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JP2021004299A - 保護シート - Google Patents

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JP2021004299A JP2019118313A JP2019118313A JP2021004299A JP 2021004299 A JP2021004299 A JP 2021004299A JP 2019118313 A JP2019118313 A JP 2019118313A JP 2019118313 A JP2019118313 A JP 2019118313A JP 2021004299 A JP2021004299 A JP 2021004299A
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Yuta Shimazaki
雄太 島▲崎▼
幸介 米▲崎▼
Kosuke Yonezaki
幸介 米▲崎▼
計 堀口
Kei Horiguchi
計 堀口
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Abstract

【課題】保護対象物であるLow-Eガラス板の保護機能を有することが可能であり、かつ上記保護対象物に長期にわたって貼り付けられた場合であっても、保護対象物表面の汚染を防止または抑制しつつ良好な剥離性を維持し得るLow-Eガラス板保護シートを提供する。【解決手段】Low-Eガラス板保護シートであって、粘着剤層2を備え、前記粘着剤層は、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む、保護シートであり、熱水抽出により測定される塩化物イオン量が前記粘着剤層1g当たり300μg未満である保護シート。【選択図】図1

Description

本発明は保護シートに関する。
各種物品を加工したり運搬したりする際に、その表面の損傷(傷や汚れ、腐食等)を防止する目的で、該表面に保護シートを接着して保護する技術が知られている。その保護対象は多岐にわたっており、例えば、近年広く普及しているLow-E(Low-Emissivity:低放射)層付きガラス板(Low-Eガラス板)にも保護シートが利用されている。Low-Eガラス板は、Low-E層による室内空間の冷暖房効率改善効果から、窓ガラス等の建築材料として好ましく用いられている。Low-Eガラス板の製造では、通常、Low-Eガラス板と他のガラス板とを、Low-E層側表面を内側に向けてペアガラスとするまで、そのままでは露出するLow-E層表面に対して保護シートが貼り付けられる。これによって、Low-E層は損傷、摩耗、劣化、腐食等から保護される。ガラスユニットの製法に関する従来技術を開示する先行技術文献として、特許文献1および2が挙げられる。
表面保護の用途では、剥離可能な接着手段として粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)が好ましく用いられ得る。一般に、粘着剤は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。粘着剤を用いた表面保護シートは、典型的には、樹脂等の材料からなるシート状基材の片面に粘着剤層を有し、その粘着剤層を被着体(保護対象物)に接着することで、保護目的を達成し得るように構成されている。表面保護シートとして用いられ得る粘着シートを開示する先行技術文献としては、特許文献3〜6が挙げられる。特許文献3には金属板の絞り加工時に該金属板の表面を保護する表面保護シートが、特許文献4には偏光板等の光学フィルムの表面保護シートがそれぞれ開示されている。特許文献5は、セルフクリーニング性を有する親水性塗装板の表面保護シートに関するものである。特許文献6は、塗膜が形成される金属板用表面保護シートの剥離容易性や汚染性低減に取り組んでいる。
欧州特許第2150669号明細書 国際公開第2016/139318号 特開2017−186517号 特許第5719194号公報 特開2012−131976号 特許第3571460号公報
Low-Eガラス板は、保護シートによって保護された状態で外部環境に曝され、加工、洗浄等の操作が行われ得る。上記保護シートは、保護対象物であるLow-Eガラス板に対して浮きや剥がれが生じない良好な粘着力を有することで、Low-Eガラス板表面に密着し、損傷、摩耗等の物理的なダメージからLow-Eガラス板を保護することに加えて、水分や湿気等の進入を遮断して上記Low-E層の劣化や腐食を防ぐ。そして、保護期間終了後には、保護シートは保護対象物から糊残り等なく除去される必要がある。しかし、Low-Eガラス板は、その輸送、保管等のため、保護シートによる保護期間が長期にわたる場合があり、そのような使用態様では、温度変化等によって粘着力が上昇し、目的とする剥離性を維持できないおそれがある。粘着力調整剤を添加して経時粘着力の上昇を抑制する対処法が考えられるが、粘着力調整剤は被着体表面に移行し、保護対象物表面を汚染する場合がある。
本発明は、上記の課題に鑑みて創出されたものであり、保護対象物であるLow-Eガラス板の保護機能を有することが可能であり、かつ、上記保護対象物に長期にわたって貼り付けられた場合であっても、保護対象物表面の汚染を防止または抑制しつつ良好な剥離性を維持し得るLow-Eガラス板保護シートを提供することを目的とする。
本明細書によると、Low-Eガラス板保護シートが提供される。この保護シートは粘着剤層を備える。そして、前記粘着剤層は、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む。このように構成することにより、保護シートは、保護対象物に長期にわたって貼り付けた場合であっても、保護対象物表面の汚染を防止または抑制しつつ良好な剥離性を維持することができる。このことは、Low-Eガラス板保護用粘着剤において、ベースポリマー以外の成分の使用量が増大すると、経時剥離性が得られにくくなる傾向があるという知見に基づく。粘着剤の大部分をベースポリマーで構成することで、経時剥離性に影響する添加剤の使用量を制限し、かつ保護対象物表面の汚染を防止または抑制しつつ、目的とするLow-Eガラス板保護機能を有することができる。
いくつかの好ましい態様に係る保護シートは、熱水抽出により測定される塩化物イオン量が前記粘着剤層1g当たり300μg未満である。このように構成することで、防錆剤等の腐食防止成分を添加することなく、あるいはその使用量を制限しつつ、Low-Eガラス板における腐食等を長期にわたって防ぐことができる。この点について、本発明者らは、保護シートによる保護が十分になされているにもかかわらず、保護対象であるLow-Eガラス板の劣化や腐食(以下まとめて「腐食等」ともいう。)が発生する現象を確認し、検討の結果、保護シートそのものに由来してLow-E層の腐食等が生じ得ることを発見した。そして、当該腐食等の原因が、保護シートの粘着剤に含まれる塩化物イオンにあることを究明し、粘着剤の塩化物イオン量を制限することで、Low-Eガラス板における腐食等を長期にわたって防止し得る構成に到達したのである。
いくつかの好ましい態様では、前記粘着剤層は、水分散型粘着剤組成物から形成されたものである。水分散型粘着剤組成物は、環境衛生等の観点から、粘着成分が有機溶剤に溶解した形態の溶剤型粘着剤組成物よりも望ましい。このような構成において、ここに開示される技術による効果(腐食防止等の保護性能と経時剥離性との両立)を好ましく実現することができる。
いくつかの好ましい態様では、前記粘着剤層における防錆剤の含有量は3重量%以下である。上記構成の粘着剤層は、防錆剤を含まないか、防錆剤を所定値以下の割合で含む。防錆剤は、腐食防止等の観点からはLow-Eガラス板用途においては好ましい添加剤であるが、その使用量が増大すると、経時剥離性が得られにくくなる傾向がある。防錆剤の使用を所定量以下に制限することで、経時粘着力の上昇を抑制して、良好な剥離性を好ましく維持することができる。また、いくつかの態様では、前記粘着剤層は前記防錆剤を含む。これにより、腐食防止性を好ましく発揮することができる。用いられ得る防錆剤の好適例としては、アミン系防錆剤が挙げられる。アミン系防錆剤を用いる態様において、その含有量を所定量以下に制限することで、腐食防止性と経時剥離性とを好ましく両立することができる。
いくつかの好ましい態様では、前記ベースポリマーはアクリル系ポリマーおよびゴム系ポリマーから選択される。ここに開示される技術において好ましく用いられる粘着剤(層)として、アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤、または、ゴム系ポリマーを含むゴム系粘着剤が挙げられる。
いくつかの好ましい態様では、前記ベースポリマーは、架橋剤によって架橋されている。架橋剤によって架橋されたポリマーをベースポリマーとして用いることによって、良好な剥離性を有する保護シートが好ましく得られる。架橋剤の好適例としては、オキサゾリン系架橋剤が挙げられる。オキサゾリン系架橋剤を用いる態様において、ここに開示される技術による効果(経時剥離性)は好ましく発揮され得る。
いくつかの態様に係る保護シートは基材層を備える。上記基材層は粘着剤層を支持するものであり、保護シートは、基材層と、該基材層の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える。この構成は、Low-Eガラス板の保護に適している。前記基材層は、より好ましくは樹脂フィルムからなる。そのような基材層として、ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる基材層や、ポリエステル系樹脂フィルムからなる基材層、塩化ビニル系樹脂フィルムからなる基材層が好ましく採用され得る。
ここに開示される保護シートは、Low-Eガラス板に対する50℃1週間経過後180度剥離強度が3.3N/20mm以下であることが好ましい。この特性を満足する保護シートは、被着体への貼付け期間が長くても、経時粘着力が十分に抑制されており、被着体から良好に剥離することができる。
保護シートの一形態例を模式的に示す断面図である。 ガラスユニットの製造方法の一実施形態を説明するための模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamentals and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
また、本明細書における保護シートの概念には、粘着シート、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される保護シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態のシートであってもよい。
<保護シートの構成>
ここに開示される保護シートは、典型的には基材層(支持基材)上に粘着剤層を有する。一形態例に係る保護シートの断面構造を図1に示す。この保護シート10は、シート状の基材層1の一方の面1Aに粘着剤層2が設けられた構成を有し、粘着剤層2の表面2Aを被着体(保護対象物)に貼り付けて使用される。基材層1の背面1B(一方の面1Aとは反対側の面)は、保護シート10の背面でもあり、保護シート10の外表面を構成している。使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の保護シート10は、粘着剤層2の表面(接着面、すなわち被着体への貼付け面)2Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー(図示せず)によって保護された形態であり得る。あるいは、基材層1の他方の面(背面)1Bが剥離面となっており、保護シート10がロール状に巻回されることにより該背面に粘着剤層2が当接してその表面(接着面)2Aが保護された形態の保護シート10であってもよい。
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の各種の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
ここに開示される保護シートの幅は特に限定されない。例えば、凡そ1m以上、さらには凡そ1.5m以上の幅を有する保護シートを用いることによって、比較的大きい面積を有するLow-Eガラス板の保護を効率よく実現することができる。いくつかの好ましい態様に係る保護シートの幅は凡そ2m以上である。このような幅広の保護シートは、大面積のLow-Eガラス板に対して、一枚または少ない枚数で保護機能を達成することができる。上記Low-Eガラス板の保護用途においては、例えば凡そ2.5m以上、さらには凡そ2.6m以上の幅を有する保護シートが好ましく用いられ得る。保護シートの幅は、2.6m超(例えば3m以上、さらには凡そ3.3m以上)であり得る。保護シートの幅の上限は特に限定されず、生産性、取扱い性等の観点から、凡そ5m以下が適当であり、例えば凡そ4m以下であり得る。
なお、ここに開示される保護シートは、例えば、その平面(シート面)において、長辺と短辺とを有することによって特定されるシートであり得る。長辺は短辺よりも長い辺であり、短辺は長辺よりも短い辺と定義される。また例えば、短辺は長辺にほぼ直交する辺であり得る。保護シートの長さ方向は長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長さ方向に直交する方向である。したがって、本明細書において「幅」は、長さ方向に直交する方向の長さと定義される。長尺状、帯状、長方形状と称される保護シートは、ここに開示される保護シートの典型例である。長辺はほぼ直線状に延びる線分である一方、短辺は直線に限定されず、曲線、折れ線等であってもよい。例えば、長尺の保護シートの長さ(長さ方向の距離)は上記幅と同じかそれ以上である。
ここに開示される保護シートの厚さは特に限定されず、取扱い性や軽量性等の観点から、凡そ1000μm以下(典型的には凡そ300μm以下、例えば凡そ150μm以下)とすることが適当である。いくつかの態様において、保護シートの厚さは、好ましくは凡そ120μm以下、より好ましくは凡そ100μm以下、さらに好ましくは凡そ75μm以下、例えば60μm未満であり得る。また、保護シートの厚さは、典型的には20μm超、好ましくは30μm超、より好ましくは40μm超、例えば45μm超であり得る。
なお、本明細書において保護シートの厚さは、粘着剤層および基材層の厚さを含むが、剥離ライナーの厚さは含まない。
<粘着剤層>
ここに開示される粘着剤層は、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含むことによって特徴づけられる。ここに開示される技術によると、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む構成で、Low-Eガラス板の劣化や腐食を防止し得る保護機能を発揮することが可能である。また、ベースポリマーの含有割合を95重量%以上とすることにより、経時剥離性に影響する添加剤の使用量を制限し、保護対象物に長期にわたって貼り付けた場合であっても良好な剥離性を維持することができる。また、粘着剤の大部分をベースポリマーで構成することで、添加剤等の被着体表面への移行を制限し、保護対象物表面の汚染を防止または抑制することができる。粘着剤層におけるベースポリマーの含有割合は、経時剥離性の観点から、好ましくは凡そ96重量%以上、より好ましくは凡そ97重量%以上であり、凡そ98重量%以上(例えば凡そ99重量%以上)であってもよい。粘着剤層におけるベースポリマーの含有割合の上限は100重量%であり、目的とする特性(例えば腐食防止性や密着性等)を実現するため、99.5重量%以下であってもよく、98.5重量%以下であってもよく、97.5重量%以下であってもよい。
なお、本明細書において、粘着剤層のベースポリマーとは、粘着剤からなる層を形成するポリマーであって、粘着成分として機能するポリマー(「粘着性ポリマー」ともいう。)を指す。粘着剤層におけるベースポリマーの重量には、ベースポリマーと架橋反応によって結合した架橋剤が含まれるものとする。同様に、反応性界面活性剤を用いたエマルション重合によって得られるベースポリマーについては、重合反応後にベースポリマーに組み込まれる反応性界面活性剤は、ベースポリマーの重量に含まれるものとする。
上記ベースポリマーの種類は特に限定されず、したがって、粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。上記粘着剤層は、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の各種ポリマー(粘着性ポリマー)から選択される1種または2種以上をベースポリマーとして含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。ここに開示される技術は、例えば、アクリル系粘着剤層やゴム系粘着剤層を備えた保護シートの形態で好ましく実施され得る。
ここで「アクリル系粘着剤層」とは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤層を指す。同様に、「ゴム系粘着剤層」とは、ゴム系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤層を指す。「アクリル系ポリマー」とは、一分子中に少なくともひとつの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」ということがある。)を主構成単量体成分(モノマーの主成分、すなわちアクリル系ポリマーを構成するモノマーの総量のうち50重量%以上を占める成分)とするポリマーを指す。また、本明細書中において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。
(アクリル系ポリマー)
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(以下「モノマーA」ともいう。)を含み、該アルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する他のモノマー(以下「モノマーB」ともいう。)をさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。上記アクリル系ポリマーは、典型的には、上記モノマー原料に含まれるモノマー成分の組成に対応する共重合組成を有する。
モノマーAとしては、次の一般式(1)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは、水素原子またはメチル基である。また、Rは、炭素原子数1〜20のアルキル基である。以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。重合反応性や重合安定性等の観点から、RがC1−16のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、RがC1−12(典型的にはC1−10、例えばC1−8)のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
がC1−20のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このようなアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される技術は、モノマーAとしてのアルキルアクリレートが上記全モノマー成分中の凡そ50重量%以上(より好ましくは凡そ75重量%以上、さらに好ましくは凡そ90重量%以上、例えば凡そ95重量%以上)を占める態様で好ましく実施され得る。上記アルキルアクリレートとしては、上記式(1)中のRがC1−20のアルキル基であるアルキルアクリレートが好ましく、RがC1−12(さらに好ましくはC1−10、特に好ましくはC1−8)のアルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。ここに開示される技術は、上記アルキルアクリレートが、上記式(1)中のRがC2−8(典型的にはC4−8)のアルキル基であるアルキルアクリレートである態様でも好ましく実施され得る。アルキルアクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上のアルキルアクリレートを用いる場合、アクリル系ポリマーのTgを最適範囲に調節する等の理由から、RがC4−20(より好ましくはC4−10、さらに好ましくはC4−8)のアルキル基であるアルキルアクリレートA1と、C1−3(より好ましくはC1−2、例えばC)のアルキル基であるアルキルアクリレートA2とを併用してもよい。その場合、アルキルアクリレートA1とアルキルアクリレートA2との重量比(A1:A2)は特に限定されず、例えば凡そ5:95〜95:5であり、凡そ10:90〜90:10とすることが適当であり、例えば凡そ15:85〜85:15である。
いくつかの好ましい態様では、上記モノマー成分は、モノマーAとして1種または2種以上のアルキルメタクリレートを含む。アルキルメタクリレートを用いることにより、所望の粘着特性を発揮し得るベースポリマーを好ましく設計することができる。上記アルキルメタクリレートとしては、上記式(1)中のRがC1−10のアルキル基であるアルキルメタクリレートが好ましく、RがC1−4(さらに好ましくはCまたはC2−4)のアルキル基であるアルキルメタクリレートがより好ましい。上記アルキルメタクリレートは、好ましくはアルキルアクリレートと併用され得る。アルキルメタクリレートとアルキルアクリレートとを併用する場合、1種または2種以上のアルキルメタクリレート(例えばC2−4アルキルメタクリレート)の重量CAMと、1種または2種以上のアルキルアクリレートの重量CAAとの比(CAM:CAA)は特に限定されず、いくつかの態様では、凡そ1:9〜9:1であり、凡そ2:8〜8:2とすることが適当であり、好ましくは凡そ3:7〜7:3、より好ましくは凡そ4:6〜6:4である。他のいくつかの態様では、アルキル(メタ)アクリレートの総量(CAM+CAA)に占めるアルキルメタクリレート(例えばCアルキルメタクリレート、すなわちメチルメタクリレート(MMA))の重量CAMは、凡そ30重量%以下、凡そ20重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ10重量%以下、より好ましくは凡そ7重量%以下である。一方、その下限は、凡そ0.1重量%以上、凡そ1重量%以上が適当であり、好ましくは凡そ2重量%以上(例えば凡そ3重量%以上)である。
なお、ここに開示される技術は、モノマー成分がモノマーAとしてアルキルメタクリレートを実質的に含まない態様で実施することができ、アルキルメタクリレートを使用する態様においては、例えばC1−3アルキルメタクリレート(典型的にはMMA)を含まない態様で実施することができる。
他の好ましい態様では、アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素原子数が4〜9のアルキルアクリレート(以下、モノマーmともいう。)を含み、必要に応じて他のモノマーを含み得るモノマー原料の重合物である。アクリル系ポリマーは、対応する組成(モノマー組成)のモノマー原料を公知の方法で重合させることにより合成することができる。
モノマーmの非限定的な例として、n−ブチルアクリレート(BA)、n−へキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレートおよびイソノニルアクリレート(iNA)が挙げられる。アルキル基中に−(CH−構造を含むアルキルアクリレートが好ましく、アルキル基中に−(CH−構造を含むアルキルアクリレートがより好ましい。モノマーmの好適例として、2EHA,BAおよびiNAが挙げられる。モノマーmは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
モノマーmの使用量は、典型的には、アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー原料全体の40重量%以上である。モノマー組成中にモノマーmを40重量%以上の割合で含むことは、アクリル系ポリマーを含む粘着剤層の柔軟性や低温特性向上の観点から有利である。かかる観点から、モノマーmの割合は、45重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上(例えば50重量%超)としてもよい。また、モノマー組成中におけるモノマーmの割合を99.9重量%以下とすることにより、アクリル系ポリマーを含む粘着剤層に適度な凝集性を付与しやすくなる。かかる観点から、上記モノマーmの割合は、95重量%以下とすることが好ましく、90重量%以下とすることがより好ましく、85重量%以下としてもよい。いくつかの態様において、上記モノマーmの割合を80重量%未満としてもよく、70重量%未満(例えば65重量%以下)としてもよい。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーは、モノマーBとしてカルボキシ基含有モノマー(以下、モノマーmともいう。)を含むモノマー組成を有していてもよい。すなわち、アクリル系ポリマーにはモノマーmが共重合されていてもよい。モノマーmは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーを含む粘着剤層の凝集力を高めたりするために役立ち得る。モノマーmは、また、アクリル系ポリマーを含む粘着剤層と基材層との密着性(投錨性)を高めることで非糊残り性の向上に役立ち得る。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、1−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]コハク酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸);等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
モノマーmを用いる場合、モノマー組成中におけるモノマーmの割合は特に限定されない。モノマーmの割合は、例えば0.05重量%以上とすることができ、0.1重量%以上が適当であり、重合安定性や分散安定性の観点から0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、剥離強度(粘着力)の過度な上昇を抑制する観点から、モノマーmの割合は凡そ20重量%以下(好ましくは凡そ10重量%以下、典型的には凡そ7重量%以下)が適当であり、凡そ5重量%以下がより好ましく、凡そ4重量%以下(例えば3重量%以下)がさらに好ましい。保護対象物であるLow-Eガラス板の腐食等を抑制する観点から、カルボキシ基含有モノマーの使用量が制限されていることが好ましい。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、該アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調節等を目的として、モノマーAとして、アルキル基の炭素原子数が4〜20であってホモポリマーのTgが−50℃以上であるアルキル(メタ)アクリレート(以下、モノマーmともいう。)が共重合されていてもよい。ここで、上述したモノマーmに属するモノマーは、モノマーmのカテゴリーからは除かれる。モノマーmは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。モノマーmとしては、ホモポリマーのTgが−40℃〜+60℃の範囲にあるものが好ましく、−30℃〜+40℃(例えば−20℃〜+30℃)の範囲にあるものがより好ましい。好ましく使用し得るモノマーmの非限定的な例として、n−ブチルメタクリレート(BMA)、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびラウリルアクリレートが挙げられる。
モノマーmを用いる場合、モノマー組成中におけるモノマーmの割合は特に限定されない。モノマーmの割合は、例えば1重量%以上とすることができ、5重量%以上としてもよく、10重量%以上としてもよく、さらには15重量%以上としてもよい。いくつかの態様において、モノマーmの効果をよりよく発揮させる観点から、モノマー組成中におけるモノマーmの割合は、20重量%以上としてもよく、25重量%以上としてもよく、30重量%以上としてもよく、さらには35重量%以上(例えば40重量%以上)としてもよい。また、モノマー組成中におけるモノマーmの割合は60重量%未満とすることができ、柔軟性や低温特性向上の観点から、凡そ55重量%以下(典型的には凡そ50重量%以下、例えば凡そ45重量%以下)とすることが適当である。いくつかの態様において、上記モノマーmの割合は30重量%未満であってもよく、20重量%未満でもよく、10重量%未満(例えば5重量%未満、さらには1重量%未満)でもよい。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、必要に応じて、モノマーm,m,m以外のモノマー(モノマーm)がモノマーAとして共重合されていてもよい。モノマーmとしては、モノマーmと共重合可能な各種のモノマーを、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
モノマーmとしては、例えば、上記一般式(1)で表わされるアルキル(メタ)アクリレート(モノマーmD1)(ただし、モノマーmまたはモノマーmに該当するものを除く。)を用いることができる。モノマーmD1として使用し得るアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマーmD1は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
モノマーmとして使用可能な化合物の例には、以下のような官能基含有モノマー(モノマーB)が含まれ得る。このような官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。
水酸基含有モノマー:例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類。
アミド基含有モノマー:例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド。
イミド基含有モノマー:例えばN−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド。
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
シアノ基含有モノマー:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル。
ケト基含有モノマー:例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン。
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
モノマーmとして使用し得る化合物の他の例として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の非芳香族性環含有(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;2−(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。
モノマーmとして使用し得る化合物のさらに他の例として、多官能モノマーが挙げられる。多官能モノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、等の、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。このような多官能モノマーを使用する場合、その使用量は特に制限されないが、全モノマー成分の2重量%以下(より好ましくは1重量%以下)とすることが適当である。
モノマーmの使用量は、モノマー組成の40重量%を超えないように設定することが適当であり、20重量%を超えないことが好ましく、10重量%を超えないことがより好ましい。モノマーmを使用しなくてもよい。ここに開示される技術は、モノマーmの使用量がモノマー組成の0重量%以上5重量%未満である態様で好ましく実施され得る。ここで、モノマーmの使用量がモノマー組成の0重量%であるとは、少なくとも意図的にはモノマーmを使用しないことを意味する。
特に限定するものではないが、全モノマー成分に占めるモノマーA(アルキル(メタ)アクリレート)の割合は、例えば凡そ50重量%以上とすることができ、凡そ60重量%以上とすることが適当であり、凡そ70重量%以上が好ましく、凡そ80重量%以上がより好ましく、凡そ85重量%以上がさらに好ましい。モノマーAを所定量以上含むことにより、所望の粘着特性を有する保護シートが好適に実現され得る。ここに開示される技術は、例えば、全モノマー成分に占めるモノマーAの割合が凡そ90重量%以上である態様で好ましく実施され得る。いくつかの態様において、モノマーAの割合は凡そ95重量%以上であってもよく、凡そ97重量%以上であってもよい。このようなアクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤組成物は、該組成物から形成される粘着剤層(ひいては、該粘着剤層を有する保護シート)の耐候性の観点から有利となり得る。また、モノマーAとモノマーBとを併用する態様において、該モノマーBの効果を適切に発揮する観点から、全モノマー成分に占めるモノマーAの割合は、例えば99.9重量%以下とすることができ、99.5重量%以下が好ましく、99重量%以下がより好ましく、あるいは凡そ97重量%以下(例えば95重量%以下)であってもよい。
アクリル系ポリマーに上述のような官能基含有モノマーが共重合されている場合、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分に占める官能基含有モノマーの割合は、凡そ0.1重量%以上(典型的には凡そ0.5重量%以上、例えば凡そ1重量%以上)とすることが好ましく、また、凡そ40重量%以下(典型的には凡そ30重量%以下、例えば凡そ20重量%以下)とすることが好ましい。例えば、アクリル系モノマーに水酸基含有モノマーが共重合されている場合、上記全モノマー成分に占める水酸基含有モノマーの割合は、所望の凝集力を得る観点から、凡そ0.001重量%以上(典型的には凡そ0.01重量%以上、例えば凡そ0.1重量%以上)とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量%以上、より好ましくは凡そ3重量%以上であり、また、凡そ10重量%以下(典型的には凡そ7重量%以下、例えば凡そ5重量%以下)とすることが適当である。
(ゴム系ポリマー)
他の好ましい態様では、粘着剤層はゴム系粘着剤層であり得る。上記ベースポリマーの例としては、天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR);ポリイソプレン;ブテン(1−ブテン、およびcis−もしくはtrans−2−ブテンを指す。)および/または2−メチルプロペン(イソブチレン)を主モノマーとするブテン系ポリマー;A−B−A型ブロック共重合体ゴムおよびその水素化物、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SIBS)、スチレン−ビニル・イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SVIS)、SBSの水素化物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SEBS)、SISの水素化物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SEPS);等の種々のゴム系ポリマーが挙げられる。これらのゴム系ポリマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ベースポリマーのTg)
ここに開示される粘着剤層のベースポリマー(アクリル系粘着剤層の場合はアクリル系ポリマー)のTgは特に限定されない。上記ベースポリマーのTgは、例えば凡そ0℃以下であり得る。いくつかの好ましい態様では、粘着剤層のベースポリマーのTgが凡そ−5℃以下である。かかるTgを有するベースポリマーによると、被着体に対する密着性に優れた粘着剤層が好適に形成され得る。ベースポリマーのTgが凡そ−15℃以下(より好ましくは凡そ−20℃以下、例えば凡そ−25℃以下)である態様によると、より良好な効果が実現され得る。他の好ましい態様では、被着体との接着性の観点から、粘着剤層のベースポリマーのTgは凡そ−35℃以下であり、より好ましくは凡そ−40℃以下、さらに好ましくは凡そ−45℃以下(例えば凡そ−50℃未満、さらには凡そ−52℃以下、あるいは凡そ−55℃以下)である。また、ベースポリマーのTgは、−70℃以上とすることが適当であり、粘着剤の凝集性等の観点から、好ましくは凡そ−65℃以上、より好ましくは−60℃以上、さらに好ましくは−55℃以上(例えば凡そ−50℃以上)であり、凡そ−35℃以上であってもよい。ベースポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
本明細書において、ポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ヘキシルアクリレート −65℃
n−オクチルアクリレート −65℃
イソノニルアクリレート −60℃
n−ノニルアクリレート −58℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −20℃
ラウリルアクリレート 0℃
2−エチルヘキシルメタクリレート −10℃
メチルアクリレート 8℃
n−ブチルメタクリレート 20℃
メチルメタクリレート 105℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。上記Polymer HandbookにもホモポリマーのTgが記載されていない場合には、特開2007−51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
(ベースポリマーの合成)
ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)を得る方法は特に限定されない。例えば、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、公知の重合方法を適宜採用することができる。あるいは、UV等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。)や、β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合等の活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。いくつかの好ましい態様において、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)は、上述のような組成のモノマー原料のエマルション重合により得られる。例えば、エマルション重合法におけるモノマー供給方式としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。モノマー成分の一部または全部をあらかじめ水および界面活性剤と混合して乳化し、その乳化液を重合容器に供給してもよい。
重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができる。重合温度は、凡そ20℃以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ40℃以上、より好ましくは凡そ50℃以上であり、凡そ60℃以上としてもよく、凡そ65℃以上、さらには凡そ70℃以上としてもよい。また、重合温度は、凡そ170℃以下(典型的には凡そ140℃以下)とすることが適当であり、好ましくは凡そ95℃以下(例えば凡そ85℃以下)である。エマルション重合では、重合温度を凡そ95℃以下(例えば凡そ85℃以下)とすることが好ましい。
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類)や、酢酸エチル等の酢酸エステル類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類等が好ましく用いられる。
重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が例示されるが、これらに限定されない。重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アゾ系開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
過酸化物系開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルハイドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジ−n−オクタノイルペルオキシド、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシソブチレート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、過酸化水素等が挙げられる。
レドックス系開始剤の例としては、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、該開始剤の種類やモノマーの種類(モノマー成分の組成)、重合条件等に応じて適宜選択することができる。重合開始剤の使用量は、例えばモノマー原料100重量部に対して凡そ0.005〜1重量部であり、0.001〜0.5重量部程度の範囲とすることが適当であり、0.002〜0.3重量部の範囲とすることが好ましく、0.005〜0.1重量部の範囲とすることがより好ましい。
エマルション重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等のメルカプタン類を好ましく用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、全モノマー成分100重量部に対して、例えば0.01〜1重量部程度とすることができ、0.02〜0.1重量部とすることが好ましく、0.03〜0.07重量部とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、連鎖移動剤を使用しない態様でも好ましく実施され得る。
エマルション重合に使用する界面活性剤(乳化剤)は特に制限されず、公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を用いることができる。ラジカル重合性官能基を有する界面活性剤を用いてもよい。以下、ラジカル重合性官能基を有する界面活性剤を反応性(重合性)界面活性剤ともいう。これに対して、ラジカル重合性官能基を有しない一般的な界面活性剤を非反応性(非重合性)界面活性剤ということがある。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
非反応性の界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系乳化剤;等が挙げられる。
反応性界面活性剤は、ラジカル重合性官能基を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、上述のようなアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤にラジカル重合性官能基が導入された構造の反応性界面活性剤であり得る。上記ラジカル重合性官能基の例としては、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)等が挙げられる。ここでいうプロペニル基の概念には、1−プロペニル基(CH−CH=CH−)および2−プロペニル基(CH=CH−CH−;アリル基と称されることもある。)が含まれる。
アニオン性の反応性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸塩(例えばアンモニウム塩)、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸塩(例えばアンモニウム塩)、アルキルアリルスルホコハク酸塩(例えばナトリウム塩)、メタクリロキシポリオキシプロピレン硫酸エステル塩(例えばナトリウム塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩(例えば、上記アルケニル基の末端がイソプロペニル基であるアンモニウム塩)等が挙げられる。アニオン性の反応性界面活性剤が塩を形成している場合、該塩は、例えばナトリウム塩等の金属塩であってもよく、アンモニウム塩やアミン塩等の非金属塩であってもよい。
ノニオン性の反応性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル等が挙げられる。
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、オキシエチレン鎖を有する反応性界面活性剤を好ましく使用し得る。ここでオキシエチレン鎖とは、オキシエチレン単位の繰返し構造、すなわち−(CO)−で表される構造部分を指す。nはオキシエチレン単位の繰返し数を示す。例えば、この繰返し数nが5〜30(例えば8〜25)程度である反応性界面活性剤が好ましい。
エマルション重合時の重合安定性等の観点から、いくつかの態様において、プロペニル基を有する反応性界面活性剤を好ましく採用し得る。プロペニル基を有し、且つオキシエチレン鎖を有する反応性界面活性剤が特に好ましい。
乳化性能等の観点から、いくつかの態様において、アニオン性の反応性界面活性剤(例えば、オキシエチレン鎖を有するアニオン性反応性界面活性剤)を好ましく採用し得る。アニオン性の反応性界面活性剤が塩を形成している場合、該塩としては、非金属塩が好ましく、なかでもアンモニウム塩が好ましい。
ノニオン性の反応性界面活性剤を使用する場合は、他の界面活性剤、例えばアニオン性の反応性界面活性剤、アニオン性の非反応性界面活性剤、ノニオン性の非反応性界面活性剤等と併用することにより、より好適な結果が実現され得る。
ラジカル重合性官能基を有する反応性界面活性剤の存在下でモノマー原料をエマルション重合させることにより、上記反応性界面活性剤が反応してベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)に取り込まれ得る。ベースポリマーに取り込まれた反応性界面活性剤は、粘着剤層内での移動が制限されるため、粘着剤層の表面にブリードアウトしにくい。したがって、反応性界面活性剤の使用により、粘着剤層の表面への低分子量化合物のブリードアウトを抑制することができる。このことは低汚染性の観点から好ましい。より優れた低汚染性を実現する観点から、エマルション重合時の界面活性剤として反応性界面活性剤のみを用いる態様を好ましく採用し得る。
界面活性剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.1重量部以上(例えば凡そ0.5重量部以上)とすることが好ましい。また、反応性界面活性剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対して凡そ10重量部以下(例えば凡そ5重量部以下)とすることが適当であり、凡そ4重量部以下であってもよい。非反応性界面活性剤の使用量は、粘着特性や被着体表面の低汚染性等の観点から、全モノマー成分100重量部に対して凡そ5重量部以下であり、凡そ4重量部以下が適当であり、好ましくは凡そ3重量部以下(例えば凡そ2重量部以下)である。
ここに開示される保護シートの粘着剤層は、種々の形態の粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。上記粘着剤組成物の形態としては、例えば、有機溶媒中に粘着剤(粘着成分)を含む形態の組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着剤の少なくとも一部が水性溶媒に分散した形態の組成物(水分散型粘着剤組成物)、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等が挙げられる。
環境負荷軽減の観点から、水分散型粘着剤組成物を好ましく採用し得る。かかる水分散型粘着剤組成物の一好適例として、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む水分散型粘着剤組成物(アクリル系水分散型粘着剤組成物、典型的にはアクリル系エマルション型粘着剤組成物)が挙げられる。また、粘着特性の観点からは溶剤型粘着剤組成物が好ましい。溶剤の使用を必要としないホットメルト型粘着剤組成物は、生産プロセスにおける取扱い性に優れる点で有利である。
(架橋剤)
ここに開示される技術において、粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。ベースポリマーと架橋剤とを含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、典型的には、架橋剤によって架橋された構造のポリマー(ベースポリマー)を含む。このような粘着剤層によると、粘着剤層の表面硬さを適切に調節することができ、良好な経時剥離性を実現しやすい。使用する架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤から適宜選択することができる。
架橋剤の具体例としては、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤からなる群から選択される1種または2種以上の使用が好ましい。なかでも、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤がより好ましい。水分散型粘着剤組成物を用いる態様では、水に溶解または分散可能な架橋剤が好ましく、水に溶解可能な(すなわち水溶性の)架橋剤が特に好ましい。
オキサゾリン系架橋剤としては、1分子内に1個以上のオキサゾリン基を有するものを特に制限なく使用することができる。水分散型粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能なオキサゾリン系架橋剤の使用が好ましい。
オキサゾリン基は、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基、4−オキサゾリン基のいずれでもよい。2−オキサゾリン基を有するオキサゾリン系架橋剤を好ましく使用し得る。例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンと他のモノマーとを共重合させて得られた水溶性共重合体または水分散型共重合体を、オキサゾリン系架橋剤として使用することができる。
オキサゾリン系架橋剤の市販品としては、例えば日本触媒社製の商品名「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」等が挙げられる。
アジリジン系架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニルプロピオネート)]等が挙げられる。アジリジン系架橋剤の市販品としては、例えば、日本触媒社製の商品名「ケミタイトPZ−33」、「ケミタイトDZ−22E」等が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤の例としては、2官能以上の多官能イソシアネート化合物を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。市販品としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物等を例示することができる。水分散型の粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能なイソシアネート系架橋剤の使用が好ましい。例えば、水溶性、水分散性または自己乳化型のイソシアネート系架橋剤を好ましく採用し得る。イソシアネート基がブロックされた、いわゆるブロックドイソシアネート型のイソシアネート系架橋剤を好ましく使用し得る。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。1分子中に3〜5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。水分散型粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能なエポキシ系架橋剤の使用が好ましい。
エポキシ系架橋剤の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD−X」、「TETRAD−C」、DIC社製の商品名「エピクロンCR−5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC−G」等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を2個以上有する低分子化合物または高分子化合物を用いることができる。水分散型粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能なカルボジイミド系架橋剤の使用が好ましい。カルボジイミド系架橋剤の市販品としては、例えば、日清紡社製の「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」等のカルボジライトVシリーズ(水溶液タイプ)や、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−04」等のカルボジライトEシリーズ(水分散タイプ)等のカルボジライトシリーズが挙げられる。
ここに開示される粘着剤組成物における架橋剤の含有量(架橋剤の総量)は特に限定されず、ベースポリマーの組成や分子量を考慮して、架橋後において好適な特性が得られるように適宜設定することができる。特に限定するものではないが、ベースポリマー(典型的にはアクリル系ポリマー)100重量部に対する架橋剤の使用量は、凡そ0.01重量部以上、凡そ0.1重量部以上が適当であり、好ましくは凡そ1重量部以上(例えば凡そ2重量部以上)である。また、接着性等の観点から、上記架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ15重量部以下(好ましくは凡そ10重量部以下、例えば凡そ5重量部以下)とすることが適当であり、被着体との密着性を高める観点から、好ましくは凡そ4重量部以下、より好ましくは3.5重量部未満、さらに好ましくは3重量部未満である。
(リン酸エステル)
ここに開示される粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)は、リン酸エステルを含んでもよい。リン酸エステルとしては、例えば、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸塩等のアルキルリン酸エステルや、オキシエチレン鎖を有するリン酸エステル、その塩が挙げられる。上記塩は、例えば、上記リン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、バリウム塩、トリエタノールアミン塩等であり得る。以下、特記しない限り「リン酸エステル」は塩を含む意味で用いる。なかでも、オキシエチレン鎖を有するリン酸エステルを用いることがより好ましい。オキシエチレン鎖を有するリン酸エステルは、主に粘着力の経時上昇を抑制しつつ(すなわち、粘着力の安定性を向上させつつ)、粘着剤層と被着体表面との間で水や酸、アルカリ等の腐食誘発成分の進入を防止し得る。ここで、オキシエチレン鎖とは、少なくとも1つのエチレンオキシド(EO)単位を含み、他のオキシアルキレン単位(例えば、炭素原子数3〜6程度のオキシアルキレン単位)をさらに含み得る鎖状の構造部分をいう。オキシエチレン鎖を有するリン酸エステルの一好適例として、EO単位またはその繰返しにより構成されたオキシエチレン鎖を有するリン酸エステルが挙げられる。例えば、以下の一般式(a)で表わされるリン酸エステルまたはその塩を好ましく採用し得る。
Figure 2021004299
上記一般式(a)中のR1は−OHまたは−(OCH2CH2nOR3であり、R2は−(OCH2CH2mOR4を表わす。nおよびmは、EOの付加モル数を表す。EO付加モル数nは、1〜30の整数であり、典型的には1〜20程度の整数であり、好ましくは1〜10程度の整数であり、例えば1〜8程度の整数であり得る。EO付加モル数nは、1〜6程度の整数であることが好ましく、1〜4(例えば2〜4)程度の整数であることがさらに好ましい。一般式(a)において、EO付加モル数mは、典型的には、EO付加モル数nと概ね同様の数であり得る。n,mは、同じであってもよく異なっていてよい。上記R3およびR4は、一価の有機基(典型的には炭化水素基)であり、例えば、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基から選択される基であり得る。R3、R4は、直鎖状または分岐状アルキル基、アリール基またはアルキルアリール基であることが好ましい。R3,R4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜30の有機基であり、炭素原子数6以上(好ましくは8以上、例えば11以上)の有機基であり得る。いくつかの好ましい態様では、R3,R4は、炭素原子数20以下、好ましくは18以下、例えば15以下の有機基であり得る。一般式(a)で表わされるリン酸エステルの塩は、例えば、これらのリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、バリウム塩、トリエタノールアミン塩等であり得る。リン酸エステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記リン酸エステルとしては、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテルリン酸等の、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンジオクチルフェニルエーテルリン酸等の、ポリオキシエチレンアルキルアリールリン酸エステル:等が挙げられる。いくつかの態様において、分子量が150〜5000であるリン酸エステルを好ましく用いることができる。
リン酸エステルの使用量は、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対して、例えば凡そ0.05重量部以上とすることができ、凡そ0.1重量部以上とすることが好ましく、凡そ0.3重量部以上(例えば凡そ0.5重量部以上)とすることがより好ましい。また、被着体表面の低汚染性の観点から、リン酸エステルの使用量は、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対して凡そ5重量部以下(例えば3重量部以下)とすることが適当であり、好ましくは凡そ2重量部以下、より好ましくは凡そ1重量部以下(例えば0.1重量部以下)である。ここに開示される技術は、粘着剤層がリン酸エステルを実質的に含まない態様で好ましく実施することができる。リン酸エステルを含まないか、あるいはその含有量が所定量以下である粘着剤層によると、被着体表面の汚染が高度に抑制されたものとなり得る。
(防錆剤)
ここに開示される粘着剤層は、防錆剤を含んでもよく、含まなくてもよい。いくつかの好ましい態様に係る粘着剤層は防錆剤を含み得る。防錆剤としては、特に限定されず、被着体に対する防錆作用から適切な種が選択される。防錆剤としては、例えば、アミン化合物(例えば有機酸アミン塩や無機酸アミン塩、トリエタノールアミン、脂肪酸系アミン化合物、脂環式アミン類(具体的にはポリオキシアルキレン含有脂環式アミン))、アゾール系化合物(トリアゾール系化合物等)、亜硝酸塩類、安息香酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ジシクロヘキシルアミン安息香酸塩、尿素、ウロトロピン、チオ尿素、カルバミン酸フェニル、シクロヘキシルアンモニウム−N−シクロヘキシルカルバメート(CHC)等が挙げられる。これらの防錆剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アミン系化合物、アゾール系化合物が好ましい。防錆剤種は、粘着特性への影響(例えば架橋反応阻害等の可能性等)を考慮し、選択することが望ましい。
防錆剤(例えばアミン系化合物(アミン系防錆剤)やアゾール系化合物(アゾール系防錆剤))の含有量は特に限定されず、例えば、粘着剤層中、0.01重量%以上(典型的には0.05重量%以上)とすることができる。より良好な腐食等防止効果を得る観点から、上記含有量は、0.1重量%以上であってよく、0.3重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、1.5重量%以上でもよく、2重量%以上(例えば2.5重量%以上)でもよい。一方、防錆剤の含有量は、粘着剤層中、5重量%未満とすることが適当であり、いくつかの好ましい態様では、粘着剤層における防錆剤の含有量は3重量%以下である。防錆剤の使用量を所定量以下に制限することで、経時粘着力の上昇を抑制して、良好な剥離性を好ましく維持することができる。粘着剤層における防錆剤の含有量は、より好ましくは凡そ2重量%以下であり、凡そ1.5重量%以下(例えば凡そ1.0重量%以下)であってもよい。ここに開示される技術は、防錆剤を実質的に使用しない態様でも好ましく実施され得る。防錆剤を含まないか、あるいはその含有量が制限された粘着剤層によると、被着体表面の汚染が高度に抑制されたものとなり得る。また、架橋剤(例えばオキサゾリン系架橋剤)によって架橋されたベースポリマーを使用する態様においては、当該架橋剤の架橋反応を阻害する可能性のある防錆剤(例えばアミン系防錆剤)の含有量が制限されていることが、経時剥離性の観点から特に有意義である。
(その他の成分等)
粘着剤層には、必要に応じて、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、炭化水素系粘着付与剤等の公知の粘着付与剤を含有させることができる。剥離強度が高くなりすぎることを避ける観点から、粘着付与剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ5重量部以下とすることが好ましく、凡そ1重量部以下とすることがより好ましい。ここに開示される保護シートは、ベースポリマーの組成やTg、粘着剤のゲル分率等を通じて粘着力を効果的に制御し得ることから、粘着付与剤を使用しない態様でも好ましく実施され得る。
上記粘着剤層は、必要に応じて、粘度調整剤(増粘剤等)、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の任意添加剤を含有してもよい。また、いくつかの態様に係る粘着剤組成物は、脂肪酸エステル等の可塑剤の含有量が例えばベースポリマー100重量部に対して5重量部未満(例えば1重量部未満)に制限されたものであり得る。典型的には、粘着剤組成物は可塑剤を実質的に含まないものであり得る。また、ここに開示される技術は、イオン性化合物(例えばイオン液体やアルカリ金属塩)等の帯電防止剤(導電剤であり得る。)を実質的に含まない態様で好ましく実施することができる。上記各種任意添加剤に関するその他の事項については、従来公知の各種添加剤や各種方法等を技術常識に基づき適宜採用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に水分散型粘着剤組成物を使用する態様では、粘着剤組成物は、例えば、界面活性剤を用いたエマルション重合により得られたアクリル系ポリマーの水分散液に、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、架橋剤等)を混合することにより調製することができる。上記水分散液は、後述する水性液体を含むものであり得る。例えば、エマルション重合により得られた重合反応液や、該重合反応液に必要に応じてpH調整(例えば中和)、不揮発分含量の調整、粘度の調整等の処理を施したものを用いることができる。通常は、重合反応液にアンモニア水などの中和剤を加えてpHを適当な範囲(例えばpH6〜9程度の範囲)に調整することにより、エマルションの分散安定性が向上し得る。
特に限定するものではないが、粘着剤組成物の不揮発分含量(NV;nonvolatile content)は、例えば、乾燥効率等の観点から凡そ20重量%以上(典型的には凡そ30重量%以上、好ましくは凡そ40重量%以上)とすることができ、また、塗工性等の観点から凡そ75重量%以下(典型的には凡そ70重量%以下、好ましくは凡そ60重量%以下)とすることができる。
(塩化物イオン量)
ここに開示される粘着剤層において、熱水抽出により測定される塩化物イオン量は特に限定されない。いくつかの態様において、粘着剤(層)1g当たりの塩化物イオン量は、300μg未満であり得る。このように塩化物イオン量が制限された粘着剤層によると、防錆剤等の腐食防止成分を添加することなく、あるいはその使用量を制限しつつ、保護対象であるLow-Eガラス板における腐食等が防止される傾向がある。粘着剤(層)1g当たりの塩化物イオン量は凡そ250μg以下が適当であり、凡そ200μg以下(例えば凡そ150μg以下)であり得る。Low-Eガラス板に接する粘着剤の塩化物イオン量を制限することで、Low-Eガラス板における腐食等を長期にわたって防止しやすい構成が得られる。いくつかの態様では、粘着剤(層)1g当たりの塩化物イオン量は、凡そ100μg以下であってもよく、凡そ95μg以下でもよく、凡そ90μg以下でもよく、凡そ85μg以下でもよく、凡そ75μg以下(凡そ70μg以下)でもよい。粘着剤(層)1g当たりの塩化物イオン量の下限値は、理想的には0μgであるが、生産効率や実用上の許容レベル等の観点から、凡そ1μg以上であってもよく、凡そ10μg以上であってもよく、凡そ50μg以上であってもよい。他のいくつかの態様では、粘着剤(層)1g当たりの塩化物イオン量は、凡そ70μg以上でもよく、凡そ100μg以上(例えば凡そ120μg以上)でもよい。ここに開示される技術によると、上記濃度の塩化物イオンを含む粘着剤層に対して、制限された量の防錆剤を添加することにより、経時剥離性を損なうことなく、良好な腐食防止性を実現することができる。
粘着剤(層)1g当たりの塩化物イオン量は、後述の実施例に記載の方法で測定される。あるいは、保護シートと該保護シートを構成する基材層における塩化物イオン量を熱水抽出により測定して両者の塩化物イオン量の差から、粘着剤層からの塩化物イオン量を算出し、得られた値を単位粘着剤(層)当たりの値に換算して求めてもよい。
(ゲル分率)
ここに開示される粘着剤層の酢酸エチル不溶分の重量分率(ゲル分率)は特に限定されず、例えば凡そ40%以上であり得る。いくつかの態様において、粘着剤層のゲル分率は、凡そ50%以上が適当であり、凡そ60%以上が好ましく、凡そ70%以上(例えば凡そ80%以上)がより好ましい。粘着剤層のゲル分率は、例えば凡そ90%以上(例えば凡そ95%以上)であってもよい。ゲル分率の上昇により、粘着剤の凝集性が向上し、経時粘着力が抑制される傾向にある。ゲル分率の上限は、原理上、100%である。いくつかの態様において、ゲル分率は、例えば凡そ98%以下とすることができ、凡そ92%以下(例えば凡そ85%以下)としてもよい。ゲル分率は、例えば、ベースポリマーの組成や含有割合、ベースポリマーの重合方法や重合条件、ベースポリマーの分子量、架橋剤の使用の有無およびその種類ならびに使用量の選択、添加剤種や量等により調節することができる。ゲル分率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(膨潤度)
ここに開示される粘着剤層の膨潤度は特に限定されず、凡そ30倍以下であり得る。膨潤度は、経時剥離性等の観点から、凡そ25倍以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ22倍以下、より好ましくは凡そ20倍以下であり、例えば凡そ18倍以下であってもよい。膨潤度の下限は原理上1倍であり、凡そ3倍以上、例えば凡そ5倍以上であり得る。膨潤度は、例えば、ベースポリマーの組成や含有割合、ベースポリマーの重合方法や重合条件、ベースポリマーの分子量、架橋剤の種類(官能基間距離)や使用量、添加剤種や量等により調節することができる。膨潤度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(粘着剤層厚さ)
ここに開示される保護シートを構成する粘着剤層の厚さは特に限定されない。被着体への糊残りを防止する観点から、上記粘着剤層の厚さは、凡そ50μm以下、凡そ30μm以下が適当であり、凡そ15μm以下が好ましく、凡そ8μm以下(例えば6μm未満)がより好ましい。いくつかの態様では、剥離性等の観点から、粘着剤層の厚さは凡そ5μm以下であることが適当であり、凡そ4μm以下であってもよく、例えば3μm以下であり得る。また、接着性の観点から、粘着剤層の厚さは、凡そ0.5μm以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1μm以上、より好ましくは2μm超である。粘着剤層の厚さは、3μm超であってもよく、例えば4μm超であってもよい。
<基材層>
ここに開示される保護シートは基材層を含み得る。基材層としては、樹脂フィルム、ゴムシート、発泡体シート、これらの複合体等を用いることができる。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡クロロプレンゴムシート等が挙げられる。
ここに開示される技術は、樹脂フィルムを基材層とする保護シートに好ましく適用され得る。ここでいう「樹脂フィルム」は、典型的には、以下に示すような樹脂成分を主体とする樹脂組成物を膜状に成形してなるフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(すなわち、不織布や織布を除く概念)である。実質的に非発泡の樹脂フィルムが好ましい。ここで、非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムを指し、具体的には、発泡倍率が凡そ1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。
樹脂フィルムを構成する樹脂成分の例としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)、ポリ塩化ビニル系樹脂(典型的には、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂)、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、熱可塑性エラストマー(オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、セロハン樹脂等のセルロース系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。樹脂フィルムの好適例としては、ポリオレフィン系樹脂フィルムやポリエステル系樹脂フィルム、塩化ビニル系樹脂フィルムが挙げられる。
特に限定するものではないが、いくつかの態様に係る保護シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーおよびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種または2種以上の樹脂成分を主成分として含む基材層(典型的には、かかる樹脂成分を50重量%を超える割合で含む基材層)を好ましく採用し得る。他のいくつかの態様では、性能、取扱い性、コスト等を考慮して、ポリオレフィン系樹脂層、ポリエステル系樹脂層またはポリ塩化ビニル系樹脂層を含む基材層を好ましく利用し得る。上記樹脂材料のなかでも、熱安定性や軽量性等の点からポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびオレフィン系エラストマーが好ましく、取扱い性等の点からポリオレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーが特に好ましい。
ここに開示される保護シートは、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む(50重量%を超える割合で含む)基材層を備える態様、すなわちポリオレフィン系樹脂フィルムを基材層とする態様で好ましく実施され得る。例えば、基材層全体の50重量%以上がポリエチレン(PE)樹脂またはポリプロピレン(PP)樹脂であるポリオレフィン系樹脂フィルムを好ましく採用することができる。換言すれば、上記ポリオレフィン系樹脂フィルムは、PE樹脂とPP樹脂との合計量が基材層全体の50重量%以上を占めるものであり得る。上記ポリオレフィン系樹脂フィルムは、PE樹脂とPP樹脂とのブレンドであり得る。
上記PP樹脂は、構成単量体としてプロピレンを含む種々のポリマー(プロピレン系ポリマー)を主成分とするものであり得る。1種または2種以上のプロピレン系ポリマーから実質的に構成されるPP樹脂であってもよい。ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、ホモポリプロピレンの他、プロピレンと他のモノマーとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)が包含される。ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、例えば以下のものが含まれる。
プロピレンのホモポリマー(ホモポリプロピレン)。例えばアイソタクチックポリプロピレン。
プロピレンと他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)とのランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)。好ましくは、プロピレンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50重量%以上を占める成分)とするランダムポリプロピレン。
プロピレンに他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)をブロック共重合したコポリマー(ブロックポリプロピレン)。好ましくは、プロピレンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50重量%以上を占める成分)とするブロックポリプロピレン。
上記PE樹脂は、構成単量体としてエチレンを含む種々のポリマー(エチレン系ポリマー)を主成分とするものであり得る。1種または2種以上のエチレン系ポリマーから実質的に構成されるPE樹脂であってもよい。上記エチレン系ポリマーは、エチレンのホモポリマーであってもよく、主モノマーとしてのエチレンに、副モノマーとして他のα−オレフィンを共重合(ランダム共重合、ブロック共重合等)させたものであってもよい。上記α−オレフィンの好適例としては、プロピレン、1−ブテン(分岐1−ブテンであり得る。)、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の、炭素原子数3〜10のα−オレフィンが挙げられる。例えば、上記副モノマーとしてのα−オレフィンが凡そ10重量%以下(典型的には凡そ5重量%以下)の割合で共重合されたエチレン系ポリマーを主成分とするPE樹脂を好ましく採用し得る。
上記PE樹脂はまた、重合性官能基に加えて別の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)とエチレンとのコポリマーを含むPE樹脂や、かかる官能基含有モノマーをエチレン系ポリマーに共重合させたPE樹脂等であってもよい。エチレンと官能基含有モノマーとのコポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸(すなわち、アクリル酸および/またはメタクリル酸)共重合体が金属イオンで架橋されたもの等が挙げられる。
PE樹脂の密度は特に限定されない。ここでいうPE樹脂の概念には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のいずれもが含まれる。いくつかの態様において、上記PE樹脂の密度は、例えば0.90〜0.94g/cm程度であり得る。好ましいPE樹脂として、LDPEおよびLLDPEが挙げられる。上記PE樹脂は、1種または2種以上のLDPEと、1種または2種以上のLLDPEとを含むものであってもよい。各LDPEまたはLLDPEのブレンド比や、LDPEとLLDPEとのブレンド比は特に限定されず、所望の特性を示すPE樹脂となるように適宜設定することができる。ここに開示される保護シートの基材層としては、LLDPEを50重量%超(好ましくは凡そ75重量%以上、例えば凡そ90重量%以上)の割合で含むLLDPEフィルムやLDPEを50重量%超(好ましくは凡そ75重量%以上、例えば凡そ90重量%以上)の割合で含むLDPEフィルム等のポリエチレン系樹脂フィルムを好ましく採用し得る。かかるポリエチレン系樹脂フィルムを構成要素として含む積層樹脂フィルムを用いてもよい。
ここに開示される保護シートの基材層として用いられる樹脂フィルム(例えばポリオレフィン系樹脂フィルム)は、当該基材層への含有が許容される適宜の成分を必要に応じて含有し得る。例えば、充填材、着色剤(無機顔料等の顔料、染料)、酸化防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等を包含する意味である。)、帯電防止剤、可塑剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を適宜配合することができる。各添加剤の配合量は、例えば、保護シートの基材層等として用いられる樹脂フィルムの分野における通常の配合量と同程度とすることができる。
基材層は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも一つの層(好ましくは全ての層)は、上述したいずれかの樹脂フィルムであることが好ましい。例えば、厚さの75%以上(より好ましくは90%以上)が単層または多層(典型的には単層)のポリオレフィン系樹脂フィルムからなる構成の基材層が好ましい。基材層の全体が単層または多層のポリオレフィン系樹脂フィルムからなる基材層であってもよい。経済性の観点から、単層構造の樹脂フィルム(例えば、LLDPEフィルム、LDPEフィルム等)からなる基材層を好ましく採用し得る。
基材層の製造方法は、従来公知の方法を適宜採用すればよく、特に限定されない。例えば、基材層として樹脂フィルムを採用する場合には、インフレーション成形、押出成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用して作製した樹脂フィルムを使用することができる。
基材層の少なくとも一方の面(粘着剤層側の面)が樹脂フィルムの表面である構成において、該樹脂フィルムの表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン曝露、火炎曝露、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材層と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材層への投錨性を向上させるための処理であり得る。基材層としてポリオレフィン系樹脂フィルムを採用する態様では、上記表面処理を施すことが特に有意義である。
ここに開示される保護シートを構成する基材層の厚さは特に限定されない。上記基材層の厚さは、例えば凡そ800μm以下(典型的には凡そ250μm以下)であり得る。いくつかの態様において、基材層(典型的には、非発泡の樹脂フィルム)の厚さは、好ましくは凡そ150μm以下、より好ましくは凡そ100μm以下、さらに好ましくは65μm未満、例えば55μm未満であり得る。基材層の厚さが小さくなると、保護シートの被着体形状への追従性が高まり、浮き剥がれが抑制される傾向にある。また、被着体の保護、ハンドリング性等の観点から、基材層の厚さは、典型的には凡そ10μm以上、好ましくは凡そ25μm以上、より好ましくは30μm超、さらに好ましくは40μm超、例えば45μm超であり得る。
<保護シートの特性>
(塩化物イオン量)
ここに開示される保護シートは、特に限定されるものではないが、熱水抽出により測定される塩化物イオン量が保護シート1g当たり30μg未満(例えば凡そ25μg以下、さらには凡そ20μg以下)であることが適当である。このように塩化物イオン量が制限された保護シートによると、防錆剤等の腐食防止成分を添加することなく、あるいはその使用量を制限しつつ、保護対象であるLow-Eガラス板における腐食等を長期にわたって防止する構成が得られやすい。保護シート1g当たりの塩化物イオン量は、好ましくは15μg未満、より好ましくは12μg未満、さらに好ましくは10μg未満である。いくつかの好ましい態様では、熱水抽出により測定される塩化物イオン量が保護シート1g当たり8.9μg未満(例えば凡そ8.5μg以下)である。いくつかの態様において、保護シート1g当たりの塩化物イオン量は、好ましくは8.0μg未満、より好ましくは7.0μg未満、さらに好ましくは6.5μg未満、特に好ましくは6.0μg未満(例えば5.5μg未満)である。保護シート1g当たりの塩化物イオン量の下限値は、理想的には0μgであるが、生産効率や実用上の許容レベル等の観点から、凡そ1μg以上であってもよく、凡そ3μg以上であってもよく、凡そ5μg以上であってもよい。他のいくつかの態様では、保護シート1g当たりの塩化物イオン量は、凡そ8μg以上であってもよく、凡そ12μg以上でもよい。ここに開示される技術によると、上記濃度の塩化物イオンを含む保護シートに対して、制限された量の防錆剤を用いることにより、経時剥離性を損なうことなく、良好な腐食防止性を実現することができる。保護シート1g当たりの塩化物イオン量は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(対ガラス初期粘着力)
ここに開示される保護シートは、Low-Eガラス板に貼り付けて30分後に0.3m/分の引張速度、180度の剥離角度で測定される初期剥離強度(対ガラス初期粘着力)が凡そ0.01N/20mm以上であることが適当である。いくつかの態様において、上記初期剥離強度は凡そ0.05N/20mm以上(例えば凡そ0.1N/20mm以上)であり得る。いくつかの好ましい態様において、上記初期剥離強度は凡そ0.5N/20mm以上(例えば凡そ1N/20mm以上)であり、凡そ1.5N/20mm以上であってもよい。上記の初期剥離強度を示す保護シートは、被着体に貼り付けられた後、比較的短時間のうちに被着体に良好に接着し、被着体からの浮き剥がれ等が生じにくく、良好な保護性能を発揮し得る。上記初期剥離強度の上限は特に制限されず、軽剥離性の観点から、凡そ5N/20mm以下が適当であり、好ましくは凡そ3.3N/20mm以下、より好ましくは凡そ2.5N/20mm以下(例えば凡そ2N/20mm以下)である。上記初期剥離強度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(対ガラス経時粘着力)
ここに開示される保護シートは、Low-Eガラス板に貼り付けて50℃で7日間保存した後に0.3m/分の引張速度、180度の剥離角度で測定される経時剥離強度(対ガラス経時粘着力)が凡そ3.3N/20mm以下であることが好ましい。この特性を満足する保護シートは、被着体への貼付け期間が比較的長くても、経時粘着力が十分に抑制されており、該被着体からの軽剥離性を維持し得る。したがって、被着体からの除去作業性に優れる。上記経時剥離強度が凡そ3.0N/20mm以下(より好ましくは凡そ2.7N/20mm以下、さらに好ましくは凡そ2.4N/20mm以下、例えば凡そ2.1N/20mm以下)である保護シートによると、より良好な剥離作業性(経時剥離性)が実現され得る。また、被着体の保護期間中(例えば、保護シートが貼り付けられた被着体の加工時)における浮き剥がれを抑制する観点から、上記経時剥離強度は、凡そ0.05N/20mm以上であることが適当であり、好ましくは凡そ0.1N/20mm以上、より好ましくは凡そ0.3N/20mm以上である。上記経時剥離強度は凡そ1N/20mm以上(例えば凡そ1.5N/20mm以上)であってもよい。上記経時剥離強度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(剥離強度比)
特に限定するものではないが、ここに開示される保護シートは、初期剥離強度P[N/20mm]に対する経時剥離強度P[N/20mm]の比(すなわちP/P比)が5倍以下であり得る。P/P比が小さいことは、剥離強度の経時上昇が少ないことを意味する。このことによって初期接着性と剥離作業時の軽剥離性とが好適に両立される。かかる観点から、P/P比は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、例えば1.8以下であってもよく、1.5以下、さらには1.3以下であってもよい。また、P/P比は、典型的には0.8以上であり、例えば1以上であり得る。
(VOC放散量)
ここに開示される保護シートは、環境衛生の観点から、該保護シートを80℃で30分間加熱したときの該保護シート(基材層および粘着剤層は含み得る。ただし、剥離ライナーは含まない。)1gから放散される揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compounds)の総量(以下、単にVOC放散量ともいう。)が1000μg(以下、これを「μg/g」と表記することがある。)以下であることが好ましい。上記VOC放散量は500μg/g以下(例えば300μg/g以下、典型的には100μg/g以下)であることがより好ましい。VOC放散量は、以下の方法で測定される。
[VOC測定試験]
保護シートを所定のサイズ(ここでは面積約5cmのサイズ)にカットし、剥離ライナーを剥がしたものを試料片とし、該試料片を20mLのバイアル瓶に入れて密栓する。次いで、上記バイアル瓶を80℃で30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mL(サンプルガス)をヘッドスペースオートサンプラー(HSS)を用いてガスクロマトグラフ(GC)測定装置に注入する。得られたガスクロマトグラムに基づいて、上記試料片から発生したガス量をn−デカン換算量として求める。得られた値から、保護シート(剥離ライナーを除く)1g当たりのVOC放散量(μg/g)を求める。なお、このn−デカン換算量は、GC Massにより得られる発生ガスの検出強度をn−デカンの検出強度とみなして、あらかじめ作成したn−デカンの検量線を適用することにより求める。HSSおよびGCの設定は以下のとおりである。
HSS:Agilent Technologies社製 型式「7694」
加熱時間:30分間
加圧時間:0.12分
ループ充填時間:0.12分
ループ平衡時間:0.05分
注入時間:3分
サンプルループ温度:160℃
トランスファーライン温度:200℃
GC装置:Agilent Technologies社製 型式「6890」
カラム:ジーエルサイエンス社製 J&W キャピラリーカラム 商品名「DB−ffAP」(内径0.533mm×長さ30m、膜厚1.0μm)
カラム温度:250℃(40℃から90℃まで10℃/分で昇温し、引き続き250℃まで20℃/分で昇温して5分保持)
カラム圧力:24.3kPa(定流モード)
キャリアーガス:ヘリウム(5.0mL/分)
注入口:スプリット(スプリット比 12:1)
注入口温度:250℃
検出器:FID
検出器温度:250℃
ここに開示される保護シートは、後述の実施例に記載の方法で実施されるLow-Eガラス板腐食評価試験(40℃92%RH×7日)において変色なしと評価される腐食等防止性を有するものであり得る。この特性を満足する保護シートは、Low-Eガラス板保護用途において優れた腐食防止性を発揮し得る。
<粘着剤組成物の調製方法>
ここに開示される粘着剤組成物の調製方法は、特に限定されず、従来公知または慣用の粘着剤組成物調製方法を適宜採用することができる。特に限定されるものではないが、いくつかの態様に係る粘着剤組成物調製方法は、例えば、(a)電気伝導度が300μS/cm未満である;および(b)塩化物イオン量が35μg/mL未満である;のうち少なくとも一方を満足する水性液体を用いることが好ましい。この方法によると、Low-E層における腐食等を防止し得る粘着剤組成物を得ることができる。このような粘着剤組成物は、Low-Eガラス板の保護用途に特に好ましく用いられる。
(水性液体の用意)
いくつかの態様に係る粘着剤組成物の調製方法は、上記水性液体を用意する工程を含み得る。上記(a)および/または(b)を満足する水性液体は、地表水、地下水(井戸水であり得る。)を含む原水や、水道水、公知の水処理を実施した処理水のなかから、所望の電気伝導度および/または塩化物イオン量を満足する水性液体を、必要に応じて分析するなどして選択することにより得ることができる。
いくつかの好ましい態様では、上記水性液体は、原水等の水性液体(未処理水性液体)に、濾過、膜分離、イオン交換、蒸留、物理吸着、電気分解等の公知の処理を施すことにより得られる。なかでも、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等を用いた膜分離による処理がより好ましく、逆浸透膜が特に好ましい。水処理方法として、イオン交換を採用する場合は、陽イオン交換(陽イオン交換樹脂使用)、陰イオン交換(陰イオン交換樹脂使用)、それらの混合系のいずれも使用可能であるが、腐食等の主因と考えられるアニオン(典型的には塩化物イオン)を除去する観点から、イオン交換水を使用する場合、陰イオン交換を採用することが好ましい。この態様において、上記処理工程に用いられる未処理水性液体は、電気伝導度が300μS/cm以上であり、且つ塩化物イオン量が35μg/mL以上である。処理装置としては、特に制限されず、公知または慣用の処理装置を用いることができる。処理条件についても、未処理水や装置、要求水質に応じて適切に設定すればよく、特定の条件に限定されない。
(粘着剤組成物の調製)
次いで、上記のようにして用意された水性液体を用いて、粘着成分としてのポリマー(ベースポリマー)を含むポリマー含有液を得る。すなわち、ここに開示される方法は、上記水性液体とポリマーとを含むポリマー含有液を得る工程を含み得る。水性液体の使用形態は、粘着剤組成物の調製に用いられるかぎり特に制限されず、使用のタイミングも特に制限されない。なお、上記水性液体は粘着剤組成物の調製用水ともいう。調製用水の使用形態としては、ポリマーの重合における重合用水、重合後に添加されるポスト重合用水(後添加水)としての使用が挙げられる。得られるポリマー含有液は、そのまま粘着剤組成物として用いてもよく、ポリマー含有液にさらに添加成分を混合したものを粘着剤組成物として用いてもよい。上記水性液体を用いて得られる粘着剤組成物は、上記ポリマーの少なくとも一部(典型的には全部)が上記水性液体に分散した水分散型粘着剤組成物の形態であり得る。粘着剤組成物に用いられるポリマー(典型的にはベースポリマー)の詳細や、粘着剤組成物の詳細、粘着剤組成物の調製に関わるその他の事項については前述のとおりであるので、重複する説明は省略する。
いくつかの好ましい態様では、上記水性液体は、エマルション重合における重合用水として用いられる。すなわち、ここに開示される粘着剤組成物調製方法は、上記水性液体の存在下でエマルション重合を実施してポリマーを得る工程を含み得る。エマルション重合によって得られるポリマーの詳細については前述のとおりであるので、重複する説明は省略する。
(水性液体の特性)
いくつかの態様において、粘着剤組成物の調製に使用される水性液体の電気伝導度は特に限定されない。水性液体中の塩化物イオンが所定量未満に制限されていることが好ましく、その場合、水性液体の電気伝導度が300μS/cm未満でなくてもよい。一方、電気伝導度は水性液体中のイオン量と相関するので、腐食等の原因となるイオン量制限の観点から、他のいくつかの態様における水性液体の電気伝導度は、好ましくは300μS/cm未満、より好ましくは200μS/cm未満、さらに好ましくは100μS/cm未満、特に好ましくは50μS/cm未満(例えば30μS/cm未満、さらには15μS/cm未満)である。このような水性液体は、腐食等の主因と考えられる塩化物イオン量を定量することなく、腐食等防止性を有するものとして用いることができる。
使用する水性液体の電気伝導度の下限は、理論的下限値(室温で0.05μS/cm付近)であり得るが、生産効率や実用上の許容レベル等を考慮して、凡そ1μS/cm以上であってもよく、凡そ5μS/cm以上であってもよく、凡そ10μS/cm以上であってもよく、凡そ50μS/cm以上(例えば凡そ100μS/cm以上、さらには凡そ200μS/cm以上)であってもよい。
水性液体の電気伝導度は、市販の電気伝導計を用いて室温(23℃)にて測定される。具体的には、堀場製作所社製のポータブル電気伝導率計「ES−71」またはその相当品を用いて測定することができる。
いくつかの態様において、粘着剤組成物の調製に使用される水性液体は、塩化物イオン量が制限されていることが好ましい。具体的には、水性液体の電気伝導度が300μS/cm以上の場合には、その塩化物イオン量は35μg/mL未満であることが好ましい。これによって、腐食等防止効果を実現することができる。なお、特に限定するものではないが、水性液体における塩化物イオン量は、その電気伝導度が300μS/cm未満の場合にも35μg/mL未満であることが好ましい。その場合、ここに開示される粘着剤組成物の調製において使用される水性液体は、その電気伝導度にかかわらず35μg/mL未満の塩化物イオンを含む。
いくつかの態様において、上記水性液体の塩化物イオン量は35μg/mL未満(例えば30μg/mL未満)であることが適当であり、好ましくは25μg/mL未満、より好ましくは20μg/mL未満、さらに好ましくは15μg/mL未満、特に好ましくは10μg/mL未満、最も好ましくは5μg/mL未満であり、3μg/mL未満(例えば1μg/mL未満)であってもよい。上記水性液体の塩化物イオン量の下限値は、理想的には0μg/mLであるが、生産効率や実用上の許容レベル等を考慮し、凡そ1μg/mL以上であってもよく、凡そ3μg/mL以上であってもよい。
いくつかの好ましい態様では、上記水性液体は、電気伝導度C[μS/cm]に対する塩化物イオン量ACl[μg/mL]の比(ACl/C)が凡そ1/5以下である。上記比(ACl/C)が所定値以下であることは、全イオンのなかで塩化物イオン量が相対的に低いことを意味する。上記比(ACl/C)を凡そ1/5以下とすることにより、腐食等防止性と生産性との両立を好ましく実現することができる。上記比(ACl/C)は、より好ましくは凡そ1/8以下であり、凡そ1/10以下であってもよく、凡そ1/15以下であってもよい。上記比(ACl/C)の下限値は特に制限されず、凡そ1/30以上(例えば凡そ1/20以上)であり得る。
いくつかの態様に係る粘着剤組成物の調製において使用される水性液体は、腐食等防止の観点から硫酸イオン量が制限されていることが望ましい。水性液体における硫酸イオン量は、凡そ50μg/mL以下であり、凡そ35μg/mL以下(例えば凡そ25μg/mL以下)とすることが適当であり、好ましくは凡そ15μg/mL以下、より好ましくは凡そ5μg/mL以下、さらに好ましくは凡そ2μg/mL以下(例えば凡そ1μg/mL以下)である。上記水性液体の硫酸イオン量の下限値は、理想的には0μg/mLであるが、生産効率や実用上の許容レベル等を考慮して、凡そ10μg/mL以上であってもよく、凡そ20μg/mL以上であってもよい。
いくつかの態様に係る粘着剤組成物の調製において使用される水性液体は、腐食等防止の観点から硝酸イオン量が制限されていることが望ましい。水性液体における硝酸イオン量は、凡そ30μg/mL以下であり、凡そ20μg/mL以下(例えば凡そ10μg/mL以下)とすることが適当であり、好ましくは凡そ7μg/mL以下、より好ましくは凡そ5μg/mL以下、さらに好ましくは凡そ2μg/mL以下(例えば凡そ1μg/mL以下)である。上記水性液体の硝酸イオン量の下限値は、理想的には0μg/mLであるが、生産効率や実用上の許容レベル等を考慮して、凡そ1μg/mL以上であってもよく、凡そ3μg/mL以上であってもよく、凡そ5μg/mL以上(例えば10μg/mL以上)であってもよい。
いくつかの態様に係る粘着剤組成物の調製に使用される水性液体において、硝酸イオンと硫酸イオンと塩化物イオンの合計量は80μg/mL以下程度であることが適当である。これら腐食等の原因となり得る複数種のイオンの総量を制限することにより、腐食等をより確実に防止することができる。上記3種のイオンの合計量は、好ましくは50μg/mL未満、より好ましくは30μg/mL未満、さらに好ましくは15μg/mL未満であり、凡そ10μg/mL以下(例えば凡そ5μg/mL以下)であってもよい。上記水性液体における3種のイオンの合計量の下限値は、理想的には0μg/mLであるが、生産効率や実用上の許容レベル等の観点から、凡そ1μg/mL以上であってもよく、凡そ5μg/mL以上であってもよく、凡そ10μg/mL以上(例えば30μg/mL以上)であってもよい。
腐食等防止の観点から、ここに開示される技術においては、上記水性液体に含まれるイオンのうち、アニオン(典型的には塩化物イオン)量を制限することが好ましい。一方、水性液体中の陽イオン量は特に制限されない。いくつかの態様においては、水性液体中の陽イオン量は、電気伝導度300μS/cm未満となる範囲内であり得る。例えば、一般的な軟水化処理で除去されるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量は特に限定されず、粘着剤組成物の調製において使用される水性液体中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量は1μg/mL以上であってもよく、凡そ10μg/mL以上であってもよく、20μg/mL以上であってもよい。
水性液体の塩化物イオン量、硫酸イオン量、硝酸イオン量、カルシウムイオン量、マグネシウムイオン量は、市販の各イオン標準液(例えば和光純薬工業社より入手可能)を用いたイオンクロマトグラフ法により測定することができる。具体的には、以下の方法で測定される。
[水性液体のイオン量測定]
イオンクロマトグラフィ測定条件は下記のとおりである。
(測定条件)
アニオン分析:
装置:Thermo Fisher Scientific社製の「ICS−3000」
分離カラム:Dionex IonPac AS18-fast(4mm×250mm)
ガードカラム:Dionex IonPac AG18-fast(4mm×50mm)
除去システム:Dionex AERS-500(エクスターナルモード)
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:KOH水溶液(溶離液ジェネレーターカートリッジ使用)
溶離液流量:1.0mL/min
試料注入量:250μL
カチオン分析:
装置:Thermo Fisher Scientific社製の「DX−320」
分離カラム:Dionex Ion Pac CS16(5mm×250mm)
ガードカラム:Dionex Ion Pac CG16(5mm×50mm)
除去システム:Dionex CSRS-500(リサイクルモード)
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:メタンスルホン酸水溶液
溶離液流量:1.0mL/min
試料注入量:25μL
なお、ここに開示される水性液体とは水(HO)を主成分とする液体をいい、水よりも少ない割合でアルコール等の有機溶剤を含んでもよい。典型的には、水性液体として水の割合が50体積%を超える液体が用いられる。水性液体における水の割合は、例えば凡そ90体積%以上であり、凡そ99体積%以上(例えば99.9体積%以上)が適当である。
<保護シートの製造方法>
ここに開示される技術は保護シートの製造方法を含む。この保護シートの製造方法は、上記の調製方法により粘着剤組成物を得る工程と、得られた粘着剤組成物から粘着剤層を形成する工程と、を含む方法であり得る。このような粘着剤層を有する保護シートは、粘着剤に由来する腐食等が防止され得るので、Low-Eガラス板の保護用途に特に好ましく用いられる。保護シートが基材層と粘着剤層とを備える構成においては、保護シートの製造方法は、基材層の一方の面に粘着剤層を設ける工程を含み得る。
粘着剤層の形成は、公知の粘着シートにおける粘着剤層形成方法に準じて行うことができる。例えば、基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、目的や用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、コンマコーター、ディップロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40℃〜150℃程度とすることができ、50℃〜130℃(例えば60℃〜100℃)程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
<ガラスユニットの製造方法>
ここに開示されるガラスユニットの製造方法は、ガラス基板と、該ガラス基板上に積層されたLow-E層とを備えるLow-Eガラス板を用意する工程(A)と;Low-Eガラス板のLow-E層表面に保護シートを貼り付ける工程(B)と;保護シートが貼り付けられたLow-Eガラス板につき、輸送、保管、加工、洗浄およびハンドリングからなる群から選択される少なくとも1つを実施する任意の工程(C)と;Low-Eガラス板から保護シートを除去する工程(D)と;上記Low-Eガラス板を用いてガラスユニットを組み立てる工程(E)と;を含み得る。この方法では、ここに開示される保護シート(表面保護シートともいう。)を用いる。以下、図2を参照しながら説明する。
まず、工程(A)において、図2に示すように、ガラス基板110と、ガラス基板110上に積層されたLow-E層120とを備えるLow-Eガラス板100を用意する(S10)。Low-Eガラス板100は、ガラス基板110の一方の表面にLow-E層120を形成することによって用意される。Low-E層は、金属層や、金属酸化物層等の酸化物層、窒化ケイ素層等の窒化物層等の層を含み、通常、多層構造を有し、スパッタリング等の公知または慣用の方法で形成される。Low-E層の各層を構成する材料としては、TiO2、ZrO2、SiXY、ZnOX、Ag、NiCrOX、SnO2等が挙げられる。赤外線反射層としては、Ag層が好ましく用いられる。いくつかの態様に係るLow-E層において、Ag層は典型的にはZnOX層に挟まれている。Low-E層の最外面(保護シートが貼り付けられる表面)の材料は、TiO2層、ZrO2層、ZnOX層、NiCrOX層、SnO2層等の酸化物、SiXY層等の窒化物であることが多く、通常はAg等の金属ではない。Low-E層は、目的、要求特性に応じて5層以上、例えば10層以上、さらには15層以上の多層構造を有するものであり得る。各層の厚さは特に限定されず、通常は0〜1000Åであり、凡そ10〜700Åが適当であり、例えば凡そ30〜300Åである。Low-E層の厚さ(総厚)は、凡そ10nm〜1000nm(例えば凡そ50〜500nm)程度であり得る。ガラス基板のサイズは特に限定されず、一辺(幅)の長さが例えば凡そ1m以上、凡そ2m以上程度であり、最近では2.6mを超えるもの、さらには凡そ3m以上(例えば凡そ3.3m以上)の大面積のものが用いられている。Low-Eガラス板は、市販品等、一般に入手可能なものやその改変物であってもよく、公知ないし慣用の方法で作製されたものであってもよい。
工程(B)では、図2に示すように、ガラス基板110に形成されたLow-E層120表面に保護シート200を貼り付ける(S20)。保護シート200は、典型的には、上記表面に剥離可能に貼り付けられる。ここで、「剥離可能に貼り付ける」とは、剥離除去が意図または予定されている貼付けを意味し、多くの場合、保護シート(粘着シート)を剥離した後の被着体表面が貼付け前と基本的に同じ状態を維持し得る貼付けをいう。保護性の観点から、保護シート200のサイズはLow-E層120表面と同程度とすることが好ましい。保護対象面に対して、2枚以上の保護シートを部分的に重ね合わせるなどして被覆してもよい。保護シート200でLow-E層120表面を覆うことにより、Low-E層120の腐食等を防止または抑制することができる。
工程(B)の後、工程(C)として、保護シートが貼り付けられたLow-Eガラス板につき、輸送、保管、加工、洗浄およびハンドリングからなる群から選択される少なくとも1つの工程が任意に実施され得る(S30)。加工は、保護シートが貼り付けられたLow-Eガラス板の切断、エッジシーム等であり得る。切断手段、切断後のサイズは、目的に応じて適切に設定され特に制限はない。保護シートは、Low-Eガラス板の切断後もLow-E層表面に貼り付けられた状態であり得る。切断されたLow-Eガラス板は、典型的には水等によって洗浄される。洗浄工程では、水に加えて、任意に、洗剤(界面活性剤を含む)が使用され得る。上記輸送、保管、切断等の加工処理、水洗等の洗浄、各種ハンドリングの間、図2に示すように、Low-E層120は、保護シート200がその上に存在することによって損傷や摩耗、劣化、腐食等から保護される。
次いで、工程(D)において、Low-Eガラス板100から保護シート200を除去する(S40)。保護シート200は、保護目的を達成した後、被着体であるLow-Eガラス板100から除去される。保護シート200が除去されたLow-Eガラス板100は、通常、加熱炉内で熱処理され、焼き戻しされる。その後、図2に示すように、当該Low-Eガラス板100を用いてガラスユニット300が作製される(S50)。ガラスユニット300は、典型的には、遮熱性または断熱性ガラスユニットであり、少なくとも一方がLow-Eガラス板100である一対のガラス板を用意し、Low-Eガラス板100のLow-E層120表面を内側に向けてペアガラスとすることで作製され得る。図中の符号320,340は、ガラスユニット300を構成する他のガラス板、スペーサをそれぞれ表す。スペーサ340は、Low-Eガラス板100と他のガラス板320との間に配置されて、ガラス板100,320間に空間を作出する。なお、ここに開示される方法において、保護シートに加えて、公知ないし慣用の粉末または液体コーティングを併用してもよい。
<保護方法>
ここに開示される保護方法は、ここに開示される保護シート(表面保護シートともいう。)を用いる保護方法であり、典型的には、Low-Eガラス板の表面の一部または全部を保護する方法である。ここに開示される保護方法は、Low-Eガラス板の表面に保護シートを貼り付ける工程(貼付け工程)を含むことによって特徴づけられる。
また、ここに開示される保護方法は、上記Low-Eガラス板から保護シートを除去する工程(除去工程)をさらに含み得る。さらに、貼付け工程および除去工程の間に、保護シートが貼り付けられた物品につき、輸送、保管、加工、洗浄およびハンドリングからなる群から選択される少なくとも1つの工程を任意に含んでもよい。
ここに開示される保護方法の好適例は、上述のガラスユニットの製造方法に記載のとおりであり、本保護方法における貼付け工程および除去工程は、上記製造方法における工程(B)および(D)にそれぞれ対応する。保護方法におけるその他の事項については、特に限定されるものではないが、上述のガラスユニットの製造方法の説明を参酌して当業者に理解され得るので、ここでは詳細な説明は省略する。
<用途>
ここに開示される保護シートは、窓ガラス等の建築材料として用いられるガラス板用保護シートに好適である。貼り付け対象となるガラス板は、典型的には、ガラス基板と、該ガラス基板上に積層されたコーティング層とを備え、該コーティング層は金属層を含むものであり得る。より具体的には、上記ガラス板は、一方の表面にLow-E層を有するガラス板である。Low-E層は、通常、銀等の金属層を含む。上記ガラス板の製造では、Low-Eガラス板を含む2枚のガラス板を、Low-E層側表面を内側に向けてペアガラスとするまで、Low-E層形成面は露出した状態となり得る。そのLow-E層形成面を損傷、摩耗、劣化、腐食等から防ぐ目的で、ここに開示される保護シートは好ましく用いられる。すなわち、保護シートは、Low-E層形成面保護シートとして用いられ得る。Low-Eガラス板は、従来のガラス板に比べて高い遮熱性、断熱性を有し、室内空間の冷暖房効率を改善し得ることから、窓ガラス等の建築材料として広く用いられている。ここに開示される技術は、そのような材料の製造に用いられることにより、省エネルギー化、温室効果ガス排出低減に間接的に貢献し得る。
また、ここに開示される保護シートは、除去作業性の点から剥離強度が制限されがちな大面積の被着体表面に対して好ましく用いられる。ここに開示される保護シートは、凡そ1m以上、例えば凡そ1.5m以上、さらには凡そ2m以上(典型的には凡そ3m以上、さらには凡そ3.3m以上)の幅を有する被着体表面全体を覆う態様で好ましく用いられる。かかる被着体表面の長さは上記幅と同等以上である。いくつかの好ましい態様では、上記のような大面積の平板(好適には、平滑表面を有する平板)の一方の表面全体を覆う態様で好ましく用いられる。特に、窓ガラス等の建材用ガラス板は、生産、運搬等の効率面から大面積化が進んでいる。そのような大面積を有する(例えば、表面幅が2.6mを超える、典型的には表面幅が凡そ3m以上、さらには凡そ3.3m以上である)ガラス板の表面全体(典型的にはLow-Eガラス板のLow-E層形成面全体)を覆う態様で好ましく用いられる。ここに開示される技術の好ましい態様によると、上記のような大面積の被着体に対して、保護性能を発揮しつつ、良好な経時剥離性を維持することができる。
さらに、ここに開示される保護シートは、経時粘着力が抑制されたものであり得るので、例えば、被着体への貼付け期間(被着体の保護期間でもあり得る。)が比較的長く(典型的には2週間以上、例えば4週間以上に)なっても良好な除去作業性を発揮し得る。したがって、例えば、被着体(具体的にはLow-Eガラス板)への貼付けから該被着体からの除去までの期間が2週間以上(例えば4週間以上)となり得る使用態様でも好適に利用され得る。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) ガラスユニットの製造方法であって、
ガラス基板と、該ガラス基板上に積層されたLow-E層とを備えるLow-Eガラス板を用意する工程(A)と;
前記Low-Eガラス板の前記Low-E層表面に保護シートを貼り付ける工程(B)と;
前記保護シートが貼り付けられた前記Low-Eガラス板につき、輸送、保管、加工、洗浄およびハンドリングからなる群から選択される少なくとも1つを実施する任意の工程(C)と;
前記Low-Eガラス板から前記保護シートを除去する工程(D)と;
前記Low-Eガラス板を用いてガラスユニットを組み立てる工程(E)と;
を含み、
ここで、前記保護シートは粘着剤層を備えており、
前記粘着剤層は、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む、方法。
(2) 前記Low-Eガラス板は1m以上の幅を有する、上記(1)に記載の方法。
(3) 前記Low-Eガラス板は2m以上の幅を有する、上記(1)に記載の方法。
(4) 前記Low-Eガラス板は2.6m超の幅を有する、上記(1)に記載の方法。
(5) 前記Low-Eガラス板は3m以上の幅を有する、上記(1)に記載の方法。
(6) 前記Low-E層は金属層を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 前記Low-E層は銀層を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(8) 前記Low-E層の厚さは1000nm以下である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 前記工程(B)は、少なくとも1枚の前記保護シートで前記Low-Eガラス板の一方の表面全体を覆う工程を含む、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10) 前記工程(C)は必須の工程であり、該工程(C)において、前記Low-Eガラス板に対して水を用いた洗浄を実施する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) ガラス基板と、該ガラス基板上に積層されたLow-E層とを備えるLow-Eガラス板の表面に保護シートを貼り付ける工程(貼付け工程);を含み、
ここで、前記保護シートは粘着剤層を備えており、
前記粘着剤層は、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む、Low-Eガラス板の保護方法。
(12) 前記Low-Eガラス板から前記保護シートを除去する工程(除去工程)をさらに含み、
前記貼付け工程および除去工程の間に、前記保護シートが貼り付けられた前記Low-Eガラス板の輸送、保管、加工、洗浄およびハンドリングからなる群から選択される少なくとも1種の工程を任意に含んでよい、上記(11)に記載の方法。
(13) 前記Low-Eガラス板は1m以上の幅を有しており、
前記貼付け工程は、少なくとも1枚の前記保護シートで前記Low-Eガラス板の一方の表面全体を覆う工程を含む、上記(11)または(12)に記載の方法。
(14) 熱水抽出により測定される塩化物イオン量が前記粘着剤層1g当たり300μg未満である、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 前記粘着剤層は、水分散型粘着剤組成物から形成されたものである、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16) 前記粘着剤層における防錆剤の含有量は3重量%以下である、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17) 前記防錆剤はアミン系防錆剤である、上記(16)に記載の方法。
(18) 前記ベースポリマーはアクリル系ポリマーおよびゴム系ポリマーから選択される、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19) 前記ベースポリマーは、架橋剤によって架橋されている、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20) 前記架橋剤はオキサゾリン系架橋剤である、上記(19)に記載の方法。
(21) 粘着剤層を備えており、
前記粘着剤層は、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む、保護シート。
(22) 熱水抽出により測定される塩化物イオン量が前記粘着剤層1g当たり300μg未満である、上記(21)に記載の保護シート。
(23) 前記粘着剤層は、水分散型粘着剤組成物から形成されたものである、上記(21)または(22)に記載の保護シート。
(24) 前記粘着剤層における防錆剤の含有量は3重量%以下である、上記(21)〜(23)のいずれかに記載の保護シート。
(25) 前記防錆剤はアミン系防錆剤である、上記(24)に記載の保護シート。
(26) 前記ベースポリマーはアクリル系ポリマーおよびゴム系ポリマーから選択される、上記(21)〜(25)のいずれかに記載の保護シート。
(27) 前記ベースポリマーは、架橋剤によって架橋されている、上記(21)〜(26)のいずれかに記載の保護シート。
(28) 前記架橋剤はオキサゾリン系架橋剤である、上記(27)に記載の保護シート。
(29) 前記粘着剤層を支持する基材層を備える、上記(21)〜(28)のいずれかに記載の保護シート。
(30) Low-Eガラス板に対する50℃1週間経過後180度剥離強度は3.3N/20mm以下である、上記(21)〜(29)のいずれかに記載の保護シート。
(31) 前記保護シートはLow-Eガラス板保護シートである、上記(21)〜(30)のいずれかに記載の保護シート。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<評価方法>
[ゲル分率および膨潤度の測定]
約0.1gの粘着剤層サンプル(重量W1)を平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(重量W2)で巾着状に包み、口をタコ糸(重量W3)で縛る。上記多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜としては、商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(日東電工社製、平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用する。この包みを酢酸エチル50mLに浸し、室温(典型的には23℃)で7日間保持した後、上記包みを取り出し、外表面に付着している酢酸エチルを拭き取り、該包みの重量(W4)を測定する。次いで、上記包みを130℃で2時間乾燥させ、該包みの重量(W5)を測定する。各値を以下の式に代入することにより、粘着剤層のゲル分率および膨潤度を算出することができる。
ゲル分率(%)=[(W5−W2−W3)/W1]×100
膨潤度(倍)=(W4−W2−W3)/(W5−W2−W3
[初期剥離強度]
測定対象である保護シートを幅20mm、長さ100mmの短冊状にカットして試験片を作製する。23℃、50%RHの標準環境下にて、この試験片を、被着体としてのLow-Eガラス板に、2kgのゴムローラを2往復させて圧着する。このサンプルを上記標準環境下に30分間保持した後、該標準環境下にて、万能引張試験機を用いて、引張速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で、初期剥離強度(対ガラス初期粘着力)[N/20mm]を測定する。Low-Eガラス板としては、日本板硝子社製の品番「RSFL6AS」(100mm×100mm)を用いる。なお、被着体としては、Low-ガラス板であれば特に制限なく使用することができ、上記製品の相当品や他の市販のLow-Eガラス板を用いてもよい。
[経時剥離強度]
測定対象である保護シートを幅20mm、長さ100mmの短冊状にカットして試験片を作製する。23℃、50%RHの標準環境下にて、この試験片を、被着体としてのLow-Eガラス板に、2kgのゴムローラを2往復させて圧着する。このサンプルを50℃の環境下に7日間保存し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に1時間保持した後、該標準環境にて、万能引張試験機を用いて、引張速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で、経時剥離強度(対ガラス経時粘着力)[N/20mm]を測定する。被着体として用いるLow-Eガラス板は、上記初期剥離強度測定の場合と同様である。
[粘着剤(層)の塩化物イオン量]
測定対象である保護シートを純水でよく洗って、シート面積200cmサイズに切り出し、粘着剤のみを採取する。採取した粘着剤をポリプロピレン(PP)製容器に入れて秤量する。純水25mLをPP製容器に添加し、乾燥器を用いて120℃で1時間の加温抽出を行う。得られた抽出液について、イオンクロマトグラフ法で、市販の塩化物イオン標準液(和光純薬工業社より入手)を用いて抽出液中の塩化物イオン量を定量し、抽出に用いた粘着剤1g当たりの塩化物イオン量を求める。イオンクロマトグラフィ測定条件は下記のとおりである。
(測定条件)
アニオン分析:
装置:Thermo Fisher Scientific社製の「ICS−3000」
分離カラム:Dionex IonPac AS18-fast(4mm×250mm)
ガードカラム:Dionex IonPac AG18-fast(4mm×50mm)
除去システム:Dionex AERS-500(エクスターナルモード)
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:KOH水溶液(溶離液ジェネレーターカートリッジ使用)
溶離液流量:1.0mL/min
試料注入量:250μL
カチオン分析:
装置:Thermo Fisher Scientific社製の「DX−320」
分離カラム:Dionex Ion Pac CS16(5mm×250mm)
ガードカラム:Dionex Ion Pac CG16(5mm×50mm)
除去システム:Dionex CSRS-500(リサイクルモード)
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:メタンスルホン酸水溶液
溶離液流量:1.0mL/min
試料注入量:25μL
[保護シートの塩化物イオン量]
測定対象である保護シートを純水でよく洗って、シート面積50cmサイズに切り出し、ポリプロピレン(PP)製容器に入れて秤量する。純水25mLをPP製容器に添加し、乾燥器を用いて120℃で1時間の加温抽出を行う。得られた抽出液について、イオンクロマトグラフ法で、市販の塩化物イオン標準液(和光純薬工業社より入手)を用いて抽出液中の塩化物イオン量を定量し、抽出に用いた保護シート1g当たりの塩化物イオン量を求める。イオンクロマトグラフィ測定条件は、上記粘着剤の塩化物イオン量の測定条件と同じである。
[保護シートの剥離性]
上記経時剥離強度が3.3N/20mmを超えると、良好な剥離性が得られない傾向があることから、この知見に基づき、上記経時剥離強度が3.3N/20mm以下の場合「○」と評価し、上記経時剥離強度が3.3N/20mmを超えた場合「×」と評価する。
[Low-Eガラス腐食評価]
保護シートを幅20mm、長さ100mmの短冊状にカットして試験片を作製する。23℃、50%RHの標準環境下にて、この試験片を、被着体としてのLow-Eガラス板のLow-E層表面に、2kgのゴムローラを2往復させて圧着する。Low-Eガラス板としては、日本板硝子社製の品番「RSFL6AS」(100mm×100mm)を用いる。このサンプルを40℃、92%RHの環境下に7日間保存した後、保護シートを引き剥がし、保護シートで保護した領域におけるガラス板表面の状態を目視で観察する。変色が認められなかった場合を「◎」と判定し、変色がわずかに認められたが実用上問題ないレベルであったものを「○」と判定し、変色が認められた場合を「×」と判定する。なお、被着体としては、Low-ガラス板であれば特に制限なく使用することができ、上記製品の相当品や他の市販のLow-Eガラス板を用いてもよい。
<例1>
2−エチルヘキシルアクリレート58部、n−ブチルメタクリレート40部およびアクリル酸2部からなるモノマー原料と、反応性界面活性剤(第一工業製薬社製の商品名「アクアロンKH−1025」、EO付加モル数30以下のポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム)3部および重合用水150部とを混合し、窒素ガスを導入しながら乳化機(ホモミキサー)で乳化させることにより、モノマー原料の乳化液を調製した。
温度計、窒素ガス導入管、冷却器および攪拌装置を備えた反応容器に上記乳化液を入れ、窒素気流下で攪拌しながら液温50℃まで加熱した。これに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製、商品名「V−50」)0.03部を加え、液温を50℃付近に保って5時間重合反応を行った。得られた重合反応液にアンモニア水を加えてpHを8程度に調整した。このようにしてアクリル系ポリマーの水分散液を調製した。
この水分散液に、該水分散液に含まれる不揮発分100部に対し、オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製の商品名「エポクロスWS−500」)2部と、防錆剤A(商品名「ラミプルーフC−2」、第一工業製薬社製、ポリオキシエチレン含有脂環式アミン)0.5部と、を混合して、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
この粘着剤組成物を、片面にコロナ放電処理が施された厚さ55μmのポリエチレンフィルムのコロナ処理面(第一面)に、乾燥後の厚さが6μmとなるようにバーコーターで塗布した。これを70℃で2分間乾燥した後、50℃で1日間エージングして、ポリエチレンフィルムからなる基材層の片面にアクリル系粘着剤層を有する片面接着性粘着シートを作製した。このようにして得た粘着シートを本例に係る保護シートとした。
<例2〜5>
防錆剤Aを表1に示す量とした他は例1と同様にして各例に係る保護シートを得た。
<例6〜7>
防錆剤Aを、防錆剤B(商品名「キレスライトW−16B」、キレスト社製、有機酸塩と鉄用防錆成分含有)または防錆剤C(商品名「チオライトC−560R13」、千代田ケミカル社製、トリエタノールアミン濃度50〜60%)に変更した他は例2と同様にして各例に係る保護シートを得た。
各例の保護シートの概要と、ゲル分率[%]、膨潤度[倍]、初期剥離強度[N/20mm]、経時剥離強度[N/20mm]、熱水抽出による粘着剤1g当たりの塩化物イオン量[μg/粘着剤1g]、熱水抽出による保護シート1g当たりの塩化物イオン量[μg/保護シート1g]、保護シートの剥離性およびLow-Eガラス腐食評価の結果を表1に示す。
Figure 2021004299
表1に示されるように、例1〜7に係る保護シートは、いずれも初期、経時ともに所定以上の粘着力を有し、またLow-Eガラス腐食評価が合格レベルであったことから、Low-Eガラス板に対して良好な保護性能を発揮するものと考えられる。また、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む粘着剤層を備える例1〜3、例6〜7に係る保護シートは、初期および経時ともに粘着力が制限されており、良好な剥離性を示した。これらの例では、保護対象物であるLow-Eガラス表面の汚染も認められなかった。これに対して、ベースポリマーの含有量が95重量%未満であった例4〜5では、保護シート剥離性評価結果が不良であった。これらの結果から、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む粘着剤層を備える保護シートによると、Low-Eガラス板に対する保護機能を有することが可能であり、かつ上記保護対象物に長期にわたって貼り付けられた場合であっても良好な剥離性を維持し得ることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 :基材層
1A:一方の面
1B:他方の面
2 :粘着剤層
2A:接着面
10 :保護シート
100 :Low-Eガラス板
110 :ガラス基板
120 :Low-E層
200 :保護シート
300 :ガラスユニット
320 :他のガラス板
340 :スペーサ

Claims (10)

  1. Low-Eガラス板保護シートであって、
    粘着剤層を備え、
    前記粘着剤層は、ベースポリマーを95重量%以上の割合で含む、保護シート。
  2. 熱水抽出により測定される塩化物イオン量が前記粘着剤層1g当たり300μg未満である、請求項1に記載の保護シート。
  3. 前記粘着剤層は、水分散型粘着剤組成物から形成されたものである、請求項1または2に記載の保護シート。
  4. 前記粘着剤層における防錆剤の含有量は3重量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護シート。
  5. 前記防錆剤はアミン系防錆剤である、請求項4に記載の保護シート。
  6. 前記ベースポリマーはアクリル系ポリマーおよびゴム系ポリマーから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護シート。
  7. 前記ベースポリマーは、架橋剤によって架橋されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の保護シート。
  8. 前記架橋剤はオキサゾリン系架橋剤である、請求項7に記載の保護シート。
  9. 前記粘着剤層を支持する基材層を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の保護シート。
  10. Low-Eガラス板に対する50℃1週間経過後180度剥離強度は3.3N/20mm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の保護シート。
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