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JP2021048054A - 自発光素子を用いた表示パネル、および、その製造方法 - Google Patents

自発光素子を用いた表示パネル、および、その製造方法 Download PDF

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JP2021048054A JP2019170105A JP2019170105A JP2021048054A JP 2021048054 A JP2021048054 A JP 2021048054A JP 2019170105 A JP2019170105 A JP 2019170105A JP 2019170105 A JP2019170105 A JP 2019170105A JP 2021048054 A JP2021048054 A JP 2021048054A
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Yutaka Katagiri
裕 片桐
小松 隆宏
Takahiro Komatsu
隆宏 小松
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Abstract

【課題】光取り出し効率が高く、消費電力が小さい自発光素子を用いた表示パネル、および、表示パネルの製造方法を提供する。【解決手段】基板と、前記基板の上方に配される複数の陽極と、前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、前記発光層の上方に配され、希土類から選択される金属材料を含む機能層と、前記機能層上に接して配され、透光性と導電性とを有する金属酸化物からなる陰極下層と、前記陰極下層上に接して配され、金属膜からなる陰極上層とを備え、前記機能層の膜厚は10nm以上40nm以下であり、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とは、150nm以上離隔している表示パネル。【選択図】図1

Description

本開示は、電界発光現象や量子ドット効果を利用した自発光素子を備える表示パネル、および、その製造方法に関し、特に、共振器構造を有する自発光素子に関する。
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL素子、量子ドット効果を利用したQLEDなどの自発光素子を利用した表示装置が普及しつつある。
自発光素子は、一対の電極(陽極および陰極)間に、少なくとも発光層が挟まれた構造を有している。そして、自発光素子は、多くの場合、発光層の他に、発光層に電子を供給するための機能層(電子輸送層、電子注入層)が発光層と陰極との間にさらに挟まれた構成を有している。
自発光素子において、消費電力の低減や長寿命化の観点から、各色発光素子から光取り出し効率を向上させることも望まれている。この光取り出し効率を向上させるために、例えば特許文献1に示されるように、自発光素子たる各色の有機EL素子において、共振器構造を採用する技術も知られている。
国際公開第2012/020452号
しかしながら、共振器構造により1次光干渉を利用して光を取り出す場合、自発光素子において、陽極の発光層側の界面と、陰極の発光層側の界面との距離は、取り出す光の波長に対応した所定の範囲内である必要がある。そのため、発光層や機能層の膜厚を最適化すると、陽極の発光層側の界面と陰極の発光層側の界面との距離が近いため所定の範囲を外れ、光取り出し効率が十分に向上しないことがある。一方で、発光層の膜厚を大きくすると駆動電圧の上昇を招き、自発光素子の消費電力が増加する。また、透光性電極が陰極である場合、電子注入層等の膜厚を大きくすると、電子注入性を向上させるための金属による光吸収により光取り出し効率の低下が引き起こされることとなる。
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、光取り出し効率が高く、消費電力が小さい自発光素子を用いた表示パネル、および、表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示パネルは、基板と、前記基板の上方に配される複数の陽極と、前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、前記発光層の上方に配され、希土類から選択される金属材料を含む機能層と、前記機能層上に接して配され、透光性と導電性とを有する金属酸化物からなる陰極下層と、前記陰極下層上に接して配され、金属膜からなる陰極上層とを備え、前記機能層の膜厚は10nm以上40nm以下であり、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とは、150nm以上離隔していることを特徴とする。
上記形態の表示パネルによれば、上記構成により、光透過性の高い陰極下層の膜厚の設計自由度が高いため、各機能層の膜厚を最適化しながら光取り出し効率の高い共振器構造を実現することができる。さらに、酸化物からなる陰極下層と接触する機能層に含まれる金属が希土類であるため、陰極下層による金属の酸化を抑止することができ、機能層の光透過性を高く保ったまま発光層への電子注入性を高めることができる。したがって、各自発光素子の発光効率を容易に高めることが可能となる。
実施の形態1に係る有機EL素子1の構成を模式的に示す断面図である。 有機EL素子1に形成された光共振器構造における光の干渉について説明する模式断面図である。 有機EL素子1から取り出される光の輝度値/Yの値と、発光層17の陽極側の面〜対向電極第1層20と対向電極第2層21との界面までの膜厚との関係を示すグラフである。 実施例および比較例における、電子注入輸送層19の膜厚と有機EL素子1の消費電力との関係を示すグラフであり、(a)は赤色有機EL素子、(b)は緑色有機EL素子、(c)は青色有機EL素子に関する。 (a)は実施例に係る有機EL素子の模式断面図であり、(b)は比較例に係る有機EL素子の模式断面図である。 実施例および比較例における有機EL素子の特性を示すグラフであり、(a)は電圧が一定の場合におけるドープ金属の濃度と電流値との関係、(b)はドープ濃度と発光効率との関係、(c)は電流値と発光効率との関係を示す。 実施の形態1に係る有機EL表示パネルの製造過程を示すフローチャートである。 実施の形態1に係る有機EL表示パネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基板上にTFT層が形成された状態、(b)は、基板上に層間絶縁層が形成された状態、(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料が形成された状態、(d)は、画素電極が形成された状態、(e)は、層間絶縁層および画素電極上に隔壁材料層が形成された状態を示す。 実施の形態1に係る有機EL表示パネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、隔壁が形成された状態、(b)は、画素電極上に正孔注入層が形成された状態、(c)は、正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態、(d)は、正孔注入層上に発光層が形成された状態を示す。 実施の形態1に係る有機EL表示パネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、発光層および隔壁上に中間層が形成された状態、(b)は中間層上に電子注入輸送層が形成された状態、(c)は、電子注入輸送層上に対向電極第1層が形成された状態、(d)は、対向電極第1層上に対向電極第2層および封止層が形成された状態を示す。 実施の形態2に係る有機EL素子の模式断面図である。 実施の形態に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
≪本開示の一態様に至った経緯≫
発光素子の光取り出し効率を向上するための手段として、光共振器構造が知られている。図2は、画素電極が光反射性電極、対向電極が光透過性電極で構成される、いわゆるトップエミッション型の自発光素子における共振器構造を示す模式断面図である。光共振器構造では、発光中心から直接的に放出される経路C1を経由する光と、発光中心から光反射性電極で反射されて放出される経路C2を経由する光や発光中心から光透過性電極、光反射性電極の順に反射されて放出される経路C3を経由する光が互いに強め合うように光路長を調整する。このとき、経路C2と経路C1との光路長差はL1の光路長(屈折率を経路長で積分した値)に依存し、経路C3と経路C1との光路長差はL3の光路長(=L1の光路長+L2の光路長)に依存する。光が強め合う条件について光路長差の短い順から0次干渉、1次干渉、…、としたとき、0次光干渉を実現するためには、光透過性電極から発光層までのL2の実経路長はおよそ20nmとする必要がある。しかしながら、機能層の膜厚が十分でないと、発光層へのキャリア(電子または正孔)の注入性が不十分となるため駆動電圧が上昇し、消費電力が増加する原因となる。一方で、1次光干渉を実現するためには、光透過性電極から発光層までのL2の実経路長はおよそ110nmとする必要がある。しかしながら、発光層を厚膜化した場合、抵抗値が上昇し消費電力の上昇を招くこととなる。また、光透過性電極が陰極の場合には、発光層と光透過性電極との間に電子注入性を有する機能層や電子輸送層を有する機能層が介在することとなるが、これらの厚膜化は光取り出し効率の低下を招くこととなる。(以下、説明の簡略化のため、「電子注入性を有する機能層」を「電子注入層」と呼ぶ。なお、「電子注入層」は他の機能を兼ね備えていてもよく、「電子注入層」が他の機能を有する機能層と物理的に同一の層であってもよい。)特に、電子注入性の材料としては仕事関数の小さい金属材料が適しており、従来、アルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられるが、これらの材料は可視光を吸収する性質がある。したがって、電子注入層を厚膜化すると、光透過性の低下による光取り出し効率の低下が発生しやすい。
そこで、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透光性導電膜の厚膜を光透過性電極の構成要素とし、透光性導電膜の発光層から遠い側の面(外側面)を共振器構造の反射層とする構成を用いることが考えられる。しかしながら、発明者らは、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む電子注入層の直上にITOやIZOなどの酸化物透光性導電膜を形成した場合に、光取り出し効率の向上が十分と言えないことがある課題を発見した。ITOやIZOなどの透光性導電膜を形成する際、一般的に蒸着法、スパッタリング法などの気相成長法を用いるが、酸化物の膜を形成するため、酸素雰囲気が用いられたり、酸化物の微粒子が電子注入層の表面に付着したり、電子注入層の内部に侵入したりすることがある。一方で、アルカリ金属やアルカリ土類金属は活性が高く、酸素雰囲気に曝されたり酸化物と接触したりするとその一部が酸化される。しかしながら、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む電子注入層は金属原子の酸化数が0である状態で電子注入性を発揮するため、金属原子が酸化されてカチオンとなると電子注入性を失う。つまり、電子注入層の直上に酸化物透光性導電膜を形成した場合に、電子注入層中のアルカリ金属やアルカリ土類金属の一部が酸化されるため、電子注入層中の金属濃度にむらが生じる、濃度に対して電子注入性が低いため、適切な濃度範囲や膜厚範囲が狭い、という課題があることを発明者らは発見した。
発明者らは、上記課題に鑑みて、発光効率を向上させるとともに、電子注入性を有する機能層の適正範囲を広範囲化する構成について検討し、本開示に至ったものである。
≪開示の態様≫
本開示の一態様に係る表示パネルは、基板と、前記基板の上方に配される複数の陽極と、前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、前記発光層の上方に配され、希土類から選択される金属材料を含む機能層と、前記機能層上に接して配され、透光性と導電性とを有する金属酸化物からなる陰極下層と、前記陰極下層上に接して配され、金属膜からなる陰極上層とを備え、前記機能層の膜厚は10nm以上40nm以下であり、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とは、150nm以上離隔していることを特徴とする。
また、本開示の一態様に係る表示パネルの製造方法は、基板を準備し、前記基板の上方に複数の陽極を形成し、前記複数の陽極のそれぞれの上方に発光層を形成し、前記発光層の上方に、希土類から選択される金属材料を含む機能層を形成し、前記機能層上に接するように、透光性と導電性とを有する金属酸化物を用いて陰極下層を形成し、前記陰極下層上に接するように、金属膜を陰極上層として形成し、前記機能層の形成において、前記機能層の膜厚を10nm以上40nm以下とし、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とを、150nm以上離隔させることを特徴とする。
上記態様の表示パネル、または、上記態様の製造方法によれば、光透過性の高い陰極下層の膜厚の設計自由度が高いため、各機能層の膜厚を最適化しながら光取り出し効率の高い共振器構造を実現することができる。さらに、酸化物からなる陰極下層と接触する機能層に含まれる金属が希土類であるため、陰極下層による金属の酸化を抑止することができ、機能層の光透過性を高く保ったまま発光層への電子注入性を高めることができる。したがって、各自発光素子の発光効率を容易に高めることが可能となる。
また、上記態様に係る表示パネル、または、上記態様の製造方法において、以下のようにしてもよい。
前記機能層における前記金属材料の濃度は、3wt%以上60wt%以下である、としてもよい。
また、前記機能層の形成において、前記金属材料の濃度を3wt%以上60wt%以下とする、としてもよい。
これにより、金属材料の濃度を低くしても電子注入性が保つことができ、金属材料の濃度を高くしても電子注入性の向上により光透過率の低下をカバーできるため、金属材料の濃度の適正範囲が広く、各自発光素子の発光効率を高めたままの設計自由度が向上する。
また、前記金属材料は、イッテルビウムである、としてもよい。
また、前記機能層の形成において、前記金属材料としてイッテルビウムを用いる、としてもよい。
これにより、酸化による金属材料の劣化が起こりにくく電子注入性を高く維持することができる。
また、前記陰極下層の材料は、ITOまたはIZOである、としてもよい。
また、前記陰極下層の形成において、ITOまたはIZOを材料として用いる、としてもよい。
これにより、陰極下層の透光性と導電性をいずれも高くすることができる。
また、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とに囲まれる領域が、前記両面を反射面とする光共振器を構成している、としてもよい。
また、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とに囲まれる領域を、前記両面を反射面とする光共振器として構成する、としてもよい。
これにより、陰極下層および陰極下層と陽極との間に存在する機能層の膜厚調整により光共振器を構成できるため、発光効率を低下させることなく容易に光共振器を実現できる。
また、前記発光層は、塗布膜である、としてもよい。なお、本出願において、「塗布膜」とは、当該膜の材料を含むインクを塗布して乾燥することで形成された膜を指す。
また、前記発光層の形成において、前記発光層の材料を含むインクの塗布により前記発光層を形成する、としてもよい。
これにより、発光層の膜厚を容易に制御することができ、発光層の膜厚制御により発光効率を高く保ったまま光共振器構造を容易に実現できる。
また、前記機能層の前記発光層側の面に接する、アルカリ金属の化合物を含む中間層をさらに備える、としてもよい。
また、前記機能層の形成の前に、前記機能層の前記発光層側の面に接するように、アルカリ金属の化合物を用いて中間層をさらに形成する、としてもよい。
これにより、機能層の発光層側からの溶媒等の浸入を抑止することができるとともに、機能層から中間層に電子を注入することで中間層を発光層への電子注入層として機能させることができる。
また、前記発光層は、第1発光層と、前記第1発光層とは異なる陽極上方に配され発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層とを含み、前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚は、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚より大きい、としてもよい。
また、前記発光層の形成において、前記複数の陽極から選択される第1陽極の上方に第1発光層を形成し、前記第1陽極とは異なる陽極の上方に、発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層を形成し、前記機能層の形成において、前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚を、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚より大きくする、としてもよい。
これにより、発光色の異なる自発光素子の間で機能層の膜厚を異ならせることで、それぞれの自発光素子の発光波長に応じた共振器構造を実現することができる。
また、前記複数の前記発光層は、第1発光層と、前記第1発光層とは異なる陽極上方に配され発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層とを含み、前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚は、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚と等しい、としてもよい。
また、前記発光層の形成において、前記複数の陽極から選択される第1陽極の上方に第1発光層を形成し、前記第1陽極とは異なる陽極の上方に、発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層を形成し、前記機能層の形成において、前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚を、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚と等しくする、としてもよい。
これにより、発光色の異なる自発光素子の間でも機能層の膜厚を等しくすることで、共通層としての成膜が容易な機能層の製造工程を単純化させることができる。
本開示の他の一態様に係る表示パネルは、基板と、前記基板の上方に配される複数の陽極と、前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、前記複数の発光層の上方に配され、希土類から選択される金属材料を含む機能層と、前記機能層上に接して配され、透光性と導電性とを有する金属酸化物からなる陰極と、前記陰極上に接して配され、前記陰極より屈折率が低い低屈折率層とを備え、前記機能層の膜厚は10nm以上40nm以下であり、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とは、150nm以上離隔していることを特徴とする。
また、本開示の他の一態様に係る表示パネルの製造方法は、基板を準備し、前記基板の上方に複数の陽極を形成し、前記複数の陽極のそれぞれの上方に発光層を形成し、前記発光層の上方に、希土類から選択される金属材料を含む機能層を形成し、前記機能層上に接するように、透光性と導電性とを有する金属酸化物を用いて陰極を形成し、前記陰極上に接するように、前記陰極より屈折率が低い低屈折率層を形成し、前記機能層の形成において、前記機能層の膜厚を10nm以上40nm以下とし、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とを、150nm以上離隔させることを特徴とする。
上記態様の表示パネル、または、上記態様の製造方法によっても、本開示の一態様に係る表示パネルまたはその製造方法と同様の効果を得ることができる。
また、上記態様に係る表示パネル、または、上記態様の製造方法において、以下のようにしてもよい。
前記低屈折率層は絶縁性の無機材料で形成される、としてもよい。
また、前記低屈折率層の形成において、絶縁性の無機材料を前記低屈折率層の材料として用いる、としてもよい。
これにより、低屈折率層が電気的に自発光素子の外部である構成であっても、本開示の一態様に係る表示パネルまたはその製造方法と同様の効果を得ることができる。
≪実施の形態1≫
以下、本開示に係る自発光素子としての有機EL素子を備える表示パネルについて説明する。なお、以下の説明は、本発明の一態様に係る構成及び作用・効果を説明するための例示であって、本発明の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。
1.有機EL素子の構成
図1は、実施の形態1に係る表示パネルとしての有機EL表示パネル100(図12参照)の部分断面図である。有機EL表示パネル100は、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)で構成される画素を複数備えている。すなわち、有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)のそれぞれがサブ画素を構成し、発光色の異なる複数のサブ画素の集合が画素となる。図1では、その1つの画素の断面を示している。
有機EL表示パネル100において、各有機EL素子1は、前方(図1における紙面上方)に光を出射するいわゆるトップエミッション型である。
有機EL素子1(R)と、有機EL素子1(G)と、有機EL素子1(B)は、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子1として説明する。
図1に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁14、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、中間層18、電子注入輸送層19、対向電極第1層20、対向電極第2層21、および、封止層22を備える。画素電極13、対向電極第1層20、対向電極第2層21は、それぞれ、本開示の陽極、陰極下層、陰極上層に相当する。また、電子注入輸送層19は、本開示の機能層に相当する。
なお、基板11、層間絶縁層12、中間層18、電子注入輸送層19、対向電極第1層20、対向電極第2層21、および、封止層22は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル100が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
<基板>
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、サブ画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSu)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。これらよりプロセス温度に対して耐久性を有するように選択し、1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
<層間絶縁層>
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。また、図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、サブ画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
<画素電極>
画素電極13は層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素ごとに設けられ、層間絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施形態においては、画素電極13は、光反射性の陽極として機能する。
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
<隔壁>
隔壁14は、画素電極13の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極13上に形成されている。画素電極13上面において隔壁14で被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブピクセルに対応している。すなわち、隔壁14は、サブピクセルごとに設けられた開口部14aを有する。
本実施の形態においては、隔壁14は、画素電極13が形成されていない部分においては、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、画素電極13が形成されていない部分においては、隔壁14の底面は層間絶縁層12の上面と接している。
隔壁14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。隔壁14は、発光層17を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、発光層17を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。本実施の形態では、隔壁14は、樹脂材料からなり、隔壁14の材料としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。本実施の形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
<正孔注入層>
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔(ホール)の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15の材料の具体例としては、例えば、PEDOT/PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料が挙げられる。
なお、正孔注入層15は、遷移金属の酸化物で形成してもよい。遷移金属の具体例としては、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などである。遷移金属は複数の酸化数を取るため、複数の準位を取ることができ、その結果、正孔注入が容易になり、駆動電圧の低減に寄与するからである。この場合、正孔注入層15は、大きな仕事関数を有することが好ましい。
なお、正孔注入層15は、遷移金属の酸化物上に導電性ポリマー材料を積層した積層構造であってもよい。
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有し、正孔を正孔注入層15から発光層17へと効率よく輸送するため、正孔移動度の高い有機材料で形成されている。正孔輸送層16の形成は、有機材料溶液の塗布および乾燥により行われる。正孔輸送層16を形成する有機材料としては、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物を用いることができる。
また、正孔輸送層16はトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンゼン誘導体を用いて形成されてもよい。特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物等を用いてもよい。この場合、正孔輸送層16は、真空蒸着法により形成される。なお、正孔輸送層16の材料および製造方法は上述のものに限られず、正孔輸送機能を有する任意の材料を用いてよく、正孔輸送層16の製造に用いることのできる任意の製造方法で形成されてよい。
<発光層>
発光層17は、開口部14a内に形成されている。発光層17は、正孔と電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては、公知の材料を利用することができる。
自発光素子1が有機EL素子である場合、発光層17に含まれる有機発光材料としては、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質を用いることができる。また、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の公知の燐光物質を用いることができる。また、発光層17は、ポリフルオレンやその誘導体、ポリフェニレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物等、もしくは前記低分子化合物と前記高分子化合物の混合物を用いて形成されてもよい。なお、自発光素子1は量子ドット発光素子(QLED;Quantum-dot Light Emitting Diode)であってもよく、発光層17の材料として量子ドット効果を有する材料を使用することができる。
<中間層>
中間層18は、発光層17上に形成されており、電子注入性を有する金属材料のフッ化物またはキノリニウム錯体を含む。金属材料としては、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属から選択される。アルカリ金属は、具体的には、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Rb(ルビジウム)、Cs(セシウム)、Fr(フランシウム)である。また、アルカリ土類金属は、具体的には、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)である。本実施の形態では、NaF(フッ化ナトリウム)を含む。
<電子注入輸送層>
電子注入輸送層19は、中間層18上に形成されており、電子輸送性を有する有機材料に、電子注入性を向上させる金属材料がドープされてなる。ここで、ドープとは、金属材料の金属原子または金属イオンを有機材料中に略均等に分散させることを指し、具体的には、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相を形成することを指す。なお、それ以外の相、特に、金属片や金属膜など、金属材料のみからなる相、または、金属材料を主成分とする相は、存在していないことが好ましい。また、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相において、金属原子または金属イオンの濃度は均一であることが好ましく、金属原子または金属イオンは凝集していないことが好ましい。金属材料としては、希土類金属から選択されることが好ましく、Yb(イッテルビウム)がより好ましい。本実施の形態では、Ybが選択される。また、電子注入輸送層19における金属材料のドープ量は3〜60wt%が好ましい。本実施の形態では、20wt%である。
電子輸送性を有する有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
なお、図1では電子注入輸送層19は均一な膜厚の共通膜であるとしたが、有機EL素子1(R)、有機EL素子1(G)、有機EL素子1(B)で膜厚を変えてもよい。好ましくは、発光波長の長い有機EL素子1(R)における膜厚が最も大きく、発光波長の短い有機EL素子1(B)における膜厚が最も小さい。
<対向電極第1層>
対向電極第1層20は、透光性の導電性材料からなり、電子注入輸送層19上に形成されている。本実施の形態においては、対向電極第1層20は、陰極の一部として機能する。
対向電極第1層20は、発光層17より出射された光の透過率が、電子注入輸送層19より高いことが好ましい。対向電極第1層20の材料としては、例えば、ITOやIZOなどを用いることができる。本実施の形態では、ITOが用いられている。
なお、対向電極第2層21の対向電極第1層20との界面は共振器構造における光反射面を形成している。したがって、対向電極第1層20の屈折率は電子注入輸送層19の屈折率と近いことが好ましく、また、対向電極第2層21の屈折率とは異なっていることが好ましい。
なお、図1では対向電極第1層20は均一な膜厚の共通膜であるとしたが、有機EL素子1(R)、有機EL素子1(G)、有機EL素子1(B)で膜厚を変えてもよい。好ましくは、発光波長の長い有機EL素子1(R)における膜厚が最も大きく、発光波長の短い有機EL素子1(B)における膜厚が最も小さい。
<対向電極第2層>
対向電極第2層21は、透光性の導電性材料からなり、対向電極第1層20上に形成されている。本実施の形態においては、対向電極第2層21は、対向電極第1層20とともに陰極として機能する。
対向電極第2層21の対向電極第1層20との界面の光反射面は、画素電極13の正孔注入層15との界面の光反射面と対となって共振器構造を形成する。したがって、発光層17から出射された光が、対向電極第1層20から対向電極第2層21へと入射する際にその一部が対向電極第1層20へと反射される必要がある。したがって、対向電極第2層21と対向電極第1層20との間で、屈折率が異なっていることが好ましい。したがって、対向電極第2層21は、金属薄膜が好ましい。透光性を確保するため、金属層の膜厚は1nm〜50nm程度である。
対向電極第2層21の材料としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム−銀合金(MgAg)、インジウム−銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。Al合金としては、マグネシウム−アルミニウム合金(MgAl)、リチウム−アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金が挙げられる。
<封止層>
封止層22は、発光層17、中間層18、電子注入輸送層19などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
本実施の形態においては、有機EL表示パネル100がトップエミッション型であるため、封止層22は光透過性の材料で形成されることが必要となる。
<その他>
なお図1には示されないが、封止層22の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔輸送層16、発光層17、中間層18、電子注入輸送層19を水分および空気などから保護できる。
2.光共振器構造
図2は、本実施の形態に係る有機EL素子1の光共振器構造における光の干渉を説明する図である。光共振器構造は、画素電極13との正孔注入層15との界面と、対向電極第2層21の対向電極第1層20との界面との間に構成される。発光層17は、共振器構造の内側に存在することとなる。
図2には、発光層17から出射される光の主な経路を示している。経路C1は、発光層17から対向電極第2層21側に出射された光が、反射されることなく対向電極第2層21を透過する経路である。経路C2は、発光層17から画素電極13側に出射された光が、画素電極13で反射され、発光層17と対向電極第2層21を透過する経路である。経路C3は、発光層17から対向電極第2層21側に出射された光が、対向電極第2層21で反射され、さらに画素電極13で反射され、発光層17と対向電極第2層21を透過する経路である。そして、これら経路C1〜C3のそれぞれの経路により出射された光の間で干渉が生じる。
経路C1と経路C2の光学距離の差は、図2に示す光学膜厚L1に対応する。光学膜厚L1は、発光層17から画素電極13の正孔注入層15との界面までの、正孔輸送層16、正孔注入層15の合計の光学距離(各膜における膜厚と屈折率との積の合計値)である。
また、経路C2と経路C3との光学距離の差は、図2に示す光学膜厚L2に対応する。光学膜厚L2は、発光層17から対向電極第2層21の対向電極第1層20との界面までの、中間層18、電子注入輸送層19と対向電極第1層20の光学距離(各膜における膜厚と屈折率との積の合計値)である。
また、経路C1と経路C3の光学距離の差は、図2に示す光学膜厚L3に対応する。光学膜厚L3は、光学膜厚L1と光学膜厚L2との合計である。
光共振器構造では、経路C1、経路C2、経路C3のそれぞれの経路により出射された光が強め合うように、光学膜厚L1、L2、L3のそれぞれを設定する。このとき、各光学膜厚L1、L2、L3において、光取り出し効率が極大となる光学膜厚は、図3のグラフに示すように、0次干渉ピークだけでなく1次干渉ピークも存在する。図3は、光学膜厚と、取り出される光の輝度/y値の特性を示したものであり、輝度/y値とは、有機EL素子から取り出される光の輝度と、xy色度のy値との比である。本実施の形態では、光学膜厚L2を、1次光干渉ピークとなる距離、または、その近傍に設定する。これは、光取り出し効率が極大となる光学膜厚において、取り出される光の色度が必ずしも所望の色度とはならない場合があり、カラーフィルタによる補正が必要となった結果、カラーフィルタ通過後の光取り出し効率が低下することがあるからである。したがって、本実施の形態では、対向電極第2層21と発光層17との距離は、およそ150nm以上となる。なお、光共振器構造全体の大きさ、すなわち、対向電極第2層21の対向電極第1層20との界面と、画素電極13の正孔注入層15との界面との距離は、当然に150nm以上となる。
3.電子注入輸送層の膜厚
(3.1)ドープ金属に依存しない傾向
図4は、電子注入輸送層19の膜厚と有機EL素子1の消費電力との関係を示すグラフである。ここで、電子注入輸送層19にドープされている金属は、実施例では図5(a)の断面図に示すとおりにYb(イッテルビウム)であり、比較例では図5(b)の断面図に示すとおりにBa(バリウム)であり、ドープ濃度はいずれも20wt%である。なお、図4(a)は有機EL素子1(R)、図4(b)は有機EL素子1(G)、図4(c)は有機EL素子1(B)、のそれぞれの場合を示している。なお、消費電力は比較例(Baドープ)における最小値を1とした相対値で示している。
実施例、比較例のいずれにおいても、電子注入輸送層19の膜厚が、有機EL素子1(B)では35nm以上において、有機EL素子1(R)および有機EL素子1(G)では20nm以上において、電子注入輸送層19の膜厚が大きくなるほど消費電力が増加している。この理由としては、ドープ金属(YbおよびBa)による可視光の吸収は電子注入輸送層19の膜厚が大きいほど強くなるため、光取り出し効率が低下したためと考えられる。
また、実施例、比較例のいずれにおいても、電子注入輸送層19の膜厚が、有機EL素子1(B)では35nm以下において、有機EL素子1(R)および有機EL素子1(G)では20nm以下において、電子注入輸送層19の膜厚が小さくなるほど消費電力が増加している。この理由としては、ドープ金属(YbおよびBa)による発光層17への電子注入性は電子注入輸送層19の膜厚が小さいほど弱くなるため、駆動電圧の上昇が発生したためと考えられる。
したがって、実施例、比較例のいずれにおいても、電子注入輸送層19の膜厚は、電子注入性が十分であり、かつ、可視光の吸収が十分に小さい範囲が最適範囲となる。具体的には、比較例においては、有機EL素子1(R)では15nm〜35nm、有機EL素子1(G)では15nm〜40nm、有機EL素子1(B)では10nm〜60nmが最適範囲となる。これに対し、実施例においては、有機EL素子1(R)では10nm〜40nm、有機EL素子1(G)では10nm〜50nm、有機EL素子1(B)では10nm〜70nmが最適範囲となる。すなわち、実施例では比較例に対し最適範囲が広い。
(3.1)ドープ金属における特性の違い
図6は、EOD(Electron Only Device)実施例とEOD比較例との特性の違いを示すグラフである。EOD実施例は、図5(a)に示す実施例に対して正孔注入層15と正孔輸送層16を備えない構成を有する。同様に、EOD比較例は、図5(b)に示す比較例に対して正孔注入層15と正孔輸送層16を備えない構成を有する。すなわち、EOD実施例とEOD比較例とは画素電極13から発光層17への正孔注入性が略同一とみなせるため、駆動電圧や発光効率等の特性の違いは陰極20/21から発光層17への電子注入性に強く依存する。
図6(a)は、EOD実施例およびEOD比較例における、Ybドープ濃度またはBaドープ濃度と、同一の駆動電圧を与えたときの電流値との関係を示すグラフである。なお、図中の数値はYbドープ濃度またはBaドープ濃度を重量百分率(wt%)で示した値であり、図の横軸はYbドープ濃度またはBaドープ濃度を質量当たりの原子数(mol/g)で示した値に対応する。図6(a)に示すように、EOD実施例ではEOD比較例に比べ、ドープ濃度に対する電流依存度が高く、かつ、電流値が大きい。
図6(b)は、EOD実施例およびEOD比較例における、Ybドープ濃度またはBaドープ濃度と、発光効率との関係を示すグラフである。図6(b)に示すように、発光効率自体は、EOD実施例とEOD比較例との間に有意な差は見いだせない。
図6(c)は、EOD実施例およびEOD比較例における、同一の駆動電圧を与えたときの電流値と、発光効率との関係を示すグラフである。図6(c)に示すように、EOD実施例では電流値が大きいため、同一の電圧に対する発光効率はEOD比較例と比べて大きく改善する。
以上の結果から、電子注入輸送層19のドープ金属としてYbを使用する構成が、電子注入輸送層19のドープ金属としてBaを使用する構成と比べて電子注入性が高く、駆動電圧低減による発光効率の向上が図れる構成であることが明らかとなった。なお、この理由としては、以下のように考えることができる。BaはYbと比べて反応性が高いため、酸化雰囲気内ではBaは酸化されてBaOやBa(OH)2に変化しやすい。図5(b)に示すように、電子注入輸送層191直上にはITOからなる対向電極第1層20が形成されるが、一般にITOはスパッタリングにより成膜される。そうすると、対向電極第1層20の成膜時においてITOの微粒子が電子注入輸送層191内に入り込むため、ITOとBaが反応し、Baが酸化されるものと考えられる。すなわち、Baの一部が酸化されることにより、電子注入性の金属として機能するBaの割合が低下する。これに対し、YbはBaほど反応性が高くないため、Ybの酸化はほとんど進まず、電子注入性の金属として機能するYbの割合が高く維持されるものと考えられる。
4.中間層、透光性導電層の膜厚
中間層18の膜厚は、電子注入性の向上と有機EL素子1の駆動電圧の低下の両立が図れることが好ましく、1nm〜10nmが好適である。中間層18の膜厚が1nm〜10nmの範囲であることで、発光層17への電子注入性を担保しつつ、駆動電圧の上昇を抑止することができる。
対向電極第1層20の膜厚は、中間層18、電子注入輸送層19、対向電極第1層20の光学距離が、設定された光学膜厚L2となるように設計される。すなわち、中間層18の膜厚をt1、屈折率をn1、電子注入輸送層19の膜厚をt2、屈折率をn2、対向電極第1層20の膜厚をt3、屈折率をn3としたとき、n11+n22+n33が設計膜厚L2となるように、対向電極第1層20の膜厚t3が定められる。したがって、対向電極第1層20の膜厚は、設計膜厚L2を実現するために必要な残りの光学距離に応じて設計される。
5.小括
以上説明したように、実施の形態に係る表示パネルによれば、透光性導電層の形成による電子注入層の金属の酸化を抑止することができる。したがって、実施の形態に係る表示パネルでは、電子注入層の金属ドープ量を低くしても電子注入性が確保でき発光効率を向上できる一方で、金属ドープ量を高くしても電子注入性が高いことによる高い発光効率によって光吸収の影響を受けづらい。さらに、実施の形態に係る表示パネルでは、発光層への電子注入性が高いため発光素子の駆動電圧を下げることができ、消費電力を抑えることができる。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む電子注入層では透光性導電層に近い領域ほど金属が酸化されやすく金属濃度にむらが生じやすいところ、実施の形態に係る表示パネルによれば、希土類金属の濃度が低くても金属濃度のむらが生じづらいため、電子注入層の金属濃度を低くし可視光の透過率を高める構成を容易に実現することができる。したがって、電子注入層の金属ドープ量や膜厚の適正範囲が広く、光共振器構造を実現しつつ、他の機能層の膜厚の最適化による発光効率の向上を図ることができる。
6.有機EL素子の製造方法
有機EL素子1の製造方法について、図面を用い説明する。図7は、有機EL素子1の製造工程を示すフローチャートである。図8(a)〜(e)、図9(a)〜(d)、図10(a)〜(d)は、有機EL素子1の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。
(1)基板11の形成
まず、図8(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成し、(ステップS10)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
(2)層間絶縁層12の形成
次に、図8(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(ステップS20)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するように形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
(3)画素電極13の形成
次に、図8(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
次に、図8(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極13を形成する(ステップS30)。
(4)隔壁14の形成
次に、図8(e)に示すように、画素電極13および層間絶縁層12上に、隔壁14の材料である隔壁層用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで隔壁14を形成し(図9(a))、隔壁14を焼成する(ステップS40)。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。隔壁14の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
また、隔壁14の形成工程においては、さらに、隔壁14の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部14aに塗布するインク(溶液)に対する隔壁14の接触角を調節する目的で、もしくは、表面に撥水性を付与する目的で行われる。
(5)正孔注入層15の形成
次に、図9(b)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔注入層15の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド410のノズル401から吐出して開口部14a内の画素電極13上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔注入層15を形成する(ステップS50)。
なお、正孔注入層15の成膜は塗布方式に限られず、蒸着等の方法により形成してもよい。さらに、正孔注入層15の成膜を蒸着やスパッタリングで行う場合には、ステップ30における画素電極材料層130の形成後、画素電極材料層130上に正孔注入層15の材料からなる正孔注入材料層を形成し、画素電極材料層130と正孔注入材料層とを同一のパターニング工程でパターニングして画素電極13と正孔注入層15の積層構造を形成する、としてもよい。
(6)正孔輸送層16の形成
次に、図9(c)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド420のノズル402から吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(ステップS60)。
なお、正孔輸送層16の成膜は塗布方式に限られず、蒸着等の方法により形成してもよい。さらに、画素電極13、正孔注入層15、正孔輸送層16の全ての成膜を蒸着やスパッタリングで行う場合には、上述したように、各層を同一のパターニング工程でパターニングしてもよい。
(7)発光層17の形成
次に、図9(d)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド430Rのノズル403R、インクジェットヘッド430Gのノズル403G、インクジェットヘッド430Bのノズル403Bのそれぞれから吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って発光層17を形成する(ステップS70)。
(8)中間層18の形成
次に、図10(a)に示すように、発光層17および隔壁14上に、中間層18を形成する(ステップS80)。中間層18は、例えば、アルカリ金属のフッ化物であるNaFを真空蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(9)電子注入輸送層19の形成
次に、図10(b)に示すように、中間層18上に、電子注入輸送層19を形成する(ステップS90)。電子注入輸送層19は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属であるイッテルビウムとを共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
なお、図10(b)では、電子注入輸送層19を均一な膜厚の共通膜として形成しているが、発光素子ごとに膜厚を変えてもよい。この場合、例えば、シャドウマスクを用いて、膜厚の大きい有機EL素子1(R)について有機EL素子1(G)との膜厚差分に相当する膜厚の部分層を有機EL素子1(R)に相当する位置に形成し、有機EL素子1(G)について有機EL素子1(B)との膜厚差分に相当する膜厚の部分層を有機EL素子1(R)と有機EL素子1(G)に相当する位置に形成し、最後に有機EL素子1(B)の膜厚に相当する部分層を全体に対して形成する、の手法で形成することができる。なお、部分層の形成の順はこの場合に限られず、任意の順で行うことができる。
(10)対向電極第1層20の形成
次に、図10(c)に示すように、電子注入輸送層19上に、対向電極第1層20を形成する(ステップS100)。対向電極第1層20は、ITOまたはIZOを、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。
なお、図10(c)では、対向電極第1層20を均一な膜厚の共通膜として形成しているが、発光素子ごとに膜厚を変えてもよい。この場合、例えば、シャドウマスクを用いて、膜厚の大きい有機EL素子1(R)について有機EL素子1(G)との膜厚差分に相当する膜厚の部分層を有機EL素子1(R)に相当する位置に形成し、有機EL素子1(G)について有機EL素子1(B)との膜厚差分に相当する膜厚の部分層を有機EL素子1(R)と有機EL素子1(G)に相当する位置に形成し、最後に有機EL素子1(B)の膜厚に相当する部分層を全体に対して形成する、の手法で形成することができる。なお、部分層の形成の順はこの場合に限られず、任意の順で行うことができる。
(11)対向電極第2層21の形成
次に、対向電極第1層20上に、対向電極第2層21を形成する(ステップS110)。対向電極第2層21は、Ag、Al等の金属材料を、スパッタリング法、真空蒸着上により成膜することにより形成される。
(12)封止層22の形成
次に、図10(d)に示すように、対向電極第2層21上に、封止層22を形成する(ステップS120)。封止層22は、SiN、SiONなどを用いて、スパッタリング法、CVD法により形成することができる。
なお、封止層22の上にカラーフィルタや上部基板を載置し、接合してもよい。
6.有機EL表示装置の全体構成
図12は、有機EL表示パネル100を備えた有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。図12に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを含む構成である。駆動制御部200は、4つの駆動回路210〜240と、制御回路250とから構成されている。
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
≪実施の形態2≫
実施の形態1に係る自発光素子としての有機EL素子1では、対向電極(陰極)が対向電極第1層20と対向電極第2層21との2層構造であるとした。しかしながら、有機EL素子1において対向電極第1層20と対向電極第2層21との界面が光反射面として機能すればよく、対向電極第2層21が陰極として機能することは必ずしも必要ではない。
本実施の形態は、陰極側の光反射面を形成する層の電気的特性が実施の形態1とは異なることを特徴とする。
1.電気的構成
図11は、実施の形態2に係る自発光素子としての有機EL素子の模式断面図である。実施の形態2に係る自発光素子では、対向電極第1層20と対向電極第2層21のそれぞれに替えて対向電極20と低屈折率層211を備える点で実施の形態1とは異なる。
<対向電極>
対向電極20は、透光性の導電性材料からなり、電子注入輸送層19上に形成されている。本実施の形態において、対向電極20は、それ単独で陰極として機能する。すなわち、対向電極20は陰極の一部ではなく全部である点についてのみ対向電極第1層20と異なり、物理的特性、電気的特性ともに、対向電極第1層20と同じである。
対向電極第1層20は、発光層17より出射された光の透過率が、電子注入輸送層19より高いことが好ましい。対向電極第1層20の材料としては、例えば、ITOやIZOなどを用いることができる。
<低屈折率層>
低屈折率層211は、透光性の絶縁体からなり、対向電極20上に形成されている。
低屈折率層21の対向電極20との界面の光反射面は、画素電極13の正孔注入層15との界面の光反射面と対となって共振器構造を形成する。したがって、発光層17から出射された光が、対向電極20から低屈折率層211へと入射する際にその一部が対向電極20へと反射される必要がある。したがって、低屈折率層211と対向電極20との間で、屈折率が異なっていることが好ましい。具体的には、ITOの屈折率が約2.0であるため、低屈折率層211の屈折率は、1.7以下であることが好ましい。
また、低屈折率層211の対向電極20との界面が共振器構造を形成する光の反射面となるため、対向電極20と電子注入輸送層19との界面は、低屈折率層211の対向電極20との界面に比べて反射率が低いことが好ましい。したがって、低屈折率層211の屈折率は、電子注入輸送層19の屈折率より低いことが好ましい。
低屈折率層211の材料としては、例えば、酸化シリコン(SiOx)、酸窒化シリコン(SiON)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化リチウム(LiF)などが挙げられる。
なお、低屈折率層211は有機EL素子の電気回路を構成する要素ではないため、電気伝導性を有している必要はなく、絶縁体で構成されてよい。しかしながら、低屈折率層211は、例えば、半導体、または、対向電極20より導電性の低い導電性材料で形成されてもよい。この場合、低屈折率層211と対向電極20とからなる多層構造が陰極として機能することとなる。
≪実施の形態に係るその他の変形例≫
(1)上記各実施の形態においては、電子注入輸送層における希土類金属(イッテルビウム)の濃度が一定であるとしたが、膜厚方向に濃度の変化を設けてもよい。具体的には、例えば、電子注入輸送層のうち、中間層に近い領域と対向電極第1層に近い領域とである膜厚方向の両端の金属濃度が大きく、中央部における金属濃度が小さい構成であってもよい。本構成により、対向電極から電子注入輸送層への電子注入性を向上させ、かつ、中間層の還元を促進して中間層から発光層への電子注入性を向上させる一方で、中央部における希土類金属による光吸収を抑止することができるため、電子注入性を低下させずに光取り出し効率の向上を図ることができる。この場合において、中央部における希土類金属の濃度は0であるとしてもよい。なお、本構成に係る表示パネルの製造においては、電子注入輸送層の成膜において、共蒸着における金属の蒸気圧を制御するとしてもよいし、中央部における希土類金属の濃度を0とする場合には、有機材料と金属の共蒸着、有機材料のみの蒸着、有機材料と金属の共蒸着の順に成膜を行うとしてもよい。
(2)上記実施の形態においては、R、G、Bのそれぞれに発光する3種類の発光層を設けた有機EL表示パネルについて説明したが、発光層の種類は2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。ここで、発光層の種類とは発光層や機能層の膜厚のバリエーションを指すものであり、同一の発光色であっても発光層や機能層の膜厚が異なる場合は、種類が異なる発光層と考えてよい。また、発光層の配置についても、RGBRGB…の配置に限られず、RGBBGRRGB…の配置であってもよいし、画素と画素との間に補助電極層やその他の非発光領域を設けてもよい。
(3)上記実施の形態においては、有機EL素子1において正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17は全て塗布法により形成されるとしたが、他の方法、例えば、蒸着法、スパッタリング法などにより形成されるとしてもよい。
また、正孔注入層15、正孔輸送層16、中間層18、電子注入輸送層19は必ずしも上記実施の形態の構成である必要はない。いずれか1以上を備えないとしてもよいし、さらにほかの機能層を備えていてもよい。例えば、中間層18を備えないとしてもよいし、中間層18に替えて、あるいは、中間層18と発光層17との間に、電子輸送層を備える、としてもよい。
(4)上記実施の形態においては、陰極が対向電極であり、かつ、トップエミッション型の有機EL表示装置であるとした。しかしながら、例えば、陽極が対向電極であり、かつ、ボトムエミッション型の表示装置に本発明を適用してもよい。この場合、陰極第2層、陰極第1層の順に積層された構成である画素電極上に、電子注入輸送層、発光層、の順に積層すればよい。また、例えば、陽極が対向電極であり、トップエミッション型の表示装置、または、陰極が対向電極であり、ボトムエミッション型の表示装置において、1次光干渉を利用するために図2における光学膜厚L1を設計する際に、本発明を適用してもよい。
(5)以上、本開示に係る有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本発明は、光共振器構造を備えた発光素子において、光取り出し効率の向上が高く消費電力が小さい発光素子を製造するのに有用である。
1 有機EL素子(自発光素子)
11 基板
12 層間絶縁層
13 画素電極(陽極)
14 隔壁
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
18 中間層
19 電子注入輸送層(機能層)
20 対向電極第1層(陰極下層)、対向電極(陰極)
21 対向電極第2層(陰極上層)
211 低屈折率層
22 封止層
100 有機EL表示パネル(表示パネル)
200 駆動制御部
210〜240 駆動回路
250 制御回路
1000 有機EL表示装置

Claims (22)

  1. 基板と、
    前記基板の上方に配される複数の陽極と、
    前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、
    前記発光層の上方に配され、希土類から選択される金属材料を含む機能層と、
    前記機能層上に接して配され、透光性と導電性とを有する金属酸化物からなる陰極下層と、
    前記陰極下層上に接して配され、金属膜からなる陰極上層と
    を備え、
    前記機能層の膜厚は10nm以上40nm以下であり、
    前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とは、150nm以上離隔している
    ことを特徴とする表示パネル。
  2. 前記機能層における前記金属材料の濃度は、3wt%以上60wt%以下である
    ことを特徴とする請求項1の表示パネル。
  3. 前記金属材料は、イッテルビウムである
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネル。
  4. 前記陰極下層の材料は、ITOまたはIZOである
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示パネル。
  5. 前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とに囲まれる領域が、前記両面を反射面とする光共振器を構成している
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表示パネル。
  6. 前記発光層は、塗布膜である
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の表示パネル。
  7. 前記機能層の前記発光層側の面に接する、アルカリ金属の化合物を含む中間層をさらに備える
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の表示パネル。
  8. 前記発光層は、第1発光層と、前記第1発光層とは異なる陽極上方に配され発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層とを含み、
    前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚は、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚より大きい
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の表示パネル。
  9. 前記複数の前記発光層は、第1発光層と、前記第1発光層とは異なる陽極上方に配され発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層とを含み、
    前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚は、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚と等しい
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の表示パネル。
  10. 基板と、
    前記基板の上方に配される複数の陽極と、
    前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、
    前記複数の発光層の上方に配され、希土類から選択される金属材料を含む機能層と、
    前記機能層上に接して配され、透光性と導電性とを有する金属酸化物からなる陰極と、
    前記陰極上に接して配され、前記陰極より屈折率が低い低屈折率層と
    を備え、
    前記機能層の膜厚は10nm以上40nm以下であり、
    前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とは、150nm以上離隔している
    ことを特徴とする表示パネル。
  11. 前記低屈折率層は絶縁性の無機材料で形成される
    ことを特徴とする請求項10に記載の表示パネル。
  12. 基板を準備し、
    前記基板の上方に複数の陽極を形成し、
    前記複数の陽極のそれぞれの上方に発光層を形成し、
    前記発光層の上方に、希土類から選択される金属材料を含む機能層を形成し、
    前記機能層上に接するように、透光性と導電性とを有する金属酸化物を用いて陰極下層を形成し、
    前記陰極下層上に接するように、金属膜を陰極上層として形成し、
    前記機能層の形成において、前記機能層の膜厚を10nm以上40nm以下とし、
    前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とを、150nm以上離隔させる
    ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
  13. 前記機能層の形成において、前記金属材料の濃度を3wt%以上60wt%以下とする
    ことを特徴とする請求項12の表示パネルの製造方法。
  14. 前記機能層の形成において、前記金属材料としてイッテルビウムを用いる
    ことを特徴とする請求項12または13に記載の表示パネルの製造方法。
  15. 前記陰極下層の形成において、ITOまたはIZOを材料として用いる
    ことを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
  16. 前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とに囲まれる領域を、前記両面を反射面とする光共振器として構成する
    ことを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
  17. 前記発光層の形成において、前記発光層の材料を含むインクの塗布により前記発光層を形成する
    ことを特徴とする請求項12から16のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
  18. 前記機能層の形成の前に、前記機能層の前記発光層側の面に接するように、アルカリ金属の化合物を用いて中間層をさらに形成する
    ことを特徴とする請求項12から17のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
  19. 前記発光層の形成において、前記複数の陽極から選択される第1陽極の上方に第1発光層を形成し、前記第1陽極とは異なる陽極の上方に、発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層を形成し、
    前記機能層の形成において、前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚を、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚より大きくする
    ことを特徴とする請求項12から18のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
  20. 前記発光層の形成において、前記複数の陽極から選択される第1陽極の上方に第1発光層を形成し、前記第1陽極とは異なる陽極の上方に、発光色の波長が前記第1発光層より長い第2発光層を形成し、
    前記機能層の形成において、前記第2発光層上方における前記機能層の膜厚を、前記第1発光層上方における前記機能層の膜厚と等しくする
    ことを特徴とする請求項12から18のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
  21. 基板を準備し、
    前記基板の上方に複数の陽極を形成し、
    前記複数の陽極のそれぞれの上方に発光層を形成し、
    前記発光層の上方に、希土類から選択される金属材料を含む機能層を形成し、
    前記機能層上に接するように、透光性と導電性とを有する金属酸化物を用いて陰極を形成し、
    前記陰極上に接するように、前記陰極より屈折率が低い低屈折率層を形成し、
    前記機能層の形成において、前記機能層の膜厚を10nm以上40nm以下とし、
    前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極下層と前記陰極上層との界面とを、150nm以上離隔させる
    ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
  22. 前記低屈折率層の形成において、絶縁性の無機材料を前記低屈折率層の材料として用いる
    ことを特徴とする請求項21に記載の表示パネルの製造方法。
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