(本開示に至った経緯)
インクジェット方式でインクを吐出するインクジェット装置では、再現性のないミストが発生することが知られている。ミストは、インクジェットヘッドのノズルから吐出されたインクの一部が小滴状又は霧状となったもので、発生する位置の再現性が無い液滴(後述する図6Bの時刻T9及びT15を参照)である。つまり、ミストは、発生位置が制御不能な液滴である。また、ミストは、さらに、発生するタイミングも制御不能な液滴である。ミストは、ワークに付着して当該ワークの汚れの原因となるので、発生を抑制することが望まれる。なお、ワークは、インクジェット装置の印刷対象物であり、例えば、後述する図7に示すワーク50である。
また、近年、インクジェット方式による印刷の用途が拡大している。インクジェット装置は、例えば、電気製品などの印刷対象物の表面に加飾を行うことにも使用される。また、インクジェット装置は、例えば、機能性材料を含む機能性インクを用いて、機能性を有する膜を形成することにも使用される。機能性材料は、例えば、導電体、誘電体、半導体、絶縁体、抵抗体、顔料等の着色剤、耐薬品性材料等の所望の機能を付与することができる無機物又は有機物などである。例えば、インクジェット装置は、機能性材料として導電体などの電子素材を含むインクを基板に塗布することで、基板に配線の形成を行うことにも使用される。
このように、インクジェット方式による印刷の用途が拡大する中、使用されるインクのバリエーションも増えている。インクの中には、印刷性より機能性を優先して設計されたものもある。このようなインクでは、さらにミストが発生しやすくなると考えられる。このことからも、インクの印刷性に関わらず、ミストの発生を抑制することが望まれる。
本願発明者らは、ミストの発生を抑制することについて鋭意検討を行い、インクを吐出する際にインクジェットヘッドに印加する波形信号の所定のパラメータを変更することで、ミストの発生を抑制することができることを見出した。そして、以下に説明する波形信号の制御方法及び制御装置を創案した。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
また、本明細書において、同じ、直交、平行などの要素間の関係性を示す用語、並びに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態1)
[1−1.インクジェットシステムの構成]
まず、本実施の形態に係るインクジェットシステム1の構成について、図1〜図7を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係るインクジェットシステム1の概略構成を示す図である。図2は、本実施の形態に係るインクジェットシステム1の機能構成を示すブロック図である。なお、図1では、制御部10a、ワーク用カメラ18などの図示を省略している。
図1に示すように、インクジェットシステム1は、インクジェット装置10と、ネットワーク20と、サーバ装置30とを備える。インクジェット装置10は、サーバ装置30からの制御により、インクジェット方式でインクを吐出する液体吐出装置である。また、ネットワーク20は、インクジェット装置10とサーバ装置30とを通信可能に接続するための通信ネットワークである。
なお、本明細書では、インクとは、インクジェット方式で吐出する液体を意味する。インクジェットヘッド13から吐出するインクとしては、公知の様々なインクを用いることができる。なお、インクは、機能性を有するインクであってもよい。機能性を有するインクとは、例えば、インクにコンデンサ、抵抗、発光層材料などの機能性の材料が含まれているインクである。このようなインクは、印刷された後に所望の機能を有するように、機能性を優先して設計されることがある。
図1及び図2に示すように、インクジェット装置10は、制御部10aと、タンク11と、流路12と、ポンプ12aと、インクジェットヘッド13と、信号発生器15と、光源16と、液滴用カメラ17と、ワーク用カメラ18と、通信部19とを備える。
制御部10aは、インクジェット装置10の各構成要素を制御する制御装置である。制御部10aは、サーバ装置30からの制御信号に基づいて、信号発生器15に制御信号に応じた波形信号を出力させる。また、制御部10aは、ノズル13cからインクが吐出されると、光源16及び液滴用カメラ17を制御して、インクの液滴I(インク液滴I)の撮影を行わせる。制御部10aは、例えば、信号発生器15からの同期信号に基づき、任意の遅延時間を設定して光源16を発光させてもよい。この場合、発光時間は、例えば、0.1μsec等とすることができる。これにより、液滴用カメラ17は、発光した瞬間の画像を継続的に撮影することができる。なお、制御部10aは、光源16を常時発光させてもよい。
また、制御部10aは、ワークの印刷位置に応じてインクジェットヘッド13の移動を制御してもよいし、ポンプ12aを制御して流路12内のインクの循環及び圧力を調整してもよい。
タンク11は、インクジェットヘッド13の圧力室13bに供給されるインクが充填される容器である。タンク11は、インクジェットヘッド13にインクを供給するインク供給部として機能する。タンク11は、例えば、インクカートリッジであってもよい。なお、タンク11内のインクの圧力は調整可能であり、例えば、一定の圧力となるように調整されている。
流路12は、タンク11からインクジェットヘッド13の圧力室13bへ送られるインクの第1の流路、及び、インクジェットヘッド13の圧力室13bから回収されタンク11に戻ってくるインクの第2の流路を形成する。流路12は、例えば、インクジェットヘッド13が移動した場合に変形が可能な可撓性を有するチューブ等を少なくとも一部に含んで構成される。
ポンプ12aは、第1の流路上に設けられ、流路12を介してインクを循環させる。これにより、ノズル13c付近のインクが乾燥することを抑制することができる。ポンプ12aは、インクジェットヘッド13に供給する前のインクの圧力を調整する機能を有していてもよいし、インクの流量を調整する機能を有していてもよい。
インクジェットヘッド13は、インクジェット方式でインクを吐出する印刷ヘッドである。インクジェットヘッド13は、信号発生器15から入力された波形信号(駆動波形)に応じて、ノズル13cからインクを吐出する。インクジェットヘッド13は、本体部13aと、駆動部14とを有する。本体部13aは、圧力室13b及びノズル13cが形成された部材である。圧力室13bは、タンク11から供給(送液)されたインクが充填される空間である。圧力室13bにインクが充填された状態で、駆動部14から圧力室13bに圧力が加えられると、ノズル13cからインク液滴Iが吐出される。ノズル13cは、インクを吐出するための開口であり、圧力室13bと接続されている。ノズル13cは、本体部13aにおける、ワークと対向する面に複数形成される。
駆動部14は、信号発生器15からの波形信号により、圧力室13b内の圧力を変化させることで、インクジェットヘッド13におけるインクの吐出動作を制御する。駆動部14は、波形信号に基づいて伸縮して圧力室13b内の圧力を変化させることで、ノズル13cからのインクの吐出、及び、吐出された後のノズル13cのインク表面の振動を制御する。駆動部14は、例えば、伸長することで圧力室13b内のインクを加圧して、ノズル13cからインクを吐出させる。
駆動部14は、例えば、印加される波形信号により伸縮可能な圧電素子(ピエゾ素子)により実現される。駆動部14は、例えば、圧電特性の観点から、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)素子により実現されるとよい。このように、本実施の形態に係るインクジェットヘッド13は、ピエゾ方式でインクを吐出する。なお、インクジェットヘッド13は、複数のノズル13cに対応する複数の圧電素子を有する。
信号発生器15は、制御部10aからの指令により、インクジェットヘッド13を駆動するための電圧波形を有する任意の波形信号(電圧波形信号)を生成し、生成した波形信号をインクジェットヘッド13に出力する。具体的には、信号発生器15は、制御部10aからの指令により生成した波形信号をインクジェットヘッド13の駆動部14に印加する。
信号発生器15は、インクジェットヘッド13におけるインクの吐出動作を制御することができる程度の波形信号を生成することができれば、構成は特に限定されないが、ロジック回路によって構成されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成された制御回路によって構成されてもよい。
信号発生器15が生成する波形信号について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係るインクジェットヘッド13に印加される波形信号を説明するための図である。図3に示すグラフの横軸は、時間(μsec)を示しており、縦軸は電圧(V)を示している。また、図3に示す波形信号が駆動部14に印加されることで、インクの吐出が1回(例えば、1滴)行われる。
図3に示すように、波形信号は、第1の時刻t1より前の前処理用の部分と、第1の時刻t1以降の吐出制御用の部分とを有する。波形信号のうち前処理用の部分は、インクがノズル13cから吐出されない程度の電圧を印加し、駆動部14を予備振動させるための信号である。これにより、圧力室13b内のインクの粘度などの調整が行われる。なお、このとき、インクは吐出されない。図3に示される波形信号のうちの前処理用の部分は、吐出される前のインクの状態を制御するための信号である。
波形信号のうち吐出制御用の部分は、ノズル13cからインクを吐出させ、かつ、吐出された後のノズル13c付近のインクを制振させるための信号である。本実施の形態では、波形信号のうち、吐出制御用の部分の形状を、ミストを抑制するために変更する。以下、吐出制御用の部分について、詳細に説明する。また、特に記載がない場合、以下では、波形信号のうち吐出制御用の部分を単に波形信号とも記載する。
ここで、位置S1は、波形信号のうち、時刻が第1の時刻t1であり、電圧が第1の電圧V1である位置を示している。位置S2は、波形信号のうち、時刻が第2の時刻t2であり、電圧が第2の電圧V2である位置を示している。位置S3は、波形信号のうち、時刻が第3の時刻t3であり、電圧が第3の電圧V3である位置を示している。位置S4は、波形信号のうち、時刻が第4の時刻t4であり、電圧が第4の電圧V4である位置を示している。位置S5は、波形信号のうち、時刻が第5の時刻t5であり、電圧が第5の電圧V5である位置を示している。信号発生器15は、波形信号における位置S1〜S5の電圧又は時刻を調整することで、波形信号の形状を変更可能である。
図3の例では、位置S1及びS2の間で、第1の時刻t1の第1の電圧V1から第2の時刻t2における第2の電圧V2に昇圧される。その後、第3の時刻t3の第3の電圧V3まで移行する。図3の場合、第2の電圧V2と第3の電圧V3とは、同じである。すなわち、第2の時刻t2から第3の時刻t3までの間、第2の電圧V2で保持される。その後、第4の時刻t4の第4の電圧V4に降圧される。その後、第5の時刻t5の第5の電圧V5まで移行する。図3の場合、第4の電圧V4と第5の電圧V5とは、同じである。すなわち、第4の時刻t4から第5の時刻t5までの間、第4の電圧V4で保持される。
第1の時刻t1の第1の電圧V1から第2の時刻t2における第2の電圧V2に昇圧する際には、電圧上昇に伴う駆動部14の伸長に伴い、圧力室13bの容積が急激に減少する。これにより、圧力室13b内の圧力が上昇し、開放されたノズル13cからインクが勢いよく吐出される。このときの初速は、第1の電圧V1から第2の電圧V2に至る昇圧レートに依存して変化する。つまり、初速は、第1の時刻t1から第2の時刻t2までの電圧の単位時間変化量に依存して変化する。昇圧レートが高い(電圧の単位時間変化量が大きい)ほど、初速は速くなる傾向がある。また、第1の電圧V1から第2の電圧V2への電圧差が大きいほど、圧力室13bの容積の減少が大きくなり、従って吐出されるインク体積が増加する。第1の電圧V1から第2の電圧V2に至る昇圧レート、及び、第1の電圧V1から第2の電圧V2への電圧差、つまり、インクの初速及び体積は、ワーク50ごとに所望の狙い値が存在する。
次に、第2の時刻t2の第2の電圧V2から第3の時刻t3の第3の電圧V3までの移行では、通常、第2の電圧V2=第3の電圧V3となるように設定され、第2の時刻t2から第3の時刻t3に至る間、電圧が維持された状態を保つ。この第2の時刻t2から第3の時刻t3までの期間は、インクが吐出された後のノズル13cのインク表面(メニスカス部)の振動を静定するための期間として、第4の時刻t4の第4の電圧V4への降圧と組み合わせて設定される。
つまり、第2の時刻t2から第3の時刻t3までの間、ノズル13c付近のインク、すなわちメニスカス部は、圧力室13b内部の圧力状態に従って、緩やかに減衰しながら振動している。このとき、第3の電圧V3(=第2の電圧V2)は高電位状態にあり、駆動部14は伸長した状態となっている。これを低電位である第4の電圧V4へ降圧することで、圧力室13b内の圧力を低下させることができる。この降圧を開始するタイミングを、圧力室13b内の圧力が高い状態、すなわちメニスカス部がノズル13cから外へ出ようとするタイミングに合致させると、メニスカス部が外へ出ようとする圧力と、圧力室13b内の圧力が低下することによるメニスカス部が圧力室13b内部に入っていく圧力とが相殺される。従って、圧力室13b内の圧力を静定することが可能となる。
さらに、第3の時刻t3の第3の電圧V3から第4の時刻t4の第4の電圧V4に至る降圧レートを、メニスカス部の振動の大きさに応じて緩やかに設定することで、過度な圧力の抑制になることを回避し、かつ、より短時間での静定を行うことが可能となる。なお、静定時間の短縮は、次の吐出までの準備時間の短縮に繋がり、高い繰り返し周波数での吐出を実現することにつながる。
ここで、波形信号とミストの発生の抑制との関係について、説明する。
ミストの発生要因は、インク自体の物性と、吐出された後のインク液滴Iの速度及び形状とが相互に関係するため、一概に述べることは困難である。しかしながら、ミストは、インク液滴Iがノズル13cから離滴する、細長く伸長された部分(例えば、後述する図4に示すインク液滴I1などを参照)、あるいはその付近から発生することは、吐出される瞬間のインクの観察から、ほぼ明らかとなっている。従って、この細長く伸長する部分を、吐出されるインク液滴Iの速度及び体積を確保した状態で、可能な限り短縮することがミストの抑制につながる。
第1の時刻t1から第3の時刻t3までの期間(t3−t1)、又は、第2の時刻t2から第3の時刻t3までの期間(t3−t2)は、制振タイミング調整のために変更される。第1の時刻t1から第3の時刻t3までの期間、又は、第2の時刻t2から第3の時刻t3までの期間は、メニスカス部を静定するための制振動作に関係する。この第3の時刻t3は、制振の開始タイミングを定めるが、この時刻を適切に設定することで、インク液滴Iが離滴する際の細長く伸長した部分を短縮することができる。つまり、吐出されたインク液滴Iにより自発的に伸長部が破断するよりも早く、メニスカス部を積極的に後退させることで、破断時の伸長部の長さを短縮することができる。これにより、ミストの発生源となる、インク液滴Iの伸長部体積が少なくなり、結果としてミストの発生を抑制することにつながる。
第3の電圧V3と第4の電圧V4との差分電圧は、制振深さ調整のために変更される。この差分電圧は、駆動部14が伸長状態から後退するときの変位量に相当し、圧力室13b内の圧力を低下させることで、メニスカス部を後退させ、吐出液滴の伸長部を短縮することができる。これにより、ミストの発生源となる、インク液滴Iの伸長部体積が少なくなり、結果としてミストを抑制することにつながる。
第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の単位時間変化量(図3に示す「傾き」)は、電圧の降下波形の傾きを調整するために変更される。
この電圧の単位時間変化量は、駆動部14が伸長状態から後退する速度に相当し、圧力室13b内の圧力の低下速度を制御することができる。これにより、急激なメニスカス部の後退による、メニスカス部自身の不要な振動、伸長部の不要な延長などを抑制することができるので、インクを安定的に離滴させることができる。従って、ミストの発生源となる、インク液滴Iの伸長部体積を極小化し、結果としてミストを抑制することにつながる。
本実施の形態では、ミストが発生する波形信号を変更する場合、位置S2以降のパラメータが優先して変更されるが、これに限定されない。
図2を再び参照して、光源16は、液滴用カメラ17がノズル13cから吐出したインク液滴Iを撮影するための光を出射する。光源16は、例えば、インクの種類(例えば、インクの色)などに応じて、インクの形状が液滴用カメラ17により撮影されやすくなるような色の光を出射してもよい。光源16は、例えば、複数の発光素子を有する発光モジュールを有する構成であるが、これに限定されない。また、光源16は、インク液滴Iを挟んで液滴用カメラ17と反対側に配置されるが、これに限定されない。
液滴用カメラ17は、ノズル13cから吐出されたインク液滴Iの飛翔状態を撮影する撮影装置である。飛翔状態は、インク液滴Iの飛翔形状を含む。液滴用カメラ17は、インクジェットヘッド13からインクが連続的に吐出された状態におけるインクの形状を、時間的に連続して撮影する。液滴用カメラ17は、撮影された画像データを制御部10aに出力する。本実施の形態では、液滴用カメラ17は、インクジェットヘッド13から吐出されたインクの形状データ群を取得する検出器の一例である。
ここで、液滴用カメラ17による画像データの取得について、図4〜図6Bを参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係るインクジェットヘッド13から吐出されたインク(インク液滴I)を撮影した画像データ(液滴画像データ)の時系列データを示す図である。なお、図4〜図6Bは、液滴用カメラ17が図1に示す撮影面Aを撮影したときの画像データを示す。撮影面Aは、インク液滴Iの吐出方向と垂直な方向を含み、かつ、後述するワーク送り方向(図7参照)と直交する平面である。なお、インクは設定された周期(例えば、図4の間隔T)で吐出される。また、画像データは、インク液滴Iの形状を示す形状データの一例である。
図4では、時刻T1、T4及びT7において、インクが吐出されたときの画像データを示している。時刻T1、T4及びT7は、インクが吐出される吐出タイミングである。時刻T1で吐出されたインク液滴I1は、時刻T2、T3と進むにつれ下方に移動する。時刻T4から時刻T6におけるインク液滴I2、及び、時刻T7から時刻T9におけるインク液滴I3も同様である。なお、インク液滴I2は、インク液滴I1の次に吐出されたインクであり、インク液滴I3は、インク液滴I2の次に吐出されたインクである。
図5Aは、本実施の形態に係る画像データの撮影タイミングの一例を説明するための図である。図5Bは、本実施の形態に係る画像データの撮影タイミングの他の一例を説明するための図である。図5A及び図5Bは、インク液滴Iの飛翔状態を撮影面Aと直交する方向から時間的に連続して撮影した画像データである。画像データは、例えば、光源16によるストロボ光でインク液滴Iを照射し、液滴用カメラ17で撮影される。
図5Aに示すように、ストロボ発光タイミング(時刻T1、T5、T9)に係るストロボ発光レートを吐出タイミング(時刻T1、T4、T7)に係る吐出レートの整数倍(例えば、図4に示す間隔Tの整数倍)からずらすことにより、インクの飛翔経路においてインクジェットヘッド13からインクが吐出されてからインクがワーク50に着弾するまでの一連のインク液滴Iの状態を動的に捉えることができる。例えば、高速で撮影可能な高性能なカメラを準備することなく、汎用性のあるカメラを用いてインク液滴Iの状態を動的に捉えることができる。
また、図5Bに示すように、ストロボ発光タイミング(時刻T3、T6、T9)に係るストロボ発光レートを吐出タイミング(時刻T1、T4、T7)に係る吐出レートの整数倍にすることにより、インクの飛翔経路における特定の位置のインク液滴Iの状態を静的に捉えることができる。
以下で説明する、学習モデル生成用の画像データ、及び、ミスト発生の有無の判定用の画像データは、図5A及び図5Bのいずれかに示す画像データが用いられる。例えば、学習モデル生成用の画像データの撮影タイミングと、ミスト発生の有無の判定用の画像データの撮影タイミングとは、同じであってよいし、異なっていてもよい。
次に、ミストの発生状況を図6A及び図6Bを参照しながら説明する。図6Aは、本実施の形態に係るミストが発生していない場合の形状データ群の一例を示す図である。図6Bは、本実施の形態に係るミストが発生している場合の形状データ群の一例を示す図である。なお、図6A及び図6Bでは、インクの飛翔経路における特定の位置のインク液滴Iの状態を静的に捉えた場合について示している。
図6Aは、ミストが発生していない場合の時間的に連続して撮影された画像データを示す。インク液滴Iの状態を示す連続する画像データは、再現性の高い複数の画像データにより構成される。再現性の高い複数の画像データは、形状データ群の一例である。
図6Bは、ミストが発生している場合の時間的に連続する画像データを示す。ミストは常時同じように発生するのではなく、例えば時刻T9において発生しているミスト、及び、時刻T15において発生しているミストのように、形状及び位置が撮影タイミングごとに異なる。すなわち、撮影した時刻によってミストの発生状況が異なる。また、時刻T9及びT15以外の時刻では、ミストが発生していない。すなわち、ミストが発生していない場合もある。ミストが発生している場合、インク液滴Iの状態を示す連続する画像データは、再現性の低い複数の画像データから構成される。再現性の低い複数の画像データは、形状データ群の一例である。
図2を再び参照して、ワーク用カメラ18は、インクが印刷されたワークの印刷状態を撮影する撮影装置である。図7は、本実施の形態に係るインクジェットシステム1のワーク用カメラ18を説明するための図である。なお、図7では、ワーク50が有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイに用いられる基板である例を示している。
図7に示すように、ワーク用カメラ18は、インクジェットヘッド13とともに、走査ステージ40の上方に配置されている。走査ステージ40上には、ワーク50が固定(例えば、吸着固定)されている。走査ステージ40は、ワーク送り方向(矢印の方向)に走査される。ワーク用カメラ18は、走査方向において、インクジェットヘッド13の後方に配置される。ワーク用カメラ18は、インクジェットヘッド13よりワーク送り方向側に配置されるとも言える。
走査されるワーク50の座標に対して、インクジェットヘッド13の各ノズル13cからインクが吐出される。例えば、ワーク50には予め複数のパターン(セル)が形成されており、各セルに対応するノズル13cからインクが吐出されることで、セル内がインクで満たされる。ワーク用カメラ18は、セル内がインクで満たされたワーク50を、当該ワーク50の上方から撮影する。
このようなワーク用カメラ18は、ラインスキャナ、又は、顕微鏡カメラを用いることができる。顕微鏡カメラを用いる場合、顕微鏡カメラを副走査方向(例えば、インクジェットヘッド13が延在する方向)に移動させながらワーク50を撮影してもよい。
なお、インクジェットヘッド13が有する複数のノズル13cは、例えば、副走査方向に並んで配置される。
図2を再び参照して、通信部19は、インクジェット装置10がサーバ装置30とネットワーク20を介して通信を行うための通信回路(通信モジュール)である。通信部19は、制御部10aの制御により、各種情報を送受信する。通信部19は、例えば、少なくとも液滴用カメラ17が撮影した形状データ群を、ネットワーク20を介してサーバ装置30に送信する。また、通信部19は、ワーク用カメラ18が撮影した画像データを、ネットワーク20を介してサーバ装置30に送信してもよい。また、通信部19は、信号発生器15の波形信号を制御するための制御信号を、ネットワーク20を介してサーバ装置30から受信する。
次に、サーバ装置30について説明する。サーバ装置30は、インクジェット装置10から取得した情報に基づいて、インクジェット装置10を制御する。本実施の形態では、サーバ装置30は、液滴用カメラ17が撮影した画像データを液滴用カメラ17から取得し、取得した画像データに基づいて、信号発生器15が駆動部14に印加する波形信号を制御するための制御信号を生成する。サーバ装置30は、通信部31と、制御部32と、記憶部33とを備える。なお、サーバ装置30は、インクジェットヘッド13に印加される波形信号を制御する制御装置の一例である。
通信部31は、サーバ装置30がインクジェット装置10とネットワーク20を介して通信を行うための通信回路(通信モジュール)である。通信部31は、制御部32の制御により、各種情報を送受信する。通信部31は、インクジェット装置10から形状データ群を取得する取得部として機能する。また、通信部31は、インクジェット装置10に波形信号を示す情報を出力する出力部として機能する。
制御部32は、サーバ装置30が有する各種構成要素を制御する制御装置である。また、制御部32は、通信部31を介して取得した形状データ群に基づいて、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力し、当該確率に基づいて信号発生器15の波形信号を制御するための制御信号を生成する。制御部32は、生成した制御信号を、通信部31を介して、インクジェット装置10に送信する。制御部32は、モデル生成部32aと、判定部32bとを有する。
モデル生成部32aは、液滴用カメラ17が撮影した形状データ群を入力とし、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルを生成するための処理部である。モデル生成部32aは、予め上記の学習モデルを生成する。学習モデルは、例えば、ニューラルネットワークで構成されるが、これに限定されない。
モデル生成部32aは、例えば、液滴用カメラ17から取得した形状データ群と、当該形状データ群におけるミストの発生確率との関係を機械学習することで、学習モデルを生成する。例えば、機械学習には、液滴用カメラ17から取得した形状データ群と、当該形状データ群におけるミストの発生確率とを対応づけて表す教師データが用いられる。ミストの発生確率には、例えば、形状データ群にミストが発生するか否かの判定結果が用いられてもよい。このように学習モデルは、教師あり学習によって学習されるが、例えば、教師なし学習などの他の学習方法によって学習されてもよい。また、学習モデルは、液滴用カメラ17が撮影した形状データ群を入力とし、インクジェットヘッド13からのミストの発生の有無を出力するように学習された学習モデルであってもよい。
判定部32bは、モデル生成部32aで生成された学習モデルと液滴用カメラ17で新たに取得されたインク液滴Iの形状データ群とを用いて、当該形状データ群においてミストが発生するか否かを判定する。具体的には、判定部32bは、形状データ群を学習モデルに入力することで得られる出力であるミストの発生確率に基づいて、ミストが発生するか否かを判定する。判定部32bは、例えば、発生確率が所定値以上である場合、ミストが発生すると判定する。なお、所定値は、例えば、予め記憶部33に記憶されている。所定値は、ワーク50の種類などにより適宜決定される。
また、学習モデルがミストの発生の有無を出力するように学習されている場合、判定部32bは、形状データ群を学習モデルに入力することで得られる出力であるミストの発生の有無を取得してもよい。これも、判定部32bによりミストが発生するか否かが判定されることに含まれる。
上記では、判定部32bは、学習モデルを用いてミストが発生する確率を取得する例について説明したが、これに限定されない。判定部32bは、例えば、形状データ群に含まれる画像データの画像解析により、ミストの発生確率を算出し、算出したミストの発生確率に基づいてミストが発生するか否かを判定してもよい。判定部32bは、例えば、形状データ群に含まれる画像データの数と、ミストが発生している画像データの数とに基づいて、ミストの発生確率を算出してもよい。なお、この場合、サーバ装置30は、モデル生成部32aを備えていなくてもよい。
記憶部33は、制御部32によって実行されるコンピュータプログラム及びモデル生成部32aにより生成された学習モデルを記憶する記憶装置である。記憶部33は、例えば、半導体メモリにより実現されるが、これに限定されない。
[1−2.インクジェットシステムの動作]
続いて、上記のようなインクジェットシステム1の動作について、図8及び図9を参照しながら説明する。まずは、モデル生成部32aによる学習モデルの生成方法について、図8を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態に係る学習モデルの生成方法を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、インクジェットシステム1の波形信号を出力する動作(図9に示す動作)が行われる前に実行される。
図8に示すように、制御部32は、波形信号を印加してインクジェットヘッド13からインクを吐出させる(S11)。具体的には、制御部32は、インクジェット装置10に制御信号を送信することで、信号発生器15から駆動部14に波形信号を印加させる。ここで印加する波形信号は、任意の波形信号でもよい。
インクジェット装置10の信号発生器15は、サーバ装置30からの制御信号に基づいて、駆動部14に波形信号を印加することで、ノズル13cからインクを吐出させる。信号発生器15は、例えば、図3に示すような波形信号を繰り返し印加することで、インクを連続して吐出させる。液滴用カメラ17は、ノズル13cから連続して吐出されたインク液滴Iの飛翔状態を、時間的に連続して撮影する。液滴用カメラ17は、1つの波形信号(例えば、1つのインク液滴I)において、複数回の撮影を行う。
制御部32は、液滴用カメラ17が時間的に連続してインク液滴Iを撮影した複数の画像データであるインクの形状データ群を、液滴用カメラ17から取得する(S12)。制御部32は、インクの形状データ群を、記憶部33に記憶してもよい。
次に、モデル生成部32aは、形状データ群に基づいてミストが発生しているか否かを判定する(S13)。モデル生成部32aは、例えば、パターンマッチングなどによりミストが画像データに写っているか否かを判定してもよい。なお、画像解析の手法は、特に限定されず、既存のいかなる技術が用いられてもよい。
モデル生成部32aは、例えば、形状データ群の少なくとも1つにミストが写っている場合、ミストが発生していると判定し、形状データ群のいずれにもミストが写っていない場合、ミストが発生していないと判定してもよい。また、モデル生成部32aは、例えば、形状データ群のうちミストが写っている画像データの数が所定数以上である場合、ミストが発生していると判定し、形状データ群のうちミストが写っている画像データの数が所定数より少ない場合、ミストが発生していないと判定してもよい。ミストの発生の有無を判定した判定結果は、ミストの発生確率の一例である。つまり、ステップS13は、形状データ群におけるミストの発生確率を取得することの一例である。
また、モデル生成部32aは、例えば、形状データ群のうちミストが写っている画像データの数を集計することで、形状データ群におけるミストの発生確率を算出してもよい。
また、モデル生成部32aは、作業者からの入力を受け付ける受付部(図示しない)を有しており、画像データごとにユーザからミストの発生確率の入力を受け付けてもよい。つまり、モデル生成部32aは、ミストが発生している状態であるか否かを判定しなくてもよい。この場合、モデル生成部32aは、ミストが発生していないことを示す入力を、受付部を介して取得すると、ミストが発生していないと判定し、ミストが発生していることを示す入力を、受付部を介して取得すると、ミストが発生していると判定する。なお、受付部は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、ボタンなどであるがこれに限定されない。
モデル生成部32aは、形状データ群にミストが発生していない場合(S13でNo)、ステップS12で取得した形状データ群を、ミストが発生していない状態の形状データ群として記憶部33に記憶する(S14)。また、モデル生成部32aは、形状データ群にミストが発生している場合(S13でYes)、ステップS12で取得した形状データ群を、ミストが発生している状態の形状データ群として記憶部33に記憶する(S15)。
なお、ステップS11〜S15までの処理は、繰り返し実行されてもよい。例えば、印加する波形信号を変更し、変更した波形信号に対応する形状データ群を取得し、ステップS12以降の処理が行われてもよい。例えば、学習に必要な数の教師データが取得されるまで、ステップS11〜S15までの処理が繰り返し実行されてもよい。
なお、波形信号は、例えば、図3に示す第2の時刻t2から第3の時刻t3までの時間、第3の電圧V3と第4の電圧V4との差分電圧、及び、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の単位時間変化量の少なくとも1つが変更される。また、波形信号は、例えば、図3に示す第2の時刻t2から第3の時刻t3までの時間、第3の電圧V3と第4の電圧V4との差分電圧、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の単位時間変化量、第1の時刻t1から第2の時刻t2までの電圧の単位時間変化量、及び、第2の電圧V2と第1の電圧V1との差分電圧の少なくとも1つが変更されてもよい。なお、波形信号の前処理用の部分は、変更されない。
なお、モデル生成部32aは、ミストが発生している状態の形状データ群の数が少ない場合、例えば、ミストが発生しやすい波形信号を設定し、ステップS11以降の処理を行ってもよい。
次に、モデル生成部32aは、形状データ群とミストの発生確率との関係を機械学習させることで、学習モデルを生成する(S16)。モデル生成部32aは、形状データ群とミストの発生の有無とを教師データとし、形状データ群をニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークからミストの発生確率が出力されるように、ニューラルネットワークのパラメータを学習させる。パラメータは、例えば、各ニューロンの重みなどである。
なお、上記では、モデル生成部32aは、ミストが発生している状態及び発生していない状態の両方のインク液滴Iを撮影した形状データ群を用いて学習モデルを生成する例について説明したが、これに限定されない。モデル生成部32aは、例えば、ミストが発生している状態及び発生していない状態の一方のインク液滴Iを撮影した形状データ群を用いて学習モデルを生成してもよい。例えば、モデル生成部32aは、ミストが発生していない状態のインク液滴Iを撮影した形状データ群とミストが発生していない確率(例えば、100%)との関係を機械学習することで、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力する学習モデルを生成してもよい。
なお、上記では、学習モデルは、ミストが発生する発生確率を出力するモデルである例について説明したが、ミストが発生しない確率を出力するモデルであってもよい。
次に、モデル生成部32aは、生成した学習モデルを記憶部33に記憶する(S17)。これにより、インクジェット装置10から新たに取得された形状データ群に対してミストが発生する確率を出力することができる学習モデルが生成される。
続いて、インクジェットシステム1の波形信号を出力する動作について、図9を参照しながら説明する。図9は、本実施の形態に係るインクジェットシステム1の波形信号を出力する動作を示すフローチャートである。図9に示す動作は、サーバ装置30において行われる動作であり、例えば、インクジェット装置10の条件出しのときなど、実際に生産(量産)が開始される前に行われる。なお、ステップS21及びS22の処理は、図8に示すステップS11及びS12と同様であり、説明を省略する。なお、ステップS21では、波形信号を印加することでインクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状データであって、時間的に連続的した複数の形状データを含む形状データ群を取得する。
図9に示すように、判定部32bは、ステップS22で取得した形状データ群を学習モデルに入力することで、当該学習モデルから出力されるインクジェットヘッド13からミストの発生確率を取得する(S23)。つまり、ステップS23では、学習モデルによりミストが発生する確率が出力される。当該確率は、ステップS22で取得した形状データ群、つまりインク液滴Iの飛翔状態に対応した確率である。
次に、判定部32bは、学習モデルから出力されたミストの発生確率が所定値以上であるか否かを判定する(S24)。判定部32bは、例えば、所定値を記憶部33から読み出し、読み出した所定値と学習モデルから出力されたミストの発生確率とを比較することで、ステップS24の判定を行う。判定部32bは、ミストの発生確率が所定値より小さい場合(S24でNo)、ステップS22の取得した形状データ群に対応する波形信号、つまりステップS21で指示した波形信号を、ミストが発生しない波形信号としてインクジェット装置10に出力する(S25)。具体的には、判定部32bは、当該波形信号を示す情報を含む制御信号をインクジェット装置10に送信する。波形信号を示す情報は、例えば、波形信号そのものであってもよいし、波形信号を識別する識別情報であってもよいし、ステップS21で指示した波形信号で生産を開始してもよいことを示す情報であってもよい。
また、判定部32bは、ミストの発生確率が所定値以上である場合(S24でYes)、ミストの発生確率が前回より低いか否かを判定する(S26)。ステップS26では、現在の波形信号に対するミストの発生確率と前回の波形信号に対するミストの発生確率とが比較される。なお、前回の波形信号に対するミストの発生確率は、例えば、記憶部33に記憶されている。
判定部32bは、現在の波形信号に対するミストの発生確率が前回の波形信号に対するミストの発生確率より低い場合(S26でYes)、現在の波形信号をミストの発生が抑制される波形信号として記憶部33に記憶する(S27)。判定部32bは、ミストの発生が抑制される波形信号を、更新するとも言える。また、判定部32bは、現在の波形信号に対するミストの発生確率が前回の波形信号に対するミストの発生確率以上である場合(S26でNo)、ステップS27の動作は行われない。
次に、判定部32bは、判定していない波形信号があるか否かを判定する(S28)。判定部32bは、例えば、図3に示す第2の時刻t2から第3の時刻t3までの時間、第3の電圧V3と第4の電圧V4との差分電圧、及び、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の単位時間変化量のうち少なくとも1つをまだ変更していない場合、判定していない波形信号があると判定する。また、判定部32bは、上記3つのパラメータの変更を行っていた場合、さらに、第3の電圧V3と第4の電圧V4との差分電圧、及び、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の単位時間変化量の少なくとも1つをまだ変更していない場合、判定していない波形信号があると判定してもよい。
判定部32bは、判定していない波形信号がある場合(S28でYes)、波形信号を変更する(S29)。判定部32bは、ステップS29において、第2の時刻t2から第3の時刻t3までの時間、第3の電圧V3と第4の電圧V4との差分電圧、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の単位時間変化量、第1の時刻t1から第2の時刻t2までの電圧の単位時間変化量、及び、第2の電圧V2と第1の電圧V1との差分電圧の少なくとも1つを変更して、次の波形信号を生成する。また、判定部32bは、上記の5つのパラメータのうち変更する2つ以上のパラメータの組み合わせを変更して、次の波形信号を生成してもよい。
本実施の形態では、判定部32bは、上記のうち、第2の時刻t2から第3の時刻t3までの時間、第3の電圧V3と第4の電圧V4との差分電圧、及び、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の単位時間変化量、の少なくとも1つを優先して変更する。これにより、吐出されるインクの体積及び初速を維持した中で波形信号が変更されるので、塗布されるインクの体積等を維持した中でミストの発生を抑制可能な波形信号があるか否かの判定を優先して行うことができる。
また、判定部32bは、例えば、ミストの発生確率と、波形信号の変更箇所とが対応付けられたテーブルなどを用いて、上記の5つのパラメータの少なくとも1つを変更してもよい。
そして、制御部32は、ステップS29で生成された変更後の波形信号を含む制御信号をインクジェット装置10に送信することで、変更後の波形信号をインクジェットヘッド13に印加させ、インクを吐出させる。つまり、ステップS21からのステップが繰り返し実行される。つまり、制御部32は、ミストが発生しない又はミストの発生がさらに抑制できる波形信号があるか否かの確認を行う。
また、判定部32bは、判定していない波形信号がない場合(S28でNo)、ステップS27で記憶された波形信号を、ミストの発生が抑制される波形信号としてインクジェット装置10に出力する。判定部32bは、当該波形信号を示す情報、及び、ミストが発生しない波形信号が無かったことを示す情報を含む制御信号をインクジェット装置10に送信する。これにより、作業者にミストが発生しない波形信号が無かったことを知らせることができる。
上記により、インクジェット装置10を使用するときに、インクジェットヘッド13に印加する波形信号が自動で決定される。例えば、インクジェット装置10の作業者が熟練者でなくても、インクジェットヘッド13に印加する波形信号を容易に決定することができる。
なお、図9に示す処理が行われるタイミングは、特に限定されないが、例えば、インクの種類又はロットを変更するたびに行われてもよいし、始業点検時など定期的に行われてもよい。
[1−3.効果など]
以上説明したように、本実施の形態に係る波形信号の制御方法は、インクジェット装置10が備えるインクジェットヘッド13に印加される波形信号の制御方法であって、第1の波形信号は、第1の時刻より後の第2の時刻において第1の時刻における第1の電圧より高い第2の電圧が設定され、第2の時刻より後の第3の時刻において第1の電圧より高い第3の電圧が設定され、第3の時刻より後の第4の時刻において第3の電圧より低い第4の電圧が設定された信号であり、インクジェットヘッド13に第1の波形信号を印加することでインクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状(インク液滴Iの形状)を示す形状データであって、時間的に連続した複数の形状データを含む形状データ群を取得し(S22)、形状データ群に基づいて、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力し(S23)、出力された確率が所定値以上の場合に、第1の波形信号のうち、第2の時刻から第3の時刻までの時間、第3の電圧と第4の電圧との差分電圧、及び、第3の時刻から第4の時刻までの電圧の単位時間変化量のうち少なくとも1つを変更した第2の波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力する、ことを含む。
これにより、第1の波形信号においてミストが発生する場合、波形信号におけるミストの抑制に関連するパラメータである、第2の時刻から第3の時刻までの時間、第3の電圧と第4の電圧との差分電圧、及び、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の降圧レートの少なくとも1つを第1の波形信号から変更した第2の波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力することができる。第2の時刻から第3の時刻までの時間、又は、第3の電圧と第4の電圧との差分電圧を変更することにより、ミストの発生源となる、インク液滴Iの伸長部体積が少なくなるので、ミストの発生が抑制され得る。また、第3の時刻t3から第4の時刻t4までの電圧の降圧レートがメニスカス部の振動の大きさに応じて適切に変更されることで、メニスカス部の振動の静定をより短時間で行うことができるので、ミストの発生が抑制され得る。よって、本実施の形態に係る波形信号の制御方法によれば、ミストの発生を抑制することができる。
また、このような第2の波形信号がインクジェット装置10のインクジェットヘッド13に印加されることで、第1の波形信号が印加された場合に比べてミストの発生が抑制され得る。
また、第2の波形信号は、さらに、第1の時刻から第2の時刻までの電圧の単位時間変化量、及び、第2の電圧と第1の電圧との差分電圧の少なくとも1つを変更して生成される。
これにより、第2の波形信号は、第1の波形信号から、さらに第1の時刻から第2の時刻までの電圧の単位時間変化量、及び、第2の電圧と第1の電圧との差分電圧の少なくとも1つが変更されるので、インクジェットヘッド13からのミストの発生をさらに抑制することができる。
また、ミストが発生する確率は、形状データ群が入力され、ミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルに、取得された形状データ群を入力することで出力される。
これにより、例えば、作業者など外部からミストを発生する確率を取得することなく、ミストが発生する確率を出力することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係るサーバ装置30は、インクジェット装置10が備えるインクジェットヘッド13に印加される波形信号を制御するサーバ装置30であって、第1の波形信号は、第1の時刻より後の第2の時刻において第1の時刻における第1の電圧より高い第2の電圧が設定され、第2の時刻より後の第3の時刻において第1の電圧より高い第3の電圧が設定され、第3の時刻より後の第4の時刻において第3の電圧より低い第4の電圧が設定され信号であり、インクジェットヘッド13に第1の波形信号を印加することでインクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状を示す形状データであって、時間的に連続した複数の形状データを含む形状データ群を取得する通信部31と、形状データ群に基づいて、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力する制御部32と、出力された確率が所定値以上の場合に、第1の波形信号のうち、第2の時刻から第3の時刻までの時間、第3の電圧と第4の電圧との差分電圧、及び、第3の時刻から第4の時刻までの電圧の単位時間変化量のうち少なくとも1つを変更した第2の波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力する通信部31とを備える。
なお、サーバ装置30は、制御装置の一例である。また、通信部31は、取得部及び出力部として機能する。
これにより、上記の波形信号の制御方法と同様の効果を奏する。
(実施の形態2)
[2−1.インクジェットシステムの構成]
まず、本実施の形態に係るインクジェットシステムの構成について、図10を参照しながら説明する。図10は、本実施の形態に係る波形信号の条件テーブルの一例を示す図である。本実施の形態に係るインクジェットシステムは、主に、記憶部33に波形信号の条件テーブルが記憶されている点において、実施の形態1に係るインクジェットシステム1と相違する。本実施の形態に係るインクジェットシステムの機能構成は、実施の形態1に係るインクジェットシステム1と同様であり、説明を省略する。また、以下の説明において、図3に示す機能構成を用いて、本実施の形態に係るインクジェットシステムの説明を行う。
なお、図10は、波形信号における複数の波形ステップにおいて、時刻に対応する電圧をパラメータとして示したものである。各ステップの時刻と電圧データとを線分で結ぶことで、例えば、図3に示すような波形信号となる。
記憶部33には、図10に示すような、ミストの発生が抑制された波形信号を決定するための波形信号のパラメータが設定された条件テーブルが記憶されている。図10に示すS1〜S5は、図3に示す位置S1〜S5に対応する。なお、時間は、位置S1の時点を基準(ゼロ)として示している。また、図10では、条件テーブルに100個の条件が含まれている例を示している。つまり、図10の条件テーブルには、100通りの波形パターンが設定されている。なお、条件テーブルに含まれる条件の数は特に限定されない。
制御部32は、条件テーブルに含まれる各条件の波形信号それぞれを駆動部14に印加するために、各条件の波形信号を含む制御信号をインクジェット装置10に送信し、波形信号それぞれに対する形状データ群を液滴用カメラ17から取得する。
判定部32bは、条件テーブルに含まれる各条件の波形信号のそれぞれに対して、ミストの発生確率を取得し、ミストが発生する確率が所定値より小さい波形信号を、インクジェット装置10に送信する。判定部32bは、例えば、ミストが発生する確率が最も低い波形信号を、インクジェット装置10に送信してもよい。
[2−2.インクジェットシステムの動作]
続いて、上記のようなインクジェットシステム1の動作について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、本実施の形態に係るインクジェットシステム1の波形信号を出力する動作を示すフローチャートである。なお、モデル生成部32aによる学習モデルの生成方法は、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。また、ステップS45の判定に用いられる所定値を60%として説明するが、所定値はこれに限定されない。
図11に示すように、制御部32は、条件テーブルの条件番号kをk=1に設定し(S41)、条件番号kの波形信号を記憶部33から読み出し、インクジェットヘッド13に印加してインクを吐出させる(S42)。具体的には、制御部32は、条件番号k=1に対応する波形信号を示す情報を含む制御信号をインクジェット装置10に送信することで、信号発生器15から駆動部14に当該波形信号を印加させる。
ステップS43〜S45までの処理は、図9のステップS32〜S34と同様であり、説明を省略する。なお、判定部32bは、学習モデルから出力されたミストの発生確率を、記憶部33に記憶してもよい。
判定部32bは、ミストの発生確率が所定値より小さい場合(S45でNo)、条件番号k=1の波形信号を、ミストが発生しない波形信号と判定する(S46)。本実施の形態では、判定部32bは、例えば、ミストが発生しない波形信号であることを示すフラグを出力する。また、判定部32bは、ミストの発生確率が所定値以上である場合(S45でYes)、条件番号k=1の波形信号を、ミストが発生する波形信号と判定する(S47)。本実施の形態では、判定部32bは、例えば、ミストが発生しない波形信号であることを示すフラグを出力しない。
次に、判定部32bは、条件番号kのミストの発生確率を記憶部33に記憶する(S48)。本実施の形態では、判定部32bは、例えば、ミストの発生確率と、判定部32bの判定結果とを対応付けて記憶部33に記憶する。具体的には、判定部32bは、ミストの発生確率と、ミストが発生しないことを示すフラグとに基づいて、図10に示す条件テーブルを更新する。図12は、本実施の形態に係る更新された条件テーブルの一例を示す図である。
図12に示すように、判定部32bは、インクジェットヘッド13に印加した波形信号と、ミストの発生確率及びミストの発生の有無を示す情報とを対応づけて記憶部33に記憶してもよい。例えば、条件番号k=1の波形信号のときは、ミストの発生確率が80%であり、判定部32bによりミスト発生有りと判定されている。また、例えば、条件番号k=3の波形信号のときは、ミストの発生確率が55%であり、判定部32bによりミスト発生無しと判定されている。
次に、判定部32bは、条件テーブルにN個の条件が含まれている場合、条件番号k=Nであるか否かを判定する(S49)。つまり、判定部32bは、図10に示す条件テーブルの全条件(全波形パターン)において、ステップS42〜S47の処理が実行されたか否かを判定する。判定部32bは、条件番号k=Nである場合、つまり条件テーブルにある全条件について処理が完了している場合(S49でYes)、最もミストの発生確率が低い条件番号の波形信号を最適条件としてインクジェット装置10に出力する(S50)。図12の例では、条件番号3の波形信号が最適条件としてインクジェット装置10に出力される。なお、判定部32bは、ミスト発生無しと判定された波形信号が複数ある場合、当該複数の波形信号をインクジェット装置10に出力してもよい。これにより、インクジェット装置10の作業者に波形信号を選択させることができる。
また、判定部32bは、条件番号k=Nではない場合、つまり処理していない条件が存在する場合(S49でNo)、k=k+1とし(S51)、次の条件に対してステップS42以降の処理が行われる。
なお、上記では、条件テーブルにある条件の全てにおいて、図11に示す処理を行う例について説明したが、これに限定されない。
例えば、判定部32bは、使用していた第1のインクと種類が異なる第2のインクがインクジェット装置10のタンク11に補充(例えば、交換)された場合、第2のインクにおけるミストの発生確率を、第1のインクの波形信号を用いて取得してもよい。そして、判定部32bは、第2のインクにおける形状データ群であって、第1のインクの波形信号に対する形状データ群を学習モデルに入力することでミストの発生確率を取得し、取得したミストの発生確率が所定値より小さい場合(S45でNoに相当)、第1のインクの波形信号を第2のインクにおける最適条件としてインクジェット装置10に出力してもよい(S50に相当)。また、判定部32bは、取得したミストの発生確率が所定値以上である場合(S45でYesに相当)、図11に示す処理を実行してもよい。これにより、波形条件を決定するための処理を簡略化することができるので、サーバ装置30の消費電力を削減することができる。また、生産において、インクの交換をスムーズに行うことができるので、生産性が向上する効果も期待できる。
また、判定部32bは、例えば、予め作業者が所望するミストの発生確率が設定されている場合、当該ミストの発生確率より低い条件が検出されたときに、その条件番号の波形信号を最適条件としてインクジェット装置10に出力してもよい(S50に相当)。つまり、作業者が所望するミストの発生確率を満たす波形信号が検出された時点で、残りの条件に対してステップS42以降の処理が行われなくてもよい。これにより、ユーザが所望する条件を満たした波形条件を、より少ない処理量で出力することができる。
[2−3.効果など]
以上説明したように、本実施の形態に係る波形信号の制御方法は、インクジェット装置10が備えるインクジェットヘッド13に印加される波形信号の制御方法であって、インクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状を示す形状データであって、時間的に連続した複数の形状データを含む形状データ群を入力として、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルに対して、インクジェットヘッド13に1以上の波形信号を印加することで取得されたインクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状を示す形状データであって、時間的に連続した複数の形状データを含む1以上の波形信号それぞれの形状データ群を入力することで、1以上の波形信号のそれぞれにおいてインクジェットヘッド13からミストが発生する確率を取得し(S44)、1以上の波形信号のうち、取得された確率が所定値より小さい波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力する(S50)ことを含む。
これにより、波形信号におけるミストの発生の抑制に関連するパラメータを特定できない場合であっても、ミストの発生確率が所定値より小さい波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力することができる。よって、本実施の形態に係る波形信号の制御方法によれば、ミストの発生を抑制することができる。
また、このような波形信号がインクジェット装置10のインクジェットヘッド13に印加されることで、確率が所定値以上の波形信号が印加された場合に比べてミストの発生が抑制され得る。
また、1以上の波形信号は、第1の波形信号、および、第1の波形信号とは異なる第2の波形信号を含み、第1の波形信号をインクジェットヘッド13に印加したときの形状データ群を学習モデルに入力することで出力される確率を第1の確率とし、第2の波形信号をインクジェットヘッド13に印加したときの形状データ群を学習モデルに入力することで出力される確率を第2の確率とした場合、第2の確率が、所定値より小さく、かつ、第1の確率より小さいとき、第2の波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力する(S50)。
これにより、よりミストの発生確率が小さい波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力することができるので、ミストの発生をより抑制することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る学習モデルの生成方法は、インクジェットヘッド13に印加される波形信号の制御に用いる学習モデルの生成方法であって、インクジェットヘッド13に波形信号を印加することでインクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状を示す形状データであって、時間的に連続した複数の形状データを含む形状データ群を取得し(S12)、形状データ群におけるミストの発生確率(ミストが発生する確率)を取得し(S13)、形状データ群と発生確率との関係を機械学習することで、形状データ群を入力とし、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力する学習モデルを生成する(S16)。
これにより、形状データ群を入力として、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルを生成することができる。このような学習モデルを用いてミストが発生する確率を出力させることで、ミストが発生する確率の取得を自動で行うことが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態に係るサーバ装置30は、インクジェット装置10が備えるインクジェットヘッド13に印加される波形信号を制御するサーバ装置30であって、インクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状を示す形状データであって、時間的に連続した複数の形状データを含む形状データ群を入力として、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルに対して、インクジェットヘッド13に1以上の波形信号を印加することで取得された、インクジェットヘッド13から連続的に吐出されたインクの形状を示す形状データであって、時間的に連続した複数の形状データを含む1以上の波形信号それぞれの形状データ群を入力することで、1以上の波形信号のそれぞれにおいてインクジェットヘッド13からミストが発生する確率を取得する制御部32と、1以上の波形信号のうち、確率が所定値より小さい波形信号を示す情報をインクジェット装置10に出力する通信部31とを備える。
なお、サーバ装置30は、制御装置の一例である。また、通信部31は、出力部として機能する。
これにより、上記の波形信号の制御方法と同様の効果を奏する。
(実施の形態3)
[3−1.インクジェットシステムの構成]
まず、本実施の形態に係るインクジェットシステム1aの構成について、図13を参照しながら説明する。図13は、本実施の形態に係るインクジェットシステム1aの機能構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るインクジェットシステム1aは、主に、表示装置160を備える点において、実施の形態1に係るインクジェットシステム1と相違する。本実施の形態に係るインクジェットシステム1aにおいて、実施の形態1に係るインクジェットシステム1と同様の構成は同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
図13に示すように、インクジェットシステム1aは、インクジェット装置110と、ネットワーク20と、サーバ装置30と、表示装置160とを備える。
インクジェット装置110は、実施の形態1のインクジェット装置10に比べて、液滴用カメラ17を有していない。つまり、本実施の形態では、サーバ装置30は、インク液滴Iの飛翔状態を時間的に連続して撮影した形状データ群を用いずに、インクジェットヘッド13からミストが発生するか否かを判定する。具体的には、サーバ装置30は、インクが塗布されたワーク50全体を撮影した画像データを含む形状データをワーク用カメラ18から取得して、ワーク用カメラ18から取得した形状データに基づいてミストが発生するか否かを判定する。なお、ワーク50全体を撮影した画像データを含む形状データは、ワーク50に塗布されたインクの状態を示す状態データの一例である。
なお、以下では、サーバ装置30は、1枚の画像データに基づいて判定を行う例を説明するが、複数の画像データに基づいて判定を行ってもよい。例えば、サーバ装置30は、インクが塗布された複数のワーク50それぞれの全体を撮影した複数の画像データを含む形状データ群をワーク用カメラ18から取得して、ワーク用カメラ18から取得した形状データ群に基づいてミストが発生するか否かを判定してもよい。
ワーク用カメラ18は、サーバ装置30においてインクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するために用いられる画像データを撮影する。具体的には、インクジェットヘッド13から吐出されたインクが塗布されたワーク50を撮影する。ワーク用カメラ18は、ワーク50全体を複数回に分けて撮影を行ってもよいし、1回で撮影を行ってもよい。ワーク50全体を複数回に分ける場合、複数の画像データを合成することで、ワーク50全体を撮影した1つの画像データが生成される。本実施の形態では、ワーク用カメラ18は、インクジェットヘッド13から吐出されたインクが塗布されたワーク50の形状データを取得する検出器の一例である。
なお、インクジェットシステム1aは、インクジェット装置110に替えて、実施の形態1に係るインクジェット装置10を備えていてもよい。つまり、インクジェットシステム1aは、液滴用カメラ17を備えていてもよい。
サーバ装置30のモデル生成部32aは、ワーク用カメラ18から取得した形状データを入力とし、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルを生成するための処理部である。つまり、学習モデルは、印刷対象物であるワーク50に塗布されたインクの状態に基づいて、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力する。モデル生成部32aは、予め上記の学習モデルを生成する。学習モデルは、例えば、ニューラルネットワークで構成されるが、これに限定されない。インクの状態は、インクの形状、位置、色の少なくとも1つを含む。
モデル生成部32aは、例えば、ワーク用カメラ18から取得した形状データと、当該形状データにおけるミストの発生確率との関係を機械学習することで、学習モデルを生成する。例えば、機械学習には、ワーク用カメラ18から取得した形状データと、当該形状データにおけるミストの発生確率とを対応づけて表す教師データが用いられる。ミストの発生確率には、例えば、形状データにミストが発生しているか否かの判定結果が用いられてもよい。このように学習モデルは、例えば、教師あり学習によって学習されるが、例えば、教師なし学習などの他の学習方法によって学習されてもよい。また、学習モデルは、ワーク用カメラ18から取得した形状データを入力とし、インクジェットヘッド13からのミストの発生の有無を出力するように学習された学習モデルであってもよい。
このように学習された学習モデルは、設定された波形信号でインクジェット装置110が生産をしているときにミストが発生した場合、実際にインクが塗布されたワーク50の画像データに基づいて、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力することができる。つまり、本実施の形態に係る学習モデルは、生産中(インクジェット装置110が印刷中)に発生したミストを検出ためのモデルである。
判定部32bは、モデル生成部32aで生成された学習モデルとワーク用カメラ18で新たに取得されたインクが塗布されたワーク50の形状データとを用いて、ミストが発生するか否かを判定する。具体的には、判定部32bは、形状データを学習モデルに入力することで得られる出力であるミストの発生確率に基づいて、ミストが発生するか否かを判定する。判定部32bは、例えば、発生確率が所定確率以上である場合、ミストが発生すると判定する。
また、学習モデルがミストの発生の有無を出力するように学習されている場合、判定部32bは、形状データを学習モデルに入力することで得られる出力であるミストの発生の有無を取得してもよい。これも、判定部32bによりミストが発生するか否かが判定されることに含まれる。
表示装置160は、ネットワーク20を介して、インクジェット装置110及びサーバ装置30と接続されており、インクジェット装置110及びサーバ装置30から受信した情報を作業者に表示する。表示装置160は、例えば、インクジェット装置110からの情報に基づいて、ワーク50に対する印刷が正常に行われたか否か、つまり、印刷後のワーク50が良品であるか否かを示す情報を表示してもよい。また、表示装置160は、例えば、サーバ装置30からの情報に基づいて、インクジェットヘッド13に印加する波形信号を調整する旨のレコメンドを表示する。
表示装置160は、例えば、液晶パネルによって実現されるが、有機ELパネルなどのその他の表示パネルによって実現されてもよい。また、表示装置160は、バックライトを備えていてもよい。
表示装置160は、インクジェット装置110に備えられていてもよいし、作業者が有する端末装置(例えば、タブレット端末など)の表示部であってもよい。
表示装置160は、波形信号がインクジェットヘッド13からミストを発生させる波形信号であることを示す情報を提示する提示装置の一例である。なお、提示装置の提示態様は、表示に限定されない。提示装置は、表示装置160とともに、又は、表示装置160に替えて、音、光、振動などの少なくとも1つにより情報を提示する装置を含んでいてもよい。
上記のようなインクジェットシステム1aによれば、発生したミストを直接検出することができない場合であっても、インクが塗布されたワーク50の形状データに基づいてミストの発生の有無を判定することができる。ミストを直接検出することができない場合は、例えば、インクジェット装置110が液滴用カメラ17を有していない場合である。
[3−2.インクジェットシステムの動作]
続いて、上記のようなインクジェットシステム1aの動作について、図14〜図16を参照しながら説明する。図14は、本実施の形態に係る学習モデルの生成方法を示すフローチャートである。図14に示すフローチャートは、インクジェット装置110において生産(量産)が開始される前に行われる。
図14に示すように、制御部32は、波形信号を印加してインクジェットヘッド13からインクを吐出してワーク50にインクを塗布する(S61)。具体的には、制御部32は、インクジェット装置110に制御信号を送信することで、信号発生器15から駆動部14に波形信号を印加させる。ここで印加する波形信号は、任意の波形信号でもよい。
インクジェット装置110の信号発生器15は、サーバ装置30からの制御信号に基づいて、駆動部14に波形信号を印加すること、ノズル13cからインクを吐出してワーク50にインクを塗布する。これにより、ワーク50のセルがインクで満たされる。ワーク用カメラ18は、インク液滴Iが着弾したワーク50におけるインクの状態を撮影する。
制御部32は、インクが塗布されたワーク50を撮影して得られた画像データである、ワーク50の形状データをワーク用カメラ18から取得する(S62)。制御部32は、インクの形状データを記憶部33に記憶してもよい。
次に、モデル生成部32aは、ワーク50の形状データにミストが発生しているか否かを判定する(S63)。つまり、モデル生成部32aは、インクジェットヘッド13からミストが発生しているか否かを判定する。
モデル生成部32aは、例えば、画像解析によりワーク50上のインクの塗布領域以外の領域にインクが塗布されているか否かにより、インクジェットヘッド13からミストが発生しているか否かを判定してもよい。画像解析の手法は、特に限定されず、既存のいかなる技術が用いられてもよい。モデル生成部32aは、例えば、ワーク50の塗布領域以外の領域にインクが塗布されている場合、ミストが発生していると判定し、ワーク50の塗布領域以外の領域にインクが塗布されていない場合、ミストが発生していないと判定してもよい。また、モデル生成部32aは、例えば、ワーク50の塗布領域以外の領域に塗布されたインクの数が所定数以上である場合、ミストが発生していると判定し、ワーク50の塗布領域以外の領域に塗布されたインクの数が所定数より少ない場合、ミストが発生していないと判定してもよい。ミストの発生の有無を判定することは、ミストの発生確率を取得することの一例である。
図15Aは、本実施の形態に係るミストが発生していない場合のワーク50を示す図である。図15Bは、本実施の形態に係るミストが発生している場合のワーク50を示す図である。なお、図15A及び図15Bは、ワーク50が有機ELディスプレイに用いられる基板である場合を示している。ワーク50上には、セルを形成するための壁部51が形成されている。壁部51は、例えば、フッ素を含む樹脂が使用される。また、発光層としてRBGの3色に対応した3種類があり、それぞれを発光層51R、51G及び51Bで表している。発光層51R、51G及び51Bは、ワーク50上に塗布されたインクにより形成される。この場合、インクは、発光層材料を溶媒に溶かした溶液である。
図15A及び図15Bでは、紙面上の左から右に向かって、発光層51R、51G及び51Bの順に対応するインクが充填されている。また、紙面上の上下方向である走査方向には、同一のインクが充填されている。ワーク用カメラ18は、例えば、紙面上の左右方向である副走査方向にセルが並んだ行(画素行)ごとに撮影を行ってもよい。図15A及び図15Bに示す画像データは、行ごとに撮影した複数の画像データを合成してワーク50全体を含む1つの画像データとしたものである。
図15Aに示すように、ミストが発生していない場合、例えば、壁部51にはインクが塗布されていない。平面視における壁部51の領域は、塗布領域以外の領域の一例である。
図15Bに示すように、左上のセルXは、ミストが発生したことにより、セルX外にインクが塗布されている状態を示している。また、右下のセルYは、ミストが発生したことにより、本来、隣のセルに滴下されるべきインクが混入している状態を示している。なお、ワーク50のセルX、Yは、塗布領域の一例である。
判定部32bは、例えば、ワーク50上に塗布されたインクの位置に基づいて、ミストが発生していると判定してもよい。判定部32bは、例えば、セルXの領域外にインクが塗布されている場合、ミストが発生していると判定してもよい。また、判定部32bは、発光層51R、51G及び51Bの色に基づいて、ミストが発生していると判定してもよい。判定部32bは、例えば、発光層51R、51G及び51Bの少なくとも1つが所望の色ではない場合、本来そのセルに滴下されるべきではないインクが混入している可能性があるので、ミストが発生していると判定してもよい。例えば、隣接するセルに滴下されるべきインクが混入していることなどが想定される。
判定部32bが発光層51R、51G及び51Bの色に基づいてミストが発生しているか否かを判定する場合、ワーク用カメラ18は、例えば、カラーカメラである。
なお、モデル生成部32aは、ユーザからの入力を受け付ける受付部(図示しない)を有しており、画像データにおけるミストの発生の有無の入力をユーザから受け付けてもよい。つまり、モデル生成部32aは、ミストが発生している状態であるか否かを判定しなくてもよい。この場合、モデル生成部32aは、ミスト発生が発生していないことを示す入力を、受付部を介して取得すると、ミストが発生していないと判定し、ミスト発生が発生していることを示す入力を、受付部を介して取得すると、ミストが発生していると判定する。なお、受付部は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、ボタンなどであるがこれに限定されない。
図14を再び参照して、モデル生成部32aは、ワーク50の形状データにミストが発生していない場合(S63でNo)、ステップS62で取得した形状データを、ミストが発生していない状態の形状データとして記憶部33に記憶する(S64)。また、モデル生成部32aは、形状データにミストが発生している場合(S63でYes)、ステップS62で取得した形状データを、ミストが発生している状態の形状データとして記憶部33に記憶する(S65)。
なお、ステップS61〜S65までの処理が繰り返し実行されてもよい。例えば、印加する波形信号を変更し、変更した波形信号に対応する形状データを取得し、ステップS62以降の処理が行われてもよい。例えば、学習に必要な数の教師データが取得されるまで、ステップS61〜S65までの処理が繰り返し実行されてもよい。
次に、モデル生成部32aは、形状データとミストの発生確率との関係を機械学習させることで、学習モデルを生成する(S66)。モデル生成部32aは、形状データとミストの発生確率とを教師データとし、形状データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークからミストの発生確率が出力されるように、ニューラルネットワークのパラメータを学習させる。パラメータは、例えば、各ニューロンの重みなどである。
なお、上記では、モデル生成部32aは、ミストが発生している状態及び発生していない状態の両方のワーク50の形状データを用いて学習モデルを生成する例について説明したが、これに限定されない。モデル生成部32aは、例えば、ミストが発生している状態及び発生していない状態の一方のワーク50の形状データを用いて学習モデルを生成してもよい。例えば、モデル生成部32aは、ミストが発生していない状態のワーク50の形状データとミストが発生する確率(例えば、0%)との関係を機械学習することで、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力する学習モデルを生成してもよい。
なお、上記では、学習モデルは、ミストが発生する発生確率を出力するモデルである例について説明したが、ミストが発生しない確率を出力するモデルであってもよい。
次に、モデル生成部32aは、生成した学習モデルを記憶部33に記憶する(S67)。これにより、インクジェット装置110から新たに取得された形状データに対してミストが発生する確率を出力することができる学習モデルが生成される。
続いて、インクジェットシステム1aの波形信号を出力する動作について、図16を参照しながら説明する。図16は、本実施の形態に係るインクジェットシステム1aの波形信号を出力する動作を示すフローチャートである。なお、図16に示す動作は、サーバ装置30において行われる動作である。また、図16に示す動作は、例えば、インクジェット装置110による生産(量産)が開始された後に行われる。また、図16に示す動作は、インクジェット装置110の印刷対象物であるワーク50のそれぞれにおいて行われる。
図16に示すように、制御部32は、波形信号を印加してインクジェットヘッド13からインクを吐出してワーク50にインクを塗布する(S71)。具体的には、制御部32は、インクジェット装置110に制御信号を送信することで、信号発生器15から駆動部14に波形信号を印加させる。ここで印加する波形信号は、例えば、実施の形態1又は2などにより生産前に決定された波形信号であってもよい。
インクジェット装置110の信号発生器15は、サーバ装置30からの制御信号に基づいて、駆動部14に波形信号を印加することで、ノズル13cからインクを吐出してワーク50にインクを塗布する。ワーク用カメラ18は、インク液滴Iが着弾したワーク50におけるインクの状態を撮影する。
制御部32は、インクが塗布されたワーク50を撮影して得られた画像データである、ワーク50の形状データを、ワーク用カメラ18から取得する(S72)。制御部32は、ワーク50の形状データを、記憶部33に記憶してもよい。
次に、判定部32bは、ステップS72で取得した形状データを学習モデルに入力する(S73)ことで、当該学習モデルから出力されるインクジェットヘッド13からミストが発生する確率を取得する。当該確率は、ステップS72で取得した形状データ、つまりインクの塗布位置、塗布形状又は塗布領域におけるインクの色に対応した確率である。
次に、判定部32bは、学習モデルから取得したミストの発生確率が所定値以上であるか否かを判定する(S74)。所定値は、予め設定されており、例えば、記憶部33に記憶されている。判定部32bは、ミストの発生確率が所定値以上である場合(S74でYes)、ワーク50を不良品として排出する(S75)。そして、判定部32bは、インクジェットヘッド13に印加する波形信号を調整する旨のレコメンドを表示装置160に出力する(S76)。具体的には、判定部32bは、波形信号を調整することを示す情報、又は、ミストが発生していることを示す情報を表示装置160に出力することで、当該情報を表示させる。これにより、インクジェット装置110の作業者は、レコメンドに応じて、適宜波形パラメータ(例えば、図3に示す位置S1〜S5の電圧又は時刻)の調整作業を行うことができる。
また、判定部32bは、ミストの発生確率が所定値より小さい場合(S74でNo)、ワーク50を次工程に供給する(S77)。つまり、ステップS74のNoである場合、インク塗布によるワーク50の生産が継続される。
従来、例えば、インクジェット装置110の条件出しのとき、又は、生産中の抜き取り検査のときに印刷状態を確認することが行われている。しかしながら、ミストは再現性がないので、従来のような検査であれば、ミストの発生を見逃す可能性がある。
一方、本実施の形態に係るインクジェットシステム1aは、図16に示す動作をワーク50のそれぞれにおいて行うので、再現性がないミストの発生を検出することが可能である。よって、従来に比べて正確にかつ自動でミストの発生を検出することができる。
また、インクジェットシステム1aは、インクジェットヘッド13に印加する波形信号を調整する必要があることを示すレコメンドを表示することができるので、ミストが発生した場合、作業者にすぐに知らせることができる。作業者がレコメンドに基づいて、ミストを抑制するための対応を行うことで、インクジェットヘッド13からのミストの発生を抑制することができる。
また、インクジェットシステム1aは、液滴用カメラ17を備える場合、ステップS76においてレコメンドを表示した後、実施の形態1又2に記載した波形信号の制御方法に基づいて、ミストの発生が抑制された波形信号を制御するための処理を行ってもよい。具体的には、判定部32bは、ステップS76の後に、図9又は図11に示す動作を行ってもよい。
[3−3.効果など]
以上説明したように、本実施の形態に係る情報処理方法は、インクジェットヘッド13から吐出されたインクが塗布されたワーク50におけるインクの状態を示す状態データを入力として、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルに対して、インクジェットヘッド13に波形信号を印加することで取得された状態データを入力することで、当該波形信号が印加された状態におけるインクジェットヘッド13からミストが発生する確率を取得し(S73)、取得された確率が所定値以上の場合(S74でYes)に、当該波形信号がインクジェットヘッド13からミストを発生させる波形信号であることを示す情報を表示装置160に出力する(S76)ことを含む。
なお、表示装置160は、提示装置の一例である。
これにより、インクジェットヘッド13を備えるインクジェット装置110において、インクジェットヘッド13のミストを直接検出することができない場合においても、インクが塗布されたワーク50の状態データを取得することにより、ミストの発生の有無を判定することができる。そして、ミストが発生している場合に、インクジェットヘッド13に印加する波形信号を調整する必要があることを促すことができる。表示装置160にミストを発生させる波形信号であることを示す情報が表示され、インクジェット装置110の作業者がミストを抑制するための対応を行うことで、インクジェットヘッド13からのミストの発生を抑制することができる。
また、状態データは、ワーク50を撮影することで取得された画像データである。
これにより、ワーク50を撮影した画像データを取得することで、ミストの発生の有無を判定することができる。例えば、インクジェット装置110がワーク50の印刷状態などを検出するためのカメラを備えている場合、当該カメラが撮影した画像データを用いて、ミストの発生の有無を判定することができる。つまり、追加の装置を要することなく、ミストの発生の有無を判定することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る学習モデルの生成方法は、インクジェットヘッド13に印加される波形信号の制御に用いる学習モデルの生成方法であって、インクジェットヘッド13に波形信号を印加することでインクジェットヘッド13から吐出されたインクが塗布されたワーク50におけるインクの状態を示す状態データを取得し(S62)、状態データにおけるミストの発生確率を取得し(S63)、状態データと発生確率との関係を機械学習することで、状態データを入力とし、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力する学習モデルを生成する(S66)ことを含む。
これにより、状態データを入力として、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルを生成することができる。このような学習モデルを用いてミストが発生する確率を出力させることで、ミストが発生する確率の取得を自動で行うことが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態に係るサーバ装置30は、インクジェットヘッド13から吐出されたインクが塗布されたワーク50におけるインクの状態を示す状態データを入力として、インクジェットヘッド13からミストが発生する確率を出力するように学習された学習モデルに対して、インクジェットヘッド13に波形信号を印加することで取得された状態データを入力することで、当該波形信号が印加された状態におけるインクジェットヘッド13からミストが発生する確率を取得する制御部32と、取得された確率が所定値以上の場合に、当該波形信号がインクジェットヘッド13からミストを発生させる波形信号であることを示す情報を表示装置160に出力する通信部31とを備える。
なお、サーバ装置30は制御装置の一例であり、表示装置160は、提示装置の一例である。また、通信部31は、出力部として機能する。
これにより、上記の波形信号の制御方法と同様の効果を奏する。
(その他の実施の形態)
以上、各実施の形態(以降において、実施の形態等とも記載する)について説明したが、本開示は、このような実施の形態等に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態等におけるインクジェット装置は、液体を吐出可能なインクジェットヘッドを用いて、種々の対象物に対して、塗布を行うインクジェット装置に滴用可能である。対象物は、インク(例えば、インクを含む液体を含む)を塗布することができるものであれば、材質は特に限定されないが、例えば、紙、基板、プラスチック、フィルム、織物、金属などであってもよい。また、インクジェット装置は、インクを塗布する機能を有するいかなる装置に搭載されていてもよい。
また、上記実施の形態等では、学習モデル生成用の画像データ、及び、ミスト発生の有無の判定用の画像データを同一のインクジェット装置から取得する例について説明したが、これに限定されない。学習モデル生成用の画像データは、例えば、波形信号を制御するインクジェット装置とは異なるインクジェット装置(例えば、波形信号を制御するインクジェット装置と装置仕様が類似するインクジェット装置)を用いて取得されてもよい。
また、上記実施の形態等では、インクジェット装置は、タンクとインクジェットヘッドとの間でインクを循環させる循環型のインクジェット装置である例について説明したが、これに限定されない。インクジェット装置は、インクを循環させない構成であってもよい。
また、上記実施の形態3では、インクジェットシステムが液滴用カメラを備えていない場合について説明したが、これに限定されない。実施の形態3に係るインクジェットシステムは、液滴用カメラを備えていてもよい。この場合、インクジェットシステムは、液滴用カメラ及びワーク用カメラの少なくとも一方が撮影した画像データに基づいて、インクジェットヘッドからミストが発生しているか否かを判定してもよい。インクジェットシステムは、液滴用カメラ及びワーク用カメラの両方が撮影した画像データに基づいて、インクジェットヘッドからミストが発生しているか否かを判定してもよい。例えば、インクジェットシステムは、液滴用カメラが撮影した画像データに基づくミスト発生の有無の判定結果、及び、ワーク用カメラが撮影した画像データに基づくミスト発生の有無の判定結果の少なくとも一方が、ミストが発生していることを示す場合、インクジェットヘッドからミストが発生していると判定してもよい。
また、図2及び図13に示すブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを1つの機能ブロックとして実現したり、1つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
また、上記実施の形態等では、インクジェット装置及びサーバ装置のそれぞれは、単一の装置で実現されていたが、互いに接続された複数の装置で実現されてもよい。また、サーバ装置の機能の少なくとも一部は、インクジェット装置が備えていてもよい。例えば、インクジェット装置は、サーバ装置の機能構成の全てを備えていてもよい。つまり、インクジェット装置は、サーバ装置の機能を内蔵していてもよい。
また、上記実施の形態等におけるインクジェットシステムが備える装置間の通信方式については特に限定されるものではない。装置間では、無線通信が行われてもよいし、有線通信が行われてもよい。
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。例えば、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、他のステップと順番が入れ替えられて実行されてもよい。
また、上記実施の形態等におけるインクジェットシステムが備える構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。
システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
また、本開示の一態様は、波形信号の制御方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本開示の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
また、上記実施の形態等において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。