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JP2020105772A - 遮塩性モルタルの補修方法 - Google Patents

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JP2020105772A JP2018244308A JP2018244308A JP2020105772A JP 2020105772 A JP2020105772 A JP 2020105772A JP 2018244308 A JP2018244308 A JP 2018244308A JP 2018244308 A JP2018244308 A JP 2018244308A JP 2020105772 A JP2020105772 A JP 2020105772A
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Abstract

【課題】硬化に伴う初期の長さ変化量が小さく、コンクリート構造体と一体化したときに優れた遮塩性を有するモルタル硬化体を形成することが可能な、遮塩性モルタルの補修方法を提供すること。【解決手段】コンクリート構造体にモルタルを施工する施工工程と、上記モルタルを硬化させることによってモルタル硬化体を形成する形成工程と、を有する遮塩性モルタルの補修方法であって、上記モルタルが、遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物と水との混合物であり、上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物が、アルミナセメント及び半水石膏を含み、上記アルミナセメントが、CAを55質量%〜75質量%、C12A7を5質量%〜8質量%、C4AFを10質量%〜28質量%、及びC2ASを2質量%〜6質量%含み、上記アルミナセメントのブレーン比表面積が、2000cm2/g〜4000cm2/gであり、上記半水石膏のブレーン比表面積が、3000cm2/g〜6000cm2/gであり、上記半水石膏の含有量が、上記アルミナセメント100質量部に対して、10質量部〜24質量部である、遮塩性モルタルの補修方法を提供する。【選択図】なし

Description

本開示は、遮塩性モルタルの補修方法に関する。
コンクリート構造物を長期間に亘って使用するために修復材等による補修が行われている。特に塩分等の浸透に伴う劣化を抑制する観点からは、塩化物イオンを吸着又は固定することが有効であるといわれている。
塩化物イオンの吸着等のためには、例えば、亜硝酸リチウムを含むセメント組成物が有効であることが知られている。しかし、亜硝酸リチウムには毒性があることから周辺環境への配慮が必要であることに加え、高価であるという問題点がある。
特許文献1には、ポルトランドセメントおよび細骨材を主体とし、塩分吸着剤および速硬材を含み、速硬材が無水石膏粉末とカルシウムアルミネート組成物粉末を含み、無水石膏粉末がブレーン比表面積8000cm/g以上であることを特徴とする塩害補修用断面修復材が提案されている。
特開2013−227210号公報
カルシウムアルミネート等を含むアルミナセメントは優れた化学的安定性を有する。しかし、アルミナセメントは、養生による長さ変化に伴い硬化体にひび割れが生じる場合がある。また、高温養生の場合には、硬化体を構成する相の転移に伴って空隙が生じる場合がある。コンクリート構造体の補修に上述のようなアルミナセメントを用いて形成される硬化体を用いた場合、遮塩性に優れる材料であっても、硬化体中の空隙及びひび割れ等によって、コンクリート構造体内部の鋼材等におけるさびの発生を十分に抑制できないことが懸念される。
本開示は、硬化に伴う初期の長さ変化量が小さく、コンクリート構造体と一体化したときに優れた遮塩性を有するモルタル硬化体を形成することが可能な、遮塩性モルタルの補修方法を提供することを目的とする。
本開示の一側面は、コンクリート構造体にモルタルを施工する施工工程と、上記モルタルを硬化させることによってモルタル硬化体を形成する形成工程と、を有する遮塩性モルタルの補修方法であって、上記モルタルが、遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物と水との混合物であり、上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物が、アルミナセメント及び半水石膏を含み、上記アルミナセメントが、CAを55質量%〜75質量%、C12を5質量%〜8質量%、CAFを10質量%〜28質量%、及びCASを2質量%〜6質量%含み、上記アルミナセメントのブレーン比表面積が、2000cm/g〜4000cm/gであり、上記半水石膏のブレーン比表面積が、3000cm/g〜6000cm/gであり、上記半水石膏の含有量が、上記アルミナセメント100質量部に対して、10質量部〜24質量部である、遮塩性モルタルの補修方法を提供する。
上記遮塩性モルタルの補修方法は、特定の遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を用いていることから、硬化に伴う初期の長さ変化量が小さく、コンクリート構造体と一体化したときに優れた遮塩性を有するモルタル硬化体を形成することができる。したがって、補修後において優れた防せい性を有するコンクリート構造体を得ることができる。
上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物が、炭酸カルシウム及びシリカフュームからなる群より選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。モルタル用アルミナセメント組成物が、炭酸カルシウム及びシリカフュームからなる群より選択される少なくとも1種を更に含むことによって、上記モルタル用アルミナセメント組成物を用いて形成されるモルタル硬化体の圧縮強さを向上させることができる。
上記炭酸カルシウムの含有量が、上記アルミナセメント100質量部に対して、15質量部〜35質量部であってよい。炭酸カルシウムの含有量が上記範囲内であることで、上記モルタル用アルミナセメント組成物を用いて形成されるモルタル硬化体の圧縮強さを向上させることができる。
上記シリカフュームの含有量が、上記アルミナセメント100質量部に対して、3質量部〜12質量部であってよい。シリカフュームの含有量が上記範囲内であることで、上記モルタル用アルミナセメント組成物を用いて形成されるモルタル硬化体の圧縮強さを向上させることができる。
本開示によれば、硬化に伴う初期の長さ変化量が小さく、コンクリート構造体と一体化したときに優れた遮塩性を有するモルタル硬化体を形成することが可能な、遮塩性モルタルの補修方法を提供することができる。
図1は、吹き付け工法によるモルタルの施工方法の一例を示す模式図である。 図2は、長さ変化量測定装置の模式上面図である。 図3は、図2のII−II線に沿った模式断面図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
本明細書において「初期」とは、モルタルを打設してから24時間が経過するまでの期間を意味する。
遮塩性モルタルの補修方法の一実施形態は、コンクリート構造体の一部を除去する工程(以下、除去工程ともいう)と、コンクリート構造体にモルタルを施工する工程(以下、施工工程ともいう)と、上記モルタルを硬化させることによってモルタル硬化体を形成する工程(以下、形成工程ともいう)と、を有する。本実施形態に係る遮塩性モルタルの補修方法は、コンクリート構造体の補修方法とみることもできる。
除去工程は、モルタル施工前に予め、コンクリート構造体の劣化部を除去する工程である。コンクリート構造体の劣化部は、例えば、外観観察及び打音法などの調査によって特定することができる。除去工程では、コンクリート構造体の劣化部が完全に除去されるように、劣化部の周囲の健全部を含むように広めに除去してもよい。コンクリート構造体の劣化部の除去の手段は、例えば、電動カッター、ハンマー、ハンドブレーカー、ショットブラスト、及びウォータージェット等を用いることができる。遮塩性モルタルの補修方法が除去工程を有することで、より十分な補修効果を得ることができる。なお、除去工程は、必要に応じて、省略してもよい。
劣化部が除去されたコンクリート構造体は、除去された劣化部に対応する凹部を有する。凹部の広さ及び深さ等によって、コンクリート構造体中の鋼材等が露出する場合がある。このような場合には、鋼材等に防さび剤を適用する工程を更に有してもよい。鋼材等が腐食している場合には、例えば、ワイヤーブラシ及びショットブラスト等の手法によってさびを予め除去してから防さび剤を適用することが好ましい。防さび剤としては、例えば、ポリマーセメント系防さび剤等を用いることができる。ポリマーセメント系防さび剤は、セメント組成物、合成樹脂、防さび成分、及び水などを含む。
施工工程の前に、コンクリート構造体(例えば、コンクリート構造体に形成された凹部等)にプライマー層を設ける工程を更に有してもよい。プライマー層は、例えば、吸水調整剤などを含んでもよい。吸水調整剤としては、例えば、合成樹脂等を水等の溶媒で希釈したものを用いることができる。プライマー層は、例えば、上記吸水調整剤をコンクリート構造体の表面に塗布して溶媒量を低減することによって形成することができる。吸水調整剤の塗布には、例えば、刷毛及びリシンガン等を用いることができる。
施工工程は、コンクリート構造体の所定部分(例えば、劣化部が除去された凹部等)にモルタルを充填する工程である。上記モルタルは、後述する特定のモルタル用アルミナセメント組成物と水との混合物であり、混合後に混練させたものであってもよい。モルタル用アルミナセメント組成物と水との混練は、例えば、ハンドルミキサ及びモルタルミキサ等のミキサを用いて行ってもよい。
コンクリート構造体の所定部分にモルタルを充填する方法は、例えば、左官工法、及び吹き付け工法などであってよい。コンクリート構造体の所定部分の面積が10m未満である場合には、左官工法によってモルタルの施工を行うのが好ましい。また、コンクリート構造体の所定部分の面積が10m以上(例えば、10m〜100m等)の場合には、吹き付け工法によってモルタルの施工を行うのが好ましい。
左官工法では、左官職人が鏝板に適量のモルタルを載せ、金鏝等を用いてコンクリート構造体の所定部分に数回に分けてモルタルを塗り付けることでモルタルを充填する。1回目の施工では、例えば、5mm程度の厚みで塗り付け、2回目以降の施工では、それぞれ10mm以内の厚みで塗り付けを繰り返す。1日間の塗り厚さは、30mm程度とすることが好ましい。
吹き付け工法では、吹き付け工法に用いる装置を用いてコンクリート構造体の所定部分にモルタルを吹き付けてモルタルを充填する。図1は、吹き付け工法による施工方法を示す模式図である。図1に示すように、吹き付け工法では、コンクリート構造体50の所定部分(不図示)に、モルタル30を吹き付けることでモルタル30を充填する。図1に示す吹き付け工法に用いる装置は、ミキサ41、ホッパ付きモルタルポンプ42、エアー源43、耐圧ホース44、及び吹き付けガン45を備える。吹き付け工法に用いる装置としては、ホッパとモルタルポンプとが分離しているものであってよい。
吹き付け工法では、モルタルの吹き付けを数回に分けて行うことが好ましい。1回目の施工では、例えば、5mm程度の厚みとなるようにモルタルを吹き付け、2回目以降の施工では、それぞれ30mm以内の厚さとなるようにモルタルを吹き付けることを繰り返す。最終回の施工は15mm程度の厚みとなるようにモルタルを吹き付ける。その後、コンクリート構造体の所定部分に充填されたモルタルと、コンクリート構造体との接着がより十分なものとなるように、モルタル部分の表面を鏝で平坦になるように仕上げを行ってもよい。
形成工程は、施工工程においてコンクリート構造体の所定部分に充填されたモルタルを硬化させ、モルタル硬化体を形成する工程である。充填されたモルタルは、例えば、乾燥させることによって、モルタル硬化体を形成する。
本実施形態において用いる遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物について説明する。遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物は、アルミナセメント及び半水石膏を含む。上記アルミナセメントは、CAを55質量%〜75質量%、C12を5質量%〜8質量%、CAFを10質量%〜28質量%、及びCASを2質量%〜6質量%含む。上記アルミナセメントのブレーン比表面積が、2000cm/g〜4000cm/gである。上記半水石膏のブレーン比表面積が、3000cm/g〜6000cm/gである。また、上記半水石膏の含有量が、上記アルミナセメント100質量部に対して、10質量部〜24質量部である。
上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物と水との混合物であるモルタルは、例えば、コンクリート構造体等の補修材として用いることができる。コンクリート構造体は、コンクリート部と金属部とを含むものであってもよい。金属部の形状は、例えば、棒状であってよい。金属部は、例えば、鉄及び鋼等の金属を含んでよい。上記モルタルの硬化物(以下、モルタル硬化体ともいう)は、遮塩性にも優れることから、コンクリート構造体内部の鋼材等におけるさびの発生を抑制することができる。
本明細書における「遮塩性」とは、塩化物イオンの見かけの拡散係数が低いことを意味する。塩化物イオンの見かけの拡散係数が低いとは、例えば、0.05cm/年以下であることをいう。遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物とは、当該モルタル用アルミナセメント組成物を用いてモルタル硬化体を形成した際の、当該遮塩性モルタル硬化体の塩化物イオンの見かけの拡散係数が低いことを意味する。
上記アルミナセメントは、カルシウムアルミネートを主成分として含有する。カルシウムアルミネートとしては、例えば、CaO・Al(以下、CAともいう)、12CaO・7Al(以下、C12ともいう)、CaO・2Al2(以下、CAともいう)、4CaO・Al・Fe(以下、CAFともいう)、及び2CaO・Al・SiO(以下、CASともいう)などが挙げられる。本明細書において「主成分」とは、例えば、その成分の含有量が50質量%以上であることをいう。
上述のアルミナセメントの鉱物組成は、アルミナセメントの粉末X線回折データをプロファイルフィッティング法によって解析して測定する。プロファイルフィッティング法としては、リートベルト解析法又はWPF(Whole pattern fitting)解析法を用いる(下記参考文献1を参照)。
参考文献1:粉末X線回折の実際−リートベルト法入門、日本分析化学会、X線分析研究懇談会[編]
アルミナセメントの鉱物組成は、例えば、CAを55質量%〜75質量%、C12を5質量%〜8質量%、CAFを10質量%〜28質量%、及びCASを2質量%〜6質量%含む組成であってもよい。アルミナセメントは、好ましくは、CAを58質量%〜72質量%、C12を5.6質量%〜7.8質量%、CAFを13質量%〜25質量%、及びCASを2.5質量%〜5.5質量%含み、より好ましくは、CAを62質量%〜68質量%、C12を5.4質量%〜7.6質量%、CAFを16質量%〜22質量%、及びCASを3.0質量%〜5.0質量%含む。アルミナセメントの鉱物組成が上記範囲内であることで、形成されるモルタル硬化体の遮塩性をより向上させることができる。また、アルミナセメントの鉱物組成が上記範囲内であることで、上記モルタル用アルミナセメント組成物の硬化に伴う初期の長さ変化量をより小さくすることができる。
アルミナセメントのブレーン比表面積は、例えば、2000cm/g〜4000cm/gであってよい。アルミナセメントのブレーン比表面積は、好ましくは2300cm/g〜3500cm/gであり、より好ましくは2500cm/g〜3300cm/gである。アルミナセメントのブレーン比表面積が上記範囲内であることで、緻密なモルタル硬化体を形成することができる。アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 2521:1995「耐火用アルミナセメントの物理試験方法」に準じて測定される値を意味する。
上記半水石膏は、α型の半水石膏及びβ型の半水石膏からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。
半水石膏のブレーン比表面積は、例えば、3000cm/g〜6000cm/gであってよい。半水石膏のブレーン比表面積は、好ましくは3700cm/g〜5500cm/gであり、より好ましくは4100cm/g〜5350cm/gである。半水石膏のブレーン比表面積が上記範囲内であることで、上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物の硬化に伴う初期の長さ変化量をより小さなものとすることができる。半水石膏のブレーン比表面積は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて測定される値を意味する。
半水石膏の含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、10質量部〜24質量部である。半水石膏の含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは12質量部〜20質量部であり、より好ましくは13質量部〜18質量部である。半水石膏の含有量が上記範囲内であることで、上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物の硬化に伴う初期の長さ変化量をより小さなものとすることができる。
上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物は、アルミナセメント及び半水石膏に加えて、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、混和材、細骨材、減水剤、凝結遅延剤、消泡剤、及び樹脂等が挙げられる。上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物は、好ましくは混和材を含む。
混和材としては、例えば、炭酸カルシウム及びシリカフューム等が挙げられる。上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物は、炭酸カルシウム及びシリカフュームからなる群より選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。
炭酸カルシウムは、市販品を用いることができる。炭酸カルシウムは、例えば、炭酸カルシウムを主成分とする材料を用いて供給してもよい。炭酸カルシウムを主成分とする材料としては、例えば、石灰石を粉砕した石灰石粉末、及び廃コンクリート等を粉砕したコンクリート粉末などが挙げられる。
炭酸カルシウムのブレーン比表面積は、好ましくは2000cm/g〜6000cm/gであり、より好ましくは2400cm/g〜5400cm/gであってよく、更に好ましくは2700cm/g〜5100cm/gである。炭酸カルシウムのブレーン比表面積が上記範囲内であると、形成されるモルタル硬化体の圧縮強さをより向上させることができる。炭酸カルシウムのブレーン比表面積が上記範囲内であると、緻密なモルタル硬化体を形成することができ、遮塩性をより向上させることができる。炭酸カルシウムのブレーン比表面積は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて測定される値を意味する。
炭酸カルシウムの含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは15質量部〜35質量部であり、より好ましくは20質量部〜29質量部であり、更に好ましくは22質量部〜27質量部であり、更により好ましくは24質量部〜25質量部である。炭酸カルシウムの含有量が上記範囲内であると、形成されるモルタル硬化体の圧縮強さをより向上させることができる。炭酸カルシウムの含有量が上記範囲内であると、緻密なモルタル硬化体を形成することができ、遮塩性をより向上させることができる。
シリカフュームは、例えば、JIS A 6207:2016「コンクリート用シリカフューム」で規定されるシリカフューム等であってよい。上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物がシリカフュームを含むことで、緻密なモルタル硬化体を形成することができ、形成されるモルタル硬化体の圧縮強さ、及び遮塩性をより向上させることができる。
シリカフュームのBET比表面積は、好ましくは10m/g〜28m/gであり、より好ましくは14m/g〜26m/gであり、更に好ましくは16m/g〜24m/gである。シリカフュームのBET比表面積が上記範囲内であることで、緻密なモルタル硬化体を形成することができ、形成されるモルタル硬化体の圧縮強さ、及び遮塩性をより向上させることができる。シリカフュームのBET比表面積は、BET多点法で測定される値を意味する。測定には、日本ベル株式会社性のBELSORP−mini II(製品名)を使用することができる。
シリカフュームの含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは3質量部〜12質量部であり、より好ましくは5質量部〜10質量部であり、更に好ましくは6質量部〜9質量部であり、更により好ましくは6質量部〜8質量部である。シリカフュームの含有量が上記範囲内であると緻密なモルタル硬化体を形成することができ、形成されるモルタル硬化体の圧縮強さ、及び遮塩性をより向上させることができる。
細骨材としては、例えば、珪砂、川砂、陸砂、海砂、及び砕砂等の砂類が挙げられる。細骨材の最大粒径は、好ましくは1700μm以下であり、より好ましくは1500μm以下である。細骨材の粒径は、JIS Z 8801−1:2006「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に規定される呼び寸法の異なる数個の篩を用いて測定される値を意味する。
粒径が1200μm以上である細骨材の割合は、細骨材全量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%〜20質量%であり、更に好ましくは0.01質量%〜15質量%以下であり、更により好ましくは0.05質量%〜10質量%であり、更によりまた好ましくは0.1質量%〜3.0質量%である。粒径が1200μm以上の細骨材の割合が上記範囲内であることで、形成されるモルタル硬化体の均一性をより向上させることができ、遮塩性をより向上させることができる。本明細書において「粒径が1200μm以上である細骨材の割合」は、篩目1200μmの篩を用いた際に、篩上に残った粒子の質量%を意味する。
細骨材の含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは90質量部〜200質量部であり、より好ましくは110質量部〜180質量部であり、更に好ましくは120質量部〜170質量部である。細骨材の含有量が上記範囲内であると、形成されるモルタル硬化体の圧縮強さをより向上させることができる。
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、及び高性能AE減水剤等が挙げられる。減水剤が、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤及び高性能AE減水剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する場合、モルタルの流動性を向上させることができる。減水剤の含有量は、発明の効果を損なわない範囲で適宜調整することができる。
凝結遅延剤としては、例えば、オキシカルボン酸類等の有機酸、グルコース、マルトース及びデキストリン等の糖類、重炭酸ナトリウム、並びに、リン酸ナトリウム等が挙げられる。オキシカルボン酸類としては、例えば、オキシカルボン酸及びこれらの塩等が挙げられる。オキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、及びリンゴ酸等の脂肪族オキシ酸、並びに、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸及びトロパ酸等の芳香族オキシ酸等が挙げられる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等が挙げられる。アルカリ金属塩は、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属塩は、例えば、カルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。上述のオキシカルボン酸の塩は、好ましくはナトリウム塩であり、より好ましくは酒石酸ナトリウムである。オキシカルボン酸の塩としては、酒石酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムとを併用することが好ましい。
凝結遅延剤の含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜1.5質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜1.2質量部であり、更に好ましくは0.1質量部〜1.0質量部である。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であることで、硬化を阻害することなく、モルタルを調製した後の作業可能な時間(いわゆる、可使時間)を長くすることができる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、アルコール系、及びポリエーテル系等の合成物質、並びに植物由来の天然物質等が挙げられる。消泡剤の含有量は、発明の効果を損なわない範囲で適宜調整することができる。
樹脂としては、例えば、粉末、エマルジョン又は繊維であってよい。上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物が粉末又はエマルジョンとして樹脂を含む場合、形成されるモルタル硬化体の遮塩性をより向上させることができる。上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物が繊維として樹脂を含む場合、形成されるモルタル硬化体のひび割れの発生をより抑制することができる。なお、エマルジョンとは、樹脂が水又は含水溶媒に乳化分散したものを意味する。
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、0℃以上であってよく、5℃以上であってよく、10℃以上であってよい。樹脂のガラス転移温度が上記範囲内であることによって、湿潤状態にあるコンクリート構造体を対象とする補修を行う場合であっても、モルタルがコンクリート構造体の表面への優れた接着性を発揮し得る。
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定することができる値を意味する。より具体的には、以下のような方法によって、樹脂のガラス転移温度を測定することができる。まず、測定対象となる樹脂を室温から150℃まで10分間で昇温し(1stヒーティング)、150℃で10分間保持して樹脂の熱履歴を消去する。その後、−100℃まで温度を低下(急冷、1stクーリング)、再度150℃まで昇温速度15℃/分で昇温し(2ndヒーティング)、1回目のTg測定を行った。150℃から1stヒーティングで測定したTg未満の温度まで降温速度:15℃/分で降温し(2ndクーリング)、2回目のTg測定を行った。2回目のTg測定で得られたTgの値を、測定対象となる樹脂のガラス転移温度とする。なお、測定対象となる樹脂が、エマルジョンの形態である場合には、エマルジョンをガラス板上に適量滴下し、水又は含水溶媒の含有量を低減し塗膜を形成させ、該塗膜を測定対象とすることができる。
なお、測定対象である樹脂の組成が既知である場合は、下記の計算式(1)にしたがって求められるガラス転移温度の推定値Tを利用してDSCの測定温度域を予め決定してもよい。すなわち、150℃で10分間保持した後に、測定対象である樹脂のガラス転移温度の推定値Tより50℃低い温度まで温度を低下させ、その他は上記と同様にして、測定対象である樹脂のTgを測定してもよい。
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、樹脂を構成する構造単位を与えるモノマー種及び組成比を特定し、当該モノマーの単独重合体のTgを用いて、下記式(1)から推定値Tを算出することができる。推定値Tは華氏度(単位:K)として算出されることから、摂氏度(単位:℃)に換算して使用することができる。下記式(1)は、n個のモノマー種の共重合体である樹脂を想定した式となっている。なお、上記単独重合体のTgは、例えば、Polymer Handbook 第4版等に記載されたデータを使用することができる。例えば、ポリスチレンのTgは100℃であり、ポリ(n−ブチルアクリレート)のTgは−52℃であり、ポリ(n−エチルヘキシルアクリレート)のTgは−70℃である。
1/T=(C/Tg)+(C/Tg)+・・・+(C/Tg) …(1)
上記式(1)において、Tは、測定対象である樹脂のガラス転移温度の推定値(華氏度、単位:K)を示す。上記式(1)において、CはモノマーAの重量分率を示し、CはモノマーBの重量分率を示し、CはモノマーNの重量分率を示す。上記式(1)において、TgはモノマーAの単独重合体のガラス転移温度(華氏度、単位:K)を示し、TgはモノマーBの単独重合体のガラス転移温度(華氏度、単位:K)を示し、TgはモノマーNの単独重合体のガラス転移温度(華氏度、単位:K)を示す。なお、(C+C+・・・+C)=1とする。
粉末(以下、樹脂粉末ともいう)としては、例えば、スチレン−アクリル共重合体、アクリル重合体、酢酸ビニル−ベオバ−アクリル共重合体及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。樹脂粉末の含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは1質量部〜10質量部であり、より好ましくは2質量部〜8質量部であり、更に好ましくは4質量部〜6質量部である。樹脂粉末の含有量が上記範囲内であることで、形成されるモルタル硬化体の遮塩性をより向上させることができる。
樹脂エマルジョンを構成する樹脂は、単独重合体であってよく、共重合体であってもよい。上記樹脂エマルジョンを構成する樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニル、エチレン及びブタジエン等のオレフィン、並びにスチレン等の重合性成分を含む重合性組成物の重合体であってよい。重合性成分は、得られるモルタル硬化体の遮塩性をより向上させる観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、及びスチレンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
樹脂エマルジョンの含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、固形分換算で、好ましくは1質量部〜10質量部であり、より好ましくは2質量部〜7質量部であり、さらに好ましくは2.5質量部〜6質量部であり、さらに好ましくは3質量部〜5質量部である。樹脂エマルジョンの含有量を上記範囲内とすることで、コンクリート構造体との接着性及び遮塩性をより向上させることができる。なお、樹脂エマルジョンの固形分とは、樹脂エマルジョン中の水又は含水溶媒を蒸発させて残った固形分のことを意味する。
繊維(以下、樹脂繊維ともいう)は、樹脂からなる繊維であってよい。樹脂繊維を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ビニロン、及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。
樹脂繊維の繊維長は、好ましくは0.5mm〜15.0mmであり、より好ましくは1.0mm〜12.0mmであり、さらに好ましくは2.0mm〜8.0mmであり、さらに好ましくは2.5mm〜7.0mmである。樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることで、アルミナセメント等の他の成分との混合時の取扱性を向上させることができ、得られるモルタル硬化体の遮塩性及び耐久性を低下させることを抑制することができる。また、樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることで、モルタル硬化体のひび割れの発生をより抑制することができる。なお、本明細書における樹脂繊維の繊維長は、光学顕微鏡観察によって測定される値を意味する。
樹脂繊維の含有量は、上記アルミナセメント100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜3質量部であり、より好ましくは0.03質量部〜1質量部であり、更に好ましくは0.04質量部〜0.3質量部であり、更により好ましくは0.05質量部〜0.15質量部である。樹脂繊維の含有量を上記範囲内とすることで、得られるモルタル硬化体の遮塩性及び耐久性を低下させることを抑制しつつ、モルタル硬化体ひび割れの発生をより抑制することができる。
上述のモルタルは、上記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物と水とを配合し混練することによって形成することができる。
遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物に対して加える水の配合量は、遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物100質量部に対して、好ましくは4質量部〜25質量部であり、より好ましくは5質量部〜20質量部であり、更に好ましくは8質量部〜16質量部であり、更により好ましくは10質量部〜14質量部である。なお、樹脂エマルジョンを含有する場合には、樹脂エマルジョン中の水分量が上記水の配合量に含まれていることが好ましい。
上述のモルタルは、上述の遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を用いるものであることから、硬化に伴う初期の長さ変化量が小さい。モルタルの硬化に伴う初期の長さ変化量は、例えば、−200μm/m以上、−180μm/m以上、−150μm/m以上、−120μm/m以上、又は0μm/m以上とすることができる。モルタルの硬化に伴う初期の長さ変化量は、例えば、1000μm/m以下、800μm/m以下、500μm/m以下、300μm/m以下、又は200μm/m以下とすることができる。マイナス範囲の数値における「以上」とは、ゼロに近づくことを意味する。ここで、モルタル硬化体の長さ変化量の値がマイナスの場合、モルタル硬化体が収縮したことを意味する。なお、本明細書における「長さ変化量」は、後述する実施例に記載の方法によって決定される値を意味する。
上述のモルタル硬化体は、上述の遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を用いて形成されるものであることから、遮塩性に優れる。モルタル硬化体の塩化物イオンの見かけの拡散係数は、例えば、0.05cm/年以下、0.04cm/年以下、0.03cm/年以下、0.02cm/年以下、又は0.01cm/年以下とすることができる。
モルタル硬化体の塩化物イオンの見かけの拡散係数は、JSCE−G571−2013「電気泳動によるコンクリート中の塩化物イオンの実効拡散係数試験方法(案)」に記載されている試験方法に準拠し、「付随書(参考)電気泳動試験による実効拡散係数を用いた見かけの拡散係数計算方法」を用いて求められる値を意味する。
上述のモルタル硬化体は、上述の遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を用いて形成されるものであることから、圧縮強さに優れる。養生温度:20℃、材齢:28日におけるモルタル硬化体の圧縮強さは、例えば、40N/mm以上、45N/mm以上、又は50N/mm以上とすることができる。養生温度:50℃、材齢:28日におけるモルタル硬化体の圧縮強さは、例えば、40N/mm以上、50N/mm以上、又は60N/mm以上とすることができる。
モルタル硬化体の圧縮強さは、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に記載の試験方法に準拠して測定される値を意味する。
上述のモルタル硬化体は、上述の遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を用いて形成されるものであることから、コンクリート構造体内部の鋼材等におけるさびの発生を抑制することができる。上述のモルタル硬化体を用いてコンクリート構造体の補修を行った場合の発せい率は、例えば、60%以下、50%以下、45%以下、又は40以下とすることができる。
本明細書における「発せい率」は、日本建築学会編「鉄筋コンクリート補修用防せい材の品質基準(案)」の「3.6防せい試験方法」に準拠して成型した供試体(モルタル硬化体に相当)を、温度:20℃及び相対湿度:65%RHの条件下で2週間気中養生した後の棒鋼の発せい面積を棒鋼の有効面積で除した値を意味する。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
以下、実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物の調製>
下記の組成を有する遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を調製した。遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物は、CA:64質量%、C12:7質量%、CAF:18質量%、及びCAS:4質量%である鉱物組成を有するアルミナセメント(ブレーン比表面積:2700cm/g)が100質量部、半水石膏(ブレーン比表面積:4380cm/g)が20.0質量部、炭酸カルシウム(ブレーン比表面積:3000cm/g)が25.6質量部、シリカフューム(BET比表面積:19m/g)が7.7質量部、珪砂(粒子径1700μm以上の粒子を含まず、細骨材全体に対し、粒子径1200μm以上の粒子の質量割合が1.48質量%、粒子径600μm以上の粒子の質量割合が49.13質量%、粒子径300μm以上の粒子の質量割合が44.04質量%、粒子径150μm以上の粒子の質量割合が4.06質量%、粒子径75μm以上の粒子の質量割合が1.26質量%)が147.6質量部、グルコン酸Na(グルコン酸ナトリウム)が0.09質量部、酒石酸Na(酒石酸ナトリウム)が0.37質量部、重炭酸Na(重炭酸ナトリウム)が0.37質量部、及び樹脂(スチレン−アクリル共重合体、ガラス転移温度:21℃)が5.85質量部となるように調整した。減水剤は流動性を改善するために適宜添加した。なお、樹脂は粉末を用いた。
<モルタルの調製>
容器に、上述のモルタル用アルミナセメント組成物2.0kgと、所定量の水を測り取り、温度:20℃、及び相対湿度:65%RHの条件下で、ケミスターラーを用いて2分間混合することで、モルタルを調製した。なお、モルタルを調製するための水の配合量は、水の質量をWとし、モルタル用アルミナセメント組成物の総質量をPとしたときの、モルタル用アルミナセメント組成物の総質量Pに対する水の質量Wの比(W/P)が0.128となるように調整した。
[アルミナセメントの鉱物組成]
アルミナセメントの鉱物組成を、粉末X線回折を利用したWPF解析法を用いて測定した。粉末X線回折測定は、粉末X線回折装置(株式会社リガク製、製品名:RINT−2500)を用い、管電圧:35kV、管電流:110mA、測定範囲:2θ=10〜60°、ステップ幅:0.02°、計数時間:2秒間、発散スリット:1°、及び受光スリット:0.15mmの条件で行った。
WPF解析法は、粉末X線回折パターン総合解析ソフト(Materials Data Inc.製、製品名:JADE6.0)を使用した。表1に示す鉱物組成について、参考文献を初期値とし、各結晶相を精密化してフィッティングを行い、各鉱物の合計量を100とした鉱物組成を測定した。得られた鉱物組成を表2に示す。なお、CaOをC、AlをA、SiOをS、FeをF、SOをSと表す。
Figure 2020105772
参考文献2:Ito,S.,Suzuki,K.,Inagaki,M.,Naka,S.Mater.Res.Bull.,vоl.15、p.925(1980)
参考文献3:Natl.Bur.Stand.(U.S.),Circ.539,vоl.9、p.20(1960)
参考文献4:Colville,A.A.,Geller,S.Acta Crystallogr.,Sec. B,vоl.27、p.2311(1971)
参考文献5:Louisnathan,S.J.Can.Mineral.,vоl.10、p.822(1971)
Figure 2020105772
[モルタルの硬化に伴う初期の長さ変化量の評価]
上述のように調製されたモルタルについて、モルタルの硬化に伴う初期の長さ変化量を評価した。より具体的には、図2に示すような長さ変化量測定装置を用いて、装置内に打設されたモルタル硬化体の初期の長さの変化量を測定することによって評価を行った。
図2は、長さ変化量測定装置の模式図である。図2は、長さ変化量測定装置10の模式上面図である。図3は、図2におけるII−II線に沿った模式断面図である。長さ変化量測定装置10はモルタルが打設される収容部20を形成する型枠11を有する。型枠11の長手方向の一端の側壁11aは、側壁11aの収容部20側の面(内側の面)と、側壁11aの収容部20側とは反対側の面(外側の面)とにそれぞれ緩衝材14を有する。長さ変化量測定装置10は、上記側壁11a、及びその両面に設けられた2枚の緩衝材14を貫通するように配置されたSUS製の棒13aを有する。当該棒13aは、型枠11の長手方向(図2において、x又はyで示す方向)に沿って移動することができる。棒13aの両端部には、SUS製の円盤12a及び円盤12bが設けられている。なお、SUSとは、JISに規定されるステンレス鋼材料を意味する。
長さ変化量測定装置10は、型枠11の側壁11aに相対する側壁11bに、SUS製の棒13bを更に有する。当該棒13bの側壁11b側とは反対側の端部に、SUS製の円盤12cが設けられている。円盤12cは、円盤12bと対向するように設けられている。長さ変化量の測定を実施する前の円盤12bと円盤12cとの間の距離dは、210mmである。図3に示すように、型枠11の内面にはフッ素樹脂層16が設けられている。ここで、型枠11の内壁の高さ(図3においてhで示す。)は30mmであり、型枠11の内壁底面の短手方向の幅(図3においてwで示す。)は40mmである。
型枠11内に打設されたモルタルが硬化に伴って収縮を起こす場合には、円盤12a及び円盤12bの位置が測定前の位置からxの方向へ変位する。また、型枠11内に打設されたモルタルが硬化に伴って膨張する場合には、円盤12a及び円盤12bの位置が測定前の位置から矢印y方向へ変位する。型枠11の外部には、円盤12aのx−y方向の変位を測定可能な変位センサ15が配置されている。変位センサ15は、レーザーを用いて変位を検出する。
上述のような長さ変化量測定装置10を用いて、水と混合した直後の上記モルタルを、型枠11の収容部20に型枠の高さまで打設し、温度:20℃及び相対湿度:65%RHの条件のもと大気中で養生した。打設直後から24時間後まで、打設されたモルタル(モルタルの半硬化物)の長さの変化(円盤12aのx−y方向の変位a)を1分間毎に測定した。
打設されたモルタル(モルタルの半硬化物)の硬化に伴う初期の長さ変化量は、上述のような測定の結果を用いて、下記式(2)に基づき算出した。結果を表3に示す。
長さ変化量(μm/m)=(a/d)×1000 …(2)
上記式(2)において、aは円盤12aのx−y方向の変位a(μm)を示し、dは測定前の円盤12bと円盤12cとの間の距離d(m)を示す。長さ変化量が負の値の場合はモルタルが硬化に伴って収縮していることを意味し、長さ変化量が正の値の場合はモルタルが硬化に伴って膨張していることを意味する。
<モルタル硬化体の評価>
上述のように調製されたモルタルを用いて形成されるモルタル硬化体について、遮塩性、圧縮強さ、及び腐食量の評価を行った。
[遮塩性]
上記モルタルを用いて形成されるモルタル硬化体について、日本土木学会編「コンクリート標準示方書 JSCE−G 571−2013」における「電気泳動によるコンクリート中の塩化物イオンの実効拡散係数試験方法(案)」に準拠して塩化物イオンの電気泳動試験を行い、「付随書(参考)電気泳動試験による実効拡散係数を用いた見掛けの拡散係数計算方法」に基づいて上記モルタル内における塩化物イオンの見かけの拡散係数を決定した。結果を表3に示す。
[圧縮強さ]
上記モルタルを用いて形成されるモルタル硬化体について、日本建築学会編「鉄筋コンクリート補修用防せい材の品質基準(案)」の「3.6防せい試験方法」に準拠して成型した供試体(モルタル硬化体に相当)を、温度:20℃及び相対湿度:65%RHの条件下で2週間気中養生した後の棒鋼の発せい面積を棒鋼の有効面積で除して発せい率を求めた。結果を表3に示す。
<モルタルの施工>
上記モルタルを用いて屋外で、コンクリート構造体への吹き付け工法によるモルタルの施工を行った。吹き付け工法は、図1に示されるような装置を用いて行った。また、1回毎の吹き付けは施工後の厚みが10mmとなるように調整した。モルタル施工後、モルタルを硬化させ、モルタル硬化体の外観を評価した。モルタル硬化体には、ひび割れもなく、コンクリート構造体との一体性も良好であることが確認された。
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
表3に示すとおりに各成分の仕込み量(質量部)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を調製した。なお、モルタルを調製する際の流動性を確保するために、減水剤の量は適宜調整した。
調製された遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物を用いて、実施例1と同様にモルタルを調製した。その後、上記モルタルについて、実施例1と同様にして初期の長さ変化量の評価を行った。また、上記モルタルを用いて形成されるモルタル硬化体について、実施例1と同様にして、遮塩性、圧縮強さ、及び腐食量の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例2〜4において調製したモルタルについてモルタルの施工を行い、実施例1と同様に評価した。いずれのモルタルを用いた場合も、モルタル硬化体には、ひび割れもなく、コンクリート構造体との一体性も良好であることが確認された。
Figure 2020105772
本開示によれば、硬化に伴う初期の長さ変化量が小さく、コンクリート構造体と一体化したときに優れた遮塩性を有するモルタル硬化体を形成することが可能な、遮塩性モルタルの補修方法を提供することができる。
10…長さ変化量測定装置、11…型枠、12a,12b,12c…円盤、13a,13b…棒、14…緩衝材、15…変位センサ、16…フッ素樹脂層、20…収容部、30…モルタル、41…ミキサ、42…ホッパ付きモルタルポンプ、43…エアー源、44…耐圧ホース、45…吹き付けガン、50…コンクリート構造体。

Claims (4)

  1. コンクリート構造体にモルタルを施工する工程と、
    前記モルタルを硬化させることによってモルタル硬化体を形成する工程と、
    を有する遮塩性モルタルの補修方法であって、
    前記モルタルが、遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物と水との混合物であり、
    前記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物が、アルミナセメント及び半水石膏を含み、
    前記アルミナセメントが、CAを55質量%〜75質量%、C12を5質量%〜8質量%、CAFを10質量%〜28質量%、及びCASを2質量%〜6質量%含み、
    前記アルミナセメントのブレーン比表面積が、2000cm/g〜4000cm/gであり、
    前記半水石膏のブレーン比表面積が、3000cm/g〜6000cm/gであり、
    前記半水石膏の含有量が、前記アルミナセメント100質量部に対して、10質量部〜24質量部である、遮塩性モルタルの補修方法。
  2. 前記遮塩性モルタル用アルミナセメント組成物が、炭酸カルシウム及びシリカフュームからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項1に記載の遮塩性モルタルの補修方法。
  3. 前記炭酸カルシウムの含有量が、前記アルミナセメント100質量部に対して、15質量部〜35質量部である、請求項2に記載の遮塩性モルタルの補修方法。
  4. 前記シリカフュームの含有量が、前記アルミナセメント100質量部に対して、3質量部〜12質量部である、請求項2又は3に記載の遮塩性モルタルの補修方法。
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