイドスイッチング素子30が相毎に異なるタイミングでオンに駆動するので、複数のローサイドスイッチング素子40のうち2つ以上が同時にオンとなるタイミングがない。このため、ローサイド駆動部20は、1つの電流検出抵抗150を用いて3相分のローサイドスイッチング素子40の過電流検出を行うことができる。
ここで、ローサイド駆動部20は、電流検出抵抗150により各相のハーフブリッジ回路を流れる電流を検出して、過電流の発生時にモジュールを保護する機能を有する。電流検出抵抗150で検出された電流レベル信号は、過電流検出外部端子ISを介してローサイド駆動部20に伝達される。ローサイド駆動部20は、過電流判定を行い、過電流の発生時にローサイドスイッチング素子40を遮断して下アームを保護する。
一方、ハイサイド駆動部10は、電流検出抵抗150で検出された電流レベル信号が制御部110に伝達されて、過電流の発生時に制御部110の過電流判定に基づいて、ハイサイドスイッチング素子30を遮断して上アームを保護する。制御部110はマイクロコントローラであり、プログラム処理によりこの過電流判定を行う。下アームの側の過電流保護動作に比べてプログラム処理があるために、上アーム側の過電流保護動作は過電流発生からハイサイドスイッチング素子30のOFF動作までの遅延時間が長くなることが多い。本例の半導体装置100は、保護回路部60を備えるので、ハイサイドスイッチング素子30の遮断が遅れてサージ電圧が発生した場合においてもハイサイド駆動部10を保護することができる。
図1Bは、より具体的な半導体システム200の構成の一例を示す。本例では、説明を簡潔にするために、3相のうち1相(本例ではU相)のハーフブリッジ回路のみを図示している。
ブートストラップ部50は、ダイオード52および抵抗54を備える。ダイオード52および抵抗54は、ハイサイド駆動外部端子VBとハイサイド制御電源端子VCCHとの間において直列に接続されている。ダイオード52は、コンデンサ140に充電するためのブートストラップダイオード(BSD)として機能する。ダイオード52のカソード端子は、ハイサイド駆動外部端子VBと接続されている。ダイオード52のアノード端子は、抵抗54を介してハイサイド駆動部10の電源電圧入力端子VCCと接続されている。ブートストラップ部50の構成はこれに限定されない。本例では、U相のブートストラップ部50aを用いて説明したが、他の相のブートストラップ部50についても同様である。
保護回路部60は、端子aおよび端子bを有する。保護回路部60の具体的な回路については後述する。端子aは、ハイサイド電源電位のノード延伸部80に接続されている。端子bは、各相基準電位のノード延伸部90に接続されている。
ノード延伸部80は、ハイサイド電源電位に設定されている。ノード延伸部80の一端は、端子aと接続されている。ノード延伸部80の他端は、ハイサイド駆動外部端子VBおよびハイサイド電源端子VBと接続されている。
ノード延伸部90は、各相の基準電位に設定されている。例えば、U相のハイサイド側の基準電位は、ハイサイドスイッチング素子30aのエミッタ端子の電位である。ノード延伸部90の一端は、端子bと接続されている。ノード延伸部90の他端は、基準電位端子Vsおよびハイサイドスイッチング素子30aのエミッタ端子と接続されている。
図2は、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、コンデンサ61を備える。コンデンサ61の一端が端子aに接続され、他端が端子bに接続されている。保護回路部60は、セラミック等のコンデンサを有するチップ部品であってもよく、後述の通り、横型の半導体素子として実装されても、縦型の半導体素子として実装されてもよい。一例において、保護回路部60が横型の半導体素子として実装される場合、端子aおよび端子bが同一平面上に形成される。保護回路部60が縦型の半導体素子として実装される場合、端子aおよび端子bが対向する平面上にそれぞれ形成される。
図3Aは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、逆阻止ツェナーダイオード69を備える。
逆阻止ツェナーダイオード69は、直列に接続されたツェナーダイオード62およびダイオード63を有する。ツェナーダイオード62のカソード端子が端子aに接続され、ツェナーダイオード62のアノード端子がダイオード63のアノード端子に接続されている。ダイオード63のカソード端子は、端子bに接続されている。このように、逆阻止ツェナーダイオード69においては、ツェナーダイオード62のカソード端子が端子a側に設けられ、ツェナーダイオード62のアノード端子が端子b側に設けられる。
ツェナーダイオード62の降伏電圧は、ハイサイド制御電源端子VCCHとグランド電圧GNDとの間の電源電圧よりも大きく、ハイサイド駆動部10の耐圧よりも小さくなるように選定する。また、ダイオード63の耐圧は、ハイサイド制御電源端子VCCHとグランド電圧GNDとの間の電源電圧以上とする。
図3Bは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、逆阻止ツェナーダイオード69として、直列に接続されたツェナーダイオード62およびダイオード63を備えるが、図3Aの保護回路部60とは接続の向きと順序が異なる。ダイオード63のアノード端子が端子aに接続されている。ツェナーダイオード62およびダイオード63のカソード端子が互いに接続されている。ツェナーダイオード62のアノード端子は、端子bに接続されている。つまり、図3Aの場合と同様に、逆阻止ツェナーダイオード69においては、ツェナーダイオード62のカソード端子が端子a側に設けられ、ツェナーダイオード62のアノード端子が端子b側に設けられる。
図3Cは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、直列に接続されたツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bを備える。保護回路部60は、3つ以上のツェナーダイオード62を備えてもよい。ツェナーダイオード62aのカソード端子が端子aに接続されている。ツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bのアノード端子が互いに接続されている。ツェナーダイオード62bのカソード端子は、端子bに接続されている。
図3Dは、保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、直列に接続されたツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bを備えるが、図3Cの保護回路部60とは接続の向きと順序が異なる。ツェナーダイオード62aのアノード端子が端子aに接続されている。ツェナーダイオード62aおよびツェナーダイオード62bのカソード端子が互いに接続されている。ツェナーダイオード62bのアノード端子は、端子bに接続されている。
図4Aは、ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、ツェナーダイオード62と、ダイオード63と、npnトランジスタ64と、抵抗65とを備える。ツェナーダイオード62およびダイオード63は、逆阻止ツェナーダイオード69を構成する。抵抗65は、ベース接地抵抗であってよい。一例において、保護回路部60は、縦型の半導体素子として実装されるが、これに限定されない。
抵抗65の抵抗値は、逆阻止ツェナーダイオード69の降伏電流を定格未満に制限できる抵抗値以上に設定される。抵抗65の抵抗値は、制御電源電圧VCCが印加されている状態において、npnトランジスタ64のコレクタ-ベース間の漏れ電流により、npnトランジスタ64がオンしないように選定される。
逆阻止ツェナーダイオード69は、npnトランジスタ64のコレクタ端子とベース端子との間に接続される。npnトランジスタ64のコレクタ端子が端子aに接続され、エミッタ端子が端子bに接続されている。抵抗65は、npnトランジスタ64のベース端子とエミッタ端子との間に接続されている。抵抗65とnpnトランジスタ64のエミッタ端子とが接続されたノードは、端子bに接続される。
図4Bは、ダイナミッククランプ回路である保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、npnトランジスタ64の代わりにnチャネルMOSFET66を備える点で、図4Aの保護回路部60と相違する。
逆阻止ツェナーダイオード69は、一端が端子aに接続され、他端がnチャネルMOSFET66のゲート端子に接続される。nチャネルMOSFET66のドレイン端子が端子aに接続され、ソース端子が端子bに接続されている。抵抗65は、nチャネルMOSFET66のゲート端子とソース端子との間に接続されている。即ち、抵抗65は、ゲート接地抵抗であってよい。抵抗65とnチャネルMOSFET66のソース端子とが接続されたノードは、端子bに接続される。本例の保護回路部60は、ダイナミッククランプ回路として機能することにより、サージ電圧が重畳して、ハイサイド駆動部10の定格電圧を超える場合であっても、ハイサイド駆動部10の誤動作および破壊を防止することができる。
ダイナミッククランプ回路である保護回路部60は、逆阻止ツェナーダイオード69と抵抗65の大きさを適切に設定することにより、npnトランジスタ64またはnチャネルMOSFET66がオンする場合に、端子aと端子bとの間の電圧を定める(即ち、クランプする)ことができる。また、npnトランジスタ64またはnチャネルMOSFET66をオンしてサージ電流を流すことで、より高エネルギーのサージが印加されても適切な電圧にクランプすることができる。
図5Aは、横型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、面実装されたセラミック積層コンデンサを有する。
保護回路部60は、横型の半導体素子構造を有する。端子aがノード延伸部80に接続されており、端子bがノード延伸部90に接続されている。端子aおよび端子bは、はんだまたは導電接合材によって接合が可能な電極構造を有している。保護回路部60は、ノード延伸部80とノード延伸部90との間において架橋された状態で搭載されている。
ノード延伸部80は、接続部81およびインナーリード82を有する。接続部81は、端子aと対向して設けられ、端子aとインナーリード82とを接続するための平坦部である。インナーリード82は、ハイサイド駆動外部端子VBに接続されている。本例のインナーリード82上には、ブートストラップ部50が配置されている。ブートストラップ部50は、縦型の半導体素子として実装され、ハイサイド制御電源端子VCCHとボンディングワイヤ53によって接続されている。
ノード延伸部90は、接続部91と、インナーリード92と、ボンディングワイヤ93とを有する。接続部91は、端子bと対向して設けられ、端子bとインナーリード92とを接続するための平坦部である。接続部91は、接続部81と同一平面上に設けられてよい。インナーリード92は、接続部91と電気的に接続して設けられ、保護回路部60から予め定められた方向に延伸して設けられる。ボンディングワイヤ93は、インナーリード92と基準電位端子Vsとを接続する。なお、ノード延伸部90は、ハイサイド駆動外部端子VB、外部入力端子IN、ハイサイド制御電源端子VCCH、および共通グランド外部端子COM等の外部端子と絶縁されている。
ボンディングワイヤ94は、ハイサイド駆動部10の基準電位端子Vsと、ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ電極とを電気的に接続している。本例のボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93よりも短い。即ち、ハイサイドスイッチング素子30は、インナーリード92よりもハイサイド駆動部10により近接して配置されている。
なお、保護回路部60を横型の半導体素子で実装する場合、図2から図4Bのいずれの保護回路部60を用いてもよい。また、本例の実装方法は、上アームの各相に対して同様に適用されてよい。
図5Bは、縦型配置の保護回路部60の構成の一例を示す。本例の保護回路部60は、縦型の半導体素子構造を有する。本例では、図5Aの場合と相違する点について特に説明する。
端子aは、保護回路部60の半導体素子の下方に設けられ、インナーリード82に接続されている。端子bは、保護回路部60の半導体素子の上方に設け、ボンディングワイヤ93と接続されている。保護回路部60を縦型の半導体素子で実装する場合も、図2から図4Bのいずれの保護回路部60を用いてもよい。
図6Aは、半導体装置100の変形例を示す。本例の半導体装置100は、ブートストラップ部50を内蔵した保護回路部60を備える点で図1Bの実施形態と相違する。本例では、図1Bの実施形態と相違する点について特に説明する。
保護回路部60がブートストラップ部50を内蔵するとは、保護回路部60およびブートストラップ部50が同一チップ内に設けられることを指してよい。本例では、U相である保護回路部60aがブートストラップ部50aを内蔵する場合を示すが、他の相についても同様に、保護回路部60がブートストラップ部50を内蔵してよい。本例の保護回路部60aは、図4Aの実施例と同様に、npnトランジスタ64と、抵抗65と、逆阻止ツェナーダイオード69とを備えている。
本例の保護回路部60aは、端子a、端子bおよび端子cの3つの端子を備える。端子aは、ハイサイド電源電位のノード延伸部80に接続され、端子bは、各相基準電位のノード延伸部90に接続されている。端子cは、ハイサイド制御電源端子VCCHおよび電源電圧入力端子VCCに接続された端子である。なお、ダイオード52、ツェナーダイオード62、ダイオード63および抵抗65を同一の半導体基板に縦型素子として生成することによって、追加コスト無しでブートストラップ部50を内蔵した保護回路部60を提供することができる。
図6Bは、図6Aに係る半導体装置100の実装方法の一例を示す。本例の保護回路部60は、ブートストラップ部50を内蔵している。保護回路部60は、下面に端子aを備え、上面に端子bおよび端子cを備える。保護回路部60は、インナーリード82の上面に設けられ、端子aがインナーリード82と電気的に接続されている。端子bは、ボンディングワイヤ93によって基準電位端子Vsに接続されている。端子cは、ボンディングワイヤ95によってハイサイド制御電源端子VCCHに接続されている。
本例のボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93よりも短い。即ち、ハイサイドスイッチング素子30は、保護回路部60の端子bよりもハイサイド駆動部10に近接して配置されている。なお、ボンディングワイヤ93は、ハイサイド駆動部10と保護回路部60とを電気的に接続するための第1ボンディングワイヤの一例である。ボンディングワイヤ94は、ハイサイド駆動部10とハイサイドスイッチング素子30とを電気的に接続するための第2ボンディングワイヤの一例である。
図6Cは、半導体装置100の実装方法の変形例を示す。本例のボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93よりも長い。即ち、ハイサイドスイッチング素子30は、保護回路部60の端子bよりもハイサイド駆動部10と離間して配置されている。このように、半導体装置100は、外部端子に接続されたインナーリードの形状を変更することにより、ボンディングワイヤ93およびボンディングワイヤ94の長さを自由に変形することができる。ボンディングワイヤ94は、ボンディングワイヤ93と同一の長さであってもよい。本例では、保護回路部60とハイサイド駆動部10との間にハイサイド制御電源端子VCCHのインナーリードが設けられていない。そのため、保護回路部60、ハイサイド駆動部10およびハイサイドスイッチング素子30がこの順で配列されて、半導体装置100全体のレイアウト面積を小さくすることができる。
図7は、ハイサイド駆動部10の具体的な構成の一例を示す。ハイサイド駆動部10は、IN保護回路11と、信号伝達回路12と、出力部13と、VB保護回路14とを備える。
IN保護回路11は、ダイオード111と、ダイオード112と、抵抗113とを備える。ダイオード111およびダイオード112は、電源電圧入力端子VCCとグランド端子GNDとの間に直列に接続される。抵抗113は、入力端子INと、ダイオード111およびダイオード112の接続ノードとの間に接続されている。入力端子INは、電源電圧入力端子VCCから安定した電源が入り入力電流の制限が許容されるので、ダイオードと抵抗による保護回路を構成することができる。
信号伝達回路12は、入力端子INから入力されたIN信号に応じて伝達信号を生成して出力部13に出力する。IN信号は、外部入力端子INと共通グランド外部端子COMとの間の電圧に応じた信号である。出力部13は、CMOS回路を有し、信号伝達回路12からの伝達信号に応じて、ハイサイドスイッチング素子30のゲート端子に入力するための制御信号を出力する。
VB保護回路14は、ハイサイド電源端子VBと基準電位端子Vsとの間に設けられたツェナーダイオード141を備える。VB保護回路14は、アプリケーション上、抵抗を直列に接続した回路構成を用いることが難しいので、ツェナーダイオード141による保護回路で構成されている。ここで、IC耐圧(即ち、VB-Vs間)は、ツェナーダイオード141の耐圧よりも大きくてよい。ツェナーダイオード141の耐圧は、保護回路部60のツェナーダイオード62の耐圧よりも大きくてよい。これにより、発生したサージは、ツェナーダイオード141よりも、保護回路部60のツェナーダイオード62を通って消費されやすくなるので、ツェナーダイオード141の破壊を抑制しやすくなる。保護回路部60のツェナーダイオード62の耐圧は、制御電源電圧VCCにおよそ等しいVB電源電圧よりも大きくてよい。
なお、半導体装置100に保護回路部60が設けられない場合、ハイサイド電源端子VBの過電圧はエネルギーが大きく、ツェナーダイオード141のみの保護回路構成では、十分な過電圧保護効果が得られにくく、ツェナーダイオード141が破壊される可能性がある。保護回路部60に流すことが可能なエネルギー量は、ツェナーダイオード141に流すことが可能なエネルギー量よりも大きくてよい。これにより、保護回路部60は十分なエネルギー量のノイズにも耐えられる。一方、ツェナーダイオード141はハイサイド駆動部10の内部に設けられるので、ハイサイド駆動部10近辺にて発生したノイズに対して素早く反応してハイサイド駆動部10を保護することができる。
図8Aは、比較例に係る半導体装置500の構成を示す。下アーム側のローサイドスイッチング素子40のいずれかに短絡が発生し、上アーム側のハイサイドスイッチング素子30のいずれかがオンした場合、短絡電流ISCが流れる。短絡電流ISCが電流検出抵抗150に流れることで、制御部110は短絡電流ISCが過電流であることを検出し、オンされた上アーム側のハイサイドスイッチング素子30をオフにする。短絡電流ISCは、電流経路をAからA'に流れており、上アームの遮断時に、各寄生インダクタンスによる逆起電圧(Vls0、Vls1、Vls2
、Vls3)が発生する。
ここで、遮断時において印加されるハイサイドスイッチング素子30のコレクタ-エミッタ間電圧Vce(sc)およびハイサイド駆動部10の電源端子間電圧(VB-VS)は次式で示される。
Vce(sc)=VDC+Vls0+Vls1+Vls2+Vls3
VB-VS=VBAT+Vls2
このように、ハイサイド駆動部10の電源端子間電圧(VB-VS)に、ハイサイドスイッチング素子30のエミッタ配線部における寄生インダクタンスLs2によって、逆起電圧Vls2が発生する場合がある。そして、ハイサイド電源電圧VBATとの合計がハイサイド駆動部10の耐圧を超えるような過電圧になった場合、ハイサイド駆動部10の誤動作または破壊の恐れがある。
これに対して、半導体装置100は、寄生インダクタンスLs2が生じるエミッタ配線部に対して並列に保護回路部60を備えることにより、サージ電圧が重畳して、ハイサイド駆動部10の定格電圧を超える場合であっても、効果的にサージ電圧を吸収することができる。これにより、ハイサイド駆動部10の誤動作および破壊を防止することができる。
図8Bは、短絡保護動作時の動作タイムチャートを示す。時刻T1において、IN信号がローからハイに立ち上がり、正極端子Pから負極端子N(U)に向けて短絡電流ISCが流れ始める。短絡電流ISCは、電流検出抵抗150で検出され、ローサイド駆動部20で短絡異常と判定する。ローサイド駆動部20は、短絡異常を判定すると、ローサイドスイッチング素子40を遮断する。
時刻T2において、ハイサイド駆動部10は、電流検出抵抗150の信号を受けた制御部110からの指示によりIN信号がローに下がり、ハイサイドスイッチング素子30を遮断すると、ハイサイドスイッチング素子30のコレクタ-エミッタ間電圧Vceとハイサイド駆動部10の電源端子間電圧(VB-VS)にサージ電圧が発生する。サージ電圧の大きさは、配線経路等の寄生インダクタンス、ハイサイドスイッチング素子30の遮断スピード、直流電圧Vdc、または短絡電流ISC等に応じて変化する。
したがって、上アーム側のハイサイドスイッチング素子30のいずれかが短絡故障しており、下アーム側のローサイドスイッチング素子40がオンした場合のアーム短絡の場合、ローサイド駆動部20にて過電流を判定してローサイドスイッチング素子40を遮断する。この場合、過電流判定から遮断までの時間が短いので、図8Bで説明したような短絡電流が長時間流れることはないので、その大きさも比較的小さい。一方、短絡電流ISCが流れるようなアーム短絡の場合、制御部110における過電流判定に基づき、ハイサイド駆動部10がハイサイドスイッチング素子30を遮断する。この場合、過電流判定から遮断までの時間が長く、短絡電流ISCは流れる時間が長いほど大きくなるので、遮断直前の短絡電流ISCは通常電流の数倍以上となり、これを遮断する場合にdi/dt(単位時間当たりの電流変化量)も数倍以上に上昇する。このように上昇したdi/dtにより上述した寄生インダクタンスに大きな逆起電力(V
ls1
、V
ls21
、V
ls3、
V
ls0 )が発生して、遮断しようとする上アームのハイサイドスイッチング素子30に過電圧が印加されて、電源端子間電圧(VB-VS)に大きな電圧が印加され、ハイサイド駆動部10が破壊する恐れがある。
なお、負荷短絡の場合(不図示)、下アームについては、ローサイド駆動部20で過電流を判定して、ローサイドスイッチング素子40を遮断するのに対して、上アームについては、制御部110における過電流判定に基づき、ハイサイド駆動部10がハイサイドスイッチング素子30を遮断する。そのため、上アームにおける過電流保護が下アームにおける過電流保護よりも遅れる場合がある。よって、先に下アームで遮断された短絡電流ISCが上アーム側に転流することとなり、ハイサイドスイッチング素子30は転流した短絡電流ISCを遮断する必要が生じる。
ここで、短絡電流ISCは、通常動作電流の数倍以上となり、これを遮断する場合のdi/dtも数倍以上に上昇する。このように上昇したdi/dtにより、短絡電流ISCの転流経路上の一巡の寄生インダクタンスに大きな逆起電力が発生して、遮断しようとする上アームのハイサイドスイッチング素子30に過電圧が印加されて破壊する恐れがある。
本例の半導体装置100は、スイッチング素子の短絡時に流れる短絡電流ISCに伴う、寄生インダクタに発生する誘起電圧によってハイサイド駆動部10の破壊を防止することができる。また、半導体装置100は、保護回路部60を備えることにより、半導体装置100の外部における対策部品を追加する必要がないので、システムへの影響が少なく、対策コストの低減が可能である。そして、信頼性の高い半導体モジュールを実現できる。
なお、本発明の実施の形態では、制御部110も過電流検出外部端子ISからの電流を検出し、電流検出抵抗150に流れる電流が過電流であると判断した場合、上アームのハイサイドスイッチング素子30をオフにする制御を行っている。ローサイド駆動部20が過電流検出外部端子ISからの電流を検出した結果を制御部110に送るための過電流検出結果送付用信号線を、制御部110とローサイド駆動部20との間に設け、ローサイド駆動部20が過電流検出外部端子ISからの電流を検出し、電流検出抵抗150に流れる電流が過電流であると判断する。その後、その情報を過電流検出結果送付用信号線から制御部110が受けて、上アームのハイサイドスイッチング素子30をオフにする制御を行ってもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
10・・・ハイサイド駆動部、11・・・IN保護回路、12・・・信号伝達回路、13・・・出力部、14・・・VB保護回路、20・・・ローサイド駆動部、30・・・ハイサイドスイッチング素子、35・・・ハイサイドダイオード、40・・・ローサイドスイッチング素子、45・・・ローサイドダイオード、50・・・ブートストラップ部、52・・・ダイオード、53・・・ボンディングワイヤ、54・・・抵抗、60・・・保護回路部、61・・・コンデンサ、62・・・ツェナーダイオード、63・・・ダイオード、64・・・npnトランジスタ、65・・・抵抗、66・・・nチャネルMOSFET、69・・・逆阻止ツェナーダイオード、80・・・ノード延伸部、81・・・接続部、82・・・インナーリード、90・・・ノード延伸部、91・・・接続部、92・・・インナーリード、93・・・ボンディングワイヤ、94・・・ボンディングワイヤ、95・・・ボンディングワイヤ、100・・・半導体装置、105・・・基準電位、107・・・端子、110・・・制御部、111・・・ダイオード、112・・・ダイオード、113・・・抵抗、130・・・電源、140・・・コンデンサ、141・・・ツェナーダイオード、150・・・電流検出抵抗、200・・・半導体システム、210・・・負荷、500・・・半導体装置