[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP2021079650A - 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021079650A
JP2021079650A JP2019209905A JP2019209905A JP2021079650A JP 2021079650 A JP2021079650 A JP 2021079650A JP 2019209905 A JP2019209905 A JP 2019209905A JP 2019209905 A JP2019209905 A JP 2019209905A JP 2021079650 A JP2021079650 A JP 2021079650A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoplastic resin
polymer
die
resin composition
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019209905A
Other languages
English (en)
Inventor
宏明 出井
Hiroaki Dei
宏明 出井
正明 萩原
Masaaki Hagiwara
正明 萩原
就明 藤井
Shiyuumei Fujii
就明 藤井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2019209905A priority Critical patent/JP2021079650A/ja
Publication of JP2021079650A publication Critical patent/JP2021079650A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Extrusion Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】ダイラインの発生を抑制しつつ、長時間にわたって連続して製造することができる熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】リップヒーターを有するダイから熱可塑性樹脂組成物を溶融押出する工程を含む熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)、前記ダイの温度Tt(℃)及び前記リップヒーターの温度Tr(℃)が、下記式(1)及び式(2)を満たす熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。Tg+130≦Tt≦Tg+170 (1)Tt+5≦Tr≦Tt+40 (2)【選択図】図1

Description

本発明は、溶融押出法による熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関する。
熱可塑性樹脂フィルムは、透明性及び低複屈折率等の光学特性に優れると共に、溶融成形によるフィルム製膜が容易であることから、光学用途や加飾用途に使用されている。熱可塑性樹脂フィルムの一般的な成形方法の1つとして、原料となる熱可塑性樹脂組成物をホッパーから押出機に供給して加熱溶融した後、ダイから押出すことによりフィルムを製膜する方法がある。しかしながら、この方法の場合、フィルムの流れ方向にダイラインが発生するという問題があった。フィルムにダイラインが発生すると表面状態が損なわれるばかりでなく、光学用途や加飾用途においてフィルム表面にコーティング層を付与した場合に外観不良等の原因となり、特にダイライン同士が隣接して発生した場合にはフィルムの外観が大幅に低下する。
ダイラインの発生を抑制する方法として、例えば特許文献1には、Tダイのリップを特定の形状にすることによりリップへの樹脂の付着を防止し、これによりダイラインの発生を抑制する方法が提案されている。また、特許文献2及び特許文献3には、Tダイから吐出される樹脂組成物を高温にする方法や、吐出された樹脂組成物が低温にならないように外部ヒーターを用いて加熱する方法が提案されている。
特開2009−255453号公報 国際公開第2013/031074号 特開2007−185945号公報
特許文献1に記載の方法のように樹脂組成物が付着しにくい形状にダイリップを変更した場合であっても、長時間にわたって製膜するとダイリップに樹脂が付着し、ダイラインが発生するという問題があった。また、特許文献2及び3に記載の方法のように長時間樹脂組成物を高温にする場合、樹脂の劣化や樹脂組成物中に含まれる揮発成分によってダイリップの汚れが発生し、ダイラインが発生しやすくなるという問題があった。
本発明は前記従来の課題を鑑みてなされたものであって、ダイラインの発生を抑制しつつ、長時間にわたって連続して製造することができる熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、樹脂の表面温度を制御することによってダイラインを抑制することができることを知見し、この知見に基づいて更に検討を進めることにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]〜[7]を要旨とするものである。
[1]リップヒーターを有するダイから熱可塑性樹脂組成物を溶融押出する工程を含む熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)、前記ダイの温度Tt(℃)及び前記リップヒーターの温度Tr(℃)が、下記式(1)及び式(2)を満たす熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
Tg+130≦Tt≦Tg+170 (1)
Tt+5≦Tr≦Tt+40 (2)
[2]前記ダイがTダイである、前記[1]に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[3]前記ダイにおけるリップヒーター部を通過する熱可塑性樹脂組成物の通過時間が0.05〜10秒である、前記[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[4]前記熱可塑性樹脂組成物が非晶性熱可塑性樹脂組成物である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[5]前記熱可塑性樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂組成物である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[6]前記熱可塑性樹脂組成物が多層構造を有するアクリル系重合体(B)を含有する、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[7]前記熱可塑性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
本発明によれば、ダイラインの発生を抑制しつつ、長時間にわたって連続して製造することができる熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
熱可塑性樹脂フィルムの製造方法における製膜装置の一例を示す図である。 リップヒーターを有するダイの一例を示す断面図である。
[熱可塑性樹脂フィルムの製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、リップヒーターを有するダイから熱可塑性樹脂組成物を溶融押出する工程を含む熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)、前記ダイの温度Tt(℃)及び前記リップヒーターの温度Tr(℃)が、下記式(1)及び式(2)を満たす熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
Tg+130≦Tt≦Tg+170 (1)
Tt+5≦Tr≦Tt+40 (2)
表面が平滑な樹脂フィルムを得るためには、樹脂のガラス転移温度等を勘案し、樹脂温度を適切に設定する必要がある。一方、樹脂温度を高くしすぎると、長時間にわたって連続してフィルムを安定的に製造することが困難になる場合がある。
本発明者らが得た知見、すなわち、ダイラインはフィルム表層の凹凸が発生原因のひとつであるとの知見から、ダイラインを抑制するためには樹脂全体の温度とは別に、樹脂表面の温度を適切に設定することが重要と考えられる。
本発明によれば、ダイから熱可塑性樹脂組成物を吐出する際にリップヒーターを使用して樹脂組成物の表面のみを高温化し、表面の凹凸を平坦化することにより、ダイラインの発生を抑制しつつ連続して熱可塑性樹脂フィルムを製造できる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、例えば、図1に示す装置により実施することができる。
図1の装置においては、まず原料である熱可塑性樹脂組成物を押出機1にて溶融する。次いで、溶融した熱可塑性樹脂組成物はギアポンプ2を経て、ポリマーフィルター3にてろ過され、スタティックミキサー4を経て、リップヒーターを有するダイ5からシート状に吐出される。吐出された溶融樹脂は、ロール6とロール7とに挟圧されて所望の膜厚に成形される。その後、熱可塑性樹脂フィルムは、例えばロール状に巻き取られる。
図2は、図1におけるリップヒーターを有するダイ5の一例を示す断面図であり、ダイ本体部11内に、ダイ用ヒーター12a及び12b、リップヒーター13a及び13bをそれぞれ有し、ダイ5を通過する熱可塑性樹脂組成物14を加熱することができる構成になっている。また、図2のダイにおいてはダイ本体部11の側面にダイリップクリアランス調整ボルト15を有しており、このボルトを調整することによりダイリップクリアランスを調整することが可能になっている。なお、図2におけるリップヒーター部16は、ダイ吐出口から最も離れた場所に設置したリップヒーターの上端(ダイ吐出口とは反対側の端部)からダイ吐出口までの部分を指し、本発明においては該部分で適度に熱可塑性樹脂組成物が加熱されることにより膜厚ムラや樹脂の分解が発生しにくくなる。
本発明においては図2に示すとおり、ダイの吐出口に設けられたリップヒーター13a及び13bにより、ダイとの接触面における熱可塑性樹脂組成物を所定の温度に加熱し、ダイとの接触面における熱可塑性樹脂組成物を低粘度にすることができる。その結果、ダイ5から吐出された熱可塑性樹脂組成物の表面は鏡面転写性が向上しているため、図1におけるロール6とロール7とに挟圧されることによりフィルム表面が平滑になり、ダイラインを低減することが可能になる。
前述のとおり本発明はリップヒーターを用いてダイとの接触面における熱可塑性樹脂組成物を所定の温度に加熱してフィルム表面を平滑にするものであり、前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)、前記ダイの温度Tt(℃)及び前記リップヒーターの温度Tr(℃)が、下記式(1)及び式(2)を満たすことが重要である。
Tg+130≦Tt≦Tg+170 (1)
Tt+5≦Tr≦Tt+40 (2)
式(1)においてダイの温度Ttは、好ましくはTg+135℃以上であり、より好ましくはTg+140℃以上であり、そして、好ましくはTg+165℃以下であり、より好ましくはTg+160℃以下である。なお、本明細書において「ダイの温度Tt」はダイの設定温度を意味する。
より具体的には、熱可塑性樹脂組成物として後述の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いる場合、ダイの温度Ttは、好ましくは210℃以上であり、より好ましくは230℃以上であり、更に好ましくは250℃以上であり、そして、好ましくは310℃以下であり、より好ましくは300℃以下であり、更に好ましくは290℃以下である。ダイの温度Ttが前記範囲内であると、ダイラインの発生を抑制し、フィルムの平滑性を向上させることができる。
一方、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは90℃以上であり、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、更に好ましくは150℃以下である。ガラス転移温度Tgが前記範囲の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、極端に高温にすることなくフィルム表面の凹凸を平坦化することが可能になりダイラインの発生を抑制することができる。
本明細書では、熱可塑性樹脂組成物が複数のガラス転移温度Tgを示す場合、最も高い温度をその熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度とする。
更に、リップヒーターの温度Trは、好ましくはTt+10℃以上であり、より好ましくはTt+15℃以上であり、そして、好ましくはTt+35℃以下であり、より好ましくはTt+30℃以下である。なお、本明細書において「リップヒーターの温度Tr」はリップヒーターの設定温度を意味する。
より具体的には、熱可塑性樹脂組成物として後述の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いる場合、リップヒーターの温度Trは、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、更に好ましくは285℃以上であり、そして、好ましくは330℃以下であり、より好ましくは320℃以下であり、更に好ましくは310℃以下である。リップヒーターの温度Trが前記範囲内であると、フィルムの表面のみを加熱することが可能になり、樹脂組成物を劣化させることなくダイラインの発生を抑制することが可能になる。
以下、本発明の実施に好適な製造装置及び条件等について詳細に説明する。
<押出機>
熱可塑性樹脂組成物を溶融し、押し出すための前記押出機としては、例えば単軸押出機、二軸押出機又は多軸押出機等を用いることができる。本発明においては、熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する際に発生する揮発分を除去するため、押出機はベント機構を備えることが好ましい。
押出機のスクリューとしてはバリアフライトやミキシングセクション付きスクリュー等を用いることができる。スクリューのL/D(Lは押出機のシリンダー長さ、Dはシリンダー内径を表す)としては、熱可塑性樹脂組成物の充分な可塑化や混練状態を得る観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、更に好ましくは25以上であり、そして、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、更に好ましくは40以下である。L/Dが前記下限値以上であることにより熱可塑性樹脂組成物の十分な可塑化や混練状態が得られる。また、L/Dが前記上限値以下であることにより、剪断発熱による熱可塑性樹脂組成物の分解を抑制しつつ混練が可能である。
熱可塑性樹脂組成物を溶融状態にする場合の押出機のシリンダー温度は、使用する熱可塑性樹脂及びそのガラス転移温度にもよるが、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは310℃以下であり、より好ましくは280℃以下である。シリンダー温度が前記下限値以上であることにより熱可塑性樹脂組成物を十分に溶融することができる。一方、シリンダー温度が前記上限値以下であることにより、熱可塑性樹脂組成物の熱劣化による分解によって発生する低沸点の分解物、ヤケ、及びゲル化を抑制することができる。
<ギアポンプ>
本発明においては、後述するポリマーフィルターやスタティックミキサーでの圧力損失を補うため、押出機の後にギアポンプを設置してもよい。ギアポンプとしては特に制限はないが、インバータ制御のギアポンプが好ましい。インバータ制御のギアポンプを用いることにより、押出機より吐出される溶融樹脂流量の脈動を抑制することができる。
ギアポンプ入口の樹脂圧は10MPa以下であることが好ましく、8MPa以下であることがより好ましい。ギアポンプ入口の樹脂圧が前記上限値以下であるとスタティックミキサーのエレメント数が増加した場合でも押出不良が発生しにくくなる。また、ギアポンプ入口の樹脂圧の下限値は、通常1MPaである。
<ポリマーフィルター>
本発明においては、ギアポンプとスタティックミキサーとの間にポリマーフィルターを用いることが好ましい。ポリマーフィルターとしては熱可塑性樹脂組成物をろ過するフィルターエレメント部と、溶融樹脂が導入及び排出されるハウジング部とからなることが好ましい。
フィルターエレメントとしては、ディスク型や筒型のものが挙げられるが、ろ過面積を大きく取れることから筒型のものを用いることが好ましい。
筒型のフィルターエレメントは通常、外周面から流体をろ過するろ過部、ろ過された流体が流れる中空部、この中空部から流体を排出する端部の排出部、及びフィルターエレメントの先端部を備える。筒型のフィルターエレメントとしては、例えばチューブタイプ、キャンドルタイプ等が挙げられ、中でも、キャンドルタイプのフィルターエレメントが好ましい。
キャンドルタイプのフィルターエレメントの形状に特に制限はなく、波型又はプリーツ型等が使用できる。前記プリーツ型におけるプリーツは、フィルターエレメントの半径方向に延びたものでもよいし、半径方向に対して斜めに延び、湾曲した断面形状又はアーチ型の断面形状を有する、いわゆるスパイラルプリーツであってもよい。
フィルターエレメントのろ過精度は、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは8μm以上であり、そして、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。ろ過精度が前記範囲内であることにより、生産性と異物サイズとのバランスを向上させることができる。特にろ過精度が前記下限値以上であることにより、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を通過させる際の剪断発熱による熱劣化を抑制できる。一方、ろ過精度が前記上限値以下であることにより、異物の効果的な除去が可能となる。
<スタティックミキサー>
本発明においては、圧力損失を小さくしつつ、熱可塑性樹脂組成物を効率的に撹拌混合することを目的としてスタティックミキサーを用いてもよい。
スタティックミキサーを用いる場合、そのエレメント数(単位混合要素の数)は、5〜30であることが好ましく、6〜28であることがより好ましく、7〜25であることが更に好ましい。エレメント数が前記範囲内であることにより、熱可塑性樹脂組成物の温度の均一性や、各配合成分の均一性が向上する。また、エレメント数が前記下限値以上であるとエレメントの表面積が少なくなるため、劣化した樹脂のエレメント表面への付着を抑制することが可能になり異物の混入を抑えることができる。
<ダイ>
本発明において用いるダイは、リップヒーターを有するダイであれば特に制限はないが、製膜したフィルムの膜厚を均一化する観点から、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイ等のTダイを用いることが好ましい。なお、膜厚を安定的に制御する観点から、ダイリップクリアランス調整ボルトを自動で調整する機構を備える自動調整ダイを用いることが好ましい。
ダイから吐出する熱可塑性樹脂組成物の吐出量は、ダイサイズにもよるが、好ましくは90〜500kg/時間であり、より好ましくは100〜300kg/時間であり、更に好ましくは110〜200kg/時間である。
ダイリップクリアランスは、膜厚精度を高め、またダイラインの少ないフィルムを得やすくする観点から、好ましくは0.2〜2.0mmであり、より好ましくは0.3〜1.8mmであり、更に好ましくは0.5〜1.5mmである。
ダイリップ幅は、ダイリップクリアランスと同様の観点から、好ましくは300〜4,000mmであり、より好ましくは1,000〜3,000mmであり、更に好ましくは1,500〜2,500mmである。
ダイが有するリップヒーターはダイリップ幅全体で同じ温度であることが好ましい。ダイリップ幅全体で同じ温度であることにより、膜厚の均一性が向上する。また前記リップヒーターは吐出される樹脂組成物の両面を均一に加熱するため、ダイの両側(熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムの一方の面側、及びそれとは反対の面側の両側)に設置することが好ましい。リップヒーターはダイの幅方向に複数設置し、幅方向の複数箇所を個別に加熱してもよいが、ダイの幅と略同一の長さのヒーターを用いて加熱することが好ましい。
リップヒーター部を通過する熱可塑性樹脂組成物の通過時間は好ましくは0.05〜10秒であり、より好ましくは0.3〜6秒であり、更に好ましくは0.6〜3秒である。リップヒーター部の通過速度が前記下限値以上であることにより、樹脂組成物の表面を所定の温度に加熱することができる。また、通過速度が前記上限値以下であると、フィルムの内部は加熱されず、フィルムの表層部分だけ加熱されるため、膜厚ムラや樹脂の分解が発生しにくくなる。
なお、本発明において「リップヒーター部」とは、前記のとおりダイ吐出口から最も離れた場所に設置したリップヒーターの上端からダイ吐出口までの部分を意味する(図2参照)。リップヒーター部を通過する熱可塑性樹脂組成物の通過時間は以下の方法で算出することができる。
まず、リップヒーター部を通過する樹脂流速を下記式により求める。なお、ダイリップクリアランスは、製膜後のリップ間をマイクロスコープや隙間ゲージで測定することで、計測することができる。
樹脂流速(cm/秒)=ダイからの樹脂吐出量(kg/時間)÷密度÷3600(秒/時間)÷ダイリップ幅(mm)÷ダイリップクリアランス(mm)×100000
次いで、リップヒーター部の長さ(cm)÷樹脂流速(cm/秒)からリップヒーター部の通過時間を算出することができる。
<エアギャップ>
ダイの樹脂吐出部分とキャストロール(図1のロール7)との距離をあらわすエアギャップは、好ましくは20mm〜150mmであり、より好ましくは50mm〜130mmであり、更に好ましくは70mm〜110mmである。エアギャップが前記上限値以下であると熱可塑性樹脂組成物と空気との接触時間が比較的短時間になるため樹脂組成物の表面温度が低下せず、ロールによる鏡面転写性が向上する。一方、エアギャップを前記下限値以上とすることにより、熱可塑性樹脂組成物からの揮発成分が拡散するための時間を確保することができ、揮発成分がキャストロール等に付着しにくくなる。
<ロール>
本発明の製造方法においては、熱可塑性樹脂フィルムの表面平滑性及び膜厚精度を向上させる観点から、押出された溶融物を、好ましくは金属製の鏡面ロール又は鏡面ベルトを用いて引き取り、挟圧することが好ましい。金属製の鏡面ロールとしては、金属弾性ロールや金属剛体ロール等が挙げられるが、熱可塑性樹脂フィルムの表面平滑性を向上させる観点から、金属弾性ロールと金属剛体ロールを組み合わせて用いることが好ましい。
鏡面ロール又は鏡面ベルトを用いる場合、その線圧は、熱可塑性樹脂フィルムの表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは5N/mm以上であり、より好ましく10N/mm以上であり、更に好ましくは15N/mm以上である。
また、鏡面ロール又は鏡面ベルトを用いる場合、その表面温度は、熱可塑性樹脂フィルムの表面平滑性、ヘーズ及び外観等を向上させる観点から、好ましくは50〜130℃であり、より好ましくは60〜100℃である。
<膜厚>
本発明によれば、例えば、膜厚20〜200μmの熱可塑性樹脂フィルムを高い膜厚精度で得ることができる。更に、熱可塑性樹脂フィルムのハンドリング性の向上やコストを低く抑える観点から、膜厚は、好ましくは25〜180μmであり、より好ましくは30〜150μm、更に好ましくは40〜100μmである。膜厚が前記下限値以上であることによって剛性が高くなり、熱可塑性樹脂フィルムのハンドリング性が向上する。また、膜厚が前記上限値以下であることによって、熱可塑性樹脂フィルムの強度と製造コストとのバランスが向上する。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含むものであれば特に制限はないが、ダイラインの発生を抑制しやすくする観点、及び光学用途等に好適なフィルムを製造する観点から、非晶性熱可塑性樹脂組成物であることが好ましく、中でも(メタ)アクリル系樹脂(A)を含む樹脂組成物、すなわち、(メタ)アクリル系樹脂組成物であることが特に好ましい。
本発明において用いる(メタ)アクリル系樹脂(A)に特に制限はないが、メチルメタクリレートに由来する構造単位と、必要に応じてアクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有することが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A)に用いることができるアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ノルボルネニルアクリレート、イソボニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート、フェニルアクリレート等を挙げることができる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜6であるアルキルアクリレートが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)中のメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、熱可塑性樹脂フィルムの機械強度を向上する観点から、好ましくは85〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%である。
また、(メタ)アクリル系樹脂(A)中のアクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、熱可塑性樹脂フィルムの膜厚精度を向上させる観点から、好ましくは0〜15質量%であり、より好ましくは0〜10質量%である。
本発明において用いられる(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは95℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは105℃以上である。ガラス転移温度が前記範囲内であることによって熱可塑性樹脂フィルムの膜厚精度が向上する。本発明において用いられる(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は通常130℃以下である。
なお、(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、JIS K7121:2012に準拠して実施例に記載の方法で測定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は60,000〜150,000であることが好ましい。重量平均分子量が前記下限値以上であると機械物性が高くなり、前記上限値以下であると溶融粘度が低くなり加工性が向上する。重量平均分子量は、前記観点から、より好ましくは70,000〜120,000であり、更に好ましくは80,000〜100,000である。
なお、(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定することができる。
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造方法は特に制限されず、例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法等の公知の重合法によって製造することができる。製造条件に特に制限はなく、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量等を適宜調整することにより所望の(メタ)アクリル系樹脂(A)を得ることができる。
本発明における熱可塑性樹脂組成物中の(メタ)アクリル系樹脂(A)の含有量は、熱可塑性樹脂フィルムの透明性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは75質量%以上である。
<多層構造を有するアクリル系重合体(B)>
本発明において用いる熱可塑性樹脂組成物は、多層構造を有するアクリル系重合体(B)を含有してもよい。
熱可塑性樹脂組成物がゴム粒子を含む場合、フィルム表面の凹凸を平坦化する(ダイラインを抑制する)ために樹脂全体を高温化すると、ゴム粒子の劣化や凝集を促進してしまう可能性があり、表面のみを高温化する本発明は特に有用である。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)は、多層構造を有するものであれば特に制限はなく、例えば、コアシェル多層構造を有するアクリル系重合体を挙げることができる。また、多層構造を構成する層の数に特に制限はなく、2層でも3層以上でもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性を向上させる観点から、コアシェル多層構造を有するアクリル系重合体が好ましく、より具体的には、コア(内層)、インナーシェル(中間層)、及びアウターシェル(外層)の3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体が好ましい。本発明において、3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体とは、コアとインナーシェル、インナーシェルとアウターシェルが各々異なる重合体で構成されたものを指す。
なお、前記の3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体は、これを含む樹脂組成物を溶融混練した場合に、前記アウターシェルの全部又は一部が(メタ)アクリル系樹脂(A)と融着、合一してマトリックスを形成し、該マトリックスがコアとインナーシェルの2層からなるコアシェル粒子を含有するようになる。
以下、コア(内層)、インナーシェル(中間層)、及びアウターシェル(外層)の3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体について詳細に説明する。なお、コアを構成する重合体を「重合体(a)」、インナーシェルを構成する重合体を「重合体(b)」、及びアウターシェルを構成する重合体を「重合体(c)」として説明する。
〔重合体(a):コアを構成する重合体〕
重合体(a)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、アルキルアクリレートに由来する構造単位、グラフト化剤に由来する構造単位、及び必要に応じて架橋剤に由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。なお、本発明においてグラフト化剤とは、異なる重合性基を2個以上有する単量体を意味し、架橋剤とは、同種の重合性基を2個以上有する単量体(ただし、前記グラフト化剤を除く)を意味する。
重合体(a)に用いるアルキルアクリレートに特に制限はないが、アルキル基の炭素数が好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。アルキルアクリレート中のアルキル基の炭素数が前記範囲内であることによって、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の耐熱分解性が向上すると共に熱可塑性樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性が向上する。具体的なアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルメチルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも前記の観点から、メチルアクリレートが特に好ましい。
重合体(a)は、重合体(a)と重合体(b)とを化学的に結合させることを目的として、また、重合体(a)の架橋構造の形成を補助することを目的として、グラフト化剤に由来する構造単位を含むことが好ましい。
重合体(a)に用いるグラフト化剤としては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、モノ−又はジ−アリルマレエート、モノ−又はジ−アリルフマレート、クロチルアクリレート、及びクロチルメタクリレート等を挙げることができる。これらのグラフト化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、重合体(a)と重合体(b)との間の結合能を向上させ、熱可塑性樹脂フィルムの耐応力白化性及び透明性を向上させる観点から、アリルメタクリレートが好ましい。
重合体(a)は、重合体(a)中で架橋構造を形成することを目的として、また、重合体(a)と重合体(b)との間でグラフト構造を形成することを目的として、架橋剤に由来する構造単位を含んでいてもよい。
重合体(a)に用いる架橋剤としては、例えば、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物、ジアリル化合物、ジビニル化合物、ジエン化合物、トリビニル化合物等が挙げられる。より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブタジエン等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合体(a)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは40〜98.99質量%であり、より好ましくは45〜96.9質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐候性が向上し、前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
重合体(a)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは1〜59質量%であり、より好ましくは3〜55質量%である。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって多層構造を有するアクリル系重合体(B)の耐熱分解性が向上し、前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性が向上する。
重合体(a)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって、重合体(a)と重合体(b)との結合力が向上し、また前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
重合体(a)における架橋剤に由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは0〜0.5質量%であり、より好ましくは0〜0.2質量%である。架橋剤に由来する構造単位の量が前記範囲内であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
重合体(a)及び後述する重合体(b)は、アセトン等の溶媒に不溶なもの、すなわち、グラフト化されたものであることが好ましい。重合体(a)及び重合体(b)がグラフト化されたものであると、後述する重合体(c)のマトリックス中に重合体(a)及び重合体(b)が2層構造の粒子として存在するようになり、熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性を向上させるため好ましい。
〔重合体(b):インナーシェルを構成する重合体〕
重合体(b)は、アルキルアクリレートに由来する構造単位、グラフト化剤に由来する構造単位、及び必要に応じて芳香族ビニル化合物に由来する構造単位、架橋剤に由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。
重合体(b)に用いるアルキルアクリレートとしては、前記重合体(a)で例示したアルキルアクリレートを挙げることができ、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の耐熱分解性が向上すると共に熱可塑性樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性を向上させる観点から、n−ブチルアクリレートが特に好ましい。
重合体(b)に用いる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物を挙げることができ、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の耐熱分解性を向上させる観点から、スチレンが好ましい。
また、重合体(b)に用いるグラフト化剤としては、前記重合体(a)で例示したグラフト化剤を挙げることができ、重合体(a)と重合体(b)との間の結合能を向上させ、熱可塑性樹脂フィルムの耐応力白化性及び透明性を向上させる観点から、アリルメタクリレートが好ましい。
重合体(b)に用いる架橋剤としては、前記重合体(a)で例示した架橋剤を挙げることができ、重合体(b)中で架橋構造を形成する観点、及び重合体(a)と重合体(b)との間で架橋構造を形成する観点から、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物、ジアリル化合物、ジビニル化合物等が好ましい。
重合体(b)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは70〜99.5質量%であり、より好ましくは80〜99質量%である。アルキルアクリレートに由来する構造単位が前記下限値以上であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性が向上し、前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐応力白化性及び透明性が向上する。
重合体(b)における芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは0〜29質量%であり、より好ましくは0〜20質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が前記範囲内であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
重合体(b)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1〜4質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐応力白化性が向上する。一方、前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
重合体(b)における架橋剤に由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは0〜5質量%であり、より好ましくは0〜2質量%である。架橋剤に由来する構造単位の量が前記範囲内であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
本発明において、重合体(b)は、重合体(a)及び重合体(c)よりも軟らかいことが好ましい。重合体(b)が、重合体(a)及び重合体(c)よりも軟らかいことによって耐衝撃性が向上する。
〔重合体(c):アウターシェルを構成する重合体〕
重合体(c)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、及びアルキルアクリレートに由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。
重合体(c)に用いるアルキルアクリレートとしては、前記重合体(a)で例示したアルキルアクリレートを挙げることができ、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の耐熱分解性が向上すると共に熱可塑性樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性を向上させる観点から、メチルアクリレートが特に好ましい。
重合体(c)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(c)の全構造単位中に、好ましくは80〜99質量%であり、より好ましくは85〜98質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐応力白化性が向上する。一方、前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐熱分解性が向上する。
重合体(c)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(c)の全構造単位中に、好ましくは1〜19質量%であり、より好ましくは2〜15質量%である。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって多層構造を有するアクリル系重合体(B)の耐熱分解性が向上し、前記下限値以上であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐応力白化性が向上する。
重合体(c)はアセトン等の溶剤に可溶なものであること、すなわち、架橋されていないことが好ましい。重合体(c)が架橋されていない場合、重合体(a)、重合体(b)及び重合体(c)からなる多層構造を有するアクリル系重合体(B)を用いた際に、重合体(c)がマトリックスを形成し、その中に重合体(a)及び重合体(b)からなる粒子が存在するようになり、熱可塑性樹脂フィルムの製造容易性が向上する。
〔重合体(a)、重合体(b)及び重合体(c)の質量比〕
多層構造を有するアクリル系重合体(B)中の重合体(a)の量は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは5〜45質量%であり、更に好ましくは10〜40質量%である。重合体(a)の量が前記下限値以上であることによって熱可塑性樹脂フィルムの熱安定性及び生産性が向上する。一方、重合体(a)の量が前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性及び柔軟性が向上する。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)中の重合体(b)の量は、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜55質量%であり、更に好ましくは30〜50質量%である。重合体(b)の量が前記下限値以上であることによって熱可塑性樹脂フィルムの熱安定性及び生産性が向上する。一方、重合体(b)の量が前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性及び柔軟性が向上する。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)中の重合体(c)の量は、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは10〜35質量%であり、更に好ましくは15〜30質量%である。重合体(c)の量が前記下限値以上であることによって多層構造を有するアクリル系重合体(B)の流動性及び熱可塑性樹脂フィルムの成形性が向上する。重合体(c)の量が前記上限値以下であることによって熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性及び耐応力白化性が向上する。
〔多層構造を有するアクリル系重合体(B)の製造方法〕
本発明に用いられる多層構造を有するアクリル系重合体(B)の製造方法に特に制限はないが、例えば1次重合にて重合体(a)、2次重合にて重合体(b)、及び3次重合にて重合体(c)を順次、シード乳化重合法によって形成させることによりラテックスとして得ることができる。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)の製造に用いる重合開始剤に特に制限はないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性の無機系開始剤;無機系開始剤に亜硫酸塩又はチオ硫酸塩等を併用してなるレドックス開始剤;有機過酸化物に第一鉄塩又はナトリウムスルホキシレート等を併用してなるレドックス開始剤等を挙げることができる。
重合開始剤は重合開始時に一括して反応系に添加してもよいし、反応速度等を勘案して重合開始時と重合途中とに分割して反応系に添加してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の平均粒子径が後述の範囲になるように適宜設定できる。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)をラテックスとして得る観点から乳化剤を用いることが好ましい。乳化剤に特に制限はないが、例えば、長鎖アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩等のノニオン・アニオン系乳化剤を挙げることができる。乳化剤の使用量は、例えば、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の平均粒子径が後述の範囲になるように適宜設定できる。
本発明においては、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の分子量を調整することを目的として、各重合において連鎖移動剤を使用することができる。特に第3次重合において、連鎖移動剤を反応系に添加して重合体(c)の分子量を調節することによって、多層構造を有するアクリル系重合体(B)の重量平均分子量を前記の範囲に調整することができる。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)の製造に用いる連鎖移動剤に特に制限はないが、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。
連鎖移動剤の使用量は、各重合において重合体を所定の分子量に調節できる範囲で適宜設定できる。第3次重合において使用される連鎖移動剤の量は、第3次重合に使用する重合開始剤の量等によって変わるが、第3次重合において使用する単量体、具体的にはメチルメタクリレート及びアルキルアクリレートの合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部であり、より好ましくは0.08〜1質量部である。
前記製造方法において、第1次重合、第2次重合及び第3次重合は一つの重合槽中で順次行ってもよいし、第1次重合、第2次重合、及び第3次重合の度に重合槽を変えて順次行ってもよいが、各重合を一つの重合槽中で順次行うことが好ましい。また、重合を行っている間の反応系の温度は、好ましくは30〜120℃であり、より好ましくは50〜100℃である。
前記各重合は、前記の単量体、具体的にはメチルメタクリレート、アルキルアクリレート、グラフト化剤及び架橋剤を前記の割合で混ぜ合わせて反応系に供給することにより行うことができる。前記単量体を反応系に供給する速度に特に制限はないが、各重合において使用される単量体の合計量に対して、好ましくは0.05〜10質量%/分であり、より好ましくは0.1〜8質量%/分であり、更に好ましくは0.2〜7質量%/分になるような速度で供給することが好ましい。前記速度で供給することによって、望ましくない重合体凝集物の生成や重合体スケールの反応槽への付着を防ぐことができ、重合体凝集物や重合体スケールの混入で生じることがあるフィッシュアイ等の外観不良を生じさせないようにすることができる。
前記の方法により得られたラテックスの凝固は、公知の方法で行うことができる。凝固法としては、凍結凝固法、塩析凝固法、酸析凝固法等を挙げることができる。これらのうち、多層構造を有するアクリル系重合体(B)にとって不純物となる凝固剤の添加を要しない点から、凍結凝固法が好ましい。
凝固によって得られたスラリーの洗浄及び脱水は十分に行うことが好ましい。スラリーの洗浄及び脱水によって、乳化剤や触媒等の水溶性成分をスラリーから除去できる。スラリーの洗浄及び脱水は、例えば、フィルタープレス、ベルトプレス、ギナ型遠心分離機、スクリューデカンタ型遠心分離機等で行うことができる。生産性、洗浄効率の観点からスクリューデカンタ式遠心分離機を用いることが好ましい。スラリーの洗浄及び脱水は、少なくとも2回行うことが好ましい。洗浄及び脱水の回数が多いほど水溶性成分の残存量が下がる。生産性の観点から、洗浄及び脱水の回数は、3回以下であることが好ましい。
更に、得られたスラリーは乾燥することが好ましい。スラリーの乾燥は、前記の方法によって得られた多層構造を有するアクリル系重合体(B)の水分率が、好ましくは0.2質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満になるように行うことが好ましい。水分率が高いほど溶融押出成形の際に多層構造を有するアクリル系重合体(B)にエステル加水分解反応が起き、分子鎖にカルボキシル基が生成する傾向があり、その結果、熱可塑性樹脂フィルムのスジの発生を招きやすい。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.04μm以上であり、更に好ましくは0.05μm以上であり、特に好ましくは0.07μm以上であり、好ましくは0.35μm以下であり、より好ましくは0.30μm以下である。平均粒子径が大きすぎると熱可塑性樹脂フィルムの耐応力白化性は低下する傾向がある。平均粒子径は、光散乱法に基づいて実施例に記載の方法により求められる。
多層構造を有するアクリル系重合体(B)の含有量は、熱可塑性樹脂フィルムの機械強度と加工性とを向上させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜40質量部であり、更に好ましくは15〜30質量部である。
より具体的に、熱可塑性樹脂組成物中の多層構造を有するアクリル系重合体(B)の含有量は、熱可塑性樹脂フィルムの透明性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは25質量%以下である。
<任意成分>
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、高分子加工助剤、滑剤、染料、顔料等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂組成物が添加剤を含有する場合、その含有量は熱可塑性樹脂組成物中に20質量%以下であることが好ましい。
添加剤は、例えば、フィルム成形機内で溶融している熱可塑性樹脂組成物に添加してもよいし、ペレット化された熱可塑性樹脂組成物にドライブレンドしてもよいし、多層構造を有するアクリル系重合体(B)及び/又は(メタ)アクリル系樹脂(A)をペレット化する際に添加してもよい(マスターバッチ法)。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]を挙げることができる。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の合計中、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。
<熱可塑性樹脂フィルムの用途>
本発明の製造方法により製造した熱可塑性樹脂フィルムは、以下の各種用途に使用することができる。例えば、自動車内外装、パソコン内外装、携帯電話内外装、太陽電池内外装、太陽電池バックシート、道路標識、浴室設備、床材、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓、カーポート、照明カバー、建材用サイジング等の建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具等に使用することができる。また、転写箔シートを使用した成形品の代替用途としても使用できる。
また、光学用フィルムに好適であり、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の端末の液晶画面の前面板;液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光フィルム透明樹脂シート、位相差フィルム、光拡散フィルム、プリズムシート、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルム、透明導電フィルム等の液晶ディスプレイ用フィルム等として液晶表示装置周辺;表面保護フィルム等の情報機器分野;有機EL用フィルムとして有機EL装置周辺等の公知の用途に適用できる。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例における測定方法等は以下のとおりである。
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZM−M」と「SuperHZ4000」を直結
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.35mL/分
・サンプル濃度:8mg/10mL
・カラム温度 :40℃
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は、JIS K7121:2012に準拠して測定した。
<多層構造を有するアクリル系重合体(B)の平均粒子径>
多層構造を有するアクリル系重合体(B)の平均粒子径は、試料粒子を含むラテックスを水で200倍に希釈し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名「LA−950V2」)を用いて25℃で係る希釈液を分析し、粒子径を測定した。この際、多層構造を有するアクリル系重合体(B)及び水の絶対屈折率をそれぞれ、1.4900、1.3333とした。
<ダイラインの評価>
後述の方法で製造した熱可塑性樹脂フィルムについて、製膜開始直後のフィルムと8時間連続製膜後のフィルムとの、それぞれについて評価を行った。具体的には、観察対象は、フィルムロールを巻き終わりから0.7m抜出した部分を使用した。次いで、これを三波長蛍光灯((株)東芝製「メロウ5N」)の反射光を用いて観察し、フィルム流れ方向に現れるスジ(ダイライン)を以下の基準にしたがって評価した。なお、観察は黒色ネル布を裏面にして吊るした暗室内にて行った。
〔評価基準〕
G(Good) :フィルム全幅の内、2本以上のダイラインが隣接して発生した箇所が
5箇所以下である
A(Average):フィルム全幅の内、2本以上のダイラインが隣接して発生した箇所が
6〜10箇所である
B(Bad) :フィルム全幅の内、2本以上のダイラインが隣接して発生した箇所が
11箇所以上である
なお、本評価基準において「ダイラインが隣接して発生した」とは、幅10mm以内の区間に2本以上のダイラインが発生したことを示す。
<製造例1:(メタ)アクリル樹脂(A)の製造>
メチルメタクリレート99質量部及びメチルアクリレート1質量部に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.24質量部を加え、溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部及び懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、当該混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した分散液を得た。なお、重合槽壁面及び撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル樹脂(A)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチル単位の含有量が99質量%であり、重量平均分子量(Mw)が95,000、ガラス転移温度は120℃であった。
<製造例2:多層構造を有するアクリル系重合体(B)の製造>
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.3質量部及び炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで、内温を80℃にした。そこに、過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間撹拌した。これに、メチルメタクリレート95.4質量%、メチルアクリレート4.4質量%及びアリルメタクリレート0.2質量%からなる単量体混合物245質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるように更に30分間重合反応を行った。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した。その後、n−ブチルアクリレート80.5質量%、スチレン17.5質量%及びアリルメタクリレート2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるように更に30分間重合反応を行った。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した。その後、メチルメタクリレート95.2質量%、メチルアクリレート4.4質量%及びn−オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるように更に60分間重合反応を行った。
以上の操作によって、多層構造を有するアクリル系重合体(B)を含むラテックスを得た。多層構造を有するアクリル系重合体(B)を含むラテックスを凍結して凝固させた。次いで水洗・乾燥して粒子状の多層構造を有するアクリル系重合体(B)を得た。当該粒子の平均粒子径は0.23μmであった。
<実施例1>
図1の装置を用いて熱可塑性樹脂フィルムを作成した。具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)80質量部、多層構造を有するアクリル系重合体(B)20質量部及び紫外線吸収剤としてアデカスタブLA−31((株)アデカ製)2質量部をヘンシェルミキサーで混合し、ベント付きの二軸押出機(スクリュー径:58mm、シリンダー温度:260℃)を用いて溶融混練を行って熱可塑性樹脂組成物((メタ)アクリル樹脂組成物)を得た。
この(メタ)アクリル樹脂組成物をベント付きの単軸押出機(スクリュー径:75mm、シリンダー温度:265℃、L/D:34)を用いて溶融状態とし、ダイリップ幅1850mm、ダイリップクリアランス0.8mmのTダイより、Tダイの温度270℃、リップヒーターの温度280℃、樹脂吐出量120kg/時間の条件でフィルム状にして押出し、2本のロールにより線圧が31N/mmになるように挟圧して膜厚80μmの熱可塑性樹脂フィルム((メタ)アクリル樹脂フィルム)を得た。なお、リップヒーター部の長さは5cmであり、ダイの樹脂吐出部分とロールとの距離(エアギャップ)は85mmであった。
ギアポンプと、Tダイとの間に、ポリマーフィルターとスタティックミキサーを設置した。ポリマーフィルターはろ過精度10μmのキャンドルフィルターを4本並列に設置した。スタティックミキサーは、捻り羽根型エレメントを16個設置した。
また、熱可塑性樹脂フィルムの製造中、リップヒーターの温度はダイリップ幅全体で常に同じであることを、接触式温度計(安立計器製・HL−200)を用いて確認した。
<実施例2〜6>
フィルム膜厚、ダイリップクリアランス、樹脂吐出量、Tダイの温度、リップヒーターの温度を表1の通りに変更したこと以外は実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを製膜した。評価結果を表1に示す。
<比較例1〜3>
フィルム膜厚、ダイリップクリアランス、樹脂吐出量、Tダイの温度、リップヒーターの温度を表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルム製膜した。評価結果を表1に示す。
Figure 2021079650
本発明の要件を満たす実施例1〜6であれば、製膜開始直後の熱可塑性樹脂フィルム、及び8時間連続製膜した後の熱可塑性樹脂フィルムの両方について、ダイラインの発生を抑制することができた。つまり、本発明によれば、ダイラインの発生を抑制しつつ、長時間にわたって連続して熱可塑性樹脂フィルムを製造することができる。
一方、本発明の要件を満たさない比較例1は製膜開始直後からダイラインが発生し、比較例2及び3は、製膜開始直後はダイラインの発生を抑制できるものの、8時間連続製膜した後はダイラインが発生した。
1 押出機
2 ギアポンプ
3 ポリマーフィルター
4 スタティックミキサー
5 リップヒーターを有するダイ
6,7 ロール
11 ダイ本体部
12a,12b ダイ用ヒーター
13a,13b リップヒーター
14 熱可塑性樹脂組成物
15 ダイリップクリアランス調整ボルト
16 リップヒーター部

Claims (7)

  1. リップヒーターを有するダイから熱可塑性樹脂組成物を溶融押出する工程を含む熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)、前記ダイの温度Tt(℃)及び前記リップヒーターの温度Tr(℃)が、下記式(1)及び式(2)を満たす熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
    Tg+130≦Tt≦Tg+170 (1)
    Tt+5≦Tr≦Tt+40 (2)
  2. 前記ダイがTダイである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記ダイにおけるリップヒーター部を通過する熱可塑性樹脂組成物の通過時間が0.05〜10秒である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂組成物が非晶性熱可塑性樹脂組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂組成物が多層構造を有するアクリル系重合体(B)を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
JP2019209905A 2019-11-20 2019-11-20 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 Pending JP2021079650A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019209905A JP2021079650A (ja) 2019-11-20 2019-11-20 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019209905A JP2021079650A (ja) 2019-11-20 2019-11-20 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021079650A true JP2021079650A (ja) 2021-05-27

Family

ID=75963791

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019209905A Pending JP2021079650A (ja) 2019-11-20 2019-11-20 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021079650A (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011126084A (ja) * 2009-12-16 2011-06-30 Nippon Zeon Co Ltd 複層フィルム及び位相差フィルム並びにそれらの製造方法
JP2015227458A (ja) * 2015-07-06 2015-12-17 富士フイルム株式会社 アクリルフィルムおよびその製造方法
JP2017177665A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 株式会社カネカ 光学フィルムおよびその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011126084A (ja) * 2009-12-16 2011-06-30 Nippon Zeon Co Ltd 複層フィルム及び位相差フィルム並びにそれらの製造方法
JP2015227458A (ja) * 2015-07-06 2015-12-17 富士フイルム株式会社 アクリルフィルムおよびその製造方法
JP2017177665A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 株式会社カネカ 光学フィルムおよびその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6934881B2 (ja) アクリル系樹脂フィルムおよびそれの製造方法
KR101346872B1 (ko) 불소 수지 필름 및 불소 수지 적층 아크릴계 수지 필름
CN102753587B (zh) 含氟(甲基)丙烯酸(共)聚合物及其膜成型体
CN105121543A (zh) 丙烯酸系树脂膜
JP6686435B2 (ja) 艶消し用熱可塑性樹脂組成物、フッ素系艶消しフィルム及びフッ素系艶消し積層フィルム
WO2015137309A1 (ja) アクリル樹脂組成物及びその製造方法、並びにアクリル樹脂フィルム
JP2017170620A (ja) フィルター装置およびこれを用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
JP2017185760A (ja) (メタ)アクリル系フィルムの製造方法
WO2018181897A1 (ja) 多層構造体を含有する樹脂組成物およびその製造方法
JP7554628B2 (ja) 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
JP2021079650A (ja) 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
JP7583637B2 (ja) 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
WO2020175516A1 (ja) (メタ)アクリル系重合体凝固物の製造方法及び成形品
JP7232729B2 (ja) 熱可塑性樹脂成形体の製造方法
JP2017137417A (ja) アクリル系樹脂フィルム
JP7253436B2 (ja) (メタ)アクリル系樹脂フィルムの製造方法
JP7253435B2 (ja) 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
JP7278810B2 (ja) アクリル系樹脂フィルム及びその製造方法
JP5987526B2 (ja) アクリル樹脂ペレットの製造方法及びアクリル樹脂成形体
JP7149480B2 (ja) アクリル系樹脂フィルムの製造方法
JP7008575B2 (ja) フィルムの製造方法
JP2020055223A (ja) フィルター装置及びそれを用いた熱可塑性樹脂成形体の製造方法
JP6171381B2 (ja) アクリル樹脂ペレットの製造方法及びアクリル樹脂成形体
JP6856462B2 (ja) アクリル系樹脂フィルムの製造方法、アクリル系樹脂フィルムの製造装置、及びアクリル系樹脂フィルム
JP2020179437A (ja) 樹脂フィルムの切断方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220616

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230412

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230425

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230626

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230912