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JP2020186172A - 抗TGF−β1抗体 - Google Patents

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JP2020186172A JP2017119230A JP2017119230A JP2020186172A JP 2020186172 A JP2020186172 A JP 2020186172A JP 2017119230 A JP2017119230 A JP 2017119230A JP 2017119230 A JP2017119230 A JP 2017119230A JP 2020186172 A JP2020186172 A JP 2020186172A
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Abstract

【課題】活性型TGF-β1を特異的に認識するが、潜在型TGF-β1を認識しないモノクローナル抗体、また潜在型TGF-β1もしくはLAPを特異的に認識するが、活性型TGF-β1を認識しないモノクローナル抗体の提供。【解決手段】LAPと成熟TGF-β1領域内に、進化上保存されたユニークなアミノ酸配列をin silicoで予測し、重鎖可変領域に含まれるCDR、及び軽鎖可変領域に含まれるCDRに特定の配列を導入し、いかなるオフターゲットタンパク質とも交差反応しないモノクローナル抗体を作成した。【選択図】なし

Description

本発明は、活性型トランスフォーミング増殖因子−β1(TGF-β1)に特異的に結合するが潜在型TGF-β1やオフターゲットタンパク質には結合しないモノクローナル抗体と、latency-associated peptide(LAP)及び潜在型TGF-β1に特異的に結合するが、活性型TGF-β1及びオフターゲットタンパク質には結合しないモノクローナル抗体に関する。
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF-β)は、5種のアイソフォーム(TGF-β1〜β5)及び白血球細胞系譜により産生される他の多くのシグナル伝達タンパク質を含むトランスフォーミング増殖因子スパーファミリーに属する多機能性のサイトカインである。活性化したTGF-βは、他の因子とともに、1型及び2型の受容体サブユニットからなるTGF-β受容体に結合するセリン/スレオニンキナーゼ複合体を形成する。TGF-βが結合すると、2型受容体キナーゼが1型受容体キナーゼをリン酸化して活性化し、それによってシグナル伝達カスケードが活性化され、分化、遊走、増殖、免疫細胞の活性化などに機能する種々の標的遺伝子の転写を含む、下流因子の活性化が引き起こされる。そのため、がん、自己免疫疾患、感染症などの分野で高度に研究されているサイトカインの1つである。
TGF-βアイソフォームのペプチド構造は非常に類似している(70〜80%の相同性)。それらはいずれも大きな前駆体タンパク質としてコードされており、TGF-β1は392アミノ酸、TGF-β2及びTGF-β3は412アミノ酸からなる。それらは、N末端の20〜30アミノ酸からなるシグナルペプチド、LAPと呼ばれるプロ領域、並びにプロテアーゼ切断によりプロ領域から遊離し成熟TGF-β分子となる112〜114アミノ酸からなるC末端領域を有する。TGF-βホモダイマーはLAPと相互作用してSmall Latent Complex(SLC)と呼ばれる複合体を形成する。この複合体は潜在型TGF-β結合タンパク質(LTBP)と呼ばれる別のタンパク質が結合するまで細胞内にとどまり、Large Latent Complex(LLC)と呼ばれるより大きな複合体を形成し、細胞外マトリクス(ECM)に分泌する。たいていの場合、LLCが分泌する前に、TGF-β前駆体はプロペプチドから切断されるが、非共有結合によりプロペプチドと結合したままである。分泌後、LLCは、LTBPとLAPの両方を含む不活性な複合体としてECMにとどまる。TGF-βとLTBPとの結合はジスルフィド結合であり、それにより受容体への結合を阻止し不活性な状態にとどめる。
ところで、TGF-β1は、肺線維症などの線維症やがんを含む種々の疾患の病理に関与していることが知られている。TGF-β1が関与する疾患に対する効能を評価するために、活性型TGF-β1分子を特異い的に認識する抗TGF-β1抗体が強く望まれている。しかしながら、既知の抗TGF-β1抗体は、ほぼすべて活性型TGF-β1だけでなく、潜在型TGF-β1及び/又はやTGF-β2、TGF-β3等のオフターゲットタンパク質をも認識してしまう。
本発明の目的は、活性型TGF-β1に特異的に結合するが潜在型TGF-β1やオフターゲットタンパク質には結合しない新規モノクローナル抗体を提供することである。本発明の目的は、LAP及び潜在型TGF-β1に特異的に結合するが、活性型TGF-β1及びオフターゲットタンパク質には結合しない新規モノクローナル抗体を提供することである。
(発明の要約)
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ね、LAPと成熟TGF-β1領域内に、進化上保存されたユニークなアミノ酸配列をin silicoで予測した。ヒトTGF-β1由来の該アミノ酸配列を有するペプチドでマウスを免疫し、高力価を有するマウスから得られた抗体産生細胞をミエローマと融合してハイブリドーマを作製し、ELISA及びウェスタンブロットを用いたポジティブ選択と、オフターゲットタンパク質との非交差反応性を確認するためのネガティブ選択とにより、活性型TGF-β1又は潜在型TGF-β1/LAPに特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマクローンを選択した。
本発明者らは、さらに研究を重ねた結果、活性型TGF-β1(「2H4」、「4D10」、「6F12」及び「7F10」と命名した)又は潜在型TGF-β1/LAP(「2F10」と命名した)に対してきわめて高い特異性を有するモノクローナル抗体クローンを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 活性型TGF-β1に結合するが、潜在型TGF-β1には結合しない第1のモノクローナル抗体であって、
(a) 配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(c) 配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(d) 配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(e) 配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むCDR、及び
(f) 配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR
を含む、抗体。
[2] 重鎖可変領域に含まれるCDRが上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDRが上記(d)、(e)及び(f)である、[1]の抗体。
[3] 重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(d)、(e)及び(f)である、[1]の抗体。
[4] (1) 配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
(2) 配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、[1]の抗体。
[5] [1]〜[4]のいずれかの抗体と競合的に活性型TGF-β1に結合し、かつ潜在型TGF-β1には結合しない、モノクローナル抗体。
[6] [1] 潜在型TGF-β1又はLAPに結合するが、活性型TGF-β1には結合しない第1のモノクローナル抗体であって、
(a) 配列番号9で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(b) 配列番号10で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(c) 配列番号11で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(d) 配列番号12で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
(e) 配列番号13で表されるアミノ酸配列を含むCDR、及び
(f) 配列番号14で表されるアミノ酸配列を含むCDR
を含む、抗体。
[7] 重鎖可変領域に含まれるCDRが上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDRが上記(d)、(e)及び(f)である、[6]の抗体。
[8] 重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(d)、(e)及び(f)である、[6]の抗体。
[9] (1) 配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
(2) 配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、[6]の抗体。
[10] [6]〜[9]のいずれかの抗体と競合的に潜在型TGF-β1又はLAPに結合し、かつ活性型TGF-β1には結合しない、モノクローナル抗体。
本発明の抗TGF-β1抗体は活性型TGF-β1又は潜在型TGF-β1/LAPに対して高度に特異的であるので、組織標本や体液等の生物学的サンプル中のその標的分子を選択的に検出することができる。
図1は、4つの抗活性型TGF-β1抗体を用いたHCC組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図2は、4つの抗活性型TGF-β1抗体を用いた肺腺がん組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図3は、4つの抗活性型TGF-β1抗体を用いた肺腺がん組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図4は、4つの抗活性型TGF-β1抗体を用いた乳がん組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図5は、4つの抗活性型TGF-β1抗体を用いた卵巣がん組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図6は、4つの抗活性型TGF-β1抗体を用いた前立腺がん組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図7は、4つの抗活性型TGF-β1抗体を用いたHCC組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図8は、抗潜在型TGF-β1/LAP抗体2F10を用いた4種のがん組織の免疫組織化学(IHC)染色を示す。 図9は、抗潜在型TGF-β1/LAP抗体2F10を用いたTGF-β1-Tgマウス及び野生型マウスの肺の免疫組織化学(IHC)染色を示す。
[I] 定義
本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC-IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、及び当該分野における慣用記号に従う。
本明細書において「遺伝子」又は「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)及び該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、並びにこれらの断片のいずれもが含まれる。
本明細書において「TGF-β1遺伝子」とは、そのcDNA配列がGenBankにaccession No. NM_000660として登録されているヒトTGF-β1遺伝子(DNA)、その天然の変異体又は多型バリアントを意味する。そのような変異体又は多型バリアントとしては、例えば、NCBIから入手可能なSNPデータベースに登録されたものが挙げられる。
本明細書において「TGF-β1タンパク質」又は単に「TGF-β1」といった用語は、そのアミノ酸配列がGenBankにaccession No. NP_000651として登録されているヒトTGF-β1タンパク質(該配列中、1-29位がシグナルペプチド、30-278位がLAP及び279-390位が成熟TGF-β1である)、又は上記した天然の変異体又は多型バリアントDNAによりコードされるタンパク質を意味する。
本明細書において「潜在型TGF-β1」とは、成熟TGF-β1のホモダイマー及び非共有結合によりそれと結合したLAPのホモダイマー、任意でさらにLTBPからなる不活性型のTGF-β1を意味する。「活性型TGF-β1」とは潜在型TGF-β1から遊離した成熟TGF-β1のホモダイマーを意味する。
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、又はFabフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
本明細書においてエピトープとは、抗体が結合する抗原の領域である。ある種の実施形態では、免疫グロブリンに特異的に結合し得る抗原の任意の部位を含む。抗原決定基は、分子の化学的に活性な表面群、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基又はスルホニル基を含み、ある種の実施形態では、特異的な三次元構造特徴及び/又は特異的な荷電特徴を有してよい。ある種の実施形態では、抗体は、タンパク質及び/又は巨大分子の複雑な混合物において、この抗体が標的抗原を優先的に認識する場合、抗原に特異的に結合するということができる。
抗体の構造
抗体分子の基本構造は、各クラス共通で、分子量5-7万の重鎖と2-3万の軽鎖から構成される(免疫学イラストレイテッド (I. Roitt, J. Brostoff, D. Male編))。重鎖は、通常約440個のアミノ酸を含むポリペプチド鎖からなり、クラスごとに特徴的な構造をもち、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEに対応してγ、μ、α、δ、ε鎖とよばれる。さらにIgGには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4が存在し、それぞれγ1、γ2、γ3、γ4とよばれている。軽鎖は、通常約220個のアミノ酸を含むポリペプチド鎖からなり、L型とK型の2種が知られており、それぞれλ、κ鎖とよばれる。抗体分子の基本構造のペプチド構成は、それぞれ相同な2本の重鎖及び2本の軽鎖が、ジスルフィド結合(S-S結合)及び非共有結合によって結合され、分子量15-19万である。2種の軽鎖は、どの重鎖とも対をなすことができる。個々の抗体分子は、常に同一の軽鎖2本と同一の重鎖2本からできている。
鎖内S-S結合は、重鎖に4つ(μ、ε鎖には5つ)、軽鎖には2つあって、アミノ酸100-110残基ごとに1つのループを形成し、この立体構造は各ループ間で類似していて、構造単位あるいはドメインとよばれる。重鎖、軽鎖ともにN末端に位置するドメインは、同種動物の同一クラス(サブクラス)からの標品であっても、そのアミノ酸配列が一定せず、可変領域(V領域)とよばれている(重鎖可変領域ドメインはVH、軽鎖可変領域ドメインはVLと表される)。これよりC末端側のアミノ酸配列は、各クラスあるいはサブクラスごとにほぼ一定で定常領域(C領域)とよばれている(各ドメインは、それぞれ、CH1、CH2、CH3あるいはCLと表される)。
抗体の抗原決定部位はVH及びVLによって構成され、結合の特異性はこの部位のアミノ酸配列によっている。一方、補体や各種細胞との結合といった生物学的活性は各クラスIgのC領域の構造の差を反映している。軽鎖と重鎖の可変領域の可変性は、どちらの鎖にも存在する3つの小さな超可変領域にほぼ限られることが分かっており、これらの領域を相補性決定領域(CDR)と呼んでいる。可変領域のうち、CDRを除く部分はフレームワーク領域(FR)とよばれ、比較的一定である。フレームワーク領域は、βシートコンフォメーションを採用しており、CDRはβシート構造を接続するループを形成することができる。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によりそれらの三次元構造が保持され、他の鎖からのCDRと共に抗原結合部位を形成する。
CDRを同定するためのいくつかのナンバリングシステムが一般に使用されている。Kabat定義は、配列変化性に基づき、Chothia定義は、構造ループ領域の位置に基づく。AbM定義は、Kabat及びChothiaアプローチの間の折衷である。軽鎖・重鎖の可変領域のCDRは、Kabat、Chothia又はAbMアルゴリズムにしたがって、境界を示される (Martin et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 9268-9272; Martin et al. (1991) Methods Enzymol. 203: 121-153; Pedersen et al. (1992) Immunomethods 1: 126; 及びRees et al. (1996) In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, pp. 141-172)。
本発明の抗体のCDRは、該抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域(VH及びVL)のヌクレオチド配列を、公共のCDR決定ソフトウェア(http://www.abysis.org及びhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/igblast.cgi)を用いて解析することにより同定されるCDRであると定義づけられる。
2H4抗体の場合、重鎖可変領域のCDRは、配列番号7で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号26〜32(CDR1-H)、52〜57(CDR2-H)及び99〜109(CDR3-H)であり、軽鎖可変領域のCDRは、配列番号8で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号24〜40(CDR1-L)、52〜57(CDR2-L)及び99〜102(CDR3-L)である。2F10モノクローナル抗体の場合、重鎖可変領域のCDRは、配列番号15で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号26〜32(CDR1-H)、52〜57(CDR2-H)及び99〜103(CDR3-H)であり、軽鎖可変領域のCDRは、配列番号16で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号24〜34(CDR1-L)、50〜56(CDR2-L)及び89〜97(CDR3-L)である。
可変領域のうち、CDRを除く部分はフレームワーク領域(FR)とよばれ、比較的一定である。フレームワーク領域は、βシートコンフォメーションを採用しており、CDRはβシート構造を接続するループを形成することができる。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によりそれらの三次元構造が保持され、他の鎖からのCDRと共に抗原結合部位を形成する。
抗体の結合アッセイ
抗体結合性の確認は任意の周知のアッセイ方法、例えば、直接及び間接サンドイッチアッセイ、フローサイトメトリー及び免疫沈降アッセイ等で行うことができる(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, (CRC Press, Inc. 1987) pp. 147-158)。本発明において、抗TGF-β1抗体の活性型TGF-β1又は潜在型TGF-β1/LAPポリペプチドとの結合は、例えば、以下の方法に従って測定することができる。
典型的な方法として、ヒトTGF-β1/LAPポリペプチド(抗原)を固相に吸着させ、抗原抗体反応や酵素反応に関与しないタンパク質(スキムミルク、アルブミン等)でブロッキングした後、抗TGF-β1モノクローナル抗体(被検抗体)を固相に接触させてインキュベートし、B/F分離により未反応の抗体を除いた後、被検抗体と特異的に反応する標識化二次抗体(抗マウスIgG等)を作用させて、固相上の標識量を測定する方法が挙げられる。固相としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、プラスチック、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂(チューブ、マイクロプレート等)、あるいはガラス(ビーズ、チューブ等)などを用いることができる。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
競合アッセイ
本発明の抗TGF-β1抗体の結合定数(Ka)の測定や、既に得られた本発明の抗体と競合的に活性型又は潜在型TGF-β1に結合する本発明の他の抗体の同定には、競合ELISAなどの競合アッセイを用いることができる。競合アッセイは、上記の抗原固定化固相を用いる結合アッセイにおいて、固相と被検抗体との反応系に遊離の抗原もしくは既知抗体を共存させることにより実施される。例えば、既知濃度の被検抗体液、並びに種々の濃度の抗原を該被検抗体液に加えた混合液を抗原固定化固相に接触させてインキュベートし、固相上の標識量をそれぞれ測定する。各遊離抗原濃度における測定値からスキャッチャード解析を行い、グラフの傾きを結合定数として算出することができる。一方、抗原固定化固相に対して、標識した既知抗体(本発明の抗体)と、種々の濃度の被検抗体とを反応させ、固相上の標識量を濃度依存的に減少させた被検抗体を選択することにより、本発明の抗体と競合的に活性型又は潜在型TGF-β1に結合する抗体を同定することができる。
[II] 本発明の抗体
本発明は、活性型TGF-β1に結合するが、潜在型TGF-β1には結合しないモノクローナル抗体(以下、「本発明の抗活性型TGF-β1抗体」又は単に「本発明の抗体(1)」ともいう)を提供する。本発明はまた、潜在型TGF-β1もしくはLAPに結合するが、活性型TGF-β1には結合しないモノクローナル抗体(以下、「本発明の抗潜在型TGF-β1/LAP抗体」又は単に「本発明の抗体(2)」ともいう)を提供する。本発明の抗体(1)と本発明の抗体(2)とを包括して「本発明の抗TGF-β1抗体」又は単に「本発明の抗体」という。本発明の抗体はさらに、該抗体により認識されるエピトープから予測されるいかなるオフターゲットタンパク質をも認識しないことにより特徴づけられる。
好ましい一実施態様において、本発明の抗体(1)は、モノクローナル抗体(MAb)クローン2H4又は該モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)と同じCDRを有する抗体である。
別の好ましい実施態様において、本発明の抗体(1)は、Mab 2H4と競合的に活性型TGF-β1に結合し、かつ潜在型TGF-β1には結合しない抗体である。
好ましい一実施態様において、本発明の抗体(2)は、モノクローナル抗体(MAb)クローン2F10又は該モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)と同じCDRを有する抗体である。
別の好ましい実施態様において、本発明の抗体(2)は、Mab 2F10と競合的に潜在型TGF-β1もしくはLAPに結合し、かつ活性型TGF-β1には結合しない抗体である。
好ましい一実施態様において、本発明の抗体(1)は、
(1) (a) Gly Tyr ThrPhe Ser Asn Tyrで表されるアミノ酸配列(配列番号1)を含むCDR、
(b) Tyr Pro Gly AsnSer Aspで表されるアミノ酸配列(配列番号2)を含むCDR、
(c) Tyr Ser Asn Tyr Glu Ala Gly Ala Met Asp Tyrで表されるアミノ酸配列(配列番号3)を含むCDR、
(d) Lys Ser Ser GlnSer Leu Leu Asn Ser Arg Thr ArgLys Asn Tyr Leu Alaで表されるアミノ酸配列(配列番号4)を含むCDR、
(e) Trp Ala Ser The ArgGlu Serで表されるアミノ酸配列(配列番号5)を含むCDR、及び
(f) Gln Gln Ser Tyr His Leu Pro Thrで表されるアミノ酸配列(配列番号6)を含むCDR
を含む抗体であるか、あるいは
(2) 上記(a)〜(f)のCDRを含むが、配列番号1〜6から選択される1以上(例、1、2、3、4、5又は6)のアミノ酸配列は、各配列において1又は2アミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加及び/又は挿入されており、かつ活性型TGF-β1を特異的に認識するが、潜在型TGF-β1は認識しない抗体である。
抗体の結合特性は、上記の種々の結合アッセイにより決定することができる。
より好ましくは、
(1) 上記(a)〜(c)のCDRを含む重鎖可変領域と、上記(d)〜(f)のCDRを含む軽鎖可変領域とを含む抗体、あるいは
(2) 上記(1)の重鎖及び軽鎖可変領域を含むが、配列番号1〜6から選択される1以上(例、1、2、3、4、5又は6)のアミノ酸配列は、各配列において1又は2アミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加及び/又は挿入されており、かつ活性型TGF-β1を特異的に認識するが、潜在型TGF-β1は認識しない抗体である。
より好ましくは、上記の抗体において、上記(a)、(b)及び(c)のCDRは、重鎖のN末端側からこの順で配置されている。即ち、(a)、(b)及び(c)のCDRは、それぞれ重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3に相当する。同様に、上記(d)、(e)及び(f1のCDRは、軽鎖のN末端側からこの順で配置されている。即ち、(d)、(e)及び(f)のCDRは、それぞれ軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3に相当する。
いっそう好ましくは、本発明の抗体(1)は、
(1) 配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、あるいは
(2) 上記(1)の重鎖及び軽鎖可変領域を含み(但し、配列番号7及び8のいずれか一方もしくは両方において、1個以上、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜数個(例、1、2、3、4又は5個)のアミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加及び/又は挿入されている)、かつ活性型TGF-β1を特異的に認識するが、潜在型TGF-β1は認識しない抗体である。
別の実施態様においては、本発明の抗体(1)は、上記のいずれかの抗活性型TGF-β1抗体と競合的に活性型TGF-β1に結合し、かつ潜在型TGF-β1には結合しない抗体であり得る。
抗体の競合的結合は、上記の競合アッセイにより測定することができる。
好ましい一実施態様において、本発明の抗体(2)は、
(1) (a) Gly Tyr ThrPhe Thr Asp Tyrで表されるアミノ酸配列(配列番号9)を含むCDR、
(b) Ile Pro Asn Ser GlyGlyで表されるアミノ酸配列(配列番号10)を含むCDR、
(c) Glu Ala Met Asp Tyrで表されるアミノ酸配列(配列番号11)を含むCDR、
(d) Arg Ala Ser GlnSer Ile Arg Asn Lys Leu Hisで表されるアミノ酸配列(配列番号12)を含むCDR、
(e) Tyr Ala Ser Gln Ser Ile Serで表されるアミノ酸配列(配列番号13)を含むCDR、及び
(f) Leu Gln Ser AsnSer Trp Pro Leu Thrで表されるアミノ酸配列(配列番号14)を含むCDR
を含む抗体であるか、あるいは
(2) 上記(a)〜(f)のCDRを含むが、配列番号9〜14から選択される1以上(例、1、2、3、4、5又は6)のアミノ酸配列は、各配列において1又は2アミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加及び/又は挿入されており、かつ潜在型TGF-β1又はLAPを特異的に認識するが、活性型TGF-β1は認識しない抗体である。
抗体の結合特性は、上記の種々の結合アッセイにより決定することができる。
より好ましくは、
(1) 上記(a)〜(c)のCDRを含む重鎖可変領域と、上記(d)〜(f)のCDRを含む軽鎖可変領域とを含む抗体、あるいは
(2) 上記(1)の重鎖及び軽鎖可変領域を含むが、配列番号9〜14から選択される1以上(例、1、2、3、4、5又は6)のアミノ酸配列は、各配列において1又は2アミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加及び/又は挿入されており、かつ潜在型TGF-β1又はLAPを特異的に認識するが、活性型TGF-β1は認識しない抗体である。
より好ましくは、上記の抗体において、上記(a)、(b)及び(c)のCDRは、重鎖のN末端側からこの順で配置されている。即ち、(a)、(b)及び(c)のCDRは、それぞれ重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3に相当する。同様に、上記(d)、(e)及び(f1のCDRは、軽鎖のN末端側からこの順で配置されている。即ち、(d)、(e)及び(f)のCDRは、それぞれ軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3に相当する。
いっそう好ましくは、本発明の抗体(2)は、
(1) 配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、あるいは
(2) 上記(1)の重鎖及び軽鎖可変領域を含み(但し、配列番号15及び16のいずれか一方もしくは両方において、1個以上、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜数個(例、1、2、3、4又は5個)のアミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加及び/又は挿入されている)、かつ潜在型TGF-β1又はLAPを特異的に認識するが、活性型TGF-β1は認識しない抗体である。
別の実施態様においては、本発明の抗体(2)は、上記のいずれかの抗潜在型TGF-β1/LAP抗体と競合的に潜在型TGF-β1又はLAPに結合し、かつ活性型TGF-β1には結合しない抗体であり得る。抗体の競合的結合は、上記の競合アッセイにより測定することができる。そのような抗体の例として、後述の実施例に記載されるマウス抗ヒト活性型TGF-β1抗体クローン4D10、6F12及び7F10が挙げられる。
抗体の競合的結合は、上記の競合アッセイにより測定することができる。
抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。
本発明の抗体は、抗原決定基(エピトープ)を特異的に認識し、結合するための相補性決定領域 (CDR) を少なくとも有するものであれば、分子の形態に特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール (PEG) 等のタンパク質安定化作用を有する分子などで修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
[III] 本発明の抗体の作製
本発明の抗体は自体公知の抗体製造法によって作製することができる。以下に、本発明の抗体作製のための免疫原の調製方法、並びに該抗体の製造方法について説明する。
(1) 免疫原の調製
本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、潜在型もしくは成熟TGF-β1全体又はLAPポリペプチド全体、あるいはその部分ペプチド、あるいはそれと同一の抗原決定基を1種以上有する(合成)ペプチドなどを使用することができる。一実施態様において、6〜15アミノ酸からなる成熟TGF-β1又はLAPポリペプチドの部分ペプチドが免疫原として使用される。より好ましくは、成熟TGF-β1及びLAPの各領域内の進化的に保存されたユニークなアミノ酸配列を、免疫原として用いることができる。そのような進化的に保存されたユニークなアミノ酸配列は、商業的に利用可能なエピトープ予測ソフトウェアを用いて、in silicoで予測することができる。
潜在型もしくは成熟TGF-β1全体又はLAPポリペプチド全体、あるいはその部分ペプチドは、例えば、(a)ヒトの組織又は細胞から公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製、(b)ペプチド・シンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成法で化学的に合成、(c)潜在型もしくは成熟TGF-β1全体又はLAPポリペプチド全体、あるいはその部分ペプチドをコードするDNAを含む形質転換体を培養、あるいは(d)潜在型もしくは成熟TGF-β1全体又はLAPポリペプチド全体、あるいはその部分ペプチドをコードする核酸を鋳型として、無細胞転写/翻訳系を用いて生化学的に合成することによって調製される。
オリゴヌクレオチドを免疫原として使用する場合、該オリゴペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等の適切なキャリアタンパク質に連結して免疫原性を付与することができる。
(2) モノクローナル抗体の作製
(a) モノクローナル抗体産生細胞の作製
上記のようにして調製された免疫原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入、皮下注射、皮内注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独であるいは担体、希釈剤と共に投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常1〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。温血動物としては、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、サル、イヌ、モルモット、ヒツジ、ロバ、ニワトリ等が用いられるが、マウス、ラット及びウサギが好ましい。
あるいは、免疫原を体外免疫法に供することもできる。体外免疫法に用いられる動物細胞としては、ヒトおよび上記した温血動物(好ましくはマウス、ラット)の末梢血、脾臓、リンパ節などから単離されるリンパ球、好ましくはBリンパ球等が挙げられる。例えば、マウスやラット細胞の場合、4〜12週齢程度の動物から脾臓を摘出・脾細胞を分離し、適当な培地(例:ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、ハムF12培地等)で洗浄した後、抗原を含む胎仔ウシ血清(FCS;5〜20%程度)添加培地に浮遊させて4〜10日間程度CO2インキュベーターなどを用いて培養する。抗原濃度としては、例えば0.05〜5μgが挙げられるがこれに限定されない。同一系統の動物(1〜2週齢程度が好ましい)の胸腺細胞培養上清を常法に従って調製し、培地に添加することが好ましい。
ヒト細胞の体外免疫では、胸腺細胞培養上清を得ることは困難なので、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6等数種のサイトカインおよび必要に応じてアジュバント物質(例:ムラミルジペプチド等)を抗原とともに培地に添加して免疫感作を行うことが好ましい。
モノクローナル抗体の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物(例:マウス、ラット)もしくは動物細胞(例:ヒト、マウス、ラット)から抗体価の上昇が認められた個体もしくは細胞集団を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取もしくは体外免疫後4〜10日間培養した後に細胞を回収して抗体産生細胞を単離し、これと骨髄腫細胞とを融合させることにより抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。血清中の抗体価の測定は、例えば標識化抗原と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。
骨髄腫細胞は多量の抗体を分泌するハイブリドーマを産生し得るものであれば特に制限はないが、自身は抗体を産生もしくは分泌しないものが好ましく、また、細胞融合効率が高いものがより好ましい。また、ハイブリドーマの選択を容易にするために、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)感受性の株を用いることが好ましい。例えばマウス骨髄腫細胞としてはNS-1、P3U1、SP2/0、AP-1等が、ラット骨髄腫細胞としてはR210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3等が、ヒト骨髄腫細胞としてはSKO-007、GM 1500-6TG-2、LICR-LON-HMy2、UC729-6等が挙げられる。
融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法[ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)]に従って実施することができる。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGなどが用いられる。PEGの分子量は特に制限はないが、低毒性で且つ粘性が比較的低いPEG1000〜PEG6000が好ましい。PEG濃度としては例えば10〜80%程度、好ましくは30〜50%程度が例示される。PEGの希釈用溶液としては無血清培地(例:RPMI1640)、5〜20%程度の血清を含む完全培地、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝液等の各種緩衝液を用いることができる。所望によりDMSO(例:10〜20%程度)を添加することもできる。融合液のpHとしては、例えば4〜10程度、好ましくは6〜8程度が挙げられる。
抗体産生細胞(脾細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は、通常1:1〜20:1程度であり、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
抗体産生細胞株はまた、リンパ球をトランスフォームし得るウイルスに抗体産生細胞を感染させて該細胞を不死化することによっても得ることができる。そのようなウイルスとしては、例えばエプスタイン−バー(EB)ウイルス等が挙げられる。大多数の人は伝染性単核球症の無症状感染としてこのウイルスに感染した経験があるので免疫を有しているが、通常のEBウイルスを用いた場合にはウイルス粒子も産生されるので、適切な精製を行うべきである。ウイルス混入の可能性のないEBシステムとして、Bリンパ球を不死化する能力を保持するがウイルス粒子の複製能力を欠損した組換えEBウイルス(例えば、潜伏感染状態から溶解感染状態への移行のスイッチ遺伝子における欠損など)を用いることもまた好ましい。
マーモセット由来のB95-8細胞はEBウイルスを分泌しているので、その培養上清を用いれば容易にBリンパ球をトランスフォームすることができる。この細胞を例えば血清及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)添加培地(例:RPMI1640)もしくは細胞増殖因子を添加した無血清培地で培養した後、濾過もしくは遠心分離等により培養上清を分離し、これに抗体産生Bリンパ球を適当な濃度(例:約107細胞/mL)で浮遊させて、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常0.5〜2時間程度インキュベートすることにより抗体産生B細胞株を得ることができる。ヒトの抗体産生細胞が混合リンパ球として提供される場合、大部分の人はEBウイルス感染細胞に対して傷害性を示すTリンパ球を有しているので、トランスフォーメーション頻度を高めるためには、例えばヒツジ赤血球等とEロゼットを形成させることによってTリンパ球を予め除去しておくことが好ましい。また、可溶性抗原を結合したヒツジ赤血球を抗体産生Bリンパ球と混合し、パーコール等の密度勾配を用いてロゼットを分離することにより標的抗原に特異的なリンパ球を選別することができる。さらに、大過剰の抗原を添加することにより抗原特異的なBリンパ球はキャップされて表面にIgGを提示しなくなるので、抗IgG抗体を結合したヒツジ赤血球と混合すると抗原非特異的なBリンパ球のみがロゼットを形成する。従って、この混合物からパーコール等の密度勾配を用いてロゼット非形成層を採取することにより、抗原特異的Bリンパ球を選別することができる。
トランスフォーメーションによって無限増殖能を獲得したヒト抗体分泌細胞は、抗体分泌能を安定に持続させるためにマウスもしくはヒトの骨髄腫細胞と戻し融合させることができる。骨髄腫細胞としては上記と同様のものが用いられ得る。
ハイブリドーマのスクリーニング、育種は通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、5〜20% FCSを含む動物細胞用培地(例:RPMI1640)もしくは細胞増殖因子を添加した無血清培地で行われる。ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンの濃度としては、例えばそれぞれ約0.1mM、約0.4μMおよび約0.016mM等が挙げられる。ヒト−マウスハイブリドーマの選択にはウワバイン耐性を用いることができる。ヒト細胞株はマウス細胞株に比べてウワバインに対する感受性が高いので、10-7〜10-3M程度で培地に添加することにより未融合のヒト細胞を排除することができる。
ハイブリドーマの選択にはフィーダー細胞やある種の細胞培養上清を用いることが好ましい。フィーダー細胞としては、ハイブリドーマの出現を助けて自身は死滅するように生存期間が限られた異系の細胞種、ハイブリドーマの出現に有用な増殖因子を大量に産生し得る細胞を放射線照射等して増殖力を低減させたもの等が用いられる。例えば、マウスのフィーダー細胞としては、脾細胞、マクロファージ、血液、胸腺細胞等が、ヒトのフィーダー細胞としては、末梢血単核細胞等が挙げられる。細胞培養上清としては、例えば上記の各種細胞の初代培養上清や種々の株化細胞の培養上清が挙げられる。
また、ハイブリドーマは、抗原を蛍光標識して融合細胞と反応させた後、蛍光活性化セルソータ(FACS)を用いて抗原と結合する細胞を分離することによっても選択することができる。この場合、標的抗原に対する抗体を産生するハイブリドーマを直接選択することができるので、クローニングの労力を大いに軽減することが可能である。
標的抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのクローニングには種々の方法が使用できる。
アミノプテリンは多くの細胞機能を阻害するので、できるだけ早く培地から除去することが好ましい。マウスやラットの場合、ほとんどの骨髄腫細胞は10〜14日以内に死滅するので、融合2週間後からはアミノプテリンを除去することができる。但し、ヒトハイブリドーマについては通常融合後4〜6週間程度はアミノプテリン添加培地で維持される。ヒポキサンチン、チミジンはアミノプテリン除去後1週間以上後に除去するのが望ましい。即ち、マウス細胞の場合、例えば融合7〜10日後にヒポキサンチンおよびチミジン(HT)添加完全培地(例:10% FCS添加RPMI1640)の添加または交換を行う。融合後8〜14日程度で目視可能なクローンが出現する。クローンの直径が1mm程度になれば培養上清中の抗体量の測定が可能となる。
抗体量の測定は、例えば標的抗原またはその誘導体あるいはその部分ペプチド(抗原決定基として用いた部分アミノ酸配列を含む)を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例:マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質(例:125I、131I、3H、14C)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン)などで標識した抗免疫グロブリン(IgG)抗体(もとの抗体産生細胞が由来する動物と同一種の動物由来のIgGに対する抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した標的抗原(抗原決定基)に対する抗体を検出する方法、抗IgG抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、上記と同様の標識剤で標識した標的抗原またはその誘導体あるいはその部分ペプチドを加え、固相に結合した標的抗原(抗原決定基)に対する抗体を検出する方法などによって行うことができる。
クローニング方法としては限界希釈法が通常用いられるが、軟寒天を用いたクローニングやFACSを用いたクローニング(上述)も可能である。限界希釈法によるクローニングは、例えば以下の手順で行うことができるがこれに限定されない。
上記のようにして抗体量を測定して陽性ウェルを選択する。適当なフィーダー細胞を選択して96ウェルプレートに添加しておく。抗体陽性ウェルから細胞を吸い出し、完全培地(例:10% FCSおよびP/S添加RMPI1640)中に30細胞/mLの密度となるように浮遊させ、フィーダー細胞を添加したウェルプレートに0.1mL(3細胞/ウェル)加え、残りの細胞懸濁液を10細胞/mLに希釈して別のウェルに同様にまき(1細胞/ウェル)、さらに残りの細胞懸濁液を3細胞/mLに希釈して別のウェルにまく(0.3細胞/ウェル)。目視可能なクローンが出現するまで2〜3週間程度培養し、抗体量を測定・陽性ウェルを選択し、再度クローニングする。ヒト細胞の場合はクローニングが比較的困難なので、10細胞/ウェルのプレートも調製しておく。通常2回のサブクローニングでモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを得ることができるが、その安定性を確認するためにさらに数ヶ月間定期的に再クローニングを行うことが望ましい。
(b) ディファレンシャル・スクリーニング
上記のようにして得られた活性型TGF-β1に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、次いで2次スクリーニングに供される。2次スクリーニングでは、免疫原として使用された活性型TGF-β1及び/又はその部分ペプチドだけでなく、潜在型TGF-β1もプローブとして使用される。上記のようにして得られた潜在型TGF-β1/LAPに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマもまた、次いで2次スクリーニングに供される。2次スクリーニングでは、免疫原として使用された潜在型TGF-β1及び/又はLAPの部分ペプチドだけでなく、活性型TGF-β1もプローブとして使用される。2次スクリーニングの結果、活性型TGF-β1及び/又はその部分ペプチドとは反応するが、潜在型TGF-β1とは反応しなかったモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、本発明の抗活性型TGF-β1抗体を産生するハイブリドーマとして選択することができる。同様に、2次スクリーニングの結果、潜在型TGF-β1及び/又はLAPの部分ペプチドとは反応するが、活性型TGF-β1とは反応しなかったモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、本発明の抗潜在型TGF-β1/LAP抗体を産生するハイブリドーマとして選択することができる。
(e) ネガティブ選択
好ましい一実施態様において、本発明の抗体は、それが認識するエピトープのアミノ酸配列から予測される、TGF-β2、TGF-β3等を含むいかなるオフターゲットタンパク質とも交差反応しない。従って、上記のようにして得られた活性型TGF-β1又は潜在型TGF-β1/LAPのいずれか一方のみを認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをネガティブ選択にかけ、それらがオフターゲットタンパク質と交差反応しないことを確認することができる。
こうして得られたハイブリドーマはin vitro又はin vivoで培養するすることができる。in vitroでの培養法としては、上記のようにして得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、細胞密度を例えば105〜106細胞/mL程度に保ちながら、また、FCS濃度を徐々に減らしながら、ウェルプレートから徐々にスケールアップしていく方法が挙げられる。in vivoでの培養法としては、例えば、腹腔内にミネラルオイルを注入して形質細胞腫(MOPC)を誘導したマウス(ハイブリドーマの親株と組織適合性のマウス)に、5〜10日後に106〜107細胞程度のハイブリドーマを腹腔内注射し、2〜5週間後に麻酔下で腹水を採取する方法が挙げられる。
(c) モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法[例:塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例:DEAE、QEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など]に従って行うことができる。
以上のようにして、ハイブリドーマを温血動物の生体内又は生体外で培養し、その体液または培養物から抗体を採取することによって、モノクローナル抗体を製造することができる。
上記のようにして得られる本発明の抗活性型TGF-β1抗体の例として、後述の実施例に記載されるマウス抗ヒト活性型TGF-β1抗体クローン2H4、4D10、6F12及び7F10が挙げられる。上記のようにして得られる本発明の抗潜在型TGF-β1/LAP抗体の例として、後述の実施例に記載されるマウス抗ヒト潜在型TGF-β1/LAP抗体クローン2F10が挙げられる。アミノ酸配列決定の結果、2H4抗体は、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる可変領域を含む重鎖、及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる可変領域を含む軽鎖を有すること、また、2F10抗体は、配列番号15で表されるアミノ酸配列からなる可変領域を含む重鎖、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列からなる可変領域を含む軽鎖を有することが明らかとなっている。
(d) 組換え抗体の作製
別の実施態様において、こうして得られた抗活性型TGF-β1抗体又は抗潜在型TGF-β1/LAP抗体の重鎖及び軽鎖をコードするcDNAを、該抗体を産生するハイブリドーマのcDNAライブラリーから単離し、常法に従って、目的の宿主細胞で機能的な適当な発現ベクターにクローニングすることができる。次いで、こうして得られた重鎖及び軽鎖発現ベクターを宿主細胞に導入する。有用な宿主細胞としては、動物細胞、例えば上記したマウス骨髄腫細胞の他、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル由来のCOS-7細胞、Vero細胞、ラット由来のGHS細胞などが挙げられる。遺伝子導入は動物細胞に適用可能ないかなる方法を用いてもよいが、好ましくはエレクトロポレーション法又はカチオン性脂質を用いた方法などが挙げられる。宿主細胞に適した培地中で一定期間培養後、培養上清を回収して抗体タンパク質を常法により精製することにより、本発明の抗体を単離することができる。あるいは、宿主細胞としてウシ、ヤギ、ニワトリ等のトランスジェニック技術が確立し、且つ家畜(家禽)として大量繁殖のノウハウが蓄積されている動物の生殖系列細胞を用い、常法によってトランスジェニック動物を作製することにより、得られる動物の乳汁もしくは卵から容易に且つ大量に本発明の抗体を得ることもできる。さらに、トウモロコシ、イネ、コムギ、ダイズ、タバコなどのトランスジェニック技術が確立し、且つ主要作物として大量に栽培されている植物細胞を宿主細胞として、プロトプラストへのマイクロインジェクションやエレクトロポレーション、無傷細胞へのパーティクルガン法やTiベクター法などを用いてトランスジェニック植物を作製し、得られる種子や葉などから大量に本発明の抗体を得ることも可能である。
[IV] 本発明の抗体の用途
本発明の抗体は活性型TGF-β1又は潜在型TGF-β1/LAPのいずれかを特異的に認識することができ、かついかなるオフターゲットタンパク質も認識しないので、被検細胞サンプル中の活性型TGF-β1又は潜在型TGF-β1/LAPの正確な検出及び定量に使用することができる。これらの目的のために、全抗体分子を用いてもよいし、抗体分子のF(ab’)2、Fab’又はFabフラクション等のその断片を用いてもよい。本発明の抗体を用いた測定法は特に制限されず、任意の測定法を用いることができる。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、[125I]、[131I]、[3H]、[14C]などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)などが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
本発明の抗体を直接標識物質で標識してもよいし、間接的に標識してもよい。好ましい態様においては、本発明の抗体は非標識抗体(一次抗体)とし、本発明の抗体を作製した動物に対する抗血清や抗Ig抗体等の標識された二次抗体により、活性型又は潜在型TGF-β1を検出することができる。あるいは、ビオチン化した二次抗体を用いて、TGF-β1-本発明の抗体-二次抗体の複合体を形成させ、これを標識したストレプトアビジンを用いて可視化することもできる。
例えば、生検組織サンプルをグルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド等で固定・透過処理しPBS等の緩衝液で洗浄、BSA等でブロッキングした後、本発明の抗体とインキュベートする。PBS等の緩衝液で洗浄して未反応の抗体を除去した後、本発明のと反応した組織を標識した二次抗体で可視化し、顕微鏡下で目視観察したり、共焦点レーザー走査型顕微鏡や、IN Cell Analyzer(Amarsham/GE)等の自動化された生細胞画像解析装置等を用いて定量解析することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1) 免疫原の調製
潜在型TGF-β1ポリペプチドのLAP及び成熟TGF-β1領域に位置する進化上保存されたユニークな配列(10アミノ酸)を、市販のエピトープ予測ソフトウェアEpitope Hunterを用いて抽出した。抽出された配列からなるペプチドを、ペプチドシーケンサーを用いて合成した。これらのペプチドをキャリアに連結して免疫原を得た。
2) 免疫感作
こうして得られた免疫原を等容の完全フロイントアジュバント(CFA)又は不完全フロイントアジュバント(IFA)で乳化し、マウスに腹腔内注射した。その後、ブースター注射を行い、マウスを屠殺した。
3) 細胞融合、クローニング及びアッセイ
血清の間接ELISAにより高力価を有していた免疫マウスの脾臓由来のリンパ球を、ポリエチレングリコールを用いてマウスミエローマ細胞と融合させた。融合細胞を96-ウェル組織培養プレートに播種し、ハイブリドーマ培地を添加することによりハイブリドーマ(64クローン)を選択した。間接ELISAテストを用いてスクリーニングを実施した。各ハイブリドーマからの培養上清を、BSAを含むブロッキング溶液で前処理した抗原ペプチドもしくはTGF-β1でコーティングしたスクリーニングプレートに添加した。ハイブリドーマの培養上清を室温にて該プレート中でインキュベートした。プレートをPBSで洗浄後、1:1500希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgGを各ウェルに添加し、インキュベートした。最後の洗浄後、発色基質(OPD system)をプレートに添加して5分間発色させ、450nmでの吸光度を測定した。64クローンすべてが抗原ペプチドでコーティングした間接ELISAに対して陽性であった。それらのうち、11クローンがTGF-β1でコーティングした間接ELISAに対して陽性であった。
次に、抗原ペプチド及びTGF-β1タンパク質陽性の抗体を産生するハイブリドーマをウェスタンブロット(WB)解析に供した。TGF-β1を過剰発現する細胞又は組織の溶解液をSDS-ポリアクリルアミドゲル上にロードし、5倍希釈したハイブリドーマ上清と反応させ、免疫反応性をHRPをコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgGを用いて可視化した。11クローン中10クローンが細胞及び組織溶解液の両方に対して陽性であった。
さらに、HepG2細胞に対する免疫蛍光(IF)アッセイを行った。10クローンのうち6クローンがHepG2のIFにおいて強い陽性シグナルを示した。それらのうち、4クローン (2H4, 4D10, 6F12及び7F10) をより詳細な解析に使用した。
モノクローナル抗体のアイソタイプをマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットを用いて解析した。2H4, 4D10, 6F12及び7F10抗体は、IgG1アイソタイプに属した。
同様にして、抗潜在型TGF-β1/LAPモノクローナル抗体クローン(2F10)をLAPタンパク質由来の抗原ペプチドで免疫したマウスにより得た。
4) 免疫組織化学
がん組織アレイ(6つのHCCクローン、6つの胆管がんクローン、6つの肺腺がんクローン、6つのRCCクローン、5つの乳がんクローン、6つの卵巣がんクローン、2つの頸部がんクローン、5つの大腸がん、5つの胃がんクローン及び3つの膵がんクローンを含む)に対して、2H4, 4D10, 6F12及び7F10抗体を用いて免疫組織化学(IHC)を行った。代表的な染色像を図1〜7に示す。染色度を、各組織サンプルについての観察により定義される指標に従ってスコア化し(0、1、2又は3)、平均レベルを算出した。表1に示すとおり、4つの抗活性型TGF-β1抗体クローンすべてが、種々のがん組織に対して強いIHCシグナルを示した。
同様にして、2F10抗体を用いて種々のがん組織及びTGF-β1―Tgマウス肺のIHC染色を行った。結果を図8及び9に示す。抗潜在型TGF-β1/LAP抗体2F10は、種々のがん組織に対して強いIHCシグナルを示した(図8)。この抗体は、Tgマウス肺も強く染色したが、野生型マウス肺を染色しなかった(図9)。
5. 重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列の決定
2H4及び2F10抗体を、それらを産生する各ハイブリドーマから精製し、重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を常法により決定した。その結果、これらの抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、以下に示すとおりであった。

[2H4重鎖可変領域]
EVKLQQSGTV LARPGTSVKM SCKASGYTFS NYWMHWVKQR PGQGLEWIGA
IYPGNSDTRF NQKFKGKAKL TAVTSASTAY MDLSSLTDED SAVYYCTGYS
NYEAGAMDYW GQGTSVTVSS (配列番号7)

[2H4軽鎖可変領域]
DIVMTQSPSS LAVSSGEKVT MSCKSSQSLL NSRTRKNYLAWYQQKPGQSP
KLLIYWASTR ESGVPDRFTG SGSGTDFTLT ISGVQAEDLA VYYCQQSYHL
PTFGGGTKLE IKR (配列番号8)

[2F10重鎖可変領域]
EVQLQQSGPE LVKPGASVKI SCKASGYTFT DYYMNWVRQS HGKSLEWIGD
IIPNSGGTSY NQKFKGKATL TVDMSSSTAY MELRSLTSED SAVYYCTTEA
MDYWGQGTSV TVSS (配列番号15)

[2F10軽鎖可変領域]
DIVLTQSPAT LSVTPGDSVS LSCRASQSIR NKLHWYQQKS HESPRLLIKY
ASQSISRIPS RFSGSGSGTD FTLSINSVET EDFGMYFCLQ SNSWPLTFGS
GTKLEIKR
6. CDRの決定
公共で利用可能なCDR予測ソフトウェア (http://www.abysis.org/; 及びhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/igblast.cgi) を用い, 2H4 及び2F10抗体の重鎖及び軽鎖のCDRを決定した。配列番号7、8、15及び16の各々において、四角で囲んだ配列が、N末端からこの順でCDR1、CDR2及びCDR3である。
7. 可能性のあるオフターゲットタンパク質との交差反応性
上で得られた抗体のTGF-β1に対する抗原特異性を確認するために、これらの抗体により認識されるエピトープ配列から予測される、可能性のあるオフターゲットタンパク質と、これらの抗体との交差反応性を調べた。結合アッセイにより、これらの抗体は、試験したいずれのオフターゲットタンパク質とも結合しなかった。
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
本発明の抗体は、組織標本や体液等の生物学的サンプル中の活性型TGF-β1又は潜在型TGF-β/LAPのいずれかのみを検出するのに非常に有用である。

Claims (10)

  1. 活性型TGF-β1に結合するが、潜在型TGF-β1には結合しない第1のモノクローナル抗体であって、
    (a) 配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (c) 配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (d) 配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (e) 配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むCDR、及び
    (f) 配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR
    を含む、抗体。
  2. 重鎖可変領域に含まれるCDRが上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDRが上記(d)、(e)及び(f)である、請求項1に記載の抗体。
  3. 重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(d)、(e)及び(f)である、請求項1に記載の抗体。
  4. (1) 配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
    (2) 配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
    を含む、請求項1に記載の抗体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体と競合的に活性型TGF-β1に結合し、かつ潜在型TGF-β1には結合しない、モノクローナル抗体。
  6. 潜在型TGF-β1又はLAPに結合するが、活性型TGF-β1には結合しない第1のモノクローナル抗体であって、
    (a) 配列番号9で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (b) 配列番号10で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (c) 配列番号11で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (d) 配列番号12で表されるアミノ酸配列を含むCDR、
    (e) 配列番号13で表されるアミノ酸配列を含むCDR、及び
    (f) 配列番号14で表されるアミノ酸配列を含むCDR
    を含む、抗体。
  7. 重鎖可変領域に含まれるCDRが上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDRが上記(d)、(e)及び(f)である、請求項6に記載の抗体。
  8. 重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(a)、(b)及び(c)であり、軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2及びCDR3がそれぞれ上記(d)、(e)及び(f)である、請求項6に記載の抗体。
  9. (1) 配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
    (2) 配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
    を含む、請求項6に記載の抗体。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載の抗体と競合的に潜在型TGF-β1又はLAPに結合し、かつ活性型TGF-β1には結合しない、モノクローナル抗体。
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