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JP2021155556A - 組成物セット及び記録方法 - Google Patents

組成物セット及び記録方法 Download PDF

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JP2021155556A JP2020057348A JP2020057348A JP2021155556A JP 2021155556 A JP2021155556 A JP 2021155556A JP 2020057348 A JP2020057348 A JP 2020057348A JP 2020057348 A JP2020057348 A JP 2020057348A JP 2021155556 A JP2021155556 A JP 2021155556A
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等 太田
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Abstract

【課題】耐ブロッキング性及び耐ラミネート性の良好な記録物をインクジェット法により形成し得る組成物セットを提供する。【解決手段】水系インク組成物と、水系処理液組成物と、を備える組成物セットであって、前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着させて用いられ、前記水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、前記水系処理液組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない、組成物セット。【選択図】なし

Description

本発明は、組成物セット及び記録方法に関する。
インクジェット記録は、小規模な装置で多種類、少量の記録物を効率よく製造できることから、家庭用、商業用に広く普及してきた。インクジェット記録における画質の向上等を目指して、装置のみならずインクジェットインク組成物の検討が幅広く為されている。例えば、特許文献1では、反応液と着色インクとを記録媒体に付着させることにより、定着性に優れ、印刷ムラが抑制された画像を形成することが試みられている。
特開2016−179675号公報
しかしながら、水系インク組成物を用いる場合、水系インク組成物には有機溶剤が含まれることが多かった。また、優れた画質を得る目的で反応液をインクジェットで吐出して記録に使用する場合にも、反応液に有機溶剤を含有することがある。これらを用いて記録を行う場合に、記録された画像の耐ブロッキング性、耐ラミネート性などが劣る問題があった。
本発明に係る組成物セットの一態様は、
水系インク組成物と、水系処理液組成物と、を備える組成物セットであって、
前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着させて用いられ、
前記水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、
前記水系処理液組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。
本発明に係る記録方法の一態様は、
インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置により、記録媒体へ記録を行う記録方法であって、
水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して、前記記録媒体に付着させるインク付着工程と、
水系処理液組成物をインクジェットヘッドから吐出して、前記記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
を備え、
前記水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、
前記水系処理液組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。
実施形態のインクジェット記録装置の一例の概略図。 実施形態のインクジェット記録装置の一例のキャリッジ周辺の概略図。 実施形態のインクジェット記録装置の一例のブロック図。 インクジェット記録装置のインクジェットヘッドの断面の模式図。 インクジェットヘッドのうち循環液室の近傍の断面の模式図。 ライン記録方式の記録装置の一部分を模式的に示す概略断面図。 インクジェットヘッドの循環機構の外部部分を含む全体の一例を表す概略図。
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.組成物セット
本実施形態の組成物セットは、水系インク組成物と、水系処理液組成物と、を備える。
1.1.水系インク組成物
水系インク組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着させて用いられる。インクジェット記録を実行するためのインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置等については後述する。
水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。水系インク組成物は、水系の組成物であり、主たる溶媒として少なくとも水を含有する。水の含有量は特に制限されないが、水系インク組成物には、水を40質量%以上含有することが好ましい。また、例えば水系インク組成物中の溶媒のうち最も含有量の多い成分が水となるように水が含有されるようにしてもよい。
水は、水系インク組成物の主溶媒であり、水系インク組成物が乾燥する際に、蒸発飛散する成分である。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加などによって滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制することができる。
水系インク組成物における水の含有量は水系インク組成物の総量に対して好ましくは、50.0質量%以上であり、さらには70.0質量%以上であり、特には75.0質量%以上であり、より好ましくは80.0質量%以上98.0質量%以下であり、さらに好ましくは85.0質量%以上95.0質量%以下である。
以下水系インク組成物に含まれる色材、その他の成分について説明する。
1.1.1.色材
水系インク組成物は、色材を含有する。色材としては、非白色顔料、染料、白色顔料のいずれも用いることができる。非白色顔料としては、カーボンブラック、非白色の無機顔料、有機顔料が挙げられ、染料としては、油溶染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料、分散染料、昇華型染料等を挙げることができる。
非白色の無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄等を用いることができる。
非白色有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等を例示できる。
水系インク組成物に用いられる非白色有機顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
これ以外の色の顔料も使用可能である。例えば、オレンジ顔料、グリーン顔料などがあげられる。
上記例示した顔料は、好適な顔料の例であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらの顔料は一種又は二種以上の混合物として用いてよいし、染料と併用しても構わない。
本実施形態の水系インク組成物において、顔料を分散樹脂により分散させる場合には、顔料と分散樹脂との比率は10:1〜1:10が好ましく、4:1〜1:3がより好ましい。また、分散時の顔料の体積平均粒子径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満で平均粒径が300nm以下であり、より好ましくは平均粒径が200nm以下である。
水系インク組成物に用い得る染料としては、水溶解系として酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料、水分散系として分散染料、油溶染料、昇華型染料等を挙げることができる。
上記例示した染料は、好適な色材の例であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらの染料は一種又は二種以上の混合物として用いてよいし、顔料と併用しても構わない。
色材として、上記の非白色顔料、染料を用いる場合の含有量は、用途に応じて適宜調整することができるが、好ましくは0.10質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは0.20質量%以上15.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下である。
色材に非白色顔料を採用する場合の顔料粒子の体積平均粒子径は、10.0nm以上200.0nm以下が好ましく、30.0nm以上200.0nm以下がより好ましく、50.0nm以上150.0nm以下がさらに好ましく、70.0nm以上120.0nm以下が特に好ましい。
水系インク組成物は、色材として白色顔料を含有してもよい。白色顔料としては、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属化合物が挙げられる。これらのうち金属酸化物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、白色顔料には、中空構造を有する粒子を用いてもよく、中空構造を有する粒子としては、公知のものを用いることができる。
白色顔料としては、上記例示した中でも、画像の白色度及び耐擦性が良好になるという観点から、二酸化チタンを用いることが好ましい。白色顔料は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
白色顔料の体積基準の平均粒子径(D50)(「体積平均粒子径」ともいう。)は、好ましくは30.0nm以上600.0nm以下であり、より好ましくは100.0nm以上500.0nm以下、さらに好ましくは150.0nm以上400.0nm以下である。白色顔料の体積平均粒子径が上記範囲であれば、粒子が沈降しにくく、分散安定性を良好にすることができ、また、インクジェット記録装置に適用した際にノズルの目詰まり等を生じにくくすることができる。また、白色顔料の体積平均粒子径が前記範囲内であれば、白色度等の色濃度を十分に満足できる。
白色顔料の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)が挙げられる。
なお、本明細書において、白色インク、白色顔料等という際の「白色」という語句は、完全な白のみを指すものではなく、白と視認できる範囲であれば、有彩色や無彩色に着色した色や光沢を帯びた色も含む。より定量的には「白色」は、例えばCIELABにおいて、Lが100である色のみならず、Lが80以上100以下であり、a及びbがそれぞれ±10以下の色も含まれる。より具体的には、対象のインクを透明な記録媒体に十分な付着量で付着させ、付着領域をCIELABに準拠した測色器で、反射モードで、測色した時の値が、上記範囲である場合、当該インクを白色インクという。十分な付着量とは例えば15mg/cmである。またインクがそのような白色インクとなるような色材を、白色顔料とする。
水系インク組成物に白色顔料を含有させて白色インクとする場合、白色顔料の含有量(固形分)は、水系インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは7質量%以上15質量%以下である。白色顔料の含有量が上記範囲内であれば、インクジェット記録装置のノズル詰まり等が発生しにくく、白色度等の色濃度を十分に得られる。
上述した非白色顔料及び白色顔料は、水中に安定的に分散できることが好適であり、そのために分散剤を使用して分散させてもよい。分散剤としては、界面活性剤、樹脂分散剤等のいずれでもよい。また、非白色顔料及び白色顔料は、例えば、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して顔料粒子の表面を修飾することにより、自己分散型の顔料として使用してもよい。
樹脂分散剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂及びその塩;スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂及びその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)であって直鎖状及び/又は分岐状であって、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体及びその塩;酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体及びその塩;並びに;酢酸ビニル−クロトン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。
これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを表し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを表す。
スチレン系樹脂分散剤の市販品としては、例えば、X−200、X−1、X−205、X−220、X−228(星光PMC社製)、ノプコスパース(登録商標)6100、6110(サンノプコ株式会社製)、ジョンクリル67、586、611、678、680、682、819(BASF社製)、DISPERBYK−190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、N−EA137、N−EA157、N−EA167、N−EA177、N−EA197D、N−EA207D、E−EN10(第一工業製薬製)等が挙げられる。
また、アクリル系樹脂分散剤の市販品としては、BYK−187、BYK−190、BYK−191、BYK−194N、BYK−199(ビックケミー株式会社製)、アロンA−210、A6114、AS−1100、AS−1800、A−30SL、A−7250、CL−2東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
さらに、ウレタン系樹脂分散剤の市販品としては、BYK−182、BYK−183、BYK−184、BYK−185(ビックケミー株式会社製)、TEGO Disperse710(Evonic Tego Chemi社製)、Borchi(登録商標)Gen1350(OMG Borschers社製)等が挙げられる。
樹脂分散剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。樹脂分散剤の合計の含有量は、対象とする顔料50質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下、好ましくは0.5質量部以上25質量部以下、より好ましくは1質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以上15質量部以下である。
樹脂分散剤の含有量が対象の顔料50質量部に対して0.1質量部以上であることにより、顔料の分散安定性をさらに高めることができる。また、樹脂分散剤の含有量が顔料50質量部に対して30質量部以下であれば、得られる分散体の粘度を小さく抑えることができる。
上記例示した樹脂分散剤のなかでも、特に、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、及び、ウレタン系樹脂から選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。またこの場合、分散剤の重量平均分子量は、500以上であることがさらに好ましい。分散剤としてこのような樹脂分散剤を用いることにより、臭気が少なく、顔料の分散安定性をさらに良好にすることができる。
1.1.2.有機溶剤
本実施形態に係る水系インク組成物は、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。換言すると、本実施形態に係る水系インク組成物は、有機溶剤の含有量が10.0質量%以下ということであり、つまり有機溶剤を10.0質量%以下含有するか、又は含有しない。これにより、記録媒体に付着された際の乾燥を速やかに行うことができる。これにより、記録された画像の耐擦性、耐ブロッキング性をはじめとした耐久性を得ることができる。なお「超えて含有しない」とは、超えなければ含有してもよいこと、及び、全く含有しないことを含む意味である。
有機溶剤の機能の一つは、記録媒体に対する水系インク組成物の濡れ性を向上させることや、水系インク組成物の保湿性を高めることが挙げられる。
一方、インクが有機溶剤を10.0質量%を超えて含有する場合、記録後に有機溶剤が蒸発しきらずに残存する場合があった。残存した有機溶剤は、形成された画像の耐ブロッキング性、耐ラミネート性などを不十分にすることが分かってきた。また、有機溶剤が残存すると、記録後の加熱等により記録物を蒸発乾燥させる場合に、過度の時間や高温を要することがあった。
そこで、インクが有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しないことで、インクが乾燥性に優れ、記録物における有機溶剤の残存を少なくすることができ記録物の耐久性が優れた。
なお、好ましくはインクが10.0質量%超えない範囲で有機溶剤を含有することであり、この場合、水系インク組成物の保湿性を確保でき耐目詰まり性にも優れ、かつ、また、水系インク組成物の表面張力を下げ、インクジェットヘッドから吐出する場合に液滴としてノズルから分離して飛翔しやすくすることや、記録媒体での濡れ性を向上させインク滴の広がりを優れたものとすることができ好ましい。
また、水系インク組成物の乾燥性が優れることで、記録媒体に付着したインク滴が寄り集まってブリードという画像の劣化が起こることも抑制できる。このためインク付着時の記録媒体表面温度を比較的低くすることができる。
有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
水系インク組成物に含有される有機溶剤は、標準沸点が280.0℃以下のものが好ましく、150.0℃以上280.0℃以下のものがより好ましく、160.0℃以上280.0℃以下のものがよりさらに好ましく、170.0℃以上270.0℃以下のものがさらに好ましく、180.0℃以上270.0℃以下のものがさらに好ましく、190.0℃以上250.0℃以下のものがことさらに好ましい。標準沸点が上記範囲の場合、記録物の耐久性が特に優れ、耐目詰まりも特に優れ好ましい。各有機溶剤の標準沸点は、定法により測定することができる。
また、標準沸点が280.0℃を超える有機溶剤の含有量は、インク全量に対して、3.0質量%以下であり、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、ことさら好ましくは1.0質量%以下である。すなわち、標準沸点が280.0℃を超える有機溶剤は、インク全量に対して、3.0質量%を超えて含有しないことが好ましく、2.5質量%以下を超えて含有しないことがより好ましく、2.0質量%を超えて含有しないことがさらに好ましく、1.5質量%を超えて含有しないことがさらに好ましく、1.0質量%を超えて含有しないことがことさらに好ましい。そして、標準沸点が280.0℃を超える有機溶剤の含有量は、0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらには含有しないこと、つまり0.0質量%でもよい。これにより、記録媒体に付着させた水系インク組成物の乾燥性がより良好になり、水系インク組成物の記録媒体に対する密着性を向上でき記録物の耐久性をさらに優れたものとできる。
なお標準沸点が280.0℃超の有機溶剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
環状エステル類としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、β−ヘキサノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、β−ヘプタノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、δ−ヘプタノラクトン、ε−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−オクタノラクトン、δ−ノナラクトン、ε−ノナラクトン、ε−デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1〜4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
含窒素溶剤としては、例えば、非環状アミド類、環状アミド類などを上げることができる。非環状アミド類としては、アルコキシアルキルアミド類を挙げることができる。
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−メトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−メトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、等を例示することができる。
また、非環状アミド類として、下記一般式(1)で表される化合物であるアルコキシアルキルアミド類を用いることも好ましい。
−O−CHCH−(C=O)−NR ・・・(1)
上記式(1)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。「炭素数1以上4以下のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基であることができる。上記式(1)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−プロピル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは後述する樹脂粒子の皮膜化を促進させる点で好ましい。
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
アルキレングリコールエーテル類を構成するアルキレングリコールは、炭素数2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2又は3が特に好ましい。アルキレングリコールエーテル類を構成するアルキレングリコールは、アルキレングリコールが分子間で水酸基同士が縮合したものでもよい。アルキレングリコールの縮合数は、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。
アルキレングリコールエーテル類を構成するエーテルは、アルキルエーテルが好ましく、炭素数1〜4のアルキルのエーテルが好ましく、炭素数2〜4のアルキルのエーテルがより好ましい。
アルキレングリコールエーテル類は、浸透性に優れインクの記録媒体での濡れ性に優れることで画質が優れる点で好ましい。この点で、特に、モノエーテルが好ましい。
多価アルコールとしては、1,2−アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(別名:プロパン−1,2−ジオール)、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2−アルカンジオールを除く多価アルコール(ポリオール類)(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール(別名:1,3−ブチレングリコール)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
多価アルコール類は、アルカンジオール類とポリオール類に分けることができる。
アルカンジオール類は、炭素数5以上のアルカンのジオールである。アルカンの炭素数は好ましくは5以上15以下であり、より好ましくは6以上10以下であり、更に好ましくは6以上8以下である。アルカンジオールにおける水酸基の位置は、末端の隣り合う炭素に結合することが好ましく、1,2−アルカンジオールであることが好ましい。
ポリオール類は、炭素数4以下のアルカンのポリオールか、炭素数4以下のアルカンのポリオールの水酸基同士の分子間縮合物か、である。アルカンの炭素数は好ましくは2〜3である。ポリオール類の分子中の水酸基数は2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。ポリオール類が上記の分子間縮合物である場合、分子間縮合数は2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。多価アルコール類は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。
アルカンジオール類及びポリオール類は、主に浸透溶剤及び/又は保湿溶剤として機能することができる。しかし、アルカンジオール類は浸透溶剤としての性質が強い傾向があり、ポリオール類は保湿溶剤としての性質が強い傾向がある。
アルカンジオール類は、浸透溶剤としての性質が強く、インクの記録媒体での濡れ性に優れることでインクの広がりが優れ、画質が優れる点で好ましい。
ポリオール類は、特に親水性が高く、保湿性を特に高めることができ、耐目詰まり性が特に優れる。特に、標準沸点が280.0℃以下のポリオール類を用いることで、乾燥性も良く、記録物の耐久性も高いものとできる。
従って、有機溶剤としては、ポリオール類、アルキレングリコールエーテル類、炭素数5以上のアルカンジオール類、含窒素溶剤の1つまたは2つ以上を含むことが好ましい。水系インク組成物がこれらを含む場合、記録媒体での水系インク組成物のぬれ広がりが優れ、記録媒体の水系インク組成物による埋まりが優れることにより画質が優れる。また、水系インク組成物の表面張力を下げ、インクジェットヘッドから吐出する際に、液滴がノズルから離れやすくし吐出しやすくすることができる点でも好ましい。また水系インク組成物の乾燥性も優れ、記録物の耐久性も特に優れる。
上記の点で、特に、有機溶剤としては、アルキレングリコールエーテル類、炭素数5以上のアルカンジオール類の一方又は両方を含むことが好ましい。
また、上記の点で、有機溶剤として、ポリオール類と、アルキレングリコールエーテル類及び炭素数5以上のアルカンジオール類のいずれかと、を含むことが、耐目詰まり性と画質とが共に優れ好ましい。
水系インク組成物は、上記例示した有機溶剤を一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上含む場合は、有機溶剤の含有量とは、それらの合計の含有量である。
水系インク組成物は、有機溶剤の含有量が、水系インク組成物全量に対し、9.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、7.0質量%以下がさらに好ましく、6.0質量%以下が特に好ましく、5.0質量%以下がより特に好ましい。この場合、記録物の耐久性がより優れる点で好ましい。一方、有機溶剤の含有量の下限は、0.0質量%であってもよく、0.0質量%以上であり、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。この場合、耐目詰まり性や画質がより優れる点で好ましい。なお、ここでいう有機溶剤の含有量は、1種又は2種以上の有機溶剤の含有量であり、2種以上の場合は、インクに含む2種以上の有機溶剤の合計の含有量である。
中でも、有機溶剤として、ポリオール類、炭素数5以上のアルカンジオール類、及び又は、アルキレングリコールエーテル類の合計の含有量が、上記範囲であることが上記の点で好ましい。また、標準沸点が280.0℃以下である、さらには標準沸点が上記好ましい範囲である、有機溶剤の含有量が、上記範囲とすることも上記の点で好ましい。
1.1.3.樹脂粒子
本実施形態に係る水系インク組成物は、樹脂粒子を含有してもよい。樹脂粒子は、記録媒体に付着させた水系インク組成物の成分の密着性や耐擦過性を向上させる、いわゆる定着用樹脂として機能する場合がある。このような樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂等からなる樹脂粒子が挙げられる。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。本明細書では樹脂粒子を高分子粒子ともいう場合がある。
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。ウレタン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 210、460、460s、840、E−4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D−1060、D−2020、D−4080、D−4200、D−6300、D−6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS−6020、WS−6021、W−512−A−6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA−150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品の中から選択して用いてもよい。
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル−ビニル系樹脂などが挙げられる。さらに例えば、スチレンなどのビニル系単量体との共重合体が挙げられる。アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。
アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK−854、モビニール952B、718A(商品名、ジャパンコーティングレジン社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)、ポリゾールAT860(昭和電工株式会社製)、ボンコートAN−1190S、YG−651、AC−501、AN−1170、4001(商品名、DIC社製、アクリル系樹脂エマルジョン)等の中から選択して用いてもよい。
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、上述のようにスチレン−アクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
スチレン−アクリル系樹脂は、スチレン単量体とアクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であってもよい。スチレン−アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630A、352J、352D、PDX−7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610、1992(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、ジャパンコーティングレジン社製)などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB−1200、CD−1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等の中から選択して用いてもよい。
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE−1002、E−5002(日本ペイント社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコートAN−1190S、YG−651、AC−501、AN−1170、4001、5454(DIC社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM−710、AM−920、AM−2300、AP−4735、AT−860、PSASE−4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP−7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH−502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD−13、AD−2、AD−10、AD−96、AD−17、AD−70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE−6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK−200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE−120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、ビニブラン700、2586(日信化学工業社製)、エリーテルKA−5071S、KT−8803、KT−9204、KT−8701、KT−8904、KT−0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN−2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW−6020、W−635、W−6061、W−605、W−635、W−6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、620、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA−150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R−9660、R−9637、R−940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX−380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320(ジャパンコーティングレジン社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630A、352J、352D、PDX−7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610、1992(以上、BASF社製)、NKバインダーR−5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS−210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等の中から選択して用いてもよい。
水系インク組成物に樹脂粒子を含有させる場合の含有量は、インクの全質量に対して、固形分として、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上10.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以上8.0質量%以下である。
水系インク組成物が樹脂粒子を含む場合、記録物の耐擦性が特に優れる等の点で好ましい。一方、樹脂粒子は分散状態であるため、樹脂粒子の分散安定性に留意が必要である。樹脂粒子の分散安定性が低下するとインクジェットヘッドから吐出する際の吐出安定性が低下することがある。しかし本実施形態の水系インク組成物は、樹脂粒子を含む場合であっても、循環機構を有するインクジェットヘッドを用い水系インク組成物を循環させることで、吐出安定性を良好とすることができる。
樹脂粒子の中でも、密着性や耐擦性がより優れる点で、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。
さらに、樹脂粒子として、ウレタン系樹脂やアクリル系樹脂の樹脂粒子が含まれると、記録媒体に付着させた水系インク組成物の成分の密着性や耐擦過性をさらに高めることができ好ましい。特にアクリル系樹脂が好ましい。
樹脂粒子の樹脂のガラス転移温度は、記録媒体で膜化しやすく密着性が優れることで100℃以下が好ましい。一方、硬さを有することで耐擦性がより優れる点や、耐ブロッキング裏写りがより優れる点で、−50℃以上が好ましい。さらには、−20℃以上が好ましく、−10℃以上がより好ましく、0℃以上がさらに好ましく、10.0℃以上が特に好ましく、20.0℃以上がより特に好ましい。さらには、50.0℃以上が好ましい。一方、95.0℃以下が好ましく、90.0℃以下がより好ましく、85.0℃以下がさらに好ましく、80.0℃以下が特に好ましい。
樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析(DSC)等を用いた定法により確認できる。
1.1.4.ワックス
水系インク組成物は、ワックスを含有してもよい。ワックスは、水系インク組成物による画像に滑沢を付与する機能を備えるので、水系インク組成物による画像の剥がれ等を低減できる。
ワックスを構成する成分としては、例えばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。これらの中でも、後述する軟包装フィルムに対する定着性を高める効果により優れるという観点から、ポリオレフィンワックス(特に、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)及びパラフィンワックスを用いることが好ましい。
ワックスとしては市販品をそのまま利用することもでき、例えば、ノプコートPEM−17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、539、593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
また、インクジェット記録方法に加熱工程等が含まれる場合に、ワックスが溶融しすぎて、その性能が低下することを抑制するという観点から、ワックスの融点は、好ましくは50.0℃以上200.0℃以下、より好ましくは融点が70.0℃以上180.0℃以下、さらに好ましくは融点が90.0℃以上150.0℃以下のワックスを用いることが好ましい。
ワックスは、エマルジョンあるいはサスペンションの形態で供給されてもよい。ワックスの含有量は、水系インク組成物の全質量に対して、固形分換算で0.1質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下である。ワックスの含有量が上記範囲内にあると、上記ワックスの機能を良好に発揮できる。なお、水系インク組成物が、ワックスを含有すれば、画像に滑沢を付与する機能を十分に得ることができる。
1.1.5.界面活性剤
水系インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、水系インク組成物の表面張力を低下させ記録媒体や下地との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS−241、S−242、S−243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
水系インク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。水系インク組成物に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.3質量%以上1.0質量%以下である。
ここで界面活性剤として例示した化合物は、いずれも上述の有機溶剤ではないものとして扱う。
1.1.6.pH調整剤
本実施形態の水系インク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、水系インク組成物による部材の腐食等を抑制できるpH領域に調整することができる。pH調整剤としては、例えば、尿素類、アミン類、モルホリン類、ピペラジン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、を例示できる。尿素類としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等、及び、ベタイン類(トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、N,N,N−トリメチルアラニン、N,N,N−トリエチルアラニン、N,N,N−トリイソプロピルアラニン、N,N,N−トリメチルメチルアラニン、カルニチン、アセチルカルニチン等)等が挙げられる。アミン類としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
ここでpH調整剤として例示した化合物は、いずれも上述の有機溶剤ではないものとして扱う。例えば、トリエタノールアミンは、常温において液体状態であり標準沸点が335℃程度であるが、これは上述の有機溶剤としては扱わない。
1.1.7.その他の成分
本実施形態の水系インク組成物は、防腐剤を含有してもよい。防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、インク組成物の保存性がより良好となる。これにより、例えば、水系インク組成物を、長期的にプリンターを使用せず保守する際のメンテナンス液として使用しやすくなる。防腐剤の好ましい例としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。
水系インク組成物は、必要に応じて、キレート剤、防錆剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
1.1.8.水系インク組成物の製造方法
本実施形態の水系インク組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、上述の各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより製造することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
1.1.9.水系インク組成物の物性
本実施形態に係る水系インク組成物は、画像品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態に係る水系インク組成物の20℃における粘度は、1.0mPa・s以上20.0mPa・s以下であることが好ましく、3.0mPa・s以上15.0mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.2.水系処理液組成物
本実施形態の組成物セットは、水系処理液組成物を含む。水系処理液組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着させて用いられる。
水系インク組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。水系処理液組成物は、水系の組成物であり、水を主たる溶媒として含有する。水は、上述の水系インク組成物で述べたと同様であるので、説明を省略する。
前述の水系インク組成物が、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しないものであっても、水系処理液組成物の有機溶剤の含有量によっては、記録物の優れた耐ブロッキング性や耐ラミネート性を必ずしも得ることができないことがわかった。そこで、本実施形態においては、水系インク組成物だけでなく、水系処理液組成物も有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。こうすることで、記録物の優れた耐ブロッキング性や耐ラミネート性を得ることができる。また、記録媒体に付着された際の乾燥を速やかに行うことができ、耐擦性や画質などもより優れ好ましい。
1.2.1.凝集剤
水系処理液組成物は、水系インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する。凝集剤は、水系インク組成物に含まれる色材、樹脂粒子などの成分を凝集させる作用を有する。ただし、凝集剤による色材や樹脂粒子の凝集の程度は凝集剤、色材、樹脂粒子のそれぞれの種類によって異なり、調節することができる。このような凝集により、例えば、色材の発色を高めること、樹脂粒子の定着性を高めること、及び/又は、インクの粘度を高めることができる。
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩、酸、カチオン性化合物等が挙げられる。カチオン性化合物としては、カチオンポリマー、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。これらの中でも、金属塩としては多価金属塩が好ましく、カチオン性化合物としてはカチオンポリマーが好ましい。酸としては無機酸、有機酸があげられ、有機酸が好ましい。そのため、凝集剤としては、多価金属塩、有機酸及びカチオンポリマーから選択されることが、得られる画質、耐擦性、光沢等が特に優れる点で好ましい。
金属塩としては好ましくは多価金属塩であるが、多価金属塩以外の金属塩も使用可能である。これらの凝集剤の中でも、インクに含まれる成分との反応性に優れるという点から、金属塩、及び有機酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、カチオン性化合物の中でも、水系処理液組成物に対して溶解しやすいという点から、カチオンポリマーを用いることが好ましい。また、凝集剤は複数種を併用することも可能である。
多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの多価金属塩を構成する金属イオンの中でも、インクの成分の凝集性に優れているという点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。
多価金属塩を構成するアニオンとしては、無機イオン又は有機イオンである。すなわち、本発明における多価金属塩とは、無機イオン又は有機イオンと多価金属とからなるものである。このような無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。有機イオンとしては有機酸イオンが挙げられ、例えばカルボン酸イオンが挙げられる。
なお、多価金属化合物はイオン性の多価金属塩であることが好ましく、特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩である場合、処理液の安定性がより良好となる。また、多価金属の対イオンとしては、無機酸イオン、有機酸イオンのいずれでもよい。
上記の多価金属塩の具体例としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。これらの多価金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、水への十分な溶解性を確保でき、かつ、処理液による跡残りが低減する(跡が目立たなくなる)ため、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム及び塩化カルシウムのうち少なくともいずれかが好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。なお、これらの金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。
多価金属塩以外の金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの一価の金属塩が挙げられ、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸の塩で金属塩であるものは上記の金属塩に含める。
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。無機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機酸の塩で金属塩であるものは上記の金属塩に含める。
カチオンポリマー(カチオン性ポリマー)としては、例えば、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアミン系樹脂等が挙げられる。カチオン性ポリマーは好ましくは水溶性である。
カチオン性のウレタン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP−7010、CP−7020、CP−7030、CP−7040、CP−7050、CP−7060、CP−7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR−2120C、WBR−2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB−1200、CD−1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
カチオン性のアミン系樹脂としては、構造中にアミノ基を有するものであればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂などが挙げられる。ポリアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアミノ基を有する樹脂である。ポリアミド樹脂は樹脂の主骨格中にアミド基を有する樹脂である。ポリアリルアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有する樹脂である。
また、カチオン性のポリアミン系樹脂としては、センカ株式会社製のユニセンスKHE103L(ヘキサメチレンジアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約5.0、粘度20〜50(mPa・s)、固形分濃度50質量%の水溶液)、ユニセンスKHE104L(ジメチルアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約7.0、粘度1〜10(mPa・s)、固形分濃度20質量%の水溶液)などを挙げることができる。さらにカチオン性のポリアミン系樹脂の市販品の具体例としては、FL−14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK−6810、6853、6885;WS−4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP−105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX−1(田岡化学工業社製)、カチオマスター(登録商標)PD−1、7、30、A、PDT−2、PE−10、PE−30、DT−EH、EPA−SK01、TMHMDA−E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)が挙げられる。
ポリアリルアミン樹脂は、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
また上記のポリアリルアミン樹脂で例示した酸塩タイプではなく、酸で中和されていないフリータイプでも用いることができる。このフリータイプ形態の方が水系処理液組成物に用いた場合に、処理液組成物のpHを中性からアルカリ性側に容易に調整することができ、インクジェット記録装置部材の耐久性・腐食等に対して有利であるため好ましい。フリータイプのポリアリルアミン樹脂としては、具体的にはPAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C,PAA−25(以上商品名、ニットーボーメディカル株式会社製)を用いることができる。
これらの凝集剤は、複数種を使用してもよい。また、これらの凝集剤のうち、多価金属塩、有機酸、カチオンポリマーの少なくとも一種を選択すれば、凝集作用がより良好であるので、より高画質な(特に発色性の良好な)画像を形成することができる。
水系処理液組成物における、凝集剤の合計の含有量は、例えば、水系処理液組成物の全質量に対して、0.1質量%以上20.0質量%以下であり、0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。なお、凝集剤が溶液や分散体で共有される場合においても、固形分の含有量として上記範囲であることが好ましい。凝集剤の含有量が0.1質量%以上であれば、凝集剤がインクに含まれる成分を凝集させる能力が十分得られる。また、凝集剤の含有量が30.0質量%以下であることで、水系処理液組成物中での凝集剤の溶解性や分散性がより良好になり、水系処理液組成物の保存安定性等を向上できる。
水系処理液組成物に含まれる有機溶剤の疎水性が高い場合であっても、水系処理液組成物中における凝集剤の溶解性が良好になるという点から、凝集剤には、25℃の水100gに対する溶解度が、1g以上であるものを使用することが好ましく、3g以上80g以下にあるものを使用することがより好ましい。
有機溶剤の機能、好ましい種類、好ましい含有量等、は、上述の水系インク組成物と同様であるので、説明を省略する。
1.2.2.その他の成分
水系処理液組成物は、機能を損なわない限り、凝集剤の他に、有機溶剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、キレート剤、防錆剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤及び水溶性樹脂などの成分を含有してもよい。これらの成分は、上述の水系インク組成物で述べたと同様であるので説明を省略する。
1.2.3.水系処理液組成物の製造方法
本実施形態の水系処理液組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、上述の各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより製造することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
1.2.4.水系処理液組成物の物性
本実施形態に係る水系処理液組成物は、画像品質とインクジェット記録用としての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態に係る水系処理液組成物の20℃における粘度は、1.0mPa・s以上20.0mPa・s以下であることが好ましく、3.0mPa・s以上15.0mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.3.組成物セットにおける水系インク組成物の数及び種類
本実施形態の組成物セットを構成する組成物は、少なくとも1つの水系インク組成物及び少なくとも1つの水系処理液組成物である。水系インク組成物は、複数含まれてもよい。
水系インク組成物に複数の水系インク組成物が含まれる場合、例えば、第1インクとして、複数の水系インク組成物のうちの1つを、色材として上述した非白色色材を含有する非白色インクとし、第2インクとして、複数の水系インク組成物のうちの他の水系インク組成物を、上述した白色色材を含有する白色インクとすることができる。
また、組成物セットが複数の水系インク組成物を含む態様では、上述の水系インク組成物以外の他のインク組成物をさらに備えてもよい。
組成物セットに、非白色インク及び白色インクが含まれる場合には、水系処理液組成物をインクジェット法により記録媒体に付着させた領域に、非白色インク及び/又は白色インクを付着させることで、上述した凝集剤による作用をより効果的に得ることができる。
また、組成物セットに、非白色インク及び白色インクが含まれる場合には、非白色インクよりも先に白色インクが記録媒体に付着され、白色インクが付着した領域に非白色インクが付着されると、白色インクによる画像が非白色インクによる画像の背景となって、画像の視認性が向上することがある。さらにこの場合において記録媒体が透明である場合には、白色インクよりも先に非白色インクが記録媒体に付着され、非白色インクが付着した領域に白色インクが付着されると、記録媒体の裏面から見た場合に、白色インクによる画像が非白色インクによる画像の背景となって、画像の視認性が向上することがある。
1.4.組成物セットの用途等
本実施形態の組成物セットは、上述のように記録媒体に付与された際に、有機溶剤の残存量を少なくすることができる。そのため、形成される画像の耐久性が良好となる。耐久性のうち耐ラミネート性にも優れるので、組成物セットを用いて記録媒体に記録した記録物を、ラミネート加工して用いる場合に、その効果が顕著となる。
2.記録方法
本実施形態の記録方法は、インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置により、記録媒体へ記録を行う記録方法であって、上述した水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させるインク付着工程と、上述の水系処理液組成物をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる処理液付着工程と、を備える。以下、記録媒体及びインクジェット記録装置について述べる。
2.1.記録媒体
本実施形態に係る記録方法で画像を形成する記録媒体は、液体を吸収する記録面を有するものであっても有しないものであってもよい。記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、白色又は非白色の、紙、フィルム、布等の液体吸収性記録媒体、印刷本紙などの液体低吸収性記録媒体、白色又は非白色の、金属、ガラス、高分子等の液体非吸収性記録媒体などが挙げられる。
液体低吸収性又は液体非吸収性の記録媒体とは、液体を全く吸収しない、又はほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、液体非吸収性又は液体低吸収性の記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。これに対して、液体吸収性の記録媒体とは、液体非吸収性及び液体低吸収性に該当しない記録媒体のことを示す。なお、本明細書では、液体低吸収性及び液体非吸収性を、単に低吸収性及び非吸収性ということがある。
液体非吸収性の記録媒体としては、例えば、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの、紙等の基材上にプラスチックフィルムが接着されているもの、吸収層(受容層)を有していないプラスチックフィルム等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
また、液体低吸収性の記録媒体としては、例えば、表面に液体低吸収性の塗工層が設けられた記録媒体が挙げられる。例えば塗工紙と呼ばれるものである。例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、ポリマー等が塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。
液体吸収性の記録媒体は、上述の「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m超である記録媒体」を指す。
液体吸収性の記録媒体としては、記録媒体の表面に液体を吸収する受容層が設けられていることによって液体吸収性の記録媒体になっているものが挙げられる。例えば、インクジェット用紙(インクジェット専用紙)などが挙げられる。液体を吸収する受容層としては、液体吸収性の樹脂、液体吸収性の無機微粒子などから構成された層が挙げられる。
液体吸収性の記録媒体としては、記録媒体の基材そのものが液体吸収性である記録媒体も挙げられる。例えば、繊維からなる布帛、パルプを成分とする紙などが挙げられる。紙としては、普通紙、厚紙、ライナー紙などが挙げられる。ライナー紙は、クラフトパルプ、古紙などの紙から構成されるものが挙げられる。また、記録媒体の中でも、液体低吸収性又は液体非吸収性の記録媒体が好ましく、液体非吸収性の記録媒体がより好ましい。この場合、記録物の耐久性が特に必要である点で本実施形態が特に有用である。
2.2.インクジェット記録装置
本実施形態の記録方法は、インクジェット記録装置を用いて実施できる。インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを備えており、上述の組成物セットの組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させることができる。
2.2.1.インクジェット記録装置の概要
本実施形態に係る組成物セットに好適なインクジェット記録装置の例について図面を参照しながら説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材の縮尺や相対的な寸法を適宜変更している。
図1は、インクジェット記録装置1を模式的に示す概略断面図である。図2は、図1のインクジェット記録装置1のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。図1、2に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、キャリッジ9と、プラテン11と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段14と、制御部CONTを備える。インクジェット記録装置1は、図2に示す制御部CONTにより、インクジェット記録装置1全体の動作が制御される。
インクジェットヘッド2は、水系処理液組成物と水系インク組成物とをインクジェットヘッド2のノズルから吐出して付着させることにより記録媒体Mに記録を行う構成である。この例では、インクジェットヘッド2は、シリアル記録方式のインクジェットヘッドであり、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査して水系処理液組成物と水系インク組成物とを記録媒体Mに付着させる。インクジェットヘッド2は図2に示すキャリッジ9に搭載される。インクジェットヘッド2は、キャリッジ9を記録媒体Mの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構13の動作により、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査される。媒体幅方向とは、インクジェットヘッド2の主走査方向である。主走査方向への走査を主走査ともいう。
またここで、主走査方向は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9の移動する方向である。図1においては、矢印SSで示す記録媒体Mの搬送方向である副走査方向に交差する方向である。図2においては、記録媒体Mの幅方向、つまりS1−S2で表される方向が主走査方向MSであり、T1→T2で表される方向が副走査方向SSである。なお、1回の走査で主走査方向、すなわち、矢印S1又は矢印S2の何れか一方の方向に走査が行われる。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、記録媒体Mの搬送である副走査を複数回繰り返し行うことで、記録媒体Mに対して記録する。すなわち、処理液付着工程、インク付着工程は、インクジェットヘッド2が主走査方向に移動する複数回の主走査と、記録媒体Mが主走査方向に交差する副走査方向へ移動する複数回の副走査と、により行われる。
インクジェットヘッド2に水系処理液組成物や水系インク組成物を供給するカートリッジ12は、独立した複数のカートリッジを含む。カートリッジ12は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9に対して着脱可能に装着される。複数のカートリッジのそれぞれには異なる種類の水系処理液組成物、水系インク組成物、必要に応じたその他の組成物が充填されており、カートリッジ12から各ノズルに各組成物が供給される。なお、カートリッジ12はキャリッジ9に装着される例を示しているが、これに限定されず、キャリッジ9以外の場所に設けられ、図示せぬ供給管によって各ノズルに供給される形態でもよい。
インクジェットヘッド2による組成物の吐出には従来公知の方式を使用することができる。ここでは、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出する方式、すなわち、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成する吐出方式を使用する。
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からの組成物を吐出して記録媒体Mに付着する際に記録媒体Mを乾燥するための乾燥工程を行う乾燥機構を備えることができる。乾燥は、加熱や送風による乾燥を用いることができる。乾燥機構は、伝導式、送風式、放射式などを用いることができる。伝導式は記録媒体に接触する部材から熱を記録媒体に伝導する。例えばプラテンヒーター4などがあげられる。送風式は常温風又は温風を記録媒体Mに送り組成物を乾燥させる。例えば通気ファン8が挙げられる。放射式は熱を発生する放射線を記録媒体Mに放射して記録媒体Mを加熱する。例えばIRヒーター3が挙げられる。これら乾燥機構は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
例えば、インクジェット記録装置1では、乾燥機構として、IRヒーター3及びプラテンヒーター4を備えている。乾燥工程で記録媒体Mを乾燥する際には、IRヒーター3、プラテンヒーター4、通気ファン8等を用いることができる。
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から赤外線の輻射により放射式で記録媒体Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4等の記録媒体Mの裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体Mの厚さの影響を受けずに昇温することができる。また、温風又は環境と同じ温度の風を記録媒体Mにあてて記録媒体M上の組成物を乾燥させる各種のファン(例えば図示の通気ファン8)を備えてもよい。
プラテンヒーター4は、インクジェットヘッド2によって吐出された組成物が記録媒体Mに付着された時点から早期に乾燥することができるように、インクジェットヘッド2に対向する位置において記録媒体Mを、プラテン11を介して加熱することができる。プラテンヒーター4は、記録媒体Mを伝導式で加熱可能なものであり、記録方法では、必要に応じて用いられ、用いる場合には、記録媒体Mの表面温度が45.0℃以下、好ましくは40.0℃以下となるように制御することが好ましい。なおライン記録方式のインクジェット記録装置においては、プラテンヒーター4は、アンダーヒーターに対応する。乾燥機構を用いた乾燥工程を行わない場合は、乾燥機構を備えなくてもよい。
なお、インク付着工程の、乾燥機構による乾燥工程による、記録媒体Mの表面温度の上限は45.0℃以下であることが好ましく、40.0℃以下であることがより好ましく、38.0℃以下であることがさらにより好ましく、35.0℃以下であることが特に好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は25.0℃以上であることが好ましく、28.0℃以上であることがより好ましく、30.0℃以上であることがさらに好ましく、32.0℃以上であることが特により好ましい。これによりインクジェットヘッド2内の組成物の乾燥及び組成変動を抑制でき、インクジェットヘッド2の内壁に対する組成物や含有される樹脂の溶着が抑制される。また、記録媒体M上で組成物を早期に固定することができ、耐ブロッキング性、耐ラミネート性を向上させ、画質を向上させることができる。
記録方法では、インク付着工程後に、記録媒体Mを加熱して、組成物を乾燥させ、定着させる後加熱工程を備えてもよい。後加熱を二次加熱ともいう。
後加熱工程に用いる加熱ヒーター5は、記録媒体Mに付着された組成物を乾燥及び固化させる、つまり、二次加熱又は二次乾燥用のヒーターである。加熱ヒーター5は、後加熱工程に用いることができる。加熱ヒーター5が、画像が記録された記録媒体Mを加熱することにより、組成物中に含まれる水分等がより速やかに蒸発飛散して、組成物中に樹脂が含まれる場合には樹脂によってインク膜が形成される。このようにして、記録媒体M上において組成物の膜が強固に定着又は接着して造膜性が優れたものとなり、優れた高画質な画像が短時間で得られる。
加熱ヒーター5による記録媒体Mの表面温度の上限は120.0℃以下であることが好ましく、100.0℃以下であることがより好ましく、90.0℃以下であることがさらに好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は60.0℃以上であることが好ましく、70.0℃以上であることがより好ましく、80.0℃以上であることがさらに好ましい。温度が前記範囲にあることにより、高画質な画像が短時間で得られる。なおライン記録方式のインクジェット記録装置においては、加熱ヒーター5は、アフターヒーターに対応し、カーボンヒーター等により構成される。
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体Mに付着された組成物を乾燥後、冷却ファン6により記録媒体M上の組成物を冷却することにより、記録媒体M上に密着性よく塗膜を形成することができる。
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに対して組成物が付着される前に、記録媒体Mを予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。なおライン記録方式のインクジェット記録装置においても、プレヒーター7を設けてもよい。
キャリッジ9の下方には、記録媒体Mを支持するプラテン11と、キャリッジ9を記録媒体Mに対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構13と、記録媒体Mを副走査方向に搬送するローラーである搬送手段14を備える。キャリッジ移動機構13と搬送手段14の動作は、制御部CONTにより制御される。
図3は、インクジェット記録装置1の機能ブロック図である。制御部CONTは、インクジェット記録装置1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部101(I/F)は、コンピューター130(COMP)とインクジェット記録装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU102は、インクジェット記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103(MEM)は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU102は、ユニット制御回路104(UCTRL)により各ユニットを制御する。なお、インクジェット記録装置1内の状況を検出器群121(DS)が監視し、その検出結果に基づいて、制御部CONTは各ユニットを制御する。
搬送ユニット111(CONVU)は、インクジェット記録の副走査(搬送)を制御するものであり、具体的には、記録媒体Mの搬送方向、搬送距離及び搬送速度を制御する。具体的には、モーターによって駆動される搬送ローラーの回転方向、回転量及び回転速度を制御することによって記録媒体Mの搬送方向、搬送距離及び搬送速度を制御する。
キャリッジユニット112(CARU)は、インクジェット記録の主走査(パス)を制御するものであり、具体的には、インクジェットヘッド2を主走査方向に往復移動させるものである。キャリッジユニット112は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9と、キャリッジ9を往復移動させるためのキャリッジ移動機構13とを備える。
ヘッドユニット113(HU)は、インクジェットヘッド2のノズルからの組成物の吐出量を制御するものである。例えば、インクジェットヘッド2のノズルが圧電素子により駆動されるものである場合、各ノズルにおける圧電素子の動作を制御する。ヘッドユニット113により各組成物の付着のタイミング、組成物のドットサイズ等が制御される。また、キャリッジユニット112及びヘッドユニット113の制御の組合せにより、1走査あたりの組成物の付着量が制御される。
乾燥ユニット114(DU)は、IRヒーター3、プレヒーター7、プラテンヒーター4、加熱ヒーター5等の各種ヒーターの温度を制御する。
上記のインクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9を主走査方向に移動させる動作と、搬送動作(副走査)とを交互に繰り返す。このとき、制御部CONTは、各パスを行う際に、キャリッジユニット112を制御して、インクジェットヘッド2を主走査方向に移動させるとともに、ヘッドユニット113を制御して、インクジェットヘッド2の所定のノズル孔から組成物の液滴を吐出させ、記録媒体Mに組成物の液滴を付着させる。また、制御部CONTは、搬送ユニット111を制御して、搬送動作の際に所定の搬送量(送り量)にて記録媒体Mを搬送方向に搬送させる。
インクジェット記録装置1では、主走査(パス)と副走査(搬送動作)が繰り返されることによって、複数の液滴を付着させた記録領域が徐々に搬送される。そして、アフターヒーター5により、記録媒体Mに付着させた液滴を乾燥させて、画像が完成する。その後、完成した記録物は、巻き取り機構によりロール状に巻き取られたり、フラットベット機構で搬送されたりしてもよい。
2.2.2.循環機構
本実施形態の記録方法で用いるインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを備え、当該インクジェットヘッドを循環機構が備えられているインクジェットヘッドとしても良く、好ましい。循環機構は、インクジェットヘッドの内部に備えられてもよいし、一部又は全部がインクジェットヘッドの外部に備えられてもよい。
本実施形態のインクジェット記録装置は、組成物の循環機構を有するインクジェットヘッドにより吐出される。すなわち、組成物が、循環機構によって循環される。循環機構は、組成物を、圧力室を通過させ当該圧力室に再び流入させる経路を有する。
組成物の循環機構により、組成物が乾燥した場合に、組成物の溶質の濃度が高まっても、濃度が高くなった組成物を上流側に戻して、新しい乾燥前の同一の組成物と混合できるので、良好な吐出安定性を確保することができる。
図4は、記録媒体Mの搬送方向(副走査方向SS、図2参照)をY方向とし、これに垂直な断面におけるインクジェットヘッド2の断面の模式図であり、図5は、インクジェットヘッド2の部分的な分解斜視図である。図4、図5において、記録媒体Mの表面に平行な平面をX−Y平面とし、X−Y平面に垂直な方向を以下ではZ方向と表記する。インクジェットヘッド2による組成物の吐出方向がZ方向に相当する。
インクジェットヘッド2の複数のノズルNはY方向に配列されて、ノズル列を構成する。インクジェットヘッド2においてY方向に平行な中心軸を通過するとともにZ方向に平行な平面、すなわち、Y−Z平面Oを以下の説明では「中心面」と表記する。
図4に示すように、インクジェットヘッド2は、第1列L1の各ノズルNに関連する要素と第2列L2の各ノズルNに関連する要素とが中心面Oを挟んで面対称に配置された構造である。すなわち、インクジェットヘッド2のうち中心面Oを挟んでX方向の正側の部分(以下、「第1部分」ともいう。)P1とX方向の負側の部分(以下、「第2部分」ともいう。)P2とで構造は実質的に共通する。第1列L1の複数のノズルNは第1部分P1に形成され、第2列L2の複数のノズルNは第2部分P2に形成される。中心面Oは、第1部分P1と第2部分P2との境界面に相当する。
ここで、図4における第2列L2の各ノズルN及び第1列L1の各ノズルNは、それぞれ上述のいずれかの組成物が充填されるノズル列を構成する。
図4に示すように、インクジェットヘッド2は流路形成部30を備える。流路形成部30は、複数のノズルNに組成物を供給するための流路を形成する構造体である。流路形成部30は、第1流路基板32と第2流路基板34との積層で構成される。第1流路基板32及び第2流路基板34の各々は、Y方向に長尺な板状部材である。第1流路基板32のうちZ方向の負側の表面Faに、例えば接着剤を利用して第2流路基板34が設置される。
図4に示すように、第1流路基板32の表面Faの面上には、第2流路基板34のほか、振動部42と圧電素子44と保護部材46と筐体部48とが設置される。他方、第1流路基板32のうちZ方向の正側、すなわち表面Faとは反対側の表面Fbには、ノズルプレート52と吸振体54とが設置される。インクジェットヘッド2の各要素は、概略的には第1流路基板32や第2流路基板34と同様にY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤を利用して相互に接合される。第1流路基板32と第2流路基板34とが積層される方向や第1流路基板32とノズルプレート52とが積層される方向、あるいは板状の各要素の表面に垂直な方向を、Z方向として把握することも可能である。
ノズルプレート52は、複数のノズルNが形成された板状部材であり、例えば接着剤を利用して第1流路基板32の表面Fbに設置される。複数のノズルNの各々は、組成物を通過させる円形状の貫通孔である。ノズルプレート52には、第1列L1を構成する複数のノズルNと第2列L2を構成する複数のノズルNとが形成される。具体的には、ノズルプレート52のうち中心面OからみてX方向の正側の領域に、第1列L1の複数のノズルNがY方向に沿って形成され、X方向の負側の領域に、第2列L2の複数のノズルNがY方向に沿って形成される。ノズルプレート52は、第1列L1の複数のノズルNが形成された部分と第2列L2の複数のノズルNが形成された部分とにわたり連続する単体の板状部材である。ノズルプレート52は、半導体製造技術、例えばドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、ノズルプレート52の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
図4に示すように、第1流路基板32には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について、空間Raと複数の供給路61と複数の連通路63とが形成される。空間Raは、平面視で、すなわちZ方向からみてY方向に沿う長尺状に形成された開口であり、供給路61及び連通路63はノズルN毎に形成された貫通孔である。複数の連通路63は平面視でY方向に配列し、複数の供給路61は、複数の連通路63の配列と空間Raとの間でY方向に配列する。複数の供給路61は、空間Raに共通に連通する。また、任意の1個の連通路63は、当該連通路63に対応するノズルNに平面視で重なる。具体的には、第1部分P1の任意の1個の連通路63は、第1列L1のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。同様に、第2部分P2の任意の1個の連通路63は、第2列L2のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。
図4に示すように、第2流路基板34は、第1部分P1及び第2部分P2の各々について複数の圧力室Cが形成された板状部材である。複数の圧力室CはY方向に配列する。各圧力室Cは、ノズルN毎に形成されて平面視でX方向に沿う長尺状の空間である。第1流路基板32及び第2流路基板34は、前述のノズルプレート52と同様に、例えば半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、第1流路基板32及び第2流路基板34の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。以上の例示の通り、流路形成部30とノズルプレート52とはシリコンで形成された基板を包含する。したがって、例えば前述の例示のように半導体製造技術を利用することで、流路形成部30及びノズルプレート52に微細な流路を高精度に形成できるという利点がある。
図4に示すように、第2流路基板34のうち第1流路基板32とは反対側の表面には振動部42が設置される。振動部42は、弾性的に振動可能な板状部材である。なお、所定の板厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について板厚方向の一部を選択的に除去することで、第2流路基板34と振動部42とを一体に形成することも可能である。
図4に示すように、第1流路基板32の表面Faと振動部42とは、各圧力室Cの内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室Cは、第1流路基板32の表面Faと振動部42との間に位置する空間であり、当該空間に充填された水系インク組成物に圧力変化を発生させる。各圧力室Cは、例えばX方向を長手方向とする空間であり、ノズルN毎に個別に形成される。第1列L1及び第2列L2の各々について、複数の圧力室CがY方向に配列する。
図4に示すように、任意の1個の圧力室Cのうち中心面O側の端部は平面視で連通路63に重なり、中心面Oとは反対側の端部は平面視で供給路61に重なる。したがって、第1部分P1及び第2部分P2の各々において、圧力室Cは、連通路63を介してノズルNに連通するとともに、供給路61を介して空間Raに連通する。なお、流路幅が狭窄された絞り流路を圧力室Cに形成することで所定の流路抵抗を付加することも可能である。
図4に示すように、振動部42のうち圧力室Cとは反対側の面上には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について、相異なるノズルNに対応する複数の圧電素子44が設置される。圧電素子44は、駆動信号の供給により変形する素子である。複数の圧電素子44は、各圧力室Cに対応するようにY方向に配列する。任意の1個の圧電素子44は、例えば相互に対向する2つの電極との間に圧電体層を介在させた積層体である。なお、駆動信号の供給により変形する部分、すなわち振動部42を振動させる能動部を圧電素子44として画定することも可能である。本実施形態において、圧電素子44の変形に連動して振動部42が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することで、圧力室Cに充填された水系インク組成物が連通路63とノズルNとを通過して水系インク組成物が吐出される。
図4の保護部材46は、複数の圧電素子44を保護するための板状部材であり、振動部42の表面、又は第2流路基板34の表面に設置される。保護部材46の材料や製法は任意であるが、第1流路基板32や第2流路基板34と同様に、例えばシリコンの単結晶基板を半導体製造技術により加工することで保護部材46は形成され得る。保護部材46のうち振動部42側の表面に形成された凹部に図のY方向に並ぶ複数の圧電素子44が収容される。
振動部42のうち流路形成部30とは反対側の表面、又は流路形成部30の表面には配線基板28の端部が接合される。配線基板28は、制御ユニットとインクジェットヘッド2とを電気的に接続する複数の配線(図示せず)が形成された可撓性の実装部品である。配線基板28のうち、保護部材46に形成された開口部と筐体部48に形成された開口部とを通過して外部に延出した端部が制御ユニット20に接続される。例えばFPC(フレキシブルプリント回路)やFFC(フレキシブルフラットケーブル)等の可撓性の配線基板28が好適に採用される。
筐体部48は、複数の圧力室C、さらには複数のノズルNに供給される水系インク組成物を貯留するためのケースである。筐体部48のうちZ方向の正側の表面が例えば接着剤で第1流路基板32の表面Faに接合される。筐体部48の製造には公知の技術や製法が任意に採用され得る。例えば樹脂材料の射出成形で筐体部48を形成することが可能である。
図4に示すように、筐体部48には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について空間Rbが形成される。筐体部48の区間Rbと第1流路基板32の空間Raとは相互に連通する。空間Raと空間Rbとで構成される空間は、複数の圧力室Cに供給される組成物を貯留する液体貯留室Rとして機能する。液体貯留室Rは、複数のノズルNについて共用される共通液室である。第1部分P1及び第2部分P2の各々に液体貯留室Rが形成される。第1部分P1の液体貯留室Rは、中心面OからみてX方向の正側に位置し、第2部分P2の液体貯留室Rは、中心面OからみてX方向の負側に位置する。筐体部48のうち第1流路基板32とは反対側の表面には、液体容器14から供給される組成物を液体貯留室Rに導入するための導入口482が形成される。
図4に示すように、第1流路基板32の表面Fbには、第1部分P1及び第2部分P2の各々について吸振体54が設置される。吸振体54は、液体貯留室R内の組成物の圧力変動を吸収する可撓性のフィルム、すなわちコンプライアンス基板である。例えば、吸振体54は、第1流路基板32の空間Raと複数の供給路61とを閉塞するように第1流路基板32の表面Fbに設置されて液体貯留室Rの壁面、具体的には底面を構成する。
図4に示すように、第1流路基板32のうちノズルプレート52に対向する表面Fbには空間(以下、「循環液室」という。)65が形成される。循環液室65は、平面視でY方向に延在する長尺状の有底孔である。第1流路基板32の表面Fbに接合されたノズルプレート52により循環液室65の開口は閉塞される。循環液室65は、例えば、第1列L1及び第2列L2に沿って複数のノズルNにわたり連続する。具体的には、第1列L1の複数のノズルNの配列と第2列L2の複数のノズルNの配列との間に循環液室65が形成される。したがって、循環液室65は、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する。このように、流路形成部30は、第1部分P1における圧力室C及び連通路63と、第2部分P2における圧力室C及び連通路63と、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する循環液室65とが形成された構造体である。図6に示すように、流路形成部30は、循環液室65と各連通路63との間を仕切る壁状の部分(以下、「隔壁部」という。)69を含む。
なお、前述の通り、第1部分P1及び第2部分P2の各々において複数の圧力室C及び複数の圧電素子44がY方向に配列する。したがって、第1部分P1及び第2部分P2の各々における複数の圧力室C又は複数の圧電素子44にわたり連続するように、循環液室65がY方向に延在すると換言することも可能である。また、図6に示すように、循環液室65と液体貯留室Rとが相互に間隔をあけてY方向に延在し、当該間隔内に圧力室Cと連通路63とノズルNとが位置するということも可能である。
図5は、インクジェットヘッド2のうち循環液室65の近傍の部分を拡大した断面図である。図7に示すように、1個のノズルNは、第1区間n1と第2区間n2とを含む。第1区間n1と第2区間n2とは同軸に形成されて相互に連通する円筒状の空間である。第2区間n2は、第1区間n1からみて流路形成部30側に位置する。本実施形態において、各ノズルNの中心軸Qaは、連通路63の中心軸Qbからみて循環液室65とは反対側に位置する。第2区間n2の内径d2は第1区間n1の内径d1よりも大きい。以上のように各ノズルNを階段状に形成した構成によれば、各ノズルNの流路抵抗を所望の特性に設定し易いという利点がある。本実施形態において、各ノズルNの中心軸Qaは、連通路63の中心軸Qbからみて循環液室65とは反対側に位置する。
図5に示すように、ノズルプレート52のうち流路形成部30に対向する表面には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について複数の排出路72が形成される。第1部分P1の複数の排出路72は、第1列L1の複数のノズルN、又は第1列L1に対応する複数の連通路63に1対1に対応する。また、第2部分P2の複数の排出路72は、第2列L2の複数のノズルN、又は第2列L2に対応する複数の連通路63に1対1に対応する。
インクジェットヘッドにおいて、組成物を供給する流路と、組成物を排出する流路と、を合わせて循環流路とする。組成物を排出する流路は、組成物がインクジェットヘッドに供給されノズルから吐出するまでに組成物が通過する経路に対し、組成物が該経路から外れて該経路の外に出る流路である。組成物を供給する流路は、組成物を排出する流路により該経路の外に出た組成物が、再び該経路に入る流路である。組成物を供給する流路は、該経路の一部を構成するものであってもよい。つまり、該経路の外に出た組成物を再び該経路に供給するものであればよい。
例えば、図4の例では、供給路61と排出路72とを合わせたものを循環流路とする。供給路61から、ノズルNから吐出されるべく供給された組成物が、ノズルNから吐出されることなく、供給路61からノズルNまでの組成物の経路、から排出され、再び、供給路61からノズルNまでの組成物の経路、に供給されることを可能とする流路である。
各排出路72は、X方向に延在する溝部、すなわち長尺状の有底孔であり、組成物を流通させる流路として機能する。排出路72は、ノズルNから離間した位置、具体的には、当該排出路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に形成される。例えば、半導体製造技術、例えばドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術により複数のノズルN、特に第2区間n2と複数の排出路72とが共通の工程で一括的に形成される。
図5に示すように、各排出路72は、ノズルNのうち第2区間n2の内径d2と同等の流路幅Waで直線状に形成される。また、排出路72のY方向の幅は、圧力室CのY方向の幅よりも小さい。したがって、排出路72の流路幅が圧力室Cの流路幅よりも大きい構成と比較して排出路72の流路抵抗を大きくすることが可能である。なお、流路幅が圧力室Cの流路幅よりも大きい構成としても差し支えない。他方、ノズルプレート52の表面に対する排出路72の深さDaは全長にわたり一定である。この例では、各排出路72はノズルNの第2区間n2と同等の深さに形成されている。排出路72と第2区間n2とを相異なる深さに形成する構成としてもよいが、このようにすることにより排出路72及び第2区間n2を形成し易いという利点がある。なお流路の「深さ」とは、Z方向における流路の深さ、例えば流路の形成面と流路の底面との高低差を意味する。
第1部分P1における任意の1個の排出路72は、第1列L1のうち当該排出路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に位置する。また、第2部分P2における任意の1個の排出路72は、第2列L2のうち当該排出路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に位置する。そして、各排出路72のうち中心面Oとは反対側は、当該排出路72に対応する1個の連通路63に平面視で重なる。すなわち、排出路72は連通路63に連通する。他方、各排出路72のうち中心面O側の端部は循環液室65に平面視で重なる。すなわち、排出路72は循環液室65に連通する。このように、複数の連通路63の各々が排出路72を介して循環液室65に連通する。したがって、図5に破線の矢印で図示される通り、各連通路63内の水系インク組成物は排出路72を介して循環液室65に供給される。すなわち、本実施形態では、第1列L1に対応する複数の連通路63と第2列L2に対応する複数の連通路63とが1個の循環液室65に対して共通に連通する。
図5には、任意の1個の排出路72のうち循環液室65に重なる部分の流路長Laと、排出路72のうち連通路63に重なる部分の流路長、すなわちX方向の寸法Lbと、排出路72のうち流路形成部30の隔壁部69に重なる部分の流路長すなわちX方向の寸法Lcとが図示されている。流路長Lcは、隔壁部69の厚さに相当する。隔壁部69は、排出路72の絞り部分として機能する。したがって、隔壁部69の厚さに相当する流路長Lcが長いほど、排出路72の流路抵抗が増大する。流路長La及び流路長Lcの相対的な長さについては任意であるが、本例では、流路長Laが流路長Lbよりも長く、流路長Laが流路長Lcよりも長い、という関係が成立している。さらに、本例では、流路長Lbが流路長Lcよりも長いという関係が成立している。以上の構成によれば、流路長Laや流路長Lbが流路長Lcよりも短い構成と比較して、連通路63から排出路72を介して循環液室65に水系インク組成物が流入し易いという利点がある。
このように、インクジェットヘッド2では、圧力室Cが連通路63と排出路72とを介して間接的に循環液室65に連通する。すなわち、圧力室Cと循環液室65とは直接的には連通しない。以上の構成において、圧電素子44の動作により圧力室C内の圧力が変動すると、連通路63内を流動する組成物のうちの一部がノズルNから外部に噴射され、残りの一部が連通路63から排出路72を経由して循環液室65に流入する。そして、圧電素子44の1回の駆動により連通路63を流通する組成物のうち、ノズルNを介して噴射される組成物の噴射が、連通路63を流通する組成物のうち排出路72を介して循環液室65に流入する組成物の循環量を上回るように、連通路63とノズルと排出路72とのイナータンスが選定される。全部の圧電素子44を一斉に駆動した場合を想定すると、複数のノズルNによる噴射量の合計よりも、複数の連通路63から循環液室65に流入する循環量の合計、例えば循環液室65内の単位時間内の流量の方が多い、と換言することも可能である。
具体的には、連通路63を流通する水系インク組成物のうち循環量の比率が70%以上となる、すなわち、水系インク組成物の噴射量の比率が30%以下となるように、連通路63とノズルと排出路72との各々の流路抵抗が決定される。以上の構成によれば、組成物の噴射量を確保しながら、ノズルの近傍の組成物を効果的に循環液室65に循環させることが可能である。概略的には、排出路72の流路抵抗が大きいほど、循環量が減少する一方で噴射量が増加し、排出路72の流路抵抗が小さいほど、循環量が増加する一方で噴射量が減少する、という傾向がある。
循環機構は、液体貯留室Rから循環液室65内に移動したインク組成物を、液体貯留室Rに再度供給するための機構、すなわち循環するための機構である。循環機構は、例えば、循環液室65から組成物を吸引する吸引機構、例えばポンプ、組成物に混在する気泡や異物を捕集するフィルター機構(図示せず)、組成物の乾燥・加熱により増粘を低減する加温機構などを備えてもよい。これらはインクジェットヘッドの外部に設けてもよい。これらのインクジェットヘッドの外部に設けられた部分を外部部分とする。循環機構により気泡や異物が除去されるとともに増粘が低減された組成物が、外部部分から導入口482を介して液体貯留室Rに供給される。これにより、液体貯留室R→供給路61→圧力室C→連通路63→排出路72→循環液室65→外部部分→液体貯留室Rという経路で組成物が循環する。循環機構は、好ましくは、組成物を、圧力室Cを通過させ当該圧力室Cに再び流入させる経路を有する。循環機構は、図5でいえば、排出路72、循環液室65を少なくとも含む部分である。
このように、連通路63と循環液室65とを連通させる排出路72がノズルプレート52に形成される場合には、ノズルNの近傍の組成物を効率的に循環液室65に循環させることが可能である。また、第1列L1に対応する連通路63と第2列L2に対応する連通路63とが両者間の循環液室65に共通に連通するため、第1列L1に対応する各排出路72が連通する循環液室と第2列L2に対応する各排出路72が連通する循環液室とを別個に設けた構成と比較して、液体噴射ヘッド26の構成が簡素化される、ひいては小型化が実現されるという利点もある。
なお、排出路72とノズルNとが相互に離間した構成ではなくなく、排出路72とノズルNとが相互に連続する構成としてもよい。また、循環液室65のほか、第1部分P1及び第2部分P2の各々に対応する循環液室を形成する構成としてもよい。
また、循環機構を流通する組成物の流量を、インクジェットヘッドから記録媒体に吐出する組成物の最大吐出量の0.1倍以上5.0倍以下、好ましくは0.2倍以上4.0倍以下、より好ましくは0.3倍以上3.0倍以下、さらに好ましくは0.5倍以上2.0倍以下と設定することもできる。このようにすれば、組成物の吐出量と循環量のバランスが良好で、十分に記録媒体に付着させることができるとともに、組成物の増粘を効率よく抑制することができる。
組成物の最大吐出量は、記録において行う1吐出あたりの組成物の液滴が最大の吐出量で、記録において行う組成物の吐出の最大の吐出の周波数で、組成物のインクジェットヘッドの記録に用いる全ノズルから仮に吐出した場合に、組成物のインクジェットヘッドから吐出される吐出量である。
循環機構を流通する組成物の流量は、組成物のインクジェットヘッドに備えられて該インクジェットヘッドのノズルと繋がっている各排出路、に流通する組成物の流量の合計である。
組成物の、最大吐出量や、循環機構を流通する流量、の単位は、体積/時間で表され、例えば、体積(ml)/時間(分)で表される。組成物の循環量は、インクジェットヘッドあたり0.1(ml/min)以上12.0(ml/min)以下であることが好ましく、0.5(ml/min)以上10.0(ml/min)以下であることがより好ましく、1.0(ml/min)以上7.0(ml/min)以下であることがさらに好ましい。ここでインクジェットヘッドは、1つの導入口から導入したインクが吐出する全てのノズルを合わせたものを1単位としたものをいう。1単位のインクジェットヘッドは、限るものではないが、例えばノズル数は、50〜1000個とすることができ、100〜700個とすることができ、150〜500個とすることができ、200〜400個とすることができる。
また、インクジェットヘッドは、組成物に圧力を付与してノズルから吐出させる圧力室Cを備えているが、図4の例のように、循環機構が、圧力室Cを通過した組成物を、循環させることが好ましい。圧力室Cを通過した組成物を、循環させて、当該圧力室に再び供給されてもよい。この場合において、排出路は、圧力室又は圧力室よりも下流側の位置に設けることができる。この場合、吐出安定性が特に優れ好ましい。
又は、循環機構は、インクジェットヘッド内の圧力室よりも上流側の位置に排出路を設け、排出路により水系インク組成物を排出して、循環させてもよい。そして、循環させ、再び、該位置に、組成物が供給されるようにしてもよい。この場合、圧力室を通過させる前の組成物を循環させる。この場合も、圧力室よりも上流側に組成物の異物や増粘が進んだ場合に、これを解消しやすくなる。上流側の位置としては、例えば、液体貯留室Rが挙げられる。
循環機構は、排出路を経た組成物を、インクジェットヘッド内において循環させ、再び循環経路に供給させてもよいし、排出路を経た組成物を、インクジェットヘッド3の外に排出し、当該排出された組成物を、再度当該インクジェットヘッドに供給するように構成され、組成物を循環させてもよい。このうち、循環機構の製造がし易い等の点で、後者が好ましい。
以上説明したような循環機構を有するインクジェットヘッドを用いれば、組成物の乾燥によって溶質濃度が上昇した場合でも、組成物の吐出信頼性の低下を抑制することができる。特に組成物が有機溶剤を10質量%を超えて含有せず乾燥性のよい組成物であるために、ノズルで乾燥しやすい場合でも、組成物の吐出信頼性の低下を抑制することができる。
シリアル型のインクジェットヘッドを搭載し、シリアル型の記録方法を行うシリアル型の記録装置について説明した。一方、インクジェットヘッド2は、ライン記録方式ヘッドであってもよい。ライン記録方式ヘッドであっても水系インク組成物を循環させることにより、水系インク組成物が乾燥して増粘することによる吐出信頼性の低下を抑制する効果が得られる。ライン記録方式の記録装置のインクジェットヘッドは、記録媒体Mの記録幅以上の長さにノズルが配置されたヘッドであり、記録媒体Mに対して1回のパスで水系インク組成物の付着を行う。
図6は、ライン記録方式ヘッド(ライン型インクジェットヘッド)を搭載し、ライン記録方式の記録方法を行うライン記録方式の記録装置の一部分を模式的に示す概略断面図である。記録装置の部分200は、水系処理液組成物のインクジェットヘッド221を含む処理液付着手段220、水系インク組成物のインクジェットヘッド231を含むインク付着手段230、記録媒体Mを搬送する搬送ローラー211を含む記録媒体搬送手段210、記録媒体に後加熱工程を行う後加熱手段240を備える。また、記録装置の部分200は、処理液付着工程の後に一次乾燥を行う送風機251を含む一次加熱手段250、及び、インク付着工程の後に一次乾燥を行う送風機261を含む一次加熱手段260を備える。インクジェットヘッド231,221は、図の手前−奥方向である記録媒体Mの幅方向にノズル列が伸びているライン記録方式のインクジェットヘッドである。
ライン記録方式の記録装置は、記録媒体Mを、図6の矢印方向である搬送方向に搬送させることで、インクジェットヘッド231,221と記録媒体Mの相対的な位置を移動させつつ、組成物をインクジェットヘッドから吐出し記録媒体Mへ付着させる。これを走査という。走査を主走査やパスともいう。ライン記録方式の記録方法は、搬送される記録媒体Mへ、インクジェットヘッド231,221を用いて水系処理液組成物や水系インク組成物を1回のパスで付着させ記録を行う1パス記録方法である。
ライン記録方式の記録装置は、ライン記録方式のインクジェットヘッドを備えライン記録方式の記録方法を行うこと以外は、前述のシリアル型のインクジェット記録装置1と同様にすることができる。またライン記録方式の記録装置は、3つ以上のインクジェットヘッドを備えてもよい。ライン記録方式の記録装置は、乾燥工程を行う乾燥手段を備えてもよい。例えば、図1のインクジェットヘッド2の上方にある通気ファン8やIRヒーター3などの乾燥手段を、図6のインクジェットヘッド231,221の上方に備えさせ、図1のインクジェットヘッド2の下方にあるプラテンヒーター4に対応するアンダーヒーターなどの乾燥手段を、図6のインクジェットヘッド231,221の下方に備えさせてもよい。
図示の記録装置の部分200の例では、乾燥手段として処理液付着工程の後に一次乾燥を行う送風機251を含む一次加熱手段250、及び、インク付着工程の後に一次乾燥を行う送風機261を含む一次加熱手段260を備えているが、記録媒体に付着させる組成物の数に応じて、付着手段及び一次加熱手段の組を3つ以上配置してもよい。
図7は、インクジェットヘッドの循環機構の外部部分を含めた全体の一例を表す概略図である。図7は、インクジェットヘッドの外部に循環機構の一部が設けられた例を示している。
循環機構の外部部分を含めた全体300は、インクジェットヘッド2、インクコンテナIC、サブタンク301、分岐継手306、圧力調整弁308、加圧ポンプ312、脱気モジュール314、統合継手316、開閉バルブ318、往路320、復路330及び開弁アクチュエーター340を含んで構成されている。なお、循環機構の外部部分を含めた全体300は、シリアル記録方式及びライン記録方式のいずれのインクジェットヘッドにも適用できる。
サブタンク301はインクコンテナICから組成物の供給を受け、加圧ポンプ312によってインクを脱気機構の一例である脱気モジュール314を通過させて、インクジェットヘッド2に供給する。ここで、インクコンテナICは、例えば、インクカートリッジ、インクパック等の組成物を収容する容器である。また、インクジェットヘッド2は、上述のシリアル記録方式のインクジェットヘッドであってもよいし、ライン記録方式のインクジェットヘッドであってもよい。インクジェットヘッドがライン記録方式のものである場合には、複数のインクジェットヘッド2がスタガ配置されてもよい。
インクジェットヘッド2は記録媒体(図示せず)に組成物を吐出する。圧力調整弁308は開弁アクチュエーター340によって開弁され、サブタンク301からインクジェットヘッド2へ組成物を供給する際の組成物の圧力を調整する。
脱気モジュール314を通過した組成物は、圧力調整弁308が開弁すると、分岐継手306に流入する。分岐継手306の内部では、往路320が複数の通路に分岐されて、複数個のインクジェットヘッド2に接続されている。
インクジェットヘッド2から吐出されなかった組成物は、開閉バルブ318が開いた状態において、統合継手316及び復路330を介してサブタンク301へ循環される。サブタンク301とインクジェットヘッド2との間に組成物を循環させることで、組成物が長期滞留して組成物の成分が分離、沈降した場合にこれを回復させたり、循環する組成物の濃度を安定させたりすることができる。
脱気モジュール314内には、組成物が流入する脱気室(図示せず)と、空気などの気体を通して組成物などの液体を通さない分離膜を介して脱気室と接する減圧室(図示せず)と、が設けられている。減圧ポンプ(図示せず)によって減圧室を減圧すると、脱気室内の組成物に混入していた気泡や組成物に溶解していた酸素などの気体は抜けていくので、気泡の混入が抑制され、脱気モジュール314へ送られた組成物よりも溶存酸素濃度を低くした組成物をインクジェットヘッド2へ供給し、インクジェットヘッド2から吐出させることができる。脱気モジュール314は、サブタンク301からインクジェットヘッド2へインクを供給し続けた状態で、連続的にインクの脱気を行うことができる。なお、脱気モジュール314は、必要に応じて設けられる。
2.3.各工程の説明
本実施形態の記録方法は、上述した組成物セットの水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させるインク付着工程と、上述の水系処理液組成物をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる処理液付着工程と、を備える。
2.3.1.処理液付着工程
処理液付着工程では、水系処理液組成物を上述したインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる。本工程は、シリアル型の記録装置を用いて行ってもよいし、ライン記録方式の記録装置を用いて行ってもよい。さらに、循環機構を備えたインクジェットヘッドを用いてもよい。循環機構を備える場合には、より吐出安定性の良好な記録を行うことができる。
処理液付着工程では、記録媒体が加熱されていることが好ましい。記録媒体の加熱は、上述した送風手段、乾燥手段、加熱手段等により行うことができる。これにより、より画質、耐久性の良好な画像の記録物を得ることができる。
2.3.2.インク付着工程
インク付着工程では、水系インク組成物を上述したインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる。本工程についても、シリアル型の記録装置を用いて行ってもよいし、ライン記録方式の記録装置を用いて行ってもよい。さらに、循環機構を備えたインクジェットヘッドを用いてもよい。循環機構を備える場合には、より吐出安定性の良好な記録を行うことができる。
インク付着工程を行う際の記録媒体の表面温度は、45.0℃以下であることが好ましく、40.0℃以下であることがより好ましく、35.0℃以下であることがさらに好ましい。記録媒体の表面温度は、上述した送風機構、乾燥機構等により調節することができる。
インク付着工程においても、記録媒体が加熱されていることが好ましい。記録媒体の加熱は、上述した送風手段、乾燥手段、加熱手段等により行うことができる。これにより、より画質、耐久性の良好な画像の記録物を得ることができる。
2.3.3.その他の工程
本実施形態のインクジェット記録方法は、付着工程を複数含んでもよい。さらに、本実施形態のインクジェット記録方法は、記録媒体に付着した液体を乾燥させる乾燥工程、記録媒体を加熱する工程(後加熱工程)、ラミネート工程等を備えてもよい。
(乾燥工程)
本実施形態の記録方法は、乾燥工程を有してもよい。本実施形態に係る記録方法は、処理液付着工程及び/又はインク付着工程の前又は付着工程の際に記録媒体を乾燥する工程を備えてもよい。乾燥工程は、記録を停止して放置する手段、の他に、乾燥機構を用いて乾燥させる手段により行うことができる。乾燥機構を用いて乾燥させる手段としては、記録媒体に対して常温の送風や温風の送風を行う手段(送風式)、及び、記録媒体に熱を発生する放射線(赤外線等)を照射する手段(輻射式)、記録媒体に接して記録媒体に熱を伝える部材(伝導式)、並びに、これらの手段の2種以上を組み合わせが挙げられる。乾燥工程を有する場合、これらの中でも送風式で行われることがより好ましい。乾燥機構を用いた乾燥工程は、記録媒体に付着した組成物を直ちに乾燥促進するものである。
一方、乾燥機構を用いた乾燥工程を行わないことも好ましい。本実施形態の組成物は、有機溶剤の含有が制限されており、乾燥が早い。このため、乾燥機構を用いた乾燥工程を行わない場合でも、記録媒体に付着した組成物の耐久性を得ることができる。また、乾燥機構を用いた乾燥工程を行わないことで、耐目詰まり性がより優れ、吐出安定性が向上する場合がある。
組成物の付着時の記録媒体の表面温度は45.0℃以下が好ましく、43.0℃以下がより好ましく、40.0℃以下がさらに好ましく、38.0℃以下がさらにより好ましく、35.0℃以下が特に好ましく、32.0℃以下がさらに好ましく,30.0℃以下がより好ましく、28.0℃以下が特に好ましい。一方、下限は、20.0℃以上が好ましく、23.0℃以上がより好ましく、25.0℃以上がさらに好ましく、28.0℃以上が特に好ましく、30.0℃以上がさらに好ましく、32.0℃以上がより好ましい。
さらには、20.0℃以上45.0℃以下がより好ましい。また、27.0℃以上45.0℃以下が好ましく、28.0℃以上43.0℃以下がより好ましく、30.0℃以上40.0℃以下がさらに好ましく、32.0℃以上38.0℃以下が特に好ましい。該温度は付着工程における記録媒体の記録面の組成物の付着を受ける部分の表面温度であり、記録領域における付着工程の最高の温度である。表面温度が上記範囲以下の場合、目詰まり低減や高光沢の点でより好ましい。上記範囲以上の場合、画像の耐久性や、組成物の広がりが良く画質が優れる点でより好ましい。
付着時の記録媒体の表面温度は、乾燥機構を用いた乾燥工程を行うことで比較的高くすることができ、行わないことで比較的低くすることができる。
乾燥工程を行う場合は、上述の付着工程の1つ又は2つ以上と同時に行われることができる。乾燥工程が付着工程と同時に行われる場合には、記録媒体の表面温度は43.0℃以下とすることが好ましく、40.0℃以下とすることがより好ましい。乾燥工程をこのように行う場合には、この工程を一次加熱工程という場合がある。
(後加熱工程)
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記の各付着工程後に、さらに記録媒体を加熱する後加熱工程を備えてもよい。後加熱工程は、二次加熱工程ともいう。後加熱工程は、例えば、適宜の加熱手段を用いて行うことができる。後加熱工程は、例えば、アフターヒーター(上述のインクジェット記録装置1の例では加熱ヒーター5が相当する。)により行われる。また、加熱手段は、インクジェット記録装置に備えられた加熱手段に限らず、他の乾燥手段を用いてもよい。これにより得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができるので、例えば、記録物を早期に使用できる状態にすることができる。
この場合の記録媒体の温度は、特に限定されないが、例えば、記録物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂成分のTg等を鑑みて設定し得る。樹脂粒子やワックスを構成する樹脂成分のTgを考慮する場合には、樹脂粒子を構成する樹脂成分のTgよりも5.0℃以上、好ましくは10.0℃以上に設定するとよい。
後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、30.0℃以上120.0℃以下、好ましくは40.0℃以上100.0℃以下、より好ましくは50.0℃以上95℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上90℃以下である。後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、特に好ましくは80℃以上である。記録媒体の温度がこの程度の範囲であれば、記録物中に含まれる樹脂粒子の皮膜化、平坦化を行うことができるとともに、得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができる。
また、本実施形態の記録方法では、上述の組成物セットを用いており乾燥の速度が早いので、より少ないエネルギーで画像を乾燥できる。
後乾燥工程後の記録物における有機溶剤の残存量、すなわち最終画像における有機溶剤の残存量は、4.0mg/inch以下が好ましく、3.0mg/inch以下がより好ましく、2.0mg/inch以下がさらに好ましく、1.5mg/inch以下が特に好ましい。最終画像における有機溶剤の残存量がこの範囲であれば、さらに耐久性の良好な記録物を得ることができる。
(ラミネート工程)
本実施形態において、組成物セットが付着された記録媒体は、記録後にラミネートされてから、記録物として用いられるものであってもよい。記録媒体にラミネートするラミネート工程は、組成物を付着した記録媒体の記録面に対して、フィルムを貼り合わせる等して保護フィルムを積層して行うことができる。また、特に限定されないが、公知の接着剤を記録物の記録面に付着させ、そこにフィルムを貼り合わせてもよく、接着剤が付着しているフィルムを記録物の記録面に貼り合わせてもよい。他に、フィルムが溶融した溶融樹脂を用いて、記録物の記録面に溶融樹脂を押し出して、記録物の記録面上でフィルムとして成形することもできる。ラミネートに用いるフィルムなどの材料としては、例えば、樹脂製のフィルムを用いることができる。記録物をラミネートすることで、記録物の耐擦性がより良好となり、また記録物に固体物が当たるなど過度の扱われかたをする場合の保護性が優れる点で好ましい。また、記録物とフィルムを貼り合わせた後は、さらに加熱して又は常温で押圧して、充分に密着させることが好ましい。この場合、画像中に有機溶剤が過度に残存していると、フィルム圧着時に有機溶剤の染み出しによる画像の乱れや、画像/フィルム間の有機溶剤の存在によるフィルム浮き・剥がれ等の不具合が発生する場合がある。その点、本実施形態による好ましい有機溶剤量の水系インク組成物を用い、かつ好ましい残存溶剤量の画像でラミネートすれば、上記のような不具合が生じないため好ましい。
一方、本実施形態において、組成物セットが付着された記録媒体は、記録後にラミネートされずに、このまま、記録物として用いられるものであってもよい。
3.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
3.1.水系組成物の調製
水系処理液組成物の組成を表1に示し、白色及び非白色の水系インク組成物の組成を表2に示す。各組成物は、表1、表2に記載の成分を混合し、30分以上撹拌し、濾過することにより調製した。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラーを備えた容器に、材料を順次添加して撹拌、混合した。その後フィルター濾過をしてインク組成物とした。なお組成物の名称は、処理液組成物を「R−」、白色インク組成物を「W−」、非白色インク組成物を「C−」として番号を付した。
Figure 2021155556
Figure 2021155556
表1、表2中の成分は以下の通りである。
・非白色色材:有機顔料分散液C.I.Pigment Blue 15:3、(顔料含有量:15質量%、アニオン性分散樹脂含有量:3.75質量%)表中の含有量は、固形分濃度で記載した。
・白色色材:金属酸化物分散液C.I.Pigment White 6(金属酸化物含有量:20質量%、アニオン性分散樹脂含有量:2質量%)表中の含有量は、固形分濃度で記載した。
・硫酸マグネシウム・七水和物(多価金属塩)
・マロン酸(有機酸)
・ポリアリルアミン樹脂・フリータイプ(商品名:PAA−03、ニットーボーメディカル株式会社製)(カチオン樹脂、20重量%水溶液)表中の含有量は、固形分濃度で記載した。
・スチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン(商品名:JONCRYL1992、BASFジャパン株式会社製)(Tg78℃ 43%分散液)表中の含有量は、固形分濃度で記載した。
・ノプコートPEM−17(ポリエチレンワックスエマルジョン、融点:103℃ 40%分散液)表中の含有量は、固形分濃度で記載した。
・プロピレングリコール:標準沸点189℃
・1,2−ヘキサンジオール:標準沸点224℃
・2−ピロリドン:標準沸点245℃
・グリセリン:標準沸点289℃
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル:標準沸点278℃
・BYK−348:シリコーン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン社製)
・トリイソプロパノールアミン:pH調整剤、標準沸点:305℃
3.2.記録試験
インクジェット記録装置は、セイコーエプソン株式会社製「L4533−AW」を改造してライン記録方式のプリンターとして構成した。インクジェットヘッドは循環機構を備えた循環ヘッドとした。インクジェットヘッドは600個のノズルのノズル列単位で1つのヘッドとし、これを長さ方向にスタガ配置してラインヘッドを構成した。
表3〜表5に記載の使用組成物に従って、インクジェットヘッドに水系処理液組成物、水系インク組成物(白色)、水系インク組成物(非白色)を充填した。
各例において水系処理液組成物を記録媒体に付着させ、一次乾燥工程を表中の条件にして、水系処理液組成物を一次乾燥した。次に、表中「使用組成物」の欄の2段目の組成物である1つめの水系インク組成物を記録媒体に付着させ、一次乾燥条件を同様にして一次乾燥した。
表中「使用組成物」の欄に3段目の記載がある例においては、上記1つめの水系インク組成物の付着、乾燥後に、当該3段目の組成物である2つめの水系インク組成物を記録媒体に付着させ、一次乾燥条件を同様にして一次乾燥した。
表中の使用組成物の付着が全て終了した後に、記録媒体の搬送方向の下流側に設置した二次加熱機構で、二次乾燥工程(後乾燥工程)を表中の条件にして、二次乾燥を行った。
各組成物の付着量は、表に記載の通りである。また、記録媒体は、パイレン(登録商標)フィルム−OT(型番:P2111、厚さ20μm、東洋紡株式会社製)/OPPフィルムを用いた。
表中、インク循環が「有」の例では、記録中のインクジェットヘッドの循環路(排出路)への組成物の戻り量(循環量)を、記録中の最大のインクジェットヘッドからの組成物の吐出量(ml/分)の1.0倍とした。
また、各付着工程後における残存水分量と、二次乾燥工程後、すなわち最終画像における残存有機溶剤量を以下のように測定し、表に記載した。
〔残存水分量〕
残存水分量は、一次乾燥工程の直後に、塗布した組成物層の一部を取り出し、TG/DTA−GC/MS分析システム(株式会社日立ハイテクサイエンス製、TG/DTA装置名:STA7200、GC/MS装置名:SCION SQ Select 436−GC)を用いて測定した。なお、記録を後乾燥工程まで行うのとは別に、これと同じ条件で一次乾燥工程まで行い、一次乾燥工程の直後に記録媒体から測定用試料を採集することで容易に測定することができる。
〔残存有機溶剤量〕
残存有機溶剤量は、記録完了後に、記録物を1時間放置して記録物の温度が常温となってから、塗布した組成物層の一部を取り出し、TG/DTA−GC/MS分析システム(株式会社日立ハイテクサイエンス製、TG/DTA装置名:STA7200、GC/MS装置名:SCION SQ Select 436−GC)を用いて測定した。
3.3.評価方法
3.3.1.耐久性
画像の耐久性を、以下の耐ブロッキング性、耐ラミネート性及び耐擦性を指標として評価した。
(耐ブロッキング性)
表に記載した各組成物を用いて記録した試験パターンを用いた。各例で得られた記録物について、記録物の印刷面に記録媒体の裏面を重ねて500g/cmの荷重を掛けつつ、20〜25℃/40〜60%RH環境下で24時間放置した。放置後、記録物の画像の剥がれ・裏面への移り状況を目視で観察し、下記評価基準により耐久性(耐ブロッキング性)を評価した。得られた結果を表2に示す。
A:記録パターンの画像に剥がれが認められず、記録物を重ねても画像の移りが認められない。
B:記録パターンの画像に剥がれが認められないが、記録物を重ねた場合に画像の移りがわずかに認められる。
C:記録パターンの画像に剥がれが認められ、記録物を重ねた場合に画像の移りが認められる。
D:記録パターンの画像が大きく剥がれ、記録物を重ねた場合に画像の移りが認められる。
(耐ラミネート性)
上記耐ブロッキング性と同様の記録パターンを用いた。各例で得られた記録物について、記録面にラミネートフィルムであるGIL−1148(商品名、リンテック株式会社製)をラミネートした。その後、下記評価基準により耐久性(耐ラミネート性)を評価した。なお、ラミネート後、常温で1日放置後に評価した。以下の基準で評価し、結果を表に示す。
A:記録パターンの画像に滲みが認められず、ラミネートフィルムの浮きも認められない。
B:記録パターンの画像に滲みが若干認められるが、ラミネートフィルムの浮きは認められない。
C:記録パターンの画像に滲みが認められ、ラミネートフィルムの浮きも認められる。
D:記録パターンの画像に滲み及びラミネートフィルムの浮きが著しい。
(耐擦性)
上記記録試験で得た記録物について、学振型摩擦堅牢度試験機AB−301(テスター産業社製の商品名)に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子で、荷重200gをかけて20往復擦った。そして、被記録媒体の記録物の剥がれを目視で観察し、下記評価基準により耐擦性を評価した。得られた結果を表に示す。
A:画像に擦り跡が認められず、白綿布へのインク組成物の付着も認められない。
B:画像に擦り跡又は白綿布へのインク組成物の付着がわずかに認められる。
C:画像に擦り跡及び白綿布へのインク組成物の付着が認められる。
D:画像が剥がれて、白綿布へのインク組成物の付着が著しい。
3.3.2.画質
画像の画質を、以下のベタムラ及び滲みを指標として評価した。
(ベタムラ)
上記記録試験と同様の方法で、ベタパターンの画像で記録物を得て、下記評価基準により画質(ベタムラ)を目視で評価した。得られた結果を表に示す。
A:ベタパターンの画像が均一である。
B:ベタパターンの画像に、ごく一部ムラが認められるが、実用上問題ない水準である。
C:ベタパターンの画像に、一部ムラが認められる。
D:ベタパターンの画像に、ムラが目立つ。
(滲み)
上記記録試験と同様の方法で、記録を行った。ただし、記録パターンは、主走査方向に延びる1本の線とした。記録物について、ルーペで観察し、下記評価基準により画質(滲み)を評価した。得られた結果を表に示す。
A:罫線幅が均一で罫線間の繋がりがない
B:罫線幅が不均一の部分があるが、罫線間のつながりはない。
C:罫線幅が不均一で罫線間に繋がりが認められる。
D:罫線幅が著しく不均一で罫線間の隙間がほとんど認められない。
3.3.3.吐出安定性
表に記載した水系処理液組成物、水系インク組成物(白色、非白色)の各組成物の連続吐出安定性を以下のように評価した。
まず、表に記載した水系処理液組成物、水系インク組成物(白色、非白色)を「3.2.記録試験」で用いたプリンターのヘッド内に充填し、全ノズルから正常に吐出できることを確認したうえで、30〜35℃/40〜60%RH/ヘッド周囲の風速1〜2m/sec環境下でヘッドをキャップから外した状態で全ノズルから各インク組成物を吐出させずに1分間放置した。その後各組成物の全ノズルの吐出を行ない、抜け・飛行曲がりの状態を確認した。その結果を下記の評価水準に従い判定し、結果を表に記入した。
A:1分間未吐出後の吐出で抜け・曲がりノズルが1個もない
B:1分間未吐出後の吐出で抜け・曲がりが3個以内ある
C:1分間未吐出後の吐出で抜け・曲がりが4〜5個ある
D:1分間未吐出後の吐出で抜け・曲がりが6個以上ある
Figure 2021155556
Figure 2021155556
Figure 2021155556
3.4.評価結果
水系インク組成物及び水系処理液組成物が、記録媒体にインクジェット法により付着させて用いられ、水系インク組成物が、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、水系処理液組成物が、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない、各実施例の組成物セットでは、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性が良好であった。
これに対して、水系インク組成物及び水系処理液組成物のいずれかが有機溶剤を10.0質量%を超えて含有する比較例1〜比較例5では、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性が不十分であった。
インク循環を行わなかった実施例20では、画質及び吐出安定性が不十分となったが、これは、吐出安定性の低下(飛行曲がりや不吐出)により画質が低下したものと考えられる。したがって実施例20のベタムラの評価結果は、他の例、例えば実施例16のベタムラの評価結果と同様となっているが、その評価となるメカニズムは異なるのかもしれない。
参考例では、水系処理液組成物を、インクジェット法でなく、画像以外の部分にも全体に塗布したため、耐ブロッキング性、及び、耐ラミネート性が劣ったと推測する。
上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
組成物セットの一態様は、
水系インク組成物と、水系処理液組成物と、を備える組成物セットであって、
前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着させて用いられ、
前記水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、
前記水系処理液組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。
この組成物セットによれば、インクジェット法によって、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性の良好な画像を形成することができる。すなわち、各組成物に含まれる有機溶剤の量が少なく、形成される画像に有機溶剤が残存しにくく、乾燥が容易であるので、耐久性の良好な画像を形成することができる。
前記組成物セットの態様において、
前記水系インク組成物は、前記色材として非白色色材を含有する非白色インクであり、
白色色材を含有する白色インクであり、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない水系インク組成物をさらに備えてもよい。
この組成物セットによれば、インクジェット法によって、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性の良好な画像を形成することができる。すなわち、各組成物に含まれる有機溶剤の量が少なく、形成される画像に有機溶剤が残存しにくく、乾燥が容易であるので、耐久性の良好な画像を形成することができる。
前記組成物セットの態様において、
前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、いずれも標準沸点が160.0℃以上280.0℃以下の有機溶剤を含有してもよい。
この組成物セットによれば、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性のさらに良好な画像を形成することができる。
前記組成物セットの態様において、
前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、いずれも標準沸点が280.0℃超の有機溶剤を1.0質量%を超えて含有しなくてもよい。
この組成物セットによれば、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性のさらに良好な画像を形成することができる。
前記組成物セットの態様において、
前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、いずれも有機溶剤の含有量が1.0質量%以上9.0質量%以下であってもよい。
この組成物セットによれば、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性のさらに良好な画像を形成することができる。
前記組成物セットの態様において、
前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、それぞれ独立して、有機溶剤として、炭素数5以上のアルカンジオール類の1種以上を含有してもよい。
この組成物セットによれば、さらにムラや滲みの少ない良好な画質の画像を形成することができる。
前記組成物セットの態様において、
前記組成物セットを用いて前記記録媒体に記録した記録物は、ラミネート加工されて用いられてもよい。
この組成物セットによれば、ラミネートされ、耐久性の良好な記録物を得ることができる。
前記組成物セットの態様において、
前記水系処理液組成物に含有される凝集剤が、多価金属塩、有機酸及びカチオンポリマーから選択されてもよい。
この組成物セットによれば、さらに良好な画質の画像を形成することができる。
記録方法の一態様は、
インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置により、記録媒体へ記録を行う記録方法であって、
水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して、前記記録媒体に付着させるインク付着工程と、
水系処理液組成物をインクジェットヘッドから吐出して、前記記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
を備え、
前記水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、
前記水系処理液組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない。
この記録方法によれば、インクジェット法によって、耐ブロッキング性及び耐ラミネート性の良好な画像を形成することができる。すなわち、各組成物に含まれる有機溶剤の量が少なく、形成される画像に有機溶剤が残存しにくく、乾燥が容易であるので、耐久性の良好な画像を形成することができる。
前記記録方法の態様において、
前記水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドは、循環機構を備え、
前記水系処理液組成物を吐出するインクジェットヘッドは、循環機構を備えてもよい。
この記録方法によれば、より吐出安定性の良好な記録を行うことができる。
前記記録方法の態様において、
前記インク付着工程を行う際の前記記録媒体の表面温度は、40.0℃以下であってもよい。
この記録方法によれば、より吐出安定性の良好な記録を行うことができる。
前記記録方法の態様において、
前記インク付着工程及び前記処理液付着工程では、前記記録媒体が加熱されていてもよい。
この記録方法によれば、より画質、耐久性の良好な画像の記録物を得ることができる。
前記記録方法の態様において、
前記処理液付着工程及び前記インク付着工程の後に、前記記録媒体を加熱する後乾燥工程を備えてもよい。
この記録方法によれば、より速やかに記録物を乾燥させることができる。
前記記録方法の態様において、
前記後乾燥工程後の記録物における有機溶剤残存量は、2.0mg/inch以下であってもよい。
この記録方法によれば、さらに耐久性の良好な記録物を得ることができる。
前記記録方法の態様において、
前記インクジェット記録装置は、ライン記録方式の装置であってもよい。
この記録方法によれば、より高速な記録が可能であり、画像の耐久性の良好な記録物をより短時間で得ることができる。
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、2a…ノズル面、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、9…キャリッジ、11…プラテン、12…カートリッジ、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段、28…配線基板、30…流路形成部、32…第1流路基板、34…第2流路基板、42…振動部、44…圧電素子、46…保護部材、48…筐体部、482…導入口、52…ノズルプレート、54…吸振体、61…供給路、63…連通路、65…循環液室、69…隔壁部、n1…第1区間、n2…第2区間、72…排出路、101…インターフェース部、102…CPU、103…メモリー、104…ユニット制御回路、111…搬送ユニット、112…キャリッジユニット、113…ヘッドユニット、114…乾燥ユニット、121…検出器群、130…コンピューター、200…ライン記録方式記録装置の部分、210…記録媒体搬送手段、211…搬送ローラー、220…処理液付着手段、221…インクジェットヘッド、230…組成物付着手段、231…インクジェットヘッド、240…後加熱手段、250,260…一次加熱手段、251,261…送風機、300…循環機構の外部部分を含めた全体、301…サブタンク、306…分岐継手、308…圧力調整弁、312…加圧ポンプ、314…脱気モジュール、316…統合継手、318…開閉バルブ、320…往路、330…復路、340…開弁アクチュエーター、CONT…制御部、MS…主走査方向、SS…副走査方向、M…記録媒体、IC…インクコンテナ

Claims (15)

  1. 水系インク組成物と、水系処理液組成物と、を備える組成物セットであって、
    前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着させて用いられ、
    前記水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、
    前記水系処理液組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない、組成物セット。
  2. 請求項1において、
    前記水系インク組成物は、前記色材として非白色色材を含有する非白色インクであり、
    白色色材を含有する白色インクであり、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない水系インク組成物をさらに備えた、組成物セット。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、いずれも標準沸点が160.0℃以上280.0℃以下の有機溶剤を含有する、組成物セット。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、いずれも標準沸点が280.0℃超の有機溶剤を1.0質量%を超えて含有しない、組成物セット。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、いずれも有機溶剤の含有量が1.0質量%以上9.0質量%以下である、組成物セット。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記水系インク組成物及び前記水系処理液組成物は、それぞれ独立して、有機溶剤として、炭素数5以上のアルカンジオール類の1種以上を含有する、組成物セット。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
    前記組成物セットを用いて前記記録媒体に記録した記録物は、ラミネート加工されて用いられる、組成物セット。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
    前記水系処理液組成物に含有される凝集剤が、多価金属塩、有機酸及びカチオンポリマーから選択される、組成物セット。
  9. インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置により、記録媒体へ記録を行う記録方法であって、
    水系インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して、前記記録媒体に付着させるインク付着工程と、
    水系処理液組成物をインクジェットヘッドから吐出して、前記記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
    を備え、
    前記水系インク組成物は、色材を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有せず、
    前記水系処理液組成物は、凝集剤を含有し、有機溶剤を10.0質量%を超えて含有しない、記録方法。
  10. 請求項9において、
    前記水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドは、循環機構を備え、
    前記水系処理液組成物を吐出するインクジェットヘッドは、循環機構を備える、記録方法。
  11. 請求項9又は請求項10において、
    前記インク付着工程を行う際の前記記録媒体の表面温度は、40.0℃以下である、記録方法。
  12. 請求項9ないし請求項11のいずれか一項において、
    前記インク付着工程及び前記処理液付着工程では、前記記録媒体が加熱されている、記録方法。
  13. 請求項9ないし請求項12のいずれか一項において、
    前記処理液付着工程及び前記インク付着工程の後に、前記記録媒体を加熱する後乾燥工程を備える、記録方法。
  14. 請求項13において、
    前記後乾燥工程後の記録物における有機溶剤残存量は、2.0mg/inch以下である、記録方法。
  15. 請求項9ないし請求項14において、
    前記インクジェット記録装置は、ライン記録方式の装置である、記録方法。
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