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JP2021090418A - 軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法及び軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置、並びに軟骨細胞シートの評価方法及び軟骨細胞シートの評価装置、並びに軟骨細胞シート、軟骨細胞シートの製造方法及び軟骨細胞シートを用いた軟骨再生方法 - Google Patents

軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法及び軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置、並びに軟骨細胞シートの評価方法及び軟骨細胞シートの評価装置、並びに軟骨細胞シート、軟骨細胞シートの製造方法及び軟骨細胞シートを用いた軟骨再生方法 Download PDF

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JP2021090418A JP2020202431A JP2020202431A JP2021090418A JP 2021090418 A JP2021090418 A JP 2021090418A JP 2020202431 A JP2020202431 A JP 2020202431A JP 2020202431 A JP2020202431 A JP 2020202431A JP 2021090418 A JP2021090418 A JP 2021090418A
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cartilage
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佐藤 正人
Masato Sato
正人 佐藤
恵利子 豊田
Eriko Toyoda
恵利子 豊田
亮 的場
Akira Matoba
亮 的場
野中 謙
Ken Nonaka
謙 野中
寛 飯島
Hiroshi Iijima
寛 飯島
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Tokai University
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Abstract

【課題】軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するためのマーカー遺伝子探索方法等を提供する。【解決手段】本発明は、移植前の軟骨細胞シートにおける遺伝子の発現量を測定する測定工程と、移植モデルを用いて移植後の軟骨細胞シートの遺伝子発現及び分泌タンパク質の評価を行い、測定工程で得られた測定結果から、移植後に有効性を示した軟骨細胞シートに特徴的な遺伝子発現プロファイルを解析する解析工程と、解析工程で解析された遺伝子発現プロファイルに基づいて、移植後の有効性に対して正の相関関係を示す遺伝子及び/又は負の相関関係を示す遺伝子を探索する探索工程と、を備える軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法である。【選択図】 図1

Description

本発明は、軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法及び軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置、並びに軟骨細胞シートの評価方法及び軟骨細胞シートの評価装置、並びに軟骨細胞シート、軟骨細胞シートの製造方法及び軟骨細胞シートを用いた軟骨再生方法に関する。
関節軟骨が容易には再生しないことはよく知られている。外傷や変形性関節症(OA)による損傷後の軟骨の自然修復は期待できない。実際、OAは変性性軟骨疾患に指定されており、40歳以上の約半数が潜在的な患者と推定されている(非特許文献1)。治療が必要な軟骨損傷の大部分はOAが占めているが、OAに対する決定的な治療法は確立されていない。
軟骨細胞シートは、動物由来のコラーゲンなどの材料を用いることなく、熱応答性高分子グラフト培養皿などの温度応答性培養装置を用いて、細胞が付着し、増殖し、シート状に形成されることで作成することができる(非特許文献2、3)。このシートは、温度を下げることで酵素消化を行わずに収穫することができる。この技術を用いることで、軟骨細胞自身が産生する細胞外マトリックスや接着分子を保持したまま、軟骨シートを軟骨病変部に移植することができる(非特許文献4)。軟骨細胞シートは、縫合することなく移植先に付着させることができるため、軟骨細胞は移植部位に留まることになる。
したがって、軟骨シート移植は、関節軟骨病変の治療に有望なアプローチである。関節機能に重要な硝子軟骨(ヒアリン軟骨)による関節軟骨の再生は、ラット、ウサギ、ブタの部分厚や骨軟骨欠損モデルを用いて実証されている(非特許文献4〜7)。
外傷やOA変性による膝関節軟骨損傷を有する20〜60歳の患者に対して、患者自身の細胞を用いた軟骨シートによる治療が行われてきた。硝子軟骨を用いて関節軟骨を修復し、治療により関節の臨床状態スコアが改善された(非特許文献8)。これらの結果は、細胞シート移植がOA関連の関節軟骨病変に対する決定的な治療法になる可能性を示唆している。
同種移植の長年の経験に基づき、軟骨組織が免疫寛容であることはよく知られている。同種軟骨片は市販されており、米国では広く移植されている(非特許文献9)。したがって、同種軟骨シートの使用は、適用可能な治療法であると考えられる。同種軟骨細胞シートの関節疾患治療への応用を検討するにあたり、若年性多指症患者の手術検体から得られた軟骨細胞の応用が検討されてきた。これまでに、軟骨細胞シート(PD(多指症患者由来)シート:PD軟骨シートともいう)は、間葉系細胞表面マーカーの発現や一部の軟骨同化因子の産生など、自家軟骨細胞と類似した特性を有することを報告されている(非特許文献10)。
多指症手術の多くは乳児期に行われるため、増殖性の高い軟骨細胞を得ることができる。多くのシートを作製するには単一のドナーから得られる軟骨細胞の数が不十分である場合には、軟骨細胞を培養して増殖させ、将来のPDシート作製のための材料として凍結保存する。
ヒト成人膝軟骨細胞シートの骨軟骨欠損に対する有効性は、免疫抑制剤を投与したウサギを用いた異種移植モデルを用いて直接評価できることが報告されている(非特許文献11)。
Yoshimura, N.; Muraki, S.; Oka, H.; Mabuchi, A.; En-Yo, Y.; Yoshida, M.; Saika, A.; Yoshida, H.; Suzuki, T.; Yamamoto, S.; et al. Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J. Bone Miner. Metab. 2009, 27, 620-628. Okano, T.; Yamada, N.; Sakai, H.; Sakurai, Y. A novel recovery system for cultured cells using plasma-treated polystyrene dishes grafted with poly(N-isopropylacrylamide). J. Biomed. Mater. Res. 1993, 27, 1243-1251. Okano, T.; Yamada, N.; Okuhara, M.; Sakai, H.; Sakurai, Y. Mechanism of cell detachment from temperature-modulated, hydrophilic-hydrophobic polymer surfaces. Biomaterials 1995, 16, 297-303. Kaneshiro, N.; Sato, M.; Ishihara, M.; Mitani, G.; Sakai, H.; Mochida, J. Bioengineered chondrocyte sheets may be potentially useful for the treatment of partial thickness defects of articular cartilage. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2006, 349, 723-731. Ebihara, G.; Sato, M.; Yamato, M.; Mitani, G.; Kutsuna, T.; Nagai, T.; Ito, S.; Ukai, T.; Kobayashi, M.; Kokubo, M.; et al. Cartilage repair in transplanted scaffold-free chondrocyte sheets using a minipig model. Biomaterials 2012, 33, 3846-3851. Ito, S.; Sato, M.; Yamato, M.; Mitani, G.; Kutsuna, T.; Nagai, T.; Ukai, T.; Kobayashi, M.; Kokubo, M.; Okano, T.; et al. Repair of articular cartilage defect with layered chondrocyte sheets and cultured synovial cells. Biomaterials 2012, 33, 5278-5286. Tani, Y.; Sato, M.; Maehara, M.; Nagashima, H.; Yokoyama, M.; Yokoyama, M.; Yamato, M.; Okano, T.; Mochida, J. The effects of using vitrified chondrocyte sheets on pain alleviation and articular cartilage repair. J Tissue Eng Regen Med 2017, 11, 3437-3444. Sato, M.; Yamato, M.; Mitani, G.; Takagaki, T.; Hamahashi, K.; Nakamura, Y.; Ishihara, M.; Matoba, R.; Kobayashi, H.; Okano, T.; et al. Combined surgery and chondrocyte cell-sheet transplantation improves clinical and structural outcomes in knee osteoarthritis. npj Regenerative Medicine 2019, 4, 4. Yanke, A.B.; Tilton, A.K.; Wetters, N.G.; Merkow, D.B.; Cole, B.J. DeNovo NT Particulated Juvenile Cartilage Implant. Sports Med Arthrosc 2015, 23, 125-129. Maehara, M.; Sato, M.; Toyoda, E.; Takahashi, T.; Okada, E.; Kotoku, T.; Watanabe, M. Characterization of polydactyly-derived chondrocyte sheets versus adult chondrocyte sheets for articular cartilage repair. Inflamm Regen 2017, 37, 22. Takahashi, T.; Sato, M.; Toyoda, E.; Maehara, M.; Takizawa, D.; Maruki, H.; Tominaga, A.; Okada, E.; Okazaki, K.; Watanabe, M. Rabbit xenogeneic transplantation model for evaluating human chondrocyte sheets used in articular cartilage repair. J Tissue Eng Regen Med 2018.
しかし、多指症手術で得られた軟骨組織は、ドナーによって大きさ、軟骨の発達の成熟段階、軟骨膜の割合、軟骨の深さ、肥大帯などが大きく異なる。また、軟骨細胞はディッシュ上での拡大培養では脱分化しやすいことが知られており、培養期間や通過回数のばらつきによってPDシートの特性が影響を受けることが想定される。これらの理由から、同種細胞シートに関連する多様性が細胞シート移植の効果に及ぼす影響を明らかにする必要がある。
本発明の目的は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するための軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法及び軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性を移植前の軟骨細胞シートから予測するための軟骨細胞シートの評価方法、軟骨細胞シートの評価装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性が高い軟骨細胞シート及びその製造方法を提供することにある。また、本発明のさらに他の目的は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性が高い軟骨細胞シートを使用した軟骨再生方法を提供することにある。
本発明者らは、免疫抑制剤を投与したウサギを用いた上記の異種移植モデルを用いて骨軟骨欠損に対するPDシートの有効性を評価するとともに、移植したPDシートの遺伝子発現や分泌タンパク質の評価を行った。トランスクリプトーム解析及びプロテオーム解析の結果、有効なPDシートに特徴的な遺伝子発現プロファイル及び産生因子が明らかになった。さらに、本発明者らは、PDシートの有効性に寄与する分子の生物学的機能を推定し、本発明を完成させた。
本発明は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するための軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法であって、移植前の軟骨細胞シートを複数ロット準備するシート準備工程と、前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数のタンパク質の分泌量を測定するタンパク質測定工程と、前記複数ロットの前記軟骨細胞シートのそれぞれを骨軟骨欠損モデル生物に移植して各軟骨細胞シートについて軟骨再生に関する有効性のスコアを算出するスコア算出工程と、前記タンパク質測定工程で測定されたタンパク質の分泌量と、前記スコア算出工程で算出された前記スコアとの相関関係から、前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定する遺伝子同定工程と、を備えることを特徴とする軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法である。
この場合において、前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数の遺伝子の発現レベルを測定する遺伝子測定工程を更に備え、前記遺伝子同定工程は、前記遺伝子測定工程で測定された複数の遺伝子の発現レベルと、前記スコア算出工程で算出された前記スコアとの相関関係から前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定することが好ましい。
また、本発明は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するための軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置であって、移植前の軟骨細胞シートを複数ロット準備するシート準備手段と、前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数のタンパク質の分泌量を測定するタンパク質測定手段と、前記複数ロットの前記軟骨細胞シートのそれぞれを骨軟骨欠損モデル生物に移植して各軟骨細胞シートについて軟骨再生に関する有効性のスコアを算出するスコア算出手段と、前記タンパク質測定手段で測定されたタンパク質の分泌量と、前記スコア算出手段で算出された前記スコアとの相関関係から、前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定する遺伝子同定手段と、を備えることを特徴とする軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置である。
この場合において、前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数の遺伝子の発現レベルを測定する遺伝子測定手段を更に備え、前記遺伝子同定手段は、前記遺伝子測定手段で測定された複数の遺伝子の発現レベルと、前記スコア算出手段で算出された前記スコアとの相関関係から前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定することが好ましい。
また、本発明は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性を移植前の軟骨細胞シートから予測するための軟骨細胞シートの評価方法であって、前記移植前の軟骨細胞シートにおける、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量を測定する測定工程と、前記測定工程で測定した前記正の相関遺伝子の発現量及び/又は前記負の相関遺伝子の発現量に基づいて前記軟骨細胞シートの移植後の有効性を推定する推定工程と、を備えることを特徴とする軟骨細胞シートの評価方法である。
この場合において、前記正の相関遺伝子が、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFAからなる群より選択されることが好ましい。
また、前記推定工程は、前記正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することが好ましい。
この場合において、前記負の相関遺伝子が、RARRES2、APOE、PGFからなる群より選択されることが好ましい。
また、前記推定工程は、前記負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することが好ましい。
上記の場合において、前記測定工程は、前記相関遺伝子から転写されたRNAを定量すること、及び/又は前記相関遺伝子がコードするタンパク質を定量することで、前記相関遺伝子の発現量を測定することが好ましい。
また、本発明は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性を移植前の軟骨細胞シートから予測するための軟骨細胞シートの評価装置であって、前記移植前の軟骨細胞シートにおける、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した前記正の相関遺伝子の発現量及び/又は負の相関遺伝子の発現量に基づいて前記軟骨細胞シートの移植後の有効性を推定する推定手段と、を備えることを特徴とする軟骨細胞シートの評価装置である。
この場合において、前記正の相関遺伝子が、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFAからなる群より選択されることが好ましい。
この場合において、前記推定手段は、前記正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することことが好ましい。
この場合において、前記負の相関遺伝子が、RARRES2、APOE、PGFからなる群より選択されることが好ましい。
この場合において、前記推定手段は、前記負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することが好ましい。
上記の場合において、前記測定手段は、前記相関遺伝子から転写されたRNAを定量すること、及び/又は前記相関遺伝子がコードするタンパク質を定量することで、前記相関遺伝子の発現量を測定することが好ましい。
また、本発明は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートであって、移植前の軟骨細胞シートにおけるESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上であること、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下であることを特徴とする軟骨細胞シートである。
さらに、本発明は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの製造方法であって、移植前の軟骨細胞シートにおけるESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上となるように、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下となるように、軟骨細胞シートを培養することを特徴とする軟骨細胞シートの製造方法である。
さらにまた、本発明は、軟骨細胞シートを用いた軟骨再生方法であって、移植前の軟骨細胞シートにおけるESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上である、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下である、軟骨細胞シートを準備する工程と、前記軟骨細胞シートを患者に移植する工程と、を有することを特徴とする軟骨再生方法である。
本発明によれば、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するための軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法及びマーカー遺伝子探索装置を提供することができる。また、本発明によれば、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性を移植前の軟骨細胞シートから予測するための軟骨細胞シートの評価方法、軟骨細胞シートの評価装置を提供することができる。また、本発明によれば、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性が高い軟骨細胞シート及びその製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性が高い軟骨細胞シートを使用した軟骨再生方法を提供することができる。
軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置及び軟骨細胞シートの評価装置の概要を示す模式図である。 ウサギ異種移植モデルにおける硝子軟骨再生に対する有効性に関する12種類の多指症患者由来の軟骨シート(PDシート)の比較。(a)試験の概要。(b)ウサギの膝軟骨欠損に対する細胞シート移植による治療の有無による、サフラニンOによる組織学的染色と、COL2、COL1、及びビメンチンの免疫組織化学的染色を使用した代表的な画像。A:シート移植なし、B:軟骨修復不良、C:軟骨修復良好。スケールバー=1mm。(c)PDシートのICRSスコア。各円は、グループ内のウサギの平均ICRSスコアを示す。DはPDシートを移植していない群を示す。番号はPDシートの各ロットを示す。*p<0.05.(d)PDシートの特性の分布。細胞シートを酵素消化により分散させ、細胞数(Cell number)と細胞懸濁液の生存率(Viability)を測定した。 有効性に関連した遺伝子発現のヒートマップと階層的クラスタリング。PDシートは生体内での有効性に応じて異なる遺伝子発現プロファイルを示した。赤が高発現、緑が低発現を示す。 薬効関連遺伝子のメタエンリッチメント解析。(a)正負相関遺伝子リストに基づく上位20のエンリッチメントクラスタのヒートマップ。色は統計的有意性を表し、灰色は有意性がないことを示す。(b)エンリッチメントネットワークの可視化。クラスターアノテーションを色分けして表示している。ノードの大きさは、オントロジー用語や経路に含まれる遺伝子の数を示す。(c)統計的有意性のカラースケールを同じクラスタネットワークに適用した。 PDシートの潜在的な有効性関連マーカー。散布図は、PDシートの遺伝子発現量とICRSスコア(n=12)との間に弱い相関が見られることを示している。横軸は、参照遺伝子としてのACTBのCt値から目的遺伝子のCt値を差し引いたΔCt値での遺伝子発現レベルを示している。 PDシートによって分泌されるタンパク質の解析。(a)選択されたタンパク質のメタエンリッチメント解析。(b)マイクロアレイとSOMAスキャンアッセイから選択した遺伝子のベン図。(c)mRNA発現(GE)とタンパク質分泌(SOMA)の両方に正の相関を示す遺伝子のリスト。(d)PDシートの上清についてELISAにより決定されたタンパク質濃度とICRSスコアとの弱い相関を示す散布図。
以下、本発明の軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法及びマーカー遺伝子探索方法について説明する。また、以下では、軟骨細胞シートの評価方法及び軟骨細胞シートの評価装置並びに軟骨細胞シート、軟骨細胞シートの製造方法及び軟骨細胞シートを用いた軟骨再生方法についても説明する。なお、以下の実施形態及び実施例では、軟骨細胞シートの一種であるPDシート(多指症患者由来シート)を用いた例で説明しているが、軟骨細胞シートとしてはPDシートに限定されない。
1.軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法
本発明は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するための軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法である。本発明の軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法は、移植前の軟骨細胞シートを複数ロット準備するシート準備工程と、この複数ロットの移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数のタンパク質の分泌量を測定するタンパク質測定工程と、複数ロットの軟骨細胞シートのそれぞれを骨軟骨欠損モデル生物に移植して各軟骨細胞シートについて軟骨再生に関する有効性のスコアを算出するスコア算出工程と、タンパク質測定工程で測定されたタンパク質の分泌量と、前記スコア算出工程で算出された前記スコアとの相関関係から、スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定する遺伝子同定工程と、を備える。
1.1.シート準備工程
シート準備工程では、移植前の軟骨細胞シートを複数ロット準備する。軟骨細胞シートの一例であるPFシートは、多指症患者から得られた軟骨組織を培養してシート状にすることで得ることができる。本実施形態では、複数の多指症患者由来のPDシートで複数ロットの軟骨細胞シートを得ている。
1.2.タンパク質測定工程
タンパク質測定工程では、移植前の軟骨細胞シートにおけるタンパク質の分泌量を測定する。本実施形態では、軟骨細胞シートを培養して分泌され培養液の上清に含まれるタンパク質を多重アダプタマーアッセイによって定量している。多重アダプタマーアッセイとしては、SOMAscanアッセイプラットフォームを用いたアッセイを例示することができる。
1.3.遺伝子測定工程
遺伝子測定工程では、移植前の軟骨細胞シートにおける遺伝子の発現量を測定する。具体的には、軟骨細胞シートの全RNAを精製し、これを増幅して定量する。RNAをシアニン3などで標識したのち、二本鎖cDNAに逆転写し、蛍光cRNAを生成させ、マイクロアレイを用いてハイブリダイズさせることで、軟骨細胞シートで発現している遺伝子を同定・定量することができる。
1.4.スコア算出工程
スコア算出工程では、複数ロットの軟骨細胞シートのそれぞれを骨軟骨欠損モデル生物に移植する。骨軟骨欠損モデル生物としてはウサギなどを使用することができる。軟骨細胞シート移植後の2〜6週間後に骨軟骨欠損モデル生物から移植部位を採取し、再生軟骨の組織学的スコアリングを行う。ここで「有効性」とは、軟骨細胞シートによって軟骨が再生し軟骨欠損が修復することを意味し、「有効性のスコア」とは、軟骨がどの程度再生したかの具体的な数値を意味する。有効性のスコアとしては、国際軟骨修復協会(International Cartilage Repair Society:ICRS)スコア、O’Driscollスコア、Wakitaniスコアなどを挙げることができる。例えば、後述する実施例では、未治療群の4週間後のICRSスコアは約19〜25であり、ICRSスコアがこれよりも所定の基準値(例えば10)高ければ有効性ありと判断することができる。
1.5.遺伝子同定工程
遺伝子同定工程では、タンパク質測定工程で測定されたタンパク質の分泌量(発現レベル)と、スコア算出工程で算出されたスコアとの相関関係を解析する。具体的には、タンパク質の分泌量とスコアとの間でピアソン相関係数を算出し、所定の値(例えば0.4)以上の遺伝子を正の相関を示す遺伝子、所定の値(たとえば0.4)未満の遺伝子を負の相関を示す遺伝子として同定する。
この遺伝子同定工程では、遺伝子測定工程で測定された複数の遺伝子の発現レベルと、スコア算出工程で算出されたスコアとの相関関係から、スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定してもよい。この場合、遺伝子の発現レベルとスコアとの間でピアソン相関係数を算出し、所定の値(例えば0.4)以上の遺伝子を正の相関を示す遺伝子、所定の値(たとえば0.4)未満の遺伝子を負の相関を示す遺伝子として同定する。
さらに、遺伝子同定工程では、タンパク質の分泌量とスコアとの間で相関関係を示す遺伝子と、遺伝子の発現レベルとスコアとの間で相関関係を示す遺伝子の両方で共通する遺伝子を、正の相関を示す遺伝子及び/又は負の相関を示す遺伝子として同定してもよい。このように、軟骨細胞シートで分泌されるタンパク質の分泌量と軟骨細胞シートで発現する遺伝子の発現レベルの両方に基づいて相関遺伝子を同定することで、より確実に有効な遺伝子を同定することができる。
2.軟骨細胞シートの評価方法
本発明の軟骨細胞シートの評価方法は、軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性を移植前の軟骨細胞シートから予測するための軟骨細胞シートの評価方法であって、(1)正の相関遺伝子の発現量及び/又は負の相関遺伝子の発現量を測定する測定工程と、(2)測定工程で測定した正の相関遺伝子の発現量及び/又は負の相関遺伝子の発現量に基づいて軟骨細胞シートの移植後の有効性を推定する推定工程とを備える。
ここで、正の相関遺伝子は、ESM1(内皮細胞特異的分子1)、GREM1(グレムリン1、DANファミリーBMPアンタゴニスト)、SERPINA3(セルピンファミリーAメンバー3)、DKK1(ディックコプフWNTシグナル伝達経路阻害剤1)、MIA(メラノーマ阻害活性)、NTN4(ネトリン4)、FABP3(脂肪酸結合タンパク質3)、PDGFA(血小板由来成長因子Aサブユニット)、COLEC12(コレクチンサブファミリーメンバー12)、CTSS(カテプシンS)、FTL(フェリチン軽鎖)、FTH1(フェリチン重鎖1)、GRN(グラヌリン前駆体)、CYCS(シトクロムc、体細胞)、IL6R(インターロイキン6受容体)、THBS2(トロンボスポンジン2)、PRKCD(プロテインキナーゼCデルタ)、SLPI(分泌白血球ペプチダーゼ阻害剤)、IL12B(インターロイキン12B)、IL23A(インターロイキン23サブユニットα)、MRC2(マンノースレセプターC型2)、DKK4(ディックコプフWNTシグナル伝達経路阻害剤4)、UFC1(ユビキチン修飾酵素結合酵素1)、SST(ソマトスタチン)からなる群より選択される遺伝子である。
正の相関遺伝子としては、これらのうち、特に、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFAからなる群より選択される遺伝子であることが好ましい。これらの遺伝子は、後述する実施例で示すように、軟骨細胞シートから分泌されるタンパク質と、軟骨細胞シートで発現する遺伝子の両方において、有効性のスコアと間で正の相関関係を示している。
ここで、負の相関遺伝子は、RARRES2(レチノイン酸受容体レスポンダー2)、APOE(アポリポ蛋白質E)、PGF(胎盤成長因子)、NACA(ナッセントポリペプチド関連複合体アルファサブユニット)、CXCL6(C−X−Cモチーフケモカインリガンド6)、SMPDL3A(スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ酸様3A)、DKKL1(ディックコプフ様アクロソームタンパク質1)、PRL(プロラクチン)、TEC(テックプロテインチロシンキナーゼ)、CCL11(C−Cモチーフケモカインリガンド11)、IL1B(インターロイキン1ベータ)、IFNGR1(インターフェロン・ガンマ受容体1)、CXCL12(C−X−Cモチーフケモカインリガンド12)、MAP3K7(ミトゲン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ7)、TAB1(TGF−β活性化キナーゼ1(MAP3K7)結合タンパク質1)、TNFRSF11B(TNF受容体スーパーファミリーメンバー11b)、TIMP1(TIMPメタロペプチダーゼ阻害剤1)、EEF1B2(核酸翻訳伸長因子1ベータ2)、EPHB4(EPH受容体B4)、KDR(キナーゼ挿入型ドメイン受容体)、ANGPTL4(アンジオポエチン様4)、STK16(セリン/スレオニンキナーゼ16)、TNFSF12(TNFスーパーファミリーメンバー12)からなる群より選択される遺伝子である。
正の相関遺伝子としては、これらのうち、RARRES2(レチノイン酸受容体レスポンダー2)、APOE(アポリポ蛋白質E)、PGF(胎盤成長因子)からなる群より選択される遺伝子であることが好ましい。これらの遺伝子は、後述する実施例で示すように、軟骨細胞シートから分泌されるタンパク質と、軟骨細胞シートで発現する遺伝子の両方において、有効性のスコアと間で負の相関関係を示している。
3.1.測定工程
測定工程は、移植前の軟骨細胞シートで発現している遺伝子の発現レベルを測定する工程である。遺伝子の発現レベルは、上記「1.2.タンパク質測定工程」で説明したように、移植前の軟骨細胞シートにおいて、遺伝子がコードするタンパク質の分泌量から定量することができる。また、遺伝子の発現レベルは、「1.3.遺伝子測定工程」で説明したように、移植前の軟骨細胞シートにおいて遺伝子(DNA)から転写されたRNA量から定量することができる。
3.2.推定工程
推定工程では、上記の測定工程で測定した遺伝子の発現レベルに基づいて軟骨細胞シートの移植後の有効性を推定する。ここで、有効であると判断される遺伝子の発現量は、遺伝子の種類によって発現量が異なるため、有効性を示す軟骨細胞シートと、有効性がないかあるいは有効性の低い軟骨細胞シートとの対比で相対的に決定される。有効性がないかあるいは有効性の低い軟骨細胞シートは、上述した「1.軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法」で説明した未治療群の4週間後のICRSスコアが約19〜25(平均22)であることから、これよりもICRSスコアが10高いICRSスコア32を下回る軟骨細胞シートを有効性がないかあるいは有効性の低い軟骨細胞シートとすることができる。
以下、正の相関遺伝子について説明する。有効性がないかあるいは有効性の低い軟骨細胞シートにおける遺伝子の発現量と比較して、軟骨細胞シートにおける正の相関遺伝子の発現量が、例えばICRSスコアが所定の基準値(例えば10)向上する遺伝子の発現量以上となった場合に、その軟骨細胞シートは有効であると判断することができる。逆に、正の相関遺伝子の発現量が、この所定の基準値となる遺伝子の発現量未満となった場合に、その軟骨細胞シートは有効ではないと判断することができる。
この所定の基準値は、後述する実施例の条件では10であることが好ましいが、軟骨細胞シートの評価条件に応じて適宜設定することができ、例えば10以外にも、20、15、5、4、3、2などであってもよい。この基準値は、軟骨細胞シートで発現する遺伝子と、軟骨細胞シートから分泌されるタンパク質の分泌量とで、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。以下、所定の基準値が10の例について説明する。
正の相関遺伝子の代表的なものについて、下記表に、ICRSスコアが10向上する遺伝子の発現量を記載した。例えば、有効性を示す数値指標として、ITGA10の場合、その遺伝子の発現量が19.1倍に増えると、移植後の有効性を示すICRSスコアが10向上する。ACANの場合、28.3倍発現量が増えると、移植後の有効性を示すICRSスコアが10向上する。同様に、各遺伝子を検討すると、NGEFの場合6.0倍、C15orf52の場合3.4倍、HOXA3の場合3.9倍などとなる。なお、ICRSスコアを10倍向上した場合の発現量比は、遺伝子の発現値とICRSとの相関解析において、回帰分析を行い、最小二乗法を適応した際に求められる傾きから、発現量比とICRSスコアの差との関係を導きだして算出した。後述する分泌タンパク質における発現量比についても同様である。以下の表に、回帰分析を行った結果の回帰直線式を記載する。なお、遺伝子の発現量は、取得データ(シグナル強度)が1上がると量が2倍という換算になっている。この回帰直線式とICRSスコアとから発現量の絶対値を算出できるため、例えばICRSスコアの値が32以上の発現量の場合に軟骨細胞シートの有効性が高いと判断することが可能である。
Figure 2021090418
また、正の相関遺伝子の代表的なものに関して、下記表に、ICRSスコアが10向上する分泌タンパク質の発現量(分泌量)を記載した。軟骨細胞シートから分泌されるタンパク質の分泌量比として、ESM1が6.5倍増えると、ICRSスコアが10向上する。同様に、GREM1が3.4倍増えると、ICRSスコアが10向上する。同様に、SERPINA3は9.8倍、DKK1は9.1倍、MIAは14.0倍、NTN4は7.0倍、PDGFAは3.1倍、FABP3は135倍である。
Figure 2021090418
次に、負の相関遺伝子の代表的なものについて説明する。有効性がないかあるいは有効性の低い軟骨細胞シートにおける遺伝子の発現量と比較して、軟骨細胞シートにおける負の相関遺伝子の発現量が、例えばICRSスコアが所定の基準値(例えば10)低下する遺伝子の発現量以下となった場合に、その軟骨細胞シートは有効であると判断することができる。逆に、負の相関遺伝子の発現量が、この所定の基準値となる遺伝子の発現量以上となった場合に、その軟骨細胞シートは有効ではないと判断することができる。
この所定の基準値は、後述する実施例の条件では10であることが好ましいが、軟骨細胞シートの評価条件に応じて適宜設定することができ、例えば10以外にも、20、15、5、4、3、2などであってもよい。この基準値は、軟骨細胞シートで発現する遺伝子と、軟骨細胞シートから分泌されるタンパク質の分泌量とで、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。以下、所定の基準値が10の例について説明する。
また、例えば、負の相関遺伝子の代表的なものに関して、下記表に、ICRSスコアが10低下する遺伝子の発現量を記載した。BRD9の場合、その遺伝子発現量が3.6倍増えると、移植後の有効性を示すICRSスコアが10低下する。TUSC1の場合、6.5倍発現量が増えると、移植後の有効性を示すICRSスコアが10低下する。同様に、SPRY1は6.2倍、C1orf229は5.1倍、HAGHLは7.0倍などとなる。
Figure 2021090418
また、負の相関遺伝子に関して、下記表に、ICRSスコアが10低下する分泌タンパク質の発現量(分泌量)を記載した。軟骨細胞シートから分泌されるタンパク質の分泌量比として、RARRES2が13.1倍増えると、ICRSスコアが10低下する。同様に、APOEは4.8倍、PGFは18.6倍である。
Figure 2021090418
3.軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置及び軟骨細胞シートの評価装置
本発明のマーカー遺伝子探索装置及び軟骨細胞シートの評価装置は、上記のマーカー遺伝子探索方法及び軟骨細胞シートの評価方法をそれぞれ実施するための装置である。図1は、マーカー遺伝子探索装置及び軟骨細胞シートの評価装置の概要を示す模式図である。まず、上記の軟骨細胞シートを用意する(シート準備手段)。また、軟骨細胞シートをPCR Panelなどで分析して遺伝子の発現量を測定する(遺伝子測定手段:測定手段)。また、軟骨細胞シートをタンパク質発現解析によってタンパク質の分泌量を測定する(タンパク質測定手段:測定手段)。解析されたデータは解析・数値化実行データベースに格納される。なお、解析・数値化実行データベースには、公共データベースを使用して解析したデータを格納してもよい。
一方、本軟骨欠損モデル生物に軟骨細胞シートを移植し、軟骨の再生状況を解析して軟骨再生の有効性のスコアを算出する統合情報解析システム(スコア算出手段)と、これをデータベース化した細胞情報データベースを備えている。細胞情報データベースに格納された細胞情報データは、解析・数値化実行データベースのデータとともに、統合情報解析システムで解析される。この統合情報解析システムでは、上記の「遺伝子同定工程」と同様に、タンパク質の分泌量(発現レベル)と有効性のスコアとの相関関係をプログラム・アルゴリズム(遺伝子同定手段)で解析して、有効性と相関関係を示す遺伝子を同定する。また、遺伝子の発現レベルと有効性のスコアとの相関関係を解析して遺伝子を同定することもできる。さらに、タンパク質の分泌量と遺伝子の発現レベルの両方で共通する遺伝子を同定することもできる。
さらに、統合情報解析システム(推定手段)では、正の相関遺伝子と負の相関遺伝子の発現レベルに基づいて、マーカーによる有効性を予測することもできる。すなわち、解析・数値化実行データベースに格納された正の相関遺伝子の発現レベルが所定の数値以上の軟骨細胞シートについては有効性ありと評価し、負の相関遺伝子の発現レベルが所定の数値以上の軟骨細胞シートについては有効性なしと評価する。あるいは、正の相関遺伝子の発現レベルが所定の数値未満の軟骨細胞シートについては有効性なしと評価し、負の相関遺伝子の発現レベルが所定の数値未満の軟骨細胞シートについては有効性ありと評価してもよい。評価結果は、細胞機能・品質評価レポートとして出力することができる。
4.軟骨細胞シート及びその製造方法
次に、本発明の軟骨細胞シート及びその製造方法について説明する。本発明の軟骨細胞シートは、移植前の軟骨細胞シートにおける正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上であること、及び/又は負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下である。ここで、正の相関遺伝子及び負の相関遺伝子は、上記の「2.軟骨細胞シートの評価方法」で挙げた遺伝子である。
また、本発明の軟骨細胞シートの製造方法は、移植前の軟骨細胞シートにおける正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上となるように、及び/又は負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下となるように、軟骨培養シートを培養する方法である。ここで、正の相関遺伝子及び負の相関遺伝子は、上記の「2.軟骨細胞シートの評価方法」で挙げた遺伝子である。
軟骨細胞シートの製造方法は、まず、若年性多指症患者の多指から得られた軟骨組織を調製培地で消化して軟骨細胞を単離し、これを培養皿に載せて培養する。調製培地としては、(DMEM/F12(Dulbecco’s modified Eagle’s medium-Nutrient Mixture F−12)などを挙げることができる。次に、上記で培養した軟骨細胞を培養インサートに播種して培養することで、軟骨培養シートを得ることができる。
本発明では、移植前の軟骨細胞シートにおける正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上となるような条件で上記の培養を行う。このような条件としては、正の相関遺伝子の発現を促進させる因子(化合物など)を添加して培養を行うことなどが考えられる。また、本発明では、移植前の軟骨細胞シートにおける負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下となるような条件で上記の培養を行う。このような条件としては、負の相関遺伝子の発現を低下させる因子(化合物など)を添加して培養を行うことなどが考えられる。
5.軟骨細胞シートを用いた軟骨再生方法
本発明は、移植前の軟骨細胞シートにおける正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上である、及び/又は負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下である、軟骨細胞シートを準備する工程と、軟骨細胞シートを患者に移植する工程と、を有する方法である。ここで、正の相関遺伝子及び負の相関遺伝子は、上述した「2.軟骨細胞シートの評価方法」で挙げた遺伝子である。
本発明の軟骨再生方法では、移植後の有効性の高い軟骨細胞シートを患者に移植しているため、軟骨再生効率が高く、軟骨細胞シートの移植後の予後が良好である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。また、以下の実施例において「%」表示は特に規定しない限り質量基準(質量パ−セント)である。
1.材料と方法
1.1.倫理声明
実験は東海大学医学部臨床研究審査委員会の承認と指導のもとに実施した。インフォームドコンセントはすべての場合において、提供者の保護者から取得した。一部の手術標本は不可逆的に身元が特定できないようにした。ヒトの細胞や組織を扱うすべての実験は、ヘルシンキ宣言の信条に沿って行われた。
動物実験は、東海大学の施設動物実験委員会の承認を得て、動物の取り扱いや飼育については、文部科学省所管の「動物実験に関する施設規則」及び「学術研究機関における動物実験等の適正な実施のための基本指針」に準拠して実施した。
1.2.PDシートの作製
1.2.1.軟骨細胞の調製
軟骨細胞は、上記に記載された調製手順に従って単離した(非特許文献10)。簡潔に説明すると、若年性多指症患者(11人の患者、年齢8〜23ヶ月、5人の女児、4人の男児及び2人の非同定ドナー)から得られた軟骨組織を、20%ウシ胎児血清及び1%抗生物質−抗真菌溶液(Gibco, Waltham, MA, USA)を補充した調製培地(DMEM/F12(Dulbecco’s modified Eagle’s medium-Nutrient Mixture F−12), Gibco, Waltham, USA)中で、5mg/mlのCLS1(コラゲナーゼI型)(Worthington Biochemical Corp.Lakewood, NJ ,USA)により、5%CO及び95%空気の加湿雰囲気中で、37℃で2〜3時間撹拌して消化した。単離した軟骨細胞を調製培地で洗浄し、培養皿に播種した。培養皿に細胞が付着して増殖を開始した後、100μg/mLアスコルビン酸(日清製薬、山形県、日本)を含む調製培地に培地を交換した。2つのケースでは、組織を1mm以下の大きさにミンチ状にし、調製培地中の培養皿に載せ、細胞が不完全になるまで培養した。軟骨細胞は、TrypLE Express(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、東京、日本)を用いて採取し、STEM−CELLBANKERTM(ゼノアック社、福島県、日本)又はTC−Protector細胞凍結培地(KAC社、京都府、日本)で凍結保存した。いくつかのドナーは、凍結保存前に最大5回まで継代された。
1.2.2.PDシートの作製
凍結保存した12ロットの軟骨細胞を解凍し、培地中で1回継代し、温度応答性培養インサート(株式会社セルシード、東京都、日本)に1×10細胞/cmで播種し、2週間培養した。得られたPDシートを4つのグループに分けて、有効性評価、特性評価、遺伝子発現解析、タンパク質分泌解析に使用した。
1.2.3.PDシートの特性評価
細胞数を決定するために、PDシートをTrypLE Express(Thermo Fisher Scientific)で、37℃で30分間消化し、次いで0.25mg/mL Collagenase−P(Roche, Basel, Switzerland)で、37℃で30分間インキュベートした。分散した細胞を培養液で洗浄し、細胞数及び生存率をトリパンブルー色素排除アッセイによって決定した。PDシートの厚さを決定するために、各PDシートをTissue−Tek O.C.T.コンパウンド(サクラファインテック、東京、日本)に埋め込み、−80℃で凍結した。厚さ10μmのPDシートの断面を切断し、スライドグラスに載せて空気乾燥し、0.01Mリン酸緩衝液中の4%パラホルムアルデヒドで、室温で30分間固定した。切片は、標準的なプロトコルに従ってヘマトキシリンとエオジン(H&E)で染色した。顕微鏡画像を撮影し、点のペア間の距離を、BZ−8000顕微鏡(キーエンス、大阪、日本)を使用して測定した。
1.3.骨軟骨欠損に対するPDシートの有効性の評価
1.3.1.免疫抑制ウサギ骨軟骨欠損モデル
ウサギにおけるPDシートの有効性評価は、非特許文献11に記載されているように行った。雌の日本産白ウサギ(平均体重=3.0kg:東京実験動物科学株式会社)合計69羽を使用した。手術前に、ウサギを体重により無作為に欠陥のみの群とPDシート移植群のいずれかに割り付けた。免疫抑制のために、タクロリムス(1.6mg/kg/日)を移植の2日前から10日間、毎日筋肉内に投与し、その後、手術後4週間まで隔日投与した。ウサギは、手術及び移植前に亜酸化窒素2L/min、酸素1L/min、イソフルラン2.5〜3.0%(Pfizer, New York, NY, USA)で麻酔をかけた。5mm生検パンチ(甲斐工業、岐阜県、日本)をマーキングガイドとし、5mmドリルを用いて、大腿骨の膝蓋溝に骨軟骨欠損(直径=5mm、深さ=3mm)を作成した。軟骨下骨からのわずかな出血を確認し、生理食塩水(ニプロ、大阪府、日本)を用いて欠損部を洗浄し、熱損傷を防止した。
1.3.2.PDシートの移植
PDシートの移植のため、PDシートを入れた培養プレートを25℃で30分間保持して剥離させた。ポリビニリデンジフルオライド膜を用いて、骨軟骨欠損部に膝につき1枚のPDシートを移植した。膝蓋骨の修復後、大腿四頭筋と腱を縫合し、脱臼を防止した。
1.3.3.再生軟骨の組織学的スコアリング
PDシート移植から4週間後、50mg/mlのペントバルビタール(東京化成工業製、東京都)を静脈内投与してウサギを安楽死させた。手術した大腿骨を採取し、20%ホルマリン(和光純薬工業)で3〜5日間固定した。標本を10%EDTA(エチレンジアミン四酢酸)(和光純薬工業)中で3〜4週間脱灰し、パラフィンを埋め込んだ。直列切片(3μm)は、大腿骨の長軸と平行に、欠損部の中心付近で切断した。組織学的検査のために、切片は、標準的なプロトコルに従ってヘマトキシリンとエオジン(H&E)、サフラニンO、及びファストグリーンで染色した。ステンドされた切片は、ランダム化され、O’Driscollスコアと国際軟骨修復協会(ICRS)スコア[44,45]の修正版を使用して、訓練を受けた2人の整形外科医によって別々に採点された。
1.3.4.免疫染色
I型コラーゲン(COL1)及びII型コラーゲン(COL2)の免疫染色のために、脱パラフィン化した3−μm切片を0.4%ペプシン(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)で、37℃で30分間処理して抗原を回収した。次に、切片を0.4%ペプシン(DAKO, Glostrup, Denmark)により37℃で30分間インキュベートし、蒸留水で洗浄した後、0.3%過酸化水素/メタノール溶液にて室温(RT)で30分間インキュベートし、内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。次に、切片をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、2.5%正常ヤギ血清(NGS)により10分間室温(RT)でブロッキングし、ヒトCOL1又はヒトCOL2のいずれかのマウスモノクローナル抗体(協和薬品工業株式会社、富山県、日本)をPBS中の1%ウシ血清アルブミン(Sigma−Aldrich)で1:100に希釈したものを用いて3時間室温(RT)でインキュベートした。最後に、染色切片をPBSで洗浄し、次いで、ImmPRESS試薬抗マウスIg(Vector Laboratories, Burlingame, CA, USA)を用いてRTでインキュベートし、0.02%ジアミノベンジジン及び0.005%過酸化水素を含むトリス−HCl緩衝液(pH7.6)に2〜8分間浸漬し、H&Eでカウンター染色した。
ヒトビメンチン検出のために、脱パラフィン化切片を、抗原検索のためにマイクロ波により98℃で10分間、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で処理した。切片を、ブロッキングのための5%NGSを含むPBSでインキュベートし、続いて、ヒトビメンチンを検出するために、PBS中の1%ウシ血清アルブミンと1:100で希釈したAlexa Fluor 647標識ウサギモノクローナル抗体(Cell Signaling Technology, Danvers, MA, USA)により4℃で一晩インキュベートした。切片を蒸留水で洗浄し、次いでマウントし、製造業者の指示に従って4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(Vector Laboratories)で硬化させた。すべての顕微鏡画像は、BZ−9000第II世代蛍光顕微鏡(キーエンス社)を用いて得た。
1.4.PDシートの遺伝子発現解析
1.4.1.RNAの単離
SHAKE Master Neo(Bio Medical Science、日本)を用いてPDシートをTRIzol Reagent(Life Technologies)中で破壊し、製造者の指示に従ってQiagen RNeasy Mini Kit(QIAGEN、Valencia、CA、USA)を用いて全RNAをさらに精製した。RNAの量及び質は、推奨通りに、ナノドロップワン分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)及びアジレント・バイオアナライザ(アジレント・テクノロジーズ)を用いて決定した。
1.4.2.cRNAの増幅と標識
メーカーの指示に従って、Agilent Low Input Quick Amp Labeling Kit, one−color(Agilent Technologies)を使用して全RNAを増幅し、シアニン3(Cy3)で標識した。簡潔にいうと、ポリdT−T7プロモータープライマーを用いて、全RNAを二本鎖cDNAに逆転写した。プライマー、テンプレート RNA、及び既知の濃度及び品質の品質管理転写物を、まず65℃で10分間変性し、5X First−Strand Buffer、0.1M dithiothreitol、10mM deoxyribonucleotide triphosphate mix、及びAffinityScript RNase Block Mixを用いて、40℃で2時間インキュベートした。AffinityScript酵素を70℃で15分間失活させた後、cDNA産物をインビトロ転写のテンプレートとして使用して蛍光cRNAを生成させた。cDNA産物を、T7 RNAポリメラーゼ及びCy3標識CTPの存在下で転写マスターミックスと混合し、40℃で2時間インキュベートした。標識したcRNAを、QIAGENのRNeasyミニスピンカラムを用いて精製し、30μLのヌクレオースフリー水で溶出した。増幅及び標識後、ナノドロップND−1000分光光度計及びAgilent Bioanalyzerを使用して、cRNAの量及びシアニンの取り込みの程度を決定した。
1.4.3.サンプルのハイブリダイゼーション
各ハイブリダイゼーションについて、Agilent SurePrint G3 Human GE v3 8x60K マイクロアレイ (デザインID:072363)を使用して、0.60μgのCy3標識cRNAを断片化し、65℃で17時間ハイブリダイズした。洗浄後、Agilent DNAマイクロアレイスキャナーを使用してマイクロアレイをスキャンした。
1.4.4.有効性相関遺伝子の同定
各スキャンされた特徴の強度は、Agilentの特徴抽出ソフトウェア・バージョン11.5.1.1.1を使用して定量化した。エラーがないとフラグが立てられた特徴(「検出された」フラグ)のみを使用し、陽性ではない、有意ではない、一様ではない、背景より上ではない、飽和している、又は集団の外れ値であるとフラグが立てられた特徴(「検出されなかった」フラグと「妥協した」フラグ)は除外した。分位正規化は、Agilent GeneSpringソフトウェア・バージョン14.9.1を使用して行った。生のシグナルデータの四分位正規化後、遺伝子記号の既存のアノテーションと全サンプル(coveted log2強度が5以上)の平均シグナル強度に基づいて、プローブをフィルタリングした。マーカー遺伝子の抽出は、各プローブの発現レベルとICRSスコアとの間のピアソン相関係数を算出し、0.4以上又は0.4未満のプローブを選択した。最終的に、これらの基準で443個の遺伝子を同定し、すべてのサンプルにおいて、分散が大きく、log2強度が0.5以上であった。階層的クラスタリング分析は、Agilent GeneSpringソフトウェア・バージョン14.9.1を使用して行った(類似度測定:ユークリッド、リンケージルール:平均)。
1.4.5.エンリッチメント分析
有効性に関連する遺伝子は、Metascape(http://metascape.or./)[12]のオンラインツールを用いて解析した。デフォルトセッティングに対して機能的エンリッチメントを行った。また、正の相関を持つ遺伝子と負の相関を持つ遺伝子を含む複数の入力遺伝子リストを解析した。
1.4.6.RT−PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)
QuantiTect Reverse Transcription Kit(Qiagen)を用いてPDシートの全RNAをcDNAに変換した。cDNAのプリアンプ化には、TaqMan PreAmp Master Mix Kit(Applied Biosystems)を用いた。蛍光プローブ及びフォワード/リバースプライマーを含むTaqMan Gene Expression Assays(Applied Biosystems)(下記表参照)を、製造元の指示に従って、最終濃度が0.2×にプールされたアッセイミックスが得られるように、トリス及びEDTA(TE)緩衝液(1×)で希釈した。25μLのTaqMan PreAmp Master Mix(2×)、12.5μLのプールされたアッセイミックス(0.2×)、1μLのcDNAサンプル、及び50μLの合計に調整するためのヌクレオターゼフリーの水を調製し、この50μLで反応を行った。サーマルサイクラーGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems)を95℃で10分間、95℃で15−sサイクルを14回、60℃で4分間、プリアンプ化PCRを行った。プリアンプ化されたcDNA産物は、リアルタイムRT−PCR解析用のテンプレートとして使用するために、TE緩衝液(1×)で1:20に希釈した。TaqMan リアルタイム PCRは 7500 Real−Time PCR System(Applied Biosystems)を使用して実施した。PCR反応混合物は、10μLのTaqMan Gene Expression Master Mix(2×)、1μLのTaqMan Gene Expression Assay(20×)、5μLのプリアンプ化されたcDNA、及び20μの合計に調整するためのヌクレオターゼフリーの水で構成される。サーマルサイクラー7500リアルタイムPCRシステムを、50℃で2分間、95℃で10分間、95℃で15−sサイクルを40回、60℃で1分間、増幅のために実行した。サイクル閾値(Ct)値は、7500リアルタイムPCRシステムソフトウェアv.2.0.6(Thermo Fisher Scientific)により決定した。各遺伝子の相対発現値(ΔCt値)は、内部コントロールACTBのCtに対して導出した。
Figure 2021090418
1.5.PDシートが分泌するタンパク質の解析
1.5.1.PDシートの上澄みの調製
1%ウシ胎児血清と1×抗生物質−抗真菌溶液(Gibco)を補充したDMEM/F12(Gibco)3mLで各PDシートを72時間培養した。上清を回収し、13,000gで10分間遠心分離することにより破片を除去し、一定分量に分割し、使用するまで−80℃で保存した。
1.5.2.SOMAscanを用いたプロテオミクス解析
スローオフレート修飾アプタマー(SOMAmers)による1,129個のタンパク質を検出する多重アプタマーベースのアッセイであるSOMAscanアッセイプラットフォーム(SomaLogic社)を用いて上清を分析した[13]。このアッセイでは、化学的に修飾されたヌクレオチドを使用して、タンパク質シグナルをマイクロアレイ上の相対蛍光を使用して定量できるヌクレオチドシグナルに変換する。生のシグナルデータにランクベースの分位正規化を適用した。次に、プローブをシグナル強度(coveted log2強度が6以上)に基づいてフィルタリングし、全サンプルの平均強度を得た。マーカータンパク質の抽出については、それらの各プローブのタンパク質発現レベルと個々のICRSスコアとの間でピアソン相関係数を算出し、0.4以上又は0.4未満のものを選択した。最後に、これらの基準を用いて112個の遺伝子を同定し、分散が大きいものはすべてのサンプルについてlog2強度が0.5以上であることを確認した。
1.5.3.酵素結合免疫吸着剤アッセイ
上清を解凍し、MIA(メラノーマ阻害活性)(ロシュ)及びDKK1(ディックコプフWNTシグナル伝達経路阻害剤1)(R&Dシステムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)のELISA(enzyme−linked immunosorbent assay)キットを用いてタンパク質の濃度を決定した。
1.6.統計解析
数値結果の要約は平均と標準偏差で表した。ICRSスコアの分析には分散分析を用い、ポストホック分析にはDunnettの多重比較を用いた。
2.結果
2.1.PDシートの硝子軟骨再生に対する効果
今回の全体的な実験デザインを図2(a)に示す。PDシートの多様性が有効性及びトランスクリプトーム及びプロテオームプロファイルに与える影響を評価するために、11人のドナーから得られた12ロットのPD軟骨細胞についてPDシートを作成した。これらのロットには、異なる通過数、異なる条件での培養拡大、及び異なる凍結保存培地が含まれる(下記表参照)。図2(b)には、組織学的修復が良好な場合と不良な場合の欠損群と移植群の欠損部の代表的なマクロ画像が示されている。図2(c)及び(d)は、使用したウサギの同所性異種移植モデルにおける骨軟骨欠損に対するPDシートの評価結果を示す。
Figure 2021090418
PDシートは欠損部の硝子軟骨の再生を促進したが、効果にばらつきがあり、いくつかのロットでは効果が発揮されなかった。未治療群の4週間後のICRSスコアは22.13±3.09(n=5)であり、移植群のICRSスコアは18.1〜35.2の間とばらつきがあった(図2(c)参照)。図2(d)は、PDシートの厚さ、細胞数、及びPDシートに含まれる細胞の生存率に関するPDシートの特性分布を示している。PDシートはパイルドセル構造を形成しており、その厚さは7.7〜18.3μm(平均11.52〜3±3.23μm)であった。また、細胞数もPDシート1枚あたり1.7〜4.2×10個(平均2.65±0.67×10個)の範囲で変動していた。
2.2.PDシートの有効性に関連した遺伝子発現プロファイル
同所性異種移植モデルを介してその有効性を検討した12ロットのPDシートの遺伝子発現を、マイクロアレイを用いて解析した。アレイシグナルとICRSスコアとの相関関係から遺伝子を抽出し、ICRSスコアと正の相関を示す遺伝子205個、負の相関を示す遺伝子238個を得た。正の相関が最も高かった20個の遺伝子を下記の表(正の相関がある遺伝子トップ20)に、負の相関が最も高かった20個の遺伝子を下記の表(負の相関のある遺伝子トップ20)にそれぞれ示す。図3は、抽出された443個の遺伝子について、遺伝子発現のヒートマップを用いてクラスター分析を行った結果を示している。これらを効能関連遺伝子と考えることができる。ICRSスコアが最も低い5ロットのPDシートについては、4ロットが同一クラスターに分類されており、これらの遺伝子セットの発現レベルが有効なPDシートの同定に有用である可能性を示唆している。
Figure 2021090418
Figure 2021090418
2.3.有効性関連遺伝子による機能予測
このような有効性関連遺伝子の生物学的機能を明らかにするために、Metascape[12]を用いてこれらの遺伝子の濃縮解析を行った。その結果、正の相関を持つ遺伝子は、骨格系の発生経路、軟骨の発生、間葉系幹細胞の分化に関与していることが示唆された(図4)。また、一部の遺伝子は血管新生や細胞外マトリックスの組織化に関与していた。
下記表に、エンリッチド遺伝子オントロジー(GO:ジーンオントロジー)の観点から記載され、アノテーションされた効能関連遺伝子を示す。また、GO:0030198細胞外マトリックス組織化に関連する遺伝子の一部は、GO:0061035軟骨の発生制御にも関連していた。我々は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイのために5つのGO注釈付け遺伝子を選択した。アグレカン(ACAN)、インテグリンアルファ10(ITGA10)、成長分化因子5(GDF5)、SRY(性決定領域Y)−BOX転写因子9(SOX9)、SRY−BOX転写因子5(SOX5)の発現をRT−PCRで検証し、ICRSスコアとの相関を解析した。その結果、ACAN、ITGA10、GDF5、SOX9、SOX5についてはアクチンベータ(ACTB)に関するCΔとICRSスコアとの間に相関があったが、SOX5については相関がなかった(図5)。
Figure 2021090418
2.4.PDシートの効果に関連する分泌要因の分析
PDシートから継続的に供給される体液性因子が硝子軟骨の再生促進に寄与していると考えられる。そこで、SOMAscanプラットフォームを用いて、PDシートから分泌されるタンパク質の相対量とICRSスコアとの相関を解析した[13,14]。SOMAscanで解析可能なタンパク質因子のうち、有効性スコアと正の相関を持つタンパク質が49個、負の相関を持つタンパク質が63個抽出された(下記表(正の相関のある分泌タンパク質トップ20)、表(負の相関のある分泌タンパク質トップ20)参照)。図6(a)に有効性相関因子の濃縮解析結果を示す。負の相関を示す因子は、GO:アポトーシスシグナル伝達経路に集中していた。正の相関を示した因子は、骨格発達の親項(parent term)である結合組織発達と、血管新生の親項である血管発達に集中していた。これらの経路は、遺伝子発現解析における集中と同様の結果が得られた。有効性に関連する遺伝子の発現を示したタンパク質のうち、有効性と相関する8つのタンパク質が上清中に同定された。ESM1(内皮細胞特異的分子1)、GREM1(グレムリン1)、SERPINA3(セルピンファミリーAメンバー3)、DKK1、MIA、NTN4(ネトリン4)、FABP3(脂肪酸結合タンパク質3)、PDGFA(血小板由来成長因子Aサブユニット)の8種類のタンパク質が上清中に確認された(図6(b)、(c))。3つのタンパク質は負の相関を示した。RARRES2(レチノイン酸受容体レスポンダー2)、APOE(アポリポタンパク質E)、PGF(胎盤成長因子)である。
このうち、OA予防効果が期待されるDKK1[15]と軟骨分化マーカーであり同化因子であるMIA[16−18]に着目した。これらの因子の量を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で定量した結果、PDシート間でタンパク質量にばらつきがあり、MIAは0〜38.4ng/mL、DKK1は2.6〜26.6ng/mLの範囲であった。また、ICRSスコアとの相関は弱かった(図6(d))。
Figure 2021090418
Figure 2021090418
3.議論
本研究では、PDシートを用いた同所性異種移植モデルにおいても、成体膝軟骨シートを用いた場合と同様に、PDシートを用いることが有効であることを確認した。ヒト成体軟骨細胞シートの作製では、2D培養環境下で軟骨細胞が増殖するため、Col2A1の発現が低下し、軟骨細胞シートは脱分化していると考えられる。しかし、動物モデル[11]やヒト臨床研究[8]では、移植された関節で硝子軟骨に再分化することがわかっている。我々は、PDシートを用いることで、ヒト細胞由来の欠損部に硝子軟骨様組織を見出しており、PDシートも生体内で硝子軟骨に再分化することが示唆されている。
ラットの軟骨細胞シート同所性移植を追跡するためにin vivoイメージングシステムを使用した結果は、関節内の同種軟骨細胞のルシフェラーゼシグナルの大部分が数ヶ月以内に消失することを示しており[19]、長期的には同種移植片由来の組織がレシピエント由来の組織に置き換わることを示唆している。我々の結果は、少なくとも短期的には、PDシートが軟骨前駆細胞として作用する可能性があることを示唆している。
軟骨病変部に付着した軟骨シートは、軟骨組織マトリックスの流出を防ぎながら、触媒因子に対するバリアとして作用することが示唆されている[4,20]。さらに、軟骨シートから産生される同化因子が軟骨再生を促進するためのパラクリン因子として働くことが示唆されている[10,21,22]。我々の研究では、細胞外マトリックス、骨格形成、骨化、血管新生に関連する遺伝子の発現とタンパク質因子の分泌の両方がPDシートの有効性に関与していることを示している。我々は以前、PDシートが同化因子としてMIAを分泌することを報告しており[10]、今回の研究でもそれが確認された。さらに、PDシートの有効性に寄与する他の同化因子の候補(GREM1、DKK1、PDGF)も同定している。
GREM1とDKK1はWntシグナルの調節に関与していることが知られており、関節軟骨におけるWntシグナルの障害は軟骨の恒常性維持不全を引き起こすと考えられている[23−26]。肥大性軟骨細胞の分化を抑制し、軟骨表面及び静止性軟骨細胞層を増加させることが報告されている[27]。また、DKK1トランスジェニックマウスにおけるOA発症の抑制も報告されている[15]。PDGF−AAは軟骨のプロテオグリカン産生や軟骨細胞増殖を促進する軟骨栄養因子として指摘されており[28,29]、PDGF−AAの減少は軟骨の変性を促進する[30]。
我々の結果は、PDシートがこれらの因子を産生することで、硝子軟骨の再生を促進していることを示唆している。PDシートは生きた組織であるため、硝子軟骨へと再分化する過程で、軟骨表層、深層、軟骨下層という微小環境に応じて因子の産生を調整することができる可能性がある。これらの因子の産生は、細胞シート製造のためのドナーの選択や培養方法の改良の際に、PDシートの有効性を予測するための有用なマーカーとなり得る。
さらに、我々の研究では、これまで軟骨組織に特異的な役割を持つとは報告されていないNTN4及びESM1の産生がPDシートの有効性と相関していることが示された。NTN4はネットリンファミリー因子であり、骨芽細胞の分化を促進し[31]、軟骨細胞におけるSMADシグナル伝達を修飾することが報告されている[32]ことから、NTN4が軟骨細胞自体や軟骨下骨に何らかの影響を与えている可能性が示唆されている。また、NTN4は血管新生を抑制することも報告されている[33,34]。ESM1はダーマタン硫酸プロテオグリカンであり、その発現はVEGFによって増強される[35,36]。ESM1は軟骨の他の部分よりも深部の軟骨層で高発現することが報告されており[37]、軟骨細胞の分化に関連した生物学的役割を示唆している。Rochaらは、ESM1がフィブロネクチンと競合的に結合することにより、VEGF−165のバイオアベイラビリティを増加させることを報告している[38]。PDシートは豊富なフィブロネクチンを発現しているので、PDシートから分泌されたESM1は、PDシート自体又はレシピエント組織中のフィブロネクチンと結合して飽和すると推測される。ESM1は、VEGFの結合及び新生血管の侵食を防止する可能性がある。
関節軟骨の血管新生は軟骨の変性や骨棘形成の原因となると考えられている。我々は以前、前十字靭帯切開ウサギモデルにおいて、抗VEGF抗体投与により骨棘形成が抑制されることを報告している[39,40]。これらの結果は、血管新生の抑制がOA予防のための有望なアプローチであることを示唆している。PDシートが産生するNTN4及びESM1は、軟骨欠損部の修復中に血管新生及びその後の石灰化を抑制することで、硝子軟骨の再生に寄与する可能性がある。
SERPINA3はセリンプロテアーゼファミリーの一種であり、間葉系幹細胞(MSC)が軟骨細胞に分化する際に発現量が変化する遺伝子として報告されている[41]。FABP3は脂肪酸結合タンパク質であり、細胞内脂質滴の蓄積に必要であり、MSCの生存率を高めることが報告されている[42,43]。しかし、FABP3は通常ゴルジ体に局在するタンパク質であるため、上清中の量の増加はFABP3を発現する細胞の細胞死に関係している可能性がある。これらの因子の効果への寄与は現在のところ不明であり、さらなる解析が必要である。
本研究の限界の一つは、免疫抑制剤を用いた異種移植モデルから得られた結果である。そのため、異種移植と同種移植の間には、ヒトへの応用において考慮すべき、巻き込みや拒絶反応のプロセスに違いがある可能性がある。PDシートのエングラフトメントは有効性の観点から非常に重要であると考えられ、異種移植では軟骨の再生を促進するというよりもエングラフトメントを促進する要因があると考えられる。
ドナーの違いにより性質が異なる可能性のある同種細胞を用いた再生医療では、組織工学的に作製した細胞の性質を安定化させることが臨床応用上の避けて通れない課題となっている。そのためには、生体内での有効性に寄与する生物学的特性を明らかにすることが不可欠である。これにより、同定された生物学的特性に基づいてドナー細胞や培養条件を検証することが可能となる。
本研究では、PDシート移植による硝子軟骨再生に寄与する可能性のある生物学的経路及び関連遺伝子を同定した。これらの構成要素は、PDシートのin vivoでの有効性を予測するためのマーカーとして利用できる可能性がある。これらのマーカーを有効性予測に利用するためには、独立したデータを用いて有効性との相関関係をさらに解析し、マーカーの閾値を決定する必要がある。最終的には、これらの因子がPDシートの有効性にどのように寄与しているかをヒト臨床試験で確認した上で、品質マーカーとして使用する必要がある。
4.結論
本研究では、PDシート移植による硝子軟骨再生に寄与すると考えられる有効性関連遺伝子を同定した。このように同定された特徴は、PDシートを使用した場合のin vivoでの有効性を予測するマーカーとして機能する可能性がある。さらに、これらの因子が軟骨再生を促進するメカニズムがさらに解明されれば、OA治療への新たなアプローチを提供することになる。
軟骨シート移植は、変形性関節症に伴う軟骨欠損を有する患者を治療するための新規かつ有望なアプローチである。自己軟骨シートによる硝子軟骨再生は、臨床研究ですでに実証されている。本研究では、標準的な軟骨細胞シートの同種移植モデルを用いて、標準的な軟骨細胞シートに代わる同種移植モデルとしての多孔性の軟骨細胞シート(PDシート)の有効性を検討した。さらに、マイクロアレイとDNAアプタマーアレイを用いて、PDシート中の遺伝子と分泌タンパク質の発現を解析した。PDシートの軟骨欠損に対する有効性を組織学的スコアで評価し、有効性と相関を示すシグナルに含まれる遺伝子やタンパク質を同定した。有効性と相関のある遺伝子・タンパク質をエンリッチメント解析したところ、細胞外マトリックス、骨格発生、血管新生に関連することがわかった。PDシートの有効性と正の相関を示したのは8つの遺伝子(ESM1,GREM1,SERPINA3,DKK1,MIA,NTN4,FABP3,PDGFA)であり、3つの遺伝子(RARRES2,APOE,PGF)はトランスクリプトーム解析とプロテオーム解析の両方で負の相関を示した。このうち、骨格発生経路に関与するMIAとDKK1は分泌量と有効性の間に弱い相関を示した。これらの結果から、DKK1とMIAはPDシートの有効性を予測するのに有用であり、PDシートを介したヒアルロン酸軟骨の再生に寄与する可能性が示唆された。
<非特許文献リスト>
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Claims (18)

  1. 軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するための軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法であって、
    移植前の軟骨細胞シートを複数ロット準備するシート準備工程と、
    前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数のタンパク質の分泌量を測定するタンパク質測定工程と、
    前記複数ロットの前記軟骨細胞シートのそれぞれを骨軟骨欠損モデル生物に移植して各軟骨細胞シートについて軟骨再生に関する有効性のスコアを算出するスコア算出工程と、
    前記タンパク質測定工程で測定されたタンパク質の分泌量と、前記スコア算出工程で算出された前記スコアとの相関関係から、前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定する遺伝子同定工程と、
    を備えることを特徴とする軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法。
  2. 前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数の遺伝子の発現レベルを測定する遺伝子測定工程を更に備え、
    前記遺伝子同定工程は、前記遺伝子測定工程で測定された複数の遺伝子の発現レベルと、前記スコア算出工程で算出された前記スコアとの相関関係から前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定することを特徴とする請求項1に記載の軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索方法。
  3. 軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性に関連するマーカー遺伝子を移植前の軟骨細胞シートから探索するための軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置であって、
    移植前の軟骨細胞シートを複数ロット準備するシート準備手段と、
    前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数のタンパク質の分泌量を測定するタンパク質測定手段と、
    前記複数ロットの前記軟骨細胞シートのそれぞれを骨軟骨欠損モデル生物に移植して各軟骨細胞シートについて軟骨再生に関する有効性のスコアを算出するスコア算出手段と、
    前記タンパク質測定手段で測定されたタンパク質の分泌量と、前記スコア算出手段で算出された前記スコアとの相関関係から、前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定する遺伝子同定手段と、
    を備えることを特徴とする軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置。
  4. 前記複数ロットの前記移植前の軟骨細胞シートのそれぞれについて複数の遺伝子の発現レベルを測定する遺伝子測定手段を更に備え、
    前記遺伝子同定手段は、前記遺伝子測定手段で測定された複数の遺伝子の発現レベルと、前記スコア算出手段で算出された前記スコアとの相関関係から前記スコアと正の相関を示す正の相関遺伝子及び/又は負の相関を示す負の相関遺伝子を同定することを特徴とする請求項3に記載の軟骨細胞シートのマーカー遺伝子探索装置。
  5. 軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性を移植前の軟骨細胞シートから予測するための軟骨細胞シートの評価方法であって、
    前記移植前の軟骨細胞シートにおける、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量を測定する測定工程と、
    前記測定工程で測定した前記正の相関遺伝子の発現量及び/又は前記負の相関遺伝子の発現量に基づいて前記軟骨細胞シートの移植後の有効性を推定する推定工程と、を備えることを特徴とする軟骨細胞シートの評価方法。
  6. 前記正の相関遺伝子が、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFAからなる群より選択されることを特徴とする請求項5に記載の軟骨細胞シートの評価方法。
  7. 前記推定工程は、前記正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することを特徴とする請求項5に記載の軟骨細胞シートの評価方法。
  8. 前記負の相関遺伝子が、RARRES2、APOE、PGFからなる群より選択されることを特徴とする請求項5に記載の軟骨細胞シートの評価方法。
  9. 前記推定工程は、前記負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することを特徴とする請求項5に記載の軟骨細胞シートの評価方法。
  10. 前記測定工程は、前記相関遺伝子から転写されたRNAを定量すること、及び/又は前記相関遺伝子がコードするタンパク質を定量することで、前記相関遺伝子の発現量を測定することを特徴とする請求項5に記載の軟骨細胞シートの評価方法。
  11. 軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの移植後の有効性を移植前の軟骨細胞シートから予測するための軟骨細胞シートの評価装置であって、
    前記移植前の軟骨細胞シートにおける、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量を測定する測定手段と、
    前記測定手段で測定した前記正の相関遺伝子の発現量及び/又は負の相関遺伝子の発現量に基づいて前記軟骨細胞シートの移植後の有効性を推定する推定手段と、を備えることを特徴とする軟骨細胞シートの評価装置。
  12. 前記正の相関遺伝子が、ESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFAからなる群より選択されることを特徴とする請求項11に記載の軟骨細胞シートの評価装置。
  13. 前記推定手段は、前記正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することを特徴とする請求項11に記載の軟骨細胞シートの評価装置。
  14. 前記負の相関遺伝子が、RARRES2、APOE、PGFからなる群より選択される、請求項11に記載の軟骨細胞シートの評価装置。
  15. 前記推定手段は、前記負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下のときに、前記移植前の軟骨細胞シートの有効性が高いと推定することを特徴とする請求項11に記載の軟骨細胞シートの評価装置。
  16. 前記測定手段は、前記相関遺伝子から転写されたRNAを定量すること、及び/又は前記相関遺伝子がコードするタンパク質を定量することで、前記相関遺伝子の発現量を測定することを特徴とする請求項11に記載の軟骨細胞シートの評価装置。
  17. 軟骨再生に使用される軟骨細胞シートであって、
    移植前の軟骨細胞シートにおけるESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上であること、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下であることを特徴とする軟骨細胞シート。
  18. 軟骨再生に使用される軟骨細胞シートの製造方法であって、
    移植前の軟骨細胞シートにおけるESM1、GREM1、SERPINA3、DKK1、MIA、NTN4、FABP3、PDGFA、COLEC12、CTSS、FTL、FTH1、GRN、CYCS、IL6R、THBS2、PRKCD、SLPI、IL12B、IL23A、MRC2、DKK4、UFC1、SSTからなる群より選択される正の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以上となるように、及び/又はRARRES2、APOE、PGF、NACA、CXCL6、SMPDL3A、DKKL1、PRL、TEC、CCL11、IL1B、IFNGR1、CXCL12、MAP3K7、TAB1、TNFRSF11B、TIMP1、EEF1B2、EPHB4、KDR、ANGPTL4、STK16、TNFSF12からなる群より選択される負の相関遺伝子の発現量が所定の発現レベル以下となるように、軟骨細胞シートを培養することを特徴とする軟骨細胞シートの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023084388A1 (en) * 2021-11-10 2023-05-19 Novartis Ag Methods for determining the biological activity of angptl polypeptides

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