JP2021024509A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ロードノイズを低減しながら、湿熱条件下における耐久性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供する。【解決手段】トレッド部1におけるベルト層7の外周側に、タイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回された有機繊維コードからなるベルトカバー層8を設け、この有機繊維コードとして100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率が3.5cN/(tex・%)〜5.5cN/(tex・%)の範囲にあるポリエチレンテレフタレート繊維コードを使用し、この有機繊維コードを被覆するコートゴムとして、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で測定したtanδが0.03以上0.15未満であるゴムを用いる。【選択図】図1
Description
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維コードをベルトカバー層に用いた空気入りタイヤに関する。
乗用車用又は小型トラック用の空気入りタイヤは、一般的に、一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、ベルト層の外周側にタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回された複数本の有機繊維コードを含むベルトカバー層が配置された構造を有する。この構造において、ベルトカバー層は高速耐久性の改善に寄与すると共に、中周波ロードノイズの低減にも寄与する。
従来、ベルトカバー層に使用される有機繊維コードはナイロン繊維コードが主流であるが、ナイロン繊維コードに比べて高弾性であり、かつ安価なポリエチレンテレフタレート繊維コード(以下、PET繊維コードと言う)を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、PET繊維コードは、従来のナイロン繊維コードと比べると発熱しやすい傾向があるという問題があった。そのため、PET繊維コードを用いてロードノイズの低減を図るにあたって、発熱を抑制し、湿熱条件下における耐久性を向上する対策が求められている。
本発明の目的は、PET繊維コードをベルトカバー層に用いてロードノイズを低減するにあたって、湿熱条件下における耐久性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルトカバー層とを有する空気入りタイヤにおいて、前記ベルトカバー層はコートゴムで被覆された有機繊維コードをタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回することで構成され、前記有機繊維コードは100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率が3.5cN/(tex・%)〜5.5cN/(tex・%)の範囲にあるポリエチレンテレフタレート繊維コードであり、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で測定した前記コートゴムのtanδが0.03以上0.15未満であることを特徴とする。
本発明者は、PET繊維コードからなるベルトカバー層を備えた空気入りタイヤについて鋭意研究した結果、PET繊維コードのディップ処理を適正化し、100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率を所定の範囲に設定することにより、ベルトカバー層として好適なコードの耐疲労性とタガ効果が得られることを知見し、本発明に至った。即ち、本発明では、ベルトカバー層を構成する有機繊維コードとして、100℃での2.0cN/dtex負荷時の弾性率が3.5cN/(tex・%)〜5.5cN/(tex・%)の範囲にあるPET繊維コードを使用することにより、空気入りタイヤの耐久性を良好に維持しながら、ロードノイズを効果的に低減することができる。
更に、このPET繊維コードを被覆するコートゴムとして、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で測定したtanδが0.03以上0.15未満のものを用いているので、発熱を抑制して、タイヤの耐久性や転がり抵抗を改善することができる。
本発明においては、コートゴムを構成するゴム組成物が、ゴム成分として天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選ばれる1種以上を含み、ゴム成分中の天然ゴムの配合量が20質量%〜65質量%であり、ゴム成分100質量部に対して窒素吸着比表面積N2 SAが25m2 /g〜50m2 /gであるカーボンブラックが30質量部〜80質量部配合されたものであることが好ましい。このような配合からなるゴム組成物を用いることで、コートゴムの物性がより良好になり、ロードノイズの低減とタイヤの耐久性の向上を両立するには有利になる。
本発明においては、有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力が0.9cN/dtex以上であることが好ましい。これにより、発熱を抑制してタイヤの耐久性を向上するには有利になる。
本発明においては、タイヤ赤道を中心とした接地幅の70%の領域をセンター領域とし、そのタイヤ幅方向外側の領域をそれぞれショルダー領域としたとき、センター領域に配置された有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Ceとショルダー領域に配置された有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Shとの比Ce/Shが1.0以上2.0以下であることが好ましい。このようにタイヤ幅方向の部位ごとの張力を設定することで、発熱を抑制し、タイヤ耐久性を向上することができる。
尚、本発明において、「接地幅」とは、タイヤ幅方向両側の接地端の間の距離である。「接地端」とは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに形成される接地領域のタイヤ軸方向の両端部である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道、符号Eは接地端、符号Wは接地幅を示す。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
図示の例では、トレッド部1の外表面にタイヤ周方向に延びる複数本(図示の例では4本)の主溝が形成されているが、主溝の本数は特に限定されない。また、主溝の他にタイヤ幅方向に延びるラグ溝を含む各種の溝やサイプを形成することもできる。
左右一対のビード部3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含むカーカス層4が装架されている。各ビード部には、ビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面略三角形状のビードフィラー6が配置されている。カーカス層4は、ビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。これにより、ビードコア5およびビードフィラー6はカーカス層4の本体部(トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分)と折り返し部(各ビード部3においてビードコア5の廻りに折り返されて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分)とにより包み込まれている。カーカス層4の補強コードとしては、例えばポリエステルコードが好ましく使用される。
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、例えばスチールコードが好ましく使用される。
更に、ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上とロードノイズの低減を目的として、ベルトカバー層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。本発明では、ベルトカバー層8は、ベルト層7の全域を覆うフルカバー層8aを必ず含み、任意でベルト層7の両端部を局所的に覆う一対のエッジカバー層8bを含む構成にすることができる(図示の例では、フルカバー層8aおよびエッジカバー層8bの両方を含む)。ベルトカバー層8は、少なくとも1本の有機繊維コードを引き揃えてコートゴムで被覆したストリップ材をタイヤ周方向に螺旋状に巻回して構成するとよく、特にジョイントレス構造とすることが望ましい。
本発明では、ベルトカバー層8を構成する有機繊維コードとして、100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率が3.5cN/(tex・%)〜5.5cN/(tex・%)の範囲にあるポリエチレンテレフタレート繊維コード(PET繊維コード)が使用される。このようにベルトカバー層8を構成する有機繊維コードとして、特定のPET繊維コードを用いることで、空気入りタイヤの耐久性を良好に維持しながら、ロードノイズを効果的に低減することができる。このPET繊維コードの100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率が3.5cN/(tex・%)未満であると、中周波ロードノイズを十分に低減することができない。PET繊維コードの100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率が5.5cN/(tex・%)を超えると、コードの耐疲労性が低下してタイヤの耐久性が低下する。尚、本発明において、100℃での2.0cN/dtex負荷時の弾性率[N/(tex・%)]は、JIS−L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、荷重‐伸び曲線の荷重2.0cN/dtexに対応する点における接線の傾きを1tex当たりの値に換算することで算出される。
更に、この有機繊維コード(PET繊維コード)は、ベルトカバー層8として用いるにあたって、タイヤ内におけるコード張力が好ましくは0.9cN/dtex以上、より好ましくは1.5cN/dtex〜2.0cN/dtexであるとよい。このようにタイヤ内におけるコード張力を設定することで、発熱を抑制し、タイヤ耐久性を向上することができる。この有機繊維コード(PET繊維コード)のタイヤ内におけるコード張力が0.9cN/dtex未満であると、tanδのピークが上昇してしまい、タイヤの耐久性を向上する効果が充分に得られない。尚、ベルトカバー層8を構成する有機繊維コード(PET繊維コード)のタイヤ内におけるコード張力は、ベルトカバー層を構成するストリップ材の末端よりも2周以上タイヤ幅方向内側において測定するものとする
特に、図1に示すように、タイヤ赤道CLを中心とした接地幅Wの70%の領域をセンター領域Aとし、そのタイヤ幅方向外側の領域をそれぞれショルダー領域Bとしたとき、センター領域Aに配置された有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Ceとショルダー領域Bに配置された有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Shとの比Ce/Shが1.0以上2.0以下であることが好ましい。このようにタイヤ幅方向の部位ごとの張力の関係を設定することで、発熱を抑制し、タイヤ耐久性を向上することができる。比Ce/Shが2.0を超えると、ショルダー領域のコード張力が低くなり過ぎる場合にコードの発熱が増加してコードメルトが発生して高速耐久性が低下する。比Ce/Shが1.0未満であると、ショルダー領域のコード張力が高くなり過ぎる場合にショルダー部の剛性が上がり過ぎてしまい、接地形状が丸くなり、走行時にベルト層7とベルトカバー層8との間のセパレーションが進行し易く、タイヤ耐久性が低下する。張力Ce,Shは、前述の関係を満たしていれば特に限定されないが、張力Ceは例えば1.2cN/dtex〜2.5cN/dtex、張力Shは例えば0.9cN/dtex〜2.0cN/dtexに設定することができる。このような張力Ce,Shの関係は、例えば、タイヤ成形時に曲率ドラム(製造するタイヤのセンター部に対応する部位よりも製造するタイヤのショルダー部に対応する部位で周長が小さい曲率をもったドラム)を用いたり、ベルトカバー材の巻き付け張力を制御することで達成することができる。尚、張力Ceは最外側のベルト層7のセンター部に位置する5本の繊維コードにおいて測定した値であり、張力Shはベルトカバー層を構成するストリップ材の末端よりも2周以上タイヤ幅方向内側かつ最外側のベルト層7のショルダー部に位置する5本の繊維コードにおいて測定した値である。
ベルトカバー層8を構成する有機繊維コードとして用いるPET繊維コードは、更に、100℃における熱収縮応力が0.6cN/tex以上であることが好ましい。このように100℃における熱収縮応力を設定することで、より効果的に空気入りラジアルタイヤの耐久性を良好に維持しながら、ロードノイズを効果的に低減することができる。PET繊維コードの100℃における熱収縮応力が0.6cN/texよりも小さいと走行時のタガ効果を充分に向上することができず、高速耐久性を十分に維持することが難しくなる。PET繊維コードの100℃における熱収縮応力の上限値は特に限定されないが、例えば2.0cN/texにするとよい。尚、本発明において、100℃での熱収縮応力(cN/tex)は、JIS‐L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、試料長さ500mm、加熱条件100℃×5分の条件にて加熱したときに測定される試料コードの熱収縮応力である。
上述のような物性を有するPET繊維コードを得るために、例えばディップ処理を適正化すると良い。つまり、カレンダー工程に先駆けて、PET繊維コードには接着剤のディップ処理が行われるが、2浴処理後のノルマライズ工程において、雰囲気温度を210℃〜250℃の範囲内に設定し、コード張力を2.2×10-2N/tex〜6.7×10-2N/texの範囲に設定することが好ましい。これにより、PET繊維コードに上述のような所望の物性を付与することができる。ノルマライズ工程におけるコード張力が2.2×10-2N/texよりも小さいとコード弾性率が低くなり、中周波ロードノイズを十分に低減することができず、逆に6.7×10-2N/texよりも大きいとコード弾性率が高くなり、コードの耐疲労性が低下する。
トレッド部1において、上述のタイヤ構成部材(カーカス層4、ベルト層7、ベルトカバー層8)の外周側にはトレッドゴム層10が配置される。特に、本発明では、トレッドゴム層10は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッド層11およびアンダートレッド層12)がタイヤ径方向に積層した構造を有する。尚、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層20が配置され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層30が配置されている。
上述のベルトカバー層8を構成する有機繊維コード(PET繊維コード)は、コートゴム(以下、ベルトカバーコートゴムという)によって被覆されている。このベルトカバーコートゴムとしては、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で測定したtanδが0.03以上0.15未満、好ましくは0.08以上0.13以下であるゴムを用いる。このように特定の物性を有するベルトカバーコートゴムを採用することで、コートゴムの発熱を抑制することができ、上述の有機繊維コード(PET繊維コード)と組み合わせた際には、タイヤの耐久性や転がり抵抗を効果的に改善することができる。上述のtanδが0.15以上であると発熱が抑制できず、タイヤの耐久性や転がり抵抗を改善する効果が得られない。
ベルトカバーコートゴムを構成するゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選ばれる1種以上を含むとよい。特に、天然ゴムをゴム成分中に20質量%〜65質量%、好ましくは40質量%〜65質量%配合し、残りのゴム成分としてスチレンブタジエンゴムおよび/またはブタジエンゴムを組み合わせて用いることが好ましい。より好ましくは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムの3種を併用するとよく、この場合、天然ゴムの配合量を30質量%〜60質量%、スチレンブタジエンゴムの配合量を20質量%〜45質量%、ブタジエンゴムの配合量を5質量%〜30質量%にするとよい。いずれの場合も、天然ゴムの配合量が上述の範囲から外れると、本発明の所望の効果が充分に得られない。尚、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムとしては、空気入りタイヤ(特に、ベルトカバーコートゴム)に通常用いられるものを使用することができる。
本発明において、ベルトカバーコートゴムを構成するゴム組成物には、更にカーボンブラックを配合することができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して好ましくは30質量部〜80質量部、より好ましくは40質量部〜70質量部である。このようにカーボンブラックを配合することで、硬度や強度を高めることができ、ベルトカバーコートゴムに好適に用いることが可能になる。カーボンブラックの配合量が30質量部未満であると、ベルトカバーコートゴムの硬度や強度を充分に確保することが難しくなり、タイヤの耐久性が低下する虞がある。カーボンブラックの配合量が80質量部を超えると、発熱を充分に抑制することができず、タイヤの耐久性や転がり抵抗が悪化する虞がある。
上記のようにカーボンブラックを配合する場合、カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAは、好ましくは25m2 /g〜50m2 /g、より好ましくは30m2 /g〜45m2 /gである。このように特定のカーボンブラックを用いることで、ベルトカバーコートゴムの硬度や強度を適度に高めることができる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAが25m2 /g未満であると、ベルトカバーコートゴムの硬度や強度を充分に確保することが難しくなり、タイヤの耐久性が低下する虞がある。カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAが50m2 /gを超えると、発熱を充分に抑制することができず、タイヤの耐久性や転がり抵抗が悪化する虞がある。尚、本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAは、JIS K6217‐7に準拠して測定される。
本発明において、ベルトカバーコートゴムを構成するゴム組成物には、更に硫黄を配合することができる。硫黄の配合量は、ゴム成分100質量部に対して好ましくは2.0質量部〜3.5質量部、より好ましくは2.3質量部〜3.2質量部である。このように硫黄を配合することで、ベルトカバーコートゴムの硬度を適度に高めることができる。硫黄の配合量が2.0質量部未満であると、ベルトカバーコートゴムの硬度を十分に確保することが難しくなる。硫黄の配合量が3.5質量部を超えると、ベルトカバーコートゴムの伸びが低下する虞がある。
本発明において、ベルトカバーコートゴムを構成するゴム組成物には、更に加硫促進剤を配合することができる。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して好ましくは0.5質量部〜2.0質量部、より好ましくは0.7質量部〜1.5質量部である。このように加硫促進剤を配合することで、ベルトカバーコートゴムの硬度を適度に高めることができる。加硫促進剤の配合量が0.5質量部未満であると、ベルトカバーコートゴムの硬度を十分に確保することが難しくなる。加硫促進剤の配合量が2.0質量部を超えると、ベルトカバーコートゴムの伸びが低下する虞がある。
ベルトカバーコートゴムは、JIS K6394:2007に準拠して、静歪10%、動歪±2%、周波数20Hz、温度100℃の条件で測定した貯蔵弾性率E1(100℃)の範囲が、好ましくは3.0MPa以上6.0MPa以下、より好ましくは3.5MPa以上5.5MPa以下であるとよい。このように貯蔵弾性率を設定することで、高速耐久性を向上することができる。貯蔵弾性率E1(100℃)が上述の範囲から外れると、高速耐久性を良好に発揮することが難しくなる。
タイヤサイズが225/60R18であり、図1に例示する基本構造を有し、ベルトカバー層を構成する有機繊維コード(PET繊維コード)について、100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率[cN/(tex・%)]、タイヤ内におけるコード張力[cN/dtex]、センター領域に配置された有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Ceとショルダー領域に配置された有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Shとの比Ce/Shを表1〜2に記載されるように設定し、且つ、この有機繊維コード(PET繊維コード)を被覆するコートゴム(ベルトカバーコートゴム)について、コートゴムを構成するゴム組成物の配合、tanδ(60℃)を表1〜2のように異ならせた従来例1、比較例1〜5、実施例1〜12のタイヤを製作した。
いずれの例においても、ベルトカバー層は、1本の有機繊維コード(PET繊維コード)を引き揃えてコートゴムで被覆してなるストリップをタイヤ周方向に螺旋状に巻回したジョイントレス構造を有している。ストリップにおけるコード打ち込み密度は50本/50mmである。また、有機繊維コード(PET繊維コード)はそれぞれ1100dtex/2の構造を有する。
各例において、100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率[cN/(tex・%)]は、JIS−L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、荷重‐伸び曲線の荷重2.0cN/dtexに対応する点における接線の傾きを1tex当たりの値に換算することで算出した。また、タイヤ内におけるコード張力[cN/dtex]は、トレッド部1からトレッドゴムを取り除いてベルトカバー層を露出させ、ベルトカバー層の所定の長さ範囲から繊維コードを引き剥がし、その採取後の長さを測定し、採取前の長さに対する収縮量を求めた。特に、最外側のベルト層のセンター部に位置する5本の繊維コードについて収縮量の平均値を求めた。そして、その収縮量(%)に対応する荷重をS−S曲線から求め、1dtex当たりの値に換算することにより測定した。尚、張力Ceは最外側のベルト層7のセンター部に位置する5本の繊維コードにおいて測定し、張力Shは外側のベルト層7のショルダー部に位置する5本の繊維コードにおいて測定した。
各例について、ベルトカバーコートゴムのtanδ(60℃)は、各例のゴム組成物を所定形状の金型を用いて180℃で、5分間加硫し、2mm厚のシート状の加硫ゴム試験片を作成し、これを用いて以下の方法で測定した。
tanδ(60℃)
各例の加硫ゴム試験片を用いて、JIS K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメータ(東洋精機製作所社製)を用いて、伸長変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδを測定した。
各例の加硫ゴム試験片を用いて、JIS K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメータ(東洋精機製作所社製)を用いて、伸長変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδを測定した。
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、ロードノイズ、湿熱耐久性、ベルトカバーセパレーションの有無を評価し、その結果を表1,2に併せて示した。
ロードノイズ
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付けて、排気量2.5Lの乗用車(前輪駆動車)の前後車輪として装着し、空気圧を230kPaとし、運転席の窓の内側に集音マイクを設置し、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度50km/hの条件で走行させた際の周波数315Hz付近の音圧レベルを測定した。評価結果としては、従来例1を基準とし、その基準に対する変化量(dB)を示した。
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付けて、排気量2.5Lの乗用車(前輪駆動車)の前後車輪として装着し、空気圧を230kPaとし、運転席の窓の内側に集音マイクを設置し、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度50km/hの条件で走行させた際の周波数315Hz付近の音圧レベルを測定した。評価結果としては、従来例1を基準とし、その基準に対する変化量(dB)を示した。
湿熱耐久性
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付け、内圧230kPaで酸素を封入した状態で温度70℃、湿度95%に保持されたチャンバー内に30日間保管した。このように前処理された試験タイヤを、表面が平滑な鋼製で直径1707mmのドラムを備えたドラム試験機に装着し、周辺温度を38±3℃に制御し、速度120km/hから24時間に50km/hずつ加速し、タイヤに故障が生じるまでの走行距離を計測した。評価結果は、走行距離の測定値を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、故障が生じるまでの走行距離が長く、湿熱耐久性が優れていることを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付け、内圧230kPaで酸素を封入した状態で温度70℃、湿度95%に保持されたチャンバー内に30日間保管した。このように前処理された試験タイヤを、表面が平滑な鋼製で直径1707mmのドラムを備えたドラム試験機に装着し、周辺温度を38±3℃に制御し、速度120km/hから24時間に50km/hずつ加速し、タイヤに故障が生じるまでの走行距離を計測した。評価結果は、走行距離の測定値を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、故障が生じるまでの走行距離が長く、湿熱耐久性が優れていることを意味する。
ベルトカバーセパレーションの有無
上述の湿熱耐久性の試験を行った後に、各試験タイヤを解体してベルト補強層におけるセパレーション(ベルトカバーセパレーション)の有無を目視で確認した。評価結果は、ベルトカバーセパレーションが生じている場合を「有」、ベルトカバーセパレーションが生じていない場合を「無」で示した。
上述の湿熱耐久性の試験を行った後に、各試験タイヤを解体してベルト補強層におけるセパレーション(ベルトカバーセパレーション)の有無を目視で確認した。評価結果は、ベルトカバーセパレーションが生じている場合を「有」、ベルトカバーセパレーションが生じていない場合を「無」で示した。
表1〜2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、STR20
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1220
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 SBR1502
・CB1:カーボンブラック(ISAF)、キャボットジャパン社製 ショウブラックN234(窒素吸着比表面積N2 SA:119m2 /g)
・CB2:カーボンブラック(GPF)、東海カーボン社製シーストV(窒素吸着比表面積N2 SA:35m2 /g)
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日本油脂社製 ビーズステアリン酸NY
・老化防止剤:大内新興化学工業社製 ノクラック224
・アロマオイル:昭和シェル石油社製 エキストラクト4号
・加硫促進剤:三新化学工業社製 NS‐G
・硫黄:四国化成工業社製 ミュークロンOT‐20(硫黄含有量:80質量%)
・NR:天然ゴム、STR20
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1220
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 SBR1502
・CB1:カーボンブラック(ISAF)、キャボットジャパン社製 ショウブラックN234(窒素吸着比表面積N2 SA:119m2 /g)
・CB2:カーボンブラック(GPF)、東海カーボン社製シーストV(窒素吸着比表面積N2 SA:35m2 /g)
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日本油脂社製 ビーズステアリン酸NY
・老化防止剤:大内新興化学工業社製 ノクラック224
・アロマオイル:昭和シェル石油社製 エキストラクト4号
・加硫促進剤:三新化学工業社製 NS‐G
・硫黄:四国化成工業社製 ミュークロンOT‐20(硫黄含有量:80質量%)
表1,2から判るように、実施例1〜12のタイヤは、基準となる従来例1との対比において、ロードノイズを低減し、且つ、湿熱耐久性を向上した。一方、比較例1,2のタイヤは、ベルトカバー層を構成するポリエチレンテレフタレート繊維コードの100℃での2.0cN/dtex負荷時の弾性率が高くいため、湿熱耐久性が悪化した。比較例3のタイヤは、ベルトカバー層を構成するポリエチレンテレフタレート繊維コードの100℃での2.0cN/dtex負荷時の弾性率が低いため、ロードノイズを充分に低減することができず、また、湿熱耐久性が悪化した。比較例4,5のタイヤは、コートゴムのtanδ(60℃)が大きいため、湿熱耐久性が悪化した。尚、比較例1〜5のいずれにおいてもベルトカバーセパレーションが生じていた。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
8a フルカバー層
8b エッジカバー層
10 トレッドゴム層
11 キャップトレッド層
12 アンダートレッド層
20 サイドゴム層
30 リムクッションゴム層
CL タイヤ赤道
E 接地端
A センター領域
B ショルダー領域
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
8a フルカバー層
8b エッジカバー層
10 トレッドゴム層
11 キャップトレッド層
12 アンダートレッド層
20 サイドゴム層
30 リムクッションゴム層
CL タイヤ赤道
E 接地端
A センター領域
B ショルダー領域
Claims (4)
- タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルトカバー層とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記ベルトカバー層はコートゴムで被覆された有機繊維コードをタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回することで構成され、前記有機繊維コードは100℃における2.0cN/dtex負荷時の弾性率が3.5cN/(tex・%)〜5.5cN/(tex・%)の範囲にあるポリエチレンテレフタレート繊維コードであり、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で測定した前記コートゴムのtanδが0.03以上0.15未満であることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記コートゴムを構成するゴム組成物が、ゴム成分として天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選ばれる1種以上を含み、前記ゴム成分中の天然ゴムの配合量が20質量%〜65質量%であり、前記ゴム成分100質量部に対して窒素吸着比表面積N2 SAが25m2 /g〜50m2 /gであるカーボンブラックが30質量部〜80質量部配合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力が0.9cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ赤道を中心とした接地幅の70%の領域をセンター領域とし、そのタイヤ幅方向外側の領域をそれぞれショルダー領域としたとき、前記センター領域に配置された前記有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Ceと前記ショルダー領域に配置された前記有機繊維コードのタイヤ内におけるコード張力Shとの比Ce/Shが1.0以上2.0以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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JP2019146321A JP2021024509A (ja) | 2019-08-08 | 2019-08-08 | 空気入りタイヤ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7287443B1 (ja) | 2021-12-17 | 2023-06-06 | 横浜ゴム株式会社 | 空気入りタイヤ |
JP7287444B1 (ja) | 2021-12-17 | 2023-06-06 | 横浜ゴム株式会社 | 空気入りタイヤ |
WO2024070779A1 (ja) * | 2022-09-29 | 2024-04-04 | 株式会社ブリヂストン | Pet繊維-ゴム複合体及びタイヤ |
WO2024180857A1 (ja) * | 2023-03-01 | 2024-09-06 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ |
JP7553765B2 (ja) | 2020-04-10 | 2024-09-19 | 横浜ゴム株式会社 | 空気入りタイヤ |
-
2019
- 2019-08-08 JP JP2019146321A patent/JP2021024509A/ja active Pending
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WO2023112848A1 (ja) * | 2021-12-17 | 2023-06-22 | 横浜ゴム株式会社 | 空気入りタイヤ |
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