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JP2021189393A - マイクロレンズアレイを用いた光拡散板及びその製造方法 - Google Patents

マイクロレンズアレイを用いた光拡散板及びその製造方法 Download PDF

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JP2021189393A JP2020097615A JP2020097615A JP2021189393A JP 2021189393 A JP2021189393 A JP 2021189393A JP 2020097615 A JP2020097615 A JP 2020097615A JP 2020097615 A JP2020097615 A JP 2020097615A JP 2021189393 A JP2021189393 A JP 2021189393A
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俊彦 柴沼
Toshihiko SHIBANUMA
彩乃 竹下
Ayano Takeshita
吾郎 須崎
Goro Suzaki
正直 後藤
Masanao Goto
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Eneos Corp
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Abstract

【課題】回折の影響を低減しつつ均一な拡散光を照射できるとともに、インプリントで容易に作成することができる光拡散板及びその製造方法を提供する。【解決手段】光拡散板は、複数のマイクロレンズが第1方向と該第1方向と交差する第2方向とを含む平面上に配列されている。複数のマイクロレンズの頂点が、前記第1方向及び前記第2方向にそれぞれ所定の周期で配列した複数の基準点から、それぞれ、前記平面内で前記第1方向の変位幅と前記第2方向に変位幅の範囲内でランダムに変位して配置されており、一部の隣接するマイクロレンズ間の境界部が同一の高さHの平坦部Fを有し、光拡散板の平面における面積に対する平坦部Fの面積の割合が、1.0%以下である。【選択図】図2b

Description

本発明は、マイクロレンズアレイを用いた光拡散板及びその製造方法に関する。
光拡散板は、反射型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、光ディスク用ピックアップ、プロジェクタ(投影型表示装置)など、種々の用途に使用されている。光拡散板にマイクロレンズアレイを用いることによって照明領域に光の均一性をもたらすことができる。
特許文献1及び2は、規則配列されたレンズアレイを基準としてその基準点からレンズの頂点をランダムに分布させることによりレンズ配列に不規則性を導入し、それにより規則配列による光の回折による影響を低減することを開示している(図22参照)。
特開2014−38314号公報 特開2018−200489号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載のような不規則性を凹面形状のマイクロレンズに導入しようとすると、隣り合うレンズ頂点間の距離もまたランダムとなるために隣り合うレンズの境界部の高さが異なってくる。特に凹面のレンズ同士の境界部は凹曲面が交差してできる凸部となり、縦横比が高い凸部も存在する。このようなマイクロレンズをインプリントのような型を用いて転写により作製しようとすると、縦横比が高い凸部の転写が困難となる。特に、ゾルゲル材料のような無機材料にインプリントにより凹凸パターンを転写する場合、ゲル化する際に材料が収縮するために、高く尖った境界部にはひび割れなどが生じやすくなる。
本発明は、回折の影響を低減しつつ均一な拡散光を照射できるとともに、インプリントで容易に作成することができる光拡散板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、複数のマイクロレンズが第1方向と該第1方向と交差する第2方向とを含む平面上に配列された光拡散板であって、
前記複数のマイクロレンズの頂点が、前記第1方向の周期P1及び前記第2方向の周期P2で配列された複数の基準点から、それぞれ、前記平面内で前記第1方向の変位幅δ1と前記第2方向の変位幅δ2の範囲内でランダムに変位して配置されており、
前記複数のマイクロレンズのうちの一部の隣接するマイクロレンズ間の境界部が同一の高さの平坦部を有し、
前記光拡散板の前記平面における面積に対する前記平坦部の面積の割合が、1.0%以下である光拡散板が提供される。
前記光拡散板において、δ1<0.23×P2及びδ2<0.23×P1を満足してよい。
前記光拡散板において、前記マイクロレンズの頂点から前記マイクロレンズ間の境界までの高さの最大値Hと、前記マイクロレンズの曲率半径r、前記マイクロレンズの開口の前記平面に平行な平面上での最大距離をDとすると、下記式:
r−√(r−D/4)≦H<r−√(r−(D+2δ/4)
式中、δ=√(δ1+δ2)である
を満たしてよい。
前記第1方向と前記第2方向が直交するときに、前記複数のマイクロレンズの頂点の位置は、前記複数の基準点のそれぞれを原点としたとき、(δ1、δ2)、(−δ1、δ2)、(δ1、−δ2)、(−δ1、−δ2)を、それぞれ中心とし、長さ2×δ2を第2方向の軸、長さ2×δ1を第1方向の軸とした4つの円または楕円により囲まれる領域内に配置されていてよい。
前記光拡散板において、前記基準エリアの前記1方向の周期P1が第2方向の周期P2よりも小さく且つ前記1方向の変位幅δ1は前記2方向の変位幅δ2よりも大きくてよい。
前記光拡散板において、前記複数のマイクロレンズの前記第1方向の曲率半径と前記第2方向の曲率半径とは略等しくてよい。
前記光拡散板において、前記複数のマイクロレンズが隣接する複数の境界部に、前記平坦部がランダムに存在してよい。また、前記複数のマイクロレンズの隣接する複数の境界部のうちに、いくつの境界部は前記平坦部を有していなくてもよい。
前記光拡散板において、前記複数のマイクロレンズの頂点が、同一平面上に位置していてよい。
本発明の第2の態様に従えば、複数のマイクロレンズが第1方向と該第1方向と交差する第2方向とを含む平面上に配列された光拡散板の製造方法であって、
前記複数のマイクロレンズの頂点が、前記第1方向の周期P1と前記第2方向の周期P2で配列した複数の基準点から、それぞれ、前記平面上で前記第1方向の変位幅δ1と前記第2方向の変位幅δ2の範囲内でランダムに変位して配置されており、
一部の隣接するマイクロレンズ間の境界部が同一の高さの平坦部を有し、
前記光拡散板の前記平面における面積に対する前記平坦部の面積の割合が、1.0%以下である光拡散板の原板を製造することと、
前記原板を樹脂に転写することにより樹脂モールドを作製することと、
前記樹脂モールドゾルゲル材料に転写して、乾燥及び焼成することを含む前記光拡散板の製造方法が提供される。
本発明の光拡散板は、複数のマイクロレンズの頂点がランダム配置されているために、マイクロレンズが周期配列されていることによる回折光の影響を低減することができる。一方で、複数のマイクロレンズの頂点がランダム配置されることで、レンズ境界部の高さが異なり、一部の境界部では先細の尖った境界部が生じることとなるが、そのような先細の高い境界部が所定高さで切除されたような平坦部となっているために、インプリントでの製造が容易となる。さらに、平坦部の面積をマイクロレンズが配列されている平面の面積に対して1%以下の割合としたので、平坦部を直進する光によるゴーストを抑制することができる。それゆえ、インプリント、特にゾルゲル材料のような無機材料を用いたインプリント法によって本発明の光拡散板を高い収率で製造することができる。
図1は、実施形態のマイクロレンズアレイの表面形状を表す概念図である。 図2aは図1に示したマイクロレンズアレイの平面図である。 図2bは図2aの鎖線t−tで切断した断面図である。 図3は、レンズL1〜L3の頂点PTの基準エリアSAの中心から変位していないマイクロレンズアレイの平面図(上段)とその断面図(下段)を示す概念図である。 図4は、レンズL1〜L3の頂点が基準エリアの中心からランダムにX方向に変位しているマイクロレンズアレイの平面図(上段)とその断面図(下段)である。 図5(a)はマイクロレンズアレイの製造プロセスの一例を示すフローチャートであり、図5(b)はゾルゲル材料を用いてマイクロレンズアレイをインプリント法により製造するプロセスを示すフローチャートである。 図6(a)〜(c)は、それぞれ、実験1におけるサンプルNo.0〜No.2のマイクロレンズアレイから照射された光強度分布を表すグラフである。 図7(a)及び(b)は、それぞれ、実験1におけるサンプルNo.3及びNo.4のマイクロレンズアレイから照射された光強度分布を表すグラフである。 図8(a)及び(b)は、それぞれ、実験1におけるサンプルNo.5及びNo.6のマイクロレンズアレイから照射された光強度分布を表すグラフである。 図9(a)は、実験1におけるサンプルNo.1〜No.6の平坦部割合に対するゴースト比率の変化を表すグラフであり、図9(b)は実験1におけるサンプルNo.1〜No.6のδ/Pに対するゴースト比率の変化を表すグラフである。 図10(a)〜(c)は、それぞれ、実験2におけるサンプルNo.1〜No.3のマイクロレンズアレイから照射された光強度分布を表すグラフである。 図11(a)〜(c)は、それぞれ、実験2におけるサンプルNo.3〜No.5のマイクロレンズアレイから照射された光強度分布を表すグラフである。 図12は、実験2におけるNo.1〜No.5の平坦部面積割合に対するゴーストの比率の変化を表したグラフである。 図13は、実験2におけるNo.1〜No.5のδ/Pに対するゴースト比率の変化を表したグラフである。 図14は、各実験におけるマイクロレンズアレイの光強度分布をシミュレーションするために用いた光源とマイクロレンズアレイMAと検出モニタとの配置図である。 図15は、基準エリア内で4つの楕円に囲まれたマイクロレンズの頂点の好ましい領域PAを示す概念図である。 レンズ頂点を図15に示した領域PAに位置させるための処理を示すフローチャートである。 図17は、実験3においてレンズ頂点位置を領域PAの範囲内でランダムに変位させたときのマイクロレンズアレイから得られる光強度分を表すグラフである。 図18は、実験3における平坦部面積割合に対するゴースト比率を実験1のNo.4との比較において示したグラフである。 図19は、実験3におけるδ/Pに対するゴースト比率を実験1のNo.4との比較において示したグラフである。 図20(a)は、実験4で用いたフラット部Fを有する凸面形状のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイの概略断面図であり、図20(b)はその光強度分布を示すグラフである。 図21は、マイクロレンズの基準エリアが六角形のマイクロレンズアレイの平面図である。
以下、本発明の光拡散板及びその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の光拡散板の典型例は、図1に示すように凹面形状の複数のマイクロレンズLが平面上に格子状に配列されたマイクロレンズアレイMAである。本発明の光拡散板は、凹面形状のマイクロレンズのみならず凸面形状のマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイを対象とするが、以下の説明では、凹面形状のマイクロレンズLを有するマイクロレンズアレイを例に挙げて説明する。図1中、個々のマイクロレンズ(以下、単に「レンズ」という)Lの凹面の最深部(頂点)を黒丸で表している。図2aに示すように、マイクロレンズアレイMAの各レンズLは、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)に周期的に配列されたエリアSA(以下、適宜、「基準エリア」という)上にそれぞれ存在している。図1、図2a、2bの具体例では、矩形の基準エリアSAを例に挙げて説明するが、後述するように多角形もあり得る。図2bの断面図に示すように各レンズLの頂点PT1、PT2は、同一平面(XY平面)上に位置する。基準エリアSAの中心または基準点(白丸)はいずれも矩形の中心に存在するが、それらのレンズLの頂点(黒丸)は、矩形の中心をX方向及びY方向にランダムに変位させた位置に存在する。従って、隣接するレンズの境界(実線)は、基準エリアSAを表す破線の位置から若干ずれることになる。このように、レンズの頂点を基準点からX方向及びY方向にランダムにずらすことによって、周期配列する複数のレンズLに平行光が入射したとしても同一方向に出射される光の回折の影響を低減することができる。但し、レンズLの頂点をランダムに変位させることによって、隣接するレンズの境界部の高さが隣接する位置でそれぞれ異なってくる。このことを、図3及び4を参照して説明する。
なお、本願において第1方向とは、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)の一方を、第2方向とは、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)の他方を意味するものとする。また、基準エリアSAの第1方向の長さまたは基準点の周期をP1、第2方向の長さまたは基準点の周期をP2で表すものとする。第1方向と第2方向とは、直交していることが好ましいが、必ずしも直交している場合だけでなく交差している場合も含む。また、図2bに示した具体例では、各レンズLの頂点PT1、PT2は同一平面(XY平面)上に位置していたが、必ずしも各レンズLの頂点が同一平面上に位置していなくてもよい。すなわち、マイクロレンズアレイMAにおいてレンズLの頂点の高さ方向(図中、Z方向)の位置が異なってもよい。各レンズLの頂点が同一平面上に位置していない場合には、レンズLの頂点のX方向、Y方向における位置は、いずれかのレンズの頂点が位置するX-Y平面を規定面として、その規定面に各レンズの頂点位置を投影したときのX方向、Y方向における位置とする。
図3は、レンズL1〜L3の頂点PT(黒丸)が基準エリアSAの中心から変位していないマイクロレンズアレイの平面図(上段)とその断面図(下段)を表している。断面図は、平面図においてX方向に配列するレンズの頂点PTを通る破線で切断した断面を示す。断面図から分かる通り、各レンズLの頂点PTは同一の高さ位置にあり、隣接するレンズL1及びL2の境界B12、隣接するレンズL2及びL3の境界B23の高さは同一の高さhである。
図4は、レンズL1〜L3の頂点(黒丸)PT1〜PT3が基準エリアSAの中心から所定の変位幅でランダムに変位しているマイクロレンズアレイの平面図(上段)とその断面図(下段)を示している。但し、図4では、説明を分かり易くするために、変位している方向はX方向だけにしている。図4の上図に示すように隣接するレンズL1〜L3の頂点PT1〜PT3が基準エリアの中心からランダムに変位した場合には隣接するレンズの境界部の高さは異なる。すなわち、隣接するレンズL1,L2のようにそれらの頂点PT1,PT2が互いに離れるようにエリアSAの中心(白丸)から変位する場合には、レンズL1,L2の境界部B12の高さh12は、変位していない場合の境界高さhよりも高くなる。これとは逆に隣接するレンズL2,L3の頂点PT2,PT3が互いに近づく位置に変位している場合には、二つのレンズL2,L3の境界部B23の高さh23はhよりも低くなる。これにより、マイクロレンズアレイの頂点がランダムな位置となるだけでなく、レンズの境界部の高さもランダムになる。
図4に示すような境界部の高さがランダムな凹面形状のマイクロレンズをインプリントのような型を用いて作製しようとすると、レンズL1,L2の境界部B12のような高い尖頭または突起部の転写が困難となる。特に、ゾルゲル材料のような無機材料を用いる場合にはゲル化する際に無機材料が収縮するために、高く尖った境界部にはひび割れなどが生じやすくなる。
本発明では、マイクロレンズアレイのレンズ境界部が一定以上の高さを超えている部分については、境界部の上部だけを切除したような平坦部を形成している。図4において、境界部B12の切断位置は、例えば、破線C−C部で表される。このように境界部の上部が切除されることによって生じた平坦部は、図2aのマイクロレンズアレイMAの平面図において符号Fで示す領域のように一部においてのみ且つランダムな位置の境界部に現れ、すべてのレンズLの境界部に現れるものではない。
ここで、図2bに示すようにレンズ入射面から垂直入射した光は、平坦部からそのまま直進して出射される。この結果、各レンズLの出射面から均一に拡散した光とは異なり、ゴーストや迷光が生じることとなる。本発明では、このようなゴーストや迷光の発生を抑制するために、マイクロレンズアレイMAにおいて、レンズ境界部の平坦部の面積の合計がマイクロレンズアレイMAの全体の面積(X,Y平面に投影した面積)に対して1%以下、特には0.5%以下となるようにマイクロレンズアレイを設計している。マイクロレンズアレイMAの全体の面積に対するレンズ境界部の平坦部の面積の合計の割合(以下、適宜「平坦部割合」または「平坦部面積比」という)が1%を超えると、マイクロレンズアレイからの照射光や投影面においてゴーストや迷光が目立ちやすくなる。平坦部割合が0に近くなると、レンズ頂点がランダム配置されているために境界部の高さがばらつき、極端に細長く突出する箇所が生じ、インプリントなどによる成型が困難となる。このため、平坦部割合は、0.01%以上、特には0.03%以上となるように、境界部の高さを調整することが望ましい。
[マイクロレンズアレイの設計]
前述のようにマイクロレンズアレイMAを構成するレンズLは、それぞれ、格子状に配列した矩形の基準エリアSA上に設けられており、基準エリアSA及び基準点は、同一平面上でX方向及びY方向に周期的に配列している。基準エリアSAのX方向の周期(横方向長さまたは中心の周期)Px(P1)は、1μm〜1000μmにすることができ、Y方向の周期(縦方向長さまたは中心の周期)Py(PY)は、1μm〜1000μmにすることができる。基準エリアSAを正方形として、周期Pxと周期Pyは同一にしてもよく、あるいは、基準エリアSAを長方形として、いずれか一方向の周期を他方向の周期よりも長くしてもよい。基準エリアSAのサイズや形状は、マイクロレンズアレイを使用して投影しようとする投影面やスクリーンとの距離やそれらの形状によって適宜選択することができる。
各レンズLの頂点は、基準エリアの中心、すなわち基準点からX方向及びY方向に変位しており、その変位量はランダムになるように設定することができる。ランダムな変位位置を設定するために、例えばX方向及びY方向の最大変位量(変位幅)δx及びδy(またはδ1及びδ2)を超えない範囲で乱数を発生する。但し、X方向及びY方向の最大変位量(変位幅)δx及びδyは、各レンズLの頂点が基準エリアSA外に存在しないように設定することが望ましい。変位量の最大値δx及びδyは、基準エリアのX方向及びY方向の周期Px,Pyに対して、それぞれ、50%以下、特には後述の実験結果より23%未満にすることが好ましい。δx/Py及びδy/Pxが23%未満であると、図4を参照して説明したようのレンズ境界部の高さに基づく平坦部面積の増大を抑制し、ゴーストの発生を防止し易くなる。基準エリアSAが長方形の場合は、長片の方向に変位するレンズ頂点の変位量が短片の方向に変位する変位量よりも小さい方が好ましい。すなわち、Px<Pyであれば、δy<δxとなるように、レンズ頂点位置をランダム配置させるのが好ましい。こうすることより、縦方向と横方向における回折光による影響をより均等にすることができるからである。
また、マイクロレンズの頂点の位置は、図15に示したように、基準エリアの中心を原点としたとき、(δx、δy)、(−δx、δy)、(δx、−δy)、(−δx、−δy)をそれぞれ中心とし、2δyを長軸、2δxを短軸とした4つの楕円(δx=δyのときは円になる)により囲まれる領域内に配置されるのが好ましい。この領域内にマイクロレンズの頂点が存在すると、隣接するマイクロレンズの頂点との距離が長くならないので(図4におけるレンズL1,L2の境界部B12を参照)、レンズ境界部の高さを低くするために平坦部の面積が増えることを抑制することができ、その結果、ゴーストも発生しにくくなる。
マイクロレンズアレイMAを構成する各レンズLの出射面は、球面、非球面、放物面の凹面形状(または凸面形状)にし得る。レンズLの曲率rは、基準エリアSAのX方向及びY方向の周期Px,Pyに対して50〜500%にしてよい。レンズLのX方向の曲率rxとY方向の曲率ryは同一であっても異なってもよく、同一にすることにより、マイクロレンズレンズアレイの加工が容易となる。なお、レンズの屈折率は後述するレンズ材料、入射光の波長、用途などによって決まるが、1.4〜1.7(λ=450nmの光に対する屈折率)が好ましい。
マイクロレンズアレイMAは、図2bの断面図に示すように、光の入射する面(図のマイクロレンズアレイMAの下面)が平坦であり、出射する面(図のマイクロレンズアレイMAの上面)に複数の凹面が形成されている。レンズの頂点PT1及びPT2が通る平面(XY平面)の上方及び下方をそれぞれレンズ部10及び板状部20と呼ぶ。レンズ部10の高さHは、レンズLの頂点からレンズ境界部の平坦部Fの高さ方向の位置で決まる。この具体例では、全てのレンズLの頂点は同一平面上に存在し、平坦部の表面は、レンズLの頂点が属する同一平面と平行な面内に存在する。前述のように、平坦部割合が大きくなると、ゴーストが増すために、平坦部割合は1%以下になるようにレンズ部10の高さHは決定される。なお、本願明細書において、平坦部の高さを表す場合には、平坦部の高さはレンズの光の入射する面から平坦部までの高さ(距離)を意味する。
レンズ部の高さH、マイクロレンズの曲率半径r(rxまたはry)、マイクロレンズの開口のXY平面に平行な平面上での最大距離をDとすると、下記を満たすことが好ましい。
r−√(r−D/4)≦H<r−√(r−(D+2δD/4)
δD=√(δx+δy)
この関係を満たすことによって、ゴースト光の抑制および形状加工の容易化の両立という理由から拡散角がより均一となるために好ましい。
上記のような観点から、例えば、基準エリアSAを正方形として、その一辺の長さは10〜500μm、好ましくは20〜100μm、レンズ部10の高さHは、1〜100μm、好ましくは、1〜12μm、レンズの曲率半径(rx=ry)は 40〜2000μm、好ましくは、70〜350μmにしてよい。また、板状部20の高さHPは、0.01〜50μm、好ましくは0.01〜10μmにしてよい。レンズ部10と板状部20は、インプリント成型などで一体に形成することができるが、別部材でも構わない。
基準エリアSAは、正方形や長方形のような矩形だけに限らず、六角形のような多角形も含まれる。図21には、マイクレンズアレイの別の実施形態として六角形の基準エリアSA’のマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイMA’を示す。図示のように、基準エリアSA’はハニカム状に配列しており、横方向(X方向)に並ぶレンズは同一直線上に基準点(基準エリアの中心)が位置しているが、横方向と直交する縦方向(Y方向)に隣接するレンズの基準点は同一直線上ではなく千鳥格子状に位置している。このような場合に、隣接している二つの基準エリアのうち、基準点の間隔が最も短い基準エリア(最近接基準エリア)の基準点を結ぶ線の方向を第1方向とし、第1方向に直交する方向を第2方向とする。図21では、X方向が第1方向であり、Y方向が第2方向となる。従って、第2方向における基準点の周期は、上下方向に隣接する二つの基準エリアのY軸方向の長さとなる。
上記のような基準点のX方向及びY方向の周期Px,Py、最大変位量δx,δy、曲率半径rx,ry、レンズ高さH、平坦部Fの高さHPなどを設定することで、マイクロレンズアレイの形状を特定することができる。
[マイクロレンズアレイの材料]
マイクロレンズアレイMAを構成する材料としては、例えば、シリカ、SiN、SiON等のSi系の材料、TiO等のTi系の材料、ITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZnS、ZrO、Al、BaTiO、CuO、MgS、AgBr、CuBr、BaO、Nb、SrTiO等の無機材料を用いることができる。これらの無機材料は、これらの無機材料の前駆体(ゾルゲル材料)をゾルゲル法により硬化させたものである。ゾルゲル材料の硬化物はSi−O結合などの強固な共有結合から構成される三次元的なネットワークであり、十分な機械強度を有する。但し、無機材料は、乾燥及び硬化時に収縮したり、加熱時にひび割れが生じる場合がある。このため、このような先細りや尖頭の構造をゾルゲル法を用いたインプリントで製造するのが、容易ではない。しかし、前述のように本発明のマイクロレンズアレイではレンズ境界部が所定の高さ以下になるように平坦部を導入してそのような先細りや尖頭構造が生じないようにしている。それゆえ、本発明のマイクロレンズアレイは、ゾルゲル法を用いたインプリントにより製造するのが好適である。
上記無機材料に、WO2016/056277号に記載されるような熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂等をコンポジット化した材料を用いてもよい。また、屈折率の調整、高硬度化等のために、上記無機材料に公知の微粒子やフィラーを含ませてもよい。さらに、上記の材料に紫外線吸収材料を含有させたものが用いられていてもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、第1凹凸構造体50の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、WO2016/056277号に例示される紫外線吸収剤など任意のものが使用できる。
上記のような無機材料以外に、樹脂材料を用いてマイクロレンズアレイを構成してもよい。そのような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂;紫外線硬化型(メタ)アクリレート系樹脂、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂等の紫外線硬化型樹脂;これらを2種以上ブレンドした材料等の樹脂材料も用いることができる。さらに、上記樹脂材料に上記無機材料をコンポジット化した材料を用いてもよい。また、屈折率増大やハードコート性等を得るために、ZrO、Nb、TiOなどからなる微粒子やフィラーを含んでいてもよい。さらに、上記の材料に紫外線吸収材料を含有させたものが用いられていてもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、凹凸構造層の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
[マイクロレンズアレイの製造方法]
上記材料から形成されるマイクロレンズアレイの製造方法について、凹面形状のレンズからなるマイクロレンズアレイの例に挙げて説明するが、凸面形状のレンズからなるマイクロレンズアレイの製造にも適用することはできることは言うまでもない。マイクロレンズアレイは、例えば、図5(a)に示すように、主に、マイクロレンズアレイの設計に基づいて作製した凹レンズからなる第1パターンを有する母型を用意する第1工程S100と、母型を用いて、第1パターンに対応する第2パターンを有するモールドを作製する第2工程S200と、モールドを用いて、第2パターンに対応する第3パターンを有するマイクロレンズアレイを形成する第3工程S300により製造することができる。
<第1工程>
母型を製造する具体例を以下に説明する。最初に、シリコン、金属、石英、樹脂等の基板上にレジストを塗布する。フォトリソグラフィ法、電子線リソグラフィ法等によってレジストパターンを形成する。レジストパターンをマスクとしてドライエッチング法により基板をエッチングし、基板の表面に前述のマイクロレンズアレイの設計において設計した凹レンズパターンからなる第1パターンを形成する。その後残存するレジストパターンを除去する。それにより、第1パターンを有する母型が得られる。
上記方法に代えて、以下の方法によっても凹レンズからなる第1パターンを有する母型を製造することができる。最初に、熱酸化膜付きシリコン基板上にレジストを塗布する。リソグラフィ法によりレジストパターンを形成する。レジストパターンをマスクとしてドライエッチングまたはウェットエッチングにより熱酸化膜をエッチングし、熱酸化膜パターンを形成する。その後残存するレジストパターンを除去する。次いで、熱酸化膜パターンをマスクとしてドライエッチング法によりシリコン基板をエッチングする。それにより、第1パターンを有する母型が得られる。
<第2工程>
母型を形成した後、例えば以下のようにして第1パターンに対応する第2パターンを有するモールドを形成することができる。例えば、硬化性樹脂を支持基板に塗布した後、母型のパターンを樹脂層に押し付けつつ樹脂層を硬化させる。支持基板として、例えば、ガラス、石英、シリコン等の無機材料からなる基材;シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の有機材料からなる基材、ニッケル、銅、アルミ等の金属材料が挙げられる。また、支持基板の厚みは、1〜500μmの範囲にし得る。
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。硬化性樹脂の厚みは0.5〜500μmの範囲内であることが好ましい。その理由は、厚みが前記範囲内では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが十分であり、凹凸形状が良好に形成し易くなるからである。
硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜24時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜10J/cmの範囲内であることが好ましい。
次いで、硬化後の硬化樹脂層から母型を取り外す。母型を取り外す方法としては、機械的な剥離法に限定されず、公知の方法を採用することができる。
上記母型またはモールドをさらに1回以上転写してモールドを作製してもよい。
<第3工程>
マイクロレンズアレイを製造するための第3工程は、ゾルゲル材料を第2パターンに転写するプロセスであり、主に、図5(b)に示すように、溶液調製工程、塗布工程、乾燥工程、押圧工程解、仮焼成工程、剥離工程及び硬化工程を有する。
(1)溶液調製工程
最初に無機材料の前駆体の溶液を調製する。ゾルゲル法を用いて無機材料からなる凹凸構造層を形成する場合、無機材料の前駆体の溶液として金属アルコキシドの溶液を調製する。例えば、シリカからなる凹凸構造層を形成する場合は、シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランに代表されるテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランに代表されるトリアルコキシドモノマー、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−t−ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−i−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−t−ブトキシシラン等のジアルコキシシランに代表されるジアルコキシドモノマーを用いることができる。さらに、アルキル基の炭素数がC4〜C18であるアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシランを用いることもできる。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するモノマー、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するモノマー、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するモノマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を有するモノマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を有するモノマー、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するモノマー、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するモノマー、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するモノマー、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するモノマー、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するモノマー、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料などの金属アルコキシドを用いてもよい。また、これらの化合物のアルキル基やフェニル基の一部、あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、Inなどや、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。また、これらの材料中に界面活性剤を加えることで、メソポーラス化された凹凸構造層を形成してもよい。さらに、シリカの前駆体として、分子中にシリカと親和性、反応性を有する加水分解基および撥水性を有する有機官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。例えば、n−オクチルトリエトキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、これらモノマーを重合したポリマー等が挙げられる。
無機材料の前駆体としてTEOSとMTESの混合物を用いる場合には、それらの混合比は、例えばモル比で1:1にすることができる。この前駆体は、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカを生成する。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸またはアンモニア等のアルカリを添加する。pHは4以下もしくは10以上が好ましい。また、加水分解を行うために水を加えてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。
前駆体溶液の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、二硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、またそれらに水を混合したものも好ましい。
前駆体溶液の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルアセトンなどのβジケトン、βケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどを用いることが出来る。また、前駆体溶液の添加物として、エキシマUV光等紫外線に代表されるエネルギー線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を用いることができる。このような材料を添加することにより、光を照射することよって前駆体溶液を硬化(ゲル化)させて無機材料を形成することができるようになる。
また、無機材料の前駆体としてポリシラザンを用いてもよい。ポリシラザンは、加熱またはエキシマなどのエネルギー線を照射することで酸化してセラミックス化(シリカ改質)し、シリカ、SiNまたはSiONを形成する。なお、「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。特開平8−112879号公報に記載されている下記の一般式(1)で表されるような比較的低温でセラミック化してシリカ等に変性する化合物がより好ましい。
一般式(1):
−Si(R1)(R2)−N(R3)−
式中、R1、R2、R3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
上記一般式(1)で表される化合物の中で、R1、R2及びR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)や、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンが特に好ましい。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等を用いることもできる。
ポリシラザン溶液の溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。酸化珪素化合物への改質を促進するために、アミンや金属の触媒を添加してもよい。
無機材料の前駆体としてポリシラザンを用いる場合、加熱又はエキシマなどのエネルギー線の照射により前駆体溶液を硬化させて無機材料を形成してよい。
(2)塗布工程
上記のように調製した無機材料の前駆体溶液を基材上に塗布して塗膜を形成する。基材上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよい。前駆体溶液の塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基材に前駆体溶液を均一に塗布可能であること、前駆体溶液が硬化する前に素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。
(3)乾燥工程
前駆体溶液の塗布後、塗膜(前駆体膜)中の溶媒を蒸発させるために基材を大気中もしくは減圧下で保持してもよい。凹凸パターン形成の安定性の観点から、パターン転写が良好にできる乾燥時間範囲が十分広いことが望ましく、これは乾燥温度(保持温度)、乾燥圧力、前駆体の材料種、前駆体の材料種の混合比、前駆体溶液調製時に使用する溶媒量(前駆体の濃度)等によって調整することができる。なお、基材をそのまま保持するだけでも塗膜中の溶媒が蒸発するので、必ずしも加熱や送風などの積極的な乾燥操作を行う必要はなく、塗膜を形成した基材をそのまま所定時間だけ放置したり、後続の工程を行うために所定時間の間に搬送したりするだけでもよい。
(4)押圧工程
次いで、凹凸パターン転写用のモールドを塗膜に押圧してモールドの凹凸パターンを塗膜に転写することで、凹凸構造層を形成する。凹凸パターン転写用のモールドとして、上述の樹脂モールドを用いることができる。樹脂モールドは、柔軟性または可撓性があるので望ましい。また、ロール状モールドを用いたロールプロセスは、プレート状モールドを用いたプレス式プロセスと比較してモールドと塗膜とが接する時間が短いため、モールド、基材及び基材を設置するステージなどの熱膨張係数の差によるパターンくずれを防ぐことができること、前駆体膜中の溶媒の突沸によってパターン中にガスの気泡が発生したり、ガス痕が残ったりすることを防止することができること、前駆体膜とモールドが線接触するため転写圧力及び剥離力を小さくでき、大面積化に対応し易いこと、押圧時に気泡をかみ込むことがないことなどの利点を有する。また、モールドを塗膜に押し付けながら基材を加熱してもよい。
(5)仮焼成工程
前駆体膜にモールドを押し付けた後、前駆体膜を仮焼成してもよい。仮焼成することにより前駆体が無機材料に転化して塗膜が硬化し、凹凸パターンが固化し、剥離の際に崩れにくくなる。仮焼成を行う場合は、大気中で室温〜300℃の温度で加熱することが好ましい。なお、仮焼成は必ずしも行う必要はない。また、前駆体溶液に紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加した場合には、前駆体膜を仮焼成する代わりに、例えばエキシマUV光等の紫外線に代表されるエネルギー線を照射することによって塗膜を硬化してもよい。
(6)剥離工程
モールドの押圧または前駆体膜の仮焼成の後、塗膜(前駆体膜又は前駆体膜を転化することにより形成された無機材料膜)からモールドを剥離する。モールドの剥離方法として公知の剥離方法を採用することができる。モールドの凹凸パターンの凸部及び凹部は一様な方向に延在して配列されているため、離形性がよい。モールドの剥離方向は凸部及び凹部の延在方向と平行な方向にしてよい。それによりモールドの離形性をさらに向上することができる。塗膜を加熱しながらモールドを剥離してもよく、それにより塗膜から発生するガスを逃がし、塗膜内に気泡が発生することを防ぐことができる。ロール状のモールドを使用する場合、プレート状モールドを用いたプレス式に比べて剥離力は小さくてよく、塗膜がモールドに残留することなく容易にモールドを塗膜から剥離することができる。特に、塗膜を加熱しながら押圧することで反応が進行し易く、押圧直後にモールドは塗膜から剥離し易くなる。
(7)硬化工程
塗膜(凹面構造層)からモールドを剥離した後、凹面構造層を本硬化してもよい。本焼成により凹面構造層を本硬化させることができる。ゾルゲル法によりシリカに転化する前駆体を用いた場合、凹凸構造層を構成するシリカ(アモルファスシリカ)中に含まれている水酸基などが本焼成により脱離して凹面構造層がより強固となる。本焼成は、200〜1200℃の温度で、5分〜6時間程度行うのが良い。この時、凹面構造層がシリカからなる場合、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質または結晶質、または非晶質と結晶質の混合状態となる。なお、硬化工程は必ずしも行う必要はない。また、前駆体溶液に紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加した場合には、凹面構造層を焼成する代わりに、例えばエキシマUV光等の紫外線に代表されるエネルギー線を照射することによって、凹面構造層を本硬化することができる。
また、上述の無機材料のほか、硬化性樹脂材料を用いて凹面構造層を形成してもよい。硬化性樹脂を用いて凹面構造層を形成する場合、例えば、硬化性樹脂を基材に塗布した後、塗布した硬化性樹脂層に凹面パターンを有するモールドを押し付けつつ塗膜を硬化させることによって、硬化性樹脂層にモールドの凹面パターンを転写することができる。硬化性樹脂は有機溶剤で希釈してから塗布してもよい。この場合に用いる有機溶剤としては硬化前の樹脂を溶解するものを選択して使用することができる。例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、などのケトン系溶剤等の公知のものから選択できる。硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。凹凸パターンを有するモールドとしては、例えばフィルム状モールド、金属モールドなど所望のモールドを用いることができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜10J/cmの範囲内であることが好ましい。
[光源について]
マイクロレンズアレイMAに入射する光の光源として、レーザー光源やランプ光源など任意の光源を使用しうる。入射光の波長として、任意の波長にし得るが、例えば、プロジェクター用途では、400〜800nmにしてよい。
[評価方法]
図1及び2に示すようなマイクロレンズアレイについて、レンズLの基準エリアの横幅Px(X方向周期)、縦幅Py(Y方向周期)、レンズ頂点位置のX方向及びY方向の最大変位量δx、δy、レンズ高さH、曲率rを変更したマイクロレンズアレイについて、所定の照射面における拡散光分布をシミュレーションで求めた。シミュレーションにおいて、光源と、マイクロレンズアレイMAと検出モニタ(照射面)を図14のような配置とし、それらの間の光の伝搬は平面波スペクトラム法で計算した。マイクロレンズアレイは、図2bに示すように平坦な入射界面と凹凸構造を有する出射界面とを有し、板状部の厚さに相当する界面間の距離を10μmとした。板状部とレンズ部は同一材料から形成されており、屈折率をn=1.44に設定した。マイクレンズアレイMAからの出射光の拡散角度は、±0.5度に設定した。光源の波長はλ=450nmであり、入射光の光束径を500μmとした。その他の具体的な条件は以下の実験ごとに定めて、照射面のX座標及びY座標ごとの拡散光強度をシミュレーションにより求めた。
実験1:
マイクロレンズアレイMAについて、サンプルNo.0〜No.6を表1の条件で用意した。これらのサンプルのマイクロレンズアレイMAの基準エリアは、いずれもX方向周期PxとY方向周期PyがP=60μmの正方形とし、それをX,Y方向に35個配列したアレイとした。レンズ頂点は同一平面上に位置するものとし、レンズ頂点のX,Y方向へのランダム変位の最大変量δx、δyは、それぞれ、表1に示すようにサンプルごとに異なる値に変更した。レンズ高さH(レンズ頂点からの最大高さ)は、いずれのサンプルでも5.06μmになるように設定した。それゆえ、最大変位量δx、δyによっては、レンズ境界部は、レンズ部の高さHとして5.06μmを超える高さ部分(頂点を含む部分)は除去されて(X,Y平面と平行な面で切断されて)平坦部となる。表1には、このようにして形成される平坦部割合(%)と、δ/P(δx/Px=δy/Py)を示す。なお、すべてのサンプルにおいて、レンズの曲率180μmと焦点距離400μmは同一とした。なお、平坦部の高さは、レンズ部の高さHと板状部の厚さ(10μm)の和となる。
Figure 2021189393
サンプルNo.0〜No.6のマイクロレンズアレイから照射された光強度分布をシミュレーションにより求め、結果を図6(a)〜(c)、図7(a)、(b)、図8(a)、(b)のグラフにそれぞれ示す。グラフ中、X,YはそれぞれX方向及びY方向位置における光強度の実際のパターンを示す。Xtarget,Ytargetは、X方向及びY方向位置における光強度が均一な理想的な分布(トップハット形の分布)を示す。
図6(a)〜(c)、図7(a)、(b)、図8(a)、(b)のグラフより、平坦部の面積が1%を超えると、実際のパターンにおける光強度変化(ノイズ)が大きくなることが分かる。これは、平坦部の面積が大きくなることにより、直進光が増え、それがゴーストとして現れていると考えられる。図9(a)には、平坦部の面積比に対するゴーストの比率を表した。ゴーストの比率は、検出部(投影部)の中央エリア(拡散角度範囲で−0.5度〜0.5度)における照射された光エネルギーの全照射エネルギーの割合を示す。グラフより、平坦部の面積比が1%を超えるとゴースト比率が高くなることが分かる。また、図9(b)に示したδ/Pに対するゴースト比率からすれば、δ/Pが低い方がゴースト比率は小さくなることが分かる。ゴースト比率を0.02以下に保つにはδ/Pが0.23未満であることが望ましい。
実験2:
この実験では、基準エリアの形を縦長(Y方向が長い)の長方形として、実験1と同様に、マイクロレンズアレイMAについて、6つのサンプルNo.0〜No.5を表2の条件で用意した。レンズ頂点のX,Y方向へのランダム変位の最大変位量δx、δyは、それぞれ、表2に示すようにサンプルごとに異なる値に変更した。基準エリアのY方向の長さPyがX方向の長さPxよりも長い(Py<Px)が、最大値δx、δyについては、δy<δxとなるようにし、δx/Py=Px/δy(δ/P)に設定した。レンズ高さH(レンズ頂点からの最大高さ)は、いずれのサンプルでも5.73μmになるように設定した。それゆえ、最大変位量δx、δyによっては、レンズ境界部の高さが、5.73μmを超える高さ部分は除去されて(X,Y平面と平行な面で切断されて)平坦部となる。表2には、このようにして形成される平坦部割合(%)と、δ/P(δx/Py=δy/Px)を示す。なお、すべてのサンプルにおいて、レンズの曲率180μmと焦点距離400μmは同一とした。なお、マイクレンズアレイの板状部は実験1と同様である。
Figure 2021189393
サンプルNo.0〜No.5のマイクロレンズアレイから照射された光強度分布をシミュレーションにより求め、結果を図10(a)〜(c)及び図11(a)〜(c)のグラフにそれぞれ示す。グラフ中、X,YはそれぞれX方向及びY方向位置における光強度の実際のパターンを示し、Xtarget,Ytargetは、X方向及びY方向位置における光強度が均一な理想的な分布(トップハット形の分布)を示す。
図10(a)〜(c)及び図11(a)〜(c)のグラフより、平坦部割合が1%を超えると、実際のパターンにおける光強度の変化(ノイズ)が大きくなることが分かる。これは、平坦部の面積が増すことにより、マイクロレンズアレイを通過する直進光が増え、それがゴーストとして現れていることによる考えられる。図12には、平坦部割合に対するゴーストの比率を表した。グラフより、平坦部の面積割合が1%を超えるとゴースト比率が高くなることが分かる。また、図13に示したδ/Pに対するゴースト比率からすれば、δ/Pが低い方がゴースト比率は小さくなることが分かる。ゴースト比率を0.02以下に保つにはδ/Pが0.23未満であることが望ましいことが分かる。
実験3
この実験では、実験1において、最大変位量δx、δyの範囲を含む条件を実験1のNo.4のサンプルと同一としつつも、レンズ頂点の位置が、図15の斜線で囲まれた領域PA、すなわち、基準エリアの中心を原点としたとき、(δx、δy)、(−δx、δy)、(δx、−δy)、(−δx、−δy)をそれぞれ中心とし、2δyを長軸、2δxを短軸とした4つの楕円により囲まれる領域PA内にランダムに配置されることを追加の条件とした。但し、実験1のNo.4のサンプルでは、δx=δy(=60μm)であるので、楕円ではなく円となる。
この追加条件を満たすために、図16のフローチャートに示すように、レンズ頂点を(δx、δy)、(−δx、δy)、(δx、−δy)、(−δx、−δy)を頂点とする長方形エリア内で乱数発生によりランダムに移動させ(S1)、レンズ頂点が領域PA内に位置するか否かを判断し(S2)、その領域PA内に位置すると判断される場合には、その位置をレンズの頂点として確定することとした(S2)。領域PA内に位置しないと判断される場合には、再度、レンズ頂点を上記長方形エリア内でランダムに移動させてレンズ頂点が領域PA内に位置するまで、この操作を繰り返すことで、レンズ頂点が領域PAに位置させるようにした。
このようにレンズ頂点位置を領域PA内でランダムに変位させた場合のマイクロレンズアレイから得られる光強度分を図17に示す。図17に示した光強度分布曲線はほぼ台形をしており、レンズ頂点が領域PAの範囲内に存在するという条件を付さなかった実験1のNo.4のサンプルと比べて、曲線中央部の光強度の突出が抑制されていることが分かる。これは、レンズ頂点を(δx、δy)、(−δx、δy)、(δx、−δy)、(−δx、−δy)を頂点とする長方形の領域の中でしかも領域PA内に制限することにより、隣接するレンズの頂点距離が長くなることを防止して、レンズ境界部で生じる平坦部の面積をより小さくすることができるからである。これにより平坦部を通過するゴーストを発生する直進光を低減することができる。このように、レンズ頂点を領域PA内に制限したことによる平坦部の面積割合は0.18%と算出され、この制限を設けない場合の平坦部の面積割合0.90%(実験1のNo.4参照)よりもかなり低くなることが分かる。図18及び19に、それぞれ、平坦部割合に対するゴースト比率及びδ/Pに対するゴースト比率を実験1のNo.4の結果との比較において示した。
実験4
上記実験1〜3では、凹面形状のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイを用いたが、この実験では図20(a)に示すようなフラット部Fを有する断面形状を有する凸面形状のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイを用いた場合について、実験例1と同様にしてシミュレーションにより光強度分布を求めた。最大変位量δx、δy、基準エリアのサイズ、フラット部割合は実験1のNo.4のサンプルと同一とした。得られた光強度分布を図20(b)に示す。図20(b)に示した光強度分布と、実験1のNo.4のサンプルから得られた光強度分布の結果(図7(b)参照)を比較すると、凹面形状のレンズからなるマイクロレンズアレイとほぼ同等の光強度分布のプロファイルが得られることが分かる。
以上、本発明を実施形態により説明してきたが、本発明の製造方法により製造される光学位相差部材は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で適宜改変することができる。例えば、上記説明では、マイクロレンズの寸法及び基準エリアの寸法について、縦方向(Y方向)が横方向(X方向)よりも長い例を挙げて説明したが、その逆であっても構わない。また、縦方向と横方向が必ずしも直交していなくてもよく、交差していればよい。
本発明の光拡散板は、反射型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、光ディスク用ピックアップ、ヘッドアップディスプレイ、プロジェクタ(投影型表示装置)などの各種デバイスや装置に好適に用いることができる。
MA マイクロレンズアレイ
L マイクロレンズ
SA 基準エリア
F 平坦部
PT、PT1〜3 レンズ頂点
Px 基準エリアのX方向周期
Py 基準エリアのY方向周期
B12、B23 レンズ境界部
H レンズ高さ
δx X方向のランダム変位量
δy Y方向のランダム変位量

Claims (10)

  1. 複数のマイクロレンズが第1方向と該第1方向と交差する第2方向とを含む平面上に配列された光拡散板であって、
    前記複数のマイクロレンズの頂点が、前記第1方向の周期P1及び前記第2方向の周期P2で配列された複数の基準点から、それぞれ、前記平面内で前記第1方向の変位幅δ1と前記第2方向の変位幅δ2の範囲内でランダムに変位して配置されており、
    前記複数のマイクロレンズのうちの一部の隣接するマイクロレンズ間の境界部が同一の高さの平坦部を有し、
    前記光拡散板の前記平面における面積に対する前記平坦部の面積の割合が、1.0%以下である光拡散板。
  2. δ1<0.23×P2及びδ2<0.23×P1を満足することを特徴とする請求項1に記載の光拡散板。
  3. 前記マイクロレンズの頂点から前記マイクロレンズ間の境界までの高さの最大値Hと、前記マイクロレンズの曲率半径r、前記マイクロレンズの開口の前記平面に平行な平面上での最大距離をDとすると、下記式:
    r−√(r−D/4)≦H<r−√(r−(D+2δ/4)
    式中、δ=√(δ1+δ2)である
    を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散板。
  4. 前記第1方向と前記第2方向が直交するときに、前記複数のマイクロレンズの頂点の位置は、前記複数の基準点のそれぞれを原点としたとき、(δ1、δ2)、(−δ1、δ2)、(δ1、−δ2)、(−δ1、−δ2)を、それぞれ中心とし、長さ2×δ2を第2方向の軸、長さ2×δ1を第1方向の軸とした4つの円または楕円により囲まれる領域内に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散板。
  5. 前記1方向の周期P1が第2方向の周期P2よりも小さく且つ前記1方向の変位幅δ1は前記2方向の変位幅δ2よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散板。
  6. 前記複数のマイクロレンズの前記第1方向の曲率半径と前記第2方向の曲率半径とは略等しい請求項1〜5のいずれか一項に記載の光拡散板。
  7. 前記複数のマイクロレンズが隣接する複数の境界部に、前記平坦部がランダムに存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光拡散板。
  8. 前記複数のマイクロレンズの隣接する複数の境界部のうちに、いくつの境界部は前記平坦部を有していないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光拡散板。
  9. 前記複数のマイクロレンズの頂点が、同一平面上に位置していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光拡散板。
  10. 複数のマイクロレンズが第1方向と該第1方向と交差する第2方向とを含む平面上に配列された光拡散板の製造方法であって、
    前記複数のマイクロレンズの頂点が、前記第1方向の周期P1と前記第2方向の周期P2で配列した複数の基準点から、それぞれ、前記平面上で前記第1方向の変位幅δ1と前記第2方向の変位幅δ2の範囲内でランダムに変位して配置されており、
    一部の隣接するマイクロレンズ間の境界部が同一の高さの平坦部を有し、
    前記光拡散板の前記平面における面積に対する前記平坦部の面積の割合が、1.0%以下である光拡散板の原板を製造することと、
    前記原板を樹脂に転写することにより樹脂モールドを作製することと、
    前記樹脂モールドゾルゲル材料に転写して、乾燥及び焼成することを含む前記光拡散板の製造方法。
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