本発明は、圃場を自動走行する圃場作業車に関する。
トラクタによる耕耘作業やコンバインによる刈取り収穫作業などを、自動走行によって行うことが提案されている。圃場の形状はそれぞれ異なっており、自動走行を行うためには、圃場の外形に関連づけられた走行経路を生成する必要がある。
特許文献1には、圃場における耕耘作業を自動走行によって行うトラクタが開示されている。この耕耘作業は、圃場周辺領域を周回作業する周回作業走行と、圃場周辺領域(枕地とも称せられる)で180°旋回(Uターン走行)を行いながら圃場の中央領域(圃場周辺領域の内側)の直進作業を繰り返す往復直進作業走行とに分けて行われる。その際、往復直進作業走行の開始点から終了点に至る折り返し行程数、及び周回作業走行の開始点から終了点に至る周回数が、作業車両の諸元を含む作業条件に基づいて決定される。
特許文献2による圃場作業車は、圃場情報格納部から読み出された圃場の地形データを基本条件として、自動走行のための走行経路を算出する経路算出部を備えている。この経路算出部は、地形データから圃場の外形を求め、設定された走行開始地点から始まって走行終了地点で終わる走行経路を算出する。ここでも、走行経路は、圃場の外周領域を周回走行する周回走行経路と、外周領域の内側に位置する中央領域を走行する中央走行経路とから構成されている。中央走行経路として、直進経路と、前記直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる往復直進走行経路が提案されている。
特開平10−66405号公報
特開2015−112071号公報
上述した従来技術による走行経路の生成では、圃場の外形が四角形とみなされており、四角形で示される圃場形状の各辺が直線となっている。このため、周回走行経路及び中央走行経路は、実質的には、圃場の外形を示す四角形の一辺に平行な直線経路群と、その直線経路群の端点をつなぐターン経路で構成することができ。しかしながら、実際の圃場は、概略的には、四角形や五角形などの単純な多角形で表すことができたとしても、実際には、各一辺には、圃場の外形を内側に入り込ませた作業不能領域(例えば資材置きなどために用いられる)が存在する。このような作業不能領域が存在すると、圃場の外形線には局部的に入り込んだ凹部が生じる。このため、周回走行経路は、この凹部に倣うような凹状屈曲部をもって延びるように形成される。周回走行経路の凹状屈曲部の内側への入り込み量が大きければ、この凹状屈曲部によって周回走行経路の内側に配置される中央走行経路の直線経路の一部が分断されることになる。このような分断される直線経路は走行不能となるので、直線経路の生成においてエラーとなってしまう。
本発明の課題は、このような実情に鑑み、圃場の外形線が内側に局部的に入り込んだ凹部を有する場合でも、適切に走行経路を生成することである。
本発明による、圃場を自動走行する圃場作業車のための走行経路を生成する走行経路生成装置は、前記圃場の外形データを入力する圃場データ入力部と、前記圃場の外周領域を1周以上周回走行するための周回走行経路を算出する周回走行経路算出部と、前記圃場の基準辺に平行に延びるとともに、所定間隔で前記外周領域の内側に位置する中央領域を網羅する基準直線群を算出する基準直線算出部と、前記基準直線群における前記中央領域に対応する直線部分からなる基準直線部分群から、最外周の前記周回走行経路と交差する基準直線部分を除外して有効基準直線部分群を決定する有効基準直線部分算出部と、前記有効基準直線部分群に基づく直進経路と、前記直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる、前記中央領域を走行するための中央走行経路を算出する中央走行経路算出部とを備えている。
この構成によれば、圃場の外形線には局部的に入り込んだ凹部が存在することにより、中央領域を網羅する基準直線群の中央領域内の部分である基準直線部分群の中には、凹部によって分割される基準直線部分が存在する可能性がある。凹部によって分割される基準直線部分に基づいて算出された中央走行経路の直進経路は、凹部を通過することになるので、中央走行経路の算出処理がエラーとなって停止してしまう。これは、そのような直進経路に沿った圃場作業車の走行は凹部との衝突を導くからである。しかしながら、この構成では、最外周の周回走行経路と交差する基準直線部分は除外され、有効基準直線部分とはならない。これにより、凹部によって分割される基準直線に基づいて直進経路が算出されることが回避される。
本発明の好適に実施形態の1つでは、前記基準直線部分算出部は、前記基準直線群を前記中央領域の外形に沿って切断(トリム)することで前記基準直線部分群を算出する機能を有する。基準直線は、プログラム上では、直線式で簡単に表すことができる。しかしながらこのような直線式で表される基準直線は端部を有しないので、中央領域内での直進経路の算出に用いるためには、この基準直線における中央領域に対応する直線部分だけを取り扱う必要がある。このような直線部分をこの発明では基準直線部分と称している。この基準直線部分を算出するため、中央領域の外形を示す条件式を用いて、基準直線が切断処理(トリム処理)される。このような切断処理の演算プログラムはライブラリ化されているので、この機能は、簡単に構築することができ、好都合である。
直線経路に沿った作業走行が圃場における作業走行の大部分を占めると、良好な作業効率が得られる。このためには、直線経路が長くなるような走行経路を算出する必要がある。このことから、前記基準直線算出部は、前記中央領域の外形を表す多角形の最長辺を前記基準辺とするように構成されている。
中央領域の外形を表す多角形の最長辺を基準直線の算出のための基準辺としても、上述した凹部が圃場内部に深く入り込んでいる場合、有効基準直線部分が存在しない空白の領域、つまり走行経路が形成されない空白の領域が大きくなってしまう。これを避けるために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記有効基準直線部分群によって網羅されない前記中央領域の空白の面積が前記中央領域の全面積の所定割合以上であれば、前記基準直線算出部は、前記多角形の前記最長辺に平行ではなくて前記最長辺の次に長い辺を前記基準辺とするように構成されている。この所定割合はユーザによって設定可能である。この構成により、直線経路の長さが短くなるとしても、空白領域がなくなるか、少なくなるという次善の策が得られる。
さらに、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記中央走行経路の終端と前記周回走行経路とを接続する移行走行経路を算出する移行走行経路算出部が備えられている。これにより、圃場全体を自動走行するための走行経路が生成され、好都合である。
本発明による走行経路生成装置によって生成される走行経路を模式的に示す模式図である。
圃場作業車の一例であるトラクタの側面図である。
走行経路生成装置として機能する制御機能部を示す機能ブロック図である。
本発明による走行経路生成装置による走行経路の生成過程を概略的に示す説明図である。
凹部を形成している圃場の一例を示す平面図である。
図5の圃場に対して生成された周回走行経路を示す平面図である。
図6の中央領域を網羅する有効基準直線部分群を示す平面図である。
大きな凹部を形成している圃場に対して生成された周回走行経路及び有効基準直線部分群を示す平面図である。
図面を用いて、本発明による走行経路生成装置の実施形態の1つを説明する。この走行経路生成装置は、図1において模式的に示されているように、圃場作業車が自動操舵で圃場内を作業走行するための走行経路を生成する。走行経路には、圃場の外周領域を1周以上周回走行するための周回走行経路と、外周領域の内側に位置する中央領域を走行するための中央走行経路とが含まれている。中央走行経路は、直進経路と、この直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる。周回走行経路は、圃場の畦によって規定される境界線に沿って生成され、通常3周程度の周回数(図1では2周)となる。この周回数と作業幅とを掛け合わせることによって外周領域の幅が算出される。外周領域の幅は、圃場作業車がスムーズにUターンできるという条件を満たす必要がある。
この走行経路生成装置は、図1に示すような凹部が形成されているような圃場に対しても、適切な走行経路を生成する機能を有する。走行経路の生成では、周回走行経路が算出され、これにより圃場が外周領域と中央領域に区分けされる。さらに、中央走行経路として、当該中央領域を作業幅(オーバーラップが考慮される)で網羅する直進経路が算出される。中央領域に直進経路を形成する場合には、長い直進経路が形成される方向が採用される(図1では、略長方形形状の圃場の長辺に沿う方向)。
直進経路を算出する際に、凹部に近接して外周領域を通過する直進経路は、最外周の周回走行経路と交差するかどうか判定される。最外周の周回走行経路と交差しない交直進経路は、有効となるが(図1において例示された走行経路A)、最外周の周回走行経路と交差する直進経路は、無効となる(図1において例示された走行経路B)。凹部が圃場内部に深く入り込んでいると、無効となる直線経路が多数生じて、直線経路が形成されない空白領域が大きくなる。このような場合には、直線経路の延びる方向を変更する(図1において例示された走行経路C)。
この実施形態では、圃場作業車は、車体1に作業装置30を装備したトラクタであり、設定された走行経路に沿って圃場を作業走行する。図2に示されているように、このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に運転室20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介してロータリ耕耘装置である作業装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は運転室20に配置されているステアリングホイール22の操作によって行われる。運転室20には、ユーザによる指令を受け付けるとともにユーザに情報を提供する汎用端末4が装備されている。トラクタのキャビン21には、衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GNSS(global navigation satellite system)信号(GPS信号を含む)を受信するための衛星用アンテナがキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、この衛星測位モジュール80に、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを組み合わせることも可能である。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
図3には、このトラクタに構築されている制御系が示されている。この実施形態の制御系は、グラフィカルユーザインターフェースを備えた汎用端末4である第1制御ユニットと、トラクタの車体1や作業装置30の制御を行う制御ユニット5と、トラクタの走行開始と走行停止とを外部から無線で制御するためのリモコン84とを備えている。本発明による走行経路生成装置は経路生成モジュール6としてモジュール化され、汎用端末4に組み込まれている。
汎用端末4は、経路生成モジュール6以外に、通信制御部40やタッチパネル60など、一般的なコンピュータシステムの諸機能を備えている。汎用端末4は、車載LAN、無線通信、有線通信などによって、制御ユニット5とデータ交換可能に接続されている。さらに、汎用端末4は、遠隔地の管理センタKSに構築された管理コンピュータ100とも、無線回線やインターネットを通じて、データ交換可能である。また、汎用端末4をタブレットコンピュータや携帯電話などで構成し、トラクタの制御系とデータ交換可能に接続すれば、汎用端末4をトラクタの外に持ち出して、使用することも可能である。
この実施形態では、圃場の地図上の位置や圃場を取り巻く農道等の配置などを含む圃場情報が、管理コンピュータ100の圃場情報格納部101に格納されており、この圃場情報は、作業すべき圃場を見つけ出すために必要となる。管理コンピュータ100は、指定された圃場での作業内容を記述した作業計画書を管理している作業計画管理部102も備えている。汎用端末4は、管理コンピュータ100にアクセスし、圃場情報格納部101から圃場情報を、そして作業計画管理部102から作業計画書をダウンロードすることができる。あるいは、汎用端末4は、USBメモリなどの記録媒体を通じて圃場情報や作業計画書を入力することも可能である。
経路生成モジュール6は、走行経路を生成する機能部として、圃場データ入力部61、周回走行経路算出部621、基準直線算出部622、有効基準直線部分算出部623、中央走行経路算出部624、移行走行経路算出部625を備えている。経路生成モジュール6の各機能部の基本的な役割を、図4に示されている走行経路生成処理の流れ図を用いて説明する。
圃場データ入力部61は、作業対象となる圃場の外形とを示す圃場外形データと当該圃場の出入口の位置や形状を示す出入口位置データを入力し、ワーキングメモリエリアに展開する。
周回走行経路算出部621は、圃場の外周領域を周回走行するための周回走行経路を決定する。この外周領域はトラクタがUターン走行する領域であり、トラクタがUターン走行で要求される外周領域の幅は、トラクタの作業幅と適正旋回半径とに基づいて算出される。この外周領域の幅を満たすためのトラクタの周回回数が算出される。つまり、トラクタの作業幅(正確にはオーバーラップ幅を考慮した作業幅)の整数倍(周回数)の値が、Uターン走行で必要な外周領域の幅を上回るように、周回数が算出される。この算出された周回数に基づいて実際の外周領域の幅が決定される。一般的な耕耘作業では、2周から4周の周回走行経路に相当する領域が外周領域として設定される。外周領域の内側の領域が、実質的に直進での作業走行が行われる中央領域となる。図1に示しているように、外周領域の内側の領域が中央領域となる。図4で例示された圃場の形状は、ほぼ台形(四角形)であり、その上辺に凹部が形成されている。したがって、周回走行経路は、凹部を回避するように延びており、その結果中央領域の上辺も凹部に対応する位置で凹部を有する。
基準直線算出部622は、圃場の基準辺に平行に延びるとともに、所定間隔で中央領域を網羅する基準直線を算出する。この基準直線は、中央領域における走行経路のベースとなる。このような基準直線の決定は、内側走行経路を生成するための前処理である。その際、圃場の基準辺として、一般的には、圃場の外形が作り出す近似多角形の最長辺が採用される。図4の例では、台形の最長辺が基準辺として選択されており、この基準辺に平行で、かつ作業幅で中央領域を網羅する多数の基準直線からなる基準線群が算出されている。
有効基準直線部分算出部623は、第1機能と第2機能とを有する。第1機能は、基準直線群のうちから、中央領域に重なり合って延びている直線部分を基準直線部分として算出することである。第1機能を実現する具体的な例は、基準直線群を中央領域の外形に沿って切断(トリム)する切断プログラムを導入することである。なお、中央領域に重なり合って延びている直線部分だけでは、中央領域の一部(図4では下方領域)に未作業領域が残る場合、中央領域に近接する基準直線の対応する直線部分も基準直線部分とする例外処理が行われる。第2機能の機能は、第1機能によって算出された基準直線部分群のうちで、最外周の周回走行経路と交差する基準直線部分があれば、当該基準直線部分を除外し、残った基準直線部分を有効基準直線群とすることである。これは、最外周の周回走行経路と交差する基準直線部分に基づいて生成された直進経路に沿って作業走行が行われると、その作業幅が凹部にかかってしまうことになり、事実上、トラクタの走行が不可能となるからである。
中央走行経路算出部624は、有効基準直線部分算出部623によって最終的に算出された有効基準直線部分群の各有効基準直線部分を一本の直進経路として算出するとともに、この直進経路同士をつなぐUターン経路を設定する。これにより、直進経路がUターン経路によって順次つながれていくことで一本の連続した蛇行状の走行経路となる。この蛇行状の走行経路が、中央領域を走行するための中央走行経路として算出される。
移行走行経路算出部625は、中央走行経路算出部624によって算出された中央走行経路の終端と、周回走行経路算出部621によって算出された周回走行経路とを接続する移行走行経路を算出する。これにより、中央走行経路と周回走行経路とが一本の連続した走行経路となる。トラクタの耕耘作業では、中央領域での作業走行を行ってから周回領域では作業走行を行うので、この走行経路は好都合である。トラクタは、農道から出入口を通過して圃場に進入し、中央走行経路の始端から周回走行経路の後端までに至る作業走行を行い、圃場から出入口を通過して農道に抜ける。このため、移行走行経路算出部625は、農道から出入口を通過して圃場に進入して内側走行経路の始端と接続する進入経路、及び、周回走行経路の終端に接続して圃場から出入口を通過して農道に抜ける退出経路を算出することも可能である。これにより、進入経路、内側走行経路、周回走行経路、退出経路に至る、この圃場をトラクタが走行するための走行経路が生成される。
次に、より具体的な例として、図5に示された圃場に対して、経路生成モジュール6が、周回走行経路及び中央走行経路の直進経路を算出する過程を以下に説明する。
(1)3周の周回走行経路を算出し、これによって圃場は外周領域と中央領域とに区分けされる(図6参照)。
(2)基準辺を圃場の上辺として算出された基準直線群(多数の基準直線)を、中央領域の外形線を用いてトリミングし、基準直線部分群(多数の基準直線部分)を算出する。なお、図7で示された例では、基準直線部分群のなかで最も凹部に接近している基準直線部分(図7でL1で示されている)が、最外周の周回走行経路(図7でL0で示されている)と交差していないので、当該基準直線部分群に含まれている全ての基準直線部分が、有効基準直線部分となっている。この有効基準直線部分が中央走行経路の直進経路となる。この例の場合、凹部の近くで、周回走行経路と中央走行経路とが重なり合うので、この重なり合う領域で、作業走行が重複することになる。
図8には、より内部に向かって深い凹部が形成されている圃場において算出された、周回走行経路及び中央走行経路の直進経路が示されている。この例では、基準直線部分群の凹部に近い数本の基準直線部分(図8で点線で示されている)が、最外周の周回走行経路(図8でL0で示されている)と交差しているので、当該基準直線部分は、有効基準直線部分として算出されない。このため、中央領域における凹部の両側に、中央走行経路が生成されない空白(図8で斜線で示されている)が生じる。この空白の面積が中央領域の全面積の所定割合以上であれば、中央領域に未作業地が生じるとの報知を行う。そのような報知を行って、未作業地が生じる走行経路を生成してもよいが、基準辺を変更して、再度走行経路の生成を行うようにしてもよい。
図3に示すように、トラクタの制御系の中核要素である制御ユニット5には、入出力インタフェースとして機能する、出力処理部7、入力処理部8、通信処理部70が備えられている。出力処理部7は、トラクタに装備されている、車両走行機器群71、作業装置機器群72、報知デバイス73などと接続している。車両走行機器群71には、操舵モータ14や、図示されていないが変速機構やエンジンユニットなど車両走行のために制御される機器が含まれている。作業装置機器群72には、作業装置30の駆動機構や、作業装置30を昇降させる昇降機構31などが含まれている。報知デバイス73には、ディスプレイやランプやスピーカが含まれている。報知デバイス73は、走行注意事項や自動操舵走行での目標走行経路からの外れなど、注意情報や警告情報を運転者や監視者に報知するために用いられる。通信処理部70は、制御ユニット5で処理されたデータを管理コンピュータ100に送信するとともに、管理コンピュータ100から種々のデータを受信する機能を有する。さらに、通信処理部70は、リモコン84からのリモコン指令も受信する。
入力処理部8は、衛星測位モジュール80、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などと接続している。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、作業装置30の位置や傾きを検出するセンサ、作業負荷などを検出するセンサなどが含まれている。自動/手動切替操作具83は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。
さらに、制御ユニット5には、走行制御部50、作業制御部54、自車位置算出部53、走行経路設定部55、報知部56が備えられている。自車位置算出部53は、衛星測位モジュール80から送られてくる測位データに基づいて、自車位置を算出する。車両走行機器群71を制御する走行制御部50には、このトラクタが自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されているため、手動走行制御部51と自動走行制御部52とが含まれている。手動走行制御部51は、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71を制御する。自動走行制御部52は、走行経路設定部55で設定された走行経路と自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、自動操舵指令を生成する。生成された自動操舵指令は、出力処理部7を介して操舵モータ14に出力される。自動走行制御部52は、リモコン84からの停止指令に基づいてトラクタを停止させるとともに、リモコン84からの開始指令に基づいてトラクタの走行を開始させる。作業制御部54は、作業装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に制御信号を与える。報知部56は、運転者や監視者に必要な情報を報知するための報知信号(表示データや音声データ)を生成して、計器パネルに組み込まれた報知デバイス73に与える。
走行経路設定部55は、経路生成モジュール6によって生成された走行経路を汎用端末4から通信処理部70を介して受け取り、トラクタの目標走行経路として設定する。
〔別実施の形態〕
(1)図3で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合または複数の機能部に分けることができる。例えば、経路生成モジュール6を管理コンピュータ100に構築し、管理コンピュータ100で生成された走行経路を作業車の制御ユニット5にダウンロードする構成を採用してもよい。また、経路生成モジュール6を作業車の制御ユニット5内に構築してもよい。
(2)上述した実施形態では、多角形で示された圃場の最長辺を基準辺としていたが、多角形で示された圃場の、ユーザによって指定された辺を基準辺としてもよい。さらには、多角形の辺に基づく仮想辺(例えば、多角形の対辺や隣接する辺を繋ぐ辺など)を基準辺とすることも可能である。
(3)上述した実施形態では、中央走行経路の算出において、隣接する直進経路同士がUターン経路によってつながれていたが、1つの直進経路が1つ以上の直進経路を挟んで別の直進経路とUターン経路によってつながれてもよい。
(4)上述した実施形態では、作業車として、ロータリ耕耘機を作業装置30として装備したトラクタを、作業車として取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車にも適用可能である。
本発明は、設定された走行経路に沿って圃場を作業する圃場作業車に適用可能である。
1 :車体
4 :汎用端末
5 :制御ユニット
50 :走行制御部
51 :手動走行制御部
52 :自動走行制御部
53 :自車位置算出部
54 :作業制御部
55 :走行経路設定部
56 :報知部
6 :経路生成モジュール
60 :タッチパネル
61 :圃場データ入力部
621 :周回走行経路算出部
622 :基準直線算出部
623 :有効基準直線部分算出部
624 :中央走行経路算出部
625 :移行走行経路算出部
80 :衛星測位モジュール
100 :管理コンピュータ
101 :圃場情報格納部
102 :作業計画管理部
KS :管理センタ
本発明は、圃場を自動走行する圃場作業車に関する。
トラクタによる耕耘作業やコンバインによる刈取り収穫作業などを、自動走行によって行うことが提案されている。圃場の形状はそれぞれ異なっており、自動走行を行うためには、圃場の外形に関連づけられた走行経路を生成する必要がある。
特許文献1には、圃場における耕耘作業を自動走行によって行うトラクタが開示されている。この耕耘作業は、圃場周辺領域を周回作業する周回作業走行と、圃場周辺領域(枕地とも称せられる)で180°旋回(Uターン走行)を行いながら圃場の中央領域(圃場周辺領域の内側)の直進作業を繰り返す往復直進作業走行とに分けて行われる。その際、往復直進作業走行の開始点から終了点に至る折り返し行程数、及び周回作業走行の開始点から終了点に至る周回数が、作業車両の諸元を含む作業条件に基づいて決定される。
特許文献2による圃場作業車は、圃場情報格納部から読み出された圃場の地形データを基本条件として、自動走行のための走行経路を算出する経路算出部を備えている。この経路算出部は、地形データから圃場の外形を求め、設定された走行開始地点から始まって走行終了地点で終わる走行経路を算出する。ここでも、走行経路は、圃場の外周領域を周回走行する周回走行経路と、外周領域の内側に位置する中央領域を走行する中央走行経路とから構成されている。中央走行経路として、直進経路と、前記直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる往復直進走行経路が提案されている。
特開平10−66405号公報
特開2015−112071号公報
上述した従来技術による走行経路の生成では、圃場の外形が四角形とみなされており、四角形で示される圃場形状の各辺が直線となっている。このため、周回走行経路及び中央走行経路は、実質的には、圃場の外形を示す四角形の一辺に平行な直線経路群と、その直線経路群の端点をつなぐターン経路で構成することができ。しかしながら、実際の圃場は、概略的には、四角形や五角形などの単純な多角形で表すことができたとしても、実際には、各一辺には、圃場の外形を内側に入り込ませた作業不能領域(例えば資材置きなどために用いられる)が存在する。このような作業不能領域が存在すると、圃場の外形線には局部的に入り込んだ凹部が生じる。このため、周回走行経路は、この凹部に倣うような凹状屈曲部をもって延びるように形成される。周回走行経路の凹状屈曲部の内側への入り込み量が大きければ、この凹状屈曲部によって周回走行経路の内側に配置される中央走行経路の直線経路の一部が分断されることになる。このような分断される直線経路は走行不能となるので、直線経路の生成においてエラーとなってしまう。
本発明の課題は、このような実情に鑑み、圃場の外形線が内側に局部的に入り込んだ凹部を有する場合でも、適切に走行経路を生成することである。
本発明の一実施形態に係る圃場作業車は、外形が内側に入り込んだ凹部を有する圃場の外周領域における周回走行経路、および、前記外周領域の内側の中央領域における中央走行経路を自動走行する圃場作業車であって、前記周回走行経路を算出すると共に、直進経路と、前記直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる、前記中央走行経路を算出する経路生成モジュールと、所定の報知を行う報知デバイスと、前記中央領域内において、前記中央走行経路が生成されなかった部分である空白の面積が、前記中央領域の面積に対して所定の割合以上であると前記報知デバイスに報知を行わせる報知部とを備えている。
また、前記経路生成モジュールは、前記中央領域全体において、所定間隔で前記圃場の基準辺に平行に延びる複数の基準直線に対して、前記凹部によって分割された部分を除外したそれぞれの前記基準直線を前記直進経路として算出し、前記空白は、前記中央領域内において、前記基準直線の配置領域のうちの前記Uターン経路がつなげられなかったことにより前記中央走行経路が生成されなかった部分であっても良い。
また、前記基準辺は、前記中央領域の外形を表す多角形の最長辺であり、
前記空白の面積が前記中央領域の全面積の所定割合以上である場合、前記経路生成モジュールは、前記多角形の前記最長辺に平行ではなくて前記最長辺の次に長い辺を前記基準辺として前記中央走行経路を再度生成しても良い。
本発明の一実施形態に係る圃場作業車は、外形が内側に入り込んだ凹部を有する圃場の外周領域における周回走行経路、および、前記外周領域の内側の中央領域における中央走行経路を自動走行する圃場作業車であって、前記周回走行経路を算出すると共に、前記中央領域全体において、所定間隔で前記圃場の基準辺に平行に延びる複数の基準直線に対して、前記凹部によって分割された部分と分割されない部分とを区別し、前記基準直線のうち少なくとも前記凹部によって分割されない部分を直進経路として算出し、前記直進経路と、前記直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる、前記中央走行経路を算出する経路生成モジュールと、所定の報知を行う報知デバイスと、前記中央領域内において、前記基準直線の配置領域のうちの前記中央走行経路が生成される面積が、前記中央領域の面積に対して所定の割合未満であると前記報知デバイスに報知を行わせる報知部とを備えている。
また、前記基準辺は、前記中央領域の外形を表す多角形の最長辺であり、前記中央走行経路が生成される面積が前記中央領域の面積に対して所定の割合未満である場合、前記経路生成モジュールは、前記多角形の前記最長辺に平行ではなくて前記最長辺の次に長い辺を前記基準辺として前記中央走行経路を再度生成しても良い。
また、前記経路生成モジュールは、機体の外部に設けられ、前記経路生成モジュールと通信を行う通信処理部をさらに備えても良い。
本発明による走行経路生成装置によって生成される走行経路を模式的に示す模式図である。
圃場作業車の一例であるトラクタの側面図である。
走行経路生成装置として機能する制御機能部を示す機能ブロック図である。
本発明による走行経路生成装置による走行経路の生成過程を概略的に示す説明図である。
凹部を形成している圃場の一例を示す平面図である。
図5の圃場に対して生成された周回走行経路を示す平面図である。
図6の中央領域を網羅する有効基準直線部分群を示す平面図である。
大きな凹部を形成している圃場に対して生成された周回走行経路及び有効基準直線部分群を示す平面図である。
図面を用いて、本発明による走行経路生成装置の実施形態の1つを説明する。この走行経路生成装置は、図1において模式的に示されているように、圃場作業車が自動操舵で圃場内を作業走行するための走行経路を生成する。走行経路には、圃場の外周領域を1周以上周回走行するための周回走行経路と、外周領域の内側に位置する中央領域を走行するための中央走行経路とが含まれている。中央走行経路は、直進経路と、この直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる。周回走行経路は、圃場の畦によって規定される境界線に沿って生成され、通常3周程度の周回数(図1では2周)となる。この周回数と作業幅とを掛け合わせることによって外周領域の幅が算出される。外周領域の幅は、圃場作業車がスムーズにUターンできるという条件を満たす必要がある。
この走行経路生成装置は、図1に示すような凹部が形成されているような圃場に対しても、適切な走行経路を生成する機能を有する。走行経路の生成では、周回走行経路が算出され、これにより圃場が外周領域と中央領域に区分けされる。さらに、中央走行経路として、当該中央領域を作業幅(オーバーラップが考慮される)で網羅する直進経路が算出される。中央領域に直進経路を形成する場合には、長い直進経路が形成される方向が採用される(図1では、略長方形形状の圃場の長辺に沿う方向)。
直進経路を算出する際に、凹部に近接して外周領域を通過する直進経路は、最外周の周回走行経路と交差するかどうか判定される。最外周の周回走行経路と交差しない交直進経路は、有効となるが(図1において例示された走行経路A)、最外周の周回走行経路と交差する直進経路は、無効となる(図1において例示された走行経路B)。凹部が圃場内部に深く入り込んでいると、無効となる直線経路が多数生じて、直線経路が形成されない空白領域が大きくなる。このような場合には、直線経路の延びる方向を変更する(図1において例示された走行経路C)。
この実施形態では、圃場作業車は、車体1に作業装置30を装備したトラクタであり、設定された走行経路に沿って圃場を作業走行する。図2に示されているように、このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に運転室20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介してロータリ耕耘装置である作業装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は運転室20に配置されているステアリングホイール22の操作によって行われる。運転室20には、ユーザによる指令を受け付けるとともにユーザに情報を提供する汎用端末4が装備されている。トラクタのキャビン21には、衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GNSS(global navigation satellite system)信号(GPS信号を含む)を受信するための衛星用アンテナがキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、この衛星測位モジュール80に、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを組み合わせることも可能である。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
図3には、このトラクタに構築されている制御系が示されている。この実施形態の制御系は、グラフィカルユーザインターフェースを備えた汎用端末4である第1制御ユニットと、トラクタの車体1や作業装置30の制御を行う制御ユニット5と、トラクタの走行開始と走行停止とを外部から無線で制御するためのリモコン84とを備えている。本発明による走行経路生成装置は経路生成モジュール6としてモジュール化され、汎用端末4に組み込まれている。
汎用端末4は、経路生成モジュール6以外に、通信制御部40やタッチパネル60など、一般的なコンピュータシステムの諸機能を備えている。汎用端末4は、車載LAN、無線通信、有線通信などによって、制御ユニット5とデータ交換可能に接続されている。さらに、汎用端末4は、遠隔地の管理センタKSに構築された管理コンピュータ100とも、無線回線やインターネットを通じて、データ交換可能である。また、汎用端末4をタブレットコンピュータや携帯電話などで構成し、トラクタの制御系とデータ交換可能に接続すれば、汎用端末4をトラクタの外に持ち出して、使用することも可能である。
この実施形態では、圃場の地図上の位置や圃場を取り巻く農道等の配置などを含む圃場情報が、管理コンピュータ100の圃場情報格納部101に格納されており、この圃場情報は、作業すべき圃場を見つけ出すために必要となる。管理コンピュータ100は、指定された圃場での作業内容を記述した作業計画書を管理している作業計画管理部102も備えている。汎用端末4は、管理コンピュータ100にアクセスし、圃場情報格納部101から圃場情報を、そして作業計画管理部102から作業計画書をダウンロードすることができる。あるいは、汎用端末4は、USBメモリなどの記録媒体を通じて圃場情報や作業計画書を入力することも可能である。
経路生成モジュール6は、走行経路を生成する機能部として、圃場データ入力部61、周回走行経路算出部621、基準直線算出部622、有効基準直線部分算出部623、中央走行経路算出部624、移行走行経路算出部625を備えている。経路生成モジュール6の各機能部の基本的な役割を、図4に示されている走行経路生成処理の流れ図を用いて説明する。
圃場データ入力部61は、作業対象となる圃場の外形とを示す圃場外形データと当該圃場の出入口の位置や形状を示す出入口位置データを入力し、ワーキングメモリエリアに展開する。
周回走行経路算出部621は、圃場の外周領域を周回走行するための周回走行経路を決定する。この外周領域はトラクタがUターン走行する領域であり、トラクタがUターン走行で要求される外周領域の幅は、トラクタの作業幅と適正旋回半径とに基づいて算出される。この外周領域の幅を満たすためのトラクタの周回回数が算出される。つまり、トラクタの作業幅(正確にはオーバーラップ幅を考慮した作業幅)の整数倍(周回数)の値が、Uターン走行で必要な外周領域の幅を上回るように、周回数が算出される。この算出された周回数に基づいて実際の外周領域の幅が決定される。一般的な耕耘作業では、2周から4周の周回走行経路に相当する領域が外周領域として設定される。外周領域の内側の領域が、実質的に直進での作業走行が行われる中央領域となる。図1に示しているように、外周領域の内側の領域が中央領域となる。図4で例示された圃場の形状は、ほぼ台形(四角形)であり、その上辺に凹部が形成されている。したがって、周回走行経路は、凹部を回避するように延びており、その結果中央領域の上辺も凹部に対応する位置で凹部を有する。
基準直線算出部622は、圃場の基準辺に平行に延びるとともに、所定間隔で中央領域を網羅する基準直線を算出する。この基準直線は、中央領域における走行経路のベースとなる。このような基準直線の決定は、内側走行経路を生成するための前処理である。その際、圃場の基準辺として、一般的には、圃場の外形が作り出す近似多角形の最長辺が採用される。図4の例では、台形の最長辺が基準辺として選択されており、この基準辺に平行で、かつ作業幅で中央領域を網羅する多数の基準直線からなる基準線群が算出されている。
有効基準直線部分算出部623は、第1機能と第2機能とを有する。第1機能は、基準直線群のうちから、中央領域に重なり合って延びている直線部分を基準直線部分として算出することである。第1機能を実現する具体的な例は、基準直線群を中央領域の外形に沿って切断(トリム)する切断プログラムを導入することである。なお、中央領域に重なり合って延びている直線部分だけでは、中央領域の一部(図4では下方領域)に未作業領域が残る場合、中央領域に近接する基準直線の対応する直線部分も基準直線部分とする例外処理が行われる。第2機能の機能は、第1機能によって算出された基準直線部分群のうちで、最外周の周回走行経路と交差する基準直線部分があれば、当該基準直線部分を除外し、残った基準直線部分を有効基準直線群とすることである。これは、最外周の周回走行経路と交差する基準直線部分に基づいて生成された直進経路に沿って作業走行が行われると、その作業幅が凹部にかかってしまうことになり、事実上、トラクタの走行が不可能となるからである。
中央走行経路算出部624は、有効基準直線部分算出部623によって最終的に算出された有効基準直線部分群の各有効基準直線部分を一本の直進経路として算出するとともに、この直進経路同士をつなぐUターン経路を設定する。これにより、直進経路がUターン経路によって順次つながれていくことで一本の連続した蛇行状の走行経路となる。この蛇行状の走行経路が、中央領域を走行するための中央走行経路として算出される。
移行走行経路算出部625は、中央走行経路算出部624によって算出された中央走行経路の終端と、周回走行経路算出部621によって算出された周回走行経路とを接続する移行走行経路を算出する。これにより、中央走行経路と周回走行経路とが一本の連続した走行経路となる。トラクタの耕耘作業では、中央領域での作業走行を行ってから周回領域では作業走行を行うので、この走行経路は好都合である。トラクタは、農道から出入口を通過して圃場に進入し、中央走行経路の始端から周回走行経路の後端までに至る作業走行を行い、圃場から出入口を通過して農道に抜ける。このため、移行走行経路算出部625は、農道から出入口を通過して圃場に進入して内側走行経路の始端と接続する進入経路、及び、周回走行経路の終端に接続して圃場から出入口を通過して農道に抜ける退出経路を算出することも可能である。これにより、進入経路、内側走行経路、周回走行経路、退出経路に至る、この圃場をトラクタが走行するための走行経路が生成される。
次に、より具体的な例として、図5に示された圃場に対して、経路生成モジュール6が、周回走行経路及び中央走行経路の直進経路を算出する過程を以下に説明する。
(1)3周の周回走行経路を算出し、これによって圃場は外周領域と中央領域とに区分けされる(図6参照)。
(2)基準辺を圃場の上辺として算出された基準直線群(多数の基準直線)を、中央領域の外形線を用いてトリミングし、基準直線部分群(多数の基準直線部分)を算出する。なお、図7で示された例では、基準直線部分群のなかで最も凹部に接近している基準直線部分(図7でL1で示されている)が、最外周の周回走行経路(図7でL0で示されている)と交差していないので、当該基準直線部分群に含まれている全ての基準直線部分が、有効基準直線部分となっている。この有効基準直線部分が中央走行経路の直進経路となる。この例の場合、凹部の近くで、周回走行経路と中央走行経路とが重なり合うので、この重なり合う領域で、作業走行が重複することになる。
図8には、より内部に向かって深い凹部が形成されている圃場において算出された、周回走行経路及び中央走行経路の直進経路が示されている。この例では、基準直線部分群の凹部に近い数本の基準直線部分(図8で点線で示されている)が、最外周の周回走行経路(図8でL0で示されている)と交差しているので、当該基準直線部分は、有効基準直線部分として算出されない。このため、中央領域における凹部の両側に、中央走行経路が生成されない空白(図8で斜線で示されている)が生じる。この空白の面積が中央領域の全面積の所定割合以上であれば、中央領域に未作業地が生じるとの報知を行う。そのような報知を行って、未作業地が生じる走行経路を生成してもよいが、基準辺を変更して、再度走行経路の生成を行うようにしてもよい。
図3に示すように、トラクタの制御系の中核要素である制御ユニット5には、入出力インタフェースとして機能する、出力処理部7、入力処理部8、通信処理部70が備えられている。出力処理部7は、トラクタに装備されている、車両走行機器群71、作業装置機器群72、報知デバイス73などと接続している。車両走行機器群71には、操舵モータ14や、図示されていないが変速機構やエンジンユニットなど車両走行のために制御される機器が含まれている。作業装置機器群72には、作業装置30の駆動機構や、作業装置30を昇降させる昇降機構31などが含まれている。報知デバイス73には、ディスプレイやランプやスピーカが含まれている。報知デバイス73は、走行注意事項や自動操舵走行での目標走行経路からの外れなど、注意情報や警告情報を運転者や監視者に報知するために用いられる。通信処理部70は、制御ユニット5で処理されたデータを管理コンピュータ100に送信するとともに、管理コンピュータ100から種々のデータを受信する機能を有する。さらに、通信処理部70は、リモコン84からのリモコン指令も受信する。
入力処理部8は、衛星測位モジュール80、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などと接続している。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、作業装置30の位置や傾きを検出するセンサ、作業負荷などを検出するセンサなどが含まれている。自動/手動切替操作具83は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。
さらに、制御ユニット5には、走行制御部50、作業制御部54、自車位置算出部53、走行経路設定部55、報知部56が備えられている。自車位置算出部53は、衛星測位モジュール80から送られてくる測位データに基づいて、自車位置を算出する。車両走行機器群71を制御する走行制御部50には、このトラクタが自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されているため、手動走行制御部51と自動走行制御部52とが含まれている。手動走行制御部51は、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71を制御する。自動走行制御部52は、走行経路設定部55で設定された走行経路と自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、自動操舵指令を生成する。生成された自動操舵指令は、出力処理部7を介して操舵モータ14に出力される。自動走行制御部52は、リモコン84からの停止指令に基づいてトラクタを停止させるとともに、リモコン84からの開始指令に基づいてトラクタの走行を開始させる。作業制御部54は、作業装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に制御信号を与える。報知部56は、運転者や監視者に必要な情報を報知するための報知信号(表示データや音声データ)を生成して、計器パネルに組み込まれた報知デバイス73に与える。
走行経路設定部55は、経路生成モジュール6によって生成された走行経路を汎用端末4から通信処理部70を介して受け取り、トラクタの目標走行経路として設定する。
〔別実施の形態〕
(1)図3で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合または複数の機能部に分けることができる。例えば、経路生成モジュール6を管理コンピュータ100に構築し、管理コンピュータ100で生成された走行経路を作業車の制御ユニット5にダウンロードする構成を採用してもよい。また、経路生成モジュール6を作業車の制御ユニット5内に構築してもよい。
(2)上述した実施形態では、多角形で示された圃場の最長辺を基準辺としていたが、多角形で示された圃場の、ユーザによって指定された辺を基準辺としてもよい。さらには、多角形の辺に基づく仮想辺(例えば、多角形の対辺や隣接する辺を繋ぐ辺など)を基準辺とすることも可能である。
(3)上述した実施形態では、中央走行経路の算出において、隣接する直進経路同士がUターン経路によってつながれていたが、1つの直進経路が1つ以上の直進経路を挟んで別の直進経路とUターン経路によってつながれてもよい。
(4)上述した実施形態では、作業車として、ロータリ耕耘機を作業装置30として装備したトラクタを、作業車として取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車にも適用可能である。
本発明は、設定された走行経路に沿って圃場を作業する圃場作業車に適用可能である。
1 :車体
4 :汎用端末
5 :制御ユニット
50 :走行制御部
51 :手動走行制御部
52 :自動走行制御部
53 :自車位置算出部
54 :作業制御部
55 :走行経路設定部
56 :報知部
6 :経路生成モジュール
60 :タッチパネル
61 :圃場データ入力部
621 :周回走行経路算出部
622 :基準直線算出部
623 :有効基準直線部分算出部
624 :中央走行経路算出部
625 :移行走行経路算出部
80 :衛星測位モジュール
100 :管理コンピュータ
101 :圃場情報格納部
102 :作業計画管理部
KS :管理センタ