詳細な説明
組成物中の細胞の表面から遊離されるまたは遊離されたグリカンを含有する試料中のグリカンの有無または同試料中に存在するグリカンのレベルを決定することによって、細胞表面に発現しかつ/または露出しているグリカン、すなわち表面グリカンを評価するための方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、提供される方法は、組成物中の細胞の表面からグリカン(例えばN-グリカン)を遊離させるための1つまたは複数の工程を含む。特定の態様において、本明細書において提供される方法は、細胞表面から遊離したグリカンを1つまたは複数の適切な技術(例えば、液体クロマトグラフィーおよび質量分析のうちの1つまたは複数)によって検出するための工程を設ける。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、細胞組成物の表面グリカン発現プロフィールの高感度かつ正確な評価または分析を可能にする。
特定の態様において、細胞の集団または細胞の組成物の表面グリカンは、本明細書において提供される方法によって評価および/または分析することができる。特定の態様において、本方法は、細胞の表面からグリカンを遊離させるのに適した条件下で細胞をインキュベーションするための工程を設ける。特定の態様において、条件は、細胞を、例えば細胞表面に存在し、発現しかつ/または露出しているタンパク質または他の成分からインタクトなグリカンを除去することによる細胞表面からのグリカンの遊離を促進および/または触媒する作用物質と接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションすることを含む。特定の態様において、本明細書において提供される方法は、グリカンの同定、測定、および/または検出に関する感度および/または精度を高めまたは増加させるために、グリカンを誘導体化および/または標識するための工程も含む。特定の態様において、提供される方法は、遊離させた表面グリカンの試料中に存在する個々のグリカンの存在、アイデンティティおよびレベルの高精度かつ高感度な測定を可能にする液体クロマトグラフィーおよび質量分析の複合技術によって、グリカン、例えば標識グリカンを検出するための工程を含む。
細胞組成物の細胞表面グリカンプロフィールを評価し、それを参照試料と比較することによって、細胞組成物をアッセイする方法も、本明細書において提供される。例えばいくつかの態様において、細胞組成物、例えば治療用細胞組成物は、異なる細胞の組成物と比較して、異なるグリカン種、グリカンのタイプおよび/またはグリカンファミリーの表面発現のレベルに関して、異なるグリカン発現プロフィールを有し得る。したがっていくつかの態様において、参照標準は複数の細胞組成物を評価することによって生成され得る。そのような参照標準は、いくつかの態様において、品質管理としておよび/または出荷検査(release assay)のために、または細胞組成物の製造もしくは培養をモニターもしくは管理するために使用し得る。
加えて、表面グリカン発現に関するばらつきが少ない複数の細胞組成物(例えば、治療用細胞組成物および/または操作された細胞を含有する組成物)を生成させるための方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、異なるグリカン種、グリカンのタイプおよび/またはグリカンファミリーのレベルおよび/または発現は、細胞の生理または機能の様々な局面に寄与しまたは少なくとも相関し得る。したがっていくつかの態様では、表面グリカン発現に関して類似度が高い細胞組成物を生産することが望ましい。
特定の態様において、細胞療法、特に養子T細胞療法は、がんなどの様々な疾患の治療、軽減および/または改善のための強力な技術であると考えられる。治療用細胞組成物または薬学的細胞組成物を評価するために利用することができる現行の分析ツールとしては、フローサイトメトリーによる細胞表面マーカーまたは細胞内マーカーの検査が挙げられる。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、細胞組成物を評価するための現行の方法を補完しかつ/または増強し、これは、治療用または薬学的細胞組成物の特徴および製造プロセスまたは発生プロセスの異なる段階にある細胞の特徴を信頼性を持って評価するための方法および技術である。特定の態様において、細胞表面N-結合型グリカンを遊離させるのに有用であり、かつ1つまたは複数の個々のN-グリカン種を検出、同定、および/または定量するのに有用な、偏りの無い方法(例えば図1A〜図1Bによって例示される方法)が、本明細書において提供される。
特定の態様において、本明細書において提供される方法は、細胞表面に発現される個々のグリカン種の有無、アイデンティティ、相対量およびレベルに関する情報を提供する。したがって、いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、細胞組成物のグリカン発現プロフィールを生成させるのに適している。特定の態様において、本明細書において提供される方法は、そのようなプロフィールを、細胞における表面グリカン発現をモニターするための既存の方法よりも高い分解能および精度で生成させる。例えばいくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、既存の方法よりも、試料内の存在量が少ない個々のグリカン種を検出することで、細胞組成物中に存在する個々のグリカンを、利用可能な技術で可能であるものよりも多く、検出および/またはモニタリングすることを可能にする。
いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、グリカンを細胞表面から、例えば細胞表面に発現しかつ/または局在しているタンパク質から、直接的に遊離させる1つまたは複数の工程を提供する。これは、それぞれの複合糖質からグリカンを遊離させる工程に先だって細胞を溶解しかつ/またはタンパク質、例えば膜タンパク質を精製する先行工程による多くの既存の方法とは対照的である。いくつかの態様において、本願の請求項に記載された方法の利点の一つは、インタクトな細胞からの表面グリカンの遊離を刺激することにより、表面に露出したグリカンだけが収集されることである。O-グリカンおよびN-グリカンを含むグリカンは細胞内部にも存在し、例えば、ゴルジ装置でプロセシングされた新生ポリペプチドにおいて発現するか、またはシグナル伝達分子上の付加もしくは修飾として存在する。それゆえに、細胞を溶解しかつ/または細胞ホモジネートを得る工程を伴う他の方法によって収集されたグリカンは、内部に局在するグリカンと外部に局在するグリカンとの混合物を含有し得るか、少なくとも、表面に発現しなかったグリカンの一部を含み得る。対照的に、本明細書において提供される方法の特定の態様は、表面に発現したグリカンの異なるプールを収集する。
いくつかの態様において、例えば細胞を溶解する工程を含む方法とは異なり、細胞表面から直接的にグリカンを遊離させることのさらなる利点は、グリカンが除去された後でも細胞はインタクトなままでいることである。したがって、いくつかの態様では、グリカンが除去された後に、同じ組成物からの細胞を、追加の技術でさらに分析し得る。いくつかの態様において、細胞は、表面グリカンが除去された後に、さらなる分析(例えば、マクロアレイまたはプロテオミクス)のために処理される。
特定の態様において、本明細書において提供される方法は、細胞表面をプロテアーゼ(例えばトリプシン)に曝露することなく、表面グリカンを除去する。特定の態様において、表面グリカンを除去するためのプロテアーゼの使用を避けることの利点の一つは、表面露出タンパク質がインタクトなまま保たれることである。いくつかの態様において、これは、フローサイトメトリーなどによる細胞のさらなる分析を可能にすることができ、その場合、表面グリカンの除去は選別のためのさらなる標的を露出させることになり得る。あるいは、これは、表面露出タンパク質を単離してさらに分析することを可能にし得る。例えば、アスパラギンの窒素に結合したN-グリカンの酵素的遊離により、アスパラギンはアスパラギン酸に変換される。特定の態様において、表面グリカンを除去するためのプロテアーゼを避けることの別の利点は、適当な作用物質または条件の選択によって、特定のグリカンが選択的に除去され得ることである。例えば、細胞表面に結合したO-グリカンを残したまま、N-グリカンを選択的に遊離させる作用物質を選び得る。これは、表面タンパク質を消化することでは達成されないであろう選択性である。
特定の態様において、本明細書において提供される方法は、表面グリカン発現を、既存の方法では達成されない高い精度および感度で検出するための手段を提供する。したがっていくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、治療用および薬学的細胞組成物を含む細胞組成物の生理機能および機能性を評価する手段を提供する。
いくつかの局面において、提供される方法は、任意の細胞調製物または細胞組成物の特徴付けを可能にする。グリコシル化は、細胞のシグナル伝達、接着、ホーミング特性および他の機能的活性または特性に関係づけられているので、細胞表面グライコームの相違は、細胞組成物間の機能的相違を分析し評価するための有用なツールになり得ると考えられる。いくつかの局面において、本方法は、対象への注入前に複数のエクスビボ処理工程を伴う細胞療法を含むキメラ抗原受容体(CAR+)T細胞療法などの細胞療法の特徴を評価するために使用することができる。いくつかの局面において、細胞療法の改変に関与する様々なプロセス、例えば限定するわけではないが、細胞の単離、選択、凍結保存、刺激、活性化、形質導入、拡大増殖および/または製剤化などは、治療用細胞組成物の1つまたは複数の特徴に影響を与えるかまたはそれらを変化させ得る。
しかし、いくつかの態様において、治療用細胞組成物を含む細胞組成物を研究し評価するための現行の分析ツールは、主として、フローサイトメトリーによる細胞表面マーカーまたは内部マーカーの標的検査に限定される。代替法として、提供される方法は、表面N-グリカンの詳細な特徴付けおよび同定を可能にするために、高分解能クロマトグラフィーを含み、いくつかの場合には高分解能質量分析を併用して、頑健なグリカンマップの生成を可能にする。いくつかの態様において、本方法は、治療用細胞組成物を含む細胞組成物を、異なる処理の影響または異なる細胞組成物間の特徴を含めて特徴付け、調査し、かつ/または評価するための、偏りの無い技術を、本明細書において提供する。
本出願において参照される全ての刊行物(特許文献、科学論文、およびデータベースを含む)は、あたかもそれぞれの個々の刊行物が個々に参照により組み入れられているかのように、全ての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、特許出願、公開特許出願および他の刊行物において示される定義と相反するかまたは他の形で矛盾する場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義に優先する。
本明細書において使用するセクション見出しは構成上の目的のためだけであり、記載される主題を限定するものとして解釈してはならない。
I. 細胞表面グリカン発現プロフィールの評価
細胞の表面に発現されるグリカン(例えばN-グリカン)を同定し、定量し、かつ/または分析する方法が、本明細書において提供される。特定の態様では、個々のグリカン種の有無および相対的存在量が、高い分解能および感度で検出される。特定の態様において、本方法は、グリカンの検出を改良するための手順および/または修飾を含む。特定の態様において、グリカンの検出は、個々のグリカン種を同定しかつ/またはその量を定量することができる技術によって実行し得る。特定の態様において、グリカン種は、他のグリカン種の構造とは異なる同一構造を有するグリカンを含む。特定の態様において、前記技術は、質量分析技術および/または液体クロマトグラフィー(LC)技術、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィー(UPLC)である。
A. 細胞の処理
特定の態様において、細胞の組成物は、組成物の細胞の表面からグリカン(例えばN-グリカン)を除去し、遊離させ、または脱離させるのに適した条件下で、インキュベーション、培養または処理される。特定の態様では、細胞の表面からグリカン(例えばN-グリカン)を除去し、分離し、または脱離させるために、細胞の組成物を、作用物質で処理し、作用物質と共にインキュベーションし、かつ/または作用物質と接触させる。特定の態様において、細胞は無傷である。すなわち細胞は、作用物質による処理の前に、溶解もホモジナイズもされていない。特定の態様において、細胞は生細胞である。いくつかの態様において、細胞を作用物質で処理し、作用物質と共にインキュベーションし、かつ/または作用物質と接触させる工程は、細胞膜を破壊および/または破裂させない。いくつかの態様において、細胞は生細胞であり、細胞を作用物質で処理し、作用物質と共にインキュベーションし、または作用物質と接触させる工程は、細胞を殺さない。特定の態様において、細胞は生細胞であり、細胞を作用物質で処理し、作用物質と共にインキュベーションし、または作用物質と接触させる工程は、細胞死、例えば細胞におけるアポトーシスまたは壊死を誘導しない。
いくつかの態様において、細胞は、グリカン消化の前に洗浄および/またはリンスされる。いくつかの態様において、細胞は、培地(例えば細胞培養培地)を細胞から除去し、かつ/または新鮮な溶液などの溶液(例えば、今までに細胞と接触したことも細胞に曝露したこともない溶液)を加えることによって、洗浄および/またはリンスされる。いくつかの態様において、溶液は緩衝液および/または培地である。細胞を洗浄および/またはリンスするための適切な緩衝液は公知であり、これには、細胞を溶解せずかつ/または他の形で生細胞を殺さないものが含まれる。いくつかの局面において、適切な溶液としては、食塩水、クエン酸緩衝液、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)、アール平衡塩類溶液(EBSS)、ゲイ平衡塩類溶液、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)緩衝液、クレブス-ヘンゼライト(Krebs-Heneseleit)緩衝溶液、クレブス-リンゲル溶液、MES緩衝液、MOPS緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、リンゲル溶液、トリス緩衝液、Trizma緩衝液、タイロード溶液、またはそれらの改変物もしくは変形物が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。特定の局面において、適切な培地は、限定するわけではないが、BME、DMEMF12、DMEMF12、DMEM、DMEM高グルコース、F-12、F-12K、ES用(ES Qualified)DMEM、GMEM、IDIM、イスコフ改変DMEM、マッコイ5A、MEM、RPMI、StemXvivo、Xvivo、またはそれらの変形物もしくは改変物であるか、またはそれを含む。
いくつかの態様において、リンスまたは洗浄する工程は遠心分離を含む。いくつかの局面において、細胞は容器、例えばバイアルまたはチューブに移され、低速で、例えば細胞を損傷することも殺すこともない速度で遠心分離される。いくつかの態様において、この遠心分離は細胞をペレット化する。特定の態様において、遠心分離後に、上清は細胞ペレットから除去される。特定の態様において、遠心分離は、60分間、約60分間もしくは60分間未満、または30分間、約30分間もしくは30分間未満、または15分間、約15分間もしくは15分間未満、または10分間、約10分間もしくは10分間未満、または5分間、約5分間もしくは5分間未満、または4分間、約4分間もしくは4分間未満、または3分間、約3分間もしくは3分間未満、または2分間、約2分間もしくは2分間未満、または90秒間、約90秒間もしくは90秒間未満、または60秒間、約60秒間もしくは60秒間未満、または30秒間、約30秒間もしくは30秒間未満、または15秒間、約15秒間もしくは15秒間未満、実行される。特定の態様において、遠心分離は、16,000×g、約16,000×g、もしくは16,000×g未満で、または12,000×g、約12,000×g、もしくは12,000×g未満で、または10,000×g、約10,000×g、もしくは10,000×g未満で、または8,000×g、約8,000×g、もしくは8,000×g未満で、または6,000×g、約6,000×g、もしくは6,000×g未満で、または5,000×g、約5,000×g、もしくは5,000×g未満で、または4,000×g、約4,000×g、もしくは4,000×g未満で、または3,000×g、約3,000×g、もしくは3,000×g未満で、または2,000×g、約2,000×g、もしくは2,000×g未満で、または1,000×g、約1,000×g、もしくは1,000×g未満で、または800×g、約800×g、もしくは800×g未満で、または600×g、約600×g、もしくは600×g未満で、または500×g、約500×g、もしくは500×g未満で、または400×g、約400×g、もしくは400×g未満で、または300×g、約300×g、もしくは300×g未満で、または200×g、約200×g、もしくは200×g未満で、または100×g、約100×g、もしくは100×g未満で、または50×g、約50×g、もしくは50×g未満で実行される。特定の態様において、細胞は、500×gまたは約500×gで、3分間または約3分間、遠心分離される。特定の態様において、細胞は、300×gまたは約300×gで、3分間または約3分間、遠心分離される。遠心分離後に、上清を除去し、細胞に新鮮な溶液を加え、かつ/または細胞を新鮮な溶液に接触させ得る。任意で、細胞が溶液中に分散するように、ボルテックス混合またはピペット混合などによって、ペレットを破壊または撹拌し得る。
いくつかの態様において、細胞は、グリカン消化の前に、溶液(例えば新鮮な溶液、例えば適切な緩衝液または培地)で、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または11回以上、リンスされる。
いくつかの態様において、細胞は、グリカン消化の前に、酵素で処理され、かつ/または酵素と共にインキュベーションされる。いくつかの態様において、細胞は、細胞外ポリヌクレオチド、例えばRNA分子およびDNA分子を除去または消化するために、酵素で処理される。特定の態様において、酵素はヌクレアーゼである。特定の態様において、酵素はベンゾナーゼである。
いくつかの態様において、細胞の表面からグリカン(例えばN-グリカン)を除去し、遊離させ、または脱離させるのに適した条件下で、インキュベーション、培養または処理される細胞の組成物は、試験細胞組成物または試験組成物である。特定の態様において、試験細胞組成物または試験組成物は、ソース組成物からの細胞の集団および/または複数の細胞である。いくつかの場合において、試験組成物は、例えば細胞のより大きな組成物を含有するソース組成物から取り出された、ソース組成物の試料である。そのような態様において、試験細胞組成物中の細胞は、試験組成物が含有する細胞の体積および/または数もしくは絶対数が一般に小さい点を除けば、ソース組成物と同一または実質的に同一である。いくつかの態様において、試験細胞組成物は、提供される方法を行うのに十分なサイズであり、ソース組成物の特徴と実質的に干渉することもソース組成物の特徴に実質的に影響を及ぼすこともない。特定の態様において、ソース組成物は治療用細胞組成物であるか、または治療用細胞組成物を製造するためのプロセス内の一段階もしくは一工程にある細胞組成物である。
特定の態様において、作用物質、例えばPNGase FなどのN-グリコシダーゼで処理される細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、1×103〜1×1012個、1×104〜1×108個、1×105〜1×107個、1×106〜1×107個、または1×106〜5×106個の細胞を含有する。いくつかの態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、少なくとも1×103個もしくは少なくとも約1×103個、少なくとも5×103個もしくは少なくとも約5×103個、少なくとも1×104個もしくは少なくとも約1×104個、少なくとも5×104個もしくは少なくとも約5×104個、少なくとも1×105個もしくは少なくとも約1×105個、少なくとも5×105個もしくは少なくとも約5×105個、少なくとも6×105個もしくは少なくとも約6×105個、少なくとも7×105個もしくは少なくとも約7×105個、少なくとも8×105個もしくは少なくとも約8×105個、少なくとも9×105個もしくは少なくとも約9×105個、少なくとも1×106個もしくは少なくとも約1×106個、少なくとも2×106個もしくは少なくとも約2×106個、少なくとも3×106個もしくは少なくとも約3×106個、少なくとも4×106個もしくは少なくとも約4×106個、少なくとも5×106個もしくは少なくとも約5×106個、少なくとも6×106個もしくは少なくとも約6×106個、少なくとも7×106個もしくは少なくとも約7×106個、少なくとも8×106個もしくは少なくとも約8×106個、約9×106個、少なくとも1×107個もしくは少なくとも約1×107個、少なくとも5×107個もしくは少なくとも約5×107個、少なくとも1×108個もしくは少なくとも約1×108個、少なくとも5×108個もしくは少なくとも約5×108個、少なくとも1×109個もしくは少なくとも約1×109個、少なくとも1×1010個もしくは少なくとも約1×1010個、少なくとも1×1011個もしくは少なくとも約1×1011個、または少なくとも1×1012個もしくは少なくとも約1×1012個の細胞を含有する。特定の態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、1×106〜5×106個の細胞を含有する。特定の態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、1×106〜2.5×106個の細胞を含有する。
いくつかの態様において、N-グリコシダーゼ(例えばPNGase F)などの作用物質と共にインキュベーションされる細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、1×103個/mL〜1×1012個/mL、1×104個/mL〜1×108個/mL、1×105個/mL〜1×107個/mL、または1×106個/mL〜1×107個/mLの濃度の細胞を有する。特定の態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物、少なくとも5×104個/mLもしくは少なくとも約5×104個/mL、少なくとも1×105個/mLもしくは少なくとも約1×105個/mL、少なくとも5×105個/mLもしくは少なくとも約5×105個/mL、少なくとも6×105個/mLもしくは少なくとも約6×105個/mL、少なくとも1×106個/mLもしくは少なくとも約1×106個/mL、少なくとも5×106個/mLもしくは少なくとも約5×106個/mL、少なくとも5×106個/mLもしくは少なくとも約5×106個/mL、少なくとも6×106個/mLもしくは少なくとも約6×106個/mL、少なくとも7×106個/mLもしくは少なくとも約7×106個/mL、少なくとも8×106個/mLもしくは少なくとも約8×106個/mL、少なくとも9×106個/mLもしくは少なくとも約9×106個/mL、少なくとも1×107個/mLもしくは少なくとも約1×107個/mL、少なくとも1.25×107個/mLもしくは少なくとも約1.25×107個/mL、少なくとも2.5×107個/mLもしくは少なくとも約2.5×107個/mL、少なくとも5×107個/mLもしくは少なくとも約5×107個/mL、少なくとも1×108個/mLもしくは少なくとも約1×108個/mL、少なくとも5×108個/mLもしくは少なくとも約5×108個/mL、少なくとも1×109個/mLもしくは少なくとも約1×109個/mL、少なくとも1×1010個/mLもしくは少なくとも約1×1010個/mL、少なくとも1×1011個/mLもしくは少なくとも約1×1011個/mL、または少なくとも1×1012個/mLもしくは少なくとも約1×1012個/mLの濃度を有する。いくつかの態様において、組成物、例えば試験細胞組成物は、5×106個/mL〜2.5×107個/mLの濃度の細胞を有する。特定の態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、5×106個/mL〜1.25×107個/mLの濃度の細胞を有する。特定の態様において、組成物、例えば試験細胞組成物は、少なくとも5×106個/mLまたは少なくとも約5×106個/mLまたは約5×106個/mLの濃度の細胞を含有する。特定の態様において、組成物、例えば試験細胞組成物は、少なくとも1.25×107個/mLまたは少なくとも約1.25×107個/mLまたは約1.25×107個/mLの濃度の細胞を含有する。いくつかの態様において、組成物、例えば試験細胞組成物は、少なくとも2.5×107個/mLまたは少なくとも約2.5×107個/mLまたは約2.5×107個/mLの濃度の細胞を含有する。
いくつかの態様において、インキュベーション、培養または処理は、0.005mLもしくは約0.005mL〜50mL、0.005mLもしくは約0.005mL〜25mL、0.005mLもしくは約0.005mL〜10mL、0.005mLもしくは約0.005mL〜5mL、0.005mLもしくは約0.005mL〜1mL、0.005mLもしくは約0.005mL〜0.5mL、0.005mLもしくは約0.005mL〜0.05mL、0.05mLもしくは約0.05mL〜50mL、0.05mLもしくは約0.05mL〜35mL、0.05mLもしくは約0.05mL〜10mL、0.05mLもしくは約0.05mL〜5mL、0.05mLもしくは約0.05mL〜1mL、0.05mLもしくは約0.05mL〜0.5mL、0.5mLもしくは約0.5mL〜50mL、0.5mLもしくは約0.5mL〜25mL、0.5mLもしくは約0.5mL〜10mL、0.5mLもしくは約0.5mL〜5mL、0.5mLもしくは約0.5mL〜1mL、1mLもしくは約1mL〜50mL、1mLもしくは約1mL〜25mL、1mLもしくは約1mL〜10mL、1mLもしくは約1mL〜5mL、5mLもしくは約5mL〜50mL、5mLもしくは約5mL〜25mL、5mLもしくは約5mL〜10mL、10mLもしくは約10mL〜50mL、10mLもしくは約10mL〜25mL、または25mLもしくは約25mL〜50mLの総体積で実行される。いくつかの態様において、インキュベーション、培養または処理は、少なくとも0.005mLもしくは少なくとも約0.005mL、少なくとも0.01mLもしくは少なくとも約0.01mL、少なくとも0.05mLもしくは少なくとも約0.05mL、少なくとも0.1mLもしくは少なくとも約0.1mL、少なくとも0.2mLもしくは少なくとも約0.2mL、少なくとも0.3mLもしくは少なくとも約0.3mL、少なくとも0.4mLもしくは少なくとも約0.4mL、少なくとも0.5mLもしくは少なくとも約0.5mL、少なくとも1mLもしくは少なくとも約1mL、少なくとも2.0mLもしくは少なくとも約2.0mL、少なくとも5mLもしくは少なくとも約5mL、少なくとも10mLもしくは少なくとも約10mL、少なくとも20mLもしくは少なくとも約20mL、少なくとも30mLもしくは少なくとも約30mL、少なくとも40mLもしくは少なくとも約40mL、または少なくとも50mLもしくは少なくとも約50mLの総体積で実行される。
1. 作用物質、例えばN-グリコシダーゼ
いくつかの態様では、細胞の組成物を、作用物質(例えばN-グリコシダーゼ、例えばPNGase F)で処理する、当該作用物質とインキュベーションする、または当該作用物質と接触させることで、表面露出複合糖質からグリカン(例えばN-グリカン)の除去、分離、および/または脱離が起きる。いくつかの態様において、複合糖質はタンパク質、例えば糖タンパク質である。特定の態様において、細胞の組成物を作用物質で処理し、作用物質と接触させ、かつ/または作用物質と共にインキュベーションする工程は、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または脱離をもたらす。特定の態様において、遊離し、除去され、かつ/または脱離されたN-グリカンは無傷である。いくつかの態様において、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または脱離は、グリカンの構造に、損傷、消化および/またはその他の改変を加えない。特定の態様において、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または脱離は、グリカンを遊離させた部分、例えばタンパク質の構造に、損傷、消化および/またはその他の改変を加えない。いくつかの態様において、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または脱離は、アスパラギンのアスパラギン酸への変換をもたらすが、それ以外には、グリカンを遊離させたタンパク質の構造に、損傷、消化および/またはその他の改変を加えない。
特定の態様において、作用物質は、複合糖質、例えば表面露出糖タンパク質からグリカンを除去する。いくつかの態様において、グリカンは多糖である。特定の態様において、グリカンは、分岐型グリカン、線状グリカン、N-結合型グリカン、O-結合型グリカン、またはそれらの組合せである。特定の態様において、作用物質は複合糖質からN-グリカンを除去する。特定の態様において、N-グリカンは、アスパラギン(Asn)残基においてN-グリコシド結合によって、最も一般的にはアスパラギンへのN-アセチルグルコサミン(GlcNAcβ1-Asn)によって、タンパク質に共有結合される。特定の態様において、N-グリカンは、Asn-Xxx-(Ser,Thr)モチーフ中のアスパラギンに、N-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)残基を介して結合され、ここでXxxは、プロリンを除く任意のアミノ酸であることができる。
特定の態様において、全てのN-グリカンは、共通のコア糖配列Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAcβ1-Asn-X-Ser/Thrを持っている。特定の態様において、N-グリカンは以下の3つのタイプに分類され得る:(1)マンノース残基だけがコアに結合しているオリゴマンノース型、(2)N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GlcNAcT)によって開始される「アンテナ」がコアに結合している複合型N-グリカン、および(3)コアのManα1-6アームにはマンノース残基だけが結合し、1つまたは2つのアンテナがManα1-3アーム上にあるハイブリッド型。いくつかの態様において、N-グリカンとしては、マンノース含有量が高いN-グリカン、すなわち高マンノース型N-グリカン、バイセクト型かつ/もしくはシアリルルイスX N-グリカン、またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンが挙げられる。いくつかの態様において、様々なN-結合型グリカンファミリーの例としては、(a)A2ファミリー(ジシアリル化バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖;A1グリカン(モノシアリル化バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖)、NA2グリカン(アシアロ-バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖);NGA2グリカン(アシアロ-アガラクト-バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖);M3N2グリカンなどを含む);(b)A2Fファミリー(コアフコースを持つジシアリル化バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖;A1Fグリカン(コアフコースを持つモノシアリル化バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖)、NA2Fグリカン(コアフコースを持つアシアロ-バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖)NGA2Fグリカン(コアフコースを持つアシアロ-アガラクト-バイアンテナ型N-結合型オリゴ糖)など);(c)A3ファミリー(例えば非還元末端ガラクトシル残基は完全にシアリル化されているが、a2,3結合シアリル残基および2,6結合シアリル残基の分布およびガラクトースのうちの1つの結合が異なるグリカン;NA3(A3グリカンから誘導されるアシアロトリアンテナ型N-結合型オリゴ糖)およびNGA3グリカン(NA3グリカンから誘導されるアガラクト-トリアンテナ型N-結合型オリゴ糖)などを含む);(d)A4ファミリー(テトラアンテナ型N-結合型オリゴ糖から誘導されるグリカン;NA4グリカン(アシアロ-テトラアンテナ型N-結合型オリゴ糖);NGA4グリカン(NA4グリカンから誘導されるアシアロ-アガラクト-テトラアンテナ型N-結合型オリゴ糖)などを含む);および(e)オリゴマンノースファミリーグリカン(例えばMan-5、Man-6、Man-7、Man-8、Man-9などのグリカン)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。N-グリカンの例としては、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
いくつかの態様において、作用物質は、複合糖質、例えば糖タンパク質からのグリカン(例えばN-グリカン)の除去、分離および/または脱離を促進する任意の作用物質である。特定の態様において、作用物質は、例えば限定するわけではないがヒドラジン分解またはアルカリβ脱離など、複合糖質からグリカンを化学的に除去する。
特定の態様において、作用物質は酵素である。特定の態様において、作用物質は、複合糖質からN-結合型グリカンまたはO-結合型グリカンを特異的に除去、分離および/または脱離させる酵素である。特定の態様において、作用物質はアミダーゼである。いくつかの態様において、作用物質は、N-グリコシダーゼなどのグリコシダーゼであるか、N-グリコシダーゼなどのグリコシダーゼを含む。特定の態様において、作用物質は、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼF(EndoF)、N-グリコシダーゼA(PNGase A)もしくはN-グリコシダーゼF(PNGase F)またはそれらの組合せであるか、それらを含む。いくつかの態様において、作用物質は、ペプチド-N4-(N-アセチル-ベータ-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼクラスのアミダーゼであるか、ペプチド-N4-(N-アセチル-ベータ-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼクラスのアミダーゼを含む。特定の態様において、作用物質はPNGase FであるかPNGase Fを含む。
いくつかの態様において、作用物質は、N-結合型糖質を有するタンパク質およびペプチドから完全長オリゴ糖を遊離させるまたは遊離させることができる酵素である。いくつかの態様において、作用物質は、N-結合型糖質を有するタンパク質およびペプチドから完全長オリゴ糖を遊離させるまたは遊離させることができるPNGase Fである。特定の態様において、作用物質は、Endo F、Endo HおよびEndo Dなどのエンドグリコシダーゼでないか、Endo F、Endo HおよびEndo Dなどのエンドグリコシダーゼを含まない。いくつかの態様において、Endo F、Endo HおよびEndo Dなどのエンドグリコシダーゼは、糖タンパク質から完全長オリゴ糖を遊離させず、かつ/またはN-結合型オリゴ糖の一般的なクラスをいずれも糖タンパク質から切断しない。
特定の態様において、作用物質はプロテアーゼではない。いくつかの態様において、作用物質はプロテアーゼを含まない。特定の態様において、作用物質は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、またはアスパラギンペプチドリアーゼではない。特定の態様において、作用物質は、エンドペプチダーゼ、例えばトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、およびエラスターゼではなく、エンドペプチダーゼ、例えばトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、およびエラスターゼを含まない。特定の態様において、作用物質はトリプシンではなく、トリプシンを含まない。
特定の態様において、作用物質は、複合糖質、例えば表面露出タンパク質または糖タンパク質からN-グリカンを選択的および/または特異的に除去、分離および/または脱離させる。特定の態様において、作用物質はN-グリカンの除去、分離および/または脱離に関する活性が、N-グリカンではないグリカンの除去、分離および/または脱離に関する活性より高い。特定の態様において、作用物質は、N-グリカンの除去、分離および/または脱離に関して、N-グリカンではないグリカンの除去、分離および/または脱離よりも、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%大きい活性、または少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、500倍、もしくは1,000倍大きい活性を有する。特定の態様において、作用物質はPNGase FであるかPNGase Fを含む。
PNGase F
特定の態様において、細胞の表面からグリカンを除去し、遊離させまたは脱離させるのに適した条件下でのインキュベーションは、細胞を作用物質と接触させ、作用物質で処理し、かつ/または作用物質と共にインキュベーションする工程を含む。特定の態様において、作用物質はPNGase Fであるか、またはPNGase Fを含む。PNGase Fは、ペプチド-N4-(N-アセチル-ベータ-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼクラスのアミダーゼである。いくつかの態様において、PNGase Fは、アスパラギンからN-グリカンを遊離させる細菌酵素である。特定の態様において、PNGase Fは、アスパラギンから完全な(すなわちインタクトな)N-グリカンを遊離させる。特定の態様において、PNGase Fは、アスパラギンに結合したオリゴマンノース型、ハイブリッド型、および複合型N-グリカンを除去する。特定の態様において、PNGase Fは、アスパラギンの窒素に結合したN-グリカンを遊離させることにより、アスパラギンをアスパラギン酸に変換する。特定の態様において、切断は、糖質のうち、アスパラギン残基に隣接する位置で起こる。特定の態様において、作用物質はペプチド-N-(N-アセチル-β-N-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼ活性を示す酵素であるか、またはそのような酵素を含む。特定の態様において、細胞の組成物は、PNGase FであるかPNGase Fを含む作用物質で処理されるか、同作用物質と接触させられるか、または同作用物質と共にインキュベーションされる。
特定の態様において、作用物質はPNGase Fポリペプチドもしくはその一部であるか、またはPNGase Fポリペプチドもしくはその一部を含む。いくつかの態様において、作用物質は、細菌に由来するまたはアーモンドエマルジョンから精製されるPNGase Fである。特定の態様において、作用物質は細菌に由来するPNGase Fである。いくつかの態様において、細菌はフラボバクテリウム・メニンゴセプチカムである。いくつかの態様において、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカムはエリザベトキンギア・メニンゴセプティカム(Elizabethkingia meningosepticum)としても公知である。特定の態様において、作用物質はSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の全部または一部を含有する。特定の態様において、PNGase Fポリペプチドの一部は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列のうちの少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも110個、少なくとも120個、少なくとも130個、少なくとも140個、少なくとも150個、少なくとも160個、少なくとも170個、少なくとも180個、少なくとも190個、少なくとも200個、少なくとも210個、少なくとも220個、少なくとも230個、少なくとも240個、少なくとも250個、少なくとも260個、少なくとも270個、少なくとも280個、少なくとも290個、少なくとも300個、少なくとも310個、少なくとも320個、少なくとも330個、少なくとも340個、または少なくとも350個の連続アミノ酸であるか、同連続アミノ酸を含有する。いくつかの態様において、作用物質は、SEQ ID NO:1に示されるPNGase Fアミノ酸配列の全部または一部に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%を有する。
いくつかの態様において、PNGase Fは、高純度のPNGase F調製物であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、PNGase Fは、プロテアーゼを含まないPNGase F調製物であるかまたはそれを含む。特定の態様において、PNGase Fは、Endo H、EndoF、および/もしくはPNGase A活性を含まないPNGase F調製物であるかまたはそれを含む。特定の態様において、PNGase Fは、エンドトキシンを含まないPNGase F調製物であるかまたはそれを含む。いくつかの態様において、PNGase Fは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、もしくは少なくとも99.99%純粋であるPNGase Fであるかまたはそれを含む。特定の態様において、PNGase Fは、非PNGase Fタンパク質夾雑物が20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、または0.001%未満の調製物である。いくつかの態様において、PNGase F調製物は実質的に均一である。いくつかの態様において、PNGase Fは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、もしくは少なくとも99.99%均一なPNGase Fであるかまたはそれを含む。
いくつかの態様において、PNGase Fの純度および/または均一性は、例えば限定するわけではないが、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、円偏光二色性(SD)、核磁気共鳴(NMR)および蛍光分光法(蛍光光度法)など、任意の適切な手段で評価されるかまたは評価され得る。いくつかの態様において、純度および/または均一性は、SDS-PAGEおよびクマシーブルー(Coomasie Blue)染色などのタンパク質染色によって評価または決定される。
特定の態様において、PNGase Fは、アーモンドエマルジョンに由来せず、アーモンドエマルジョンから得られず、アーモンドエマルジョンから精製されない。
いくつかの態様において、PNGase Fまたはその変異体もしくは一部は、迅速に作用する(rapid-acting)PNGase Fであり、例えば1つまたは複数のN-グリカンを、24時間未満で、例えば概ね12時間未満、例えば15分〜4時間、例えば概ね15分以下、30分以下、60分以下、2時間以下、3時間以下、または4時間以下で、切断しまたは遊離させる活性を持つPNGase Fである。
いくつかの態様において、PNGase Fまたはその変異体もしくは一部は、1つまたは複数の糖タンパク質からの1つまたは複数のN-グリカンの遊離に影響を及ぼす酵素的有効量である量で供給される。いくつかの態様において、活性は、天然または非変性タンパク質である、例えば精製された場合または細胞の表面に発現された場合にその天然構造で存在する、1つまたは複数の糖タンパク質からの、1つまたは複数のN-グリカンの遊離または切断に有効である。特定の態様において、PNGase Fの量は、典型的には細胞組成物の細胞の大部分が生き続けかつ/またはインキュベーションによる有害な影響を受けない時間および温度である特定の期間および温度で、1つまたは複数の糖タンパク質から1つまたは複数のN-グリカンを遊離させる活性(酵素活性)を示す量である。いくつかの場合において、期間は、12時間以下、8時間以下、6時間以下、4時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、または前記のいずれかの間にある任意の値もしくは範囲である。いくつかの態様において、温度は40℃未満または約40℃未満、例えば約10℃、約15℃、約20℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、もしくは約40℃、または前記のいずれかの間にある任意の値または範囲の温度である。いくつかの態様において、温度は10もしくは約10℃〜45もしくは約45℃、または24℃〜40℃、または35℃〜39℃である。いくつかの態様において、温度は37℃または約37℃である。
いくつかの態様において、前記酵素的有効量は、例えば前記の期間および温度でのインキュベーション中に、1つまたは複数の糖タンパク質の実質的な脱グリコシル化をもたらし、例えば天然型または非変性型である、例えば細胞の表面に存在しまたは発現している、前記1つまたは複数の糖タンパク質に存在するN-グリカンのうちの、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、99%超、約100%または100%の遊離または除去を達成する活性をもたらす。
いくつかの態様において、PNGase F酵素の活性は単位(unit)として表し得る。特定の態様において、単位は予め定義される。特定の態様において、単位は、ある量のグリカン(例えばN-グリカン)をある量の糖タンパク質、例えば精製糖タンパク質から、特定条件下で、ある期間内に除去するのに必要なPNGase Fの量である。いくつかの態様において、糖タンパク質は変性糖タンパク質である。特定の態様において、糖タンパク質はその天然構造を持つ糖タンパク質である。いくつかの態様において、単位は、当該量の糖タンパク質から50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、99%超、約100%、または100%のグリカンを除去するのに必要なPNGase Fの量である。いくつかの態様において、反応体積は、約0.1μl、約1μl、約5μl、約10μl、約20μl、約30μl、約40μl、約50μl、約100μl、約200μl、約250μl、約500μl、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、もしくは約10mL、またはそれらの間にある任意の値もしくは範囲である。特定の態様において、糖タンパク質の量は、約1pmol、約10pmol、約100pmol、約1nmol、約10nmol、約100nmol、約1mmol、約10mmol、約100mmol、約1mol、またはそれらの間に入る任意の値もしくは範囲である。いくつかの態様において、糖タンパク質の量は、約1nM、約10nM、約100nM、約1μM、約10μM、約100μM、約1mM、約10mM、約100mM、もしくは約1Mの濃度、またはそれらの間にある任意の値もしくは範囲である。
いくつかの態様において、PNGase Fの活性の単位に関して、糖タンパク質は組み換え糖タンパク質である。特定の態様において、糖タンパク質は精製される。いくつかの態様において、糖タンパク質はダブシルフィブリン糖ペプチドである。特定の態様において、糖タンパク質はフェチュインである。特定の態様において、糖タンパク質は変性リボヌクレアーゼB(RNase B)である。特定の態様において、単位は、PNGaseおよび糖タンパク質をインキュベーションする緩衝液の組成、緩衝液のpH、温度、および総体積、すなわち反応体積を含むインキュベーションの条件によって、さらに定義される。
PNGase F活性の例示的な単位として、10μlの総反応体積中、37℃、1時間で10μgの変性RNase Bから糖質のうちの>95%を除去するのに必要なPNGase F酵素の量;37℃、pH7.5において1分で、1nmolの変性リボヌクレアーゼBからのN-結合型オリゴ糖の遊離を触媒するのに必要なPNGase F酵素の量;37℃において30分で1nmolの変性RNase Bの脱グリコシル化を触媒するのに必要なPNGase F酵素の量;pH7.5および37℃において毎分1μmolの変性RNase BからのN-結合型オリゴ糖の遊離を触媒するのに必要なPNGase F酵素の量;またはpH7.8および37℃において毎分1nmolのダブシルフィブリン糖ペプチドから糖質を加水分解するのに必要なPNGase F酵素の量として定義される単位が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、単位は、37℃において30分で1nmolの変性RNase Bの脱グリコシル化を触媒するのに必要なPNGase F活性の量である。
特定の態様において、当業者は、常法により、予め定義された1単位中のPNGase Fの量を決定することができると考えられる。特定の態様において、1単位中のPNGase F酵素の量は、糖タンパク質、例えば精製糖タンパク質からの糖質(例えばN-グリカン)の除去、遊離、脱グリコシル化および/またはヒドロキシル化を測定または定量するアッセイによって決定される。いくつかの態様において、PNGase F活性は、所定の条件下、PNGaseで処理された糖タンパク質上のN-グリカンの量を検出し、それを無処理の糖タンパク質、例えば無処理糖タンパク質の別個のプールまたはPNGase Fで処理する前の糖タンパク質上のN-グリカンの量と比較することによって測定される。
いくつかの態様において、グリコシル化タンパク質上のN-グリカンを検出するための方法は、染色および親和性ベースの方法を含み得る。特定の態様では、糖タンパク質をゲル、例えばSDS-PAGEゲルで泳動した後、PNGase F酵素と共にインキュベーションし、任意で染色を行うことで、ゲルが糖タンパク質について染色される。いくつかの態様では、グリコシル化タンパク質に対応するタンパク質バンドが、非グリコシル化タンパク質に対応するバンドと比較される。適切なゲル染色手順としては、限定するわけではないが過ヨウ素酸シッフ(PAS)反応に基づく染色が挙げられ、ここでは、過ヨウ素酸が2つのビシナルジオール基を酸化してアルデヒドを形成し、それがシッフ試薬と反応してマゼンタ色を与える。いくつかの態様において、発色性ゲル染色は、535nmで蛍光検出することができる酸性フクシンを使って実行される。ゲル染色の適切な方法には、過ヨウ素酸化を利用して蛍光性ヒドラジドを結合する市販の蛍光染料の使用が含まれる。適切なゲル染料として、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンおよび負に荷電した糖タンパク質を検出するために使用されるアルシアンブルーおよびStains-Allも挙げられる。特定の態様において、PGNase F酵素によるN-グリカンは、レクチンブロットによって、例えば検出可能に標識されたレクチンなどのレクチンでプローブされるウェスタンブロットによって、決定される。
いくつかの態様において、N-グリコシダーゼ、例えばPNGase Fの酵素的有効量は、1単位もしくは約1単位〜5000単位、1単位もしくは約1単位〜1000単位、1単位もしくは約1単位〜500単位、1単位もしくは約1単位〜250単位、1単位もしくは約1単位〜100単位、1単位もしくは約1単位〜50単位、1単位もしくは約1単位〜25単位、25単位もしくは約25単位〜5000単位、25単位もしくは約25単位〜1000単位、25単位もしくは約25単位〜500単位、25単位もしくは約25単位〜250単位、25単位もしくは約25単位〜100単位、25単位もしくは約25単位〜50単位、50単位もしくは約50単位〜5000単位、50単位もしくは約50単位〜1000単位、50単位もしくは約50単位〜500単位、50単位もしくは約50単位〜250単位、50単位もしくは約50単位〜100単位、100単位もしくは約100単位〜5000単位、100単位もしくは約100単位〜1000単位、100単位もしくは約100単位〜500単位、100単位もしくは約100単位〜250単位、250単位もしくは約250単位〜5000単位、250単位もしくは約250単位〜1000単位、250単位もしくは約250単位〜500単位、500単位もしくは約500単位〜5000単位、500単位もしくは約500単位〜1000単位、または1000単位もしくは約1000単位〜5000単位である(それぞれ両端の値を含む)。いくつかの態様において、N-グリコシダーゼ、例えばPNGase Fの酵素的有効量は、1単位超もしくは約1単位超または1単位もしくは約1単位、5単位超もしくは約5単位超または5単位もしくは約5単位、10単位超もしくは約10単位超または10単位もしくは約10単位、15単位超もしくは約15単位超または15単位もしくは約15単位、20単位超もしくは約20単位超または20単位もしくは約20単位、25単位超もしくは約25単位超または25単位もしくは約25単位、50単位超もしくは約50単位超または50単位もしくは約50単位、100単位超もしくは約100単位超または100単位もしくは約100単位、250単位超もしくは約250単位超または250単位もしくは約250単位、500単位超もしくは約500単位超または500単位もしくは約500単位、1000単位超もしくは約1000単位超または1000単位もしくは約1000単位、2500単位超もしくは約2500単位超または2500単位もしくは約2500単位、あるいは5000単位超もしくは約5000単位超または5000単位もしくは約5000単位である。N-グリコシダーゼ、例えばPNGase Fの調製物の活性の単位および/または比活性を決定することは当業者の水準内である。活性の単位を評価または決定するための例示的方法は上述されており、N-グリコシダーゼ、例えばPNGase Fの特定供給源に依存し得る。いくつかの場合において、1単位は、37℃において30分で1ナノモルの変性リボヌクレアーゼB(RNase B)の脱グリコシル化を触媒するのに十分なN-グリコシダーゼ(任意でPNGase F)の量である。別の例において、500単位は、37℃または室温において5〜10分間、1×PBS中でインキュベーションされた10μgのリボヌクレアーゼB(RNase B)の脱グリコシル化を触媒するのに十分なN-グリコシダーゼ(任意でPNGase F)の量である。
いくつかの態様において、PNGase Fは組み換えPGNase Fである。特定の態様において、PNGase Fは変異体PNGase Fである。いくつかの態様において、PNGase Fは、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカムからクローニングされた組み換えPNGase Fである。特定の態様において、PNGase Fは、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカムの全PNGase F遺伝子からクローニングされる。特定の態様において、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカムの全PNGase F遺伝子は、Tarentino et al.,Journal of Biological Chemistry,265(12):6961-6966(1990)に記載のPNGase F遺伝子である。特定の態様において、全PNGase F遺伝子は、Uniprotアクセッション番号P21163.2で指定されるPNGase FポリペプチドをコードするPNGase F遺伝子である。いくつかの態様において、全PNGase F遺伝子は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を持つPNGase FポリペプチドをコードするPNGase F遺伝子である。
特定の態様において、PNGase Fは、37℃または室温において5〜10分以内に、RNase Bの完全な脱グリコシル化を達成する。いくつかの態様において、増加した活性および/または迅速な活性を持つPNGase Fは、1単位のPGNase Fを37℃または室温において5〜10分間インキュベーションした場合に10μgのRNase Bの完全な脱グリコシル化を達成するPNGase Fである。特定の態様において、完全な脱グリコシル化はSDS-PAGEによって可視化される。特定の態様において、PNGase Fの純度は、SDS‐PAGE分析およびクマシーブリリアントブルーによる染色で決定した場合に、少なくとも95%以上である。いくつかの態様において、PNGase Fは、血液由来の糖タンパク質フェチュインの天然型から、室温または37℃において数分以内にN-グリカンを遊離させる。
いくつかの態様において、PNGase Fは、天然糖タンパク質と共に室温または37℃でインキュベーションした場合に、数分以内でN-グリカンを除去し、遊離させ、かつ/または脱離させることができるPNGase Fである。特定の態様において、PNGase Fは、凍結ホルマリン固定パラフィン包埋肝組織切片から37℃で2時間以内に、ある量のN-グリカンを除去し、遊離させ、かつ/または脱離させることができ、遊離したN-グリカンの量は質量分析、例えばMALDI-MSによって検出可能である(例えばPowers et al.Analytical Chemistry,85(20):9799-806(2013)参照)。特定の態様において、PNGase Fは、0.1mg/mLの溶液0.2mLを切片に適用して、37℃において2時間インキュベーションした場合に、ある量のN-グリカンを凍結マウス脳組織切片から除去し、遊離させ、かつ/または脱離させることができ、遊離したN-グリカンの量は質量分析、例えばMALDI-MSによって検出可能である(例えばPowers et al.,Biomolecules 5:2554-2572(2015)参照)。
特定の態様において、PNGase Fは、それぞれの天然型であるタンパク質を脱グリコシル化する。特定の態様において、PNGase Fは、それぞれの天然型である1つまたは複数のタンパク質からN-グリカンを除去する。いくつかの態様において、PNGase Fは、室温で数分以内に、それぞれの天然型である1つまたは複数の糖タンパク質からグリカンを遊離させ、除去し、かつ/または脱離させる。特定の態様において、PNGase Fは、室温または37℃において数分以内に、それぞれの天然型である1つまたは複数の糖タンパク質からグリカンを遊離させ、除去し、かつ/または脱離させる。特定の態様において、PNGase Fは、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間以内に、または5分〜1時間、1時間〜4時間、4時間〜6時間、もしくは6時間以上で、それぞれの天然型である1つまたは複数の糖タンパク質から、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30% 少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%のグリカンを遊離させ、除去し、かつ/または脱離させる。
特定の態様において、PNGase Fは、細胞内で発現され精製される、PNGase F遺伝子からクローニングされたポリヌクレオチドによって生産される組み換えPNGase Fである。いくつかの態様において、細胞は細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である。特定の態様において、PNGase Fは、大腸菌において発現され、大腸菌から精製される。いくつかの態様において、PNGase Fは細菌株BL21 Star(DE3)中で発現され、細菌株BL21 Star(DE3)から精製される。
いくつかの態様において、PNGase Fは、発現ベクターにクローニングされ、発現され、精製されるポリヌクレオチドによって生産される組み換えPNGase Fである。特定の態様において、PNGase Fをコードするポリヌクレオチドは、通常の分子技術によって、調節配列を含有するベクターコンストラクトに組み入れられる(Sambrook et al,Molecular Cloning,2nd ed.,(1989)参照)。いくつかの態様において、ベクターは、適切なプロモーター、複製起点、リボソーム結合部位、転写終結配列、選択可能マーカーおよびマルチクローニング部位のうちの1つまたは複数を含む。特定の態様において、PNGase Fをコードするポリヌクレオチドは、効率のよい特異的なコンストラクトを持つプラスミド、例えばT7発現ベクターである。特定の態様において、ベクターは誘導性プロモーターを含有する。いくつかの態様において、PNGase Fをコードするポリヌクレオチドは、細菌における発現に適した発現ベクターの、適切な細菌用プロモーターの制御下に挿入される。特定の態様において、発現ベクターは、宿主細菌生物によって認識されかつPGNase Fをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結される誘導性プロモーターを含有する。細菌宿主との使用に適した誘導性プロモーターとしては、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、araBADプロモーターを含むアラビノースプロモーター系、ラムノースプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、PLtet0-1およびPlac/ara-1プロモーター、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。いくつかの態様では、他の公知の細菌誘導性プロモーターおよび低基礎発現プロモーターが好ましい。特定の態様において、発現ベクターはlacUV5プロモーターを含有し、pETおよびpQEなどのT7発現ベクターからの遺伝子産物の高レベルイソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性発現を可能にする。
いくつかの態様において、PGNase Fを生産する工程は、PNGase FをコードするポリヌクレオチドをT7発現ベクターにクローニングし、発現させ、精製するプロセスである。T7発現ベクターとしては、市販のT7ベクター、例えばpT7 FLAG 3、pT7 FLAG 1、pT7 MAT1、pT7 FLAG 4、pT7 FLAG 2、pT7 MAT 2、pT7 FLAG-MAT 1、pT7 MAT-FLAG 2、pT7 MAT-FLAG 1、およびpT7 FLAG-MAT 2(Sigma)、GATEWAY pDEST 14、GATEWAY pDEST 15、GATEWAY pDEST 16、GATEWAY pDEST 17、pRSET A、pRSET-BFP、pRSET-CFP、pRSET-EmGFP(Thermo Fisher)、pET 29-b(Novagen)およびpQE-T7(Qiagen)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様では、PNGase Fをコードするポリヌクレオチドを、pET 29-bおよび/またはpQE-T7T7ベクターにクローニングし、発現させ、精製する。
いくつかの態様において、PNGase Fは、タンパク質のN末端および/またはc末端に直接的または間接的に連結されたタグまたは融合ドメイン、例えば親和性タグまたは精製タグを含有する。特定の態様において、PGNase Fは、PNGase Fが、発現ベクターにクローニングされ、発現され、精製される組み換えPNGase Fであるプロセスによって生産される。いくつかの態様において、挿入は、インフレームN末端またはC末端タグおよび/または融合ドメイン用の配列の付加をもたらす。いくつかの態様において、タグおよび/または融合ドメインは、PNGase FポリペプチドのN末端タグである。特定の態様において、タグおよび/または融合ドメインは、PNGase FポリペプチドのC末端タグである。種々の適切なポリペプチドタグおよび/または融合ドメインは公知であり、例えばFITCタグ、ポリ-ヒスチジン(His)、HRP、マルトース結合タンパク質、Glu-Glu、アビジン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、ヒト血清アルブミン、AviTag、カルモジュリン-タグ、ポリグルタミン酸タグ、FLAGタグ、HAタグ、Mycタグ、および蛍光タンパク質タグ(例えばEGFP)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、PNGase Fは、C末端Hisタグを持つ組み換えPNGase Fである。
特定の態様において、PGNase Fは、PNGase Fをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを使って形質導入された細菌細胞を、PNGase Fタンパク質を発現するように誘導するプロセスによって生産される。特定の態様では、PNGase Fポリペプチドを発現する細菌細胞を収集し、溶解し、PNGaseFポリペプチドを精製する。いくつかの態様において、PNGase Fポリペプチドは精製される。タンパク質精製において使用するための適切な技術としては、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などによる沈殿、または熱変性による沈殿と、それに続く遠心分離;クロマトグラフィー工程、例えばイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよび親和性クロマトグラフィー;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらの技術および他の技術の組合せが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、PNGase Fポリペプチドの精製は、HPLC精製またはFPLC精製によって実行される。いくつかの態様において、タンパク質は、カラムが、組み換えPGNase Fポリペプチドのタンパク質タグ、例えばC末端hisタグとの相互作用によって、PGNase Fポリペプチドに結合しまたはPGNase Fポリペプチドを保持する方法によって精製される。
特定の態様において、作用物質は、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカムのゲノムからの全ペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F)遺伝子である全PNGase遺伝子から、T7発現ベクターpET 29-b(Novagen)およびpQE-T7(Qiagen)にクローニングされ、発現され、精製されたポリヌクレオチドから生産されるPNGase Fであるか、または同PNGase Fを含む。特定の態様において、PNGase Fをコードするポリヌクレオチドは、インフレームC末端ヒスチジンタグを含有する。いくつかの態様において、PNGase F HISタグ付きコンストラクトをコードするポリヌクレオチドは、pETおよびpQEなどのT7発現ベクターからの遺伝子産物の高レベルイソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性発現を可能にするlacUV5プロモーターの制御下にあるT7 RNAポリメラーゼの遺伝子を保因する細菌株BL21 Star(DE3)に形質転換される。特定の態様では、細菌形質転換および細胞培養成長を実行し、細菌細胞を遠心分離によって収集し、プロテアーゼ阻害剤(SigmaFast EDTA-free)を含有する緩衝液で細胞ペレットを洗浄する。特定の態様において、全細胞タンパク質溶解物は、Avestin C5高圧ホモジナイザーを使って作製される。いくつかの態様において、組み換えPNGase Fヒスチジンタグ付きタンパク質のためのFPLC精製法では、Ni-NTA(Qiagen)カラムおよびIMAC HisTrap HP(GE Healthcare)カラムを使用する。いくつかの態様において、IPTG誘導培養物からの細菌細胞溶解物をカラムにローディングし、結合したC末端Hisタグを持つPNGase Fポリペプチドを洗浄し、結合緩衝液中の段階的イミダゾール勾配を使って溶出させる。いくつかの態様において、C末端を持つ精製PNGase Fは、PBS緩衝液中で透析され、PBS緩衝液中で貯蔵される。特定の態様において、作用物質は、C末端Hisタグを持つ組み換えPNGase FであるPNGase、もしくはPowers et al.Analytical Chemistry,85(20):9799-806(2013)に記載の方法によって生産されるPNGase Fと同一なPNGase FであるPNGaseであるか、またはそれらのPNGaseを含む。
いくつかの態様において、作用物質は、市販のPNGase FであるPNGase Fであるかまたはそれを含む。市販のPNGase Fとしては、PNGase Fプロテオミクス等級(Proteomics Grade)(カタログ番号P 7367、Sigma);PNGase F(カタログ番号P0704SおよびP0704L、New England Biolabs)、PNGase F(カタログ番号V4831、Promega)、N-グリカナーゼ(カタログ番号:GKE-5006A、GKE-5006B、GKE-5006D、GKE-5016A、GKE-5016B、GKE-5016D、GKE-5010B、GKE-5016D、GKE-5020B、GKE-5020D、およびGKE-5003、ProZyme)、およびPNGase F(カタログ番号:E-PNG01、QA Bio)、RAPID PNGase F(カタログ番号P0710S、New England Biolabs)、PNGASE F PRIME(N-Zyme Scientifics)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、PNGase Fは、PNGASE F PRIME(N-Zyme Scientifics)であるかまたはそれと同一である。
2. インキュベーション条件
いくつかの態様では、細胞の組成物、例えば試験組成物を、例えば約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、または5分〜1時間、1時間〜4時間、4時間〜6時間、または6時間以上にわたって、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションする。特定の態様では、細胞の組成物を、30分〜60分の期間にわたって、PGNase FであるかPGNase Fを含む作用物質と接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションする。特定の態様では、細胞の組成物を、約30分にわたって、PNGase FであるかPNGase Fを含む作用物質と接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションする。特定の態様では、細胞の組成物を、約60分にわたって、PNGase FであるかPNGase Fを含む作用物質と接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションする。
特定の態様では、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物を、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションし、表面露出N-グリカンのうちの少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.9%が、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、90分未満、60分未満、45分未満、30分未満、15分未満、または5分未満の期間で、細胞から除去される。特定の態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと共に、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、もしくは約60分、または5分〜60分、5分〜30分、30分〜60分、もしくは15分〜45分にわたってインキュベーションされ、表面露出N-グリカンのうちの少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%が細胞から除去される。特定の態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと共に、約30分間インキュベーションされ、表面露出N-グリカンのうちの少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が細胞から除去される。特定の態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと共に、約60分間インキュベーションされ、表面露出N-グリカンのうちの少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が細胞から除去される。
いくつかの態様において、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物は、細胞を損傷せず殺すこともない条件下で細胞の表面からN-グリカンを除去するために、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと共にインキュベーションされる。いくつかの態様において、インキュベーションは、5分以下もしくは約5分、10分以下もしくは約10分、15分以下もしくは約15分、20分以下もしくは約20分、25分以下もしくは約25分、30分以下もしくは約30分、35分以下もしくは約35分、40分以下もしくは約40分、45分以下もしくは約45分、50分以下もしくは約50分、55分以下もしくは約55分、60分以下もしくは約60分、1.5時間以下もしくは約1.5時間、2時間以下もしくは約2時間、3時間以下もしくは約3時間、4時間以下もしくは約4時間、5時間以下もしくは約5時間、または6時間以下もしくは約6時間にわたり、組成物中の細胞のうち約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.01%未満、約0.001%未満、または約0.0001%未満が、インキュベーション中に死に、破裂し、溶解し、かつ/またはアポトーシスもしくは壊死を開始する。いくつかの態様において、インキュベーションは、30分以下もしくは約30分または60分以下もしくは約60分である時間、あるいは30〜60分(両端の値を含む)の期間である時間にわたり、組成物中の細胞のうち約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.01%未満、約0.001%未満、または約0.0001%未満が、インキュベーション中に死に、破裂し、溶解し、かつ/またはアポトーシスもしくは壊死を開始する。
特定の態様において、N-グリコシダーゼなどの作用物質との接触、当該作用物質による処理、および/または当該作用物質とのインキュベーションは、揺動運動させながら実行される。特定の態様において、揺動は、25RPMもしくは約25RPMもしくは少なくとも25RPM、50RPMもしくは約50RPMもしくは少なくとも50RPM、100RPMもしくは約100RPMもしくは少なくとも100RPM、150RPMもしくは約150RPMもしくは少なくとも150RPM、200RPMもしくは約200RPMもしくは少なくとも200RPM、250RPMもしくは約250RPMもしくは少なくとも250RPM、300RPMもしくは約300RPMもしくは少なくとも300RPM、350RPMもしくは約350RPMもしくは少なくとも350RPM、400RPMもしくは約400RPMもしくは少なくとも400RPM、450RPMもしくは約450RPMもしくは少なくとも450RPM、または500RPMもしくは約500RPMもしくは少なくとも500RPMである。いくつかの態様において、揺動は250RPMまたは約250PRMである。いくつかの態様において、N-グリコシダーゼなどの作用物質との接触、当該作用物質による処理、および/または当該作用物質とのインキュベーションは、例えば静止条件下で実行される。いくつかの態様において、作用物質との接触、作用物質による処理、および/または作用物質とのインキュベーション中に、細胞は、短時間、例えば30秒間、約30秒間もしくは30秒未満、15秒間、約15秒間もしくは15秒未満、10秒間、約10秒間もしくは10秒未満、5秒間、約5秒間もしくは5秒未満、2秒間、約2秒間もしくは2秒未満、または1秒間、約1秒間もしくは1秒未満、混合および/またはボルテックスされる。いくつかの態様において、細胞は、接触、インキュベーションおよび/または処理中に、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または11回以上、混合またはボルテックスされる。
いくつかの態様では、細胞の組成物、例えば試験細胞組成物を、10℃未満の温度で、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションする。いくつかの態様において、温度は10℃〜45℃、または24℃〜40℃、または35℃〜39℃である。いくつかの態様において、温度は、少なくとも10℃もしくは少なくとも約10℃または10℃もしくは約10℃、少なくとも15℃もしくは少なくとも約15℃または15℃もしくは約15℃、少なくとも20℃もしくは少なくとも約20℃または20℃もしくは約20℃、少なくとも24℃もしくは少なくとも約24℃または24℃もしくは約24℃、少なくとも25℃もしくは少なくとも約25℃または25℃もしくは約25℃、少なくとも26℃もしくは少なくとも約26℃または26℃もしくは約26℃、少なくとも27℃もしくは少なくとも約27℃または27℃もしくは約27℃、少なくとも28℃もしくは少なくとも約28℃または28℃もしくは約28℃、少なくとも29℃もしくは少なくとも約29℃または29℃もしくは約29℃、少なくとも30℃もしくは少なくとも約30℃または30℃もしくは約30℃、少なくとも31℃もしくは少なくとも約31℃または31℃もしくは約31℃、少なくとも32℃もしくは少なくとも約32℃または32℃もしくは約32℃、少なくとも33℃もしくは少なくとも約33℃または33℃もしくは約33℃、少なくとも34℃もしくは少なくとも約34℃または34℃もしくは約34℃、少なくとも35℃もしくは少なくとも約35℃または35℃もしくは約35℃、少なくとも36℃もしくは少なくとも約36℃または36℃もしくは約36℃、少なくとも37℃もしくは少なくとも約37℃または37℃もしくは約37℃、少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃または38℃もしくは約38℃、少なくとも39℃もしくは少なくとも約39℃または39℃もしくは約39℃、あるいは少なくとも40℃もしくは少なくとも約40℃または40℃もしくは約40℃、あるいは前記のいずれかの間にある任意の範囲である。特定の態様では、細胞の組成物を、約37℃の温度で、PNGase FであるかPNGase Fを含む作用物質と接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションする。
特定の態様では、細胞の組成物を、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと接触させ、同作用物質で処理し、かつ/または同作用物質と共にインキュベーションし、10℃〜45℃、または24℃〜40℃、または35℃〜39℃の温度、例えば少なくとも10℃もしくは少なくとも約10℃または10℃もしくは約10℃、少なくとも15℃もしくは少なくとも約15℃または15℃もしくは約15℃、少なくとも20℃もしくは少なくとも約20℃または20℃もしくは約20℃、少なくとも24℃もしくは少なくとも約24℃または24℃もしくは約24℃、少なくとも25℃もしくは少なくとも約25℃または25℃もしくは約25℃、少なくとも26℃もしくは少なくとも約26℃または26℃もしくは約26℃、少なくとも27℃もしくは少なくとも約27℃または27℃もしくは約27℃、少なくとも28℃もしくは少なくとも約28℃または28℃もしくは約28℃、少なくとも29℃もしくは少なくとも約29℃または29℃もしくは約29℃、少なくとも30℃もしくは少なくとも約30℃または30℃もしくは約30℃、少なくとも31℃もしくは少なくとも約31℃または31℃もしくは約31℃、少なくとも32℃もしくは少なくとも約32℃または32℃もしくは約32℃、少なくとも33℃もしくは少なくとも約33℃または33℃もしくは約33℃、少なくとも34℃もしくは少なくとも約34℃または34℃もしくは約34℃、少なくとも35℃もしくは少なくとも約35℃または35℃もしくは約35℃、少なくとも36℃もしくは少なくとも約36℃または36℃もしくは約36℃、少なくとも37℃もしくは少なくとも約37℃または37℃もしくは約37℃、少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃または38℃もしくは約38℃、少なくとも39℃もしくは少なくとも約39℃または39℃もしくは約39℃、あるいは少なくとも40℃もしくは少なくとも約40℃または40℃もしくは約40℃、あるいは前記のいずれかの間にある任意の範囲の温度で実行されるインキュベーション後に、表面露出N-グリカンのうちの少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.9%が、細胞から除去される。特定の態様において、細胞の組成物は、PNGase FであるかまたはPNGase Fを含む作用物質と共に、10℃〜45℃、または24℃〜40℃、または35℃〜39℃の温度、例えば少なくとも10℃もしくは少なくとも約10℃または10℃もしくは約10℃、少なくとも15℃もしくは少なくとも約15℃または15℃もしくは約15℃、少なくとも20℃もしくは少なくとも約20℃または20℃もしくは約20℃、少なくとも24℃もしくは少なくとも約24℃または24℃もしくは約24℃、少なくとも25℃もしくは少なくとも約25℃または25℃もしくは約25℃、少なくとも26℃もしくは少なくとも約26℃または26℃もしくは約26℃、少なくとも27℃もしくは少なくとも約27℃または27℃もしくは約27℃、少なくとも28℃もしくは少なくとも約28℃または28℃もしくは約28℃、少なくとも29℃もしくは少なくとも約29℃または29℃もしくは約29℃、少なくとも30℃もしくは少なくとも約30℃または30℃もしくは約30℃、少なくとも31℃もしくは少なくとも約31℃または31℃もしくは約31℃、少なくとも32℃もしくは少なくとも約32℃または32℃もしくは約32℃、少なくとも33℃もしくは少なくとも約33℃または33℃もしくは約33℃、少なくとも34℃もしくは少なくとも約34℃または34℃もしくは約34℃、少なくとも35℃もしくは少なくとも約35℃または35℃もしくは約35℃、少なくとも36℃もしくは少なくとも約36℃または36℃もしくは約36℃、少なくとも37℃もしくは少なくとも約37℃または37℃もしくは約37℃、少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃または38℃もしくは約38℃、少なくとも39℃もしくは少なくとも約39℃または39℃もしくは約39℃、あるいは少なくとも40℃もしくは少なくとも約40℃または40℃もしくは約40℃、あるいは前記のいずれかの間にある任意の範囲の温度でインキュベーションされ、表面露出N-グリカンのうちの少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が細胞から除去される。
いくつかの態様において、細胞の組成物は、細胞を損傷せず殺すこともない条件下で細胞の表面からN-グリカンを除去するために、N-グリコシダーゼなどの作用物質、例えばPNGase Fと共にインキュベーションされる。いくつかの態様において、インキュベーションは、10℃〜45℃、または24℃〜40℃、または35℃〜39℃の温度、例えば少なくとも10℃もしくは少なくとも約10℃または10℃もしくは約10℃、少なくとも15℃もしくは少なくとも約15℃または15℃もしくは約15℃、少なくとも20℃もしくは少なくとも約20℃または20℃もしくは約20℃、少なくとも24℃もしくは少なくとも約24℃または24℃もしくは約24℃、少なくとも25℃もしくは少なくとも約25℃または25℃もしくは約25℃、少なくとも26℃もしくは少なくとも約26℃または26℃もしくは約26℃、少なくとも27℃もしくは少なくとも約27℃または27℃もしくは約27℃、少なくとも28℃もしくは少なくとも約28℃または28℃もしくは約28℃、少なくとも29℃もしくは少なくとも約29℃または29℃もしくは約29℃、少なくとも30℃もしくは少なくとも約30℃または30℃もしくは約30℃、少なくとも31℃もしくは少なくとも約31℃または31℃もしくは約31℃、少なくとも32℃もしくは少なくとも約32℃または32℃もしくは約32℃、少なくとも33℃もしくは少なくとも約33℃または33℃もしくは約33℃、少なくとも34℃もしくは少なくとも約34℃または34℃もしくは約34℃、少なくとも35℃もしくは少なくとも約35℃または35℃もしくは約35℃、少なくとも36℃もしくは少なくとも約36℃または36℃もしくは約36℃、少なくとも37℃もしくは少なくとも約37℃または37℃もしくは約37℃、少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃または38℃もしくは約38℃、少なくとも39℃もしくは少なくとも約39℃または39℃もしくは約39℃、あるいは少なくとも40℃もしくは少なくとも約40℃または40℃もしくは約40℃、あるいは前記のいずれかの間にある任意の範囲の温度で行われ、組成物中の細胞のうち約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%、約0.05%未満、約0.01%未満、約0.001%未満、または約0.0001%未満が、インキュベーション中に死に、かつ/またはアポトーシスもしくは壊死を開始する。
いくつかの態様では、細胞の組成物を、PNGase Fと共にインキュベーションし、PNGase Fで処理し、かつ/またはPNGase Fと接触させて、表面発現N-グリカンを細胞の表面から遊離させ、除去し、または脱離させる。特定の態様において、細胞組成物は、37℃または約37℃において、約30分、約60分、または30分〜60分の期間にわたってインキュベーションされる。いくつかの態様において、インキュベーションは、250RPMまたは約250RPMで揺動させながら実行される。いくつかの態様において、PNGase Fは融合ドメインを含有する。特定の態様において、融合ドメインはC末端Hisタグである。特定の態様において、PNGase Fは少なくとも95%純粋な調製物であり、かつ/または非PNGase Fタンパク質夾雑物が5%未満の調製物である。いくつかの態様において、PNGase Fは、37°±2℃の温度で30〜60分のインキュベーション後に天然または非変性タンパク質からN-グリカンを遊離させる脱グリコシル化活性を示す。いくつかの態様では、1×106〜5×106個の細胞または1×106〜2.5×106個の細胞の組成物を、PNGase FであるかまたはPNGase Fを含む作用物質で処理し、同作用物質と接触させ、または同作用物質と共にインキュベーションする。
3. 細胞の除去
いくつかの態様において、細胞を細胞の表面に発現したタンパク質からグリカン(例えばN-グリカン)を除去し、遊離させかつ/または脱離させる作用物質と共にインキュベーションすることを含む条件は、その処理、インキュベーションおよび/または接触が実行される溶液または培地へのグリカンの遊離をもたらす。特定の態様において、組成物の細胞はインキュベーション後も無傷であり、例えば細胞は、破裂せず、溶解せず、瀕死ではなく、かつ/または死んでいない。特定の態様において、細胞は、インキュベーションを実行した後に培地または溶液から除去される。特定の態様において、細胞は、細胞を破裂させず、溶解せず、かつ/または殺さない方法で、培地または溶液から除去される。いくつかの態様において、細胞は、遠心分離によって、例えば低速および/または低g遠心分離によって除去され、細胞を含有するペレットから上清が除去される。特定の態様において、上清は、処理、インキュベーションまたは接触中に細胞の表面から除去されたグリカン(例えばN-グリカン)を含有する。
特定の態様において、細胞は、遊離させた表面グリカンを含有する試料、溶液または培地から除去される。特定の態様において、グリカンは、培地または溶液から除去されかつ/または分離される。いくつかの態様では、溶液または培地がエバポレートされる。特定の態様において、溶液または培地は、真空遠心分離によって、例えばスピードバックを使って、エバポレートされる。特定の態様において、グリカンは、培地または溶液から除去されかつ/または分離された後、再懸濁される。いくつかの態様において、グリカンは、ある体積の緩衝液または溶液に再懸濁され得る。いくつかの態様において、緩衝液または溶液は、貯蔵に適している。特定の態様において、緩衝液は、グリカンを検出、同定および/または検出するための技術での使用に適している。特定の態様において、緩衝液または溶液は、化学反応、例えば標識可能なラベルの付加などといった誘導反応に適している。
B. グリカンの検出
いくつかの態様において、提供される方法によるインキュベーション後に、細胞の表面に発現しかつ/または露出しているタンパク質に結合しているグリカン(例えばN-グリカン)は、培地および/または溶液中に遊離し、除去されかつ/または脱離される。特定の態様において、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも25種、少なくとも30種、少なくとも35種、少なくとも40種、少なくとも45種、少なくとも50種、少なくとも55種、少なくとも60種、少なくとも65種、少なくとも70種、少なくとも75種、少なくとも80種、少なくとも85種、少なくとも90種、少なくとも95種、少なくとも100種、少なくとも125種、少なくとも150種、少なくとも175種、少なくとも200種、少なくとも225種、少なくとも250種、少なくとも300種、少なくとも350種、少なくとも400種、少なくとも450種、もしくは少なくとも500種、またはそれ以上のグリカン種(例えばN-グリカン種)が、培地または溶液に入る。特定の態様において、グリカン種(例えばN-グリカン種)は、検出可能なグリカン種である。いくつかの態様において、検出可能な種は、試料内で、または試料から生産し、生成させ、調製しかつ/または誘導することができる調製物から、検出、同定、測定および/または定量することができるN-グリカンである。
細胞組成物の高分解能表面N-グリカンマップを生成させるための方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、本方法は、細胞表面から、例えば細胞表面に露出している糖タンパク質から、除去され、遊離し、かつ/または脱離したN-グリカンを検出する工程を含む。特定の態様において、N-グリカンの検出には、N-グリカンを、例えば質量分析(MS)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって同定および/または定量することで、高分解能表面N-グリカン発現プロフィールを作成する工程が含まれる。特定の態様において、本明細書において提供される方法は、遊離したN-グリカンの試料を洗浄し、浄化し、かつ/または精製するための工程を含む。特定の態様において、本明細書において提供される方法は、例えばN-グリカンの検出を増加または増強するために、N-グリカンを誘導体化するための工程を含む。
1. 誘導および精製
特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)は、グリカンの検出を改良および/または増強するために修飾される。多くの例において、グリカンは、液体クロマトグラフィーおよび/または質量分析によって検出可能な強い発色団もしくは蛍光体または活性部分が存在しないために、容易には検出され得ない。いくつかの態様において、グリカンの吸光度および蛍光応答は比較的弱いか、検出のためのしきい値より低い場合もある。いくつかの態様において、アッセイの感度を最大限にする方策の一つは、関心対象の化合物、すなわちグリカンを、利用される特定の検出方法に関してより良い応答を示す誘導体に変換することである。特定の態様において、誘導体化剤は、誘導体化された分子の感度、収率および/または安定性を最大化することによって、分析の最終的な感度および精度に影響を及ぼし、またはそれらを左右する。したがっていくつかの態様において、細胞表面から遊離したグリカン(例えばN-グリカン)は、分析または検出のための何らかの手順に先だって誘導体化される。
いくつかの態様において、グリカンは、HPLCおよび/または質量分析に先だって誘導体化される。いくつかの態様において、既存の技術、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/または光学的検出または質量分析(MS)での検出によるN-グリカンの検出感度は、誘導工程によって改良および/または増強することができる。
いくつかの態様において、グリカン(例えばN-グリカン)は、質量分析による検出を可能にするためまたは改良するために誘導体化される。特定の態様において、グリカンは、グリカンがより容易に電荷を受容できるように誘導体化される。特定の態様において、電荷を受容できるグリカンおよび/または誘導体化されたグリカンは、質量分析計によって検出することができる。いくつかの態様において、グリカンは、アミノ基、例えば3級アミノ基を付加することによって誘導体化される。
いくつかの態様において、誘導体化は、グリカン(例えばN-グリカン)に検出可能なラベルを付加する工程であるか、または同工程を含む。いくつかの態様において、付加は共有結合である。特定の態様において、結合した検出可能ラベルは、結合した検出可能ラベルを含有しないN-グリカンの検出と比較して、N-グリカンの検出中に、シグナルを増加させかつ/または背景ノイズを低減する。特定の態様において、例えば限定するわけではないが蛍光ラベル、放射性ラベルおよび/または化学発光ラベルなどといった様々な検出可能ラベルはいずれも、本開示に従って使用することができる。特定の態様において、検出可能なラベルは蛍光ラベルである。特定の態様において、蛍光ラベルの結合、例えば共有結合は、カラム、例えばHPLCに適したカラムにおけるN-グリカンの移動を変化させない。特定の態様において、ラベルは蛍光ラベルであり、グリカンが未標識グリカンと比較して電荷をより容易に受容することを可能にする。
いくつかの態様において、遊離したグリカンは、誘導および/または化学的タグ付けを何も行うことなくそのまま、質量分析、例えばMALDI MSまたはESI-MS-MSによって分析することができる。いくつかの態様において、このラベルフリーアプローチは、グリカンの定性的分析に適している。しかし、いくつかの態様において、ラベルフリーアプローチは、単一タンパク質試料からのグリカンは、それらの間でイオン化効率が同じわけではないという点で極めて不均一な場合があるという事実ゆえに、相対定量にはそれほど適していない。したがっていくつかの態様では、定量的分析と定性的分析をどちらも実行することができる単一の分析プラットフォームが、例えば表面N-グリカン発現のプロフィールを決定するために使用される。蛍光検出器は色素そのものしか検出しないので、様々なグリカンからの蛍光応答は、相対定量のために使用することができる。いくつかの態様では、分析手順に誘導体化試薬または標識試薬が使用される。
いくつかの態様において、N-グリカンの誘導体化は、当技術分野における標準的技術によって実行される。数多くのN-グリカン誘導体化技術が記載されており、Ruhaak et al.,Analytical and Bioanalytical Chemistry 397(8):3457-3481(2010)に総説がある。いくつかの態様において、誘導体化は、2つ以上の反応工程を含む化学反応によって実行される。いくつかの態様において、誘導体化は、還元的アミノ化反応、パーメチル化反応、マイケル付加反応、またはヒドラジド標識反応によって実行される。特定の態様において、標識反応に必要な官能基を提供する様々な化合物を使用することができる。特定の態様において、誘導体化は、単一反応工程の化学反応によって実行される。誘導体化および/またはN-グリカンに検出可能ラベルを共有結合するのに適した、単一反応工程の化学反応によってグリカンにラベルを付加する標識剤としては、アミンと迅速に反応する官能基(例えばイソシアネートまたはスクシンイミジルカルバメート(succidimidylcarbamate))を含有する作用物質が挙げられる。そのような標識剤および蛍光ラベルは米国特許出願公開US20140242709に記載されている。
特定の態様において、N-グリカンは還元的アミノ化によって標識される。この反応では、1級アミン基を含有するラベルがグリカンのアルデヒド基と縮合反応で反応することでイミンまたはシッフ塩基をもたらし、それが還元剤によって還元されて2級アミンを与える。いくつかの態様において、反応は、酢酸、テトラヒドロフラン、またはメタノールを含有するジメチルスルホキシド中で実行される。いくつかの態様において、還元的アミノ化は、1つのN-グリカンにつき1つのラベルの化学量論的結合をもたらすことで、蛍光またはUV吸光度の強度に基づく直接的定量を可能にする。
グリカンの還元的アミノ化には様々なラベルが使用されてきた。いくつかの態様では、2-アミノベンズアミド(2-AB)、2-アミノ安息香酸(2-AA)、2-アミノピリジン(PA)、2-アミノアクリドン(AMAC)、2-アミノナフタレントリスルホン酸(ANTS)、および1-アミノピレン-3,6,8-トリスルホン酸(APTS)、3-(アセチルアミノ)-6-アミノアクリジン(AA-Ac)、6-アミノキノリン(6-AQ)、7-アミノメチル-クマリン(AMC)、2-アミノ(6-アミド-ビオチニル)ピリジン(BAP)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)-ヒドラジド、1,2-ジアミノ-4,5-メチレンジオキシ-ベンゼン(DMB)、もしくはo-フェニレンジアミン(OPD)であるか、またはそれらを含む蛍光ラベルが、グリカンに付加される。
特定の態様において、N-グリカンは市販のラベルで標識される。2-ABタグ、2-AAタグおよびPAタグ用の標識キット(Ludger)ならびにAPTSによる標識(Beckmancoulter)およびANTSによる標識(Prozyme)のための標識キットを入手することができる。いくつかの態様において、標識剤および/または蛍光ラベルはRapiFluor-MS(Waters Technologies Corporation)である。
いくつかの態様において、標識剤は、蛍光部分と、アミンと迅速に反応する官能基(例えばイソシアネートまたはスクシンイミジルカルバメート(succidimidylcarbamate))とを含有する。いくつかの態様において、標識剤は、3級アミノ基または他のMS活性原子、蛍光部分、およびアミンと迅速に反応する官能基(例えばイソシアネートまたはスクシンイミジルカルバメート(succidimidylcarbamate))のうちの1つまたは複数を含有する。
特定の態様において、標識剤は、ファンキノン類もしくはベンゾオキサジアゾール類であるかまたはそれを含む蛍光部分を含有する。いくつかの態様において、標識試薬は、クマリン類である蛍光部分を含有する。クマリン類の適切な例としては、クマリン7(3-(2,-ベンゾイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン)、ナイルレッド誘導体、クマリン4(7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン)、クマリン120(7-アミノ-4-メチルクマリン)、クマリン2(7-アミノ-4-メチルクマリン)、クマリン466(7-ジエチルアミノクマリン)、クマリン47(7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン)、クマリン6H(2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロキノリジノ-[9,9a,1-gh]クマリン)、クマリン152A(7-ジエチルアミノ-4-トリフルオルメチルクマリン)、クマリン152(7-ジメチルアミノ-4-トリフルオルメチルクマリン)、クマリン151(7-アミノ-4-トリフルオルメチルクマリン)、クマリン6H(2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロキノリジノ-[9,9a,1-gh]クマリン)、クマリン307(7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオルメチルクマリン)、クマリン500(7-エチルアミノ-4-トリフルオルメチルクマリン)、クマリン314(2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-カルボエトキシキノリジノ-[9,9a,1-gh]クマリン)、クマリン510(2,3,5,6-U-4H-テトラヒドロ-9-(3-ピリジル)-キノリジノ-[9,9a,gh]クマリン)、クマリン30(3-2’-N-メチルベンゾイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン)、クマリン552(N-メチル-4-トリフルオルメチルピペリジノ-3,2-g]-クマリン)、クマリン6(3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
いくつかの態様において、標識剤は、ローダミン類である蛍光部分を含有する。適切なローダミン類としては、ローダミン110(o-(6-アミノ-3-イミノ-3H-キサンテン-9-イル)安息香酸)、ローダミン19(安息香酸,2-[6-(エチルアミノ)-3-(エチルイミノ)-2,7-ジメチル-3H-キサンテン-9-イル],過塩素酸塩)、ローダミン6G(安息香酸,2-[6-(エチルアミノ)-3-(エチルイミノ)-2,7-ジメチル-3H-キサンテン-9-イル]-エチルエステル,一塩酸塩)、ローダミンB(2-[6-(ジエチルアミノ)-3-(ジエチルイミノ)-3H-キサンテン-9-イル]安息香酸)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、蛍光部分はフルオレセイン類である。フルオレセイン(fluorscein)類としては、ウラニン(フルオレセイン二ナトリウム)およびフルオレセイン27(2,7-ジクロロフルオレセイン)を挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。
特定の態様において、標識剤は、フェニル置換オキサゾール類またはフラン類である蛍光部分を含む。いくつかの態様において、蛍光部分はPPO(2,5-ジフェニルオキサゾール)、α-NPO(2-(1-ナフチル)-5-フェニルオキサゾール)、BBO(2,5-ビス-(4-ビフェニリル)-オキサゾール)、およびPOPOP(1,4-ジ[2-(5-フェニルオキサゾリル)]ベンゼン)である。特定の態様において、蛍光部分はクアテルフェニル類を含む。特定の態様において、クアテルフェニル類としては、TMQ(3,3’,2’,3’’’-テトラメチル-p-クアテルフェニル)、BMQ(2,2’’’-ジメチル-p-クアテルフェニル)、DMQ(2-メチル-5-t-ブチル-p-クアテルフェニル)、PQP(p-クアテルフェニル)、ポリフェニル1(p-クアテルフェニル-4-4’’’-ジスルホン酸二ナトリウム塩)、ポリフェニル2(p-クアテルフェニル-4-4’’’-ジスルホン酸二カリウム塩、BiBuQ(4,4’’’-ビス-(2-ブチルオクチルオキシ)--クアテルフェニル)、BM-テルフェニル(2,2’’-ジメチル-p-テルフェニル)、およびFTP(p-テルフェニル)が挙げられる。いくつかの態様において、蛍光部分は、アザキノロン類またはカルボスチリル類、例えば限定するわけではないが、カルボスチリル7(7-アミノ-4-メチルカルボスチリル)、カルボスチリル3(7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2)、およびキノロン390(7-ジメチルアミノ-1-メチル-4-メトキシ-8-アザキノロン-2)である。いくつかの態様において、蛍光部分はベンゾオキサゾール類、ベノフラン類(benofrans)、またはベンゾチアゾール類であり、それらの例としては、DASBTI(ヨウ化2-(p-ジメチルアミノスチリル)-ベンゾチアゾリルエチル)、クマリン6(3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン)、スチリル9M(2-(6-(4-ジメチルアミノフェニル)-2,4-ネオペンチレン-1,3,5-ヘキサトリエニル)-3-メチル-ベンゾチアゾリム過塩素酸塩)、スチリル15(2-(6-(9-(2,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ(ij)-キノリジニウム))-2,4-ネオペンチレン-1,3,5-ヘキサトリエニル)-3-メチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩)、スチリル14(2-(8-(4-p-ジメチルアミノフェニル))-メチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩)、スチリル20(2-(8-(9-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ(ij)-キノリジニウム))-2,4-ネオペンチレン-1,3,5,7-オクタテトラエニル)-3-メチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩)、フラン1(ベンゾフラン,2,2’-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル-ビス-テトラスルホン酸(テトラナトリウム塩))、およびPBBO(2-(4-ビフェニリル)-6-フェニルベンゾオキサゾール-1,3)が挙げられる。
いくつかの態様において、蛍光部分は置換スチルベンである。置換スチルベンの例としては、DPS(4,4’-ジフェニルスチルベン)、スチルベン1([1,1’-ビフェニル]-4-スルホン酸,4’,4’’-1;2-エテン-ジイルビス-,二カリウム塩)およびスチルベン3(2,2’-([1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルジ-2,1エテンジイル)-ビス-ベンゼンスルホン酸二ナトリウム塩)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、標識剤は、アミンと迅速に反応する官能基、蛍光部分および任意で1つまたは複数の3級アミノ基または他のMS活性原子を含有する。いくつかの態様において、アミンと迅速に反応する官能基はフルオロール7GA(2-ブチル-6-(ブチルアミノ)-1Hベンゾ[de]イソキノリン-1,2(2H)-ジオンである。スルホローダミンB(エタナミニウム,N-[(6-ジエチルアミノ)-9-(2,4-ジスルホフェニル)-3H-キサンテン-3-イリデン]-N-エチルヒドロキシド,分子内塩,ナトリウム塩)およびスルホローダミン101(8-(2,4-ジスルホフェニル)-2,3,5,6,11,12,14,15-オクタヒドロ-1H,4H,10H,13H-ジキノリジノ[9,9a,1-bc:9’,9a’,1-hi]キサンテン)である。
いくつかの態様において、標識剤中の蛍光部分は、ピロメテン類、例えばピロメテン546(1,3,5,7,8-ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体)、ピロメテン556(ニナトリウム-1,3,5,7,8-ペンタメチルピロメテン-2,6-ジスルホネート-ジフルオロボレート錯体)、
(二ナトリウム-1,3,5,7,8-ペンタメチルピロメテン-2,6-ジスルホネート-ジフルオロボレート
ピロメテン567(2,6-ジエチル-1,3,5,7,8-ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体)、ピロメテン580(2,6-ジ-n-ブチル-1,3,5,7,8-ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体)、ピロメテン597(2,6-ジ-t-ブチル-1,3,5,7,8-ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体)、およびピロメテン650(8-シアノ-1,2,3,5,6,7-ヘキサメチルピロメテンジフルオロボレート錯体)である。
特定の態様において、標識剤中の蛍光部分はピレン誘導体、例えばN-(1-ピレン)マレイミド、またはピラニン(8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム)である。
特定の態様において、標識試薬は、3級アミノ基または他のMS活性原子と、アミンと迅速に反応する官能基(例えばイソシアネートまたはスクシンイミジルカルバメート(succidimidylcarbamate))とを含む。特定の態様において、アミノ基またはMS活性基は、MSによるグリカンの検出性を増加させる。特定の態様において、蛍光部分は良好な蛍光シグナルを提供し、反応性官能基は所望の生体分子の迅速なタグ付けを与える。特定の態様において、蛍光ラベルおよび/または標識試薬はキノリニル蛍光体を含む。特定の態様において、蛍光ラベルはカルバメート標識基を含む。いくつかの態様において、蛍光ラベルおよび/または標識は塩基性第3級アミンを含む。特定の態様において、蛍光体は、カルバメート標識基、キノロン蛍光体、および第3級アミンを含む。
いくつかの態様では、グリカンを、1分、約1分もしくは少なくとも1分、2分、約2分もしくは少なくとも2分、3分、約3分もしくは少なくとも3分、5分、約5分もしくは少なくとも5分、10分、約10分もしくは少なくとも10分、15分、約15分もしくは少なくとも15分、20分、約20分もしくは少なくとも20分、25分、約25分もしくは少なくとも25分、30分、約30分もしくは少なくとも30分、35分、約35分もしくは少なくとも35分、40分、約40分もしくは少なくとも40分、45分、約45分もしくは少なくとも45分、50分、約50分もしくは少なくとも50分、55分、約55分もしくは少なくとも55分、60分、約60分もしくは少なくとも60分、1.5時間、約1.5時間もしくは少なくとも1.5時間、2時間、約2時間もしくは少なくとも2時間、3時間、約3時間もしくは少なくとも3時間、4時間、約4時間もしくは少なくとも4時間、5時間、約5時間もしくは少なくとも5時間、6時間、約6時間もしくは少なくとも6時間、または両端を含む1分〜1時間、1分〜30分、1分〜10分、5分〜15分、もしくは15分〜30分、1時間〜6時間、3時間〜12時間、もしくは12時間〜48時間(両端の値を含む)にわたって、誘導体化試薬もしくは標識試薬と接触させ、当該試薬で処理し、かつ/または当該試薬と共にインキュベーションする。いくつかの態様では、グリカンを、溶媒、例えば有機溶媒の存在下で、標識試薬および/もしくは誘導体化試薬と接触させかつ/または当該試薬で処理する。いくつかの態様において、溶媒は親水性である。特定の態様において、溶媒は非プロトン性溶媒である。特定の態様において、溶媒はアミド、例えば有機アミド、スルホンアミド、ホスホラミド、またはホルムアミドである。いくつかの態様では、標識試薬および/または誘導体化試薬を、ホルムアミドである溶媒の存在下で、グリカンと接触させ、グリカンで処理し、かつ/またはグリカンと共にインキュベーションする。特定の態様では、標識試薬および/または誘導体化試薬を、ジメチルホルムアミドの存在下で、グリカンと接触させ、グリカンで処理し、かつ/またはグリカンと共にインキュベーションする。
いくつかの態様では、グリカンを、ある温度で、誘導体化試薬もしくは標識試薬と接触させ、当該試薬で処理し、かつ/または当該試薬と共にインキュベーションする。いくつかの態様において、温度は、10℃〜45℃、または24℃〜37℃、または23℃〜27℃である。いくつかの態様において、温度は、少なくとも10℃もしくは少なくとも約10℃または10℃もしくは約10℃、少なくとも15℃もしくは少なくとも約15℃または15℃もしくは約15℃、少なくとも20℃もしくは少なくとも約20℃または20℃もしくは約20℃、少なくとも24℃もしくは少なくとも約24℃または24℃もしくは約24℃、少なくとも25℃もしくは少なくとも約25℃または25℃もしくは約25℃、少なくとも26℃もしくは少なくとも約26℃または26℃もしくは約26℃、少なくとも27℃もしくは少なくとも約27℃または27℃もしくは約27℃、少なくとも28℃もしくは少なくとも約28℃または28℃もしくは約28℃、少なくとも29℃もしくは少なくとも約29℃または29℃もしくは約29℃、少なくとも30℃もしくは少なくとも約30℃または30℃もしくは約30℃、少なくとも31℃もしくは少なくとも約31℃または31℃もしくは約31℃、少なくとも32℃もしくは少なくとも約32℃または32℃もしくは約32℃、あるいは前記のいずれかの間にある任意の範囲である。特定の態様では、グリカンを、室温で、例えば23℃〜27℃、24℃〜26℃、あるいは24℃もしくは約24℃、25℃もしくは約25℃、または26℃もしくは約26℃で、誘導体化試薬もしくは標識試薬と接触させ、当該試薬で処理し、または当該試薬と共にインキュベーションする。
いくつかの態様では、グリカンを、誘導体化試薬もしくは標識試薬と共にインキュベーションし、当該試薬で処理し、および/または当該試薬と接触させる。いくつかの態様において、誘導体化試薬もしくは標識試薬は、2-アミノベンズアミド(2-AB)、2-アミノ安息香酸(2-AA)、2-アミノピリジン(PA)、2-アミノアクリドン(AMAC)、2-アミノナフタレントリスルホン酸(ANTS)、および1-アミノピレン-3,6,8-トリスルホン酸(APTS)、3-(アセチルアミノ)-6-アミノアクリジン(AA-Ac)、6-アミノキノリン(6-AQ)、7-アミノメチル-クマリン(AMC)、2-アミノ(6-アミド-ビオチニル)ピリジン(BAP)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)-ヒドラジド、1,2-ジアミノ-4,5-メチレンジオキシ-ベンゼン(DMB)、またはo-フェニレンジアミン(OPD)である。いくつかの態様では、グリカンを、室温、例えば23℃〜27℃、24℃〜26℃、あるいは24℃もしくは約24℃、25℃もしくは約25℃、または26℃もしくは約26℃で、5分間または約5分間、誘導体化試薬もしくは標識試薬と共にインキュベーションする。
特定の態様において、誘導試薬および/もしくは標識試薬と接触させ、誘導試薬および/もしくは標識試薬と共にインキュベーションし、かつ/または誘導試薬および/もしくは標識試薬で処理したときに起こる誘導反応および/または標識反応は、反応をクエンチすることによって停止させる。いくつかの態様において、反応は、クエンチング剤によってクエンチされる。特定の態様において、誘導反応および/または標識反応は、グリカンの何らかの分析または定量を、例えばクロマトグラフィーおよび/または質量分析技術によって行う前に、クエンチされる。誘導体化反応および標識反応をクエンチするための適切な作用物質は公知であり、いくつかの局面では、具体的な誘導体化反応または標識反応に依存するであろう。いくつかの局面において、誘導試薬および/または標識試薬は、2-アミノベンズアミド(2-AB)、2-アミノ安息香酸(2-AA)、2-アミノピリジン(PA)、2-アミノアクリドン(AMAC)、2-アミノナフタレントリスルホン酸(ANTS)、および1-アミノピレン-3,6,8-トリスルホン酸(APTS)、3-(アセチルアミノ)-6-アミノアクリジン(AA-Ac)、6-アミノキノリン(6-AQ)、7-アミノメチル-クマリン(AMC)、2-アミノ(6-アミド-ビオチニル)ピリジン(BAP)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)-ヒドラジド、1,2-ジアミノ-4,5-メチレンジオキシ-ベンゼン(DMB)、またはo-フェニレンジアミン(OPD)であり、反応はニトリル、例えば有機ニトリルを添加することによってクエンチされる。いくつかの態様において、反応はアセトニトリルでクエンチされる。
2. グリカンの精製
特定の態様において、グリカンを含有する細胞外溶液の試料は、分析用に、例えば質量分析用に調製される。いくつかの態様において、グリカン(例えばN-グリカン)の試料は、分析前に精製される。いくつかの態様において、精製は、N-グリカンの検出を混乱させ、妨害し、かつ/または弱める存在またはその可能性がある存在からN-グリカンを分離することができる任意の方法を含む。いくつかの態様では、細胞デブリ、脱グリコシル化されたタンパク質、PNGase F、緩衝液/製剤構成成分、界面活性剤、標識反応副生成物、ならびに/または過剰な標識試薬およびもしくは誘導体化試薬からN-グリカンを取り出すために、精製工程が実行される。特定の態様において、精製工程は、標識されたグリカン(例えばN-グリカン)、例えば検出可能なラベルが共有結合しているグリカンに対して実行される。特定の態様において、精製は、例えば限定するわけではないが固相抽出(SPE)、液液抽出、ゲル濾過、ペーパークロマトグラフィー、および沈殿など、グリカンを精製するための任意の適切な技術によって実行される。
いくつかの態様において、精製は固相抽出(SPE)であるか固相抽出(SPE)を含む。特定の態様において、SPEは、液体混合物に溶解または懸濁された化合物が混合物中の他の化合物から、例えばそれぞれの物理的特性および/または化学的特性に従って分離される試料調製プロセスである。特定の態様において、化学的誘導体化、例えば検出可能ラベルの付加は、N-グリカンの分析前に実行され、SPEは、検出前にN-グリカンからの誘導に使用された試薬を除去するために実行される。特定の態様において、液体混合物に溶解または懸濁されたN-グリカンは、混合物中の他の化合物から分離される。特定の態様において、SPEは、液体(すなわち移動相)に溶解または懸濁された溶質、例えばグリカンの、試料が通過する個体(すなわち固定相)に対する親和性を利用して、混合物を所望の構成成分と不要な構成成分とに分離するプロセスである。いくつかの態様において、所望の構成成分、すなわちグリカンは、固定相に保持される。特定の態様において、試料の不要な構成成分は固定相に保持される。特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)は固定相に保持され、固定相を通過する溶液は捨てられる。特定の態様において、不要な構成成分は固定相に保持され、固定相を通過する溶液はグリカン(例えばN-グリカン)を含有していて、収集される。いくつかの態様において、固定相はグリカンを保持し、そのグリカンは次に、固相に溶離液を通し、かつ/または固相を溶離液でリンスすることによって、固定相から取り出される。
いくつかの態様において、誘導を経たグリカン(例えばN-グリカン)は、検出前に精製される。いくつかの態様において、精製は固相抽出(SPE)によって実行される。いくつかの態様において、SPEは、誘導プロセス後のグリカンに実行される。特定の態様において、塩、例えば1つまたは複数の誘導反応からの過剰な塩は、SPEによってグリカン(例えばN-グリカン)から除去される。特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)は、誘導反応後にSPEを受ける。いくつかの態様において、SPEは、例えば還元的アミノ化反応またはヒドラジド標識などによって検出可能ラベルをグリカン(例えばN-グリカン)に付加した後に実行される。いくつかの態様において、SPEは、1つまたは複数の誘導反応からの過剰の標識試薬を、グリカン試料から除去する。
いくつかの態様において、SPEの固相はカートリッジであるかまたはそれを含む。特定の態様において、グリカンを保持し、収集し、かつ/または結合する固相は、水溶液からグリカンを吸着するために使用し得るポリアミド吸着剤を含有する。いくつかの態様において、溶液は、重力、減圧または陽圧を使って、これらのカートリッジを通過させることができる。特定の態様において、カートリッジは、グリカンを他の材料、例えば塩、部分、試薬および/または細胞デブリなどから、N-グリカンの疎水性と他の材料の疎水性の差に応じて抽出する。いくつかの態様において、調製用のSPE材料はC18およびチャコールであり、これらはどちらもグリカンに対して高い選択性を有する。
いくつかの態様において、SPEは市販のキットで実行される。特定の態様において、SPEは、製造者の説明書に従って実行される。N-グリカンのSPEであるかまたはそれを含む適切なキットとしては、GLYCOCLEAN Hカートリッジ(GKI-4025 ProZyme)、ADVANCE BIO N-グリカン脱グリコシル化クリーンアップカートリッジ(Agilent)、Ludger Clean T1カートリッジ(LC-T1-A6、Ludger)、GlycoWorks 2-AB N-グリカンキット(Waters)、およびGlycoWorks RapiFluor-MS N-グリカンキット(Waters)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
いくつかの態様において、SPEは、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)SPEプロセスによって実行される。いくつかの態様において、SPEは、まず、収着剤を水でコンディショニングしてから、それを高アセトニトリルローディング条件と平衡化することによって実行される。特定の態様において、N-グリカン試料はアセトニトリルで希釈され、ローディングされ、酸性洗浄溶媒を使って試料マトリックスが洗浄除去される。いくつかの態様において、SPEプロセスで使用されるカラム、チューブ、カートリッジまたはウェルは、水、例えば蒸留水でコンディショニングされる。いくつかの態様において、カラム、チューブ、カートリッジまたはウェルは、有機溶媒、例えばアセトニトリルでコンディショニングされる。いくつかの態様において、グリカンを含有する試料または溶液は、カラム、チューブ、カートリッジまたはウェルにローディングされる。特定の態様において、グリカンを含有するカラム、チューブ、カートリッジまたはウェルは、少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回、洗浄および/またはリンスされる。特定の態様において、グリカンを含有するカラム、チューブ、カートリッジまたはウェルは溶液で洗浄および/またはリンスされる。いくつかの態様において、溶液は水であるかまたはそれを含む。特定の態様において、溶液はアセトニトリルであるかまたはそれを含む。特定の態様において、溶液はギ酸であるかまたはそれを含む。特定の態様において、カラム、チューブ、カートリッジまたはウェルは、水、アセトニトリルおよびギ酸を含む溶液中でリンスおよび/または洗浄される。
いくつかの態様では、グリカンをカラム、チューブ、カートリッジまたはウェルから溶出させる。特定の態様では、酢酸アンモニウムであるかまたはそれを含む溶液で、グリカンを溶出させる。特定の態様では、アセトニトリルであるかまたはそれを含む溶液で、グリカンを溶出させる。特定の態様では、酢酸アンモニウムおよびアセトニトリルを含む溶液で、グリカンを溶出させる。特定の態様では、1mM、約1mMもしくは少なくとも1mM、5mM、約5mMもしくは少なくとも5mM、10mM、約10mMもしくは少なくとも10mM、20mM、約20mMもしくは少なくとも20mM、50mM、約50mMもしくは少なくとも50mM、100mM、約100mMもしくは少なくとも100mM、150mM、約150mMもしくは少なくとも150mM、200mM、約200mMもしくは少なくとも200mM、250mM、約250mMもしくは少なくとも250mM、300mM、約300mMもしくは少なくとも300mM、400mM、約400mMもしくは少なくとも400mM、500mM、約500mMもしくは少なくとも500mM、または1,000mM、約1000mMもしくは少なくとも1000mMの酢酸アンモニウムを含有する溶液で、グリカンを溶出させる。特定の態様では、0.1%、約0.1%もしくは少なくとも0.1%、0.5%、約0.5%もしくは少なくとも0.5%、1%、約1%もしくは少なくとも1%、2%、約2%もしくは少なくとも2%、3%、約3%もしくは少なくとも3%、4%、約4%もしくは少なくとも4%、5%、約5%もしくは少なくとも5%、6%、約6%もしくは少なくとも6%、7%、約7%もしくは少なくとも7%、8%、約8%もしくは少なくとも8%、9%、約9%もしくは少なくとも9%、10%、約10%もしくは少なくとも10%、15%、約15%もしくは少なくとも15%、20%、約20%もしくは少なくとも20%、25%、約25%もしくは少なくとも25%、または50%、約50%もしくは少なくとも50%のアセトニトリルを含有する溶液で、グリカンを溶出させる。特定の態様において、200または約200mM酢酸アンモニウムおよび5または約5%アセトニトリルを含有する溶液で、グリカンを溶出させる。
いくつかの態様において、洗浄条件は、アミノプロピルHILIC収着剤と反応副生成物との間に静電反発を導入することによって、およびマトリックス構成成分の溶解度を高めることによって、最適なSPE選択性を達成する。特定の態様では、次に、標識された遊離グリカンをHILIC収着剤から溶出させる。特定の態様において、SPE収着剤は、弱塩基性の表面を有し、またカチオン反発能を有すると共にアニオン交換能も有するので、イオン強度がかなり大きい溶離液では、標識されたグリカンが溶出される。したがっていくつかの態様において、溶離緩衝液は、5%アセトニトリル中の200mM酢酸アンモニウムのpH7溶液を含む。特定の態様において、標識されたグリカンが溶出したら、それらを有機溶媒の混合物、例えばアセトニトリルおよびジメチルホルムアミドで希釈し、蛍光および/またはESI-MS検出を使って、そのままUPLCまたはHPLC HILICカラムクロマトグラフィーで分析することができる。
いくつかの態様では、試料、溶液および/または培地中のグリカン(例えばN-グリカン)の量または濃度が調節される。特定の態様において、試料、溶液および/または培地中のグリカン(例えばN-グリカン)の量または濃度は、試料、溶液および/または培地を所望の濃度までエバポレートすること、ならびにグリカン(例えばN-グリカン)を溶液に所望の濃度になるように再懸濁することによって調節される。いくつかの態様において、グリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料、溶液および/または培地の体積は、試料、溶液および/または培地をエバポレートすることおよびグリカンを所望の体積の溶液に再懸濁することによって調節される。いくつかの態様において、試料、溶液および/または培地は、真空遠心分離によってエバポレートされる。
特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料、溶液および/または培地は、精製工程前、例えばSPE前に、エバポレートされる。いくつかの態様において、グリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料、溶液および/または培地は、精製工程前に、真空遠心分離によってエバポレートされる。いくつかの態様において、グリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料、溶液および/または培地は、精製工程後にエバポレートされる。特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料、溶液および/または培地は、精製工程後に真空遠心分離によってエバポレートされる。特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料、溶液および/または培地は、検出前、例えばHPLCおよび/またはMSによる検出前に、エバポレートされる。いくつかの態様において、グリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料、溶液および/または培地は、検出前に真空遠心分離によってエバポレートされる。いくつかの態様において、真空遠心分離は、グリカンを含有する試料の体積を異なる工程または手順用に変化させまたは調節することを可能にする。例えば、不要な材料、例えば細胞デブリが、SPEカラムまたはSPEカートリッジを詰まらせないように、SPEによるN-グリカン精製の前に、体積を増加させることができるだろう。そのような例では、グリカンを含有する溶出液を真空遠心分離にかけ、例えばHPLCまたは質量分析による分析のために、より小さな体積に再懸濁し得る。
3.グリカンのプロファイリング
試料中のグリカンの有無または試料中に存在するグリカンのレベルを決定することによって細胞表面のグリカン(例えばN-グリカン)を評価するための方法が提供される。特定の態様において、試料は、細胞組成物、例えば試験細胞組成物中に存在する細胞の表面から遊離し、除去されまたは脱離されたグリカンを含有する。特定の態様において、細胞の表面から遊離したグリカン(例えばN-グリカン)を含有する試料が、試料中のグリカンの有無または試料中に存在するグリカンのレベルを決定するために評価され、かつ/または分析される。
いくつかの態様において、単離されたおよび/または遊離させた表面グリカンは、グリカン(例えばN-グリカン)の検出、分析および/または単離に適した当技術分野における任意の公知技術によって、分析または評価され得る。例えば特定の態様において、グリカンは、Anumula,Anal.Biochem.350(1):1,2006、Klein et al.,Anal.Biochem.,179:162,1989および/またはTownsend,R.R.Carbohydrate Analysis High Performance Liquid Chromatography and Capillary Electrophoresis,Ed.Z.El Rassi,pp 181-209,1995に記載されている1つまたは複数の利用可能な方法を使って分析される。例えばいくつかの態様において、グリカンは、クロマトグラフィー法、電気泳動法、核磁気共鳴法、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数を使って特徴付けられる。例示的なそのような方法としては、例えばNMR、質量分析、液体クロマトグラフィー、二次元クロマトグラフィー、SDS-PAGE、抗体染色、レクチン染色、単糖定量、キャピラリー電気泳動、蛍光体支援糖質電気泳動(FACE)、ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)、エキソグリコシダーゼまたはエンドグリコシダーゼ処理、およびそれらの組合せが挙げられる。当業者は、グリカンを特徴付けるために使用することができる方法を他にも知っているであろう。特定の態様において、単離された表面グリカンは、液体クロマトグラフィー、蛍光検出、および/もしくは質量分析であるかまたはそれを含む技術によって、分析または評価される。
a. クロマトグラフィー
いくつかの態様では、試料中に存在するグリカン(例えばN-グリカン)を分析するために、高速液体クロマトグラフィーを含む液体クロマトグラフィー(LC)が使用される。グリカンの研究には、アニオン交換クロマトグラフィー、逆相HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、高速アニオン交換クロマトグラフィー、およびNP-HPLCを含む順相(NP)クロマトグラフィーなど、様々な形態のLCを使用することができる。親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)は、部分的に水系の移動相を使って実行することができるNP-HPLCの変形であり、これはペプチド、糖質、核酸および多くのタンパク質の順相分離を可能にする。いくつかの態様において、試料中のグリカンは、HPLCもしくはHILICなどのLCによって、またはLCを含む方法によって、検出される。
特定の態様において、液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、またはウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィー(UPLC)である。いくつかの態様において、HPLCは伝統的な(「低圧」)液体クロマトグラフィーとは区別される。なぜなら、通常の液体クロマトグラフィーが典型的には重力に頼って移動相をカラムに通すのに対して、操作圧が50〜350bar(725〜5070psi)と、著しく高いからである。UHPLCは1030bar(15,000psi)の圧力で作動する。
いくつかの態様において、試料中のグリカンは、HILICによってまたはHILICを含む方法によって検出される。いくつかの態様において、HILICは、本明細書に記載する方法において使用することができるHPLCの一形態である。HILICは、分析物と固定相(例えば基材)との間の極性相互作用に基づいて分析物を分離する。極性分析物は極性固定相と会合し、極性固定相によって保持される。吸着強度は、分析物の極性が増加するにつれて増加し、極性分析物と(移動相との比較で)極性固定相との間の相互作用は、溶出時間を増加させる。移動相に極性の高い溶媒を使用すると分析物の保持時間は減少することになり、一方、溶媒の疎水性が高いと、保持時間は増加する傾向を示す。HILICの場合、溶出順序は、逆相HPLCとは反対で、最も極性の低いものから、最も極性の高いものである。いくつかの態様において、HILICはHPLCシステムで実行することができる。
特定の態様において、グリカンは、HILICによってまたはHILICを含む方法によって検出される。いくつかの態様において、HILICでは、例えばカラムクロマトグラフィーの場合であれば、シリカ、アミノ、アミド、セルロース、シクロデキストリンおよびポリスチレン基材など、様々なタイプの基材を使用することができる。例えばカラムクロマトグラフィーにおいて使用することができる有用な基材の例としては、ポリスルホエチルアスパルトアミド(polySulfoethyl Aspartamide)(例えばPolyLC製)、スルホベタイン基材、例えばZIC(登録商標)-HILIC(例えばSeQuant製)、POROS(登録商標)HS(例えばApplied Biosystems製)、POROS(登録商標)S(例えばApplied Biosystems製)、ポリヒドロエチルアスパルトアミド(PolyHydroethyl Aspartamide)(例えばPolyLC製)、Zorbax 300 SCX(例えばAgilent製)、PolyGLYCOPLEX(登録商標)(例えばポリLC製)、Amide-80(例えばTosohaas製)、TSK GEL(登録商標)Amide-80(例えばTosohaas製)、ポリヒドロキシエチルA(例えばPolyLC製)、Glyco-Sep-N(例えばOxford GlycoSciences製)およびAtlantis HILIC(例えばWaters製)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。好ましいカラムとしては、ポリスルホエチルアスパルトアミドおよびZIC(登録商標)-HILICが挙げられ、最も好ましいカラムはポリスルホエチルアスパルトアミドである。開示される方法において使用することができるカラムとして、以下の官能基のうちの1つまたは複数を利用するカラムが挙げられる:カルバモイル基、スルホプロピル基、スルホエチル基(例えばポリ(2-スルホエチルアスパルトアミド))、ヒドロキシエチル基(例えばポリ(2-ヒドロキシエチルアスパルトアミド))および芳香族スルホン酸基。好ましい官能基として、ポリ(2-スルホエチルアスパルトアミド)などのスルホエチル基およびCH2N(CH3)2CH2CH2CH2SO3などのスルホプロピル基が挙げられる。
いくつかの態様において、LCで分析したグリカンは、次に、質量分析による分析に供される。グリカンをさらに分析するために使用することができる質量分析の例としては、ESI-MS、ターボスプレーイオン化質量分析、ナノスプレーイオン化質量分析、サーモスプレーイオン化質量分析、ソニックスプレーイオン化質量分析、SELDI-MSおよびMALDI-MSが挙げられる。例えば本明細書に記載する方法は、LCで評価されたグリカンを、それ以上精製することなく、オンライン質量分析(例えばESI-MS)および/またはオフライン質量分析(例えばMALDI-MS)に提供するために使用することができる。
特定の態様において、グリカンは、HILICにおける鋭敏な検出を可能にする発色団または蛍光体で標識される。いくつかの態様において、最もよく使用されるラベルはPA、2-ABおよび2-AAであるが、3-(アセチルアミノ)-6-アミノアクリジンなどの他のタグ、またはキノロン蛍光体および第3級アミンを含有するタグなどの他のタグも、有用である。特定の態様において、キノロン蛍光体および第3級アミンを含有するタグで標識されたグリカンは、HILICによって、またはHILICを含む方法によって、検出される。これらのラベルの大半は疎水性の特徴を有するので、誘導体化されたグリカンは、天然の未標識グリカンよりもわずかに短い保持時間を示し得る。いくつかの態様において、蛍光検出は、キセノンランプを装備した検出器を使って実行され、励起光モノクロメーターと蛍光モノクロメーターはどちらも、高感度が達成されるように、選ばれたラベルの至適波長に設定することができる。
b. 蛍光検出
特定の態様において、蛍光検出は液体クロマトグラフィー技術および/または質量分析技術に連結することができる。特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)は、蛍光ラベルに結合、例えば共有結合される。特定の態様において、蛍光標識されたグリカン(例えばN-グリカン)は、液体クロマトグラフィーで蛍光検出によって分析された後、質量分析による分析を受ける。いくつかの態様において、液体クロマトグラフィー、質量分析、および蛍光検出の組合せは、試料の、例えば細胞の表面から遊離または脱離したN-グリカンの試料の、包括的グリカン分析に使用することができる分析プラットフォームである。
いくつかの態様において、HPLC-蛍光検出には、高感度、高選択性および反復可能性を含む多くの利点がある。最も高度な蛍光検出器は、たとえ周囲温度が変動しても安定した分析を保証するために、温度制御セルを特徴とする。これらの検出器は、従来のLC分析から超高速LC分析まで広範な応用における機能をサポートするために、高レベルの感度およびバリデーションも提供する。特定の態様において、グリカンは、温度制御セルを特徴とする蛍光検出器で分析される。
いくつかの態様では、グリカンを検出するために、蛍光標識が液体クロマトグラフィーおよび/または質量分析と共に使用される。多くの有機分子、例えばグリカンは、210nm未満の波長で強いUV吸光度を示すので、200nmに設定された検出器も多少は「汎用」検出器として働き得る。蛍光はUV吸光度よりはるかに稀である。したがっていくつかの態様において、ある量の不要材料または不純物を含有する試料を考えた場合、蛍光検出はタグ付けされた分子または標識された分子だけを測定するので、背景または選択性の問題が克服される。いくつかの態様において、蛍光検出器はグリカン分析の選択性を高めることができる。
いくつかの態様において、グリカンの試料(例えば、細胞の表面から遊離したN-グリカンの試料)は、蛍光ラベルで標識され、グリカンの試料が標識されていない場合よりも多くのグリカン種が検出される。いくつかの態様において、グリカンの試料は蛍光ラベルで標識され、標識されていないグリカンの試料よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%多い、または少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、もしくは少なくとも10倍多い、試料中のグリカン種が検出される。
特定の態様において、グリカンの試料(例えば、細胞の表面から遊離したN-グリカンの試料)は、蛍光ラベルで標識され、グリカンは、グリカンが標識されていない場合よりも高い感度で検出される。特定の態様において、N-グリカンを標識した場合は、検出の感度が、N-グリカンが標識されていない場合と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%増加するか、または少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、もしくは少なくとも100倍である。
いくつかの態様において、試料中のグリカンは蛍光ラベルで選択的に標識され、試料は、蛍光検出と連結された液体クロマトグラフィーで評価される。いくつかの態様において、グリカンは、試料中でグリカンだけが結合したラベルを含有するように、選択的に標識される。特定の態様において、グリカンは、グリカンが、試料のうちのグリカンではない部分、例えばタンパク質などの不純物の少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、1,000倍、2,000倍、5,000倍、10,000倍、50,000倍、100,000倍、250,000倍、500,000倍、1,000,000倍またはそれ以上、標識されるように、選択的に標識される。
c. 質量分析
様々な態様において、方法は、グリカン混合物の一部を質量分析技術による分析に供する工程を含む。質量分析(MS)は、その最も簡単な定義において、それぞれの質量電荷(m/z)比に従って分離されるイオンの作成および検出である。そのようなイオンの検出は、それぞれのm/z比の関数としてのイオンの相対的存在量のプロットである質量スペクトルをもたらす。グリカンの分析に最も広く使用されているMSイオン化技術は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)とエレクトロスプレーイオン化(ESI)の2つであり、どちらにおいても、遊離グリカンは、典型的には、正イオンモードでは金属(通常はナトリウム)付加物として、また負イオンモードでは脱プロトン化種またはアニオン付加種として、検出される。グリカンは、それぞれのプロトン化型または脱プロトン化型で検出され得る。MALDIとESIはどちらもソフトイオン化技術である。すなわち、このイオン化プロセスは過剰なエネルギーをほとんど与えないので、グリカンの断片をほとんどまたは全く生成させず、したがって、インタクトな分子イオンを容易に観察することができる。それでもなお、不安定な基、とりわけシアル酸およびフコースの迅速な喪失は発生し得るので、その発生の程度は、特に定量的研究では、評価されるべきである。MALDI-MSとESI-MSはどちらも総合的グリカンプロフィールを得るために応用することができる。
本発明の方法は、例えば限定するわけではないがマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)、MALDI-TOF-TOF-MS、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)、または直接注入エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)など、多種多様な質量分析機器および質量分析技術で実行することができる。いくつかの態様において、N-グリカンは、MALDI-MSもしくはESI-MSでの分析によって、または当該分析を含む方法によって、検出される。
特定の態様において、N-グリカンは高分解能質量分析計で検出される。いくつかの態様において、質量分析計の分解能は、50amu超、25amu超、10amu超、5amu超、1amu超、0.5amu超、または0.1amu超である。特定の態様において、質量分析計の解像度は1amu超である。
いくつかの態様において、質量分析は、液体クロマトグラフィーによる事前分離を伴わずに実行される。特定の態様において、グリカンは、液体クロマトグラフィーによる事前分離を伴わずに、表面強化レーザー脱離イオン化質量分析(SELDI-MS)またはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS)によって検出される。いくつかの態様において、グリカンは、液体クロマトグラフィーによる事前分離を伴わずに、MALDI-MSによって検出される。
MALDIは、レーザーエネルギー吸収マトリックスを使って大きな分子から最小限のフラグメンテーションでイオンを作出するイオン化技術である。これは、それ以前のイオン化法でイオン化した場合には脆くてバラバラになりやすい生体分子(DNA、タンパク質、ペプチドおよび糖などの生体高分子)および大きな有機分子(ポリマー、デンドリマーおよび他の高分子など)の分析に応用されてきた。これは、どちらの技術も、気相において大きな分子のイオンを得る比較的ソフトな(低フラグメンテーションの)方法であるという点で、エレクトロスプレーイオン化(ESI)に特徴が似ている。ただし、典型的には、作成される多重荷電イオンはMALDIの方がはるかに少ない。特定の態様において、試料中の、例えば表面発現グリカンの試料中のグリカンは、MALDI-MSによって検出される。いくつかの態様において、グリカンはN-グリカンである。
特定の態様において、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)は、液体クロマトグラフィー(またはHPLC)の物理的分離能力を質量分析(MS)の質量分析能力と組み合わせる分析化学技術である。いくつかの態様では、クロマトグラフィー-MS(LC-MS)連結システムが利用される。これは、各技術の個々の能力が相乗的に増強されるからである。液体クロマトグラフィーは複数の構成成分を持つ混合物を分離し、一方、質量分析は、個々の構成成分の構造的アイデンティティを高い分子特異性および検出感度で与える。いくつかの態様において、グリカンは、液体クロマトグラフィー、例えばHILIC HPLCと、それに続く質量分析によって検出される。いくつかの態様において、質量分析は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、ターボスプレーイオン化質量分析、ナノスプレーイオン化質量分析、サーモスプレーイオン化質量分析、ソニックスプレーイオン化質量分析である。
特定の態様において、グリカン(例えばN-グリカン)は、液体クロマトグラフィーによる選別後にESI-MSによって検出される。そのような態様において、液体クロマトグラフィーと例えば蛍光検出とによる分析は、例えば個々のグリカンに対応する曲線下面積を算出し、それをグリカンに対応する全ての曲線の総面積の比または割合(%)として表すことなどによって、N-グリカンの相対的存在量の情報を与える。特定の態様では、試料中に存在するグリカンの量を決定するために、標準を使用することができる。特定の態様において、LC、例えばHILICは、質量分析計とオンラインである。いくつかの態様において、質量分析計はN-グリカンの正確な質量を測定することで、LCによって検出されたピークに対応するグリカンの同定を可能にする。いくつかの態様において、グリカン(例えばN-グリカン)は、その有無または量について、LC-MSによって評価される。
特定の態様において、細胞表面から除去されたグリカン(例えばN-グリカン)は、LC-ESI-MSによって検出される。ESIは、液体に高電圧を印加することでエアロゾルを作出するエレクトロスプレーを使ってイオンを作成するために、質量分析において使用される技術である。いくつかの態様において、ESIは、イオン化されたときにバラバラになりがちな高分子の傾向を克服することによって高分子からイオンを作成するのに有用である。ESIは、多重荷電イオンを作成して分析装置の質量範囲を効果的に拡げることで、タンパク質およびそれらに関連するポリペプチド断片に観察されるkDa〜MDa域に適応し得る点で、他の大気圧イオン化工程(例えばMALDI)とは異なる。
特定の態様において、質量分析はタンデム質量分析(タンデムMSまたはMS/MS)である。特定の態様において、MALDI-TOF-MS、MALDI-TOF-TOF-MS、LC-MS、および/またはESI-MS技術は、タンデムMSで実行され、かつ/またはタンデムMS技術で実行される。特定の態様において、タンデムMSは、2工程以上の質量選択または質量分析を伴い、フラグメンテーションは通常、これらの工程の間で誘導される。いくつかの態様では、グリカンの同定、定量および/または検出に、タンデム質量分析が使用および/または利用される。第1質量分析装置、すなわち第1段階MSは、イオン源に導入されてイオン源から出てくる数多くのグリカン種のうちの単一グリカン種を表す特定m/z値のイオンを単離する。これらのイオン、例えばイオン化されたグリカン粒子は、次に断片化され、例えばイオンフラグメンテーションを誘導するために、アルゴンなどの不活性ガスが入っている衝突セルへと加速される。このプロセスは「衝突誘起解離」(CID)または「衝突活性化解離」(CAD)と呼ばれる。次に、構造情報を得るために、断片イオン、例えばイオン化されたグリカン断片のm/z値が、第2質量分析装置、すなわち第2段階MSにおいて測定される。特定の態様において、グリカンは、タンデムMSによって同定され、定量され、かつ/または検出される。
三連四重極型(TSQ)、3Dおよびリニアイオントラップ、四重極/飛行時間型(QTOF)ハイブリッド機器、四重極-リニアイオントラップハイブリッド機器(QTRAP)および飛行時間型-飛行時間型(TOF/TOF)機器を含む数タイプのタンデム質量分析計がある。3Dまたはリニア四重極イオントラップでは、タンデムMSを経時的に単一の質量分析装置で実行することもでき、これらの機器では、このプロセスを2回以上繰り返してMSnスペクトルを得ることができる。これらの機器は、フラグメンテーションを誘起するための十分に高エネルギーのトラップバッファーガス(trap bath gas)(ヘリウム)との衝突を誘起する共鳴励起によって、フラグメンテーションを達成する。上述した他の機器は衝突セルにおけるCIDを利用する。タンデムMS用に分子を断片化するために使用することができる他の方法としては、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、赤外多光子解離(IRMPD)および黒体赤外放射解離(BIRD)が挙げられる(9)。
いくつかの態様において、粒子は第1段階MSと第2段階MSの間で断片化される。特定の態様において、フラグメンテーションは、インソースフラグメンテーション、衝突誘起フラグメンテーション、衝突誘起解離、電子捕獲解離、電子移動解離、ネガティブ電子移動解離(negative electron transfer dissociation)、電子脱離解離、電荷移動解離、光解離、赤外多光子解離、黒体赤外放射解離、表面誘起解離である。
特定の態様において、MSはタンデムMALDI-MS(MALDI-MS/MS)またはタンデムESI-MS(ESI-MS/MS)である。特定の態様において、N-グリカンは、タンデムMALDI-MSもしくはタンデムESI-MSでの分析によって、または当該分析を含む方法によって、定量、検出、および/または同定される。
4. プロフィールおよびマップ
グリカンを含有する試料(例えば、試験細胞組成物などの細胞組成物から遊離した表面N-グリカンを含有する試料)を評価および/または分析するための方法が、本明細書において提供される。特定の態様において、試料は、1つまたは複数のグリカン(例えばN-グリカン)の有無、レベル、相対的存在量および/または量を決定することによって評価または分析される。いくつかの態様において、1つまたは複数のグリカン(例えばN-グリカン)は、試料中に検出されるグリカンの細胞表面プロフィールの一部である。いくつかの態様において、細胞表面プロフィールは、1つまたは複数の異なるN-グリカン種の有無、レベル、相対的存在量および/または量を示す。いくつかの局面において、1つまたは複数の異なる種は、表E1またはそのサブセットに示されるものをいずれも含むことができる。いくつかの態様において、異なるグリカン種の数は、5超、10超、20超、30超、40超、50超、60超、70超、80超、90超、100超、150超、200超、300超、400超、500超もしくはそれ以上の異なる種または約5超、約10超、約20超、約30超、約40超、約50超、約60超、約70超、約80超、約90超、約100超、約150超、約200超、約300超、約400超、約500超もしくはそれ以上の異なる種である。
いくつかの局面において、1つまたは複数の異なるN-グリカン種は、例えば高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む。
いくつかの局面において、1つまたは複数の異なるN-グリカン種は、例えば還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む。
いくつかの態様において、試料は、標的グリカンまたは1種もしくは複数種の標的グリカンの有無、レベル、相対的存在量および/または量について評価される。特定の態様において、少なくとも10種、少なくとも20種、少なくとも25種、少なくとも30種、少なくとも40種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、少なくとも125種、少なくとも150種、少なくとも175種、少なくとも200種、少なくとも225種、少なくとも250種、少なくとも300種、少なくとも400種、または500種超の異なるグリカン種が、例えば当該グリカンの有無、相対レベルまたは量について、評価または分析される。
いくつかの態様において、標的グリカンは、細胞表面におけるその有無、レベル、相対的存在量および/または量が1つまたは複数の機能的活性および/または表現型活性(phenotypic activity)と関連しているものである。いくつかの場合において、標的グリカンは、機能的活性または表現型が、細胞表面マーカーのマスキング、代謝活性、分化状態、増殖能もしくは拡大増殖能、活性化状態、細胞溶解活性、シグナル伝達活性、接着特性、もしくはホーミング特性のうちの活動形態(activity form)と関連しているもの、またはそれら活動形態に影響を及ぼしもしくは影響を与えもしくはそれら活動形態を変化させ得るものである。
いくつかの局面において、1つまたは複数の異なる種は、表E1またはそのサブセットに示されるものをいずれも含むことができる。いくつかの態様において、異なるグリカン種の数は、5超、10超、20超、30超、40超、50超、60超、70超、80超、90超、100超、150超、200超、300超、400超、500超もしくはそれ以上の異なる種または約5超、約10超、約20超、約30超、約40超、約50超、約60超、約70超、約80超、約90超、約100超、約150超、約200超、約300超、約400超、約500超もしくはそれ以上の異なる種である。
いくつかの局面において、1つまたは複数の異なるN-グリカン種は、例えば高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む。
いくつかの局面において、1つまたは複数の異なるN-グリカン種は、例えば還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、グリカンの集団内の個々のグリカン種の相対レベルの検出を可能にする。例えばいくつかの態様では、液体クロマトグラフの各ピーク下の面積を測定し、それを全体に対する割合(%)として表すことができる。そのような分析は、表面発現グリカンの集団内の各グリカンの相対パーセント量を与える。
特定の態様において、本明細書において提供される方法は、試料中に、例えば表面発現N-グリカンを含有する試料中に、極めて低いレベルで存在するグリカンの検出を容易にする。特定の態様では、グリカンの集団内に約10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.75%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.001%未満、0.0001%未満、または0.00001%未満のレベルで存在するグリカンを検出しかつ/またはそのレベルを定量することが可能である。いくつかの態様では、試料中の全グリカンの0.1%〜10%、0.0001%〜0.1%、0.1%〜1%、1%〜5%、0.00001%〜1%、0.1%〜2%、または0.1%〜1%を構成するグリカンを検出しかつ/または任意でそのレベルを定量することが可能である。
いくつかの態様において、本明細書に記載する方法は、表面発現グリカン(例えばN-グリカン)の試料内に低いレベルで存在する特定結合の検出を可能にする。例えばいくつかの態様において、本方法は、表面発現グリカンの集団の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.75%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.001%未満、0.0001%未満または0.00001%未満のレベルで存在する特定結合の検出を可能にする。
特定の態様では、プロフィール内の個々のグリカンのアイデンティティが決定され得る。特定の態様において、個々のグリカン種のアイデンティティは、例えばHPLC、UPLC、エキソグリコシダーゼシーケンシングおよび質量分析(MALDI-MS、ESI-MS、ESI-MS/MS、LC-MS、LC-ESI-MS/MS)などによる分析の結果から、容易に同定され得ると考えられる。いくつかの態様において、1つまたは複数のグリカンのアイデンティティは、参照データベースの使用によって決定され得る。限定するわけではないがHPLC、UPLC、エキソグリコシダーゼシーケンシングおよび質量分析(MALDI-MS、ESI-MS、ESI-MS/MS、LC-MS、LC-ESI-MS/MS)データを含む技術から得られた情報に基づいてグリカンのアイデンティティおよび/またはグリカンの構造の決定を支援するために、いくつかのデータベースを利用することができる。いくつかの態様において、適切なデータベースとして、GlycoBase(glycobase.nibrt.ie/glycobase/show_nibrt.action)、Glycosciences(Glycosciences.de)、UniCarbKB(unicarbkb.org)、UniCarbDB(unicarb-db.biomedicine.gu.se)、SugarBindDB(sugarbind.expasy.org)およびExpasy(expasy.org/glycomics)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
特定の態様において、本明細書において提供される方法は、試料中の表面グリカンの分析および/または評価を可能にする。特定の態様において、本明細書において提供される方法は、試料中に約0.1fmol〜約1mmolの量で存在する細胞表面グリカンの検出、同定および/またはそのレベルの定量を可能にする。特定の態様において、グリカンの試料中に存在するグリカン種のうち、少なくとも10amol、少なくとも100amol、少なくとも500amol、少なくとも1fmol、少なくとも5fmolまたは少なくとも10fmolの量で試料中に存在するグリカンは、本明細書において提供される方法によって検出、同定および/または定量することができる。
C. 物質の検出
特定の態様において、本明細書において提供される方法は、細胞組成物中および/または細胞組成物から収集された試料中に存在し得る1つまたは複数の物質、例えば残留物質の有無、アイデンティティまたはレベルを検出するために使用される。特定の態様において、物質は、1つもしくは複数のグリカンであるかまたはそれを含む任意の化合物、構成成分、材料、または物である。特定の態様において、物質は生きている生物であるか、または生きている生物によって産生、生成、発現および/もしくは合成される。特定の態様において、物質は、核酸、タンパク質および/もしくは脂質部分であるか、または核酸、タンパク質および/もしくは脂質部分を含む。特定の態様において、物質は、1つもしくは複数のタンパク質(例えば糖タンパク質)であるかまたはそれを含む。
いくつかの態様において、細胞組成物中の1つまたは複数の物質の有無、アイデンティティ、および/またはレベルを検出するための方法は、細胞組成物から、および/または細胞組成物から収集された試料から、表面N-グリカンプロフィールを生成させることであるか、または表面N-グリカンプロフィールを生成させることを含む。特定の局面において、物質、例えば残留物質の存在は、細胞組成物中の細胞にとって外因性である、細胞組成物中の細胞にとって天然でない、かつ/または細胞組成物中の細胞によって産生されないグリカンの、例えば表面グリカンプロフィール内での同定および/または検出によって示される。
特定の態様において、非天然および/または外因性グリカンは、組成物の細胞にとって天然でなく、例えばこのグリカンは、細胞によって生成、合成および/もしくは産生されず、かつ/または組成物の細胞のいずれかによって発現および/もしくは合成されるタンパク質に結合せず、拘束もされない。特定の態様において、ある細胞にとって天然であるグリカンは、その細胞によって合成されるグリカンである。いくつかの局面において、グリカン(例えばN-グリカン)の生合成は、ERおよびゴルジにおいて起こり、いくつかの局面では、ERへのトランスロケーション中に、オリゴ糖の組立ておよび分泌タンパク質または膜タンパク質などのタンパク質のアミノ酸残基、例えばAsnへの転移を含む。いくつかの態様において、グリカン生合成は、ERの内腔における、例えばグリコシダーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼによるさらなるプロセシングであるか、またはそのようなプロセシングを含み、いくつかの局面では、ゴルジでも続く。特定の態様において、グリカンは、そのグリカンがある細胞によって合成されず、かつ/あるいはその細胞内に存在しない、例えばERもしくはゴルジに存在しない、ERもしくはゴルジの近傍またはERもしくはゴルジ内に存在しない場合、その細胞にとって非天然または外因性である。
特定の態様において、非天然および/または外因性グリカンは、組成物の細胞と同じ界、門、綱、目、科、属および/または種からの細胞の表面に、産生、発現または他の形で存在することはなく、かつ/または前記表面にあるタンパク質に結合していない。特定の態様では、所与の種、例えばヒトについて、外因性および/または非天然グリカンは、常法によって同定され得ると考えられる。例えば特定の態様において、個々の内在性グリカンのグリコシル化およびアイデンティティは、界、門、綱、目、科、属および/もしくは種または生物が異なれば様々である。いくつかの局面において、真核細胞は、N-グリコシル化によってタンパク質を修飾する能力を、共通して有する。いくつかの態様において、真核細胞におけるN-グリコシル化の第1工程は小胞体(ER)において起こる。特定の局面において、ERのグリコシル化機構は全ての種間で高度に保存されており、共通するMan3GlcNAc2コア構造の生合成をもたらす。特定の態様では、N-グリカンコアのさらなる修飾がゴルジ装置において起こり、その結果、グリコシル化レパートリーが種間で変動すると考えられる。例えば特定の態様において、酵母は、異なる結合のマンノース残基を100個まで内包する高マンノース型グリカン構造を発現する。いくつかの態様において、昆虫細胞タンパク質上に見いだされるN-グリカンは、追加のマンノース、フコース、およびガラクトース残基でさらに修飾されたコア構造である少マンノース型に属する。高等植物でも、2つのアンテナを持つ複合型グリカンのかなりの部分を合成し、非ヒト免疫原性キシロース残基が高頻度で存在する。対照的に、動物は主としてマルチアンテナ型複合型N-グリカンを発現し、グリカン鎖の最も外側の位置にシアル酸を保持する。しかし、特定の局面において、ヒトは、主要哺乳動物グリカンエピトープのうちの2つ、Gala1-3Gal(α-Gal)およびN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)を合成しない。いくつかの局面において、ヒトは、一般におよび/または典型的に、これらの構造に対する抗体を有する。いくつかの態様において、非天然および/または外因性グリカンは哺乳動物グリカンではなく、例えば哺乳動物細胞によって発現または合成されないグリカンである。特定の態様において、グリカンはヒトグリカンではなく、例えば健常ヒト細胞および/または非がん性ヒト細胞および/または非腫瘍原性ヒト細胞などのヒト細胞によって産生されないグリカンである。
いくつかの態様において、外因性および/または非天然グリカンは、細胞組成物の細胞と同じ種に由来し、または細胞組成物の細胞と同じ種によって産生および/もしくは合成される。例えば特定の態様において、同じ種内では、異なる系譜、組織および/または成熟段階の細胞は、1つまたは複数の異なるグリカンを発現または合成し得ると考えられる。したがっていくつかの態様において、外因性および/または非天然グリカンは、細胞組成物中の細胞と同じ種の細胞ではあるが、細胞タイプが異なる細胞によって産生される。いくつかの態様において、非天然グリカンは、同じ種の細胞によって発現および/または合成されるが、免疫細胞によっては発現および/または合成されない。特定の態様において、非天然グリカンは、ヒト細胞によって発現および/または合成されるが、ヒト免疫細胞によっては発現および/または合成されない。いくつかの態様において、非天然グリカンは、ヒト細胞によって発現および/または合成されるが、ヒトT細胞によっては発現および/または合成されない。
いくつかの態様において、非天然および/または外因性グリカンの供給源はタンパク質、例えば糖タンパク質である。特定の態様において、糖タンパク質としては、抗体および/またはその断片もしくは変異体、MHC分子および/またはその断片もしくは変異体、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、抗体、Fc融合タンパク質、および/またはインターロイキンを挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、糖タンパク質は、溶液、培地および/または血清中に存在する。いくつかの態様において、糖タンパク質は組み換えタンパク質である。いくつかの態様において、タンパク質は天然でなく、内在性でなく、かつ/または細胞組成物の細胞によって発現されない。
特定の態様において、非天然および/または外因性タンパク質は、組成物の細胞と接触しかつ/または組成物の細胞に曝露された1つまたは複数のタンパク質、例えば糖タンパク質である。いくつかの態様において、1つまたは複数のタンパク質は、細胞組成物を生成させ、生産し、かつ/または操作するためのプロセス中に、細胞と接触しかつ/または細胞に曝露されたタンパク質である。いくつかの局面において、前記1つまたは複数のタンパク質は、細胞の培養中に、および/または例えば細胞組成物を生産または操作するための、細胞の操作、活性化、刺激、形質導入、トランスフェクション、培養または拡大増殖などといったプロセス中に、細胞に添加され、細胞と接触し、または細胞と共にインキュベーションされたタンパク質である。
いくつかの態様において、外因性および/または非天然グリカンの供給源は、血清、例えば血清内に見いだされる1つまたは複数のタンパク質である。いくつかの局面において、血清は細胞培養培地への補足物としてよく使用される。特定の局面において、血清は、広範な高分子、リポイド物質および微量元素のための担体タンパク質、接合因子および拡散因子、低分子量栄養素、ホルモンおよび成長因子のうちの1つまたは複数を提供するために使用される。特定の態様において、血清は動物血清である。特定の態様において、非天然および/または外因性グリカンの供給源は、ウシ胎児血清(FBS)、仔ウシ血清(BCS)、新生仔ウシ血清(NBCS)、ウマ血清、ヤギ血清、仔ヒツジ血清、ロバ血清、もしくはブタ血清であるか、またはそれを含む。いくつかの局面において、動物血清はウシ胎児血清(FBS)である。いくつかの態様において、グリカンの供給源は、血清および/または血清中に存在するタンパク質、例えば糖タンパク質である。いくつかの態様において、非天然および/または外因性グリカンの検出は、細胞組成物内の残留血清タンパク質を示す。
いくつかの態様において、非天然および/または外因性グリカンの供給源は組み換えタンパク質である。いくつかの局面において、組み換えタンパク質は、血清代用品(serum replacement)および/または血清代替品(serum alternative)の構成成分として添加され得る。特定の態様において、外因性および/または非天然グリカンの供給源は血清代用品および/または血清代替品である。特定の態様において、血清代用品および/または血清代替品は既知組成(defined)であり、例えば公知のアイデンティティおよび量のタンパク質、例えば組み換えタンパク質を含有する。いくつかの態様において、非天然および/または外因性グリカンの検出は、細胞組成物内の残留組み換えタンパク質を示す。
いくつかの態様において、外因性および/または非天然グリカンの供給源は微生物またはウイルスである。特定の局面において、ウイルス、酵母、カビ、マイコプラズマは、糖タンパク質を含有し、かつ/または発現する。いくつかの態様において、外因性および/または非天然糖タンパク質の検出は、細胞組成物中の微生物の存在を示す。いくつかの態様において、外因性および/または非天然グリカンの供給源は、細胞組成物の細胞とは異なる細胞、例えば細胞株の細胞によって発現または合成される糖タンパク質である。特定の態様において、外因性および/または非天然グリカンの検出は、他の細胞タイプおよび/または細胞株による交差汚染を示す。
いくつかの態様において、例えば細胞組成物から生成したまたは細胞組成物から得られた試料から生成した表面グリカンプロフィールを分析することなどによる、非天然および/または外因性グリカンの存在、同定および/または定量は、細胞組成物中の1つまたは複数の物質(例えば残留物質)の存在、量、および/またはアイデンティティと対応し、それらと相関し、かつ/またはそれらを示す。いくつかの態様において、非天然および/または外因性グリカンの検出は、細胞組成物内の物質、例えば残留物質を示す。いくつかの態様において、非天然および/または外因性グリカンは前記物質および/または残留物質である。特定の態様において、物質および/または残留物質は、非天然および/または外因性グリカンを含有する、例えば非天然および/または外因性グリカンに共有結合している、タンパク質、例えば糖タンパク質である。特定の態様において、物質は、非天然および/もしくは外因性グリカンを発現および/もしくは合成する微生物または非天然および/もしくは外因性グリカンを発現および/もしくは合成することができる微生物であるか、それら微生物から産生される物質であるか、あるいはそれら微生物またはそれら微生物から産生される物質を含む。
いくつかの局面において、細胞試料中に存在する物質(例えば残留物質)のレベルおよび/または量は、本明細書において提供される方法のいずれかなどでグリカンの量および/またはレベルを測定することによって決定される。いくつかの態様において、グリカンの量またはレベルは、試料中の全グリカンの割合(%)として定量される。例えばいくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、グリカンの集団内の個々の非天然または外因性グリカン種の相対レベルの検出を可能にする。特定の態様において、1つまたは複数の非天然グリカンに対応する、例えば1つまたは複数の非天然グリカンを示す、液体クロマトグラフの1つまたは複数のピーク下の面積を測定し、検出された全グリカンの割合(%)として表すことができる。そのような分析は、検出されたグリカンの全集団内の外因性および/または非天然グリカン種の相対的パーセント量を与える。特定の態様において、例えばグリカンの総量が既知である場合などでは、当該グリカンの総量または総濃度が算出され得る。
いくつかの態様において、グリカンプロフィール、例えば細胞組成物から生成したまたは細胞組成物から得られた試料から生成した表面グリカンプロフィールは、参照試料のグリカンプロフィールと比較される。いくつかの態様において、参照試料は、溶液、培地および/もしくは血清のうちの1つもしくは複数であるかまたはそれらを含有する。特定の態様において、溶液、培地および/または血清は、細胞組成物の細胞と接触し、細胞組成物の細胞で処理され、細胞組成物の細胞と共にインキュベーションされ、かつ/もしくは細胞組成物の細胞に曝露されるか、または細胞組成物の細胞と接触し、細胞組成物の細胞で処理され、細胞組成物の細胞と共にインキュベーションされ、かつ/もしくは細胞組成物の細胞に曝露されたものである。特定の態様において、参照試料は、溶液、培地および/もしくは血清の新鮮な試料であるか、またはそのような試料を含み、例えば試料は、細胞への曝露前の溶液、培地もしくは血清から採取されるか、または細胞に曝露されていない別個のアリコートまたは容器から採取される。特定の態様において、参照試料から生成したグリカンプロフィール中に見いだされるグリカンの存在は、外因性および/または非天然グリカンの存在を示す。特定の態様において、参照試料における外因性および/または非天然グリカンの存在は、試料の供給源が、前記物質および/もしくは残留物質の供給源であるか、前記物質および/もしくは残留物質の供給源である可能性が高いか、または前記物質および/もしくは残留物質の供給源候補であることを示す。
特定の態様において、外因性および/または非天然グリカンは、いくつかの例では、細胞組成物の1つまたは複数の細胞の細胞表面グリカンに組み入れられ得ると考えられる。特定の場合において、外因性および/または非天然グリカンには修飾および/または改変が加えられ、1つまたは複数の細胞の細胞表面グリカンに組み入れられる。したがっていくつかの態様において、供給源中に存在する、例えば溶液、培地および/または血清中に存在する、非天然および/または外因性グリカンは、細胞組成物と接触するかまたは他の形で細胞組成物に曝露されると、修飾を受ける。そのような態様において、供給源、例えば溶液、培地および/または血清における外因性および/または非天然グリカンのアイデンティティは、細胞組成物中に存在する場合には、異なる外因性および/または非天然グリカンである。したがっていくつかの例において、特定供給源からの外因性または天然グリカンは、細胞組成物から得られるまたは細胞組成物の試料から得られる表面グリカンプロフィールには存在するが、当該特定供給源から採取された参照試料からのグリカンプロフィールには存在しない。いくつかの態様では、細胞の細胞表面グリカンに組み入れられた非天然および/または外因性グリカンを同定するために、対照実験を、常法によって計画し実行することができる。
いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、ある物質が細胞からリンス、洗浄または除去されたことを立証するために使用され得る。いくつかの局面において、本明細書において提供される方法は、細胞培養条件および/またはプロセス(例えば操作プロセス)を比較することで、その条件またはプロセスに起因し得る(例えば残留タンパク質による)物質および/または残留物質の除去を最適化するために、使用され得る。特定の態様では、あるプロセス(例えば操作プロセス)の異なる段階から採取された試料から表面グリカンプロフィールを作成することで、そのプロセスの1つまたは複数の段階において当該物質が導入されるかどうかを決定する。
II. 細胞組成物
いくつかの態様では、本明細書において提供される方法は、上記で提供される方法のいずれかなどにしたがって、細胞の1つまたは複数の組成物の表面グリカン、例えば、N-グリカンの発現を評価して、細胞の表面上に存在する1つまたは複数のグリカン、例えば、N-グリカンの有無、またはレベルを決定または評価するために使用することができる。いくつかの態様では、評価される組成物は、供給源組成物などの、別の組成物の部分である試験細胞組成物である。いくつかの態様では、提供される方法は、組成物の細胞の表面上の1つのより多くのグリカンの有無、量、レベル、および/または相対的存在量を評価または分析するために使用することができる。
特定の態様では、そのような情報は、細胞表面マーカーのマスキング、代謝活性、分化状態、増殖もしくは拡大増殖能力、活性化状態、細胞溶解活性、シグナル伝達活性、付着特性、またはホーミング特性のうちの1つまたは複数と関連するものなどの、細胞の機能的なおよび/または表現型の特徴に影響し得るグリコシル化の変化を評価または査定するために使用することができる。一部の局面では、組成物の細胞からのグリカンプロフィールに関する情報は、参照標準または参照組成物からの他の試料などの参照試料と比較して、組成物の出荷基準を査定すること、例えば、1つもしくは複数の作用物質もしくは条件の存在下でのインキュベーション後に組成物中で起こる変化もしくは差異を査定すること、ならびに/または実質的に同じ方法により生産された同じ組成物のロット間の類似性および/もしくは差異を査定すること、または異なる供給源からのおよび/もしくは異なる方法により生産もしくは製造された組成物の間の類似性もしくは差異を査定することができる。
いくつかの態様では、表面グリカンプロフィールに関する情報、例えば、1つまたは複数のグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルは、細胞の組成物に対する1つまたは複数の試験作用物質または条件のスクリーニングプロセスにおいて使用することができる。いくつかの態様では、そのような方法は、記載されるような1つまたは複数の試験作用物質または条件の存在下でインプット組成物をインキュベーションすることを含む。いくつかの態様では、そのようにインキュベーションされた細胞の組成物またはその部分、例えば、試験細胞組成物からの試料からの表面グリカンプロフィール、例えば、1つまたは複数の表面グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルは、参照標準などの参照試料に対して比較される。いくつかの態様では、試料の細胞表面グリカンプロフィールまたは1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが参照試料(例えば、参照標準)と実質的に同じであることを、比較が示す場合、および/あるいは、1つもしくは複数の標的グリカンを含む細胞表面グリカンプロフィールまたは1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが、参照試料における細胞表面グリカンプロフィールまたは参照試料中に存在する全グリカンに対する1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれと、20%以下もしくは約20%、15%以下もしくは約15%、10%以下もしくは約10%、または5%以下もしくは約5%しか相違しないことを、比較が示す場合に、その1つまたは複数の試験作用物質または条件が、細胞のインキュベーション用または処理用に選択される。
特定の態様では、本明細書において提供される方法は、細胞の組成物における表面グリカン発現、例えば、1つまたは複数の表面グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを評価して、例えば、組成物の表面グリカン発現を別の細胞組成物に対して比較するために使用することができる。いくつかの態様では、細胞の組成物、例えば、試験細胞組成物から遊離した1つまたは複数の表面グリカンを含む試料が、参照試料に対しておよび/または参照組成物から遊離した表面グリカンの試料に対して比較される。
特定の態様では、1つまたは複数の標的グリカンの有無、相対量(すなわち、表面グリカン全体のうちの割合(%))、または量を評価することができる。いくつかの態様では、標的グリカンは、グリカンの種、ファミリー、または群であり得る。いくつかの態様では、表E1に示す任意のグリカンが評価または比較され得る。一部の局面では、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、または少なくとも200種の異なるグリカン種が評価および/または比較される。一部の局面では、標的グリカンは、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンであるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、標的グリカンは、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンであるかまたはそれを含む。
いくつかの態様では、細胞組成物の表面グリカンプロフィールの比較は、異なる組み換え受容体を発現する細胞の組成物と比較され得る。特定の態様では、表面グリカン組成物は、組み換え受容体を発現しない細胞の組成物と比較され得る。いくつかの態様では、表面グリカン組成物は、異なるプロセスにより生産されるおよび/または1つもしくは複数の特定の作用物質もしくは条件の存在下でのインキュベーションを伴うプロセスにより生産される細胞の組成物と比較され得る。いくつかの態様では、細胞組成物の表面グリカンプロフィールは、細胞組成物を製造するための製造プロセスのより早期のまたは事前の段階または工程などの、細胞組成物を製造するための製造プロセスの異なる段階または工程からの異なる細胞組成物と比較される。
特定の態様では、細胞組成物の表面グリカン発現プロフィールは、参照試料に対して評価および比較される。本明細書に記載されるいくつかの態様では、参照試料は参照標準とも称される。例えば、いくつかの態様では、細胞組成物、例えば、治療用細胞組成物は、異なる細胞の組成物と比較して、別個のグリカン種の表面発現のレベル、グリカンの種類、および/またはグリカンファミリーに関して表面グリカン発現の別個のプロフィールを有し得る。したがって、いくつかの態様では、参照標準は、複数の細胞組成物を評価することにより生成され得る。そのような参照標準は、いくつかの態様では、品質管理としておよび/または出荷アッセイのために、または細胞組成物の製造もしくは培養をモニターもしくは制御するために使用され得る。
特定の態様では、表面グリカン発現の参照標準は、類似のまたは同一の細胞組成物を含むいくつもの異なる細胞組成物を評価することにより生成される。例えば、いくつかの態様では、表面グリカン発現プロフィールは、参照標準を生成するための同一の製造プロセスの異なるバッチの下で製造された操作された細胞の2つまたはそれより多くの組成物から得られる。いくつかの態様では、表面グリカン発現プロフィールは、参照標準を生成するための操作された細胞を製造するプロセスの同じ段階において回収される細胞の2つまたはそれより多くの組成物から得られる。いくつかの態様では、参照標準は、特定のグリカン種に関する仮の参照標準の値または値の範囲である。いくつかの態様では、仮の参照標準は、関連するまたは類似のプロセスからのデータまたは参照試料に基づく。特定の局面では、無数の異なるが類似のプロセスに適用される参照値の範囲を生成することができるように、関連するプロセスからのデータが共有され得る。いくつかの態様では、参照標準は、他の試験プロセスと比較される例示的プロセスに由来する。いくつかの態様では、参照標準は、プロセスによって生産される複数の組成物の間での1つまたは複数の標的グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルの平均または中央値である。
特定の態様では、参照試料は、少なくとも1つのグリカン種、少なくとも1つのN-グリカンファミリー、または少なくとも1つの型のN-グリカンの平均または中央値を算出することにより生成される。特定の態様では、参照標準は、ある型のグリカンの発現レベルの中央値または平均である。特定の態様では、参照標準は、オリゴマンノース、複合型N-グリカン、および/またはハイブリッド型N-グリカンのレベルの平均または中央値であるかまたはそれらを含む。特定の態様では、参照標準は、高マンノース含有量を有するN-グリカン、バイセクト型および/もしくはシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンの発現レベルの平均または中央値であるかまたはそれらを含む。いくつかの態様では、参照標準は、A2ファミリー、A2Fファミリー、A3ファミリー、A4ファミリー、およびオリゴマンノースファミリーのグリカンの発現レベルの平均または中央値である。いくつかの態様では、参照標準は、少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、10種、15種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、125種、150種、200種、300種、400種、または少なくとも500種のグリカン種の発現レベルの平均または中央値である。いくつかの態様では、参照標準は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、10より多く、20より多く、または50より多くの細胞組成物の表面グリカン発現プロフィールから算出される。
A. 細胞
いくつかの態様では、細胞組成物、例えば、試験細胞組成物などの供給源組成物またはその部分は、細胞の集団を含む。細胞を含む任意の組成物を、提供される方法にしたがって評価することができる。いくつかの態様では、細胞の集団は、細胞株または初代細胞であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、細胞の集団は、対象、例えば、ヒト対象から得られる初代細胞などの初代細胞であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、細胞の集団は、人工多能性幹細胞などの幹細胞であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、細胞の組成物、例えば、試験細胞組成物などの供給源組成物またはその部分は、組み換え核酸を用いた細胞の操作と関連するものなどの、細胞組成物を製造するプロセスと関連付けられる組成物である。いくつかの態様では、細胞の組成物は薬学的組成物である。
特定の態様では、細胞は真核細胞であるかまたはそれを含む。特定の態様では、細胞組成物の細胞は動物細胞である。いくつかの態様では、組成物の細胞は哺乳動物細胞である。特定の態様では、細胞は、マウス細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、または非ヒト霊長動物細胞である。いくつかの態様では、細胞はヒト細胞である。
いくつかの態様では、細胞は、細胞株の細胞、例えば、eチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、5V40(C057)により形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胎児腎臓株293;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(TM4);サル腎臓細胞(CVI-76);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍細胞(MMT);ラットヘパトーマ細胞(HTC);HIH/3T3細胞、およびTRI細胞である。哺乳動物細胞株の広範なリストのために、当業者は、American Type Culture Collectionカタログ(ATCC、Mamassas、VA)を参照することができる。いくつかの態様では、細胞は、様々な細胞種のもの、例えば、線維芽細胞、筋芽細胞、マクロファージ、または上皮細胞であり得る。
特定の態様では、組成物の細胞は、幹細胞であるかまたはそれを含む。特定の態様では、細胞組成物の細胞は、多能性幹細胞、マルチポテント幹細胞、オリゴポテント幹細胞、および/または単能性幹細胞である。特定の態様では、細胞は、誘導されたもの、例えば、人工多能性幹細胞(ipsc)である。特定の態様では、組成物の細胞は、例えば、例えば多能性に向けて初期化されている過程にある細胞である。いくつかの態様では、細胞は、分化の過程にある幹細胞である。
いくつかの態様では、組成物の細胞は免疫細胞である。特定の態様では、細胞組成物は、T細胞、B細胞、および/またはNK細胞のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、細胞組成物の細胞はCD3+T細胞である。いくつかの態様では、細胞はCD4+T細胞である。特定の態様では、細胞はCD8+T細胞である。いくつかの態様では、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、およびサプレッサーT細胞のうちの1つまたは複数である。いくつかの態様では、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
特定の態様では、初代細胞の表面グリカンが評価される。いくつかの態様では、細胞の組成物は、対象から直接単離されたもの、および/または対象から単離されて凍結されたものなどの初代細胞を含む。いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば全T細胞集団、CD4+T細胞、CD8+T細胞、およびそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化、拡大増殖、再循環、局在化、および/もしくは持続能力についての潜在能、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロフィール、ならびに/または分化の程度によって定義されるものを含む。治療される対象に関して、細胞は同種細胞および/または自家細胞であり得る。
いくつかの態様では、組成物の1つまたは複数の細胞は操作された細胞である。いくつかの場合には、1つまたは複数の細胞は、組み換え核酸を含むように、例えば、異種核酸を含むように、および/または異種タンパク質を発現するように操作される。いくつかの態様では、組み換え核酸は組み換えタンパク質をコードする。いくつかの場合には、組み換えタンパク質は、組み換え細胞組成物により発現または産生されることが所望される任意のタンパク質であり得る。いくつかの態様では、組み換えタンパク質は組み換え受容体である。いくつかの態様では、組み換え核酸は、組み換えタンパク質の発現のために細胞中に移入または導入されるウイルスベクター、例えば、レンチウイルスまたはレトロウイルスベクターであるかまたはそれを含む。
B. 例示的な操作された細胞
特定の態様では、操作された細胞は、組み換え受容体をコードする異種ポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、組み換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)などのキメラ受容体または抗原受容体である。特定の態様では、操作された細胞は、セクションIIIに記載するように、生産、製造、および/または生成される。
いくつかの態様では、組成物中の細胞の全てまたは一部は、キメラ抗原受容体(CAR)などの操作された受容体、またはT細胞受容体(TCR)を含むか、または含むように操作されている。特定の態様では、組成物の細胞の全てまたは一部は、操作された受容体を発現する。いくつかの態様では、操作された細胞を含む組成物は、そのような細胞について濃縮されている。特定の態様では、T細胞またはCD8+もしくはCD4 T細胞などの特定の種類の細胞が濃縮または選択されている。特定の態様では、細胞組成物は、養子細胞療法用のものなどの、治療用および/または薬学的細胞組成物である。
1. キメラ抗原受容体(CAR)
特定の態様では、本明細書において提供される方法は、組み換え受容体、例えば、機能的な非TCR抗原受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)、およびトランスジェニックT細胞受容体(TCR)などの他の抗原結合受容体などの抗原受容体を一般に発現する細胞を含むかまたはそれから構成される細胞の組成物の表面グリカン発現を評価するために使用することができる。受容体の中には他のキメラ受容体もある。
CARを含む例示的な抗原受容体、およびそのような受容体を操作し、細胞に導入するための方法は、例えば国際公開公報第200014257号、同第2013126726号、同第2012/129514号、同第2014031687号、同第2013/166321号、同第2013/071154号、同第2013/123061号、米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、および同第8,479,118号、および欧州特許出願公開第2537416号に記載されているもの、ならびに/またはSadelain et al.,Cancer Discov.,3(4):388-398(2013);Davila et al.PLoS ONE 8(4):e61338(2013);Turtle et al.,Curr.Opin.Immunol.,24(5):633-39(2012);Wu et al.,Cancer,18(2):160-75(2012)によって記載されているものを含む。いくつかの局面では、抗原受容体は、米国特許第7,446,190号に記載されているようなCAR、および国際公開公報第2014055668A1号に記載されているものを含む。CARの例には、国際公開公報第2014031687号、米国特許第8,339,645号、同第7,446,179号、米国特許出願公開第2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、同第8,389,282号、Kochenderfer et al.,Nature Reviews Clinical Oncology,10,267-276(2013);Wang et al.,J.Immunother.35(9):689-701(2012);およびBrentjens et al.,Sci Transl Med,.5(177)(2013)などの前述の刊行物のいずれかに開示されているCARが含まれる。国際公開公報第2014031687号、米国特許第8,339,645号、同第7,446,179号、米国特許出願公開第2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、および米国特許第8,389,282号も参照のこと。CARなどのキメラ受容体は、一般に、抗体分子の一部などの細胞外抗原結合ドメイン、一般に抗体の可変重(VH)鎖領域および/または可変軽(VL)鎖領域、例えばscFv抗体断片を含む。
いくつかの態様では、N-グリカンの表面発現は、抗原を標的化する組み換え受容体、例えば、CARを発現する細胞を含む細胞の組成物において評価され、かつ、受容体により標的化される抗原はポリペプチドである。いくつかの態様では、抗原は炭水化物または他の分子である。いくつかの態様では、抗原は、正常なまたは非標的細胞または組織と比較して、疾患または病態の細胞、例えば腫瘍細胞または病原性細胞上に選択的に発現されるかまたは過剰発現される。他の態様では、抗原は正常細胞上に発現され、および/または操作された細胞上に発現される。いくつかの態様では、キメラ受容体により標的化される抗原の中には、疾患、病態、または養子細胞を介して標的化される細胞種の状況において発現されるものがある。いくつかの態様では、標識試薬および/または誘導化試薬を接触させ、処理し、かつ/またはホルムアミドである溶媒の存在下でグリカンとインキュベーションする。疾患および病態の中には、増殖性、新生物性、および悪性の疾患および障害があり、これには、血液がん、免疫系のがん、例えば、リンパ腫、白血病、および/または骨髄腫、例えば、B、T、および骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫などのがんおよび腫瘍が含まれる。
いくつかの態様では、表面グリカンは、抗原に結合する組み換え受容体(例えば、CAR)を発現する細胞を含有する細胞組成物から遊離する。受容体により標的とされ得る抗原には、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られる)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られる)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、短縮型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、III型上皮成長因子受容体変異体(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られる)、胎児型アセチルコリン受容体(胎児型AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、胎児アセチルコリン受容体、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerbB2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体α(IL-22Rα)、IL-13受容体α2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経系細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られる)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られる)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼまたはDCTとしても知られる)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、および病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの態様において受容体により標的化される抗原は、多数の公知のB細胞マーカーのいずれかなどのB細胞悪性腫瘍と関連付けられる抗原を含む。いくつかの態様では、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bまたはCD30であるかまたはそれを含む。
いくつかの態様では、抗原は、病原体特異的なまたは病原体により発現される抗原である。いくつかの態様では、CARは、ウイルス抗原(例えばHIV、HCV、HBVなど)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原に特異的である。
いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片(例えば、scFvまたはVHドメイン)は、CD19などの抗原を特異的に認識する。いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は、CD19に特異的に結合する抗体または抗原結合断片に由来するか、またはその変種である。
いくつかの態様では、scFvおよび/またはVHドメインはFMC63に由来する。FMC63は、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して産生されたマウスモノクローナルIgG1抗体を一般に示す(Ling,N.R.,et al.(1987).Leucocyte typing III.302)。FMC63抗体は、SEQ ID NO:29に示すCDR H1;SEQ ID NO:30に示すCDR H2;SEQ ID NO:31または45に示すCDR H3;ならびにSEQ ID NO:26に示すCDR L1;SEQ ID NO:27または46に示すCDR L2;およびSEQ ID NO:28または45に示すCDR L3を含む。FMC63抗体は、SEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:26のCDR L1配列、SEQ ID NO:28のCDR L2配列、およびSEQ ID NO:28のCDR L3配列を含む可変軽鎖ならびに/もしくはSEQ ID NO:29のCDR H1配列、SEQ ID NO:30のCDR H2配列、およびSEQ ID NO:31のCDR H3配列を含む可変重鎖、またはこれらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を有する上記のもののいずれかの変種を含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:32に示すFMC63の可変重鎖領域およびSEQ ID NO:33に示すFMC63の可変軽鎖領域、またはこれらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を有する上記のもののいずれかの変種を含む。いくつかの態様では、可変重鎖および可変軽鎖は、リンカーにより接続されている。いくつかの態様では、リンカーは、SEQ ID NO:58に示すものである。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:25に示すヌクレオチドの配列またはSEQ ID NO:25と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を呈する配列によりコードされる。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:34に示すアミノ酸配列またはSEQ ID NO:34と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を呈する配列を含む。
いくつかの態様では、scFvおよび/またはVHドメインはSJ25C1に由来する。SJ25C1は、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して産生されたマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling,N.R.,et al.(1987).Leucocyte typing III.302)。SJ25C1抗体は、それぞれSEQ ID NO:38〜40に示すCDR H1、H2およびH3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:35〜37に示すCDR L1、L2およびL3配列を含む。SJ25C1抗体は、SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様では、svFvは、SEQ ID NO:35に示すCDR L1配列、SEQ ID NO:36に示すCDR L2、およびSEQ ID NO:37に示すCDR L3を含む可変軽鎖ならびに/もしくはSEQ ID NO:38に示すCDR H1、SEQ ID NO:39に示すCDR H2、およびSEQ ID NO:40に示すCDR H3を含む可変重鎖、またはこれらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を有する上記のもののいずれかの変種を含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:41に示すSJ25C1の可変重鎖領域およびSEQ ID NO:42に示すSJ25C1の可変軽鎖領域、またはこれらと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を有する上記のもののいずれかの変種を含む。いくつかの態様では、可変重鎖および可変軽鎖は、リンカーにより接続されている。いくつかの態様では、リンカーは、SEQ ID NO:43に示すものである。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:44に示すアミノ酸配列またはSEQ ID NO:44と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を呈する配列を含む。
一部の局面では、CARは、ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに結合しまたはそれを認識する、例えば、それに特異的に結合するリガンド(例えば、抗原)結合ドメインを含む。一部の局面では、結合ドメインは、疾患または障害と関連付けられる抗原を認識する異なる結合分子(例えば、抗体または抗原結合断片)に連結させることができる分子、タグ、ポリペプチドおよび/またはエピトープに結合し得る。例示的なタグまたはエピトープには、色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)またはビオチンが含まれる。一部の局面では、疾患または障害と関連付けられる抗原、例えば、腫瘍抗原を認識するタグに連結された結合分子(例えば、抗体または抗原結合断片)は、タグに特異的なCARを発現する操作された細胞と一緒になって、操作された細胞の細胞傷害性または他のエフェクター機能の効果をもたらす。一部の局面では、疾患または障害と関連付けられる抗原に対するCARの特異性はタグ化結合分子(例えば、抗体)により提供され、かつ、異なる抗原を標的化するために異なるタグ化結合分子を使用することができる。ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに特異的な例示的なCARには、例えば、米国特許第9,233,125号、国際公開公報第2016/030414号、Urbanska et al.,(2012)Cancer Res 72:1844-1852、およびTamada et al.,(2012).Clin Cancer Res 18:6436-6445に記載されるものが含まれる。
いくつかの態様では、CARは、TCR様抗体、例えば、主要組織適合複合体(MHC)-ペプチド複合体として細胞表面上に提示される腫瘍関連抗原などの細胞内抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合断片(例えば、scFv)を含む。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体を認識する抗体またはその抗原結合部分は、抗原受容体などの組み換え受容体の部分として細胞上に発現させることができる。抗原受容体の中には、キメラ抗原受容体(CAR)などの機能的な非T細胞受容体(TCR)抗原受容体がある。いくつかの態様では、ペプチド-MHC複合体に対してTCR様特異性を呈する抗体または抗原結合断片を含むCARはまた、TCR様CARと称することができる。いくつかの態様では、CARはTCR様CARであり、かつ、抗原は、TCRのように、MHC分子の状況において細胞表面上で認識される細胞内タンパク質のペプチド抗原などの、プロセシングされたペプチド抗原である。いくつかの態様では、TCR様CARのMHCペプチド複合体に特異的な細胞外抗原結合ドメインは、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結される。いくつかの態様では、そのような分子は、典型的に、TCRなどの天然の抗原受容体を通じたシグナル、および、任意で、共刺激受容体と組み合わせてそのような受容体を通じたシグナルを模倣または近似することができる。
「主要組織適合複合体」(MHC)への言及は、いくつかの場合には、細胞機構によりプロセシングされたペプチド抗原などのポリペプチドのペプチド抗原と複合体化することができる多型的なペプチド結合部位または結合溝を含むタンパク質、一般に糖タンパク質を示す。いくつかの場合には、MHC分子は、TCRまたはTCR様抗体などのT細胞上の抗原受容体により認識可能なコンホメーションでの抗原の提示のために、ペプチドとの複合体、すなわち、MHCペプチド複合体としてなど、細胞表面上に提示または発現され得る。一般に、MHCクラスI分子は、いくつかの場合には3つのαドメインを有する、膜貫通性のα鎖、および非共有結合により会合したβ2ミクログロブリンを有するヘテロ二量体である。一般に、MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、αおよびβから構成され、これらの両方は、典型的に、膜を貫通している。MHC分子は、抗原結合部位またはペプチドに結合するための部位および適切な抗原受容体による認識のために必要な配列を含むMHCの効果的な部分を含むことができる。いくつかの態様では、MHCクラスI分子は、サイトゾルを起源とするペプチドを細胞表面に送達し、そこでMHC-ペプチド複合体は、一般にCD8+T細胞であるがいくつかの場合にはCD4+T細胞などのT細胞により認識される。いくつかの態様では、MHCクラスII分子は、小胞系を起源とするペプチドを細胞表面に送達し、そこでそれらは、典型的に、CD4+T細胞により認識される。一般に、MHC分子は、マウスにおいてH-2およびヒトにおいてヒト白血球抗原(HLA)と総称される関連する遺伝子座の群によりコードされる。それゆえ、典型的にヒトMHCはヒト白血球抗原(HLA)と称することもできる。
「MHC-ペプチド複合体」または「ペプチド-MHC複合体」という用語またはそのバリエーションは、一般に、MHC分子の結合溝またはクレフトにおけるペプチドの非共有結合性相互作用などによる、ペプチド抗原およびMHC分子の複合体または会合を示す。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体は、細胞の表面上に存在しまたは提示される。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体は、TCR、TCR様CARまたはこれらの抗原結合部分などの抗原受容体により特異的に認識され得る。
いくつかの態様では、ポリペプチドのペプチド抗原またはエピトープなどのペプチドは、抗原受容体による認識などのために、MHC分子と会合することができる。一般に、ペプチドは、ポリペプチドまたはタンパク質などのより長い生物学的分子の断片に由来しまたは基づく。いくつかの態様では、ペプチドは、典型的に、約8〜約24個のアミノ酸の長さである。いくつかの態様では、ペプチドは、MHCクラスII複合体における認識のために約9〜22個のアミノ酸の長さを有する。いくつかの態様では、ペプチドは、MHCクラスI複合体における認識のために約8〜13個のアミノ酸の長さを有する。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体などのMHC分子の状況においてペプチドが認識されると、TCRまたはTCR様CARなどの抗原受容体は、T細胞増殖、サイトカイン産生、細胞傷害性T細胞応答または他の応答などのT細胞応答を誘導する活性化シグナルをT細胞に生じさせまたは誘発する。
いくつかの態様では、TCR様抗体または抗原結合部分は公知であるか、または公知の方法により製造することができる(例えば、米国特許出願公開第2002/0150914号;同第2003/0223994号;同第2004/0191260号;同第2006/0034850号;同第2007/00992530号;同第20090226474号;同第20090304679号;および国際出願公開第03/068201号を参照)。
いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体を含む有効量の免疫原を用いて宿主を免疫化することにより製造することができる。いくつかの場合には、MHC-ペプチド複合体のペプチドは、腫瘍抗原、例えば、ユニバーサル腫瘍抗原、骨髄腫抗原または以下に記載されるような他の抗原などの、MHCに結合することができる抗原のエピトープである。いくつかの態様では、免疫応答を誘発するために有効量の免疫原が宿主に投与され、免疫原は、MHC分子の結合溝におけるペプチドの三次元提示に対して免疫応答を誘発するために十分な期間にわたりその三次元形態を保持する。次いで、MHC分子の結合溝におけるペプチドの三次元提示を認識する所望の抗体が産生されているかどうかを決定するために、宿主から回収された血清がアッセイされる。いくつかの態様では、産生された抗体が、単独のMHC分子、単独の関心対象のペプチド、およびMHCと不適切なペプチドとの複合体からMHC-ペプチド複合体を区別できることを確認するために、該抗体を評価することができる。次いで、所望の抗体を単離することができる。
いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、ファージ抗体ライブラリーなどの抗体ライブラリーディスプレイ法を用いることにより製造することができる。いくつかの態様では、例えば、ライブラリーのメンバーが1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の残基において突然変異した突然変異体Fab、scFvまたは他の抗体型のファージディスプレイライブラリーを生成することができる。例えば、米国特許出願公開第20020150914号、同第20140294841号;およびCohen CJ.et al.(2003)J Mol.Recogn.16:324-332を参照。
本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味において使用され、インタクトな抗体および機能的な(抗原結合)抗体断片などのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含み、これには、抗原結合断片(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組み換えIgG(rIgG)断片、抗原に特異的に結合することができる可変重鎖(VH)領域、単鎖可変断片(scFv)などの単鎖抗体断片、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ、VHHまたはVNAR)または断片が含まれる。該用語は、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異的、例えば二重特異的抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvなどの遺伝子操作型および/またはそれ以外に改変された形態の免疫グロブリンを包含する。別段の言及がなければ、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。該用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、ならびにIgDなどの任意のクラスまたはサブクラスの抗体などの、インタクトなまたは全長の抗体を包含する。いくつかの局面では、CARは、例えば、異なる特異性を有する2つの抗原結合ドメインを含む、二重特異的CARである。
いくつかの態様では、抗原結合タンパク質、抗体およびこれらの抗原結合断片は、全長抗体の抗原を特異的に認識する。いくつかの態様では、抗体の重鎖および軽鎖は、全長であってよく、または抗原結合部分(Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv))であってよい。他の態様では、抗体重鎖定常領域は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEから選択され、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、より具体的には、IgG1(例えば、ヒトIgG1)から選択される。別の態様では、抗体軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダ、特にカッパから選択される。
提供される抗体の中には、抗体断片がある。「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の部分を含むインタクトな抗体以外の分子を示す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;可変重鎖(VH)領域、scFvおよび単一ドメインVH単一抗体などの単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異的抗体が含まれるがこれらに限定されない。特定の態様では、抗体は、scFvなどの、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む単鎖抗体断片である。
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを示す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、一般に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。さらには、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用してそれぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照。
単一ドメイン抗体(sdAb)は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。特定の態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である。いくつかの態様では、CARは、抗原に特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含み、抗原は、例えば、腫瘍細胞またはがん細胞などの標的化される細胞または疾患のがんマーカーまたは細胞表面抗原、例えば、本明細書に記載されるかまたは公知の標的抗原のいずれかなどである。例示的な単一ドメイン抗体には、sdFv、ナノボディ、VHHまたはVNARが含まれる。
抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質消化分解の他に、組み換え宿主細胞による産生が含まれるがこれらに限定されない様々な技術により製造することができる。いくつかの態様では、抗体は、組み換えにより製造される断片であり、例えば、合成リンカー、例えばペプチドリンカーにより連結された2つもしくはそれより多くの抗体領域もしくは鎖を有するものなどの天然に存在しない、かつ/または天然に存在するインタクトな抗体の酵素消化によっては製造され得ない構成を含む断片である。いくつかの態様では、抗体断片はscFvである。
「ヒト化」抗体は、全てまたは実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来しかつ全てまたは実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。「ヒト化型」の非ヒト抗体は、ヒト化された非ヒト抗体の変種を示し、これは典型的に、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながらヒトに対する免疫原性を低減させるために為される。いくつかの態様では、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元しさせまたは向上させるために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基により置換される。
いくつかの態様では、組み換え受容体、例えばCARの抗体部分は、ヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域などの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部をさらに含む。いくつかの態様では、定常領域またはその部分は、IgG4またはIgG1などのヒトIgGのものである。いくつかの局面では、定常領域の一部は、抗原認識成分、例えばscFvと膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域として機能する。スペーサーは、スペーサーが存在しない場合と比較して、抗原結合後の細胞の応答性の増大をもたらす長さのものであり得る。例示的なスペーサー、例えばヒンジ領域は、国際公開公報第2014031687号に記載されているものを含む。いくつかの例では、スペーサーは、12アミノ酸もしくは約12アミノ酸の長さであるか、または12アミノ酸以下の長さである。例示的なスペーサーには、少なくとも約10〜229個のアミノ酸、約10〜200個のアミノ酸、約10〜175個のアミノ酸、約10〜150個のアミノ酸、約10〜125個のアミノ酸、約10〜100個のアミノ酸、約10〜75個のアミノ酸、約10〜50個のアミノ酸、約10〜40個のアミノ酸、約10〜30個のアミノ酸、約10〜20個のアミノ酸、または約10〜15個のアミノ酸を有する、および列挙された範囲のいずれかの両端の間の任意の整数個のアミノ酸を含むものが含まれる。いくつかの態様では、スペーサーは、250個未満のアミノ酸の長さ、200個未満のアミノ酸の長さ、150個未満のアミノ酸の長さ、100個未満のアミノ酸の長さ、75個未満のアミノ酸の長さ、50個未満のアミノ酸の長さ、25個未満のアミノ酸の長さ、20個未満のアミノ酸の長さ、15個未満のアミノ酸の長さ、12個未満のアミノ酸の長さ、または10個未満のアミノ酸の長さである。いくつかの態様では、スペーサーは、約10〜250個のアミノ酸の長さ、10〜150個のアミノ酸の長さ、10〜100個のアミノ酸の長さ、10〜50個のアミノ酸の長さ、10〜25個のアミノ酸の長さ、10〜15個のアミノ酸の長さ、15〜250個のアミノ酸の長さ、15〜150個のアミノ酸の長さ、15〜100個のアミノ酸の長さ、15〜50個のアミノ酸の長さ、15〜25個のアミノ酸の長さ、25〜250個のアミノ酸の長さ、25〜100個のアミノ酸の長さ、25〜50個のアミノ酸の長さ、50〜250個のアミノ酸の長さ、50〜150個のアミノ酸の長さ、50〜100個のアミノ酸の長さ、100〜250個のアミノ酸の長さ、100〜150個のアミノ酸の長さ、または150〜250個のアミノ酸の長さである。いくつかの態様では、スペーサー領域は、約12個もしくはそれ未満のアミノ酸、約119個もしくはそれ未満のアミノ酸、または約229個もしくはそれ未満のアミノ酸を有する。例示的なスペーサーには、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジを含む。例示的なスペーサーには、Hudecek et al.,Clin.Cancer Res.,19:3153(2013)、国際公開公報第2014/031687号、米国特許第8,822,647号、または米国特許出願公開第2014/0271635号に記載されているものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
いくつかの態様では、定常領域またはその部分は、IgG4またはIgG1などのヒトIgGのものである。いくつかの態様では、スペーサーは、配列ESKYGPPCPPCP(SEQ ID NO:2に示す)を有し、SEQ ID NO:3に示す配列によってコードされる。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:4に示す配列を有する。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:5に示す配列を有する。いくつかの態様では、定常領域またはその部分はIgDのものである。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:6に示す配列を有する。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:2、4、5または6のいずれかと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。
この抗原認識ドメインは一般に、CARの場合には、TCR複合体などの抗原受容体複合体を介して活性化を模倣するシグナル伝達成分、および/または別の細胞表面受容体を介するシグナルなどの、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結されている。したがって、いくつかの態様では、抗原結合成分(例えば抗体)は、1つまたは複数の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは細胞外ドメインに融合されている。一態様では、受容体、例えばCAR中のドメインの1つと天然に関連している膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合には、膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他の成員との相互作用を最小限に抑えるように選択されるかまたはアミノ酸置換によって改変される。
いくつかの態様における膜貫通ドメインは、天然の供給源または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、いくつかの局面におけるドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域には、T細胞受容体、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154のα鎖、β鎖、またはζ鎖に由来する(すなわち少なくともその膜貫通領域を含む)ものが含まれる。あるいは、いくつかの態様における膜貫通ドメインは合成である。いくつかの局面では、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。いくつかの局面では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。いくつかの態様では、結合は、リンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによる。
細胞内シグナル伝達ドメインの中には、天然の抗原受容体を介するシグナル、共刺激受容体と合わせてそのような受容体を介するシグナル、および/または共刺激受容体のみを介するシグナルを模倣するまたはそれらに近似するものがある。いくつかの態様では、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えばグリシンおよびセリンを含むもの、例えばグリシン-セリンダブレットなどの2〜10アミノ酸長のリンカーが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に結合を形成する。
受容体、例えばCARは、一般に少なくとも1つの細胞内シグナル伝達成分を含む。いくつかの態様では、受容体は、T細胞活性化および細胞毒性を媒介するTCR CD3鎖、例えばCD3ζ鎖などのTCR複合体の細胞内成分を含む。したがって、いくつかの局面では、抗原結合部分は1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結されている。いくつかの態様では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、受容体、例えばCARは、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25またはCD16などの1つまたは複数の追加の分子の一部をさらに含む。例えば、いくつかの局面では、CARまたは他のキメラ受容体は、CD3-ゼータ(CD3ζ)またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25またはCD16との間のキメラ分子を含む。
いくつかの態様では、CARまたは他のキメラ受容体の連結時に、受容体の細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、正常なエフェクター機能または免疫細胞、例えばCARを発現するように操作されたT細胞の応答の少なくとも1つを活性化させる。例えば、いくつかの状況では、CARは、T細胞の機能、例えば細胞溶解活性またはTヘルパー活性、例えばサイトカインまたは他の因子の分泌を誘導する。いくつかの態様では、抗原受容体成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの末端切断された部分は、例えばそれがエフェクター機能シグナルを伝達する場合、インタクトな免疫刺激鎖の代わりに使用される。いくつかの態様では、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列、およびいくつかの局面では、天然の状況でそのような受容体と協調的に作用して、抗原受容体結合後にシグナル伝達を開始する共受容体のものも含む。
いくつかの態様では、提供される方法は、1種または複数種の組換え受容体を発現する操作された細胞を提供する。いくつかの態様では、当該細胞には、組換え受容体(例えば、キメラ抗原受容体)で遺伝子操作された細胞が含まれ得る。
天然のTCRに関連して、完全な活性化は一般に、TCRを介したシグナル伝達だけでなく、共刺激シグナルも必要とする。したがって、いくつかの態様では、完全な活性化を促進するために、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための成分もCARに含まれる。他の態様では、CARは共刺激シグナルを生成するための成分を含まない。いくつかの局面では、追加のCARが同じ細胞中で発現され、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための成分を提供する。
T細胞活性化は、いくつかの局面では、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)、および抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると説明される。いくつかの局面では、CARはそのようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。
いくつかの局面では、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激性に作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例には、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものが含まれる。いくつかの態様では、CAR中の細胞質シグナル伝達分子は、細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、またはCD3ζに由来する配列を含む。
いくつかの態様では、CARは、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、およびICOSなどの共刺激受容体のシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。いくつかの局面では、同じCARが活性化成分と共刺激成分の両方を含む。
いくつかの態様では、活性化ドメインは1つのCAR内に含まれ、一方、共刺激成分は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。いくつかの態様では、CARは、活性化または刺激性CAR、共刺激性CARを含み、両方とも同じ細胞上で発現される(国際公開公報第2014/055668号参照)。いくつかの局面では、細胞は、1つまたは複数の刺激性もしくは活性化CARおよび/または共刺激性CARを含む。いくつかの態様では、細胞は、抑制性CAR(iCAR、Fedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,5(215)(2013)参照)、例えば疾患または病態に関連するおよび/または特異的である抗原以外の抗原を認識するCARをさらに含み、それにより、疾患を標的とするCARを介して送達される活性化シグナルが、抑制性CARのそのリガンドへの結合によって低減または阻害され、例えばオフターゲット効果を減少させる。
特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3(例えばCD3ζ)細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメインに連結された、キメラCD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインを含む。
いくつかの態様では、CARは、細胞質部分に1つまたは複数、例えば2つまたはそれ以上の共刺激ドメインおよび活性化ドメイン、例えば一次活性化ドメインを包含する。例示的なCARは、CD3ζ、CD28、および4-1BBの細胞内成分を含む。
いくつかの態様では、CARもしくは他の抗原受容体は、受容体を発現するための細胞の形質導入もしくは操作を確認するために使用し得る細胞表面マーカーなどのマーカー、例えば末端切断されたEGFR(tEGFR)などの短縮型の細胞表面受容体をさらに含む。いくつかの局面では、マーカーは、CD34、NGFR、または上皮増殖因子受容体(例えばtEGFR)の全部または一部(例えば短縮形態)を含む。いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸は、切断可能なリンカー配列、例えばT2Aなどのリンカー配列をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されている。例えば、マーカー、および任意でリンカー配列は、公開された特許出願WO 2014031687に開示されている任意のものであり得る。例えば、マーカーは、任意で、T2A切断可能リンカー配列などのリンカー配列に連結されている短縮型EGFR(tEGFR)であり得る。短縮型EGFR(例えばtEGFR)のための例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO:8に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:19と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、単一のプロモーターは、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)中に、自己切断性ペプチド(例えば、2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フューリン)をコードする配列により互いから分離された2つまたは3つの遺伝子(例えば、代謝経路のモジュレ―トに関与する分子をコードするものおよび組み換え受容体をコードするもの)を含むRNAの発現を指示し得る。ORFは、したがって、翻訳の間(2Aの場合)または後のいずれかにおいて個々のタンパク質にプロセシングされる単一のポリペプチドをコードする。いくつかの場合には、T2Aなどのペプチドは、2AエレメントのC末端においてペプチド結合の合成をリボソームがスキップする(リボソームスキッピング)ことを引き起こすことができ、これは2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離に繋がる(例えば、de Felipe.Genetic Vaccines and Ther.2:13(2004)およびdeFelipe et al.Traffic 5:616-626(2004)を参照)。多くの2Aエレメントが公知である。本明細書に開示される方法および核酸において使用することができる2A配列の例としては、米国特許出願公開第20070116690号に記載されるような口蹄疫ウイルス(F2A、例えば、SEQ ID NO:24)、馬鼻炎Aウイルス(E2A、例えば、SEQ ID NO:23)、Thosea asignaウイルス(T2A、例えば、SEQ ID NO:7または20)、および豚テシオウイルス-1(P2A、例えば、SEQ ID NO:21または22)からの2A配列であるがこれらに限定されない。例示的なT2Aリンカー配列は、SEQ ID NO:7に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、マーカーは、天然ではT細胞上に見出されない、または天然ではT細胞の表面上に見出されない分子、例えば細胞表面タンパク質、またはその一部である。いくつかの態様では、分子は非自己分子、例えば非自己タンパク質、すなわち細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
いくつかの態様では、マーカーは、形質導入マーカーまたは代理マーカーである。形質導入マーカーまたは代理マーカーは、ポリヌクレオチド(例えば、組み換え受容体をコードするポリヌクレオチド)を導入された細胞を検出するために使用することができる。いくつかの態様では、形質導入マーカーは、細胞の改変を示すかまたは裏付けることができる。いくつかの態様では、代理マーカーは、組み換え受容体、例えばCARと共に細胞表面上に共発現させられるタンパク質である。特定の態様では、そのような代理マーカーは、ほとんどまたは全く活性を有しないように改変された表面タンパク質である。特定の態様では、代理マーカーは、組み換え受容体をコードする同じポリヌクレオチド上にコードされる。いくつかの態様では、組み換え受容体をコードする核酸配列は、任意で内部リボソーム進入部位(IRES)により分離された、マーカーをコードする核酸配列、または自己切断性ペプチドもしくはT2A、P2A、E2AもしくはF2Aなどの2A配列などの、リボソームスキッピングを引き起こすペプチドをコードする核酸に機能的に連結される。いくつかの場合には、細胞の検出または選択を可能とするため、およびいくつかの場合にはまた、細胞の自殺を促進するために、操作された細胞と組み合わせて外因性のマーカー遺伝子が利用され得る。
例示的な代理マーカーとしては、短縮形態の細胞表面ポリペプチド、例えば、非機能的でありかつシグナルもしくは通常は全長型の細胞表面ポリペプチドにより伝達されるシグナルを伝達しないもしくは伝達できない、かつ/または内部移行しないもしくは内部移行できない短縮形態を挙げることができる。例示的な短縮型細胞表面ポリペプチドには、短縮形態の成長因子または他の受容体、例えば、短縮型のヒト上皮成長因子受容体2(tHER2)、短縮型の上皮成長因子受容体(tEGFR、例示的なtEGFR配列をSEQ ID NO:8または19に示す)もしくは前立腺特異的膜抗原(PSMA)またはこれらの改変形態が含まれる。tEGFRは、抗体セツキシマブ(Erbitux(登録商標))または他の治療用抗EGFR抗体もしくは結合分子により認識されるエピトープを含むことができ、これは、tEGFRコンストラクトおよびコードされる外因性タンパク質を用いて操作された細胞を同定もしくは選択するため、ならびに/またはコードされる外因性タンパク質を発現する細胞を除去もしくは分離するために使用され得る。米国特許第8,802,374号およびLiu et al.,Nature Biotech.2016 April;34(4):430-434を参照)。いくつかの局面では、マーカー、例えば代理マーカーは、CD34、NGFR、CD19もしくは短縮型CD19、例えば短縮型非ヒトCD19、または上皮増殖因子受容体(例えばtEGFR)の全部または一部(例えば短縮形態)を含む。いくつかの態様では、マーカーは、蛍光タンパク質であるかまたはそれを含み、蛍光タンパク質は、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、super-fold GFP(sfGFP)などの強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、tdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2などの赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色緑色蛍光タンパク質(BFP)、強化型青色蛍光タンパク質(EBFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびに蛍光タンパク質の種の変種、単量体の変種、およびコドン最適化かつ/または強化型の変種などのこれらの変種である。いくつかの態様では、マーカーは、酵素であるかまたはそれを含み、酵素は、例えば、ルシフェラーゼ、大腸菌(E.coli)からのlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)である。例示的な発光性レポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)またはこれらの変種が含まれる。
いくつかの態様では、マーカーは選択マーカーである。いくつかの態様では、選択マーカーは、外因性の作用物質または薬物への抵抗性を付与するポリペプチドであるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、選択マーカーは抗生物質抵抗性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、哺乳動物細胞に抗生物質抵抗性を付与する抗生物質抵抗性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、ピューロマイシン抵抗性遺伝子、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子、ブラストサイジン抵抗性遺伝子、ネオマイシン抵抗性遺伝子、ジェネティシン抵抗性遺伝子もしくはゼオシン抵抗性遺伝子またはこれらの改変形態であるかまたはそれを含む。
いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸は、切断可能なリンカー配列、例えばT2Aなどのリンカー配列をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されている。例えば、マーカー、および任意でリンカー配列は、国際公開公報第2014031687号に開示されている任意のものであり得る。例えば、マーカーは、任意で、T2A切断可能リンカー配列などのリンカー配列に連結されている短縮型EGFR(tEGFR)であり得る。短縮型EGFR(例えばtEGFR)のための例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO:8もしくは19に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8もしくは19と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、マーカーは、治療機能を果たさない、および/または遺伝子操作のため、例えば成功裏に操作された細胞を選択するためのマーカーとして使用されること以外には全く作用をもたらさない。他の態様では、マーカーは、治療分子または何らかの所望の作用を及ぼす分子、例えば、養子移入時またはリガンドとの遭遇時に細胞の応答を増強するおよび/または減弱させる共刺激分子または免疫チェックポイント分子などの、インビボで遭遇される細胞に対するリガンドであり得る。
いくつかの場合には、CARは、第一、第二、および/または第三世代のCARと称される。いくつかの局面では、第一世代のCARは、抗原結合の際にCD3鎖誘導シグナルのみを提供するものである;いくつかの局面では、第二世代のCARは、そのようなシグナルと、CD28またはCD137などの共刺激受容体由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含むものなどの共刺激シグナルとを提供するものである;いくつかの局面では、第三世代のCARは、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものである。
いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、抗体または抗体断片を含む細胞外部分を含有する。いくつかの局面では、キメラ抗原受容体は、抗体または断片を含む細胞外部分と細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの態様では、抗体または断片はscFvを含み、細胞内ドメインはITAMを含む。いくつかの局面では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のζ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを連結する膜貫通ドメインを含む。いくつかの局面では、膜貫通ドメインはCD28またはその変異体の膜貫通部分を含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体はT細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインと膜貫通ドメインは直接または間接的に連結され得る。いくつかの態様では、細胞外ドメインと膜貫通ドメインは、本明細書に記載されているものなどのスペーサーによって連結されている。いくつかの態様では、受容体は、膜貫通ドメインが由来する分子の細胞外部分、例えばCD28細胞外部分を含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子またはその機能的変異体に由来する細胞内ドメインを、例えば膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に含む。いくつかの局面では、T細胞共刺激分子はCD28または41BBである。
例えば、いくつかの態様では、CARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、ならびにCD28のシグナル伝達部分またはその機能的変異体およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。いくつかの態様では、CARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、ならびに4-1BBのシグナル伝達部分またはその機能的変異体およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。いくつかのそのような態様では、受容体は、ヒトIg分子などのIg分子の一部、例えばIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジを含むスペーサー、例えばヒンジのみのスペーサーをさらに含む。
いくつかの態様では、組換え受容体、例えばCARの膜貫通ドメインは、ヒトCD28の膜貫通ドメイン(例えばアクセッション番号P01747.1)またはその変異体、例えばSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインであるかまたはそれを含む;いくつかの態様では、組換え受容体の膜貫通ドメイン含有部分は、SEQ ID NO:10に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、組換え受容体、例えばCARの細胞内シグナル伝達成分は、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体もしくは部分、例えば天然CD28タンパク質の186〜187位にLLからGGへの置換を有するドメインを含む。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:11もしくは12に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:11もしくは12と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含み得る。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン(例えばアクセッション番号Q07011.1)またはその機能的変異体もしくは部分、例えばSEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、組換え受容体、例えばCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えばヒトCD3ζのアイソフォーム3の112アミノ酸細胞質ドメイン(アクセッション番号P20963.2)、または米国特許第7,446,190号もしくは米国特許第8,911,993号に記載されているCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。例えば、いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:14、15もしくは16に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14、15もしくは16と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの局面では、スペーサーは、IgGのヒンジ領域のみ、例えばIgG4またはIgG1のヒンジのみ、例えばSEQ ID NO:2に示すヒンジのみのスペーサーを含む。他の態様では、スペーサーは、任意でCH2および/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4由来のヒンジであるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、スペーサーは、例えばSEQ ID NO:5に示すような、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、例えばSEQ ID NO:4に示すような、CH3ドメインのみに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または他の柔軟なリンカー、例えば公知の柔軟なリンカーであるかまたはそれを含む。
例えば、いくつかの態様では、CARは、scFvを含む抗体断片などの抗体、スペーサー、例えばヒンジ領域および/または重鎖分子の1つもしくは複数の定常領域などの免疫グロブリン分子の一部を含むスペーサー、例えばIgヒンジ含有スペーサー、CD28由来の膜貫通ドメインの全部または一部を含む膜貫通ドメイン、CD28由来の細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびにCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、抗体またはscFvなどの断片、任意のIgヒンジ含有スペーサーなどのスペーサー、CD28由来の膜貫通ドメイン、4-1BB由来の細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの態様では、そのようなCAR構築物をコードする核酸分子は、例えばCARをコードする配列の下流に、T2Aリボソームスキップエレメントおよび/またはtEGFR配列をコードする配列をさらに含む。いくつかの態様では、配列は、SEQ ID NO:7に示すT2Aリボソームスキップエレメント、またはSEQ ID NO:7と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、抗原受容体(例えばCAR)を発現するT細胞はまた、短縮型EGFR(EGFRt)を非免疫原性選択エピトープとして発現するように生成することもでき(例えば同じ構築物から2つのタンパク質を発現するためにT2Aリボソームスイッチによって分離されたCARとEGFRtをコードする構築物の導入によって)、これはその後、そのような細胞を検出するためのマーカーとして使用することができる(例えば米国特許第8,802,374号参照)。いくつかの態様では、配列は、SEQ ID NO:8に示すtEGFR配列、またはSEQ ID NO:8と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列をコードする。
対象に投与される細胞によって発現されるCARなどの組換え受容体は、一般に、治療されている疾患もしくは病態またはその細胞において発現される、それに関連する、および/またはそれに対して特異的な分子を認識するまたはそれに特異的に結合する。分子、例えば抗原に特異的に結合すると、受容体は一般に、ITAM形質導入シグナルなどの免疫刺激シグナルを細胞内に送達し、それによって疾患または病態を標的とする免疫応答を促進する。例えば、いくつかの態様では、細胞は、疾患もしくは病態の細胞もしくは組織によって発現されるか、または疾患もしくは病態に関連する抗原に特異的に結合するCARを発現する。
2.TCR
特定の態様では、組み換え受容体を発現する操作された細胞を含有する細胞組成物のグリカン(例えばN-グリカン)の表面発現は、本明細書において提供される方法により評価される。いくつかの態様では、表面グリカンの発現は、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分を発現するT細胞などの操作された細胞において評価される。
特定の態様では、本明細書において提供される方法は、組み換えT細胞受容体を発現する細胞の組成物の表面グリカンプロフィール、すなわち表面グリカンの発現を評価するために使用され得る。いくつかの態様では、「T細胞受容体」または「TCR」は、可変α鎖およびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても知られる)または可変γ鎖およびδ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても知られる)またはそれらの抗原結合部分を含み、MHC分子に結合したペプチドに特異的に結合することができる分子である。いくつかの態様では、TCRはαβ形態である。典型的には、αβおよびγδ形態で存在するTCRは一般に構造的に類似するが、それらを発現するT細胞は異なる解剖学的位置または機能を有し得る。TCRは、細胞の表面上にまたは可溶性形態で見出され得る。一般に、TCRは、それが一般に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原を認識することに関与するT細胞(またはTリンパ球)の表面上に見出される。
特に明記されない限り、「TCR」という用語は、完全なTCR、ならびにその抗原結合部分または抗原結合断片を包含すると理解されるべきである。いくつかの態様では、TCRは、αβ形態またはγδ形態のTCRを含む、無傷または完全長のTCRである。いくつかの態様では、TCRは、完全長未満のTCRであるが、MHC分子に結合した特定のペプチドに結合する、例えばMHC-ペプチド複合体に結合する抗原結合部分である。いくつかの場合には、TCRの抗原結合部分または断片は、完全長またはインタクトなTCRの構造ドメインの一部のみを含み得るが、それでもなお、完全なTCRが結合するMHC-ペプチド複合体などのペプチドエピトープに結合することができる。いくつかの場合には、抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変α鎖および可変β鎖などのTCRの可変ドメインを含む。一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHCおよび/またはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域を含む。
いくつかの態様では、TCRの可変ドメインは、一般に抗原認識ならびに結合能力および特異性に対する主な寄与因子である、超可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの態様では、TCRのCDRまたはそれらの組み合わせは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全部または実質的に全部を形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは、一般に、CDRと比較してTCR分子間で一般にばらつきがより少ないフレームワーク領域(FR)によって分離されている(例えばJores et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.87:9138,1990;Chothia et al.,EMBO J.7:3745,1988参照;またLefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55,2003も参照のこと)。いくつかの態様では、CDR3は、抗原結合もしくは特異性に関与する主なCDRであるか、または抗原認識および/もしくはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用のために、所与のTCR可変領域上の3つのCDRのうちで最も重要である。いくつかの状況では、α鎖のCDR1は特定の抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、β鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用またはMHC部分の認識に最も強く寄与するか、またはそれに関与する主要なCDRである。いくつかの態様では、β鎖の可変領域は、一般にスーパー抗原結合に関与し、抗原認識には関与しないさらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含み得る(Kotb(1995)Clinical Microbiology Reviews,8:411-426)。
いくつかの態様では、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質尾部を含み得る(例えばJaneway et al.,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,3rd Ed.,Current Biology Publications,p.4:33,1997参照)。いくつかの局面では、TCRの各々の鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端に短い細胞質尾部を有し得る。いくつかの態様では、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と会合している。
いくつかの態様では、TCR鎖は1つまたは複数の定常ドメインを含む。例えば、所与のTCR鎖(例えばα鎖またはβ鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、例えば可変ドメイン(例えばVαまたはVβ;典型的にはKabatナンバリングに基づき鎖のアミノ酸1〜116位、Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept. Health and Human Services,Public Health Service National Institutes of Health,1991,5th ed.)、および細胞膜に隣接する定常ドメイン(例えばα鎖定常ドメインもしくはCα、典型的にはKabatナンバリングに基づき鎖の117〜259位またはβ鎖定常ドメインもしくはCβ、典型的にはKabatに基づき鎖の117〜295位)を含み得る。例えば、いくつかの場合には、2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメイン、および2つの膜遠位可変ドメインを含み、これらの可変ドメインはそれぞれCDRを含む。TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによってTCRの2本の鎖を連結する短い連結配列を含み得る。いくつかの態様では、TCRが定常ドメイン内に2つのジスルフィド結合を含むように、TCRは、α鎖およびβ鎖のそれぞれにさらなるシステイン残基を有し得る。
いくつかの態様では、TCR鎖は膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは正に荷電している。いくつかの場合には、TCR鎖は細胞質尾部を含む。いくつかの場合には、その構造は、TCRがCD3およびそのサブユニットのような他の分子と会合することを可能にする。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体のインバリアントサブユニットと会合し得る。CD3シグナル伝達サブユニット(例えばCD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζ鎖)の細胞内尾部は、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する1つまたは複数の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMを含む。
いくつかの態様では、TCRは、2本の鎖αおよびβ(または任意でγおよびδ)のヘテロ二量体であり得るか、または一本鎖TCR構築物であり得る。いくつかの態様では、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合などによって連結されている2本の別々の鎖(α鎖とβ鎖またはγ鎖とδ鎖)を含むヘテロ二量体である。
いくつかの態様では、TCRは、実質的に完全長のコード配列が容易に利用可能であるVα,β鎖の配列などの公知のTCR配列から生成することができる。細胞供給源から、V鎖配列を含む完全長TCR配列を得るための方法は周知である。いくつかの態様では、TCRをコードする核酸は、所与の1つまたは複数の細胞内のもしくは細胞から単離されたTCRコード核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または公的に入手可能なTCR DNA配列の合成などの様々な供給源から得ることができる。
いくつかの態様では、TCRは、T細胞(例えば細胞傷害性T細胞)などの細胞、T細胞ハイブリドーマまたは他の公的に入手可能な供給源などの生物学的供給源から得られる。いくつかの態様では、T細胞は、インビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの態様では、TCRは胸腺的に選択されたTCRである。いくつかの態様では、TCRはネオエピトープ拘束性TCRである。いくつかの態様では、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであり得る。いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、TCRの配列の知識から合成的に生成することができる。
いくつかの態様では、TCRは、標的ポリペプチド抗原またはその標的T細胞エピトープに対して候補TCRのライブラリーをスクリーニングすることから同定または選択されたTCRから生成される。TCRライブラリーは、PBMC、脾臓または他のリンパ系器官に存在する細胞を含む、対象から単離されたT細胞からのVαおよびVβのレパートリの増幅によって作製することができる。いくつかの場合には、T細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から増幅することができる。いくつかの態様では、TCRライブラリーはCD4+またはCD8+細胞から作製することができる。いくつかの態様では、TCRは、正常なまたは健康な対象のT細胞供給源、すなわち正常なTCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様では、TCRは、罹患対象のT細胞供給源、すなわち罹患TCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様では、縮重プライマーを使用して、ヒトから得られたT細胞などの試料におけるRT-PCRなどによって、VαおよびVβの遺伝子レパートリを増幅する。いくつかの態様では、scTvライブラリーは、増幅産物がクローニングされるかまたはリンカーによって分離されるように構築されるナイーブVαおよびVβライブラリーから構築することができる。対象および細胞の供給源に依存して、ライブラリーはHLA対立遺伝子特異的であり得る。あるいは、いくつかの態様では、TCRライブラリーは、親または骨格TCR分子の突然変異誘発または多様化によって作製することができる。いくつかの局面では、TCRは、例えばα鎖またはβ鎖の突然変異誘発などによる指向性進化に供される。いくつかの局面では、TCRのCDR内の特定の残基が変更されている。いくつかの態様では、選択されたTCRを親和性成熟によって改変することができる。いくつかの態様では、ペプチドに対するCTL活性を評価するためのスクリーニングなどによって、抗原特異的T細胞を選択し得る。いくつかの局面では、TCR、例えば抗原特異的T細胞上に存在するTCRは、結合活性、例えば抗原に対する特定の親和性またはアビディティなどによって選択し得る。
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、改変または操作されたものである。いくつかの態様では、指向性進化法を使用して、特定のMHC-ペプチド複合体に対するより高い親和性などの変更された特性を有するTCRを生成する。いくつかの態様では、指向性進化は、酵母ディスプレイ(Holler et al.,(2003)Nat Immunol,4,55-62;Holler et al.,(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al.,(2005)Nat Biotechnol,23,349-54)、またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al.,(2008)J Immunol Methods,339,175-84)を含むがこれらに限定されるわけではないディスプレイ法によって達成される。いくつかの態様では、ディスプレイアプローチは、公知のTCR、親TCR、または参照TCRを操作または改変することを含む。例えば、いくつかの場合には、野生型TCRを、CDRの1つまたは複数の残基が変異している変異誘発されたTCRを生成するための鋳型として使用することができ、所望の標的抗原に対するより高い親和性などの所望の変更された特性を有する変異体を選択する。
いくつかの態様では、関心対象のTCRを作製または生成する際に使用するための標的ポリペプチドのペプチドは、公知であるかまたは当業者によって容易に同定され得る。いくつかの態様では、TCRまたは抗原結合部分を生成する際に使用するのに適したペプチドは、関心対象の標的ポリペプチド、例えば下記の標的ポリペプチド中のHLA拘束性モチーフの存在に基づいて決定することができる。いくつかの態様では、ペプチドは、当業者に公知のコンピュータ予測モデルを用いて同定される。いくつかの態様では、MHCクラスI結合部位を予測するために、そのようなモデルとしては、ProPred1(Singh and Raghava(2001)Bioinformatics 17(12):1236-1237)およびSYFPEITHI(Schuler et al.,(2007)Immunoinformatics Methods in Molecular Biology,409(1):75-93 2007)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、MHC拘束性エピトープは、全白人の約39〜46%で発現されるHLA-A0201であり、したがって、TCRまたは他のMHC-ペプチド結合分子を調製するのに使用するためのMHC抗原の適切な選択である。
コンピュータ予測モデルを用いたHLA-A0201結合モチーフならびにプロテアソームおよび免疫プロテアソームの切断部位は当業者に公知である。MHCクラスI結合部位を予測するために、そのようなモデルとしては、ProPred1(Singh and Raghava,ProPred:prediction of HLA-DR binding sites. Bioinformatics 17(12):1236-1237 2001により詳細に記載されている)、およびSYFPEITHI(Schuler et al., SYFPEITHI, Database for Searching and T-Cell Epitope Prediction.in Immunoinformatics Methods in Molecular Biology, vol 409(1) :75-93 2007参照)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、結合特性などの1つまたは複数の特性が変更されている、組換え生産された天然タンパク質またはその変異型であり得る。いくつかの態様では、TCRは、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳動物などの様々な動物種の1つに由来し得る。TCRは細胞結合型でも可溶型でもよい。いくつかの態様では、提供される方法の目的のために、TCRは細胞の表面に発現される細胞結合型である。
いくつかの態様では、TCRは完全長TCRである。いくつかの態様では、TCRは抗原結合部分である。いくつかの態様では、TCRは二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様では、TCRは一本鎖TCR(sc-TCR)である。いくつかの態様では、dTCRまたはscTCRは、国際公開公報第03/020763号、同第04/033685号、同第2011/044186号に記載されている構造を有する。
いくつかの態様では、TCRは膜貫通配列に対応する配列を含む。いくつかの態様では、TCRは細胞質配列に対応する配列を含む。いくつかの態様では、TCRはCD3とTCR複合体を形成することができる。いくつかの態様では、dTCRまたはscTCRを含む任意のTCRは、T細胞の表面上に活性TCRを生じるシグナル伝達ドメインに連結され得る。いくつかの態様では、TCRは細胞の表面上に発現される。
いくつかの態様では、dTCRは、TCRα鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第一のポリペプチド、およびTCRβ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第二のポリペプチドを含み、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドはジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの態様では、結合は、天然の二量体αβTCR中に存在する天然の鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。いくつかの態様では、鎖間ジスルフィド結合は天然のTCR中には存在しない。例えば、いくつかの態様では、1つまたは複数のシステインをdTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列に組み込むことができる。いくつかの場合には、天然および非天然の両方のジスルフィド結合が望ましいことがあり得る。いくつかの態様では、TCRは、膜に固定するための膜貫通配列を含む。
いくつかの態様では、dTCRは、可変αドメイン、定常αドメインおよび定常αドメインのC末端に結合した第一の二量体化モチーフを含むTCRα鎖、ならびに可変βドメイン、定常βドメインおよび定常βドメインのC末端に結合した第一の二量体化モチーフを含むTCRβ鎖を含み、ここで、第一と第二の二量体化モチーフは容易に相互作用して、第一の二量体化モチーフ中のアミノ酸と第二の二量体化モチーフ中のアミノ酸との間に共有結合を形成し、TCRα鎖とTCRβ鎖を一緒に連結する。
いくつかの態様では、TCRはscTCRである。典型的には、scTCRは当業者に公知の方法を用いて生成することができる。例えばSoo Hoo,W.F.et al.,PNAS(USA)89,4759(1992);Wulfing,C.and Pluckthun,A.,J.Mol.Biol.242,655(1994);Kurucz,I.et al.,PNAS(USA)90 3830(1993);国際公開公報第96/13593号、同第96/18105号、同第99/60120号、同第99/18129号、同第03/020763号、同第2011/044186号;およびSchlueter,C.J.et al.,J.Mol.Biol.256,859(1996)参照。いくつかの態様では、scTCRは、TCR鎖の会合を容易にするために導入された非天然ジスルフィド鎖間結合を含む(例えば国際公開公報第03/020763号参照)。いくつかの態様では、scTCRは、そのC末端に融合した異種ロイシンジッパーが鎖の会合を促進する、非ジスルフィド結合短縮型TCRである(例えば国際公開公報第99/60120号参照)。いくつかの態様では、scTCRは、ペプチドリンカーを介してTCRβ可変ドメインに共有結合したTCRα可変ドメインを含む(例えば国際公開公報第99/18129号参照)。
いくつかの態様では、scTCRは、TCRα鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第一のセグメント、TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第二のセグメント、および第一のセグメントのC末端を第二のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
いくつかの態様では、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成される第一のセグメント、ならびにβ鎖細胞外定常配列と膜貫通配列との配列のN末端に融合したβ鎖可変領域配列およびによって構成される第二のセグメント、ならびに任意で、第一のセグメントのC末端を第二のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
いくつかの態様では、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列によって構成される第一のセグメント、ならびにα鎖細胞外定常配列と膜貫通配列との配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列およびによって構成される第二のセグメント、ならびに任意で、第一のセグメントのC末端を第二のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
いくつかの態様では、第一および第二のTCRセグメントを連結するscTCRのリンカーは、TCRの結合特異性を保持しながら、単一のポリペプチド鎖を形成することができる任意のリンカーであり得る。いくつかの態様では、リンカー配列は、例えば式-P-AA-P-を有してよく、式中、Pはプロリンであり、AAはアミノ酸配列を表し、アミノ酸はグリシンおよびセリンである。いくつかの態様では、第一および第二のセグメントは、その可変領域配列がそのような結合のために配向されるように対合される。したがって、いくつかの場合には、リンカーは、第一のセグメントのC末端と第二のセグメントのN末端との間、またはその逆の間の距離を橋渡しするのに十分な長さを有するが、scTCRの標的リガンドへの結合を遮断または低減するほどには長くない。いくつかの態様では、リンカーは、10〜45個のアミノ酸、例えば10〜30個のアミノ酸もしくは26〜41個のアミノ酸残基、例えば29、30、31もしくは32個のアミノ酸、またはおよそ前記個数のアミノ酸を含み得る。いくつかの態様では、リンカーは、式-PGGG-(SGGGG)5-P-(SEQ ID NO:17)を有し、式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、かつSはセリンである。いくつかの態様では、リンカーは、配列GSADDAKKDAAKKDGKS(SEQ ID NO:18)を有する。
いくつかの態様では、scTCRは、α鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基をβ鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結する共有ジスルフィド結合を含む。いくつかの態様では、天然TCR中の鎖間ジスルフィド結合は存在しない。例えば、いくつかの態様では、1つまたは複数のシステインを、scTCRポリペプチドの第一および第二のセグメントの定常領域細胞外配列に組み込むことができる。いくつかの場合には、天然および非天然の両方のジスルフィド結合が望ましいことがあり得る。
導入された鎖間ジスルフィド結合を含むdTCRまたはscTCRのいくつかの態様では、天然のジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様では、天然の鎖間ジスルフィド結合を形成する天然のシステインの1つまたは複数は、セリンまたはアラニンなどの別の残基に置換されている。いくつかの態様では、導入されるジスルフィド結合は、第一および第二のセグメント上の非システイン残基をシステインに変異させることによって形成することができる。TCRの例示的な非天然ジスルフィド結合は、国際公開公報第2006/000830号に記載されている。
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合断片は、10-5〜10-12Mまたは約10-5〜10-12Mならびにその中のすべての個々の値および範囲の標的抗原に対する平衡結合定数で親和性を示す。いくつかの態様では、標的抗原はMHC-ペプチド複合体またはリガンドである。
いくつかの態様では、α鎖およびβ鎖などのTCRをコードする1つまたは複数の核酸は、PCR、クローニングまたは他の適切な手段によって増幅し、適切な1つまたは複数の発現ベクターにクローニングすることができる。発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであり得、任意の適切な宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用することができる。適切なベクターには、プラスミドおよびウイルスなどの、増殖および拡大増殖のため、または発現のため、またはその両方のために設計されたものが含まれる。
いくつかの態様では、ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, Calif.)、pETシリーズ(Novagen, Madison, Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)、またはpEXシリーズ(Clontech, Palo Alto, Calif.)のベクターであり得る。いくつかの場合には、λG10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、およびλNM1149などのバクテリオファージベクターも使用することができる。いくつかの態様では、植物発現ベクターを使用することができ、これには、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121およびpBIN19(Clontech)が含まれる。いくつかの態様では、動物発現ベクターには、pEUK-Cl、pMAMおよびpMAMneo(Clontech)が含まれる。いくつかの態様では、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターが使用される。
いくつかの態様では、組換え発現ベクターは、標準的な組換えDNA技術を用いて調製することができる。いくつかの態様では、ベクターは、適宜におよびベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮に入れて、ベクターが導入される宿主の種類(例えば細菌、真菌、植物、または動物)に特異的な転写および翻訳開始および終止コドンなどの調節配列を含み得る。いくつかの態様では、ベクターは、TCRまたは抗原結合部分(または他のMHC-ペプチド結合分子)をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された非天然プロモーターを含み得る。いくつかの態様では、プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、およびマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復配列中に見られるプロモーターであり得る。当業者に公知の他のプロモーターも企図される。
いくつかの態様では、TCRをコードするベクターを生成するために、関心対象のTCRを発現するT細胞クローンから単離された全cDNAからα鎖およびβ鎖をPCR増幅し、発現ベクターにクローニングする。いくつかの態様では、α鎖とβ鎖は同じベクターにクローニングされる。いくつかの態様では、α鎖とβ鎖は異なるベクターにクローニングされる。いくつかの態様では、生成されたα鎖およびβ鎖は、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターに組み込まれる。
3.マルチターゲティング
いくつかの態様では、表面グリカン発現は、マルチターゲティング戦略のために設計された細胞を含有する細胞組成物において評価される。いくつかの態様では、細胞組成物は、各受容体が同じかまたは異なる抗原を認識し、典型的にはそれぞれが異なる細胞内シグナル伝達成分を含む、細胞上の2つまたはそれより多くの遺伝子操作された受容体を発現する細胞などの、マルチターゲティング戦略のために設計された細胞を含む。そのようなマルチターゲティング戦略は、例えば国際公開公報第2014055668A1号(例えば、オフターゲット細胞、例えば正常細胞上では個別に存在するが、治療される疾患または病態の細胞上でのみ一緒に存在する2つの異なる抗原を標的とする、活性化CARと共刺激CARとの組み合わせを記載する)、ならびにFedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,5(215)(2013)(活性化CARが正常細胞または非罹患細胞、および治療される疾患または病態の細胞の両方で発現される1つの抗原に結合し、抑制性CARが正常細胞または治療されることが望ましくない細胞でのみ発現される別の抗原に結合するものなどの、活性化CARと抑制性CARを発現する細胞を記載する)に記載されている。
例えば、いくつかの態様では、一般に第一の受容体によって認識される抗原、例えば第一の抗原への特異的結合時に細胞への活性化シグナルを誘導することができる第一の遺伝子操作された抗原受容体(例えばCARまたはTCR)を発現する受容体を含む細胞を含有する細胞組成物から、表面グリカンが遊離して分析される。いくつかの態様では、細胞は、一般に第二の受容体によって認識される第二の抗原への特異的結合時に免疫細胞への共刺激シグナルを誘導することができる第二の遺伝子操作された抗原受容体(例えばCARまたはTCR)、例えばキメラ共刺激受容体をさらに含む。いくつかの態様では、第一の抗原と第二の抗原は同じである。いくつかの態様では、第一の抗原と第二の抗原は異なる。
いくつかの態様では、第一および/または第二の遺伝子操作された抗原受容体(例えばCARまたはTCR)は、細胞への活性化シグナルを誘導することができる。いくつかの態様では、受容体は、ITAMまたはITAM様モチーフを含有する細胞内シグナル伝達成分を含む。いくつかの態様では、第一の受容体によって誘導される活性化は、細胞内でのシグナル伝達またはタンパク質発現の変化を含み、結果として、ITAMリン酸化および/またはITAM媒介シグナル伝達カスケードの開始などの免疫応答の開始、免疫学的シナプスの形成および/または結合した受容体付近の分子(例えばCD4もしくはCD8など)のクラスター化、NF-κBおよび/またはAP-1などの1つまたは複数の転写因子の活性化、ならびに/またはサイトカインなどの因子の遺伝子発現、増殖、および/もしくは生存の誘導をもたらす。
いくつかの態様では、第一および/または第二の受容体は、CD28、CD137(4-1BB)、OX40、および/またはICOSなどの共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、第一の受容体と第二の受容体は、異なる共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、第一の受容体はCD28共刺激シグナル伝達領域を含み、第二の受容体は4-1BB共刺激シグナル伝達領域を含む、またはその逆である。
いくつかの態様では、第一および/または第二の受容体は、ITAMまたはITAM様モチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインと共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの両方を含む。
いくつかの態様では、第一の受容体はITAMまたはITAM様モチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第二の受容体は共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。同じ細胞内で誘導される活性化シグナルと組み合わせる共刺激シグナルは、免疫応答、例えば遺伝子発現の増加、サイトカインおよび他の因子の分泌、ならびに細胞殺滅などのT細胞媒介エフェクター機能のような堅固で持続的な免疫応答をもたらすものである。
いくつかの態様では、第一の受容体単独の連結または第二の受容体単独の連結のいずれもが、堅固な免疫応答を誘導しない。いくつかの局面では、1つの受容体のみが連結されている場合、細胞は、抗原に対して寛容もしくは非応答性になるか、または阻害され、および/または因子を増殖もしくは分泌するまたはエフェクター機能を実行するように誘導されない。しかしながら、いくつかのそのような態様では、第一および第二の抗原を発現する細胞の遭遇時などに複数の受容体が連結されると、例えば1つもしくは複数のサイトカインの分泌、増殖、持続性、および/または標的細胞の細胞傷害性殺滅などの免疫エフェクター機能の実行によって示されるように、完全な免疫活性化または刺激などの所望の応答が達成される。
いくつかの態様では、2つの受容体はそれぞれ、細胞への活性化シグナルおよび抑制性シグナルを誘導し、その結果、一方の受容体によるその抗原への結合は細胞を活性化させるまたは応答を誘導するが、第二の抑制性受容体によるその抗原への結合はその応答を抑制または減弱させるシグナルを誘導する。例は、活性化CARと抑制性CARまたはiCARとの組み合わせである。そのような戦略は、例えば、活性化CARが、疾患または病態において発現されるが正常細胞上でも発現される抗原に結合し、抑制性受容体が、正常細胞上で発現されるが疾患または病態の細胞上では発現されない別の抗原に結合する場合に使用され得る。
いくつかの態様では、マルチターゲティング戦略は、特定の疾患または病態に関連する抗原が非罹患細胞上でおよび/または操作された細胞自体で、一過性に(例えば遺伝子操作に関連する刺激時に)または永続的に発現される場合に用いられる。そのような場合、2つの別々のおよび個別に特異的な抗原受容体の連結を必要とすることによって、特異性、選択性、および/または有効性が改善され得る。
いくつかの態様では、複数の抗原、例えば第一および第二の抗原は、がん細胞などの標的とされる細胞、組織、または疾患もしくは病態で発現される。いくつかの局面では、細胞、組織、疾患または病態は、多発性骨髄腫または多発性骨髄腫細胞である。いくつかの態様では、複数の抗原のうちの1つまたは複数は通常、正常もしくは非罹患細胞もしくは組織などの細胞療法で標的とすることが望ましくない細胞、および/または操作された細胞自体でも発現される。そのような態様では、細胞の応答を達成するために複数の受容体の連結を必要とすることによって、特異性および/または活性が達成される。
III. 細胞組成物を製造または調製するプロセス
特定の態様では、本明細書において提供される方法は、操作された細胞を製造または生成するプロセスの様々な段階において1つまたは複数の組成物のグリカン(例えばN-グリカン)の表面発現を評価するために使用することができる。特定の態様では、プロセスは、セクションIIIにおけるような本明細書に記載される組み換え受容体、例えば、CARまたはTCRを発現する操作された細胞の製造または生成のためのものであり得る。いくつかの態様では、プロセスは、細胞の単離、分離、選択、培養(例えば、例えば増殖および/または活性化を誘導するための、細胞の刺激)、形質導入および/もしくはトランスフェクション、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、ならびに/または製剤化のための工程を含む。特定の態様では、表面グリカン発現は、細胞の単離、分離、選択、培養(例えば、例えば増殖および/または活性化を誘導するための、細胞の刺激)、形質導入および/もしくはトランスフェクション、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、ならびに/または製剤化のための工程の前に、それとの関連で、またはその後に得られる1つまたは複数の細胞組成物において評価される。特定の態様では、細胞は、操作された細胞を製造または生成するプロセスにおける任意の段階においてまたは任意の段階の間に回収され得る。いくつかの態様では、細胞は、後の表面グリカンの分析のために貯蔵(例えば凍結保存)されてよく、または表面グリカンを遊離する条件下で直接的にインキュベーションされてよい。
いくつかの態様では、操作された細胞を生成または製造するプロセスの様々な工程において採取された細胞組成物からの細胞の表面から遊離するグリカン(例えばN-グリカン)が分析される。いくつかの態様では、組成物は、PBMCを含有する細胞組成物を含む。特定の態様では、組成物は細胞組成物を含み、選択されたCD4+またはCD8+T細胞を含む。いくつかの態様では、細胞組成物は、活性化T細胞組成物を含有する細胞組成物を含む。特定の態様では、T細胞組成物は、活性化され、かつ、組み換え受容体をコードするベクターを用いて形質導入またはトランスフェクトされた細胞を含む。特定の態様では、細胞組成物は、拡大増殖した組み換え受容体発現細胞を含む。
特定の態様では、グリカン(例えばN-グリカン)の表面発現は、操作された細胞を生成または製造するプロセスの様々な工程において採取された細胞組成物の細胞から評価される。いくつかの態様では、細胞組成物は、バルクPBMCを含む組成物を含む。特定の態様では、細胞組成物は、免疫親和性ベースの選択により選択された選択されたCD4+またはCD8+T細胞を含む解凍された、凍結保存された細胞組成物を含む組成物を含む。いくつかの態様では、組成物は、IL-2、IL-15および/またはIL-7の存在下で18〜24時間37℃で抗CD3/抗CD28ビーズとインキュベーションされたT細胞を含む組成物を含む。特定の態様では、細胞組成物は、CARをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入された活性化T細胞を含む組成物を含む。特定の態様では、細胞組成物は、凍結保存の前にIL-2、IL-15および/またはIL-17サイトカインの存在下での拡大増殖に供されたCAR発現細胞を含む解凍された、凍結保存された細胞組成物を含む組成物を含む。いくつかの態様では、細胞組成物は、解凍された、凍結保存された薬物製造物である。
特定の態様では、本明細書において提供される方法は、操作された細胞を生成または製造するプロセスの間に回収された組成物からの細胞のグリカン(例えばN-グリカン)の表面発現を評価するために使用され得る。いくつかの態様では、細胞組成物は、細胞の単離、分離、選択、培養、活性化、形質導入および/またはトランスフェクション、拡大増殖、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、および/または製剤化のための工程を行う前の段階の細胞から構成される。特定の態様では、細胞組成物は、細胞の単離、分離、選択、培養、活性化、形質導入および/またはトランスフェクション、拡大増殖、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、および/または製剤化のための工程後の細胞から構成される。特定の態様では、細胞組成物は、細胞の単離、分離、選択、培養、活性化、形質導入および/またはトランスフェクション、拡大増殖、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、および/または製剤化のための工程を受けている細胞から構成される。
いくつかの態様では、本明細書において提供される方法は、例えば、グリカン表面発現を異なる細胞組成物のグリカン表面発現と比較するために、操作された細胞を生成または製造するプロセスの間に回収された組成物からの細胞のグリカン(例えばN-グリカン)の表面発現を評価するために使用され得る。いくつかの態様では、表面グリカン組成物は、プロセス中の工程におけるまたは該工程を受けている細胞の組成物から得られ、かつ、グリカンの発現は、プロセス中の工程の先行する工程におけるまたは該工程を受けている細胞組成物の表面グリカン発現と比較される。特定の態様では、表面グリカン発現は、プロセス中の工程におけるまたは該工程を受けている細胞の組成物から得られ、かつ、表面グリカン発現は、プロセス中の下流の工程におけるまたは該工程を受けている細胞の組成物の表面グリカン発現と比較される。いくつかの態様では、表面グリカン発現は、プロセス中の工程におけるまたは該工程を受けている細胞の組成物から得られ、かつ、表面グリカン発現は、方法を完了した細胞の組成物の表面グリカン発現と比較される。特定の態様では、表面グリカン発現は、プロセス中の工程におけるまたは該工程を受けている細胞の組成物から得られ、かつ、表面グリカン発現は、プロセスを為されなかった細胞の組成物の表面グリカン発現と比較される。
特定の態様では、本明細書において提供される方法は、操作された細胞を生成または製造するプロセスを完了した組成物からの細胞のグリカン(例えばN-グリカン)の表面発現を評価するために使用され得る。いくつかの態様では、細胞の組成物は、同じプロセスを完了したものであり、かつ同じ1つまたは複数の組み換え受容体を発現する。特定の態様では、細胞の組成物は、同じプロセスを完了したものであり、かつ異なる1つまたは複数の組み換え受容体を発現する。いくつかの態様では、表面グリカン発現は、同じプロセスを完了したものであり、かつ同じ1つまたは複数の組み換え受容体を発現する2つまたはそれより多くの細胞組成物の間で比較される。
特定の態様では、同じ組み換え受容体を発現し、かつ同じプロセスを経た異なる細胞組成物が類似の表面グリカン発現を有することが望ましいことがあると企図される。いくつかの態様では、同じ組み換え受容体を発現し、かつ同じプロセスを経た複数の細胞組成物の表面グリカン発現が測定および/または評価される。いくつかの態様では、方法は、対象に投与するための細胞組成物(例えば治療用組成物)の出荷の前に細胞組成物の一貫性および/または実質的な均質性を確認するための出荷アッセイにおいて用いることができる。いくつかの態様では、細胞組成物からの試料における表面グリカンプロフィール、例えば、1つまたは複数のグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルは、出荷規格、ラベル要件、および/または公定規格であるまたはそれを示す参照標準と比較される。
いくつかの態様では、参照標準は、プロセスによって生産された複数の組成物の間での1つまたは複数の標的グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルの平均または中央値を含む。特定の態様では、複数の細胞組成物について、1つまたは複数の標的グリカン(例えば、グリカンの種、ファミリー、および/または群)の発現の測定値の平均、中央値、および/または分散が算出される。いくつかの態様では、提供される方法にしたがって、細胞組成物(例えば試験細胞組成物)から遊離した試料中の1つまたは複数の標的グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルは、1つまたは複数の標的グリカンのそのような平均または中央値と比較される。
いくつかの態様では、細胞組成物は、組成物の細胞表面グリカンプロフィールが参照試料のものと実質的に同じである場合、および/または試料中に存在する全グリカンに対する標的グリカンの割合もしくは複数の標的グリカンのそれぞれの割合が、参照試料中に存在する全グリカンに対する標的グリカンの割合または複数の標的グリカンのそれぞれの割合と、25%以下、20%以下、もしくは10%以下しか相違しない場合にのみ、対象の処置のために出荷される。
いくつかの態様では、操作された細胞を製造または生成するプロセスの1つまたは複数の工程の1つまたは複数のパラメーターは、1つまたは複数のグリカンの種、ファミリー、および/または群の発現の分散が閾値より大きい場合に、調整され、変更され、かつ/または変えられる。いくつかの態様では、閾値は、1つまたは複数のグリカンの種、ファミリー、および/または群の発現の測定値の±50%、±33%、±25%、±20%、±15%、±10%、±7.5%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.1%、±0.05%、もしくは±0.01%のばらつきである。特定の態様では、発現の測定値は、1つまたは複数のグリカンの種、ファミリー、および/または群の相対量、すなわち、合計の表面グリカン発現のうちの1つまたは複数のグリカンの種、ファミリー、および/または群の発現の割合(%)である。一貫性を向上させるためおよび/または表面グリカン発現のばらつきを低減させるために変更され得るパラメーターの例には、インキュベーションのタイミングおよび/または継続時間、細胞調製物の濃度、試薬の追加または除去、ならびに試薬の濃度が含まれる。
いくつかの態様では、提供される方法は、操作された細胞を含有する細胞組成物の調製または製造に関連して製造される1つまたは複数の組成物に対して実行される。いくつかの態様では、製造プロセスは、以下の細胞または細胞を含有する細胞組成物をもたらす1つまたは複数の段階または工程を含む:白血球アフェレーシスもしくはアフェレーシスによって生物学的試料から単離された細胞;免疫親和性ベースの方法によって生物学的試料から選択された細胞;組み換え核酸(任意で、組み換えタンパク質をコードするウイルスベクター)を導入された細胞;1つもしくは複数の試験作用物質(任意で、さらに1つのペプチド、タンパク質、ポリペプチド、核酸、低分子)の存在下でインキュベーションされた細胞;1つもしくは複数の刺激条件の存在下で活性化されかつ/もしくは拡大増殖した細胞;ならびに/または凍結保護物質の存在下での細胞の凍結保存;ならびに/または対象に投与するために(任意で、薬学的に許容される賦形剤の存在下で)製剤化された細胞。
1. 遺伝子操作のための細胞の調製
本明細書において提供される方法によりグリカン表面発現について評価され得る細胞の中には、組み換え受容体を発現する操作された細胞がある。特定の態様では、表面グリカン発現は、遺伝子操作プロセスの様々な段階から回収された細胞の1つまたは複数の組成物から本明細書において提供される方法により評価され得る。
遺伝子操作は通常、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換などによる、細胞を含む組成物への組み換えまたは操作された成分をコードする核酸の導入を含む。いくつかの態様では、表面グリカンは、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換の開始前に回収される細胞の組成物において評価される。特定の態様では、表面グリカンは、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換のプロセスの直後に回収される細胞の組成物において評価される。特定の態様では、表面グリカンは、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換の1つまたは複数の段階において回収される細胞の組成物において評価される。
いくつかの態様では、核酸は異種であり、すなわち通常は細胞または細胞から得られる試料中には存在せず、例えば操作されている細胞中に通常は認められない別の生物もしくは細胞、またはそのような細胞が由来する生物から得られるものである。いくつかの態様では、複数の異なる細胞型からの様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含有するものを含む、天然には認められない核酸などの核酸は、天然には存在しない。
細胞は通常、哺乳動物細胞などの真核細胞であり、典型的にはヒト細胞である。いくつかの態様では、細胞は、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ系器官に由来し、先天性または適応免疫の細胞などの免疫系の細胞、例えばリンパ球を含む骨髄またはリンパ系細胞、典型的にはT細胞および/またはNK細胞である。他の例示的な細胞としては、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む多能性幹細胞などの幹細胞が挙げられる。細胞は、典型的には、対象から直接単離されたもの、および/または対象から単離されて凍結されたものなどの初代細胞である。いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化、拡大増殖、再循環、局在化、および/もしくは持続能力についての潜在能、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロフィール、ならびに/または分化の程度によって定義されるものを含む。治療される対象に関して、細胞は同種細胞および/または自家細胞であり得る。方法の中には、既製の方法が含まれる。既製の技術などに関するいくつかの局面では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞のような多能性である。いくつかの態様では、方法は、凍結保存の前または後に、対象から細胞を単離すること、それらを調製し、処理し、培養し、および/または操作すること、ならびにそれらを同じ対象に再導入することを含む。
T細胞ならびに/またはCD4+および/もしくはCD8+T細胞のサブタイプおよび亜集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)細胞、セントラルメモリーT(TCM)細胞、エフェクターメモリーT(TEM)細胞、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然発生および適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、α/βT細胞、およびδ/γT細胞がある。
いくつかの態様では、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作によって導入された1つまたは複数の核酸を含み、それによってそのような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。いくつかの態様では、核酸は異種であり、すなわち通常は細胞または細胞から得られる試料中には存在せず、例えば操作されている細胞中に通常は認められない別の生物もしくは細胞、またはそのような細胞が由来する生物から得られるものである。いくつかの態様では、複数の異なる細胞型からの様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含有するものを含む、天然には認められない核酸などの核酸は、天然には存在しない。
いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製工程を含む。CARなどのトランスジェニック受容体をコードする核酸を導入するための細胞は、生物学的試料などの試料、例えば対象から得られたまたは対象に由来するものから単離され得る。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは病態を有するか、または細胞療法を必要とするか、または細胞療法が投与される対象である。いくつかの態様における対象は、細胞が単離、処理、および/または操作されている養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とするヒトである。
したがって、いくつかの態様における細胞は初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料には、組織、体液、および対象から直接採取した他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から得られる試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られた試料または処理された試料であり得る。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織および臓器に由来する処理された試料を含む組織および臓器試料が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
いくつかの局面では、細胞が由来するまたは単離される試料は、血液もしくは血液由来の試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシスの産物であるかもしくはそれに由来する。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検材料、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃腺、または他の臓器、および/またはそれに由来する細胞が挙げられる。試料には、細胞療法、例えば養子細胞療法に関連して、自家供給源由来および同種供給源由来の試料が含まれる。
いくつかの態様では、細胞は細胞株、例えばT細胞株に由来する。いくつかの態様における細胞は、異種供給源、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長動物、およびブタから得られる。
いくつかの態様では、細胞の単離は、1つまたは複数の調製および/または非親和性ベースの細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞は、例えば不要な成分を除去する、所望の成分を濃縮する、特定の試薬に感受性の細胞を溶解または除去するために、洗浄、遠心分離、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベーションされる。いくつかの例では、細胞は、密度、付着特性、サイズ、感受性、および/または特定の成分に対する耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
いくつかの例では、対象の循環血液由来の細胞は、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含み、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含む。
いくつかの態様では、対象から採集された血球を、例えば血漿画分を除去し、その後の処理工程のために細胞を適切な緩衝液または培地に入れるために洗浄する。いくつかの態様では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄する。いくつかの態様では、洗浄溶液は、カルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または多くのもしくはすべての二価カチオンを含まない。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って半自動「フロースルー」遠心分離機(例えばCobe 2991細胞プロセッサ、Baxter)によって達成される。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って接線流ろ過(TFF)によって達成される。いくつかの態様では、細胞は、洗浄後に、例えばCa++/Mg++を含まないPBSなどの様々な生体適合性緩衝液に再懸濁される。特定の態様では、血球試料の成分を除去し、細胞を培地に直接再懸濁する。
いくつかの態様では、方法は、密度に基づく細胞分離方法、例えば赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製、およびパーコールまたはフィコール勾配による遠心分離を含む。
いくつかの態様では、単離方法は、表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸などの1つまたは複数の特定の分子の細胞における発現または存在に基づく種々の細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法を使用し得る。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの局面における単離は、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞での発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離、例えばそのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーション、続いて一般に、洗浄工程および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーに結合した細胞の分離によるものを含む。
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞をさらなる使用のために保持する陽性選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞を保持する陰性選択に基づき得る。いくつかの例では、両方の画分をさらなる使用のために保持する。いくつかの局面では、陰性選択は、分離が、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて最も良好に行われるように、異種集団において細胞型を特異的に同定する抗体が利用可能ではない場合に特に有用であり得る。
分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞の100%の濃縮または除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陽性選択または濃縮は、そのような細胞の数または割合を増加させることを指すが、マーカーを発現しない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陰性選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数または割合を減少させることを指すが、そのような細胞すべての完全な除去をもたらす必要はない。
いくつかの例では、1回の工程から陽性または陰性選択された画分が、その後の陽性または陰性選択などの別の分離工程に供される、複数回の分離工程が行われる。いくつかの例では、それぞれが陰性選択の標的となるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベーションすることなどによって、複数のマーカーを同時に発現する細胞を単一の分離工程で枯渇させることができる。同様に、様々な細胞型上に発現された複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベーションすることによって、複数の細胞型を同時に陽性選択することができる。
例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の亜集団、例えば陽性または高レベルの1つまたは複数の表面マーカー、例えばCD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+T細胞を発現する細胞は、陽性または陰性選択技術によって単離される。
例えばCD3+、CD28+T細胞は、CD3/CD28結合磁気ビーズ(例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28T Cell Expander)を用いて陽性選択することができる。
いくつかの態様では、単離は、陽性選択による特定の細胞集団の濃縮、または陰性選択による特定の細胞集団の枯渇によって行われる。いくつかの態様では、陽性または陰性選択は、それぞれ陽性または陰性選択された細胞上に発現される(マーカー+)または比較的高いレベルで発現される(マーカー高)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体または他の結合剤と共に細胞をインキュベーションすることによって達成される。
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球、またはCD14などの他の白血球のような非T細胞上に発現されるマーカーの陰性選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4+またはCD8+選択工程を用いてCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞を分離する。そのようなCD4+およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブT細胞、メモリーT細胞、および/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現されるまたは比較的高い程度に発現されるマーカーについての陽性または陰性選択によって、さらに亜集団に分類することができる。
いくつかの態様では、CD8+ T細胞は、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく陽性選択または陰性選択などによって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞がさらに濃縮または枯渇される。いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、いくつかの局面ではそのような亜集団において特に堅固である、投与後の長期生存、拡大増殖、および/または生着を改善するためなどの有効性を高めるために行われる。Terakura et al.,Blood.1:72-82 (2012);Wang et al.,J Immunother.35(9):689-701(2012)参照。いくつかの態様では、TCMに富むCD8+T細胞とCD4+T細胞とを組み合わせることは、有効性をさらに増強する。
態様では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、例えば抗CD8抗体および抗CD62L抗体を使用して、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+画分を濃縮または枯渇させることができる。
いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127の陽性または高表面発現に基づく;いくつかの局面では、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するかまたは高発現する細胞についての陰性選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、およびCD62Lを発現する細胞の陽性選択または濃縮によって行われる。一局面では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分から出発して、これをCD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択、ならびにCD62Lの発現に基づく陽性選択に供して行われる。いくつかの局面ではそのような選択は同時に行われ、他の局面では連続的にどちらの順序でも行われる。いくつかの局面では、CD8+ T細胞集団または亜集団を調製するのに使用されるのと同じCD4発現に基づく選択工程が、任意で1つまたは複数のさらなる陽性または陰性選択工程後に、CD4に基づく分離からの陽性および陰性画分の両方が保持され、方法のその後の工程で使用されるように、CD4+ T細胞集団または亜集団を生成するためにも用いられる。
特定の例では、PBMCの試料または他の白血球試料を、陰性画分と陽性画分の両方が保持されるCD4+ T細胞の選択に供する。次いで、陰性画分を、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づく陰性選択、ならびにCD62LまたはCCR7などのセントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカーに基づく陽性選択に供し、ここで陽性選択と陰性選択はどちらの順序でも行われる。
CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞に分類される。CD4+リンパ球は標準的な方法によって得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+T細胞である。いくつかの態様では、セントラルメモリーCD4+ T細胞はCD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様では、エフェクターCD4+ T細胞はCD62L-およびCD45RO-である。
一例では、陰性選択によってCD4+ T細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的にはCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性および/または陰性選択のための細胞の分離を可能にする、磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合される。例えば、いくつかの態様では、細胞および細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気)分離技術(Methods in Molecular Medicine,vol.58:Metastasis Research Protocols,Vol.2:Cell Behavior In vitro and In vivo,p 17-25 Edited by:S.A.Brooks and U.Schumacher(著作権)Humana Press Inc.,Totowa,NJに総説されている)を用いて分離または単離される。
いくつかの局面では、分離される細胞の試料または組成物は、小型の磁化可能または磁気応答性材料、例えば磁気応答性粒子または微粒子、例えば常磁性ビーズ(例えばDynalbeadsまたはMACSビーズなど)と共にインキュベーションされる。磁気応答性材料、例えば粒子は、一般に、分離することを所望する、例えば陰性または陽性選択することを所望する1つまたは複数の細胞、または細胞集団上に存在する分子、例えば表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば抗体に直接または間接的に結合される。
いくつかの態様では、磁性粒子またはビーズは、抗体または他の結合パートナーなどの特異的結合成員に結合した磁気応答性材料を含む。磁気分離方法に使用される多くの周知の磁気応答性材料がある。適切な磁性粒子としては、参照により本明細書に組み入れられる、Moldayの米国特許第4,452,773号、および欧州特許第452342B号に記載されているものが挙げられる。Owenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されているもののようなコロイドサイズの粒子が他の例である。
インキュベーションは、一般に、抗体もしくは結合パートナー、または磁性粒子もしくはビーズに付着している、そのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する二次抗体もしくは他の試薬などの分子が、試料中の細胞上に存在する場合は細胞表面分子に特異的に結合する条件下で行われる。
いくつかの局面では、試料を磁場中に置き、磁気応答性粒子または磁化可能粒子が付着している細胞を磁石に引きつけ、非標識細胞から分離する。陽性選択の場合は、磁石に引き寄せられる細胞が保持される;陰性選択の場合は、引き寄せられない細胞(非標識細胞)が保持される。いくつかの局面では、陽性選択と陰性選択の組み合わせは同じ選択工程の間に行われ、この場合は陽性画分と陰性画分が保持され、さらに処理されるかまたはさらなる分離工程に供される。
特定の態様では、磁気応答性粒子は、一次抗体または他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジンで被覆されている。特定の態様では、磁性粒子は、1つまたは複数のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して細胞に付着している。特定の態様では、ビーズではなく細胞を一次抗体または結合パートナーで標識し、次いで細胞型特異的二次抗体または他の結合パートナー(例えばストレプトアビジン)で被覆した磁性粒子を添加する。特定の態様では、ストレプトアビジン被覆磁性粒子を、ビオチン化一次抗体または二次抗体と組み合わせて使用する。
いくつかの態様では、磁気応答性粒子は、その後インキュベーション、培養および/または操作されることになる細胞に付着したままである;いくつかの局面では、粒子は患者への投与のための細胞に付着したままである。いくつかの態様では、磁化可能粒子または磁気応答性粒子は細胞から除去される。細胞から磁化可能粒子を除去する方法は公知であり、例えば競合する非標識抗体、および磁化可能粒子または切断可能なリンカーに結合した抗体の使用を含む。いくつかの態様では、磁化可能粒子は生分解性である。
いくつかの態様では、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)による。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化された粒子が付着した細胞の高純度の選択が可能である。特定の態様では、MACSは、外部磁場の印加後に非標的種と標的種が連続的に溶出されるモードで動作する。すなわち、磁化粒子に付着した細胞は、付着していない種が溶出されている間、適所に保持される。次に、この最初の溶出工程が完了した後、磁場に捕捉されて溶出が妨げられていた種は、それらが溶出され、回収され得るように何らかの方法で解放される。特定の態様では、非標的細胞は標識され、細胞の不均一な集団から除去される。
特定の態様では、単離または分離は、本発明の方法の単離、細胞調製、分離、処理、インキュベーション、培養、および/または製剤化工程のうちの1つまたは複数を実行するシステム、機器、または装置を用いて実施される。いくつかの局面では、システムは、例えばエラー、使用者の取り扱い、および/または汚染を最小限に抑えるために、これらの工程のそれぞれを閉鎖環境または無菌環境で実行するために使用される。一例では、システムは、国際特許出願公開番号WO 2009/072003、またはUS 20110003380 A1に記載されているシステムである。
いくつかの態様では、システムまたは装置は、統合システムもしくは自己完結型システムで、および/または自動化されたもしくはプログラム可能な方式で、単離、処理、操作、および製剤化工程のうちの1つまたは複数、例えば全部を実行する。いくつかの局面では、システムまたは装置は、システムまたは装置に接続されたコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含み、これにより、使用者が処理、単離、操作および製剤化工程をプログラムする、制御する、そのアウトカムを評価する、および/またはその様々な局面を調節することが可能になる。
いくつかの局面では、分離および/または他の工程は、例えば閉鎖系および無菌系における臨床規模レベルでの細胞の自動分離のために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)を用いて行われる。構成要素には、統合マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および様々なピンチバルブが含まれ得る。統合コンピュータは、いくつかの局面では、機器のすべての構成要素を制御し、標準化された順序で反復手順を実行するようにシステムに指示する。いくつかの局面における磁気分離ユニットは、可動永久磁石と選択カラム用のホルダとを含む。蠕動ポンプはチューブセット全体の流速を制御し、ピンチバルブと共に、システムを通る緩衝液の制御された流れおよび細胞の継続的な懸濁を確実にする。
いくつかの局面におけるCliniMACSシステムは、滅菌非発熱性溶液中で供給される抗体結合磁化可能粒子を使用する。いくつかの態様では、細胞を磁性粒子で標識した後、細胞を洗浄して過剰の粒子を除去する。続いて細胞調製バッグをチューブセットに接続し、次に緩衝剤を含むバッグおよび細胞収集バッグにチューブセットを接続する。チューブセットは、プレカラムと分離カラムを含むあらかじめ組み立てられた滅菌チューブからなり、使い捨て専用である。分離プログラムの開始後、システムは自動的に細胞試料を分離カラムに適用する。標識細胞はカラム内に保持され、非標識細胞は一連の洗浄工程によって除去される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法で使用するための細胞集団は標識されておらず、カラム内に保持されない。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法で使用するための細胞集団は標識されており、カラム内に保持される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法で使用するための細胞集団は、磁場の除去後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
特定の態様では、分離および/または他の工程は、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使用して行われる。いくつかの局面におけるCliniMACS Prodigyシステムは、遠心分離による細胞の自動洗浄および分画を可能にする細胞処理ユニットを備える。CliniMACS Prodigyシステムはまた、ソース細胞産物の巨視的層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する搭載カメラおよび画像認識ソフトウェアを含み得る。例えば、末梢血は自動的に赤血球、白血球および血漿層に分離される。CliniMACS Prodigyシステムはまた、例えば細胞分化および拡大増殖、抗原負荷、ならびに長期細胞培養などの細胞培養プロトコルを達成する統合細胞培養チャンバを含み得る。入力ポートは培地の無菌除去および補充を可能にし、細胞は統合顕微鏡を使用してモニタリングすることができる。例えばKlebanoff et al.,J Immunother.35(9):651-660(2012),Terakura et al.,Blood.1:72-82(2012)およびWang et al.,J Immunother.35(9):689-701(2012)参照。
いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞集団はフローサイトメトリーによって収集および濃縮(または枯渇)され、フローサイトメトリーでは、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体流中で運ばれる。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞集団は、分取規模(FACS)選別によって収集および濃縮(または枯渇)される。特定の態様では、本明細書に記載の細胞集団は、FACSに基づく検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって収集および濃縮(または枯渇)される(例えば国際公開公報第2010/033140号、Cho et al.,Lab Chip 10,1567-1573(2010);およびGodin et al.,J Biophoton.1(5):355-376(2008)参照)。どちらの場合も、細胞を複数のマーカーで標識して、明確に定義されたT細胞サブセットを高純度で単離することができる。
いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性選択および/または陰性選択のための分離を容易にするために、1つまたは複数の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は蛍光標識抗体への結合に基づき得る。いくつかの例では、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えばフローサイトメトリー検出システムと組み合わせた、分取規模(FACS)および/または微小電気機械システム(MEMS)チップを含む蛍光活性化細胞選別(FACS)などによって流体流中で行われる。そのような方法は、同時に複数のマーカーに基づく陽性選択および陰性選択を可能にする。
いくつかの態様では、調製方法は、単離、インキュベーション、および/または操作の前または後のいずれかに、細胞を凍結する、例えば凍結保存する工程を含む。いくつかの態様では、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団中の顆粒球および、ある程度まで、単球を除去する。いくつかの態様では、細胞は、例えば血漿および血小板を除去するための洗浄工程の後に、凍結溶液中に懸濁される。いくつかの局面では様々な公知の凍結溶液およびパラメーターのいずれを使用してもよい。一例は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地を使用することを含む。次にこれを培地で1:1に希釈して、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるようにする。次いで細胞を一般に毎分1°の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中で保存する。
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前またはそれに関連してインキュベーションおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養、刺激、活性化、および/または増殖を含み得る。インキュベーションおよび/または操作は、ユニット、チャンバ、ウェル、カラム、チューブ、チューブセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または細胞を培養するための他の容器などの培養容器中で実施され得る。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベーションされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、拡大増殖、活性化、および/もしくは生存を誘導する、抗原曝露を模倣する、ならびに/または組換え抗原受容体の導入などの遺伝子操作のために細胞をプライミングするように設計されたものが含まれる。
条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化させるように設計された他の任意の作用物質の1つまたは複数を含み得る。
いくつかの態様では、刺激条件または刺激物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化させることができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを作動または開始させる。そのような作用物質は、TCRに特異的な抗体などの抗体、例えば抗CD3を含むことができる。いくつかの態様では、刺激条件は、共刺激受容体を刺激することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンド、例えば抗CD28を含む。いくつかの態様では、そのような作用物質および/またはリガンドは、ビーズなどの固体支持体、および/または1つもしくは複数のサイトカインに結合していてもよい。任意で、拡大増殖方法は、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を培地に(例えば少なくとも約0.5ng/mLの濃度で)添加する工程をさらに含み得る。いくつかの態様では、刺激性作用物質には、IL-2、IL-15および/またはIL-7が含まれる。いくつかの局面では、IL-2濃度は少なくとも約10単位/mLである。
いくつかの局面では、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.,J Immunother.35(9):651-660(2012),Terakura et al.,Blood.1:72-82(2012),および/またはWang et al.,J Immunother.35(9):689-701(2012)に記載されているような技術に従って行われる。
いくつかの態様では、T細胞は、培養開始組成物に、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)などのフィーダ細胞を添加すること(例えば、得られる細胞集団が、拡大増殖させるべき初期集団中の各Tリンパ球につき少なくとも約5、10、20、または40またはそれ以上のPBMCフィーダ細胞を含むように)、および培養物をインキュベーションすること(例えばT細胞の数を増やすのに十分な時間)によって拡大培養される。いくつかの局面では、非分裂フィーダ細胞は、γ線照射PBMCフィーダ細胞を含み得る。いくつかの態様では、PBMCは、細胞分裂を防ぐために約3000〜3600ラドの範囲のγ線を照射される。いくつかの局面では、フィーダ細胞は、T細胞集団の添加の前に培地に添加される。
いくつかの態様では、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖に適した温度、例えば少なくとも約25℃、一般に少なくとも約30℃、一般に37℃または約37℃を含む。任意で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダ細胞として添加することをさらに含み得る。LCLは、約6000〜10,000ラドの範囲のγ線で照射することができる。いくつかの局面におけるLCLフィーダ細胞は、少なくとも約10:1のLCLフィーダ細胞対初期Tリンパ球の比率などの、任意の適切な量で提供される。
態様では、抗原特異的CD4+および/またはCD8+T細胞などの抗原特異的T細胞は、ナイーブまたは抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、サイトメガロウイルス抗原に対する抗原特異的T細胞株またはクローンは、感染した対象からT細胞を単離し、同じ抗原で細胞をインビトロで刺激することによって生成することができる。
2.遺伝子操作のためのベクターおよび方法
遺伝子操作された成分、例えば組み換え受容体、例えばCARまたはTCRの導入のための様々な方法が周知である。例示的な方法には、ウイルス(例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルス)による形質導入、トランスポゾンおよびエレクトロポレーションによる方法を含めて、受容体をコードする核酸を移入するための様々な方法が含まれる。いくつかの態様では、表面グリカン発現は、遺伝子操作プロセスの前、間、または直後に回収される細胞の組成物において評価される。いくつかの態様では、表面グリカン発現は、遺伝子操作された成分を導入するプロセスの対応する段階において細胞の組成物の間で評価され、比較される。いくつかの態様では、組成物は、遺伝材料を導入する異なる方法により同じ組み換え受容体を発現するように操作されるか、またはそのように操作されたものである。
いくつかの態様において、遺伝子移入が、最初に細胞を刺激することによって、例えば、細胞を、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定されるような応答(例えば、増殖、生存および/または活性化など)を誘発する刺激と一緒にし、続いて、活性化された細胞への形質導入を行い、そして、培養での拡大増殖を臨床適用のために十分な数にまで行うことなどによって達成される。
いくつかの態様において、組換え核酸が、組換え感染性ウイルス粒子(例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)に由来するベクターなど)を使用して細胞に移入される。いくつかの態様において、組換え核酸が、組換えのレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター(例えば、ガンマ-レトロウイルスベクターなど)を使用してT細胞に移入される(例えば、Koste et al. Gene Therapy doi:10.1038/gt.2014.25 (2014); CARlens et al. Exp Hematol., 28(10):1137-46 (2000); Alonso-Camino et al. Mol Ther Nucl Acids 2,e93 (2013); Park et al.,Trends Biotechnol., November 29(11):550-557 (2011)を参照のこと)。
いくつかの態様において、レトロウイルスベクターは長末端反復配列(LTR)を有する(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)またはアデノ関連ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクター)。ほとんどのレトロウイルスベクターがマウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様において、レトロウイルスには、任意の鳥類細胞供給源または哺乳動物細胞供給源に由来するレトロウイルスが含まれる。レトロウイルスは典型的には両向性であり、このことは、レトロウイルスは、ヒトを含めて数種の生物種の宿主細胞に感染することができることを意味している。1つの態様において、発現されることになる遺伝子が、レトロウイルスのgag配列、pol配列および/またはenv配列に取って代わる。いくつかの例示的なレトロウイルスシステムが記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号、同第6,207,453号、同第5,219,740号;Miller and Rosman, BioTechniques, 7:980-990 (1989); Miller,A.D. Human Gene Therapy, 1:5-14 (1990); Scarpa et al. Virology, 180:849-852 (1991); Burns et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:8033-8037 (1993);およびBoris-Lawrie and Temin, Cur. Opin. Genet. Develop., 3:102-109 (1993))。
レンチウイルス形質導入の方法は公知である。例示的な方法が、例えば、Wang et al., J.Immunother., 35(9): 689-701 (2012); Cooper et al., Blood., 101: 1637-1644 (2003); Verhoeyen et al., Methods Mol Biol., 506: 97-114 (2009);およびCavalieri et al. Blood., 102(2): 497-505 (2003)に記載されている。
いくつかの態様において、組換え核酸がエレクトロポレーションによりT細胞に移入される(例えば、Chicaybam et al., PLoS ONE 8(3): e60298 (2013)、およびVan Tedeloo et al., Gene Therapy 7(16): 1431-1437 (2000)を参照のこと)。いくつかの態様において、組換え核酸が転位によりT細胞に移入される(例えば、Manuri et al., Hum Gene Ther 21(4): 427-437 (2010); Sharma et al., Molec Ther Nucl Acids 2, e74 (2013);およびHuang et al., Methods Mol Biol 506: 115-126 (2009)を参照のこと)。遺伝物質を免疫細胞において導入し、発現させる他の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley&Sons、New York、N.Y.)に記載されているようなリン酸カルシウムトランスフェクション)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介のトランスフェクション、タングステン粒子によって促進される微小粒子照射(Johnston,Nature,346:776-777(1990))、およびリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash et al.,Mol.Cell Biol.,7:2031-2034(1987))が含まれる。
組換え産物をコードする核酸を移入するための他の取り組みおよびベクターが、例えば、国際特許出願公開番号WO2014055668および米国特許第7,446,190号に記載されている取り組みおよびベクターである。
いくつかの態様において、細胞、例えば、T細胞は、拡大増殖期間中または拡大増殖後のどちらかで、例えば、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)によるトランスフェクションが行われる場合がある。所望の受容体の遺伝子を導入するためのこのトランスフェクションを、例えば、任意の好適なレトロウイルスベクターを用いて行うことができる。遺伝子改変された細胞集団はその後、最初の刺激(例えば、CD3/ CD28刺激)から解放し、続いて、第2のタイプの刺激により、例えば、新たに導入された受容体を介して刺激することができる。この第2のタイプの刺激には、ペプチド/MHC分子、遺伝子導入された受容体の同族(架橋性)リガンド(例えば、CARの天然リガンド)、または(例えば、受容体内の定常領域を認識することによって)新しい受容体のフレームワークの内部に直接に結合する任意のリガンド(例えば、抗体など)の形態での抗原性刺激が含まれる場合がある。例えば、Cheadle et al., Methods Mol Biol. 907: 645-66 (2012)、またはBarrett et al.、Chimeric Antigen Receptor Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol.65:333-347(2014)を参照のこと。
いくつかの場合において、細胞(例えば、T細胞)が活性化されることを必要としないベクターが使用されることがある。いくつかのそのような例において、細胞は、選択および/または形質導入が活性化に先立って行われることがある。したがって、細胞は、該細胞を培養する前に、または培養した後で、そのうえ、いくつかの場合には該培養の少なくとも一部と同時に、またはその期間中に操作されることがある。
いくつかの局面において、細胞はさらに、サイトカインまたは他の因子の発現を促進するように操作される。さらなる核酸、例えば、導入のための遺伝子には、治療の有効性を、例えば、移入された細胞の生存性および/または機能を促進することなどによって改善するための核酸;細胞の選択および/または評価のための遺伝子マーカーを提供するための遺伝子、例えば、インビボでの生存または局在化を評価するためなどの遺伝子;安全性を、例えば、Lupton S.D. et al.,Mol.and Cell Biol.,11:6(1991)、およびRiddell et al.,Human Gene Therapy 3:319-338(1992)によって記載されるように細胞をインビボでの陰性選択に対して感受性にすることによって改善するための遺伝子が挙げられる。また、優勢な陽性選択マーカーを陰性選択マーカーと融合することから得られる二官能性の選択可能な融合遺伝子の使用を記載する、LuptonらによるPCT/US91/08442およびPCT/US94/05601の公開公報もまた参照のこと。例えば、Riddellら、米国特許第6,040,177号、第14欄〜第17欄を参照のこと。
3. 組成物および製剤
いくつかの態様では、組み換え受容体を用いて遺伝子操作された細胞(例えば、CAR-T細胞)などの細胞は、所与の用量またはその部分において投与するための細胞の数を含む、単位用量形態組成物などの薬学的組成物および製剤などの組成物として提供される。薬学的組成物および製剤は、一般に、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つの追加の治療用作用物質を含む。
いくつかの態様では、細胞の組成物は、細胞療法の目的のために生成または製造される。いくつかの態様では、細胞組成物は薬学的組成物または製剤である。そのような組成物は、例えば、疾患、病態、および障害の予防もしくは治療において、または検出、診断、および予後診断の方法において使用するためのそれらの出荷を評価するために、提供される方法にしたがって使用され得る。
用語「薬学的製剤」は、調製物であって、該調製物に含まれる有効成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態であり、かつ、製剤が投与されるであろう対象に対して許容できないほどに毒性であるさらなる成分を何ら含まない調製物を示す。いくつかの態様では、本明細書において提供される方法は、異なる薬学的製剤を含むが、同じ操作された細胞から構成される細胞組成物の表面グリカン発現を比較するために使用され得る。
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤における成分を示す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存剤が含まれるが、それらに限定されない。特定の態様では、本明細書において提供される方法は、異なる薬学的に許容される担体を含むが、同じ操作された細胞から構成される細胞組成物の表面グリカン発現を比較するために使用され得る。
いくつかの態様では、操作されたT細胞(例えばCAR T細胞)などのT細胞療法は、薬学的に許容される担体と共に製剤化される。いくつかの局面では、担体の選択は、一部には特定の細胞によって、および/または投与方法によって決定される。したがって、種々の適切な製剤が存在する。例えば、薬学的組成物は防腐剤を含み得る。適切な防腐剤には、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが含まれ得る。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の防腐剤の混合物が使用される。防腐剤またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.0001重量%から約2重量%の量で存在する。担体は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤。
いくつかの局面では、緩衝剤が組成物に含まれる。適切な緩衝剤には、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに他の様々な酸および塩が含まれる。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.001重量%から約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins;21st ed.(May 1,2005)においてより詳細に記載されている。
製剤は水溶液を含み得る。製剤または組成物はまた、活性が細胞に対して相補的でありかつ/またはそれぞれの活性が互いに悪影響を及ぼさない場合、1つまたは複数の活性成分などの、細胞で予防または治療される特定の適応症、疾患、または病態に有用な複数の活性成分を含み得る。そのような活性成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどのような他の薬学的に活性な剤または薬物をさらに含む。
いくつかの態様では、薬学的組成物は、治療上有効な量または予防上有効な量などの、疾患または病態を治療または予防するために有効な量の細胞を含む。いくつかの態様で治療または予防の有効性は、治療対象の定期的な評価によってモニタリングされる。数日間またはそれ以上にわたる反復投与については、病態に応じて、疾患の症状の所望の抑制が起こるまで、治療が繰り返される。しかしながら、他の投与レジメンも有用であり得、決定され得る。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって送達することができる。
細胞は、標準的な投与技術、製剤、および/または装置を用いる投与のために製剤化され得る。組成物の保存および投与のための、注射器およびバイアルなどの製剤および装置が提供される。細胞に関して、投与は自家投与または異種投与であり得る。例えば、免疫応答性細胞または前駆体は、一対象から得ることができ、同じ対象または異なる、適合性の対象に投与され得る。末梢血由来免疫応答性細胞またはそれらの子孫(例えばインビボ、エクスビボまたはインビトロ由来)は、カテーテル投与、全身注入、局所注入、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注入によって投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答性細胞を含有する薬学的組成物)を投与する場合、治療用組成物は一般に注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、エマルジョン)で製剤化される。
製剤には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、口腔投与、舌下投与、または坐剤投与用のものが含まれる。いくつかの態様では、剤または細胞集団は非経口投与される。本明細書で使用される「非経口」という用語は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸内投与、膣内投与、および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、剤または細胞集団は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達を用いて対象に投与される。
いくつかの態様では、組成物は、いくつかの局面では選択されたpHに緩衝され得る、滅菌液体製剤、例えば等張水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液、または粘性組成物として提供される。液体製剤は通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射によって投与するのにいくぶんより便利である。他方で、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供する適切な粘度範囲内に製剤化することができる。液体または粘性組成物は担体を含むことができ、担体は、例えば水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。
滅菌注射溶液は、適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物などの溶媒中に細胞を組み込むことによって調製することができる。組成物は凍結乾燥することもできる。組成物は、所望される投与経路および製剤に依存して、湿潤剤、分散剤または乳化剤(例えばメチル細胞ロース)、pH緩衝剤、ゲル化または増粘添加剤、防腐剤、香味剤、着色剤などのような補助物質を含み得る。いくつかの局面では、標準的なテキストを参考にして適切な製剤を調製し得る。
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。注射用薬学的形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
インビボ投与に使用される製剤は一般に無菌である。無菌性は、例えば滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成され得る。
疾患の予防または治療のために、適切な投与量は、治療される疾患の種類、1つまたは複数の剤の種類、細胞または組み換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、剤または細胞が予防目的または治療目的のいずれで投与されるか、過去の療法、対象の病歴および剤または細胞に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物は、いくつかの態様では、一度にまたは一連の治療にわたって対象に適切に投与される。
IV. 定義
別途定義される場合を除き、本明細書において使用する全ての専門用語、表記法、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法は、請求項に記載された主題が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。いくつかの場合には、一般に理解されている意味を有する用語が、明快さのために、かつ/または即座の参照のために本明細書において定義されており、そして、そのような定義が本明細書に含まれることは、当技術分野において一般に理解されていることを超える実質的な違いを表すように必ずしも解釈されなければならないことはない。
本明細書において使用する場合、単数形である「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうではないことを明確に示す場合を除き、複数形の言及物を包含する。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。本明細書において記載される様々な局面および変形は、様々な局面および変形「からなる」こと、ならびに/あるいは様々な局面および変形「から本質的になる」ことを包含することが理解される。
本開示の全体を通して、請求項に記載されている主題の様々な局面が範囲形式で示される。範囲形式での記載は単に便宜および簡潔性のためであり、請求項に記載されている主題の範囲に関して柔軟性のない限定として解釈してはならないことを理解しなければならない。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲、同様にまた、その範囲に含まれる個々の数値を全て具体的に開示していると見なされなければならない。例えば、値の範囲が与えられる場合、その範囲の上限と、下限との間におけるそれぞれの中間の値、およびその指定された範囲における任意の他の指定された値または中間の値が、請求項に記載されている主題の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限がこれらのより小さい範囲に独立して含まれてもよく、これらもまた、指定された範囲における任意の具体的に除外された限界点に従うことを条件にして、請求項に記載されている主題の範囲内に包含される。指定された範囲が限界点の一方または両方を含む場合、そのような含まれた限界点のどちらかまたは両方を除外する範囲もまた、請求項に記載されている主題の範囲内に含まれる。このことは、範囲の広さにかかわらず、当てはまる。
用語「約」は、本明細書において使用する場合、この技術分野における当業者には容易に理解されるそれぞれの値についての通常の誤差範囲を示す。「約」を伴って値またはパラメーターが本明細書において示される場合、その値またはパラメーターそのものに向けられる態様が含まれる(記載される)。例えば、「約X」が示される記載では、「X」の記載が含まれる。いくつかの態様では、「約」と共に記載された値は、その記載された値の±25%、±20%、±10%、±5%、±1%、±0.1%、または±0.01%の範囲内の値を示す。
本明細書において使用する場合、組成物は、細胞を含めて、2つ以上の製造物、物質または化合物の混合物をどのようなものであっても示す。組成物は、溶液、懸濁物、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組合せであり得る。
本明細書において使用する場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陽性」であると述べられることは、特定のマーカー(典型的には表面マーカー)が細胞表面または細胞において検出可能に存在していることを示す。表面マーカーが言及されるとき、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体を用いて染色し、前記抗体を検出することによって検出されるような表面発現の存在を示し、この場合、染色が、イソタイプの一致する対照を、それ以外の点では同一の条件のもとで用いる、同じ手順を行って検出される染色を実質的に超えるレベルでフローサイトメトリーによって検出可能であり、かつ/またはマーカーについて陽性であることが知られている細胞についてのレベルと実質的に類似するレベルであり、かつ/またはマーカーについて陰性であることが知られている細胞についてのレベルよりも実質的に高いレベルである。
本明細書において使用する場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陰性」であると述べられることは、特定のマーカー(典型的には表面マーカー)が細胞表面または細胞において実質的に検出可能に存在していることが認められないことを示す。表面マーカーが言及されるとき、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体を用いて染色し、前記抗体を検出することによって検出されるような表面発現の非存在を示し、この場合、染色が、イソタイプの一致する対照を、それ以外の点では同一の条件のもとで用いる、同じ手順を行って検出される染色を実質的に超えるレベルでフローサイトメトリーによって検出されず、かつ/またはマーカーについて陽性であることが知られている細胞についてのレベルよりも実質的に低いレベルであり、かつ/またはマーカーについて陰性であることが知られている細胞についてのレベルと比較して実質的に類似するレベルである。
用語「ベクター」は、本明細書において使用する場合、連結される別の核酸を増やすことができる核酸分子を示す。この用語には、自己複製する核酸構造物としてのベクター、同様にまた、導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターが含まれる。ある種のベクターは、機能的に連結される核酸の発現を導くことができる。そのようなベクターは本明細書において「発現ベクター」として示される。
VII.例示的な態様
以下の態様が提供される。
1. 細胞表面グリカンを評価するための方法であって、
(a)複数の細胞を含む試験組成物を、該試験組成物中の細胞の表面から1つまたは複数のグリカンを遊離させる条件下でインキュベーションする工程であって、ここで1つまたは複数の細胞表面グリカンを含む試料が生成される、工程;ならびに
(b)該試料中に存在するグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する工程であって、それによって該試料の細胞表面グリカンプロフィールを評価する、工程
を含む、方法。
2. 細胞表面グリカンを評価するための方法であって、
試料中に存在するグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する工程であって、それによって該試料の細胞表面グリカンプロフィールを評価する、工程を含み、
該試料が、複数の細胞を含む試験組成物中に存在する細胞の表面から、1つまたは複数のグリカンを遊離させる条件下での該試験組成物のインキュベーション後に遊離した、1つまたは複数のグリカンを含む、
方法。
3. 前記グリカンがN-グリカンである、態様1または態様2の方法。
4. 前記試験細胞組成物中の細胞が、全細胞(whole cell)またはインタクトな細胞を含む、態様1〜3のいずれかの方法。
5. 前記細胞が生細胞である、態様1〜4のいずれかの方法。
6. 前記試験細胞組成物が、前記インキュベーションの前にホモジナイズまたは超音波処理されず;かつ/または
前記試験細胞組成物が、前記インキュベーションの前にプロテアーゼと共にインキュベーションされず、任意で該プロテアーゼがトリプシンであり;かつ/または
前記試験細胞組成物中の細胞が、前記インキュベーションの前または前記インキュベーション中に、1つまたは複数の細胞表面タンパク質または膜タンパク質を抽出するための作用物質と接触せず、任意で該作用物質が界面活性剤またはプロテアーゼ、任意でトリプシンであり;かつ/または
前記インキュベーション中に溶解されかつ/もしくは破裂する細胞が10%未満である、
態様1〜5のいずれかの方法。
7. 前記試験細胞組成物が、5×106個以下の細胞を含む、態様1〜6のいずれかの方法。
8. 前記試験細胞組成物が、1×106〜5×106個(両端の値を含む)の細胞を含む、態様1〜7のいずれかの方法。
9. 前記試験細胞組成物が、1×108個/mL以下の濃度の細胞を含む、態様1〜8のいずれかの方法。
10. 前記試験細胞組成物が、1×105個/mL〜1×108個/mL(両端の値を含む)、1×106個/mL〜5×107個/mL(両端の値を含む)、または5×106個/mL〜2.5×107個/mL(両端の値を含む)の濃度の細胞を含む、態様1〜9のいずれかの方法。
11. 前記インキュベーションがN-グリコシダーゼの存在下で行われる、態様1〜10のいずれかの方法。
12. 前記N-グリコシダーゼがペプチドN-グリコシダーゼ(PNGase)Fである、態様11の方法。
13. 前記PNGase Fが組み換え体である、態様12の方法。
14. 前記1つまたは複数のグリカンが1つまたは複数のN-グリカンであり、前記方法が、
(i)前記試験組成物の細胞の表面から該1つまたは複数のN-グリカンを遊離させる条件下で、該試験組成物からの1×106〜5×106個の細胞を組み換えPNGase Fと共にインキュベーションする工程;
(ii)該1つまたは複数のN-グリカンを、検出可能なラベル、任意で蛍光ラベルで標識する工程;および
(iii)標識されたN-グリカンの有無またはレベルを決定する工程であって、それによって該試料の細胞表面グリカンプロフィールを評価する、工程
を含む、態様1〜6のいずれかの方法。
15. 前記試験細胞組成物が約1×106〜2.5×106個の細胞を含む、態様14の方法。
16. 前記試験細胞組成物が1×106個/mL〜5×107個/mLの濃度の細胞を含む、態様13または態様14の方法。
17. 前記PNGase Fが、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)のPGNase Fまたは酵素的に活性なその一部もしくは変異体を含む、態様12〜16のいずれかの方法。
18. 前記PNGase Fが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列または酵素的に活性なその一部もしくは変異体を含むか、あるいはSEQ ID NO:1と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含むかまたは酵素的に活性なその一部である、態様12〜17のいずれかの方法。
19. 前記PNGase Fが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、態様12〜18のいずれかの方法。
20. 前記PNGase Fが、タグ、任意で親和性タグを含む、態様12〜19のいずれかの方法。
21. 前記タグがポリ-ヒスチジン(Hisタグ)である、態様20の方法。
22. 前記PNGase Fが、90%超もしくは約90%超、92%超もしくは約92%超、95%超もしくは約95%超、または98%超もしくは約98%超、純粋であり;かつ/または
該PNGase Fが、10%未満もしくは約10%未満、8%未満もしくは約8%未満、5%未満もしくは約5%未満、2%未満もしくは約2%未満の非PNGase Fタンパク質夾雑物を含み;かつ/または
該PNGase Fが、任意でSDS-PAGEおよびタンパク質染色、任意でクマシーブルー染色による決定で、90%超もしくは約90%超、92%超もしくは約92%超、95%超もしくは約95%超、または98%超もしくは約98%超、均一である、
態様12〜21のいずれかの方法。
23. 前記N-グリコシダーゼの量、任意でPNGase Fの量が、35℃〜39℃、任意で約37℃の温度における12時間以下のインキュベーション後に、1つもしくは複数の天然もしくは非変性糖タンパク質からおよび/または細胞組成物の細胞から、1つまたは複数のN-グリカンを遊離させる酵素的有効量である、態様11〜22のいずれかの方法。
24. 前記酵素的有効量が、25℃〜39℃または35℃〜39℃(それぞれ両端の値を含む)、任意で約37℃の温度における、長くても15分〜3時間または30分〜2時間のインキュベーション後に、1つまたは複数のN-グリカンを遊離させる量である、態様23の方法。
25. 前記PNGase Fの酵素的有効量が、前記1つもしくは複数の糖タンパク質に存在するN-グリカンおよび/または前記細胞組成物の表面に存在するN-グリカンのうちの50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、99%超を遊離させる、態様23または態様24の方法。
26. 前記インキュベーションの条件が、前記試験細胞組成物の表面に存在する50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、99%超のN-グリカンの遊離を達成するのに十分である、態様1〜25のいずれかの方法。
27. 前記N-グリコシダーゼ、任意でPNGase Fの量が、1単位〜5000単位、1単位〜1000単位、1単位〜500単位、1単位〜250単位、1単位〜100単位、1単位〜50単位、1単位〜25単位、25単位〜5000単位、25単位〜1000単位、25単位〜500単位、25単位〜250単位、25単位〜100単位、25単位〜50単位、50単位〜5000単位、50単位〜1000単位、50単位〜500単位、50単位〜250単位、50単位〜100単位、100単位〜5000単位、100単位〜1000単位、100単位〜500単位、100単位〜250単位、250単位〜5000単位、250単位〜1000単位、250単位〜500単位、500単位〜5000単位、500単位〜1000単位、または1000単位〜5000単位(それぞれ両端の値を含む)である、態様11〜26のいずれかの方法。
28. 前記N-グリコシダーゼ、任意でPNGase Fの量が、1単位超もしくは約1単位超または1単位もしくは約1単位、5単位超もしくは約5単位超または5単位もしくは約5単位、10単位超もしくは約10単位超または10単位もしくは約10単位、15単位超もしくは約15単位超または15単位もしくは約15単位、20単位超もしくは約20単位超または20単位もしくは約20単位、25単位超もしくは約25単位超または25単位もしくは約25単位、50単位超もしくは約50単位超または50単位もしくは約50単位、100単位超もしくは約100単位超または100単位もしくは約100単位、250単位超もしくは約250単位超または250単位もしくは約250単位、500単位超もしくは約500単位超または500単位もしくは約500単位、1000単位超もしくは約1000単位超または1000単位もしくは約1000単位、2500単位超もしくは約2500単位超または2500単位もしくは約2500単位、あるいは5000単位超もしくは約5000単位超または5000単位もしくは約5000単位である、態様11〜27のいずれかの方法。
29. 1単位が、37℃において30分間で1ナノモルの変性リボヌクレアーゼB(RNase B)の脱グリコシル化を触媒するのに十分な前記N-グリコシダーゼ、任意でPNGase Fの量である、態様27または態様28の方法。
30. 500単位が、37℃または室温において5〜10分間、1×PBS中でインキュベーションされた10μgのリボヌクレアーゼB(RNase B)の脱グリコシル化を触媒するのに十分な前記N-グリコシダーゼ、任意でPNGase Fの量である、態様27または態様28の方法。
31. 前記試験組成物のインキュベーションが、5もしくは約5分間〜12もしくは約12時間、30もしくは約30分間〜6もしくは約6時間、または1もしくは約1時間〜3もしくは約3時間(それぞれ両端の値を含む)行われる、態様1〜30のいずれかの方法。
32. 前記試験組成物のインキュベーションが、少なくとも5もしくは約5分間または5もしくは約5分間、少なくとも10もしくは約10分間または10もしくは約10分間、少なくとも15もしくは約15分間または15もしくは約15分間、少なくとも30もしくは約30分間または30もしくは約30分間、少なくとも1もしくは約1時間または1もしくは約1時間、少なくとも2もしくは約2時間または2もしくは約2時間、少なくとも3もしくは約3時間または3もしくは約3時間、少なくとも4もしくは約4時間または4もしくは約4時間、少なくとも5もしくは約5時間または5もしくは約5時間、あるいは少なくとも6もしくは約6時間または6もしくは約6時間行われる、態様1〜31のいずれかの方法。
33. 前記試験組成物のインキュベーションが、約30分間行われる、態様1〜32のいずれかの方法。
34. 前記試験組成物のインキュベーションが、25℃〜39℃または35℃〜39℃の温度で行われる、態様1〜33のいずれかの方法。
35. 前記試験組成物のインキュベーションが、約37℃の温度で行われる、態様1〜35のいずれかの方法。
36. 前記試験組成物のインキュベーションが、約37℃の温度で約30分間行われる、態様1〜35のいずれかの方法。
37. 試料中に存在するグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する前に、該試料からのグリカンを、検出可能なラベル、任意で蛍光ラベルで標識する工程をさらに含む、態様1〜36のいずれかの方法。
38. 前記ラベルが蛍光ラベルであり、該蛍光ラベルが、2-アミノベンズアミド(2-AB)、2-アミノ安息香酸(2-AA)、2-アミノピリジン(PA)、2-アミノアクリドン(AMAC)、2-アミノナフタレントリスルホン酸(ANTS)、および1-アミノピレン-3,6,8-トリスルホン酸(APTS)、3-(アセチルアミノ)-6-アミノアクリジン(AA-Ac)、6-アミノキノリン(6-AQ)、7-アミノメチル-クマリン(AMC)、2-アミノ(6-アミド-ビオチニル)ピリジン(BAP)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)-ヒドラジド、1,2-ジアミノ-4,5-メチレンジオキシ-ベンゼン(DMB)、もしくはo-フェニレンジアミン(OPD)であるか、またはそれを含む、態様14〜37のいずれかの方法。
39. 前記蛍光ラベルが、キノリニル蛍光体を含む、態様14〜38のいずれかの方法。
40. 前記蛍光ラベルが、カルバメート標識基を含む、態様14〜39のいずれかの方法。
41. 前記蛍光ラベルが、塩基性第3級アミンを含む、態様14〜40のいずれかの方法。
42. 前記蛍光ラベルが、カルバメート標識基、キノロン蛍光体、および第3級アミンを含む、態様14〜37および態様39〜41のいずれかの方法。
43. 前記1つまたは複数のグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する前に、前記試料がグリカン精製またはグリカン濃縮に供される、態様1〜42のいずれかの方法。
44. 前記グリカン精製またはグリカン濃縮が、固相抽出(SPE)によって行われる、態様43の方法。
45. 前記1つまたは複数のグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する工程が、前記試料を質量分析に供することを含む、態様1〜44のいずれかの方法。
46. 前記質量分析が、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、ターボスプレーイオン化質量分析、ナノスプレーイオン化質量分析、サーモスプレーイオン化質量分析、ソニックスプレーイオン化質量分析、表面強化レーザー脱離イオン化質量分析(SELDI-MS)、およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)である、態様45の方法。
47. 前記質量分析がMALDI-MSである、態様45または態様46の方法。
48. 前記グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する工程が、前記試料を液体クロマトグラフィー(LC)とそれに続く質量分析とに供することを含む、態様1〜47のいずれかの方法。
49. 前記液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、またはウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様48の方法。
50. 前記液体クロマトグラフィーが、ウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様48または態様49の方法。
51. 前記液体クロマトグラフィーと前記質量分析とがオンラインで行われる、態様48〜50のいずれかの方法。
52. 前記液体クロマトグラフィーが、順相(NP-)、逆相(RP)、および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、態様48〜51のいずれかの方法。
53. 前記液体クロマトグラフィーが、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)である、態様48〜52のいずれかの方法。
54. 前記質量分析が、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、ターボスプレーイオン化質量分析、ナノスプレーイオン化質量分析、サーモスプレーイオン化質量分析、またはソニックスプレーイオン化質量分析を含む、態様45〜53のいずれかの方法。
55. 前記質量分析がESI-MSを含む、態様45〜54のいずれかの方法。
56. 前記質量分析が、タンデム質量分析(MS/MS)を含む、態様45〜55のいずれかの方法。
57. 前記質量分析が、タンデムESI質量分析(ESI-MS/MS)を含む、態様45〜56のいずれかの方法。
58. 前記質量分析を実行する質量分析計が、四重極型質量分析装置、イオントラップ型質量分析装置、飛行時間(TOF)型質量分析装置、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析装置のうちの1つまたは複数を含む、態様45〜57のいずれかの方法。
59. 前記質量分析計が、三次元四重極イオントラップ型質量分析装置、円筒形イオントラップ型質量分析装置、線形四重極イオントラップ型質量分析装置、またはオービトラップ型質量分析装置であるイオントラップ型質量分析装置を含む、態様58の方法。
60. 前記質量分析計が、四重極-オービトラップ型質量分析計である、態様45〜59のいずれかの方法。
61. 前記1つまたは複数のグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する工程が、1つまたは複数のグリカン構造を、分岐、単糖間の結合、および/または単糖の位置について分析することを含む、態様1〜60のいずれかの方法。
62. 前記1つまたは複数のグリカンが、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む、態様1〜61のいずれかの方法。
63. 前記1つまたは複数のグリカンが、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む、態様1〜62のいずれかの方法。
64. 前記試料中に存在するグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定する工程が、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、または少なくとも200種の異なるグリカン種の有無、アイデンティティ、および/またはレベルを決定することを含む、態様1〜63のいずれかの方法。
65. 前記試料中に存在するグリカン種の存在またはレベルが、少なくとも100amol、少なくとも500amol、少なくとも1fmol、少なくとも5fmol、または少なくとも10fmolの該グリカン種が該試料中に存在する場合に決定される、態様1〜64のいずれかの方法。
66. 前記試料中に存在するグリカン種の存在またはレベルが、該グリカン種が該試料中の全グリカンの少なくとも0.00001%、0.00005%、0.0001%、0.0005%、0.001%、0.005%、または0.01%を構成する場合に決定される、態様1〜65のいずれかの方法。
67. 前記グリカン種がN-グリカン種である、態様62〜65のいずれかの方法。
68. 前記試験細胞組成物が、前記複数の細胞を含むソース細胞組成物の少なくとも一部であるかまたはそれを含む、態様1〜67のいずれかの方法。
69. 前記細胞が哺乳動物細胞を含むか、または前記試験細胞組成物が哺乳動物細胞を含む、態様1〜68のいずれかの方法。
70. 前記細胞がヒト細胞を含むか、または前記試験細胞組成物がヒト細胞を含む、態様1〜69のいずれかの方法。
71. 前記細胞が幹細胞を含むか、または前記試験細胞組成物が幹細胞を含む、態様1〜70のいずれかの方法。
72. 前記幹細胞が誘導多能性幹細胞(iPSC)である、態様71の方法。
73. 前記試験細胞組成物が、アフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物中に存在する細胞またはそれに由来する細胞を含む、態様1〜70のいずれかの方法。
74. 前記細胞が、免疫細胞、白血球、末梢血単核球(PBMC)、リンパ球、もしくは未分画T細胞を含むか;または
前記試験細胞組成物が、免疫細胞、白血球、末梢血単核球(PBMC)、リンパ球、もしくは未分画T細胞を含む、
態様1〜70および態様73のいずれかの方法。
75. 前記細胞が免疫細胞を含むか、または前記試験細胞組成物が免疫細胞を含む、態様1〜74のいずれかの方法。
76. 前記免疫細胞が、T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、または樹状細胞である、態様75の方法。
77. 前記細胞が、CD4+T細胞および/もしくはCD8+T細胞であるT細胞を含むか、または前記試験細胞組成物が、CD4+T細胞および/もしくはCD8+T細胞であるT細胞を含む、態様1〜76のいずれかの方法。
78. 前記試験細胞組成物が、
免疫親和性ベースの方法によって生物学的試料から単離された細胞;ならびに/または
組み換えタンパク質をコードするウイルスベクターを用いて形質導入された細胞;ならびに/または
1つもしくは複数の試験作用物質、任意でさらに1つのペプチド、タンパク質、ポリペプチド、核酸、低分子の存在下でインキュベーションされた細胞;ならびに/または
1つもしくは複数の刺激条件の存在下で活性化されかつ/もしくは拡大増殖した細胞;ならびに/または
凍結保存された細胞、および/もしくは凍結保護物質を含む細胞;ならびに/または
対象に投与するために製剤化された、任意で薬学的に許容される賦形剤の存在下で製剤化された、細胞
を含む、態様1〜77のいずれかの方法。
79. 前記試験作用物質が、前記試験細胞組成物中の1つまたは複数の細胞の成長、増殖、生存性、分化、細胞内シグナル伝達、活性化、および/または拡大増殖を調節するための候補である、態様78の方法。
80. 前記刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化させることができる刺激試薬とのインキュベーションを含む、態様78または態様79の方法。
81. 前記刺激試薬が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する第一の作用物質、およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する第二の作用物質を含む、態様80の方法。
82. 前記第一の作用物質がCD3に特異的に結合し;かつ/または前記共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、もしくはICOSからなる群より選択される、態様81の方法。
83. 前記刺激試薬が、抗CD3抗体またはその抗原結合断片、および抗CD28抗体またはその抗原結合断片を含む、態様80〜82のいずれかの方法。
84. 前記第一および第二の作用物質が、抗体を含み、かつ/または固体支持体の表面に存在する、態様80〜83のいずれかの方法。
85. 前記固体支持体がビーズであるかまたはそれを含む、態様84の方法。
86. 前記細胞が組み換え受容体を発現するか、または前記試験組成物が組み換え受容体を発現する細胞を含む、態様1〜85のいずれかの方法。
87. 前記組み換え受容体が、キメラ受容体および/もしくは組み換え抗原受容体であるかまたはそれを含む、態様86の方法。
88. 前記組み換え受容体が標的抗原に結合することができ、該標的抗原が、ある疾患、障害、もしくは病態に関連し、それに特異的であり、かつ/またはその細胞もしくは組織において発現する、態様86または態様87の方法。
89. 前記疾患、障害、または病態が、感染性疾患もしくは感染性障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくはがんである、態様88の方法。
90. 前記標的抗原が腫瘍抗原である、態様88または態様89の方法。
91. 前記標的抗原が、ROR1、B細胞成熟抗原(BCMA)、炭酸脱水酵素9(CAIX)、tEGFR、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerbB2)、L1-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEAおよびB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、EPHa2、erb-B2、erb-B3、erb-B4、erbB二量体、EGFR vIII、葉酸結合タンパク質(FBP)、FCRL5、FCRH5、胎児型アセチルコリン受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、ルイスY、L1細胞接着分子(L1-CAM)、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、サバイビン、TAG72、B7-H6、IL-13受容体α2(IL-13Ra2)、CA9、GD3、HMW-MAA、CD171、G250/CAIX、HLA-A1 MAGE A1、HLA-A2 NY-ESO-1、PSCA、葉酸受容体a、CD44v6、CD44v7/8、avb6インテグリン、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児型AchR、NKG2Dリガンド、CD44v6、二重抗原(dual antigen)、がん精巣抗原、メソテリン、マウスCMV、ムチン1(MUC1)、MUC16、PSCA、NKG2D、NY-ESO-1、MART-1、gp100、腫瘍胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、がん胎児性抗原(CEA)、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、c-Met、GD-2、O-アセチル化GD2(OGD2)、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリン、サイクリンA2、CCL-1、CD138、病原体特異的抗原ならびにユニバーサルタグに関連する抗原から選択される、態様88〜90のいずれかの方法。
92. 前記組み換え受容体が、機能的非TCR抗原受容体もしくはTCRまたはその抗原結合断片であるかあるいはそれを含む、態様88〜91のいずれかの方法。
93. 前記組み換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様88〜92のいずれかの方法。
94. (a)複数の細胞を含む試験細胞組成物からの試料における細胞表面グリカンプロフィールを態様1〜91のいずれかの方法に従って評価する工程;および
(b)該試料の細胞表面グリカンプロフィールを参照試料の細胞表面グリカンプロフィールと比較する工程
を含む、細胞組成物をアッセイする方法。
95. 複数の細胞を含む試験細胞組成物から態様1〜93のいずれかの方法に従って決定されるまたは決定された、試料の細胞表面グリカンプロフィールを、参照試料の細胞表面プロフィールと比較する工程を含む、細胞組成物をアッセイする方法。
96. 前記細胞表面グリカンプロフィールが、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、または少なくとも200種の異なるグリカン種、任意で異なるN-グリカン種を含む、態様94または態様95の方法。
97. 前記細胞表面グリカンプロフィールが、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む、態様94〜96のいずれかの方法。
98. 前記細胞表面グリカンプロフィールが、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む、態様94〜97のいずれかの方法。
99. 前記細胞表面グリカンプロフィールが、表E1中のグリカンまたはそのサブセットを含む、態様94〜98のいずれかの方法。
100. 前記参照試料が、出荷規格、ラベル要件、または公定規格を含む参照標準である、態様94〜99のいずれかの方法。
101. 前記細胞組成物が、該組成物の細胞表面グリカンプロフィールが前記参照試料のものと実質的に同じである場合、および/または前記試料中に存在する全グリカンに対する標的グリカンの割合もしくは複数の標的グリカンのそれぞれの割合が、該参照試料中に存在する全グリカンに対する該標的グリカンの割合または該複数の標的グリカンのそれぞれの割合と、25%以下、20%以下、もしくは10%以下しか相違しない場合にのみ、対象の処置のために出荷される、態様94〜100のいずれかの方法。
102. 前記標的グリカンが、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、または少なくとも200種の異なるグリカン種を含む、態様101の方法。
103. 前記標的グリカンが、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む、態様101または態様102の方法。
104. 前記標的グリカンが、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む、態様101〜103のいずれかの方法。
105. 前記標的グリカンが、表E1中のグリカンまたはそのサブセットを含む、態様101〜104のいずれかの方法。
106. 前記標的グリカンが、前記細胞表面グリカンプロフィールにおいて検出可能なグリカンを含む、態様101〜105のいずれかの方法。
107. 前記参照試料が、異なる細胞組成物である、態様95〜99のいずれかの方法。
108. 前記異なる細胞組成物が、前記試験細胞組成物を生産するための製造プロセスの異なる段階からの細胞組成物であるか、または該試験組成物が由来するもしくは取得されたソース細胞組成物であり、該製造プロセスの該段階が、任意で該製造プロセスの先行する段階である、態様107の方法。
109. 前記製造プロセスが、
白血球アフェレーシスもしくはアフェレーシスによって生物学的試料から単離された細胞;
免疫親和性ベースの方法によって生物学的試料から選択された細胞;および/または
組み換え核酸、任意で組み換えタンパク質をコードするウイルスベクター、を導入された細胞;および/または
1つもしくは複数の試験作用物質の存在下で、任意でさらに1つのペプチド、タンパク質、ポリペプチド、核酸、低分子の存在下で、インキュベーションされた細胞;および/または
1つもしくは複数の刺激条件の存在下で活性化されかつ/もしくは拡大増殖した細胞;および/または
凍結保護物質の存在下での細胞の凍結保存;および/または
対象に投与するために製剤化された、任意で薬学的に許容される賦形剤の存在下で製剤化された、細胞
から選択される1つまたは複数の段階を含む、態様108の方法。
110. 前記試験組成物と参照試料との間のグリカンプロフィールの相違が、前記製造プロセス中の異なる段階において生産される細胞の間で、1つまたは複数の相違が細胞に存在することを示す、態様107〜109のいずれかの方法。
111. 前記組成物の細胞表面グリカンプロフィールが前記参照試料と実質的に相違する場合、および/あるいは前記試料中に存在する全グリカンに対する標的グリカンの割合または1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれの割合が、該参照試料中に存在する全グリカンに対する該標的グリカンの割合または該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれの割合と、10%超もしくは約10%超、20%超もしくは約20%超、30%超もしくは約30%超、40%超もしくは約40%超、50%超もしくは約50%超、60%超もしくは約60%超、70%超もしくは約70%超、80%超もしくは約80%超、90%超もしくは約90%超、またはそれ以上相違する場合に、前記グリカンプロフィールの相違が存在する、態様110の方法。
112. 前記標的グリカンが、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、または少なくとも200種の異なるグリカン種を含み、任意で該グリカン種がN-グリカンである、態様111の方法。
113. 前記標的グリカンが、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む、態様111または態様112の方法。
114. 前記標的グリカンが、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む、態様111〜113のいずれかの方法。
115. 前記標的グリカンが、表E1中のグリカンまたはそのサブセットを含む、態様111〜114のいずれかの方法。
116. 前記標的グリカンが、前記細胞表面グリカンプロフィールにおいて検出可能なグリカンを含む、態様111〜115のいずれかの方法。
117. 前記1つまたは複数の相違が、前記細胞の機能的活性または表現型に関連する、態様111〜116のいずれかの方法。
118. 前記機能的活性または表現型が、細胞表面マーカーのマスキング、代謝活性、分化状態、増殖能もしくは拡大増殖能、活性化状態、細胞溶解活性、シグナル伝達活性、接着特性、またはホーミング特性のうちの1つまたは複数を含む、態様117の方法。
119. 前記細胞組成物を製造するためのプロセスを調節するまたは変化させる工程をさらに含む、態様111〜118のいずれかの方法。
120. 前記参照標準が、前記プロセスによって生産される複数の組成物の間での1つまたは複数の標的グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルの平均または中央値を含む、態様108〜119のいずれかの方法。
121. 細胞組成物を製造するための方法であって、
複数の細胞を含む入力組成物を、1つもしくは複数の作用物質と、かつ/または1つもしくは複数の条件下で、インキュベーションしかつ/または接触させ、それによって該細胞組成物を生成させる、工程
を含み、
該細胞組成物が、該入力組成物からの1つまたは複数の細胞とは遺伝的、表現型的、および/または機能的に異なる1つまたは複数の細胞を含み;かつ
該細胞組成物が、1つまたは複数の標的グリカンを含む細胞表面グリカンプロフィールを含む1つまたは複数の細胞を含み;該細胞表面グリカンプロフィールおよび/または該細胞表面グリカンプロフィール中の該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが、参照試料における細胞表面グリカンプロフィールまたは参照試料中に存在する全グリカンに対する該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれと25%以下しか相違せず;該細胞表面グリカンプロフィールが、該細胞組成物中の細胞の表面から遊離したグリカンを含む、
方法。
122. 前記細胞表面グリカンプロフィールまたは前記1つもしくは複数の標的グリカンが、態様1〜93のいずれかの方法に従って決定される、態様121の方法。
123. 前記細胞組成物が、組み換え核酸を含む細胞を含む、態様121または態様122の方法。
124. 前記インキュベーションおよび/もしくは接触の前、間、または後に、細胞の洗浄、希釈、単離、選択、分離、培養、刺激、組み換え核酸の導入、凍結保存、製剤化、および/またはパッケージングから選択される1つまたは複数の工程を含む、態様121〜123のいずれかの方法。
125. 前記インキュベーションおよび/もしくは接触の前、間、または後に、
白血球アフェレーシスまたはアフェレーシスによって生物学的試料から細胞を単離する工程;
免疫親和性ベースの方法によって生物学的試料から細胞を単離する工程;ならびに/または
組み換え核酸、任意で組み換えタンパク質をコードするウイルスベクター、を細胞に導入する工程;ならびに/または
1つまたは複数の作用物質の存在下で、任意でさらに1つのペプチド、タンパク質、ポリペプチド、核酸、低分子の存在下で、細胞をインキュベーションする工程;ならびに/または
1つまたは複数の刺激条件の存在下で細胞を活性化および/もしくは拡大増殖させる工程;ならびに/または
凍結保護物質の存在下で細胞を凍結保存する工程;ならびに/または
対象への投与のために、任意で薬学的に許容される賦形剤の存在下で、細胞を製剤化する工程
から選択される1つまたは複数の工程を含む、態様121〜124のいずれかの方法。
126. 前記1つもしくは複数の作用物質または条件が、血清の存在もしくは濃度、培養時間、刺激物質の存在もしくは量、刺激物質のタイプもしくは程度、アミノ酸の存在もしくは量、温度、ソース組成物の供給源もしくは細胞タイプ、ソース組成物における細胞タイプの比もしくは割合、任意でCD4+/CD8+細胞比、ビーズの存在もしくは量、細胞密度、静置培養、揺動培養、灌流、ウイルスベクターのタイプ、ベクターコピー数、形質導入アジュバントの存在、凍結保存におけるソース組成物の細胞密度、組み換え受容体の発現の程度、または細胞表現型を調節する化合物の存在を含む、態様121〜125のいずれかの方法。
127. 前記1つまたは複数の作用物質または条件が、刺激条件、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、核酸、低分子、および/または組み換え核酸、任意で組み換えタンパク質をコードするウイルスベクター、を含む、態様121〜126のいずれかの方法。
128. 前記作用物質が、前記細胞組成物中の1つまたは複数の細胞の成長、増殖、生存性、分化、細胞内シグナル伝達、活性化、および/または拡大増殖を調節する、態様121〜127のいずれかの方法。
129. 前記刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化させることができる刺激物質とのインキュベーションを含む、態様125〜127のいずれかの方法。
130. 前記刺激物質が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する第一の作用物質、およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する第二の作用物質を含む、態様129の方法。
131. 前記第一の作用物質がCD3に特異的に結合し、かつ/または前記共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、もしくはICOSからなる群より選択される、態様130の方法。
132. 前記刺激物質が、抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片および/または抗CD28抗体もしくはその抗原結合断片を含む、態様129〜131のいずれかの方法。
133. 前記第一および第二の作用物質が、抗体を含み、かつ/または固体支持体表面に存在する、態様129〜132のいずれかの方法。
134. 前記固体支持体が、ビーズであるかまたはそれを含む、態様133の方法。
135. 前記刺激条件が、1つまたは複数のサイトカインの存在、任意でIL-2、IL-15、および/またはIL-7の存在を含む、態様125〜127および129〜134のいずれかの方法。
136. 前記参照試料が、出荷規格、ラベル要件、または公定規格を含む参照標準である、態様121〜135のいずれかの方法。
137. 前記参照試料が、ソース組成物を、前記1つもしくは複数の作用物質と、かつ/または前記1つもしくは複数の条件下で、インキュベーションしかつ/または接触させることによって生産される複数の組成物の間での、前記1つまたは複数の標的グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルの平均または中央値を含む、態様121〜136のいずれかの方法。
138. 前記1つもしくは複数の標的グリカンを含む細胞表面グリカンプロフィールまたは該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが、前記参照試料における細胞表面グリカンプロフィールまたは該参照試料中に存在する全グリカンに対する該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれと、20%以下もしくは約20%、15%以下もしくは約15%、10%以下もしくは約10%、または5%以下もしくは約5%しか相違しない、態様121〜137のいずれかの方法。
139. 前記標的グリカンが、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、または少なくとも200種の異なるグリカン種を含み、任意で該グリカン種がN-グリカンである、態様121〜138のいずれかの方法。
140. 前記標的グリカンが、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む、態様121〜139のいずれかの方法。
141. 前記標的グリカンが、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む、態様121〜140のいずれかの方法。
142. 前記標的グリカンが、表E1中のグリカンまたはそのサブセットを含む、態様121〜141のいずれかの方法。
143. 前記標的グリカンが、前記細胞表面グリカンプロフィールにおいて検出可能なグリカンを含む、態様121〜142のいずれかの方法。
144. 細胞組成物において1つまたは複数の試験作用物質または条件をスクリーニングするための方法であって、
(a)1つもしくは複数の試験作用物質もしくは条件の存在下でインキュベーションもしくは処理されたソース組成物であるかまたは該ソース組成物に由来する試験細胞組成物からの試料における細胞表面グリカンプロフィールを評価する工程、および
(b)該試料の該細胞表面グリカンプロフィールを、1つまたは複数の標的グリカンを含む参照試料の細胞表面グリカンプロフィールと比較する工程
を含む、方法。
145. 細胞組成物において1つまたは複数の試験作用物質または条件をスクリーニングするための方法であって、1つもしくは複数の試験作用物質もしくは条件の存在下でインキュベーションもしくは処理されたソース組成物であるかまたは該ソース組成物に由来する試験細胞組成物からの試料の細胞表面グリカンプロフィールを、参照試料の細胞表面グリカンプロフィールと比較する工程を含む、方法。
146. 前記細胞表面グリカンプロフィールが、前記試料中の1つまたは複数のグリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルを含む、態様144または態様145の方法。
147. 前記細胞表面グリカンプロフィールが、態様1〜93のいずれかの方法に従って決定される、態様145〜146のいずれかの方法。
148. 前記参照試料が、前記1つまたは複数の試験作用物質もしくは条件の存在下での処理がないこと、または1つもしくは複数の別の試験作用物質もしくは条件の存在下であること以外は、前記試験細胞組成物または前記ソース組成物と同じまたは実質的に同じ条件下でインキュベーションまたは処理された組成物に由来する、態様144〜147のいずれかの方法。
149. 前記参照試料が、前記1つまたは複数の試験作用物質または条件の存在下でインキュベーションまたは処理された複数の組成物の間での前記1つまたは複数の標的グリカンの有無、アイデンティティ、および/またはレベルの平均または中央値を含む、態様144〜147のいずれかの方法。
150. 前記1つもしくは複数の試験作用物質または条件が、血清の存在もしくは濃度、培養時間、刺激物質の存在もしくは量、刺激物質のタイプもしくは程度、アミノ酸の存在もしくは量、温度、ソース組成物の供給源もしくは細胞タイプ、ソース組成物における細胞タイプの比もしくは割合、任意でCD4+/CD8+T細胞比、ビーズの存在もしくは量、細胞密度、静置培養、揺動培養、灌流、ウイルスベクターのタイプ、ベクターコピー数、形質導入アジュバントの存在、凍結保存におけるソース組成物の細胞密度、組み換え受容体の発現の程度、または細胞表現型を調節する化合物の存在を含む、態様144〜149のいずれかの方法。
151. 前記1つまたは複数の試験作用物質または条件が、試験化合物のライブラリーからの1つまたは複数の化合物を含む、態様144〜150のいずれかの方法。
152. 前記標的グリカンが、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、少なくとも90種、少なくとも100種、または少なくとも200種の異なるグリカン種を含み、任意で該グリカン種がN-グリカンである、態様144〜151のいずれかの方法。
153. 前記標的グリカンが、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびに/またはN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンを含む、態様144〜152のいずれかの方法。
154. 前記標的グリカンが、還元末端ガラクトース残基を有しないフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、還元末端ガラクトース残基を有しないバイアンテナ型複合型グリカン、1つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つの還元末端ガラクトース残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および1つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するフコシル化バイアンテナ型複合型グリカン、2つのガラクトース残基および2つのN-アセチルノイラミン酸残基を有するバイアンテナ型複合型グリカン、5つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、6つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、7つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、8つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカン、ならびに/または9つのマンノース残基を有する高マンノース型グリカンを含む、態様144〜153のいずれかの方法。
155. 前記標的グリカンが、表E1中のグリカンまたはそのサブセットを含む、態様144〜154のいずれかの方法。
156. 前記標的グリカンが、前記細胞表面グリカンプロフィールにおいて検出可能なグリカンを含む、態様144〜155のいずれかの方法。
157. 前記試料の細胞表面グリカンプロフィールまたは前記1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが前記参照試料と実質的に同じであることを前記比較が示す場合;および/あるいは、該1つもしくは複数の標的グリカンを含む細胞表面グリカンプロフィールまたは該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが、該参照試料における細胞表面グリカンプロフィールまたは該参照試料中に存在する全グリカンに対する該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれと、20%以下もしくは約20%、15%以下もしくは約15%、10%以下もしくは約10%、または5%以下もしくは約5%しか相違しないことを前記比較が示す場合に、前記1つまたは複数の試験作用物質または条件を、細胞のインキュベーションまたは処理用に選択する工程を含む、態様144〜156のいずれかの方法。
158. 前記試料の細胞表面グリカンプロフィールまたは前記1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが前記参照試料と実質的に相違することを前記比較が示す場合;および/あるいは、該1つもしくは複数の標的グリカンを含む細胞表面グリカンプロフィールまたは該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれが、該参照試料における細胞表面グリカンプロフィールまたは該参照試料中に存在する全グリカンに対する該1つもしくは複数の標的グリカンのそれぞれと、10%超もしくは約10%超、20%超もしくは約20%超、30%超もしくは約30%超、40%超もしくは約40%超、50%超もしくは約50%超、60%超もしくは約60%超、70%超もしくは約70%超、80%超もしくは約80%超、90%超もしくは約90%超、またはそれ以上相違することを前記比較が示す場合に、1つまたは複数のさらなる試験作用物質または条件を使って前記方法を繰り返す工程を含む、態様144〜156のいずれかの方法。
159. 前記試験作用物質が、試験細胞組成物中の1つまたは複数の細胞の成長、増殖、生存性、分化、活性化、および/または拡大増殖を調節するための候補である、態様144〜156のいずれかの方法。
160. 前記試験細胞組成物が組み換え核酸を含む細胞を含む、態様144〜159のいずれかの方法。
161. 前記組み換え核酸が、組み換えタンパク質、任意で組み換え受容体、をコードする、態様125〜160のいずれかの方法。
162. 前記組み換え受容体が、キメラ受容体および/もしくは組み換え抗原受容体であるかまたはそれを含む、態様160の方法。
163. 前記組み換え受容体が標的抗原に結合することができ、該標的抗原が、ある疾患、障害、または病態に関連し、それに特異的であり、かつ/またはその細胞もしくは組織において発現する、態様161または態様162の方法。
164. 前記疾患、障害、または病態が、感染性疾患もしくは感染性障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくはがんである、態様163の方法。
165. 前記標的抗原が腫瘍抗原である、態様163または態様164の方法。
166. 前記標的抗原が、ROR1、B細胞成熟抗原(BCMA)、炭酸脱水酵素9(CAIX)、tEGFR、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerbB2)、L1-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEAおよびB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、EPHa2、erb-B2、erb-B3、erb-B4、erbB二量体、EGFR vIII、葉酸結合タンパク質(FBP)、FCRL5、FCRH5、胎児型アセチルコリン受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、ルイスY、L1細胞接着分子(L1-CAM)、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、サバイビン、TAG72、B7-H6、IL-13受容体α2(IL-13Ra2)、CA9、GD3、HMW-MAA、CD171、G250/CAIX、HLA-A1 MAGE A1、HLA-A2 NY-ESO-1、PSCA、葉酸受容体a、CD44v6、CD44v7/8、avb6インテグリン、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児型AchR、NKG2Dリガンド、CD44v6、二重抗原(dual antigen)、がん精巣抗原、メソテリン、マウスCMV、ムチン1(MUC1)、MUC16、PSCA、NKG2D、NY-ESO-1、MART-1、gp100、腫瘍胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、がん胎児性抗原(CEA)、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、c-Met、GD-2、O-アセチル化GD2(OGD2)、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリン、サイクリンA2、CCL-1、CD138、病原体特異的抗原ならびにユニバーサルタグに関連する抗原から選択される、態様163〜165のいずれかの方法。
167. 前記組み換え受容体が、機能的非TCR抗原受容体もしくはTCRまたはその抗原結合断片であるかあるいはそれを含む、態様163〜166のいずれかの方法。
168. 前記組み換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様163〜167のいずれかの方法。
169. 前記細胞が哺乳動物細胞を含むか、または前記試験細胞組成物が哺乳動物細胞を含む、態様121〜168のいずれかの方法。
170. 前記細胞がヒト細胞を含むか、または前記試験細胞組成物がヒト細胞を含む、態様121〜169のいずれかの方法。
171. 前記細胞が幹細胞を含むか、または前記試験細胞組成物が幹細胞を含む、態様121〜168のいずれかの方法。
172. 前記幹細胞が誘導多能性幹細胞(iPSC)である、態様171の方法。
173. 前記組成物または前記試験細胞組成物が、アフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物中に存在する細胞またはそれに由来する細胞を含む、態様121〜170のいずれかの方法。
174. 前記細胞が、免疫細胞、白血球、末梢血単核球(PBMC)、リンパ球、もしくは未分画T細胞を含むか、または
前記試験細胞組成物が、免疫細胞、白血球、末梢血単核球(PBMC)、リンパ球、もしくは未分画T細胞を含む、
態様121〜170および態様173のいずれかの方法。
175. 前記細胞が免疫細胞を含むか、または前記試験細胞組成物が免疫細胞を含む、態様121〜174のいずれかの方法。
176. 前記免疫細胞が、T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、または樹状細胞である、態様175の方法。
177. 前記細胞がCD4+および/もしくはCD8+T細胞であるT細胞を含むか、または前記試験細胞組成物がCD4+および/もしくはCD8+T細胞であるT細胞を含む、態様121〜176のいずれかの方法。
178. 前記細胞が初代細胞である、態様1〜177のいずれかの方法。
179. 細胞組成物中の1つまたは複数の物質の有無、アイデンティティ、および/またはレベルを検出する方法であって、
(a)ある細胞タイプからの複数の細胞またはある細胞タイプに由来する複数の細胞を含む試験細胞組成物からの試料における細胞表面グリカンプロフィールを態様1〜93のいずれかの方法に従って評価する工程、ならびに
(b)該細胞表面グリカンプロフィールにおける、該細胞タイプの細胞によって合成および/または発現されない1つまたは複数の非天然グリカンを同定する工程
を含む、方法。
180. 前記細胞タイプがヒト細胞である、態様179の方法。
181. 前記細胞タイプが免疫細胞である、態様179または態様180の方法。
182. 前記細胞タイプがT細胞である、態様180または態様181のいずれかの方法。
183. 前記試験細胞組成物が、1つまたは複数の非天然グリカンを含む少なくとも1つのタンパク質を含む物質の存在下で前記複数の細胞を培養および/またはインキュベーションすることによって生産される、態様179〜182のいずれかの方法。
184. 前記少なくとも1つのタンパク質が、アルブミン、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、インスリンもしくはインスリン様ペプチド、トランスフェリン、またはスーパーオキシドジスムターゼである、態様183の方法。
185. 前記少なくとも1つのタンパク質が組み換えタンパク質である、態様183または態様184の方法。
186. 前記1つもしくは複数の非天然グリカンおよび/または前記少なくとも1つのタンパク質が血清中に存在する、態様183〜185のいずれかの方法。
187. 前記血清が、ウシ胎児血清(FBS)、仔ウシ血清(BCS)、新生仔ウシ血清(NBCS)、ウマ血清、ヤギ血清、仔ヒツジ血清、ロバ血清、またはブタ血清である、態様186の方法。
188. 前記1つまたは複数の非天然グリカンおよび/または前記少なくとも1つのタンパク質が、(i)前記複数の細胞と同じ目、科、属、または種からの細胞によって産生されず、かつ/または(ii)前記複数の細胞と同じ目、科、属、または種からの細胞の表面に発現されない、態様179〜187のいずれかの方法。
189. 前記1つまたは複数の非天然グリカンが非ヒトグリカンを含む、態様179〜188のいずれかの方法。
190. 前記1つまたは複数の非天然グリカンを同定する工程が、前記表面グリカンプロフィールを参照グリカンプロフィールと比較することを含み、前記参照試料が、前記1つまたは複数の非天然グリカンを含有する供給源からのグリカンプロフィールである、態様179〜189のいずれかの方法。
191. 前記参照グリカンプロフィールが、前記複数の細胞と接触しておらず、前記複数の細胞と共にインキュベーションされておらず、かつ/または前記複数の細胞に曝露されていない物質、任意で培地、血清、もしくはその構成成分であるかまたはそれらを含む物質、を含む参照試料から生成されるか;あるいはタンパク質もしくはその組み換えタンパク質である、態様189または態様190の方法。
VI.実施例
以下の実施例は、例示を目的として含まれるにすぎず、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
実施例1: 細胞組成物の表面N結合型グリカンのマッピング
細胞組成物の細胞表面N結合型グリカンプロフィールをマッピングするために、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を含む例示的な凍結保存T細胞組成物を個々に解凍し、37℃に加熱した細胞培養培地にて1:10で希釈し、1〜2.5×106個の細胞の試料を新たなチューブに移した。
移した細胞試料を遠心分離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、約198μlのPBSを用いて細胞懸濁液を再構成した。インタクトな細胞全体を含有する細胞懸濁液に、約2μLのPNGase F PRIME(N-Zyme Scientifics;Bulldog Bioから入手可能、商品番号NZPP050)を加えた後、穏やかに混合しながら37℃で30分間インキュベーションした。遊離した表面N-グリカンを得るために、細胞懸濁液を遠心分離し、上清をクリーンチューブに回収し、それを真空遠心分離により乾燥状態まで直ちに蒸発させた。
乾燥させたN-グリカンを30μLの水で再構成し、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)カルバメートタグ基、キノロンフルオロフォア、および塩基性第三級アミン(Glycoworks(商標)RapiFluor-MS(商標)label、商品番号715004793、Waters Corporation、MA)から構成される5μLの標識試薬を加えた。試料を混合し、室温で約5分間インキュベーションした後、約365μlのアセトニトリルを試料に加えることにより標識をクエンチした。試料を混合し、遠心分離した。試料に対して固相抽出(SPE)を実行して、さらなる分析の前にN-グリカンのさらなるクリーンアップを行った。真空遠心分離機を用いてN-グリカン試料を乾燥状態まで蒸発させた後、分析のために適切な希釈剤中に再懸濁させた。
HILIC液体クロマトグラフィーを使用してグリカンを分離し、相対的な定量化および同定のために蛍光(Waters ACQUITY I-Class)(HILIC-FLR)および質量分析(ポジティブエレクトロスプレーイオン化(ESI)、Q-Exactive(商標)HF(Thermo Scientific))、すなわちHILIC-ESI-MSにより検出した。
表E1は、この方法を使用して検出された例示的な糖について、保持時間(秒)(RT)の他に、モノアイソトピック質量ならびに+2、+3、および/または+4の電荷状態の質量を示す。
健常ヒトドナー由来の白血球アフェレーシス試料からCD4+およびCD8+細胞集団を免疫親和性ベースで濃縮した後、同じ対象に由来する操作されたT細胞のCD4+およびCD8+集団を個別に生成することを伴うプロセスにより生成された、例示的なT細胞組成物に対して、上記の方法を実施した。単離されたCD4+およびCD8+T細胞集団を活性化させ、抗CD19 CARをコードするウイルスベクターを用いて形質導入を行った後、操作された細胞集団の拡大増殖および凍結保存を行った。抗CD19 CARは、マウス抗体に由来する抗CD19 scFv、Ig由来のスペーサー、ヒトCD28由来の膜貫通ドメイン、ヒト4-1BB由来の細胞内シグナル伝達ドメイン、およびヒトCD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含んだ。操作されたCD8+T細胞組成物からの細胞表面N-グリカンの注釈付きHILIC-FLRクロマトグラムを図2Aに示し、これは、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型グリカン、およびシアリルルイスxグリカンの存在を含むN-グリカン種の複雑な混合物が組成物中の細胞の表面上に存在することを実証した。
別の例では、白血球アフェレーシス試料からT細胞(CD4+およびCD8+細胞を含む)を免疫親和性ベースで選択した後、活性化、抗CD19 CARをコードするウイルスベクターを用いた形質導入、拡大増殖、および凍結保存を伴うプロセスにより生成された、代替的な例示的な抗CD19 CAR T細胞組成物に対して、方法を実施した。CARは、マウス抗体に由来する抗CD19 scFv、細胞外領域と、膜貫通ドメインと、共刺激領域とを含むCD28の領域、およびCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含んだ。組成物のHILIC-ESI-MS分析により生成された、図3Aにおける注釈付きHILIC-FLRクロマトグラムおよび図3Bにおけるトータルイオンクロマトグラム(TIC)は同様に、N-グリカン種の複雑な混合物を含むN-グリカンプロフィールを実証した。
これらの結果は、インタクトな細胞全体の表面から遊離したN-グリカンの高分解能マップを得ることが可能であることを裏付け、それにより、細胞全体の表面グリコシル化状態を特徴付ける細胞組成物のN-グリカンマップを生成するために方法を使用できることが実証された。
実施例2: HILICおよびタンデムポジティブエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS/MS)によるグリカン種の同定
グリカンの同定を確認するために、高分解能質量分析を用いて、HILICにより区別されるアイソバリック種を含むグリカンを同定した。例えば磁気ビーズ上にコーティングされた抗CD3/抗CD28を用いた刺激後に活性化された活性化CD3+T細胞を含む例示的な組成物に対して、分析を実施した。実施例1に記載したようにN-グリカンを抽出し、標識し、処理した。タンデム質量分析(MS/MS)を使用した以外は実質的に実施例1に記載したようにHILIC-ESI-MSを行った。N-グリカンを、HILICにより分離し、蛍光(HILIC-FLR)およびESI-MS/MSにより検出し、これにより相対的な定量化および同定が提供された。
図4Aに示すように、注釈付きHILIC-FLRクロマトグラムによって、抗CD3/抗CD28により活性化されたCD3+細胞の細胞表面N-グリカンマップはグリカン種の複雑な混合物であることが明らかにされた。
タンデム質量分析(MS/MS)のために、粒子をESIによりイオン化し、質量分析の第1の段階において質量対電荷比により分離した。図4Bは、質量許容差5ppmを用いて+3の荷電状態において例示的なA3S3F N-グリカンについて質量分析の第1の段階から生成された抽出されたイオンクロマトグラム(XIC)を示す。同一のアイソトープ分布を有するN-グリカンの複数のクロマトグラフィーピークが観察され、これは、グリカン構造の単糖単位の間の結合の起こり得る差異の存在に合致している。第1の段階の後、MS/MSの第2の段階において、グリカンを断片化し、生じた断片を分離して測定した。正規化衝突エネルギー(NCE)=15での高エネルギー衝突解離(HCD)により断片化された例示的なN-グリカンA3S4FのMS/MS断片化を図4Cに示す。第1の段階の高分解能MSデータと合わせて、A3S4Fの断片化によって、カノニカルな末端ガラクトース残基の他に、同じアンテナのn-アセチルグルコサミン残基上の特有の部位におけるn-アセチルノイラミン酸結合の存在が確認された(図4C、枠)。これらの結果は、高分解能MSデータと合わせたMS/MSにより、HILIC-FLRによる分離および検出後の、特有のグリカン構造などのグリカン構造を同定できることを実証する。
実施例3: 異なる細胞組成物のN結合型グリカンプロフィールの比較
実施例1に記載したインタクトな細胞全体のN-グリカンマッピングプロフィールを使用して、異なる細胞組成物間でN-グリカンプロフィールを比較した。
A. CD4+およびCD8+CAR+T細胞組成物を操作するためのプロセスの特徴がN-グリカンプロフィールに与える影響
キメラ抗原受容体(CAR)を有するように操作されたT細胞を製造する例示的プロセスの様々な工程で得られた細胞組成物を比較して、細胞産物中のT細胞表面N-グリカンに対するプロセスの影響を調べた。例示的プロセスは概して、バルクPBMCの単離の後に、選択されたCD4+T細胞および選択されたCD8+T細胞をもたらす免疫親和性ベースの選択を伴い、次いでこれらの細胞を凍結保存した。解凍された、選択されたCD4+および/またはCD8+T細胞を別々にビーズベースの活性化試薬とインキュベーションし、CARをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入を行った。形質導入した細胞を、サイトカインの存在下でインキュベーションして拡大増殖させ、その後、凍結乾燥させた。具体的には、以下の組成物を分析した:(1)バルクPBMCを含有する細胞組成物;(2)免疫親和性ベースの選択により選択されたCD4+またはCD8+T細胞を含有する、解凍された、凍結保存された細胞組成物;(3)IL-2、IL-15、および/またはIL-7の存在下で18〜24時間37℃で抗CD3/抗CD28ビーズとインキュベーションされた選択されたT細胞を含有する細胞組成物;(4)CARをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入された細胞組成物;ならびに(5)凍結保存の前にIL-2、IL-15、および/またはIL-17サイトカインの存在下での拡大増殖に供されたCAR発現細胞を含有する、解凍された、凍結保存された細胞組成物。上記の各細胞組成物からのインタクトな細胞全体のN-グリカンプロフィールを、実質的に実施例1に記載したような手順を使用して評価した。
バルクPBMCは、バイアンテナ型、トリアンテナ型、およびテトラアンテナ型のハイブリッド型および複合型の糖を含む、高度に不均質なN-グリカン集団を呈した。T細胞(CD4+およびCD8+)の選択は、グリカンパターンの不均質性を低減させ、バルク細胞集団と比較してテトラアンテナ型の種が増加した主にバイアンテナ型およびトリアンテナ型のシアリル化グリカンをもたらした。抗CD3/抗CD28の共刺激により活性化されたCD4+細胞およびCD8+細胞は、バイアンテナ型およびトリアンテナ型の種を保持したが、テトラアンテナ型の種は低減された。
選択されたCD4+もしくはCD8+T細胞組成物、CAR形質導入細胞またはさらに拡大増殖および凍結保存されたCAR形質導入細胞を含むT細胞組成物の間のN-グリカンプロフィールの比較では、高マンノース型N-グリカン、バイセクト型グリカン、およびシアリルルイスXグリカンを含む同じN-グリカン混合物が各T細胞組成物中に存在したが、それらは異なるレベルであった。図5A〜5Cは、細胞組成物の間でCD4+およびCD8+細胞における特定の高マンノース型N-グリカン(図5A)、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン(図5B)、ならびにN-アセチルラクトサミン含有N-グリカン(図5C)のレベルを比較する細胞表面N-グリカンマップの重ね合わせ図を提供する。これらの結果を表E2に要約し、表E2は、CD4+およびCD8+組成物のそれぞれにおける高マンノース型N-グリカン、バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン、ならびにN-アセチルラクトサミン含有N-グリカンであるN-グリカンの割合(%)を示す。
結果は概して、選択されたCD4+およびCD8+T細胞組成物またはCAR形質導入細胞組成物と比較して、さらに拡大増殖および凍結保存されたCAR発現細胞を含有する組成物からのCD4+およびCD8+細胞における表面高マンノース種グリカンの増加、シアリルルイスX N-グリカンの増加、および表面ポリラクトサミン含有N-グリカンの減少を示した。理論により縛られることを望まないが、いくつかの場合には、これらの結果は、拡大増殖および/または活性化の間に細胞組成物において起こるN-グリカンの変化に起因し得るという仮説が立てられる。さらなる拡大増殖および凍結保存に供された細胞産物組成物において、CD4+細胞組成物とCD8+細胞組成物との間の差異も観察され、CD8+細胞組成物はCD4+細胞組成物と比べて表面上に実質的により多くのバイセクト型N-グリカンを呈した。
(表E2)CD4+およびCD8+細胞組成物におけるN-グリカンの割合(%)
B. T細胞組成物のN-グリカンプロフィールに対するプロセスの特徴の影響
CAR+T細胞の操作に用いた細胞組成物を、N-グリカンプロフィールに対するプロセスの特徴(例えば選択および活性化)の影響について評価した。CD3+T細胞を免疫親和性ベースの選択によりバルクPBMCから選択し、凍結保存した。解凍後、選択されたCD3+T細胞を抗CD3/抗CD28ビーズベースの活性化と共にインキュベーションした。具体的には、以下の組成物を分析した:(1)末梢血単核細胞を含有する細胞組成物;(2)免疫親和性ベースの選択により選択されたCD3+T細胞を含有する細胞組成物;および(3)抗CD3/抗CD28ビーズとインキュベーションされた選択されたT細胞を含有する細胞組成物。上記の各細胞組成物からのインタクトな細胞全体のN-グリカンプロフィールを、実質的に実施例1に記載したような手順を使用して評価した。
図6における例示的なHILIC-FLRクロマトグラムに示すように、特に、発現されたバイアンテナ型/ハイブリッド型、バイセクト型コア、およびN-アセチルラクトサミンリピートのN-グリカンについて、表面N-グリカンの相対的なレベルにおいて差異が観察された。図6において、例示的な変化の区画を、他の組成物のうちの1つまたは複数の間の増加(+または++)または減少(-)の程度に基づいて強調している。これらの結果は、操作されたT細胞を生成するために細胞を処理する工程は表面N-グリカンプロフィールに影響を及ぼし得るという結論に合致する。
C. 異なるCAR-T細胞組成物のN-グリカンプロフィール
上記の抗CD19 CARを発現するT細胞を含むCD4+およびCD8+T細胞組成物の表面N結合型グリカンプロフィールを、代替的な抗CD19 CARを発現するT細胞を含有する細胞組成物、および代替的な標的抗原を認識するCARを発現するT細胞を含有する細胞組成物のN-グリカンプロフィールと比較した。代替的な抗CD19 CARは、マウス抗体に由来する抗CD19 scFv(これは上記の抗CD19 CARの抗CD19 scFvとは異なるものであった)、細胞外領域と、膜貫通ドメインと、共刺激領域とを含むヒトCD28の領域、ならびにヒトCD3-ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含んだ。代替的な標的抗原を認識するCARは、ヒトscFv、スペーサー領域、CD28膜貫通ドメイン、4-1BB由来の細胞内共シグナル伝達配列、およびCD3-ζ由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含んだ。各細胞組成物を製造するプロセスもまた、CD4+およびCD8+細胞の存在、数もしくは比、ならびに/または活性化、形質導入および/もしくは拡大増殖のための条件などの様々な特徴に関して異なるものであった。
細胞組成物からのインタクトな細胞全体のN-グリカンプロフィールを、実質的に実施例1に記載したような手順を使用して評価した。図7に示すように、分析された各組成物は、特有の細胞表面N-グリカンプロフィールを呈した。各細胞組成物における例示的な種類のN-グリカンの割合(%)を表E2に要約する。いくつかの場合には、N-アセチルラクトサミンは、ポリラクトサミングリカン中に存在するリピートとして存在する。
代替的な抗CD19 CARを含む組成物において、約1%の細胞表面N-グリカンはバイセクト型N-グリカンであった。この結果は、類似のプロセスを使用して製造された代替的な抗CD19 CARを発現する細胞を含む12種より多くの試験された組成物にわたって一貫していた。代替的な標的抗原を認識するCARを発現する細胞を含有する細胞組成物からのN-グリカンプロフィールは、高レベルのバイセクト型N結合型グリカンおよびシアリルルイスX N-グリカンを示した。
D. 異なるプロセスにより生成された操作された細胞のN-グリカンプロフィールの解析
実施例3Aにおける上記の例示的な抗CD19 CARを発現するT細胞を含む3つの異なるCD4+T細胞組成物の表面N結合型グリカンプロフィールを、実施例1に記載したものと実質的に同じ方法により得た。CD4+T細胞組成物のうちの2つは、同じ個体対象由来の試料から得られ、そのうちの1つは、実施例3Aに記載した例示的な操作プロセス(「例示的プロセス」)と類似の方法により製造し、他のCD4+T細胞組成物は、例示的な代替的な操作プロセス(「代替的プロセス」)により製造した。追加の対象試料からの第2のCD4+T細胞組成物を代替的な方法により製造した。
細胞組成物からのインタクトな細胞全体のN-グリカンプロフィールを、本質的に実施例1に記載したような手順を使用して評価した。図8に示すように、表面N-グリカンプロフィールの個々のピークの間に差異が観察された。CD4+T細胞組成物から得られた観察されたバイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカン含有量を表E4に要約する。
(表E4)抗CD19 CAR発現細胞を含むCD4+T細胞組成物におけるN-グリカン含有量
細胞操作プロセスで使用した異なる変動要素が異なる表面N-グリカンプロフィールをもたらし得るかどうかをさらに評価するために、例示的な抗CD19 CARを発現するT細胞を含む3つのCD4+および3つのCD8+T細胞組成物を、同じ個体対象から得られた試料から生成した。細胞の操作および培養のプロセスで使用した2つの条件に関する局面において異なることを除いて、T細胞組成物を本質的には、実質的に同じ操作プロセスにより生成した。図9および図10に示すように、CD4+(図9)およびCD8+(図10)T細胞組成物において観察された表面N-グリカンプロフィールは一貫しているようであったが、バイセクト型グリカンに対応する特定のピーク(矢印)において変化が観察された。
E. CAR発現細胞を含むT細胞組成物のN-グリカン表面プロフィール
実施例3Aにおける上記の例示的な抗CD19 CARまたは代替的な標的抗原を有するCARのいずれかを発現するT細胞を含むT細胞組成物の表面N結合型グリカンプロフィールを実施例1に記載した方法により得た。健常対象から得られた試料から2つの組成物を生成し、標的抗原と関連する疾患を有する対象(患者)から1つの組成物を得た。
細胞組成物からのインタクトな細胞全体のN-グリカンプロフィールを、本質的に実施例1に記載したような手順を使用して評価した。図11および図12に示すように、抗CD19 CAR CD8+T細胞組成物(図11)および代替的なCAR T細胞組成物(図12)から得られた表面N-グリカンプロフィールの個々のピーク(矢印を参照)の間に差異が観察された。バイセクト型およびシアリルルイスX N-グリカンの含有量の間の差異もまた観察され、それを表E5および表E6に要約する。
(表E5)抗CD19 CAR発現細胞を含有するCD8+T細胞組成物におけるN-グリカン含有量
(表E6)代替的な抗原を標的とするCARを発現する細胞を含有するT細胞組成物におけるN-グリカン含有量
結果は、異なるドナーから生成された異なるCAR T細胞組成物の間に、表面Nグリカンプロフィールの異なる程度のばらつきが存在し得ることを示す。この観察は、細胞を生成するプロセスにおけるグリコシル化の変化をモニターするため、ならびに異なるドナーからおよび/または同じもしくは異なるプロセスを使用して生成された細胞組成物の均一性をモニターするためのパラメーターとしてN-グリカンプロフィールを利用するための、表面N-グリカンプロファイリングの有用性に合致する。
実施例4: N-グリカンプロファイリングを用いる物質の検出
様々な物質(例えば、細胞組成物中に存在する残留タンパク質などの潜在的な残留物質)を起源とするグリカンを検出するための表面N-グリカンプロファイリングの能力を試験した。そのような物質には、組み換え受容体(例えばCAR)を発現する細胞などの細胞を操作するプロセスにおいて使用される血清タンパク質、サイトカイン、または成長因子が含まれ得る。
物質の例として、ウシ胎児血清(FBS)の試料をPNGase F PRIMEとインキュベーションした。試料からN-グリカンを回収し、乾燥させた。次いで、N-グリカンを水で再構成して標識し、SPEにより洗浄し、実施例1に記載したものと類似のHILIC-ESI-MSを用いて分析した。図13(上パネル)に示すように、グリカンプロフィールを生成したところ、これはFBSに結合したN-グリカンを検出するグリカンプロフィールマッピングの能力に合致した。
実施例3Aに記載した例示的な抗CD19 CARを発現するT細胞を含むCD4+およびCD8+T細胞組成物からN-グリカンプロフィールを生成した。個々の対象からの各試料について、異なるプロセス(細胞の活性化および培養のために使用される条件において異なる)により2つのCAR T細胞組成物を生成した。両方のプロセスは、FBSを含む培地を用いたインキュベーションを伴った。表面N-グリカンプロフィールを実施例1に記載したように生成した。
異なるプロセスにより製造されたCD4+CAR T細胞組成物からの例示的な表面N-グリカンプロフィールを図13に示す。FBSを起源とするグリカンが、調べたCAR T細胞組成物の全てにおいて検出された(矢印)。FBSを起源とする検出されたN-グリカンは、α-gal(AG)およびNGNAエピトープを含んだ。これらのエピトープは霊長動物には存在せず、非ヒト供給源、例えばFBSに合致する。α-galエピトープは、両方の細胞組成物から測定された合計のN-グリカンプロフィールの1%未満を構成した。この実験では、FBS N-グリカンは、FBS試料から観察されたものと同じ割合でCAR T細胞組成物からのプロフィールにおいて観察され、グリカンの供給源としてのFBSに合致した。N-グリカンプロフィールにおいて検出された残留FBS N-グリカンにおける差異は、異なるプロセスにより生成されたCAR T細胞組成物において観察された。非ヒトグリカンは、無血清培地を用いるプロセスにより生成された細胞組成物においては観察されなかった。
実施例5: T細胞活性に対する表面N-グリカンレベルの効果
CARを発現する細胞を含有する混合CD4+およびCD8+T細胞組成物を健常個体対象から生成し、クライオ凍結した。CAR T細胞組成物を解凍し、すすいだ後、細胞から表面グリカンを除去するためのPNGase F(PNGase F Prime)または細胞から末端シアル酸残基を除去するためのSialidase A 51で30分間処理した。陰性対照として、DPBS単独で細胞をインキュベーションした。
CAR T細胞組成物からの細胞をすすぎ、1ウェル当たり2.5×104個のCAR+T細胞を抗CD3/抗CD28抗体結合ビーズとインキュベーションしたか(ビーズ刺激)、またはCARの標的抗原を内因性に発現する細胞と共培養した(抗原刺激)。14〜18時間後、細胞培養物から培地を回収し、IFN-gamma AlphaLISAキットを用いて細胞外IFN-γを定量化した。
表E7に示すように、CAR T細胞の細胞表面からのN-グリカンまたは末端シアル酸残基の除去は、対照処理細胞と比較して抗CD3/抗CD28抗体結合ビーズによる刺激後にIFN-γの産生の増加をもたらした。表面N-グリカンの除去はまた、標的抗原発現細胞との共培養後のIFN-γの細胞外レベルを増加させた。これらのデータは、T細胞活性への影響における表面N-グリカンの役割に合致する。
(表E7)CAR T細胞組成物の刺激後の細胞外IFN-γレベル
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を例示するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されることは意図されない。記載される組成物および方法に対する様々な改変が本明細書における説明および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施されてよく、本開示の範囲内に含まれることが意図される。