図1は、本実施形態に係る車両(以下、自車両ともいう)の走行制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の車両の走行制御装置1は、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一の実施形態でもある。図1に示すように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1は、センサ11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、車載機器14と、ナビゲーション装置15と、提示装置16と、入力装置17と、駆動制御装置18と、制御装置19とを備える。これらの装置は、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
センサ11は、自車両の走行状態を検出する。たとえば、センサ11は、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の左右の側方を撮像する側方カメラ等のカメラを含む。また、センサ11は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の左右の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー等のレーダーを含む。さらに、センサ11は、自車両の車速を検出する車速センサ、ドライバーによるハンドルの保持を検出するタッチセンサ(静電容量センサ)およびドライバーを撮像するドライバーモニターなどを含む。なお、センサ11として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ11は、検出結果を所定時間間隔で制御装置19に出力する。
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどを備える。自車位置検出装置12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得する。また、自車位置検出装置12は、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12は、検出した対象車両の位置情報を、所定時間間隔で制御装置19に出力する。
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、制御装置19からアクセス可能とされたメモリである。三次元高精度地図情報は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された道路形状に基づく三次元地図情報である。三次元高精度地図情報は、地図情報とともに、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置などの詳細かつ高精度の位置情報が、三次元情報として関連付けられた地図情報である。
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーの操作により動作する。このような車載機器としては、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14は、ドライバーにより操作された場合に、その操作情報を制御装置19に出力する。
ナビゲーション装置15は、自車位置検出装置12から自車両の現在の位置情報を取得し、ナビゲーション用の地図情報に自車両の位置を重ね合わせてディスプレイなどに表示する。また、ナビゲーション装置15は、目的地が設定された場合に、その目的地までのルートを設定し、設定したルートをドライバーに案内するナビゲーション機能を備える。このナビゲーション機能は、ディスプレイの地図上にルートを表示し、音声等によってルートをドライバーに知らせる。ナビゲーション装置15で設定されたルートは、制御装置19が備えるルート走行支援機能でも利用される。ルート走行支援機能は、制御装置19が、設定されたルートに基づいて自車両を目的地まで自律走行させるための機能である。
提示装置16は、たとえば、ナビゲーション装置15が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ等の各種ディスプレイを含む。また、提示装置16は、オーディオ装置のスピーカー、振動体が埋設された座席シート装置など、ディスプレイ以外の装置を含む。提示装置16は、制御装置19の制御に従って、各種の提示情報をドライバーに報知する。
入力装置17は、たとえば、ドライバーの手動操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置17を操作することで、提示装置16により提示された提示情報に対する設定情報を入力することができる。図2は、本実施形態の入力装置17の一部を示す正面図であり、ハンドルのスポーク部などに配置されたボタンスイッチ群からなる一例を示す。図示する入力装置17は、制御装置19が備える自律走行制御機能(自律速度制御機能及び自律操舵制御機能)のON/OFF等を設定する際に使用するボタンスイッチである。入力装置17は、メインスイッチ171と、リジューム・アクセラレートスイッチ172と、セット・コーストスイッチ173と、キャンセルスイッチ174と、車間調整スイッチ175と、車線変更支援スイッチ176とを備える。
メインスイッチ171は、制御装置19の自律速度制御機能及び自律操舵制御機能を実現するシステムの電源をON/OFFするスイッチである。リジューム・アクセラレートスイッチ172は、自律速度制御機能を停止(OFF)したのちOFF前の設定速度で自律速度制御機能を再開したり、設定速度を上げたり、先行車両に追従して停車したのち制御装置19によって再発進させたりするためのスイッチである。セット・コーストスイッチ173は、走行時の速度で自律速度制御機能を開始したり、設定速度を下げたりするスイッチである。キャンセルスイッチ174は、自律速度制御機能をOFFするスイッチである。車間調整スイッチ175は、先行車両との車間距離を設定するためのスイッチであり、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択するスイッチである。車線変更支援スイッチ176は、制御装置19が車線変更の開始をドライバーに確認した場合に車線変更の開始を指示する(承諾する)ためのスイッチである。なお、車線変更の開始を承諾した後に、車線変更支援スイッチ176を所定時間よりも長く操作することで、制御装置19による車線変更の提案の承諾を取り消すことができる。
なお、図2に示すボタンスイッチ群以外にも、方向指示器の方向指示レバーやその他の車載機器14のスイッチを入力装置17として用いることができる。例えば、制御装置19から自動で車線変更を行うか否かを提案された場合に、ドライバーが方向指示レバーを操作すると、提案された車線変更ではなく、方向指示レバーが操作された方向に向かって車線変更を行う。なお、入力装置17は、入力された設定情報を制御装置19に出力する。
駆動制御装置18は、自車両の走行を制御する。たとえば、駆動制御装置18は、自律速度制御機能により自車両が設定速度で定速走行する場合には、自車両が設定速度となるように、加速および減速、並びに走行速度を維持するために、駆動機構の動作およびブレーキ動作を制御する。また、駆動制御装置18は、自律速度制御機能により自車両が先行車両に追従走行する場合にも、同様に駆動機構及びブレーキの動作を制御する。なお、駆動機構の動作制御は、エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含む。また、ハイブリッド自動車にあっては、内燃機関と走行用モータとのトルク配分を含む。
また、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能により、上述した駆動機構とブレーキの動作制御に加えて、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。例えば、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能によりレーンキープ制御を実行する場合に、自車両が走行する自車線のレーンマーカを検出し、自車両が自車線内の所定位置を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御する。また、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能により、後述する車線変更支援機能、追い越し支援機能又はルート走行支援機能を実行する場合に、自車両が車線変更を行うように、自車両の幅員方向における走行位置を制御する。さらに、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能により右左折支援機能を実行する場合には、交差点などにおいて右折又は左折する走行制御を行う。なお、駆動制御装置18は、後述する制御装置19の指示により自車両の走行を制御する。また、駆動制御装置18による走行制御方法として、その他の公知の方法を用いることもできる。
制御装置19は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)等を備える。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
制御装置19は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行状態に関する情報を取得する走行情報取得機能と、自車両の走行シーンを判定する走行シーン判定機能と、自車両の走行速度及び/又は操舵を自律制御する自律走行制御機能とを実現する。
制御装置19の走行情報取得機能は、制御装置19が自車両の走行状態に関する走行情報を取得するための機能である。たとえば、制御装置19は、走行情報取得機能により、センサ11の前方カメラ、後方カメラ及び側方カメラにより撮像された車両外部の画像情報を走行情報として取得する。また、制御装置19は、走行情報取得機能により、前方レーダー、後方レーダー及び側方レーダーによる検出結果を、走行情報として取得する。さらに、制御装置19は、走行情報取得機能により、センサ11の車速センサにより検出された自車両の車速情報や、車内カメラにより撮像されたドライバーの顔の画像情報も走行情報として取得する。
さらに、制御装置19は、走行情報取得機能により、自車両の現在の位置情報を走行情報として自車位置検出装置12から取得する。また、制御装置19は、走行情報取得機能により、設定された目的地及び目的地までのルートを走行情報としてナビゲーション装置15から取得する。さらに、制御装置19は、走行情報取得機能により、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置などの位置情報を走行情報として地図データベース13から取得する。加えて、制御装置19は、走行情報取得機能により、ドライバーによる車載機器14の操作情報を、走行情報として車載機器14から取得する。
制御装置19の走行シーン判定機能は、制御装置19のROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両が走行している走行シーンを判定する機能である。制御装置19のROMに記憶されたテーブルには、たとえば車線変更や追い越しに適した走行シーンとその判定条件が、走行シーンごとに記憶されている。制御装置19は、走行シーン判定機能により、ROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両の走行シーンが、たとえば車線変更や追い越しに適した走行シーンであるか否かを判定する。
たとえば、「先行車両への追いつきシーン」の判定条件として、「前方に先行車両が存在」、「先行車両の車速<自車両の設定車速」、「先行車両への到達が所定時間以内」、および「車線変更の方向が車線変更禁止条件になっていない」の4つの条件が設定されているとする。この場合、制御装置19は、走行シーン判定機能により、たとえば、センサ11に含まれる前方カメラや前方レーダーによる検出結果、車速センサにより検出された自車両の車速、および自車位置検出装置12による自車両の位置情報などに基づいて、自車両が上記条件を満たすか否かを判断する。上記条件を満たす場合には、制御装置19は、自車両が「先行車両への追いつきシーン」であると判定する。
制御装置19の自律走行制御機能は、制御装置19が自車両の走行をドライバーの操作に依ることなく自律制御するための機能である。制御装置19の自律走行制御機能は、自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御機能と、自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御機能とを含む。以下、本実施形態の自律速度制御機能と自律操舵制御機能について説明する。
《自律速度制御機能》
自律速度制御機能は、先行車両を検出しているときは、制御装置19が、ドライバーが設定した車速を上限にして、車速に応じた車間距離を保つように車間制御を行いつつ先行車両に追従走行するように、自車両の走行動作を制御するための機能である。一方、先行車両を検出していない場合には、制御装置19は、自律速度制御機能により、ドライバーが設定した車速で定速走行を行うように自車両の走行動作を制御する。前者を車間制御、後者を定速制御ともいう。なお、自律速度制御機能は、センサ11により道路標識から走行中の道路の制限速度を検出し、あるいは地図データベース13の地図情報から制限速度を取得して、その制限速度を自動的に設定車速にする機能を含んでもよい。
自律速度制御機能を開始させるには、まずドライバーが、図2に示す入力装置17のリジューム・アクセラレートスイッチ172又はセット・コーストスイッチ173を操作して、所望の走行速度を入力する。たとえば、自車両が70km/hで走行中にセット・コーストスイッチ173を押すと、現在の走行速度がそのまま設定されるが、ドライバーが所望する速度が80km/hであるとすると、リジューム・アクセラレートスイッチ172を複数回押して、設定速度を上げればよい。逆にドライバーが所望する速度が60km/hであるとすると、セット・コーストスイッチ173を複数回押して、設定速度を下げればよい。また、ドライバーが所望する車間距離は、図2に示す入力装置17の車間調整スイッチ175を操作し、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択すればよい。
定速制御は、センサ11の前方レーダー等により、自車線の前方に先行車両が存在しないことが検出された場合に実行される。定速制御では、制御装置19は、設定された走行速度を維持するように、車速センサによる車速データをフィードバックしながら、駆動制御装置18によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御する。
車間制御は、センサ11の前方レーダー等により、自車線の前方に先行車両が存在することが検出された場合に実行される。車間制御では、制御装置19は、設定された走行速度を上限にして、設定された車間距離を維持するように、前方レーダーにより検出した車間距離データをフィードバックしながら、駆動制御装置18によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御する。なお、車間制御で走行中に先行車両が停止した場合は、先行車両に続いて自車両も停止する。また、自車両が停止した後、たとえば30秒以内に先行車両が発進すると、自車両も発進し、再び車間制御による追従走行を開始する。自車両が30秒を超えて停止している場合は、先行車両が発進しても自動で発進せず、先行車両が発進した後、リジューム・アクセラレートスイッチ172を押すか又はアクセルペダルを踏むと、再び車間制御による追従走行を開始する。
《自律操舵制御機能》
自律操舵制御機能は、上述した自律速度制御機能の実行中に所定の条件が成立した場合に、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、制御装置19が自車両の操舵制御を実行するための機能である。この自律操舵制御機能は、例えば、レーンキープ機能、車線変更支援機能、追い越し支援機能、及びルート走行支援機能などを含む。レーンキープ機能とは、例えば車線の中央付近を走行するように制御装置19によってステアリングアクチュエータを制御して、ドライバーのハンドル操作を支援するための機能である。レーンキープ機能は、車線幅員方向維持機能などとも呼ばれる。
《車線変更支援機能》
図3に示すように、ドライバーが方向指示レバーを操作すると方向指示器を点灯し、予め設定された車線変更開始条件を満たした場合に、制御装置19は、車線変更支援機能により、自動車線変更の一連の処理である車線変更操作(以下、「LCP」という)を開始する。制御装置19は、車線変更支援機能により、走行情報取得機能で取得した各種の走行情報に基づいて、車線変更開始条件が成立するか否かを判断する。車線変更開始条件として、特に限定されないが、ハンズオンモードのレーンキープモードであること、ハンズオン判定中であること、速度60km/h以上で走行していること、車線変更方向に車線があること、車線変更先の車線に車線変更可能なスペースがあること、レーンマーカの種別が車線変更可能であること、および、道路の曲率半径が250m以上であることドライバーが方向指示レバーを操作してから1秒以内であること、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。制御装置19は、ドライバーの指示がなくても、車線変更支援機能により車線変更開始条件が成立すると判断した場合には、提示装置16によってドライバーに報知することで、ドライバーに車線変更を提案してもよい。
なお、ハンズオンモードのレーンキープモードとは、詳しくは後述するが、自律速度制御機能と、自律操舵制御機能のレーンキープ機能とが実行中で、かつ、ドライバーによるハンドルの保持が検出されている状態を言う。また、ハンズオン判定中とは、ドライバーによるハンドルの保持が継続されている状態を言う。
車線変更開始条件を満たした場合に、制御装置19は、車線変更支援機能によりLCPを開始する。LCPは、自車両の隣接車線への横移動と、実際に隣接車線へ移動する車線変更操縦(以下、「LCM」という)とを含む。制御装置19は、車線変更支援機能により、LCPを実行中に、自動で車線変更を行っていることを表す情報を提示装置16によりドライバーに提示し、周囲への注意を促す。制御装置19は、車線変更支援機能によるLCMが完了すると、方向指示器を消灯し、隣接車線でのレーンキープ機能の実行を開始する。
《追い越し支援機能》
図4に示すように、自車線の前方に自車両よりも遅い先行車両が存在し、かつ、予め設定された所定の追い越し提案条件を満たした場合に、制御装置19は、追い越し支援機能により、追い越し情報を提示装置16によりドライバーに提示する。ここで、追い越し情報とは、ドライバーに対し、先行車両の追い越しを行なうことを提案するための情報である。また、制御装置19は、追い越し情報の提示に対し、ドライバーが入力装置17の車線変更支援スイッチ176を操作して承諾し(承諾入力に相当)、かつ、予め設定された追い越し開始条件を満たした場合に、追い越し支援機能によるLCPを開始する。制御装置19は、追い越し支援機能により、走行情報取得機能で取得した各種走行情報に基づいて、追い越し提案条件及び追い越し開始条件が成立したか否かを判断する。
追い越し提案条件として、特に限定されないが、ハンズオフモードのレーンキープモードであること、速度60km/h以上で走行していること、車線変更方向に車線があること、車線変更先の車線に5秒後に車線変更可能なスペースがあること、レーンマーカの種別が車線変更可能であること、道路の曲率半径が250m以上であること、自車両の速度が設定速度より5km/h以上遅いこと、先行車両の速度が設定速度より10km/以上遅いこと、自車両と先行車両との車間距離が、自車両と先行車両との速度差に基づいて予め設定された閾値を下回っていること、および、車線変更先の車線に存在する先行車両の速度が所定条件を満たすこと、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。
なお、ハンズオフモードのレーンキープモードとは、詳しくは後述するが、自律速度制御機能と、自律操舵制御機能のレーンキープ機能とが実行中で、かつ、ドライバーによるハンドルの保持が不要なモードを言う。また、車線変更先の車線に存在する先行車両の速度が所定条件を満たす、という条件は、車線変更先の車線の種類によって異なった条件が適用される。例えば、左側通交の複数車線の道路において、左側の車線から右側の車線に車線変更を行う場合に、左側車線に存在する先行車両の速度が、右側車線の先行車両の速度よりも約5km/h以上速いことが条件となる。これとは逆に、左側通交の複数車線の道路において、右側車線から左側車線に車線変更する場合には、自車両と、左側車線の先行車両との速度差が約5km/h以内であることが条件となる。なお、この自車両と先行車両との相対速度差に関する条件は、右側通交の道路では逆になる。
ドライバーが追い越し情報の提示に承諾し、かつ、予め設定された所定の追い越し開始条件を満たした場合に、制御装置19は、追い越し支援機能により、方向指示器を点灯してLCPを開始する。追い越し開始条件として、特に限定されないが、ハンズオンモードのレーンキープモードであること、ハンズオン判定中であること、速度60km/h以上で走行していること、車線変更方向に車線があること、車線変更先の車線に車線変更可能なスペースがあること、レーンマーカの種別が車線変更可能であること、道路の曲率半径が250m以上であること、自車両の速度が設定速度より5km/h以上遅い(左側通交で右側車線に車線変更する場合)こと、先行車両の速度が設定速度より10km/h以上遅い(左側通交で右側車線に車線変更する場合)こと、車線変更先の車線に存在する先行車両の速度が所定条件を満たすこと、および、車線変更支援スイッチ176の操作から10秒以内であること、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。
なお、先行車両の速度が設定速度より10km/h以上遅い、という条件は、ドライバーの設定により変更可能であり、変更後の設定速度が追い越し開始条件となる。変更可能な速度としては、例えば、10km/h以外に、15km/h、20km/hが選択可能である。また、車線変更先の車線に存在する先行車両の速度が所定条件を満たす、という条件は、上述した追い越し提案条件と同様である。
制御装置19は、追い越し開始条件を満たした場合に、追い越し支援機能によりLCPを開始し、隣接車線への横移動と、LCMとを実行する。制御装置19は、追い越し支援機能により、LCPを実行中に、自動で車線変更を行っていることを表す情報を提示装置16によりドライバーに提示し、周囲への注意を促す。制御装置19は、追い越し支援機能によるLCMが完了すると、方向指示器を消灯し、隣接車線でのレーンキープ機能の実行を開始する。また、先行車両の追い越し後に、再び追い越し提案条件を満たした場合に、制御装置19は、追い越し支援機能により、図5に示すように、元の車線に戻ることを提示装置16によりドライバーに提案する。この提案に対し、ドライバーが入力装置17の車線変更支援スイッチ176を操作して承諾し、かつ、追い越し開始条件を満たした場合には、制御装置19は、追い越し支援機能により、自車両を元の車線に戻すようにLCPを開始する。
《ルート走行支援機能》
設定されたルートに分岐地点や合流地点、出口や料金所等の走行方向変更地点が存在し、走行方向変更地点までの距離が所定距離以内であり、かつ、所定のルート走行提案条件を満たした場合に、制御装置19は、ルート走行支援機能により、ルート走行情報を提示装置16により提示し、走行方向変更地点への車線変更を提案する。また、車線変更の提案が車線変更支援スイッチ176の操作により承諾され、かつ、所定のルート走行開始条件を満たした場合に、制御装置19は、ルート走行支援機能よりLCPを開始する。制御装置19は、ルート走行支援機能により、走行情報取得機能で取得した各種走行情報に基づいて、ルート走行提案条件及びルート走行開始条件が成立したか否かを判断する。
なお、ナビゲーション装置15で設定されたルートが設定されているが、ルート走行支援機能が実行されていない場合、又は設定で無効になっている場合には、ナビゲーション装置15によりルートを案内する通常のナビゲーション機能が実行される。
図6に示す例は、左側通交の片側3車線の道路で自車両が右側車線を走行中に、左側車線に存在する分岐地点に向けて2回の車線変更を順次行ない、分岐地点から左側車線の左側に延びる分岐路へ移動する例を示している。分岐地点まで第1所定距離以内(例えば、分岐地点まで約2.5km〜1.0km手前)であり、かつ、ルート走行提案条件を満たした場合に、制御装置19は、ルート走行支援機能により、右側車線から中央車線への車線変更をルート走行情報により提案する。なお、第1所定距離(車線変更提案区間ともいう)は、走行方向変更地点が存在する車線まで移動するために必要な車線変更の回数に応じて予め設定されている。例えば、図6に示すように、右側車線から中央車線を経て左側車線へ2回の車線変更が必要な場合には、例示したように、分岐地点まで約2.5km〜1.0km手前までの区間が第1所定距離(車線変更提案区間)となる。
ルート走行提案条件として、特に限定されないが、ナビゲーション装置15で目的地が設定されていること、ハンズオフモードのレーンキープモードであること、速度60km/h以上で走行していること、車線変更方向に車線があること、レーンマーカの種別が車線変更可能であること、および、道路の曲率半径が250m以上であること、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。なお、ルート走行提案条件では、車線変更先に車線変更可能なスペースが存在しない場合でも、ルートに沿った車線変更が必要なことをドライバーに報知するため、ルート走行情報を提示する。
ドライバーが分岐地点に向かうための車線変更に承諾し、かつ、ルート走行開始条件を満たした場合に、制御装置19は、ルート走行支援機能により、方向指示器を点灯してLCPを開始する。ルート走行開始条件として、特に限定されないが、ハンズオンモードのレーンキープモードであること、ハンズオン判定中であること、速度60km/h以上で走行していること、車線変更方向に車線があること、車線変更先の車線に車線変更可能なスペースがあること、レーンマーカの種別が車線変更可能であること、車線変更提案区間を走行していること、および、道路の曲率半径が250m以上であること、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。
ルート走行開始条件を満たした場合に、制御装置19は、ルート走行支援機能によるLCPを開始し、中央車線への横移動と、LCMとを実行する。ルート走行支援機能によるLCMが完了すると、制御装置19は、方向指示器を消灯し、中央車線でのレーンキープ機能の実行を開始する。制御装置19は、ルート走行支援機能によるLCPを実行中に、自動で車線変更を行っていることを表す情報を提示装置16によりドライバーに提示し、周囲への注意を促す。
また、制御装置19は、図6に示すように、中央車線でのレーンキープ機能の実行中に、分岐地点まで第2所定距離以内(例えば、分岐地点まで約2.3km〜700m手前)であり、かつ、ルート走行開始条件を満たした場合に、ルート走行支援機能により、方向指示器を点灯して2回目のLCPを開始し、中央車線から左側車線へ車線変更を行なう。ルート走行支援機能による2回目のLCMが完了すると、制御装置19は、方向指示器を消灯し、左側車線でのレーンキープ機能の実行を開始する。
さらに、制御装置19は、左側車線でのレーンキープ機能の実行中に、分岐地点まで第3所定距離以内(例えば、分岐地点まで約800m〜150m手前)であり、かつ、ルート走行開始条件を満たした場合に、ルート走行支援機能により方向指示器を点灯する。また、制御装置19は、ルート走行支援機能により、分岐地点を超えた地点から分岐路への自律操舵制御を開始する。自車両は、自律操舵制御により、左側車線から分岐路へ車線変更を行なう。ルート走行支援機能による分岐路への車線変更が完了すると、制御装置19は、方向指示器を消灯し、分岐路でのレーンキープ機能の実行を開始する。
本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により自車両の所定の走行動作を制御する。自車両の所定の走行動作の制御において、本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により、所定の時間内に規定車速で所定の走行動作が完了するか否かを判断する。そして、規定車速で所定の時間内に所定の走行動作が完了すると判断した場合は、本実施形態の制御装置19は、自車両の所定の走行動作の制御を開始する。これに対して、規定車速で所定の時間内に所定の走行動作が完了しないと判断した場合は、例外的に、本実施形態の制御装置19は、自車両の車線変更を禁止する。
ここで、本実施形態の規定車速とは、自車両が走行する道路の法定速度またはドライバーが設定した自車両の走行速度のうち少なくともいずれか一方で決まる、自車両の走行速度の上限値をいうものとする。自車両が走行する道路の法定速度は、センサ11から得られる自車両の走行する道路の走行環境の情報、車速センサ(センサ11)および自車位置検出装置12から得られる自車両の走行位置情報、および地図データベース(13)から得られる自車両の走行する道路の制限速度の情報を基に、本実施形態の制御装置19が決定する。本実施形態の制御装置19は、走行情報取得機能によってこれらの情報を取得する。取得される法定速度には、定常時の速度のほか、降雨・降雪時の速度、工事などによる車線規制時の速度、その他の非定常時の速度も含まれる。一方、ドライバーが設定した自車両の走行速度とは、自律速度制御機能を開示するときに、ドライバーが入力装置17(例えば、リジューム・アクセラレートスイッチ172またはセット・コーストスイッチ173)を操作して入力した所望の走行速度である。自律操舵制御機能は、自律速度制御機能の実行中に所定の条件が成立した場合に立ち上がる。したがって、本実施形態の制御装置19が自律操舵制御機能により所定の走行動作を制御する場合、自車両の走行速度は、ドライバーにより既に設定されている。
本実施形態の所定の走行動作は、車線変更、追い越し、または走行方向の変更のうち少なくとも一つを含む種々の走行動作である。所定の走行動作は、例えば、自車両が走行する自車線の前方に先行車両を検出した場合に、自車両が先行車両を追い越すような走行動作を少なくとも含む。また、所定の走行動作は、自車両が走行する自車線が、自車線に隣接する隣接車線に合流する場合に、自車両が隣接車線に車線変更するような走行動作を少なくとも含む。さらに、所定の走行動作は、右側の追い越し車線側に分岐路がある場合に、自車両が分岐路に向けて走行方向を変更するような走行動作を少なくとも含む。
図7A〜図7Cは、本実施形態に係る走行動作の制御の一例を示している。図7Aに示す走行シーンは、左側の走行車線L1を走行する自車両V1の前方に、自車両V1の規定車速よりも遅い走行速度で走行する先行車両V2が存在する場合に、自車両V1が先行車両V2を追い越すような場面を想定している。
本実施形態の制御装置19は、図7Aのように自車両V1が先行車両V2に追い着いた場合、自律操舵制御機能により、自車両V1が規定車速で所定時間内に先行車両V2を追い越すことができるか否か判断する。本実施形態の制御装置19は、自車両V1の規定車速とセンサ11で検出した先行車両V2の走行速度とに基づいて、自車両V1が所定時間内に先行車両V2を追い越すことができるかどうかを判断する。先行車両V2の走行速度は、前方レーダー(センサ11)で検出する。所定時間とは、例えば、経験又は実験で求められた先行車両V2の追い越しに要する一般的な時間(例えば15〜20秒)である。また、所定時間は、カーブ路などにより、自車両V1の前方で走行速度が制限される場合には、自車両V1の走行速度が制限されるまでの時間であってもよいし、自車両V1の前方で自車線が隣接車線に合流する場合には、自車両V1が合流地点に到達するまでの時間であってもよい。
例えば、規定車速が先行車両V2の走行速度より十分に速い場合、自車両V1は、追い越しに要する一般的な時間内に先行車両V2を追い越すことができる。この場合、本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により、所定時間内に走行動作が完了すると判断し、走行動作の制御を開始する。まず本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能の追い越し支援機能により、自車両V1の車線変更の走行動作を制御する。図7Aに示すように、自車両V1は、規定車速で左側の走行車線L1から右側の追い越し車線L2に車線変更し、右側の追い越し車線L2を規定車速で走行する。ここで、自車両V1の現在の走行速度が規定車速未満の場合、自車両V1は、車線変更の走行動作中に規定車速まで加速することができる。
次に、本実施形態の制御装置19は、追い越し支援機能により、自車両V1が右側の追い越し車線L2を走行して先行車両V2を追い抜く走行動作を制御する。図7Bに示すように、自車両V1は、車線変更を行った後に右側の追い越し車線L2を走行する。規定車速と先行車両V2の走行速度との差が大きいので、右側の追い越し車線L2を走行する自車両V1は、左側の走行車線L1を走行する先行車両V2を規定車速で短時間に追い抜くことができる。そして、本実施形態の制御装置19は、追い越し支援機能により、自車両V1が元の自車線に車線変更する走行動作を制御する。図7Cに示すように、自車両V1は、先行車両V2を追い抜いた後に、右側の追い越し車線L2から左側の走行車線L1に車線変更して先行車両V2の前に入る。こうして、自車両V1の追い越し動作が完了する。
これに対して、規定車速と先行車両V2の走行速度との差が小さい場合、自車両V1は、追い越しに要する一般的な時間内で、先行車両V2の追い越しを完了することができないこともある。追い越しに要する一般的な時間内で、自車両V1が先行車両V2の追い越しを完了しないと判断した場合、本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により、所定時間内に走行動作が完了しないと判断する。この判断に基づいて、本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により自車両V1の車線変更の走行動作を禁止する。自車両V1は、図7Aにおいて矢印で示した車線変更の走行動作をせずに、先行車両V2を追従して走行する。これにより、ドライバーの意に反する速度で走行したり、あるいは法定速度に違反する速度で走行したりする自律走行動作を抑制することができる。
図8は、本実施形態に係る走行動作の制御の別の例を示している。図8に示す走行シーンは、自車両V1が走行する左側の走行車線L1が、自車両V1の前方において右側の追い越し車線L2と合流するときに、右側の追い越し車線L2に他車両V5が存在するような場面を想定したものである。自車両V1の前方で車線数が減少することにともない、自車両V1は、左側の走行車線L1から、隣接する右側の追い越し車線L2に、車線変更する必要がある。この車線変更動作は、左側の走行車線L1と、隣接する右側の追い越し車線L2との合流地点P1に自車両V1が到達するまでに完了する必要がある。
本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により、右側の追い越し車線L2を走行する他車両V5の走行速度と、自車両V1の現在位置から合流地点P1までの残りの距離に基づいて、所定時間内に自車両V1の車線変更が完了するかどうかを判断する。この走行シーンの所定時間は、例えば、自車両V1が現在位置から合流地点P1までに到達するのに要する時間である。右側の追い越し車線L2を走行する他車両V5の走行速度は、センサ11(例えば、側方カメラおよび側方レーダー)で検出する。
例えば、自車両V1の規定車速が、右側の追い越し車線L2を走行する他車両V5の走行速度より十分に速い場合、自車両V1は、合流地点P1に到達する前に車線変更を完了することができる。この場合、制御装置19は、自律操舵制御機能により、所定時間内に走行動作が完了すると判断する。制御装置19は、車線変更支援機能またはルート走行支援機能により、図8に示すように、自車両V1が規定車速で他車両V5の前に入るように車線変更の走行動作を制御する。こうして、合流地点P1までに、自車両V1は、右側の追い越し車線L2への車線変更を完了する。
これに対して、規定車速と他車両V5の走行速度との差が小さい場合、自車両V1は、加速したとしても規定車速があるために、合流地点P1までに、右側の追い越し車線L2への車線変更を完了することができないことがある。この場合、制御装置19は、自律操舵制御機能により、所定時間内に走行動作が完了しないと判断する。この判断に基づいて、本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により自車両V1の車線変更の走行動作を禁止する。この場合、加速による車線変更は行われないが、自車両V1を減速すれば、合流地点P1までに、右側の追い越し車線L2への車線変更を完了することができるので、自律走行制御により減速しながら車線変更するか、あるいは、ドライバーの手動操作に遷移し、ドライバーの手動操作よって車線変更を完了する。
図9は、本実施形態に係る一連の走行動作の制御のさらに別の例を示している。図9に示す走行シーンは、設定されたルートに合わせて走行するために、左側の走行車線L1を走行する自車両V1が、右側の追い越し車線L2側にある分岐路L3に向けて走行方向を変更する際に、右側の追い越し車線L2に他車両V6が存在するような場面を想定したものである。左側通行の道路において、自動車専用道路の出口などの分岐路の多くは、左側の走行車線L1側に存在するが、図9に示すように、右側の追い越し車線L2側に出口などの分岐路が存在することもある。分岐路L3に向けて走行方向を変更するため、自車両V1は、左側の走行車線L1から、隣接する右側の追い越し車線L2に車線変更し、さらに分岐路L3に向けて走行方向を変更する必要がある。この一連の走行動作は、分岐路L3の分岐地点P2に自車両V1が到達するまでに完了する必要がある。このような場合においても、本実施形態の制御装置19は、図7A〜図7Cおよび図8に示したような走行動作を制御する場合と同様に、自車両V1の走行動作制御の際に乗員の乗り心地の悪化を抑制する。
本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により、右側の追い越し車線L2を走行する他車両V6の走行速度と、自車両V1の現在位置から分岐地点P2までの残りの距離に基づいて、所定時間内に走行方向の変更が完了するかどうかを判断する。この走行シーンの所定時間は、例えば、自車両V1が現在位置から分岐地点P2までに到達するのに要する時間である。右側の追い越し車線L2を走行する他車両V6の走行速度は、センサ11(例えば、側方カメラおよび側方レーダー)で検出する。
例えば、自車両V1の規定車速が、右側の追い越し車線L2を走行する他車両V6の走行速度よりも十分速い場合、自車両V1は、分岐地点P2に到達する前に車線変更を完了することができる。この場合、制御装置19は、自律操舵制御機能により、所定時間内に一連の走行動作が完了すると判断する。制御装置19は、車線変更支援機能およびルート走行支援機能により、図9に示すように、自車両V1が規定車速で他車両V6の前に入るように車線変更動作の制御を行う。そして、制御装置19は、分岐地点P2に自車両V1が到達するまでに、分岐路L3に向けて、自車両V1の走行方向を変更するように走行動作を制御する。こうして、分岐地点P2までに、自車両V1は、分岐路L3に向けての走行方向の変更を完了する。
これに対して、規定車速と他車両V6の走行速度との差が小さい場合、自車両V1は、分岐地点P2までに、分岐路L3に向けての走行方向の変更を完了することができないことがある。この場合、制御装置19は、自律操舵制御機能により、所定時間内に走行動作が完了しないと判断する。この判断に基づいて、本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により自車両V1の車線変更の走行動作を禁止する。この場合、加速による車線変更および走行方向の変更は行われないが、自車両V1を減速すれば、分岐地点P2までに、分岐路L3に向けての走行方向の変更を完了することができるので、自律走行制御により減速しながら右側の追い越し車線L2に車線変更する。あるいは、ドライバーの手動操作に遷移し、ドライバーの手動操作によって走行方向の変更を完了する。
本実施形態の制御装置19は、図7A〜図7C、図8および図9に示したような所定の走行動作において、自車両V1の車線変更の走行動作を禁止する場合、自律操舵制御機能により、ドライバーの操作を介在させることなく自動的に、自車両V1の車線変更の走行動作を禁止してもよい。この場合、制御装置19は、自車両V1の車線変更の走行動作を自動的に禁止する際に、車線変更の走行動作を禁止することを提示装置16で出力し、ドライバーに報知してもよい。またはこれに代えて、本実施形態の制御装置19は、自律操舵制御機能により自車両V1の車線変更の走行動作を禁止する前に、ドライバーの承諾を得るようにしてもよい。この場合、ドライバーに対する承諾の要求は、ナビゲーション装置15が備えるディスプレイなどの提示装置16でドライバーに報知することにより行うことができる。ドライバーは、入力装置17の車線変更支援スイッチ176などを操作して、制御装置19に対して承諾乃至許可、または拒否の応答を入力する。ドライバーが車線変更の走行動作の禁止を拒否した場合は、自車両V1は、ドライバーの操縦に遷移し、ドライバーの操縦によって車線変更をする。
ところで、本実施形態の走行制御装置1では、ドライバーの運転を支援する運転支援モードにおける支援レベルが、複数設定されている。この支援レベルとは、自車両の走行動作の制御に対して、制御装置19がどの程度介入するのか(換言すれば、ドライバーの手動操作がどの程度介入するか)を示す水準である。本実施形態の制御装置19は、自律走行制御機能により、各支援レベルで定義された運転支援モードを実現する。そして、本実施形態の制御装置19は、図7A〜図7C、図8および図9に示したような所定の走行動作において、自車両が車線変更すると支援レベルが低下するときは、自車両の車線変更を禁止してもよい。
支援レベルは、例えば、米国自動車技術会(SAE:Society of Automotive Engineers)から公開されているSAE J3016: SEP2016, Taxonomy and Definitions for Terms Related to Driving Automation Systems for On-Road Motor Vehiclesにおいて定義された運転自動化レベルに基づいて設定することができる。例えば、支援レベル0は、走行動作に必要な運転タスクのすべてをドライバーが実行する水準である。支援レベル1は、制御装置19が自律速度制御または自律操舵制御のいずれか(両方同時ではない)を特定の限定領域において持続的に実行し、ドライバーは自車両の走行速度またはステアリングによる自車両の操舵のいずれか(両方同時ではない)を実行する水準である。支援レベル2は、制御装置19が自律速度制御および自律操舵制御を特定の限定領域において持続的に実行し、ドライバーは自車両の走行速度またはステアリングによる自車両の操舵のいずれか(両方同時ではない)を実行する水準である。支援レベル3は、制御装置19がすべての運転タスクを限定領域において持続的に実行する水準である。支援レベル4は、制御装置19がすべての運転タスクを実行し、制御継続が困難な場合への応答は、限定領域において持続的に実行する水準である。支援レベル5は、制御装置19がすべての運転タスクおよび制御継続が困難な場合への応答を持続的かつ無制限に実行する水準である。
支援レベル1は、例えば、本実施形態の制御装置19が自律速度制御によって自車両の走行速度を制御することに対応する。支援レベル2は、例えば、本実施形態の制御装置19が自律操舵制御によってハンズオフモードのレーンキープモードを実行することに対応する。したがって、本実施形態の制御装置19において、運転支援モードの支援レベルが低下する状況とは、例えば、自車両V1が先行車両V2を追い越すために車線変更した場合、自車両V1の走行環境が変化し、ハンズオフモードの制御を継続するための条件を満たさなくなり、制御装置19がハンズオフモードのレーンキープモードを維持できず、自律速度制御による走行速度制御に移ることである。本実施形態の制御装置19は、このような支援レベルの低下が生じると判断した場合は、ドライバーの意思に反してドライバーの運転負荷が増加するので、自車両V1の車線変更の走行動作を禁止する。これに対して、本実施形態の制御装置19は、自車両V1が車線変更をしても支援レベルの低下が生じないと判断した場合は、自車両V1の車線変更の走行動作を制御する。
また、本実施形態の制御装置19は、図7A〜図7C、図8および図9に示したような所定の走行動作において、現在の自車両の走行速度と加速後の規定車速との差が所定値以下の場合、自車両の車線変更を禁止してもよい。所定時間内に所定の走行動作を完了するために必要な走行速度が得られず、所定の走行動作を完了することができないような事態の発生を抑制するためである。所定値の設定方法は特に限定されないが、例えば、1km/h〜15km/h、1km/h〜10km/h、1km/h〜5km/hといった範囲で設定してもよいし、1km/h、5km/h、10km/h、15km/hといった値で設定してもよい。
さらに、本実施形態の制御装置19は、図7A〜図7C、図8および図9に示したような所定の走行動作において、図7Aに例示したように、自車両V1が走行する自車線の前方に先行車両V2を検出し、先行車両V2のさらに前方の自車線に別の先行車両V3を検出した場合、自律操舵制御機能により自車両V1の車線変更の走行動作を禁止してもよい。先行車両V2と先行車両V3とが接近し、先行車両V2を追い抜いている自車両V1が自車線に戻るためのスペースが無くなった場合、自車両V1が追い越しの走行動作を完了できず、先行車両V2および先行車両V3と並走することになるような事態の発生を抑制するためである。先行車両V2と先行車両V3は、自車両のミリ波レーダーのような前方レーダー(センサ11)で検出することができる。
さらに、本実施形態の制御装置19は、図7A〜図7C、図8および図9に示したような所定の走行動作において、図7Aに例示したように、右側の追い越し車線L2の後方を走行する他車両V4を検出した場合に、他車両V4の走行速度が自車両V1の規定車速以上のときは、自律操舵制御機能により自車両V1の車線変更の走行動作を禁止してもよい。自車両V1と車線変更先の隣接車線を走行する他車両V4との車間距離を確保するためである。
図10は、制御装置19に確立された各機能の状態遷移を示すブロック図である。同図に示すシステムとは、制御装置19により実現される自律走行制御システムを意味する。同図に示すシステムOFFの状態から、図2のメインスイッチ171をONすると、当該システムがスタンバイ状態となる。このスタンバイ状態から、図2のセット・コーストスイッチ173又はリジューム・アクセラレートスイッチ172をONすることで、自律速度制御が立ち上がる。これにより、上述した定速制御又は車間制御が開始し、ドライバーはハンドルを操作するだけで、アクセルやブレーキを踏むことなく、自車両を走行させることができる。
自律速度制御を実行中に、図10の条件(1)が成立すると自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(1)としては、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマーカを検出していること、ドライバーがハンドルを持っていること、車線の中央付近を走行していること、ウィンカーが作動していないこと、ワイパーが高速(HI)で作動していないこと、高精度地図がある場合、前方約200m以内に料金所、出口、合流、交差点、車線数減少地点がないこと、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。なお、ハンズオンモードとは、ドライバーがハンドルを持っていないと自律操舵制御が作動しないモードをいい、ハンズオフモードとは、ドライバーがハンドルから手を離しても自律操舵制御が作動するモードをいう。
自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードを実行中に、図10の条件(2)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(2)として、特に限定されないが、自車両が自動車専用道を走行していること、対向車線と構造的に分離された道路を走行していること、高精度地図がある道路を走行していること、制限速度以下の車速で走行していること、GPS信号が有効であること、ドライバーがハンドルを持っていること、ドライバーが前を向いていること、前方約800m以内に料金所、出口、合流、交差点、車線数減少地点がないこと、前方約500m以内に100R以下の急カーブがないこと、トンネル入り口から500mを超えたトンネル内走行していないこと、アクセルペダルが踏まれていないこと、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。
逆に、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図10の条件(3)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(3)として、特に限定されないが、自車両が自動車専用道以外の道路を走行していること、対面通行区間を走行していること、高精度地図がない道路を走行していること、制限速度を超えた車速で走行していること、GPS信号が受信できなくなったこと、前方注視警報が作動した後、ドライバーが5秒以内に前を向かなかったこと、ドライバーモニターカメラで運転者を検知できなくなったこと、前方約800m先に料金所、出口、合流、車線数減少のいずれかがあること、車速が約40km/h未満で走行している場合、前方約200m以内に100R以下の急カーブがあること、車速が約40km/h以上で走行している場合、前方約200m以内に170Rの以下急カーブがあること、トンネル入り口から500mを超えたトンネル内を走行していること、ドライバーがハンドルを持って、アクセルペダルを踏んだこと、接近警報が作動したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図10の条件(4)が成立すると、自律操舵制御を中止して自律速度制御に遷移する。この条件(4)として、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマーカを一定時間検出しなくなったこと、ドライバーがハンドル操作をしたこと、ワイパーが高速(HI)で作動したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。また、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図10の条件(5)が成立すると、自律操舵制御及び自律速度制御を中止してスタンバイ状態に遷移する。この条件(5)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ174を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントカメラが、汚れ、逆光、雨・霧などで対象物を正しく認識できないといった視界不良を検出したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、サイドレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、サイドレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオンモードを実行中に、図10の条件(6)が成立すると、自律操舵制御を中止して自律速度制御に遷移する。この条件(6)として、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマーカを検出しなくなったこと、ドライバーがハンドル操作をしたこと、ドライバーがウィンカーを操作したこと、ワイパーが高速(HI)で作動したこと、高精度地図がある場合に料金所区間になったこと、フロントカメラが、汚れ、逆光、雨・霧などで対象物を正しく認識できない視界不良を検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。また、自律操舵制御・ハンズオンモードを実行中に、図10の条件(7)が成立すると、自律操舵制御及び自律速度制御を中止してスタンバイ状態に遷移する。この条件(7)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ174を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律速度制御を実行中に、図10の条件(8)が成立すると、スタンバイ状態に遷移する。この条件(8)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ174を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図10の条件(9)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンチェンジモードに遷移する。この条件(8)として、特に限定されないが、システムがレーンチェンジを提案したときに、ドライバーが図2の車線変更支援スイッチ176を押したこと、ドライバーがウィンカーを操作したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンチェンジモードを実行中に、図10の条件(10)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(10)として、特に限定されないが、LCP開始前に、制限速度を超えたこと、LCP開始前に、ドライバーが、ハンドルを持って、アクセルペダルを踏んだこと、前方に遅い車がいた場合の車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押した後、10秒以内にLCPが開始できなかったこと、ルートに従って走行するための車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押した後、LCPを開始できず分岐に近づきすぎてしまったこと、LCP作動後、5秒以内に実際のLCMを開始できなかったこと、LCPを開始し、LCMを開始する前に車速が約50km/hを下回ったこと、LCPが作動した後、LCMを開始する前に車線変更に必要な隣接車線のスペースがなくなったこと、LCM開始前にドライバーがキャンセル操作を行ったこと、LCM開始前にレーンマーカが非検知となったこと、LCM開始前に、車線変更する方向に隣接車線がない、または、前方一定距離内にその隣接車線がなくなると判断したこと、LCM開始前に、前方一定距離内に曲率半径250m以下のカーブがあると判断したこと、LCM開始前に、前方一定距離内に区分線の種類がその隣接車線への車線変更禁止している区間があると判断したこと、LCM開始前に、サイドレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、LCM開始前に、サイドレーダが軸ズレを検出したこと、ハンズオン警報が作動したこと(LCPが作動した後、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかった、前方に遅い車がいた場合の車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押した後、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかった、ルートに従って走行するための車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押したのち、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかったといういずれかの条件にて成立)、ドライバーがウィンカーを消したこと、LCPが完了したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
なお、自律操舵制御・ハンズオフモード、自律操舵制御・ハンズオンモード、自律速度制御、スタンバイ状態のいずれかの状態でメインスイッチ171をOFFすると、システムOFFとなる。
次に、図11A〜図12Bを参照して、本実施形態に係る走行制御処理について説明する。図11A〜図12Bは、本実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャートである。図11A〜図11Bは、本実施形態に係る走行制御処理の基本的な処理を示し、図12A〜図12Bは、図11AのステップS10のサブルーチンを示す。以下、図11AのステップS1から順に説明する。なお、以下に説明する走行制御処理は、制御装置19により所定時間間隔で実行される。また、以下においては、制御装置19の自律走行制御機能により、自律速度制御と自律操舵制御が実行され、自車両がドライバーの設定した速度で車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御が行われているとして説明する。
図11AのステップS1では、制御装置19は、メインスイッチ171がONであるか否かを判断する。メインスイッチ171がOFFである場合は(ステップS1:No)、制御装置19は、メインスイッチ171がONになるまでステップS1を繰り返す。これに対して、メインスイッチ171がONである場合は(ステップS1:Yes)、ステップS2に進む。
ステップS2では、制御装置19は、ドライバーが走行速度を設定しているか否かを判断する。走行速度が設定されていない場合は(ステップS2:No)、ステップS1へ戻り、制御装置19は、走行速度が設定されるまでステップS1およびS2を繰り返す。これに対して、走行速度が設定されている場合は(ステップS2:Yes)、ステップS3に進む。なお、ドライバーによる走行速度の設定は、ドライバーが、図2に示す入力装置17のリジューム・アクセラレートスイッチ172又はセット・コーストスイッチ173を操作して、所望の走行速度を入力することにより行われる。
ドライバーが走行速度を設定すると、制御装置19は、自律速度制御を開始する。ステップS3では、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両を検出した場合は(ステップS3:Yes)、ステップS4へ進み、制御装置19は、車間制御を実行する。これに対して、先行車両を検出しない場合は(ステップS3:No)、ステップS5へ進み、制御装置19は、定速制御を実行する。これにより、ドライバーは、ハンドルを操作するだけで、アクセルやブレーキを踏むことなく、自車両を所望の速度で走行させることができる。
ステップS4の車間制御又はステップS5の定速制御が実行されている間に、ステップS6では、制御装置19は、上述した自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する条件(1)が成立するか否かを判断する。条件(1)が成立しない場合は(ステップS6:No)、ステップS3へ戻り、車間制御又は定速制御を続ける。これに対して、条件(1)が成立する場合は(ステップS6:Yes)、ステップS7へ進む。
ステップS7では、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両を検出する場合は(ステップS7:Yes)、制御装置19は、ステップS8へ進んで車間制御・レーンキープモードを実行する。これに対して、先行車両を検出しない場合は(ステップS7:No)、制御装置19は、ステップS9へ進んで定速制御・レーンキープモードを実行する。なお、この状態において、ステップS10の車線変更支援機能、追い越し支援機能、またはルート走行支援機能の実行処理が行われる。ステップS10の詳細については後述する。
ステップS8の車間制御・レーンキープモードまたはステップS9の定速制御・レーンキープモードが実行されている間に、続く図11BのステップS11では、制御装置19は、上述した自動操舵制御・ハンズオフモードに遷移する条件(2)が成立するか否かを判断する。条件(2)が成立する場合は(ステップS11:Yes)、ステップS12へ進む。これに対して、条件(2)が成立しない場合は(ステップS11:No)、後述するステップS15へ進む。
自動操舵制御・ハンズオフモードに遷移する条件(2)が成立したステップS12では、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両を検出する場合は(ステップS12:Yes)、制御装置19は、ステップS13へ進んで車間制御・レーンキープモード・ハンズオフを実行する。これに対して、先行車両を検出しない場合は(ステップS12:No)、制御装置19は、ステップS14へ進んで定速制御・レーンキープモード・ハンズオフを実行する。
ステップS15では、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両を検出しない場合は(ステップS15:No)、ステップS1へ戻り、制御装置19は、それ以降の処理を継続する。これに対して、先行車両を検出する場合は(ステップS15:Yes)、制御装置19は、ステップS16へ進む。
ステップS16では、ステップS6と同様に、制御装置19は、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する条件(1)が成立するか否かを判断する。条件(1)が成立しない場合は(ステップS16:No)、ステップS1へ戻り、制御装置19は、それ以降の処理を継続する。これに対して、条件(1)が成立する場合は(ステップS16:Yes)、ステップS17へ進む。
ステップS17では、ステップS11と同様に、制御装置19は、自動操舵制御・ハンズオフモードに遷移する条件(2)が成立するか否かを判断する。条件(2)が成立する場合は(ステップS17:Yes)、ステップS12へ戻り、それ以降の処理を継続する。これに対して、条件(2)が成立しない場合は(ステップS17:No)、ステップS1へ戻り、制御装置19は、それ以降の処理を継続する。
図12A〜図12Bは、ステップS10における車線変更支援機能、ルート走行支援機能、および追い越し支援機能の走行制御処理を示す。図12Aは、車線変更操作(LCP)を開始する前までのステップを示すフローチャートであり、図12Bは、車線変更操作の開始から終了までのステップを示すフローチャートである。
まず、図12Aのステップを説明する。
ステップS21では、制御装置19は、車線変更支援機能、追い越し支援機能またはルート走行支援機能のうち、いずれかの機能による制御開始条件を満たすか否かを判断する。制御装置19は、センサ11から得られた自車両・他車両の走行速度および自車両と他車両との車間距離、自車位置検出装置12から得られた自車両の位置情報、並びに地図データベース13から得られた地図情報を基にこの判断を行う。これらの機能による制御開始条件を一つも満たさない場合は(ステップS21:No)、車線変更などの所定の走行動作を行わずに、図11BのステップS11に進む。これに対して、いずれかの機能による制御開始条件を満たす場合は(ステップS21:Yes)、ステップS22に進む。
ステップS22では、制御装置19は、制御開始条件を満たした機能が追い越し支援機能であるか否かを判断する。開始条件を満たした機能が追い越し支援機能である場合は(ステップS22:Yes)、後述するステップS25に進む。これに対して、開始条件を満たした機能が車線変更支援機能またはルート走行支援機能である場合は(ステップS22:No)、ステップS23に進む。
ステップS23では、車線変更支援機能またはルート走行支援機能による車線変更を行う前に、センサ11(前方カメラ、後方カメラおよび側方レーダー)を用いて、車線変更先の車線を走行する他車両が存在するか否かを判断する。ステップS23で車線変更先の車線に他車両が検出されない場合は(ステップS23:No)、図12BのステップS26に進み、現在の自車両の走行速度で車線変更操作を開始する。これに対して、ステップS23で車線変更先の車線に他車両が検出された場合は(ステップS23:Yes)、ステップS24に進む。
ステップS24では、制御装置19は、規定車速で所定時間内に車線変更の走行動作が完了するか否かを判断する。制御装置19は、センサ11から得られる自車両と他車両の走行速度および自車両と他車両との距離、自車位置検出装置12から得られる自車両の位置情報、ならびに地図データベース13から得られる地図情報を基に判断行う。規定車速で所定時間内に車線変更の走行動作が完了すると判断した場合は(ステップS24:Yes)、図12BのステップS27に進む。これに対して、規定車速で所定時間内に車線変更の走行動作が完了しないと判断した場合は(ステップS24:No)、ステップS25に進む。
ステップS22において、開始条件を満たした機能が追い越し支援機能である場合は、ステップS26に進む。制御装置19は、自車両の前方に、自車両の走行速度よりも遅い走行速度で走行する先行車両が存在する場合に、追い越し支援機能による走行制御を開始する。したがって、ステップS26における走行シーンは、規定車速以下の走行速度で走行する自車両の前方に、現在の自車両の走行速度未満の走行速度で走行する先行車両が存在するシーンである。
ステップS26では、制御装置19は、先行車両を追い越す一連の走行動作が、規定車速で所定時間内に完了するかどうかを判断する。制御装置19は、センサ11から得られる自車両と先行車両の走行速度、自車位置検出装置12から得られる自車両の位置情報、および地図データベース13から得られた地図情報を基に判断を行う。一連の走行動作が、規定車速で所定時間内に完了すると判断した場合は(ステップS26:Yes)、図12BのステップS27に進む。これに対して、一連の走行動作が、規定車速で所定時間内に完了しないと判断した場合は(ステップS26:No)、ステップS25に進む。
ステップS25では、制御装置19は、車線変更の走行動作を禁止する。制御装置19は、車線変更または追い抜きなどの所定の走行動作を行わずに、図11BのステップS11に進む。なお、ドライバーの操作を介在させることなく自動的に自車両V1の車線変更を禁止する場合は、制御装置19は、ステップS25において、自車両V1の車線変更を禁止することを提示装置16で出力し、ドライバーに報知してもよい。またはこれに代えて、自車両V1の車線変更を禁止する前にドライバーの承諾を得る場合は、制御装置19は、ステップS25の前に、提示装置16でドライバーに報知し、ドライバーに承諾の可否を要求してもよい。
次に、図12Bのステップを説明する。
ステップS27では、制御装置19は、ステップS24またはステップS26において一連の走行動作が規定車速で所定時間内に完了すると判断した場合であっても、車線変更を禁止する場合に該当するか否かを判断する。例えば、制御装置19は、自車両が車線変更すると運転支援モードの支援レベルが低下するか否かを判断する。また、制御装置19は、現在の自車両の走行速度(規定車速以下)と加速後の規定車速との差が所定値以下か否かを判断する。また、制御装置19は、自車両が走行する自車線の前方を縦列走行する、少なくとも2台の他車両を検出するか否かを判断する。また、制御装置19は、自車両が走行する自車線に隣接する隣接車線の後方を走行する他車両を検出し、この他車両の走行速度が自車両の規定車速以上か否かを判断する。一連の走行動作が規定車速で所定時間内に完了すると判断した場合であっても、車線変更を禁止する場合に該当すると判断したときは(ステップS27:Yes)、車線変更操作を行わず、図11BのステップS11に進む。これに対して、一連の走行動作が規定車速で所定時間内に完了すると判断した場合であっても、車線変更を禁止する場合に該当しないと判断したときは(ステップS27:No)、ステップS28に進んで車線変更操作を開始する。なお、ステップS27は本実施形態において任意のステップである。
ステップS28では、制御装置19は、規定車速以下の走行速度である現在の自車両の走行速度で車線変更操作を開始し、ステップS29に進む。ステップS29では、制御装置19は、横移動とそれに続く車線変更の走行動作を開始し、ステップS30に進む。ステップS30では、制御装置19は、車線変更の走行動作を完了し、ステップS31に進む。
ステップS31では、制御装置19は、現在行われている車線変更操作が追い越し支援機能によるものか否かを判断する。追い越し支援機能によらない、つまり車線変更支援機能またはルート走行支援機能による車線変更操作である場合(ステップS31:No)、ステップS36に進んで車線変更操作は終了し、図11BのステップS11に進む。これに対して、追い越し支援機能による車線変更操作である場合(ステップS31:Yes)、ステップS32に進む。
ステップS32では、制御装置19は、規定車速以下の走行速度で自車両が追い越し車線を定速走行するように駆動制御装置18に指示し、ステップS33に進む。
ステップS33では、制御装置19は、定速走行する自車両が先行車両を追い抜いたか否かを判断する。制御装置19は、センサ11(後方カメラおよび側方レーダー)で先行車両を検出し、追い抜きが完了しているか否かを判断する。先行車両の追い抜きが完了していないと判断した場合は(ステップS33:No)、ステップS32に戻り、自車両は定速走行を続ける。これに対して、先行車両の追い抜きが完了したと判断した場合は(ステップS33:Yes)、ステップS34に進む。
ステップS34では、制御装置19は、駆動制御装置18に操舵制御を指示する。これにより、自車両が先行車両の前に入るように横移動とそれに続く車線変更の走行動作を開始する。車線変更の走行動作を開始した後に、ステップS35に進む。ステップS35では、制御装置19は車線変更の走行動作を完了し、ステップS36に進む。ステップS36では、制御装置19は車線変更操作を終了し、図11BのステップS11に進む。
以上のように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、車線変更、追い越し、または走行方向の変更のうち少なくとも一つである自車両の所定の走行動作を制御する場合、自車両が走行する道路の法定速度またはドライバーが設定した自車両の走行速度のうち少なくともいずれか一方で決まる規定車速で、所定の時間内に所定の走行動作が完了するか否かを判断し、規定車速で所定の時間内に所定の走行動作が完了すると判断したときは、所定の走行動作の制御を開始する。一方、規定車速で所定の時間内に所定の走行動作が完了しないと判断したときは、自車両の車線変更を禁止する。これにより、自車両の車線変更制御を行う場合に、ドライバーの意に反する車速で走行したり、法定速度に違反する車速で走行したりすることが抑制することができる。その結果、規定車速との関係において、乗員の乗り心地の悪化を抑制することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両の走行速度の自律制御、および自車両の車線変更の自律制御を含む自律走行制御を用いたドライバーの運転を支援する運転支援モードにおいて、運転支援モードの支援レベルが複数設定される場合に、自車両が車線変更すると支援レベルが低下するときは、自車両の車線変更を禁止する。これにより、ドライバーの運転負荷の増加を抑制し、乗り心地が悪化することを抑制することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、現在の自車両の走行速度と、加速後の規定車速との差が所定値以下の場合に、自車両の車線変更を禁止するので、所定時間内に所定の走行動作を完了するために必要な走行速度を得られず、所定の走行動作を完了することができないような事態の発生を抑制することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両が走行する自車線に隣接する隣接車線を走行する他車両を検出し、前記他車両の走行速度が規定車速以上の場合に自車両の車線変更を禁止するので、自車両と車線変更先の隣接車線を走行する他車両との車間距離を確保することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両が走行する自車線の前方に先行車両を検出し、さらに、当該先行車両の前方に、自車線を走行する別の先行車両を検出した場合に自車両の車線変更を禁止する。これにより、追い越しの走行動作中に、複数の先行車両同士の車間距離が変わることで、先行車両を追い抜いている自車両が自車線に戻るためのスペースが無くなり、追い越しできずに、自車両が先行車両と並走する事態の発生を抑制することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両の車線変更を禁止することを自動的に行う場合、車線変更の禁止を提示装置に出力してドライバーに報知するので、車線変更の禁止がドライバーにとって不意打ちになることを抑制することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両の車線変更を禁止する前に、車線変更の禁止を提示装置に出力してドライバーに報知し、ドライバーが車線変更の禁止を承諾した場合に自車両の車線変更を禁止するので、ドライバーの意に反する車線変更の禁止を抑制することができる。